(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】化学療法誘発性下痢を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20230831BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230831BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230831BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P1/12
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578560
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2020038691
(87)【国際公開番号】W WO2021257089
(87)【国際公開日】2021-12-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508314755
【氏名又は名称】ナポ ファーマシューティカルズ インク.
【氏名又は名称原語表記】NAPO PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】コンテ リサ エー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA06
4C084ZA731
4C084ZA732
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA73
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書に提示されるものは、それを必要とする患者に、下痢を治療するのに十分な量の塩化物イオン輸送の阻害剤を投与することによって、下痢を治療する方法である。下痢の治療としては、下痢、並びに疼痛、腹部不快感及び下痢に関連する他の症状の治療が挙げられる。一実施形態において、塩化物イオン輸送の阻害剤はクロフェレマーである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法を受けるヒト対象における化学療法誘発性下痢(CID)を治療する方法であって、それを必要とする対象に、CIDを治療するための有効量のクロフェレマーを含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
クロフェレマーが、他の化学療法剤と組み合わせて投与されうる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロフェレマーが、化学療法と同時に投与されて、CIDの発症を低下させる、又は遅延させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クロフェレマーが、化学療法の前に投与されて、CIDの発症を予防する、低下させる、又は遅延させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
クロフェレマーが、化学療法の後に投与されて、CIDの発症を低下させる、又はCIDを治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化学療法が、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格攪乱性物質(タキサン)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチドアナログ及び前駆体アナログ、ペプチド抗生物質、白金ベース作用剤並びにレチノイドから選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
化学療法が、1又は2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アキシチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、ルキソリチニブ、ネラチニブ、ボスチニブ、パゾパニブ、アファチニブ、レンバチニブ、ツカチニブ、バンデタニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダコミチニブ、及びバラチニブから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)TKI(例えば、クリゾチニブ、セリチニブ及びアレクチニブ)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
化学療法が、ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤が、アルペリシブである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化学療法が、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)4/6/阻害剤であり、アベマシクリブでもよい、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
化学療法が、1又は2つ以上のHER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
HER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤が、RG7116、RG1273(ペルツズマブ、Perjeta(登録商標))、RG3502(トラスツズマブエムタンシン、T-DMI)、RG597(トラスツズマブ、ハーセプチン)、RGA201(RG7160)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ダコミチニブ(PF-00299804)、PF-05280014(Pfizer社のRG597のバイオ後続品mAB)から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
クロフェレマーが、対象がCIDの症状を呈し始めた後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
クロフェレマーが、化学療法による治療の期間にわたり投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
クロフェレマーが、CIDの症状が軽快するまで投与され、次いでクロフェレマーが中止される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
投与することが、それを必要とする対象に、クロフェレマーを1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり約500mg投与すること、1日当たり約1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、約250mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
クロフェレマーが、腸溶性コーティング経口剤形として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
クロフェレマーが、腸溶性コーティングされていない経口剤形として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
対象が、クロフェレマーの投与なしでは耐容できなかった化学療法剤を耐容できる、又は、クロフェレマーの投与なしで耐容できた投与量よりも、より高い投与量の化学療法剤を耐容できる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
対象が、1日当たりの便通の回数の減少、1日当たりの水様便通の回数の減少、毎日の腹部の疼痛又は不快感スコアの改善、毎日の便の粘稠度のスコアの改善、便の粘稠度の減少、対象が切迫感を経験した1週間当たりの日数の減少、対象が大便失禁を経験した1週間当たりの日数の減少、又は下痢の著しい悪化での予定外の来診の減少のうちの1又は2つ以上を示す場合、前記対象が治療されたと考えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
投与が、Common Toxicity Criteriaによる下痢のグレードの、1、2又は3グレードの低下をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
対象が、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、腎臓がん、甲状腺がん、口腔又は中咽頭がん、星細胞腫、肉腫、中皮腫、髄膜腫、リンパ腫、骨髄腫、頭頸部がん、肺がん、癌腫(例えば、扁平上皮癌)、悪性黒色腫、腹膜がん、胃がん、肝臓がん、結腸直腸がん、胆嚢がん、骨がん、膵臓がん、舌がん、食道がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、それらの転移及び白血病から選択されるがんを治療する化学療法を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
HER陽性乳がんの化学療法を受けるヒト対象におけるCIDを治療する方法であって、前記ヒト対象に、クロフェレマー125mgを1日2回の用量で含む組成物を投与することを含み、前記化学療法が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ドセタキセル、パクリタキセル若しくはネラチニブ、又はこれらの組合せであり、カルボプラチンを伴う、又は伴わない、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下痢を予防する、軽快させる、及び/又は治療する方法を対象とする。より具体的には、本明細書に提示される方法は、化学療法剤と組み合わせたプロアントシアニジン、例えばクロフェレマーを使用して、化学療法誘発性下痢(CID、chemotherapy-induced diarrhea)を予防する、軽快させる、又は治療する。
【背景技術】
【0002】
下痢は、ヒトがん患者において一般的に生じるものであり、放射線療法、化学療法剤、身体能力の低下、移植片対宿主疾患及び感染、又はこれらの組合せに起因しうる。特に、化学療法誘発性下痢(CID)は、とりわけ進行したがん患者において一般的であり、化学療法レジメンに関連する、又は関連しない病因について評価されなければならない[Gibson, R. and Stringer, A., Curr Opin Support Palliat Care 3: 31-35, 2009]。注意深い分析は、下痢症状のより優れた管理をもたらして、不可逆性になりうる重大な合併症を予防することができる[Davila, M. and Bresalier, R., Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol 5: 682-696, 2008;Vincenzi, B. et al. Nat Clin Pract Oncol 5: 455-465, 2008]。続発症としては、脱水状態、栄養不良、心血管性の問題、及び死亡さえも挙げることができる。
【0003】
CIDは、化学療法レジームに応じてきわめて頻発であり、患者、とりわけ5-フルオロウラシルボーラス、又はイリノテカン及びフルオロピリミジン(IFL、XELIRI)のいくつかの併用療法で治療された者に約50~80%の有病率と見積もられた[Benson, A. et al. J Clin Oncol 22: 2918-2926, 2004;Gibson, R. and Stringer, A., Curr Opin Support Palliat Care 3: 31-35, 2009]。チロシンキナーゼ阻害剤及び抗体の分子の標的アプローチにかかわらず、下痢は、患者の60%までに一般的な副作用であり、10%までが重大な下痢を有する。更に、基礎的な病態生理はなお調査中である。
【0004】
一般的に下痢を引き起こす治療剤としては、5-フルオロウラシル(5-FU、5-fluorouracil)、カペシタビン及びイリノテカン(CPT-11)が挙げられる[Benson, A. et al. J Clin Oncol 22: 2918-2926, 2004;Keefe, D. et al. Semin Oncol Nurs 20: 38-47, 2004]。これは、多くの場合用量依存的な有害作用であり、毒性の他の特徴に関連しうる。CIDは、多因性プロセスと思われ、それによって腸粘膜への急性の損傷(腸上皮の欠損、表在性壊死及び腸壁の炎症を含む)が、小腸における吸収と分泌との間で平衡失調を引き起こす[Keefe, D. et al. Gut 47: 632-637, 2000;Keefe, D. Support Care Cancer 15: 483-490, 2007;Gibson, R. and Stringer, A., Curr Opin Support Palliat Care 3: 31-35, 2009]。
【0005】
治療されないままだと命を脅かす胃腸症候群は、National Cancer Instituteの支援を受けた共同グループトライアル2件により、重症合併症と認識されている。これらのトライアルは、進行した結腸直腸がんのためのイリノテカンと高い用量のフルオロウラシル及びロイコボリンとで生じる早期の毒性死について概説しており、この重症合併症に対する慎重なモニタリング及び積極的な療法必要性を強調している[Conti, J. et al. J Clin Oncol 14: 709-715, 1996;Arbuckle, R. et al. Oncologist 5: 250-259, 2000;Saltz L. et al. N Engl J Med 343: 905-914, 2000]。加えて、下痢は、生存率に最大の影響を与えうる投与の遅延、低下、又は代替作用剤の使用を引き起こすことにより、がんに対する化学療法及び他の治療を妨げることがある[Engelking, C. et al., Oncol Nurs Forum 25: 859-860 1998;Ippoliti, A., Am J Health Syst Pharm 55: 1573-1580, 1998]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gibson, R. and Stringer, A., Curr Opin Support Palliat Care 3: 31-35, 2009
【非特許文献2】Davila, M. and Bresalier, R., Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol 5: 682-696, 2008
【非特許文献3】Vincenzi, B. et al. Nat Clin Pract Oncol 5: 455-465, 2008
【非特許文献4】Benson, A. et al. J Clin Oncol 22: 2918-2926, 2004
【非特許文献5】Keefe, D. et al. Semin Oncol Nurs 20: 38-47, 2004
【非特許文献6】Keefe, D. et al. Gut 47: 632-637, 2000
【非特許文献7】Keefe, D. Support Care Cancer 15: 483-490, 2007
【非特許文献8】Conti, J. et al. J Clin Oncol 14: 709-715, 1996
【非特許文献9】Arbuckle, R. et al. Oncologist 5: 250-259, 2000
【非特許文献10】Saltz L. et al. N Engl J Med 343: 905-914, 2000
【非特許文献11】Engelking, C. et al., Oncol Nurs Forum 25: 859-860 1998
【非特許文献12】Ippoliti, A., Am J Health Syst Pharm 55: 1573-1580, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、化学療法を受けるヒト対象における薬物に関連した下痢は、重要な未だ対処されていない臨床的な必要性を表し、より有効な管理が必要となる。現在処方されている療法は部分的にのみ有効であり、又は許容されない副作用、例えば便秘及び嗜癖の可能性に悩まされる。薬物間相互作用、薬物代謝に対する効果又は乱用可能性に関して低い可能性を有する、化学療法に関連する下痢を治療するための薬物の開発は、化学療法を受ける対象に重要な利益をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示されているものは、化学療法レジメンが施される、又は施されているヒト対象における下痢を予防する、軽快させる、及び/又は治療する方法である。一実施形態において、本明細書に提示される方法は、化学療法誘発性下痢(CID)を予防する、軽快させる、又は治療する。
【0009】
一態様において、本明細書に提供されるものは、特にがん治療のための化学療法を受けるヒト対象におけるCIDを治療する方法であって、それを必要とする対象に、C.レクレリ(C.lechleri)由来の有効量のプロアントシアニジンポリマー組成物を含む組成物を投与して、CIDを治療する、軽快させる又は予防することを含む、方法である。ある特定の実施形態において、クロフェレマーは腸溶保護製剤である。ある特定の実施形態において、化学療法は、がんを治療する、軽快させる、管理する又は予防するために投与される。
【0010】
ある特定の実施形態によれば、クロフェレマーは、他の化学療法剤と組み合わせて投与されうる。
【0011】
一実施形態において、クロフェレマーは、化学療法の投与と同時に投与されて、CIDの発症を低下させる又は遅延させる。
【0012】
ある特定の実施形態において、対象はNational Cancer InstituteによるCommon Toxicity Criteriaに従って、グレード1、グレード2、グレード3又はグレード4の下痢を呈する。
【0013】
一実施形態において、クロフェレマーは、化学療法の投与前に投与されて、CIDの発症を低下させる又は遅延させる。
【0014】
一実施形態において、クロフェレマーは、化学療法の投与後に投与されて、CIDの発症を低下させる、又はCIDを治療する。
【0015】
ある特定の実施形態において、クロフェレマーは、CIDの危険性、罹患率又は重症度を低下させるために投与され、その結果、ヒト対象は、副作用としてCIDを有する特定の化学療法剤、又は副作用としてCIDを有するより高い用量の化学療法剤を耐容することができる。
【0016】
一実施形態において、化学療法剤は、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格攪乱性物質(タキサン)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチドアナログ及び前駆体アナログ、ペプチド抗生物質、白金ベース作用剤並びにレチノイドから選択される。
【0017】
一実施形態において、化学療法剤は、1又は2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤を含む。チロシンキナーゼ阻害剤(TKI、tyrosine kinase inhibitor)は、上皮増殖因子受容体(EGFR、epithelial growth factor receptor)、VEGFR(例えば、VEGFR-1、VEGFR-2、及び/又はVEGFR-3);AXL、RET、TYRO3、MER、KIT、TRKB、FLT-3、CSF-1R、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK、anaplastic lymphoma kinase)、ROS-1(c-ros);肝細胞増殖因子受容体(HGFR、hepatocyte growth factor receptor)、c-Met、RON、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR、platelet derived growth factor receptor)α及びβ、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR、fibroblast growth factor receptor 1、2、3又は4)、KIT、Lck、Fms、Itk、BRAF、変異体BRAF、c-CRAF、BRK、EPHR並びにTIE-2から選択される標的を有する。一実施形態において、化学療法剤は、1又は2つ以上のEGFR TKIを含む。一実施形態において、化学療法剤は、1又は2つ以上のpan-ErbB受容体TKIを含む。一実施形態において、化学療法剤は、EGFR TKI及びpan-ErbB受容体TKIを含む。
【0018】
一実施形態において、チロシンキナーゼ阻害剤は、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アキシチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、ルキソリチニブ、ネラチニブ、ボスチニブ、パゾパニブ、アファチニブ(afatninib)、レンバチニブ、ツカチニブ、バンデタニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダコミチニブ、及びバラチニブから選択される。
【0019】
一実施形態において、化学療法は、ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤、例えばアルペリシブである。
【0020】
一実施形態において、化学療法は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK、cyclin-dependent kinase)4/6/阻害剤であり、アベマシクリブでもよい。
【0021】
一実施形態において、化学療法は、1又は2つ以上のhEGFR(ヒト上皮増殖因子受容体)のHER阻害剤を含む。
【0022】
一実施形態において、HER阻害剤は、RG7116、RG1273(ペルツズマブ、Perjeta(登録商標))、RG3502(トラスツズマブエムタンシン(emantasine)、T-DMI)、RG597(トラスツズマブ、ハーセプチン)、RGA201(RG7160)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ダコミチニブ(PF-00299804)、PF-05280014(Pfizer社のRG597のバイオ後続品mAB)から選択される。
【0023】
様々な実施形態において、化学療法レジメン(regiment)は、2又は3つ以上のHER阻害剤、例えばトラスツズマブ及びペルツズマブ、並びに1又は2つ以上の化学療法剤、例えばドセタキセル又はパクリタキセルのようなタキサンを含む。様々な実施形態において、化学療法レジメンは、白金ベースの抗新生物薬、例えばカルボプラチンを更に含む。
【0024】
様々な実施形態において、化学療法レジメンは、HER阻害剤、例えばトラスツズマブ又はペルツズマブ、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばネラチニブ、及びタキサン、例えばドセタキセル又はパクリタキセルを含む。様々な実施形態において、化学療法レジメンは、白金ベースの抗新生物薬、例えばカルボプラチンを更に含む。
【0025】
様々な実施形態において、化学療法レジメンは、3週間毎に1回投与される。
【0026】
様々な実施形態において、クロフェレマーは、対象がCIDの症状を呈し始めた後に投与される。
【0027】
ある特定の実施形態において、クロフェレマーは、化学療法を用いた治療の持続期間にわたり投与される。
【0028】
ある特定の実施形態において、対象は、1又は2つ以上形態のがん、例えば乳がんを治療する化学療法を受けている。
【0029】
ある特定の実施形態において、クロフェレマーは、CIDの症状が軽快されるまで投与され、次いでクロフェレマーが中止される。
【0030】
様々な実施形態において、投与は、それを必要とする対象に、経口投与用の錠剤として製剤化されたクロフェレマー、特に腸溶保護クロフェレマーの1日当たり約250mg~約1000mgを投与すること、1日当たり約250mgを投与すること、1日当たり約500mgを投与すること、1日当たり約1000mgを投与すること、1日当たり約125mgを2回投与すること、1日当たり約250mgを2回投与すること又は1日当たり約500mgを2回投与することを含む。別の実施形態において、クロフェレマーは、経口投与にために製剤化されるが、腸溶保護されず、例えば、腸溶性コーティングを有さない。他の実施形態において、プロアントシアニジンポリマー組成物の投与量は、腸溶保護されたクロフェレマーの経口剤形の1日当たり約250mg~約1000mg、1日当たり約250mg、1日当たり約500mg、1日当たり約1000mg、1日当たり2回の約125mg、1日当たり2回の約250mg又は1日当たり2回の約500mgに生物学的に同等である。
【0031】
一態様において、本明細書に提示されるものは、化学療法を受ける対象における糞便の粘稠度を治療する方法であって、それを必要とする対象に、経口投与用の錠剤として製剤化されたクロフェレマー、特に腸溶保護クロフェレマーを、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり約500mg投与すること、1日当たり約1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、約250mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与することを含む、方法である(又は、クロフェレマーの腸溶保護製剤の投与量に生物学的に同等であるプロアントシアニジンポリマー組成物の投与量である)。
【0032】
一態様において、本明細書に提示されるものは、化学療法を受ける対象における糞便の粘稠度を改善する方法であって、それを必要とする対象に、経口投与用の錠剤として製剤化されたクロフェレマー、特に腸溶保護クロフェレマーを、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり約500mg投与すること、1日当たり約1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、約250mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与することを含む、方法である(又は、クロフェレマーの腸溶保護製剤の投与量に生物学的に同等であるプロアントシアニジンポリマー組成物の投与量である)。
【0033】
一態様において、本明細書に提示されるものは、化学療法を受ける対象における水様下痢を軽減する方法であって、それを必要とする対象に、経口投与用の錠剤として製剤化されたクロフェレマー、特に腸溶保護クロフェレマーを、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり約500mg投与すること、1日当たり約1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、約250mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与することを含む、方法である(又は、クロフェレマーの腸溶保護製剤の投与量に生物学的に同等であるプロアントシアニジンポリマー組成物の投与量である)。
【0034】
一態様において、本明細書に提示されるものは、化学療法を受ける対象における、1日当たりの便通の回数を減少する方法であって、それを必要とする対象に、経口投与用の錠剤として製剤化されたクロフェレマー、特に腸溶保護クロフェレマーを、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり約500mg投与すること、1日当たり約1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、約250mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与することを含む、方法である(又は、クロフェレマーの腸溶保護製剤の投与量に生物学的に同等であるプロアントシアニジンポリマー組成物の投与量である)。
【0035】
投与量は、C.レクレリ由来のプロアントシアニジンポリマー組成物を含有する組成物の量であり、クロフェレマーの腸溶保護製剤の用量と生物学的に同等である。
【0036】
一実施形態において、ヒト対象が、1日当たりの便通の回数の減少、1日当たりの水様便通の回数の減少、毎日又は毎週の腹部の疼痛又は不快感スコアの改善、毎日の便の粘稠度(consistency)の改善、便の粘稠度スコアの減少(水様から有形へ)、対象が切迫感を経験した1週間当たりの日数の減少、対象が大便失禁を経験した1週間当たりの日数の減少のうちの1又は2つ以上を示す場合、対象は治療されたと考えられる。
【0037】
一実施形態において、対象が毎日の便の粘稠度に関するスコアの改善を示す場合、ヒト対象は治療されたと考えられる。
【0038】
一実施形態において、対象が便の粘稠度の減少を示す場合、ヒト対象は治療されたと考えられる。
【0039】
一実施形態において、対象が1日当たりの水様便通の回数の減少を示す場合、ヒト対象は治療されたと考えられる。
【0040】
一実施形態において、対象が1日当たりの便通の回数の減少を示す場合、ヒト対象は治療されたと考えられる。
【0041】
一実施形態において、増加又は減少した症状は、ベースラインから測定する。
【0042】
一実施形態において、投与は、化学療法の持続期間にわたるものである。
【0043】
一実施形態において、投与は、化学療法サイクルより約1~約6週間長く生じる。
【0044】
一実施形態において、投与は、約3~12週間生じる。
【0045】
他の実施形態は、以下に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ある特定の化学療法は、ヒト対象において化学療法誘発性下痢(CID)を引き起こすことがあり、これは、苦痛を与え、対象の健康及び福利に悪影響を与え、化学療法の耐容を困難にすることがあり、その結果対象は、より少ない用量を摂らなければならない、又は化学療法剤の使用を止めなければならない、又はCIDがなければ、がんの治療により有効である可能性がある異なる治療レジメンに切り替えなければならない。C.レクレリのプロアントシアニジンポリマー組成物、特にクロフェレマー、とりわけ経口投与用に製剤化された腸溶性コーティングクロフェレマーは、化学療法を受ける対象におけるCID症状を低減する、軽快させる、予防する又は排除するが、SB300も同様である。したがって、クロフェレマー、又はC.レクレリの他のプロアントシアニジンポリマー組成物の投与は、対象が、ある特定の化学療法のレジメンを耐容すること、又は、より高くより有効な用量のある特定の化学療法レジメンを耐容することを可能にする。
【0047】
本明細書に開示されている方法は、有効量のプロアントシアニジンポリマー、例えばクロフェレマーの、例えば、化学療法誘発性下痢(CID)を有する、又はCID発生の危険性がある、化学療法を受ける対象への投与を伴う。
【0048】
I.定義
用語が単数形で提供される場合、本発明者たちは、その用語の複数形により記載される本発明の態様も考慮している。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈から明白に示される場合を除いて、複数の対象を含み、例えば、「1つの化合物(a compound)」は複数の化合物(a plurality of compounds)を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載されている及び/又は本開示を読むことによって当業者に明白となる種類の1又は2つ以上の方法及び/又はステップを含む。
【0049】
「軽快させる」、「軽快」、「改善」などは、例えば、対象において、又は少なくとも一部の対象において、例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%又はこれらの値のいずれかの2つの間に関する範囲で生じる検出可能な改善又は改善と一致する検出可能な変化を指す。そのような改善又は変化は、クロフェレマーにより治療されない対象と比較した治療対象において観察することができ、未治療対象は、同じ又は類似した疾患、状態、症状などを有する又は発生しやすい。疾患、状態、症状又はアッセイパラメーターにおける軽快は、主観的又は客観的に、例えば、対象による自己評価により、臨床医の評価により又は適切なアッセイ若しくは測定を実施することにより決定することができる。軽快は、一時的、長期的若しくは永久的でありうる、或いはクロフェレマーが対象に投与された又は本明細書若しくは引用参考文献に記載されているアッセイ若しくは他の方法に使用される間又は後の関連する時間で変わり、例えば、クロフェレマーの投与又は使用の以下に記載されている時間の枠内又は約1時間後から、対象がそのような治療を受けた約7日、2週間、28日若しくは1、3、6、9か月又はそれ以上の後でありうる。
【0050】
例えば、症状、分子のレベル又は生物学的活性などの「調節」は、例えば、症状又は活性などが検出可能に増加又は減少することを指す。そのような増加又は減少は、クロフェレマーにより治療されない対象と比較した治療対象において観察することができ、未治療対象は、同じ又は類似した疾患、状態、症状などを有する又は発生しやすい。そのような増加又は減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%若しくはそれ以上又はこれらの値のいずれかの2つの間のいずれかの範囲内でありうる。調節は、主観的又は客観的に決定することができる。調節は、一時的、長期的若しくは永久的でありうる、或いはクロフェレマーが対象に投与された又は本明細書若しくは引用参考文献に記載されているアッセイ若しくは他の方法に使用される間又は後の関連する時間で変わり、例えば、クロフェレマーの投与又は使用の下記に記載されている時間の範囲内又は約1時間後から、対象がクロフェレマーを受けた約2週間、28日若しくは3、6、9か月又はそれ以上の後でありうる。
【0051】
本明細書で使用されるとき、「対象」は、動物、化学療法を受ける、及びCIDの危険性を有する、若しくはそれがある、又は本明細書に記載されているクロフェレマーの投与から別途利益を得ることができるヒトなど、例えばヒト対象を含む。
【0052】
化合物の「治療有効量」という言葉は、対象に単回又は多回用量で投与されると、化学療法誘発性下痢の症状を治療する、管理する、又は軽快させるのに有効であるクロフェレマーの量を指す。
【0053】
化合物の「予防有効量」という言葉は、対象に単回又は多回用量で投与されるとCIDを予防するのに有効であるクロフェレマーの量を指す。
【0054】
用語「投与」又は「投与する」は、クロフェレマーを対象に導入して、その意図される機能を実施する経路を含む。使用されうる投与経路の例としては、注射、経口、吸入、膣内、直腸内、及び経皮が挙げられる。薬学的調合剤を、それぞれの投与経路に適した形態で与えることができる。例えば、これらの調合剤は、錠剤若しくはカプセル剤の形態、注射、吸入、軟膏剤又は坐剤により投与される。投与は、また、注射、注入又は吸入によるもの、ローション剤又は軟膏剤による局所的なもの、坐剤による直腸内のものでありうる。経口投与が好ましい。投与経路に応じて、クロフェレマーは、その意図される機能を実施する能力に有害な影響を与えうる天然の条件から保護するために選択された材料にコーティング又は配置されうる。クロフェレマーを単独で、或いは上に記載されている別の薬剤若しくは薬学的に許容される担体のいずれか又は両方と一緒に投与することができる。例示的な腸溶性コーティング形態のクロフェレマーは、例えば、米国特許第7,556,831号明細書に記載されている。
【0055】
1又は2つ以上の更なる治療剤「と組み合わせた」投与は、同時(同時発生的)及びいずれかの順番での連続投与を含む。
【0056】
語句「薬学的に許容される」は、健全な医療判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答又は他の問題若しくは合併症を有することなく人間及び動物の組織との接触に使用するのに適切であり、妥当な利益/危険比に相当する、本明細書に記載されているクロフェレマー、クロフェレマーを含有する組成物及び/又は剤形を指す。
【0057】
語句「薬学的に許容される担体」は、主題の化学薬品を1つの臓器又は身体の一部から別の臓器又は身体の一部へ運搬する又は輸送することに関与する、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを含む。
【0058】
用語「治療する」又は「治療」は、本明細書で使用されるとき、化学療法により引き起こされる、又は1若しくは2つ以上の療法の投与からもたらされる状態、或いは1若しくは2つ以上の症状の進展、重症度、及び/又は持続期間の低減又は軽快を含むことが意図される。
【0059】
例えば、CIDの治療は、以下のCIDの症状の改善を含み、例えば、1日当たりの便通の回数(頻度)の減少、1日当たりの水様便通の回数の減少、症状(切迫感、大便失禁)の頻度の減少、症状(腹部痛若しくは不快感)の重症度の減少、毎日の便の粘稠度スコアの減少(水様から有形へ)、又は水様便から有形便をもたらす便の粘稠度の減少を含む。化学療法誘発性下痢の重症度は、National Cancer Instituteから適合させた、下痢についてのCommon Toxicity Criteriaに従って特徴付けることができる(例えば、Stein et al., Ther. Adv. Med. Oncol. 2:51-43 (2010)を参照されたい)。この基準では、グレード1は、ベースラインを超える1日当たり4回超の排便増加であり(又はベースラインと比較してオストミー排出(ostomy output)の軽度の増加)、グレード2は、ベースラインを超える1日当たり4~6回の排便増加であり(ベースラインと比較してオストミー排出の中等度の増加)であり、グレード3は、ベースラインを超える1日当たり7回超の排便増加であり、失禁の発生を伴い、入院が示され(ベースラインと比較してオストミー排出の重大な増加)、グレード4は、命を脅かす結果であり、切迫した介入が示される。したがって、治療は、基準の1、2又は3つのグレードの低下を含みうる。
【0060】
「クロフェレマーを得る」における用語「得る」は、クロフェレマーを購入する、合成する、単離する、抽出する又は別の方法で取得することを含むことが意図される。
【0061】
特定の化学療法剤に耐容することにおける用語「耐容する」又は「耐性」は、対象が、損害が化学療法の利益を上回る、又は対象が副作用に起因して化学療法レジメンに対応しない規模まで対象の健康及び福利を損なうほどの重大な副作用を患っていないことを意味する。
【0062】
II.活性化合物
A.プロアントシアニジン
プロアントシアニジンは、一群の縮合タンニンである。薬用植物、例えば、ピカンタスアンゴレニス(Pycanthus angolenis)及びバフィアニチダ(Baphia nitida)からの粗抽出物は、動物試験において下痢止めの特質を有することが示されている(Onwukaeme and Anuforo, 1993, Discovery and Innovation, 5:317; Onwukaeme and Lot, 1991, Phytotherapy Res., 5:254)。タンニンを含有する粗抽出物、特にイナゴマメのさや及びヨーロッパグリの木からの抽出物が治療又は予防のために提案されている(米国特許第5,043,160号明細書、欧州特許第481,396号明細書)。
【0063】
プロアントシアニジンは、同じ又は異なるモノマー構造でありうる少なくとも2又は3つ以上のモノマー単位から構成される。モノマー単位(一般に「ロイコアントシアニジン」と呼ばれる)は、一般にモノマーフラボノイドであり、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、ガロエピカテキン、フラバノール、フラボノール及びフラバン-3,4-ジオール、ロイコシアニジン及びアントシアニジンが挙げられる。したがって、ポリマー鎖は異なる構造単位に基づいており、このことは、多種多様なポリマープロアントシアニジン及び多数の可能な異性体を作り出す(Hemingway et al., 1982, J. C. S. Perkin, 1:1217)。より大きなポリマーのフラボノイド3-オール単位は、大部分の植物において優性であり、2,000ダルトンを超える平均分子量を有し、6又は7つ以上の単位を含有することが見出される(Newman et al., 1987, Mag. Res. Chem., 25:118)。
【0064】
プロアントシアニジンポリマーは、多種多様な植物、特に森林生育習性を有するもの(例えば、クロトン(Croton)種及びカロフィルム(Calophyllum)種)において見出される。南アメリカにおいて見出されるクロトン・サクタリス(Croton sakutaris)、クロトン・ゴッシピホリウス(Croton gossypifolius)、クロトン・パラノスチマ(Croton palanostima)、クロトン・レクレリ(Croton lechleri)、クロトン・エリトロキルス(Croton erythrochilus)及びクロトン・ドラコノイデス(Croton draconoides)が挙げられる多数の異なるクロトン樹種は、サングレデドラーゴ(Sangre de Drago)又は「龍の血」と呼ばれる赤色の粘性ラテックス樹液を生じる。米国特許第5,211,944号明細書は、クロトン種からの水溶性プロアントシアニジンポリマー組成物の単離及び抗ウイルス剤としての組成物の使用を最初に記載した(Ubillas et al., 1994, Phytomedicine, 1:77も参照すること)。プロアントシアニジンポリマー組成物は、呼吸器合胞体、インフルエンザ、パラインフルエンザ及びヘルペスのウイルスが挙げられる多様なウイルスに対して抗ウイルス活性を有することが示された。米国特許第5,211,944号明細書は、カロフィルムイノフィルム(Calophyllum inophylum)からの水溶性プロアントシアニジンポリマー組成物の単離及び抗ウイルス剤としてのこの組成物の使用も記載した。
【0065】
本明細書に提示される方法に有用な例示的なプロアントシアニジンポリマー組成物は、好ましくは、当該技術において公知の任意の方法によりクロトン種又はカロフィルム種から単離される。例えば、プロアントシアニジンポリマー組成物は、米国特許第5,211,944号明細書又はUbillas et al., 1994, Phytomedicine, 1:77-106に開示された方法により、クロトン種又はカロフィルム種から単離することができる。
【0066】
特定の一実施形態において、本明細書に提示される方法に有用なプロアントシアニジンポリマー組成物は、クロフェレマーである。
【0067】
クロフェレマーは、トウダイグサ(Euphorbiace)科のクロトン・レクレリ(Croton lechleri)植物の赤色粘性ラテックスから抽出及び精製されたオリゴマープロアントシアニジンである。植物は、熱帯中央アメリカ及び南アメリカの全体に広く分布しており、下痢の治療が挙げられるその医学的特性が、民族植物学者及び地元の治療者により広く認識されている(McRae 1988)。クロフェレマーは、CFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)塩化物(Cl-)チャンネルの管腔遮断を介して下痢止め効果を発揮すると考えられる。クロフェレマーは、CFTRチャンネルへの効果を介して、CT処理マウスにおいてコレラ毒素、フォルスコリン、大腸菌(E coli)LT及びSTa毒素媒介Cl-分泌に対する、並びに電解質及び体液蓄積を正常化する、インビトロ活性を示している(Gabriel 1999, Fischer 2004, Adam 2005)。クロフェレマーは、毒素原性大腸菌に起因するヒトの分泌性下痢も有意に改善し(DiCesare 2002)、毒素原性大腸菌は、CFTRの活性化を介して分泌性下痢を誘起するとも考えられる(Kunzelmann 2002)。CFTRチャンネルの遮断は、ヒトにおいて否定的な結果を有し、嚢胞性線維症さえも模倣すると予測することができる。しかし、クロフェレマーはヒトにおいて全身的な生物学的利用能を実質的に有さない。研究すると、結果は、GI管からのクロフェレマーの吸収がほとんど又は全くないこと及びクロフェレマーが正常な男性対象により十分に耐容されたことを示した。したがって、クロフェレマーの作用部位は、胃腸管において局所的である
【0068】
クロフェレマー(CAS 148465-45-6)は、トウダイグサ科の龍の血クロトン・レクレリから誘導された、多様な鎖長さのオリゴマープロアントシアニジンである。クロフェレマーは、およそ1500ダルトン~およそ2900ダルトンの平均分子量を有する。クロフェレマーを含むモノマーは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン及びエピガロカテキンを含む。クロフェレマーの鎖長さは、約3~約30単位の範囲であり、平均鎖長さは約8単位である。クロフェレマーの構造を下記に示す。
【0069】
【0070】
クロフェレマーを単離する別の方法は、米国特許公開第2005/0019389号明細書において見出すことができ、その内容は本明細書に明確に組み込まれる。
【0071】
加えて、プロアントシアニジンポリマー組成物はSB300であってもよく、例えば、Fischer, H. et al.,(2004, J. Ethnopharmacol., 93(2-3):351-357)に記載されている。SB300は、腸溶性コーティング又は保護されていない製剤及び組成物の使用にとって使用が特に容易である天然の抽出生成物である。実施形態において、クロトン・レクレリ由来のプロアントシアニジンポリマー組成物を含み、かつ本発明の治療方法に用いられる薬学的に許容される組成物は、例えば、Shaman Pharmaceuticals, Inc.の国際公開第00/47062号パンフレット(その内容は本明細書に組み込まれる)に記載されているようにC.レクレリから得ることができ、食品又は栄養補助食品又は機能性食品として、とりわけ非腸溶性コーティング製剤として製剤化される。
【0072】
他の実施形態において、クロトン種若しくはカロフィルム種から得た生ラテックス、又はクロトン種若しくはカロフィルム種から得た抽出物は、本明細書に提示される方法に有用である。例示的な抽出物は、Persinos et al., 1979, J. Pharma. Sci. 68:124及びSethi, 1977, Canadian J. Pharm. Sci. 12:7に記載されている。
【0073】
B.化学療法剤との組合せ
本明細書に記載されているプロアントシアニジンは、本明細書に記載されている方法に使用するためのがん薬物/化学療法剤と組み合わせて、CIDを治療することができる。がん薬物及びがん化学療法剤は、一般的な用語であり、がん薬物、がん化学療法薬、がん作用剤、がん化学療法、化学療法薬(chemotherapeutic drug)、化学療法剤、化学療法、化学療法薬物(chemotherapy drug)、がん化合物、がん化合物療法、化学療法化合物、及びがん薬物療法という用語を含む意味を有する。そのような化学療法は、がん腫瘍において、がん細胞経路を阻害することができる;がん細胞をインビトロで死滅させることができる;使用して、がん細胞をインビボで死滅させることができる;及びいくつかのケースにおいて、使用して、がんを患った者を治療して、がん患者の正常細胞の生存能力を保護する又はがん患者のがん細胞の生存能力を攻撃することができる化学物質も意味するものとする。
【0074】
以下の実施例及び化学療法剤の組合せの使用は、本発明の範囲を限定することを意図せず、とりわけ本発明の実践を指摘する単なる例として活用する目的のものである。化学療法剤により標的とされうるいくつかの細胞経路も列挙される。一般的に、がん化学療法薬は、医薬組成物の形態で、医薬的使用のため、又は患者の治療方法において使用される。
【0075】
がん薬物が効果を有しうる細胞標的の例は、ここに列挙されているが限定されない。がん化学療法剤の細胞標的としては、以下の同定された標的:mTORC、RAFキナーゼ、MEKキナーゼ、ホスホイノシトールキナーゼ3、線維芽細胞増殖因子受容体、複数のチロシンキナーゼ、ヒト上皮増殖因子受容体、血管内皮増殖因子、他の血管形成因子、熱ショックタンパク質;Smo(smooth)受容体、FMS様チロシンキナーゼ3受容体、アポトーシスタンパク質阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ、デアセチラーゼ、ALKチロシンキナーゼ受容体、セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼPim-1、ポーキュパインアシルトランスフェラーゼ、ヘッジホッグ経路、タンパク質キナーゼC、mDM2、グリピカン3、ChK1、肝細胞増殖因子MET受容体、上皮増殖因子ドメイン様7、ノッチ経路、Src-ファミリーキナーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAインターカレーター、チミジンシンターゼ、微小管機能攪乱性物質、DNA架橋剤、DNA鎖分解剤、DNAアルキル化剤、JNK-依存性p53 Ser15リン酸化反応誘発物質、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、Bcl-2、及びフリーラジカル発生剤が挙げられる。
【0076】
様々な実施形態において、化学療法剤は、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格攪乱性物質(タキサン)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチドアナログ及び前駆体アナログ、ペプチド抗生物質、白金ベース作用剤並びにレチノイドから選択される。
【0077】
特定の実施形態において、化学療法剤は、がん増殖阻害剤である。がん増殖阻害剤は、あるタイプの生物学的療法であり、チロシンキナーゼ阻害剤及びHER2阻害剤、プロテアソーム阻害剤、mTOR阻害剤、PI3K阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤及びヘッジホッグ経路遮断薬を含む。
【0078】
特定の実施形態において、化学療法剤は、1又は2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。
【0079】
チロシンキナーゼは、シグナル伝達カスケードにより、多くのタンパク質の活性化を担当する酵素である。タンパク質は、リン酸基をタンパク質に添加することにより活性化する(リン酸化反応)。チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、典型的には、抗がん薬として使用される。TKIは、4つの異なる機構により作動し:これらは、アデノシン三リン酸(ATP、adenosine triphosphate)、リン酸化物質、基質若しくはその両方と競合することができ、又は、アロステリック様式で作用する、すなわち活性部位の外側の部位に結合することができ、立体配座変化によりその活性に影響を与える。TKIは、チロシンリン酸化反応の低分子量阻害剤であり、これは、セリン又はトレオニン残基をリン酸化するタンパク質キナーゼを阻害せず、EGFRのキナーゼドメインと、インスリン受容体のそれとの間で区別できる。チロシン-キナーゼドメインの保存にもかかわらず、密接に関連したタンパク質チロシンキナーゼ、例えばEGFR及びその近い相対的HER2の間でさえ区別するTKIを設計及び合成できることが更に示されている。
【0080】
チロシンキナーゼ阻害剤の特定の例としては、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アキシチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、ルキソリチニブ、ネラチニブ、ボスチニブ及びバラチニブが挙げられる。
【0081】
特定の実施形態において、化学療法剤は、1又は2つ以上のHER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤である。
【0082】
HER2により活性化されるシグナル伝達経路としては、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK、mitogen-activated protein kinase)、ホスホイノシタイド3-キナーゼ(PI3K、phosphoinositide 3-kinase/Akt)、ホスホリパーゼCγ、タンパク質キナーゼC(PKC、protein kinase C)及びシグナル伝達性転写因子(STAT、signal transducer and activator of transcription)が挙げられる。ErbBファミリーの受容体を通したシグナル伝達は、細胞増殖を促進し、アポトーシスに対抗し、ひいては無制御細胞増殖が生じることを予防するために、厳密に調節されなければならない。ERBB2遺伝子の増幅又は過剰発現は、疾患再発の増加及び予後不良に強く関連する。過剰発現は、乳がん、卵がん、胃がん、及び攻撃性形態の子宮がん、例えば子宮漿液性子宮内膜癌腫でも生じることが公知である。HER2は、共局在化され、また、ほとんどの場合、乳房、精巣生殖細胞、胃、及び食道の腫瘍に関連する癌原遺伝子である遺伝子GRB7と共増幅される。HER2タンパク質は、腫瘍形成において役割を果たしうる細胞膜にクラスターを形成することが示されている。HER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤の特定の例としては、RG7116、RG1273(ペルツズマブ、Perjeta(登録商標))、RG3502(トラスツズマブエムタンシン、T-DMI)、RG597(トラスツズマブ、ハーセプチン)、RGA201(RG7160)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ダコミチニブ(PF-00299804)、PF-05280014(Pfizer社のRG597のバイオ後続品mAB)が挙げられる。
【0083】
典型的にがん患者に使用されているがん化学療法薬の一般名としては、ドキソルビシン、エピルビシン;5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、ブレオマイシン、メルファラン、プルンバギン、イリノテカン、マイトマイシン-C、及びミトキサントロンが挙げられる。例として、使用されうる、及び臨床トライアルの段階にありうるいくつかの他のがん化学療法薬としては、レスミノスタット、タスキニモド、レファメチニブ、ラパチニブ、タイバーブ、アレーンギル(Arenegyr)、パシレオチド、シグニフォー、チシリムマブ、トレメリムマブ、プレブオンコ(PrevOnco)、ABT-869、リニファニブ、チバンチニブ、Tarceva、エルロチニブ、スチバーガ、レゴラフェニブ、フルオロ-ソラフェニブ、ブリバニブ、リポソームドキソルビシン、レンバチニブ、ラムシルマブ、ペレチノイン、ルチコ(Ruchiko)、ムパフォスタット、テイスノ(Teysuno)、テガフール、ギメラシル、オテラシル、及びオランチニブが挙げられる。
【0084】
本発明に使用されうるFDA認可がん薬物(一般名で)の例としては、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、イマチニブ、エリブリン、ゲムシタビン、カペシタビン、パゾパニブ、ラパチニブ、ダブラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、クリゾチニブ、エベロリムス、トリシロリムス(torisirolimus)、シロリムス、アキシチニブ、ゲフィチニブ、アナストロゾール、ビカルタミド、フルベストラント、ラルチトレキセド(ralitrexed)、ペメトレキセド、酢酸ゴセレリン(goserilin acetate)、エルロチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ(visiodegib)、クエン酸タモキシフェン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、オキサリプラチン、ジブアフリベルセプト、ベバシズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、パニツムマブ(pantiumumab)、タキサン、ブレオマイシン、メルファラン、プルンバギン、カンプトサール、マイトマイシン-C、ドキソルビシン、PEG化ドキソルビシン、5-フルオロ-ウラシル、テモゾロミド、パシレオチド、テガフール、ギメラシル、oteraci、ボルテゾミブ、レナリドミド、及びロミデプシンが挙げられる。
【0085】
本発明に使用されうるいくつかのがん薬物の製造者のブランド名としては、ネクサバール(ソラフェニブ(sorafenb))、スチバーガ(レゴラフェニブ)、アフィニトール(エベロリムス)、グリベック(イマチニブ)、ハラヴェン(エリブリン)、アリムタ(ペメトレキセド)、ジェムザール(ゲムシタビン)、ヴォトリエント(パゾパニブ)、タイケルブ(ラパチニブ)、タフィンラー(TAFINIAR)(ダブラフェニブ)、スーテント(リンゴ酸スニチニブ(sutinib))、ザーコリ(クリゾチニブ)、トーリセル(トリシロリムス)、インライタ(アキシチニブ)、イレッサ(ゲフィチニブ)、アリミデックス(アナストロゾール(anastrole))、カソデックス(ビカルタミド)、フェソロデックス(フルベストラント)、トムデックス(ラルチトレキセド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)、Tarceva(エルロチニブ(erlotininb))、ゼローダ(カペシタビン)、ゼルボラフ(ZELBROF)(ベムラフェニブ)、エリベッジ(ビスモデギブ)、PERJETA(ペルツズマブ)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、タキソテール(ドセタキセル)、ジェブタナ(カバジタキセル)、エロキサチン(オキサリプラチン)、ザルトラップ(ジブアフリベルセプト)、アバスチン(ベバシズマブ)ノルバデックス、イスツバル(Istubal)、及びバロデックス(VALODEX)(クエン酸タモキシフェン)、テモダール(テモゾロミド)、シグニフォー(パシレオチド)、ベクティビックス(パニツムマブ)、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ドキシル(PEG化ドキソルビシン)、アブラキサン(パクリタキセル)、テイスノ(テガフール、ギメラシル、オテラシル)、レナリドミドとのボルテゾミブ(ベルケイド)、イストダックス(ロミデプシン)が挙げられる。
【0086】
本発明に考慮されるがん薬物療法としては、イレッサ(ゲフィチニブ)、アリミデックス(アナストロゾール)、カソデックス(ビカルタミド)、フェソロデックス(フルベストラント)、トムデックス(ラルチトレキセド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)、ノルバデックス、イスツバル、及びバロデックス(クエン酸タモキシフェン)、アービタックス(セツキシマブ)、スプリセル(ダサチニブ)、イグゼンプラ(イクサベピロン)、タキソール(パクリタキセル)、パラプラチン(カルボプラチン)、及びヤーボイ(イピリムマブ(ipilumumab))、ベクティビックス(パニツムマブ、リロツムマブ、トレバナニブ、ブリナツモマブ(blinatumumab)、ハラヴェン(エリブリン)、アリムタ(ペメトレキセド)、及びジェムザール(ゲムシタビン)、ヴォトリエント(パゾパニブ)、タイケルブ(ラパチニブ)、及びタフィンラー(ダブラフェニブ)、ドキシル(ドキソルビシン、アドリアマイシン)、テモダール(テモゾロミド)、アフィニトール(エベロリムス)、グリベック(イマチニブ)、及びシグニフォー(パシレオチド)、ドビチニブ、ミドスタウリン、パノビノスタット、テイスノ(テガフール、ギメラシル、オテラシル)、ナビトクラックス、ベリパリブ(velipariban)、リニファニブ、トロンボスポンジン、イロラセルチブ、エラゴリクス、アトラセンタン、スーテント(リンゴ酸スニチニブ)、ザーコリ(クリゾチニブ)、トーリセル(トリシロリムス)、インライタ(アキシチニブ)、ダコミチニブ、ボスチニブ、Tarceva(エルロチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、エリベッジ(ビスモデギブ)、Perjeta(ペルツズマブ)、ハーセプチン(トラスツズマブ)アバスチン(ベバシズマブ)、タキソテール(ドセタキセル)、ジェブタナ(カバジタキセル)、エロキサチン(オキサリプラチン)、ザルトラップ(ジブアフリベルセプト)、イニパリブ、ネラチニブ(HKI-272)、並びにオンブラブリンが挙げられる。
【0087】
III.治療の方法
本明細書に提供されるものは、化学療法により引き起こされる下痢又は胃腸症状を治療する、予防する、又は軽減する方法であって、それを必要とする対象に、有効量のクロフェレマーを単独で、又は化学療法剤と組み合わせて投与することを含む、方法である。本明細書に提示される方法を使用して治療されうる、又は予防されうる例示的な下痢は、CIDを含む。対象は、好ましくはヒトである。
【0088】
一実施形態において、CIDの治療としては、例えば、1日当たりの便通の回数の減少(頻度)、1日当たりの水様便通の回数の減少、症状(切迫感、大便失禁)の頻度の減少、症状(腹部痛若しくは不快感)の重症度の減少、毎日の便の粘稠度スコアの減少(水様から有形へ)、又は水様便から有形便をもたらす便の粘稠度の減少を含む、以下のCIDの症状の改善が挙げられる。ある特定の実施形態において、治療は、下痢のCommon Toxicity Criteriaのグレードの、例えばグレード4からグレード3、グレード2又はグレード1;又はグレード3からグレード2又はグレード1;又はグレード2からグレード1への低減をもたらす。ある特定の実施形態において、治療は、対象がCommon Toxicity Criteriaグレードのいずれも満たさなくなる、すなわちもはや下痢を患わなくなるように改善をもたらす。
【0089】
他の特定の実施形態において、治療は、例えば、1日当たりの便通の回数の減少、1日当たりの水様便通の回数の減少、毎日の腹部の疼痛又は不快感スコアの改善、毎日の便の粘稠度のスコアの改善、対象が切迫感を経験した1週間当たり又は1か月当たりの日数の減少、又は対象が大便失禁を経験した1週間当たり若しくは1か月当たりの日数の減少の1又は2つ以上も含みうる。
【0090】
一態様において、本明細書に提供されるものは、化学療法を受ける対象におけるCIDを治療する方法であって、それを必要とする対象に、CIDを治療するための有効量のクロフェレマーを含む組成物を投与することを含む、方法である。特定の実施形態において、クロフェレマーは、腸溶性コーティング経口剤形である。他の実施形態において、クロフェレマーは、腸溶保護されていない経口剤形である。
【0091】
一実施形態において、クロフェレマーは、化学療法と同時に投与されて、CIDの発症を低下させる、又は遅延させる。一実施形態において、クロフェレマーは、化学療法の前に投与されて、CIDの発症を低下させる又は遅延させる。一実施形態において、クロフェレマーは、化学療法の後に投与されて、CIDの発症を低下させる、又はCIDを治療する。
【0092】
CIDは、化学療法、特にがん治療の化学療法の有害な副作用でありうる。いくつかの実施形態において、CIDに起因する化学療法レジメンに対する耐性の欠如又は耐性の低下のため、CIDは、対象の化学療法レジメンを阻害する十分なほど重大でありうる。ある特定の実施形態において、したがって、提供されるのは、対象は、推奨される投与量の化学療法剤を耐容しうる、及び投与されうる、又は化学療法剤を投与されうるように、ある特定の化学療法剤又はレジメンに対する対象の耐性を増加する方法である。
【0093】
いくつかの実施形態において、対象は、1又は2つ以上の形態のがんを治療する化学療法を受けている。1又は2つ以上の形態のがんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、腎臓がん、甲状腺がん、口腔又は中咽頭がん、星細胞腫、肉腫、中皮腫、髄膜腫、リンパ腫、骨髄腫、頭頸部がん、肺がん、癌腫(例えば、扁平上皮癌)、悪性黒色腫、腹膜がん、胃がん、肝臓がん、結腸直腸がん、胆嚢がん、骨がん、膵臓がん、舌がん、食道がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、それらの転移及び白血病から選択されうる。
【0094】
一実施形態において、化学療法は、1又は2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤を含む。
【0095】
一実施形態において、チロシンキナーゼ阻害剤は、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アキシチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、ルキソリチニブ、ネラチニブ、ボスチニブ、トセラニブ、及びバラチニブから選択される。
【0096】
一実施形態において、化学療法は、1又は2つ以上のHER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤を含む。
【0097】
一実施形態において、HER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤は、RG7116、RG1273(ペルツズマブ、Perjeta(登録商標))、RG3502(トラスツズマブエムタンシン、T-DMI)、RG597(トラスツズマブ、ハーセプチン)、RGA201(RG7160)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ダコミチニブ(PF-00299804)、PF-05280014(Pfizer社のRG597のバイオ後続品mAB)から選択される。
【0098】
様々な実施形態において、クロフェレマーは、対象がCIDの症状を呈し始めた後に投与される。様々な実施形態において、クロフェレマーは、化学療法に関連するCIDを予防する、又はCIDの重症度を低下させる、化学療法、又は化学療法のラウンドを開始する前に投与される。実施形態において、クロフェレマーは、化学療法又は化学療法のラウンドの1日、3日又は1週間前に投与されて、化学療法の治療の際にCIDの危険又は発生を予防する又は低下させる。
【0099】
ある特定の実施形態において、クロフェレマーは、化学療法を用いた治療の持続期間にわたり投与される。治療の持続期間は、2ラウンドの化学療法間の時間を含みうる。例えば、ある特定の実施形態において、化学療法は、3週間若しくは4週間毎に1回、又は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34若しくは35日毎に1回投与される。
【0100】
ある特定の実施形態において、クロフェレマーは、CIDの症状が軽快されるまで投与され、次いでクロフェレマーが中止される。
【0101】
当業者に容易に認められるように、投与される有用なインビボ投与量及び特定の投与様式は、年齢、体重及び治療される哺乳類種、用いられる特定の化合物、並びに/又はこれらの化合物が用いられる特定の使用に応じて変わりうる。所望の結果を達成するのに必要な投与量レベルである有効投与量の決定は、日常的な薬理学的な方法を使用し、本明細書に提示されているデータを参照して、当業者により行うことができる。
【0102】
一態様において、本明細書に提供されるものは、化学療法を受ける対象における糞便の粘稠度を治療し、1日若しくは数日又は数週間を通して測定された毎日の便の粘稠度の改善、及び/又は便の粘稠度の減少スコアが存在する場合、対象は治療されたと考慮される方法であって、それを必要とする対象に、糞便の粘稠度を治療するための有効量のクロフェレマーを含む組成物を投与することを含む、方法である。この減少は、ベースラインから測定することができる。ベースラインは、クロフェレマーによる治療の数日から1週間前に決定することができる。治療は、それを必要とする対象に、クロフェレマー、好ましくは腸溶性コーティング経口剤形を、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、若しくは約500mgを1日2回投与すること、又は、1日当たり250mg~約1000mg、1日当たり約250mg、1日当たり1000mg、約125mgを1日2回、若しくは約500mgを1日2回の、腸溶保護経口剤形のクロフェレマーに生物学的に同等のプロアントシアニジンポリマー組成物(非腸溶保護経口剤形のクロフェレマーを含む)の投与を含む。
【0103】
一態様において、本明細書に提供されるものは、化学療法を受ける対象における水様下痢を軽減し、対象が、クロフェレマーの投与の、1日当たり、及び/又は数日、1週間又は数週間にわたる水様便通の回数の減少を経験する場合、対象は治療されと考慮される方法であって、それを必要とする対象に、水様下痢を緩和するための有効量のクロフェレマーを含む組成物を投与することを含む、方法である。
【0104】
この減少は、ベースラインから測定することができる。ベースラインは、クロフェレマーによる治療の数日から1週間前に決定することができる。治療は、それを必要とする対象に、クロフェレマー、好ましくは腸溶性コーティング経口剤形のクロフェレマーを、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与すること、又は代替的には、腸溶保護経口剤形のクロフェレマーを、1日当たり250mg~約1000mg、1日当たり約250mg、1日当たり1000mg、約125mgを1日2回、若しくは約500mgを1日2回に生物学的に同等な、プロアントシアニジンポリマー組成物(非腸溶保護経口剤形のクロフェレマーを含む)の投与を含む。
【0105】
一態様において、本明細書に提示されるものは、1日当たりの便通の回数を減少させ、ベースラインから測定して、1日当たりの便通の回数の減少が存在する場合、対象は治療されると考慮される方法であって、それを必要とする対象に、1日当たりの便通の数を減少させるための有効量のクロフェレマーを含む組成物を投与することを含む、方法である。
【0106】
ベースラインは、クロフェレマーによる治療の数日から1週間前に決定することができる。治療は、それを必要とする対象に、クロフェレマー、好ましくは腸溶性コーティング経口剤形のクロフェレマーを、1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与すること、又は代替的には、腸溶保護経口剤形のクロフェレマーの、1日当たり250mg~約1000mg、1日当たり約250mg、1日当たり1000mg、約125mgを1日2回、若しくは約500mgを1日2回に生物学的に同等な、プロアントシアニジンポリマー組成物(非腸溶保護経口剤形のクロフェレマーを含む)の投与を含む。
【0107】
ある特定の実施形態において、提供される方法は、下痢のCommon Toxicity Criteriaグレードのグレード低下をもたらす。加えて、提供される方法は、対象が、処方された化学療法レジメンを続けたままである、また、それに従うように、化学療法レジメンを耐容する能力の増加をもたらす。
【0108】
クロフェレマーは、例えば、1日1回、1日2回、1日3回若しくは1日4回又は必要に応じてより多くの回数により投与することができる。クロフェレマーは、例えば、25mg BID~約3000m TIDの用量で投与されてもよく、好ましくは、クロフェレマーは、1日当たり約125mg~約1000mgで投与される。別の実施形態において、クロフェレマーは、症状に応じて、125mg BID~約500mg BIDで投与される。別の実施形態において、クロフェレマーは、125mg BIDで投与される。別の実施形態において、クロフェレマーは、500mg BIDで投与される。クロフェレマーを、例えば、錠剤形態、粉末形態、液体形態又はカプセル剤で経口投与することができる。好ましい実施形態において、クロフェレマーは、腸溶性コーティングされた経口剤形として製剤化される。他の実施形態において、クロフェレマーは腸溶コーティングされていない経口剤形である。
【0109】
例示的な実施形態において、対象に、250、500若しくは1000mg/日の腸溶保護クロフェレマーが経口投与される、又は250、500若しくは1000mg/日で投与される腸溶性コーティングクロフェレマーの経口剤形に生物学的に同等である、クロフェレマーが挙げられるプロアントシアニジンポリマー組成物の用量が投与される。
【0110】
特定の実施形態において、対象に、125、250若しくは500mg p.o.b.i.d(経口で1日2回)の腸溶性コーティングクロフェレマー、又は125、250若しくは500mg p.o.b.i.dの腸溶性コーティングクロフェレマーに生物学的に同等なプロアントシアニジンポリマー組成物の投与量が投与される。方法に適切な他の投与量は、医療専門家又は対象により決定することができる。毎日投与されるクロフェレマーの量を、対象の体重、年齢、健康、性別又は医学的状態に応じて増加又は減少させることができる。当業者は、本開示及び以下の実施例に提示されているデータに基づいて、対象にとって適正な用量を決定することができる。
【0111】
他の実施形態において、対象は、クロフェレマーにより、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24若しくは25週間以上、又は26若しくは27週間以上にわたって治療される。治療の長さは、疾患のタイプ及び長さに応じて変動することがあり、治療の適正な長さは、本開示の利益を有する当業者により容易に決定される。
【0112】
それを必要とする対象は、CIDを有する若しくはそれに罹りやすい対象、又はCIDを有する者を含む。
【0113】
ある特定の実施形態において、対象は、CIDを治療するために、1又は2つ以上の下痢止め、例えば、以下に限定されないが、ロペラミド、オクトレオチド、プロバイオティクス、及び化学療法に関連する下痢の治療に有用ないずれかの他の作用剤と組み合わせたクロフェレマーを投与される。
【0114】
IV.医薬調合剤
また本明細書に提供されるものは、有効量の本明細書に記載されているクロフェレマーと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。更なる実施形態において、有効量は、CIDの治療に有効なものである。
【0115】
クロフェレマーの調製及び使用の例は、米国特許第7,556,831号明細書、米国特許公開第20070254050号明細書及び米国特許公開第20080031984号明細書に記載されており、それらの全体がすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
一実施形態には、クロフェレマーと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が挙げられる。好ましい実施形態において、医薬組成物は腸溶保護経口剤形、例えば、錠剤又はカプセル剤である。或いは、医薬組成物は腸溶保護されていない経口剤形である。
【0117】
本明細書に記載されている医薬組成物は、賦形剤、例えば、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、風味剤又は甘味剤の1又は2つ以上を更に含むことができる。組成物は、選択されたコーティング及び非コーティング錠剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ剤、ウエハシート剤、ペレット剤、並びに密封パケット中の粉末剤に製剤化することができる。例えば、組成物は、局所使用、例えば、軟膏剤、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤及びローション剤に製剤化することができる。
【0118】
ある特定の実施形態において、これらの医薬組成物は、対象への局所又は経口投与に適している。他の実施形態において、以下に詳細に記載されているように、医薬組成物は、固体又は液体形態による投与のために特別に製剤化することができ、以下のように適合されたものが挙げられる。(1)経口投与、例えば、水薬(水性又は非水性の液剤又は懸濁剤)、錠剤、ボーラス剤、粉末剤、顆粒剤、ペースト剤、(2)非経口投与、例えば滅菌液剤又は懸濁剤による、例えば皮下、筋肉内又は静脈内注射、(3)局所適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム剤、軟膏剤又は噴霧剤、(4)膣内又は直腸内、例えば、ペッサリー剤、クリーム剤又はフォーム剤、或いは(5)エアゾール剤、例えば、化合物を含有する水性エアゾール、リポソーム調合剤又は固体粒子。
【0119】
医薬担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつ患者に有害ではないという意味において「許容」されなければならない。薬学的に許容される担体として機能を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、(4)トラガカント粉末、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオ脂及び坐剤ロウなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質無含有水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝溶液、並びに(21)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合物質が挙げられる。
【0120】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤と共に、着色剤、遊離剤、コーティング剤、甘味、風味及び芳香剤、防腐剤、並びに酸化防止剤も組成物に存在することができる。
【0121】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤、(2)アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0122】
クロフェレマーを含有する組成物としては、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸内、膣内、エアゾール及び/又は非経口投与に適したものが挙げられる。組成物は単位剤形で都合よく存在することができ、薬学の技術において公知のいずれかの方法により調製することができる。担体材料と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて変わる。担体材料と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生成する化合物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.01%~約99%の活性成分、例えば約5%~約70%又は約10%~約30%の範囲である。
【0123】
クロフェレマーの経口又は直腸内投与用の液体剤形としては、例えば、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤を挙げることができる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば水又は他の溶媒などの当該技術において一般的に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤及び乳化剤、並びにこれらの混合物を含有することができる。
【0124】
懸濁剤は、クロフェレマーに加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天(agar-agar)及びトラガカント、並びにこれらの混合物を懸濁化剤として含有することができる。クロフェレマーの局所又は経皮投与用の剤形としては、例えば、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤及び吸入剤を挙げることができる。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤は、クロフェレマーに加えて、動物及び植物脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛又はこれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。粉末剤及び噴霧剤は、クロフェレマーに加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。噴霧剤は、クロロフルオロ炭化水素、並びにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの慣用の噴射剤を追加的に含有することができる。
【0125】
医薬組成物に用いてもよい適切な水性及び非水性担体の例としては、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを挙げることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散体の場合では要求される粒径の維持により及び界面活性剤の使用により維持することができる。
【0126】
一実施形態において、クロフェレマーは、胃の酸性条件による分解から及び/又は胃に存在するペプシンなどのタンパク質との相互作用から保護するために腸溶性コーティングされており、例えば腸溶保護製剤である。特定の実施形態において、クロフェレマーは錠剤の形態である。なお別の実施形態において、錠剤は腸溶性コーティングされており、例えばEudragit(登録商標)である。一実施形態において、クロフェレマーは、腸溶性コーティングビーズとして又は腸溶性コーティングカプセルシェル内の顆粒として製剤化される。別の実施形態において、クロフェレマーは、遅延放出組成物に製剤化される。
【0127】
ある特定の実施形態において、組成物は、胃酸を中和する化合物と共に製剤化される。或いは、クロフェレマーを含有する医薬組成物は、胃酸を中和する医薬組成物の投与と同時発生的に、又は投与に続いて、又は投与の後に投与される。胃酸の中和に有用である制酸薬などの化合物としては、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、次硝酸ビスマス、次サリチル酸ビスマス、炭酸カルシウム、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウム、マガルドレート、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる、これらに限定されない。胃酸の分泌を低減することができる及び/又は胃液の酸性度を低減することができる化合物は、当該技術において周知であり、制酸薬(水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、グリシン酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム)、胃酸遮断薬及び前記のいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、関連する政府機関により販売が承認されており、かつ胃酸の産生を低減する及び/又は胃液の酸性度を低減することができるいずれかの薬物を、本明細書に提示されている方法に従ってクロフェレマーなどの阻害剤分子と組み合わせて投与することができる。
【0128】
クロフェレマーが腸溶性コーティングされていない特定の実施形態において、クロフェレマーは、胃酸の分泌を低減することができる及び/又は胃液の酸性度を低減することができる1又は2つ以上の化合物と共に製剤化される。例示的な実施形態において、クロフェレマーは、Merck GEM、Alza OROS、ロウマトリックスなどの制御放出(遅延放出)組成物に製剤化される(放出は、主に、製剤が胃を通過して腸の中に入るまで遅延される)。
【0129】
また本明細書に提供されるものは、CIDの治療に治療上有効である用量で組成物を薬学的に許容される担体と共に含む、クロフェレマーの医薬製剤である。一実施形態において、ステアリン酸マグネシウムなどであるが、これに限定されない滑沢剤を用いて錠剤に圧縮されてもよい直接圧縮可能なクロフェレマー(例えば、薬学的に許容される硬度及び破砕性の錠剤に賦形剤なしで直接圧縮されうるクロフェレマー)は、腸溶性コーティングされる。これらの製剤は、当該技術に公知の方法により調製することができ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., ed. Alfonso R. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990に記載されている方法を参照すること。
【0130】
特定の実施形態において、プロアントシアニジンポリマー組成物はクロフェレマー(CAS 148465-45-6)を含む。
【0131】
更に別の実施態様において、組成物は腸溶性コーティングされる。腸溶性コーティングは、胃の中では無傷のままであるが、小腸に到達すると、溶解し、剤形の内容物を放出するコーティングである。多数の腸溶性コーティングは、胃の中に存在する非常に低いpHすなわちpH1.5~2.5で酸性基がイオン化されず、かつコーティングが非解離の不溶性形態のままであるように、酸性基を有する成分により調製される。腸の環境などのより高いpHレベルでは、腸溶性コーティングは、イオン化形態に変換され、これは溶解して阻害剤分子を放出することができる。他の腸溶性コーティングは、小腸内の酵素により分解されるまで無傷のままであり、他は、コーティングが通過して小腸内に入るまで無傷のままであるように、水分への規定の曝露後に分裂する。
【0132】
腸溶性コーティングの調製に有用なポリマーとしては、シェラック、デンプン及びアミロースアセテートフタレート、スチレン-マレイン酸コポリマー、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(銘柄HP-50及びHP-55)、エチルセルロース、脂肪、ブチルステアレート及び酸性イオン化基を有するメタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、医薬組成物は、ポリマープロアントシアニジン組成物と、腸溶性コーティングポリマーのEudragit(登録商標)L 30D(250,000ダルトンの平均分子量を有する、メタクリル酸とアクリル酸メチルとのアニオン性コポリマー)とを含有する。別の実施形態において、腸溶性コーティングポリマーはEudragit(登録商標)L 30D-55である。クロフェレマー組成物への腸溶性コーティングの適用は、腸溶性コーティングを適用する当該技術において公知のいずれかの方法により達成することができる。例えば、限定することなく、腸溶性ポリマーは、噴霧適用では5~10%w/wのポリマー、パンコーティングでは30%w/wまでのポリマーを含有する有機溶媒型溶液を使用して適用することができる。一般的に使用される溶媒としては、アセトン、アセトン/酢酸エチル混合物、塩化メチレン/メタノール混合物及びこれらの溶媒を含有する三次混合物が挙げられるが、これらに限定されない。メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマーなどの一部の腸溶性ポリマーは、分散剤として水を使用して適用することができる。溶媒系の揮発性を適合させて、粘着性に起因する固着を予防しなければならず、早期噴霧乾燥又は溶媒蒸発によるポリマーの沈殿に起因するコーティングの高い多孔性を予防しなければならない。
【0133】
別の実施形態において、クロフェレマーを含有する医薬組成物は、硬シェルゼラチンカプセル剤に提供される又は小児科投与用の経口液剤に懸濁される、腸溶性コーティング顆粒剤又は粉末剤(例えば300~5001の直径を有する微小球)として製剤化される。腸溶性コーティング粉末剤又は顆粒剤を、特に小児科投与用に食物と混合することもできる。
【0134】
顆粒剤及び粉末剤は、結晶化、噴霧乾燥又は例えば高速混合機/造粒機を使用したいずれかの微粉砕方法などであるが、これらに限定されない当該技術に公知のいずれかの方法を使用して調製することができる。例示的な製剤は、例えば以下の米国特許及び出願において見出すことができ、米国特許第7,341,744号明細書、米国特許出願第11/510,152号明細書及び米国特許出願第12/175,131号明細書である。
【0135】
選択された投与経路にかかわらず、クロフェレマーは、当業者に公知の方法により薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0136】
併用療法の治療では、化合物及び他の薬剤は、両方とも、当該技術に公知の方法により哺乳動物(例えば、ヒト、男性又は女性)に投与される。薬剤は単一の剤形又は別々の剤形で投与されてもよい。他の治療剤の有効量は、当業者周知である。しかし、他の治療剤の最適な有効量範囲を決定することは、十分に当業者の理解の範囲内である。別の治療剤が動物に投与される一実施形態において、化合物の有効量は、他の治療剤が投与されない場合の有効量より少ない。別の実施形態において、薬剤の有効量は、化合物が投与されない場合の有効量より少ない。このように、いずれかの薬剤の高い用量に関連する望ましくない副作用が最小限になりうる。他の潜在的な利点(投与レジメンの改善及び/又は薬物費用の低減が限定されることなく挙げられる)は、当業者に明白である。
【0137】
様々な実施形態において、療法(例えば、予防又は治療剤)は、5分間未満の間隔を空けて、30分間未満の間隔を空けて、1時間の間隔を空けて、約1時間の間隔を空けて、約1時間~約2時間の間隔を空けて、約2時間~約3時間の間隔を空けて、約3時間~約4時間の間隔を空けて、約4時間~約5時間の間隔を空けて、約5時間~約6時間の間隔を空けて、約6時間~約7時間の間隔を空けて、約7時間~約8時間の間隔を空けて、約8時間~約9時間の間隔を空けて、約9時間~約10時間の間隔を空けて、約10時間~約11時間の間隔を空けて、約11時間~約12時間の間隔を空けて、約12時間~18時間の間隔を空けて、18時間~24時間の間隔を空けて、24時間~36時間の間隔を空けて、36時間~48時間の間隔を空けて、48時間~52時間の間隔を空けて、52時間~60時間の間隔を空けて、60時間~72時間の間隔を空けて、72時間~84時間の間隔を空けて、84時間~96時間の間隔を空けて又は96時間~120時間の間隔を空けて投与される。1又は2つ以上の実施形態において、2又は3つ以上の療法は同じ患者が来診したときに投与される。
【0138】
V.キット
キットも本明細書において提供され、例えば、化学療法を受ける対象における下痢、例としてCIDを治療するためのキットである。キットは、例えば、クロフェレマー又はクロフェレマーを含む医薬組成物及び使用説明書を含有することができる。使用説明書は、処方情報、投与量情報、保管情報などを含有することができる。
【0139】
ラベルの使用説明書は、例えば、CIDの治療のためにクロフェレマーを少なくとも3日間摂取する使用説明書を含む。使用説明書から、例えば、125mg BID~500mg BIDのクロフェレマーを、症状の消散まで、又はCIDを治療するための化学療法の治療持続期間にわたって摂取することを読み取ることもできる。使用説明書は、例えば、125mg BIDのクロフェレマーを、症状の消散まで、又はCIDを治療するための化学療法の治療持続期間にわたって摂取することを読み取ることもできる。説明書から、例えば、500mg BIDのクロフェレマーを、CIDの症状の消散まで摂取することを読み取ることもできる。
[実施例]
【0140】
本発明は、以下に記載されている実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本発明は、本明細書において提供されるいずれか及びすべての出願、及び当業者の技術の範囲内にあるすべての同等の変形を含むと解釈されるべきであることは認識されるべきである。
【実施例1】
【0141】
イヌにおける化学療法誘発性下痢を治療するためのクロフェレマーの安全性及び有効性の研究
リン酸トセラニブ(Palladia(登録商標))は、いくつかの受容体チロシンキナーゼ(RTK、receptor tyrosine kinases)を標的とするマルチキナーゼ阻害剤であり、イヌにおける所属リンパ節転移を伴う、又は伴わない、PatnaikグレードII又はIII、再発性の皮膚肥満細胞腫瘍を治療するために示されている。リン酸トセラニブは、肥満細胞腫瘍以外の新生物を治療するために、より多くの場合適応外で、現在使用される。
【0142】
リン酸トセラニブは、3.25mg/kg(1.48mg/lb)体重、経口で隔日の初回投与量で示した。0.5mg/kgの用量低下間隔[2.2mg/kg(1.0mg/lb)、隔日の最小用量まで]及び投与中断(2週間までにわたるリン酸トセラニブの休止)は、有害反応を管理するために必要であれば利用してよい。この承認は、6週間の遮蔽相の終わりに、目的の反応の第1の有効性評価項目におけるリン酸トセラニブの、プラセボを上回る統計的に有意な利点(37%対8%、p<0.001未満)を示す、無作為化した、プラセボ-対照、二重遮蔽、多施設臨床実地研究に基づいていた(London CA, et al., Clin. Cancer Res, 15(11), 2009)。リン酸トセラニブは、標識用量より低い用量で(2.5~3mg/kg/投与)処方されていることがあるが、下痢の有害作用は、一般的により低い頻度とはいえ、依然観察される。
【0143】
クロフェレマーは最小限吸収され、ヒト研究で、他の薬物の薬理学的曝露に対して最小限の相互作用しか有さないことが示されているため、クロフェレマー及びリン酸トセラニブの組合せで、有害反応におけるいかなる増加も、リン酸トセラニブ単独を上回って認められることは予想されなかった。
【0144】
リン酸トセラニブは、迅速な治療が必要となる重大な下痢又はGI出血に関連している。Londonの研究の遮蔽相中に、リン酸トセラニブにおいて全グレードの46%及びグレード3~4の7%で下痢対プラセボにおいて全グレードの27%及びグレード3~4の3%で下痢が観察された。この研究の遮蔽相と非盲検相中に、いずれかのグレードの59%及びグレード3~4の8%の下痢が、リン酸トセラニブで観察された。投与中断及び用量低減は、臨床徴候の重症度に応じて必須と考慮される。
【0145】
クロフェレマー(SP-303)は、クロトン・レクレリ(Croton lechleri)という木から精製されたプロアントシアニジン分子であり、これは、強い抗抗分泌性、並びに、cAMP-刺激性CFTRチャンネル及びカルシウム-活性化塩化物チャンネル(CaCC)の両方の過敏の調節及び正常化を通した特有の作用様式を有する。クロフェレマーは、イヌ及びヒトを含むいくつかの種において、腸運動に影響を与えずに下痢を治療する。クロフェレマーは、治療用量では全身吸収されないが、その代わり胃腸管のルーメン内で局所的に作用する。
【0146】
クロフェレマーは、抗ウイルス薬で治療されているHIVを有するヒトにおける非感染性の下痢の治療ではFDA(CDER)により認可されている。承認は、クロフェレマーの慢性投与を支援する。
【0147】
クロフェレマーは、イヌにおける急性の下痢を治療するために研究されている。概念証明研究(CANA-001)において、クロフェレマー(2~4mg/kg 1日2回、3日間;n=29)又はプラセボ(1日2回、3日間;n=32)を急性の下痢を呈するイヌに投与した。3度の24時間治療期間及び1度の24時間の観察期間後に、クロフェレマーで治療したイヌは、プラセボ-治療したイヌが示したものより良好な下痢の消散を示した。進行中の無作為化した、プラセボ-対照研究(CANA-003)は、イヌにおける急性の下痢に対するクロフェレマーの有効性の実質的な証拠が得られるように設計される。
【0148】
2~4mg/kg BIDで3日間投与されたクロフェレマーの安全性及び耐容性研究が、化学療法(CANA-002)でのイヌ8頭で実施された。これは、クライアントが所有する、現在(有症状)下痢又はスクリーニング以前の90日間以内にCIDの病歴を有する(下痢を治療するために以前に処方されている投薬による、又はカルテで認められた兆候による)イヌにおける、クロフェレマー腸溶性-コーティング錠剤の2施設、オープンラベル安全性研究であった。研究中に重篤な有害事象(SAE)は報告されず、対象は、AE又は対象の安全性の問題を含むいかなる理由でも研究から除外されなかった。臨床的に有意な安全性の所見は、研究中に観察されなかった。全8頭のイヌは、最後に報告された観察で有形便を示した。
【0149】
研究設計
この研究は、前向きな、二重盲検、多施設概念証明研究(表1)である。
【0150】
【0151】
研究外観
この研究は、外来ベースの、紹介センター及び大学獣医学センターから調達したイヌで実施される。単一のプロトコールがすべての研究施設で追跡された。Zoetis社により製造されたPalladia(登録商標)のブランド名の錠剤の投与を最低3回受けたイヌのみが、この研究に適任となる。配合されたリン酸トセラニブが、下痢の誘導により変形を引き起こしうる、及びより重大な下痢を引き起こしうる可能性に起因して、配合されたリン酸トセラニブを摂取したイヌは、この研究に適任ではない。Palladia(登録商標)のブランド名の錠剤は、治験責任医師が同意でき、病院又は施設薬局、地元薬局又はオンライン薬局を含みうるいかなる供給源からも得ることができる。
【0152】
Purina社糞便スコア(PFS、Purina Fecal Score)で6又は7の下痢を呈するイヌが、研究に登録するために飼い主により提示される。飼い主は、イヌがPalladia(商標登録)を始めるときに、又はPalladia(商標登録)開始のおよそ1~12週間以内にこの臨床トライアルについての情報を受けることができるが、投与に応じて、Palladia(商標登録)で治療したイヌの20~40%のみが臨床的に著しい下痢を発症する。イヌが、Palladia(商標登録)摂取中に実際に臨床的に著しい下痢の兆候を発症した場合、飼い主は、携帯電話のカメラで下痢の写真を撮影するよう指示され、次いで身体検査のためにイヌを提示する。治験責任医師がイヌを、研究のための登録基準を満たすと評価する場合、登録が生じる。
【0153】
ベースライン情報としては、PFS(及び飼い主が有するいくつかの写真)の選考、下痢が最初に認められた時間、下痢が始まって以来の下痢のエピソード回数(わかる場合)、登録前の72時間以内に併用投薬の再検討、病歴及び薬歴、身体検査、並びに臨床病変テストのための試料の採取(CBC、CHEM、U/A、卵子及び寄生生物について糞便試料)が挙げられる。包含基準のすべてを満たし、除外基準がなかったイヌを、合計6回用量で、調査用獣医学的生成物(IVP、Investigational Veterinary Product)又は対照生成物(CP、Control Product)1日2回(12±2時間間隔)を受けるように無作為化される。最初の投与は、すべてのスクリーニング活動の完了直後(すなわち同一日)に、病院で病院スタッフにより経口投与されるべきである。
【0154】
研究期間(T0~T96hr)は、3度の24時間治療期間(T0~T24hr;T>24hr~T48hr;T>48hr~T72hr)、続いて最後の治療の12時間後に始まり(T60hで投与される)24時間続く24時間観察期間(T>72hr~T96hr)に分けられる。したがって、各イヌは、飼い主により合計96時間評価される。各イヌに対する投与は、およそT0、T12hr、T24hr、T36hr、T48hr及びT60hrで生じる。研究期間中に、イヌは家庭内で生活させ、イヌの安全性及び健康を飼い主にモニターさせ、治験責任医師又は訓練された指定人との間で毎日電話通話させる。これらの通話でイヌの健康状態を毎日評価し、イヌが治験責任医師に、考えられるいかなる有害事象も評価させることを確実にする。
【0155】
糞便の評価は、飼い主により毎日完了される。飼い主は、各便通の時間、色及び写真を記録する日誌を書き上げるように要求される(15分の時間枠内での排出はすべて、単回の便通と考慮される)。これにより、単一の盲検化された者が、各便通に対する適切なPurina社糞便スコアを選択できるようになる。異常の観察は飼い主により報告され、有害事象の決定について、各日治験責任医師又は訓練された指定人により評価される。併用投薬は、飼い主により報告され、96時間研究期間中に研究スタッフにより記録される。
【0156】
研究期間の終わりに、又は中止時に、イヌは、別の身体検査及び追加の臨床病変テスト(CBC、CHEM)を含む研究完了前に、治験責任医師による最終評定を受ける。反復UAは、ベースラインの結果が異常であった場合にのみ実施される。
【0157】
データは、電子データキャプチャー形態で取り込まれ、バックアップとして紙形態が使用される。
【0158】
研究手順
インフォームドコンセント
飼い主は、この研究の参加についてイヌを治療する獣医/治験責任医師に接触する。Palladia(登録商標)療法に関連する下痢は、典型的には、療法開始の最初の数週間内に生じる。したがって、飼い主は、イヌが悪性疾患のPalladia(登録商標)治療を開始する、又はPalladia(登録商標)治療開始の90日間以内のとき、この研究の頃に接触してよい。この研究は、イヌが下痢を発生する可能性を予期して、イヌの飼い主と話し合うことがあり、これらのイヌの多くは下痢の兆候を発症せず、最終的に研究に登録されないことが理解される。或いは、飼い主は、イヌが下痢の兆候を既に有することを最初に提示したときに、この研究に現れる。飼い主は、携帯電話又はデジタルカメラで下痢の写真を撮影するように指示される。飼い主はこのとき、書面及び口頭で研究についての情報を提供される。イヌが研究に参加することに飼い主が同意する場合、研究要件によりイヌが下痢を発症するとき、飼い主はスクリーニング活動前に、インフォームドコンセントフォーム(ICF、informed consent form)にサインし、日付を入れる。
【0159】
スクリーニング
Palladia(登録商標)のブランド名の錠剤を最低3回投与後に、イヌが下痢を発症していることを飼い主が認める場合、飼い主は、イヌを研究施設に連れて行き、飼い主及び治験責任医師がPFSチャートについて話し合い、飼い主が有しうるいくつかの下痢の写真を再検討する。スクリーニングPFSが6又は7である場合、インフォームドコンセントを得なければならず、次いでイヌが研究包含及び除外基準を満たすかを、治験責任医師が決定する。下痢のVCOG-CTCAE v1.1グレード(附則4を参照されたい)は、スクリーニングでも捕捉される。イヌが包含基準を満たし、研究の除外基準のものはないことを検証すると、病歴、以前の評価及び現在の投薬、臨床化学のための身体検査及び試料の採取、血液学的検査、尿検査及び糞便分析が遂行されて、治療前(ベースライン)の値が確立される。上のベースラインの研究室評価の結果から、イヌがプロトコールの包含及び除外基準を満たさなければ、登録されているものからイヌを除外する。その代わり、治療前の値は、ベースラインの所見と考慮され、適切なCRFで記録される。
【0160】
時間0
イヌがスクリーニングに合格した後で、登録に適任と考慮され、研究に登録される。研究治療の最初の投与は、研究スタッフによりイヌに経口投与されるが、イヌは研究施設にいるままである。この最初の用量投与の時点が記録され、時間0(T0)とされる。投与は、およそ12時間毎に生じるように意図されているので、2回目の投与は、最初の用量が正午12時前に投与される場合、飼い主により同日に家庭で投与され、又は、最初の用量が午後に投与される場合、翌朝に投与される。その後すべての投与は、1日2回、12±2時間間隔の投与予定が続く。
【0161】
治療期間
研究治療は、3度の24時間治療期間で、治療期間(T0hr~T72hr)中に、1日2回(12±2時間間隔)経口投与される。しかし、2回目の投与は、最初の投与が研究施設で午後のうちに投与された場合、最初の投与の18時間後までに投与されうる。ビヒクル、例えばGreenies Pill Pocket(商標)は、投与に使用されうるが、必須ではない。研究のイヌは、Palladia(登録商標)のブランド名の錠剤を続けなければならず、研究の間、配合されたリン酸トセラニブを変化させてはならない。
【0162】
認められた各便通では、イヌの飼い主又はその指定人は、写真を撮影し、これを、最初の投与から後続の96時間の間にサーバーにアップロードする。飼い主/指定人が研究のイヌに目撃されていない便通があったことがわかる場合、便通が観察されるときに写真を撮り、目撃されていない便通としてEDCに入れる。複数の便通が15分の時間内に認められる場合、これらは1回の便通と考慮され、粘稠度は、観察され、記載されている最高のPFSスコアに基づいて決定される。
【0163】
飼い主によりEDCに入れられたデータが正しいことを確認するために、飼い主/指定人への毎日の電話通話が研究スタッフにより試みられる。あらゆる試みは、施設スタッフにより行われて、飼い主/指定人と、各24時間間隔以内に少なくとも1回話す。施設が試みに失敗する場合、施設はこれをEDC内とする;しかし、この電話での接触不能は、プロトコール偏差とは考慮しない。
【0164】
飼い主/指定人と話したら、飼い主/指定人により認められるいくつかの観察は、治験責任医師により考えられる有害事象として評価される。更に、飼い主によりイヌに与えられるいずれかの新たな投薬は、先述のもの及び併用投薬の頁に入る。
【0165】
観察期間
観察期間(T>72hr~T96hr)中に、飼い主は、イヌの便通の写真撮影を続けるが、テスト物品の更なる投与は行われない。飼い主によりEDCに入れられたデータが正しいことを確認するために、飼い主/指定人への毎日の電話通話は、研究スタッフにより試みられる。飼い主/指定人により認められるいくつかの観察は、治験責任医師により考えられる有害事象として評価される。更に、飼い主によりイヌに与えられるいずれかの新たな投薬は、先述のもの及び併用投薬の頁に入る。観察期間は、IVPを中止する際に、下痢の兆候の効果の持続又は再発を評価するために使用される。
【0166】
最終評価(研究手順の終わり)
イヌは、この来診及び手順を正しく完了したら、研究を完了したと考慮される。最終身体検査は、観察期間の終わりに、又は観察期間の終わり若しくは中止の3営業日以内に実施される(イヌを中止させる場合、施設スタッフは、飼い主にイヌをこの来診で完了させるように試みる。これが不可能な場合、イヌは、追跡調査できなくなったと考慮される)。試料は、臨床化学、血液学的検査及び尿検査のために収集される(尿検査は、最初の試料が臨床的に著しい異常性を示した場合にのみ繰り返される)。下痢の最終VCOG-CTCAE v1.1グレードも、同時に評価される。治験責任医師又は治験分担医師は、イヌの飼い主と会って、日誌におけるデータの精度を再検討及び確認し、IP投与の完了後に何回かの便通の色及び頻度を中心に下痢の兆候のぶり返しについて尋ねる。
【0167】
研究は、スポンサーの裁量で、どの時間に停止させてよい(すなわち完了していない)。停止の理由は、研究記録において文書化される。
【0168】
研究中止
イヌは、飼い主又は治験責任医師により、いかなる理由でも、またいかなる時でも研究を中止してよい。
【0169】
イヌが研究を中止する場合、最終評定で行われるものと同一の手順が実施されるべきである。中止の理由がAEに起因する場合、これはAE形態で文書化される。
【0170】
有害事象
イヌの兆候、挙動及び糞便の性状における、ベースラインからの臨床的に著しい何らかの変化(IPを用いた治療前)は、イヌの飼い主により報告されている。イヌの身体検査又は実験室値における、ベースラインからの臨床的に著しい何らかの変化は、必要に応じて、有害事象(AE、Adverse Event)の形態で治験責任医師により認められる。有害事象の評価も、イヌの飼い主と治験責任医師又は訓練された指定人との間で、毎日の電話通話を介して確かめられる。有害事象は、ABONシステムに従ってグレード付けされる。
【0171】
動物の数
登録の目標は、効き目の主要評定について、IVPで、すべての施設にわたって評定可能なケース少なくとも25例である。CPで、少なくとも12例の追加の評定可能なケースを登録して、IVPとCPとの間で、効き目の結果の比較を可能にする。IVPで治療したイヌとCPで治療したイヌの比は、およそ2:1である。研究は、隣接した連合州にわたって少なくとも3箇所の地理的に多様な施設を使用する。所定の施設のいずれかでの最大の登録は、研究において評定可能なケースの合計数の40%である。
【0172】
これはパイロット研究なので、試料数の推定は、統計的な考慮に基づいていない。IVPで評定可能なケース少なくとも25例、及びCPで評定可能なケース12例の評定可能な試料数は、この研究の目的のために十分考慮されている。
【0173】
ブロッキング因子
ブロッキング因子はこの研究に利用されない。
【0174】
無作為割付手順
個別の無作為割付リストを、研究の統計家により各研究施設のために作り出す。統計家は、およそ2:1 IVP:CPの比で研究治療を無作為に割り付ける。
【0175】
盲検化手順
これは、無作為化二重盲検研究であり、したがってスポンサー、飼い主、治験責任医師及びすべての施設研究スタッフは、治療に盲検化される。飼い主は、後続の便通の記録に影響を与えないように、オンラインデータキャプチャーシステムにおけるイヌの便通の以前の記録に更に盲検化される。
【0176】
治験薬(IP、INVESTIGATIONAL PRODUCTS)
調査用獣医学的生成物(IVP)
商標名:クロフェレマー(CAS番号:148465-45-6)
IVP製剤は、GMPの原理に従って製造される。各製剤に対する分析の証明書は、最終研究報告に含まれる。製造施設名及び住所、パーセント組成、ロット/バッチ番号、並びに期限/再テスト日は文書化される。
【0177】
クロフェレマーの原薬(API、active pharmaceutical ingredient)に加えて、不活性成分としては、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムが挙げられる。腸溶性コーティング成分としては、エチルアクリレート及びメチルアクリレートコポリマー分散体、滑石、クエン酸トリエチル、キサンタンガム、チタンオキシド、プロピルパラベン及びメチルパラベンが挙げられる。
【0178】
剤形
IVPは、125mgのクロフェレマーを含有する、スコア付けされていない腸溶性コーティング白色錠剤として供給される。
【0179】
対照生成物(CP、Control Product)
CPは、GMPの原理に従って製造される。分析の証明書は、最終研究報告に含まれる。製造施設名及び住所、パーセント組成、ロット/バッチ番号、並びに期限/再テスト日は文書化される。
【0180】
CPの製剤は、IVPのものと一致するが原薬(API)を含有していない。
【0181】
剤形
CPは、クロフェレマーを0mg含有する、IVPと同一の大きさの、スコア付けされていない腸溶性コーティング白色錠剤として供給される。
【0182】
用量の正当性
この研究での用量は、イヌ(CANA-001)における分泌性下痢に関連する徴候を軽減する際に、クロフェレマー(SP-303)の臨床的有効性を評価したパイロット研究から得られるデータに基づき、30日(WIL-288006)及び9か月(WIL-288022)毒性研究で広いマージンの安全性が確立された。イヌにおけるクロフェレマーの長期安全性は、9か月研究で研究され、その間、錠剤がカプセル中で1日1回、1週間当たり7日間、273又は274日間にわたり3群のビーグル犬に投与された。同時の対照群に加えて、投与量レベルは、50、175及び600mg/kg/日であった。この研究の結果に基づき、腸溶性コーティングクロフェレマー錠剤のイヌへの経口(カプセル)投与で、連続273又は274日間にわたり有害効果が観察されないレベル(NOAEL、no-observed-adverse-effect level)は、50mg/kg/日であった。この用量レベルで、発見は不定期な胃腸兆候に制約された。より高い投与量(175及び600mg/kg/日)での結果は、主要な有害作用は、胃腸の刺激であり、これは続いて、多彩な二次効果(体重及び摂食量の減少、下痢、催吐、血液学的検査及び血清化学パラメーターの変化、好塩基体(basophilic bodies)の存在による甲状腺/副甲状腺の重量減少及び/又はマクロファージ浸潤、並びにリンパ節、胃腸管及び肝臓における顔料の取り込み)を引き起こすことを示唆した。したがって、無効果レベルは、50~175mg/kg/日と見積もられる。
【0183】
研究員に対する安全予防措置
研究員に対する安全性のための標準的な予防措置は、研究中に守られる。IPを投与する場合、イヌの飼い主に承知すべき特別な予防措置はない。安全性データシート(SDS、safety data sheet)は、IPの各出荷と共に施設に提供される。
【0184】
治験薬投与
研究開始の会合は、各参加研究施設で(対面又はウェビナーにより)行われて、治験責任医師及び関連する研究員は、IPの投与及びデータの採取に関して、手順を完全に理解すること、及びそのような手順をイヌの飼い主に説明できることを確実にする。
【0185】
各イヌの研究登録の時に、イヌは計量され、治験責任医師は、以下の表から用量を決定する:
【0186】
【0187】
研究治療の最初の投与は、研究スタッフによりイヌに経口投与されるが、イヌは研究施設にいるままである。イヌは次いで、研究の残りの間家庭で、飼い主又は指定人により1日2回(12±2時間間隔)経口投与される。イヌの飼い主は、研究中に用量投与の時間を記録する。ビヒクル、例えばGreenies Pill Pocket(商標)又は食品の小ボールが使用されうるが、必須ではない。用量が投与された後で、錠剤が嚥下され、吐き出されていないことを確実にするために、イヌは短時間観察される。
【0188】
イヌが、投与後1時間以内に嘔吐する場合、この観察は、飼い主により記録され、イヌは、同一数の新たな錠剤を再度投与されるべきである。イヌが、投与後1時間以降で嘔吐する場合、この観察は、飼い主により記録されるべきであるが、イヌにはそのとき再度投与すべきではなく、その時点で投与されたと考慮される。イヌが投与後1回超嘔吐する場合、イヌは、研究を中止すべきである。治験責任医師又は指定人は、各嘔吐のエピソードを有害事象CRFで記録する。
【0189】
【0190】
特有のケース番号を、研究に登録されている各イヌに割り付けるが、飼い主がICFにサインしても、形式通りのスクリーニングを受けず、登録されていないイヌにはケース番号を割り付けない。各施設で、ケース番号は、2桁の施設識別番号、続いて3桁のイヌ識別番号からなる。IPは、登録された各イヌの連続番号に基づいて飼い主に小分けされる。
【0191】
有効性の変動要因
主要評価項目
下痢の消散
治療の成功(下痢の消散)は、治療期間(T0hr~T72hr)中に、少なくとも24時間にわたり有形便(1、2、3、4又は5のPFS)を発生する、及び有形便を維持する(すなわち6又は7のPFSなし)、又は糞便を示さないいずれかのイヌと定義される。したがって、下痢の消散は、T48hrまでに生じなければならない。
【0192】
治療の失敗は、治療期間(T0hr~T72hr)中に、少なくとも24時間有形便(1、2、3、4又は5のPFS)を達成しない、及び/又は以下のいずれかを経験しているいずれかのイヌと定義される:
1.効き目がないと気付いたことに起因する、飼い主の中止の同意
2.研究に参加し続けることを妨げる有害事象
【0193】
二次評価項目
全治療期間にわたる下痢の消散
治療の成功(下痢の消散)は、治療期間(T0hr~T72hr)中に、有形便(1、2、3、4又は5のPFS)を生じる、及び有形便(すなわち6又は7のPFSなし)を維持する、又は糞便を示さないいずれかのイヌと定義される。
【0194】
治療の失敗は、治療期間(T0hr~T72hr)中に、有形便(1、2、3、4又は5のPFS)を達成しない、及び/又は以下のいずれかを経験しているいずれかのイヌと定義される:
1.効き目がないと気付いたことに起因する、飼い主の中止の同意
2.研究に参加し続けることを妨げる有害事象
【0195】
12.2.2 スクリーニング及び最終評価での下痢VCOG-CTCAE v1.1グレードの比較
各イヌのスクリーニングで得られた下痢のVCOG-CTCAE v1.1グレードを、T72h、T96hで、及び最終評定で得られた下痢のVCOG-CTCAE v1.1グレードと比較する。スクリーニングとT72h、T96h及び最終評定との間におけるグレードにおける変化を、IVPを受けたイヌと、CPを与えられたイヌとの間で比較する。
【0196】
最後の非有形糞便までの時間
最後の非有形糞便までの時間(TLUS、Time to the last unformed stool)は、72時間の治療期間(T0hr~T72hr)中のみで、最初の投与(T0hr)から最後の非有形糞便(6又は7のPFS)までの経過時間により決定する。
【0197】
ゆるい又は水様下痢の頻度
ゆるい又は水様下痢(6又は7のPFS)の頻度は、研究期間中に生じる非有形糞便のエピソード(6又は7のPFS)の合計数により決定される:T0hr~T96hr。(24時間の期間で分析される。)
【0198】
安全性
安全性の評価は、飼い主により報告されている兆候、並びに治験責任医師により行われる身体検査の所見、及び研究を通した実験室的研究の何らかの異常に基づいて行われる。
【0199】
糞便評価
Purina社糞便スコア(PFS)
Purina社糞便スコアリング(PFS)チャートを使用すると、PFSは、イヌの飼い主との連絡を介して、理想的には1又は2枚以上のイヌの便通の写真を用いて、スクリーニングで得られる。PFSの毎日の各評定は、イヌの飼い主により記載され、イヌの飼い主と治験責任医師又は訓練された指定人との間で電話により再検討される。
【0200】
各糞便評価は、以前の糞便評価以後に生成された新たな便通のみを考慮する。イヌが2又は3回以上の便通を15分の期間中に経験した場合、次いでこれらの便通は、集合的に認められ、単一のPFSが割り当てられ、便通に適切な最高のPFS数値スコアをCRFで記録した。
【0201】
便通の数
研究期間中に各日を通して、イヌの飼い主/指定人は、eCRFにアップロードされた写真で便通の各エピソードを記録する。イヌが15分期間中に2又は3回以上の便通を経験している場合、次いでこれらの便通は、1回の事象として集合的に認められる。便通の各エピソード、並びに時間及び写真の記録の後で、次の便通のエピソードは、個別の事象と考慮される。
【0202】
統計解析
すべての統計的な検定は、両側である。有効性は、5%の有意レベルで評定される。すべての検定は、SASバージョン9.3以降を使用して実施される。
【0203】
統計解析集団
これは概念証明研究なので、有効性分析は、無作為化され、少なくとも1回の研究投薬(安全性集団/治療企図解析対象(ITT、Intent-to-Treat)集団)の投与を受けたすべてのイヌを含む。
【0204】
有効性
主要有効性の変動要因:下痢の消散
主要有効性の変動要因「下痢の消散」は二分(成功vs失敗)され、治療期間(T0hr~72hr)中の治療群間の成功の比率は比較される。治療群の間で考えられる差は、一般化された線形混合モデル(SAS(登録商標)Proc GLIMMIXを使用、二項分布及びlogitリンクと仮定して)により評価される。モデルは、治療(IVP又はCP)の固定効果、共変量としてベースラインPFSを用いるランダム効果として、施設及び施設による治療の相互作用を含む。
【0205】
治療有効性は、2つの治療群間の成功率に有意差が存在し、パーセント成功がCP群と比較してIVP群でより高い場合、結論付けられる。
【0206】
二次有効性の変動要因
全治療期間にわたる下痢の消散
有効性の変動要因「全治療期間にわたる下痢の消散」は、二分(成功vs失敗)され、治療期間(T0hr~72hr)中の治療群間の成功の比率は比較される。治療群の間で考えられる差は、一般化された線形混合モデル(SAS(登録商標)Proc GLIMMIXを使用、二項分布及びlogitリンクと仮定して)により評価される。モデルは、治療(IVP又はCP)の固定効果、共変量としてベースラインPFSを用いるランダム効果として、施設及び施設による治療の相互作用を含む。
【0207】
治療有効性は、2つの治療群間の成功率に有意差が存在し、パーセント成功がCP群と比較してIVP群でより高い場合、結論付けられる。
【0208】
スクリーニング及び最終評定での下痢のVCOG-CTCAE v1.1グレードの比較
スクリーニングと最終評定との間のグレードにおける変化は、固定効果としての治療、並びに共変量としてベースラインPFSを用いるランダム効果としての施設及び施設による治療の相互作用での、共分散分析(ANCOVA、analysis of covariance)モデル化を使用して、IVPを受けたイヌと、CPを与えられたイヌとの間で比較する。
【0209】
最後の非有形糞便までの時間
最後の非有形糞便までの時間(TLUS)は、Kaplan・Meier法を使用して提示し、log-rank検定を使用して比較する。有形便(6又は7のスコア)を示さないイヌは、最後の非有形糞便の時間で検閲される。有形便(1、2、3、4又は5のスコア)のみ示す、又は糞便なしのイヌでは、TLUSの生じる時間はゼロにセットされる。
【0210】
下痢の頻度
固定効果としての治療、並びに共変量としてベースラインPFSを用いるランダム効果として施設及び施設による治療の相互作用でのANCOVAモデル化は、IVPとCPとの間における下痢の頻度を比較するために用いられる。
【実施例2】
【0211】
HER2陽性乳がん患者(ヒト対象)におけるクロフェレマーを用いた下痢の防止及び予防の研究
研究設計:化学療法誘発性下痢は、HER2陽性局所進行又は転移性乳がんに対するこの治療を受ける患者の40~80%までに見られる。この下痢は、患者の生活の質及び化学/抗HER2療法に耐容する能力に著しく影響を与えうる。この研究は、カルボプラチンを伴って、又は伴わないで、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びドセタキセル又はパクリタキセルを与えられる乳がん患者における下痢の予防での薬物クロフェレマーの効き目に注目する(THP及びTCHPと呼ばれる化学療法レジメン)。
【0212】
プロトコール:
およそ46名の患者を治療アーム又は対照に無作為に割り付ける。治療アームでの患者は、クロフェレマーの錠剤1錠を1日2回摂取して(各錠剤は125mgである)、THP又はTCHPによる化学療法のサイクル1~2回目中に、咀嚼又は噛み砕かずにそのままで嚥下する。患者は、化学療法のサイクル3回目中にクロフェレマーなしでモニターする。対照アームにおける患者は、THP又はTCHPのサイクル1~3回目で研究中となる。対照アームにおける患者は、この研究におけるいかなる時間にもクロフェレマーを受けない。サイクルは、処方されたTHP又はTCHPの注入、続いて21日間の持続期間を含みうる。Baselga J, Cortes J, Kim SB, et al. Pertuzumab plus Trastuzumab plus Docetaxel for Metastatic Breast Cancer. N Engl J Med. 2012;366:109-119)を参照されたい。
【0213】
適格基準:
研究に非常に適任の患者は、以下の通りである:書面によるインフォームドコンセントの提供を厭わない、及び提供することが可能である;年齢≧18歳の男性又は女性;いずれかの段階のHER2陽性乳がんの診断が病理学的に確認される(以前の治療は、前治療ラインの限定なしで許容される);少なくとも3回連続サイクルのTHP又はTCHPを受ける予定がある;ECOGスケールによる0~2のパフォーマンスステータスを有する;妊娠可能な女性で、インフォームドコンセントのとき妊娠テストで陰性を有する;ECHO又はMUGAにより決定されるベースラインで50%以上の左室駆出率(LVEF、Left Ventricular Ejection Fraction)を有する;並びに研究手順を読み、理解し、従うことができ、クロフェレマー、救援投薬、及び便通の日誌を完了することができる。脳転移を有する患者(同時ステロイド治療を含む)は、この研究で許容される研究に認められる。適任ではない患者としては、授乳している女性;進行中の過敏性腸症候群(IBS、irritable bowel syndrome)又は大腸炎を有する者(潰瘍性大腸炎、クローン病、顕微鏡的大腸炎などを含むが、それらに限定されない);同意の署名から3週間以内に治験薬を使用する、又は研究中、過去3週間以内に化学療法のトラスツズマブ若しくはペルツズマブ、過去7日以内に緩下剤、過去7日以内に長期の緩下剤(≧連続30日)若しくは下痢止め剤(ロペラミド、オクトレオチド、ビスマス、アヘンチンキ、アトロピン、食品以外のあらゆる形態のプロバイオティクスを含むが、それらに限定されない)、過去7日以内に抗生物質の使用が予見された者が挙げられる。患者は、以下のいずれかを有する場合も排除された:いずれかのタイプのオストミー;結腸全摘除;大便失禁;進行中の放射線誘発性下痢若しくは便秘、又は研究中の腹部若しくは骨盤への計画放射線療法;経口及び静脈内抗生物質、抗真菌剤、抗寄生生物剤、抗ウイルス剤を含むが、それらに限定されない進行中のインターベンションが必要となる活動性全身性感染症;過去6か月以内の主な腹部又は骨盤手術;同意に署名する前の28日以内に、以下の研究室の結果を含みうる、THP又はTCHPを開始するには不十分な器官機能:通常上限(ULN、upper limit of normal)を超える総ビリルビン(患者がジルベール症候群と文書化されていなければ);2.0mg/dL又は177μmol/Lを超える血清クレアチニン;又は2.5ULNを超えるAST(SGOT)及びALT(SPGT)。
【0214】
有効性の変動要因:
主要転帰は、すべてのグレードの下痢[時間の枠:29か月]:化学療法のサイクル1及び2の間に連続2又は3日以上続くすべてのグレードの下痢の罹患率を測定する
【0215】
二次転帰は、以下のように測定する:
【0216】
下痢のいずれかのグレード[時間の枠:29か月]CTCAE v4.0により、サイクルにより及び段階(stratum)により測定されるいずれかのグレードの下痢の罹患率
【0217】
グレード3~4の下痢[時間の枠:29か月]CTCAE v4.0により、サイクルにより及び段階により測定されるグレード3~4の下痢の罹患率
【0218】
下痢の発症[時間の枠:29か月]いずれかのグレード、全体の、及び段階による下痢の最初のエピソード発症までの時間
【0219】
下痢の持続期間[時間の枠:29か月]エピソードが開始するサイクルにより、及び段階により1日目~21日目で定義されるいずれかのグレードの下痢の持続期間(日)
【0220】
グレード3~4の下痢の持続期間[時間の枠:29か月]エピソードが開始するサイクルにより、及び段階により1日目~21日目で定義されるグレード3~4の下痢の持続期間(日)
【0221】
下痢止め投薬[時間の枠:29か月]サイクル及びグレードによる下痢止め投薬の使用(研究薬以外)
【0222】
FACIT-D合計スコア[時間の枠:29か月]サイクルによる、及び段階による、各サイクルの1日目及び研究完了時に収集した定量的FACIT-D合計スコア
【0223】
FACIT-D下痢スコア[時間の枠:29か月]サイクルによる、及び段階による、定量的FACIT-D下痢サブセット(DS、diarrhea subset)スコア
【0224】
便頻度及び粘稠度[時間の枠:29か月]治療群間のサイクル段階により、Bristol便スケールで測定される糞便の粘稠度の頻度表
【0225】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例3】
【0226】
ビーグル犬におけるネラチニブ誘発性下痢を治療するためのクロフェレマー安全性及び有効性の研究
ネラチニブ(Nerlynx(登録商標))は、HER-2受容体チロシンキナーゼの、経口的に利用できる6,7-二置換-4-アニリノキノリン-3-カルボニトリル不可逆性阻害剤(EGFR及びHER4にも結合する)であり、潜在的な抗新生物活性を有し、また、アジュバントトラスツズマブ系療法に従う、早期HER2-陽性(過剰発現/増幅した)乳がんを有する成人患者の拡張したアジュバント治療、及び転移性HER2-陽性乳がんに適用される。
【0227】
ネラチニブの推奨用量は、経口で1日1回240mgである。40mgの用量低下間隔[1日1回120mgの最小用量まで]及び投与中断(3週間までにわたるネラチニブの休止)は、必要な場合、有害反応を管理するために利用してよい。下痢止めの予防は、ロペラミドを、ネラチニブの最初の投与と共に使用して開始し、治療の最初の2サイクル中(56日間)続く。この承認は、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ-対照研究(ExteNET)に基づいていた。
【0228】
クロフェレマーは最小限しか吸収されず、ヒト研究において、他の薬物の薬理学的曝露に対して最小限の相互作用しか有さないことが示されているので、クロフェレマー及びネラチニブの組合せで、ネラチニブ単独を上回るある増加が有害反応において認められるとは予想されない。
【0229】
重大な下痢及び続発症、例えば脱水状態、低血圧、及び腎不全は、ネラチニブを用いた治療中に報告されている。下痢は、ExteNETにおいてネラチニブで治療した患者の95%で報告された。グレード3の下痢は40%で生じ、グレード4の下痢は、患者の0.1%で生じた。患者の大多数(93%)は、治療の最初の月に下痢を示し、グレード≧3の下痢を最初に発症するまでの中央値の時間は、8日であり(範囲、1~350)、グレード≧3の下痢の中央値の累積的な持続期間は、5日であった(範囲、1~139)。
【0230】
目的
この研究の目的は、健常な雌イヌにおいて、ロペラミドの併用を伴わない28日間にわたる毎日の経口ネラチニブ投与後の、下痢の罹患率及び重症度の低下におけるクロフェレマーの効果を評定することであった。
【0231】
方法
平均重量7.2kg(6.4~8.5kgの範囲)の健常な雌ビーグル成犬24頭を、それぞれイヌ8頭の3群に無作為化した。すべてのイヌは、最初の5日間にわたり経口ネラチニブを1日1回40mg/日を受け、これを6日目から28日間の期間の残りまで80mg/日に増加させて、ゆるい/水様便の排出により証明されるように下痢を誘導した。
【0232】
1群のイヌは、28日間の期間にわたり、毎日経口ネラチニブ錠剤を受け、プラセボクロフェレマーカプセル剤を1日4回(QID)経口投与された対照群を表した。2群は、28日間の期間にわたり、毎日経口ネラチニブ錠剤を受け、毎日クロフェレマー125mg遅延放出錠剤(Mytesi(登録商標))及びクロフェレマーカプセル剤をQID経口投与された。3群のイヌは、28日間の期間にわたり、毎日経口ネラチニブ錠剤を受け、毎日クロフェレマー125mg遅延放出錠剤(Mytesi(登録商標))及びクロフェレマーカプセル剤をQID経口投与された。
【0233】
【0234】
イヌを糞便の粘稠度及び便通の回数を1日2回評定し、これを、ヒトのBristol便形成スコアに類似した7点Purina社糞便スケールに従ってスコア付けした。軽度又は中等度の脱水症のイヌは、皮下体液を採り、及び/又は下痢重症度を軽快させる単一日のネラチニブ用量低下又は休薬日を設けた。いずれの治療群のイヌも、28日間の治療期間中に、いかなる時間においても、下痢の罹患率又は重症度を低下させるロペラミドのような腸運動抑制薬物を受けなかった。
【0235】
ネラチニブ経口投与後の、クロフェレマーの下痢重症度の低下に対する薬理学的効果をa)4週間の治療期間のうち少なくとも2週間にわたり≦7回水様便のイヌと定義される、「レスポンダー」イヌの比率を決定すること;b)各治療群における1週間当たりの水様便の平均回数を評定すること;c)すべての治療群対プラセボで、1週間当たりの平均糞便スコアにより決定された糞便の粘稠度を比較すること;d)すべての治療群及びプラセボで、ネラチニブの投与毎の1週間当たりの水様便の平均回数を比較すること;e)すべての治療群及びプラセボで、ネラチニブの投与毎の1週間当たりの平均糞便スコアを比較すること;並びにf)すべての治療群及びプラセボで、体重、臨床化学、及び血液学的パラメーターにおける変化を評定することにより評価した。
【0236】
要約統計量は、各週間で算出し、ペアワイズp値は、t検定を介して算出して、クロフェレマー-治療群での、対照群との差を決定した。共分散分析(ANCOVA)は、共変量としてベースライン糞便スコアを使用して実施した。最小二乗平均(LSM、Least Squares Mean)の結果は、ベースラインスコアに対して調整された。
【0237】
結果
この研究の28日間の治療期間中のいかなる時間においても、治療群のいずれかで、体重、臨床化学、及び血液学的パラメーターに有意差はなかった。
【0238】
対照イヌ8頭のうち3頭(3/8、37.5%)は、4週間の期間のうち少なくとも2週間にわたり、1週間当たり≦7回の水様便を有した。対照的に、クロフェレマーQIDで治療したイヌ8頭のうち7頭(87.5%)、及びクロフェレマーBIDで治療したイヌ8頭のうち6頭(75%)は、4週間の期間のうち2週間にわたり、1週間当たり≦7回の水様便を有した。ロジスティック回帰分析は、対照群がクロフェレマーQID(オッズ比=17.8、p値=0.02)及び/又はクロフェレマーBID(オッズ比=26.8、p値=0.03)とは有意に異なることを示した。クロフェレマーQIDを受けたイヌは、対照群に登録されたイヌより26.8倍「レスポンダー」になりやすかった。
【0239】
【0240】
プラセボ及びクロフェレマーで治療したBID及びQID群に関して、全4週間の治療期間の1週目、及び治療の終わりにおける1週間当たりの水様便の平均回数が表6に示されている。全28日間の期間にわたる合計の水様便の平均回数は、対照イヌと比較して、クロフェレマーBID及びQID群でより有意に低かった(p<0.05)。
【0241】
【0242】
1週間当たりの平均糞便スコアにより測定される糞便の粘稠度は、対照群イヌがよりゆるい/水様便を有する一方で、クロフェレマーQID及びBID群が、より有形の便を示したことを実証した。治療群による結果は、表7に示されている。対照群と比較してクロフェレマーBID群におけるネラチニブ用量の低減は少ない(p<0.1)傾向があった。治療による1週間当たりのネラチニブ用量低減の平均数は、表8に示されている。
【0243】
【0244】
【0245】
ネラチニブ投与毎の1週間当たりの水様便の平均回数における、対照と比較して有意な低減が、1週目の間、並びに全28日間の治療期間にわたり、クロフェレマーBIDイヌで生じた。1週目での結果及び全体の結果は、表9に示されている。
【0246】
【0247】
ネラチニブ投与毎の1週間当たりの平均糞便スコアにより測定される糞便の粘稠度は、クロフェレマーQID及びBID群で、全28日間の治療期間にわたり、対照群と比較して有意により有形の便を示した。結果は表10に示されている。
【0248】
【0249】
結論
この研究は、第1の分類の抗分泌性下痢止め薬クロフェレマーが、毎日のネラチニブ経口投与に関連する下痢の罹患率及び重症度を著しく低下させたことを示し、キナーゼ阻害剤は、トラスツズマブ系療法に従う早期Her-2陽性乳がんを有する成人患者のアジュバント治療に適用される。雌イヌにおけるこの非臨床研究は、ロペラミド(アヘン剤)の併用投与なしで実施され、塩化物イオンチャンネル調節作用のクロフェレマーによる生理学的機構により、ネラチニブ投与後の下痢の罹患率及び重症度の著しい低減がもたらされることが実証された。
【0250】
クロフェレマーは、4週間の治療期間のうち少なくとも2週間にわたり、1週間当たり≦7回の水様便の閾値により定義される「レスポンダー」の数の著しい改善も実証した。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法を受けるヒト対象に
クロフェレマーを含む組成物を投与することを含む、前記ヒト対象における化学療法誘発性下痢(CID)を治療する方法
における、使用のための、前記クロフェレマーを含む組成
物。
【請求項2】
クロフェレマーが
、化学療法剤と組み合わせて投与されうる
か、或いは、クロフェレマーが、化学療法と同時に投与されて、CIDの発症を低下させる、又は遅延させる、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項3】
クロフェレマーが、化学療法の前に投与されて、CIDの発症を予防する、低下させる、又は遅延させる
か、或いは、クロフェレマーが、化学療法の後に投与されて、CIDの発症を低下させる、又はCIDを治療する、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項4】
化学療法が、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格攪乱性物質(タキサン)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチドアナログ及び前駆体アナログ、ペプチド抗生物質、白金ベース作用剤並びにレチノイドから選択される、請求項1
又は2に記載の
、使用のための組成物。
【請求項5】
化学療法が、1又は2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤
(TKI)を含む、請求項
4に記載の
、使用のための組成物。
【請求項6】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アキシチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、ルキソリチニブ、ネラチニブ、ボスチニブ、パゾパニブ、アファチニブ、レンバチニブ、ツカチニブ、バンデタニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダコミチニブ、及びバラチニブから選択される
か、又は、チロシンキナーゼ阻害剤が、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)TKIから選択され、任意に、前記ALK TKIがクリゾチニブ、セリチニブ及びアレクチニブから選択される、請求項5に記載の、使用のための組成物。
【請求項7】
化学療法が、ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤であ
り、任意に、前記ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤が、アルペリシブである、請求項4に記載の、使用のための組成物。
【請求項8】
化学療法が、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)4/6/阻害剤であり、
任意に、アベマシクリブで
ある、請求項
4に記載の
、使用のための組成物。
【請求項9】
化学療法が、1又は2つ以上のHER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤を含
み、任意に、前記HER(ヒト上皮増殖因子受容体)阻害剤が、RG7116、RG1273(ペルツズマブ、Perjeta(登録商標))、RG3502(トラスツズマブエムタンシン、T-DMI)、RG597(トラスツズマブ、ハーセプチン)、RGA201(RG7160)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ダコミチニブ(PF-00299804)、PF-05280014(Pfizer社のRG597のバイオ後続品mAB)から選択される、請求項1~
4のいずれかに記載の
、使用のための組成物。
【請求項10】
クロフェレマーが、対象がCIDの症状を呈し始めた後に投与される、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項11】
クロフェレマーが、化学療法による治療の期間にわたり投与される、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項12】
クロフェレマーが、CIDの症状が軽快するまで投与され、次いでクロフェレマーが中止される、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項13】
投与することが、それを必要とする対象に、クロフェレマーを1日当たり約250mg~約1000mg投与すること、1日当たり約250mg投与すること、1日当たり約500mg投与すること、1日当たり約1000mg投与すること、約125mgを1日2回投与すること、約250mgを1日2回投与すること、又は約500mgを1日2回投与することを含む、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項14】
クロフェレマーが、腸溶性コーティング経口剤形として投与される、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項15】
クロフェレマーが、腸溶性コーティングされていない経口剤形として投与される、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項16】
対象が、クロフェレマーの投与なしでは耐容できなかった化学療法剤を耐容できる、又は、クロフェレマーの投与なしで耐容できた投与量よりも、より高い投与量の化学療法剤を耐容できる、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項17】
対象が、1日当たりの便通の回数の減少、1日当たりの水様便通の回数の減少、毎日の腹部の疼痛又は不快感スコアの改善、毎日の便の粘稠度のスコアの改善、便の粘稠度の減少、対象が切迫感を経験した1週間当たりの日数の減少、対象が大便失禁を経験した1週間当たりの日数の減少、又は下痢の著しい悪化での予定外の来診の減少のうちの1又は2つ以上を示す場合、前記対象が治療されたと考えられる、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項18】
投与が、Common Toxicity Criteriaによる下痢のグレードの、1、2又は3グレードの低下をもたらす、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項19】
対象が、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、腎臓がん、甲状腺がん、口腔又は中咽頭がん、星細胞腫、肉腫、中皮腫、髄膜腫、リンパ腫、骨髄腫、頭頸部がん、肺がん、癌腫(例えば、扁平上皮癌)、悪性黒色腫、腹膜がん、胃がん、肝臓がん、結腸直腸がん、胆嚢がん、骨がん、膵臓がん、舌がん、食道がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、それらの転移及び白血病から選択されるがんを治療する化学療法を受けている、請求項1に記載の
、使用のための組成物。
【請求項20】
HER陽性乳がんの化学療法を受けるヒト対象に
、クロフェレマー125mgを1日2回の用量で含む組成物を投与することを含む、前記ヒト対象における
化学療法誘発性下痢(CID
)を治療する方法
における、使用のための、クロフェレマー125mgを1日2回の用量で含む組成物
であって、前記化学療法が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ドセタキセル、パクリタキセル若しくはネラチニブ、又はこれらの組合せであり、カルボプラチンを伴う、又は伴わない、前記
使用のための組成物。
【国際調査報告】