(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】多ピッチのワイヤラップを有する核燃料集合体
(51)【国際特許分類】
G21C 3/08 20060101AFI20230831BHJP
G21C 3/326 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G21C3/08
G21C3/326 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573703
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 US2021020958
(87)【国際公開番号】W WO2022039785
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ブライアン シー.
(57)【要約】
核燃料集合体は、燃料集合体構成要素により構成されている。当該燃料集合体構成要素は、ワイヤラップされており、かつ、燃料集合体ダクト内の複数の六角形リングに配置されている。燃料集合体の最も外側のリングに配置された燃料集合体構成要素は、燃料集合体の内部のリングに配置された燃料集合体構成要素よりも、短いピッチでワイヤラップされている。燃料集合体の外側リングにおけるピッチが短いほど、エッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルにおける冷却材流体の圧力降下が増大する。その結果、燃料集合体全体にわたる温度勾配が減少する。これにより、燃料被覆のピーク温度を実質的に上昇させることなく、原子炉のより大きな出力温度が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉用の燃料集合体であって、
第1ワイヤラッピングを有する第1燃料ピンと、
第2ワイヤラッピングを有する第2燃料ピンと、
を含み、
前記第1ワイヤラッピングは、第1ピッチを有し、
前記第2ワイヤラッピングは、第2ピッチを有し、
前記第2ピッチは、前記第1ピッチとは異なる、燃料集合体。
【請求項2】
前記第2ピッチは、前記第1ピッチよりも短い、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項3】
前記第1燃料ピンおよび前記第2燃料ピンは、燃料ダクト内に配置されており、
前記第2燃料ピンは、前記第1燃料ピンよりも、前記燃料ダクトの壁の近くに位置決めされている、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項4】
前記第2燃料ピンは、前記原子炉の出口温度を上昇させるように燃料ダクト内に位置決めされている、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項5】
前記第1燃料ピンは、第1クロッキング角度を有し、
前記第2燃料ピンは、前記第1クロッキング角度とは異なる第2クロッキング角度を有する、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項6】
前記燃料集合体は、核分裂性燃料を含む、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項7】
前記燃料集合体は、親燃料を含む、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項8】
中性子吸収体をさらに含み、
前記中性子吸収体は、前記第2ピッチを有する第2ワイヤラッピングを有する、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項9】
エッジサブチャネルにおける核燃料集合体内の冷却材流体の圧力降下を増大させるための方法であって、
前記燃料集合体の内側リング内に第1燃料集合体構成要素を配置する工程と、
前記燃料集合体の最も外側のリング内に第2燃料集合体構成要素を配置する工程と、を含み、
前記第1燃料集合体構成要素は、第1ピッチでワイヤラップされており、
前記第2燃料集合体構成要素は、前記第1ピッチよりも小さな第2ピッチでワイヤラップされている、方法。
【請求項10】
前記燃料集合体の最も外側のリング内に第2燃料集合体構成要素を配置する工程は、前記燃料集合体の前記最も外側のリング内に複数の第2燃料集合体構成要素を配置する工程を含み、
複数の前記第2燃料集合体構成要素の各々は、前記第2ピッチでワイヤラップされている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記燃料集合体の最も外側のリングから2番目のリング内に第3燃料集合体構成要素を配置する工程をさらに含み、
前記第3燃料集合体構成要素は、前記第2ピッチでワイヤラップされている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第2ピッチは、前記第1ピッチの巻き数の2倍の巻き数の巻き付けを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2ピッチは、前記第1ピッチの巻き数の4倍の巻き数の巻き付けを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1燃料集合体構成要素は、第1クロッキング角度を有し、
前記第2燃料集合体構成要素を配置する工程は、前記第1クロッキング角度とは異なる第2クロッキング角度を有するように前記第2燃料集合体構成要素を位置決めする工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第2燃料集合体構成要素は、前記第2ピッチでの第2ワイヤラップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1燃料集合体構成要素を第1クロッキング角度に位置決めする工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第1クロッキング角度とは異なる第2クロッキング角度に前記第2燃料集合体構成要素を位置決めする工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1燃料集合体構成要素は、核分裂性燃料、親燃料、中性子吸収体または中性子反射体のうちの1または複数の構成要素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記燃料集合体の最も外側のリングから2番目のリング内に第3燃料集合体構成要素を配置する工程をさらに含み、
前記第3燃料集合体構成要素は、第3ピッチでワイヤラップされており、
前記第3ピッチは、前記第1ピッチよりも小さく、かつ、前記第2ピッチよりも大きい、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2020年8月17日に出願された「MODULAR MANUFACTURE, DELIVERY, AND ASSEMBLY OF NUCLEAR REACTOR」という名称の米国仮特許出願第63/066,778号の利益を主張するものである。その内容全体は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔背景〕
典型的に、所定のサブチャネルサイズが提供され、ピン間相互作用が低減し、熱水力性能(thermal-hydraulic performance)が改善するようにワイヤラップされた(ワイヤが巻きつけられた)燃料ピンが、核燃料集合体には含まれている。典型的に、核燃料ピンには、円形ワイヤが螺旋状に巻き付けられている。ワイヤの直径は、隣り合う核燃料ピン間、および、燃料ピンと隣接するダクト壁との間の離隔距離となる。
【0003】
典型的には、冷却材がサブチャネル内を流れるとき、エッジサブチャネルと比較して内部サブチャネルにおいて、より大きな圧力降下が存在する。結果として、冷却材は、より大きな速度で、エッジサブチャネルを流れることができる。このため、燃料集合体の中央により近いところに配置された燃料ピンよりも、ダクト壁に隣接する燃料ピンから、より効率的かつより迅速に、熱が除去される。
【0004】
この結果、熱力学的に、燃料ピン全体にわたる温度勾配が生じる。この温度勾配では、燃料集合体の中央により近いところにある燃料ピンは、燃料集合体の縁部の近くにある燃料ピンよりも、大きな温度を有する。その結果、熱力学的な応力および歪みが生じ得る。
【0005】
燃料性能が改善し、ピン間相互作用が低減し、出口温度が上昇するように、燃料ピン全体にわたるこの温度勾配を減少させることは、有利であるだろう。これらの特徴およびその他の特徴は、以下の説明および図面を参照することによって、容易に明らかになるだろう。
【0006】
〔概要〕
一部の実施形態によれば、原子炉用の燃料集合体は、第1ワイヤラッピングを有する第1燃料ピンと、第2ワイヤラッピングを有する第2燃料ピンと、を含む。前記第1ワイヤラッピングは、第1ピッチを有し、前記第2ワイヤラッピングは、第2ピッチを有し、前記第2ピッチは、前記第1ピッチとは異なる。勿論、このワイヤラッピングは、例えば、中性子反射体、制御棒、親燃料(fertile fuel)等の、他の燃料集合体構成要素にも同様に適用可能である。
【0007】
一部の場合において、前記第2ピッチは、前記第1ピッチよりも短い。一例として、前記第2ピッチは、前記第1ピッチの半分、または前記第1ピッチの4分の1、または、他の何らかの乗数因子を前記第1ピッチに乗じたものであってもよい。
【0008】
前記第1燃料ピンおよび前記第2燃料ピンは、燃料ダクト内に配置されていてもよく、前記第2燃料ピンは、前記第1燃料ピンよりも、前記燃料ダクトの壁の近くに位置決め(配置)されてもよい。一部の場合において、複数の第2燃料ピンからなるリングは、複数の第1燃料ピンからなるリングよりも、前記燃料ダクトの前記壁の近くに位置決めされている。
【0009】
一部の実施形態において、前記第2燃料ピンは、前記原子炉の前記出口温度を上昇させるように燃料ダクト内に位置決めされている。
【0010】
一部の実施形態によれば、前記第1燃料ピンは、第1クロッキング(clocking)角度を有し、前記第2燃料ピンは、前記第1クロッキング角度とは異なる第2クロッキング角度を有する。一部の場合において、隣り合う燃料ピン間のワイヤ間干渉が回避されるように、様々な燃料ピンのクロッキング角度が選択される。
【0011】
一部の例において、前記燃料集合体は、核分裂性燃料を含む。一部の場合において、前記燃料集合体は、親燃料を含む。
【0012】
一部の実施形態において、前記燃料集合体は、中性子吸収体を含み、前記中性子吸収体は、前記第2ピッチを有する第2ワイヤラッピングを有する。前記中性子吸収体は、燃料ピンまたは制御棒と相互交換可能であるような形状であってもよい。
【0013】
エッジサブチャネルにおける核燃料集合体内の冷却材流体の圧力降下を増大させるための方法によれば、当該方法は、前記燃料集合体の内側リング内に第1燃料集合体構成要素を配置する工程と、前記燃料集合体の最も外側のリング内に第2燃料集合体構成要素を配置する工程と、を含む。前記第1燃料集合体構成要素は、第1ピッチでワイヤラップされており、前記第2燃料集合体構成要素は、前記第1ピッチよりも小さな第2ピッチでワイヤラップされている。
【0014】
一部の場合において、前記燃料集合体の最も外側のリング内に第2燃料集合体構成要素を配置する工程は、前記燃料集合体の前記最も外側のリング内に複数の第2燃料集合体構成要素を配置する工程を含む。複数の前記第2燃料集合体構成要素の各々は、前記第2ピッチでワイヤラップされている。
【0015】
当該方法は、前記燃料集合体の最も外側のリングから2番目のリング内に第3燃料集合体構成要素を配置する工程をさらに含んでもよい。前記第3燃料集合体構成要素は、前記第2ピッチでワイヤラップされている。
【0016】
一部の実施形態において、前記第2ピッチは、前記第1ピッチの巻き数の2倍の巻き数の巻き付け(ラッピング)を含む。一部の場合において、前記第2ピッチは、前記第1ピッチの巻き数の4倍の巻き数の巻き付けを含んでもよい。
【0017】
前記第1燃料集合体構成要素は、第1クロッキング角度を有してもよい。この場合において、前記第2燃料集合体構成要素を配置する工程は、前記第1クロッキング角度とは異なる第2クロッキング角度を有するように前記第2燃料集合体構成要素を位置決めする工程をさらに含む。
【0018】
一部の場合において、当該方法は、前記第2ピッチでの第2ワイヤラップを有する第2燃料集合体構成要素を用いる工程をさらに含む。
【0019】
当該方法の一部の例によれば、前記第1燃料集合体構成要素は、核分裂性燃料、親燃料、中性子吸収体または中性子反射体のうちの1または複数の構成要素を含んでもよい。
【0020】
一部の場合において、前記第1燃料集合体構成要素は、第1直径を有する第1ワイヤが巻き付けられおり、前記第2燃料集合体構成要素は、前記第1直径よりも小さな第2直径を有する第2ワイヤによりワイヤラップされている。一部の場合において、前記第1直径よりも小さな第2直径を有する前記第2ワイヤによりワイヤラップされた前記第2燃料集合体構成要素は、より大きな直径を有するワイヤが巻き付けられた第1燃料集合体構成要素の断面寸法よりも、大きな断面寸法を有する。言い換えれば、前記第2燃料集合体構成要素は、前記第1燃料集合体構成要素よりも太くてもよく、一部の場合において、サイズの差は、ワイヤ直径の差に相応していてもよい。
【0021】
当該方法は、前記燃料集合体の最も外側のリングから2番目のリング内に第3燃料集合体構成要素を配置する工程をさらに含んでもよい。前記第3燃料集合体構成要素は、前記第2ピッチでワイヤラップされている。
【0022】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、一部の実施形態による、ワイヤラップされた燃料ピンの模式図である。
【0023】
図2は、一部の実施形態による、核燃料集合体または核分裂モジュールの横断面図である。
【0024】
図3は、一部の実施形態による、隣り合う複数の六角形状核分裂モジュールの横断面図である。
【0025】
図4は、一部の実施形態による、複数の棒の横断面図を示す。
【0026】
図5は、一部の実施形態による、熱水力特性の改善を示す計算流体力学の結果を示す。
【0027】
〔詳細な説明〕
本開示は概して、核燃料ピン、核燃料ピン束、核燃料集合体および原子炉心に関する。当該原子炉心において、核燃料ピンは、核燃料集合体内のそれぞれの位置に応じて、種々のピッチのワイヤラッピングを有する。
【0028】
ワイヤラップされた燃料束は、ナトリウム冷却高速炉(sodium cooled fast reactor:SFR)において使用され得る、核燃料集合体の一種である。多くの場合において、SFRでは、中性子の減速および損失が低減されるように、集成形態の高密度三角形配列が用いられる。燃料ピンの周りのワイヤラッピングが、サブチャネル間の冷却材の混合を改善するために用いられる。当該ワイヤラッピングにより、燃料ピン間の離隔および支持が提供される。
【0029】
図1に関して、円形断面を有する燃料ピン100が示されている。製造中のある時点において、燃料ピン100には、核燃料が配置されることとなる。ワイヤ102が螺旋状に燃料ピンの周りに巻き付けられて、ワイヤラップされた燃料ピンが作り出される。ワイヤは、直径d104およびピッチH106を有する。一部の場合において、ピッチ106は、1:1である。すなわち、言い換えれば、ワイヤ102は、燃料ピンの長さに沿って、燃料ピンの周りを完全に一回転する。ピッチは、ワイヤが完全に回転するのに必要な、燃料ピンに沿った長さとして特徴付けてもよい。例えば、15cmのピッチは、ワイヤが完全に螺旋回転するのに必要な燃料ピンに沿った長さを示す。また、燃料ピンの長さに沿った完全なワイヤ回転の数として、ピッチを特徴付けてもよい。
【0030】
図2に関して、核燃料集合体200が模式的に示されている。当該核燃料集合体200には、多数の燃料ピン100a、100b、100nが、燃料ダクト202内に配置されている。典型的には、燃料ピンは中央ピンの周りに、リング状に配置される。燃料ピン100は、第1リング204、第2リング206、第3リング208および追加のリングにおいて、構成されていてもよい。一例として、図示された燃料集合体200は、3つのリングにおいて構成されており、その結果、37個のピン燃料束が定められている。勿論、例えば、19個のピン燃料束、61個のピン燃料束、91個のピン燃料束、127個のピン燃料束、169個のピン燃料束、217個のピン燃料束、271個のピン燃料束、331個のピン燃料束およびその他の構成等の、その他の燃料束アーキテクチャが、本明細書において想定されている。
【0031】
燃料ピン100を三角形状にまとめることにより、燃料ピン間にサブチャネルが作り出され、冷却材がサブチャネル内を流れられるようになる。内部サブチャネル210は、3つの燃料ピンによって画定される境界を有する。エッジサブチャネル212は、2つの燃料ピンと集合体ダクトとによって画定される境界を有する。コーナーサブチャネル214は、1つの燃料ピンと燃料ダクト202の角とによって画定される境界を有する。
【0032】
ワイヤラップによって、サブチャネルにおける冷却材混合が改善し、燃料被覆のピーク温度が低下する一方で、燃料集合体全体にわたる温度勾配が生み出され、燃料集合体の圧力損失が増大する。
【0033】
燃料束における温度分布の量は、サブチャネル面積に比例する。エッジサブチャネル212は、典型的には、内部サブチャネル210よりも大きな断面積を有する。それゆえ、エッジサブチャネル212は、典型的には、より小さな温度を有する。より大きな体積の冷却材が、制限がより少ない状態で、エッジサブチャネルを流れることができるからである。その結果、燃料集合体では、ピンが配置されるリングに応じて、ピン毎に異なる熱力学的結果が生じる。例示として、六角形燃料集合体が図示および説明されることになる。しかしながら、本明細書に提示された思想は、六角形燃料集合体に限定されるものではない。その他の断面および構成を有する燃料集合体に対して、現象および思想が同様に適用可能であるからである。加えて、一例として、ナトリウム冷却高速炉について説明することになる。しかしながら、本明細書に記載された思想および技術は、ナトリウム高速炉に限定されるものではない。熱スペクトルと高速スペクトルとの双方における、その他の種類の原子炉、ならびに、その他の種類の冷却材を利用する原子炉に対して、思想が適用可能であり得るからである。
【0034】
図3は、燃料集合体構成要素(例えば、核分裂性燃料を含む核燃料ピン、親燃料を含む核燃料ピンもしくはこれらの組み合わせを含む核燃料ピンのうちの1もしくは複数の核燃料ピン;制御棒;および/または、中性子反射体等)を含む複数の核分裂モジュールを示す。核分裂モジュール内の構成要素のうちいずれの構成要素がワイヤラップされてもよいが、説明を容易にするために、ワイヤラッピングは、燃料ピンと関連させて説明されることになる。しかしながら、ワイヤラップされた燃料ピンに言及する場合には、その他の燃料集合体構成要素にもその説明が適用され得るであろうこと、燃料ピンを特定して説明した部分は、適用の一例であることを、理解されたい。
【0035】
炉心に関して選択された構成とは無関係に、離隔し、長手方向に延在し、かつ長手方向に移動可能な複数の制御棒302が、制御棒案内管または被覆(図示せず)内に対称的に配置されていてもよく、これにより、所定数の核分裂モジュール304の長さが延伸されてもよい。制御棒302は、所定数の六角形状核分裂モジュール304内に配置された状態で図示されている。制御棒302によって、核分裂モジュール304内で発生する中性子分裂反応が制御される。制御棒302には、許容可能な程度に大きい中性子吸収断面積を有する、適切な中性子吸収体材料が含まれる。上記に関して、吸収体材料は、実質的に、リチウム、銀、インジウム、カドミウム、ホウ素、コバルト、ハフニウム、ジスプロシウム、ガドリニウム、サマリウム、エルビウム、ユーロピウムおよびこれらの混合物からなる群から選択された金属または半金属であってもよい。あるいは、吸収体材料は、実質的に、銀-インジウム-カドミウム、炭化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化チタン、二ホウ化ハフニウム、チタン酸ガドリニウム、チタン酸ジスプロシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択された化合物または合金であってもよい。制御棒302は、負の反応度を炉心に対して制御可能に供給する。そのため、制御棒302は、反応度管理能力を炉心に対して提供する。言い換えれば、制御棒302は、炉心全体にわたる中性子束プロファイルを制御することができる、または、炉心全体にわたる中性子束プロファイルを制御するように構成されている。このため、制御棒302は、炉心全体にわたる温度プロファイルに影響を与える。本明細書に記載されているように、制御棒は、ワイヤラップされていてもよく、第1制御棒は、第1ピッチでワイヤラップされていてもよく、第2制御棒は、第2ピッチでワイヤラップされていてもよい。
【0036】
核分裂モジュール304は、中性子的な放射性を有する必要はないものと解されたい。言い換えれば、核分裂モジュール304は、いかなる核分裂性材料も含む必要はない。例えば、核分裂モジュール304は、純粋に反射性の集合体もしくは純粋に親である(fertile)集合体、または、両者の組合せであってもよい。上記に関して、核分裂モジュール304は、核増殖材料(nuclear breeding material)を含む増殖核分裂モジュール(breeder nuclear fission module)、または、反射性材料を含む反射性核分裂モジュールであってもよい。この場合において、核分裂モジュール304は、一定のピッチおよびクロッキング角度でワイヤラップされた分裂モジュール構成要素を含んでもよい。あるいは、一実施形態において、核分裂モジュール304は、核増殖棒または反射体棒と組み合わせた燃料ピン306を含んでもよい。例えば、核分裂モジュール304には、燃料ピン306と組み合わせて、複数の親核増殖棒が配置されていてもよい。また、制御棒302が存在してもよい。核増殖棒内の親核増殖材料は、トリウム-232および/もしくはウラン-238、または、他の任意の適切な親増殖材料(fertile breeding material)であってもよい。このようにして、核分裂モジュール304は、親核増殖集合体を定めてもよい。一部の場合において、核分裂モジュール304には、燃料ピン306と組み合わせて、複数の中性子反射体棒が配置されている。また、制御棒302が存在してもよい。反射体材料は、実質的に、ベリリウム(Be)、タングステン(W)、バナジウム(V)、劣化ウラン(U)、トリウム(Th)、鉛合金およびこれらの混合物からなる群から選択された材料であってもよい。また、反射体棒は、多種多様の鋼合金から選択されてもよい。このようにして、核分裂モジュール304は、中性子反射体集合体を定めてもよい。さらに、核分裂モジュール304には、核燃料ピン306、制御棒302、増殖棒および反射体棒の任意の適切な組合せが含まれ得ることを、炉心内核燃料管理の当業者であれば理解し得る。本明細書に開示されている通り、開示された核燃料集合体構成要素の任意の組合せにおいて、個々の棒がワイヤラップされていてもよい。棒の組み合わせは、六角形のマトリックスにおいて形成されてもよく、少なくとも部分的に、ワイヤラッピングに依存して、様々な棒間の空間を作り出してもよい。燃料集合体構成要素上のワイヤラッピングは、第1ピッチ、第2ピッチ、第3ピッチ、第4ピッチ、または他の何らかの構成でラッピングされてもよい。
【0037】
分裂モジュール全体にわたって圧力が変化するのに比例して、温度が変化する。滑らかなパイプに沿った流れの摩擦による圧力損失は、以下の通り計算され得る:
【0038】
【0039】
ここで、ρは密度、vは冷却材の平均速度、Lは管の長さ、dhは流路の水力直径である。摩擦因子は、レイノルズ数の関数として計算され得る。しかしながら、一般には、より小さなピッチのワイヤラップの値は、サブチャネルに沿ってのより大きな摩擦と相関することが認められている。このため、ピッチの値を小さくすると、摩擦因子が大きくなる。
【0040】
燃料ピンとスペーサワイヤとの間の接触領域では、特にスペーサワイヤの後流において、冷却材流速度が著しく減少する。これらの場所では、中性子束に影響を及ぼし得る冷却材の蒸気温度を超えて、燃料ピン表面が加熱され得る。関連文献によれば、混合装置がない場合、核沸騰からの逸脱は、まず中央燃料ピン上で起こり、次いで、方位的に(azimuthally)隣接する燃料ピンに面する場所において、優先的に起こることが認められている。巻き付けられたワイヤ等の混合装置がある場合、限界熱流束(critical heat flux)はより大きくなる;しかしながら、核沸騰からの逸脱の場所は、少なくとも、冷却材の圧力および質量速度に依存する。一部の実施形態によれば、核沸騰からの逸脱の影響が緩和し、限界熱流束が増大するように、エッジサブチャネルから内部サブチャネルに向かって、冷却材が流れるようにされる。
【0041】
核分裂モジュール内の冷却材流れは主に、軸方向の方向性のある流れであり、サブチャネル内に二次流れを伴っている。この方向性のある流れは、スペーサワイヤによって乱され得る。スペーサワイヤによって、燃料ピンの周りの当該スペーサワイヤの回転に流れが従い、ワイヤの後流において乱流が生じる。従来の多くの場合において、ワイヤラップのクロッキングは、燃料集合体内の燃料ピン全体にわたって、一定のままであった。クロッキング、すなわちクロッキング角度(計時角度)は、燃料ピン上のワイヤラップの開始点を指し示す。例えば、
図2に示すように、燃料ピンは、一定の開始クロッキング角度を有する。当該開始クロッキング角度は、ワイヤラップが2:00の位置にあることを示している。さらに、ワイヤラップのピッチは、ワイヤ間干渉接触点を回避する六角形メッシュが形成されるように、全ての燃料ピンにわたって一定である。
【0042】
これらのパラメータを考慮すると、燃料ピンは、局所最大温度Tmaxに曝され得、燃料集合体は、平均出口温度Tavgに曝され得る。一般に、燃料ピン上の熱機械的な応力および歪みの限界を超えないように、また、半径方向膨張、軸方向変形、曲げ等によって引き起こされるピン間相互作用が管理されるように、燃料ピンが曝されるTmaxが制御されるべきであるだろう。
【0043】
燃料集合体は、全体として、特定のホットスポットにおいて、Tmaxにさらに曝される。当該特定のホットスポットは、燃料集合体内の構成要素の熱機械的限界未満に留まるように強いられていることが好ましい。燃料集合体のTmaxとTavgとの間の温度差(ΔT)を減少させることは有利であるだろう。これにより、正味の効果として、熱機械的設計限界内にTmaxを維持しつつ、燃料ピン被覆のピーク温度を実質的に上昇させることなく、全体的出口温度(overall outlet temperature)が上昇するだろう。
【0044】
これらの利点を達成するために、一部の実施形態によれば、燃料集合体内の燃料集合体構成要素の少なくとも一部の構成要素(例えば、燃料ピン、制御棒等)は、その他の燃料集合体構成要素とは異なるピッチでワイヤラップされていてもよい。例えば、一部の例によれば、ワイヤラップされた複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングは、複数の燃料集合体構成要素の内側の複数のリングよりも短いピッチを有する。同様に、ワイヤラップされた複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングから2番目のリングは、複数の燃料集合体構成要素の内側の複数のリングよりも短いピッチを有してもよい。特に、ワイヤラップされた複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングから2番目のリングは、複数の燃料集合体構成要素のこの外側リングとは異なるピッチを有してもよい。本明細書において使用されているように、燃料集合体構成要素という語は、広義の語であり、燃料集合体内に配置され得る任意の構成要素を指す。限定するものではないが、燃料集合体構成要素には、核分裂性燃料棒、親燃料棒、中性子反射体、制御棒が含まれる。多くの場合において、これらの燃料集合体構成要素の各々は、その他の燃料集合体構成要素と相互交換可能であるような形状であってもよい。説明には主に、燃料ピンおよび例示的な燃料集合体構成要素が用いられることとなる。しかしながら、特に、燃料ピンがその他の燃料集合体構成要素と相互交換可能であるようなサイズおよび形状である場合において、燃料ピンを一例として用いる説明は、そのように限定されるべきではないものと理解されたい。
【0045】
一部の例において、隣り合う燃料集合体構成要素間のピッチの差は、半ピッチの差である。例えば、複数の燃料集合体構成要素の内側の複数のリングは、一例として、50cmのピッチを有してもよい。言い換えれば、ワイヤラッピングは、燃料ピンの軸方向長さに沿って、50cm毎に完全に一回転する。複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングから2番目のリングは、25cm(50cmの半分)のピッチを有してもよく、複数の燃料集合体構成要素の外側リングは、12.5cm(25cmの半分)のピッチを有してもよい。勿論、異なる3つのピッチ、または、異なる2つのピッチに限定されない、異なるピッチの数のように、その他のピッチが本明細書において想定されている。
【0046】
図4に示すように、多ピッチのワイヤラップを実施する燃料集合体200により、図示されているように、全体的圧力降下(overall pressure drop)を増大させることなく、または、燃料集合体200の熱機械的設計限界をT
maxが超えることなく、出口温度が上昇できるようになる。
【0047】
一部の実施形態によれば、中央の燃料ピン400および複数の燃料ピンの第1リング402は、第1クロッキング角度および第1ピッチを有するワイヤラッピングで形成されてもよい。複数の燃料ピンの外側リング410の1または複数の燃料ピンが第2ピッチでワイヤラップされた状態で、複数の燃料ピンの外側リング410が形成されてもよい。一部の場合において、複数の燃料ピンの外側リング410の1または複数の燃料ピンは、第1クロッキング角度とは異なるクロッキング角度を有する。典型的なワイヤラップされた燃料集合体では、一定のピッチおよび一定のクロッキング角度で、燃料ピンの周りにワイヤが螺旋状に巻き付けられており、これにより、ワイヤ間の干渉が直接的に回避される。しかしながら、ワイヤラップのクロッキング角度またはピッチを変化させると、ワイヤ間干渉を回避することがより困難となる。同様に、複数の燃料ピンの最も外側のリングから2番目のリング404における1または複数の燃料ピンは、第2ピッチ、または第3ピッチを有してもよい。
【0048】
一部の実施形態によれば、クロッキング角度を変化させることによって2以上のピッチを利用しつつ、ワイヤ間干渉を回避するためのソリューションが提示される。かかるソリューションを、37個のピンの例示的燃料束に関して、
図4に示す。一部の場合において、複数の内部サブチャネルを定めるために協働する複数の燃料ピンのうちの多くの燃料ピンまたは大部分の燃料ピンは、一定の第1ピッチおよび典型的なワイヤラップで形成されている。当該典型的なワイヤラップには、1回の巻き数、2回の巻き数、3回の巻き数、4回の巻き数、5回の巻き数、6回の巻き数、7回の巻き数、8回の巻き数、9回の巻き数またはそれ以上の巻き数で、燃料ピンの長さに沿って螺旋巻きしたワイヤラップが含まれ得る。一例として、一部の典型的なワイヤラップピッチは、約8cm~約100cmである。すなわち、ワイヤラッピングでは、燃料ピンの軸方向長さの約8cm毎~約100cm毎に、完全な螺旋回転が燃料ピンの周りで行われる。勿論、これらの値は例であり、本明細書に提示された思想に基づいて、その他のピッチが完全に可能である。
【0049】
一部の場合において、外側リング410の1または複数の燃料ピンは、第1ピッチとは異なる第2ピッチでのワイヤラップによって形成されてもよい。一部の場合において、第2ピッチは、0.5の因子だけ、または、何らかの整数の倍数因子だけ、第1ピッチから変化する。例えば、第1ピッチが40cmである場合、第2ピッチは20cmであってもよい。一部の場合において、第2ピッチは、第1ピッチの半分、第1ピッチの4分の1、または、他の何らかの整数乗数因子を第1ピッチに乗じたものである。同様に、最も外側のリングから2番目のリング404の1または複数の燃料ピンは、第2ピッチで形成されてもよく、または、第1ピッチおよび第2ピッチとは異なる第3ピッチで形成されてもよい。勿論、その他の因子を用いて、燃料ピン間でピッチを変化させてもよく、ワイヤ間干渉を回避するためのソリューションは、クロッキング角度を変化させることによって解決されてもよい。
【0050】
一部の実施形態によれば、複数の燃料ピンの外側リング410に関連する燃料ピンは、複数の燃料ピンの内側の複数のリングよりも短いピッチを有する。一部の場合において、最も外側の2つのリングは、複数の燃料ピンの内側の複数のリングよりも、短いピッチを有する。一部の実施形態によれば、外側の複数のリングに向かってピッチがより短くなることで、エッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルにおける圧力降下が増大する。これにより、燃料集合体全体にわたる温度分布が均一になることが示されている。その結果、ΔTが減少し、出口温度が上昇する。多くの場合において、出口温度の価値ある上昇は、被覆のピーク温度を上昇させることなく起こる。これにより、実質的な利点がもたらされる。例えば、一部の場合において、燃料集合体ダクトに隣接するサブチャネルにおける圧力降下を増大させることで、出口温度が20℃上昇することが示されている。結果として、プラント運転時の効率が、1%向上し得る。
【0051】
さらに、熱水力学(thermal hydraulics)を超える多数の利点がある。例えば、複数の燃料ピンの外側リングのピッチが減少すると、燃料ダクトに沿って追加の接触点が加わることで、ピン‐ダクト間の相互作用力が減少する。ピンとダクトとの間の相互作用は、ワイヤとダクトとの間の追加の接触点によって、より大きな表面積にわたって広がる。実際的な結果として、燃料ピンは、増大した熱歪みを、過剰なピン‐ダクト間の相互作用を引き起こすことなしに受け得る。
【0052】
図5に関して、計算流体力学(computational fluid dynamics)(「CFD」)モデリングを、19個のピンの燃料集合体に対して実行した。ここでは、複数の燃料ピンの外側リングのピッチ長さを、複数の燃料ピンの内側の複数のリングのピッチ長さの半分として、モデリングがなされている。この結果、より多くの流れが、主流の方向からより離れた角度に方向付けられることとなる。これにより、外側の複数のチャネルにおいて、より多くの圧力降下が生じる。そして、より冷たい縁部の流体は、エッジチャネルから離れるように集合体内に押し戻されがちとなる。その結果、冷却材がより効率的に混合し、燃料集合体全体にわたって、ΔTが減少する。
【0053】
ある実施例では、複数の燃料ピンの外側リングおよび複数の燃料ピンの最も外側のリングから2番目のリングを、半分の長さのピッチとしてモデリングした。その結果、TmaxとTavgの間には、7.6℃の減少が起こった。別の実施例では、複数の燃料ピンの外側リングのピッチが、複数の燃料ピンの内側の複数のリングと比較して4分の1の長さのピッチを有する場合について、モデリングした。その結果、ΔTは、21℃減少した。内部サブチャネルの面積と比較したときのエッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルの面積は、このアプローチが、より大きな束サイズ(例えば、169個のピン、217個のピン、271個のピンまたはその他のサイズの燃料束等)に対しても有効であることを示すものと考えられる。
【0054】
一部の実施形態によれば、エッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルにおける圧力降下を増大させることで、燃料束の内部サブチャネルに向かって冷却材が流れざるを得なくなる。1または複数の燃料ピンに、その他の燃料ピンよりも短いピッチで巻き付けられたワイヤを設けることによって、圧力降下を増大させてもよい。また、1または複数の燃料ピンに、外側リングまたは最も外側のリングから2番目のリングに向かって、より小さな直径を有するワイヤを設けることによって、エッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルにおける圧力降下を増大させてもよい。追加的または代替的に、より細い直径を有するワイヤが巻き付けられた燃料集合体構成要素を、相対的により太いワイヤを有するその他の燃料集合体構成要素と比較して、より大きな断面直径を有するように作製してもよい。その結果、スペーサワイヤの直径がより小さいせいで燃料集合体構成要素どうしが互いに接近するため、エッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルはより小さくなる。これにより、さらに、これらの場所における中性子束(および温度)が増大する。他の実施例では、dスペーサ、ダミーピン、またはその他の変位要素のうちの1または複数の変位要素を適用することで、全ての燃料集合体構成要素にわたって同じワイヤピッチを任意選択的に維持しつつ、エッジサブチャネル内およびコーナーサブチャネル内における流れを低減してもよい。
【0055】
燃料ピンのワイヤラップピッチに焦点を当てた説明がなされているが、多ピッチのワイヤラップ燃料束に対するソリューションには、燃料束内のその他の構成要素、例えば、制御棒、親燃料棒、反射体棒等への多ピッチのワイヤラップが含まれてもよいものと解されたい。これらの語を、「燃料集合体構成要素」と称してもよい。内部の燃料集合体構成要素は、第1ピッチでワイヤラップされてもよく、外部の燃料集合体構成要素は、第1ピッチよりも短い第2ピッチでワイヤラップされてもよい。外部の燃料集合体構成要素には、複数の燃料集合体の外側リング、複数の燃料集合体の最も外側のリングから2番目のリング、および/または最も外側のリングから3番目のリングに配置された燃料集合体構成要素が含まれる。明確さのため、最も外側のリングから2番目のリングとは、最も外側のリングに隣接する、複数の燃料集合体構成要素の六角形リングである。最も外側のリングから3番目のリングとは、最も外側のリングから3番目の、複数の燃料集合体構成要素の六角形リングである。最も外側のリングから4番目のリングとは、最も外側のリングから4番目の、複数の燃料集合体構成要素の六角形リングである。一部の実施形態によれば、最も外側のリングから3番目のリング内の1または複数の燃料集合体構成要素は、内側リングの燃料集合体構成要素とは異なるピッチでワイヤラップされている。一部の実施形態によれば、最も外側のリングから4番目のリング内の1または複数の燃料集合体構成要素は、内側リングの燃料集合体構成要素とは異なるピッチでワイヤラップされている。一部の場合において、外側リング、最も外側のリングから2番目のリング、最も外側のリングから3番目のリング、および/または、最も外側のリングから4番目のリングにおける複数の燃料集合体構成要素のうちの1または複数の燃料集合体構成要素は、隣接するリングにおけるその他の燃料集合体構成要素とは異なるピッチでワイヤラップされており、内側の複数のリング内に配置された燃料集合体構成要素とは異なるピッチで巻き付けられていてもよい。例えば、内側の燃料集合体構成要素は、第1ピッチでワイヤラップされてもよく、最も外側のリングから3番目の燃料集合体構成要素は、第1ピッチよりも短い第2ピッチでワイヤラップされてもよく、最も外側のリングから2番目の燃料集合体構成要素は、第2ピッチよりも短い第3ピッチでワイヤラップされてもよく、かつ/または、最も外側の燃料集合体構成要素は、第3ピッチよりも短い第4ピッチで巻き付けられていてもよい。
【0056】
一部の実施形態において、内側の複数のリングは、複数の燃料集合体構成要素の外側の複数のリングよりも燃料集合体の中央の近くに配置された、複数の燃料集合体構成要素の複数の六角形リングである。一部の実施形態によれば、複数の燃料集合体構成要素の内側の複数のリングは、第1ピッチでワイヤラップされており、複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングは、第2ピッチでワイヤラップされており、第2ピッチは、第1ピッチよりも短い。一部の場合において、複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングから2番目のリングもまた、第2ピッチでワイヤラップされている。
【0057】
図4に示すように、1または複数の燃料集合体構成要素のクロッキング角度は、ワイヤ間干渉が回避されるように、その他の1または複数の燃料集合体構成要素に対してずれていてもよい。ワイヤ間干渉が回避されるようにクロッキング角度を変化させることによって2以上のピッチを利用する、各々のワイヤラップされた燃料集合体に対するソリューションが存在すると考えられる。多ピッチでワイヤラップされた燃料集合体構成要素に対するクロッキング角度ソリューションは、
図4および
図5に示されている。
図4および
図5では、一ソリューションが提示され、モデリングされている。これは、出口温度に対する実質的な影響を示している。
【0058】
一部の例によれば、複数の燃料集合体構成要素の1または内側の複数のリングは、第1ピッチでワイヤラップされており、複数の燃料集合体構成要素の外側リングは、第1ピッチとは異なる第2ピッチでワイヤラップされており、1または複数のその他の燃料集合体構成要素は、第1ピッチおよび第2ピッチとは異なる第3ピッチでワイヤラップされている。一部の実施形態において、第1燃料集合体構成要素は、第1ピッチでワイヤラップされており、第2燃料集合体構成要素は、第2ピッチでワイヤラップされており、第3燃料集合体構成要素は、第3ピッチでワイヤラップされている。例えば、第1燃料集合体構成要素、第2燃料集合体構成要素および第3燃料集合体構成要素の間で、ピッチが半分になっていてもよい。その結果、隣り合うピン間のワイヤ間干渉を回避するための一ソリューションが得られる。一例として、1または複数の内部燃料集合体構成要素は、30cmのピッチでワイヤラップされていてもよく、複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングから2番目のリングは、15cmのピッチ(30cmの半分)でワイヤラップされていてもよく、外側リングは、7.5cmのピッチ(15cmの半分)でワイヤラップされていてもよく、結果として、隣り合う燃料集合体構成要素間のワイヤ間干渉を回避するための一ソリューションが得られうる。
【0059】
一部の例において、複数の燃料集合体構成要素の内側の複数のリングは、第1ピッチで巻き付けられており、第1クロッキング角度で開始する。一部の実施形態によれば、複数の燃料集合体構成要素の最も外側のリングは、第1ピッチとは異なる第2ピッチで、かつ、可変的なクロッキング角度で、ワイヤラップされている。当該可変的なクロッキング角度は、第1クロッキング角度に等しいクロッキング角度か、または、第1クロッキング角度から30°もしくは60°の増分だけ回転したクロッキング角度か、のいずれかのクロッキング角度である。一部の実施形態において、第2ピッチは、第1クロッキング角度に等しいか、または、第1クロッキング角度から30°の増分だけ回転したものか、のいずれかである。一部の実施形態において、第2ピッチは、第1クロッキング角度に等しいか、または、第1クロッキング角度から60°の増分だけ回転したものか、のいずれかである。一部の実施形態において、第2ピッチは、第1クロッキング角度に等しいか、または、第1クロッキング角度から120°の増分だけ回転したものか、のいずれかである。一部の実施形態において、第2ピッチは、第1クロッキング角度と同じであってもよく、または、第1クロッキング角度から45°の増分だけ回転したものであってもよい。
【0060】
記載された実施形態は特に、原子炉出口温度が所望の温度よりも小さな温度であり得る原子炉設計に関連している。本明細書に記載されているように、複数の燃料ピンのうちの少なくとも一部の燃料ピン上における異なるピッチのワイヤラップを活用することで、出口温度を、所望の出口温度に増大させ得る。
【0061】
一部の実施形態によれば、エッジサブチャネルおよびコーナーサブチャネルにおける圧力降下を増大させるための方法は、内部のリング位置における燃料集合体構成要素がワイヤラップされているよりも小さな第2ピッチでワイヤラップされた燃料集合体構成要素を、燃料集合体内の外側リング位置に設ける工程を含む。
【0062】
本開示は、例示的な実施形態を提示するものである。それゆえ、本開示は、いかなる点においても、本開示の実施形態の範囲および添付した特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特定された機能およびそれらの関係の実装を示す機能構成ブロックの助けを借りつつ、実施形態を上述してきた。本明細書において、これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、任意に定められている。特定された機能およびそれらの関係が適切に実施される程度に、代替的な境界が定められてもよい。
【0063】
本開示の実施形態の一般的性質は、本開示の実施形態の一般的思想から逸脱することなく、当業者の知識を適用することで、様々な応用のために特定の実施形態を他者が過度の実験なしに容易に修正および/または適合し得る程度に十分に、かかる特定の実施形態の前述した説明によって明らかとなるだろう。それゆえ、かかる適合および修正は、本明細書に提示された教示および導きに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の中にあることが意図されている。本明細書における語法または用語は、本明細書に提示された教示および導きに照らして、当該本明細書の用語または語法が当業者によって解釈されるように説明することを目的とするものであって、限定を目的とするものではない。
【0064】
本開示の実施形態の広さおよび範囲は、上述した例示的実施形態のいずれの実施形態によっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ画定されるべきである。
【0065】
別段の定めのない限り、または、使用された文脈内で別様に理解されない限り、とりわけ「し得る」、「し得るだろう」、「してもよいだろう」または「してもよい」等の、条件に関する語は概して、特定の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含み得る一方で、他の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含まないことを伝えることを意図したものである。このように、かかる条件に関する語は概して、特徴、要素および/もしくは動作が何らかの形で、1もしくは複数の実装形態に求められることを意図するものではなく、または、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態に含まれるものなのか、あるいは、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態において実行されるべきものなのかを判定するための論理が、ユーザ入力もしくはプロンプトの有無とは無関係に、1もしくは複数の実装形態に必ず含まれることを意図するものではない。
【0066】
明細書および添付した図面には、分離機器の制御および最適化を提供し得る、システム、装置、デバイスおよび技術の例が開示されている。勿論、本開示の様々な特徴を説明する目的のために、要素および/または方法の考えられる全ての組合せについて述べることは不可能である。しかしながら、当業者には、開示された特徴のさらなる多数の組合せおよび置換が可能であることが認識される。したがって、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正が行われ得る。さらに、明細書および添付した図面について考察することで、また、本明細書に提示された、開示された実施形態を実施することで、本開示のその他の実施形態が明らかとなり得る。本明細書および添付した図面において提示された実施例は、あらゆる点において、限定的なものではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらの用語は一般的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定を目的として使用されたものではない。
【0067】
一部の実装形態において、上に論じたプロセス、システムおよび構成によって提供される機能が、代替的な方法で提供され得ることを、当業者ならば理解するだろう。図示され本明細書で説明された様々な方法、構成および配置は、例示的な実施形態を表すものである。以上から、本明細書には特定の実装形態が例示の目的で記載されているが、添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲において列挙された要件から逸脱せずに、様々な修正が行われ得ることが理解されるだろう。加えて、特定の態様が特定の特許請求の形態において以下に提示されているが、本発明者らは、利用可能な任意の特許請求の形態において、様々な態様を想定している。例えば、一部の態様のみが特定の構成において具現化されるものとして目下、説明がなされ得る一方で、その他の態様が同様に、そのようにして具現化され得る。本開示の利益を得る当業者には明らかであろうような様々な修正および変更が行われ得る。全てのかかる修正および変更を包含することが意図されている。したがって、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味において、上記の説明が考察されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】一部の実施形態による、ワイヤラップされた燃料ピンの模式図である。
【
図2】一部の実施形態による、核燃料集合体または核分裂モジュールの横断面図である。
【
図3】一部の実施形態による、隣り合う複数の六角形状核分裂モジュールの横断面図である。
【
図4】一部の実施形態による、複数の棒の横断面図を示す。
【
図5】一部の実施形態による、熱水力特性の改善を示す計算流体力学の結果を示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】