(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230830BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230830BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230830BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230830BHJP
A61K 31/417 20060101ALI20230830BHJP
A61K 31/10 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P11/06
A61K31/55
A61K31/417
A61K31/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512428
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 US2021046742
(87)【国際公開番号】W WO2022040447
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】アクセルロッド,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ミラ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ブラダ,エスター
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
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4C206ZC02
4C206ZC20
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置する方法を提供する。この方法では、このような処置を必要とするヒト患者にガンマセクレターゼ阻害剤(GSI) を投与し、GSI の投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、本発明の方法は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択される呼吸器疾患の処置に有効である。本発明の方法は、嚢胞性線維症を処置する方法を更に含み、この方法では、CFTR調節剤が投与される患者又はCFTR調節剤を必要とする患者にGSI を投与し、このような患者の肺の粘液を減少させるか又はこのような患者の肺の粘液蓄積を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置する方法であって、
このような処置を必要とするヒト患者に低用量のGSI を投与し、
GSI を投与すると、前記ヒト患者の肺の粘液を減少させるか、又は、前記ヒト患者の肺の粘液蓄積を実質的に改善するか若しくは予防する、方法。
【請求項2】
前記低用量は、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患の処置に有効な用量であり、神経変性疾患、腫瘍疾患、又は粘液過剰分泌を特徴としない呼吸器疾患を患う患者への投与に適したGSI の用量と比較してより低い用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低用量のGSI は、マイクロモル以下の範囲のピーク血漿レベルを生じさせる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
GSI はセマガセスタットである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
GSI はMK-0752 である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
GSI はニロガセスタットである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
GSI はRO-4929097である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
GSI はクレニガセスタットである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
GSI の投与は経口投与である、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記呼吸器疾患は嚢胞性線維症又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置する方法であって、
このような処置を必要とするヒト患者に治療有効量のセマガセスタットを全身投与し、
複数回の投与後の定常状態における前記ヒト患者のセマガセスタット血漿濃度は、1220ng・hr/mL未満のAUC を有し、
セマガセスタットの投与は、前記ヒト患者の肺における粘液を減少させるか、又は、前記ヒト患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である、方法。
【請求項15】
前記呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記呼吸器疾患は嚢胞性線維症又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
セマガセスタットを、約0.1 mg~約50mgの量で毎日投与する、請求項14~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
約0.5 mg~約40mgのセマガセスタットを毎日投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約0.5 mg~約40mgのセマガセスタットを毎日投与する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
約0.5 mg~約30mgのセマガセスタットを毎日投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
約0.5 mg~約20mgのセマガセスタットを毎日投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
嚢胞性線維症を処置する方法であって、
CFTR調節剤が投与されるヒト患者又はCFTR調節剤を必要とするヒト患者に有効量のGSI を投与し、
前記ヒト患者の肺の粘液を減少させるか、又は、前記ヒト患者の肺の粘液蓄積を抑制する、方法。
【請求項23】
GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されている、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
気道上皮細胞には、管腔表面及びその下にある基底(幹)細胞に露出する主に多繊毛細胞(MCC)及び粘液分泌杯細胞の混合物が含まれる。MCC は、粘液層によって捕捉された吸入汚染物質を肺から押し出すために協調的且つ指向的な方法で運動する200 ~300 の運動性繊毛を夫々有している(Tilley AE, Walters MS, Shaykhiev R, Crystal RG. Cilia dysfunction in lung disease. Annu Rev Physiol. 2015;77:379-406)。杯細胞は、呼吸上皮のための保護バリアを形成する粘液を分泌し、感染などの侵害刺激に反応して活性及び数を増やすことができる。気道クリアランスの停止は、嚢胞性線維症(CF)、原発性線毛機能不全(PCD)、慢性副鼻腔炎(CRS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの急性感染症疾患及び慢性炎症性疾患を促進及び/又は悪化させ得る(上記文献)。
【0002】
CFは、最も重度の粘液繊毛クリアランス障害とみなされている(Bruscia EM, Bonfield TL. Innate and adaptive immunity in cystic fibrosis. Clin Chest Med. 2016;37(1):17-29)。CF膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の変異は、粘膜表面の脱水及び厚い異常粘液の蓄積をもたらし、どちらも気道クリアランスを妨げ、複数菌感染症の発症部位となる。これらのイベントは、重度な慢性炎症、並びに損傷及び不完全な修復の繰り返しサイクルの一因となる。これらは次に、粘液分泌細胞の過形成、MCC 数の減少、瘢痕を伴う異常組織構造、バリア機能の低下及び再生能力の低下などの構造的且つ機能的な変化を含む上皮機能障害をもたらす(Adam D, et al. Cystic fibrosis airway epithelium remodelling: involvement of inflammation. J Pathol. 2015;235(3):408-419)。CF患者が、気管支拡張症、慢性咳、呼吸困難、副鼻腔炎、抗生物質の使用が繰り返される難治性感染、及び酸素依存の形態で気道の損傷を進行させていくことは不可避である。CFの上皮機能障害は、疾患の進行の主な要因であり、最終的に医療の選択肢が尽きると肺移植につながると考えられている(Regamey N, Jeffery PK, Alton EW, Bush A, Davies JC. Airway remodeling and its relationship to inflammation in cystic fibrosis. Thorax. 2011;66(7):624-629)。
【0003】
分泌細胞由来の粘液分泌とMCC による運動性との機能的バランスにより、呼吸器の健康に不可欠な効果的な粘液繊毛クリアランスプロセスが得られる。MCC は最終分化して基底細胞から生じるか、又は、分泌細胞型の気道上皮が胚発生から始まり、生涯を通じて再生プロセスを継続する(Hogan BL, et al. Repair and regeneration of the respiratory system: complexity, plasticity, and mechanisms of lung stem cell function. Cell Stem Cell. 2014;15(2):123-138;Rock JR, et al. Basal cells as stem cells of the mouse trachea and human airway epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(31):12771-12775)。MCC の分化はノッチシグナル伝達イベントで始まり、細胞がノッチ膜貫通タンパク質の活性化に反応して分泌細胞になる一方、ノッチに反応しないリガンド発現細胞は、分化を促進して、最終的には運動性繊毛の発生に必要な何百もの調節・構造成分の生成を促進するMCC 特異的遺伝子発現プログラムを介してMCC 運命に導かれる(Choksi SP, Lauter G, Swoboda P, Roy S. Switching on cilia: transcriptional networks regulating ciliogenesis. Development. 2014;141(7):1427-1441)。確実な粘液繊毛クリアランスには、正確な数、長さ、運動周波数及び波形、並びに重要なことには組織軸芯に沿った正確な方向性の繊毛の生成が必要である。更に、分化上皮におけるノッチシグナル伝達の阻害は、MCC への分泌細胞の分化転換を引き起こすことによって、細胞構成を分泌細胞からMCC 細胞への運命にシフトすることが更に示されている(Lafkas et al. Nature 2015 Dec 3;528(7580):127-31)。
【0004】
CF及び他の慢性炎症性疾患の患者からの気道上皮には、MCC の欠乏又は欠如、粘液繊毛クリアランスの欠陥、並びに関連するバリア機能及び再生能力の低下が示されている。インビトロモデル及び動物モデルには、ノッチシグナル伝達を抑制することにより、ガンマセクレターゼ阻害剤が、de novo MCC 分化を促進して、MCC への成熟分泌細胞の分化転換を促進することによって、分泌細胞及びMCC 細胞の健康なバランスを回復させることができ、それによって、これらの細胞構成、バリア及び再生表現型を救うことが示されている(Vladar EK, Nayak JV, Milla CE, Axelrod JD. Airway epithelial homeostasis and planar cell polarity signaling depend on multiciliated cell differentiation. JCI Insight. 2016;1(13);e88027)。更に、ガンマセクレターゼ阻害剤による成熟分泌細胞の分化転換は、比較的遅い新たな細胞分化に比べて比較的速い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嚢胞性線維症の処置における最近の進歩は、CFTR調節剤として知られている一種の薬物の開発につながっている。これらの薬物は、特定のCFTR変異を有する個体を処置するように構成されているという点で個別化医療の一例である。CFTR調節剤は、増強剤、補正剤、及び、未成熟終止コドン抑制剤又はリードスルー剤の3つの主要なクラスに分類され得る。CFTR増強剤は、ゲーティング変異又はコンダクタンス変異を有するCFTRチャネルの開確率を増加させる。CFTR補正剤は、細胞表面に供給される機能的なCFTRタンパク質の量を増やすように構成されている。CFTRリードスルー剤は、未成熟終止コドンのリードスルーを「強制」して、より全長のCFTRタンパク質の生成につながるように構成されている(Derichs, N., Eur. Resp. Rev., 2013: 22: 127, 58-65)。CFTR増幅剤は、開発及び試験中のCFTR調節剤の一種であり、細胞が転写レベルで生成するCFTRタンパク質の量を増加させることにより、細胞表面でのタンパク質不足につながるCFTR変異を有する患者の機能を潜在的に高めるように構成されている。
【0006】
CFTR調節剤は、対応するCFTR変異を有する患者のCFTR機能を改善するが、変化した細胞構成、上皮細胞構造の損傷、及び対応する上皮機能障害に影響を及ぼさない。嚢胞性線維症並びに粘液過剰分泌及び/又は不十分な粘液繊毛クリアランスを特徴とする他の疾患において、MCC 機能を回復させて粘液繊毛クリアランスを改善するための治療法の改善が必要である。
【0007】
ガンマセクレターゼ阻害剤(GSI) は、アミロイドβの形成及びプラーク形成におけるガンマセクレターゼの役割により、アルツハイマー病を処置する際の薬物として広く研究されている(Barten DM, Meredith JE, Zaczek R, Houston JG, Albright CF: Gamma-secretase inhibitors for Alzheimer's disease: balancing efficacy and toxicity. Drugs R D. 2006, 7: 87-97. Evin G, Sernee MF, Masters CL: Inhibition of gamma-secretase as a therapeutic intervention for Alzheimer's disease: prospects, limitations and strategies. CNS Drugs. 2006, 20: 351-372)。加えて、ヒト癌におけるノッチシグナル伝達の役割は、様々な種類の腫瘍に対する潜在的な治療法としてGSI の研究につながっている(Shih I and Wang T, Notch Signaling, Gamma-Secretase Inhibitors, and Cancer Therapy, Cancer Res 2007, 67(5);1879-1882)。GSI がノッチシグナル伝達を遮断する能力は、上皮細胞機能障害と関連する呼吸器疾患を処置する際にGSI を使用する提案にもつながっている(欧州特許出願公開第2932966 号明細書)。
【0008】
ガンマセクレターゼは、4つの個々のタンパク質から構成される多ユニット膜貫通プロテアーゼ複合体である。ガンマセクレターゼは、制御的膜内切断(RIP) と称される処理により膜貫通領域内で基質を切断するアスパルチルプロテアーゼである(Kreft, AF, Martone, R, and Porte, A, Recent Advances in the Identification of gamma Secretase Inhibitors To Clinically Test the Ab Oligomer Hypothesis of Alzheimer’s Disease, J. Med. Chem 2009, 52:6169-6188)。ガンマセクレターゼは、数年前から治療標的として注目されているが、その複雑さから、その構造を詳細に理解して構造活性の関係を理解することは困難であった。しかしながら、特定の構造活性の関係の解明に大きな進展があった(Wolfe, MS, Gamma-Secretase Inhibition and Modulation for Alzheimer’s Disease, Curr Alzheimer Res. 2008; 5(2): 158-164参照)。
【0009】
GSI は、ガンマセクレターゼとの結合部位に基づく3つの一般的なタイプ、(1) 活性部位結合GSI 、(2) 基質ドッキング部位結合GSI 、及び(3) 代替結合部位GSI に分類され得る。後者の分類は、カルボキサミド含有GSI 及びアリールスルホンアミド含有GSI に更に細分され得る(Kreft et al, at 6171)。
【0010】
アルツハイマー病の臨床試験では、ガンマセクレターゼ阻害と関連すると考えられる毒性が明らかになっている(David B. Henley, Karen L. Sundell, Gopalan Sethuraman, Sherie A. Dowsett & Patrick C. May(2014)Safety profile of semagacestat, a gamma-secretase inhibitor: IDENTITY trial findings,Current Medical Research and Opinion,30:10,2021-2032)。
【0011】
更なるGSI が、癌の治療法の可能性について研究されており、一般的に高用量で毒性を示す。
【0012】
意外なことに、低用量のガンマセクレターゼ阻害剤(GSI) は、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を伴うとみなされる細胞異常の回復に有効であり、このクラスの分子に既に関連している有害作用を回避するか又は最小限に抑えると予期されて治療活性を可能にする用量で有効であることが判明した。更に、CFTR調節剤と組み合わせて投与されるGSI は、一般的な概念とは対照的に、嚢胞性線維症細胞ベースのモデル系(患者からの一次細胞)における上皮細胞機能障害の治療に有効であり、実際、この組み合わせは、CFTRイオンチャネル機能の改善及び上皮細胞の治療に相乗的で有り得ることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置する方法であって、このような処置を必要とするヒト患者にGSI を投与し、低用量のGSI の投与は、前記患者の肺の粘液を減少させるか、又は、前記患者の肺の粘液蓄積を阻害するのに有効である方法を提供する。一部の実施形態では、本発明の方法は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている呼吸器疾患の処置に有効である。
【0014】
一部の実施形態では、GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されている。
【0015】
一部の実施形態では、GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている。一部の実施形態では、GSI は、カルボキサミドに基づくGSI である。
【0016】
一部の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、約0.1 mg~約50mgの量のセマガセスタットを毎日全身投与し、セマガセスタットの投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか、又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、セマガセスタットを約0.5 mg~約40mgの量で毎日投与する。一部の実施形態では、セマガセスタットを、毎日約0.5 mg~約30mg、又は毎日約0.5 mg~約20mg、又は毎日約0.5 mg~約10mgの量で投与する。例えば、セマガセスタットを約0.1 mg、0.25mg、0.5 mg、1mg、2.5 mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg又は50mgで毎日投与してもよい。セマガセスタットを経口投与することが好ましい。
【0017】
本発明の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、このような処置を必要とするヒト患者に、治療有効量のセマガセスタットを全身投与し、複数回の投与後の定常状態における前記患者のセマガセスタット血漿濃度は、2100ng・hr/mL未満、例えば1220ng・hr/mL未満のAUC (曲線下面積)を有し、セマガセスタットの全身投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を予防するのに有効である。一部の実施形態では、複数回投与すると、前記患者の定常状態におけるセマガセスタット血漿濃度は、1500ng・hr/mL未満、1200ng・hr/mL未満、又は900 ng・hr/mL未満のAUC を有し、例えば1220ng・hr/mL未満、600 ng・hr/mL未満、又は250 ng・hr/mL未満のAUC を有する。
【0018】
本発明の更なる実施形態では、嚢胞性線維症を処置するための方法であって、CFTR調節剤を服用するヒト患者に有効量のGSI を投与し、このような患者の肺の粘液を減少させるか、又は、このような患者の肺の粘液蓄積を抑制する方法を提供する。一部の実施形態では、GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている。一部の実施形態では、GSI はセマガセスタットである。
【0019】
これらの実施形態の一部では、CFTR調節剤は、CFTR増強剤、CFTR補正剤、CFTR未成熟終止コドン阻害剤、CFTR増幅剤、及びこれらの組合せからなる群から選択されている。一部の実施形態では、CFTR調節剤は、アイバカフトール、ルマカフトール、テザカフトール、エレクサカフトール及びこれらの組合せからなる群から選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】未処置細胞及びDAPT陽性対照と比較した初代ヒト鼻上皮細胞(HNEC)におけるセマガセスタットの用量反応データを示す図である。MCC は緑色(アセチル化チューブリン)で標識されて、細胞間結合は赤色(ECAD)で標識されている。MCC の割合は、15.625nMのセマガセスタットのベースラインから、約125 nMの最大値に増加している。毒性はマイクロモル用量で観察されている。
【
図2】DAPT及び様々な用量のセマガセスタットで処置されたHNECにおける全管腔細胞に対するMCC の比を示す図表である。
【
図3】セマガセスタットの腹腔内(IP)投与によりインビボで全身処置されたマウスにおける気道上皮の非繊毛細胞に対するMCC の比をスコア化する方法を示す図である。同様の大きさの肺切片からの気道を全ての核(赤色;DAPI)及びMCC 細胞運命(緑色;FoxJ1 及び青色;アセチル化チューブリン)について標識した。非盲検処置条件の前に細胞をスコア化してMCC の割合を決定した。その他の点では野生型マウスはMCC のスコア化を容易にするためにFoxJ1::GFPを保持した。
【
図4】セマガセスタット及び溶媒対照の毎日の全身(IP)投与の9日目、24日目及び30日目の体重を示す図表である。
【
図5】DAPT、低用量及び高用量のセマガセスタット並びに溶媒対照で3日間処置した後の7日目における全細胞に対するMCC の比を示す図表である。
【
図6】セマガセスタット及び溶媒対照で3週間処置した後の31日目における全細胞に対するMCC の比を示す図表である。
【
図7】HNECの増殖中(分化前)及び分化中のGSI 処置の影響を示す図である。
【
図8】
図7のデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す図表である。
【
図9】DAPT及びセマガセスタットで1週間(ALI+30~+37d)又は2週間(ALI+30~+44d)処置した成熟(ALI+30d)HNECに対するGSI 処置期間の影響を示す図である。
【
図10】
図9のデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す図表である。
【
図11】DAPT及びセマガセスタットで頂端面又は基底面から分化中のみ(ALI+0~+21d)処置したHNECの結果を示す図である。
【
図12】
図11のデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す図表である。
【
図13】慢性気道炎症の上皮培養モデルにおけるセマガセスタット及びDAPT処置の影響を示す図である。HNEC培養物をALI+7~14にIL-13 で処置して炎症を生じさせた。DAPT及びセマガセスタットは、対照(左)内のMCC の割合を増加させる。IL-13 処置はムチン陽性分泌細胞の割合を増加させ、MCC の割合を減少させる。その後のDAPT及びセマガセスタット処置は細胞構成を救い、MCC の割合を増加させてムチン陽性分泌細胞の割合を減少させる。
【
図14】
図13のデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す図表である。
【
図15】ETI 、セマガセスタット、又はこれら両方で処置された培養物の代表的なウッシングチャンバ出力を示す図である。
【
図16】野生型細胞及びCF細胞にセマガセスタットで処置した後のウッシングチャンバ短絡電流(Isc) の代表的な出力を示す図である。
【
図17】野生型細胞及びCF細胞にセマガセスタットで処置した後のウッシングチャンバIsc 応答を示す図表である。2つの野生型対照試料(WT)及び2つのCF患者試料(CF1;希少対立遺伝子組合せ及びCF2;F508△ホモ接合体)を調べた。CFTR電流活性は、CFTR阻害剤反応により評価されて、野生型対照試料及びCF試料の両方で溶媒対照電流以上であることが判明した。値はベースライン電流に正規化されている。
【
図18】CFTR調節剤のルマカフトールと組み合わせてインビトロで処置すると、セマガセスタットは異なるCFTR変異を有するヒトCF試料の粘液生成を減少させることを示す図である。
【
図19】異なるCFTR変異を有するヒトCF試料に対するセマガセスタット、ルマカフトール及び組合せによる処置の影響を示す図である。セマガセスタットは、ルマカフトールの存在下でMCC の割合を増加させるのに有効であり、組合せは、一部のドナーに対して、いずれかが単独で適用される場合より有効であり得る。
【
図20】
図19の健常者及びCFドナー1に関する全管腔細胞当たりのMCC データの定量化を示す図表である。
【
図21】セマガセスタット(LY45139) で分化中のみ(ALI+0~+21d)処置された初代の健康な気道上皮細胞及び嚢胞性線維症気道上皮細胞に対する影響を示す図である。
【
図22】健康な初代ヒト気道上皮培養物及びCF初代ヒト気道上皮培養物のSEM を示して、DAPT処置で生成された多繊毛細胞が健康な未処置培養物と区別がつかないことを示す図である。
【
図23】成熟嚢胞性線維症HNEC培養物におけるDAPT処置の結果を示して、GSI 処置が成熟嚢胞性線維症培養物には追加の多繊毛細胞の生成を生じさせるが、未処置培養物はそれ以上の多繊毛細胞を分化しないことを実証する図である。
【
図24】DAPT並びに高濃度及び低濃度のGSI のLY45139 、PF-03084014 、RO-4929097及びMK-0752 で分化中(ALI+0~+21d)に処置されたHNECの結果を示す図である。
【
図25】
図24に示されているデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す図表である。
【
図26】LY45139 、エレクサカフトール/テザカフトール/アイバカフトール(すなわち「ETI」)、又はその両方で処置されたCF患者からの培養物についてウッシングチャンバで測定されたCFTR短絡電流活性の測定値を示す図表である。
【
図27】MK04752 、ETI 、又はその両方で処置されたCF患者からの培養物についてウッシングチャンバで測定されたCFTR電流活性の測定値を示す図表である。
【
図28】MK04752 、ETI 、又は、用量を減らしたエレクサカフトールとの組合せ(ETI 調節剤組合せのE成分)で処置されたCF患者からの培養物についてウッシングチャンバで測定されたCFTR電流活性の測定値を示す図表である。
【
図29】分化中のみ(ALI+0~+21d)DAPTで処置されたHNECにおけるイオノサイト生成に対するGSI DAPT処置の結果を示す図である。
【
図30】繊毛運動周波数(CBF) に対する様々な濃度のGSI MK-0752 及びエレクサカフトールの影響を示す図表である。
【
図31】DAPTで処置されたHNEC及び未処置対照の繊毛運動周波数(CBF) 及び繊毛の長さを示す図表である。
【
図32】ETI 、セマガセスタット、又はその両方で処置されたCF HNEC 培養物の気道表面液(ASL)再吸収特性を示す図表である。
【
図33】細胞培養物の繊毛表面による粘液輸送としてラテックスビーズの動きの顕微鏡画像を記録した高速映像からの画像を示す図である。培養物は、溶媒対照、ETI 、セマガセスタット(LY)、又はその両方の組合せで処置された2つのCFドナー(F508del ホモ接合体)からのHNECであった。
【
図34】
図33に示されている培養物の計算されたビーズの動きを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書に使用されている「粘液過剰分泌を特徴とする疾患」とは、疾患の少なくとも1つの病変が、正常な状態で存在する量を超えて上皮表面に粘液が存在することによる疾患を意味する。この疾患には、過剰な粘液が通常存在しない小さな気道通路に存在し、過剰な杯細胞の生成、粘液分泌腺の肥大、MCC の減少、又は他の不十分な粘液繊毛クリアランスが原因である可能性がある疾患が含まれる。
【0022】
本明細書に使用されている「有効量」又は「治療有効量」とは、例えば杯細胞の生成を減少させる及び/又は多繊毛細胞の生成を増加させることにより、粘液繊毛クリアランスを改善するなどの所望の治療結果を達成するために有効な本開示の化合物の量を指す。本発明との関連で、所望の治療結果は、このような患者の肺における粘液生成を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制することを含む。本開示に述べられている用量はガイドラインであるが、主治医は、例えば疾患の重症度、体型及び体調を含む患者の特定のニーズに応じて用量を調節してもよい。
【0023】
「一又は複数のガンマセクレターゼ阻害剤」又は「一又は複数のGSI 」とは、ガンマセクレターゼ酵素を阻害又は調節することにより、ノッチシグナル伝達を阻害することができる分子を意味する。例として、DAPT(N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル)、セマガセスタット、(www.tocris.comから市販されている)アバガセスタット((2R)-2-[[(4-クロロフェニル)スルホニル][[2-フルオロ-4-(1,2,4-オキサジアゾール-3-yl)フェニル]メチル]アミノ]-5,5,5-トリフルオロペンタンアミド)、(www.tocris.comから市販されている)DBZ(N-[(1S)-2-[[(7S)-6,7-ジヒドロ-5-メチル-6-オキソ-5H-ジベンズ[b,d]アゼピン-7-yl]アミノ]-1-メチル-2-オキソエチル]-3,5-ジフルオロベンゼンアセトアミド)、(www.tocris.comから市販されている)L-685,458((5S)-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)-ヒドロキシ-(2R)-ベンジルヘキサノイル)-L-ロイシ-L-フェニルアラニンアミド、GS-1(別名L-685458)(CAS 登録番号292632-98-5;WO0177144);BMS-906024(ビス(フルオロアルキル)-1,4-ベンゾジアゼピノン;CAS 登録番号1401066-79-2)、クレニガセスタット(別名LY3039478)(Massard et al., "First-in-human study of LY3039478, a Notch signaling inhibitor in advanced or metastatic cancer," J Clin Oncol (2015) 33(15_suppl):2533)、(www.tocris.comから市販されている)MRK 560 (N-[cis-4-[(4-クロロフェニル)スルホニル]-4-(2,5-ジフルオロフェニル)シクロヘキシル]-1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)、(www.adooq.comから市販されている)ニロガセスタット(別名PF-03084014)((S)-2-((S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-イルアミノ)-N-(1-(2-m-エチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-yl)-1H-イミダゾール-4-yl)ペンタンアミド;CAS 登録番号865773-15-5)、(www.adooq.comから市販されている)RO-4929097(RO4929097 は、2,2-ジメチル-N--((S)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,ジアゼピン-7-yl)-N'-(2,-2,3,3,3-ペンタフルオロ-プロピル)-マロンアミドを指す。CAS 登録番号は847925-91-1である)、MK-0752 (CAS 番号471905-41-6(www.medchemexpress.com))、イタナプラセド(CAS 番号749269-83-8 (www.medchemexpress.com))、LY-3056480 (Samarajeewa, Anshula & Jacques, Bonnie & Dabdoub, Alain. (2019). Therapeutic Potential of Wnt and Notch Signaling and Epigenetic Regulation in Mammalian Sensory Hair Cell Regeneration. Molecular Therapy. 27. 10.1016/j.ymthe.2019.03.017)、(二ナトリウム七水和物として入手可能な)fosciclopirox (Patel, M.R., et al., Safety, dose tolerance, pharmacokinetics, and pharmacodynamics of fosciclopirox (CPX-POM) in patients with advanced solid tumors. Journal of Clinical Oncology (2020) 38:6 suppl 518)、タレンフルルビル(CAS 番号51543-40-9;(2R)-2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロパン酸)、EVP-0962 (Rogers, K., et al., (2012). Modulation of γ-secretase by EVP-0015962 reduces amyloid deposition and behavioral deficits in Tg2576 mice. Molecular Neurodegeneration. 7. 61. 10.1186/1750-1326-7-61.; NIC5-15 ; E-2212 ; GSI-1 ; NGP-555 ; PF-0664867)、ベガセスタット(別名GSI-953 )(5-クロロ-N-[(1S)-3,3,3-トリフルオロ-1-(ヒドロキシメチル)-2-(トリフルオロメチル)プロピル]-2-チオフェンスルホンアミド)(www.tocris.com)、GSI-136(5-クロロ-N-[(2S)-3-エチル-1-ヒドロキシペンタン-2-yl]チオフェン-2-スルホンアミド)(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/gsi-136)、及びBMS-708163 (Gillman, KW et al, Discovery and Evaluation of BMS-708163, a Potent, Selective and Orally Bioavailable Gamma-Secretase Inhibitor. ACS Med. Chem. Lett. (2010) 1(3)120-124)がある。更に、Sekioka, R. et al., Discovery of N-ethylpyridine-2-carboxamide derivatives as a novel scaffold for orally active gamma secretase modulators. Bioorg. & Med. Chem., (2020) 28(1): 115132参照。「カルボキサミドに基づくGSI 」とは、カルボキサミド基を有するGSI であり、カルボキサミド置換により生成される分子、及びDAPTなどの既知のカルボキサミドに基づくGSI の誘導体が含まれる。例として、DAPT(N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル)、セマガセスタット、(www.tocris.comから市販されている)アバガセスタット((2R)-2-[[(4-クロロフェニル)スルホニル][[2-フルオロ-4-(1,2,4-オキサジアゾール-3-yl)フェニル]メチル]アミノ]-5,5,5-トリフルオロペンタンアミド)、(www.tocris.comから市販されている)DBZ(N-[(1S)-2-[[(7S)-6,7-ジヒドロ-5-メチル-6-オキソ-5H-ジベンズ[b,d]アゼピン-7-yl]アミノ]-1-メチル-2-オキソエチル]-3,5-ジフルオロベンゼンアセトアミド)、(www.tocris.comから市販されている)L-685,458((5S)-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)-ヒドロキシ-(2R)-ベンジルヘキサノイル)-L-ロイシ-L-フェニルアラニンアミド、BMS-906024(ビス(フルオロアルキル)-1,4-ベンゾジアゼピノン;CAS 登録番号1401066-79-2)、クレニガセスタット(別名LY3039478)(Massard et al., "First-in-human study of LY3039478, a Notch signaling inhibitor in advanced or metastatic cancer," J Clin Oncol (2015) 33(15_suppl):2533)、(www.tocris.comから市販されている)MRK 560 (N-[cis-4-[(4-クロロフェニル)スルホニル]-4-(2,5-ジフルオロフェニル)シクロヘキシル]-1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)、(www.adooq.comから市販されている)ニロガセスタット(別名PF-03084014)((S)-2-((S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-イルアミノ)-N-(1-(2-m-エチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-yl)-1H-イミダゾール-4-yl)ペンタンアミド;CAS 登録番号865773-15-5)、(www.adooq.comから市販されている)RO-4929097(RO4929097 は、2,2-ジメチル-N--((S)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,ジアゼピン-7-yl)-N'-(2,-2,3,3,3-ペンタフルオロ-プロピル)-マロンアミドを指す。CAS 登録番号は847925-91-1である)、及び、BMS-708163 (Gillman, KW et al, Discovery and Evaluation of BMS-708163, a Potent, Selective and Orally Bioavailable Gamma-Secretase Inhibitor. ACS Med. Chem. Lett. (2010) 1(3)120-124)がある。更に、Sekioka, R. et al., Discovery of N-ethylpyridine-2-carboxamide derivatives as a novel scaffold for orally active gamma secretase modulators. Bioorg. & Med. Chem., (2020) 28(1): 115132参照。GSI には、ガンマセクレターゼを抑制又は調節する活性を保持するあらゆる塩形態、多形体、水和物、類似体又はプロドラッグが含まれる。
【0024】
「処置する」、「処置」、「予防する」、「予防」、「抑制する」、及び対応する用語には、治療処置、予防処置、及び対象が障害又は危険因子を発症するリスクを減らすものが含まれる。処置には、障害又は症状の完全な治癒が必要ではなく、重症度の低下、症状の軽減、疾患の進行を遅らせるなどの症状及び/又は疾患を緩和する効果に関連する他の危険因子の減少が含まれる。
【0025】
本発明を更に詳細に記載する前に、本発明は、記載されている具体的な実施形態に限定されず、言うまでもなくそれ自体変わり得ると理解されるべきである。本明細書に使用されている専門用語は、具体的な実施形態について説明するためだけのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定的であることを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0026】
値の範囲が示されている場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、並びにその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値が本発明に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として本発明に包含される。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、含まれるこれらの限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0027】
本明細書では、ある範囲は、「約」という用語が前に付いた数値で示されている。本明細書では、「約」という用語は、この用語の後にくる数そのもの、及びこの用語の後にくる数に近い数又は略その数を文字通りサポートするために使用されている。数が具体的に記載された数に近いか又は略その数であるかを決定する際、記載されていない近い数又は略その数は、その数が示されている文脈では、具体的に記載された数の実質的な同等物を与える数であってもよい。
【0028】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されている方法及び材料と同様又は同等の方法及び材料が本発明の実施又は試験に使用され得るが、ここでは代表的で例示的な方法及び材料が記載されている。
【0029】
本明細書に引用されている全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が、具体的且つ個別に参照によって組み込まれると示されているかのように参照によって本明細書に組み込まれ、刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示して記載すべく、参照によって本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであって、先行発明を理由として本発明がそのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであるとみなされるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なる場合があり、実際の刊行日を個々に確認する必要があり得る。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」及び「the 」は、文脈上明らかに別段の規定がない限り、複数の指示対象を含むということに留意されたい。特許請求の範囲は任意の要素を除外するように起草されてもよいことに更に留意されたい。従って、この記載は、請求項の要素の記載に関する「唯一の(solely)」、「のみの(only)」等の排他的用語の使用、又は「否定的な(negative)」限定の使用のための先行記載として機能すべく意図される。
【0031】
当業者が本開示を読むと明らかであるように、本明細書に説明され例示された個々の実施形態は夫々、別々の構成要素及び特徴を有しており、別々の構成要素及び特徴は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、又はいずれかの特徴と容易に組み合わされてもよい。
【0032】
ガンマセクレターゼ阻害剤
アルツハイマー病及び癌の適応症のための可能性のある臨床候補として、様々なGSI が開発されている(Kreft et al, at 6171参照)。DAPTは最も早く特定されたGSI の1つであった。DAPTの改良により、臨床候補がもたらされた。
【0033】
セマガセスタットは、(2S)-2-ヒドロキシ-3-メチル-N-[(1S)-1-メチル-2-オキソ-2-[[(1S)-2,3,4,5-テトラヒドロ-3-メチル-2-オキソ-1H-3-ベンザゼピン-1-yl]アミノ]エチル]-ブタマイドであり、アルツハイマー病の処置のために最初に開発された小分子ガンマセクレターゼ阻害剤である(米国特許第7468365 号明細書参照)。セマガセスタットは、二水和物及び少なくとも2つの無水物の形態を含む多くの多型形態で存在することが知られている(上記文献。更に米国特許第8299059 号明細書参照)。更に、Yi et al, DMD (2010) 38:554-565; http://doi:10.1124/dmd.109.030841参照。
【0034】
ニロガセスタット(別名PF-03084014)は、((S)-2-((S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-イルアミノ)-N-(1-(2-m-エチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-yl)-1H-イミダゾール-4-yl)ペンタンアミドであり、癌適応症のために開発された小分子ガンマセクレターゼ阻害剤である。ニロガセスタットは臭化水素酸塩として入手可能であり(www.medchemexpress.com)、固体状の形態で存在する(米国特許第10590087号明細書参照)。Wei P, et al. Evaluation of selective gamma-secretase inhibitor PF-03084014 for its antitumor efficacy and gastrointestinal safety to guide optimal clinical trial design. Mol Cancer Ther. 2010 Jun;9(6):1618-28、及びKumar, S., et al., Clinical Activity of the gamma-secretase inhibitor PF-03084014 in adults with desmoid tumors (aggressive fibromatosis). J. Clin Oncol. (2017) May 10;35(14):1561-1569参照。17人の患者に1日2回50mg経口投与し、3週間のサイクルで6サイクル(18週)行った。
【0035】
MK-0752 は、癌適応症のために研究されている小分子ガンマセクレターゼ阻害剤である。第I相試験の臨床データが、Krop I, et al. Phase I pharmacologic and pharmacodynamic study of the gamma secretase (Notch) inhibitor MK-0752 in adult patients with advanced solid tumors. J Clin Oncol. 2012;30(19):2307-2313に記載されている。この研究では、MK-0752 を投与された103 人の患者の内、21人の患者は450 mg及び600 mgで1日1回の連続投与を受け、17人の患者は450 mg及び600 mgで7日間の内の3日の間欠的なスケジュールで投与され、65人の患者は600 mg、900 mg、1,200 mg、1,500 mg、1,800 mg、2,400 mg、3,200 mg及び4,200 mgで1週間に1度投与された。最も一般的な薬物関連の毒性は下痢、吐き気、嘔吐及び疲労であった。毒性はスケジュールに依存しており、毎週の投与が一般的に高忍容性であることが分かった。更に、Matthews et al, Journal of Chromatography B, 863 (2008) 36-45; https://doi:10.1016/j.jchromb.2007.12.025参照。
【0036】
RO-4929097 は、癌適応症のために研究されている小分子ガンマセクレターゼ阻害剤である。例えば、Tolcher AW, Messersmith WA, Mikulski SM et al. Phase I study of RO4929097, a gamma secretase inhibitor of Notch signaling, in patients with refractory metastatic or locally advanced solid tumors. J Clin Oncol 2012; 30: 2348-2353;Wu et al, Journal of Chromatography B, 879 (2011) 1537-1543参照。この研究では、(A) 3週間毎に1週当たり3日連続を2週間、(B) 3週間毎に7日連続、及び(C) 連続的な毎日の投与の3つのスケジュールで用量を段階的に増やしたRO4929097 を患者に経口投与した。毒性には、疲労、血小板減少、発熱、発疹、悪寒及び食欲不振が含まれる。この研究では、RO4929097 はスケジュールAでは270 mgで良好な忍容性を示し、スケジュールBでは135 mgで良好な忍容性を示し、スケジュールCの安全性は十分に評価されなかったと結論付けられている。
【0037】
クレニガセスタット(別名LY3039478 )は、癌適応症のために研究されている小分子ガンマセクレターゼ阻害剤である。Yuen E., et al., Evaluation of the effects of an oral notch inhibitor, crenigacestat (Ly3039478), on QT interval, and bioavailability studies conducted in healthy subjects. Cancer Chemother PHarmacol. 2019 Mar;83(3):483-492参照。この研究では、クレニガセスタットを、25、50若しくは75mgの単回経口投与量又は350 μgの13C15N2H-クレニガセスタットの静脈内投与量で健常者に投与した。
【0038】
アルツハイマー病を対象とした第III 相試験では、100 mg及び140 mgで毎日投与されたセマガセスタットは認知状態を改善しなかったが、最高用量の患者は認知能力の著しい悪化を示した。セマガセスタットは更に、皮膚癌及び感染症を含むより多くの有害事象と関連していた。Doody, R.S., et al., N Engl J Med 369;4: 341-350 (July 25, 2013)。先の第I相試験の研究では、14日間5mg、20mg又は40mgで毎日投与された対象はプラセボと同様の有害事象を示したと報告されたが、50mgで毎日投与された7人の対象の内の2人の対象は、薬物に関連した可能性のある有害事象が報告された。Siemers E, Skinner M, Dean RA, et al. Safety, tolerability, and changes in amyloid beta concentrations after administration of a gamma-secretase inhibitor in volunteers. Clin Neuropharmacol. 2005;28(3):126-132。
【0039】
ノッチシグナル伝達が多数の悪性腫瘍で調節不全であるというエビデンスのため、GSI は、可能性のある癌治療薬として、単独療法として又は他の薬剤と組み合わせて開発されてきた。例えば、Takebe N, Nguyen D, Yang SX. Targeting notch signaling pathway in cancer: clinical development advances and challenges. Pharmacol Ther. 2014 Feb;141(2):140-9. doi: 10.1016/j.pharmthera.2013.09.005. Epub 2013 Sep 27; Shao H, Huang Q, Liu ZJ. Targeting Notch signaling for cancer therapeutic intervention. Adv Pharmacol. 2012;65:191-234. doi: 10.1016/B978-0-12-397927-8.00007-5参照。
【0040】
低用量GSI は、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患の処置に有効であり、このクラスの分子に既に関連している有害作用を回避するか又は最小限に抑えながら、治療活性を可能にする用量で有効であることが判明した。本明細書に使用されているGSI の「低用量」とは、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患の処置に有効な用量であり、神経変性疾患、腫瘍疾患、又は粘液過剰分泌を特徴としない呼吸器疾患を患う患者への投与に適したGSI の用量と比較してより低い用量を指す。例えば、低用量はマイクロモル以下の範囲のピーク血漿レベルを生じさせる用量である。低用量のGSI を、1日1回の用量で、1日複数回の用量(例えば1日2回又は3回の用量)で、断続的に又は毎週投与してもよく、投与計画は、投与形態(例えば即時放出又は制御放出)及び患者のニーズに依存すると理解される。投与は、長期間、断続的、又は限られた時間であってもよく、患者の医療従事者によって決定される場合、患者の医療従事者によって決定された範囲内で投与を繰り返す。例えば、GSI を1日間、3日間、5日間、7日間、10日間、14日間、18日間、21日間、24日間、28日間又は30日間毎日投与して停止した。一部の実施形態では、GSI を3日毎、週に1度など断続的に投与する。本明細書では毎日の投与量は、毎日以外の投与計画によって達成されることができ、例えば、35mgの毎週用量は5mg/日の毎日用量に対応することが理解される。同様に、デポー製剤又はパッチ製剤などの徐放製剤は本技術分野では公知であり、本明細書に記載されている毎日用量と同等の用量を与えるために利用され得る。必要に応じて、GSI 投与計画を繰り返してもよい。
【0041】
例えば、GSI のセマガセスタット、ニロガセスタット(PF-03084014) 、RO-4929097及びMK-0752 の各々は、ナノモル範囲でヒト鼻上皮細胞に投与されると、ノッチシグナル伝達の遮断、MCC への分化の促進、及び過剰な杯細胞粘液分泌に関連する状態の救済に有効である。従って、比較的低い全身レベルのGSI は、より高い用量で観察される有害事象を回避するか又は最小限に抑えながら、粘液過剰分泌に関連する呼吸器状態のために有効な処置を提供し得る。
【0042】
更に、CFTR調節剤と組み合わせて投与されるGSI は、一般的な概念とは対照的に、嚢胞性線維症細胞ベースのモデル系(患者からの一次細胞)における上皮細胞機能障害の治療に有効であり、実際、この組み合わせは、CFTRイオンチャネル機能の改善及び上皮細胞の治療に相乗的で有り得ることが判明した。例えば、様々なGSI は、CFTRイオンチャネルと干渉せず、嚢胞性線維症気道上皮細胞のCFTRイオンチャネルに対するCFTR調節剤の効果を阻害しないことが示されている。GSI 処置は、意外なことにCFTR調節剤薬物と同程度にCF細胞の気道表面液(ASL) 再吸収を改善することが判明した。更なるエビデンスは、GSI 処置がCFTR調節剤処置と相乗的である可能性があり、それによって一方又は両方の薬物の用量を減らすことができ、夫々の潜在的な毒性を更に減らし得ることを示唆している。
【0043】
GSI は、経口固形製剤、経口液体、注射、経皮パッチ及び吸入を含むがこれらに限定されない本技術分野では公知の医薬品投与形態によって投与されてもよい。投与形態は、対象への投与を容易にして保存性を維持するために賦形剤及び他の化合物を使用して提供されてもよい。"Remington's Pharmaceutical Sciences"(Mack Publishing Co., Easton, PA)参照。経口製剤には、錠剤、ミニ錠剤、ペレット、顆粒、カプセル、ゲル、液体、シロップ及び懸濁液が含まれる。小児患者及び高齢患者など、錠剤及びカプセルに苦労する特定の集団には経口液体が望ましい場合があるが、GSI は通常、経口固形製剤で経口投与されることが好ましい。経口投与形態は、即時放出又は制御放出であってもよい。
【0044】
セマガセスタットの錠剤形態は本技術分野では公知である(米国特許第8299059号明細書参照)。経口投与では、セマガセスタットの半減期は略2.5 時間であると報告されている。従って、本発明の一実施形態では、セマガセスタットは即時放出製剤として提供されてもよい。即時放出セマガセスタットは、1日1回投与されてもよく、又は1日複数回の用量に分割されて1日2回、3回、4回以上投与されてもよい。本発明の別の実施形態では、セマガセスタットは持続放出製剤として提供される。持続放出製剤は、毎日の投与を減らすことにより患者の利便性を高めて、患者のコンプライアンスを改善し得る。更に、本発明の放出制御製剤は、血清の最大値及び最小値を減少させることにより、潜在的に有害事象を減少させるのに有用であり得る。
【0045】
経口放出制御製剤は本技術分野では公知であり、徐放製剤、持続放出製剤、遅延放出製剤及びパルス放出製剤を含む。"Remington's Pharmaceutical Sciences"(Mack Publishing Co., Easton, PA)参照。活性剤は、親水剤又はゲル化剤、疎水性マトリックス、脂質マトリックス又はワックスマトリックス、及び生分解性マトリックスを含む剤形からの薬物の放出を遅らせる一又は複数のポリマーを使用したマトリックス製剤で処方されてもよい。活性剤は、例えば不活性糖コアを有するビーズの形態で処方されて、拡散による活性剤の放出を遅延させるか又は遅らせるために既知の賦形剤で覆われてもよい。腸溶性コーティングは、剤形が胃の低pH環境から小腸のより高いpH環境に進むまで活性剤の放出を遅延させるために使用されることが本技術分野では公知であり、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース(CAP) 、酢酸コハク酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、セラック、アルギン酸ナトリウム、及びトリメリト酸酢酸セルロースを含んでもよい。
【0046】
一部の実施形態では、GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されている。
【0047】
一部の実施形態では、GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097又はクレニガセスタットから選択されている。一実施形態では、GSI はセマガセスタットである。
【0048】
一部の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に約0.1 mg~約50mgのセマガセスタットを毎日全身投与し、セマガセスタットの経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。好ましくは、セマガセスタットは、毎日約0.5 mg~約40mg又は毎日約0.5 mg~約30mgの用量で全身投与され、最も好ましくは毎日約0.5 mg~約20mg又は毎日約0.5 mg~約10mgの用量で全身投与される。例えば、セマガセスタットは約0.1 mg、0.25mg、0.5 mg、1mg、2.5 mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg又は50mgで毎日投与されてもよい。
【0049】
別の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に、毎日約5μg/kg~約1mg/kgのセマガセスタット、好ましくは毎日約50μg/kg~約100 μg/kgのセマガセスタットを全身投与する。
【0050】
本発明の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、このような処置を必要とするヒト患者に治療有効量のセマガセスタットを全身投与し、複数回の投与後の定常状態における前記患者のセマガセスタット血漿濃度は、1220ng・hr/mL未満のAUC (曲線下面積)を有し、セマガセスタットの全身投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、複数回投与すると、前記患者の定常状態におけるセマガセスタット血漿濃度は、1220ng・hr/mL未満、600 ng・hr/mL未満、又は250 ng・hr/mL未満のAUC を有する。
【0051】
一部の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に約0.1 mg~約50mgのニロガセスタットを毎日全身投与し、ニロガセスタットの経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、ニロガセスタットは、毎日約0.5 mg~約40mg、又は毎日約0.5 mg~約30mg、又は毎日約0.5 mg~約20mgの用量で全身投与される。
【0052】
別の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に、毎日約8μg/kg~約0.9 mg/kgのニロガセスタット、好ましくは毎日約10μg/kg~約300 μg/kgのニロガセスタットを全身投与する。
【0053】
一部の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に約0.1 mg~約20mgのRO-4929097を毎日全身投与し、RO-4929097の経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、RO-4929097は、毎日約0.1 mg~約10mg、又は毎日約0.5 mg~約10mg、又は毎日約0.1 mg~5mgの用量で全身投与される。
【0054】
別の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に、毎日約5μg/kg~約0.4 mg/kgのRO-4929097、好ましくは毎日約50μg/kg~約100 μg/kgのRO-4929097を全身投与する。
【0055】
一部の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に約0.1 mg~約40mgのMK-0752 を毎日全身投与し、MK-0752 の経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、MK-0752 は、毎日約0.1 mg~約30mg、又は毎日約0.1 mg~約20mg、最も好ましくは毎日約0.1 mg~約10mgの用量で投与される。
【0056】
別の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要とする患者に、毎日約2.5 μg/kg~約0.6 mg/kgのMK-0752 、好ましくは毎日約2.5 μg/kg~約500 μg/kgのMK-0752 を全身投与する。
【0057】
一部の実施形態では、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている。一部の実施形態では、呼吸器疾患は嚢胞性線維症である。他の実施形態では、呼吸器疾患は慢性閉塞性肺疾患である。
【0058】
一部の実施形態では、GSI は吸入によって投与される。好ましい実施形態では、GSI は経口投与によって投与される。一実施形態では、GSI は即時放出固体経口投与形態で提供される。別の実施形態では、GSI は制御放出固体経口剤形で提供される。更なる実施形態では、GSI は液体投与形態で提供される。更なる実施形態では、GSI は吸入投与形態で提供される。
【0059】
嚢胞性線維症併用療法
CFTR調節剤薬物は、嚢胞性線維症の処置において著しい進歩をもたらした。しかしながら、CFTR調節剤薬物は、嚢胞性線維症による肺上皮に生じる損傷には対処していない。更に、CFTR調節剤は、特定のCFTR調節剤薬物によって対処される特定のCFTR変異を有する患者での使用に限定されている。
【0060】
機能的なCFTRを最も発現する一又は複数の細胞型は定められていない。イオノサイトという希少な細胞型がCFTR発現、ひいては活性の主要な源で有り得ることが示唆されている。Plasschaert, L.W., et. al., A single-cell atlas of the airway epithelium reveals the CFTR-rich pulmonary ionocyte. Nature (2018) 560: 377-381; https://doi.org/10.1038/s41586-018-0394-6。更に、ノッチ阻害及びCFTR活性が同様に低下すると、イオノサイト集団の減少が予想されることが示唆されている(上記文献の380 頁)。最近発表された他のデータでは、多様な細胞型が様々なレベルのCFTRを発現することが示唆されている。Carraro, G., et al., Nat. Med. (2021) May;27(5):806-814. Doi: 10.1038/s41591-021-01332-7.Epub 2021 May 5。GSI がCFTR活性を妨げるという発表された主張とは対照的に、現在、GSI 処置はCFTR活性を減少させないことが分かっている。むしろ、GSI 処置は、意外なことにCFTR調節剤薬物と同程度にCF細胞の繊毛運動周波数(CBF) 及び粘液輸送を改善することが判明している。更なるエビデンスは、GSI 処置がCFTR調節剤処置と相乗的である可能性があり、それによって一方又は両方の薬物の用量を減らすことができ、夫々の潜在的な毒性を更に減らし得ることを示唆している。
【0061】
従って、本発明の方法は、MCC の分化及び粘液分泌細胞の減少を促進して、粘液繊毛クリアランスの改善を可能にすることにより、嚢胞性線維症気道及び粘液過剰分泌(及び多くの場合感染)を引き起こす他の上皮細胞に存在する機能不全に対処するものである。GSI の投与は、基礎疾患の原因となるCFTR変異に関係なく嚢胞性線維症の上皮機能を改善し得る。従って、嚢胞性線維症の処置では、GSI は、単独で投与されてもよく、又は任意のCFTR調節剤と組み合わせて投与されてもよく、又は複数のCFTR調節剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、嚢胞性線維症を処置するための方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者に治療有効量のGSI 及びCFTR調節剤を投与する。GSI は、CFTR調節剤の前、CFTR調節剤の後、又はCFTR調節剤と同時的に投与されてもよい。一部の実施形態では、GSI は、CFTR調節剤を服用する患者に経口投与される。GSI は、1つの処置過程で提供されてもよく、又はCFTR調節剤投与計画と組み合わせて断続的に提供されてもよい。
【0063】
例えば、CFTR調節剤を毎日投与してもよく、GSI を1日間、3日間、5日間、7日間、10日間、14日間、18日間、21日間、24日間、28日間又は30日間毎日投与して停止してもよい。一部の実施形態では、GSI を3日毎、週に1度など断続的に投与する。本明細書では毎日の投与量は、毎日以外の投与計画によって達成されることができ、例えば、35mgの毎週用量は5mg/日の毎日用量に対応することが理解される。同様に、デポー製剤又はパッチ製剤などの徐放製剤は本技術分野では公知であり、本明細書に記載されている毎日用量と同等の用量を与えるために利用され得る。必要に応じて、GSI 投与計画を繰り返してもよい。一部の実施形態では、GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097又はクレニガセスタットから選択されている。一実施形態では、GSI はセマガセスタットである。
【0064】
本発明に有用なCFTR調節剤は、CFTR増強剤、補正剤、未成熟終止コドン抑制剤、増幅剤及びこれらの組合せを含む。現在市販されているCFTR調節剤は、アイバカフトール、ルマカフトール、テザカフトール、エレクサカフトール及びこれらの組合せを含む。アイバカフトールは、KALYDECOとして錠剤及び顆粒の形態で販売されている(米国特許第7495103 号明細書及び米国特許第8754224 号明細書参照)。アイバカフトール及びテザカフトールはSYMDEKO として販売されている(米国特許第7745789 号明細書、米国特許第7776905 号明細書、米国特許第8623905 号明細書及び米国特許第10239867号明細書参照)。ルマカフトール及びアイバカフトールの組み合わせはORKAMBI として販売されている(米国特許第8507534 号明細書及び米国特許第10597384号明細書参照)。エレクサカフトール、アイバカフトール及びテザカフトールの組合せ(「ETI 」)はTRIKAFTAとして販売されている。本発明で使用され得る更なるCFTR調節剤が開発中である(例えば米国特許第10647717号明細書、米国特許第10604515号明細書、米国特許第10568867号明細書、米国特許第10428017号明細書、米国特許第10399940号明細書、米国特許第10259810号明細書、米国特許第10118916号明細書、米国特許第9895347 号明細書、米国特許第10550106号明細書、米国特許第10548878号明細書、米国特許第10392378号明細書、米国特許第10494374号明細書、米国特許第10377762号明細書、米国特許第10450273号明細書、米国特許第9890149 号明細書及び米国特許第10258624号明細書参照)。
【0065】
本発明の実施形態では、治療有効量のGSI 及びCFTR調節剤を投与することにより、嚢胞性線維症を処置するための方法が提供されている。別の実施形態では、嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、CFTR調節剤が投与される患者又はCFTR調節剤の投与を必要とする患者にGSI を全身投与する。GSI を、同時的、CFTR調節剤の投与前、又はCFTR調節剤の投与後に投与してもよい。一部の実施形態では、GSI を、CFTR調節剤投与計画と組み合わせて断続的に投与する。
【0066】
一実施形態では、CFTR調節剤が投与される患者又はCFTR調節剤の投与を必要とする患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、このような患者に約0.1 mg~約50mgのセマガセスタットを毎日全身投与し、セマガセスタットの経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、セマガセスタットを約0.5 mg~約40mgの用量で毎日全身投与する。一部の実施形態では、セマガセスタットを約0.5 mgから約20mgの用量で毎日投与する。
【0067】
一実施形態では、CFTR調節剤を服用する患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者にセマガセスタットを毎日5μg/kg~1mg/kg、好ましくは毎日約50μg/kg~100 μg/kg全身投与する。
【0068】
一部の実施形態では、セマガセスタットを、CFTR調節剤を服用する患者に経口で投与し、複数回の投与後の定常状態における前記患者のセマガセスタット血漿濃度は、1220ng・hr/mL未満のAUC (曲線下面積)を有し、セマガセスタットの全身投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を予防するのに有効である。一部の実施形態では、複数回投与すると、前記患者の定常状態におけるセマガセスタット血漿濃度は、1220ng・hr/mL未満、600 ng・hr/mL未満、又は250 ng・hr/mL未満のAUC を有する。定常状態のセマガセスタットレベルは、治療有効量のセマガセスタットの投与の約1週間後又は約2週間後以降に決定されてもよい。
【0069】
一部の実施形態では、CFTR調節剤が投与される患者又はCFTR調節剤の投与を必要とする患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者に約0.1 mg~約50mgのニロガセスタットを毎日全身投与し、ニロガセスタットの経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、ニロガセスタットは、毎日約0.5 mg~約40mg、又は毎日約0.5 mg~約30mg、又は毎日約0.5 mg~約20mgの用量で全身投与される。
【0070】
別の実施形態では、CFTR調節剤を服用する患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者にニロガセスタットを毎日約8μg/kg~約0.9 mg/kg、好ましくは毎日約10μg/kg~約300 μg/kg全身投与する。
【0071】
一部の実施形態では、CFTR調節剤を服用する患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者に約0.1 mg~約20mgのRO-4929097を毎日全身投与し、RO-4929097の経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、RO-4929097は、毎日約0.1 mg~約10mg、又は毎日約0.5 mg~約10mg、又は毎日約0.1 mg~約5mgの用量で全身投与される。
【0072】
別の実施形態では、CFTR調節剤を服用する患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者にRO-4929097を毎日約5μg/kg~約0.4 mg/kg、好ましくは毎日約50μg/kg~約100 μg/kg全身投与する。
【0073】
一部の実施形態では、CFTR調節剤を服用する患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者に約0.1 mg~約40 mgのMK-0752を毎日全身投与し、MK-0752 の経口投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である。一部の実施形態では、MK-0752 は、毎日約0.1 mg~約30mg、又は毎日約0.1 mg~約20mg、最も好ましくは毎日約0.1 mg~約10mgの用量で投与される。
【0074】
別の実施形態では、CFTR調節剤を服用する患者の嚢胞性線維症を処置する方法が提供されており、この方法では、この処置を必要する患者にMK-0752 を毎日約2.5 μg/kg~約0.6 mg/kg、好ましくは毎日約2.5 μg/kg~約500 μg/kg全身投与する。
【0075】
GSI は経口投与によって投与されることが好ましい。GSI は、即時放出経口投与形態又は制御放出経口投与形態として投与されてもよい。
【0076】
一般的に、例えば上述されているように本発明の方法によって処置されるヒト対象は、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を有すると診断された対象である。場合によっては、対象が患っていると診断される、粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている。一部の実施形態では、対象は嚢胞性線維症を患っていると診断された対象である。他の実施形態では、対象は慢性閉塞性肺疾患を患っていると診断された対象である。
【0077】
以下の実施例は、例示として示されており、限定するものではない。
【0078】
実施例
実施例1:GSI を用いたHNECの処置
気液界面(ALI) 培養物を、Vladar EK, Nayak JV, Milla CE, Axelrod JDに記載されているように調製した。気道上皮恒常性及び平面内細胞極性シグナル伝達は多繊毛細胞分化に依存する。JCI Insight. 2016;1(13);e88027。ヒト鼻上皮細胞(HNEC)を、ヒト副鼻腔上皮ブラッシングから、又はスタンフォード病院で内視鏡下副鼻腔手術を受けた患者から得られた組織から生成して、Vladar et al.に記載されているように培養した。
【0079】
培養物を様々な用量のセマガセスタットで処置した。DAPT (Abcam)を、GSI 活性の陽性対照として使用した(0.5 μg)。培養物を、ALI+21d に抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識し、繊毛及び上皮の接合部分をマークした。
図1に示されている結果は、セマガセスタットで処置されたHNECの用量反応を実証し、ナノモル濃度のセマガセスタットを用いたMCC への効果的な変換を示している。
【0080】
ECADを用いて細胞の総数を数えて、抗アセチル化αチューブリンを用いて、(「機能的な」MCC に注目していたため、運命づけられたが繊毛を未だ生成していない未熟なMCC を含まない)MCC の数を数えた。この比は、MCC 数/全管腔細胞として定められた。1ドナーからの5つの培養複製物から得られた1つの代表的な画像で数えた。
図2に示されている結果は、1μMのDAPT及び500 nM~31.25 nMの範囲内の用量のセマガセスタットの両方がこの比で大幅な増加をもたらしたことを示している(事後Dunnett の多重比較試験を用いたANOVA による全てp<0.01)。
【0081】
有効なセマガセスタット用量は、ヒトアルツハイマー病の治験で使用された用量より2桁以上低い用量に相当する。
【0082】
実施例2:インビボマウスモデル
10~40週齢の適合したオス及びメスのFoxj1-GFP マウスにセマガセスタット又は溶媒を腹腔内(IP)投与した。第1の実験では、セマガセスタットを1日2回3日間0.1 mg/kg及び1mg/kgで投与し、溶媒単独と比較した。マウスを7日目に屠殺した。
図3は、気道細胞構成を評価する方法を実証している。略同様の大きさのPFA 固定気道で、核(赤色;DAPI)をMCC (緑色;GFP )又は非繊毛細胞(GFP 無し)のいずれかとしてスコア化した。アセチル化チューブリン(青色)は繊毛をマークする。スコア化前に処置群について試料を盲検化した。
図5は、低用量及び高用量の両方でセマガセスタットの全身(IP)処置の3日後に繊毛細胞及び非繊毛細胞の比が増加したことを示している。
【0083】
第2の実験では、溶媒及びセマガセスタットを3週間に亘って1日1回週5日連続で投与し、セマガセスタットの用量は1mg/kgであった。大規模なアルツハイマー病の治験を含む複数のGSI 臨床試験で観察された重要な毒性は胃腸毒性であった。GI毒性の代理測定として、実験を通して体重をモニタした。体重を1日目、9日目、24日目及び30日目に測定して、マウスを31日目に屠殺した。死亡及び病的影響はどの群にも認められなかった。
図4は、9日目、24日目及び30日目の体重を示し、溶媒対照と比較して処置群に有意差がないことを実証している。
図6は、セマガセスタットの全身(IP)の3週間後に繊毛細胞対非繊毛細胞の比が著しく増加したことを示している。
【0084】
3日間の処置で用量反応の傾向が観察され、高用量が統計的有意性に達した(
図5)。1日1回のより高い用量での3週間の処置反応は非常に有意であった(
図6)。
【0085】
実施例3:分化期及び成熟期の気道上皮の処置のタイミングに対する多繊毛細胞生成の依存性
初代ヒト気道上皮細胞をDAPT及びLY45139で、i)増殖中のみ(ALI-5~-1d)、ii) 分化中のみ(ALI+0~+21d)、又はiii)培養期間全体に亘って継続的に処置し、その後、ALI+21d に抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識した。多繊毛細胞の分化(分化のみ及び継続的な処置)中のGSI 処置はMCC 細胞数を増加させた。
図7に示されている結果は、増殖中のみのGSI 処置が分化に影響を及ぼさず、その後の分化又は上皮構造全体に有害な影響を及ぼさないことを示している。
図8は、
図7に示されているデータの定量化(全管腔細胞当たりのMCC )を示す。
【0086】
成熟(ALI+30d)初代ヒト気道上皮細胞を、DAPT及びセマガセスタットで1週間(ALI+30~+37d)又は2週間(ALI+30~+44d)処置し、その後、抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識した。
図9に示されている結果は、GSI 処置が成熟培養物に追加の多繊毛細胞の生成を生じさせる一方、未処置培養物はそれ以上の多繊毛細胞を分化しないことを示している。
図10は、
図9に示されているデータの定量化を示す。
【0087】
初代ヒト気道上皮細胞をDAPT及びLY45139 で、分化中のみ(ALI+0~+21d)頂端面又は基底面から処置し、その後、ALI+21d に抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識した。
図11に示されている結果は、GSI 処置が頂端及び基底の両方の適用を通じて繊毛細胞の生成を生じさせることを示している。頂端処置は気液界面を除去するため、未処置培養物では上皮構造及び多繊毛細胞の分化が不十分になり、これはGSI 処置によって部分的に救済される。
図12は、
図11に示されているデータの定量化を示す。この結果は、全身曝露及び吸入曝露の両方がインビボで有効である可能性が高いことを示唆している。
【0088】
結果は、分化中又は分化後の処置が全細胞に対するMCC の比を増加させることを示している。増殖中(分化前)の処置は明らかな効果がなく、有益でも有害でもない。
【0089】
実施例4:IL-13 による慢性炎症モデル
ALI 培養物へのIL-13 の投与は杯細胞の過形成を生じさせて、慢性炎症の有用なモデルを提供する。ALI HNEC培養物を、Vladar et al. に記載されているように調製した。ALI 培養物を7~14日目にIl‐13 の投与有り及びIl‐13 の投与無しで処置した。DAPT(1um)、セマガセスタット(125 nm)又は溶媒対照を14~21日目に投与した。PFA 固定培養物を、Muc5AC(赤色;ムチン生成分泌細胞)、アセチル化チューブリン(緑色;MCC )及びE-カドヘリン(細胞境界を明らかにするために青色)について染色した。
【0090】
図13は、慢性炎症のALI モデルにおけるセマガセスタット及びDAPTの処置の影響を示す。CF患者からのHNEC培養物をALI+7~14にIL-13 で処置して炎症を生じさせた。DAPT及びセマガセスタットは、対照(左)のMCC の割合を増加させる。IL-13 処置はムチン陽性分泌細胞の割合を増加させ、MCC の割合を減少させる。その後のDAPT又はセマガセスタットの処置は細胞構成を救い、MCC の割合を増加させてムチン陽性分泌細胞の割合を減少させる。
【0091】
図14は、
図13からのデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す。
【0092】
実施例5:代表的なウッシングチャンバ出力
気液界面で成長した細胞を保持スライダに取り付けて、電気生理学的短絡電流(Isc) 測定のためにウッシングチャンバに挿入した。塩化物勾配が両側間に確立されるように、漿膜・粘膜槽の溶液を調製した。安定したベースライン電流記録が得られた後、作動薬を、ナトリウムチャネル活性を遮断するためにアミロリド(10μM)、CFTRを刺激するためにフォルスコリン(10μM)、CFTR活性を増強するためにアイバカフトール(10μM)、及びCFTR電流を遮断するためにCFTR
inh-172(20μM)の順で追加した。作動薬毎に信号をモニタし、電流の平坦域が確認された時点で次の作動薬を追加した。CFTR
inh-172 に応答するデルタI
sc を、CFTRを介した塩化物輸送のための主な読み取り値として使用した。結果が
図15に示されている。
【0093】
実施例6:CFTR活性のための電気生理学的アッセイ
培養上皮のCFTR機能に対するGSI(DAPT、セマガセスタット)の影響を評価するために、CF患者からのHNEC及び非CF対照を採取して、Vladar et alに従って気液界面で成熟期(+21d)まで成長させた。次に、培養物をDAPT、セマガセスタット、CFTR調節剤のルマカフトール又は溶媒対照で2週間に亘って週3回処置して基本培地に追加した。その後、ウッシングチャンバ内の塩化物勾配に対する短絡電流(Isc) についてフィルタインサートを評価して、CFTR活性を評価した。
図16は、代表的な出力を示している。
図17は、2つの野生型対照培養物及び2つのCF患者由来培養物について、CFTR
inh172の添加後の電流阻害によって評価されたCFTRチャネル活性の定量化を示す(遺伝子型:希少/希少=W1282X [class I]/I1234V [class II]及びF508△/F508△)。全ての場合において、セマガセスタットで処置された培養物のCFTR電流は対照条件と同一又はそれ以上であることに注目すべきである。
【0094】
実施例7:ヒトCF細胞における粘液生成
図18では、実施例6の実験からの複製培養物をPFA 固定して、Muc5AC(赤色;粘液)及びアセチル化チューブリン(緑色;MCC )について染色した。洗浄に耐性を示す溶媒対照で処置されたCF培養物の太いロープ状の粘液(赤色)に注目すべきである。セマガセスタットで処置された培養物は、ロープ状にならず、はるかに少ない粘液であることが明らかにされた。この効果は、CFTR調節剤のルマカフトール及びアイバカフトールの組合せで処置された同型接合F508△細胞及びW1282X/I1234V(希少な調節剤応答性遺伝子型)細胞で観察された。
【0095】
実施例8:セマガセスタット及びCFTR調節剤の組み合わせ
セマガセスタット及びCFTR調節剤の処置を組み合わせる影響を評価するために、野生型対照及びCF(F508△/F508△)HNEC培養物を、ALI+0~21dにセマガセスタット有又はセマガセスタット無で成熟期まで成長させて、培養物をALI+19~21dにルマカフトール(VX-809)有又はルマカフトール(VX-809)無で処置し、固定前の10分間アイバカフトール(VX-770)で処置した。次に、PFA 固定膜をアセチル化チューブリン(緑色;MCC )及びE-カドヘリン(赤色)について染色した。結果が
図19に示されている。組合せで処置した培養物が、セマガセスタット単独で処置した培養物と同等又はそれ以上にMCC を分化させたことに注目すべきである。
【0096】
図20は、
図19の健常者及びCFドナー1に関するデータの定量化を示す。この場合のように一部の場合では、セマガセスタットによるMCC /全細胞比の増加が、ルマカフトールによって更に高められる。これは一貫して見られたわけではなく、定量化した全ての培養物で統計的に有意ではないが、セマガセスタットによるMCC 反応の有意な減少が見られなかったと結論し得る。Trikaftaの対象外のCF患者は、補正療法(不図示)の患者と同様にセマガセスタット単独に反応する。
【0097】
実施例9:GSI 処置は、嚢胞性線維症上皮に多繊毛細胞の生成をもたらす
初代の健康な気道上皮細胞及び嚢胞性線維症気道上皮細胞を、セマガセスタット(LY45139) で分化中のみ(ALI+0~+21d)処置して、ALI+21d に抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識した。
図21は、LY45139 が、CF患者由来の培養物におけるMCC /全細胞比の増加に有効であったことを示している。健康なMCC /全細胞比の回復により、粘液繊毛クリアランスの改善が予期される。
【0098】
実施例10:GSI 処置は、健康な上皮及びCF上皮に構造的に正常な繊毛を生じさせる
図22は、健康な初代ヒト気道上皮培養物及びCF初代ヒト気道上皮培養物のSEM を示して、DAPT処置で生成された多繊毛細胞が健康な未処置培養物と区別がつかないことを示す。
【0099】
成熟(ALI+30d)初代嚢胞性線維症ヒト気道上皮細胞を、DAPTで1週間(ALI+30~+37d)処置し、その後、抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識した。
図23に示されている結果は、GSI 処置が成熟嚢胞性線維症培養物に追加の多繊毛細胞の生成を生じさせる一方、未処置培養物はそれ以上の多繊毛細胞を分化しないことを示している。
【0100】
実施例11:多繊毛細胞の生成は様々なGSI によって生じる
初代ヒト気道上皮細胞を、DAPT並びに高濃度及び低濃度のGSI のLY45139 、PF-03084014 、RO-4929097及びMK-0752 で分化中(ALI+0~+21d)に処置し、ALI+21d に抗アセチル化αチューブリン(緑色)抗体及びECAD(赤色)抗体で標識して、繊毛及び上皮の接合部分をマークした。結果が
図24に示されている。高濃度では、GSI が上皮構造を崩壊させるが、低濃度ではDAPTと同様に全てが多繊毛細胞の生成を生じさせた。
図25は、
図24に示されているデータの全管腔細胞当たりのMCC の定量化を示す。
【0101】
実施例12:CFTR電流はGSI 処置によって減少しない
十分確立された有効なインビトロ用量のTrikafta(エレクサカフトール/テザカフトール/アイバカフトール、つまり「ETI」)有り又は無しでGSI で処置されたCF患者からの培養物のCFTR活性を直接測定した。Veit, G., et al., JCI (2020) 10.1172/jci.insight.139983。測定をウッシングチャンバで行った。LY45139 (
図26)もMK04752 (
図27)も、ETI によって誘導されるCFTR電流を損なわなかった。一部の個別の実験では、併用処置に相乗効果があるように見えた。GSI 単独では効果はないが、併用処置はETI 単独より大きな応答をもたらした。この効果は一貫して見られなかったが、より少ないETI 用量で相乗効果が観察され得る可能性を高めた。
【0102】
これを更に検査するために、MK04752 を様々な用量のETI と組み合わせて調べた(
図28)。その結果は、準最適用量のETI がMK04752 によって増強されるように見えることを示しており、相乗効果を示している。
【0103】
実施例13:GSI 処置はイオノサイト生成に影響を及ぼさない
イオノサイトは、CFTR発現に関する事前の主張により特に注目されているため、電流の測定に加えて、GSI 処置によるイオノサイトの普及を評価した。健康な初代気道上皮細胞をDAPTで分化中のみ(ALI+0~+21d)処置し、ALI+21d に抗FOXI1 (緑色;イオノサイト特異マーカ)抗体及びアセチル化αチューブリン(赤色)抗体で標識し、DAPI(青色)で染色して核をマークした。
図29は、未処置培養物及びDAPT処置培養物の両方が、イオノサイトを示す同様の少数のFOXI1 陽性核を含んだことを示している。従って、ノッチ阻害によってイオノサイト数が減少するという以前の示唆は正しくないようである。
【0104】
実施例14:繊毛運動周波数(CBF) に対する低濃度のGSI MK-0752 及びCFTR調節剤エレクサカフトールの影響
2つのCFドナー(F508del ホモ接合体)からの初代鼻上皮細胞を、先の実験のようにフィルタインサートで完全分化まで成長させた。先の実験で使用された用量より低い用量のMK‐0752 及びエレクサカフトールの両方が、2つの薬物の相乗効果のエビデンスとしてCBF に陽性反応を生じさせ得るか否かを評価した。分化中、培養物に溶媒対照、125 nMのGSI MK-0752 、100 nMのエレクサカフトールを含む3つの組合せ調節剤、又はこれら両方の組合せで処置した。細胞が成熟期に達すると、頂端面をPBS で軽く洗浄し、次に倒立顕微鏡の37℃に加熱されたステージ上に置いた。繊毛表面の200 倍の高速映像記録を行って、CBF を複数の領域で推定した。条件毎の平均CBF (Hz)が
図30にバーで示されている。両方の処置は、CBF の増加に有意な効果を実証した(両方対対照についてp<0.001 )。更に、併用処置により明らかにされたCBF の増加はいずれかの薬物単独より大きく(全ての比較についてp<0.005 )、CBF の増加は、独立した効果を単純に加えることにより予測される増加より著しく高かったので相乗効果を実証している(36%対28%,p=0.049 )。
【0105】
図31は、DAPTで処置された初代ヒト上皮細胞対未処置対照の繊毛運動周波数(CBF)及び繊毛の長さを示す。結果は、DAPT処置で分化した多繊毛細胞が、繊毛運動周波数の適度であるが著しい増加を示したが、繊毛の長さに差がないことを示している。
【0106】
実施例15:CFの気道表面液(ASL) 再吸収特性がGSI 処置によってCFTR調節剤薬物と同程度に弱まる
2つのCFドナー(F508del ホモ接合体)からの初代鼻上皮細胞を、先の実験のようにフィルタインサートで完全分化まで成長させた。分化中、初代鼻上皮細胞に溶媒対照(青色)、3つの組合せCFTR調節剤(エレクサカフトール/テザカフトール/アイバカフトール;オレンジ色)、GSI セマガセスタット(LY-45139)(灰色)、又は両方の処置の組合せ(黄色)で処置した。成熟期に達すると、頂端面をPBS で軽く洗浄して、次に30μlのPBS を頂端面に加えた。その後、フィルタインサートを、流体追加の0時間後、12時間後及び24時間後に精密スケールで計量した。経時的な重量の変化を、流体の再吸収の代用とみなした。結果が
図32に示されている。対照細胞は、再吸収の著しい減少を実証した処置細胞とは対照的に、48時間に亘るASL 再吸収の典型的なパターンを示した(p=<0.001対対照)。特に、全ての薬物処置において、流体再吸収に対する効果に有意差はなかった(薬物処置間の全ての比較についてp>0.3 )。
【0107】
実施例16:GSI 及びCFTR調節剤の併用処置による粘液輸送の飛躍的な改善
2つのCFドナー(F508del ホモ接合体)からの初代鼻上皮細胞を、先の実験と同様に溶媒対照、3つの組合せCFTR調節剤(エレクサカフトール/テザカフトール/アイバカフトール)、GSI セマガセスタット(LY-45139)、又は両方の処置の組合せの処置で完全分化まで複製して成長させた。成熟すると、2μmのラテックスビーズの20μl懸濁液を頂端面に加えて、インサートを切断し、高速ビデオレコーダを備えた顕微鏡の下に置いた。その後、画像を1000 fpsで取得して、繊毛表面による粘液輸送としてビーズの動きを追跡し、個々のビーズにより進む距離を推定した。
図33は、処置毎の代表的な画像を示す。
図34に示されている結果には、対照細胞がビーズの動きをほとんど示さず、不十分な粘液輸送を反映していることが示されている。運動の著しい増加が、ETI 処置又はセマガセスタット処置のいずれかで観察された(処置対対照についてp<0.01)。ETI 及びセマガセスタットの組合せにより、輸送の著しい増加が認められた(いずれかの処置単独との比較についてp<0.05)。これは、併用処置の際に粘液繊毛輸送における強力な増強効果を実証するとみなされることができ、GSI 処置を追加することにより、CFTR調節剤療法の患者に対する大きな利益をもたらすと予測される。
【0108】
添付の特許請求の範囲に関わらず、本開示は以下の付記により更に定義される。
【0109】
付記1.粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置する方法であって、
このような処置を必要とするヒト患者に低用量のGSI を投与し、
このような患者の肺の粘液を減少させるか、又は、このような患者の肺の粘液蓄積を抑制する、方法。
【0110】
付記2.呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている、付記1に記載の方法。
【0111】
付記3.GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されている、付記1又は2に記載の方法。
【0112】
付記4.GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている、付記3に記載の方法。
【0113】
付記5.GSI はセマガセスタットである、付記4に記載の方法。
【0114】
付記6.GSI はMK-0752 である、付記4に記載の方法。
【0115】
付記7.GSI はニロガセスタットである、付記4に記載の方法。
【0116】
付記8.GSI はRO-4929097である、付記4に記載の方法。
【0117】
付記9.GSI はクレニガセスタットである、付記4に記載の方法。
【0118】
付記10.GSI の投与は経口投与である、付記2に記載の方法。
【0119】
付記11.呼吸器疾患は嚢胞性線維症である、付記2に記載の方法。
【0120】
付記12.呼吸器疾患は慢性閉塞性肺疾患である、付記2に記載の方法。
【0121】
付記13.セマガセスタットを、約0.1 mg~約50mgの量で毎日経口投与する、付記5に記載の方法。
【0122】
付記14.約0.5 mg~約40mgのセマガセスタットを毎日投与する、付記13に記載の方法。
【0123】
付記15.約0.5 mg~約30mgのセマガセスタットを毎日投与する、付記14に記載の方法。
【0124】
付記16.約0.5 mg~約20mgのセマガセスタットを毎日投与する、付記15に記載の方法。
【0125】
付記17.ニロガセスタットを、約8ug~約0.9 mgの量で毎日経口投与する、付記7に記載の方法。
【0126】
付記18.約10ug~約300 ugのニロガセスタットを毎日投与する、付記17に記載の方法。
【0127】
付記19.RO-4929097を、約0.1 mg~約20mgの量で毎日経口投与する、付記8に記載の方法。
【0128】
付記20.約0.1 mg~約10mgのRO-4929097を毎日投与する、付記19に記載の方法。
【0129】
付記21.約0.1 mg~約5mgのRO-4929097を毎日投与する、付記20に記載の方法。
【0130】
付記22.MK-0752 を、約0.1 mg~約40mgの量で毎日経口投与する、付記6に記載の方法。
【0131】
付記23.約0.1 mg~約20mgのMK-0752 を毎日投与する、付記22に記載の方法。
【0132】
付記24.約0.1 mg~約10mgのMK-0752 を毎日投与する、付記23に記載の方法。
【0133】
付記25.粘液過剰分泌を特徴とする呼吸器疾患を処置する方法であって、
このような処置を必要とするヒト患者に、治療有効量のセマガセスタットを全身投与し、
治療有効量の投与の約1週間又は約2週間以降の定常状態における前記患者のセマガセスタット血漿濃度は、1220ng・hr/mL未満のAUC を有し、
セマガセスタットの全身投与は、このような患者の肺における粘液を減少させるか又はこのような患者の肺における粘液蓄積を抑制するのに有効である、方法。
【0134】
付記26.呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患の悪化及び急性感染症に伴う粘液蓄積を含む、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、喘息、特発性・続発性気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症及び他の線維性肺疾患、及び呼吸器感染症からなる群から選択されている、付記25に記載の方法。
【0135】
付記27.複数回の投与後の定常状態における前記患者のセマガセスタット血漿濃度は、600 ng・hr/mL未満のAUC を有する、付記26に記載の方法。
【0136】
付記28.複数回の投与後の定常状態における前記患者のセマガセスタット血漿濃度は、250 ng・hr/mL未満のAUC を有する、付記27に記載の方法。
【0137】
付記29.呼吸器疾患は嚢胞性線維症である、付記26に記載の方法。
【0138】
付記30.呼吸器疾患は慢性閉塞性肺疾患である、付記26に記載の方法。
【0139】
付記31.嚢胞性線維症を処置する方法であって、
一若しくは複数のCFTR調節剤が投与されるヒト患者又は一若しくは複数のCFTR調節剤の投与を必要とするヒト患者に有効量のGSI を投与し、
GSI を投与すると、このような患者の肺の粘液を減少させるか、又は、このような患者の肺の粘液蓄積を抑制する、方法。
【0140】
付記32.GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されている、付記31に記載の方法。
【0141】
付記33.GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている、付記32に記載の方法。
【0142】
付記34.GSI はセマガセスタットである、付記33に記載の方法。
【0143】
付記35.GSI はMK-0752 である、付記33に記載の方法。
【0144】
付記36.GSI はニロガセスタットである、付記33に記載の方法。
【0145】
付記37.GSI はRO-4929097である、付記33に記載の方法。
【0146】
付記38.GSI はクレニガセスタットである、付記33に記載の方法。
【0147】
付記39.GSI の投与は経口投与である、付記31に記載の方法。
【0148】
付記40.CFTR調節剤はCFTR増強剤である、付記31に記載の方法。
【0149】
付記41.CFTR調節剤はCFTR補正剤である、付記31に記載の方法。
【0150】
付記42.CFTR調節剤はCFTR増幅剤である、付記31に記載の方法。
【0151】
付記43.CFTR調節剤は、アイバカフトール、ルマカフトール、テザカフトール、エレクサカフトール及びこれらの組合せからなる群から選択されている、付記31に記載の方法。
【0152】
付記44.GSI を毎日投与する、付記31に記載の方法。
【0153】
付記45.GSI を最大30日間投与し、その後停止する、付記44に記載の方法。
【0154】
付記46.GSI を毎週投与する、付記31に記載の方法。
【0155】
付記47.嚢胞性線維症を処置する方法であって、
CFTR調節剤を服用するヒト患者に有効量のGSI を投与し、
GSI は、セマガセスタット、アバガセスタット、GS-1、DBZ 、L-685,458 、BMS-906024、クレニガセスタット、MRK 560 、ニロガセスタット、RO-4929097、MK-0752 、イタナプラセド、LY-3056480、fosciclopirox 、タレンフルルビル及びベガセスタットからなる群から選択されており、
CFTR調節剤は、アイバカフトール、ルマカフトール、テザカフトール、エレクサカフトール及びこれらの組合せからなる群から選択されており、
GSI を投与すると、このような患者の肺の粘液を減少させるか、又は、このような患者の肺の粘液蓄積を抑制する、方法。
【0156】
付記48.GSI は、セマガセスタット、ニロガセスタット、MK-0752 、RO-4929097及びクレニガセスタットからなる群から選択されている、付記47に記載の方法。
【0157】
上記の発明は、理解し易くするために例証及び例示としてある程度詳細に記載されているが、当業者には、本発明の教示に鑑みて、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正が行われてもよいことは容易に明らかである。
【0158】
政府の権利の承認
本発明は、契約番号R01GM098582に従って米国立衛生研究所から授与された政府援助を得て実施された。政府は本発明において決められた権利を有している。
【0159】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119 条(e) に従って、2020年8月20日に出願された米国仮特許出願第63/068,235 号明細書の出願日の優先権を主張しており、その開示内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0158
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0158】
政府の権利の承認
本発明は、契約番号GM098582に従って米国立衛生研究所から授与された政府援助を得て実施された。政府は本発明において決められた権利を有している。
【国際調査報告】