(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】腫瘍関連マクロファージを標的とするための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/61 20170101AFI20230830BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20230830BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20230830BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K47/61
A61P35/00
A61K51/04 300
A61K38/05
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512710
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021046984
(87)【国際公開番号】W WO2022040580
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523060013
【氏名又は名称】レザルート・サイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESOLUTE SCIENCE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,フェイス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE38
4C076EE39
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA18
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA32
4C084BA42
4C084DA27
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH01
4C085HH03
4C085HH11
4C085KA07
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB02
4C085KB79
4C085KB80
4C085KB82
4C085LL18
(57)【要約】
本発明は、グルカン骨格に結合させた標的部分を使用して、単球、マクロファージ及びCD-206を発現する他の細胞(樹状細胞等)、特に、疾患部位に集合している細胞を標的とする化合物に関する。本明細書で開示される化合物は、好ましくは、グルカン骨格、標的指向性部分、標的指向性部分リンカー、ペイロード、及び任意選択でペイロードリンカーを含む。本発明はまた、そのような化合物及び組成物を作製する方法も提供する。本発明はまた、グルカン骨格に結合させた標的部分を含む化合物を使用する、診断方法及び治療方法も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバマート基及び鎖部分を含む標的指向性リンカーを介して複数の骨格モノマーを含むグルカン骨格に結合させたCD206指向性部分であって、前記カルバマート基が骨格モノマーに接続され、前記鎖部分が前記カルバマート基と前記CD206指向性部分を接続する、前記CD206指向性部分と、
前記グルカン骨格に結合させた活性成分と、を含む組成物。
【請求項2】
前記複数の骨格モノマーが、α-1,6グリコシド結合の複数のD-グルコースモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複数のD-グルコースモノマーがnであり、n=16~111である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数のD-グルコースモノマーがnであり、n=50~65である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルカン骨格が、直鎖デキストラン分子である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルカン骨格がシクロデキストリン分子であり、n=6~16のD-グルコースモノマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記CD206リガンドが、マンノース、ガラクトース、コラーゲン、フコース、硫酸化N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、またはコンドロイチン硫酸の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記標的指向性部分がマンノースである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
マンノースと骨格モノマーの比が、約1対5~約1対25である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
マンノースと骨格モノマーの比が、約1対6~約1対19である、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
シクロデキストリン上のマンノースの置換度が、約0.1~約7の範囲である、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
シクロデキストリン上のマンノースの置換度が、約0.5~5の範囲である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記標的指向性リンカーが、前記カルバマート基の酸素原子を介して前記グルカン骨格に接続されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記標的指向性リンカーの前記鎖部分が、C
3-C
7アルキレン鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記標的指向性リンカーの前記鎖部分が、C
6-アルキレン部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記標的指向性リンカーの前記鎖部分が、非置換C
6-アルキレン部分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記標的指向性リンカーの前記カルバマート基の炭素原子は、前記リンカーがマンノースに結合している場合に唯一のsp2混成炭素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記活性成分が、検出可能マーカーまたは治療剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記検出可能マーカーが、放射性同位体、金属キレート剤、酵素、蛍光化合物、生物発光化合物、または化学発光化合物である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記放射性同位体が、
212Bi、
131I、
111In、
90Y、
186Re、
211At、
125I、
188Re、
153Sm、
213Bi、
32P、及び
177Luからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記検出可能マーカーが造影剤である、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
前記造影剤が、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアナート、フルオレセイン-6-イソチオシアナート、6-カルボキシフルオレセイン、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアナート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロードール誘導体、テトラメチルローダミン及びテトラエチルローダミン、ジフェニルジメチルローダミン及びジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロリド、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、DyLight650、IRDye650、IRDye680、DyLight750、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 750、IR800CW、ICG、緑色蛍光タンパク質、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalamal、ECFP、Cerulean、CyPet、YFP、Citrine、Venus、YPet、ガドリニウムキレート、酸化鉄粒子、超常磁性酸化鉄粒子、超微小常磁性粒子、マンガンキレート、ガリウム含有剤、64Cuジアセチル-ビス(N4-メチルチオセミカルバゾン)、18F-フルオロデオキシグルコース、18F-フッ化物、3’-デオキシ-3’-[18F]フルオロチミジン、18F-フルオロミソニダゾール、テクネチウム99m、タリウム、ヨウ素、硫酸バリウム、またはそれらの組み合わせ、である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記治療剤が細胞毒性薬剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記細胞毒性薬剤が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メイタンシノイド、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素(Pseudomonas exotoxin:PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、Sapaonaria officinalis阻害剤、グルココルチコイド、アウリスタチン、オーロマイシン(auromycin)、イットリウム、ビスマス、コンブレスタチン(combrestatin)、デュオカルマイシン、ドロスタチン(dolostatin)、cc1065、シスプラチン、アウリスタチンフェニルアラニンフェニレンジアミン(AFP)、モノメチルアウリスタチンフェニルアラニン(MMAF)、及びモノメチルアウリスタチンE(MMAE)からなる群から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記細胞毒性薬剤が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記活性成分が、ペイロードリンカーを介して前記グルカン骨格に連結されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記ペイロードリンカーが、切断可能なリンカーまたは切断不可能なリンカーである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記切断可能なリンカーが、プロテアーゼによる切断を受ける能力がある、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記プロテアーゼが、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記切断可能なリンカーは、pH変化による切断を受ける能力がある、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記ペイロードリンカーが、Val-Citリンカーである、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
マクロファージに薬剤を送達する方法であって、前記マクロファージを請求項1に記載の化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項33】
対象のがんを治療する方法であって、治療的有効量の請求項1に記載の化合物を前記対象に投与することを含み、前記活性成分が治療剤である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み込まれる2020年8月21日に出願された“COMPOSITIONS AND METHODS FOR TARGETING TUMOR-ASSOCIATED MACROPHAGES”という題名の米国仮出願第63/068,904号からの優先権を主張するものである。
【0002】
CD206+細胞、特にマクロファージは、そのような細胞が集合する部位へ診断薬及び治療薬を送達することを目指して、様々な分子により標的とされてきた。そのような分子の一例は、“Compositions for Targeting Macrophages and Other CD206 High Expressing Cells and Methods of Treating and Diagnosis”と題されたUS2017/0209584に見出される。この文献及び他の文献に開示されている分子は目的のCD206+細胞を標的とし得るが、その分子には多くの欠点がある。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、カルバマート基及び鎖部分を含む標的指向性リンカーを介して複数の骨格モノマーを含むグルカン骨格に結合させたCD206指向性部分であって、カルバマート基が骨格モノマーに接続され、鎖部分がカルバマート基とCD206指向性部分を接続する、CD206指向性部分、ならびにグルカン骨格に結合させた活性成分、を含む組成物が提供される。
【0004】
いくつかの態様では、前記マクロファージを本明細書に記載の化合物と接触させることを含む、マクロファージに薬剤を送達する方法が提供される。
【0005】
いくつかの態様では、治療的有効量の本明細書に記載の化合物を対象に投与することを含み、活性成分が治療剤である、対象におけるがんを治療する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】FITCで標識された候補CD206
+指向性分子の図的表現である。
【
図2】MMAEで標識された候補CD206
+指向性分子の図的表現である。
【
図3】テモゾロミド(▲)及び生理食塩水ビヒクル対照(●)と比較した場合の、0.5mg/ml(○)、5mg/ml(■)、及び50mg/ml(□)の3つの異なる濃度での標的5の影響を示すグラフである。
【
図4】シクロデキストリン骨格、及び潜在的ペイロードを示す候補CD206
+指向性分子の図的表現である。
【
図5】金属イオンキレート剤を担持している候補CD206
+指向性分子の図的表現である。
【
図6】マウスが5mg/kgの標的5(○)、15mg/kgの標的5(▲)、または15mg/kgのパクリタキセル(x)のいずれかで処置されている、トリプルネガティブ乳癌の同系マウスモデルにおける腫瘍増殖を示すグラフである。
【
図7】生理食塩水を投与されたマウスと比較した、膠芽腫のU87頭蓋内モデルにおける標的5で処置されたマウスの生存率を示すグラフである。
【
図8A】GL261神経膠腫マウスモデルにおける様々な濃度の標的5の腫瘍体積に対する効果を示すグラフである。
【
図8B】GL261神経膠腫マウスモデルにおける様々な濃度の標的5の腫瘍体積変化率に対する効果を示すグラフである。
【
図8C】GL261神経膠腫マウスモデルにおける様々な濃度の標的5の体重に対する効果を示すグラフである。
【
図9】同系マウス結腸癌モデルにおける腫瘍体積に対する標的5の効果を示すグラフである。
【
図10】標的-7が、腫瘍に対する特異性がより高く、毒性がより低い可能性があることを示すMRI画像である。
【
図11A】造影後の腫瘍と選択組織の信号強度比を示すグラフである。
【
図11B】群ごとの信号対雑音比(SNR)の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、単球、マクロファージ及びCD206を発現する他の細胞(樹状細胞等)、特に、疾患部位に構築される細胞を、グルカン骨格に結合させた標的部分を使用して標的とする化合物に関する。本明細書で開示される化合物は、好ましくは、グルカン骨格、標的指向性部分、標的指向性部分リンカー、ペイロード、及び任意選択でペイロードリンカーを含む。本発明はまた、そのような化合物及び組成物を作製する方法も提供する。本発明はまた、グルカン骨格に結合させた標的部分を含む化合物を使用する、診断方法及び治療方法も提供する。
【0008】
化学的定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」とは、特に明記しない限り、指定された数の炭素原子(すなわち、C1-C10は、1~10個の炭素原子を意味する)を有する、飽和した直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐の一価炭化水素鎖またはその組み合わせを指し、かつ含む。特定のアルキル基は、1~20個の炭素原子を有するもの(「C1-C20アルキル」)、1~10個の炭素原子を有するもの(「C1-C10アルキル」)、6~10個の炭素原子を有するもの(「C6-C10アルキル」)、1~6個の炭素原子を有するもの(「C1-C6アルキル」)、2~6個の炭素原子を有するもの(「C2-C6アルキル」)、または1~4個の炭素原子を有するもの(「C1-C4アルキル」)である。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等のような基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」とは、アルキルと同じ残基であるが、二価を有するものを指す。特定のアルキレン基は、1~20個の炭素原子を有するもの(「C1-C20アルキレン」)、1~10個の炭素原子を有するもの(「C1-C10アルキレン」)、6~10個の炭素原子を有するもの(「C6-C10アルキレン」)、1~6個の炭素原子を有するもの(「C1-C6アルキレン」)、1~5個の炭素原子(「C1-C5アルキレン」)、1~4個の炭素原子(「C1-C4アルキレン」)または1~3個の炭素原子(「C1-C3アルキレン」)を有するものである。アルキレンの例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、イソプロピレン(-CH2CH(CH3)-)、ブチレン(-CH2(CH2)2CH2-)、イソブチレン(-CH2CH(CH3)CH2-)、ペンチレン(-CH2(CH2)3CH2-)、ヘキシレン(-CH2(CH2)4CH2-)、ヘプチレン(-CH2(CH2)5CH2-)、オクチレン(-CH2(CH2)6CH2-)等のような基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、第17族系の原子番号9~85を有する元素を指す。好ましいハロ基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のラジカルが挙げられる。残基が、複数のハロゲンで置換されている場合、結合しているハロゲン部分の数に対応する接頭辞を使用して、例えば、ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリール等と言及される場合があり、これは、2つ(「ジ」)または3つ(「トリ」)のハロ基で置換されたアリール及びアルキルを指すが、それらは必ずしも同じハロゲンでなくてもよく、したがって、4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲内である。各水素がハロ基で置き換えられているアルキル基は、「ペルハロアルキル」と呼ばれる。好ましいペルハロアルキル基は、トリフルオロメチル(-CF3)である。同様に、「ペルハロアルコキシ」とは、ハロゲンが、アルコキシ基のアルキル部分を構成する炭化水素の各Hに取って代わっているアルコキシ基を指す。ペルハロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ(-OCF3)である。
【0011】
「カルバマート」とは、-O-C(=O)-NH-という基を指す。他に明記しない限り、カルバマート基の窒素原子は、非置換である(すなわち、水素原子を持つ)と理解される。
【0012】
「オキソ」とは、=Oという部分を指す。
【0013】
「任意選択で置換された」とは、特に明記しない限り、基が、非置換の場合もあれば、またはその基について列挙された置換基のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12)の、同じであっても異なっていてもよい置換基により置換されている場合もあることを意味する。一実施形態では、任意選択で置換された基は、1つの置換基を有する。別の実施形態では、任意選択で置換された基は、2つの置換基を有する。別の実施形態では、任意選択で置換された基は、3つの置換基を有する。別の実施形態では、任意選択で置換された基は、4つの置換基を有する。いくつかの実施形態では、任意選択で置換された基は、1~2つ、1~3つ、1~4つ、1~5つ、2~3つ、2~4つ、または2~5つの置換基を有する。一実施形態では、任意選択で置換された基は非置換である。
【0014】
化合物
本明細書で開示される化合物は、好ましくは様々な構成要素を含み、グルカン骨格、標的指向性部分、標的指向性部分リンカー、ペイロード、及び任意選択でペイロードリンカー等が含まれる。これらの構成要素の配置により、選択的にCD206+細胞を標的とし、かつ内在化される化合物が提供される。CD206+細胞により内在化され得ることにより、開示された化合物が、そのような細胞が集合する疾患部位にペイロードを送達することが可能になる。固形腫瘍がん及び肉芽腫性疾患は、多くの場合、CD206+細胞により構成される。本出願では、これらの疾患状態に集合するか、そうでなければそれらと関連するCD206+細胞を標的とするによって、固形腫瘍がんまたは肉芽腫性疾患の画像診断及び治療をするための、改善された組成物及び方法を記載する。ある特定の実施形態では、開示された化合物はまた、術中造影剤、MRI造影剤または放射線増感剤として機能すること、ならびに放射性医薬品を脳及び体内の原発性及び転移性のがん細胞に送達するよう機能することもできる。
【0015】
グルカン骨格
本明細書で記載される化合物は、主にC-1→C-6グリコシド結合によって連結されている複数のグルコースモノマーを含む直鎖、分岐状、または環状のオリゴ糖または多糖類である、グルカン骨格を含む。α-1,3結合またはα-1,4結合等の他のグリコシド結合も存在し得る。グルカン骨格は、グリコシド結合の位置が異なっているグルコースの重合体として定義される場合もある。グルカン骨格は、グルコースのアルファ異性体またはベータ異性体を含み得る。グルカン骨格の例としては、直鎖または分岐状の化合物であるデキストラン、及び環状グルカンであるシクロデキストリンが挙げられる。
【0016】
グルカン骨格は、グルコースモノマーの数によって部分的に決定される、質量及び分子量が異なり得る。いくつかの実施形態では、グルカン骨格は、分子量が1~30キロダルトン(kDa)の範囲であり得る。好ましい実施形態としては、約1kDa、3kDa、6kDa、10kDa、20kDa、または30kDaのグルカン骨格が挙げられる。いくつかの実施形態では、グルカン骨格は、分子質量が1モルあたり1,000~30,000グラム(g/mol)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、グルカン骨格は、数が5~167の範囲のグルコースモノマーを含有し得る。グルカン骨格は、直鎖、分岐状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。例えば、デキストランは、直鎖または分岐状のグルカン骨格の一例である。シクロデキストリンは、グルカン骨格の別の例である。本明細書で記載される骨格は、置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、置換シクロデキストリンは、疎水性、親水性、イオン化、非イオン化であるか、またはその任意の他の変形である、シクロデキストリン誘導体である。
【0017】
標的指向性部分
本明細書で記載される化合物は、グルカン骨格に結合させた標的指向性部分を含む。いくつかの実施形態では、標的指向性部分は、CD206指向性部分である。上記態様のいくつかの実施形態では、標的指向性部分は、CD206リガンドである。標的指向性部分は、CD206+細胞上の1つ以上のパターン認識受容体を標的とする、分子、化合物、構造、またはそれらの任意の組み合わせである。標的指向性部分は、C型レクチン受容体としても特徴付けられるパターン認識受容体を標的とし得る。好ましくは、標的指向性部分は、マンノース受容体であるCD206を標的とする。標的指向性部分は、1つ以上のCD206+細胞、特にCD206+の単球及びマクロファージを標的とし得る。いくつかの実施形態では、標的指向性部分は、CD206リガンドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態では、CD206リガンドは、マンノース、ガラクトース、コラーゲン、フコース、硫酸化N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、またはコンドロイチン硫酸の少なくとも一部を含む。好ましいCD206リガンドは、マンノース、そのD-異性体及びL-異性体、ならびにそれらのフラノース(5員環)及びピラノース(6員環)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、標的指向性部分は、グルカン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合している。(本明細書で言及される分子量ならびに受容体基質、結合手(leash)、及びデキストラン骨格に結合している診断/治療用部分の結合の数及び程度は、合成技術によって多少のばらつきが生じることから、一定量の担体分子の平均量を指すことに留意すべきである。)
【0019】
骨格に対する標的指向性リンカーの比
骨格サブユニットに対する標的指向性部分の密度は、直鎖及び分岐状の多糖類骨格での骨格サブユニットに対する標的指向性部分の比を使用して提示される。置換度(d.s.)は、環状骨格上の標的指向性部分の密度を伝えるために使用される。グルカン骨格に対する標的指向性部分の比は、骨格サブユニットまたはサブユニットを置換する標的指向性部分の数を指す。例えば、1:7または1対7という比は、グルカン骨格内の7つのグルコースサブユニットごとに1つの標的指向性部分があることを意味する。d.s.は、単位塩基あたりの置換基または置換位置の平均数を表す。例えば、0.9のd.s.は、1つの骨格サブユニットが、平均0.9の標的指向性部分で置換されていることを意味する。いくつかの実施形態では、標的指向性部分と骨格サブユニットの比は、約1:5~約1:25である。いくつかの実施形態では、標的指向性部分と骨格サブユニットの比は、約1:6~約1:19である。いくつかの実施形態では、d.s.は、約0.1~約7である。いくつかの実施形態では、d.s.は、約0.5~5である。
【0020】
標的指向性リンカー
標的指向性リンカーは、グルカン骨格を標的指向性部分に接続する切断可能または切断不可能なリンカーである。切断可能なリンカーは、酵素(例えば、プロテアーゼ)、温度の変化、pHの変化、化学的刺激、またはそれらの任意の組み合わせによる切断が可能である。切断可能なリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含み得る。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼによる切断が可能である。
【0021】
標的指向性リンカーは、カルバマート基を含み得る。いくつかの実施形態では、標的指向性リンカーは、カルバマート基及び鎖部分を含み、ここで、カルバマート基は骨格モノマーに接続されており、鎖部分は、カルバマート基と標的指向性部分を接続する。本明細書では、カルバマート官能基は、有機化学の分野に由来する平易かつ通常の意味を持つ。いくつかの実施形態では、標的指向性リンカーの鎖部分は、任意選択で置換されたアルキレン鎖、任意選択で置換されたCO-アルキレン鎖、ペプチド鎖、ポリマー鎖、ならびに、O原子、S原子、及び任意選択で置換されたN原子からなる群から選択されるヘテロ原子、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の単位を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C1-C12アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C3-C7アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C6アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C6アルキレン鎖である。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は、オキソ、OH、NH2、SH、C1-C12アルキル、C1-C12ハロアルキル、O(C1-C12アルキル)、O(C1-C12ハロアルキル)、NH(C1-C12アルキル)、NH(C1-C12ハロアルキル)、N(C1-C12アルキル)2、N(C1-C12ハロアルキル)2、S(C1-C12アルキル)、S(C1-C12ハロアルキル)、C(O)OH、C(O)O(C1-C12アルキル)、C(O)O(C1-C12ハロアルキル)、C(O)NH(C1-C12アルキル)、C(O)NH(C1-C12ハロアルキル)、C(O)N(C1-C12アルキル)2、C(O)N(C1-C12ハロアルキル)2、C(O)S(C1-C12アルキル)、及びC(O)S(C1-C12ハロアルキル)からなる群から選択される1つ以上の置換基により置換されている。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は非置換である。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上のCD206指向性部分は、リンカーを介してグルカン骨格に結合している。リンカーは、骨格部分の約1~約50%において結合していてよい。
【0023】
活性成分
活性成分は、診断目的、治療目的、またはそれらの組み合わせに使用され得る分子または化合物である。活性成分は、ペイロードとも呼ばれる。活性成分は、細胞毒性薬剤、造影剤、またはそれらの組み合わせであり得るか、またはそれらを含み得る。
【0024】
診断用ペイロード
いくつかの実施形態では、活性成分は、造影剤である。いくつかの実施形態では、造影剤は、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアナート、フルオレセイン-6-イソチオシアナート、6-カルボキシフルオレセイン、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアナート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロードール誘導体、テトラメチルローダミン及びテトラエチルローダミン、ジフェニルジメチルローダミン及びジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロリド、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、DyLight650、IRDye6SO、IRDye680、DyLight750、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 750、IR800CW、ICG、緑色蛍光タンパク質、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalamal、ECFP、Cerulean、CyPet、YFP、Citrine、Venus、YPet、ガドリニウムキレート、酸化鉄粒子、超常磁性酸化鉄粒子、超微小常磁性粒子、マンガンキレート、ガリウム含有剤、64Cuジアセチルビス(N4-メチルチオセミカルバゾン)、18F-フルオロデオキシグルコース、18F-フッ化物、3’-デオキシ-3’-[18F]フルオロチミジン、18F-フルオロミソニダゾール、テクネチウム99m、タリウム、ヨウ素、硫酸バリウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、造影剤は、標的指向性薬剤、細胞毒性薬剤、またはマクロファージ極性化剤等の1つ以上の追加の薬剤に結合されている。
【0025】
治療用ペイロード
いくつかの実施形態では、活性成分は治療剤である。治療剤は、マクロファージが介在する疾患の治療に有用であることが知られている任意の化合物であり得る。治療剤としては、ドキソルビシン等の化学療法剤;抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、及びイソニアジド)、抗ウイルス剤、抗真菌剤、及び抗寄生虫剤等の抗感染剤;免疫アジュバント;ステロイド;DNA、RNA、RNAi、siRNA、CpGまたはポリ(I:C)等のヌクレオチド;ペプチド;タンパク質;または銀、ガリウムもしくはガドリニウム等の金属が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
ある特定の実施形態では、治療剤は、抗生物質、抗結核抗生物質(イソニアジド、ストレプトマイシン、またはエタンブトール等)、抗ウイルス薬または抗レトロウイルス薬、例えば、逆転写阻害剤(ジドブジン等)またはプロテアーゼ阻害薬(インジナビル等)、リーシュマニア症に対する効果のある薬物(アンチモン酸メグルミン等)、を含むかまたはそれからなる群から選択される抗菌薬である。ある特定の実施形態では、治療剤は、アモキシシリン、アンピシリン、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系(例えば、ストレプトマイシン)、マクロライド系(例えば、エリスロマイシン及びその類縁体)、クロラムフェニコール、イベルメクチン、リファマイシン系及びポリペプチド抗生物質(例えば、ポリミキシン、バシトラシン)及びズウィッターマイシン等の抗菌活性剤である。ある特定の実施形態では、治療剤は、イソニアジド、ドキソルビシン、ストレプトマイシン、及びテトラサイクリンから選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、治療剤は、マクロファージ及び周辺のマクロファージ環境の組織を殺傷する能力を有する高エネルギー殺傷同位体を含む。好適な放射性同位体としては、210/212/213/214Bi、131/140Ba、11/14C、51Cr、67/68Ga、153Gd、99mTc、88/90/91Y、123/124/125/131I、111/115mIn、18F、105Rh、153Sm、67Cu、166Ho、177Lu、186Re及び188Re、32/33P、46/47Sc、72/75Se、35S、182Ta、127/129/132Te、65Znならびに89/95Zrが挙げられる。
【0028】
他の実施形態では、治療剤は、Bi、Ba、Mg、Ni、Au、Ag、V、Co、Pt、W、Ti、Al、Si、Os、Sn、Br、Mn、Mo、Li、Sb、F、Cr、Ga、Gd、I、Rh、Cu、Fe、P、Se、S、Zn及びZrからなる群から選択されるが、これらに限定されない非放射性種を含む。
【0029】
なおさらなる実施形態では、治療剤は、細胞増殖抑制剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗増殖剤、チューブリン結合剤、ホルモン及びホルモン拮抗薬、アントラサイクリン系薬、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞傷害性ヌクレオシド、プテリジン薬、ジイネン、ポドフィロトキシン、毒性酵素、ならびに放射線増感薬からなる群から選択される。より具体的な例として、治療剤は、テモゾロミド、メクロレタミン、トリエチレンホスホルアミド、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、トリアジコン、ニトロソウレア化合物、アドリアマイシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン、イソニアジド、インドメタシン、ガリウム(III)、68ガリウム(III)、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ミトラマイシン、ストレプトニグリン、ジクロロメトトレキサート、マイトマイシンC、アクチノマイシン-D、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル、フロキシウリジン、フトラフール、6-メルカプトプリン、シタラビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、エトポシド、リン酸エトポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシン、ロイロシン、タキソール、タキサン、シトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、テノポシド(tenoposide)、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、リシンサブユニットA、アブリン、ジフテリア毒素、ボツリヌス菌、シアンギノシン(cyanginosin)、サキシトキシン、志賀毒素、破傷風、テトロドトキシン、トリコテセン、ベルコロゲン(verrucologen)、コルチコステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン剤、アンドロゲン、アロマターゼ阻害薬、カリケアマイシン、エスペラマイシン、及びジネミシンからなる群から選択される。
【0030】
治療剤がホルモンまたはホルモン拮抗薬である実施形態では、治療剤は、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、メドロプロゲステロン(medroprogesterone)、ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、テストステロン、及びアミノグルテチミドからなる群から選択され得る。
【0031】
治療剤がプロドラッグである実施形態では、治療剤は、より活性な細胞傷害性|細胞毒性薬剤遊離薬物へと変換され得る、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、(-ラクタム含有プロドラッグ、任意選択で置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、任意選択で置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシネム(fluorocytosinem)、及び5-フルオロウリジンプロドラッグからなる群から選択され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、活性成分は、細胞毒性薬剤であるか、または細胞毒性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、細胞毒性薬剤は、化学療法剤、抗チューブリン剤、DNA修飾剤、または低分子干渉リボ核酸である。いくつかの実施形態では、細胞毒性薬剤は、アウリスタチン、ドラスタチン、アウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、ジメチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニン-p-フェニレンジアミン(AFP)、5-ベンゾイル吉草酸-アウリスタチンEエステル(AEVB)、アウリスタチンEB(AEB)、アンサミトシン、イブレルタンシン(ivlertansine)/エムタンシン(DMI)、ラブタンシン/ソラブタンシン(DM4)、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、及びピロロベンゾジアゼピンからなる群から選択される。
【0033】
ペイロードリンカー
ある特定の実施形態では、活性成分またはペイロードは、グルカン骨格に直接結合される。いくつかの実施形態では、活性成分は、リンカーを介してグルカン骨格に接続されている。リンカーは、切断可能であっても切断不可能であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療剤は、生分解性リンカーを介して結合される。いくつかの実施形態では、生分解性リンカーは酸感受性であり、例えば、ヒドラゾンリンカーである。酸感受性リンカーの使用により、薬物は細胞内に輸送されることができ、細胞の実質的に内部での薬物の放出を可能にする。いくつかの実施形態では、ペイロードリンカーは、Val-Citリンカーである。
【0034】
ペイロードリンカーは、カルバマート基を含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロードリンカーは、カルバマート基及び鎖部分を含み、ここで、カルバマート基は骨格モノマーに接続されており、鎖部分は、カルバマート基と活性成分を接続する。本明細書では、カルバマート官能基は、有機化学の分野に由来する平易かつ通常の意味を持つ。いくつかの実施形態では、ペイロードリンカーの鎖部分は、任意選択で置換されたアルキレン鎖、任意選択で置換されたCO-アルキレン鎖、ペプチド鎖、ポリマー鎖、ならびに、O原子、S原子、及び任意選択で置換されたN原子からなる群から選択されるヘテロ原子、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の単位を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C1-C12アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C3-C7アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C6アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C6アルキレン鎖である。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は、オキソ、OH、NH2、SH、C1-C12アルキル、C1-C12ハロアルキル、O(C1-C12アルキル)、O(C1-C12ハロアルキル)、NH(C1-C12アルキル)、NH(C1-C12ハロアルキル)、N(C1-C12アルキル)2、N(C1-C12ハロアルキル)2、S(C1-C12アルキル)、S(C1-C12ハロアルキル)、C(O)OH、C(O)O(C1-C12アルキル)、C(O)O(C1-C12ハロアルキル)、C(O)NH(C1-C12アルキル)、C(O)NH(C1-C12ハロアルキル)、C(O)N(C1-C12アルキル)2、C(O)N(C1-C12ハロアルキル)2、C(O)S(C1-C12アルキル)、及びC(O)S(C1-C12ハロアルキル)からなる群から選択される1つ以上の置換基により置換されている。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は非置換である。
【0035】
二次的ペイロード及びリンカー
本明細書で開示される化合物は、標的指向性、診断用、及び治療用のペイロードに加えて、グルカン骨格に結合させて追加の機能的能力を付加することができる二次薬剤を含めることを包含し得る。典型的には、二次ペイロードは、標的指向性部分を標的指向性リンカーに結合させるために使用した方法と同様の方法でリンカーに結合される。
【0036】
二次ペイロードは、例えば、画像診断、治療、または他の目的のための、追加の薬剤を包含することができる。具体的には、ある実施形態では、治療剤と造影剤の組み合わせをグルカン骨格に連結させて、診断機能と治療機能を組み合わせることができる。別の実施形態では、システインまたはリジン等の様々なアミノ酸をリンカーに結合させて、分子を標的に架橋することができる。
【0037】
二次ペイロードリンカーは、グルカン骨格を二次ペイロード部分に接続する切断可能または切断不可能なリンカーである。切断可能なリンカーは、酵素(例えば、プロテアーゼ)、温度の変化、pHの変化、化学的刺激、またはそれらの任意の組み合わせによる切断が可能である。切断可能なリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含み得る。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼによる切断が可能である。
【0038】
二次ペイロードリンカーは、カルバマート基を含み得る。いくつかの実施形態では、二次ペイロードリンカーは、カルバマート基及び鎖部分を含み、ここで、カルバマート基は骨格モノマーに接続されており、鎖部分は、カルバマート基と二次薬剤を接続する。本明細書では、カルバマート官能基は、有機化学の分野に由来する平易かつ通常の意味を持つ。いくつかの実施形態では、二次ペイロードリンカーの鎖部分は、任意選択で置換されたアルキレン鎖、任意選択で置換されたCO-アルキレン鎖、ペプチド鎖、ポリマー鎖、ならびに、O原子、S原子、及び任意選択で置換されたN原子からなる群から選択されるヘテロ原子、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の単位を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C1-C12アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C3-C7アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C6アルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖部分は、C6アルキレン鎖である。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は、オキソ、OH、NH2、SH、C1-C12アルキル、C1-C12ハロアルキル、O(C1-C12アルキル)、O(C1-C12ハロアルキル)、NH(C1-C12アルキル)、NH(C1-C12ハロアルキル)、N(C1-C12アルキル)2、N(C1-C12ハロアルキル)2、S(C1-C12アルキル)、S(C1-C12ハロアルキル)、C(O)OH、C(O)O(C1-C12アルキル)、C(O)O(C1-C12ハロアルキル)、C(O)NH(C1-C12アルキル)、C(O)NH(C1-C12ハロアルキル)、C(O)N(C1-C12アルキル)2、C(O)N(C1-C12ハロアルキル)2、C(O)S(C1-C12アルキル)、及びC(O)S(C1-C12ハロアルキル)からなる群から選択される1つ以上の置換基により置換されている。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は非置換である。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つ以上の二次ペイロード部分は、リンカーを介してグルカン骨格に結合している。リンカーは、骨格部分の約1~約50%において結合していてよい。
【0040】
診断方法
開示された化合物を使用した、疾患または状態のインビボでの検出のための診断方法が開示される。ある特定の実施形態では、開示された化合物には検出が含まれる。本明細書で使用される場合、「検出可能な標識または部分」という用語は、原子、同位体、または化学構造であって、(1)単体分子への結合能があるもの、(2)ヒトまたは他の哺乳類対象に対して無毒であるもの、(3)直接的または間接的に検出可能な信号、特に、測定することができるだけではなく、その強度が検出可能部分の量に関連する(例えば、比例する)信号を提供するものを意味する。信号は任意の好適な手段で検出され得、これには、分光学的、電気的、光学的、磁気的、聴覚的、電波信号、または触診による検出手段が含まれる。
【0041】
検出標識としては、蛍光分子(別名 蛍光色素及びフルオロフォア)、化学発光試薬(例えば、ルミノール)、生物発光試薬(例えば、ルシフェリン及び緑色蛍光タンパク質(GFP))、金属(例えば、金ナノ粒子)、及び放射性同位体(ラジオアイソトープ)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な検出標識は、画像診断法の選択に基づいて選択することができる。例えば、検出標識は、光学的画像診断用の近赤外蛍光色素、MRI画像診断用のガドリニウムキレート、PETまたはSPECT画像診断用の放射性核種、またはCT画像診断用の金ナノ粒子であり得る。
【0042】
開示された化合物には、光学的画像診断に有用な検出可能な標識が含まれ得る。光学的画像診断には多くの手法を使用することができる。その様々な方法は、造影源としての蛍光、生物発光、吸収または反射率に応じて異なる。フルオロフォアは、特定波長のエネルギーを吸収し、別の(ただし同様に特定の)波長でエネルギーを再放射する化合物または部分である。ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、近赤外(NIR)フルオロフォアである。好適なNIRとしては、VivoTag-S.RTM.680及び750、Kodak X-SIGHT Dyes and Conjugates、DyLight 750 and 800 Fluors、Cy 5.5 and 7 Fluors、Alexa Fluor 680 and 750 Dyes、及びIRDye 680 and 800CW Fluorsが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、光安定性であり、かつ放射が明るい量子ドットも光学的画像診断で使用することができる。ある特定の実施形態では、既存の手術用顕微鏡は、光源にフィルターを追加することによって、「緑」チャンネルでの使用に適合させることができる。
【0043】
開示された化合物には、核医学画像診断に有用な検出可能な標識(例えば、放射性核種)が含まれ得る。核医学画像診断は、体内の放射性同位体の使用及び検出を伴う。核医学画像診断技術には、シンチグラフィー、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、及びポジトロン断層撮影(PET)が含まれる。これらの技術では、放射性同位体からの放射線をガンマカメラで捉えて、2次元画像(シンチグラフィー)または3次元画像(SPECT及びPET)を形成することができる。
【0044】
開示された化合物を分子イメージングと併用して、がん細胞、例えば、転移しており、そのため体の別の臓器または組織に広がっているがん細胞を、生体内イメージング装置を使用して検出することができる。したがって、対象でのがん細胞を検出するための非侵襲的方法が提供される、開示された化合物を含有する医薬組成物を対象に投与し、その後、イメージング装置を使用して開示された化合物の生体内分布を検出することを伴う。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、実質内に注入される。他の実施形態では、医薬組成物は、循環血中に注入される。
【0045】
開示された化合物は、がんの術中検出に使用することもできる。例えば、開示された化合物を術中リンパ系マッピング(ILM)に使用して、がん患者でのリンパ排液パターンを追跡し、リンパ組織における潜在的な腫瘍からの流出及びがんの広がりを評価することができる。これらの実施形態では、開示された化合物は腫瘍内に注入され、リンパ系を通るそれらの動きが分子イメージング装置を使用して追跡される。別の例として、開示された化合物は、がん細胞の存在について、例えば、腫瘍辺縁及び腫瘍隣接組織の術中評価に使用することができる。これは、例えば、腫瘍を効果的に切除し、腫瘍の近位でのがんの広がりを検出する際に有用であり得る。いくつかの実施形態では、開示された化合物は、血液腫瘍関門を通過することができる。いくつかの実施形態では、開示された化合物は、ペイロードを、血液脳関門を越えて漏出することなく血液腫瘍関門を越えて脳腫瘍内に運ぶことができる。
【0046】
がん細胞を検出するための開示された画像診断方法は、本明細書では非侵襲的と呼ばれる。非侵襲的とは、開示された化合物を、対象の体外から検出することができることを意味する。これは、一般に、信号検出装置が対象の体外に位置することを意味する。しかしながら、開示された化合物は、対象の体内からか、または対象の胃腸管の内側からか、または対象の呼吸器の内側からも検出することができること、及びそのような画像診断方法もまた具体的に企図されることが理解される。例えば、術中検出の場合、信号検出装置を対象の体内でも体外でも位置させることができる。このことから、非侵襲的画像診断方法は、手術等の侵襲的手技と共にか、それと同時か、またはそれと組み合わせて使用することができることを理解されるべきである。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法を使用して、対象のがんを診断するか、または対象の特定の臓器のがんを検出することができる。この方法の特に有用な側面は、リンパ節等の二次的組織または臓器内、または腫瘍辺縁もしくは近傍での転移がん細胞について検索する能力である。したがって、開示された方法は、乳癌等のがんを有するかまたは有することが疑われる患者のリンパ節の状態を評価するために使用することができる。これにより、組織または臓器を生検する、例えば、リンパ節を除去する必要がなくなり得る。いくつかの実施形態では、方法は、開示された化合物を患者に投与すること、及び化合物がリンパ節の細胞に結合したかどうかを検出することを伴う。これらの実施形態のいくつかでは、リンパ節は、腋窩リンパ節(ALN)であり得る。他の実施形態では、リンパ節は、センチネルリンパ節であり得る。さらなる実施形態では、腋窩リンパ節とセンチネルリンパ節の両方を、リンパ節の細胞への薬剤の結合について評価することができる。
【0048】
方法はまた、他の治療方法または診断方法と共に使用することもできる。例えば、方法は、例えば、がん切除を誘導するために、手術中に使用することもでき、これは、本明細書では「術中誘導」または「画像誘導手術」と呼ばれる。特定の実施形態では、方法は、患者のリンパ節のがん細胞を除去または破壊するための治療的処置に使用することができる。例えば、開示された化合物を患者に投与することができ、がん性組織(例えば、リンパ節)の位置を決定し、画像誘導手術を使用して除去することができる。別の好ましい実施形態では、方法は、腫瘍切除後の顕微鏡的断端陽性を予防するための治療的処置に使用することができる。例えば、開示された化合物を患者に投与することができ、腫瘍周辺のがん細胞の位置を決定することができ、画像誘導手術を使用して腫瘍が完全除去される。これらの実施形態では、医師は、患者に開示された化合物を投与し、イメージング装置を使用して、がん細胞を検出し、組織の切除を誘導し、すべてのがんが確実に除去されるようにする。さらに、イメージング装置を術後に使用して、がんの残存または再発がないかどうかを決定することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、開示された化合物を治療用化合物に連結することができる。治療用の化合物または部分は、がん細胞を直接殺傷もしくは阻害することができるもの(例えば、シスプラチン)であっても、またはがん細胞を間接的に殺傷もしくは阻害することができるもの(例えば、光源を使用して加熱した場合にがん細胞を殺傷または破壊する金ナノ粒子)であってもよい。治療用の化合物または部分ががん細胞を間接的に殺傷または阻害するものである場合には、方法はさらに、その化合物または部分を「活性化させる」か、そうでなければその抗がん活性を実施するために適切な操作を行うステップを含む。特定の実施形態では、薬剤に結合している治療用の化合物または部分は金ナノ粒子であり得、患者への投与及びがん細胞への薬剤の結合の後、金ナノ粒子は、例えば、レーザー光を使用して加熱され、近傍のがん細胞を殺傷または破壊する(光熱アブレーション)。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、対象からがんを検出して切除するための、開示された化合物を使用する画像誘導手術、それに続く、残存するがん細胞を殺傷するための治療用化合物に連結された同じかまたは異なる開示された化合物の使用を伴う。
【0050】
開示された方法のがんは、無秩序な増殖が進行している対象の任意の細胞であり得る。がんは、転移能を有する任意のがん細胞であり得る。例えば、がんは、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫、芽細胞腫、または胚細胞性腫瘍であり得る。開示された組成物を使用して検出することができるがんの代表的であるが非限定的な一覧としては、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、膀胱癌、脳腫瘍、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌等の肺癌、神経芽腫/膠芽腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、肝癌、黒色腫、口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌、結腸癌、子宮頸癌(cervical cancer)、子宮頸癌(cervical carcinoma)、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、上皮癌、腎癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血器癌、精巣癌、結腸及び直腸癌、前立腺癌、神経膠肉腫、カポシ肉腫、食道癌、肝細胞癌、ならびに膵癌が挙げられる。
【0051】
がんは、乳癌であり得る。乳管に由来する乳癌は乳管癌として知られ、乳化に乳汁を供給する小葉に由来するものは小葉癌として知られる。乳癌転移の一般的部位には、骨、肝臓、肺及び脳が含まれる。
【0052】
がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)であり得る。NSCLCは、小細胞肺癌(SCLC)以外のあらゆる種類の上皮性肺癌である。NSCLCの最も一般的な種類は、扁平上皮癌、大細胞癌、及び腺癌であるが、頻度の低い種類が他にいくつかあり、いずれの種類も、異常な組織学的バリアント及び混合細胞型の組み合わせとして発生し得る。
【0053】
治療方法
開示された化合物を使用して、疾患または障害を治療または予防する方法が提供される。開示された化合物は、CD206+発現細胞を標的とするために使用することができる。開示された化合物は、細胞内病原体(M.tuberculosis、F.tularensis、S.typhi)の治療のためにマクロファージを標的とするために使用することができる。開示された化合物は、腫瘍関連マクロファージを標的とするために使用することができ、例えば、がんを治療するために使用される。
【0054】
本明細書の組成物及び方法が使用され得るマクロファージ関連疾患及び他のCD206高発現細胞関連疾患としては、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性疾患、円形脱毛症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、動脈プラーク障害、喘息、アテローム性動脈硬化、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、多腺性自己免疫症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病/バロー同心円硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病(IgA腎症)、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、慢性静脈うっ血性潰瘍、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触性皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、II型糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、薬物誘発性狼瘡、円板状エリテマトーデス、湿疹、気腫、子宮内膜症、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンズ症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化肺胞炎(または特発性肺線維症)、胃炎、胃腸類天疱瘡、ゴーシェ病、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン-バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、心疾患、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠ヘルペス(別名 妊娠性類天疱瘡)、化膿性汗腺炎、細胞組織球症、ヒューズ・ストーヴィン症候群、低ガンマグロブリン血症、感染症(細菌性感染症を含む)、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性関節炎、炎症性腸疾患、炎症性認知症、間質性膀胱炎、間質性肺炎、若年性特発性関節炎(別名 若年性関節リウマチ)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルポイド肝炎(別名 自己免疫性肝炎)、エリテマトーデス、リンパ腫様肉芽腫症、マジード症候群、がんを含む悪性腫瘍(例えば、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫及び黒色腫)、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラーフィッシャー症候群、混合性結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病(別名 急性痘瘡状苔癬状粃糠疹)、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(別名 デビック病)、神経性筋強直症、眼瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オルズ甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、回帰性リウマチ、PANDAS(streptococcusが関連した小児自己免疫性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、パーキンソン病様障害、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、末梢動脈疾患、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、再狭窄、レストレスレッグ症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、ロザイ・ドルフマン病、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、敗血症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病(成人期発症)、全身硬直症候群、脳卒中、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(別名「巨細胞動脈炎」)、血小板減少症、トロサ・ハント症候群)、移植(例えば、心臓/肺移植)拒絶反応、横断性脊髄炎、結核、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化型脊椎関節症、蕁麻疹様血管炎、血管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
開示された化合物には、治療剤が含まれ得、これには、細胞毒性薬剤、抗血管新生薬、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモン拮抗薬、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、または他の薬剤が含まれるが、これらに限定されない。開示された化合物には、化学療法剤、抗生物質、免疫アジュバント、結核を治療するために有用な化合物、ステロイド、ヌクレオチド、ペプチド、または上記のようなタンパク質が含まれ得る。
【0056】
ある特定の実施形態では、開示された化合物には、がんの治療または予防のための化学療法剤が含まれる。がんは、転移能を有する任意のがん細胞であり得る。例えば、がんは、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫、芽細胞腫、または胚細胞性腫瘍であり得る。開示された組成物を使用して治療または予防することができるがんの代表的であるが非限定的な一覧としては、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳腫瘍、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌等の肺癌、神経芽腫/膠芽腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、肝癌、黒色腫、口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌、結腸癌、子宮頸癌(cervical cancer)、子宮頸癌(cervical carcinoma)、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、上皮癌、腎癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血器癌、精巣癌、結腸及び直腸癌、前立腺癌、神経膠肉腫、カポシ肉腫、食道癌、肝細胞癌、ならびに膵癌が挙げられる。
【0057】
ある特定の実施形態では、開示された化合物は、関節リウマチ、狼瘡(SLE)、または血管炎等の自己免疫疾患、を治療するのに有効である。ある特定の実施形態では、開示された化合物は、クローン病、炎症性腸疾患、または膠原血管病等の炎症性疾患を治療するのに有効である。
【0058】
当業者は、開示された化合物を使用して、様々な種類の分子及び化合物(例えば、治療剤、検出標識、及びそれらの組み合わせ)を細胞または組織に送達できることを理解するであろう。
【0059】
一態様では、結核を治療することを必要とする対象に本明細書に記載の化合物を投与することを含む、結核を治療する方法が本明細書で提供される。
【0060】
別の態様では、マクロファージが介在する障害を診断及び治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載の化合物を投与すること、及びその対象の所定の位置で検出標識を検出することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0061】
別の態様では、マクロファージが介在する障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載の化合物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0062】
別の態様では、疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書の記載に従った化合物を投与することを含み、疾患が自己免疫性疾患、炎症性疾患、またはがんである、方法が本明細書で提供される。
【0063】
別の態様では、腫瘍関連マクロファージを標的とする方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載の化合物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0064】
別の態様では、化合物が、少なくとも1つの治療剤及び少なくとも1つの検出標識を含有する、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0065】
別の態様では、1つ以上のCD206指向性部分、1つ以上の治療剤、及び/または1つ以上の検出標識を結合させるためにリンカーが使用される、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0066】
別の態様では、マクロファージが介在する障害が結核及びリーシュマニア症からなる群から選択される、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0067】
別の態様では、疾患が関節リウマチである、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0068】
別の態様では、障害ががんである、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0069】
別の態様では、がんが、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫、芽細胞腫、黒色腫、または胚細胞性腫瘍である、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0070】
別の態様では、少なくとも1つのAが検出標識であり、検出標識がフルオロフォアである、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0071】
別の態様では、少なくとも1つのL1-Aがキレート剤を含む、本明細書に記載される方法のうちいずれかに従った方法が本明細書で提供される。
【0072】
投与
開示された化合物は、任意の好適な方法により投与することができる。開示された化合物は、標的組織(例えば、がん細胞が位置している可能性のある場所)に開示された化合物が到達するよう、実質内または循環血中に非経口投与することができる。開示された化合物は、腫瘍塊内またはそれに隣接して直接投与することができる。開示された化合物は、静脈内に投与することができる。さらに他の実施形態では、開示された化合物は、経口、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮で投与することができる。
【0073】
化合物の非経口投与は、使用される場合、一般的には注入を特徴とする。注入剤は、溶液または懸濁液のいずれかとしての従来の形態か、注入前の懸濁液の溶解に好適な固体形態か、またはエマルジョンとして調製することができる。非経口投与の改訂手法では、一定の投与量が維持されるよう、徐放性(slow release)または徐放性(sustained release)システムの使用を伴う。
【0074】
一般的な合成方法
ここで、本開示の組成物について、それらの一般的調製のための下記の例示的合成スキーム、及びそれに続く具体的実施例を参照にして説明する。当業者は、本明細書での様々な組成物を得るために、出発物質は、最終的に所望される置換基が必要に応じた保護の有無にかかわらず反応スキームを通じて存続して所望の生成物が得られるよう、好適に選択され得ることを認識するであろう。別法として、最終的に所望される置換基に代わりに、反応スキームを通じて存続し、必要に応じて所望の置換基で置き換えられ得る好適な基を用いることが必要であるかまたは望ましい場合がある。さらに、当業者は、ある特定の官能基(アミノ基、カルボキシ基、または側鎖基)を反応条件から保護するために保護基が使用され得ること、及びそのような基は、適切な場合に標準条件下で除去されることを認識するであろう。
【0075】
化合物の特定の異性体を得ること、またはそうでなければ反応生成物を精製することが所望される場合、中間体または最終生成物でクロマトグラフィー、再結晶及び他の従来の分離手法を使用してもよい。
【0076】
本明細書に記載される組成物を調製する一般方法は、以下の例示的な方法に示されている。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、スキームA1に示される手順に従って合成することができる。
【0078】
【0079】
【0080】
上記スキームに見られるように、グルカン化合物(デキストランまたはシクロデキストリン等)を活性化剤と反応させる。次いで、得られた活性化グルカン誘導体を適切な試薬と反応させて、標的指向性リンカーを介してグルカン骨格に結合させた標的指向性部分、及びペイロードリンカーを介してグルカン骨格に連結させた活性成分を導入することができる。当業者は、上記スキームが例示であること、ならびに様々な試薬及び合成ステップの順序は、意図される最終生成物を得るために必要に応じて変更可能であることを認識するであろう。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、例示の目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0082】
実施例1:FITCに結合させた被験化合物である標的3の構造及び合成
図1に示す標的3は、FITCペイロードに結合させたマンノシル化デキストラン骨格で構成された。デキストラン骨格へのマンノースの結合は、マンノース結合部位に対する標的指向性リガンドとして働き、FITCは、共焦点顕微鏡または外科用顕微鏡を使用した被験化合物の検出を可能にする。本明細書で提示されるデキストラン骨格は、分子量が約10kDaである。
【0083】
実施例2:CD206+マクロファージによるFITC結合薬物である標的3の内在化
経時的エンドサイトーシスアッセイを使用して、FITCに結合させた、標的指向性部分としてのマンノースを有するデキストラン骨格で構成されるコンストラクトである標的3のマクロファージ内在化を評価した。被験化合物が単に表面に結合しているのか、またはマクロファージにより内在化されているのかを解明することは、マクロファージが所望の薬物標的に到達する可能性を評価する上で重要であった。CD206+マクロファージ及びCD206発現を欠く細胞株のヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)(ATCC(登録商標)CRL-1573(商標))による取り込みを、共焦点顕微鏡を使用して34分間にわたりモニターした。抗体が標的3の取り込みを遮断するかどうかを決定するため、マクロファージ及びHEK293細胞の、抗体を用いないもの、及び抗CD206+抗体を発現しているものをアッセイに含めた。
【0084】
エンドサイトーシスアッセイ用のプレートを調製するため、1mg/mlのフィブロネクチン原液を、Ca+/Mg+のないPBSで10μg/mLに希釈した。次いで、20μLの希釈フィブロネクチン溶液を384ウェルプレート(Perkin Elmer LLC CellCarrier(商標)-384 Ultra Microplate)の各ウェルに加えた。プレート(複数可)を水平面に室温にて60分間置いてから、過剰なフィブロネクチン溶液を吸引した。フィブロネクチンでコートしたプレート(複数可)は、直ちに使用するかまたは層流ベンチ下で風乾させ、4℃で最大2週間保存した。
【0085】
採取したマクロファージ及びHEK293細胞をそれぞれ、各自の増殖培地中で160,000細胞/mL(4,000細胞/ウェル(25μL))の密度に希釈した。サイトカイン及びLPSが追加された。
【0086】
完全M1マクロファージ分化培地DXF。細胞(25μL)を所望のウェルに加え、一晩接着させた。
【0087】
翌朝、被験化合物である標的3をDMSOで希釈し、10段階3倍希釈系列を50μMの最高最終濃度にて使用してEcho 555 Liquid Handlerで所望のウェルに加えた。特定のウェルをDMSOのみで処理した。被験化合物を加えた直後、核染色Hoechstを、50μLの最終体積中1μg/mLの最終濃度で全プレートウェルに加えた。その後、細胞を加湿インキュベーター内で5%CO2を用いて37℃で10分間インキュベートした。
【0088】
プレートウェルをOpera Phenix(商標)ハイコンテントスクリーニングシステムでイメージングし、その際、20X水浸レンズを用いた共焦点イメージング、ウェルあたり9視野、及びHoechst及びAlexa 488フィルターを使用した。Hoechst添加の10分後、20分後、及び34分後にウェルを画像化した。
【0089】
画像をColumbus Image Data Storage and Analysis Systemで解析し、マクロファージ及びHEK293細胞の核及び細胞質における複合蛍光強度の定量的尺度を生成し、複合蛍光強度が、この場合は20,000RFU以上であるバックグラウンドレベルを超えている細胞の数を特定した。Microsoft Excelを使用して、マクロファージ及びHEK293細胞の定量データをグラフ形式で比較した。
【0090】
50μMの標的3とのインキュベーション後、標的3の内在化のパーセンテージを検出した。抗体の有無にかかわらず、10分後にマクロファージのほぼ100%が標的3を内在化しており、標的3が所望の薬物標的に到達したこと、及び抗CD206+抗体は化合物の取り込みを妨げないことが示された。細胞取り込みのこの平均パーセンテージは、34分間のアッセイ期間を通じて維持された。これに対し、HEK293細胞の両群による標的3の取り込みは、34分において26%未満であった。
【0091】
参照のために、10,000MWデキストランpHrodo(商標)グリーンの取り込みもマクロファージ及びHEK293細胞で評価した。結合と細胞内取り込みとでの解像度を考慮すると、pHrodo(商標)グリーンデキストランは酸性条件で蛍光を強く発するが、中性pHでは比較的非蛍光性である。pHrodo(商標)グリーンの内在化は経時的に増加し、17時間目には90%の取り込みに達した。HEK293細胞による取り込みは他の時点では検出できなかったが、17時間目に14%に達した。10分後の標的3のマクロファージ内在化と比較すると、同様のパーセンテージのヒトマクロファージがpHrodo(商標)グリーンを内在化するまでに17時間が経過した。
【0092】
実施例3:バリン-シトルリンリンカーにより毒素モノメチルアウリスタチンEに接続されているマンノシル化デキストランリガンドで構成される、標的化学療法剤である標的-5の構造及び合成
標的-5は、4つの構成要素(ABCD)からなる。マンノース結合部位指向性部分を形成するため、デキストラン骨格(A)をマンノシル化した(B)。標的指向性リガンドを構成する構成要素A及びBは、バリン-シトルリンリンカー(C)によって毒素(D)に接続されている。ここで、リンカーは、毒素モノメチルアウリスタチンE(MMAE)と標的指向性部分をつないでいる。代表的な標的5分子を
図2に示す。
【0093】
実施例4:標的-5による処置後のインビボでのU87-MG腫瘍体積の減少
膠芽腫のマウスモデルを使用して、バリン-シトルリンリンカーで毒素モノメチルアウリスタチンE(MMAE)に接続されているマンノシル化デキストラン骨格で構成される化学療法用コンストラクトである標的-5の抗腫瘍活性をインビボで評価した。U87-MG腫瘍を担持する胸腺欠損ヌードマウスにおいて、3つの異なる用量の標的-5を、膠芽腫の治療用にFDAに承認された化学療法剤であるテモゾロミド、及び陰性対照に対して評価した。
【0094】
マウス膠芽腫モデルを用意するため、4~6週齢の非近交系胸腺欠損ヌードマウス(Jackson Laboratories)の頭蓋にU87-MG(ATCC(登録商標)HTB-14(商標))細胞を注入した。頭蓋内注入の準備の際、イーグル最小必須培地(EMEM)+1×ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したウシ胎児血清でU87-MG細胞を10~14日間増殖させ、その後、コンフルエントな状態になった時点で1:5に分割した。37℃で約3~4分間、フラスコあたり3.0mlのTryp LE Expressを用いて約70%コンフルエントな状態にて細胞を組織培養フラスコから回収した。各75cm2フラスコに8mlの完全培地を加えてトリプシン活性を停止させ、離開した細胞を無菌の10mlストリペットで回収した。細胞を4℃、1,100RPMで4分間遠心分離にかけ、上清を吸引し、無菌の陽イオン含有1×PBSで細胞を2回洗浄した。次いで、細胞を1×PBSに再懸濁させた。ハミルトンシリンジを使用して、脳あたり、500,000細胞が含有される体積である5μlを頭蓋内に注入した。
【0095】
換気されたアニマルトランスファーステーション(ATS)の表面領域を外科処置領域として使用した。ATS表面は、その表面にKOPF定位固定装置及び手術器具を置く前に70%エタノールで滅菌した。手術に備えてマウスに麻酔をかけた。ケタミン-キシラジン混合物の滅菌生理食塩水を40μlにて腹腔内注入する前に、マウスの腹部をエタノールで拭いた。麻酔がかかったら、無菌アルコールプレップパッド(70%イソプロピルアルコール)で頭皮を拭いて準備した。手技中の潤いを保つために両眼に眼軟膏を塗布した。滅菌メスを使用して、長さが約1cmの矢状切開を頭上に実施した。その後、露出した頭蓋表面を滅菌綿棒アプリケーターを使用して洗浄し、乾燥させた。頭蓋骨が乾燥すると、ブレグマが見えるようになった。
【0096】
脳内腫瘍の確立では、無菌25ゲージシャープ針を使用して頭蓋に穿刺し、その後の腫瘍細胞の注入のために頭蓋に小さな穴を作った。ブレグマより右側3mm、冠状縫合より前方1mm、及び大脳皮質表面から深さ3mmを原点とする座標に細胞を脳内注入した。注入中の細胞の逆流を最小限に抑えるため、及び注入された細胞の大部分が脳表面から3mmに留まるよう小さなポケットを作るために、針を表面から3.5mmまで下げた。シリンジを、事前に開けた頭蓋の穴の上で頭蓋に対して垂直に置いてから、下げた。細胞懸濁液を毎分約1μl~1.5μlの速度でゆっくりと注入した。注入された腫瘍細胞の逆流を低減するため、針をさらに1分間所定の位置に保持してからゆっくりと抜く。
【0097】
乾いた滅菌綿棒を使用して、頭蓋を洗浄し、乾燥させた。滅菌鉗子を使用して、頭蓋全体で頭皮を引き寄せ、切開部に接着剤を加えた。その後、頭皮を洗浄し、トリプル抗生物質軟膏を切開全体に塗布した。術後は、マウスが麻酔から覚醒し、正常な活動が回復するまでモニターした。
【0098】
図3に示されるように、標的-5による処置では、ビヒクルで処置されたマウスと比較して腫瘍体積(mm
3)の大幅な減少がもたらされた。ビヒクル(A)、5mg/kgの標的-5(B)、及び50mg/kgの標的-5(C)で処置されたマウスから除去された腫瘍を
図3に示す。データは、標的-5の用量依存的な抗腫瘍活性を示唆している。標的-5の用量の10倍増加では、抗腫瘍活性の2倍増加がもたらされた。本研究の結果は、標的-5の抗腫瘍効果が、膠芽腫の治療に使用される標準的化学療法剤のテモゾロミドの効果と同等であったことを示している。
【0099】
実施例5:脳腫瘍実質の新生血管を伴うネットワークの術中イメージング及び標的化学療法剤送達を促進する修飾シクロデキストリンである標的-6の構造及び合成
図4に示されるように、標的-6は、シクロデキストリン骨格、標的指向性部分としてのマンノース、及び組織固定のためのリジンで構成される。標的-6は、FITCまたは別の蛍光部分に結合させると、脳腫瘍実質の新生血管を伴うネットワークの正確かつ特異的な可視化を可能にして、術中造影剤としての有用性を提供する。このコンストラクトはさらに、蛍光部分をリンカー及び毒素と差し替えることにより、標的化学療法剤として有用であり得る。重要なことには、標的-6は、異なる形状の骨格を有するが、依然として血液腫瘍関門を通過することができる。標的-6は、ペイロードを、血液脳関門を越えて漏出することなく血液腫瘍関門を越えて脳腫瘍内に運ぶことができる。
【0100】
実施例6:静脈内に注入された蛍光の標的-6シクロデキストリン化合物は脳腫瘍実質の新生血管を伴うネットワークを標的とする
マンノース及びリジンで修飾されたFITC標識シクロデキストリンである標的-6が脳腫瘍実質の新生血管を伴うネットワークを標的とするかどうかを決定するため、これをインビボで評価した。このネットワークは、修飾シクロデキストリンコンストラクトの標的である腫瘍関連マクロファージ血管擬態で構成される。術中造影剤としての標的-6の可能性を、実質における化合物の検出の程度によって評価した。これをさらに、FITCを細胞毒性化合物で差し替えた場合に提供される部位特異的薬物送達剤としてのコンストラクトの有用性を評価するための代替として使用した。術中造影剤としてのコンストラクトの有用性の決定には、標的-6の特異性及び注入から検出までの時間が重要であった。
【0101】
そのインビボでの有用性を評価するため、U87-MG腫瘍細胞を上記のように移植し、10~12日後、胸腺欠損ヌードマウスの尾静脈内に標的-6を50mg/ml(200~250μl)で静脈内注入し、循環させた。移植から10~12日後及び初回投与時に撮像した。イソフルラン、その後の頚椎脱臼によりマウスを安楽死させる前に、化合物を2~3分、全身循環させた。
【0102】
その後、脳を採取した。採取した脳を4%PFA/PBS中で4℃にて一晩固定した。翌朝、脳を4mlの1×PBSですすいだ後、15%ショ糖溶液に4℃で一晩静置した。翌朝、脳を35%ショ糖溶液に移し、そこで4℃にて一晩保存した。脳をOCTコンパウンド(optimal cutting temperature compound)に入れて凍結し、クリオスタットで60ミクロンの厚さの薄片にした。
【0103】
切片をPBSで3回洗浄した後、核をHoechst 33342で15~20分間、暗所、室温にて染色した。切片をPBSで3回洗浄し、褪色防止試薬(slowfade reagent)を1滴用いてポリ-L-リジン-コートされたフロストスライドに封入した。二次物質なしの適切な対照をすべての実験で実施した。
【0104】
すべての画像は、共焦点レーザー走査型顕微鏡(LSM 700または710、Carl Zeiss)でPlan-Apochromat 20X/0.8、Plan-Apochromat 63X/I 4 Oil DIC、CApochromat 40X/1 2W Korr UV-VIS対物レンズ(Carl Zeiss)を使用して集められ、ZEN 2010ソフトウェア(Carl Zeiss)で処理された。他の波長での走査を回避するため、シーケンシャルレーザー発振モードで走査を実施した。ZEN 2010を使用して三次元再構成を生成した。Zeiss 710 レーザー走査型共焦点顕微鏡を20X対物レンズ(1μmのステップサイズ)、または63X対物レンズ(0.3μmのステップサイズ)を使用してZ-スタックを取得しし、Zenソフトウェアで構築した(4実験、実験あたりn=3~5)。
【0105】
Hoechst核染色で処理した脳を青色蛍光チャンネルで画像処理して注入後の標的-6の検出を実施した。FITCで標識された標的-6は、脳腫瘍実質の新生血管を伴うネットワークを標的としたことから、術中薬剤としてのその潜在的な有用性が示された。周辺組織のオフ標的イメージングによる歪みのない、腫瘍に特化した可視化は、前記腫瘍のサイズ及び位置を決定する上で不可欠である。
【0106】
さらに、腫瘍へのほぼ即時の局在化及び腫瘍組織での長時間滞留(24時間)により、手術の方法の幅が広がった。フルオレセインは時間依存性であり、ときに外科医が腫瘍まで到達する頃には色素が洗い流されているか、または色素は腫瘍特異的ではなく、その分子量の低さゆえに漏出している。
【0107】
治療剤としての標的-6の可能性に関しては、その腫瘍組織内への隔離は、FITCを細胞毒性化合物で置き換えることにより利用され得る。標的-6を使用した腫瘍組織への細胞毒性薬剤の標的送達により、周辺の正常な脳組織への送達が低減され、それによりオフ標的毒性が減少するであろう。
【0108】
参照のために、U87-MG腫瘍を担持する胸腺欠損マウスにフルオレセイン(FITC)のみを静脈内に注入した。FITCは、体循環の5分後に腫瘍特異性をほとんど示さなかった。静脈内注入の2時間後、FITCは腫瘍及び周辺組織から実質的に洗い流されていた。本明細書に開示の分子の特異性と比較して、マウスでの腫瘍に対するFITCの特異性の欠如は、術中イメージングのためのFITCの送達における改善を明確に示している。
【0109】
実施例7:DOTA及びガドリニウムを含む標的磁気共鳴イメージング用薬剤である標的-7の合成
標的指向性要素、デキストラン骨格、及びDOTAキレート剤で構成されるガドリニウム標識コンストラクトを合成して、MRIを使用して検出することができる、腫瘍関連マクロファージに対する特異性のある化合物を生成した。例示的な分子を
図5に示す。
【0110】
実施例8:DOTA及びルテチウム-177を含む標的放射線治療剤の合成
腫瘍関連マクロファージ指向性要素、デキストラン骨格、及びDOTAキレート剤で構成される、
図5に示すものと同様のルテチウム-177標識コンストラクトを合成して、固形腫瘍及び転移性腫瘍に対する活性のある放射線治療剤を生成した。
【0111】
原発腫瘍及び転移がん細胞のサイズ及び位置を決定するための標的-7のMRI検出に続いて、標的ルテチウム標識コンストラクトを利用した放射線治療が提供される。その後の標的-7の投与により、腫瘍(複数可)のサイズ及び転移細胞の程度に関する放射線治療の有効性の評価が可能になる。
【0112】
実施例9:標的-5による処置後のインビボでの4T1 トリプルネガティブ乳癌の腫瘍体積の減少
トリプルネガティブ乳癌のマウスモデルを使用して、標的-5の抗腫瘍活性をインビボで評価した。BALB/cマウスにおいて、2つの異なる用量の標的-5を、FDAに承認された化学療法剤であるパクリタキセル、及びビヒクル対照に対して評価した。
【0113】
具体的には、試験0日目、6週齢の雌BALB/cマウス(Charles River Laboratories)に1匹あたり1×105の4T1トリプルネガティブ乳癌細胞を第3乳腺脂肪体領域に接種した。無作為化を実施し、試験開始時の腫瘍体積は平均162mm3、体重は17.6~18.4gm/マウス(n=10/群)の範囲であった。
【0114】
標的-5を0.9%生理食塩水で製剤化し、マウスを5mg/kgまたは15mg/kgのいずれかの標的-5で尾静脈注入により週2回処置した。投与する量は体重で補正した。パクリタキセルを15mg/kgの用量で投与し、週2回静脈内に行った。
【0115】
図6に示されるように、標的-5による処置では、ビヒクルで処置されたマウスと比較して、腫瘍体積(mm
3)の大幅な減少がもたらされた。標的-5のいずれかの投与量で処置されたマウスはまた、パクリタキセルで処置されたマウスと比較して腫瘍体積の減少を経験し、15mg/kgの標的-5を投与されたマウスが最も低い腫瘍量を経験した。これらのデータは、標的-5の用量依存的な抗腫瘍活性を示唆している。さらに、これらのデータは、この4T1トリプルネガティブ乳癌モデルにおいて、標的-5の抗腫瘍効果は、腫瘍体積を減少させるのにパクリタキセルよりも効果的であったことを示唆している。
【0116】
実施例10:膠芽腫のU87頭蓋内モデルにおいて標的-5は生存期間を延長する
標的-5で処置されたマウスの生存率を決定するため、マウスに頭蓋内腫瘍を移植した。具体的には、試験0日目、全マウスにU-87 MG細胞(0.5×106細胞/動物)を頭蓋内接種した。U87MG細胞は、DMEM/10%FBSで培養しておいた。
【0117】
換気されたアニマルトランスファーステーションの滅菌した表面領域で手術を実施した。マウスを1.5~2%イソフルランで麻酔した。麻酔がかかったら、頭皮を無菌アルコールプレップパッドで拭いた。Puralube Vet眼軟膏を両眼に塗布した。滅菌メスを使用して、頭部の中心まで長さが約1cmの矢状切開を行い、頭蓋を露出させた。頭蓋を滅菌綿棒アプリケーターを使用して洗浄し、乾燥させ、ブレグマが見えるようにした。無菌25ゲージ針を使用して定位座標に頭蓋を通る穿頭孔を開け、以下の座標を使用して、0.5×106のU87MG腫瘍細胞を5ulの体積で注入した(ブレグマより右側3mm、冠状縫合より前方1mm、及び深さ3mm。針を3.5mmの深さまで導入した後、0.5mm抜いてポケットを作り、注入中の細胞の逆流を最小限に抑えた。各細胞移植の前に細胞懸濁液を再懸濁させ、細胞を毎分約1μl~1.5μlの速度でゆっくりと注入した。注入された腫瘍細胞の逆流を低減するため、針をさらに1分間所定の位置に保持してからゆっくりと抜いた。腫瘍細胞移植後、乾いた滅菌綿棒を使用して、頭蓋を洗浄し、乾燥させた。滅菌鉗子を使用して、切開部を組織接着剤で閉じた。頭皮を洗浄し、トリプル抗生物質軟膏を切開全体に塗布した。術後のブプレノルフィン-SRを鎮痛剤として1mg/kg(1mL/kg)で使用した。術後、マウスが正常な活動に戻るまで、暖かいケージ(循環水温熱パッドを使用)に入れてマウスをモニターした。
【0118】
試験9日目、無作為化のために体重を測定し、マウスを体重によって3群(群あたり動物10匹)に層別化した、群間で同様の平均体重が得られるようにした。無作為化後、被験物質の投与(生理食塩水または標的-5)を開始した。
【0119】
それぞれの動物に個々の体重に基づいて被験物質を投与した。試験0日目、各群のマウスの平均体重は24.7gmであった。被験物質を、側尾静脈への静脈内かまたは経口で週2回、45日間投与した。薬物は処置のたびに新鮮に製剤化した。
【0120】
動物の体重を週3回測定した。(0日目と比較して20%を超える)体重減少は安楽死となる。約10%の体重減少が観察された場合は、動物に0.1mLの生理食塩水を連日皮下投与し、ケージ内にペトリ皿に載せた粉末にして湿らせた食餌及びハイドロジェルを与える。必要に応じて、マウスに0.1mLを経口で与える。
【0121】
マウスを苦痛の徴候について毎日確認し、IACUCガイドラインの基準を満たす場合は安楽死させた。試験45日目、残っている全マウスをイソフルランの過剰投与によって安楽死させた。生存データをPrismソフトウェアによって分析した。
【0122】
図7に示されるように、標的-5(5mg/kg)を投与されたマウスでは、生理食塩水を投与されたマウスよりも生存のパーセンテージが高かった。これらのデータは、標的-5が腫瘍体積を抑制することができるだけではなく、標的-5により膠芽腫の頭蓋内モデルにおける生存率が高まることを示唆している。
【0123】
実施例11:標的-5による処置後のインビボでの神経膠腫の腫瘍体積の減少
免疫能の正常な神経膠腫マウスモデルを使用して、標的-5の抗腫瘍活性をインビボで評価した。C57BL/6マウスにおいて、3つの異なる用量の標的-5を、FDAに承認された化学療法剤であるテモゾロミド及びビヒクル対照に対して評価した。
【0124】
具体的には、雌C57BL/6マウス(Jackson Laboratories)に、生存率が96%及び腫瘍の生着率が100%の5×106のGL261細胞(マイコプラズマ試験陰性)を接種した(播種前に細胞継代(7回))。腫瘍をその平均腫瘍体積が95.1mm3に到達するまで増殖させ、マウスは平均体重が21.0グラムであった。
【0125】
標的-5を0.9%生理食塩水で製剤化し、マウスを5mg/kg、7.5mg/kg、または10mg/kgのいずれかの標的-5で尾静脈注入により週2回処置した。投与する量は体重で補正した。テモゾロミドを、10%DMSOの0.9%塩化ナトリウム溶液で製剤化し、マウスを12.5mg/kgの用量の強制経口投与により週2回処置した。各群あたりn=10。
【0126】
図8A及び
図8Bに示されるように、標的-5による処置では、ビヒクルで処置されたマウスと比較して腫瘍体積(mm
3)が用量依存的に抑制された。21日目、ビヒクルによる処置の平均腫瘍体積=1687mm3、SD=928.9mm3;5mg/kgの標的5による処置の平均腫瘍体積=440.5mm3、SD=159.2mm3;7.5mg/kgの標的5による処置の平均腫瘍体積=275.1mm3、SD=120.7mm3;10mg/kgの標的5による処置の平均腫瘍体積=117.2mm3、SD=89.6mm3;テモゾロミドによる処置の平均腫瘍体積=302.6mm3;SD=99.7。これらのデータは、この免疫能の正常なマウス神経膠腫モデルにおいて、標的-5により提供される防御がテモゾロミドにより提供される防御より大きいことを示している。標的-5及びテモゾロミドは、腫瘍体積の拡大を抑制したが、いずれの処置群でもマウスの体重に大幅な変化はなかった(
図8C)。
【0127】
実施例12:標的-5による処置後のインビボでのMC38結腸癌腫瘍体積の減少
結腸癌のマウスモデルを使用して、標的-5の抗腫瘍活性をインビボで評価した。C57BL/6マウスにおいて、2つの異なる用量の標的-5を、FDAに承認された化学療法剤であるゲムシタビン及びビヒクル対照に対して評価した。
【0128】
具体的には、試験0日目、8-~12週齢のC57BL/6雌マウス(Charles River Laboratories)に、5×105のMC38腫瘍細胞含有0%マトリゲルをマウスあたり0.1mLの体積で側腹部皮下に接種した。腫瘍が80~120mm3の平均サイズに達したらペアマッチを実施し、その時点で処置が開始された。
【0129】
標的-5を0.9%生理食塩水で製剤化し、マウスを5mg/kgまたは10mg/kgのいずれかの標的-5により週2回、静脈内処置し、その後、15日目の休薬日の後、腹腔内に送達した。投与する量は体重で補正した。ゲムシタビンを40mg/kgの用量で投与し、3日に1回、4サイクルで腹腔内に送達した。腫瘍をキャリパーで週2回測定した。体重を5日間毎日測定し、その後は試験終了まで隔週で測定した。(n=10/群)。試験のエンドポイントは、腫瘍体積が1500mm3に達した時とした。
【0130】
図9に示されるように、標的-5による処置では、ビヒクルで処置されたマウスと比較して、腫瘍体積(mm
3)の減少がもたらされた。ゲムシタビンは、標的-5のいずれの投与量で処置されたマウスよりも腫瘍体積を減少させるように見えたが、標的-5の反復投与が、マウスの尾の腫脹により投与経路を静脈内から腹腔内に切り替えることになったために行われなかった。データは、10mg/kgの標的-5を投与されたマウスは、5mg/kgの標的-5を投与されたマウスよりも小さい腫瘍体積を経験したことを示しており、これは、このモデルにおいて、標的-5の用量依存的な抗腫瘍活性を示唆している。
【0131】
実施例13:標的-7は、頭蓋内及び皮下の両U87MG腫瘍の信頼性の高い増強作用を示す
nu/nuマウスで頭蓋内に移植されたU87MG腫瘍と皮下に移植されたU87MG腫瘍の両方において、標的-7と、標準治療ガドリニウムMRI造影剤であるMagnevistとを比較するデータを作成した。頭蓋内モデルプロトコルは上記のとおりである。具体的には、50,000のU87細胞を、以前に記載の座標と同じ座標に移植した(n=6)。皮下腫瘍モデルでは、4×106細胞を50ulの体積で右側腹内に注入した(n=6)。
【0132】
MRI画像診断を、腫瘍細胞の移植後14日目と18日目の間に時間差取得を実施した(
図10)。画像は、標的-7が、血液腫瘍関門を通過するが血液脳関門は通過しないことを示している。標的-7はまた、正常組織への漏出がMagnevistよりも少ないことを示している。頭蓋内腫瘍の場合は、T2強調(造影前)及びT1強調(造影剤投与の前後)でマウスを画像化した。皮下モデルでは、マウスを、造影剤投与の前と後の両方でT1強調シーケンスにより画像化した。
図11Aは、造影後の腫瘍と選択組織の信号強度比を示す。
【0133】
造影前の関心領域(ROI)を皮下腫瘍について決定し、造影後のROIと比較した。頭蓋内試験の場合、腫瘍をROIとして輪郭を取り、対側半球を比較対照として使用した。VivoQuantソフトウェアを使用してROI分析を実施した。T1 RARE造影前(全対象)、T1 RARE造影後(全対象)、T2のスキャンで、横断スライスごとに腫瘍ROIを手作業で分割した。
【0134】
皮下注入されたマウスの場合、雑音ROIは、上記のすべてのスキャンについて、動物の外側、ただし有効視野(FOV)内に固定容量のシリンダーを置いて生成された。頭蓋内に注入されたマウスの場合、雑音ROIは、手作業で描写した同様容量のプリズムとして表された。頭蓋内に注入されたマウスの場合、正常組織ROIは、腫瘍組織を含有していない脳の領域内に、腫瘍ROIの反射を使用して生成された。
図11Bは、T1腫瘍造影後とT1腫瘍造影前の信号対雑音比(SNR)を示す。左のグラフは、FOV内に組織を含まないバックグラウンド領域の強度として定義される「雑音」を示す。右のグラフは、腫瘍を含まない脳組織の強度として定義される「雑音」を示す。MRIに基づく腫瘍体積は、各分割スライスの面積にスライス厚さを掛けて計算した。
【国際調査報告】