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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20230831BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230831BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G02B6/32
A61B1/00 526
A61B1/00 731
G02B6/02 421
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023504103
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 AU2021050797
(87)【国際公開番号】W WO2022016230
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】2020902567
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521106175
【氏名又は名称】ジ ユニヴァーシティ オブ アデレード
【氏名又は名称原語表記】The University of Adelaide
(71)【出願人】
【識別番号】507054917
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート シュトゥットガルト
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー ジャウェン
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ティーレ ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】ハーコマー アロイス
(72)【発明者】
【氏名】ギーセン ハーラルト
【テーマコード(参考)】
2H137
2H250
4C161
【Fターム(参考)】
2H137AA08
2H137AB01
2H137BA02
2H137BA08
2H137BA13
2H137BC06
2H137BC10
2H137BC23
2H137BC51
2H137BC52
2H250AC20
2H250AC37
2H250AD13
4C161BB04
4C161BB08
4C161CC07
4C161FF40
4C161FF46
4C161MM10
4C161WW17
(57)【要約】
電磁放射線を送出及び/又は受信するための第1面(102)であって、軸心を有する光ファイバ(104)の一部分に光学的に結合されるように構成されている又は光学的に結合されている、第1面(102)を備える光学素子(100)を提供する。光学素子(100)は、前記光ファイバ(104)の前記軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面(106)を備え、前記光学素子(100)は、前記第2面(106)の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、前記第2面(106)の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有し、前記第1焦点距離と前記第2焦点距離とは異なる焦点距離である。光学素子(100)を備え、光学素子に結合された光ファイバをさらに備える光学装置を形成する方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線を送出及び/又は受信するための第1面であって、軸心を有する光ファイバの一部分に光学的に結合されるように構成されている又は光学的に結合されている、第1面と、
前記光ファイバの前記軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面と、を備える光学素子であって、
前記光学素子は、前記第2面の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、前記第2面の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有し、前記第1焦点距離と前記第2焦点距離とは異なる焦点距離である、光学素子。
【請求項2】
前記光学素子は一体形成されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第2面の前記外側部分は、前記第2面の前記内側部分の全体を囲んでいる、請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1面及び前記第2面のうちの一方又は両方は、互いに隣接する平滑面を1又は複数有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1焦点距離は、前記第2焦点距離よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第2面の前記内側部分に関連した被写界深度は、前記第2面の前記外側部分に関連した被写界深度よりも大きい、請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記光学素子は、前記第2面の前記内側部分内において受信される電磁放射線のうち少なくとも一部分又は大部分が、前記光ファイバのコア領域等の中心領域内に誘導され、前記第2面の前記外側部分内において受信される電磁放射線の少なくとも一部分又は大部分が、前記光ファイバのクラッド又は内側クラッド領域等の、前記光ファイバにおける前記中心領域を取り囲む領域内に誘導されるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記外側部分は、前記内側部分の開口数よりも、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8だけ大きい開口数をもたらす焦点距離を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記光学素子は、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学素子の前記第2面は、円内に位置するように制限されており、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第2面の前記内側部分は、円内に位置するように制限されており、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の直径を有してもよい、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第2面の前記外側部分は、円内に位置するように制限されており、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の外径を有してもよい、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項13】
前記光学素子は、前記第2面が、前記光ファイバの前記軸心に略垂直な方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されるように構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項14】
前記光学素子の前記第2面は、球面又は非球面レンズ、アキシコンレンズ、フレネルレンズ、内部全反射レンズ、回折光学素子、メタレンズ、又はこれらの組み合わせの表面である、請求項1~13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項15】
前記光学素子は、少なくとも1つの反射面を備え、前記反射面は、反射コーティング又はダイクロイックコーティングを有するか、電磁放射線が内部全反射するように配置されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項16】
前記反射面は、前記光ファイバの前記軸心に沿った前記方向と、前記光ファイバの前記軸心を横断する前記方向との間で電磁放射線を誘導するように構成されている、請求項15に記載の光学素子。
【請求項17】
前記反射面は平面である、請求項15又は16に記載の光学素子。
【請求項18】
前記反射面は、平面でない平滑面部分を含む、請求項15又は16に記載の光学素子。
【請求項19】
前記反射面は区分的に連続である、請求項15又は16に記載の光学素子。
【請求項20】
前記光学素子は、前記光ファイバと、直接結合又は光学的及び機械的に間接結合するように構成されている、請求項1~19のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項21】
光信号のノイズ又は前記第2面の前記外側部分によって受信される光信号と前記第2面の前記内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、前記第2面の前記外側部分及び前記内側部分の直径の比率を最適化することにより減少させる、請求項1~20のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項22】
光信号のノイズ又は前記第2面の前記外側部分によって受信される光信号と前記第2面の前記内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、前記第2面の前記内側部分と前記外側部分との間の分離部材又は反射面を用いることにより減少させる、請求項1~21のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項23】
前記分離部材は、特定の波長範囲を有する電磁放射線を反射又は吸収するように構成されている、請求項22に記載の光学素子。
【請求項24】
前記光学素子は、多光子リソグラフィ等の3D印刷法を用いて形成される、請求項1~23のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項25】
前記光学素子は、前記光ファイバの一端部に直接形成される、請求項1~24のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項にかかる前記光学素子を備える光学装置であって、前記光学素子に結合された光ファイバをさらに備える、光学装置。
【請求項27】
前記光ファイバは、コアレス光ファイバである、請求項26に記載の光学装置。
【請求項28】
前記光ファイバは、特定の波長範囲における迷電磁放射線の影響を減らすために、前記特定の波長範囲を有する電磁放射線を吸収するように選択されたコーティングを備える、請求項26又は27に記載の光学装置。
【請求項29】
請求項26~28のいずれか1項にかかる前記光学装置を形成する方法であって、
前記光学素子の設計を用意するステップと、
光ファイバを用意し、前記光ファイバの一端部を多光子リソグラフィシステムに対して位置決めするステップと、
前記用意した設計に従って前記光学素子を3D印刷するように前記多光子リソグラフィシステムに命令するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、広く光学素子に関するものである。本発明は、特に、光ファイバ用の光学素子(レンズ等)であって、生物医学装置の一部分をなし得るものに関するが、これに限られるものではない。
【背景技術】
【0002】
医療装置応用分野において、光学イメージング及び特性評価(characterisation)技術への関心が高まっている。光ファイバ及び光ファイバ部品を用いることにより、これらの装置に用いられる小型光学プローブ(イメージング又は特性評価を行なうために組織や身体の内腔に挿入することができると同時に、従来の大型装置よりも低侵襲的である、光学プローブ)の設計が可能である。このような装置は、特性評価又はイメージングに好適である場合や、複数の異なる技術を同時に用いる際に好適である場合があり、1本の光ファイバを用いて当該複数の異なる技術に関連した複数の光信号を伝えることができることもある。1本のファイバを用いて複数の異なるイメージング及び特性評価技術を実現することにより、測定及びイメージングを小型装置を用いて同一場所において行なうことが可能となり、これにより、冠動脈及び小気道のような、傷つきやすく狭い管腔器官へのアクセスのしやすさが向上する。
【0003】
近年、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)用の光学プローブが開発されている。当該光学プローブにおいては、ダブルクラッド光ファイバのコアによってOCT信号が捕捉される。このダブルクラッド光ファイバの内側クラッドは、蛍光分光法及び吸収分光法等の分光技術を含む他の複数の特性評価技術に関連した複数の光信号又は光強度を同時に導光することに用いられている。このような、1本のファイバを用いたOCT+蛍光技術は、動物及び人間の血管においてうまく利用されている。この技術は、心臓発作の主な前駆病変であるハイリスクプラークを正確に診断することを実現するための候補として期待されている。
【0004】
しかし、OCTは、蛍光技術のものと正反対の光学的条件がある。高品質のOCTデータ又はイメージを得るためには、長い作動距離(及び大きい被写界深度)を可能とする、開口数の小さい集束光学部品が必要である一方で、蛍光技術にとっては、蛍光放射線の集光効率を高めるために大きい開口数を有することが有益である。しかし、大きい開口数を有するレンズを備えるプローブは、通常、小さい被写界深度を有する。その結果、蛍光技術にとって理想的な光学特性を有するプローブは、OCT技術にとって理想的な特性を有さないということになる。他の光学技術も、それらの光学システムに特有の光学的構成を有しており、これらは、複数の技術が1つのシステムにおいて実施される場合に相容れない可能性がある。これらの光学技術としては、OCT、蛍光分光法、共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法、拡散光トモグラフィ、全反射照明蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法、近接場走査型光学顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、第二高調波イメージング顕微鏡法、反射分光法、ラマン分光法、及び光コヒーレンスエラストグラフィ(弾性率計測法)が挙げられる。
【0005】
技術の向上が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様において、以下の光学素子を提供する:
電磁放射線を送出及び/又は受信するための第1面であって、軸心を有する光ファイバの一部分に光学的に結合されるように構成されている又は光学的に結合されている、第1
面と、
光ファイバの軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面と、を備える光学素子であって、
光学素子は、第2面の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、第2面の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有し、第1焦点距離と第2焦点距離とは異なる焦点距離である、光学素子。
【0007】
前記光学素子は一体形成されていてもよい。
【0008】
第2面の外側部分は、第2面の内側部分の全体を囲んでいてもよい。
【0009】
第1面及び第2面のうちの一方又は両方は、互いに隣接する面部分を1又は複数有していてもよく、当該互いに隣接する面部分は平滑面部分であってもよい。
【0010】
ある実施形態において、複数の焦点距離は、電磁放射線波長の関数として定義されてもよい。一実施形態において、第1焦点距離は、第2焦点距離よりも大きい。この場合、第2面の内側部分に関連した被写界深度は、第2面の外側部分に関連した被写界深度よりも大きい。
【0011】
前記光学素子は、第2面の内側部分内において受信される電磁放射線のうち少なくとも一部分又は大部分が、光ファイバのコア領域等の中心領域内に誘導され、第2面の外側部分内において受信される電磁放射線の少なくとも一部分又は大部分が、光ファイバのクラッド又は内側クラッド領域等の、光ファイバにおける中心領域を取り囲む領域内に誘導されるように構成されていてもよい。
【0012】
従って、本発明の実施形態にかかる光学素子は、第2面の外側部分によって受信される電磁放射線と、第2面の内側部分によって受信される電磁放射線と、に対して、少なくとも部分的に分離した経路を提供する。
【0013】
本発明の実施形態は、レンズの各部分の光学特性を、複数の異なる光学測定技術用にカスタマイズすることができるという利点を有する。これは、複数の技術の複数の異なる光学的要件が準最適な性能をもたらしてしまう可能性のある、焦点距離が1つしかないレンズシステムに優る利点である。例えば、OCTは、大きい被写界深度を有することが望まれる光学技術であり、大きい被写界深度は大きい焦点距離と関連し得る。一方、ランダムな方向に放射される蛍光放射線の検出では、高感度の測定を可能とするためには、大きい開口数が必要である。これは、小さい焦点距離に関連し得る。第2面の内側部分は、電磁放射線の各波長において、大きい焦点距離を有してもよく、これにより、OCTで用いられる際に、大きい被写界深度を得ることができる。外側部分は、電磁放射線の各波長において短い焦点距離を有してもよく、これにより、蛍光放射線を外側部分によって高効率にて収集することを可能にする大きい開口数を得ることができる。
【0014】
一実施形態において、光ファイバは、OCT測定に用いるための内部コアと、蛍光放射線を収集するために用いられる内側クラッドとを備えてもよい。
【0015】
一実施形態において、外側部分は、内側部分の開口数よりも、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8だけ大きい開口数をもたらす焦点距離を有してもよい。
【0016】
前記光学素子は、光ファイバの軸心に沿う方向において任意の好適な直径を有してもよいが、本発明の特定の実施形態において、前記光学素子は、1mm未満、0.5mm未満
、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有する。
【0017】
前記光学素子の第2面は、円内に位置するように制限されていてもよく、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有してもよい。第2面の内側部分は、円内に位置するように制限されていてもよく、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の直径を有してもよい。第2面の外側部分は、円内に位置するように制限されていてもよく、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の外径を有してもよい。
【0018】
前記光学素子は、第2面が、光ファイバの軸心に略垂直な方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されるように構成されていてもよい。
【0019】
前記光学素子の第2面は、球面又は非球面レンズ、アキシコンレンズ、フレネルレンズ、内部全反射レンズ、回折光学素子、メタレンズ、又はこれらの組み合わせの表面であってもよく、色及び/又は球面収差及び/又は非点収差を補正するように構成されていてもよい。例えば、光学素子の内側部分及び外側部分は、フレネルレンズにおける複数の異なるゾーンを含んでもよく、複数の異なる曲率のレンズ部分を有してもよい。また、光学素子は、色収差を補正するため又は放射線を波長特異的に分離するためのグレーティングを有してもよい。
【0020】
前記光学素子は、少なくとも1つの反射面をさらに備えてもよく、反射面は、反射コーティング、ダイクロイックコーティングを有する面であってもよく、電磁放射線が内部全反射するように配置されている面であってもよい。少なくとも1つの反射面は、光ファイバの軸心に沿った方向と、光ファイバの軸心を横断する方向との間で電磁放射線を誘導するように構成されていてもよい。
【0021】
ある実施形態において、反射面は平面であってもよい。別の実施形態において、反射面は、平面でない平滑面部分を含んでもよい。反射面は区分的に連続であってもよい。
【0022】
反射面は、光学収差を補正する形状であってもよく、焦点合わせ又は焦点外しの機能を有してもよい。光学収差の一例としては、光学測定を行なうために電磁放射線が必ず通る他の面(例えば、囲い状のカテーテルシース(外殻))によって起こるものがあり得る。
【0023】
前記光学素子は、光ファイバと、直接結合又は光学的及び機械的に間接結合するように構成されていてもよい。
【0024】
光信号のノイズ又は第2面の外側部分によって受信される光信号と第2面の内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、第2面の外側部分及び内側部分の直径の比率を最適化することにより減少させてもよい。例えば、第2面の外側部分及び内側部分の外径の比率は、3:1であってもよい。
【0025】
内部全反射するように構成された反射面を光学素子100が有する実施形態において、光信号のノイズ又は第2面の外側部分によって受信される光信号と第2面106の内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、内部全反射面と光ファイバの軸心との間の角度を最適化することにより減少させてもよい。例えば、内部全反射面の角度は、いくつかの波長が内部全反射しないように、電磁放射線の特定波長に対する臨界角であってもよい。
【0026】
追加的に又は代替的に、光信号のノイズ又は第2面106の外側部分によって受信される光信号と第2面の内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、反射面
上の分離部材を用いることにより又は第2面の内側部分と外側部分との間の分離部材を用いることにより減少させてもよい。分離部材は、特定の波長範囲にわたる電磁放射線を反射又は吸収するように構成されていてもよい。
【0027】
前記光学素子は、任意の好適な方法を用いて形成されてもよいが、特定の実施形態において、多光子リソグラフィ等の3D印刷法を用いて形成される。本実施形態において、光学素子100は、光ファイバの一端部に直接形成されてもよく、別個に形成されてもよい。光学素子は、感光材料等の任意の好適な材料から形成されてもよく、特定の実施形態において、「Nanoscribe IP-S」から形成される。
【0028】
本発明の第2態様において、以下の光学装置を提供する:本発明の第1態様にかかる光学素子を備える光学装置であって、光学素子に結合された光ファイバをさらに備える、光学装置。
【0029】
光ファイバは、任意の好適な種類のものであってもよいが、一実施形態において、コアレス光ファイバである。光ファイバは、特定の目的波長範囲における迷電磁放射線の影響を減らすために、コーティング(例えば、光ファイバの外側部分の屈折率と同様の屈折率を有するが、特定の目的波長範囲における電磁放射線を吸収するように選択されたコーティング材料を含むコーティング)を備えてもよい。
【0030】
本発明の第3態様において、以下の方法を提供する:本発明の第2態様にかかる光学装置を形成する方法であって、
光学素子の設計を用意するステップと、
光ファイバを用意し、光ファイバの一端部を多光子3D印刷システムに対して位置決めするステップと、
用意した設計に従って光学素子を形成するように多光子3D印刷システムに命令するステップと、
を含む、方法。
【0031】
本発明は、以下の、本発明の特定の実施形態の説明から、より十分に理解できるであろう。以下の説明は、添付の図面を参照して行なう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態にかかる光学素子の顕微鏡像である。
図2図1に示す光学素子の概略側面図である。
図3図1に示す光学素子の概略上面図である。
図4】(a)~(d)は、本発明の複数の実施形態にかかる光学部品を示す図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる装置を用いて取得した測定データを示すグラフである。
図6】(a)~(c)は、本発明の一実施形態にかかる装置を用いて取得した画像である。
図7】本発明のさらなる実施形態にかかる光学素子を示す図である。
図8】本発明の一実施形態にかかる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、図1~3を参照して、本発明の一実施形態にかかる光学素子100について説明する。光学素子100は、電磁放射線を送出及び/受信するための第1面102を有し、第1面102は、光ファイバ104の一端部に光学的に結合されている。本実施形態において、光ファイバ104は、ダブルクラッド光ファイバ105に接続されているコアレス
ファイバである。光学素子100は、光ファイバ104の上記一端部に直接形成されている。
【0034】
光学素子100はまた、光ファイバ104の軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面106を有する。本実施形態において、第2面106は、光ファイバ104の軸心に略垂直な方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている。
【0035】
光学素子100は、第2面106の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、第2面106の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有する。第1焦点距離と第2焦点距離とは異なる焦点距離である。
【0036】
第2面106の内側部分は、より大きい焦点距離及びより大きい被写界深度を有し、これはOCTイメージング(OCT撮像法)にとって有利である。第2面106の外側部分は内側部分よりも短い焦点距離を有するが、内側部分よりも大きい開口数を有するため、蛍光放射線を効率的に収集することができる。焦点距離は他の組み合わせにしてもよい。焦点距離は、1以上の光学技術に関して光学素子100の光学性能を最適化するように選択してもよい。光学技術としては、OCT、蛍光分光法、共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法、拡散光トモグラフィ、全反射照明蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法、近接場走査型光学顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、第二高調波イメージング顕微鏡法、反射分光法、ラマン分光法、及び光コヒーレンスエラストグラフィ(弾性率計測法)が挙げられる。
【0037】
第2面106の内側部分は、受信した放射線(OCT信号等)を主にコアレスファイバ104の内側部分内に誘導し、その後、光ファイバ105のコア領域内に誘導するように構成されている。第2面106の外側部分(より大きい開口数に関連した部分)は、放射線(蛍光放射線)を主にコアレスファイバ104の外側部分内に誘導し、その後、ファイバ105の内側クラッド領域内に誘導するように構成されている。例えば、蛍光測定の場合、達成可能な信号対雑音比(S/N比)は、収集円錐(collection cone)の開口数に関連している。本実施形態において、第2面106の外側部分は、0.4より大きい開口数を有し、これにより、比較的高い信号対雑音比及びそれに相当する高感度が得られる。
【0038】
光学素子100は、面110における内部全反射を利用して、横断方向から光ファイバ104の軸心に沿った方向に光を誘導するような形状になっている。本実施形態の変形例において、面110は、反射コーティング又はダイクロイックコーティングを有する面に変更してもよいし、面110は自由曲面であってもよい。
【0039】
光学素子100は、いわゆる「側視の」内視鏡プローブ又は血管内プローブに用いてもよく、これらは通常、透明なカテーテルシース(カテーテル外殻)内で用いられる。これは、検査中に内部でプローブを移動させる際に組織を保護するためであり、また、プローブの汚染を防ぐためでもある。このような透明なシースは、光学的に負のシリンドリカルレンズに相当し、非点収差を発生させる。面110は、非点収差を光学的に補正するような形状になっていてもよい。また、光学素子100は、色収差を補正する又は色分解を実現するグレーティング構造を有してもよい。
【0040】
光学素子100は、任意の好適な寸法を有していてもよい。例えば、光学素子100の第2面106は、1mm~0.1mmの範囲の外径を有していてもよく、この範囲未満の外径を有していてもよい。第1面102は、光学素子100が結合される光ファイバ104の外径に一致する外径を有していてもよい。例えば、第1面102は1.5mm未満~0.1mmの外径を有していてもよく、これ未満の外径を有していてもよい。
【0041】
光学素子100は、第2面106の内側部分が、500nm~1900nmの波長範囲において0.5mm~2mmの範囲に焦点距離を有するような構造になっていてもよい。内側部分は、任意の好適な形状を有してもよいが、一実施形態において、内側部分は、第2面106の外側部分の外径よりも10%~90%小さい外径を有する円形である。
【0042】
また、光学素子100は、第2面106の外側部分が400nm~1000nmの波長範囲において0.1mm~0.5mmの焦点距離を有するような構造になっていてもよい。光学素子100の外側部分は、内側部分の開口数よりも少なくとも0.1~0.8又はこれ以上だけ大きい開口数を有していてもよい。外側部分は任意の好適な形状を有していてもよいが、本実施形態において、外側部分は環状である。
【0043】
一実施形態において、光学素子100は、光学素子100の外側部分によって受信された電磁波又は電磁放射線(以下、単に「放射線(radiation)」ともいう)と、光学素子100の内側部分によって受信された放射線との間のクロストークを減少させる又は防ぐように構成されている。このようなクロストークは、測定結果又は画質に有害な影響をもたらす場合があるものであり、例えば、第2面106の外側部分の開口の直径と第2面106の内側部分の開口の直径との間の比率を最適化することにより、又は内側部分及び外側部分の傾斜角を最適化することにより、減少させることができる。一例において、この傾斜角の比率は3:1であり、傾斜角は、特定の波長域を有する放射線が光学素子100の反射面において内部全反射しないように選択される。
【0044】
また、特定の波長域にわたる放射線を選択的に吸収する又は選択的に透過させる(フィルタリングする)光学的分離部材(図示省略)を用いてもよい。光学的分離部材は、例えば、受信された電磁放射線が反射される面に配置されてもよい。追加的又は代替的に、ファイバ104又はファイバ105の外面にコーティングを施してもよい。コーティングは、不要な放射線を吸収するように構成されていてもよい。例えば、コーティングは、光ファイバ104又はファイバ105の境界面において内部全反射する迷光を吸収するように構成されていてもよい。光ファイバ104又は光ファイバ105の外側の屈折率と同様の屈折率を有するが特定の波長範囲の光を吸収するコーティングを、光ファイバ104又は光ファイバ105の外側に用いることで、このような迷光を最低限に抑える又は減少させることができる。
【0045】
光学素子100は、3D印刷法を用いて、光学的に透過性の材料から一体形成されていてもよい。これについて、以下詳述する。
【0046】
図4の(a)~(d)を参照して、光学素子100の第2面106を形成し得るレンズ面の例について説明する。各例において、レンズ面は、内側部分がより大きい焦点距離、より大きい被写界深度、及びより小さい開口数を有するのに対して、外側部分がより短い焦点距離、より大きい開口数、及びより短い被写界深度を有するような形状になっている。
【0047】
図4の(a)は、従来のレンズ402の概略断面図であり、図1図3を参照して上述した光学素子100の第2面106を形成し得る面403がとり得る形状を示すものである。面403は不均一な曲率を有し、これにより、内側部分が外側部分よりも大きい焦点距離を有する。
【0048】
図4の(b)は、フレネルレンズ404の概略断面図であり、図1図3を参照して上述した光学素子100の第2面106を形成し得る面405がとり得る形状を示すもので
ある。面405は内側フレネルゾーンを有し、これにより、より大きい焦点距離が得られ、また、外側フレネルゾーンを有し、これにより、より短い焦点距離が得られる。
【0049】
図4の(c)は、面407を有するメタレンズ406の概略断面図である。面407も、図1図3を参照して上述した光学素子100の第2面106を形成し得る。面407は、内側部分が外側部分よりも大きい焦点距離を有するような構造となっている。
【0050】
さらなる選択肢として、面407は、例えば、外側部分よりも内側部分において大きい焦点距離をもたらす回折特性を有する回折光学素子(DOE)の面であってもよい。
【0051】
図4の(d)は、2種以上のレンズを含む第2面106の概略側面図である。本例において、外側部分108は内部全反射レンズ(TIRレンズ)であり、内側部分109は屈折レンズである。TIRレンズの各TIR小面(切子面)は、TIRを利用して、光を光学素子100内に向けて誘導する(図4の(d)の図内挿入拡大図参照)。レンズの外側部分を通る光は、レンズの面においてさらに屈折される場合がある。一つのレンズにおいて屈折及びTIRの組み合わせを用いることで、大きい開口数の、非常にコンパクトな光学設計が可能となるという利点がある。
【0052】
さらなる例として、第2面106の内側部分は回折光学素子であってもよく、第2面106の外側部分は屈折レンズであってもよい。
【0053】
図5は、本発明にかかる光学素子を備える装置によって検出した蛍光放射線502の強度を、従来装置を用いて検出した蛍光放射線504の強度と比較して示すグラフである。図5は、本発明にかかる光学素子を備える装置が、従来装置を用いるのに比べて高感度の蛍光測定を行なうことができ、これは、本発明の実施形態にかかる光学素子の第2面の外側部分が有する大きな開口数に起因するものであることを示している。一方、第2面の内側部分の被写界深度は、OCTイメージングに有利である。
【0054】
本発明の実施形態にかかる光学素子は、様々な応用に用いることができ、OCT及び蛍光イメージングへの使用に限られないことは、当業者にとって当然のことである。例えば、光学素子は、自己蛍光イメージング、自己蛍光センシング、造影剤を用いる蛍光イメージング、造影剤を用いる蛍光センシング、共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法、拡散光トモグラフィ、全反射照明蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法、近接場走査型光学顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、第二高調波イメージング顕微鏡法、反射分光法、ラマン分光法、及び光コヒーレンスエラストグラフィ(弾性率計測法)にも用いることができる。
【0055】
図6の(a)は、本発明の一実施形態にかかる光学素子を備える装置を用いて取得した、OCT及び自己蛍光の統合イメージ例である。図6の(b)及び(c)は、それぞれ、これに対応するOCTイメージ及び自己蛍光イメージを示す。これらのイメージは、本発明の一例によって取得したアテローム斑(動脈硬化性プラーク)を示す。6時の方向から9時の方向にプラークが存在することが、検出蛍光放射線の強い強度によって確認された(図6の(a)及び(c)参照)。本実施形態において、光学素子の内側部分は、50nmより広い帯域幅の放射線を光学的に伝達するように設計されたものであり、光学素子の外側部分は、20nmより広い帯域幅の放射線を光学的に伝達するように設計されてもよい。
【0056】
図7は、本発明のさらなる実施形態にかかる光学素子700を示す図である。本例において、光学素子700の第2面704の内側部分702は、回折光学素子(DOE)の面であり、クロマティック共焦点イメージング(色収差共焦点撮像法)に最適化されており
、複数の異なる波長域を複数の異なる位置において集束させることができるようになっている。図7において、複数の異なる波長域は、複数の異なるグレー階調によって示されている。このように、深度分解された複数の共焦点信号を、分光器(図示省略)を用いて検出することができ、分光器は、様々な波長からの信号を、検出器(図示省略)の複数の異なる画素上に分離する。第2面704の外側部分706は、DOEの面であってもよく、また、例えば、内側部分702よりも短い焦点距離及び大きい開口数を有するフレネルゾーンであってもよい。
【0057】
本発明の実施形態にかかる光学素子は、生体組織の検査に用いることができ、また、生体内でも生体外でも用いることができることは、当業者にとって明らかである。例えば、光学素子は、血管内イメージング、診断、及び処置に用いることができる。また、その他の内視鏡的応用にも用いることができる。例えば、消化器系、呼吸器系、泌尿器系、及び生殖器系並びに耳の検査に用いることができ、また、癌及び他の疾患の診断及び処置にも用いることができる。また、光学素子は、任意の種類の物体(例えば、パイプ、タンク、又は他の構造物等)の検査にも用いることができる。
【0058】
また、本発明の実施形態にかかる光学素子及び当該光学素子に光学的に結合されている光ファイバの少なくとも一部分は、少なくとも電磁放射線に対して透過性であって入口を有する金属管又は針内に配置されてもよい。
【0059】
また、光学素子は、必ずしも複数の異なる測定又はイメージング技術に関連した複数の測定を同時に行なうために用いられなくてもよい。光学素子は、光学素子の内側部分及び外側部分を複数の異なる取得パラメータ(acquisition parameters、「集光パラメータ」ともいう)に最適化して、1種の技術を用いて複数の測定値や画像を取得するために用いられてもよい。例えば、光学素子の第2面の内側部分及び外側部分は、目的物内又は目的の組織内における複数の異なる深度において蛍光放射線を取得するために最適化されていてもよい。
【0060】
本発明の実施形態にかかる光学装置を形成する方法800を以下に説明する。光学装置は光ファイバを備える。本実施形態において、当該光ファイバ上に光学素子を形成する。光学素子は、例えば、上述した光学素子100であってもよい。
【0061】
方法800は、光学素子の設計を用意する初期ステップ802を含む。ステップ802は、例えば光学設計ソフトウエア「Zemax(登録商標)」を用いて光学素子を設計することと、得られた設計をコンピュータ支援設計(CAD)ファイルフォーマットにてエクスポートすることと、を含む。また、設計は、ソフトウエア「Solidworks(登録商標)」(Dassault Systemes、フランス)を用いてさらに改良されてもよい。
【0062】
方法800は、光ファイバを用意し、当該光ファイバの一端部を多光子3D印刷システムに対して位置決めするステップ804をさらに含む。ステップ804は、ダブルクラッド光ファイバ又はシングルモード光ファイバ上に接続されている一定の長さのコアレスファイバ又はステップインデックスファイバを用意することを含んでもよい。
【0063】
また、方法800は、用意した設計に従って光学素子を3D印刷するように多光子リソグラフィシステムに命令するステップ806を含む。
【0064】
多光子リソグラフィシステムは、光ファイバの一端部に光学素子を直接印刷することを可能とする。好適なファイバホルダを用いて、光ファイバを多光子リソグラフィシステムに取り付けた後、光ファイバの上記一端部に対してシステムを位置合わせする。これは、ファイバの反対側の端部内に光を誘導することにより容易に行うことができる。そして、
光ファイバの他端部を、CCDカメラを用いて特定することができる。そして、光学素子は、光ファイバの上記端部上に印刷される。このようにして、光学素子は、「Nanoscribe
IP-S」等の好適な感光材料を用いて一体形成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、広く光学素子に関するものである。本発明は、特に、光ファイバ用の光学素子(レンズ等)であって、生物医学装置の一部分をなし得るものに関するが、これに限られるものではない。
【背景技術】
【0002】
医療装置応用分野において、光学イメージング及び特性評価(characterisation)技術への関心が高まっている。光ファイバ及び光ファイバ部品を用いることにより、これらの装置に用いられる小型光学プローブ(イメージング又は特性評価を行なうために組織や身体の内腔に挿入することができると同時に、従来の大型装置よりも低侵襲的である、光学プローブ)の設計が可能である。このような装置は、特性評価又はイメージングに好適である場合や、複数の異なる技術を同時に用いる際に好適である場合があり、1本の光ファイバを用いて当該複数の異なる技術に関連した複数の光信号を伝えることができることもある。1本のファイバを用いて複数の異なるイメージング及び特性評価技術を実現することにより、測定及びイメージングを小型装置を用いて同一場所において行なうことが可能となり、これにより、冠動脈及び小気道のような、傷つきやすく狭い管腔器官へのアクセスのしやすさが向上する。
【0003】
近年、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)用の光学プローブが開発されている。当該光学プローブにおいては、ダブルクラッド光ファイバのコアによってOCT信号が捕捉される。このダブルクラッド光ファイバの内側クラッドは、蛍光分光法及び吸収分光法等の分光技術を含む他の複数の特性評価技術に関連した複数の光信号又は光強度を同時に導光することに用いられている。このような、1本のファイバを用いたOCT+蛍光技術は、動物及び人間の血管においてうまく利用されている。この技術は、心臓発作の主な前駆病変であるハイリスクプラークを正確に診断することを実現するための候補として期待されている。
【0004】
しかし、OCTは、蛍光技術のものと正反対の光学的条件がある。高品質のOCTデータ又はイメージを得るためには、長い作動距離(及び大きい被写界深度)を可能とする、開口数の小さい集束光学部品が必要である一方で、蛍光技術にとっては、蛍光放射線の集光効率を高めるために大きい開口数を有することが有益である。しかし、大きい開口数を有するレンズを備えるプローブは、通常、小さい被写界深度を有する。その結果、蛍光技術にとって理想的な光学特性を有するプローブは、OCT技術にとって理想的な特性を有さないということになる。他の光学技術も、それらの光学システムに特有の光学的構成を有しており、これらは、複数の技術が1つのシステムにおいて実施される場合に相容れない可能性がある。これらの光学技術としては、OCT、蛍光分光法、共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法、拡散光トモグラフィ、全反射照明蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法、近接場走査型光学顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、第二高調波イメージング顕微鏡法、反射分光法、ラマン分光法、及び光コヒーレンスエラストグラフィ(弾性率計測法)が挙げられる。
【0005】
技術の向上が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様において、以下の光学素子を提供する:
電磁放射線を送出及び/又は受信するための第1面であって、軸心を有する光ファイバの一部分に光学的に結合されるように構成されている又は光学的に結合されている、第1面と、
光ファイバの軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面と、を備える光学素子であって、
光学素子は、第2面の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、第2面の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有し、第1焦点距離と第2焦点距離とは異なる焦点距離であり、
第2面の内側部分及び外側部分は、1以上の光学技術を用いて複数の異なる取得パラメータにて測定値を取得するために光学素子を用いるように最適化されている、
光学素子。
【0007】
一実施形態において、第2面の内側部分及び外側部分は、少なくとも2つの異なる光学技術を用いて複数の異なる取得パラメータにて測定値を取得するために光学素子を用いるように最適化されている。
【0008】
前記光学素子は一体形成されていてもよい。
【0009】
第2面の外側部分は、第2面の内側部分の全体を囲んでいてもよい。
【0010】
第1面及び第2面のうちの一方又は両方は、互いに隣接する面部分を1又は複数有していてもよく、当該互いに隣接する面部分は平滑面部分であってもよい。
【0011】
ある実施形態において、複数の焦点距離は、電磁放射線波長の関数として定義されてもよい。一実施形態において、第1焦点距離は、第2焦点距離よりも大きい。この場合、第2面の内側部分に関連した被写界深度は、第2面の外側部分に関連した被写界深度よりも大きい。
【0012】
前記光学素子は、第2面の内側部分内において受信される電磁放射線のうち少なくとも
一部分又は大部分が、光ファイバのコア領域等の中心領域内に誘導され、第2面の外側部分内において受信される電磁放射線の少なくとも一部分又は大部分が、光ファイバのクラッド又は内側クラッド領域等の、光ファイバにおける中心領域を取り囲む領域内に誘導されるように構成されていてもよい。
【0013】
従って、本発明の実施形態にかかる光学素子は、第2面の外側部分によって受信される電磁放射線と、第2面の内側部分によって受信される電磁放射線と、に対して、少なくとも部分的に分離した経路を提供する。
【0014】
本発明の実施形態は、レンズの各部分の光学特性を、複数の異なる光学測定技術用にカスタマイズすることができるという利点を有する。これは、複数の技術の複数の異なる光学的要件が準最適な性能をもたらしてしまう可能性のある、焦点距離が1つしかないレンズシステムに優る利点である。例えば、OCTは、大きい被写界深度を有することが望まれる光学技術であり、大きい被写界深度は大きい焦点距離と関連し得る。一方、ランダムな方向に放射される蛍光放射線の検出では、高感度の測定を可能とするためには、大きい開口数が必要である。これは、小さい焦点距離に関連し得る。第2面の内側部分は、電磁放射線の各波長において、大きい焦点距離を有してもよく、これにより、OCTで用いられる際に、大きい被写界深度を得ることができる。外側部分は、電磁放射線の各波長において短い焦点距離を有してもよく、これにより、蛍光放射線を外側部分によって高効率にて収集することを可能にする大きい開口数を得ることができる。
【0015】
一実施形態において、光ファイバは、OCT測定に用いるための内部コアと、蛍光放射線を収集するために用いられる内側クラッドとを備えてもよい。
【0016】
一実施形態において、外側部分は、内側部分の開口数よりも、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8だけ大きい開口数をもたらす焦点距離を有してもよい。
【0017】
前記光学素子は、光ファイバの軸心に沿う方向において任意の好適な直径を有してもよいが、本発明の特定の実施形態において、前記光学素子は、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有する。
【0018】
前記光学素子の第2面は、円内に位置するように制限されていてもよく、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有してもよい。第2面の内側部分は、円内に位置するように制限されていてもよく、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の直径を有してもよい。第2面の外側部分は、円内に位置するように制限されていてもよく、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の外径を有してもよい。
【0019】
前記光学素子は、第2面が、光ファイバの軸心に略垂直な方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されるように構成されていてもよい。
【0020】
前記光学素子の第2面は、球面又は非球面レンズ、アキシコンレンズ、フレネルレンズ、内部全反射レンズ、回折光学素子、メタレンズ、又はこれらの組み合わせの表面であってもよく、色及び/又は球面収差及び/又は非点収差を補正するように構成されていてもよい。例えば、光学素子の内側部分及び外側部分は、フレネルレンズにおける複数の異なるゾーンを含んでもよく、複数の異なる曲率のレンズ部分を有してもよい。また、光学素子は、色収差を補正するため又は放射線を波長特異的に分離するためのグレーティングを有してもよい。
【0021】
前記光学素子は、少なくとも1つの反射面をさらに備えてもよく、反射面は、反射コーティング、ダイクロイックコーティングを有する面であってもよく、電磁放射線が内部全反射するように配置されている面であってもよい。少なくとも1つの反射面は、光ファイバの軸心に沿った方向と、光ファイバの軸心を横断する方向との間で電磁放射線を誘導するように構成されていてもよい。
【0022】
ある実施形態において、反射面は平面であってもよい。別の実施形態において、反射面は、平面でない平滑面部分を含んでもよい。反射面は区分的に連続であってもよい。
【0023】
反射面は、光学収差を補正する形状であってもよく、焦点合わせ又は焦点外しの機能を有してもよい。光学収差の一例としては、光学測定を行なうために電磁放射線が必ず通る他の面(例えば、囲い状のカテーテルシース(外殻))によって起こるものがあり得る。
【0024】
前記光学素子は、光ファイバと、直接結合又は光学的及び機械的に間接結合するように構成されていてもよい。
【0025】
光信号のノイズ又は第2面の外側部分によって受信される光信号と第2面の内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、第2面の外側部分及び内側部分の直径の比率を最適化することにより減少させてもよい。例えば、第2面の外側部分及び内側部分の外径の比率は、3:1であってもよい。
【0026】
内部全反射するように構成された反射面を光学素子100が有する実施形態において、光信号のノイズ又は第2面の外側部分によって受信される光信号と第2面106の内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、内部全反射面と光ファイバの軸心との間の角度を最適化することにより減少させてもよい。例えば、内部全反射面の角度は、いくつかの波長が内部全反射しないように、電磁放射線の特定波長に対する臨界角であってもよい。
【0027】
追加的に又は代替的に、光信号のノイズ又は第2面106の外側部分によって受信される光信号と第2面の内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、反射面上の分離部材を用いることにより又は第2面の内側部分と外側部分との間の分離部材を用いることにより減少させてもよい。分離部材は、特定の波長範囲にわたる電磁放射線を反射又は吸収するように構成されていてもよい。
【0028】
前記光学素子は、任意の好適な方法を用いて形成されてもよいが、特定の実施形態において、多光子リソグラフィ等の3D印刷法を用いて形成される。本実施形態において、光学素子100は、光ファイバの一端部に直接形成されてもよく、別個に形成されてもよい。光学素子は、感光材料等の任意の好適な材料から形成されてもよく、特定の実施形態において、「Nanoscribe IP-S」から形成される。
【0029】
本発明の第2態様において、以下の光学装置を提供する:本発明の第1態様にかかる光学素子を備える光学装置であって、光学素子に結合された光ファイバをさらに備える、光学装置。
【0030】
光ファイバは、任意の好適な種類のものであってもよいが、一実施形態において、コアレス光ファイバである。光ファイバは、特定の目的波長範囲における迷電磁放射線の影響を減らすために、コーティング(例えば、光ファイバの外側部分の屈折率と同様の屈折率を有するが、特定の目的波長範囲における電磁放射線を吸収するように選択されたコーティング材料を含むコーティング)を備えてもよい。
【0031】
本発明の第3態様において、以下の方法を提供する:本発明の第2態様にかかる光学装置を形成する方法であって、
光学素子の設計を用意するステップと、
光ファイバを用意し、光ファイバの一端部を多光子3D印刷システムに対して位置決めするステップと、
用意した設計に従って光学素子を形成するように多光子3D印刷システムに命令するステップと、
を含む、方法。
【0032】
本発明は、以下の、本発明の特定の実施形態の説明から、より十分に理解できるであろう。以下の説明は、添付の図面を参照して行なう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態にかかる光学素子の顕微鏡像である。
図2図1に示す光学素子の概略側面図である。
図3図1に示す光学素子の概略上面図である。
図4】(a)~(d)は、本発明の複数の実施形態にかかる光学部品を示す図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる装置を用いて取得した測定データを示すグラフである。
図6】(a)~(c)は、本発明の一実施形態にかかる装置を用いて取得した画像である。
図7】本発明のさらなる実施形態にかかる光学素子を示す図である。
図8】本発明の一実施形態にかかる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
まず、図1~3を参照して、本発明の一実施形態にかかる光学素子100について説明する。光学素子100は、電磁放射線を送出及び/受信するための第1面102を有し、第1面102は、光ファイバ104の一端部に光学的に結合されている。本実施形態において、光ファイバ104は、ダブルクラッド光ファイバ105に接続されているコアレスファイバである。光学素子100は、光ファイバ104の上記一端部に直接形成されている。
【0035】
光学素子100はまた、光ファイバ104の軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面106を有する。本実施形態において、第2面106は、光ファイバ104の軸心に略垂直な方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている。
【0036】
光学素子100は、第2面106の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、第2面106の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有する。第1焦点距離と第2焦点距離とは異なる焦点距離である。
【0037】
第2面106の内側部分は、より大きい焦点距離及びより大きい被写界深度を有し、これはOCTイメージング(OCT撮像法)にとって有利である。第2面106の外側部分は内側部分よりも短い焦点距離を有するが、内側部分よりも大きい開口数を有するため、蛍光放射線を効率的に収集することができる。焦点距離は他の組み合わせにしてもよい。焦点距離は、1以上の光学技術に関して光学素子100の光学性能を最適化するように選択してもよい。光学技術としては、OCT、蛍光分光法、共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法、拡散光トモグラフィ、全反射照明蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、誘導放出抑制顕微
鏡法、近接場走査型光学顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、第二高調波イメージング顕微鏡法、反射分光法、ラマン分光法、及び光コヒーレンスエラストグラフィ(弾性率計測法)が挙げられる。
【0038】
第2面106の内側部分は、受信した放射線(OCT信号等)を主にコアレスファイバ104の内側部分内に誘導し、その後、光ファイバ105のコア領域内に誘導するように構成されている。第2面106の外側部分(より大きい開口数に関連した部分)は、放射線(蛍光放射線)を主にコアレスファイバ104の外側部分内に誘導し、その後、ファイバ105の内側クラッド領域内に誘導するように構成されている。例えば、蛍光測定の場合、達成可能な信号対雑音比(S/N比)は、収集円錐(collection cone)の開口数に関連している。本実施形態において、第2面106の外側部分は、0.4より大きい開口数を有し、これにより、比較的高い信号対雑音比及びそれに相当する高感度が得られる。
【0039】
光学素子100は、面110における内部全反射を利用して、横断方向から光ファイバ104の軸心に沿った方向に光を誘導するような形状になっている。本実施形態の変形例において、面110は、反射コーティング又はダイクロイックコーティングを有する面に変更してもよいし、面110は自由曲面であってもよい。
【0040】
光学素子100は、いわゆる「側視の」内視鏡プローブ又は血管内プローブに用いてもよく、これらは通常、透明なカテーテルシース(カテーテル外殻)内で用いられる。これは、検査中に内部でプローブを移動させる際に組織を保護するためであり、また、プローブの汚染を防ぐためでもある。このような透明なシースは、光学的に負のシリンドリカルレンズに相当し、非点収差を発生させる。面110は、非点収差を光学的に補正するような形状になっていてもよい。また、光学素子100は、色収差を補正する又は色分解を実現するグレーティング構造を有してもよい。
【0041】
光学素子100は、任意の好適な寸法を有していてもよい。例えば、光学素子100の第2面106は、1mm~0.1mmの範囲の外径を有していてもよく、この範囲未満の外径を有していてもよい。第1面102は、光学素子100が結合される光ファイバ104の外径に一致する外径を有していてもよい。例えば、第1面102は1.5mm未満~0.1mmの外径を有していてもよく、これ未満の外径を有していてもよい。
【0042】
光学素子100は、第2面106の内側部分が、500nm~1900nmの波長範囲において0.5mm~2mmの範囲に焦点距離を有するような構造になっていてもよい。内側部分は、任意の好適な形状を有してもよいが、一実施形態において、内側部分は、第2面106の外側部分の外径よりも10%~90%小さい外径を有する円形である。
【0043】
また、光学素子100は、第2面106の外側部分が400nm~1000nmの波長範囲において0.1mm~0.5mmの焦点距離を有するような構造になっていてもよい。光学素子100の外側部分は、内側部分の開口数よりも少なくとも0.1~0.8又はこれ以上だけ大きい開口数を有していてもよい。外側部分は任意の好適な形状を有していてもよいが、本実施形態において、外側部分は環状である。
【0044】
一実施形態において、光学素子100は、光学素子100の外側部分によって受信された電磁波又は電磁放射線(以下、単に「放射線(radiation)」ともいう)と、光学素子100の内側部分によって受信された放射線との間のクロストークを減少させる又は防ぐように構成されている。このようなクロストークは、測定結果又は画質に有害な影響をもたらす場合があるものであり、例えば、第2面106の外側部分の開口の直径と第2面106の内側部分の開口の直径との間の比率を最適化することにより、又は内側部分及び外側部分の傾斜角を最適化することにより、減少させることができる。一例において、この
傾斜角の比率は3:1であり、傾斜角は、特定の波長域を有する放射線が光学素子100の反射面において内部全反射しないように選択される。
【0045】
また、特定の波長域にわたる放射線を選択的に吸収する又は選択的に透過させる(フィルタリングする)光学的分離部材(図示省略)を用いてもよい。光学的分離部材は、例えば、受信された電磁放射線が反射される面に配置されてもよい。追加的又は代替的に、ファイバ104又はファイバ105の外面にコーティングを施してもよい。コーティングは、不要な放射線を吸収するように構成されていてもよい。例えば、コーティングは、光ファイバ104又はファイバ105の境界面において内部全反射する迷光を吸収するように構成されていてもよい。光ファイバ104又は光ファイバ105の外側の屈折率と同様の屈折率を有するが特定の波長範囲の光を吸収するコーティングを、光ファイバ104又は光ファイバ105の外側に用いることで、このような迷光を最低限に抑える又は減少させることができる。
【0046】
光学素子100は、3D印刷法を用いて、光学的に透過性の材料から一体形成されていてもよい。これについて、以下詳述する。
【0047】
図4の(a)~(d)を参照して、光学素子100の第2面106を形成し得るレンズ面の例について説明する。各例において、レンズ面は、内側部分がより大きい焦点距離、より大きい被写界深度、及びより小さい開口数を有するのに対して、外側部分がより短い焦点距離、より大きい開口数、及びより短い被写界深度を有するような形状になっている。
【0048】
図4の(a)は、従来のレンズ402の概略断面図であり、図1図3を参照して上述した光学素子100の第2面106を形成し得る面403がとり得る形状を示すものである。面403は不均一な曲率を有し、これにより、内側部分が外側部分よりも大きい焦点距離を有する。
【0049】
図4の(b)は、フレネルレンズ404の概略断面図であり、図1図3を参照して上述した光学素子100の第2面106を形成し得る面405がとり得る形状を示すものである。面405は内側フレネルゾーンを有し、これにより、より大きい焦点距離が得られ、また、外側フレネルゾーンを有し、これにより、より短い焦点距離が得られる。
【0050】
図4の(c)は、面407を有するメタレンズ406の概略断面図である。面407も、図1図3を参照して上述した光学素子100の第2面106を形成し得る。面407は、内側部分が外側部分よりも大きい焦点距離を有するような構造となっている。
【0051】
さらなる選択肢として、面407は、例えば、外側部分よりも内側部分において大きい焦点距離をもたらす回折特性を有する回折光学素子(DOE)の面であってもよい。
【0052】
図4の(d)は、2種以上のレンズを含む第2面106の概略側面図である。本例において、外側部分108は内部全反射レンズ(TIRレンズ)であり、内側部分109は屈折レンズである。TIRレンズの各TIR小面(切子面)は、TIRを利用して、光を光学素子100内に向けて誘導する(図4の(d)の図内挿入拡大図参照)。レンズの外側部分を通る光は、レンズの面においてさらに屈折される場合がある。一つのレンズにおいて屈折及びTIRの組み合わせを用いることで、大きい開口数の、非常にコンパクトな光学設計が可能となるという利点がある。
【0053】
さらなる例として、第2面106の内側部分は回折光学素子であってもよく、第2面106の外側部分は屈折レンズであってもよい。
【0054】
図5は、本発明にかかる光学素子を備える装置によって検出した蛍光放射線502の強度を、従来装置を用いて検出した蛍光放射線504の強度と比較して示すグラフである。図5は、本発明にかかる光学素子を備える装置が、従来装置を用いるのに比べて高感度の蛍光測定を行なうことができ、これは、本発明の実施形態にかかる光学素子の第2面の外側部分が有する大きな開口数に起因するものであることを示している。一方、第2面の内側部分の被写界深度は、OCTイメージングに有利である。
【0055】
本発明の実施形態にかかる光学素子は、様々な応用に用いることができ、OCT及び蛍光イメージングへの使用に限られないことは、当業者にとって当然のことである。例えば、光学素子は、自己蛍光イメージング、自己蛍光センシング、造影剤を用いる蛍光イメージング、造影剤を用いる蛍光センシング、共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法、拡散光トモグラフィ、全反射照明蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法、近接場走査型光学顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、第二高調波イメージング顕微鏡法、反射分光法、ラマン分光法、及び光コヒーレンスエラストグラフィ(弾性率計測法)にも用いることができる。
【0056】
図6の(a)は、本発明の一実施形態にかかる光学素子を備える装置を用いて取得した、OCT及び自己蛍光の統合イメージ例である。図6の(b)及び(c)は、それぞれ、これに対応するOCTイメージ及び自己蛍光イメージを示す。これらのイメージは、本発明の一例によって取得したアテローム斑(動脈硬化性プラーク)を示す。6時の方向から9時の方向にプラークが存在することが、検出蛍光放射線の強い強度によって確認された(図6の(a)及び(c)参照)。本実施形態において、光学素子の内側部分は、50nmより広い帯域幅の放射線を光学的に伝達するように設計されたものであり、光学素子の外側部分は、20nmより広い帯域幅の放射線を光学的に伝達するように設計されてもよい。
【0057】
図7は、本発明のさらなる実施形態にかかる光学素子700を示す図である。本例において、光学素子700の第2面704の内側部分702は、回折光学素子(DOE)の面であり、クロマティック共焦点イメージング(色収差共焦点撮像法)に最適化されており、複数の異なる波長域を複数の異なる位置において集束させることができるようになっている。図7において、複数の異なる波長域は、複数の異なるグレー階調によって示されている。このように、深度分解された複数の共焦点信号を、分光器(図示省略)を用いて検出することができ、分光器は、様々な波長からの信号を、検出器(図示省略)の複数の異なる画素上に分離する。第2面704の外側部分706は、DOEの面であってもよく、また、例えば、内側部分702よりも短い焦点距離及び大きい開口数を有するフレネルゾーンであってもよい。
【0058】
本発明の実施形態にかかる光学素子は、生体組織の検査に用いることができ、また、生体内でも生体外でも用いることができることは、当業者にとって明らかである。例えば、光学素子は、血管内イメージング、診断、及び処置に用いることができる。また、その他の内視鏡的応用にも用いることができる。例えば、消化器系、呼吸器系、泌尿器系、及び生殖器系並びに耳の検査に用いることができ、また、癌及び他の疾患の診断及び処置にも用いることができる。また、光学素子は、任意の種類の物体(例えば、パイプ、タンク、又は他の構造物等)の検査にも用いることができる。
【0059】
また、本発明の実施形態にかかる光学素子及び当該光学素子に光学的に結合されている光ファイバの少なくとも一部分は、少なくとも電磁放射線に対して透過性であって入口を有する金属管又は針内に配置されてもよい。
【0060】
また、光学素子は、必ずしも複数の異なる測定又はイメージング技術に関連した複数の測定を同時に行なうために用いられなくてもよい。光学素子は、光学素子の内側部分及び外側部分を複数の異なる取得パラメータ(acquisition parameters、「集光パラメータ」ともいう)に最適化して、1種の技術を用いて複数の測定値や画像を取得するために用いられてもよい。例えば、光学素子の第2面の内側部分及び外側部分は、目的物内又は目的の組織内における複数の異なる深度において蛍光放射線を取得するために最適化されていてもよい。
【0061】
本発明の実施形態にかかる光学装置を形成する方法800を以下に説明する。光学装置は光ファイバを備える。本実施形態において、当該光ファイバ上に光学素子を形成する。光学素子は、例えば、上述した光学素子100であってもよい。
【0062】
方法800は、光学素子の設計を用意する初期ステップ802を含む。ステップ802は、例えば光学設計ソフトウエア「Zemax(登録商標)」を用いて光学素子を設計することと、得られた設計をコンピュータ支援設計(CAD)ファイルフォーマットにてエクスポートすることと、を含む。また、設計は、ソフトウエア「Solidworks(登録商標)」(Dassault Systemes、フランス)を用いてさらに改良されてもよい。
【0063】
方法800は、光ファイバを用意し、当該光ファイバの一端部を多光子3D印刷システムに対して位置決めするステップ804をさらに含む。ステップ804は、ダブルクラッド光ファイバ又はシングルモード光ファイバ上に接続されている一定の長さのコアレスファイバ又はステップインデックスファイバを用意することを含んでもよい。
【0064】
また、方法800は、用意した設計に従って光学素子を3D印刷するように多光子リソグラフィシステムに命令するステップ806を含む。
【0065】
多光子リソグラフィシステムは、光ファイバの一端部に光学素子を直接印刷することを可能とする。好適なファイバホルダを用いて、光ファイバを多光子リソグラフィシステムに取り付けた後、光ファイバの上記一端部に対してシステムを位置合わせする。これは、ファイバの反対側の端部内に光を誘導することにより容易に行うことができる。そして、光ファイバの他端部を、CCDカメラを用いて特定することができる。そして、光学素子は、光ファイバの上記端部上に印刷される。このようにして、光学素子は、「Nanoscribe
IP-S」等の好適な感光材料を用いて一体形成される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線を送出及び/又は受信するための第1面であって、軸心を有する光ファイバの一部分に光学的に結合されるように構成されている又は光学的に結合されている、第1面と、
前記光ファイバの前記軸心を横断する方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されている第2面と、を備える光学素子であって、
前記光学素子は、前記第2面の内側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第1焦点距離と、前記第2面の外側部分によって送出及び/又は受信される電磁放射線の第2焦点距離とを有し、前記第1焦点距離と前記第2焦点距離とは異なる焦点距離であ
前記第2面の前記内側部分及び前記外側部分は、1以上の光学技術を用いて複数の異な
る取得パラメータにて測定値を取得するために前記光学素子を用いるように最適化されている、
光学素子。
【請求項2】
前記第2面の前記内側部分及び前記外側部分は、少なくとも2つの異なる光学技術を用いて複数の異なる取得パラメータにて測定値を取得するために前記光学素子を用いるように最適化されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光学素子は一体形成されている、請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第2面の前記外側部分は、前記第2面の前記内側部分の全体を囲んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1面及び前記第2面のうちの一方又は両方は、互いに隣接する平滑面を1又は複数有する、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1焦点距離は、前記第2焦点距離よりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第2面の前記内側部分に関連した被写界深度は、前記第2面の前記外側部分に関連した被写界深度よりも大きい、請求項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記光学素子は、前記第2面の前記内側部分内において受信される電磁放射線のうち少なくとも一部分又は大部分が、前記光ファイバのコア領域等の中心領域内に誘導され、前記第2面の前記外側部分内において受信される電磁放射線の少なくとも一部分又は大部分が、前記光ファイバのクラッド又は内側クラッド領域等の、前記光ファイバにおける前記中心領域を取り囲む領域内に誘導されるように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記外側部分は、前記内側部分の開口数よりも、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8だけ大きい開口数をもたらす焦点距離を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学素子は、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記光学素子の前記第2面は、円内に位置するように制限されており、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満の直径を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第2面の前記内側部分は、円内に位置するように制限されており、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の直径を有してもよい、請求項1~1のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項13】
前記第2面の前記外側部分は、円内に位置するように制限されており、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、0.1mm未満、又は0.01mm未満の外径を有してもよい、請求項1~1のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項14】
前記光学素子は、前記第2面が、前記光ファイバの前記軸心に略垂直な方向の電磁放射線を送出及び/又は受信するように配置されるように構成されている、請求項1~1
いずれか1項に記載の光学素子。
【請求項15】
前記光学素子の前記第2面は、球面又は非球面レンズ、アキシコンレンズ、フレネルレンズ、内部全反射レンズ、回折光学素子、メタレンズ、又はこれらの組み合わせの表面である、請求項1~1のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項16】
前記光学素子は、少なくとも1つの反射面を備え、前記反射面は、反射コーティング又はダイクロイックコーティングを有するか、電磁放射線が内部全反射するように配置されている、請求項1~1のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項17】
前記反射面は、前記光ファイバの前記軸心に沿った前記方向と、前記光ファイバの前記軸心を横断する前記方向との間で電磁放射線を誘導するように構成されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記反射面は平面である、請求項1又は1に記載の光学素子。
【請求項19】
前記反射面は、平面でない平滑面部分を含む、請求項1又は1に記載の光学素子。
【請求項20】
前記反射面は区分的に連続である、請求項1又は1に記載の光学素子。
【請求項21】
前記光学素子は、前記光ファイバと、直接結合又は光学的及び機械的に間接結合するように構成されている、請求項1~20のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項22】
光信号のノイズ又は前記第2面の前記外側部分によって受信される光信号と前記第2面の前記内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、前記第2面の前記外側部分及び前記内側部分の直径の比率を最適化することにより減少させる、請求項1~2のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項23】
光信号のノイズ又は前記第2面の前記外側部分によって受信される光信号と前記第2面の前記内側部分によって受信される光信号との間のクロストークを、前記第2面の前記内側部分と前記外側部分との間の分離部材又は反射面を用いることにより減少させる、請求項1~2のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項24】
前記分離部材は、特定の波長範囲を有する電磁放射線を反射又は吸収するように構成されている、請求項2に記載の光学素子。
【請求項25】
前記光学素子は、多光子リソグラフィ等の3D印刷法を用いて形成される、請求項1~2のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項26】
前記光学素子は、前記光ファイバの一端部に直接形成される、請求項1~2のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項27】
請求項1~2のいずれか1項にかかる前記光学素子を備える光学装置であって、前記光学素子に結合された光ファイバをさらに備える、光学装置。
【請求項28】
前記光ファイバは、コアレス光ファイバである、請求項2に記載の光学装置。
【請求項29】
前記光ファイバは、特定の波長範囲における迷電磁放射線の影響を減らすために、前記特定の波長範囲を有する電磁放射線を吸収するように選択されたコーティングを備える、請求項2又は2に記載の光学装置。
【請求項30】
請求項2~2のいずれか1項にかかる前記光学装置を形成する方法であって、
前記光学素子の設計を用意するステップと、
光ファイバを用意し、前記光ファイバの一端部を多光子リソグラフィシステムに対して位置決めするステップと、
前記用意した設計に従って前記光学素子を3D印刷するように前記多光子リソグラフィシステムに命令するステップと、
を含む、方法。
【国際調査報告】