(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】蛍光クエンチャーポリマーコンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 73/04 20060101AFI20230831BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08G73/04
G01N21/64 C
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504340
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021039813
(87)【国際公開番号】W WO2022020081
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308810
【氏名又は名称】エンゾー バイオケム,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】323006116
【氏名又は名称】ラッバーニ、エラザール
(71)【出願人】
【識別番号】323009623
【氏名又は名称】コールマン、ジャック
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッバーニ、エラザール
(72)【発明者】
【氏名】コールマン、ジャック
【テーマコード(参考)】
2G043
4J043
【Fターム(参考)】
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043KA02
4J043PA02
4J043PC206
4J043QA04
(57)【要約】
本発明は、ポリマーへコンジュゲートされた複数の蛍光クエンチング部分を含む化学的コンジュゲート、及び巨大分子性蛍光放射物質(フィコエリトリン等)を包含する放射物質からの蛍光の放射をクエンチするためのかかるコンジュゲートの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の離散離散蛍光クエンチング部分;及び
ポリマー
を含み、
前記複数の離散蛍光クエンチング部分の各々が、前記ポリマーの離散部位へ化学的にコンジュゲートされる、
蛍光クエンチング化合物。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリペプチドでもポリ核酸でもない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリマーが、分岐ポリマーである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリアミンポリマーである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリカチオン性ポリマーである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリマーが、分岐ポリエチレンイミンを含む、請求項1に記載の任意の1つの化合物。
【請求項7】
前記ポリマーが、分岐ポリエチレンイミンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記分岐ポリエチレンイミンが、Mw10,000以上の分子量を有する、請求項6または7に記載の化合物。
【請求項9】
前記分岐ポリエチレンイミンが、Mw10,000以下の分子量を有する、請求項6または7に記載の化合物。
【請求項10】
前記複数の蛍光クエンチング部分が、一部分としてEQ1を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記複数の蛍光クエンチング部分が、一部分としてEQ2を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記複数の蛍光クエンチング部分が、一部分としてEQ0を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~12に記載の化合物のうちの任意の1つ;及び
その蛍光放射が前記化合物によってクエンチされることが可能な蛍光放射物質
を含む、組成物。
【請求項14】
前記蛍光放射物質が、巨大分子性蛍光放射物質である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記蛍光放射物質が、少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記蛍光放射物質が、正味の負電荷を有する、請求項13~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記蛍光放射物質が、フィコエリトリンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記蛍光放射物質の前記蛍光放射が、前記化合物によってクエンチされる、請求項13~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記蛍光放射物質の前記蛍光放射をクエンチするための、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
前記蛍光放射物質が、巨大分子性蛍光放射物質である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記蛍光放射物質が、少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
前記蛍光放射物質が、正味の負電荷を有する、請求項19~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記蛍光放射物質が、フィソエリトリン(physoerythrin)である、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月23日に出願された米国仮出願シリアル番号第63/055,375号の優先権を主張し、当該仮出願は参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、蛍光クエンチング化合物の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
フィコエリトリンは、集光性フィコビリタンパク質ファミリーからの赤色のタンパク質-色素複合体であり、光合成に関与する主要なクロロフィル色素の付属物として紅藻類及び氷雪植物において天然に存在する。すべてのフィコビリタンパク質と同様に、フィコエリトリンは、フィコビリンと呼ばれる発色団へ共有結合されたタンパク質サブユニットから構成される。フィコエリトリンファミリーにおいて、2つのフィコビリンは、フィコエリトロビリン(典型的なフィコエリトリンアクセプター発色団)及びフィコウロビリンである。典型的には、フィコエリトリンは、(αβ)タンパク質サブユニット(通常円盤状の三量体(αβ)3または六量体(αβ)6で組織化される)及び第3のタイプのタンパク質サブユニット(γ鎖)から構成される。
【0004】
強力な巨大分子性蛍光放射物質(フィコエリトリン等)と相互作用すること及び当該放射物質からの蛍光放射をクエンチングすることが可能である、新しい改善された蛍光クエンチング化合物が必要であり、本発明によって提供される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの実施形態は、
複数の離散蛍光クエンチング部分(EQ0、EQ1、及び/またはEQ2等);及び
ポリマー(分岐ポリエチレンイミン等の非タンパク質で非核酸ポリマー等)
を含み、
複数の離散蛍光クエンチング部分の各々が、ポリマーの離散部位へ化学的にコンジュゲートされる、
蛍光クエンチング化合物を提供する。
【0006】
本発明の関連実施形態は、
前述の蛍光クエンチング化合物;及び
その蛍光放射が当該化合物によってクエンチされることが可能な蛍光放射物質
を含む組成物を提供する。
【0007】
蛍光放射物質は、例えば巨大分子性蛍光放射物質(フィコエリトリン等)あり得る。
【0008】
本発明の別の実施形態は、
アミン反応性基(NHS-エステルまたはスルホ-NHSエステル等であるがこれらに限定されない)を含む蛍光クエンチング化合物を提供するステップ;
分岐ポリエチレンイミンを提供するステップ;及び
アミン反応性基を含む蛍光クエンチング化合物を分岐ポリエチレンイミンと反応させて、蛍光クエンチング化合物及び分岐ポリエチレンイミンのコンジュゲートを形成するステップ、
を含む、蛍光クエンチング化合物を製造する方法を提供する。
【0009】
本発明の追加の特色、利点、及び実施形態は、以下の発明を実施するための形態、図面、及びもしあれば請求項の考慮から示され得るかまたは明らかであり得るさらに、本発明の前述の要約及び以下の発明を実施するための形態の両方は例示的であり、さらなる説明を請求される本発明の範囲を限定せずに提供することが意図されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のポリマークエンチャー実施形態及び比較化合物によるフィコエリトリンに対する蛍光クエンチング効果を示す。
【
図2】本発明のポリマークエンチャー実施形態によるフィコエリトリンの蛍光クエンチングに対する塩化ナトリウムの効果を示す。
【
図3】本発明のポリマークエンチャー実施形態及び比較化合物による、フィコエリトリンvsフルオレセイン標識抗体に対する蛍光クエンチング効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様において、本発明は、複数の蛍光クエンチング部分(EQ0、EQ1、及び/またはEQ2等)及びポリマー(分岐ポリエチレンイミン等の非タンパク質ポリマー等)の化学的コンジュゲートである蛍光クエンチング化合物を提供する。ポリマーへコンジュゲートされる蛍光クエンチング部分は、すべて同じであり得るか、または異なる蛍光クエンチング部分(異なる化学構造)を含み得る。
【0012】
多数の第一級アミン基を含有するポリマー(分岐ポリエチレンイミン等)は、アミン反応性基(当技術分野において公知のような、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)またはスルホ-NHSエステル等)を含む蛍光クエンチング化合物の化学的誘導体へ容易にコンジュゲートされ得る。
【0013】
NHSエステルは、カルボキシレート分子のカルボジイミド活性化によって形成された反応性基である。NHSエステル活性化架橋剤及び標識化合物を、生理的な条件から弱アルカリ性の条件(pH7.2~9)において第一級アミンと反応させて、安定的なアミド結合をもたらす。反応は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を放出する。
【0014】
NHSエステル架橋反応は、最も一般的には、pH7.2~8.5のホスフェートバッファー、カーボネート-バイカルボネートバッファー、HEPESバッファー、またはボレートバッファー中で、室温または4℃で0.5~4時間遂行される。第一級アミンバッファー(トリス(TBS)等)は反応を競合するので、適合性がないが、いくつかの手順において、反応をクエンチする(停止する)ためにコンジュゲーション手順の終了時でトリスバッファーまたはグリシンバッファーを添加するには有益である。
【0015】
スルホ-NHSエステルはNHSエステルに類似するが、N-ヒドロキシスクシンイミド環上にスルホネート(-SO3)基を含有する。この荷電基は反応化学に影響がないが、それらを含有する架橋剤の水溶性を増加させる傾向がある。
【0016】
クエンチャー
任意のポリマーへのコンジュゲーションに好適な蛍光クエンチング化合物及びそれらの反応性誘導体(例えばそのNHS-エステル誘導体)は、本発明に従って使用され得、Monoazo Dyes with Cyclic Amine as Fluorescence Quenchersという表題の米国特許第9,957,393号(参照することによってその全体が本明細書に援用される)中で開示されるもの等であるがこれらに限定されない。
【0017】
限定されないが、クエンチャーの以下のNHSエステル誘導体は、本発明に従って使用され得る。
【化1】
【0018】
EQ0 NHSエステル(カタログ番号ENZ-CHM208-0001;Enzo Life Sciences,Inc.、Farmingdale、NY、USA)は、アミン反応性クエンチャー色素である。EQ0は、445nmでの最大吸収の広範な可視吸収を有するが、検出可能な蛍光放射は無く、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)適用においてアクセプターとして有用なものにする。それは、以下のクエンチレポーター色素:AMCA、AMCA-X、DEAC、DEAC-X、MCA、MCC、CF(商標)350、CF(商標)405S、CF(商標)405M、Pacific Blue(商標)、Cascade Blue(登録商標)、Marina Blue(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405、DyLight(登録商標)350、DyLight(登録商標)405、ATTO 390、ATTO 425、ATTO 465、iFluor(商標)350、iFLuor(商標)405、BD Horizon V450、BUV395、及びeFluor(登録商標)450へ使用され得る。
【0019】
EQ1 NHSエステル(カタログ番号ENZ-CHM165-0001;Enzo Life Sciences,Inc.、Farmingdale、NY、USA)は、アミン反応性クエンチャー色素である。EQ1は、535nmでの最大吸収の広範な可視吸収を有するが、検出可能な蛍光放射は無く、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)適用においてアクセプターとして有用なものにする。それは、以下のクエンチレポーター色素:FAM、Cy2、TET、JOE、VIC、HEX、Cy3、NED、TAMRA、Cy3.5、ROX、Texas Red、Quasar(登録商標)570、CAL Fluor(登録商標)Gold 540、CAL Fluor(登録商標)Orange 560、CAL Fluor(登録商標)Red 590、CAL Fluor(登録商標)Red 610、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、DyLight(登録商標)488、DyLight(登録商標)550、DyLight(登録商標)594、ATTO 488、ATTO 520、ATTO 532、ATTO Rho6G、ATTO 550、ATTO 565、ATTO Rho11、ATTO 590、及びATTO 594へ使用され得る。
【0020】
EQ2 NHSエステル(カタログ番号ENZ-CHM166-0001;Enzo Life Sciences,Inc.、Farmingdale、NY、USA)は、アミン反応性クエンチャー色素である。EQ2は、583nmでの最大吸収の広範な可視吸収を有するが、検出可能な蛍光放射は無く、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)適用においてアクセプターとして有用なものにする。それは、以下のクエンチレポーター色素:TET、JOE、VIC、HEX、Cy3、NED、TAMRA、Cy3.5、ROX、テキサスレッド、Cy5、Quasar(登録商標)、パルサー(登録商標)、CAL Fluor(登録商標)Gold 540、CAL Fluor(登録商標)Orange 560、CAL Fluor(登録商標)Red 590、CAL Fluor(登録商標)Red 610、CAL Fluor(登録商標)Red 635、Alexa Fluor(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)568 555 546 532 650 570、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、DyLight(登録商標)550、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)633、DyLight(登録商標)650、ATTO 520、ATTO 532、ATTO Rho6G、ATTO 550、ATTO 565、ATTO Rho11、ATTO 590、ATTO 594、ATTO 633、ATTO Rho14、及びATTO 647へ使用され得る。
【0021】
ポリマー
1つまたは複数タイプの蛍光クエンチャーのコンジュゲーションのために複数の離散部位を有する直鎖状または分岐状のポリマーは、本発明に従って使用され得る。ポリマーは、例えばタンパク質またはポリペプチドでなくてもよい。ポリマーは、例えばポリ核酸ポリマーでなくてもよい。ポリマーは、例えば合成ポリマーであり得る。ポリマーは、例えば炭素原子、窒素原子、及び水素原子から優先的になり得るか、またはそれらのみからなり得る。ポリマーは、例えばポリアミンであり得る。
【0022】
使用され得る1つのポリマーは、分岐ポリエチレンイミン、高カチオン性電荷密度を備えた水溶性ポリアミン(第一級アミン基、第二級アミン基、及び第三級アミン基を含有する)である。例えばJager M,Schubert S,Ochrimenko S,Fischer D,Schubert US.(2012),Branched and linear poly(ethylene imine)-based conjugates:synthetic modification,characterization,and application,Chem Soc Rev.41(13):4755-4767を参照されたい。商業的に市販される製品は様々な分子量で利用可能であり、例えば分岐ポリエチレンイミン、Mw600(bPEI 600;カタログ番号02371-100;Polysciences,Inc.、Warrington、PA、USA)及びH2O中で50%w/vの分岐ポリエチレンイミン溶液、Mn約60,000、Mw750,000(カタログ番号P3143、Millipore Sigma、St.Louis、MO、USA)が挙げられる。
【0023】
本発明の実施形態は、例えばMw1000未満;Mw1000以上;Mw5,000以上;Mw10,000以上;Mw100,000以下;Mw1,000,000以下;及び/またはMw100~1,000,000の範囲中のあるいはその中の全整数値間の任意の部分範囲の分子量を有する分岐ポリエチレンイミンを使用し得る。
【実施例】
【0024】
PEI-EQ1コンジュゲートの産生
H2O中で50%w/vの分岐ポリエチレンイミン溶液(「PEI」;カタログ番号P3143 Millipore Sigma、St.Louis、MO、USA)を水中で希釈した(具体的には1.179mg/mlのPEIまたは約27.4mMのモノマーアミンの最終濃度のために、423μlの水の中へ1μl)。
【0025】
使用した対照は、50mg/mlまたは約0.0643mMのアミン(リジンまたはアルギニン)の濃度のウシ血清アルブミン(「BSA」;カタログ番号AM2618、Thermo Fisher Scientific)であった。
【0026】
PEI及びBSAを、Zeba 7K MWCOカラム(カタログ番号89882、Thermo Fisher Scientific)を使用して、100mMの炭酸ナトリウムバッファー(pH9.6)(カタログ番号C33041-50 CAP、Millipore Sigma)へとバッファー交換した。これを行うために、カラムを最初に1.5k×gで1分間遠心して、液体を除去した。カラムを300μlの100mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)により再水和し、続いて1.5k×gで1分間遠心分離した。炭酸ナトリウム洗浄を追加の3回反復した。Zebaカラムを新しいチューブへ移し、100μlのPEIまたはBSAのいずれかを上部に重層し、続いて1.5k×gで1分間遠心分離した。フロースルーは、炭酸ナトリウムバッファー中でPEIまたはBSAのいずれかを含有する。
【0027】
1mgのEQ1-NHSエステル(カタログ番号ENZ-CHM165-0001、Enzo Life Sciences,Inc.)を、186.7μlのアミン不含有ジメチルホルムアミド(カタログ番号43465-AP、Alfa Aesar)中で再懸濁して、10mMの溶液を作製した。
【0028】
標識のために、100μlのPEIまたはBSAを使用した。PEIについて、68.5μlのEQ1-NHSエステルを添加し、BSAについて、1μlのEQ1-NHSエステルを添加した。反応を、ローテーター上で3時間室温(22℃)で3時間実行した。
【0029】
反応後に、混合物を精製し、一度に100μlの50mMのリン酸ナトリウム(pH8)により前平衡化したZebaカラムを使用して、バッファー交換した。Zebaカラムは、より大きな分子量のPEIまたはBSAから取り込まれていないEQ1-NHSエステルを分離する。
【0030】
PEIまたはBSAへコンジュゲートされたEQ1、または単独のEQ1の濃度を、吸光度によって決定した。EQ1は約535nmで吸収し、35.2mM-1cm-1の消光係数を有する。この事例において、EQ1濃度単独が94.5μMであり、PEIへコンジュゲートされたEQ1の濃度は983μMであり、BSAへコンジュゲートされたEQ1の濃度は36μMであった。
【0031】
PEI-EQ1コンジュゲートによるクエンチング
PEI-EQ1が、EQ1単独に比較してフィコエリトリンのクエンチングを促進するかどうかを試験するために、クエンチャーを、200ngのフィコエリトリン標識抗HPV16-E7抗体「HPV16 E7抗体(ED17)PE」(カタログ番号sc-6981 PE、Santa Cruz Biotechnology, Inc.、Dallas、TX、USA)と混合した。EQ1の量は、110μlの体積のPBS中で394pmoleであった。対照として、同じ濃度で単独PEIを添加した。蛍光を、480nmでの励起及び500~650nmの放射捕捉により、上部からの読み取りで、Biotek SynergyMxプレートリーダー上で測定した。
【0032】
この実験の結果を
図1中で示す。示されるように、PEI単独はフィコエリトリンの蛍光に対して非常に少ない効果を有し、EQ1単独またはEQ1-BSAコンジュゲートも同様である。しかしながら、PEIへコンジュゲートされたEQ1(EQ1-PEI)を使用した場合に、フィコエリトリンの蛍光は、存在するクエンチャー無しに起こる蛍光の2%未満まで低減される。
【0033】
図2中で示されるように、塩化ナトリウムが833mMの濃度まで添加されるならば、EQ-PEIによるクエンチングは、フィコエリトリン単独の蛍光の50%のみである。この結果は、EQ1単独に比べたEQ1-PEIによるクエンチングの促進が、コンジュゲートのPEI構成要素とフィコエリトリンとの間の塩架橋に関連することを示唆する。
【0034】
次に、EQ1-PEIによるクエンチングの促進がフィコエリトリンに特異的かどうかを調査するために、フルオレセイン標識抗体(FITC抗ヒトIgG Fc、Biolegend 409309)のクエンチングを、EQ1単独、EQ1-PEI、EQ1-BSA、及びクエンチャー無しの対照を使用して試験した。具体的には、400ngのFITC標識抗体を、394pmoleのEQ1単独、PEIへ結合されたEQ1(EQ1-PEI)、またはBSAへ結合されたEQ1(EQ1-BSA)、あるいはクエンチャー無しの対照によりインキュベーションした。再び、発光スペクトルを480nmでの励起により読み取った。
図3中で示されるように、PEI-EQ1はEQ1単独に比べてフルオレセインのクエンチングを促進するが、フィコエリトリンをクエンチする場合に観察されたものとほぼ同じ程度までクエンチしない。
【0035】
限定されないが、以下の実施形態も本発明によって提供される。
【0036】
実施形態1。複数の離散蛍光クエンチング部分;及び
ポリマー
を含み、
前記複数の離散蛍光クエンチング部分の各々が、前記ポリマーの離散部位へ化学的にコンジュゲートされる、
蛍光クエンチング化合物。
【0037】
実施形態2。前記ポリマーが、ポリペプチドでもポリ核酸でもない、実施形態1に記載の化合物。
【0038】
実施形態3。前記ポリマーが、分岐ポリマーである、先行実施形態のいずれか1つに記載の化合物。
【0039】
実施形態4。前記ポリマーが、ポリアミンポリマーである、先行実施形態のいずれか1つに記載の化合物。
【0040】
実施形態5。前記ポリマーが、ポリカチオン性ポリマーである、先行実施形態のいずれか1つに記載の化合物。
【0041】
実施形態6。前記ポリマーが、分岐ポリエチレンイミンを含む、実施形態1に記載の任意の1つの化合物。
【0042】
実施形態7。前記ポリマーが、分岐ポリエチレンイミンである、実施形態6に記載の化合物。
【0043】
実施形態8。前記分岐ポリエチレンイミンが、Mw10,000以上の分子量を有する、実施形態6または7に記載の化合物。
【0044】
実施形態9。前記分岐ポリエチレンイミンが、Mw10,000以下の分子量を有する、実施形態6または7に記載の化合物。
【0045】
実施形態10。前記複数の蛍光クエンチング部分が、一部分としてEQ1を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の化合物。
【0046】
実施形態11。前記複数の蛍光クエンチング部分が、一部分としてEQ2を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の化合物。
【0047】
実施形態12。前記複数の蛍光クエンチング部分が、一部分としてEQ0を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物。
【0048】
実施形態13。実施形態1~12に記載の化合物のうちの任意の1つ;及び
その蛍光放射が前記化合物によってクエンチされることが可能な蛍光放射物質
を含む、組成物。
【0049】
実施形態14。前記蛍光放射物質が、巨大分子性蛍光放射物質である、実施形態13に記載の組成物。
【0050】
実施形態15。前記蛍光放射物質が、少なくとも1つのポリペプチドを含む、実施形態13または14に記載の組成物。
【0051】
実施形態16。前記蛍光放射物質が、正味の負電荷を有する、実施形態13~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0052】
実施形態17。前記蛍光放射物質が、フィコエリトリンである、実施形態13に記載の組成物。
【0053】
実施形態18。前記蛍光放射物質の前記蛍光放射が、前記化合物によってクエンチされる、実施形態13~17のいずれか1つに記載の組成物。
【0054】
本発明は、本明細書において開示されるポリマー性クエンチング化合物の実施形態により、またはそれらのうちの任意のものを使用して、蛍光放射物質(本明細書において開示される蛍光放射物質または蛍光放射物質のタイプのうちの任意のもの等)の蛍光放射をクエンチする方法も提供する。同様に、発明は、蛍光放射物質(本明細書において開示される蛍光放射物質または蛍光放射物質のタイプのうちの任意のもの等)の蛍光放射をクエンチするための、本明細書において開示されるポリマー性クエンチング化合物実施形態のうちの任意のものの使用も提供する。
【0055】
本出願において任意の実施形態またはその一部分の記載と関連して、含むまた包含するという用語(または類似の範囲の用語)が列挙される場合はいつでも、その代りに、から本質的になるという用語、またはからなるという用語(または類似の趣旨の用語)を列挙する対応する実施形態またはその一部分も開示されることを理解されたい。
【0056】
任意の及びすべての出版物、特許、特許出願、及び本出願において引用される他の文書は、あたかも各々個別の出版、特許、特許出願、または他の文書が、参照することによってすべての目的のために援用されることが個別に指示されたかのように、同じ程度まで、それらの全体が参照することによってすべての目的のために本明細書に援用される。
【0057】
様々な具体的な実施形態が例証され記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、様々な変化が行われ得ることが認識されるだろう。さらに、本発明の1つの実施形態と関連して記載される特色は、明示的に組み合わせ内で例示されなかったとしても、他の実施形態と併用して使用され得る。
【国際調査報告】