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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】保護層材料を被着する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20230831BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230831BHJP
   H01L 21/027 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/18
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580893
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021065302
(87)【国際公開番号】W WO2022012816
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118733.5
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ミッテンドルファー
【テーマコード(参考)】
2H249
2K009
5F146
【Fターム(参考)】
2H249AA03
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA16
2H249AA22
2H249AA25
2K009AA15
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC42
2K009DD01
5F146AA31
(57)【要約】
本発明は、保護層を形成するために構造層上に保護層材料を被着する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造層(7)上に保護層(10,10’)、好ましくは酸化物層、好適には二酸化ケイ素層を形成するために前記構造層(7)上に保護層材料(9,9’)を被着する方法であって、
前記保護層材料(9,9’)の被着を、200℃未満、好ましくは100℃未満、さらに好適には75℃未満、極めて好適には50℃未満の温度で、最も好適には室温で行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記保護層材料(9,9’)の被着をゾル・ゲル法によって行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記保護層材料(9,9’)を、前記構造層上に被着した後、好ましくは室温で、アンモニアガスによって硬化させて、前記保護層(10,10’)を形成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
好ましくは液状の前記保護層材料(9,9’)を前記保護層(10,10’)に転移させ、この場合、前記保護層(10,10’)はガラス状である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記構造層(7)は構造(5,5’)を有しており、前記構造(5,5’)は光学系として形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護層材料を被着する方法に関する。
【0002】
産業界は、エンドユーザに新たなタイプの通信へのアクセスを可能にすべくより複雑な光学系を開発している。最新の光学系は、依然としてナノメートル範囲および/またはマイクロメートル範囲の構造を有している。よって、これらの構造を、テキストのこれ以降、多くの場合、単に構造層と呼ぶ。しかしながら、これらの構造は、多くの構造層において、数ミリメートルまたはそれどころか数センチメートルにわたって分配されており、したがって構造体のサイズと比較して、比較的大きな面積を形成している。数年来、このような形式の構造層を保護しなければならないという問題が生じている。
【0003】
比較的小さな巨視的な寸法を有する構造層は、環境に対して保護するために、好ましくはカプセル化される、または被覆される。しかしながら、上述した新たなタイプの構造層は、比較的大きな面上に生成される。これらの構造層は、さらなるプロセスステップで、全く分離されない、または比較的大きな面積となるように分離される。したがって、面積が大きいほど、構造層のカプセル化はより不可能になる。さらに、多くの、特に大面積の構造層は、一般的に任意に成形された表面上に被着されなければならず、またはそれどころかそのような表面上に製造されなければならない。複雑な形状によりカプセル化はまずは不可能となる。したがって、カプセル化は、このような、特に大面積の構造層に関しては、少なくとも重要性は低くなっている。さらに、このようなカプセル化を実施するためには、多くの場合、複数のプロセスステップを必要とする。
【0004】
したがって、従来技術では、相応の構造層を最適に保護することができるようにするために、とりわけ被覆プロセスが利用される。
【0005】
構造層材料は被覆によって破壊されるおそれがあるので、すべての被覆プロセスが、前述の構造層を被覆するために適しているわけではない。従来技術では、被覆またはその後の硬化プロセスには高温が必要である。さらに、構造層の光学的特性を変化させない、またはむしろさらに改善する保護層を生成することが求められている。これにより、被覆に使用することができる保護層材料はさらに制限される。したがって、保護層材料としては、実際には、酸化物、特に酸化ケイ素しか考慮されない。このような酸化物は、比較的高温でPVD(英語:physical vapour deposition)またはCVD(英語:chemical vapour deposition)等の通常の被覆プロセスによって堆積されるか、または室温付近でのゾル・ゲル法によって堆積される。しかしながら、ゾル・ゲル法の場合、ゾル・ゲルの転移は実際の保護層への硬化プロセスによって行わなければならない。このような硬化プロセスは、従来技術ではなお、部分的に熱により実施される。
【0006】
保護層材料は、低温で堆積させることができ、とりわけ低温で、特に室温で硬化させることができる。構造層材料、特に構造層内に生成された構造は、低温によっては破壊されない。構造層の上に保護層を生成することにより、構造層は、化学的、機械的、および熱的影響に対して保護される。保護層は、構造層の光学的特性を維持するために必然的に、技術的に関連性のある波長範囲について透過性の保護層材料から生成されなければならない。
【0007】
光学産業では、数年来、エンボスリソグラフィを用いて構造層が製造されている。この場合、軟質スタンプまたは硬質スタンプが、構造層材料内に押し込まれ、さらなるプロセスステップで硬化される。
【0008】
このように生成された構造層は、極めて様々な困難にさらされる。すなわちそれは、特に周囲の雰囲気による化学的影響、機械的影響等である。ゆえにこのような構造層は今日まで、可能であるならばカプセル化されてきた。カプセル化により、周囲の雰囲気、汚染、液体、および気体からの最善の分離が可能であった。
【0009】
構造層の保護のさらなる可能性は、保護層の生成である。保護層材料による構造層の直接的な被覆は、今日まで、多くの問題に対峙してきた。従来技術では、保護層を生成するための、したがって被覆および/または硬化するための無数の方法が存在するが、これらの方法は比較的高温で実施されなければならない。しかしながらこのような高温は、保護層の下に位置する構造層を、これらが比較的低い分解温度を有する構造層材料から成っている場合には特に、破壊するおそれがある。
【0010】
従来技術では、このような問題を回避しようとする、別の方法、特に、スピンコーティング法が公知である。スピンコーティング法によって、ゾル・ゲルの材料クラスから成る保護層材料が、構造層上に堆積される。しかしながら、さらなるプロセスステップで、この構造層材料を、特に比較的高温で硬化させなければならない。したがって、たとえ被覆が低温で実施されたとしても、その後の硬化プロセスは、依然として比較的高温で行われなければならない。
【0011】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を解消し、特に保護層を形成するための改善された方法を提供することである。
【0012】
この課題は、請求項1に記載の特徴により解決される。本発明の有利な別の構成は従属請求項に記載されている。明細書、請求の範囲、および/または図面に記載されている特徴の少なくとも2つから成るすべての組み合わせも本発明の範囲にある。記載された数値範囲においては、上記境界内にある値も、境界値として開示されたものとみなされ、任意の組み合わせで特許請求することができる。
【0013】
本発明の対象は、構造層上に保護層、好ましくは酸化物層、好適には二酸化ケイ素層を形成するために構造層上に保護層材料を被着する方法であって、この場合、保護層材料の被着を、200℃未満、好ましくは100℃未満、さらに好適には75℃未満、極めて好適には50℃未満の温度で、最も好適には室温で行う方法である。
【0014】
好適には、保護層材料の被着をゾル・ゲル法によって行うことが想定されている。
【0015】
さらに好適には、保護層材料を、構造層上に被着した後、好ましくは室温で、アンモニアガスによって硬化させて、保護層を形成することが想定されている。
【0016】
さらに好適には、好ましくは液状の保護層材料を保護層に転移させ、この場合、保護層はガラス状であることが想定されている。
【0017】
さらに好適には、構造層は構造を有しており、この構造は光学系として形成されていることが想定されている。
【0018】
したがって、本発明は、保護層によって構造層を保護するための方法に関する。この場合、構造層は、保護層材料によって被覆される。好ましくは、被着は、ゾル・ゲル法によって行われ、もしくは被覆法は、好ましくはゾル・ゲル法である。
【0019】
構造層を保護層材料で被覆した後、保護層材料は、好適にはできるだけ低温で、さらに好適には室温で、アンモニアガスによって硬化されて保護層となる。
【0020】
この場合、特に、本発明の根底にある思想は、使用される、好ましくは液状の保護層材料は、低温で、特に室温で行われるプロセスにより、ガラス状の保護層に転移可能である、ということである。
【0021】
本発明の基本思想は、特に、保護層材料、特にゾル・ゲルを、低温で、特に加熱せずに、好ましくは室温で、かつ/または大気圧の範囲で、特に別個の圧力負荷なしに、構造層に被着させ、これによってこの構造層を被覆し、その後硬化させることである。
【0022】
換言すると、本発明は、特に、保護層として形成されるナノ結晶セラミック被覆、特に酸化物被覆、極めて好適には二酸化ケイ素被覆を、比較的低温で、特に室温で製造する方法に関する。二酸化ケイ素被覆は、好ましくは、構造層の被覆にのみ使用されるが、機能的特徴を有することもできる。
【0023】
構造層
本発明によれば、構造層の構造は、特に光学系を意味する。
【0024】
本発明は、特に、エンボス加工された、特に既に硬化した構造層材料を、低温で、好ましくは室温で、特に保護層として形成されるセラミック層、好ましくは二酸化ケイ素で被覆する方法に関する。特に好ましくは、光学産業のための光学系がエンボス加工された構造層材料が、本発明による実施の形態によって被覆される。
【0025】
生成すべき構造層のための構造層材料としては、エンボス加工材料、特にポリマー、極めて好適にはゾル・ゲルが使用される。構造層材料は、好ましくは堆積プロセス、特にスプレーコーティング、さらに好適にはスピンコーティングによって基板上に堆積され、その後、スタンプによってエンボス加工されて、そして硬化される。構造層材料としては、特に、
○ポリエチレン(PE)
○ポリプロピレン(PP)
○シクロオレフィンコポリマー(COC)
○シクロオレフィンポリマー(COP)
○ポリ塩化ビニル(PVC)
○ポリエチレンテレフタラート(PET)
○ポリアミド(PA)またはポリスチレン(PS)
○パーフルオロポリエーテル(PFPE)
○多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)
○ポリジメチルシロキサン(PDMS)
○オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)
○オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)
○テトライソプロピルオルトシリケート(TPOS)
○ポリ(オルガノ)シロキサン(シリコーン)
が適している。
【0026】
特に好適には、国際公開第2014202127号に記載の構造層材料が使用される。構造層の拡張形態では、構造層の、特に光学的かつ/または機械的特性を変化させるナノ粒子が構造層に添加される。
【0027】
保護層
構造層上の保護層、特にセラミック層、最も好適には酸化ケイ素層の特に平均層厚は、特に1μm未満、好ましくは100nm未満、さらに好適には10nm未満、最も好適には1nm未満である。本発明による特別な実施の形態において、セラミック層/酸化ケイ素層の厚さは、構造層の構造が、セラミック層/酸化ケイ素層内に完全に埋め込まれ、保護層材料によって覆われているだけではないように選択される。本発明による方法は、実質的に任意に成形された構造体を低温で、特に室温で被覆することを可能にする。本発明によるプロセスにより、セラミック、特に二酸化ケイ素をエンボス加工された構造上に堆積させることもできる。これにより、光学産業のための全く新しい可能性が開かれる。
【0028】
保護層のための保護層材料としては、特にポリマー、最も好適にはゾル・ゲルが使用される。保護層材料は、好ましくはスピンコーティングおよび/またはスプレーコーティングによって基板上に堆積させられ、オプションとして、スタンプによってエンボス加工されて、そして硬化される。保護層材料としては、特に、
○ポリエチレン(PE)
○ポリプロピレン(PP)
○シクロオレフィンコポリマー(COC)
○シクロオレフィンポリマー(COP)
○ポリ塩化ビニル(PVC)
○ポリエチレンテレフタラート(PET)
○ポリアミド(PA)またはポリスチレン(PS)
○パーフルオロポリエーテル(PFPE)
○多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)
○ポリジメチルシロキサン(PDMS)
○オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)
○オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)
○テトライソプロピルオルトシリケート(TPOS)
○ポリ(オルガノ)シロキサン(シリコーン)
が適している。
【0029】
特に好適には、ゾル・ゲルが使用される。
【0030】
本発明によれば、保護層は、二酸化ケイ素層として形成されている。この場合、本発明によれば、特に、二酸化ケイ素層によって保護された構造層には、さらに電磁放射が、大きな損失なしに到達することができることが想定されている。さらに、構造層の光学的特性は、それらの構造が完全に保護層内に埋め込まれていて、かつ保護層フィルムによって覆われているだけではない場合には最小限しか変化しないことがわかった。
【0031】
好適には、保護層は、湿分および/またはガスの通過および/または機械的損傷に対して保護する機能性被覆である。
【0032】
本発明によるさらなる実施の形態では、保護層への電磁放射の入射ひいては構造層への転送に影響を与えるために、好ましくはこれらを改善するために、保護層にエンボス加工をすることもできる。
【0033】
さらに別の本発明による実施の形態では、特に複数のプロセスステップによって、保護層内に機能ユニットを生成することができる。
【0034】
本発明による態様は、特に、構造層材料からエンボス加工された構造層を被覆するために低温被覆プロセスを適用することにある。
【0035】
本発明による方法によって、特に以下の構造を、特に光学素子を被覆することができる:
・レンズ、特に
○両凸レンズ
○平凸レンズ
○両凹レンズ
○平凹レンズ
○凸凹レンズもしくは凹凸レンズ
○フレネルレンズ
・ミラー
・回折素子、特に
○回折格子、特に
□回折特性がその面または面領域に依存する回折格子(英語:chirped diffraction gratings)
□ホログラム回折格子
□エシェル回折格子
□物理的な特徴による・・・
・透過性回折格子
・反射性回折格子
・振幅回折格子
・位相回折格子
□別の特性による・・・
□領域による
・表面回折格子
・体積回折格子
□製造形式による
・ブレーズド回折格子(英語: ruled diffrcation gratings)
・ワイヤ回折格子
・エンボス加工回折格子
・自己組織化回折格子
【0036】
好適な実施の形態では、とりわけ回折格子が被覆される。
【0037】
特に、本発明によれば、
a)引火点>0℃かつ<800℃、かつ/または
b)燃焼点>20℃かつ<850℃、かつ/または
c)発火温度>100℃かつ<700℃、好ましくは>150℃かつ<500℃
を有する構造層材料が選択される。
【0038】
本発明による保護層は、特に、ガスの透過性または不透過性に関して最適化することができる。このことはとりわけ、構造層材料が、時間が経過してもなおガス放出する可能性があり、堆積された保護層の膨潤を防止するべき場合に/防止しなければならない場合に有意義であろう。
【0039】
本発明による保護層がガスの透過性のために最適化されるべき場合には、保護層は、所定の開放気孔率を有するように生成される。この場合、気孔率は、多孔度によって定義される。これは、本発明によれば、総体積に対する孔体積の比として定義される。材料に気孔が存在しない場合には、したがって気孔率は0である。本発明による透過性セラミック層の気孔率は、特に0.0001%より大きく、好ましくは0.01%より大きく、より好ましくは1%より大きく、極めて好ましくは5%より大きく、極めてより好ましくは10%より大きく、最も好適には25%より大きい。これにより、特に、時間単位あたりいくつの分子が保護層を通過できるかが規定され得る。
【0040】
保護層は、主に、その下にある構造層の光学的特性を変化させることなく構造層の保護に用いられるべきであるので、孔サイズは、構造層がそのために構築されている電磁放射のオーダ範囲内にあるべきではない。可視光に関しては、これは、約200nm~700nmの波長範囲であろう。したがって孔サイズは、200nmを大幅に下回り、好ましくは100nm未満、さらに好適には50nm未満、極めて好適には25nm未満、最も好適には10nm未満であるのが望ましい。しかしながら、特に、これらの細孔は、逃出するガスが保護層を通過することができるようにするために、常に十分な大きさに保たれなければならない。
【0041】
したがって、透過性の保護層のためには、平均細孔径または平均細孔サイズは、本発明によるプロセスによって、特に、保護層を通過すべき分子種類の平均直径と少なくとも同じ大きさに選択される。したがって、浸透性の保護層のために、平均細孔径は、好ましくは1nmより大きく、好ましくは10nmより大きく、より好ましくは50nmより大きく、最も好ましくは100nmより大きい。
【0042】
平均細孔径とは、細孔の平均直径と理解される。この場合、細孔は好ましくは半径方向対称であると仮定する。
【0043】
1つの区間に沿って複数の細孔が接続され、細孔チューブが形成される場合には、これが相応に平均チューブ径となる。平均細孔径は、特に、細孔を介して保護層から流出すべき分子の分子サイズについての上限値を表す。
【0044】
本発明による保護層がガスの不透過性のために最適化されるべき場合には、保護層は特に、所定の閉鎖気孔率を有するように、さらに好適には気孔率を有さないように被着される。多孔度は特に、25%未満、好ましくは10%未満、好適には5%未満、さらに好適には1%未満、極めて好適には0.01%未満、最も好適には0.0001%未満である。このような不透過性の保護層は、構造層からそれ以上ガスが放出されないということを前提としている。しかしながら、この場合、この保護層は、その下に位置する構造層をいずれにせよ完全に周囲の雰囲気から分離するので、コンパクトな保護層が好ましい。
【0045】
不透過性の保護層の場合、平均細孔径は特に100nm未満、好適には50nm未満、より好適には10nm未満、最も好適には1nm未満である。
【0046】
極めて特に好適な本発明による実施の形態では、保護層の製造は多段階のプロセスから成る。第1のプロセスステップで、保護層を多孔性に製造するので、構造層からのガス放出は、なお一定の期間は可能である。次いで第2のプロセスステップで、保護層が閉鎖され、これにより細孔の数およびそのサイズは最小になり、好ましくは完全になくなる。
【0047】
本発明による一実施の形態において、低温被覆プロセスは、光学系を有する第1の基板の第1の側を、本発明によるセラミック層、特に二酸化ケイ素層で被覆するために使用される。この場合、セラミック層の層厚は、特に1μm未満、好ましくは100nm未満、さらに好適には10nm未満、最も好適には1nm未満であり、好ましくは、上述した気孔率特性のうちの1つを有する。特に好適な実施の形態では、光学素子は完全に埋め込まれている。
【0048】
別の実施の形態では、低温被覆プロセスは、第1の基板の両側を、本発明によるセラミック層、特に二酸化ケイ素層で被覆するために使用される。基板の第1の側の第1のセラミック層の厚さは、特に1μm未満、好ましくは100nm未満、さらに好適には10nm未満、最も好適には1nm未満であり、特に両セラミック層に関して共通して、好ましくは、上述した気孔率特性のうちの1つを有する。特に、基板の第2の側における第2のセラミック層の厚さは、基板の第1の側における第1のセラミック層の厚さと同じである。しかしながら、両セラミック層の厚さは、両側における異なる要件を考慮できるようにするために異なっていてもよい。このような方法は、両側で光学系がエンボス加工された基板である場合にとりわけ有意である。
【0049】
保護層の拡張形態では、構造層の特に光学的かつ/または機械的特性を変化させるナノ粒子が保護層に添加される。
【0050】
被覆プロセス
本発明による実施の形態では、保護層は、構造層の酸化、熱分解または熱化学分解を阻止する低温被覆プロセスによって製造される。特に好適なプロセスは、酸化ケイ素層がアンモニア雰囲気中で被着される低温被覆プロセスである。
【0051】
したがって、この区分において、この特別な実施の形態のための保護層材料を、ケイ素前駆体(ケイ素プレカーサ、つまりケイ素を含む分子)と呼ぶ。
【0052】
第1のプロセスステップでは、ケイ酸塩、特にオリゴマーの有機ケイ酸塩、さらに好適にはケイ酸テトラメチルエステルホモポリマーと、溶剤との混合によって、50体積%未満、より好適には25体積%未満、さらに好適には10体積%未満、最も好適には5体積%未満の含水量を有するケイ素前駆体が製造される。オリゴマーの有機ケイ酸塩は、典型的には、かつ特に主としてケイ酸テトラメチルエステルモノマーから成る。これは、任意の他のモノマーによって補完されてよい。溶剤は、特にアルコール、水、またはアルコール・水混合物である。ケイ素前駆体は、好ましくは、ベースとなるポリマー1部に対して、水0.01~1部からアルコール0.02~100部までの質量比から成る。前駆体のpH値は、0~14、好ましくは3~11、さらに好適には5~9、最も好適には約7である。
【0053】
第2のプロセスステップで、このケイ素前駆体が構造層上に被着される。被着は、以下のプロセスのうちの1つにより行われる:
・回転被覆(スピンプロセス)
・スプレー被覆
・化学気相成長(CVD)
・プラズマ支援化学気相成長(PE-CVD)
・物理気相成長(PVD)
・浸漬被覆
・電気化学被覆
・無通電堆積
・金属有機分解
・ゾル・ゲルプロセス
【0054】
好ましくは、ケイ素前駆体は、ゾル・ゲルプロセスにより被着される。
【0055】
第3のプロセスステップでは、塗布されたケイ素前駆体がアンモニア含有雰囲気中で硬化させられる。
【0056】
硬化プロセス
被覆後、被着された前駆体層は、アンモニア雰囲気中でアンモニアにさらされる。アンモニア雰囲気は、特に好ましくは、水、アンモニア、およびアルコールから成っている。本発明による硬化のための雰囲気は、特に、アルコールとアンモニア溶液との液体混合物から生成される。アルコール対アンモニア溶液の体積比は、0.01~100、好ましくは0.1~10、最も好適には1である。したがって好適には、同量のアルコールとアンモニアとが使用される。例えば、アルコールが10mlの場合は、雰囲気を生成するために、好適には10mlのアンモニア溶液が使用される。アンモニア溶液の濃度は、5%~50%、好ましくは10%~40%、極めて好適には20%~30%、最も好適には25%である。生成された液体混合物は蒸発し、ひいてはケイ素前駆体を硬化させるアンモニア雰囲気を生じさせる。
【0057】
本発明による好適な一実施の形態では、作業チャンバ内へのアンモニアガスの導入が行われる。この場合、アンモニアガスは、好ましくはアルコール、特にメタノールと混合される。さらに、アルコールおよび/またはアンモニアを搬送するために、担体ガス、特に窒素の添加が行われる。アンモニアガスの導入により、液体としてのアンモニア溶液を完全に省くことができる。
【0058】
本発明による両実施の形態では、作業チャンバにおけるケイ素前駆体の硬化中の圧力は、10-3mbar~10bar、好ましくは10-1mbar~5bar、さらに好適には0.8bar~1.2bar、最も好適には1barである。
【0059】
被覆された構造層の製造における高い製品スループットを達成するためには、通過型硬化装置においてケイ素前駆体の硬化を実施することが有利であることが判明した。この装置は、構造層およびケイ素前駆体が製造もしくは堆積させられた基板によって通過される装置である。通過型硬化装置は、入口、本発明によるアンモニアガスでパージされ、必要な場合には相応に温度調節される硬化チャンバ、ならびに出口を有している。好ましくは、コンベヤベルトがこの通過型硬化装置を通過する。これにより、連続的な生産およびより高いスループットが可能となる。
【0060】
ケイ素前駆体硬化の本発明による工程によって、ケイ素前駆体が硬化させられて、本発明による保護層となる。
【0061】
本発明による実質的な利点は、室温、または少なくとも極めて低温で、特に構造層材料の引火点および/または燃焼点および/または分解点未満の温度で、保護層の製造が可能であることにある。これにより初めて、保護層による構造層の本発明による被覆が可能となる。
【0062】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、以下の好適な実施例の説明および図面により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1a】構造層を製造する第1のプロセスステップを示す図である。
図1b】構造層を製造する第2のプロセスステップを示す図である。
図1c】構造層を製造する第3のプロセスステップを示す図である。
図1d】構造層を製造する第4のプロセスステップを示す図である。
図2a】保護層を製造する第1のプロセスステップを示す図である。
図2b】保護層を製造する第2のプロセスステップを示す図である。
図2c】保護層を製造する、オプションとしての第3のプロセスステップを示す図である。
図2d】保護層を製造する代替的な第2のプロセスステップを示す図である。
図2e】保護層を製造する代替的な第3のプロセスステップを示す図である。
図2f】保護層を製造する第4のプロセスステップを示す図である。
図3a】保護層を改質させる第1のプロセスステップを示す図である。
図3b】保護層を改質させる第2のプロセスステップを示す図である。
図3c】保護層を改質させる第3のプロセスステップを示す図である。
図3d】保護層を改質させる第4のプロセスステップを示す図である。
図4】構造層および保護層が被着された構成部分を示す図である。
【0064】
図面では、同じ構成部分または同じ機能を有する構成部分には同じ符号が付与されている。
【0065】
特に、エンボス加工されたポリマー層の構造は、図示を向上させるために、著しく拡大されていて、正確な縮尺では再現されていない。
【0066】
図1aは、基板1上に構造層7(図1d参照)を製造するための第1のプロセスステップを示している。基板1上には、構造層材料2が堆積システム3によって被着される。堆積システム3は、シンボルとして出口開口により示されている。堆積システム3は、好ましくは単純なホースシステムであって、このホースシステムを介して、構造層材料2が基板1上に堆積される。しかしながら、堆積システム3は、例えば、CVD/PVDシステムであってもよい。構造層材料2の分配は、図示されていないさらなるプロセスステップで、例えば基板1を回転させることにより実施される。
【0067】
図1bは、基板1上に構造層7(図1d参照)を製造するための第2のプロセスステップを示している。スタンプ4を用いて、エンボス加工ひいては構造層材料2の構造化が行われる。エンボス加工により、特に光学的特性を有していることが望ましい構造5が、構造層材料2に生成される。この構造は、好ましくは、回折格子である。
【0068】
図1cは、基板1上に構造層7(図1d参照)を製造するための第3のプロセスステップを示している。第3のプロセスステップは、構造層材料2の硬化プロセスを含む。硬化は好適には作用6によって行われる。作用6は、好ましくは、電磁放射、特にUV光または熱である。最も好適には、図示したように、硬化は、スタンプ4を貫通して行われる。
【0069】
図1dは、基板1上に構造層7を製造するための第4のプロセスステップを示している。このプロセスステップでは、硬化した構造層材料2’からのスタンプ4の離型が行われる。部分図は、構造層7の拡大された一部を示しており、この図では粒子8を見ることができる。粒子8は、構造層材料の、特に光学的および/または機械的特性を変化させるために、構造層材料2,2’に添加されてよい。
【0070】
図2aは、生成された構造層7の上に平均厚さt1を有する保護層材料9を堆積させる本発明による第1のプロセスステップを示している。堆積は、堆積システム3によって行われる。堆積システム3は、好ましくは、構造層材料2も堆積した同じ堆積システム3である。
【0071】
図2bは、アンモニア含有雰囲気を用いた、保護層材料9の室温硬化の本発明による最も重要なステップを示している。
【0072】
図2cは、構造層7のための保護層10を製造するためのオプションとしてのさらなるプロセスステップを示している。このプロセスステップは、とりわけ、既に硬化した保護層材料9’を層厚t2となるように平坦化するかつ/または除去するステップを含む。このような工程は、さらなるプロセスステップで、保護層表面9o’を機能化すること(図3a~図3d参照)を意図している場合には特に必要である。部分図は、保護層10の拡大された一部を示しており、この図では粒子8’を見ることができる。粒子8’は、保護層材料の、特に光学的および/または機械的特性を変化させるために、保護層材料9,9’に添加されてよい。構造層7と保護層10とにおける異なる粒子8,8’の使用は、構造層材料2’および保護層材料9’が化学的および物理的に同一である場合にはとりわけ必要である。しかしながら多くの場合は、そのようなことはない。粒子8,8’間の相違を強調するために、粒子8’に関しては部分的に楕円の形状を選択した。
【0073】
図2dは、代替的な第2のプロセスステップを示しており、このプロセスステップは、スタンプ4’によって保護層材料9のエンボス加工を行うことを特徴とする。保護層材料9には、構造層7の光学的特性に対する作用を有している構造5’が生成される。この構造5’は、例えば、ある程度の波長を有する光子を回折させる回折格子であってもよいし、または目標通りに光子を構造層7に導く透過格子であってもよい。この実施例では、構造5’は、エシェル回折格子の一部であり、これに対して、構造5は、慣用の回折格子の一部である。すなわち、これは本明細書では、例として示される可能な多数の実施の形態のうちの単に1つである。エシェル回折格子としての構造5も同様に良好に成形することができる。
【0074】
図2eは、アンモニア含有雰囲気を用いた、エンボス加工された保護層材料9’の室温硬化の本発明による最も重要なステップを示している。このプロセスステップは、図2bのプロセスステップと実質的に同一である。
【0075】
図2fは、構造化された保護層10’を有する本発明による代替的な最終製品を示している。部分図は、保護層10の拡大された一部を示しており、この図では粒子8’を見ることができる。粒子8’は、保護層材料の、特に光学的および/または機械的特性を変化させるために、保護層材料9,9’に添加されてよい。
【0076】
以下の4つの図は、複雑さゆえに、おそらく実施が難しい過程を示している。それにもかかわらず、ここでは相応の可能性が開示されるべきである。
【0077】
図3aは、保護層表面9o’の可能な表面改質の第1のプロセスステップを示している。表面に(ここには示さない、この場合も複数のステップによって)機能ユニット11を製造することが考えられる。このために、保護層材料9自体が、相応の機能ユニット11を製造することができるように適したものでなければならず、または相応の材料が保護層材料9に加えられなければならない。例えば、単結晶材料を堆積させるために、原子層堆積法の使用が考えられる。単結晶材料では、相応のICを製造することができる。好適には、機能ユニットは、ピック・アンド・プレイス操作により保護層材料9上に位置決めされた予め製作されたマイクロチップまたはナノチップであることも考えられる。
【0078】
図3bは、保護層表面9o’から保護層表面9o’’への可能な表面改質の第2のプロセスステップを示している。保護層材料9のさらなる堆積により、機能ユニット11を覆うことができる。
【0079】
図3cは、保護層表面9o’’の可能な表面改質の第3のプロセスステップを示している。さらなるプロセスステップにより、機能ユニット11を互いに接続させることができるいわゆるビア12を製造することができる。
【0080】
図3dは、保護層表面9o’’’の可能な表面改質の最終状態を示している。保護層表面9o’’’には、特に完全に機能可能な複数の機能ユニット11が製造された。機能ユニット11の密度、間隔、およびサイズは、オーダ範囲において、構造層7の構造5が達成すべき透過性電磁放射をはるかに下回っていなければならない。そうでなければ、機能ユニット11および/またはビアは、望ましくない散乱中心として機能するおそれがあり、製品全体の機能性を損なうおそれがある。
【0081】
図4は、基板1’から成る例示的な、幾何学的に複雑に成形された構成部分13を巨視的に示しており、この基板の基板表面1o’には構造層7が被着されており、この構造層も、本発明による保護層10で被覆されている。この図は、本発明により生成され被覆された構造層7が極めて良好に任意のジオメトリの表面1o’上に形成され得ることを、または少なくとも転写プロセスによって被着され得ることを示すものである。保護層10を硬化させるために使用される室温で導入されたガスは、複雑な構成部分ジオメトリの周囲も流れることができる。さらに、一般には既に複数の感温性の構成部分から成っている可能性がある構成部分13は、温度負荷にさらされない。
【0082】
構造層7を基板1’に転移させる際には、保護層10の層厚が僅かであることも、任意のジオメトリに適合させるために有利に寄与し得る。
【符号の説明】
【0083】
1,1’ 基板
1o,1o’ 基板表面
2,2’ 構造層材料
3 堆積システム
4,4’ スタンプ
5,5’ 構造
6 作用
7 構造層
8,8’ 粒子
9,9’ 構造層材料
9o,9o’ 保護層表面
10,10’ 保護層
11 機能ユニット
12 ビア
13 構成部分
t1,t2 層厚
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造層(7)上に保護層(10,10’)、好ましくは酸化物層、好適には二酸化ケイ素層を形成するために前記構造層(7)上に保護層材料(9,9’)を被着する方法であって、
前記保護層材料(9,9’)の被着を、200℃未満、好ましくは100℃未満、さらに好適には75℃未満、極めて好適には50℃未満の温度で、最も好適には室温で行い、この際に前記保護層(7)をエンボス加工することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記保護層材料(9,9’)の被着をゾル・ゲル法によって行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記保護層材料(9,9’)を、前記構造層上に被着した後、好ましくは室温で、アンモニアガスによって硬化させて、前記保護層(10,10’)を形成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
好ましくは液状の前記保護層材料(9,9’)を前記保護層(10,10’)に転移させ、この場合、前記保護層(10,10’)はガラス状である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記構造層(7)は構造(5,5’)を有しており、前記構造(5,5’)は光学系として形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【国際調査報告】