(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】インプラントおよびインプラントの形成方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/12 20060101AFI20230831BHJP
A61F 2/02 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61F2/12
A61F2/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023504249
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021070353
(87)【国際公開番号】W WO2022018124
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520489628
【氏名又は名称】ベラセノ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BELLASENO GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】カニ,ネーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルカロッティ,ザラ
(72)【発明者】
【氏名】チャヤ,モヒット
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA01
4C097AA19
4C097AA20
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC11
4C097CC15
4C097EE08
4C097FF11
4C097MM02
4C097MM03
(57)【要約】
本実施形態は、患者への挿入のための、組織再建用または組織増強用の3次元インプラントに関するものである。インプラントは、複数の中空チャネルを備える3次元構造を形成する、複数のストランドを含んでいる。各中空チャネルは、複数のサイドウォールを備えている。サイドウォールは、隣接するストランドセグメント間にギャップが形成されるように、交互に配置された、複数のストランドセグメントと複数のギャップとを備えている。複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップである。隣接するストランドセグメントは、可逆的に拡張可能なギャップに受け入れられる対象物に基づく撓み能力(δ)を構成する。ストランドセグメントの半径(R)および可逆的に拡張可能なギャップのギャップ長(gl)は、降伏強度(σ
yield)、材料の弾性係数(E)、および、隣接するストランドセグメントの撓み能力δに基づいている。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への挿入のための、組織再建用または組織増強用の3次元インプラント(100,200,300)であって、
上記インプラントは、3次元構造(102)を形成する複数のストランド(101)を備え、
上記3次元構造(102)は、複数の中空チャネル(103)を含み、
上記各中空チャネル(103)は、複数のサイドウォール(104)を備え、
上記サイドウォール(104)は、当該サイドウォールにおける隣接するストランドセグメント(105)の間にギャップ(106)が形成されるように、交互に配置された、複数のストランドセグメント(105)と複数のギャップ(106)とを備え、
上記ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成され、
上記複数のギャップ(106)は、可逆的に拡張可能なギャップであり、
可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、当該ギャップによって受け入れられる対象物(155)により増加し、
上記可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、上記対象物が当該ギャップから取り除かれることで減少し、
上記複数のストランド(101)は、降伏強度(σ
yield)および弾性係数(E)を有する材料から形成され、
上記複数のストランド(101)の半径(R)および可逆的に拡張可能なギャップ(106)のギャップ長(gl)が、降伏強度(σ
yield)、上記材料の上記弾性係数(E)、および、当該可逆的に拡張可能なギャップ(106)を形成する、上記隣接するストランドセグメント(105)の撓み能力(δ)に基づいていることを特徴とするインプラント。
【請求項2】
上記請求項1に記載のインプラントにおいて、
可逆的に拡張可能なギャップの上記ギャップ長(gl)の二乗に対する、上記複数のストランド(101)の上記半径(R)の比が、上記材料の上記降伏強度(σ
yield)、上記材料の上記弾性係数(E)、および、上記ギャップ(106)のストランドセグメント(105)の撓み能力(δ)に基づいていることを特徴とするインプラント。
【請求項3】
上記請求項1または2に記載のインプラントにおいて、
可逆的に拡張可能なギャップ(106)の上記ギャップ長(gl)の二乗に対する、上記複数のストランド(101)の上記半径(R)の比が、上記材料の上記降伏強度(σ
yield)と、上記弾性係数(E)と上記ギャップ(106)のストランドセグメント(105)の撓み能力(δ)との積との間の比に比例することを特徴とするインプラント。
【請求項4】
上記請求項1から3のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
可逆的に拡張可能なギャップ(106)の上記ギャップ長(gl)の二乗に対する、上記複数のストランド(101)の上記半径(R)の比が、下記式で表され、δは上記ギャップのストランドセグメントの撓み能力を表すことを特徴とするインプラント。
【数1】
【請求項5】
上記請求項1から4のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記可逆的に拡張可能なギャップ(106)の上記ストランドセグメントの上記撓み能力(δ)は、上記ギャップの上記静止ギャップ高さ(gh)の0.05倍と0.75倍との間にあることを特徴とするインプラント。
【請求項6】
上記請求項1から5のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
可逆的に拡張可能なギャップ(106)は、ベースラインギャップ高さに対して拡張可能であり、
上記ベースラインギャップ高さは、上記インプラントが静止しているときの上記ギャップの高さであることを特徴とするインプラント。
【請求項7】
上記請求項1から6のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数の中空チャネル(103)のチャネルが、互いに隣接して配置され、
隣接するチャネルが共通のサイドウォールを共有することを特徴とするインプラント。
【請求項8】
上記請求項1から7のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のサイドウォールの全ての上記サイドウォール(104)の80%以上が、上記可逆的に拡張可能なギャップ(106)を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項9】
上記請求項1から8のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のサイドウォール(104)の全てのギャップの50%以上が、可逆的に拡張可能なギャップ(106)であることを特徴とするインプラント。
【請求項10】
上記請求項1から9のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のストランドを形成するための上記材料は、応力-ひずみ線図上に破断点を有し、
上記破断点での歪みが30%よりも大きく、且つ、当該破断点での応力が250MPa未満であることを特徴とするインプラント。
【請求項11】
上記請求項1から10のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のストランド(101)は、材料体積を含み、
上記材料体積は、上記インプラントの総インプラント体積の5%~50%であることを特徴とするインプラント。
【請求項12】
上記請求項1から11のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記インプラントの外面領域に配置される1つまたは複数の輪郭形成ストランド(319)をさらに備え、
上記複数の輪郭形成ストランド(319)は、当該複数の輪郭形成ストランドの隣接するストランドセグメントの間に、複数の可逆的に拡張可能な輪郭形成ギャップが形成されるように配置されていることを特徴とするインプラント。
【請求項13】
上記請求項1から12のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数の中空チャネル(103)は、正弦波チャネルおよびジグザグチャネルの少なくとも一方を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項14】
上記請求項1から13のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
インプラント手術のために、上記インプラントを通して針を誘導するのに使用することを特徴とするインプラント。
【請求項15】
3次元インプラントの形成方法であって、
上記方法は、3次元構造を形成するために、複数のストランドを形成する工程(620)を含み、
上記複数のストランドは、降伏強度(σ
yield)および弾性係数(E)を有する材料から形成され、
上記3次元構造は、複数の中空チャネルを含み、
各中空チャネルは、複数のサイドウォールを備え、
サイドウォールは、複数のギャップおよび上記複数のストランドの複数の連続するストランドセグメントを備えており、
上記複数のストランドセグメントと上記複数のギャップとは、上記サイドウォールにおける隣接するストランドセグメントの間にギャップが形成されるように、交互に配置され、
上記ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成され、
上記複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップであり、
可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、当該ギャップによって受け入れられる対象物により増加し、
上記可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、上記対象物が当該ギャップから取り除かれることで減少し、
上記複数のストランドの半径(R)および可逆的に拡張可能なギャップのギャップ長(gl)が、降伏強度(σ
yield)、上記材料の上記弾性係数(E)、および、当該可逆的に拡張可能なギャップを形成する、上記隣接するストランドセグメントの撓み能力(δ)に基づいていることを特徴とする3次元インプラントの形成方法。
【請求項16】
上記請求項15に記載の3次元インプラントの形成方法において、
可逆的に拡張可能なギャップによって受け入れられる対象物に基づいて、当該可逆的に拡張可能なギャップの撓み能力(δ)を決定する工程と、
形成されるべき上記複数のストランドの、上記材料の上記降伏強度(σ
yield)およびヤング率(E)を含む材料特性を決定する工程と、
形成されるべき上記複数のストランドセグメントのそれぞれのストランドセグメントの半径(R)およびギャップ長(gl)を決定する工程と、
をさらに含むことを特徴とする3次元インプラントの形成方法。
【請求項17】
患者へ挿入するための、組織再建用または組織増強用の3次元インプラント(100,200,300)であって、
上記インプラントは、第1のサブレイヤー群(115)が第1の方向に配向された複数のストランドを有し、第2のサブレイヤー群(116)が第2の方向に配向された複数のストランドを有し、当該第1のサブレイヤー群(115)の当該サブレイヤーと当該第2のサブレイヤー群(116)の当該サブレイヤーとが、第3の方向に交互に配置される、複数の平面的なレイヤーであって、当該第3の方向に延びる複数の中空チャネル(103)を含む3次元構造を形成する当該複数のレイヤーを備え、
上記インプラントは、少なくとも上記第3の方向に沿って圧縮可能であり、
各中空チャネル(103)は、
上記第3の方向に延びるとともに、交互に配置された、第1の方向に配向された複数のストランドセグメント(105A)と複数のギャップ(106A)とからなる第1のサイドウォール(104A)と、当該第3の方向に延びるとともに、交互に配置された、上記第2の方向に配向された複数のストランドセグメント(105B)と複数のギャップ(106B)とからなる第2のサイドウォール(104B)と、を備え、
上記中空チャネルの上記第1のサイドウォール(104A)および上記第2のサイドウォール(104B)の少なくとも一方は、起伏のあるサイドウォールであり、
上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)の上記複数のストランドセグメント(105A,105B)は、上記インプラントにおける異なるレイヤーに属しており、
上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)における隣接するストランドセグメント(105A,105B)は、ギャップ(106)によって分離されており、
上記隣接するストランドセグメント(105A,105B)は、上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)における、複数のピーク(135)と複数のトラフ(136)とのパターンを作成するために、互いに対して横方向のオフセットを有していることを特徴とするインプラント。
【請求項18】
上記請求項17に記載のインプラントにおいて、
上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)は、ジグザグ部分および正弦波部分の少なくとも一方を含むことを特徴とするインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年7月21日に欧州特許庁に出願された欧州特許出願第20186961.7号の優先権を主張し、その内容全体はあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載される実施形態は、インプラントの分野に関し、特に、患者に挿入するためのインプラント、およびインプラントを形成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
患者へインプラントを挿入する手術は、世界中で行われている。必要とされるインプラントの用途に応じて、インプラントには一定の基準を満たすことが要求される場合がある。かかる基準は、インプラントの形状および/またはインプラントの機械的安定性に関連する場合がある。インプラントが再建手術に用いられるような場合、インプラントが患者に挿入される前、挿入中、および/または挿入後に、外科医がインプラントを取り扱わなければならない場合がある。患者が必要とする幾何学的および機械的基準を満たし、インプラント手術を行う外科医が容易に取り扱いおよび/または操作できるインプラントが望まれる。
【発明の概要】
【0004】
様々な実施形態は、患者の身体部位の再建に要求される基準を満たすように柔軟に調整することができるとともに、手術を行う外科医によるインプラントの取り扱い性および操作性を向上および改善することができるインプラントの提供に関するものである。
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、患者への挿入のための3次元インプラントに関する。インプラントは、3次元構造を形成する複数のストランド(strand)を含んでいる。3次元構造は、複数の中空チャネル(channel)を含んでいる。各中空チャネルは、複数のサイドウォール(sidewall)を備えている。サイドウォールは、サイドウォールにおける隣接するストランドセグメント(strand segment)間にギャップ(gap)が形成されるように、交互に配置された、複数のストランドセグメントと複数のギャップとを備えている。ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成されている。複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップである。ギャップの高さは、ギャップによって受け入れられる対象物により増加し、またギャップの高さは、対象物がギャップから取り除かれることで減少する。複数のストランドは、降伏強度(σyield)および弾性係数(E)を有する材料から形成されている。複数のストランドの半径(R)および可逆的に拡張可能なギャップのギャップ長(gl)は、降伏強度(σyield)、材料の弾性係数(E)、および、可逆的に拡張可能なギャップを形成する、隣接するストランドセグメントの撓み能力δに基づいている。
【0006】
様々な実施形態は、インプラント手術のためにインプラントを通して針を誘導するのに使用するためのインプラントに関する。
【0007】
様々な実施形態は、3次元インプラントを形成するための方法に関するものである。この方法は、複数のストランドを形成して、3次元構造を形成することを含む。複数のストランドは、降伏強度(σyield)および弾性係数(E)を有する材料から形成されている。3次元構造は、複数の中空チャネルを含んでいる。各中空チャネルは、複数のサイドウォールを備え、サイドウォールは、複数のギャップと、複数のストランドの複数の連続するストランドセグメントと、を備えている。複数のストランドセグメントと複数のギャップとは、サイドウォールにおける隣接するストランドセグメント間にギャップが形成されるように、交互に配置されている。ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成されている。複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップである。可逆的に拡張可能なギャップの高さは、ギャップに受け入れられる対象物により増加し、またギャップの高さは、対象物がギャップから取り除かれることで減少する。複数のストランドの半径(R)および可逆的に拡張可能なギャップのギャップ長(gl)は、降伏強度(σyield)、材料の弾性係数(E)、および、可逆的に拡張可能なギャップを形成する、隣接するストランドセグメントの撓み能力δに基づいている。
【0008】
様々な実施形態は、患者への挿入のための、組織再建用または組織増強用の3次元インプラントに関する。インプラントは、複数の平面的なレイヤー(layer)を含んでいる。第1のサブレイヤー群は、第1の方向に配向された複数のストランドを備えている。第2のサブレイヤー群は、第2の方向に配向された複数のストランドを備えている。第1のサブレイヤー群のサブレイヤーと、第2のサブレイヤー群のサブレイヤーとは、第3の方向に交互に配置されている。複数のレイヤーは、第3の方向に延びる複数の中空チャネルを含む3次元構造を形成し、インプラントは、少なくとも第3の方向に沿って圧縮可能である。各中空チャネルは、第3の方向に延びるとともに、交互に配置された、第1の方向に配向された複数のストランドセグメントと複数のギャップとからなる第1のサイドウォールと、第3の方向に延びるとともに、交互に配置された、第2の方向に配向された複数のストランドセグメントと複数のギャップとからなる第2のサイドウォールと、を含んでいる。中空チャネルの第1のサイドウォールおよび第2のサイドウォールの少なくとも一方は、起伏のあるサイドウォールである。起伏のあるサイドウォールの複数のストランドセグメントは、インプラントにおける異なるレイヤーに属している。起伏のあるサイドウォールにおける、隣接するストランドセグメントは、ギャップによって分離されている。隣接するストランドセグメントは、起伏のあるサイドウォールにおける、複数のピーク(peak)と複数のトラフ(trough)とのパターンを作成するために、互いに対して横方向のオフセットを有している。
【0009】
最後に、本発明はまた、組織再建または組織増強の方法にも関し、この方法は、本明細書で定義されるインプラントを対象の体内に移植することを含む。
【0010】
本開示の前述および他の特徴は、添付図面と併せて解釈される、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。添付の図面は、本開示によるいくつかの実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定的に考慮するものではないことが理解される。本開示は、本開示の利点がより容易に把握されるように、添付図面の使用を通じて、さらに具体的かつ詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、患者への挿入のための3次元インプラント100の斜視図を示す。
【
図1B】
図1Bは、患者への挿入のための3次元インプラント100の側断面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、サイドウォールにおける2つの隣接するストランドセグメント間のインプラントのギャップを示す。
【
図1D】
図1Dは、インプラントの第1のサブレイヤーを示す。
【
図1E】
図1Eは、インプラントの第2のサブレイヤーを示す。
【
図1F】
図1Fは、2つの単純支持体を有するビームが撓みを受ける様子を示す図である。
【
図1G】
図1Gは、針の挿入に伴う隣接するストランドセグメントの撓みを示す図である。
【
図1H】
図1Hは、横方向のオフセットがゼロの場合の隣接するストランドセグメントの配置を示す。
【
図1I】
図1Iは、横方向のオフセットがゼロより大きい場合の隣接するストランドセグメントの配置を示す。
【
図2A】
図2Aは、患者への挿入のためのさらなるインプラントの斜視図を示す。
【
図2B】
図2Bは、患者への挿入のためのさらなるインプラントの側断面図を示す。
【
図3A】
図3Aは、乳房インプラントとして使用するのに適したインプラントの斜視図を示す。
【
図3B】
図3Bは、複数の輪郭形成ストランドおよび表面フィラーストランドを含むインプラントの斜視側面図を示す。
【
図3C】
図3Cは、複数の輪郭形成ストランドおよび表面フィラーストランドを含むインプラントの斜視上面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、可逆的に拡張可能なギャップのないインプラントを示す。
【
図4B】
図4Bは、可逆的に拡張可能なギャップを有するインプラントに、脂肪注入用のカニューレを挿入するイメージ図を示す。
【
図4C】
図4Cは、マルチインジェクション試験のための挿入可能な領域の一例を示す。
【
図4D】
図4Dは、異なる材質のストランドの応力-ひずみ曲線を示す。
【
図5A】
図5Aは、脂肪注入模擬手術後のインプラントを示す。
【
図6】
図6は、インプラントを形成するための方法600のフローチャートを示す。
【
図7A】
図7Aは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【
図7B】
図7Bは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【
図7C】
図7Cは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【
図7D】
図7Dは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【
図7E】
図7Eは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【
図7F】
図7Fは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【
図7G】
図7Gは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有するインプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、特許請求される主題が実施され得る特定の実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が主題を実施できるように十分に詳細に説明されている。様々な実施形態は、異なるものの、必ずしも相互に排他的ではないことを理解されたい。例えば、一実施形態に関連して本明細書に記載される特定の特徴、構造、または特性は、特許請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態内で実施され得る。本明細書内の「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本明細書内に包含される少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「一実施形態」または「ある実施形態における」という表現の使用は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。さらに、開示された各実施形態内の個々の要素の位置または配置は、請求された主題の精神および範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されよう。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、主題の範囲は、添付の請求項が権利を有する均等物の全範囲とともに、適切に解釈された添付の請求項によってのみ定義されるものである。図面において、同様の数字は複数の図を通して同一または類似の要素または機能を示し、そこに描かれた要素は必ずしも互いに縮尺が同じではなく、むしろ個々の要素は本明細書の文脈でより容易に理解するために拡大または縮小される場合があることを示す。
【0013】
本明細書で使用される用語「上(over)」、「へ」、「間」及び「上(on)」は、他の層に対する或る層の相対的な位置を指す場合がある。ある層が他の層の「上に(over)」または「上に(on)」ある場合、他の層と直接に接触していても、1つまたは複数の層が介在していてもよい。層の「間」にある1つの層は、層と直接に接触していてもよいし、1つ以上の層が介在していてもよい。本明細書で使用される「A、Bおよび/またはC」という語句は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「BおよびC」、「AおよびC」、および、「AおよびBおよびC」を意味する場合がある。
【0014】
図1Aおよび
図1Bは、患者への挿入のためのインプラント100の斜視図および側断面図をそれぞれ示す。
【0015】
図1Aに示すように、インプラント100は、3次元構造102を形成する複数のストランド101を含んでいる。3次元構造102は、複数の中空チャネル103を含んでいる。各中空チャネル103は、複数のサイドウォール104を備えている。サイドウォール104は、サイドウォール104における隣接するストランドセグメント105間にギャップ106が形成されるように、交互に配置された、複数のストランドセグメント105と複数のギャップ106(
図1Bに示される)とを備えている。複数のギャップ106は、可逆的に拡張可能なギャップである。
【0016】
一般に、中空チャネル103は、中空空間がサイドウォールによって囲まれるように、互いに連続する(または例えば、互いに交差する)少なくとも3つのサイドウォールによって形成され得る。
図1Aの例では、それぞれが正方形の断面を有する複数の中空チャネル103が示されている。正方形の断面を有する、或る(または各)中空チャネル103は、4つの交差するサイドウォール104を有し得る。
【0017】
図1Bは、線A-A’に沿ったインプラント100の側断面図を示す。側面図は、3次元構造102の複数のストランド(フィラメント(filament)とも呼ばれる)101を示し、複数の(平行な)ストランド101は、3次元構造102における2つの隣接する(例えば、直接に隣接する)チャネル103,103Aのサイドウォール104,104Aを形成している。
図1Bに示すように、中空チャネル103Aを例にとると、中空チャネル103Aは、複数の平行ストランド101から形成された第1のサイドウォール104A(紙面に平行なサイドウォールとして示される)を含んでもよい。中空チャネル103Aは、第2のサイドウォール104B(紙面に入るおよび/または紙面から出るストランドとして示される)、第3のサイドウォール104C(紙面に入るおよび/または紙面から出るストランドとして示される)および第4のサイドウォール(図示せず)をさらに含んでもよい。第3のサイドウォール104Cは、第2のサイドウォール104Bと対向するサイドウォールであってもよい。第2のサイドウォール104Bおよび第3のサイドウォール104Cの両方は、第1のサイドウォール104Aおよび第4のサイドウォールと連続してもよい。第4のサイドウォールは、第1のサイドウォール104Aと対向するサイドウォールであってもよい。サイドウォールが交差する部分では、それらのストランドが交互に交差していてもよい。
【0018】
中空チャネル103Aのサイドウォール104Aのような、チャネル103の或る(または各)サイドウォール104は、z方向(垂直)に連続して配置された複数の連続するストランドセグメント105Aを含んでもよい。各ストランドセグメント105Aは、他のサイドウォール104またはチャネル103の一部を形成する、より長い連続ストランド101の一部(またはセグメント)であってもよい。必要に応じて、中空チャネル103Aのサイドウォール104Aを形成する複数の連続するストランドセグメント105Aは、互いに実質的に平行であってもよい。各サイドウォール104Aは、複数のギャップ106Aをさらに含んでもよい。中空チャネル103Aの複数のギャップ106Aおよび複数のストランドセグメント105Aは、サイドウォール104Aの隣接する(例えば、直接に連続する)ストランドセグメント105Aの間(例えば、サイドウォール104Aの2つの連続するストランドセグメント105Aの間)に(例えば1つの)ギャップ106Aが配置され得るように、交互に配置されてもよい。隣接する(例えば直接に隣接する、または例えば連続する)ストランドセグメントは、ギャップ106Aによって分離されてもよい。
【0019】
図1Cは、インプラント100の中空チャネル103Aの(1つの、単一の)サイドウォール104Aにおける、2つの隣接するストランドセグメント105A間のギャップ106Aを示す。
【0020】
ギャップ106Aは、スリットおよび/または間隔とも呼ばれることがあり、2つの隣接するストランドセグメント105Aの長さの間のブランクスペース(blank space)を意味する。ギャップ106Aは、ギャップ106Aの周囲を形成する(例えばギャップ106Aを区画する、または例えばギャップ106Aを囲む。)2対の交差するストランド101によって規定されてもよい。第1のサイドウォール104Aの第1の対のストランドセグメント105A(y方向に平行)は、対向するストランドであってもよく、および/または、必要に応じて互いに実質的に平行であってもよい。第2の対のストランドセグメント105B,105Cは、第2のサイドウォール104Bおよび第3のサイドウォール104Cの対向するストランドであってもよく、互いに実質的に平行であってもよい。ギャップ106Aは、2対の交差するストランドによって囲まれた領域であってもよい。ギャップ106Aを形成する第1の対のストランドセグメント105Aは、中空チャネル103Aの同じ(第1の)サイドウォール104Aにおける隣接するストランドセグメント105Aであってもよい。第2の対のストランドセグメントは、第2のサイドウォール104Bおよび第3のサイドウォール104Cの対向するストランドであってもよい。
【0021】
ギャップ106Aは、ベースラインギャップ高さghを有していてもよいし、ベースラインギャップ高さghによって定義されていてもよい。ベースライン(または静止)ギャップ高さghは、インプラント100が静止しているときの2つの隣接するストランド105A間の最小限(または最小)高さであってもよい。加えて、または代替的に、ベースラインギャップ高さghは、ギャップ106Aの中間点領域(例えば、ギャップ106Aのストランドセグメント105Aの中間点領域)におけるギャップ106Aの高さであってもよい。加えて、または代替的に、ベースラインギャップ高さは、インプラントが静止しているときの、インプラントのギャップの80%以上の平均(中間)ギャップ高さであってもよい。さらに、ギャップ106Aは、ギャップ106Aの最大(maximalまたはlargest)寸法であるベースラインギャップ長glを有していてもよいし、それによって定義されていてもよい。さらに、ベースラインギャップ長glは、第1のストランド105Bおよび第2のストランド105Cの最も近い2つの縁の間(
図1C)、または代替的に、第1のストランド105Bの中心から第2のストランド105Cの中心まで(
図1G)などの、第2の対のストランド105B,105C間のストランドセグメントの長さであってもよい。第2の対のストランドは、2つの対が交差するところで第1の対のストランドセグメントに融合されてもよく、また第2の対のストランドは、ギャップ長glの両端で第1の対のストランドセグメントのための単純支持体を形成してもよい。
【0022】
交差するストランド101の2つの対は、交差領域で融着または接合されてもよい。さらに、または必要に応じて、対向するストランドセグメント105Aは、ベースラインギャップ高さghが、平均ストランド直径dと等しいかまたはそれ以下になるように、いくらかの弛みまたは垂れ下がりを有してよい。ギャップの高さが拡張されると、(例えば、ギャップに針を挿入することによって)ギャップ106の形状が、変更され、または修正される場合がある。必要に応じて、交差するストランドセグメント105A,105B,105Cの2つの対によって囲まれた領域は、変化しないままであってもよい。代替的に又は必要に応じて、交差するストランド101の2つの対によって囲まれる面積は、元々囲まれていた面積の110%以上(または例えば120%以上、または例えば150%以上、または例えば200%以上、または例えば120%~250%、または例えば120%~200%)に増加してもよい。
【0023】
図1Cはまた、可逆的に拡張可能なギャップ106(ギャップ106A等)のバネのような特徴を示している。ギャップ106Aの対向するストランドセグメント105Aに引張力(対向する矢印113,114で示す)が加えられると、ギャップ高さghは増加する。さらに、ギャップ106Aの対向するストランドセグメント105Aはそれぞれ、反対の引張力を受ける可能性がある。ギャップ106Aのストランドセグメント105Aに引張力が加えられると、ギャップ106Aは、ベースラインギャップ高さghに対して拡張可能であるように構成されてもよい。例えば、可逆的に拡張可能なギャップ106は、ベースラインギャップ高さghおよび/または平均ストランド直径dの110%以上(または例えば120%以上、または例えば150%以上、または例えば200%以上、または例えば110%~250%、または例えば120%~250%、または例えば120%~200%)に拡張可能であってよい。可逆的に拡張可能なギャップ106Aは、ギャップ106Aのストランド105Aから引張力(113,114)が取り除かれた後(同じ周囲圧力および温度であっても)、その元の(静止)ギャップ高さに回復または戻ることができる。例えば、可逆的に拡張可能なギャップ106は、ストランド105Aに作用した引張力が取り除かれた後、その元のギャップ高さghおよび/または平均ストランド直径dの110%未満(または例えば105%未満、または例えば100%、または例えば80%~115%、または例えば90%~110%)に回復または戻るように構成されてもよい。
【0024】
必要に応じて、ベースラインギャップ長glは、ベースラインギャップ高さghの2倍以上(または例えば5倍以上、または例えば10倍以上)であってもよい。必要に応じて、ベースラインギャップ高さghは、0.05mmと5mmとの間(または例えば0.1mmと2mmとの間、または例えば0.5mmと1.5mmとの間)であってもよい。必要に応じて、複数のストランド101の平均厚さは、0.05mmと5mmとの間(または例えば0.1mmと2mmとの間、または例えば0.5mmと1.5mmとの間)であってもよい。必要に応じて、ベースラインギャップ長glは、ストランド101の直径d(または厚さ)の2倍以上(または例えば5倍以上、または例えば10倍以上)大きくてもよい。例えば、ベースラインギャップ長glは、25mm未満(または例えば0.5mmと25mmとの間)であってもよい。必要に応じて、ベースラインギャップ高さghは、インプラントのストランド101の平均(中間)ストランド直径dの40%~100%(または例えば40%~80%、または例えば40%~60%)であってもよい。
図1Cには、第2のサイドウォール104Bおよび第3のサイドウォール104Cのそれぞれの、1つのストランドセグメント105B,105Cのみが示されているが、第2のサイドウォール104Bおよび第3のサイドウォール104Cのそれぞれの、複数のストランドが、第1のサイドウォール104Aの第1の対のストランドセグメント105A間に配置されてもよいことが理解され得る。この場合、ベースラインギャップ高さghは、第2の対のストランドのz方向における全厚さに依存する可能性がある。例えば、ベースラインギャップ高さghは、第2の対のストランドのz方向における全厚さの40%~100%(または例えば40%~80%、または例えば40%~60%)であってもよい。
【0025】
図1Bに示すように、各中空チャネル103,103Aは、第1の複数の連続するストランドセグメント105Aと、第1の複数の可逆的に拡張可能なギャップ106と、を含む第1のサイドウォール104Aを少なくとも含んでもよい。中空チャネル103Aは、第2の複数の連続するストランドセグメントと、第2の複数の可逆的に拡張可能なギャップと、を含む第2のサイドウォール104Bをさらに含んでもよい。第2のサイドウォール104Bは、第1のサイドウォール104Aに連続してもよい。第1の複数の連続するストランドセグメント105Aのストランドセグメント105Aと、第2の複数の連続するストランドセグメント105Bのストランドセグメント105Bとは、中空チャネル103Aの長手方向軸の第1の端部137と、中空チャネル103Aの長手方向軸の第2の端部138との間の方向に、交互に配列されてもよい。
【0026】
隣接するチャネル103,103Aの2つのサイドウォール104,104Aは、さらなるサイドウォール104Bによって分離(または分割)されてもよい。さらなるサイドウォール104Bは、複数のストランド(
図1Bでは、紙面に入るように示されている)を備えてもよい。さらなるサイドウォール104Bのストランドは、サイドウォール104A,104Aを形成するストランド101と交差していてもよい。複数の中空チャネル103のチャネルは、互いに隣接して(例えば、直接に隣接して)配置されていてもよい。隣接するチャネル103A,103Bは、共通のサイドウォール104Bを共有してもよい。
【0027】
インプラント100は、インプラントの目的に応じて異なるサイズを有していてもよい。x方向において、インプラントは、最大30cm(または例えば1cmと30cmとの間、または例えば10cmと15cmとの間)の寸法を有していてもよい。y方向において、インプラントは、最大30cm(または例えば1cmと30cmとの間、または例えば10cmと15cmとの間)の寸法を有していてもよい。z方向において、インプラントは、最大30cm(または例えば1cmと30cmとの間、または例えば10cmと15cmとの間)の寸法を有していてもよい。
【0028】
インプラント100の3次元構造102の複数のストランド101は、インプラントの材料体積を構成してもよい(または作り上げてもよい)。複数のストランド101によって占められる材料体積は、総静止インプラント体積の5%~70%(または例えば50%~70%、または例えば50%~60%)であってもよい。さらに、または必要に応じて、インプラントのギャップ106は、総静止インプラント体積の30%~95%(または例えば30%~50%、または例えば40%~50%)を構成してもよい(または含んでもよい)。インプラントの3次元構造102の材料体積のうち、インプラントの複数のサイドウォール104は、材料体積の80%~100%を構成してもよい(または含んでもよい)。複数のサイドウォール104によって形成されない、インプラント100の材料体積の残りは、例えば、輪郭線および/または表面フィラー線からの寄与であってもよい。必要に応じて、サイドウォール104のストランドセグメント105は、サイドウォール104の90%未満(または例えば50%未満、または例えば50%~70%、または例えば50%~60%)を構成してもよく(または作り上げてもよく)、サイドウォール104の残りの部分は、ギャップ106によって占められる。必要に応じて、複数のサイドウォール104の全てのサイドウォール104の少なくとも80%(または例えば少なくとも95%、または例えば100%)は、可逆的に拡張可能なギャップ106を含んでもよい。さらに、または必要に応じて、インプラント100の全てのギャップ106の少なくとも50%(または例えば少なくとも60%、または例えば少なくとも70%)は、可逆的に拡張可能なギャップである。
【0029】
図1Aに示すように、インプラント100は、メッシュ状構造または骨格(scaffold)構造であり得る3次元構造102を形成してもよい(または、作り上げてもよい)。例えば、複数のストランド101(または線)が、メッシュ状の3次元構造102を形成するように構成されていてもよい。3次元構造102は、インプラント100の静止体積を規定してもよい(または、有してもよい)。インプラント100の静止体積(cm
3)は、軟組織を構築および/または再構築するために患者へインプラント100を挿入する前の、インプラント100の体積であってもよい。インプラント100の静止体積は、静止状態のインプラント100の体積であってもよい。静止状態のインプラント100とは、インプラント100がキャリア表面(例えばテーブル表面、または例えばボード)上に静止している(または接触している、または座っている)場合など、インプラント100の1つの外面(例えば外面108)だけが外力を受ける状態のインプラントであってもよい。例えば、静止状態のインプラント100は、インプラントの第1の外面108がキャリア表面と接触していてもよく、且つ第2の(対向する)外面109がいかなる引張力および/または圧縮力を受けていなくてもよいことを意味する場合がある。換言すると、インプラント100の静止体積は、インプラントの表面に反対の圧縮力または引張力が作用していない状態でのインプラント100の体積であってもよい。インプラント100の静止体積は、患者に挿入されるインプラント100の構築体積(所望のまたは必要な体積)に基づいて導き出されてもよい。例えば、必要に応じて、インプラント100は、患者への挿入後に、インプラント100が構築体積を構成するか、または、構築体積に到達するように、構築体積未満に圧縮可能であるように構成されてもよい。
【0030】
複数のストランド101は、複数の線、または紐状の材料であってもよい。ストランド101(またはライン、またはフィラメント)は、長さおよび断面直径dを有することができる。ストランド101の直径は、ストランド101の最小断面寸法など、ストランド101の平均寸法であってもよい。必要に応じて、ストランド101の長さは、ストランド101の直径よりも大きくてもよい(例えば少なくとも5倍大きい、または例えば少なくとも10倍大きい、または例えば少なくとも20倍大きい)。ストランド直径は、必要に応じて、例えば、300μmから350μmの間であってもよい。
【0031】
中空チャネル103という用語は、そのチャネルのサイドウォールによって囲まれたチャネル体積の少なくとも70%(または例えば少なくとも80%、または例えば少なくとも90%)が、ストランドセグメントまたはストランドなどの材料によって、充填されていないまたは占められていないチャネルを指す場合がある。例えば、中空チャネル103は、必ずしも、完全に(100%)充填されていないチャネルであることに限定されなくてもよい。
【0032】
3次元構造102は、z方向107(例えば垂直方向)において、互いの上に(上に載せて)連続して配置または積層された複数の実質的に平面状のレイヤー(例えばx-y平面に平行な)を含んでもよい。必要に応じて、各平面状のレイヤーは、単位セルの2次元格子配列を形成する複数のストランド101を含んでもよい。インプラント100の個々のレイヤーは、(互いの上に形成される)連続するレイヤーの単位セルが複数の中空チャネル103を形成し得るように、連続的に(積み重ねられ、および/または互いに上下に)配置されてもよい。各チャネル103は、互いの上に積み重ねられた連続するレイヤーからの単位セルのコラム(column)から形成されてもよい(または、それを含んでもよい)。例えば、
図1A~
図1Cに示すインプラント100では、インプラント100は、正方形状の断面を有する中空チャネル103を形成するために、互いの上に配置された複数のレイヤーの主として正方形形状の単位セルを含んでもよい。必要に応じて、単位セルは、3次元格子構造102の静止体積の50%以上(または例えば80%以上、または例えば90%以上、または例えば95%以上)に亘って規則的に繰り返されてもよい。したがって、格子構造102は、格子構造102全体に亘って互いに接続された、複数の隣接する(例えば、直接に隣接する)単位セルを含んでもよい。単位セルは、3次元格子構造102の最小かつ最も基本的な単位であってもよい。
【0033】
必要に応じて、単位セルの各平面状のレイヤーは、第1の方向に配向されたストランドを含む第1のサブレイヤー(または第1のサブレイヤー群)と、第1の方向とは異なる第2の方向に配向されたストランドを含む、隣接する第2のサブレイヤー(または第2のサブレイヤー群)と、を含んでもよい。
【0034】
図1Dは、インプラント100の第1のサブレイヤーを示し、第1のサブレイヤー115は、第1の方向(例えばy方向)に配向されたストランド101を含む。
図1Eは、インプラント100の第2のサブレイヤー116を示し、第2のサブレイヤー116は、第2の方向(例えばx方向)に配向されたストランド101を含む。必要に応じて、それぞれのサブレイヤー内のストランド101は、互いに平行であってもよい(例えば、サブレイヤー内のストランド間の鋭角、または正弦波ストランドに最適なストランド間の鋭角は、±5°以内に収まっていてもよい)。第1のサブレイヤー115の複数のストランド101と、第2のサブレイヤー116の複数のストランド101とは、交点または交点領域で交差して、サブレイヤーの2次元格子配列を形成してもよい。必要に応じて、各サブレイヤー115,116の(または例えばその内部の)ストランド101は、サブレイヤーの開始点Sからサブレイヤーの終点Eまで連続的に蛇行する連続ストランドの一部であってもよい。例えば、必要に応じて、第1のサブレイヤー115のストランドは、第1のサブレイヤーの開始点Sから終点Eまで連続的に蛇行する連続サブレイヤーストランドの一部であってもよい。必要に応じて、第2のサブレイヤー116のストランドは、第2のサブレイヤーの開始点Sから終点Eまで連続的に蛇行する連続サブレイヤーストランドの一部であってもよい。サブレイヤーの連続ストランドは、第1の方向に配向された複数の直線部分を有していてもよい。サブレイヤーの複数の直線部分は、蛇行部分によって接続されてもよい。蛇行部分は、少なくとも部分的にレイヤーの境界または周囲に形成されてもよく、また、インプラントの表面で、表面フィラーラインまたはチャネルのサイドウォールを形成してもよい。各サブレイヤーは、蛇行部分(または表面フィラーライン)が形成される、それ自体の境界または周囲を有することができる。必要に応じて、ストランドは直線状のストランドであってもよいし、代替的に、ストランドは正弦波ジグザグ(zig-zag)ストランドであってもよく、単位セルは「フリーフォーム(free-form)」形状を有していてもよい。
【0035】
第1のサブレイヤー115および第2のサブレイヤー116は、それらのそれぞれのストランド101が交差して、単位セルの2次元格子配列を形成するように配置されてもよい。第1のサブレイヤー115および第2のサブレイヤー116の交差するストランド101は、交差するストランドから形成される各単位セルが、孔径を有する孔を含み得るように、または、孔径を有する孔と称され得るように、配置されてもよい。交差するストランドは、個々の単位セルの幾何学的形状(例えば、形状、寸法、孔径)を形成または規定することができる。各2次元単位セルは、単位セルの寸法を規定する孔径を有することができる。2次元単位セルの孔径は、その直径、幅および/または孔面積に関して説明されてもよく、例えば、或るレイヤーの単位セルの孔径wは、中空チャネル103(
図1Aに示すように)の直径または幅と称されることがある。必要に応じて、3次元構造102の複数の単位セルの平均孔径は、少なくとも0.5mm(または例えば少なくとも0.75mm、または例えば少なくとも0.8mm、または例えば少なくとも1mm、または例えば少なくとも1.5mm、または例えば少なくとも2mm、または例えば少なくとも5mm)であってもよい。3次元構造102の表面孔の少なくとも25%(または例えば少なくとも70%、または例えば少なくとも80%)の孔面積は、少なくとも0.75mm
2(または例えば少なくとも1mm
2、または例えば少なくとも3mm
2)であってもよい。表面孔面積は、表面孔を規定する交差するストランドによって囲まれる面積であってもよい。
【0036】
複数の2次元単位セルは、多角形状の単位セル、三角形状の単位セル、ダイヤモンド形状の単位セル、菱形状の単位セル、正方形状の単位セル、楕円形状、正弦波状、および/または六角形状の単位セルであってもよい。インプラント100は、必要に応じて、インプラント100の体積全体に亘って、それらの形状のうちの1つを主に(例えば50%以上、または例えば60%以上、または例えば70%以上、または例えば80%以上)有する単位セルを含んでもよく、代替的に、インプラント100は、様々な異なる形状を有する単位セルを含んでもよいことが理解され得る。中空チャネル103のサイドウォール104は、実質的にx-y平面と平行に横たわり、z方向(第3の方向)に垂直に積み重ねられるとともに、実質的に同じ方向に配向された、複数のストランド101から形成されてもよい。中空チャネル103のサイドウォール104は、中空チャネル103の断面形状が、多角形、三角形、ダイヤモンド形、菱形、正方形、楕円形、正弦波および六角形の形状群からのいずれか1つの形状となるように配置されてもよい。
【0037】
孔と比較して、インプラント100のギャップ106は、中空チャネル103を形成する任意の隣接するストランド間の最小間隔を指す場合がある(またはそうであってもよい)。例えば、ギャップ106は、単位セルの孔径面積と比較して、インプラントのストランドによって囲まれた最小の面積(例えば、最小のギャップ面積)を有していてもよい。必要に応じて、ギャップ106のギャップ面積(ギャップ106規定する2対の対向するストランドによって囲まれた面積であってもよい)は、孔径面積の50%未満(または例えば40%未満、または例えば30%未満)であってもよい。
【0038】
各中空チャネル103は、中空チャネル103の長手方向軸に沿って延びていてもよい。長手方向軸は、中空チャネル103のサイドウォールの中点を含む線であってもよい。中空チャネル103は、例えば、3次元構造102の第1の外面領域108と第2の外面領域109との間で延びていてもよい。複数の中空チャネル103のチャネル103(例えば必要に応じて、各チャネル、または例えば1つ以上のチャネル103)は、第1の外面領域108から第2の外面領域109に向かって延びるように構成されてもよい。複数の中空チャネル103の正確な位置および/または傾斜角度は、患者のニーズに従って構成することができる。必要に応じて、複数の中空チャネル103は、互いに平行であってもよい(例えば、隣接するチャネルのサイドウォール間の鋭角は、±5°以内に収まっていてもよい)。代替的に、複数の中空チャネル103は、収束領域(または収束点)に向かって収束してもよく、収束領域は、第1の外面領域108または第2の外面領域109の外側に位置する。必要に応じて、中空チャネル103は、ジグザグチャネル、傾斜チャネルおよび/またはテーパー(tapered)チャネルを含んでもよい。必要に応じて、中空チャネル103は、第1の外面領域108に対して傾斜したチャネルであってもよい。例えば、単位セルのコラムを形成する単位セルのうち、第2のレイヤーの単位セルは、隣接する第1のレイヤーの単位セルに対して、(x方向またはy方向において)横方向のオフセットを有していてもよい。第1の単位セルと第2の単位セルとの間の横方向のオフセット値は、単位セルの孔径の0%~50%(または例えば0%~20%、または例えば5%~10%)であってもよい。必要に応じて、同じコラム内では、各レイヤーの単位セルは、直前のレイヤーの単位セルに対して、同じ横方向のオフセットを有していてもよい。必要に応じて、同じコラム(同じチャネルを形成する)の単位セルの少なくとも80%(または例えば少なくとも70%、または例えば少なくとも50%)は、同じ孔径および同じ孔形状を有してもよい。代替的に、テーパーチャネルの場合には、同じチャネルを形成する単位セルは、異なる孔径を有していてもよい(例えば単位セルの孔径は、外面領域の一方に向かって減少または増加してもよい)。
【0039】
複数のストランド101は、インプラントが静止しているとき、および/または、インプラント100が圧縮されているときでさえ、ギャップ106Aが可逆的に拡張可能であるように構成されてもよい。インプラント100の複数の外面に(物理的または機械的)圧縮力が作用する場合、インプラント100は、その静止体積の80%未満(または例えば70%未満、または例えば60%未満、または例えば50%未満、または例えば30%未満、または例えば30%~95%、または例えば45%~80%、または例えば45%~70%、または例えば80%~95%)まで圧縮可能である。
【0040】
インプラントのギャップの拡張性は、梁の撓みを参照して説明することができる。インプラントのギャップは、拡張可能であり、これは、ストランドに作用する1つまたは複数の力に応答して、2つの隣接するストランドセグメント間のギャップ高さが増加するように、ストランドが、破損することなく、撓むことおよび/または曲がることが可能であることを意味する。加えられた外力に応じて単純に曲がる梁(またはストランドセグメント)の曲げ応力σは、次の式のように表すことができる。
【数1】
【0041】
図1Fに示すように、このような梁は両端で単純支持され、曲げモーメントは、梁に外力またはモーメントが加えられたときに、梁に生じる反作用である。σは曲げ応力である。Mは曲げモーメントであり、Cは中立軸からの距離である。Iは梁の断面の慣性モーメントである。支持体間の中央に加えられた荷重によって生じる最大曲げモーメントMは、次の式で記述または定義することができる。
【数2】
【0042】
Lは梁の長さであり、Fは梁に作用する力である。最大曲げ応力σ
maxは次式で表すことができる。
【数3】
【0043】
Mは最大曲げモーメントであり、C
maxは中立軸からの最大距離である。Iは梁の断面の慣性モーメントである。2つの単純な支持体を備える梁にかかる中心荷重の撓みδは、次式で表される。
【数4】
【0044】
Lは梁の長さ、Fは作用する力、Eはヤング率、またIは梁の慣性モーメントである。インプラント100を考慮すると、インプラントのストランドの撓み能力δは、ギャップの拡大をもたらす可能性がある。撓み能力は、ストランドの所望の撓み能力および/またはギャップ高さの所望の拡張性(例えば、ギャップがどの程度拡張すると予想されるか)を反映してもよいし、それ自体であってもよい。
【0045】
図1Gは、
図1Cに示されたインプラントの説明図を示す。
図1Gに示すように、ギャップへの針155の挿入は、インプラントに1つ以上の力113,114を作用させることができる。針は、ベースラインギャップ高さghよりも大きい直径ndを有していてもよい。ギャップ長は、第1のストランド105Bの中心と第2のストランド105Cの中心との間のストランドセグメントの長さであり得るglによって表すことができる。第1のストランドおよび第2のストランド105Cは、ギャップの隣接するストランドセグメント105のための単純な支持体として機能し得る。
【0046】
針の挿入は、2つの連続するストランドセグメント105Aの各々において、撓みδをもたらす。各ストランドセグメント105Aは、曲げ応力を受ける、2つの単純な支持体105B,105Cを有する梁のように挙動することができる。針の挿入によって引き起こされる、隣接するストランドセグメント105Aの撓みは、点線によって表すことができる。撓みは次の式で表すことができる。
【数5】
【0047】
針155の挿入などによって力を受ける可能性のある、ストランドの最大曲げ応力は、以下の式の通りである。
【数6】
【0048】
Rは、ストランドの半径であってもよい(例えば、d=2×R)。
【0049】
【0050】
となり、最大応力σ
maxの式が得られる。
【数8】
【0051】
弾性変形については、σ
maxの値が、ストランドの材料の降伏強度であるσ
yieldを超えないような規則を適用することができる。したがって、
【数9】
【0052】
撓み能力δは、次の式で表すことができる。
【数10】
【0053】
可逆的に拡張可能なギャップ106は、ベースラインギャップ高さghの110%~250%まで拡張可能であってもよい。これは、針の直径ndがベースラインギャップ高さghの110%~250%である場合に発生する可能性がある。これらのパラメータは、以下の式で表すことができる。
【数11】
【0054】
【0055】
Eおよびσ
yieldは、インプラント100のストランド材料の材料特性である。ストランドの半径であるR、および、2つの支持体105B,105Cの間のストランドセグメントの長さであるglは、インプラント100のストランドの幾何学的特徴である。式(10)は、式(7)に基づいて得ることができる。
【数13】
【0056】
図1Hは、
図1Gの隣接するストランド105Aをz-x断面で示す説明図である。いくつかの例では、次のレイヤーにおける、その隣接するストランドセグメント105Aに対する1つのストランドセグメント105Aの横方向のオフセットは、x-y平面に沿って(または水平に)0に等しい(オフセット=0)。これらの場合、ベースラインギャップ高さghは、単に平均ストランド直径dまたは2Rに等しくてもよい。
【0057】
代替的に、
図1Iに示すように、x-y平面に沿った、または、x-y平面に対して水平な、次のレイヤーにおける、その隣接するストランドセグメント105Aに対する1つのストランドセグメント105Aの横方向のオフセットが0より大きい場合があり得る。そのような場合、ギャップ高さghは、以下のように表すことができる。
【数14】
【0058】
ltは、レイヤー厚と呼ばれることがある。寸法2×ltは、第1のストランドセグメント105Aの中点と、第2の隣接するストランドセグメント105Aの中点との間の、z方向で測定される距離であってもよい。寸法2×ltは、z方向のオフセットであってもよく、一方、横方向のオフセットは、x方向またはy方向のオフセットであってもよい。隣接するストランドセグメント間の横方向のオフセット値は、ギャップ長glの0%~99%(または例えば0%~50%、または例えば0%~10%)であってもよい。
【0059】
図2Aおよび
図2Bは、患者への挿入のためのインプラント200の斜視図および側断面図をそれぞれ示す。インプラント200は、
図1A~
図1Eに関連して説明した特徴のうちの1つまたは複数もしくはすべてを含んでもよい。インプラント200は、ギャップ高さ/ギャップ長の比が異なるなど、インプラント100と比較して異なる寸法を有していてもよい。例えば、ベースラインギャップ高さghは、ベースラインギャップ長glと同様であってもよい(例えば、ベースラインギャップ長の95%~100%であってもよい)。
【0060】
インプラント100,200は、生体(例えば人体、または、例えば動物の体)であり得る患者への挿入に適した任意のタイプのインプラントであってよい。インプラント100,200は、骨組織用の骨格であってもよいし、または、人体または動物の体の任意の軟組織部分用のインプラントであってもよい。インプラントは、乳房または胸部インプラント(後者は、漏斗胸などの胸筋奇形の治療のための用途であってもよい)、または身体の他の部分、例えば臀部(尻としても知られる)、ふくらはぎ、頬などの顔の部分、または精巣インプラントであるかもしれない。この文脈で、漏斗胸のような胸筋奇形は、男性と女性の両方に影響を及ぼす可能性があり、したがって、男性と女性の両方の対象の漏斗胸は、両方とも本発明のインプラントによって治療できることに留意されたい。上記に沿って、本発明のインプラントは、再構築または増強されるべき組織にのみ依存して、任意の適切な形態を採用することができる。インプラントは、例えば、米国特許第10,004,585号に記載されているような臀部インプラントの形態を有してもよい。必要とされるインプラントの種類に応じて、インプラント100,200の幾何学的形状(例えば、インプラントのサイズおよび/または形状)は、インプラントに要求される基準を満たすように調整され得る。
【0061】
図3Aは、乳房インプラントとして使用するのに適したインプラント300の斜視図を示す。インプラント300は、
図1A~
図2Bに関連して説明されたインプラントの特徴のうちの1つまたは複数もしくは全てを含むことができる。インプラント300は、乳房インプラントに関して説明されているが、このようなインプラントは、胸部、臀部、ふくらはぎ、または頬などの顔の部分などの、身体の他の部分に対しても有効である(上記参照)。
【0062】
図3Aに示すように、インプラント300は、3次元構造302を形成する複数のストランド101を含んでいる。3次元構造302は、複数の中空チャネル103を含んでいる。各中空チャネル103は、複数のサイドウォール104を備えている。サイドウォール104は、サイドウォール104の隣接するストランドセグメント105間にギャップ106が形成されるように、交互に配置された、複数のストランドセグメント105と複数のギャップ106とを備えている。複数のギャップ106は、可逆的に拡張可能なギャップである。
【0063】
インプラント300の3次元構造302は、第1の外面領域308と、第2の(異なる、および/または、対向する)外面領域309と、を含んでもよい。外面領域は、インプラント300の最外面、最外レイヤー、および/または、最外輪郭を指す(または、そうであってもよい)ことが理解され得る。最外面および最外輪郭は、1つまたは複数のレイヤーまたは線から形成されてもよい。外面領域は、インプラント300の最外のレイヤー群(例えば、単一の最外レイヤー、または、例えば、最外の複数のレイヤー)を指してもよい(または、そうであってもよい)。外面領域は、インプラント300の外部に面する面を指してもよい。
【0064】
インプラント300の第1の外面領域308は、第1の表面曲率を含んでもよいし、または、有してもよい。インプラント300の第1の外面領域308は、インプラント300における最大の平面上の(または例えば最も平坦な)表面であってもよい。例えば、第1の外面領域308は、インプラントの最も平坦な表面、および/または、最少(または最小)量の曲率を有する表面であってもよい。
図3Aに示すように、インプラント300の第1の外面領域308は、2次元(x-y)デカルト平面に対して実質的に平行であってもよい。代替的に、または必要に応じて、第1の外面領域308の最適な適合平面は、2次元(x-y)デカルト平面に平行であってもよい。
【0065】
第2の外面領域309は、インプラント300によって構築される患者の乳房の形状を表す幾何学的形状(例えば、形状、曲率、サイズ)を有してもよい。インプラント300の第2の外面領域309は、第1の表面曲率とは異なる第2の表面曲率を含んでもよいし、または、有してもよい。第2の表面曲率は、第1の表面曲率よりも大きくてもよい。インプラント300の第2の外面領域309は、第1の外面領域308の周囲317(例えば外周)において、インプラント300の第1の外面領域308に連続(例えば隣接)してもよい。例えば、インプラント300の第2の外面領域309は、第1の外面領域308に接してもよく、第1の外面領域308の周囲317は、第1の外面領域308と第2の外面領域309との間の共有縁(または境界面)であってもよい。さらに、または必要に応じて、第2の外面領域309は、第2の外面領域309に頂点領域318を含んでもよい。インプラントの第2の外面領域309における頂点領域318の場所(または位置)は、インプラント300によって構築される乳房の乳首/乳輪の場所(または位置)に基づいてもよい(および/または一致してもよい)。
【0066】
必要に応じて、1つまたは複数のサイドウォールと、第1の外面領域を表す基準軸(例えば、x軸)と、の間の鋭角の傾斜角度は、90°未満(または例えば60°未満)であってもよい。基準軸は、第1の外面領域108の平面または最適な適合線に基づいてもよい。必要に応じて、または代替的に、1つまたは複数のサイドウォール104と基準軸との間の鋭角の傾斜角度は、約90°であってもよい(例えば
図1A~2Bに示すように、チャネルは垂直なチャネルであってもよい)。複数の中空チャネル103は、5~1000個の中空チャネル(または例えば5~60個のチャネル、または例えば8~20個のチャネル)で構成されてもよい。
【0067】
インプラント300の3次元構造302は、可逆的に圧縮可能な3次元構造302であってもよい。例えば、インプラント300の個々の単位セルは、バネ状の単位セルであってもよい。バネ状の単位セルは、その元の体積の少なくとも80%(または例えば少なくとも70%、または例えば少なくとも60%、または例えば少なくとも50%、または例えば少なくとも30%)まで圧縮可能であってもよい。可逆的に圧縮可能であることにより、各単位セルは、圧縮力が取り除かれた後(同じ周囲圧力および温度であっても)、その元の(静止)体積に回復または戻ることが可能である。可逆的に圧縮可能なバネ状の単位セルは、インプラント300に加えられた圧縮力が取り除かれた後、その元の体積の80%~100%(または例えば95%~100%、または例えば98%~100%)まで回復するように構成されていてもよい。
【0068】
インプラント300の柔らかさは、c値によって表すことができる。c値は、次式で表すことができる。
【数15】
【0069】
F20%は、20%の圧縮における力の値(N)であり、F10%は、10%の圧縮における力の値(N)であり、ε10%は、10%の圧縮における歪み値であり、また、ε20%は、20%の圧縮における歪み値である。インプラント300の柔らかさを表すc値は、例えば、20N~190N(または例えば20N~150N、または例えば30N~100N、または例えば30N~40N)であってもよい。
【0070】
インプラント300の材料密度ρは、0.1gr/cm3~2gr/cm3(または例えば0.1gr/cm3~1gr/cm3、または例えば0.1gr/cm3~0.5gr/cm3)であってもよい。材料密度は、インプラント300の重量を、患者への挿入前のインプラントの静止体積で割ることによって決定することができる。比較すると、シリコーンの材料密度は、0.98gr/cm3であり、また生理食塩水の材料密度は、1.005gr/cm3である。したがって、インプラント300の重量は、ミリリットル単位のその体積値の10%~20%(または例えば10%~15%)であってよく、また、従来の非多孔性シリコーン/生理食塩水インプラント(そのグラム単位の重量が、そのミリリットル単位の体積値とほぼ同じ)の10%~20%(または例えば10%~15%)であってもよい。一例として、250mlの体積を有するインプラント300は、25gの重さであるのに対し、250mlの体積を有する従来のシリコーンインプラントは、240gの重さであり、また250mlの体積を有する生理食塩水インプラントは、250gの重さである。これらの特徴の1つまたは複数または全てにより、軽量の骨格を有するインプラントがもたらされ、従来のインプラントと比較して、90%の軽量化を達成することができる。
【0071】
インプラント300の複数のストランド101は、表面分解性ポリマーなどのポリマー材料から形成されてもよい。表面分解性ポリマー材料は、バルク分解とは対照的に、主に表面分解メカニズムを介して分解するポリマー材料を含んでもよいし、または、かかるポリマー材料であってもよい。複数のストランド101は、生分解性材料を含んでもよいし、生分解性材料から形成されてもよいし、生分解性材料から作られてもよい。生分解性材料は、ポリカプロラクトン、ポリ(1,3-トリメチレンカーボネート)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(1,8-オクタンジオール-コ-クエン酸)、ポリ(1,10-デカンジオール-コ-D,L-乳酸)、ポリ(クエン酸ジオール)、ポリ(グリコリド-コ-カプロラクトン)、ポリ(1,3-トリメチレンカーボネート-コ-ラクチド)、ポリ(1,3-トリメチレンカーボネート-コ-カプロラクトン)、および、これらの材料の少なくとも2つのコポリマー、からなる群から選択されてもよい。必要に応じて、生分解性材料は、ポリカプロラクトンであってもよい。必要に応じて、生分解性材料は、ポリカプロラクトンと、ポリ-トリメチレンカーボネートまたはポリラクチドのいずれかとのコポリマーであってもよい。代替的に、複数のストランド101は、ナイロンなどの非分解性材料を含んでもよい。複数のストランド101の厚さ(または直径)は、ストランドが柔軟であるように選択されてもよい。バルクPCLは、例えば、216MPaの弾性係数(E)、10MPaの引張強度、および26.5MPaの破断応力を有していてもよい。
【0072】
上記式(10)は、本明細書に記載のインプラントの設計に適用することができる。R/gl2は、インプラントを形成するための材料の材料特性(ヤング率および降伏強度など)、および、外科医が使用する針のサイズなどの、外科的要件に基づく所望の撓み能力δに基づいて選択することができる。
【0073】
例えば、インプラント300を形成するために用いられる材料は、270MPaの弾性係数、および、12.5MPaの降伏強度σyieldを有していてよい。使用される針は、直径が2mmであってもよい。
【0074】
横方向のオフセット、レイヤー厚、半径、およびギャップ長など、インプラントに関連する幾何学的特性が選択されてもよい。例えば、横方向のオフセットは1mmであってもよく、レイヤー厚ltは0.2mmであってもよく、半径Rは0.175mmであってもよく、またギャップ長glは6mmであってもよい。
【0075】
上記式(11)を用いて、ギャップ高さの値を計算または決定することができ、ここで
【数16】
である。
【0076】
上記式(8)を用いて、撓み能力の値を計算または決定することができ、ここで、
【数17】
である。
【0077】
上記式(10)を用いて、R/gl
2の上限を計算すると、
【数18】
である。
R/gl
2=0.175/6
2=0.004861であり、これは上限σ
yield/12Eδ=0.005979より小さい。
【0078】
さらに、または必要に応じて、インプラント300は、インプラント300の外面領域に(例えば、第2の外面領域309に)配置された複数の輪郭形成ストランド319をさらに含んでもよい。
【0079】
図3Bおよび
図3Cは、複数の輪郭形成ストランド319および表面フィラー(filler)ストランド322をさらに含むインプラント300の斜視側面図および斜視上面図を示す。
【0080】
図3Bおよび
図3Cに示すように、インプラント300を形成する複数のストランドは、複数の輪郭形成ストランド319および表面フィラーストランド322を含んでもよい。各輪郭形成ストランド319は、第2の外面領域309の周りに半輪郭を形成することができる。輪郭形成ストランド319の半輪郭は、レイヤーの周囲において、部分的にのみ(例えば30%~80%、または例えば40%~70%、または例えば50%~70%)延在してもよい。複数の輪郭形成ストランド319は、第1の外面領域308と頂点領域318との間に連続して(例えば連続的に)配置されてもよい。複数の輪郭形成ストランド319は、さらに、隣接する輪郭形成ストランド319が可逆的に拡張可能なギャップ106によって分離されるように配置されてもよい。例えば、可逆的に拡張可能な輪郭形成ギャップ106は、複数の輪郭形成ストランド319の隣接するストランドセグメント間に形成されてもよい。
【0081】
図3Dに示すように、インプラント300は、3次元構造302の最外面に形成された表面フィラーストランド322をさらに含んでもよい。必要に応じて、複数の表面フィラーストランド322は、第2の外面領域において、コラム323(またはストリップ(strips))に配置されてもよい。各表面フィラーコラム323は、複数の表面フィラーストランド322および複数の可逆的に拡張可能な表面ギャップを含んでもよい。各可逆的に拡張可能な表面ギャップは、コラム323の隣接する表面フィラーストランド322間に形成されてもよい。表面フィラーコラム323は、オープンコラム324に隣接して配置されてもよい。オープンコラムは、表面フィラー部分を含まない表面のコラムを含んでもよい(または表面のコラムであってもよい)。必要に応じて、複数の表面フィラーコラム323と、複数のオープンコラム324とは、外面領域(例えば、第2の外面領域309)において交互に配置されてもよい。必要に応じて、複数の表面フィラーコラム323と、複数のオープンコラム324とは、外面領域において十字形に配置されてもよい。
【0082】
複数の中空チャネル103は、インプラント300のバルク(bulk)を通って延びていてもよい。隣接するストランドセグメントは、可逆的に拡張可能なギャップによって分離されてもよい。
【0083】
インプラント300は、乳房患者の領域に挿入することができる。患者へのインプラント300の挿入の後、脂肪注入を行う必要がある場合がある。脂肪注入が必要な場合があるのは、インプラント内部で「再生」する再生組織が、天然の乳房組織よりも硬いことが観察されているためである。したがって、最終的な状態を天然の乳房組織と同じくらい柔らかくするために、例えば脂肪吸引によって適当な割合の脂肪を集め、特定のカニューレ(または針)を使用してインプラント300に注入することができる。インプラント300の可逆的に拡張可能なギャップ106により、注入手順の問題点(例えば、構造を数回穿孔してストランドを損傷し、インプラント300の全体構造の完全性に影響を与える注入)を回避することができる。
【0084】
インプラント300は、インプラント手術のために、インプラントを通して針を誘導するのに使用するためのインプラントであってもよい。インプラント300は、3次元構造302のバルク内に、細長い対象物(脂肪注入用の針など)を受け入れるように構成されていてもよい。細長い対象物は、インプラントのギャップ106のベースラインギャップ高さghよりも大きな直径を有していてもよい。例えば、細長い対象物の直径は、インプラントのギャップ106のベースラインギャップ高さghの110%~250%倍であってもよい。さらに、細長い対象物は、中空チャネルの幅の少なくとも2倍(または5倍、または10倍)よりも大きい長さを有していてもよい。複数のストランドは、ギャップによって受け入れられる対象物によりギャップ106の高さが増加するとともに、対象物がギャップ106から取り除かれることでギャップ106の高さが減少するように構成されていてもよい。このような針またはカニューレは、少なくとも0.8mm(または例えば少なくとも2mm、または例えば少なくとも4mm、または例えば0.8mm~4mm、または例えば0.8mm~3mm)の直径、および、少なくとも2cmの長さを有してもよい。1mm未満のベースラインギャップ高さを有するインプラント300の全てのギャップの80%以上(または例えば90%以上、または例えば全て)は、可逆的に拡張可能なギャップであってもよい。
【0085】
図4Aは、インプラント100,200,300の可逆的に拡張可能なギャップを有しないインプラントを示す。
【0086】
可逆的に拡張可能なギャップ106を有するインプラント100,200,300とは異なり、
図4Aのインプラントは、外科医が脂肪注入針を正確な位置に挿入することを必要とする。例えば、患者にインプラントを挿入した後、外科医はインプラントの最大の開口部を視覚的に見つけなければならない。これら最大の開口部は、チャネル端部を規定するチャネル孔であってもよく、その孔径面積は、ギャップ面積よりも少なくとも2倍大きくてもよい。次に、外科医は、針を孔の中に、正確に且つチャネル長に沿って(例えば、チャネルの長手方向軸に沿って)挿入しなければならない。外科医が、チャネル端部を目視で確認することができない場合、またはチャネル長に沿っていない角度で針をインプラントに挿入する場合、またはチャネルのサイドウォールに針を挿入する場合には、針からの注入によって、インプラントのストランドが損傷する可能性および/またはインプラントの3次元構造が損傷する可能性がある。
【0087】
図4Bは、インプラント300に、脂肪注入用のカニューレを挿入するイメージ図を示す。インプラント300の場合、外科医が、インプラントのどこ(例えば任意の表面)からでも、インプラント300に針を盲目的に挿入することが可能である。可逆的に拡張可能なギャップ106を有するインプラント300により、インプラントの第2の外面領域309において、任意の方向から乳房インプラントに針を挿入することができ、および/または、インプラント300のバルク内の任意のサイドウォール104を通して針を挿入することができる。針は、最初に、インプラント300の挿入領域から、インプラント300のバルク内部構造を通して挿入されてもよい。挿入領域は、インプラントにおけるランダムに選択された領域であってもよい。針は、針がいくつかの(例えば複数の)中空チャネル103を同時に横切りおよび/または同時に入り、且つ、いくつかの(例えば複数の)サイドウォールを貫通するように挿入されてもよい。換言すると、針は、複数の中空チャネル103を通って同時に挿入されてもよい。その後、針は、複数の引き抜き工程に亘る段階的機能にて、インプラント300から引き抜くことができる。各引き抜き工程の後、脂肪が針からインプラントに注入され得る。針の引き抜きと脂肪注入との交互のプロセスは、針がインプラントから完全に引き抜かれるまで、繰り返される。ブラインド注射から始まるこのプロセスは、複数のランダムな挿入領域から繰り返し実施されてもよい。このプロセスを実施する回数(例えば少なくとも20回、または例えば少なくとも30回、または例えば少なくとも60回)は、必要な注射の回数および/または必要な脂肪注入量に基づいてもよい。手術中に針を頻繁に挿入する必要がある場合がある。インプラント300は、針を挿入する前に外科医が各チャネルおよび開口部を視覚的に見つける必要がなくなり、代わりにブラインド挿入を実施することができるので、外科手術プロセスを迅速化することを可能にする。さらに、インプラント300は、カニューレが複数のサイドウォール104およびチャネル103を同時に貫通することを可能にする。これにより、外科手術プロセスを迅速化することもできる。さらに、ギャップ106がカニューレの進入を収容することができるので、インプラント300もカニューレも損傷を受けることはない。したがって、挿入されたインプラント300は、可逆的に拡張可能なギャップを実装していないインプラント300と比較して、改善された構造的完全性を有する。
【0088】
図4Cは、マルチインジェクション試験(multi-injections testing)のための挿入可能な領域の一例を示す。特定の数の注射(例えば60回の注射)を、3つの広い注射部位(431,432,433)に分割することができる。例えば、各領域に亘って20回の注射を行ってもよい。注射(例えば、針の挿入)は、インプラントの第1の外面領域308に対して任意の角度で針が挿入されるように実施されてもよい。例えば、針は、平坦な平面で挿入されてもよいし、または、第1の外面領域308に対して傾斜角若しくは偏角で挿入されてもよい。
【0089】
複数のストランド101は、インプラントが静止しているとき、および、インプラント300が圧縮されているときでも(例えば、インプラント300が体内にあるときでも)、インプラント300のギャップ106が可逆的に拡張可能であるように構成されてもよい。圧縮中のインプラントは、その静止体積の90%未満(または例えば70%未満、または例えば60%未満、または例えば50%未満、または例えば30%未満)に圧縮されているインプラントであってもよい。ギャップ106の高さは、ギャップ106によって受け入れられる対象物により、ベースラインギャップ高さghおよび/または平均ストランド直径dの110%より大きい値(または例えば150%より大きい値、または例えば200%より大きい値、または例えば120%~250%の値、または例えば120%~200%の値)まで増加してもよい。可逆的に拡張可能なギャップ106は、対象物がギャップ106から取り除かれることで、その元のギャップ高さおよび/または平均ストランド直径dの少なくとも110%(または例えば少なくとも105%、または例えば100%、または例えば80%~115%、または例えば90%~110%)に回復または復帰(または減少)するように構成されてもよい。
【0090】
針の各挿入に対応するために、複数のストランド101は、少なくとも2つ(または例えば2つ以上、または例えば3つ以上、または例えば5つ以上)の連続する中空チャネルの可逆的に拡張可能なギャップ106が、少なくとも2つの連続する中空チャネルのギャップによって同時に受け入れられる対象物により、同時に拡張可能であるように配置されてもよい。複数のストランド101は、インプラント300の少なくとも2つ(または例えば2つ以上、または例えば3つ以上、または例えば5つ以上)の異なるサイドウォール104の可逆的に拡張可能なギャップ106が、少なくとも2つ(または例えば2つ以上、または例えば3つ以上、または例えば5つ以上)の異なるサイドウォールのギャップによって同時に受け入れられる対象物により、同時に拡張可能であるように配置されてもよい。ギャップ106の拡張は、インプラント300の全体的な静止体積(または構築体積)を増加または変化させなくても起こり得る。換言すると、可逆的に拡張可能なギャップは、インプラント300の全体的な体積が一定のまま、または圧縮下でも、拡張するように構成されてもよい。
【0091】
針を挿入する外科医は、構造を損傷することなく、インプラントのバルクを貫通させることができるはずである。例えば、ギャップを取り囲むフィラメントは、曲がったり、伸びたり、邪魔にならないように移動したりしても、壊れない。さらに、外科医は、ギャップを通して針を挿入するために、50N以下(または例えば2N~50N、または例えば5N~20N、または例えば5N~10N)の力を及ぼせばよい。例えば、注射針から10Nの力を受けると、フィラメントは可逆的に変形して(長くなり、または、伸び、または、動き)針がギャップを通過できるようになる。この伸長点でフィラメントが破断しないように、材料自体を選択することができる。
【0092】
図4Dは、ステンレス鋼、ポリ乳酸プラスチックPLA、ポリカプロラクトンPCLなど、異なる材料からなるストランドの応力-ひずみ曲線を示している。
【0093】
ステンレス鋼ストランドの破断点は、720MPaの応力下で、32%のひずみとなる場合がある。PLAストランドに40MPaの応力を加えたとき、5%の歪みで破断することがある。PCLストランドの破断点歪み値は460%(50MPa未満の応力下)であり、ステンレス鋼ストランドの約15倍であり、PLAストランドの約70倍である。PCLは、破断歪みが高いため、大きな変形を受け入れることができ、それは最初の長さの少なくとも4倍は伸びることを意味する。
【0094】
複数のストランドを形成するための材料は、応力-ひずみ線図上で、破断点における歪みが30%よりも大きく、且つ、破断点における応力が250MPa未満である破断点を有するように選択されてもよい。
【0095】
インプラントのストランドの材料は、PCLと同様の応力-ひずみ挙動を示す。例えば、応力-ひずみ線図上の破断点は、30%超え(または例えば100%超え、または例えば200%超え、または例えば300%超え、または例えば400%超え)でもよく、また応力は、50MPa未満、または10MPa~250MPaの間(または例えば10MPa~100MPaの間、または例えば10MPa~50MPaの間、または例えば10~30MPaの間)でもよい。必要に応じて、複数のストランドにおけるストランドの破断点は、30%よりも大きく(または例えば100%超え、または例えば200%超え、または例えば300%超え、または例えば400%超え)てもよく、また対応する応力は、50MPa未満(または例えば10MPa~250MPaの間、または例えば10MPa~100MPaの間、または例えば10MPa~50MPaの間、または例えば10~30MPaの間)でもよい。
【0096】
一例として、隣接する2つのストランド間の距離が0.56mmから1.84mmの間で変化し、且つ、針の直径が2mmの場合、壁への針の貫通中に、PCLは破断点に到達することなく容易に変形することができる。逆に、PLAやステンレス鋼は、そのような変形に耐えられず、針の貫通中に破断点まで到達してしまう。
【0097】
図5Aは、模擬手術後のインプラント300などのインプラントを示す。模擬手術中、インプラント300は豚の体内に挿入された。インプラント300には、盲目的に(ランダムな位置から)脂肪が注入された。除去の際、インプラント300の3次元骨格構造302が脂肪で満たされていること、および、ブラインド(ランダム)注入にもかかわらず、脂肪が均一に分布していることが示された。
【0098】
図5B、
図5Cおよび
図5Dは、ブラインド注入後のインプラント300の画像をそれぞれ示す。
図5Cは、インプラント300に脂肪が均等に分布していることを示す。白色は脂肪、黒色は空気を表す。脂肪注入を受ける前の骨格の寸法および/または機械的特性の変化を評価するために、機械的試験(例えば、引張、圧縮および剪断試験)を実施した。0.4Hzの周波数で11112サイクルの(摩擦による)引張試験を行った結果、寸法(幅、突起および高さ)、柔らかさ(c値)、および、骨格のせん断強度(Fmax)は、依然としてインプラントの仕様範囲内であることが確認された。換言すると、インプラント300の引張強度は損なわれなかった。試験後の柔らかさ指標(これは骨格の完全性を良く表している)を、試験前の結果と比較すると、約10%の減少しか検出されなかった。したがって、骨格は機械的特性において合理的かつ予想される損失を有していたが、骨格の完全性は影響を受けなかった。
【0099】
図6は、本発明のインプラントを形成するための方法600のフローチャートを示す。
【0100】
方法600は、3次元構造を形成するために複数のストランドを形成する工程620を含む。複数のストランドは、降伏強度(σyield)および弾性係数(E)を有する材料から形成される。3次元構造は、複数の中空チャネルを含んでいる。各中空チャネルは、複数のサイドウォールを備えている。サイドウォールは、複数のギャップと、複数のストランドの複数の連続するストランドセグメントと、を備えている。複数のストランドセグメントと複数のギャップとは、サイドウォールの隣接するストランドセグメント間にギャップが形成されるように、交互に配置され、ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成される。複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップである。可逆的に拡張可能なギャップの隣接するストランドセグメントは、隣接するストランドセグメント間で増加したギャップ高さが獲得されるように、ギャップによって受け入れられる対象物に対応して、撓み能力(δ)を有している。ギャップから取り除かれる対象物に対応して、ギャップは静止ギャップ高さに向かって戻る。複数のストランドの半径(R)および複数のギャップのそれぞれのギャップ長(gl)は、材料の降伏強度および弾性係数に基づく。
【0101】
複数のストランドを形成する工程620は、複数のレイヤーを順次印刷することを含んでもよく、レイヤーは2次元単位セルの格子配列を含む。複数のレイヤーは、複数のレイヤーの連続するレイヤーの整列された単位セルが、複数のチャネルの中空チャネルを形成するように配置されてもよい。インプラントは、3次元(3D)印刷された骨格構造を形成するために、レイヤーを順次形成すること(または例えば溶融堆積モデリングによる3D印刷)によって形成されてもよい。印刷は、連続するレイヤーの順次配列が印刷方向に形成されるように、印刷方向(例えばz方向)にレイヤーごとに実行されてもよい。互いの上にレイヤーを順次配列(印刷によって)することによって、複数のレイヤーの縁(または周囲)が、形成されるインプラントの形状および/または幾何学的形状を規定する、3次元構造の形成がもたらされ得る。代替的に、複数のストランドは、選択的レーザー焼結(SLS)などの、任意の3次元印刷法によって形成されてもよい。必要に応じて、3次元構造は、3次元以上の動きに基づく印刷プロセス、例えば、5次元(5D)印刷プロセス、または6次元(6D)印刷プロセスによって形成されてもよい。
【0102】
方法600は、必要に応じて、(例えば、複数のストランドを形成する工程620の前に)以下のパラメータの少なくとも1つを決定する工程610をさらに含んでもよい。決定されるパラメータは、形成される3次元構造の中空チャネルの数、形成される3次元構造のレイヤーの数、および、形成される単位セルの寸法などであってもよい。さらに、決定されるパラメータは、レイヤー内の隣接するストランド間のギャップ長gl、および、チャネルのサイドウォール内の隣接するストランド間のギャップのギャップ高さghであってもよい。さらに、決定されるパラメータは、形成される複数のストランドの直径dを含んでもよい。
【0103】
パラメータを決定する工程610は、可逆的に拡張可能なギャップによって受け入れられる対象物に基づいて、可逆的に拡張可能なギャップの撓み能力(δ)を決定することを含んでもよい。パラメータを決定する工程610は、形成される複数のストランドの材料特性を決定することをさらに含んでもよく、材料特性は、材料の降伏強度(σyield)およびヤング率(E)を含む。パラメータを決定する工程610は、形成される複数のストランドセグメントのそれぞれのストランドセグメントの半径(R)およびギャップ長(gl)を決定することをさらに含んでもよい。パラメータを決定する工程610は、形成される3次元構造の中空チャネルの数、形成される3次元構造のレイヤーの数、および/または、単位セルの寸法を決定することをさらに含んでもよい。
【0104】
可逆的に拡張可能なギャップを含む3次元構造が形成されるようにパラメータを決定した後に、複数のストランドが形成されてもよい。例えば、R/gl
2≦σ
yield/12Eδとなるように、パラメータが決定されてもよい。形成される3次元構造は、決定された中空チャネルの数、決定されたレイヤーの数、決定された単位セルの寸法、レイヤー内の隣接するストランド間の決定されたギャップ長gl、チャネルのサイドウォール内の隣接するストランド間の決定されたギャップ高さgh、複数のストランドの決定された直径のうちの、少なくとも1つのパラメータを含むことができる。方法600によって形成される3次元構造は、
図1A~
図5Cに関連して説明したインプラント100,200,300のいずれかの3次元構造であってもよい。
【0105】
図7A~
図7Gは、振動する(例えば起伏のある、または例えばジグザグ、または正弦波)サイドウォールを有するチャネルを含むインプラント700A~700Fの例を示す。インプラント700A~700Fは、
図1A~
図6に関連して既に説明した特徴の1つまたは複数または全てを含むことができる。例えば、インプラント700A~700Fは、
図1A~
図6のインプラントに関連して説明された、可逆的に拡張可能なギャップを含んでもよい。
【0106】
図7Aは、患者への挿入のための3次元軟組織インプラント700Aを示す。インプラント700Aは、3次元構造を形成する複数のストランド101を含んでいる。3次元構造は、複数の中空チャネル103を含んでいる。各中空チャネル103は、複数の交差するサイドウォール134を備えている。各サイドウォール134は、交互に配置された、複数のストランドセグメント105と複数のギャップ106とを備えている。中空チャネル103の少なくとも1つのサイドウォール134は、起伏のあるもの(例えば、振動する、ジグザグおよび/または正弦波サイドウォール)である。必要に応じて、各中空チャネル103は、第1の起伏のあるサイドウォール134と、第1の起伏のあるサイドウォール134とは反対側に面する、第2の起伏のあるサイドウォール134と、を含んでもよい。
【0107】
少なくとも1つの起伏のあるサイドウォールを有する中空チャネル103は、起伏のある(例えば、ジグザグおよび/または正弦波)チャネルと呼ぶことができる。或る(または各)ジグザグ(または正弦波)チャネル103は、チャネルの第1の端部137(近位端)とチャネル103の第2の端部138(遠位端)との間で、チャネルがジグザグになるように、チャネルの少なくとも2つの対向するサイドウォールが互いに対して配置されているチャネルであってもよい。例えば、ジグザグチャネル103は、第1のジグザグサイドウォール134と、第1のジグザグサイドウォールと対向する第2のジグザグサイドウォール134と、を有してもよい。ジグザグチャネルの各ジグザグサイドウォール134は、z方向に連続して配置された複数のストランド101を備えてもよい。複数のストランド101は、互いに実質的に平行であり、z方向に対して垂直であってもよい。ジグザグサイドウォール134の連続的に配置されたストランド101は、互いに対して横方向のオフセットを有するように、且つ、サイドウォール134に沿ってピーク135およびトラフ136のパターンを形成するように配置されてもよい。起伏のあるサイドウォールの複数のストランドセグメントは、インプラントの異なるレイヤーに属する。起伏のあるサイドウォールの隣接するストランドセグメントは、ギャップ(例えば、
図1~
図6のいずれかに記載された可逆的に拡張可能なギャップ)によって分離されているとともに、起伏のあるサイドウォールの複数のピークおよび複数のトラフのパターンを形成するように、互いに対して横方向のオフセットを有している。
【0108】
各中空チャネルは、互いに連続する少なくとも3つのサイドウォールによって形成される。起伏のあるサイドウォールのピークおよびトラフは、サイドウォールの複数のストランドセグメントの隣接するストランドセグメント間の横方向のオフセットによって形成される。ピークとトラフとは、チャネルの第1の遠位端とチャネルの第2の遠位端との間に交互に配置される。
【0109】
起伏のある部分(例えば、ジグザグまたは正弦波部分)は、チャネル103の第1の端部137からチャネル103の第2の端部138まで(および/または、チャネル103の第1の端部137とチャネル103の第2の端部138との間に)交互に配置された、複数のピーク(最大)135およびトラフ(最小)136を有する部分として理解することも可能であろう。これらのピーク135およびトラフ136は、サイドウォールを通る(例えば、z方向を通る)垂直断面から見ることができる。このような垂直断面は、ストランド方向に垂直であってよく、またチャネル長を通る断面および/またはチャネル長に平行な断面であってもよい。
【0110】
ピーク135(および/またはトラフ136)は、角度θ(例えばθtまたはθp)が、ジグザグサイドウォール134における、第1の複数の連続するストランド745と、直接に隣接する第2の複数の連続するストランド746と、の間に形成されるように配置されているジグザグサイドウォール134のストランドから形成されてもよい。角度θtは、起伏のある部分のトラフにおいて、第1の複数の連続するストランド745と、直接に隣接する第2の複数の連続するストランド746との間に形成される角度であってもよく、また角度θpは、起伏のある部分のピークにおいて、第2の複数の連続するストランド746と、直接に隣接する(第3の)第2の複数の連続するストランドとの間に形成される角度であってもよい。起伏のある部分は、θtおよび/またはθpが180°未満である部分であってもよい。これに対して、真っ直ぐなサイドウォールは、チャネル全長に沿ってθが180°であるものであってもよい。
【0111】
チャネル103の起伏のある部分は、180°未満である少なくとも1つのθtおよび/またはθpの角度を含んでもよい。必要に応じて、ジグザグチャネル103の起伏のある部分は、1~1000(または例えば2~50、または例えば2~25)のピークおよびトラフを含んでもよい。
【0112】
図7Aは、インプラント700Aの一例を示す。
図7Aは、インプラント700Aの3次元斜視断面図(上の画像)および2次元断面図(下の画像)を含む。インプラント700Aは、少なくとも1つの起伏のあるサイドウォール部分を含み、起伏のある部分はジグザグ部分である。
【0113】
図7Aの例では、第1のジグザグサイドウォール部分134および第2のジグザグサイドウォール部分134の幾何学的形状は、製造上の差異を無視して、互いに依存する(または例えば同一の、または例えば互いに類似する)ものであってもよい。「類似」という用語の使用は、第1のジグザグサイドウォール部分134および第2のジグザグサイドウォール部分134(および/またはジグザグ長手方向軸742A)が、互いに同じ特徴の1つ以上または全てを有していてもよいこと、および/または、第1のジグザグサイドウォールおよび第2のジグザグサイドウォールが、第1のジグザグサイドウォール134および第2のジグザグサイドウォール134の少なくとも一方のチャネル長の80%以上(または例えば90%以上、または例えば95%以上、または例えば100%)に亘って、同一または類似の幾何学的形状または特徴を有してよいことを意味すると理解され得る。そのような特徴の一つは、チャネル長に沿ったピーク135およびトラフ136の数であってもよい。別のそのような特徴は、ピークと直接に隣接するトラフとの間の垂直高さである、ピーク-トラフ高さ(peak-to-trough height)であってもよい。別のそのような特徴は、直接に連続するピークの間の、ピーク-ピーク幅(peak-to-peak width)であってもよい。別のそのような特徴は、直接に連続するトラフの間の、トラフ-トラフ幅(trough-to-trough width)であってもよい。
【0114】
例えば、第1のジグザグサイドウォール134と、反対側の第2のジグザグサイドウォール134とは、ピーク135およびトラフ136の類似のパターンを有してもよい。例えば、第1のサイドウォール部分134のθtおよびθpの配置は、第2のサイドウォール部分134のθtおよびθpの配置と同一であってもよい。さらに、または必要に応じて、第1のジグザグサイドウォール部分134および第2のジグザグサイドウォール部分134のピーク135およびトラフ136は、チャネルの長さに沿った、第1のジグザグサイドウォール部分134と第2のジグザグサイドウォール部分134との間の(最小限または最小)直径が一定となるように、互いに対して配置されてもよい。例えば、チャネル長に沿った、第1のジグザグサイドウォールと第2のジグザグサイドウォールとの間の(最小限または最小)直径は、10%未満の偏差を有していてもよい。さらに、ジグザグ長手方向軸742Aは、第1のジグザグサイドウォール134および第2のジグザグサイドウォール134の少なくとも1つ(例えば両方のサイドウォール)と類似の(または同じ)幾何学的形状を有していてもよい。
【0115】
第1のジグザグサイドウォール部分134および第2のジグザグサイドウォール部分134は、第1のジグザグサイドウォール部分134および第2のジグザグサイドウォール部分134の少なくとも一方における、チャネル長の少なくとも80%(または例えば少なくとも90%、または例えば少なくとも95%、または例えば100%)に沿って類似(又は同一)であってよい。例えば、第1のジグザグサイドウォール134の連続するストランド間の相対的な横方向のオフセット(x方向)は、第1のジグザグサイドウォール部分および第2のジグザグサイドウォール部分の少なくとも一方における、チャネル長の少なくとも80%に沿った製造による差異を無視して、第2のジグザグサイドウォール134の連続するストランド間の相対的な横方向のオフセット(x方向)と同じであってもよい。
【0116】
長手方向軸は、チャネル103のチャネル長に沿った複数の中点を含んでもよいし、かかる複数の中点によって規定されてもよい。複数の中点は、チャネル長に沿った、第1のサイドウォールと第2のサイドウォールとの間の(最小限または最小)直径dminの中点であってもよい。第1のジグザグサイドウォールおよび第2のジグザグサイドウォールのピーク135およびトラフ136は、ジグザグ長手方向軸742Aがチャネルの第1の端部とチャネルの第2の端部との間で延びるように、互いに対して配置されてもよい。ジグザグ長手方向軸742Aは、第1のジグザグサイドウォールおよび第2のジグザグサイドウォールと同様のパターンを有していてもよい。
【0117】
図7Bは、さらなるインプラント700Bの一例を示す。
図7Bは、インプラント700Bの3次元斜視断面図(上の画像)および2次元断面図(下の画像)を含む。インプラント700Bは、インプラント700Aと同様であってもよく、またインプラント700Aの特徴の1つまたは複数または全てを含んでもよい。しかしながら、インプラント700Bの場合、第2のサイドウォール部分134は、長手方向軸742Bに関して、第1、第2のサイドウォール部分134の鏡像であってもよい。
【0118】
図7Cは、さらなるインプラント700Cの一例を示す。
図7Cは、インプラント700Cの3次元斜視断面図(上の画像)および2次元断面図(下の画像)を含む。インプラント700Cは、インプラント700Aと同様であってもよく、またインプラント700Aの特徴の1つまたは複数または全てを含んでもよい。しかしながら、インプラント700Cの場合、チャネル103の起伏のある部分は、ジグザグではなく正弦波である。
【0119】
正弦波サイドウォール部分において、第1の複数の連続するストランド745に沿った接線は、変化する接線(例えば徐々に変化する、例えば徐々に減少する)であってよく、また第2の複数の連続するストランド746に沿った接線も、変化する接線(例えば徐々に変化する、例えば徐々に増加する)であってよい。ジグザグサイドウォール部分において、第1の複数の連続するストランド745に沿った接線は、一定の接線(例えば固定接線値、例えば正の接線)であってよく、また第2の複数の連続するストランド746に沿った接線も、一定の接線(例えば固定接線値、例えば負の接線)であってよい。
【0120】
図7Dは、さらなるインプラント700Dの一例を示す。
図7Dは、インプラント700Dの3次元透視断面(上の画像)および2次元断面(下の画像)を含む。インプラント700Dは、インプラント700Cと同様であってもよく、またインプラント700Cの特徴の1つまたは複数または全てを含んでもよい。しかしながら、インプラント700Dの場合、第2のサイドウォール部分134は、長手方向軸742Dに関して、第1、第2のサイドウォール部分134の鏡像であってもよい。
【0121】
図7Eは、さらなるインプラント700Eの一例を示す。
図7Eは、インプラント700Eの3次元透視断面(上の画像)および2次元断面(下の画像)を含む。インプラント700Eは、インプラント700A~700Dと同様であってもよく、またインプラントの特徴の1つまたは複数または全てを含んでもよい。
【0122】
インプラント700Eの場合に示すように、起伏のある部分は、ジグザグ部分を含んでもよく、起伏のある部分の角度θ(例えばθtまたはθp)は、サイドウォール134における起伏のある部分内で、互いに異なっていて(または変化して)もよい。角度θを変化させることにより、インプラントの柔らかさが変化してもよい。例えば、θがより小さいインプラントの部分は、θがより大きいインプラントの部分よりも柔らかくてもよい。さらに、または必要に応じて、ピーク-トラフ高さhpt、ピーク-ピーク幅wpp、および/または、トラフ-トラフ幅wttなどの特徴は、サイドウォール134の起伏のある部分内で、変化しても(互いに異なっても)よい。
【0123】
図7A~
図7Gの特徴を互いに組み合わせて、所望の柔らかさおよび弾性を有するインプラントを形成してもよいことが理解されよう。
【0124】
或る(または各)起伏のあるサイドウォールは、ジグザグ部分および正弦波部分の少なくとも1つを含んでもよい。必要に応じて、上記ジグザグ(または正弦波)部分は、チャネル103の全長に亘って延びてもよい(またはチャネル103の全長を含んでもよい)。代替的に、上記ジグザグ(または正弦波)部分は、チャネル103の全長のうち選択された部分(例えば比率、または小部分、またはセグメント)に亘って延びてもよい(または選択された部分を含んでもよい)。いくつかの例では、これらのパラメータ(角度θt、θp、hpt、wpp、wtt)の1つまたは複数または全ては、起伏のある部分全体に亘って(または起伏のある部分内で)、一定(例えば同じ)であってよい。他の例では、これらのパラメータは、起伏のある部分全体に亘って(または起伏のある部分内で)、変化してもよい。いくつかの例では、起伏のある部分は、サイドウォール134の全体(例えば全部)の長さを含んでもよい。いくつかの例では、起伏のある部分は、サイドウォール134全体の10%~90%(または例えば20%~80%、または例えば30%~70%)を含んでもよい。例えば、サイドウォールは、起伏のある部分と直線部分とを含んでもよい。いくつかの例では、サイドウォール134は、ジグザグ部分、正弦波部分および直線部分の任意の数および/または組み合わせを含んでもよい。
【0125】
チャネル103のサイドウォール134(例えば、チャネル103を囲むサイドウォール)は、互いに類似(同じ、または例えば同一)であってもよい。代替的に、または、必要に応じて、それらは、互いに依存していても(例えば、互いの鏡像であっても)よい。代替的に、または、必要に応じて、それらは互いに異なっていてもよい。いくつかの例では、インプラントの全てのサイドウォールが、正弦波サイドウォールであってもよい。他の例では、インプラントの全てのサイドウォールが、ジグザグサイドウォールであってもよい。いくつかの例では、インプラントのサイドウォールは、ジグザグサイドウォールと正弦波サイドウォールとの混合物であってもよい。
【0126】
図7Fは、さらなるインプラント700Fの一例を示す。
図7Fは、インプラント700Fの3次元斜視断面図(上の画像)および2次元断面図(下の画像)を含む。インプラント700Fは、インプラント700Aから700Eと同様であってもよく、またインプラントの特徴の1つまたは複数または全てを含んでもよい。
【0127】
図7Aから
図7Eがz方向と平行に延びるチャネルを示したのに対し、
図7Fに示すように、インプラント700Fは、傾斜したジグザグ(正弦波)チャネルを含んでもよい。
【0128】
傾斜したチャネルでは、長手方向軸742Eと、第1の外面領域を表す基準軸(例えば、x軸またはy軸)と、の間の鋭角の傾斜角度kは、90°未満、または例えば、60°未満であってもよい。
【0129】
図7Gは、さらなるインプラント700Gの一例を示す。
図7Gは、インプラント700Gの3次元斜視断面図(上の画像)および2次元断面図(下の画像)を含む。インプラント700Gは、インプラント700A~700Fと同様であってもよく、インプラントの特徴の1つまたは複数または全てを含んでもよい。
【0130】
図7Gは、フラクタルなジグザグ部分(例えば、ジグザグ部分の中にあるジグザグ部分)を有するサイドウォールを示す。換言すると、第1の複数の連続するストランド745は、滑らかな表面を形成する代わりに、ジグザグ部分を含んでもよい。さらに、または必要に応じて、第2の複数の連続するストランド746は、滑らかな表面または線を形成する代わりに、ジグザグ部分を含んでもよい。
【0131】
図7A~
図7Gのインプラントにおいて、ピークと隣接する近隣トラフとの間における、垂直高さであるピーク-トラフ高さhptおよび、直接に連続するピーク間における、ピーク-ピーク幅wpp(および/またはトラフ-トラフ幅wtt)は、インプラントの最大寸法の1%~99%(または例えば1%~50%、または例えば1%~20%、または例えば1%~5%)であってもよい。インプラントの最大寸法は、x方向、y方向またはz方向におけるインプラントの最大寸法であってもよい。
【0132】
図1A~
図7Gの様々な実施形態に関して説明した特徴は、互いに組み合わせてもよいことが理解されよう。本発明は、以下の項目によってさらに特徴付けられる。
【0133】
項目1:患者への挿入のための3次元インプラント。インプラントが、3次元構造を形成する複数のストランドを含んでいる。3次元構造が複数の中空チャネルを含んでいる。各中空チャネルが複数のサイドウォールを備えている。サイドウォールが、サイドウォールの隣接するストランドセグメント間にギャップが形成されるように交互に配置された、複数のストランドセグメントと複数のギャップとを備えている。複数のギャップが可逆的に拡張可能なギャップである。
【0134】
項目2:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さの110%よりも大きく拡張可能な項目1に記載のインプラント。
【0135】
項目3:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さに対して拡張可能であり、ベースラインギャップ高さが、インプラントが静止しているときのギャップの最小高さである、項目1または2に記載のインプラント。
【0136】
項目4:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さに対して拡張可能である、項目1~3のいずれか1つに記載のインプラント。
【0137】
項目5:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さに対して拡張可能であり、ギャップのベースラインギャップ高さが、0.1mmと2mmとの間にある、項目1~4のいずれか1つに記載のインプラント。
【0138】
項目6:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さに対して拡張可能であり、ベースラインギャップギャップ長がベースラインギャップ高さよりも少なくとも2倍大きい、項目1~5のいずれか1つに記載のインプラント。
【0139】
項目7:複数のストランドが、インプラントが静止しているとき、および、インプラントが圧縮されているときに、複数のギャップのギャップが可逆的に拡張可能であるように構成されている、項目1~6のいずれか1つに記載のインプラント。
【0140】
項目8:インプラントが、その静止体積の80%未満まで可逆的に圧縮可能である、項目1~7のいずれか1つに記載のインプラント。ここで、静止体積とは、インプラントが引張力および圧縮力から解放されているときのインプラントの体積のことである。
【0141】
項目9:インプラントが、3次元構造のバルク内に細長い対象物を受け入れるように構成されている、項目1~8のいずれか1つに記載のインプラント。
【0142】
項目10:細長い対象物が、可逆的に拡張可能なギャップのベースラインギャップ高さよりも大きい直径を有し、細長い対象物が、中空チャネルの幅の2倍よりも大きい長さを有する、項目9に記載のインプラント。
【0143】
項目11:複数のストランドが、ギャップによって受け入れられる対象物によりギャップの高さが増加するとともに、対象物がギャップから取り除かれることでギャップの高さが減少するように構成されている、項目1~10のいずれか1つに記載のインプラント。ここで、前記対象物は、ギャップのベースラインギャップ高さよりも大きな直径を有する。
【0144】
項目12:ギャップの高さが、ギャップの中点で測定される、ギャップの最小寸法である、項目11に記載のインプラント。
【0145】
項目13:ギャップの高さが、ギャップによって受け入れられる対象物により、ベースラインギャップ高さの110%を超えて増加し、ギャップの高さが、対象物がギャップから取り除かれることで、ベースラインギャップ高さの105%未満に減少する、項目11または12に記載のインプラント。
【0146】
項目14:少なくとも2つの異なるサイドウォールの可逆的に拡張可能なギャップが、少なくとも2つの異なるサイドウォールのギャップによって同時に受け入れられる対象物により、同時に拡張可能であるように、複数のストランドが配置されている、項目11~13のいずれか1つに記載のインプラント。
【0147】
項目15:少なくとも2つの連続する中空チャネルの可逆的に拡張可能なギャップが、少なくとも2つの連続する中空チャネルのギャップによって同時に対象物が受け入れられることによって、同時に拡張可能であるように、複数のストランドが配置されている、項目11~14のいずれか1つに記載のインプラント。
【0148】
項目16:対象物が針である、項目9~15のいずれか1つに記載のインプラント。
【0149】
項目17:針が、少なくとも1mmの直径、および少なくとも2cmの長さを有する、項目16に記載のインプラント。
【0150】
項目18:各中空チャネルが、中空チャネルの長手方向軸に沿って延び、複数のストランドセグメントが、長手方向軸の第1の端部と長手方向軸の第2の端部との間の方向に連続して配置されている、項目1に記載のインプラント。
【0151】
項目19:中空チャネルのサイドウォールを形成する複数の連続するストランドセグメントが、互いに実質的に平行である、項目1~18のいずれか1つに記載のインプラント。
【0152】
項目20:各中空チャネルが、第1の複数の連続するストランドセグメントおよび第1の複数の可逆的に拡張可能なギャップを含む第1のサイドウォールと、第2の複数の連続するストランドセグメントおよび第2の複数の可逆的に拡張可能なギャップを含む第2のサイドウォールと、を少なくとも備え、第2のサイドウォールが第1のサイドウォールに連続していて、第1の複数の連続するストランドセグメントのストランドセグメントと、第2の複数の連続するストランドセグメントのストランドセグメントとが、長手方向軸の第1の端部と長手方向軸の第2の端部との間の方向に、交互に配置されている、項目1~19のいずれか1つに記載のインプラント。
【0153】
項目21:複数の中空チャネルのチャネルが互いに隣接して配置されるとともに、隣接するチャネルが共通のサイドウォールを共有する、項目1~20のいずれか1つに記載のインプラント。
【0154】
項目22:中空チャネルの複数のサイドウォールは、中空チャネルの断面形状が、多角形、三角形、ダイヤモンド形、菱形、正方形、楕円形、正弦波および六角形の形状群からのいずれか1つの形状となるように配置されている、項目1~21のいずれか1つに記載のインプラント。
【0155】
項目23:複数のサイドウォールの全てのサイドウォールの80%以上が、可逆的に拡張可能なギャップを含む、項目1~22のいずれか1つに記載のインプラント。
【0156】
項目24:複数のサイドウォールの全てのギャップの50%以上が、可逆的に拡張可能なギャップである、項目1~23のいずれか1つに記載のインプラント。
【0157】
項目25:複数のストランドにおけるストランドの破断点が、30%よりも大きい歪みと、250MPa未満の対応する応力と、によって規定される、項目1~24のいずれか1つに記載のインプラント。
【0158】
項目26:複数のストランドがポリマー材料からなる、項目1~25のいずれか1つに記載のインプラント。
【0159】
項目27:可撓性ポリマー材料が、以下からなる群である可撓性ポリマー材料群からの少なくとも1つの材料を含む、項目26に記載のインプラント。ポリカプロラクトン、ポリ(1,3-トリメチレンカーボネート)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(1,8-オクタンジオール-コ-クエン酸)、ポリ(1,10-デカンジオール-コ-D,L-乳酸)、ポリ(クエン酸ジオール)、ポリ(グリコリド-コ-カプロラクトン)、ポリ(1,3-トリメチレンカーボネート-コ-ラクチド)、ポリ(1,3-トリメチレンカーボネート-コ-カプロラクトン)およびこれらの少なくとも2つの材料のコポリマー。
【0160】
項目28:複数のストランドのストランド厚さが0.05mmと2mmとの間にある、項目1~27のいずれか1つに記載のインプラント。
【0161】
項目29:複数のストランドが材料体積を構成し、材料体積がインプラントの総インプラント体積の5%~50%である、項目1~28のいずれか1つに記載のインプラント。
【0162】
項目30:複数のサイドウォールが、3次元構造の材料体積の80%以上を構成する、項目29に記載のインプラント。
【0163】
項目31:インプラントが、互いの上に配置されたストランドの複数のレイヤーを備え、ストランドの複数のレイヤーが、3次元構造の単位セルの配列を形成する、項目1~30のいずれか1つに記載のインプラント。
【0164】
項目32:インプラントの外面領域に配置される1つまたは複数の輪郭形成ストランドをさらに備え、複数の輪郭形成ストランドが、複数の輪郭形成ストランドの隣接するストランドセグメントの間に、複数の可逆的に拡張可能な輪郭形成ギャップが形成されるように配置されている、項目1~31のいずれか1つに記載のインプラント。
【0165】
項目33:インプラント手術のために、インプラントを通して針を誘導するのに使用するための、項目1~32のいずれか1つに記載のインプラント。
【0166】
項目34:インプラントの形成方法。この方法は、3次元構造を形成するために、複数のストランドを形成することを含む。3次元構造は、複数の中空チャネルを備えている。各中空チャネルは、複数のサイドウォールを備えている。サイドウォールは、複数のギャップと、複数のストランドの複数の連続するストランドセグメントと、を備えている。複数のストランドセグメントと複数のギャップとは、サイドウォールの隣接するストランドセグメント間にギャップが形成されるように、交互に配置されている。複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップである。
【0167】
項目35:複数のストランドを形成することが、複数のレイヤーを順次印刷することを含み、レイヤーが2次元単位セルの格子配列を含み、複数のレイヤーの連続するレイヤーの整列した単位セルが、複数のチャネルの中空チャネルを形成するように、複数のレイヤーが配置されている、項目34に記載の方法。
【0168】
項目36:形成されるべき3次元構造の中空チャネルの数、形成されるべき3次元構造のレイヤーの数、および、単位セルの寸法、のうち少なくとも1つを決定する工程と、可逆的に拡張可能なギャップを含む3次元構造が形成されるように、複数のストランドを形成する工程と、をさらに含み、3次元構造が、決定された数の中空チャネ、決定された数のレイヤー、および、決定された単位セルの寸法を含む、項目34または35に記載の方法。
【0169】
項目37:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さの110%よりも大きく拡張可能である、項目34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
項目38:可逆的に拡張可能なギャップが、ベースラインギャップ高さに対して拡張可能であり、ベースラインギャップ高さが、インプラントが静止しているときのギャップの最小高さである、項目34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
項目39:患者に挿入するための3次元軟組織インプラント。インプラントが、複数の中空チャネルを含む3次元構造を形成する複数のストランドを含んでいる。各中空チャネルが、複数のサイドウォールを備えている。各サイドウォールが、交互に配置された複数のストランドセグメントと複数のギャップとを備えている。中空チャネルの少なくとも1つのサイドウォールが、起伏のあるサイドウォールである。
【0172】
項目40:起伏のあるサイドウォールが、ジグザグ部分および正弦波部分の少なくとも一方を含む、項目39に記載のインプラント。
【0173】
項目41:各中空チャネルが、第1の起伏のあるサイドウォールおよび第2の起伏のあるサイドウォールを備える、項目39または40に記載のインプラント。
【0174】
項目42:組織再建または組織増強の方法であって、項目34~38のいずれかに記載の方法によって製造された、項目1~33のいずれか、または、項目39~41のいずれかで規定されたインプラントを、対象の体内に移植することを含む方法。
【0175】
項目43:身体部分の再建を含む、項目42に記載の方法。
【0176】
項目44:身体部分が、乳房、胸部、臀部、ふくらはぎ、および顔の一部からなる群より選択される、項目43に記載の方法。
【0177】
項目45:顔の一部が頬である、項目44に記載の方法。
【0178】
項目46:対象が漏斗胸を有する、項目44に記載の方法。
【0179】
項目47:乳房再建を含む、項目42~44のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
項目48:乳房再建が、乳腺腫瘤摘出術または乳房切除術の後に実施される、項目47に記載の方法。
【0181】
このように、本発明の実施形態を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される発明は、その精神または範囲から逸脱することなく、多くの明白な変形が可能であるので、上記の説明で示された特定の詳細によって限定されるべきではないことが理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への挿入のための、組織再建用または組織増強用の3次元インプラント(100,200,300)であって、
上記インプラントは、3次元構造(102)を形成する複数のストランド(101)を備え、
上記3次元構造(102)は、複数の中空チャネル(103)を含み、
上記各中空チャネル(103)は、複数のサイドウォール(104)を備え、
上記サイドウォール(104)は、当該サイドウォールにおける隣接するストランドセグメント(105)の間にギャップ(106)が形成されるように、交互に配置された、複数のストランドセグメント(105)と複数のギャップ(106)とを備え、
上記ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成され、
上記複数のギャップ(106)は、可逆的に拡張可能なギャップであり、
可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、
上記隣接するストランドセグメントそれぞれに撓み(δ)を引き起こす当該ギャップによって受け入れられる対象物(155)により増加し、
上記可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、上記対象物が当該ギャップから取り除かれることで減少し、
上記複数のストランド(101)は、降伏強度(σ
yield)および弾性係数(E)を有する材料から形成され、
各ストランド(101)が、長さおよび断面直径を有し、
可逆的に拡張可能なギャップの上記ギャップ長(gl)の二乗に対する、上記ストランドセグメント(105)の半径(R)の比が、上記材料の上記降伏強度(σ
yield
)、上記材料の上記弾性係数(E)、および、上記ギャップ(106)のストランドセグメント(105)の撓み能力(δ)に基づいており、
上記撓み能力(δ)が、上記ギャップへの上記対象物の上記挿入によって引き起こされる、上記隣接するストランドセグメントの上記撓みであり、
可逆的に拡張可能なギャップ(106)の上記ギャップ長(gl)の二乗に対する、上記ストランドセグメント(105)の上記半径(R)の比が、下記式で表され、δは上記ギャップのストランドセグメントの撓み能力を表すことを特徴とするインプラント。
【数1】
【請求項2】
上記請求項
1に記載のインプラントにおいて、
可逆的に拡張可能なギャップ(106)の上記ギャップ長(gl)の
上記二乗に対する、上記
ストランドセグメント(105)の上記半径(R)の
上記比が、上記材料の上記降伏強度(σ
yield)と、上記弾性係数(E)と上記ギャップ(106)のストランドセグメント(105)の撓み能力(δ)との積との間の比に比例することを特徴とするインプラント。
【請求項3】
上記請求項1
または2に記載のインプラントにおいて、
上記可逆的に拡張可能なギャップ(106)の上記ストランドセグメントの上記撓み能力(δ)は、上記ギャップの上記静止ギャップ高さ(gh)の0.05倍と0.75倍との間にあることを特徴とするインプラント。
【請求項4】
上記請求項1から
3のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
可逆的に拡張可能なギャップ(106)は、
上記静止ギャップ高さに対して拡張可能であり、
上記
静止ギャップ高さは、上記インプラントが静止しているときの
、上記隣接するストランドセグメント間の最小限または最小の高さであることを特徴とするインプラント。
【請求項5】
上記請求項1から
4のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数の中空チャネル(103)のチャネルが、互いに隣接して配置され、
隣接するチャネルが共通のサイドウォールを共有することを特徴とするインプラント。
【請求項6】
上記請求項1から
5のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のサイドウォールの全ての上記サイドウォール(104)の80%以上が、上記可逆的に拡張可能なギャップ(106)を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項7】
上記請求項1から
6のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のサイドウォール(104)の全てのギャップの50%以上が、可逆的に拡張可能なギャップ(106)であることを特徴とするインプラント。
【請求項8】
上記請求項1から
7のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のストランドを形成するための上記材料は、応力-ひずみ線図上に破断点を有し、
上記破断点での歪みが30%よりも大きく、且つ、当該破断点での応力が250MPa未満であることを特徴とするインプラント。
【請求項9】
上記請求項1から
8のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数のストランド(101)は、材料体積を含み、
上記材料体積は、上記インプラントの総インプラント体積の5%~50%であることを特徴とするインプラント。
【請求項10】
上記請求項1から
9のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記インプラントの外面領域に配置される1つまたは複数の輪郭形成ストランド(319)をさらに備え、
上記複数の輪郭形成ストランド(319)は、当該複数の輪郭形成ストランドの隣接するストランドセグメントの間に、複数の可逆的に拡張可能な輪郭形成ギャップが形成されるように配置されていることを特徴とするインプラント。
【請求項11】
上記請求項1から
10のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
上記複数の中空チャネル(103)は、正弦波チャネルおよびジグザグチャネルの少なくとも一方を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項12】
上記請求項1から
11のいずれか1つに記載のインプラントにおいて、
インプラント手術のために、上記インプラントを通して針を誘導するのに使用することを特徴とするインプラント。
【請求項13】
3次元インプラントの形成方法であって、
上記方法は、3次元構造を形成するために、複数のストランドを形成する工程(620)を含み、
上記複数のストランドは、降伏強度(σ
yield)および弾性係数(E)を有する材料から形成され、
上記3次元構造は、複数の中空チャネルを含み、
各中空チャネルは、複数のサイドウォールを備え、
サイドウォールは、複数のギャップおよび上記複数のストランドの複数の連続するストランドセグメントを備えており、
上記複数のストランドセグメントと上記複数のギャップとは、上記サイドウォールにおける隣接するストランドセグメントの間にギャップが形成されるように、交互に配置され、
上記ギャップは、ギャップ長(gl)および静止ギャップ高さ(gh)から構成され、
上記複数のギャップは、可逆的に拡張可能なギャップであり、
可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、
上記隣接するストランドセグメントそれぞれに撓み(δ)を引き起こす当該ギャップによって受け入れられる対象物により増加し、
上記可逆的に拡張可能なギャップの上記高さは、上記対象物が当該ギャップから取り除かれることで減少し、
各ストランド(101)が、長さおよび断面直径を有し、
上記複数のストランドの半径(R)および可逆的に拡張可能なギャップのギャップ長(gl)が、降伏強度(σ
yield)、上記材料の上記弾性係数(E)、および、当該可逆的に拡張可能なギャップを形成する、上記隣接するストランドセグメントの撓み能力δに基づ
くように、上記複数のストランドの上記直径が選択され、
上記撓み能力(δ)が、上記ギャップへの上記対象物の上記挿入によって引き起こされる、上記隣接するストランドセグメントの上記撓みであることを特徴とする3次元インプラントの形成方法。
【請求項14】
上記請求項
13に記載の3次元インプラントの形成方法において、
可逆的に拡張可能なギャップによって受け入れられる対象物に基づいて、当該可逆的に拡張可能なギャップの
上記撓み能力(δ)を決定する工程と、
形成されるべき上記複数のストランドの、上記材料の上記降伏強度(σ
yield)およびヤング率(E)を含む材料特性を決定する工程と、
形成されるべき上記複数のストランドセグメントのそれぞれのストランドセグメントの半径(R)およびギャップ長(gl)を決定する工程と、
をさらに含むことを特徴とする3次元インプラントの形成方法。
【請求項15】
患者へ挿入するための、組織再建用または組織増強用の3次元インプラント(100,200,300)であって、
上記インプラントは、第1のサブレイヤー群(115)が第1の方向に配向された複数のストランドを有し、第2のサブレイヤー群(116)が第2の方向に配向された複数のストランドを有し、当該第1のサブレイヤー群(115)の当該サブレイヤーと当該第2のサブレイヤー群(116)の当該サブレイヤーとが、第3の方向に交互に配置される、複数の平面的なレイヤーであって、当該第3の方向に延びる複数の中空チャネル(103)を含む3次元構造を形成する当該複数のレイヤーを備え、
上記インプラントは、少なくとも上記第3の方向に沿って圧縮可能であり、
各中空チャネル(103)は、
上記第3の方向に延びるとともに、交互に配置された、第1の方向に配向された複数のストランドセグメント(105A)と複数のギャップ(106A)とからなる第1のサイドウォール(104A)と、当該第3の方向に延びるとともに、交互に配置された、上記第2の方向に配向された複数のストランドセグメント(105B)と複数のギャップ(106B)とからなる第2のサイドウォール(104B)と、を備え、
上記中空チャネルの上記第1のサイドウォール(104A)および上記第2のサイドウォール(104B)の少なくとも一方は、起伏のあるサイドウォールであり、
上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)の上記複数のストランドセグメント(105A,105B)は、上記インプラントにおける異なるレイヤーに属しており、
上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)における隣接するストランドセグメント(105A,105B)は、ギャップ(106)によって分離されており、
上記隣接するストランドセグメント(105A,105B)は、上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)における、複数のピーク(135)と複数のトラフ(136)とのパターンを作成するために、互いに対して横方向のオフセットを有していることを特徴とするインプラント。
【請求項16】
上記請求項
15に記載のインプラントにおいて、
上記起伏のあるサイドウォール(104A,104B)は、ジグザグ部分および正弦波部分の少なくとも一方を含むことを特徴とするインプラント。
【国際調査報告】