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特表2023-538163電池、電池モジュール、電池パックおよび電気設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電池、電池モジュール、電池パックおよび電気設備
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/46 20210101AFI20230831BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20230831BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230831BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20230831BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230831BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230831BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230831BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230831BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230831BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230831BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230831BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/457
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/414
H01M50/489
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 B
H01M4/36 E
H01M4/36 D
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550822
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2021108971
(87)【国際公開番号】W WO2023004633
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】黄 玉平
(72)【発明者】
【氏名】林 明峰
(72)【発明者】
【氏名】馬 雲建
(72)【発明者】
【氏名】喩 鴻鋼
(72)【発明者】
【氏名】李 彦輝
(72)【発明者】
【氏名】張 建平
(72)【発明者】
【氏名】代 宇
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲いぃ▼東
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE07
5H021EE09
5H021EE15
5H021HH01
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA19
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
本出願は、電池、電池モジュール、電池パックおよび電気設備を提供する。前記電池は、正極、セパレータおよび負極を含み、前記セパレータが、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの第1表面に形成される第1塗布層と、前記ベースフィルムの第2表面に形成される第2塗布層と、を含み、前記第1塗布層は、第1極性物質を含み、前記第1極性物質と正極用接着剤との間には水素結合が形成され、前記第2極性物質と負極用接着剤および/または負極活性成分との間には水素結合が形成される。本出願は、水素結合の形成により、セパレータと正極および負極との間の接着力を高め、ベアセルのサイクル膨張率を制限し、電池のハイレート放電性能、サイクル性能を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、
前記電池は、正極、セパレータおよび負極を含み、前記セパレータが、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの第1表面に形成される第1塗布層と、前記ベースフィルムの第2表面に形成される第2塗布層と、を含み、
前記第1塗布層は、第1極性物質を含み、前記第1極性物質が、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系の物質のうちの一種または複数種を含み、前記第1極性物質と前記正極の正極用接着剤との間には水素結合が形成され、
前記第2塗布層は、第2極性物質を含み、前記第2極性物質が、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系の物質のうちの一種または複数種を含み、前記第2極性物質と前記負極の負極用接着剤および/または負極活性成分との間には水素結合が形成される
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記第1塗布層と前記正極との間の剥離力が0.075N以上であり、任意で、0.075N~0.125Nであり、
前記第2塗布層と前記負極との間の剥離力が0.075N以上であり、任意で0.075N~0.15Nである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは(80~100):1であり、
前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wと前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは(32~50):1である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wとの比であるw/wは1:(1~1.3)であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wは80%~90%であり、前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mは0.9%~1.2%であり、
前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wは80%~90%であり、前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mは2%~3%である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記第1極性物質は、ポリオキシエチレンおよびポリアクリルアミドを含み、そのうち、前記ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1が(2~6):1であり、
前記第2極性物質は、ポリエチレンイミンおよびポリオキシエチレンを含み、そのうち、前記ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2が(2~6):1である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記第1塗布層は、第1増強剤を含み、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは(5~9):1であり、
前記第2塗布層は、第2増強剤を含み、前記第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは(5~9):1である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kは、前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量k以下であることを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの比である値k/kは(0.8~1):1であることを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項10】
前記第1増強剤または第2増強剤は、ポリビニリデンジフルオリド、アルギル酸ナトリウムのうちの一種または複数種であり、
前記正極用接着剤は、ポリフッ化ビニリデンを含み、前記負極用接着剤は、スチレンブタジエンゴム、アルギル酸ナトリウムのうちの1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項11】
前記負極活性成分は、ケイ素炭素混合物を含み、
前記ケイ素炭素混合物において、ケイ素の粒径が0.1~0.5μmであり、炭素が人造黒鉛と天然黒鉛との混合物であり、
前記ケイ素炭素混合物の前記負極の膜層における含有量が95%-97%である
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記第1塗布層と前記第2塗布層との質量比が1:(1~1.5)であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の電池。
【請求項13】
前記第1塗布層は、第1塗布層スラリーを利用して製造されるものであり、前記第1塗布層スラリーは、前記第1極性物質、前記第1増強剤および第1溶剤を含み、
前記第1塗布層スラリーの粘度は8000mpa.s~12000mpa.sであり、
前記第2塗布層は、第2塗布層スラリーを利用して製造されるものであり、前記第2塗布層スラリーは、前記第2極性物質、前記第2増強剤および第2溶剤を含み、
前記第2塗布層スラリーの粘度は5000mpa.s~20000mpa.sである
ことを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項14】
前記正極は、正極材料としてのLiNiCoMnを含み、そのうち、x+y+z=1、x=0.5~0.9であり、任意で、x=0.5~0.7、x=0.8~0.9であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電池。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電池を含むことを特徴とする電池モジュール。
【請求項16】
請求項15に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする電池パック。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電池、請求項15に記載の電池モジュールまたは請求項16に記載の電池パックのうちの1つ以上を含むことを特徴とする電気設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池の技術分野に属し、特に、電池、電池モジュール、電池パックおよび電気設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の用途の多様化に伴い、二次電池は、水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電力システムや、電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事用機器、航空、宇宙などのさまざまな分野で広く応用されている。二次電池が大きな発展を遂げたので、エネルギー密度、グループマージン(group margin)、サイクル/レート性能および安全性などに対する要求も高くなっている。
【0003】
また、セパレータは、電池の構成部品の1つであり、正極と負極の接触による内部の短絡を効果的に防止することができる。しかしながら、従来のセパレータは、正極または負極との間に水素結合による接続が形成されず、正極または負極との間に物理的な接触のみが存在するので、ベアセルが膨張しやすくなり、セルの成形に不利である。そのため、従来の電池は、まだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電池の総合性能(ハイレート放電性能、サイクル性能)をさらに高める電池を提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本出願は、電池、電池モジュール、電池パックおよび電気設備を提供する。
【0006】
本出願の第1局面は、電池を提供する。前記電池は、正極、セパレータおよび負極を含み、前記セパレータが、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの第1表面に形成される第1塗布層と、前記ベースフィルムの第2表面に形成される第2塗布層と、を含み、前記第1塗布層は、第1極性物質を含み、前記第1極性物質が、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系の物質のうちの一種または複数種を含み、前記第1極性物質と前記正極の正極用接着剤との間に水素結合が形成され、前記第2塗布層は、第2極性物質を含み、前記第2極性物質が、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系の物質のうちの一種または複数種を含み、前記第2極性物質と前記負極の負極用接着剤および/または負極活性成分との間に水素結合が形成される。
【0007】
本出願において、水素結合はX-H-Yにより表され、X、Yはそれぞれ独立でN、O、Fから選択される1つである。正極用接着剤(-Xを含む)と第1極性物質(-YHを含む)との間に水素結合が形成されやすい。同様に、負極用接着剤および/または負極活性成分(-HXを含む)と第2極性物質(-YHを含む)との間にも水素結合が形成されやすい。そのため本出願では、水素結合を利用することで、セパレータと正極および負極との間の接着力を高めることができるので、ベアセルの加工過程における膨張および複数回サイクル後のサイクル膨張率を制限できる。これによって、電池のハイレート放電容量を向上させ、リチウムイオンの輸送経路を縮め、電池のサイクル性能を高めることができる。
【0008】
任意の実施形態において、前記第1塗布層と前記正極との間の剥離力は0.075N以上であり、任意で0.075N~0.125Nであり、前記第2塗布層と前記負極との間の剥離力は0.075N以上であり、任意で0.075N~0.15Nである。剥離力は、セパレータと正極および負極との間の接着力の大きさを反映できる。剥離力を適切な範囲内に抑えることにより、ベアセルが加工過程およびサイクル過程において膨張しにくくなり、セパレータと正極、負極と緊密に接触し、電池のハイレート放電能力が強くなる。
【0009】
任意の実施形態において、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは(80~100):1であり、前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wと前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは(32~50):1である。w/mおよびw/mを適切な範囲内に抑えることにより、電池性能、コストの最適化を両立でき、電池のハイレート放電容量およびサイクル性能を高めることができる。
【0010】
任意の実施形態において、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wとの比であるw/wが1:(1~1.3)である。w/wを適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの両側の張力が均一になり、張力の不均一による電池内部の短絡のリスクを低減できるとともに、電池のサイクル性能を高めることができる。
【0011】
任意の実施形態において、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wは80%~90%であり、前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mは0.9%~1.2%であり、前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wは80%~90%であり、前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mは2%~3%である。上記パラメータを適切な範囲内に抑えることにより、ハイレート放電性能およびサイクル性能を両立することができる。
【0012】
任意の実施形態において、前記第1極性物質は、ポリオキシエチレンおよびポリアクリルアミドを含み、そのうち前記ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1は(2~6):1であり、前記第2極性物質は、ポリエチレンイミンおよびポリオキシエチレンを含み、そのうち前記ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2は(2~6):1である。第1極性物質では、ポリオキシエチレンに少量のポリアクリルアミド長鎖分子を混合することで、電池のサイクル安定性を向上させることができる。第2極性物質では、極性が強いポリエチレンイミンに少量の低コストのポリオキシエチレンを加えると、両者の間にも水素結合が形成されるので、第2極性物質との間の接着力をさらに増加させ、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能をさらに高めることができる。
【0013】
任意の実施形態において、前記第1塗布層は、第1増強剤を含み、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは(5~9):1であり、前記第2塗布層は、第2増強剤を含み、前記第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは(5~9):1である。セパレータにおける第1極性物質と第1増強剤の比、第2極性物質と第2増強剤の比を適切な範囲内に抑えることにより、第1増強剤と第1極性物質との間および第2増強剤と第2極性物質との間にそれぞれ水素結合が形成されるので、ベアセルが加工過程により緊密に圧密され、充放電を複数回繰り返したあとのベアセルのサイクル膨張率が低くなり、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を高めることができる。
【0014】
任意の実施形態において、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kは、前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量k以下である。k/kを適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの両側の張力が均一になり、張力の不均一による電池内部の短絡を防止できるとともに、電池のサイクル性能を高めることができる。
【0015】
任意の実施形態において、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは(0.8~1):1である。第1塗布層および第2塗布層における増強剤の質量含有量の間の比を適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの安定性を向上させることができるとともに、充放電過程においてリチウムイオン輸送の動力学的性能に対する影響を小さくすることができ、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0016】
任意の実施形態において、前記第1増強剤または第2増強剤は、ポリビニリデンジフルオリド、アルギル酸ナトリウムのうちの一種または複数種であり、前記正極用接着剤は、ポリフッ化ビニリデンを含み、前記負極用接着剤は、スチレンブタジエンゴム、アルギル酸ナトリウムのうちの1つ以上を含む。
【0017】
任意の実施形態において、前記負極活性成分は、ケイ素炭素混合物を含み、前記ケイ素炭素混合物において、ケイ素の粒径が0.1~0.5μmであり、炭素が人造黒鉛と天然黒鉛との混合物であり、前記ケイ素炭素混合物の前記負極膜層における含有量が95%-97%である。ケイ素の粒径を適切な範囲内に抑えることにより、電池のサイクル性能を高めることができ、また、ケイ素炭素混合物の前記負極膜層における含有量を適切な範囲内に抑えることにより、電池のハイレート充放電性能を実現することができる。
【0018】
任意の実施形態において、前記第1塗布層と前記第2塗布層との質量比が1:(1~1.5)である。第1塗布層および第2塗布層の塗布量を適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの張力が均一になり、張力の不均一による短絡を防止できるとともに、電池のサイクル性能を高めることができる。
【0019】
任意の実施形態において、前記第1塗布層は、第1塗布層スラリーを利用して製造されるものであり、前記第1塗布層スラリーは、前記第1極性物質、前記第1増強剤および第1溶剤を含み、前記第1塗布層スラリーの粘度は8000mpa.s~12000mpa.sであり、前記第2塗布層は、第2塗布層スラリーを利用して製造されるものであり、前記第2塗布層スラリーは、前記第2極性物質、前記第2増強剤および第2溶剤を含み、前記第2塗布層スラリーの粘度は5000mpa.s~20000mpa.sである。第1塗布層スラリーおよび第2塗布層スラリーの粘度をそれぞれ適切な範囲内に抑えることにより、第1塗布層スラリーまたは第2塗布層スラリーのベースフィルムへの塗布プロセスを最適化することができ、塗布効果を改善することができる。また、セルの一致性を保つことでき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0020】
任意の実施形態において、前記正極は、正極材料としてのLiNiCoMnを含み、x+y+z=1、x=0.5~0.9であり、任意で、x=0.5~0.7、x=0.8~0.9である。本出願のセパレータは、ハイニッケル正極材料を含むベアセルのサイクル膨張率への改善効果がとても顕著であり、特に、本出願のセパレータは、ニッケル含有量x=0.5~0.7の正極材料を含むベアセルのサイクル膨張率への改善効果がとても顕著であるので、ハイニッケル電池のハイレート放電性能およびサイクル性能をより効果的に高めることができる。
【0021】
本出願の第2局面は、本出願の第1局面の電池を含む電池モジュールを提供する。
【0022】
本出願の第3局面は、本出願の第2局面の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0023】
本出願の第4局面は、本出願の第1局面の電池、本出願の第2局面の電池モジュールまたは本出願の第3局面の電池パックのうちの少なくとも1つを含む電気設備を提供する。
【0024】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0025】
本出願の第1極性物質と正極用接着剤との間に水素結合が形成されるので、セパレータと正極との接着力を高めることができる。第2極性物質と負極用接着剤および/または負極活物質との間に水素結合が形成されるので、セパレータと負極との接着力を高めることができる。第1極性物質と第1増強剤との間に水素結合が形成されるので、セパレータの第1塗布層とベースフィルムとの間の接着力を高めることができる。第2極性物質と第2増強剤との間に水素結合が形成されるので、セパレータの第2塗布層とベースフィルムとの間の接着力を高めることができる。したがって、本出願によって、ベアセルの加工過程における膨張およびベアセルのサイクル過程におけるサイクル膨張率を制限でき、ベアセルの成形に寄与でき、ベアセルがより緊密になり、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、セパレータにおける極性物質と正極および負極との間に水素結合が形成される反応原理の模式図である。
図2図2は、本出願の実施例1~4および比較例1~3の赤外線状態の模式図である。
図3図3は、本出願の一実施形態の二次電池の模式図である。
図4図4は、図3に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図5図5は、本出願の一実施形態の電池モジュールの模式図である。
図6図6は、本出願の一実施形態の電池パックの模式図である。
図7図7は、図6に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図8図8は、本出願の一実施形態の二次電池を電源とする電気設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本出願の電池、電池モジュール、電池パックおよび電気設備の実施形態を具体的に説明する。なお、不要な部分の説明は省略される。例えば、周知技術に対する詳細な説明や、同一構造に対する説明は省略される場合がある。これは、説明が簡潔ではなくなることを避け、当業者が容易に理解できるようにするためである。また、図面および以下の説明は、当業者に本出願を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
【0028】
本発明に開示された「範囲」は、下限値および上限値により定義される。所定範囲は、下限値および上限値を選択することにより定義される。選択された下限値および上限値は、特定範囲の限界を定義する。このように定義された範囲は、限界値を含む場合があるし、限界値を含まない場合があり、任意に組み合わせてなるものである。すなわち、任意の下限と任意の上限との組み合わせで範囲を定義することが可能である。例えば、特定パラメータについて、60~120および80~110の範囲が挙げられた場合、60~110および80~120の範囲も予測可能なものであると理解されるべきである。また、下限値が1および2が挙げられ、上限値が3、4、および5が挙げられた場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5のいずれかの範囲が予測可能なものであると理解される。本出願では、別段の明記がない限り、数値範囲「a~b」は、実数aと実数bの間の実数の任意の組み合わせの省略表現である。たとえば、数値範囲「0~5」は、明細書に記載の「0~5」の間のすべて実数を含み、「0~5」がこれらの数値の組み合わせの省略表現だけである。また、パラメータは、2以上の整数で表される場合、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることを意味する。
【0029】
別段の明記がない限り、本出願のすべての実施形態および選択可能な実施形態を組み合わせて新たな技術案とすることが可能である。
【0030】
別段の明記がない限り、本出願のすべての技術的特徴および選択可能な技術的特徴を組み合わせて新たな技術案とすることが可能である。
【0031】
別段の明記がない限り、本出願のすべてのステップは、順に実行されてもよいし、ランダムに実行されてもよい。順に実施されることが好ましい。例えば、方法がステップ(a)とステップ(b)とを含む場合、該方法は、ステップ(a)とステップ(b)の順に実行されたり、ステップ(b)とステップ(a)の順に実行されたりすることを含む。例えば、上記方法は、さらにステップ(c)を含み得る。この場合、ステップ(c)を任意に上記方法に加えることが可能であり、ステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(c)の順に実行されたり、ステップ(a)、ステップ(c)、ステップ(b)の順に実行されたり、ステップ(c)、ステップ(a)、ステップ(b)の順に実行されたりすることを含む。
【0032】
別段の明記がない限り、本出願の「含む」および「含有」の使用は、オープンエンド形式と解釈されることが可能であるし、クローズエンド形式と解釈されることも可能である。例えば、「含む」および「包含」は、列挙されていない他の組成を含むまたは含有すると解釈されることが可能であるし、列挙された組成のみを含むまたは含有すると解釈されることも可能である。
【0033】
別段の明記がない限り、本出願において用語「または」の使用は、広義的な意味を有する。例えば、フレーズ「AまたはB」は、「A、B、またはAとB」を意味する。より具体的に、Aが成立(または存在)、Bが不成立(または非存在)である場合、Aが不成立(または非存在)、Bが成立(または存在)である場合、または、AとBがいずれも成立(または存在)である場合は、いずれも、「AまたはB」という条件を満たす。
【0034】
リチウムイオン電池製造の長期経験により、本出願の発明者らは、製造プロセスにおいて、正極、セパレータ、負極を巻回し圧密して、ベアセルを形成し、ベアセルが製造プロセスでは圧密したものの、一定時間を経ると圧密が緩む傾向があり、ベアセルが膨張してしまうことを見出した。また、サイクル過程において、負極活性材料自体、例えば黒鉛の格子が大きくなり、それに従い黒鉛シートの間の層間距離が長くなり、それによりベアセルの厚さが厚くなるので、ベアセルが膨張してしまうことも見出した。
【0035】
上記の2つのベアセル膨張の原因でベアセルが膨張すると、気泡が生じるので、セル内部の構造の界面安定性に影響し、電解液が極板の縁部まで押され、リチウム析出の問題が発生してしまう。また、ベアセルが膨張すると、セルのグループマージンが小さくなり、アルミニウムケースが押圧され変形することがある。この場合、電池のサイクル性能が下降し、サイクル減衰が早くなり、ハイレート放電性能が低下してしまう。
【0036】
数多くの実験および研究により、発明者らは、ベアセルの膨張による電池性能への影響を抑えるために、以下の手段を考える。その1つとして、セパレータのベースフィルムの表面に極性物質を塗布し、極性物質と正極用接着剤、負極用接着剤または負極活物質との間に水素結合を形成することで、セパレータと正極、負極との間の接着力を高める。もう1つとして、極性物質に増強剤を入れ、セパレータの接着力を高める。発明者らは、上記2つの方法の作用をともに発揮することに着目し、セパレータに対して総合的な改質作業を行うことにより、2つの方法の役割を十分に利用して、セパレータと正極、負極との接着力を著しく向上させる電池を設計した。さらに、ベアセルの加工過程における膨張、および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率を低減させることができたので、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を大幅に向上することができた。
【0037】
電池
【0038】
本出願の一実施形態では、本出願が電池を提供する。
【0039】
前記電池は、正極、セパレータ、負極および電解質を含み、前記セパレータが、ベースフィルム、前記ベースフィルムの第1表面に形成される第1塗布層、および前記ベースフィルムの第2表面に形成される第2塗布層を含む。
【0040】
前記第1塗布層は、第1極性物質を含み、前記第1極性物質が、ポリオレフィンアミド(Polyolefin-amide)系、ポリオレフィンイミド(Polyolefin-imide)系、ポリオキシドオレフィン(Polyoxide-olefin)系、ポリウレタン系、ポリウレア系の物質のうちの一種または複数種を含み、前記第1極性物質と前記正極の正極用接着剤との間に水素結合が形成される。
【0041】
前記第2塗布層は、第2極性物質を含み、前記第2極性物質が、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系の物質のうちの一種または複数種を含み、前記第2極性物質と前記負極の負極用接着剤および/または負極活性成分との間に水素結合が形成される。
【0042】
本出願のセパレータの第1塗布層は、第1極性物質を含む所定の厚さを有する構造である。第1塗布層は、第1極性物質を介して正極用接着剤と確実に接着することができるので、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率の増加を防止することができる。
【0043】
さらに、例えば、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系などのような第1極性物質がいずれも極性官能基を含むので、極性官能基と正極用接着剤との間に形成された水素結合により、第1塗布層および正極との間の接着力を高めることができるとともに、第1極性物質自体も接着剤であり、それにより第1塗布層および正極との間の接着力をさらに高めることができる。このため、上記第1極性物質における極性官能基、および第1極性物質自体が接着剤である2つの作用により、第1塗布層および正極との接着をより確実にすることができる。
【0044】
具体的に、本出願の第1極性物質は、YH基を含み、YがN、O、Fから選択される1つである。正極用接着剤は、X基を含み、XがN、O、Fから選択される1つである。X基を含む正極用接着剤は、本出願の第1極性物質におけるYH基との間に水素結合X-H-Yを形成できるので、本出願の第1塗布層と本出願の正極との接着をより確実にすることができる。より具体的に、図1を参照しながら、正極用接着剤がFを含む場合を例として説明する。正極用接着剤がFを含むので、正極用接着剤と第1極性物質(-OH)との間に水素結合が形成されやすくなる。
【0045】
本出願のセパレータの第2塗布層は、第2極性物質を含む所定の厚さを有する構造である。第2塗布層は、第2極性物質を介して負極用接着剤および/または負極活物質と確実に接着することができるので、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率の増加を防止することができる。
【0046】
さらに、例えば、ポリオレフィンアミド系、ポリオレフィンイミド系、ポリオキシドオレフィン系、ポリウレタン系、ポリウレア系などのような第2極性物質がいずれも極性官能基を含むので、極性官能基と負極用接着剤および/または負極活物質との間に形成された水素結合により、第1塗布層と負極との間の接着力を高めることができるとともに、第2極性物質自体も接着剤であり、それにより第2塗布層と負極との間の接着力をさらに高めることができる。このため、上記第2極性物質における極性官能基、および第2極性物質自体が接着剤である2つの作用により、第2塗布層と負極との接着をより確実にすることができる。
【0047】
具体的に、本出願の第2極性物質は、YH基を含み、YがN、O、Fから選択される1つである。負極用接着剤および/または負極活性成分は、-HX基を含み、XがN、O、Fから選択される1つである。X基を含む負極用接着剤および/または負極活性成分は、本出願の第2極性物質におけるYH基との間に水素結合X-H-Yを形成できるので、本出願の第2塗布層と本出願の負極との接着をより確実にすることができる。より具体的に、図1に示すように、負極に-OH/-COOHが含まれ、さらに例えば、負極活物質に-OHが含まれ、負極接着剤に-COOHが含まれるので、負極活物質または負極接着剤と第2極性物質(-NHを含む)との間に水素結合が形成されやすくなる。
【0048】
本出願において、セパレータの第1塗布層および第2塗布層は、水素結合により、セパレータと正極、負極との間の接着力を増強する。これにより、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率を低減でき、ベアセルの成形に有利である。また、ベアセルがより緊密になり、リチウムイオンの輸送経路が短くなり、リチウムイオンの輸送がより速くなるので、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能をさらに向上させる。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記第1塗布層と前記正極との間の剥離力が0.075N以上であり、任意で、0.075N~0.125Nである。前記第2塗布層と前記負極との間の剥離力が0.075N以上であり、任意で0.075N~0.15Nである。
【0050】
剥離力は、接着される材料を接触面から単位幅で剥離する際に必要な最大の力を指す。剥離力は、材料の接着強度を反映できる。剥離力の詳細な測定方法について、実施例の測定方法部分を参照できる。具体的に、本出願において、巨視的な面から見れば、剥離力の大きさでセパレータと正極および負極との間の水素結合の存在および強さを反映でき、さらにセパレータと正極および負極との間の接着力の大きさを反映できる。
【0051】
数多くの実験により、当業者は、セパレータ(第1塗布層が第1極性物質を含まない)と正極との間の剥離力の大きさが通常0.035Nよりも小さく、この場合のセパレータと正極との間の接着力が弱く、水素結合が存在しないか、わずか存在するであろうことを知り得るが、本出願において、正極表面とセパレータの塗布層との間の剥離力に対する測定により、第1塗布層に第1極性物質を入れると、第1塗布層および正極との剥離力が0.075N以上になることを見出した。これは、第1極性物質と前記正極用接着剤との間に水素結合を有することを証明することができる。また、当業者は、セパレータ(第2塗布層が第2極性物質を含まない)と負極との間の剥離力の大きさが通常0.035Nよりも小さく、この場合のセパレータと負極との間の接着力が弱く、水素結合が存在しないか、わずか存在するであろうことを知り得るが、本出願において、負極表面とセパレータの塗布層との間の剥離力に対する測定により、第2塗布層に第2極性物質を入れると、第2塗布層と負極との剥離力が0.075N以上になることを見出した。これは、第2極性物質と前記負極用接着剤または負極活性成分との間に水素結合を有することを証明することができる。
【0052】
本出願において、第1塗布層および正極との剥離力または第2塗布層と負極との剥離力が0.075N以上になる場合、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程において、いずれも、ベアセルの膨張が発生しにくく、セパレータと正極および負極との接触がより緊密になり、リチウムイオンの輸送経路が短くされるので、リチウムイオンの輸送が速くなり、電池ハイレート放電性能およびサイクル性能をさらに向上させる。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mが(80~100):1である。
【0054】
本出願において、w/mにより、セパレータにおける第1極性物質と正極用接着剤との相対含有量関係を反映することができる。
【0055】
/mが80:1よりも小さい場合、第1極性物質の第1塗布層における含有量が低すぎて、第1極性物質と正極用接着剤との間に形成される水素結合が少なくなり、さらに、第1極性物質自体の接着力も足りず、第1塗布層および正極用接着剤との接着力が強くないため、ベアセルの加工過程およびサイクル過程における膨張問題をうまく解決できないことがある。また、正極用接着剤の含有量が高すぎると、電子の輸送通路が詰まることがある。また、通常、正極用接着剤が不活性絶縁体であり、その導電性が悪く、分極現象が深刻であるため、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。
【0056】
また、w/mが100:1よりも大きい場合、第1極性物質の含有量が高すぎて、ベースフィルムが詰まりやすくなり、通気率が低下するため、セパレータの動力学的性能に影響してしまい、また、サイクル過程の中期、末期に第1極性物質がベースフィルムから脱落しやすくなるので、サイクル性能や、ハイレート放電性能が低下してしまう。また、正極用接着剤の含有量が低すぎると、接着性が足りなくなり、正極と第1塗布層との接着力が小さくなる。
【0057】
したがって、w/mを適切な範囲内に抑えることにより、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張を制限でき、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。
【0058】
任意で、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは、80:1、87:1、93:1、97:1または100:1などである。w/mは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0059】
前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wと前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは、(32~50):1である。
【0060】
本出願において、w/mにより、セパレータにおける第2極性物質と負極用接着剤との相対含有量関係を反映することができる。
【0061】
/mが32:1よりも小さい場合、第2極性物質の第2塗布層における含有量が低すぎて、第2極性物質と負極用接着剤との間に形成される水素結合が少なくなり、さらに、第2極性物質自体の接着力も足りず、第2塗布層と負極用接着剤との接着力が強くないため、ベアセルの加工過程およびサイクル過程における膨張問題をうまく解決できないことがある。また、負極用接着剤の含有量が高過ぎると、電子の輸送通路が詰まることがある。また、通常、負極用接着剤が不活性絶縁体であり、その導電性が悪く、分極現象が深刻であるため、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。
【0062】
また、w/mが50:1よりも大きい場合、第2極性物質の含有量が高すぎて、サイクル過程の中期、末期に脱落しやすくなるので、サイクル性能や、ハイレート放電性能が低下してしまう。また、負極用接着剤の含有量が低すぎると、接着性が足りなくなり、負極と第2塗布層との接着力が小さくなる。
【0063】
したがって、w/mを適切な範囲内に抑えることにより、ベアセルの加工過程およびサイクル過程におけるベアセルの膨張を制限でき、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。
【0064】
任意で、前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wと前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mとの比であるw/mは、32:1、36:1、40:1、45:1または50:1などである。w/mは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wとの比であるw/wは、1:(1~1.3)である。
【0066】
本出願において、w/wにより、セパレータの2つの表面に塗布される極性物質の含有量を反映することができる。
【0067】
本出願においてw/wを適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの張力が均一になり、より安定になる。これによって、張力の不均一による短絡のリスクを防ぐことができるとともに、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。w/wが1:1よりも小さくまたは1:1.3よりも大きくなる場合、セパレータの2つの表面の張力が不均一になり、セパレータにシワが発生し、表面に気泡が生じるので、電解液の浸潤性が悪くなり、リチウム析出が発生しやすくなる。この場合、サイクル性能が低下し、サイクル減衰が速くなり、ハイレート放電性能が低下してしまう。
【0068】
任意で、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wとの比であるw/wは、1:1または1:1.3などである。w/wは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0069】
通常、第1極性物質の塗布量と第2極性物質の塗布量との差が大きすぎてはならない。任意で、両者の塗布量がほぼ同じであり、即ちw/wは1である。このようにして、セパレータの2つの表面の耐える力が均一になり、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能をより向上させることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wは、80%~90%である。
【0071】
本出願において、wは、第1塗布層における第1極性物質の含有量を反映することができる。
【0072】
本出願において、第1極性物質は第1塗布層における主要物質であるので、第1極性物質と正極用接着剤との間の水素結合を増加でき、第1塗布層および正極との接着力がより強くなる。第1極性物質は、第1塗布層における含有量が80%よりも低い場合、正極用接着剤との間に形成される水素結合が少なくなるので、セパレータと正極との接着性に対する改良に限りがあり、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張に対する改善効果が顕著ではなくなる。第1極性物質の第1塗布層における含有量が90%より大きい場合、ベースフィルムが詰まりやすくなり、通気率が低下し、セパレータの動力学的性能に影響を与える。
【0073】
任意で、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wが、80%、85%、90%などである。wは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mが0.9%~1.2%である。
【0075】
本出願において、mは、正極膜層における正極用接着剤の含有量を反映することができる。
【0076】
をこの範囲内に抑えることにより、正極と第1塗布層との間に確実な接着力を形成することを保証でき、ベアセルの加工過程または繰り返して使用する過程における膨張を制限できるので、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。通常、正極用接着剤の正極板における含有量が大きすぎてはならない。mが1.2%よりも大きい場合、正極用接着剤の含有量が高すぎ、電子の輸送通路が詰まる。また、通常、正極用接着剤が不活性絶縁体であり、その導電性が悪く、分極現象が深刻であるので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。さらに、正極用接着剤の正極板における含有量が小さすぎてはならない。mが0.9%よりも小さい場合、正極用接着剤の含有量が低すぎ、接着性が足りなくなり、正極と第1塗布層との接着力が小さくなる。
【0077】
任意で、前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mは、0.9%、1%または1.2%などである。mは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0078】
したがって、上記のパラメータw、mを適切な範囲内に抑えることにより、動力学的性能および第1塗布層および正極との間の接着力の増加を両立できる。両者の最適な比を利用することで、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wは、80%~90%である。
【0080】
本出願において、wは、第2塗布層における第2極性物質の含有量を反映することができる。
【0081】
本出願において、第2極性物質は第2塗布層における主要物質であるので、第2極性物質と負極用接着剤との間の水素結合を増加でき、第2塗布層と負極との接着力がより強くなる。第2極性物質は、第2塗布層における含有量が80%よりも低い場合、負極用接着剤との間に形成される水素結合が少なくなるので、セパレータと負極との接着性に対する改良に限りがあり、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張に対する改善効果が顕著ではなくなる。第2極性物質の第2塗布層における含有量が90%よりも大きい場合、ベースフィルムが詰まりやすくなり、通気率が低下し、セパレータの動力学的性能に影響を与える。
【0082】
任意で、前記第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wは、80%、85%または90%などである。wは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mは、2%~3%である。
【0084】
本出願において、mは、負極膜層における正極用接着剤の含有量を反映することができる。
【0085】
本出願において、mをこの範囲内に抑えることにより、負極と第2塗布層との間に確実な接着力を形成することを保証でき、ベアセルの加工過程または繰り返して使用する過程における膨張を制限できるので、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。通常、負極用接着剤の負極板における含有量が大きすぎてはならない。mが3%よりも大きい場合、負極用接着剤の含有量が高すぎて、電子の輸送通路が詰まる。また、通常、負極用接着剤が不活性絶縁体であり、その導電性が悪く、分極現象が深刻であるので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。さらに、負極用接着剤の負極板における含有量が小さすぎてはならない。mが2%よりも小さい場合、負極用接着剤の含有量が低すぎて、接着性が足りなくなり、負極と第2塗布層との接着力が小さくなる。
【0086】
任意で、前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mは、2%、2.6%、3%などである。mは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0087】
したがって、上記のパラメータw、mを適切な範囲内に抑えることにより、動力学的性能および第2塗布層と負極との間の接着力の増加を両立できる。両者の最適な比を利用することで、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質は、ポリオキシエチレン(Polyoxyethylene)およびポリアクリルアミド(Polyacrylamide)を含む。そのうち、前記ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1が(2~6):1である。
【0089】
異なる極性物質が異なる機能を有することは一般的であるので、各物質のメリットを利用することができる。具体的に、本出願において、第1活物質のポリオキシエチレンは、リチウムイオン伝導体であり、高導電率、低活性化エネルギーおよび一番低い電極電位などの特性を有するので、リチウムイオンの輸送を速めることができる。そのため、第1極性物質において、主要物質として構成する必要がある。また、ポリアクリルアミドは、ポリオキシエチレン(PEO)に比べて、その鎖が長く、分子量が高く、熱安定性がよく、通常、正極と接続する面が、既に高圧下で酸化されているため、ポリオキシエチレンに少量のポリアクリルアミドなどの長鎖分子を混合し、特に本出願の限定範囲内に抑えることにより、電池のサイクル安定性およびハイレート放電性能を向上させることできる。
【0090】
さらに、前記ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1が2:1よりも小さくなると、ポリアクリルアミドがリチウムイオン伝導体ではないので、リチウムイオン伝導速度が遅くなり、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。また、前記ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1が6:1よりも大きくなると、ポリアクリルアミドの含有量が少なすぎ、熱安定性が劣る。
【0091】
任意で、前記ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1は、2:1、3:1、4.5:1、5:1または6:1などである。C1は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0092】
前記第2極性物質は、ポリエチレンイミンおよびポリオキシエチレンを含む。そのうち、前記ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2は、(2~6):1である。
【0093】
異なる極性物質が異なる機能を有することは一般的であるので、各物質のメリットを利用することができる。具体的に、本出願において、第2活物質のポリエチレンイミンおよびポリオキシエチレンは、いずれもリチウムイオン伝導体であり、高導電率、低活性化エネルギーおよび一番低い電極電位などの特性を有するので、リチウムイオンの輸送を速めることができる。なお、第2活物質が、負極と接続する側に位置し、負極活物質例えば黒鉛が膨張しやすいので、極性が強い接着剤例えばポリエチレンイミン(PEI)を利用する必要がある。また、ポリオキシエチレンがポリエチレンイミンよりも安価であり、コスト面を考慮し、ポリエチレンイミンに少量のポリオキシエチレンを加え、特に本出願の限定範囲内に抑えることにより、コストダウンを実現できるとともに、両者の間にも水素結合が形成されるので、接着力をさらに高めることができる。これによって、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張を制限でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0094】
前記ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2が2:1よりも小さくなると、ポリエチレンイミンの極性が強いため、含有量が少なすぎる場合、第2極性物質と負極用接着剤または負極活物質との間に形成される水素結合が少なくなり、第2塗布層と負極との接着力が低下してしまう。この場合、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程において、ベアセルの膨張が深刻になり、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与えることがある。前記ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2が6:1よりも大きくなると、コストが増加してしまう。
【0095】
任意で、前記ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2は、2:1、3:1、4.5:1、5:1または6:1などである。C2は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質または第2極性物質の前記ポリアミド系は、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ナイロン-66、ナイロン-6などのうちの一種または複数種の組合せである。ポリアミド系の重量平均分子量は2万~8万であり、任意で、2万、3万、4万、5万、6万、7万または8万などである。ポリアミド系の重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質または第2極性物質のポリオレフィンイミド系は、例えばポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンポリアミンなどのうちの一種または複数種である。前記ポリオレフィンイミド系の重量平均分子量は、7万~10万であり、任意で、7万、8万、9万または10万などである。ポリオレフィンイミド系の重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質または第2極性物質の前記ポリオキシドオレフィン系は、例えば、ポリオキシエチレン(PEO)などである。前記ポリオキシドオレフィン系の重量平均分子量は、10万~20万であり、任意で、10万、12万、14万、16万、18万または20万などである。ポリオキシドオレフィン系の重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質または第2極性物質のポリウレタン系は、例えば、一般式に-NHCOO-を含むポリマーであり得る。例えば、ポリウレタン系は、ポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PAPI)の少なくとも1つを重合してなるものであってもよく、2つ以上のものを共重合してなるものであってもよい。重合方法は、アタクティック共重合(atactic copolymerization)、ブロック共重合(block copolymerization)などを含む。前記ポリウレタン系の重量平均分子量は、0.1万~1万であり、任意で、0.1万、0.5万または1万などである。ポリウレタン系の重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記第1極性物質または第2極性物質のポリウレア系は、例えば、一般式に-NHCONH-を含むポリマーであり得、例えば、ポリ尿素、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのうちの一種または複数種である。前記ポリウレア系物質の重量平均分子量は、0.5万~5万であり、任意で、0.5万、1万、2万、3万、4万または5万などである。ポリウレア系の重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記第1塗布層は、第1増強剤を含み、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは、(5~9):1である。
【0102】
本出願において、w/kは、第1増強剤と第1極性物質の含有量関係を反映することができる。
【0103】
本出願において、第1極性物質は、電池サイクルの中期または末期に、ベースフィルムから脱落するリスクがあるので、第1増強剤でベースフィルムでの第1極性物質の接着力を増加させる必要がある。セパレータにおける第1極性物質と第1増強剤との比を適切な範囲内にすることにより、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率を制限でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。w/kが9:1よりも大きい場合、第1極性物質の含有量が高すぎて、ベースフィルムが詰まりやすくなり、通気率が低下するため、セパレータの動力学的性能に影響してしまい、また、サイクル過程の中期、末期に第1極性物質がベースフィルムから脱落しやくなるので、サイクル性能や、ハイレート放電性能が低下してしまう。w/kが5:1よりも小さい場合、第1極性物質の第1塗布層における含有量が低すぎて、第1極性物質と正極用接着剤との間に形成される水素結合が少なくなり、さらに、第1極性物質自身の接着力も足りず、第1塗布層および正極用接着剤との接着力が強くならないので、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張問題をうまく解決できないことがある。
【0104】
さらに、第1増強剤と第1極性物質との間の水素結合の形成メカニズムを分析すると、第1増強剤(Fを含む)と第1極性物質(-YH)との間に水素結合Y-H-Fが形成されやすいので、第1増強剤により、第1極性物質を安定にセパレータに形成させることができる。これによって、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率を制限でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0105】
任意で、前記第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは、5:1、5.3:1、6:1、8:1、9:1などである。w/kは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記第2塗布層は、第2増強剤を含み、前記第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは、(5~9):1である。
【0107】
本出願において、w/kは、第2増強剤と第2極性物質の含有量関係を反映することができる。
【0108】
本出願において、第2極性物質は、電池サイクルの中期または末期に、ベースフィルムから脱落するリスクがあるので、第2増強剤でベースフィルムでの第2極性物質の接着力を増加させる必要がある。セパレータにおける第2極性物質と第2増強剤との比を適切な範囲内に抑えることにより、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率を制限でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。w/kが9:1よりも大きい場合、第2極性物質の含有量が高すぎて、サイクルの中期、末期に脱落しやくなるので、サイクル性能や、ハイレート放電性能が低下してしまう。w/kが5:1よりも小さい場合、第2極性物質の第2塗布層における含有量が低すぎて、第2極性物質と負極用接着剤との間に形成される水素結合が少なくなり、さらに、第2極性物質自身の接着力も足りず、第2塗布層と負極用接着剤との接着力が強くならないので、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張問題をうまく解決できないことがある。
【0109】
さらに、第2増強剤と第2極性物質との間の水素結合の形成メカニズムを分析すると、第2増強剤(Fを含む)と第2極性物質(-YH)との間に水素結合Y-H-Fが形成されやすいので、第2増強剤により、第2極性物質を安定にセパレータに形成させることができる。これによって、ベアセルの加工過程における膨張および繰り返して使用する過程におけるサイクル膨張率を制限でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0110】
任意で、前記第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは、5:1、5.3:1、6:1、8:1、9:1などである。w/kは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kは、前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量k以下である。
【0112】
本出願において、k、kは、セパレータの両面に塗布される増強剤の含有量を反映することができる。kとkの差が大きすぎてはならない。
【0113】
通常、kがk以下である場合、セパレータの張力が均一になり、より安定になる。これによって、張力の不均一による短絡のリスクを防ぐことができるとともに、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。kとkとの含有量の差が大きくなる場合、セパレータの2つの表面の張力が不均一になり、セパレータにシワが発生し、表面に気泡が生じるので、電解液の浸潤性が悪くなり、リチウム析出が発生しやくなる。この場合、サイクル性能が低下し、サイクル減衰が速くなり、ハイレート放電性能が低下してしまう。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは、(0.8~1):1である。
【0115】
本出願において、k/kは、セパレータの両面の増強剤の相対含有量を反映することができる。したがって、適切な増強剤の比を設定することで、セパレータの安定性を向上させることができるとともに、リチウムイオンの輸送動力学への影響が小さく、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。k/kが0.8:1よりも小さくまたは1:1よりも大きくなる場合、セパレータの2つの表面の張力が不均一になり、セパレータにシワが発生し、表面に気泡が生じるので、電解液の浸潤性が悪くなり、リチウム析出が発生しやすくなる。この場合、サイクル性能が低下し、サイクル減衰が速くなり、ハイレート放電性能が低下してしまう。
【0116】
好ましくは、セパレータの両面の含有量をほぼ同一にする。これによって、セパレータの両面の差異を縮める。
【0117】
任意で、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kと前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは、0.80:1、0.9:1、0.95:1または1:1などである。k/kは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kは10%~20%であり、前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kは10%~20%である。
【0119】
本出願において、kは、第1増強剤の第1塗布層における含有量を反映することができ、kは、第2増強剤の第2塗布層における含有量を反映することができる。
【0120】
本出願において、第1増強剤の第1塗布層における含有量と第2増強剤の第2塗布層における含有量との差が大きすぎてはならない。kとkとの含有量の差が大きすぎると、セパレータの2つの表面の張力が不均一になり、セパレータにシワが発生し、表面に気泡が生じるので、電解液の浸潤性が悪くなり、リチウム析出が発生しやすくなる。この場合、サイクル性能が低下し、サイクル減衰が速くなり、ハイレート放電性能が低下してしまう。したがって、上記のパラメータを適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの安定性を向上させることができるとともに、リチウムイオンの輸送の動力学的性能への影響が小さく、動力学的性能および接着性を両立できる。両者の最適な比を利用することで、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0121】
任意で、セパレータの両面の含有量をほぼ同一にする。これによって、セパレータの両面の差異を縮め、セパレータの張力を均一にすることができ、シワの発生を防止することができる。
【0122】
任意で、前記第1増強剤の前記第1塗布層における質量含有量kは、14%、16.6%、18%、19%または20%などである。kは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0123】
任意で、前記第2増強剤の前記第2塗布層における質量含有量kは、10%、11%、14%、15.8%、16.6%、17%または20%などである。kは、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記第1増強剤または第2増強剤は、ポリビニリデンジフルオリド、アルギル酸ナトリウムのうちの一種または複数種である。そのうち、ポリビニリデンジフルオリドはコストが安価であるので、好ましく使用されるものである。前記正極用接着剤は、ポリフッ化ビニリデンを含む。前記負極用接着剤は、スチレンブタジエンゴム、アルギル酸ナトリウムのうちの1つ以上を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、前記第1増強剤または第2増強剤の重量平均分子量は0.05万~60万であり、任意で、0.05万、1万、10万、20万、30万、40万、50万または60万などである。第1増強剤または第2増強剤の重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0126】
さらに、前記ポリビニリデンジフルオリドの重量平均分子量は10~60万であり、任意で、10万、20万、30万、40万、50万または60万などである。ポリビニリデンジフルオリドの重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0127】
さらに、アルギル酸ナトリウムの重量平均分子量は0.05~5万であり、任意で、0.05万、1万、2万、3万、4万または5万などである。アルギル酸ナトリウムの重量平均分子量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。なお、上記ポリビニリデンジフルオリドおよびアルギル酸ナトリウムは、第1増強剤、第2増強剤、正極用接着剤または負極用接着剤に適用できる。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記第1塗布層と前記第2塗布層との質量比は、1:(1~1.5)である。
【0129】
本出願において、第1塗布層および第2塗布層は、セパレータの両面の塗布物質の含有量を反映することができる。両者の差が大きすぎてはならない。したがって、第1塗布層と第2塗布層の塗布量を適切な範囲内に抑えることにより、セパレータの張力が均一になり、より安定になる。これによって、張力の不均一による短絡のリスクを防ぐことができるとともに、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。第1塗布層と第2塗布層の含有量の差が大きくなる場合、セパレータの2つの表面の張力が不均一になり、セパレータにシワが発生し、表面に気泡が生じるので、電解液の浸潤性が悪くなり、リチウム析出が発生しやすくなる。この場合、サイクル性能が低下し、サイクル減衰が速くなり、ハイレート放電性能が低下してしまう。
【0130】
任意で、第1塗布層と前記第2塗布層との質量比は、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5などである。第1塗布層と前記第2塗布層との質量比は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、第1塗布層または第2塗布層には、さらに充填材が含まれ、前記充填材は例えば酸化アルミニウムである。これによって、塗布層の耐熱性および安定性を向上させることができ、第1極性物質との組合せにより、ベアセルの加工過程および繰り返して使用する過程における膨張を制限でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。前記充填材の含有量については、特に制限されない。例えば、充填材の第1塗布層または第2塗布層における質量比は0よりも大きく25%以下である。充填材の第1塗布層または第2塗布層における含有量が25%よりも大きくなると、ベースフィルムの孔が詰まることがあり、イオンの輸送速度が遅くなり、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。
【0132】
任意で、前記充填材の第1塗布層または第2塗布層における質量パーセントは3.2%、8%、10%、15%、18.9%、20%または25%などである。充填材の第1塗布層または第2塗布層における質量比は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0133】
いくつかの実施形態において、前記第1塗布層は、第1塗布層スラリーを利用して製造されるものである。前記第1塗布層スラリーは、前記第1極性物質、前記第1増強剤および第1溶剤を含む。そのうち、前記第1塗布層スラリーの粘度が8000mpa.s~12000mpa.sである。
【0134】
本出願において、第1塗布層スラリーは、当分野の周知方法で調製可能である。例えば、第1極性物質、第1増強剤を第1溶剤に入れて混合して、均一のスラリー、即ち第1塗布層スラリーを形成させることが可能である。任意で、第1塗布層スラリーの調製は、第1極性物質、第1増強剤、充填材を混合して第1溶剤に溶解させるように行われても良い。各物質の間の使用量は、本出願の上記の各成分の第1塗布層における質量比により設定されてもよい。
【0135】
本出願において、第1塗布層スラリーの粘度は、塗布およびセルの電気化学性能を大きく左右するので、第1塗布層スラリーの粘度が高過ぎると、ゲル化されやすくなり、均一に塗布できず、セルの一致性が劣るので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能が低下することがある。第1塗布層スラリーの粘度が低すぎると、第1塗布層スラリーを良好にベースフィルムに塗布することができない。したがって、第1塗布層スラリーの粘度を適切な範囲内に抑えることにより、第1塗布層スラリーを良好にベースフィルムに塗布することが可能であり、セルの一致性を保つことできるので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0136】
任意で、前記第1塗布層スラリーの粘度は、8000mpa.s、9000mpa.s、10000mpa.s、11000mpa.sまたは12000mpa.sなどである。第1塗布層スラリーの粘度は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0137】
さらに、第1溶剤について、ここで限定されない。より具体的に、第1増強剤がアルギル酸ナトリウムである場合、第1溶剤について限定されない。第1増強剤がポリビニリデンジフルオリドである場合、第1溶剤として有機溶剤を選択する。前記有機溶剤は、例えば、N,N-ジメチルピロリドン、アセトンなどである。
【0138】
いくつかの実施形態において、前記第2塗布層は、第2塗布層スラリーにより製造されるものである。第2塗布層は、当分野の周知方法で製造可能である。前記第2塗布層スラリーは、前記第2極性物質、前記第2増強剤および第2溶剤を含む。そのうち、前記第2塗布層スラリーの粘度は、5000mpa.s~20000mpa.sである。
【0139】
本出願において、第2塗布層スラリーは、当分野の周知方法で調製可能である。例えば、第2極性物質、第2増強剤を第2溶剤に入れて混合して、均一のスラリー、即ち第2塗布層スラリーを形成させることが可能である。任意で、第2塗布層スラリーの調製は、第2極性物質、第2増強剤、充填材を混合して第2溶剤に溶解させるように行われても良い。各物質の間の使用量は、本出願の上記の各成分の第2塗布層における質量比により設定されてもよい。
【0140】
本出願において、第2塗布層スラリーの粘度は、塗布およびセルの電気化学性能を大きく左右するので、第2塗布層スラリーの粘度が高過ぎると、ゲル化されやすくなり、均一に塗布できず、セルの一致性が劣るので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能が低下することがある。第2塗布層スラリーの粘度が低すぎると、第2塗布層スラリーを良好にベースフィルムに塗布することができない。したがって、第2塗布層スラリーの粘度を適切な範囲内に抑えることにより、第2塗布層スラリーを良好にベースフィルムに塗布することが可能であり、セルの一致性を保つことができるので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0141】
任意で、前記第2塗布層スラリーの粘度は、5000mpa.s、8000mpa.s、10000mpa.s、13000mpa.s、15000mpa.s、18000mpa.sまたは20000mpa.sなどである。第2塗布層スラリーの粘度は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0142】
さらに、第2溶剤について、ここで限定されない。より具体的に、第2増強剤がアルギル酸ナトリウムである場合、第2溶剤について限定されない。第2増強剤がポリビニリデンジフルオリドである場合、第2溶剤として有機溶剤を選択する。前記有機溶剤は、例えば、N,N-ジメチルピロリドン、アセトンなどである。
【0143】
[ベースフィルム]
いくつかの実施形態において、本出願は、ベースフィルムの種類を限定せず、当分野周知の良好な化学的安定性および機械的安定性を有する多孔質構造のベースフィルムを選択すればよい。
【0144】
いくつかの実施形態において、ベースフィルムの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択された少なくとも1つである。ベースフィルムは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。ここでは限定されない。ベースフィルムが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよい。ここでは限定されない。
【0145】
[負極]
負極は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設置され且つ負極活性成分を含む負極膜層と、を含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、前記負極活性成分は、ケイ素炭素混合物を含み、前記ケイ素炭素混合物のケイ素の粒径は0.1~0.5μmである。炭素は、人造黒鉛と天然黒鉛を混合してなる炭素である。
【0147】
ケイ素の粒径が電気化学性能を大きく左右する。本出願において、ミクロンシリコンは、ナノシリコンより比表面積が小さく、副反応の発生が少なく、電池のサイクル性能より良好であり、ハイレート放電性能もより高いので、好ましくはミクロンシリコンを使用する。
【0148】
任意で、前記ケイ素の粒径は、0.1μm、0.3μm、0.5μmなどである。ケイ素の粒径は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0149】
任意で、ケイ素炭素混合物のC:Siは、95~97:3~5などである。例えば、C:Siは95:5にできる。
【0150】
さらに、前記ケイ素炭素混合物の前記負極膜層における含有量が95%-97%である。ケイ素炭素混合物の含有量がセルのエネルギー密度を左右する。通常、ケイ素炭素混合物の前記負極膜層における含有量が95%よりも大きくなれば、高容量電池を実現でき、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能を高めることができる。
【0151】
任意で、ケイ素炭素混合物の負極膜層における含有量が95.9%、96%、96.7%、96.8%または97%などである。ケイ素炭素混合物の負極膜層における含有量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0152】
任意で、負極活性成分は、当分野周知の電池用負極活性材料を使用することができる。例として、負極活性成分は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料とチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1つを含み得る。前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒素複合体およびシリコン合金から選択された少なくとも1つである。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物およびスズ合金から選択された少なくとも1つである。なお、本出願は、これらの材料に限定されず、電池の負極活性成分として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活性成分は、単独で使用されてもよく、2つ以上使用されてもよい。
【0153】
例として、負極集電体は、その自身の厚さ方向で対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のうちのいずれか1つまたは両者に積層設置されている。
【0154】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体は、金属箔または複合集電体を使用することができる。例えば、金属箔は、銅箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層と、を含み得る。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金など)を高分子基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより製造可能である。
【0155】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、負極用接着剤をさらに含み得る。前記負極用接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)およびカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択された少なくとも1つである。任意で、負極用接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびアルギン酸ナトリウム(SA)から選択されたものである。
【0156】
いくつかの実施形態において、任意で、負極膜層は、導電剤をさらに含み得る。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択された少なくとも1つである。
【0157】
いくつかの実施形態において、任意で、負極膜層は、例えば増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を含み得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、以下のように、負極を製造する。上記の負極製造用の成分、例えば負極活性材料、導電剤、接着剤と任意のその他の成分を溶剤(例えば脱イオン水)で分散させ、負極スラリーを得て、さらに負極スラリーを負極集電体に塗布して、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、負極を得る。
【0159】
[正極]
正極は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設置され且つ本出願の第1局面の正極材料を含む正極膜層と、を含む。
【0160】
いくつかの実施形態において、前記正極は、正極材料LiNiCoMnを含み、そのうち、x+y+z=1、x=0.5~0.9であり、任意で、x=0.5~0.7、x=0.8~0.9である。
【0161】
本出願において、通常、正極材料のニッケル含有量が0.5よりも高くすればよい。正極系のセルの差異により、ベアセルの膨張も異なるので、本出願のセパレータは、ハイニッケル正極材料を含むベアセルのサイクル膨張率への改善効果がとても顕著である。
【0162】
より具体的に、ニッケル含有量x=0.5~0.7の場合、正極材料の単位胞パラメータの変化が比較的に大きく、正極材料の体積の変化も大きく、最終のベアセルの膨張が最初のベアセルの膨張に比べて変化が大きいが、得られるベアセルのサイクル膨張率が比較的に小さいので、本出願の上記範囲内に抑えることにより、ベアセルのサイクル膨張率を効果的改善でき、サイクル維持率がより良好である。ニッケル含有量が例えば0.8~0.9である場合、正極材料の単位胞パラメータの変化が比較的に小さいが、最終のベアセルのサイクル膨張率も比較的に小さいので、それも本出願の範囲内に該当する。
【0163】
任意で、x=0.4、x=0.5、x=0.6、x=0.7、x=0.8またはx=0.9などである。ニッケル含有量は、上記の任意の数値であってもよく、任意の数値により形成される範囲であってもよい。
【0164】
任意で、正極材料は、LiNi0.4Co0.4Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.9Co0.05Mn0.05などである。
【0165】
さらに任意で、正極活性材料は、当分野周知の電池用正極活性材料を使用することができる。例として、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物およびそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1つを含み得る。なお、本出願は、これらの材料に限定されず、電池の正極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、単独で使用されてもよく、2つ以上使用されてもよい。そのうち、リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(単にNCM333と称する場合がある)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(単にNCM211と称する場合がある))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)およびその改質化合物などのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(単にLFPと称する場合がある))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0166】
例として、正極集電体は、その自身の厚さ方向で対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面のうちのいずれか1つまたは両方に積層設置されている。
【0167】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体は、金属箔または複合集電体を使用することができる。例えば、金属箔は、アルミニウム箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層と、を含み得る。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金など)を高分子基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより作製可能である。
【0168】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、正極用接着剤をさらに含み得る。例として、前記正極用接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペンの共重合体およびフッ素含有アクリル樹脂のうちの少なくとも1つを含み得る。任意で、負極用接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0169】
いくつかの実施形態において、任意で、正極膜層は、導電剤をさらに含み得る。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、以下のように、正極を製造する。上記の正極製造用の成分、例えば正極活性材料、導電剤、接着剤と任意のその他の成分を溶剤(例えばN-メチルピロリドン)で分散させ、正極スラリーを得、さらに正極スラリーを正極集電体に塗布して、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、正極を得る。
【0171】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願は、電解質の種類を具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体電解質、ゲル電解質、固体電解質であり得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、電解質は、電解液を使用する。電解液は、電解質塩及び溶剤を含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ジフルオロスルホニルイミドリチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、ジシュウ酸ホウ酸リチウム、ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムから選択された一種又は複数種である。
【0174】
いくつかの実施形態において、溶剤は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから選択された一種又は複数種である。
【0175】
いくつかの実施形態において、任意で、電解液は、添加剤をさらに含むことができる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤や、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能または低温性能を改善する添加剤などであってもよい。
【0176】
以下、図面を参照しながら本出願の電池を説明する。
【0177】
本出願の一実施形態は、二次電池を提供する。二次電池は、正極と、負極と、電解質と、セパレータと、を含む。電池の充放電過程において、活性イオンが正極と負極との間で挿入および脱離を繰り返す。電解質は、正極と負極との間でイオンを伝導するためのものである。セパレータは、正極板と負極板との間に配置され、主に、正極と負極の短絡を防止するとともに、イオンを透過させるものである。
【0178】
いくつかの実施形態において、正極、負極とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより、電極ユニットに製造される。
【0179】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含み得る。この外装は、上記電極ユニットおよび電解質を密封することに用いられる。
【0180】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどの硬質ケースであってもよい。リチウムイオン電池の外装は、例えば袋状ソフトパックのようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートおよびポリブチレンサクシネートなどのプラスチックであってもよい。
【0181】
本出願は、二次電池の形状を特に限定せず、円柱状、四角形または他の任意の形状であってもよい。例えば、図3には、一例としての四角形構造の二次電池5が示されている。
【0182】
いくつかの実施形態において、図4に示すように、外装は、ハウジング51とカバープレート53を含む。ここで、ハウジング51は、底板と底板に接続される側板とを含み、底板と側板とは、収納室を囲むように構成される。ハウジング51は、収納室と連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーすることで、前記収納室を密封する。正極板、負極板およびセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極ユニット52を形成することができる。電極ユニット52は、前記収納室に封入される。電解液は、電極ユニット52内に浸潤する。リチウムイオン電池5に含まれる電極ユニット52の個数は、1つまたは複数であってもよく、当業者であれば、実際の必要に応じて選択することができる。
【0183】
また、以下、図面を参照しながら本出願の電池モジュール、電池パックおよび電気設備を説明する。
【0184】
電池モジュール
いくつかの実施形態において、二次電池を利用して電池モジュールを構成してもよい。電池モジュールが含む二次電池の個数は、1つまたは複数であってもよく、当業者であれば電池モジュールの使用および容量に基づいて選択可能である。
【0185】
図5は、例としての電池モジュール4を示す。図5に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5が電池モジュール4の長手方向に沿って順に配置されている。なお、その他の任意の形態で配置されてもよい。また、締結部材でこの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0186】
任意で、電池モジュール4は、さらに収容空間を有するケースを備え、複数の二次電池5がこの収容空間に収容される。
【0187】
電池パック
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールを使用して電池パックを構成してもよい。電池パックが含む電池モジュールの個数は、1つまたは複数であってもよく、当業者であれば電池パックの使用および容量に基づいて選択可能である。
【0188】
図6および図7は、例としての電池パック1を示す。図6および図7に示すように、電池パック1は、電池ボックスおよび電池ボックスに配置される複数の電池モジュール4を備える。電池ボックスは、上筐体2および下筐体3を備え、上筐体2が下筐体3にカバーされ、電池モジュール4を収容する密閉空間が形成される。複数電池モジュール4が、任意の方式で電池ボックスに配置可能である。
【0189】
電気設備
また、本出願は、電気設備を提供する。前記電気設備は、本出願の二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも1つを含む。前記二次電池、電池モジュール、または電池パックは、前記電気設備の電源として利用可能であり、前記電気設備のエネルギー貯蔵ユニットとしても利用可能である。前記電気設備は、携帯型設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電気車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気バイク、電気ゴルフカー、電気トラックなど)、電気列車、船、衛星、エネルギ貯蔵システムなどを含むが、これらに限定されない。
【0190】
前記電気設備は、必要に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0191】
図8は、例としての電気設備を示す。この電気設備は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。これらの電気設備について、高パワーおよび高エネルギー密度の二次電池が求められるので、電池パックまたは電池モジュールを使用することができる。
【0192】
また、他の例として、装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどである。これらの装置では薄型化が求められるので、電源として二次電池を利用可能である。
【0193】
実施例
以下、本出願の実施例を説明する。説明する以下の実施例は、例示的なものであり、本出願を説明するものにすぎず、本出願を限定するものではないと理解すべきである。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、当分野の文献に記載の技術、条件または製品の説明書に基づいて行うことができる。使用する試剤又は器械の、製造メーカーが明記されていないものが、当分野でよく使われる市販の従来品を使用することが可能である。
【0194】
実施例1-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのPEO、および酸化アルミニウムを、80:20の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0195】
2)第2極性物質としてのPEI、および酸化アルミニウムを、80:20の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0196】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0197】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1.07:1.93の質量で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0198】
そのうち、第1極性物質の前記第1塗布層における質量含有量wと前記正極用接着剤の前記正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは75:1である。
【0199】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得て、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:2.66:0.34の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0200】
そのうち、第2極性物質の前記第2塗布層における質量含有量wと前記負極用接着剤の前記負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは30:1である。
【0201】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0202】
実施例1-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-1を参照できる。相違点として、正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:1:2であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:2.5:0.5である。
【0203】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは80:1である。第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは32:1である。
【0204】
実施例1-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-1を参照できる。相違点として、正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:0.91:2.09であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:2.2:0.8である。
【0205】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは87:1である。第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは36:1である。
【0206】
実施例1-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-1を参照できる。相違点として、正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:0.86:2.14であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:2:1である。
【0207】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは93:1であり。第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは40:1である。
【0208】
実施例1-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-1を参照できる。相違点として、正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:0.82:2.18であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:1.77:1.23である。
【0209】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは97:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは45:1である。
【0210】
実施例1-6
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-1を参照できる。相違点として、正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:0.8:2.2であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:1.6:1.4である。
【0211】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは100:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは50:1である。
【0212】
実施例1-7
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-1を参照できる。相違点として、正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを97:0.76:2.24の質量比で混合し、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブを97:1.5:1.5の質量比で混合した。
【0213】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは105:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mの比であるw/mは53:1である。
【0214】
実施例2-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのPAM、および酸化アルミニウムを、96.8:3.2の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0215】
2)第2極性物質としてのPEO、および酸化アルミニウムを、77.5:22.5の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0216】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0217】
そのうち、第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wの比であるw/wは1:0.8である。
【0218】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1:2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0219】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得て、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:2.5:0.5の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0220】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0221】
実施例2-2
実施例2-1とほぼ同じである。相違点として、第1極性物質としてのPAMと酸化アルミニウムの質量比は85:15であり、第2極性物質としてのPEOと酸化アルミニウムの質量比は85:15である。第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wの比であるw/wは1:1である。
【0222】
実施例2-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例2-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAMと酸化アルミニウムの質量比は71.1:28.9であり、第2極性物質としてのPEOと酸化アルミニウムの質量比は92.5:7.5である。第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wの比であるw/wは1:1.3である。
【0223】
実施例2-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例2-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAMと酸化アルミニウムの質量比は65:35であり、第2極性物質としてのPEOと酸化アルミニウムの質量比は97.5:2.5である。第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wの比であるw/wは1:1.5である。
【0224】
実施例3-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのポリ尿素、および酸化アルミニウムを、75:25の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0225】
2)第2極性物質としてのPAM、および酸化アルミニウムを、75:25の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0226】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0227】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:0.8:2.2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0228】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得て、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:1.8:1.2の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0229】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0230】
実施例3-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例3-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのポリ尿素の第1塗布層における質量比は80%であり、第2極性物質としてのPAMの第2塗布層における質量比は80%である。正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:0.9:2.3であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:2:1である。
【0231】
実施例3-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例3-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのポリ尿素の第1塗布層における質量比は85%であり、第2極性物質としてのPAMの第2塗布層における質量比は85%である。正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比が97:1:2であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比が97:2.6:0.4である。
【0232】
実施例3-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例3-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのポリ尿素の第1塗布層における質量比は90%であり、第2極性物質としてのPAMの第2塗布層における質量比は90%である。正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:1.2:1.8であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:3:0である。
【0233】
実施例3-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例3-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのポリ尿素の第1塗布層における質量比は92%であり、第2極性物質としてのPAMの第2塗布層における質量比が92%である。正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンの質量比は97:1.5:0.5であり、負極活物質としての炭素ケイ素混合物、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は96.8:3.2:0である。
【0234】
実施例4-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムを、80:14:6の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0235】
2)第2極性物質としてのPEIと第1増強剤としてのPVDFを、80:20の質量で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0236】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0237】
そのうち、第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは0.7:1である。
【0238】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1:2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0239】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:2.5:0.5の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0240】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0241】
実施例4-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例4-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:16.6:3.4である。第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは0.8:1である。
【0242】
実施例4-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例4-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:18:2である。第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは0.9:1である。
【0243】
実施例4-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例4-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:19:1である。第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは0.95:1である。
【0244】
実施例4-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例4-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDFの質量比は80:20である。第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの比であるk/kは1:1である。
【0245】
実施例5-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムを、80:17.4:2.6の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0246】
2)第2極性物質としてのPEOおよび第1増強剤としてのPVDFを、83:17の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0247】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0248】
そのうち、第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは4.6:1である。第2塗布層は第2増強剤を含む。第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは4.9:1である。
【0249】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1:2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0250】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:2.5:0.5の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0251】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0252】
実施例5-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例5-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比が80:16:4であり、第2極性物質としてのPEO、第2増強剤としてのPVDFの質量比が83.4:16.6である。
【0253】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは5:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは5:1である。
【0254】
実施例5-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例5-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:15:5であり、第2極性物質としてのPEO、第2増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は84.2:15.8である。
【0255】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは5.3:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは5.3:1である。
【0256】
実施例5-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例5-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比が80:13.3:6.7であり、第2極性物質としてのPEOと第2増強剤としてのPVDFの質量比が86:14である。
【0257】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは6:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは6:1である。
【0258】
実施例5-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例5-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:10:10であり、第2極性物質としてのPEOと第2増強剤としてのPVDFの質量比は89:11である。
【0259】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは8:1であり、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは8:1である。
【0260】
実施例5-6
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例5-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:8.9:11.1であり、第2極性物質としてのPEO、第2増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は90:10である。
【0261】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは9:1である。第2塗布層が第2増強剤を含む。第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは9:1である。
【0262】
実施例5-7
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例5-1を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPAM、第1増強剤としてのPVDF、酸化アルミニウムの質量比は80:8.6:11.4であり、第2極性物質としてのPEOと第2増強剤としてのPVDFの質量比は90.3:9.7である。
【0263】
第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは9.3:1である。第2塗布層が第2増強剤を含む。第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kは9.3:1である。
【0264】
実施例6-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDFを、80:20の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0265】
2)第2極性物質としてのPEOおよび第1増強剤としてのPVDFを、80:20の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0266】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0267】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1:2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0268】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5、Siの粒径が0.05μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、95.9:2.5:1.6の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0269】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0270】
実施例6-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例6-1を参照できる。相違点として、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5、Siの粒径が0.1μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は96.7:2.5:0.8である。
【0271】
実施例6-3
実施例6-1とほぼ同じである。相違点として、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(Siの粒径が0.3μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は97:2.5:0.5である。
【0272】
実施例6-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例6-1を参照できる。相違点として、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5、Siの粒径が0.5μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は96.8:2.5:0.7である。
【0273】
実施例6-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例6-1を参照できる。相違点として、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(Siの粒径が0.6μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブの質量比は96:2.5:1.5である。
【0274】
実施例7-1
1.セパレータの製造
1)第1極性物質としてのPEO、第1増強剤としてのPVDFを、80:20の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0275】
2)第2極性物質としてのPEOおよび第1増強剤としてのPVDFを、80:20の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0276】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で第2塗布層スラリーに塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0277】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.4Co0.4Mn0.2、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1:2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0278】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5、Siの粒径が0.3μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:2.5:0.5の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0279】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0280】
実施例7-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例7-1を参照できる。相違点として、正極活物質はLiNi0.5Co0.2Mn0.3である。
【0281】
実施例7-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例7-1を参照できる。相違点として、正極活物質はLiNi0.6Co0.2Mn0.2である。
【0282】
実施例7-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例7-1を参照できる。相違点として、正極活物質はLiNi0.8Co0.1Mn0.1である。
【0283】
実施例7-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例7-1を参照できる。相違点として、正極活物質はLiNi0.9Co0.05Mn0.05である。
【0284】
実施例8-1
1、セパレータの製造
1)PEOおよびPAMを、1.8:1の按質量で混合して第1極性物質を得、そして第1極性物質および第1増強剤としてのPVDFを80:20の質量比でNMPに溶解させ、均一に攪拌して、第1塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第1塗布層スラリーをPEベースフィルムのA面(PEベースフィルムの正極に近接する面)に塗布した。
【0285】
2)PEIおよびPEOを、1.8:1の質量比で混合して第2極性物質を得、そして第2極性物質および第1増強剤としてのPVDFを、80:20の質量比で脱イオン水に溶解させ、均一に攪拌して、第2塗布層スラリーを得て、グラビアコートにより第2塗布層スラリーをPEベースフィルムのB面(PEベースフィルムの負極に近接する面)に塗布した。
【0286】
3)工程1)で第1塗布層スラリーおよび工程2)で2塗布層スラリーが塗布されたPEベースフィルムを、60℃で1時間乾燥させ、PEベースフィルムの両面にそれぞれ第1塗布層および第2塗布層を形成させ、セパレータを製造した。
【0287】
2.正極の製造
正極活物質としてのLiNi0.4Co0.4Mn0.4、正極用接着剤としてのPVDF、導電カーボンを、97:1:2の質量比で混合して、NMPに溶解させ、6時間攪拌して正極スラリーを得て、正極スラリーをアルミニウム箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て正極を得た。
【0288】
3.負極の製造
SAおよびSBRを80:20の質量比で混合して負極用接着剤を得、さらに、負極活物質としての炭素ケイ素混合物(C:Si=95:5、Siの粒径が0.3μmである)、負極用接着剤、カーボンナノチューブを、97:2.5:0.5の質量比で混合して、水に溶解させ、6時間攪拌して負極スラリーを得て、負極スラリーを銅箔に塗布して、乾燥させ、冷間プレスを経て負極を得た。
【0289】
4.電池の製造
正極、セパレータ、負極を、セパレータの第1塗布層が正極と接触し、セパレータの第2塗布層が負極と接触するように、順に積層して、巻回してベアセルを得た。ベアセルをアルミニウムケース内に置き、トップカバーを溶接し、液注入、高温放置、フォーメーション、エージングなど工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0290】
実施例8-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOとPAMの質量比は2:1であり、第1極性物質におけるPEIとPEOの質量は2:1である。
【0291】
実施例8-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は3:1であり、第1極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は3:1である。
【0292】
実施例8-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は4.5:1であり、第1極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は4.5:1である。
【0293】
実施例8-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は5:1であり、第1極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は5:1である。
【0294】
実施例8-6
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は6:1であり、第1極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は6:1である。
【0295】
実施例8-7
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は6.3:1であり、第1極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は6.3:1である。
【0296】
比較例1
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-2を参照できる。相違点として、第1極性物質としてのPEOおよび第2極性物質としてのPEIを含まない。
【0297】
比較例2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-2を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOを含まず、第2極性物質としてのPEIの第2塗布層における比は100%である。
【0298】
比較例3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例1-2を参照できる。相違点として、第2極性物質におけるPEIを含まず、第1極性物質としてのPEOの第1塗布層における比は100%である。
【0299】
二.性能測定
1.正極表面および負極表面とセパレータ塗布層との間の剥離力の測定方法
【0300】
実施例および比較例のセパレータを切断して、長さ100mm、幅10mmの測定サンプルを得る。幅25mmのステンレス鋼板に、両面テープ(幅11mm)を貼り付け、さらに、測定サンプルをステンレス鋼板の両面テープに貼り付け、2000g圧着ローラを用いてその表面で往復ローリング(300mm/min)を3回行う。測定サンプルを180度曲げ、手動で測定サンプルの有機-無機混合層とベースフィルムを25mm剥離したあと、この測定サンプルを、剥離面が試験機の力の作用線と一致するように、試験機(例えば、INSTRON 336)に固定する。さらに、試験機で30mm/minの速度で連続的に剥離を行い、剥離力の曲線を得て、安定な区間の平均値を剥離力F0とし、以下の式で、測定サンプルにおける有機-無機混合層と集流体との間の接着力Fを算出する。
F=F0/測定サンプルの幅(Fの単位:N/m)。
【0301】
2.赤外分光測定
中国国家標準GB/T6040-2002赤外分光分析方法により、米国nicolet社のIS10型のフーリエ変換赤外分光器を使用する。実施例および比較例により得た正極スラリーを吸引ろ過して正極粉体を得る。実施例および比較例により得た第1塗布層スラリーをPEベースフィルムに塗布したあと、吸引ろ過して、PEベースフィルムを除去し、第1塗布層粉体を得る。正極粉体と第1塗布層粉体を混合して、さらに乾燥させて混合粉体を得る。赤外線で混合粉体を測定する。第2塗布層と負極の赤外線測定方法は上記と同様である。
【0302】
3.常温サイクル性能
25℃の雰囲気で、すべての実施例および比較例の電池に対して、1Cの充電電流で、上限電圧が4.35Vになるまで、定電流および定電圧充電を行う。そして、1Cの放電電流で、最終電圧が2.8Vになるまで、定電流放電を行う。このときの初期放電容量値C0を記録する。そして、すべての実施例および比較例の電池に対して、3.3-4.3Vの電圧で、0.33C0に充電し、さらに1C0に放電するように繰り返して充放電し、1000回繰り返したあとの放電容量Cnを記録する。1000回後のサイクルの容量維持率=(1000回後のサイクルの放電容量/初期サイクルの放電容量)×100%。
【0303】
4.ハイレート放電容量
25℃の雰囲気で、すべての実施例および比較例の電池に対して、1/3Cの充電電流で、上限電圧が4.35Vになるまで、定電流および定電圧充電を行う。そして、1/3C、3C、5Cの放電電流で、最終電圧が2.8Vになるまで、定電流放電を行い、そのときの放電容量値を記録する。
【0304】
5.巻回アッセンブリのサイクル膨張率の測定方法
ノギスで熱圧処理後のベアセルの厚さを測定し、サイクルを1000回繰り返したあと、セルを解体してベアセルの厚さを測定する。膨張率=(サイクル後のベアセルの直径-サイクル前のベアセルの直径)/サイクル前のベアセルの厚さ。
【0305】
上記実施例1-1~1-7の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表1に示される。
表1 実施例1-1~1-7のパラメータおよび性能測定結果
【0306】
上記実施例2-1~2-4の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表2に示される。
表2 実施例2-1~2-4のパラメータおよび性能測定結果
【0307】
上記実施例3-1~3-5の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表3に示される。
表3 実施例3-1~3-5のパラメータおよび性能測定結果

【0308】
上記実施例4-1~4-5の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表4に示される。
表4 実施例4-1~4-5のパラメータおよび性能測定結果

【0309】
上記実施例5-1~5-7の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表5に示される。
表5 実施例5-1~5-7のパラメータおよび性能測定結果
【0310】
上記実施例6-1~6-5の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表6に示される。
表6 実施例6-1~6-5のパラメータおよび性能測定結果
【0311】
上記実施例7-1~7-5の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表7に示される。
表7 実施例7-1~7-5のパラメータおよび性能測定結果
【0312】
上記実施例8-1~8-7の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表8に示される。
表8 実施例8-1~8-7のパラメータおよび性能測定結果
【0313】
上記比較例1~3の電池のパラメータおよび性能測定結果は、以下の表9に示される。
表9 比較例1~3のパラメータおよび性能測定結果
【0314】
上記結果から分かるように、表1において、w/mおよびw/mは、それぞれ、セパレータにおける第1極性物質と正極用接着剤との相対含有量関係、第2極性物質と負極における接着剤との相対含有量関係が、電池性能に対して影響を与えることを反映している。実施例1-1~1-7では、w/mおよびw/mを調整することで、電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特にw/mが(80~100):1であり、w/m(32~50):1である場合、電池性能がより良好になった。
【0315】
表2において、w/wは、セパレータにおける第1極性物質の第1塗布層における相対含有量と第2極性物質の第2塗布層における相対含有量との比が、電池性能に対して影響を与えることを反映している。実施例2-1~2-4では、w/wを調整することで、電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特にw/wが1:(1~1.3)である場合、電池性能がより良好になった。
【0316】
表3に示すように、実施例3-1~3-5では、w/wをほぼ一定値に保ち、第1極性物質の第1塗布層における質量含有量w、正極用接着剤の正極の膜層における質量含有量m、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量w、負極用接着剤の負極の膜層における質量含有量mを統合に調整することで、電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特にmが1~1.2%であり、mが2%~3%である場合、電池性能がより良好になった。
【0317】
表4に示すように、実施例4-1~4-5では、第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比を調整することで、電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特にk/kが(0.8-1):1である場合、電池性能がより良好になった。
【0318】
表5に示すように、実施例5-1~5-7では、第1極性物質の第1塗布層における質量含有量wと第1増強剤の第1塗布層における質量含有量kの質量比であるw/k、第2極性物質の第2塗布層における質量含有量wと第2増強剤の第2塗布層における質量含有量kの質量比であるw/kを調整することで、増強剤と極性物質との間に水素結合が形成されやすく、ベアセルの膨張を制限でき、電池性能を高めることができる。電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特にw/k、w/kがいずれも(5~9):1である場合、電池性能がより良好になった。
【0319】
表6において、実施例6-1~6-5は、ケイ素の粒径が電池性能に対して与える影響を反映している。電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特に、ケイ素の粒径が0.1~0.5μmである場合、電池性能がより良好になった。
【0320】
表7に示すように、実施例7-1~7-4では、三元正極材料おけるNi含有量を調整することで、ベアセルの膨張を効果的に制限でき、電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率がいずれも良好になり、特に、Ni含有量が0.5~0.9である場合、電池性能がより良好になった。
【0321】
表8に示すように、実施例8-1~8-7では、ポリオキシエチレンとポリアクリルアミドの質量比C1およびポリエチレンイミンとポリオキシエチレンの質量比C2を調整することで、電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量がいずれも良好になり、特に、C1およびC2が(2~6):1である場合、電池性能がより良好になった。
【0322】
一方、表9に示すように、比較例1~3の電池性能、例えばサイクル膨張率、1000回サイクル後の容量維持率および5C放電容量は、いずれも向上しなかった。
【0323】
また、図1に示すように、第1極性物質はPEOであり、第1増強剤はPVDFであり、正極用接着剤はPEOであり、第2極性物質はPEIであり、第2増強剤はPVDFであり、負極用接着剤はSAおよびSBRであり、負極活物質が炭素ケイ素混合物である。
【0324】
正極とセパレータとの間に、正極用接着剤としてのPVDFのFと第1極性物質としてのPEOのHとが水素結合を形成した。
【0325】
第1塗布層において、第1増強剤としてのPVDFのFと第1極性物質としてのPEOのHが水素結合を形成した。
【0326】
負極とセパレータとの間では、電気陰性度がN<O<Fであるため、炭素ケイ素混合物における-OHのHが-NHのHよりも電子が足りないので、第2極性物質としてのPEIにおける-NHのNと炭素ケイ素混合物における-OHのHが容易に水素結合を形成する。同様に、第2極性物質としてのPEIにおける-NHのNと負極用接着剤としてのSAにおける-COOHのHも水素結合を形成する。炭素ケイ素混合物における-OHのHとSAにおける-COOHのHが水素結合を形成することができる。
【0327】
第2塗布層では、第2増強剤としてのPVDFのFとPEIのHが水素結合を形成する。
【0328】
図2に示すように、3200cm-1~3600cm-1の範囲で、水素結合のピークが現れ、比較例1では第1極性物質または第2極性物質が加えられなかったので、水素結合がほとんど形成されていない。一方、実施例1ではA面とB面にいずれも水素結合が形成されたので、ピークの幅が顕著である。なお、O-H-O、F-H-O、N-H-O、F-H-Nの4つの水素結合の結合エネルギーの大きさは、F-H-O>F-H-N>O-H-O>N-H-Oとなり、25-40KJ/molの区間の結合エネルギーの差が比較的に小さく、1つの波数範囲に複数の水素結合が存在し、正常な状況で水素結合が多いほど、現れるピークが多く、その幅がさらに広い。
【0329】
なお、本出願は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態は例示的なものに過ぎず、本願の技術的思想と実質的に同一の構成や、同じ作用、効果を果たす実施形態はいずれも本出願の技術的範囲内に含まれる。また、本出願の主旨を逸脱しない限り、実施形態に対して当業者が想到できる各種の変化や、実施形態における一部の構成要素を組合せてなる他の方式も本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0330】
1…電池パック
2…上筐体
3…下筐体
4…電池モジュール
5…二次電池
51…ハウジング
52…電極ユニット
53…トップカバーアッセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
本出願において、mは、負極膜層における極用接着剤の含有量を反映することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
本出願において、mをこの範囲内に抑えることにより、負極と第2塗布層との間に確実な接着力を形成することを保証でき、ベアセルの加工過程または繰り返して使用する過程における膨張を制限できるので、電池のハイレート放電性能およびサイクル性能を向上させることができる。通常、負極用接着剤の負極板における含有量が大きすぎてはならない。 が3%よりも大きい場合、負極用接着剤の含有量が高すぎて、電子の輸送通路が詰まる。また、通常、負極用接着剤が不活性絶縁体であり、その導電性が悪く、分極現象が深刻であるので、電池のサイクル性能およびハイレート放電性能に影響を与える。さらに、負極用接着剤の負極板における含有量が小さすぎてはならない。 が2%よりも小さい場合、負極用接着剤の含有量が低すぎて、接着性が足りなくなり、負極と第2塗布層との接着力が小さくなる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0290
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0290】
実施例8-2
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOとPAMの質量比は2:1であり、第極性物質におけるPEIとPEOの質量は2:1である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0291
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0291】
実施例8-3
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は3:1であり、第極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は3:1である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0292
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0292】
実施例8-4
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は4.5:1であり、第極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は4.5:1である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0293
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0293】
実施例8-5
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は5:1であり、第極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は5:1である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0294
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0294】
実施例8-6
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は6:1であり、第極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は6:1である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0295
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0295】
実施例8-7
リチウムイオン電池の製造プロセスは、全体として実施例8-1を参照できる。相違点として、第1極性物質におけるPEOおよびPAMの質量比は6.3:1であり、第極性物質におけるPEIおよびPEOの質量比は6.3:1である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0304
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0304】
5.巻回アッセンブリのサイクル膨張率の測定方法
ノギスで熱圧処理後のベアセルの厚さを測定し、サイクルを1000回繰り返したあと、セルを解体してベアセルの厚さを測定する。膨張率=(サイクル後のベアセルの厚さ-サイクル前のベアセルの厚さ)/サイクル前のベアセルの厚さ。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0330
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0330】
1…電池パック
2…上筐体
3…下筐体
4…電池モジュール
5…二次電池
51…ハウジング
52…電極ユニット
53…カバープレート
【国際調査報告】