(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車載移動無線通信用のミリ波アンテナシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/024 20170101AFI20230831BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20230831BHJP
【FI】
H04B7/024
H04B1/3822
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501066
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2021071642
(87)【国際公開番号】W WO2022033922
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】102020000019876
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517164914
【氏名又は名称】アスク インダストリーズ ソシエイタ´ パー アゾーニ
【氏名又は名称原語表記】ASK INDUSTRIES SOCIETA‘ PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ノターリ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】マッジョーラ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】カーゾリ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ニリ,ティツィアーノ
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011BA04
5K011DA02
5K011DA07
5K011DA12
5K011DA15
5K011DA27
5K011JA01
5K011KA04
5K011KA12
(57)【要約】
車載移動無線通信用のアンテナシステム(100;300)であって、ケーブル(3a;3b)によって中央制御部(1)と接続された、少なくとも1台の遠隔アンテナモジュール(2)を備える。遠隔アンテナモジュール(2)は、複数の放射素子(20)と、RFフロントエンド(21)と、制御インターフェイス(22)と、を備える。中央制御部(1)は、信号プロセッサ(10)と、制御インターフェイス(12)と、を備える。遠隔アンテナモジュールの制御インターフェイス(22)及び中央制御部の制御インターフェイス(12)は、遠隔アンテナモジュールの制御インターフェイス(22)及びRFフロントエンド(21)を制御するため、ケーブル(3a,3b)を介して入力/出力データ信号(S0,St)及び制御信号(S1,S3)を送信するよう適切に構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル(3a;3b)によって中央制御部(1)と接続された、少なくとも1台の遠隔アンテナモジュール(2)を備え、
前記遠隔アンテナモジュール(2)は、
-入力/出力データ信号(S0,St)の送受信に適した、少なくとも1つの放射素子(20)と、
-前記入力/出力データ信号(S0,St)の増幅、脱位相、経路制御に適したRFフロントエンド(21)と、
-前記RFフロントエンド(21)及び前記ケーブル(3a;3b)に接続された制御インターフェイス(22)と、
を備え、
前記中央制御部(1)は、
-信号プロセッサ(10)と、
-前記信号プロセッサ(10)及び前記ケーブル(3a;3b)に接続された制御インターフェイス(12)と、
を備え、
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御インターフェイス(22)及び前記中央制御部の前記制御インターフェイス(12)は、前記遠隔アンテナモジュールの前記制御インターフェイス(22)を制御するため、前記ケーブル(3a,3b)を介して前記入力/出力データ信号(S0,St)及び制御信号(S1,S3)を送信するよう適切に構成され、
前記遠隔アンテナモジュール(2)は、可変ビームを有し、20GHz以上のミリ波(mmW)で信号を送受信するよう構成された複数の放射素子(20)を備え、
前記RFフロントエンド(21)は、前記中央制御部(1)から制御信号(S2)を受信し、1台の遠隔アンテナモジュールの前記複数の放射素子(20)のビーム形成を行うよう構成される、
ことを特徴とする、車載移動無線通信用のアンテナシステム(100;300)。
【請求項2】
遠隔アンテナモジュールにおける前記複数の放射素子(20)は、放射素子列である、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナシステム(100;300)。
【請求項3】
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御インターフェイス(22)は、周波数変換器(23)を備え、
該周波数変換器(23)は、
ミリ波の前記入力データ信号(S0)を受信し、それが前記ケーブル(3a,3b)を介して送信できるよう前記ミリ波よりも低い第1中間周波数(IF1)の入力データ信号に変換し、
前記ミリ波よりも低い周波数の前記出力データ信号(St)を受信し、それを前記放射素子(20)に送信できるようmmWの出力データ信号に変換する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナシステム(100;300)。
【請求項4】
前記ケーブル(3a)は、同軸ケーブルであり、前記中央制御部の前記制御インターフェイス(12)は、DA/AD変換部(16)を備え、
該DA/AD変換部(16)は、
-前記周波数変換器(23)から前記同軸ケーブル(3a)を介して伝わった、前記第1中間周波数(IF1)の前記入力データ信号(S0)をアナログからデジタルに変換するAD変換器と、
-前記同軸ケーブル(3a)を介して前記周波数変換器(23)に送信するため、前記信号プロセッサ(10)から前記第1中間周波数(IF1)で伝わった前記出力データ信号(S0)をアナログからデジタルに変換するDA変換器と、
を備える、
ことを特徴とする、請求項3に記載のアンテナシステム(100)。
【請求項5】
前記中央制御部の前記制御インターフェイス(12)は、前記同軸ケーブル(3a)によって、前記遠隔アンテナモジュールの前記制御インターフェイス(12)の制御装置(24)に接続される制御装置(14)を備え、
前記中央制御部の前記制御装置(14)は、前記第1中間周波数(IF1)とは異なる第2中間周波数(IF2)で前記信号プロセッサ(10)から伝わった制御信号(S1,S2)を変換するUP周波数変換器を備え、
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御装置(24)は、前記中央制御部の前記制御装置(14)から伝わった制御信号(S1,S2)を、前記周波数変換器(23)及び前記RFフロントエンド(21)を制御するのに適した低周波数の制御信号(S1,S2)に変換するDOWN周波数変換器を備える、
ことを特徴とする、請求項4に記載のアンテナシステム(100)。
【請求項6】
前記中央制御部(1)は、前記遠隔アンテナモジュールの動作中構成要素に対し電力を供給する、前記遠隔アンテナモジュールの電力供給ブロック(25)と、前記同軸ケーブル(3a)で接続された電力供給ブロック(15)を備える、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナシステム(100)。
【請求項7】
前記遠隔アンテナモジュールの前記電力供給ブロック(25)が前記遠隔アンテナモジュールの前記制御装置(24)に接続されていることで、前記遠隔アンテナモジュールの前記電力供給ブロック(25)の状態を示す診断信号(S4)が送付され、
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御装置(24)は、UP周波数変換器を備え、該UP周波数変換器は、前記同軸ケーブル(3a)を介して送信できるよう、前記電力供給ブロック(25)から伝わった前記診断信号(S4)を、前記第2中間周波数の診断信号に変換し、
前記中央制御部の前記制御装置(14)は、DOWN周波数変換器を備え、該DOWN周波数変換器は、前記信号プロセッサ(10)に送信できるよう、前記診断信号(S4)を前記第2中間周波数(IF2)から適した周波数に変換する、
ことを特徴とする、請求項5に従属する請求項6に記載のアンテナシステム(100)。
【請求項8】
前記ケーブル(3b)は、デジタルケーブルであり、
前記中央制御部及び前記遠隔アンテナモジュールの前記制御インターフェイス(12,22)は制御装置(114,124)を備え、該制御装置(114,124)は、前記デジタルケーブル(3b)に送信できるよう、デジタル信号をカプセル化し、また、前記デジタルケーブル(3b)から伝わったデジタル信号のカプセル化を解除するのに適している、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナシステム(300)。
【請求項9】
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御インターフェイス(22)は、前記周波数変換器(23)及び前記制御装置(124)に接続されたDA/AD変換部(26)を備え、
該DA/AD変換部(26)は、
前記周波数変換器(23)から伝わった、前記第1中間周波数(IF1)の前記入力データ信号(S0)をデジタルに変換するAD変換器と、
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御装置(124)から伝わった前記出力データ信号(S0)をアナログに変換するDA変換器と、
を備える、
ことを特徴とする、請求項8に記載のアンテナシステム(300)。
【請求項10】
前記遠隔アンテナモジュールの前記制御装置(124)は、前記制御装置(124)から伝わった診断信号(S4)とともに、前記入力データ信号(S0)をカプセル化するよう適切に構成され、それにより、前記デジタルケーブル(3b)を介して送信される第1カプセル化信号(C1)を得ることができ、
前記中央制御部の前記制御装置(114)は、前記第1カプセル化信号(C1)のカプセル化を解除するよう適切に構成され、それにより、前記入力データ信号(S0)及び診断信号(S4)を得ることができ、
前記周波数変換器(23)、前記RFフロントエンド(21)、及び前記DA/AD変換部(26)を制御するため、前記中央制御部の前記制御装置(114)は、前記信号プロセッサから伝わった制御信号(S1,S2,S3)とともに前記出力データ信号(St)をカプセル化するよう適切に構成され、それにより、前記デジタルケーブル(3b)を介して送信される第2カプセル化信号(C2)を得ることができ、前記遠隔アンテナモジュールの前記制御装置(124)は、前記第2カプセル化信号(C2)のカプセル化を解除するよう適切に構成され、それにより、前記出力データ信号(St)及び前記制御信号(S1,S2,S3)を得ることができる、
ことを特徴とする、請求項9に記載のアンテナシステム(300)。
【請求項11】
前記中央制御部(1)の前記制御装置(114)は、符号化/復号化論理回路(115)と、シリアライザ/デシリアライザ(116)と、クロック再生/位相ロックループ(PLL)(117)と、ラインドライバ(118)と、を備え、
前記中央制御部(1)は、前記PLLが前記シリアライザ(116)に送信されるクロック信号(Sc)を生成できるよう、前記PLL(117)に接続されたクロック発生器(119)を備え、
前記アンテナモジュール(2)の前記制御装置(124)は、ラインドライバ(128)と、デシリアライザ/シリアライザ(126)と、クロック再生/PLL装置(127)と、復号化/符号化論理回路(125)と、を備える、
ことを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のアンテナシステム(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のミリ波アンテナモジュールを用いた、車両に搭載される移動無線通信システムに関し、特に、中央部がリアルタイムで、最良条件の送受信チャネルを有するアンテナ(単数・複数)を選択・制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、4Gと呼ばれる通信システムが無線データトラフィックとして利用されている。無線データトラフィックにおける需要の高まりに対応するため、5Gとして知られる、より発展した通信システムの開発が進められている。5G通信システムには、より速いデータ通信速度を達成するため、ミリ波(mmW)帯域が割り当てられている。しかしながら、こうした周波数範囲では、自由空間での電波の伝播または障害物の存在により、減衰が非常に高くなっている。そのため、損失を補償し、電波の伝送距離(カバレッジ)を長くするために、送受信アンテナのゲインを上げる必要があった。こうした目的において、符号化、変調等の手法だけでなく、ビーム形成(送受信ビームの動的変更)/ビーム操縦(送受信ビームの動的アドレス指定)、マルチ入力・マルチ出力(Multiple Input-Multiple Output,MIMO)といった、複数入力及び複数出力を調整するための、種々の技術が活用され得る。
【0003】
自動車等の車両は、通常、金属からなる、あるいは、金属でコーティングされているため、その車両自体によって、電磁波、特に、ミリ波帯域の電磁波が遮断されてしまう。こうした課題を解決するにあたり、無線基地局(BS)の車両に対する位置関係に関係なく、無線基地局との通信を確実なものとするため、車両には複数のアンテナが搭載されている必要がある。これにより、移動体通信システムの安定性及び使用感を向上することができる。
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、障害物の検出を目的とした、車両用ミリ波レーダーアンテナを開示している。しかしながら、この場合のレーダーは、無線基地局(BS)と通信の必要がなく、全てのレーダーアンテナが、それぞれの可視範囲において、障害物の検出を同時に行っているため、使用するレーダーアンテナを選択する必要がない。
【0005】
携帯電話(スマートフォン)、手持ち型装置(タブレット端末)、ポータブル電子コンピュータ(ノート型パソコン)といった、通常、車両よりも格段に小さい装置の場合、異なる場所に設置されたアンテナが複数本使用され、その中から、最良のチャネル品質を有する1本以上のアンテナが選択される。
【0006】
特許文献3及び特許文献4には、6軸センサやタッチセンサ(容量センサ又はその他の技術を活用したセンサ)等、装置に搭載され、アンテナを選択するセンサが公開されている。しかしながら、これらの出願において、制御部と選択/制御されるアンテナとの間の距離は、短い(数センチメートル程度)。そのため、1つの電子基板におけるアンテナとの通信は、非常に単純な専用回路及び信号によって、達成されてしまう。
【0007】
一方、車両の場合、中央制御部および遠隔アンテナモジュール間の接続ケーブルの長さは、通信及びアンテナの選択において、種々の解決策が必要になるほど長い(通常、2メートル以上)。
【0008】
特許文献5は、複数のアンテナモジュールを備える、従来の車両用アンテナシステムを開示している。各モジュールは、モジュールは、ミリ波アンテナではなく、従来式のアンテナを1本のみ備えている。モジュールが備えているアンテナは1本のみであるため、モジュールに、アンテナのビームの指向を変更するためのビーム形成やビーム操縦を実行できるRFフロントエンドが設けられていないことは明らかである。指向を変更できないため、低周波の帯域では起こらない、ミリ波信号において起こる高いパス減衰によって、アンテナゲインは、適切な通信接続を確保できないほどのレベルに落ち込んでしまう。こうしたアンテナシステムは、各モジュールの単一位相及び単一ゲインの遠隔制御に用いられる。モジュールには、モジュール内の複数のアンテナの位相及びゲインを同時に制御しうる、ビーム形成を行うRFフロントエンドが設けられていない。こうしたアンテナシステムは、低周波数で作動するため、アナログ信号を遠隔送信する際、ミリ波の場合には必要とされる周波数変換を必要としない。システムは、部分的な変調/復調を目的として、中間周波数(搬送波の周波数より低い)でのアップダウン変換を実行する。これにより、必要な送受信帯域を減らし、非常に高い周波数による信号損失を上回らないようにする。本文献には、車両に搭載された異なるアンテナモジュール間の位相及び振幅の変動については開示されているが、ビーム形成、一つのアンテナモジュール内の複数アンテナの位相及び振幅の変動については、触れられていない。
【0009】
特許文献6は、アンテナ選択のタイミングに基づく、ミリ波アンテナシステムを開示している。個々のアンテナには、ビーム形成を変更する機能がないため、アンテナモジュールへの制御も必要としない。こうしたシステムは、各個別のアンテナのビーム制御、位相合わせ、そしてビーム形成を実行し得るフロントエンドを伴わず、利用可能なアンテナ間の切り替えを提供する。言及されてはいるが、ビーム形成が中央制御部によって遠隔制御される方法についての記載において、ビーム形成は確認されていない。アンテナモジュールは、互いに近接しており、スイッチ(機械式スイッチを含む)によって容易に選択可能であり、そして、直接的なデジタル接続によって、非常に簡単にモジュールを制御する制御部に近接している。したがって、特許文献6は、同軸又はデジタルケーブル(例えば、イーサネット)を介して接続されたモジュールを遠隔操作する際、中央部からの制御通信を確立する、といった課題については、取り扱っていない。
【0010】
特許文献7には、車載用非ミリ波アンテナシステムが開示されている。
【0011】
特許文献8には、車載型デジタルアンテナシステムが開示されている。システムには、ミリ波アンテナ、アンテナ列を有するモジュール、又は、モジュールのアンテナ間のビーム形成を実行し得るRFフロントエンドが設けられていない。本文献には、アンテナ列から離れた場所に、つまり、アナログ接続で設けることのできる、アナログ/デジタル変換器における、アンテナのアナログ制御回路について、記載がある。こうした解決法は、アナログ/デジタル変換器における、アンテナ構造及び増幅器間の損失が過剰になり、mmWシステムの性能を著しく低下させるおそれがあるため、ミリ波に応用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5767793号明細書
【特許文献2】米国特許第6034641号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/156468号
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0044314号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/269915号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2018/288763号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/172712号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2019/393883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、リアルタイムで、最良条件の送受信チャネルを有するアンテナ(単数・複数)を選択・制御し得る、車両用無線通信のアンテナシステムを提供することで、従来技術の欠点を克服することにある。
【0014】
さらなる目的は、効率的かつ効果的で、信頼性が高く、設置が容易なアンテナシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は、独立項に記載の本発明の特徴によって、実現される。
【0016】
本発明の有利な実施形態については、従属項において明らかにされる。
【0017】
本発明は、5G通信用の車載アンテナシステム及び該アンテナシステムを実現する方法に関する。該システムは、4Gシステムと比較した際、より速いデータ通信速度に対応している。本発明に係るアンテナシステムは、5G通信規格や関連技術に基づいて、異なる種類の車両(例えば、自動車、商用車、バン、トラック、列車、二輪車、トラクターなど)に適用可能である。
【0018】
本発明に係るアンテナシステムは、少なくとも1台のアンテナモジュールを備える。各アンテナモジュールは、ミリ波帯域を使用する複数の放射素子を備える。アンテナモジュールは、中央部から離れた場所に位置している。放射素子は、可変ビームを有する。各アンテナモジュールは、モジュールの放射素子でビーム形成を実行し得るRFフロントエンドを有する。アンテナモジュールは、本特許出願に記載のモジュールの通信及び制御システムに備えられているため、中央制御部から離れた場所にある車両に搭載可能となっている。
【0019】
中央部は、最良条件の送受信チャネルを有する、少なくとも1つの放射素子をリアルタイムで選択し得る。
【0020】
こうして、選択された放射素子は、中央部から受信した信号の品質を検知した結果に基づいて、高い精度で信号を送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明におけるさらなる特徴を、添付の図面を参照しながら、以下の説明により明らかにする。ここでの説明は、単なる例示であり、実施形態を制限するものではない。図面は以下の通りである。
【
図1】
図1は、本発明に係るアンテナシステムの概略図であり、車両の各部に設けられた遠隔アンテナモジュールに接続された中央制御部を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係るアンテナシステムの遠隔アンテナモジュールの想定される構造について、4つのブロック図で示している。
【
図2A】
図2Aは、本発明に係るアンテナシステムの中央制御部のブロック図を示す。
【
図3】
図3は、遠隔アンテナモジュール及び中央制御部が同軸ケーブルを介して接続される場合の、本発明に係るアンテナシステムを示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、
図3のブロック図において、本発明に係るアンテナシステムによって管理される信号の向きを示したものである。
【
図4】
図4は、遠隔アンテナモジュール及び中央制御部が高速デジタルケーブルを介して接続される場合の、本発明に係るアンテナシステムを示すブロック図である。
【
図4A】
図4Aは、
図4のブロック図において、本発明に係るアンテナシステムによって管理される信号の向きを示したものである。
【
図5】
図5は、単一のミリ波放射素子の場合における、最小構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図3のシステムの制御装置を詳細に示したブロック図である。
【
図7】
図7は、
図3の中央制御部の制御装置を詳細に示したブロック図である。
【
図7A】7Aは、
図7の中央制御部の制御装置の変形例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、中央部から遠隔アンテナへデータを送信する際の、中央部及び遠隔アンテナの制御装置の詳細を示したブロック図である。
【
図9】
図9は、デジタル送信の場合における、遠隔アンテナから中央部への接続について、想定される2つの構成を示した、2つのブロック図のうちの1つである。
【
図10】
図10は、デジタル送信の場合における、遠隔アンテナから中央部への接続について、想定される2つの構成を示した、2つのブロック図のうちの1つである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明に係るアンテナシステムを開示する。ここで、該アンテナシステムは、通常、符号(100)を付して示される。
【0023】
図1を参照すると、システム(100)は、複数の遠隔アンテナモジュール(2)に接続された中央制御部(1)を備える。複数の遠隔アンテナモジュール(2)は、車両(200)の様々な箇所に位置し、同軸又はデジタルケーブルを介して中央制御部(1)と接続されている。
【0024】
システム(100)は、車両(200)に搭載されているため、システム(100)から無線基地局へ送信される信号の向き(上り)と、無線基地局からシステム(100)へ送信される信号の向き(下り)とがある。
【0025】
大量のデータ伝送に利用可能な帯域幅を広げるため、一般的には5G(3GPP(登録商標)体を介してLTEを進化させたもの)として知られるような、未来の移動体通信技術によって、ミリ波帯域の使用が可能となった。具体的に、FR2帯域は、24.25GHz~52.6GHzをカバーしている。こうした周波数において、自由空間におけるミリ波のパス減衰は、非常に高くなる。
【0026】
そのため、遠隔アンテナモジュール(2)は、ビーム操縦及び/又はビーム形成等の特定の技術を活用し、動的アドレス指定が可能なナロービームの高ゲインアンテナを備える。
【0027】
さらに、障害物、特に、金属材料で構成された障害物は、いかなるものであっても、ミリ波の伝播においては、実質乗り越えることのできないものである。このような理由により、車体及び自動車構造のその他部品が、各アンテナの見通し(LOS)を遮らないような、適切なアンテナ位置を特定するため、こうした周波数帯域における遠隔アンテナモジュール(2)の車両搭載については、詳細な研究・分析がなされてきた。いずれの場合においても、パフォーマンスを最大化し、最大水平カバレッジを得るためには、搭載に関しては、車両単位での研究及び最適化がすすめられてきた。
【0028】
遠隔アンテナモジュール(2)は、異なる放射特性を有するアンテナを利用し得る。遠隔アンテナモジュール(2)は、車両体の前部、後部、そして側部(例えば、サイドミラー)に位置する、あるいは、車両のヘッドライト又はバンパーに一体化された限定水平アンテナ(2’)を備え、可能であれば、例えば、車両のルーフの中央部のような、水平方向に幅広い見通しを有する場所に位置する全水平アンテナ(2’’)を備える
【0029】
図2を参照すると、遠隔アンテナモジュール(2)は、異なる種類のアンテナモジュール(2a,2b)を備え得る。各アンテナモジュールは、
-ミリ波信号の送受信に適した、複数の放射素子(20)と、
-放射素子によって送受信される信号及び放射素子(20)のビーム操縦/ビーム形成機能を制御する回路を備えたRFフロントエンド(21)と、
-アンテナモジュール(2)を同軸又はデジタルケーブルの電気ケーブル(3)に接続する制御インターフェイス(22)と、
を備える。
【0030】
各モジュールの放射素子(20)は列をなして配置されている点で有利である。放射素子(20)は、可変ビームを有する。
【0031】
アンテナモジュール(2a,2b)は、放射ビームのモジュール及び位相を異ならせるように動作可能な、複数の放射素子(20)を有する。この場合、RFフロントエンド(21)は、ビーム形成/ビーム操縦が可能でなければならないため、複雑性を有する。
【0032】
アンテナモジュール(2a)は、アナログタイプのビーム形成/ビーム操縦を行うRFフロントエンド(21)を有する。一方、アンテナモジュール(2b)は、デジタルタイプのビーム形成/ビーム操縦を行うRFフロントエンド(21)を有する。
【0033】
さらに、遠隔アンテナモジュール(2)は、アンテナモジュールを備え得る。該アンテナモジュールは、デジタル/アナログ混合方式によって実行されるハイブリッドビーム形成/ビーム操縦を行うRFフロントエンドを備えている。
【0034】
図2Aを参照すると、中央制御部(1)は、信号プロセッサ(10)を備える。該信号プロセッサ(10)は、例えば、中央制御部(1)を電気ケーブル(3)に接続する制御インターフェイス(12)と接続されたモデムである。
【0035】
遠隔アンテナモジュール(2)及び中央制御部(1)の間に距離があるため、中央制御部(1)及び遠隔アンテナモジュール(2)の制御インターフェイス(12,22)において、対策をとる必要がある。特に、入力/出力データ信号や、遠隔アンテナモジュールの制御インターフェイス(22)及びRFフロントエンド(21)を制御するのに適した制御信号を、電気ケーブル(3)を介して送信できるよう、制御インターフェイス(12,22)を構成する。
【0036】
図3は、アンテナシステム(100)を示している。ここで、遠隔アンテナモジュール(2)及び中央制御部(1)の間の接続は、同軸ケーブル(3a)を介して行われている。
【0037】
中央制御部(1)は、モデム等の信号プロセッサ(10)と、制御インターフェイス(12)と、を備える。制御インターフェイス(12)は、信号プロセッサ(10)と、遠隔アンテナモジュール(2)に接続された同軸ケーブル(3a)と、に接続されている。
【0038】
遠隔アンテナモジュール(2)は、
-ミリ波タイプの、可変ビームを有する複数の放射素子(20)と、
-放射素子間のビーム形成を実行可能なRFフロントエンド(21)と、
-制御インターフェイス(22)と、
を備える。
【0039】
制御インターフェイス(22)は、周波数変換器(23)と、制御装置(24)と、を備える。
【0040】
周波数変換器(23)は、RFフロントエンド(21)及び制御装置(24)に接続される。
【0041】
周波数変換器(23)により、同軸ケーブル(3a)を介して、アンテナモジュールから受信する入力データ信号(S0)(
図3A)の送信が可能になる。実際に、同軸ケーブル(3a)は非常に長くてもよく(2メートル以上)、結果として、ミリ波の周波数帯の信号において、かなりの減衰が発生する一方、数GHzの中間周波数(IF)の信号においては、減衰ははるかに低いものになる。
【0042】
さらに、周波数変換器(23)は、アンテナモジュールによって送信される出力データ信号(St)(
図3A)の周波数を変換する。
【0043】
そのため、周波数変換器(23)は、放射素子(20)から受信したミリ波周波数の入力データ信号(S0)(
図3A)を、信号帯域に応じて1GHz~6GHzの間で構成されてた第1中間周波数(IF1)のデータ信号に変換し、信号プロセッサ(10)から受信した、第1中間周波数(IF1)又は同周波数帯の異なるIFの出力データ信号(St)を、ミリ波周波数のデータ信号に変換することで、放射素子(20)から送信する。
【0044】
周波数変換器(23)との入力/出力データ信号(S0,St)に加え、中央制御部の信号プロセッサ(10)からの制御信号(S1,S2)も、周波数変換器(23)及びRFフロントエンド(21)をそれぞれ制御するよう、同一の同軸ケーブル(3a)で伝達される。制御信号(S1,S2)は、低複雑度信号及び高複雑度信号からなる。
【0045】
図5に示す通り、送信時はパワー増幅器(PA)、受信時は低雑音増幅器(LNA)を選択するため、低複雑度信号を利用する。
【0046】
一方、アンテナモジュール(2a)の場合は、アナログビーム形成を実行可能なRFフロントエンド(21)を、アンテナモジュール(2b)の場合は、デジタルビーム形成を実行可能なRFフロントエンド(21)を制御するため、高複雑度信号を使用する。
【0047】
アナログビーム形成の場合、高複雑度制御信号を利用して、位相子及び、アナログビーム形成機能に欠かせないパワー増幅器(PA)又は低雑音増幅器(LNA)からなるネットワークを制御する。
【0048】
デジタルビーム形成の場合、高複雑度制御信号を利用して、一般的には、制御可能な位相子、列内の各サブアンテナからの信号の振幅(重み)制御、周波数変換器、D/A及びA/D変換器、クロック制御、適応フィルタ等からなる、デジタルビーム形成段階を制御する。
【0049】
中央制御部(1)の制御インターフェイス(12)は、遠隔アンテナモジュール(2)の制御インターフェイス(22)に設けられた制御装置(24)と通信する制御装置(14)を備える。これにより、同一の同軸ケーブル(3a)上で制御信号(S1,S2)が伝達され、また、第1中間周波数(IF1)に変換された入力/出力データ信号(S0,St)も送信される。
【0050】
中央制御部の制御装置(14)は、UPタイプの周波数変換器からなる。該周波数変換器は、制御信号(S1,S2)を、データ信号(S0,St)の送信に利用される第1中間周波数(IF1)とは異なる、第2中間周波数(IF2)に変換が可能である。説明においては、第2中間周波数(IF2)は、0.1GHz~1GHzの幅で構成されるものとする。このようにすれば、入力/出力データ信号(S0,St)及び制御信号(S1,S2)間において、干渉は発生しない。
【0051】
中央制御部(1)の制御装置(14)は、信号プロセッサ(10)からの制御信号を第2中間周波数IF2に変換するトランシーバー(41)を備える。
【0052】
アンテナモジュール(2)の制御装置(24)は、制御信号(S1,S2)を第2中間周波数(IF2)から低周波数に変換するのに適したDOWN周波数変換器である。これにより、周波数変換器(23)及びRFフロントエンド(21)を制御する。さらに、アンテナモジュールの制御装置(24)は、制御信号(S1,S2)を解読し、それに従って、周波数変換器(23)及びRFフロントエンド(21)を扱う。この目的のために、アンテナモジュールの制御装置(24)は、信号を第2中間周波数IF2から変換するトランシーバーと、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA等のロジック装置と、を備える。
【0053】
さらに、遠隔アンテナモジュール(2)は、データ及び制御信号の通信に利用する同軸ケーブル(3a)と同じケーブルを介して、電力が供給される。そのため、中央制御部(1)及び遠隔アンテナモジュール(2)は、同軸ケーブル(3a)を介して、互いに通信状態にある各電力供給ブロック(15,25)を備える。アンテナモジュールの電力供給ブロック(25)は、同軸ケーブル上を中間周波数IF1及びIF2で進む高周波数信号(S0,St,S1,S2)を妨げることなく、同軸ケーブル(3a)から直流(DC)パワーを受信することができる。
【0054】
中央制御部(1)の制御インターフェイス(12)は、複数のDA/AD変換部(16)を備え、各DA/AD変換部(16)は、遠隔アンテナモジュール(2)のそれぞれに接続されている。各DA/AD変換器アセンブリ(16)は、デジタル/アナログ(DA)変換器及びアナログ/デジタル(AD)変換器を備える。
【0055】
システム(100)は、複数の遠隔アンテナモジュール(2)を備えているため、1度に1台の遠隔アンテナモジュールを選択すること、あるいは、複数の遠隔アンテナモジュールから受信した信号を、デジタル又はアナログ方式、つまり、アンテナ列、ダイバシティ、又は、種々のMIMO技術(DSPを介してアナログ又はデジタルで実行される、複数の振幅及び/又は位相混合)によって、組み合わせることができる。最も簡易的な例では、アンテナの選択は、各アンテナの信号レベル(RSSI)を検出し、明らかに(最大電力において)最大の信号レベルを有するアンテナを選択することによって行われる。
【0056】
図3Aを参照すると、受信時、放射素子(20)で得た入力データ信号(S0)は、信号プロセッサ(10)に送信されることとなる。このため、放射素子(20)は、RFフロントエンド(21)により、正しいパスに対して増幅及びルーティングされたミリ波入力データ信号(S0)を得る。入力データ信号(S0)は、周波数変換器(23)に送信される。これにより、該信号は、第1中間周波数(IF1)に変換され、入力データ信号(S0)を、中央制御部の変換器ユニット(16)のA/D変換器に送信する同軸ケーブル(3a)へと導入される。該A/D変換器によって、入力データ信号(S0)がデジタル化され、信号プロセッサ(10)に送信される。ここで、変換器(16)が、入力データ信号(S0)を第1中間周波数でサンプリング可能でなければならないことは、明らかである。
【0057】
送信時、信号プロセッサ(10)からの出力データ信号(St)は、媒体を通じて送信されるよう、放射素子(20)に送信されることとする。そのため、信号プロセッサ(10)は、出力データ信号(St)をデジタル形式で出力する。変換器ユニット(16)は、出力データ信号(St)を、デジタルからアナログへ、第1中間周波数IF1で変換する。ここで、変換器ユニット(16)が、第1中間周波数(IF1)で変換を実施可能なDA変換器を有していなければならないことは、明らかである。第1中間周波数IF1の出力データ信号(St)は、同軸ケーブル(3a)を介して送信され、ミリ波周波数に変換する遠隔アンテナモジュール(2)の周波数変換器(23)に到達する。ミリ波周波数の出力データ信号(St)は、RFフロントエンドによって増幅及びルーティングされ、放射素子(20)を介して、媒体に送信される。
【0058】
制御信号(S1,S2)が信号プロセッサ(10)によって形成され、中央制御部の制御装置(14)に送信される。制御装置(14)は、制御信号を第2中間周波数(IF2)で変換し、同軸ケーブル(3a)に導入する。第2中間周波数(IF2)の制御信号(S1,S2)は、遠隔アンテナモジュールの制御装置(24)に到達し、周波数変換器(23)及びRFフロントエンド(21)のそれぞれを制御するのに適した低周波数に変換される。
【0059】
電力供給信号(A)が、同軸ケーブル(3a)を介して、電力供給ブロック(15)から電力供給ブロック(25)へ送られる。電力供給ブロック(25)は、遠隔アンテナモジュール(2)の全ての動作中装置に対して電力を供給する。
【0060】
遠隔アンテナモジュール(2)の電力供給ブロック(25)は、電力供給ブロック(25)の状態を示す診断信号(S4)を、制御装置(24)に送信する。制御装置(24)は、診断信号(S4)を第2中間周波数IF2に変換する。こうした場合、制御装置(24)は、診断信号(S4)を第2中間周波数(IF2)に変換するUP変換器を備えている必要がある。第2中間周波数(IF2)の診断信号(S4)は、同軸ケーブル(3a)を介して、中央制御部(1)の制御装置(14)に送信され、ここで、該信号は低周波数に変換され、電力供給における異常を検知する信号プロセッサ(10)に送られる。そのため、中央制御部の制御装置(14)は、診断信号(S4)の周波数を下げるためのDOWN周波数変換器を備えている必要がある。
【0061】
中央制御部(1)から遠隔アンテナモジュール(2)に伝搬する制御信号には、遠隔アンテナモジュールの電力供給ブロック(25)に到達すべき電力制御信号(S5)が含まれる。電力制御信号(S5)は、制御信号(S1,S2)と同様の経路をたどり、制御部(24)から電力供給ブロック(25)まで伝搬する。
【0062】
図6を参照すると、中央制御部の制御装置(14)は、信号プロセッサ(10)からの制御信号(S1,S2,S5)を受信するロジック装置(40)を備える。ロジック装置(40)は、制御信号(S1,S2,S5)に対しカプセル化の処理を行い、カプセル化信号(C3)をトランシーバー(41)に送信して、該カプセル化信号(C3)を第2中間周波数(IF2)に変換する。第2中間周波数(IF2)のカプセル化信号(C3)は、同軸ケーブル(3a)上に存在する第1中間周波数IF1を遮断するのに適したローパスフィルタ(42)を通過し、合波器(43)に送信される。ここで該信号は、第1中間周波数(IF1)の出力データ信号(St)と混合される。任意ではあるが、中央制御部の制御装置(14)は、変換器ユニット(16)に到達する前に、同軸ケーブル(3a)上に存在する第2中間周波数IF2を遮断するのに適したハイパスフィルタ(44)を備えていてもよい。
【0063】
カプセル化信号(C3)及び出力データ信号(St)を含む混合信号(M)は、合波器(43)から送信される。該混合信号は、同軸ケーブル(3a)を介して送信され、遠隔アンテナモジュールの制御部(24)に設けられた分波器(50)に到達する。
【0064】
分波器(50)は、第2中間周波数(IF2)のカプセル化信号(C3)を第1中間周波数の出力データ信号(St)から分波させる。分波器(50)からの第2中間周波数(IF2)のカプセル化信号(C3)は、第1中間周波数IF1を遮断するローパスフィルタ(52)を通過し、アンテナモジュールの制御装置のトランシーバー(53)に到達する。トランシーバー(53)は、カプセル化信号(C3)をベースバンドに戻し、制御信号(S1,S2,S5)のカプセル化を解除するロジック装置(54)に送信する。
【0065】
任意ではあるが、遠隔アンテナモジュールの制御装置(24)は、分波器(50)の出力側に第2中間周波数IF2を遮断するハイパスフィルタ(51)を備えていてもよい。
【0066】
図7を参照すると、遠隔アンテナモジュール(2)が複数台ある場合、中央制御部の制御装置における唯一のトランシーバー(41)からの、第2中間周波数(IF2)のカプセル化信号(C3)は、変換器ユニット(16)の各DA変換器からの第1中間周波数(IF1)の出力データ信号(St)と混合され、混合信号(M)は、それぞれのアンテナに接続された、それぞれの同軸ケーブル(3a)を介して送信される。こうした場合には、アンテナ(2)の数と同等の、多数のローパスフィルタ(42)及び合波器(43)が設けられ得る。
【0067】
図7Aには、アンテナ(2)の数と同数である、多数のトランシーバー(41)を備える中央制御部の制御装置(14)が示されている。各トランシーバー(41)は、変換器ユニット(16)の各DA変換器からの第1中間周波数(IF1)の出力データ信号(St)と混合された、第2中間周波数(IF2)のカプセル化信号(C3)を出力する。
【0068】
図4は、例えば、イーサネットケーブル等のデジタルケーブル(3b)を介した信号の伝搬に基づいた、アンテナシステム(300)の第二実施形態を示す。各遠隔アンテナモジュール(2)は、少なくとも1つの放射素子(20)と、RFフロントエンド(21)と、制御インターフェイス(22)と、を備える。
【0069】
制御インターフェイス(22)は、周波数変換器(23)と、DA/AD変換部(26)と、制御装置(124)と、を備える。
【0070】
DA/AD変換部(26)は、アナログ信号をデジタル化、そして、デジタル信号をアナログ化するのに適した、デジタル/アナログ(DA)変換器及びアナログ/デジタル(AD)変換器を備える。
【0071】
中央制御部(1)は、信号プロセッサ(10)と、制御装置(114)を備える制御インターフェイス(12)と、を備える。
【0072】
アンテナモジュールの制御装置(124)は、入力データ信号(S0)内の、制御装置(124)の状態を示す診断信号(S4)も好適に含む。中央制御部の制御装置(114)は、出力データ信号(St)内の、周波数変換器(23)、RFフロントエンド(21)、及びDA/AD変換部の制御時に利用される制御信号(S1,S2,S3)も好適に含む。
【0073】
アンテナモジュールの制御装置(124)は、制御信号(S1,S2,S3)から出力データ信号(St)を分離させ得る。中央制御部の制御装置(114)は、診断信号(S4)から入力データ信号(S0)を分離させ得る。
【0074】
このために、アンテナモジュールの制御装置(124)は、デジタル伝送制御装置と、デジタル信号をカプセル化/カプセル化解除可能なシリアライザ/デシリアライザと、アンテナモジュールの装置を管理する演算部(例えば、マイクロコントローラ、ASIC、又はFPGA)と、を備える。
【0075】
中央制御部の制御装置(114)は、デジタル伝送制御装置と、カプセル化解除可能なシリアライザ/デシリアライザと、を備える。
【0076】
入力データ信号(S0)、出力データ信号(St)、制御信号(S1,S2,S3)、そして診断信号(S4)は、デジタルケーブル(3b)を介して伝搬し、遠隔アンテナモジュール及び中央制御部の、2台の制御装置(114,124)間の直接通信によって、遠隔アンテナモジュール(2)から中央制御部(1)へ、送受信される。
【0077】
中央制御部の制御装置(114)は、信号プロセッサ(10)に直接接続されている。
【0078】
デジタルケーブル(3b)を介してアンテナモジュール(2)を中央制御部に接続する場合、デジタルケーブル(3b)の支持部の一部によって、DC電力供給を実行してもよい。これにより、
図3に示す電力供給ブロック(25,15)は不要となる。
【0079】
図4Aを参照すると、受信時、放射素子(20)が得た入力データ信号(S0)は、信号プロセッサ(10)に送信されることとする。このため、放射素子(20)によってミリ周波数の入力データ信号(S0)が得られ、RFフロントエンド(21)に送信され、増幅・ルーティングがなされる。入力データ信号(S0)は、周波数変換器(23)によって、ミリ周波数から、0.1GHz~6GHzの中間周波数(IF1)に変換される。そして、入力データ信号(S0)は、変換器ユニット(26)のAD変換器によってデジタル化される。
【0080】
制御装置(124)は、デジタル通信プロトコルにおいて、診断信号(S4)とともに入力データ信号(S0)をカプセル化する。これにより、カプセル化信号(C1)を得る。
【0081】
制御装置(124)は、デジタル形式のカプセル化信号(C1)(入力データ信号(S0)及び診断信号(S4)からなる)を、デジタルケーブル(3b)を介して送信する。そして、デジタル形式のカプセル化信号(C1)は、中央部の制御装置(114)に到達する。ここで、該信号のカプセル化を解除することで、信号プロセッサ(10)に送信する入力データ信号(S0)を得る。
【0082】
送信時、信号プロセッサ(10)からの出力データ信号(St)は、媒体を通じて送信されるよう、放射素子(20)に送信されることとする。このため、信号プロセッサ(10)は、デジタル形式で出力データ信号(St)を出力する。中央制御部の制御装置(114)は、制御信号(S1,S2,S3)とともに出力データ信号(St)をカプセル化することで、デジタルケーブル(3b)を介して送信するカプセル化信号(C2)を得る。カプセル化信号(C2)は、遠隔アンテナモジュールの制御装置(124)によって受信され、そのカプセル化が解除されることによって、デジタル形式の出力データ信号(St)を得る。デジタル形式の出力データ信号(St)は、変換器ユニット(26)のDA変換器に送信され、アナログに変換される。アナログ出力データ信号(St)は、周波数変換器(23)によって、ミリ周波数に変換される。ミリ波周波数の出力データ信号(St)は、RFフロントエンド(21)によって増幅・ルーティング化され、放射素子(20)によって、媒体を通じて送信される。
【0083】
制御信号(S1,S2,S3)は、デジタル形式の信号プロセッサ(10)によって生成され、中央制御部の制御装置(114)に送信される。ここで、該信号は、出力データ信号(St)とともにカプセル化されることで、デジタルケーブル(3b)を介して送信されるカプセル化信号(C2)が得られる。カプセル化信号(C2)(出力データ信号(St)及び制御信号(S1,S2,S3)を含む)は、信号のカプセル化解除を行う遠隔アンテナモジュールの制御装置(124)によって、受信される。これにより、周波数変換器(23)、RFフロントエンド(21)、そしてDA/AD変換部(26)のそれぞれを制御するデジタル制御信号(S1,S2,S3)を得る。
【0084】
電力信号(A)は、中央制御部の制御装置(114)から遠隔アンテナモジュールの制御装置(124)へ伝搬し、これにより、遠隔アンテナモジュールの全ての動作中装置に電力が供給される。
【0085】
信号プロセッサ(10)に、制御装置(124)の状態及び遠隔アンテナモジュール全体の状態を通知する際、診断信号(S4)を用いる。診断信号(S4)はデジタル方式の信号であり、遠隔アンテナモジュールの制御装置(124)によって、入力データ信号(S0)とともにカプセル化されることにより、カプセル化信号(C1)を得ることが出来る。そして、カプセル化信号(C1)はデジタルケーブル(3b)を介して送信され、中央制御部の制御装置(114)によって受信される。ここで、該信号のカプセル化が解除されることで、デジタル形式の診断信号(S4)が得られ、信号プロセッサ(10)に送信される。これにより、制御装置(124)の状態及び遠隔アンテナモジュール全体の状態が検知される。
【0086】
図8は、中央制御部(1)の制御装置(114)から遠隔アンテナモジュール(2)の制御装置(124)へ、デジタル送信を行う場合のブロック図を示す。
【0087】
中央制御部(1)の制御装置(114)は、符号化/復号化論理回路(115)と、シリアライザ/デシリアライザ(116)と、クロック再生/位相ロックループ(PLL)回路(117)と、ラインドライバ(118)と、を備える。中央制御部(1)がPLL(117)に接続されたクロック発生器(119)を備えることで、PLLは、シリアライザ(116)に送信されるクロック信号(Sc)を生成することができる。
【0088】
アンテナモジュール(2)の制御装置(124)は、ラインドライバ(128)と、デシリアライザ/シリアライザ(126)と、クロック再生/PLL装置(127)と、復号化/符号化論理回路(125)と、を備える。
【0089】
中央制御部の制御装置の符号化論理回路(115)は、信号プロセッサ(10)からの出力データ信号(St)及び制御信号(S1,S2,S3)を受信し、処理・符号化を行う。符号化信号は、シリアライザ(116)に送信され、ここで、信号は、同期時間参照として機能するクロック信号(Sc)とともに、単一高速データ流内で待機する。
【0090】
待機信号(St,S1,S2,S3)は、ラインドライバ(118)によって、デジタルケーブル(3b)を介して送信される。
【0091】
高速信号流は、遠隔アンテナモジュールの制御装置のラインドライバ(128)によって受信され、さらに増幅され得る。そして、クロック信号(Sc)はクロック再生装置(127)によって回復され、デシリアライザ(126)に送信されることで、信号流をデシリアライズする。デシリアライズ化された信号流は、復号化論理回路(125)に送信される。ここで、出力データ信号(St)及び制御信号(S1,S2,S3)のカプセル化が解除され、関連バス上にルーティングされる。
【0092】
入力データ信号(S0)及びその他の制御信号は、
図8に示されたものとは逆方向に、つまり、遠隔アンテナモジュールの制御装置(124)から中央制御部の制御装置(114)へ、遠隔アンテナモジュールの制御装置(124)から制御装置(114)に向かって、それぞれの装置の動作を逆転することにより、伝搬してもよい。
【0093】
この場合、復号化/符号化論理回路(125)は、符号化論理回路として動作し、デシリアライザ/シリアライザ(126)は、シリアライザとして動作し、ラインドライバ(128)は、信号をデジタルケーブル(3b)に導入し、ラインドライバ(118)は、デジタルケーブル(3b)から信号を受信し、シリアライザ/デシリアライザ(116)は、デシリアライザとして動作し、そして、復号化/符号化論理回路(115)は、デコーダとして動作する。
【0094】
図9を参照すると、全ての遠隔アンテナモジュール(2)が、信号(St,S1,S2,S3,Sc)を、それぞれのデジタルケーブル(3b)を介して、受信する。デジタルケーブルは、中央制御部の制御装置(114)のラインドライバ(118)から延びる共有の単一データバス(B)に接続されている。同様に、全ての遠隔アンテナモジュール(2)が、入力データ信号(S0)及び任意の制御信号を、共有データバス(B)上のそれぞれのデジタルケーブル(3b)を介して、送信する。
【0095】
この場合、共有データバス(B)を伝搬する種々の信号は、アドレス指定(共有帯域)を有する。そのため、共有データバス(B)に送信する信号をカプセル化する、それぞれの制御装置(114,124)によって挿入された送信プロトコルヘッダによって、送信者/受信者の正確な識別が可能となる。
【0096】
図10を参照すると、全ての遠隔アンテナモジュール(2)は、それぞれのデジタルケーブル(3b)を介して、信号の送受信を行っている。デジタルケーブル(3b)は、それぞれ、中央制御部の制御装置(114)のラインドライバ(118)から延びる、それぞれの専用データバス(B1,・・・Bn)と接続されている。
【0097】
この場合、各遠隔アンテナモジュール(2)は、専用のデータバス(専用帯域)を有する。そのため、送信者及び受信者間の曖昧さがなくなり、超高速データ信号のデジタル通信プロトコルによる帯域制限が回避される。
【0098】
CST及びHFSSにより、出願人は、実験所において、車両部品と一体化させたアンテナシステム(100;300)のシミュレーションを実施し、これにより、性能を試験した。RFフロントエンド(21)のビーム形成性能は、専用のICによって測定・観測され、RFフロントエンド(21)は、特別にプログラミングされたFPGAによって制御された。
【0099】
モジュールの放射素子のビーム形成が必要不可欠であり、このようなビーム形成は、中央制御部(1)からの制御信号(S2)によって制御され得ることが、シミュレーションによって明らかとなった。
【国際調査報告】