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特表2023-538236グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体を含む血圧降下用薬学組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体を含む血圧降下用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20230831BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230831BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20230831BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230831BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230831BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230831BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
A61K38/26
A61K47/68
A61K39/395 Y
A61P9/12
A61P1/16
A61P9/08
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/00
C07K14/605
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504727
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 KR2021010910
(87)【国際公開番号】W WO2022035302
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0102604
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048006
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ベック ソンジェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジェドク
(72)【発明者】
【氏名】シン ウォンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョングク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジェヒョク
(72)【発明者】
【氏名】オ ウリム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB16
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC41
4C076EE41M
4C076EE59M
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA24
4C084BA42
4C084CA59
4C084DB35
4C084MA16
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZA391
4C084ZA392
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA751
4C084ZA752
4C085AA33
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド及びその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧降下用薬学組成物であって、
薬学的に許容される賦形剤と、
配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドとを含む組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式(1)で表される、請求項1に記載の組成物。
【化1】
ここで、Xは前記配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであり、
Lはエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであり、
Fは免疫グロブリンFc領域であり、
-はXとL間、LとF間の共有結合連結を示すものである。
【請求項3】
前記組成物は、個体の血管拡張により血圧降下効果を発揮するものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase, eNOS)のリン酸化を増加させるものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記個体は、メタボリックシンドローム又は肝疾患を有するものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドは、C末端がアミド化されているものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドは、アミノ酸残基間に環が形成されるものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されているものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域である、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc領域は、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記結合体は、Lの一末端がFのアミノ基又はチオール基、Lの他の末端がXのアミノ基又はチオール基にそれぞれ反応して形成された共有結合により、F及びXにそれぞれ連結されているものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記Lはポリエチレングリコールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記L中のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記メタボリックシンドロームは、耐糖能障害、高コレステロール血症、脂質異常症、肥満、糖尿病、高血圧、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)、脂質異常症による動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈心疾患(冠動脈性心疾患)及び脳卒中からなる群から選択されるものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
前記肝疾患は、アルコール性肝疾患、非アルコール性肝疾患、代謝性肝疾患、肝線維症、肝硬化症、脂肪肝、肝炎症、ウイルス性肝疾患、肝炎、肝毒性、胆汁鬱滞、肝硬変、肝虚血、肝膿瘍、肝性昏睡、肝萎縮症、肝不全、胆汁鬱滞性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎及び肝癌からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項16】
前記個体は、高血圧疾患を伴うi)代謝性疾患、ii)肝疾患、又はiii)代謝性疾患及び肝疾患を有するものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項17】
前記個体は、代謝性疾患を伴う非アルコール性脂肪肝疾患を有するものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項18】
前記個体は、代謝性疾患を伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)を有するものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
前記個体は、少なくとも1つの代謝性疾患リスク因子を有するものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、肥満を有する個体において血圧降下効果を発揮するものである、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物は、脂肪肝を有する個体において血圧降下効果を発揮するものである、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物は、肥満及び脂肪肝を有する個体において血圧降下効果を発揮するものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、肥満又は代謝性疾患発生リスクのある個体において非アルコール性脂肪肝疾患を治療するためのものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、肥満又は代謝性疾患発生リスクのある個体において非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)を治療するためのものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項25】
前記ペプチド又は持続型結合体は、1週間に1回非経口投与するものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項26】
前記ペプチド又は持続型結合体は、皮下投与するものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドを含む組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴンは、薬物治療、疾病、ホルモン、酵素の欠乏などの様々な原因で血糖値が低下すると膵臓で産生されて分泌される。分泌されたグルカゴンは、肝臓にグリコーゲンを分解してグルコースを放出するように働きかけ、結果として血糖レベルを正常レベルまで引き上げる役割を果たすことが知られている。また、肝臓において脂肪の合成を抑制するだけでなく、脂肪酸の燃焼を促進することにより血中脂質の数値を降下させることが知られている。さらに、グルカゴンは、白色脂肪にも直接・間接的に作用して脂肪の燃焼及び脂肪褐色化を促進し、効果的な体重減量効果を発揮することが知られている(非特許文献1)。このようなグルカゴンは、グルカゴン受容体に作用することにより活性を示す。
【0003】
また、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)及びGIP(Glucose-dependent insuliontropic polypeptide)は、代表的な胃腸ホルモンであると共に、神経ホルモンとして食物摂取による血中の糖成分の調節に関与する物質であることが知られている。
【0004】
近年、効果向上、副作用改善などのために、グルカゴン受容体に作用すると共に、グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1, GLP-1)及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体にも作用する物質の必要性が高まっていることから、本発明者らは、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体に作用するペプチド及びその結合体を開発した(特許文献1,2)。
【0005】
一方、血圧は体内で一定のレベルに維持しなければならない主要指標であり、血圧数値が一時的又は慢性的に正常範囲より上昇した際に血圧を低下させるための様々な薬物が開発されている。一時的又は慢性的血圧上昇の原因は様々であるが、肥満に代表される代謝疾患が重要な影響を及ぼすことが知られている。実際に、近年、体重減量に効果があることが知られているグルカゴン様ペプチド-1アゴニストによる血圧の降下及び心血管疾患の改善効果が報告されている(非特許文献2)。しかし、グルカゴン様ペプチド-1アゴニストの血圧降下効果は、体重減量自体に起因するものであるので、その効果は相対的に軽微である。
【0006】
一方、血管拡張は血圧を効果的に低下させる一つの方法であり、血管拡張には内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase, eNOS)が主に関与することが知られている。前記内皮型一酸化窒素合成酵素は、血管内皮細胞において血管を拡張する機能を果たすNO(nitric oxide)を合成し、合成した一酸化窒素は血管拡張物質として機能する。
【0007】
よって、血管壁に直接作用して血管拡張及び血圧降下効果を有する物質を見出すことにより、効果的な血圧降下薬物を開発する努力が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/116204号
【特許文献2】国際公開第2017/116205号
【特許文献3】国際公開第97/034631号
【特許文献4】国際公開第96/032478号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nat Rev Endocrinol. 11, 329-38 (2015); Physiol Rev. 97, 721-66 (2017)
【非特許文献2】N Engl J Med. 375, 311-22 (2016); N Engl J Med. 375, 1834-44 (2016)
【非特許文献3】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【非特許文献4】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【非特許文献5】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【非特許文献6】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【非特許文献7】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【非特許文献8】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【非特許文献9】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【非特許文献10】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献11】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【非特許文献12】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【非特許文献13】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
効果的かつ安全な血圧降下薬物を開発することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体を含む血圧降下用薬学組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド、その結合体又はそれを含む血圧降下用組成物を投与するステップを含む血圧降下方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体の血圧降下用途を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体の血圧降下用途を有する薬剤の製造のための用途を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のグルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドは、血管拡張により血圧降下効果を発揮するので、血圧が高くなった個体のための薬物として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】配列番号42の持続型結合体のヒト臍帯静脈内皮細胞において、内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化を測定することにより血管拡張効果を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実現する一態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体を含む組成物である。
【0018】
一具体例による組成物は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体を含む血圧降下用薬学組成物である。
【0019】
他の具体例による組成物において、前記グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドは、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とする。
【0020】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0021】
X-L-F・・・(1)
【0022】
ここで、Xは配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであり、Lはエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであり、Fは免疫グロブリンFc領域であり、-はXとL間、LとF間の共有結合連結を示すものである。
【0023】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、個体の血管拡張により血圧降下効果を発揮することを特徴とする。
【0024】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記個体は、メタボリックシンドローム又は肝疾患を有することを特徴とする。
【0025】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、C末端が修飾されていないか、アミド化されていることを特徴とする。
【0026】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、アミノ酸残基間に環が形成されることを特徴とする。
【0027】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されていることを特徴とする。
【0028】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンヒンジ領域又はヒンジ領域の一部との組み合わせ、並びに(f)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0029】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、ジスルフィド結合を形成する部位が除去されたか、天然FcからN末端の一部のアミノ酸が欠失したか、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加されたか、補体結合部位が除去されたか、又はADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されたものであることを特徴とする。
【0030】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgMに由来することを特徴とする。
【0031】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMからなる群から選択される免疫グロブリンに由来する異なる起源を有するドメインのハイブリッドであることを特徴とする。
【0032】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、二量体形態(dimeric form)であることを特徴とする。
【0033】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されていることを特徴とする。
【0034】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であることを特徴とする。
【0035】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であることを特徴とする。
【0036】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、2本のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2本の鎖のうち1本の鎖の窒素原子を介してのみ連結されていることを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号123のアミノ酸配列である単量体を含むことを特徴とする。
【0038】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号123のアミノ酸配列の単量体からなるホモ二量体であることを特徴とする。
【0039】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、そのN末端プロリンの窒素原子により連結されていることを特徴とする。
【0040】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域であるFとXがグリコシル化されていないことを特徴とする。
【0041】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記エチレングリコール繰り返し単位は[OCH2CH2]nであり、nは自然数であって、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が1~100kDaになるように決定されることを特徴とする。
【0042】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記nの値は、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が10kDaになるように決定されることを特徴とする。
【0043】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記結合体は、Lの一末端がFのアミノ基又はチオール基、Lの他の末端がXのアミノ基又はチオール基にそれぞれ反応して形成された共有結合により、F及びXにそれぞれ連結されていることを特徴とする。
【0044】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記Lはポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0045】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記L中のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0046】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記メタボリックシンドロームは、耐糖能障害、高コレステロール血症、脂質異常症、肥満、糖尿病、高血圧、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)、脂質異常症による動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈心疾患(冠動脈性心疾患)及び脳卒中からなる群から選択されることを特徴とする。
【0047】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記肝疾患は、アルコール性肝疾患、非アルコール性肝疾患、代謝性肝疾患、肝線維症、肝硬化症、脂肪肝、肝炎症、ウイルス性肝疾患、肝炎、肝毒性、胆汁鬱滞、肝硬変、肝虚血、肝膿瘍、肝性昏睡、肝萎縮症、肝不全、胆汁鬱滞性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎及び肝癌からなる群から選択されることを特徴とする。
【0048】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記個体は、高血圧疾患を伴うi)代謝性疾患、ii)肝疾患、又はiii)代謝性疾患及び肝疾患を有することを特徴とする。
【0049】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記個体は、代謝性疾患を伴う非アルコール性脂肪肝疾患を有することを特徴とする。
【0050】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記個体は、代謝性疾患を伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)を有することを特徴とする。
【0051】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記個体は、少なくとも1つの代謝性疾患リスク因子を有することを特徴とする。
【0052】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、肥満を有する個体において血圧降下効果を発揮することを特徴とする。
【0053】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、脂肪肝を有する個体において血圧降下効果を発揮することを特徴とする。
【0054】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、肥満及び脂肪肝を有する個体において血圧降下効果を発揮することを特徴とする。
【0055】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、肥満又は代謝性疾患発生リスクのある個体において非アルコール性脂肪肝疾患を治療するためのものであることを特徴とする。
【0056】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、肥満又は代謝性疾患発生リスクのある個体において非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)を治療するためのものであることを特徴とする。
【0057】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、非経口投与することを特徴とする。
【0058】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、皮下投与することを特徴とする。
【0059】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、1週間に1回非経口投与することを特徴とする。
【0060】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、1週間に1回0.1~15mgを非経口投与することを特徴とする。
【0061】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、4週間にわたって週に1回1mg~10mgを非経口投与することを特徴とする。
【0062】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記持続型結合体は、4週間にわたって週に1回1mg~10mgを非経口投与することを特徴とする。
【0063】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、4週間にわたって週に1回2mg、4mg、6mg又は8mgを非経口投与することを特徴とする。
【0064】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記持続型結合体は、4週間にわたって週に1回2mg、4mg、6mg又は8mgを非経口投与することを特徴とする。
【0065】
本発明を実現する他の態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド、その結合体又はそれを含む組成物を個体に投与するステップを含む血圧降下方法である。
【0066】
本発明を実現するさらに他の態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体の血圧降下用途である。
【0067】
本発明を実現するさらに他の態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド又はその結合体の血圧降下用途を有する薬剤の製造のための用途である。
【0068】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0069】
なお、本願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0070】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(2-アミノイソブチル酸)、Sar(N-methylglycine)、α-メチルグルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
アラニン Ala,A
アルギニン Arg,R
アスパラギン Asn,N
アスパラギン酸 Asp,D
システイン Cys,C
グルタミン酸 Glu,E
グルタミン Gln,Q
グリシン Gly,G
ヒスチジン His,H
イソロイシン Ile,I
ロイシン Leu,L
リシン Lys,K
メチオニン Met,M
フェニルアラニン Phe,F
プロリン Pro,P
セリン Ser,S
トレオニン Thr,T
トリプトファン Trp,W
チロシン Tyr,Y
バリン Val,V
【0071】
本明細書における「Aib」は「2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)」又は「アミノイソブチル酸(aminoisobutyric acid)」と混用され、2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)とアミノイソブチル酸(aminoisobutyric acid)は混用される。
【0072】
本発明を実現する一態様は、グルカゴン受容体、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体に対して活性を有するペプチドを含む組成物である。具体的には、前記組成物は、前記ペプチド又はその結合体を含む血圧降下用薬学組成物である。
【0073】
一実施例において、前記ペプチドは、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0074】
他の実施例において、前記血圧降下のための薬学組成物は、薬学的に許容される賦形剤と、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド又はその結合体とを薬学的有効量で含む薬学組成物であってもよい。
【0075】
本発明によるペプチド又はその結合体を有効成分として含む組成物は、体内血管を拡張させることにより、血圧レベルを低下させる。
【0076】
具体的には、血管内皮細胞において内皮型一酸化窒素合成酵素の活性を増加させ、ペプチド又はその結合体により血管拡張及び血圧降下を達成することができる。
【0077】
本発明の組成物は、個体の血管拡張により、血圧降下効果を発揮する。
【0078】
本発明における前記血圧降下とは、血圧レベルを低下させることを意味する。多くの血圧降下剤は高血圧患者を対象とするが、高血圧でなくても他の疾患や特定原因により血圧レベルが上昇することがあるので、特定疾患の患者群に限定されない血圧降下剤は、薬物として利点を有する。
【0079】
前記血管拡張の有無は、収縮期血圧(systolic blood pressure, SBP)及び拡張期血圧(diastolic blood pressure, DBP)の低下、内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化変化などにより確認することができる。
【0080】
本発明における「個体」とは、血圧降下が必要な、ヒトをはじめとする、マウス、家畜などが含まれる哺乳動物を意味し、具体的には、前記個体は、メタボリックシンドローム又は肝疾患を有するものであるが、血圧降下により有利な効果が得られるものであれば、特定疾病の患者に限定されるものではない。また、本発明のペプチドによる血圧降下効果は高血圧患者においても得られるものであるが、高血圧患者でなくても血圧降下効果が得られる。
【0081】
本発明における前記メタボリックシンドロームとは、コレステロール、血圧、血糖値の少なくとも2つの数値に異常が生じる症状を意味し、具体的には、耐糖能障害、高コレステロール血症、脂質異常症、肥満、糖尿病、高血圧、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)、脂質異常症による動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈心疾患(冠動脈性心疾患)又は脳卒中を意味するが、これらに限定されるものではない。
【0082】
また、前記肝疾患とは、アルコール性肝疾患、非アルコール性肝疾患、代謝性肝疾患、肝線維症、肝硬化症、脂肪肝、肝炎症、ウイルス性肝疾患、肝炎、肝毒性、胆汁鬱滞、肝硬変、肝虚血、肝膿瘍、肝性昏睡、肝萎縮症、肝不全、胆汁鬱滞性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎又は肝癌を意味するが、これらに限定されるものではない。
【0083】
メタボリックシンドローム又は肝疾患の患者は西洋化した献立や高塩食を好むことが多く、そのような食餌習慣が血中塩分濃度を上昇させることにより、血圧の上昇を引き起こす。また、肥満、脂質異常症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などにおいては、高血中脂質が血流を阻害することにより、血圧の上昇を引き起こす。さらに、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維症及び肝硬化症に代表される肝疾患においては、肝組織中に存在する血管の拡張機能が阻害されることにより血圧が上昇するリスクが非常に大きい。よって、血管拡張による血圧降下効果を有する本発明の組成物を投与すると、優れた血圧降下効果が得られる。
【0084】
一具体例として、本発明の組成物を投与する個体は、肥満を有する個体や、脂肪肝を有する個体であってもよく、肥満及び脂肪肝を有する個体であってもよい。本発明の組成物の投与により、肥満及び/又は脂肪肝を有する個体において血圧降下効果が得られるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本発明の組成物は、高血圧患者だけでなく、高血圧患者でなくても他の疾患や特定原因により血圧レベルが上昇することがあるので、特定疾患の患者群に限定されない血圧降下剤として提供されることを特徴とする。
【0086】
例えば、肥満の場合、血中脂質及び炎症が増加することにより、血管が狭くなり、血圧が上昇し、心血管疾患を引き起こす主要原因となる。
【0087】
疫学研究によれば、男女どちらもボディマス指数が増加するに伴って高血圧の有病率が増加し、ボディマス指数は、弛緩期血圧よりも収縮期血圧のほうに深い関連があることが知られている。Framingham Heart Studyにおいて、肥満は、男性で78%、女性で65%の高血圧危険度が予測されている。また、高血圧の発生は、腹部肥満にも関連があり、高血圧の発生に腹部肥満が影響する危険度は、米国男性で21~27%、女性で37~57%に至るものと推定されている(NHANES III資料)。肥満が高血圧の重要原因であることは、本態性高血圧患者を対象とした多くの臨床研究において、体重を減少させると血圧降下効果があることからもよく分かる。興味深いことに、肥満の人において高血圧の発生が増加するだけでなく、血圧が高い人において体重が増加しやすいと思われる。Framingham,Tecumseh研究によれば、正常の血圧の人に比べて、高血圧の人において、将来の体重増加が有意に大きいことが知られている。よって、肥満と高血圧の関係は、一方向関係ではなく、双方向関係である可能性がある。近年、脂肪組織は、内分泌器官の一つであると認められており、様々なアディポカインを生産、分泌することにより、全身的な代謝と肥満による疾患に広く影響を及ぼすことも確認されている。特に、食餌とエネルギー代謝に関連するレプチンの増加は、心血管疾患に密接に関与することが知られている。CRP(C-reactive protein)も、脂肪組織で発現し、レプチン抵抗性の発生に関与する。CRPとレプチンは、炎症マーカーの増加、並びにインスリン抵抗性及び心血管疾患の増加に密接な関連を示す。また、肥満は、血流力学や心血管系構造及び機能に悪影響を及ぼす。肥満は、全血液量と心拍出量(cardiac output)を増加させ、心仕事量(cardiac workload)を増加させる。一般に、肥満患者は、同程度の血圧状態において、相対的に高い心拍出量と相対的に低い末梢抵抗を示す。肥満において現れる心拍出量の増加は、ほとんどが一回拍出量(stroke volume)の増加によるものであり、交感神経系の活性化により心拍数も若干の増加を示す。肥満患者は、正常の人に比べて、高血圧になりやすく、体重の増加は、血圧の増加に関連することが多い。過体重又は肥満患者においては、充満圧(fillingpressure)と血液量増加による左心室拡張(left ventricular dilatation)が頻繁に発生する。肥満は、血圧や年齢とは独立して、左心室肥大(left ventricular hypertrophy)を増加させ、さらに左心房拡張も引き起こす。左心房拡張は、心不全の増加だけでなく、心房細動(atrial fibrillation)などの合併症をもたらす。
【0088】
一具体例として、本発明の組成物が投与される個体は、高血圧疾患を伴うi)代謝性疾患、ii)肝疾患、又はiii)代謝性疾患及び肝疾患を有する個体であるが、本発明の組成物により血圧が降下する個体であればいかなるものでもよい。
【0089】
一具体例として、前記個体は、代謝性疾患を伴う非アルコール性脂肪肝疾患を有する個体であるが、本発明の組成物により血圧が降下する個体であればいかなるものでもよい。
【0090】
一具体例として、前記個体は、代謝性疾患を伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)を有する個体であるが、本発明の組成物により血圧が降下する個体であればいかなるものでもよい。
【0091】
一具体例として、前記個体は、少なくとも1つの代謝性疾患リスク因子を有する個体であるが、本発明の組成物により血圧が降下する個体であればいかなるものでもよい。
【0092】
代謝性疾患リスク因子は、低いHDLコレステロール、高い血圧、空腹時血糖の上昇、高い中性脂肪、腹部肥満などであるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本明細書において、「代謝性疾患」は「メタボリックシンドローム」と混用される。
【0094】
一具体例として、前記組成物は、肥満又は代謝性疾患発生リスクのある個体において非アルコール性脂肪肝疾患(Nonalcoholic fatty liver disease, NAFLD)を治療するための組成物であるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
一具体例として、前記組成物は、肥満又は代謝性疾患発生リスクのある個体において非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)を治療するための組成物であるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本発明の組成物は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドを薬理学的有効量で含むものであり、具体的には、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列を含むペプチド、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列から必須に構成されるペプチド、又は配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列からなるペプチド(三重活性体)を薬理学的有効量で含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本発明における「グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、本発明における「三重活性体」又は「ペプチド」と混用される。
【0098】
本発明の三重活性体は、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列を含むペプチドを含むものであってもよい。あるいは、本発明の三重活性体は、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列から必須に構成されるペプチド、又は配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列からなるペプチドを含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0099】
前記グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体に対して有意なレベルの活性を有する三重活性体は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体のうち1つ又はそれ以上の受容体、具体的には2つ又はそれ以上の受容体、より具体的には3つの受容体の全てに対して、in vitro活性が、当該受容体の天然リガンド(天然グルカゴン、天然GLP-1及び天然GIP)に比べて、約0.001%以上、約0.01%以上、約0.1%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上であるが、有意に増加する範囲であれば特にこれらに限定されるものではない。
【0100】
ここで、受容体に対する活性は、天然のものに比べて、受容体に対するin vitro活性が約0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、約200%以上である例が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明における「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などが全て含まれる範囲であり、約という用語の後に続く数値と同等又は同程度の範囲の数値が全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
このような三重活性体のin vitro活性を測定する方法を本願明細書の実験例1に示すが、特にこれに限定されるものではない。
【0103】
一方、前記ペプチドは、次のi)~iii)の1つ以上、2つ以上、特に3つの活性を有すること、具体的には有意な活性を有することを特徴とする。
i)GLP-1受容体の活性化
ii)グルカゴン受容体の活性化
iii)GIP受容体の活性化
【0104】
ここで、受容体を活性化するとは、天然のものに比べて、受容体に対するin vitro活性を約0.001%以上、約0.01%以上、約0.1%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上にすることを意味する。しかし、これらに限定されるものではない。
【0105】
また、前記ペプチドは、天然GLP-1、天然グルカゴン及び天然GIPのいずれかに比べて、体内半減期が延長されたものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0106】
このような前記ペプチドは、天然に存在しない(non-naturally occurring)ものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0107】
本発明に特定配列番号で「表される」ペプチドと記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一又は相当する活性を有するものであれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加、自然発生する突然変異、又はその非表現突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、このような配列付加又は突然変異を有するものも本発明に含まれることは言うまでもない。すなわち、一部の配列に差異があっても、所定レベル以上の相同性を示し、グルカゴン受容体に対する活性を示すものであれば、本発明に含まれる。
【0108】
例えば、本発明のペプチドとして、特許文献1及び2に開示されているものが挙げられる。
【0109】
例えば、本発明のペプチドは、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むものであってもよく、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列からなる(必須に構成される)ものであってもよく、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列と60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上又は95%以上の配列同一性を有するものであってもよく、血管を拡張させて血圧を低下させる効果を有するものであれば、特定配列に限定されるものではない。
【0110】
例えば、本発明のペプチドは、血圧降下機序に重要な役割を果たすグルカゴン受容体に対するin vitro活性が、天然グルカゴンに比べて、約1%以上、約5%以上、約10%以上、約30%以上、約50%以上、約100%以上、約200%以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
具体的には、配列番号21~24、28、29、31、32、37、42、43、50、51~54、56、58、64~73、75~79、82、83、91及び96~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであってもよく、配列番号21~24、28、29、31、32、37、42、43、50、51~54、56、58、64~73、75~79、82、83、91及び96~102のいずれかのアミノ酸配列からなる(必須に構成される)ペプチドであってもよく、配列番号21~24、28、29、31、32、37、42、43、50、51~54、56、58、64~73、75~79、82、83、91及び96~102のいずれかのアミノ酸配列と60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上又は95%以上の配列同一性を有するペプチドであってもよく、血管を拡張させて血圧を低下させる効果を有するものであれば、特定配列に限定されるものではない。
【0112】
本発明における「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列が互いに関連する程度を意味し、百分率で表すことができる。
【0113】
相同性及び同一性は、しばしば互換的に用いられる。
【0114】
任意の2つのペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、例えば非特許文献3のようなデフォルトパラメーターと「FASTA」プログラムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 非特許文献4)(バージョン5.0.0又はそれ以降のバージョン)で行われるように、ニードルマン=ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献5)を用いて決定することができる(GCGプログラムパッケージ(非特許文献6)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献7,8,9)を含む)。例えば、国立生物工学情報センターのBLAST又はClustal Wを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0115】
ペプチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば非特許文献10に開示されているように、非特許文献5などのGAPコンピュータプログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうちより短いものにおける記号の総数で、類似する配列記号(すなわち、アミノ酸)の数を割った値と定義している。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは、(1)一進法比較マトリックス(同一性は1、非同一性は0の値をとる)及び非特許文献11に開示されているように、非特許文献12の加重比較マトリックス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)と、(2)各ギャップに3.0のペナルティ、及び各ギャップの各記号に追加の0.10ペナルティ(又はギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)と、(3)末端ギャップに無ペナルティとを含む。よって、本発明における「相同性」又は「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示すものである。
【0116】
本発明のペプチドは、(i)内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase, eNOS)のリン酸化の増加、並びに/又は(ii)内皮型一酸化窒素合成酵素の発現及び活性の増加という特性を有する。内皮型一酸化窒素合成酵素は、血管内皮細胞において血管を拡張する機能を果たすNO(nitric oxide)をL-アルギニンから合成する酵素であり、血行(blood flow)及び血圧調節の重要な調節因子として知られている。内皮型一酸化窒素合成酵素の抑制により一酸化窒素の産生が抑制されると血管の弛緩が阻害される内皮機能障害をもたらすことが知られている。このような内皮型一酸化窒素合成酵素の活性を増加させることにより、本発明のペプチド又はそれを含む組成物は、個体の血管を拡張させることができる。また、本発明のペプチドは、前述した血管の拡張により、収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)を低下させる血圧降下効果を発揮する。
【0117】
このようなペプチドは、分子内架橋(intramolecular bridge)を含んでもよく(例えば、共有結合的架橋又は非共有結合的架橋)、具体的には環を含む形態であってもよい。例えば、ペプチドの16番目のアミノ酸と20番目のアミノ酸間に環が形成される形態であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0118】
前記環の例として、ラクタム架橋(又はラクタム環)が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0119】
また、前記ペプチドには、目的とする位置に環を形成するアミノ酸を含むことにより環を含むように改変されたものが全て含まれる。
【0120】
例えば、ペプチドの16番目と20番目のアミノ酸対がそれぞれ環を形成するグルタミン酸又はリシンに置換されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0121】
このような環は、前記ペプチド内のアミノ酸側鎖間に形成され、例えばリシンの側鎖とグルタミン酸の側鎖間にラクタム環が形成される形態であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0122】
上記方法の組み合わせにより作製されるペプチドの例として、天然グルカゴンとアミノ酸配列が少なくとも1つ異なり、N末端のアミノ酸残基のα炭素が除去された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、アナログ作製のための様々な方法の組み合わせにより、本発明に用いられるペプチドを作製することができる。
【0123】
また、本発明のペプチドは、活性体分解酵素の認識作用を回避して体内半減期を延長させるために、一部のアミノ酸を他のアミノ酸又は非天然化合物に置換するが、特にこれらに限定されるものではない。
【0124】
具体的には、前記ペプチドのアミノ酸配列のうち2番目のアミノ酸配列の置換により、分解酵素の認識作用を回避して体内半減期を延長させたペプチドであるが、体内の分解酵素の認識作用を回避するためのアミノ酸の置換又は変更であればいなかるものでもよい。
【0125】
また、ペプチドの作製のためのこのような改変には、L型もしくはD型アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸を用いた改変、並びに/あるいは天然配列の修飾、例えば側鎖官能基の改変、分子内の共有結合、一例として側鎖間の環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化などの修飾による改変が全て含まれる。
【0126】
さらに、天然グルカゴンのN及び/又はC末端に少なくとも1つのアミノ酸が付加されたものが全て含まれる。
【0127】
前述したように置換されるか、付加されるアミノ酸としては、ヒトタンパク質において通常観察される20種のアミノ酸だけでなく、異常又は非天然アミノ酸を用いることができる。異常アミノ酸の市販元には、Sigma-Aldrich、ChemPep、Genzyme pharmaceuticalsが含まれる。これらのアミノ酸が含まれるペプチドと定型的なペプチド配列は、民間のペプチド合成会社、例えば米国のAmerican peptide companyやBachem、又は韓国のAnygenにおいて合成及び購入することができる。
【0128】
アミノ酸誘導体も同じ方式で入手することができ、一例として4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)などが挙げられる。
【0129】
また、本発明によるペプチドは、生体内のタンパク質切断酵素から保護して安定性を向上させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾された形態、有機基により保護された形態、又はペプチド末端などにアミノ酸が付加されて改変された形態であってもよい。
【0130】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているので、その電荷を除去するために、N末端のアセチル化(acetylation)及び/又はC末端のアミド化(amidation)を行うが、特にこれらに限定されるものではない。
【0131】
具体的には、本発明のペプチドのN末端又はC末端は、アミノ基(-NH2)又はカルボキシ基(-COOH)を有するが、これらに限定されるものではない。
【0132】
本発明によるペプチドのC末端は、アミド化されたペプチド、もしくは遊離カルボキシ基(-COOH)を有するペプチドであるか、又はC末端が修飾されていないペプチドを含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
一具体例として、前記ペプチドは、C末端がアミド化されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0134】
一具体例として、前記ペプチドは、非グリコシル化されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0135】
本発明のペプチドは、Solid phase合成法により合成することもでき、組換え法により生産することもでき、商業的に依頼して作製することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
また、本発明のペプチドは、その長さに応じてこの分野で周知の方法、例えば自動ペプチド合成機により合成することができ、遺伝子操作技術により産生することができる。
【0137】
具体的には、本発明のペプチドは、標準合成方法、組換え発現システム又は任意の他の当該分野の方法により作製することができる。よって、本発明によるペプチドは、例えば(a)ペプチドを固相もしくは液相法で段階的に又はフラグメント組立により合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法、(b)ペプチドをコードする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法、(c)ペプチドをコードする核酸作製物を無細胞試験管内で発現させ、発現生成物を回収する方法、又は(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによりペプチドのフラグメントを得て、次にフラグメントを連結してペプチドを得ることにより当該ペプチドを回収する方法をはじめとする多くの方法で合成することができる。
【0138】
また、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに、その生体内半減期を延長させるための生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であってもよく、本発明の組成物は、持続型結合体を含むものであってもよい。本明細書における前記生体適合性物質は、キャリアと混用される。
【0139】
本発明における前記ペプチドの結合体は、キャリアが結合されていない前記ペプチドより効力の持続性が向上したものであり、本発明においては、このような結合体を「持続型結合体」という。
【0140】
本発明における「持続型結合体」又は「結合体」とは、前記ペプチドと生体適合性物質が結合された構造を有し、前記生体適合性物質が結合されていないペプチドより効力の持続性が向上したものを意味する。前記持続型結合体における生体適合性物質は、ペプチドに共有結合で連結されたものであるが、特にこれに限定されるものではない。本発明において、前記結合体の一構成要素であるペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、具体的には配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列を含むペプチド又は断片であってもよく、生体適合性物質は、前記ペプチドの半減期を延長させるものであれば、本発明の前記結合体の一構成要素として用いられる。
【0141】
本発明における「生体適合性物質」とは、生理活性物質である本発明のペプチドに結合され、生体適合性物質部又はキャリアに結合されていない生理活性物質より生理活性物質の効力の持続性を向上させることのできる物質を意味する。前記生体適合性物質は、生理活性物質に共有結合で連結されたものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0142】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、ヘパリン及びエラスチンからなる群から選択されるものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0143】
例えば、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域であり、より具体的にはIgG Fc領域であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0144】
本発明のペプチド内の少なくとも1つのアミノ酸側鎖は、生体内で可溶性及び/又は半減期を向上させ、かつ/又はバイオアベイラビリティを増加させるために、このような生体適合性物質に接合される。また、このような改変は、治療学的タンパク質及びペプチドのクリアランス(clearance)を減少させる。
【0145】
前述した生体適合性物質は、水溶性(両親媒性又は親水性)のもの、無毒性のもの及び/又は薬学的に許容されるものであってもよい。
【0146】
なお、このような結合体は、天然に存在しない(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0147】
本発明の具体的な実施例における前記持続型結合体とは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに免疫グロブリンFc領域が互いに連結された形態を意味する。具体的には、前記結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに免疫グロブリンFc領域がリンカーを介して共有結合的に連結されたものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0148】
本発明の一具体例において、前記持続型結合体は、化学式(1)で表されるものであるが、これに限定されるものではない。
【0149】
X-L-F・・・(1)
【0150】
ここで、Xは配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであり、Lはエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであり、Fは免疫グロブリンFc領域であり、-はXとL間、LとF間の共有結合連結を示すものである。
【0151】
化学式(1)の持続型結合体のXは、前述したグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド(三重活性体)であり、具体的には配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列から必須に構成されるペプチド、又は配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドであるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
本発明における「化学式(1)の持続型結合体」は、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドと免疫グロブリンFc領域が互いにリンカーで連結された形態であり、前記結合体は、免疫グロブリンFc領域が結合されていない配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドより効力の持続性が向上したものである。
【0153】
本発明の結合体は、結合体の形態においてもグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して有意な活性を示すので、依然として血管拡張による血圧降下効果を発揮する。
【0154】
具体的には、本発明の結合体は、天然のものに比べて、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及び/又はGIP受容体に対するin vitro活性が約0.01%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、0.7%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
本発明の目的上、前記ペプチド又はその結合体は、天然のものに比べて、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及び/又はGIP受容体に対する活性が約0.01%以上、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
本発明の組成物は、(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、又は(ii)前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体を含むものであってもよく、前記持続型結合体は、向上した体内持続性に基づいて、優れた血圧降下効果を発揮する。
【0157】
前記持続型結合体において、Fは、X、すなわち配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドの半減期を延長させることのできる物質であって、本発明の前記結合体の一構成要素である。
【0158】
化学式(1)の持続型結合体において、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであるXと免疫グロブリンFc領域の連結は、物理結合もしくは化学結合であるか、又は非共有もしくは共有結合であり、具体的には共有結合であるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
また、前記Xは、FがリンカーLを介して連結されたものであってもよい。より具体的には、XとL、及びLとFが共有結合により互いに連結されたものであってもよく、ここで、前記結合体は、化学式(1)の順に、X、L及びFが共有結合によりそれぞれ連結された結合体である。
【0160】
具体的には、化学式(1)の持続型結合体において、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであるXと免疫グロブリンFc領域の連結方法は、リンカーを介して配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドと免疫グロブリンFc領域を互いに連結するものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0161】
前記Fは、免疫グロブリンFc領域であり、より具体的には、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG由来のものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0162】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いたものであり、重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の結合体の一部をなす一構成であってもよい。
【0163】
本明細書において、Fc領域には、免疫グロブリンのパパイン消化により得られる天然配列だけでなく、その誘導体、例えば天然配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより置換されて天然のものとは異なる配列などの改変体も含まれる。前記誘導体、置換体、改変体は、FcRnに結合する能力を保有することを前提とする。本発明において、Fはヒト免疫グロブリン領域であるが、これに限定されるものではない。前記Fは、2本のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2本の鎖のうち1本の鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であるが、これに限定されるものではない。前記窒素原子を介した連結は、リシンのεアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されたものであってもよい。
【0164】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成する反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0165】
一具体例として、前記Fは、そのN末端のプロリンの窒素原子を介して連結されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0166】
前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の化学式(1)の結合体の一部をなす一構成であり、具体的には、化学式(1)のFに該当する。
【0167】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むが、これに限定されるものではない。
【0168】
本発明における免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定のヒンジ配列を含んでもよい。
【0169】
本発明における「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)により免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0170】
本発明における前記ヒンジ配列は、次のアミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して1つのシステイン残基のみ有するように変異したものであるが、これに限定されるものではない。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号103)
【0171】
前記ヒンジ配列は、配列番号103のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して1つのシステイン残基のみ含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみ含む、3~12個のアミノ酸からなるものであるが、これに限定されるものではない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、次の配列を有するものであってもよい。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号104)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号105)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号106)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号107)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号108)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号109)
Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号110)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号111)
Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号112)
Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号113)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号114)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号115)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号116)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号117)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号118)
Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号119)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号120)
Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号121)
Ser-Cys-Pro(配列番号122)
【0172】
より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号113(Pro-Ser-Cys-Pro)又は配列番号122(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の2つの分子が二量体を形成した形態であり、また、本発明の化学式(1)の結合体は、リンカーの一末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の1本の鎖に連結された形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0174】
本発明における「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味し、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個以上のアミノ酸が含まれる。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN末端に含むが、これに限定されるものではない。
【0175】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が欠失した領域であってもよい。
【0176】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体である。しかし、これらに限定されるものではない。
【0177】
本発明における前記免疫グロブリンFc領域は、同一起源のドメインからなる一本鎖免疫グロブリンで構成された二量体又は多量体の形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0178】
また、本発明の持続型結合体の一実施形態として、前記免疫グロブリンFc領域Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体(dimer)であり、ここで、前記Fc領域の二量体FとXは、エチレングリコールの繰り返し単位を含有する1つの同じリンカーLを介して共有結合的に連結されている。本実施形態の具体的な例において、Xは、このようなFc領域の二量体Fの2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみリンカーLを介して共有結合により連結されている。本実施形態のさらに具体的な例において、このようなFc領域二量体Fの2本のポリペプチド鎖のうちXが連結された1本のポリペプチド鎖には、1分子のXのみLを介して共有結合的に連結されている。本実施形態の最も具体的な例において、前記Fはホモ二量体(homodimer)である。
【0179】
他の具体形態において、前記免疫グロブリンFc領域Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されているものであるが、これに限定されるものではない。
【0180】
本発明の持続型結合体の他の実施形態においては、二量体の形態の1つのFc領域に2分子のXが対称に結合されてもよい。ここで、前記免疫グロブリンFcとXは、非ペプチド性リンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、上記例に限定されるものではない。
【0181】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体も含まれる。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0182】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。
【0183】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された誘導体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が欠失した誘導体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された誘導体など、様々な誘導体が用いられる。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を作製する技術は、特許文献3、4などに開示されている。
【0184】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である(非特許文献13)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0185】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させたものであってもよい。
【0186】
また、このようなFc領域は、ヒトや、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得る方法であってもよい。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態において、ヒト由来のFc領域は、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域である。
【0187】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する。
【0188】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核生物、より具体的な実施形態においては大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0189】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、より具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0190】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来のFc領域であってもよく、それらの組み合わせ(combination)又はそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、さらに具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来のものである。一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であるが、これらに限定されるものではない。
【0191】
また、一具体例として、免疫グロブリンFcフラグメントは、ヒトIgG4 Fcの領域であり、各単量体(monomer)の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)により2つの単量体が連結されたホモ二量体(homodimer)形態であってもよく、ここで、ホモ二量体の各単量体は、独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合、すなわち2つの内部のジスルフィド結合(intra-chain形態)を有するものである/有するものであってもよい。各単量体のアミノ酸は、221個のアミノ酸からなり、ホモ二量体を形成するアミノ酸は、全体で442個のアミノ酸からなるが、これらに限定されるものではない。具体的には、免疫グロブリンFcフラグメントは、配列番号123のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有する2つの単量体が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合によりホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであるが、これに限定されるものではない。
【0192】
化学式(1)のFは、配列番号123のアミノ酸配列を有する単量体を含むものであり、前記Fは、配列番号123のアミノ酸配列の単量体のホモ二量体であるが、これらに限定されるものではない。
【0193】
一例として、免疫グロブリンFc領域は、配列番号124のアミノ酸配列(442個のアミノ酸からなる)を含むホモ二量体であるが、これに限定されるものではない。
【0194】
一具体例として、前記免疫グロブリンFc領域とXはグリコシル化されていないが、これに限定されるものではない。
【0195】
一方、本発明において、免疫グロブリンFc領域に関する「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の一本鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の一本鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fc領域からなる群から選択される少なくとも2つの領域から二量体又は多量体を作製することができる。
【0196】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、一本鎖免疫グロブリン定常領域内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFc領域に相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ~4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0197】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、より具体的には、補体依存性細胞傷害(CDC, Complement dependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)のほとんどないIgG4のFcフラグメントである。
【0198】
また、前述した結合体は、天然GLP-1、GIPもしくはグルカゴンより、又はFが修飾されていないXより効力の持続性が向上したものであり、このような結合体には、前述した形態だけでなく、生分解性ナノ粒子に封入された形態などが全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
一方、化学式(1)において、前記Lは、非ペプチド性リンカー、例えばエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであってもよい。
【0200】
本発明における「非ペプチド性リンカー」には、繰り返し単位が少なくとも2つ結合された生体適合性重合体が含まれる。前記繰り返し単位は、ペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに連結される。前記非ペプチド性リンカーは、本発明の結合体の一部をなす一構成であり、化学式(1)のLに該当する。
【0201】
本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であればいかなるものでもよい。本発明における前記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性重合体と混用される。
【0202】
本発明における非ペプチド性リンカーは、末端に反応基を含み、結合体を構成する他の構成要素との反応により結合体を形成することができる。両末端に反応性官能基を有する非ペプチド性リンカーが各反応基を介して化学式(1)のX及びFに結合することにより結合体を形成する場合、前記非ペプチド性リンカー又は非ペプチド性重合体を非ペプチド性重合体連結部(linker moiety)又は非ペプチド性リンカー連結部ともいう。
【0203】
前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカー、例えばポリエチレングリコールであるが、特にこれらに限定されるものではない。また、当該分野で公知のそれらの誘導体や当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体も本発明に含まれる。
【0204】
前記非ペプチド性リンカーの繰り返し単位は、エチレングリコール繰り返し単位であってもよく、具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含むと共に、結合体として構成されるまでは、結合体の作製に用いられる官能基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、前記官能基を介してXとFが連結された形態であるが、これに限定されるものではない。本発明における前記非ペプチド性リンカーは、2つ又は3つ以上の官能基を含み、各官能基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0205】
具体的には、前記リンカーは、化学式(2)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であるが、これに限定されるものではない。
【0206】
・・・(2)
【0207】
ここで、n=10~2400、n=10~480、又はn=50~250であるが、これらに限定されるものではない。
【0208】
前記持続型結合体のPEG部分は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素とその-(CH2CH2O)n-間に介在する酸素原子も含むが、これに限定されるものではない。
【0209】
一具体例として、前記エチレングリコール繰り返し単位は、[OCH2CH2]nで表され、n値は、自然数であって、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が0超~約100kDaになるように決定されるが、これに限定されるものではない。他の具体例として、前記n値は、自然数であって、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が約1~約100kDa、約1~約80kDa、約1~約50kDa、約1~約30kDa、約1~約25kDa、約1~約20kDa、約1~約15kDa、約1~約13kDa、約1~約11kDa、約1~約10kDa、約1~約8kDa、約1~約5kDa、約1~約3.4kDa、約3~約30kDa、約3~約27kDa、約3~約25kDa、約3~約22kDa、約3~約20kDa、約3~約18kDa、約3~約16kDa、約3~約15kDa、約3~約13kDa、約3~約11kDa、約3~約10kDa、約3~約8kDa、約3~約5kDa、約3~約3.4kDa、約8~約30kDa、約8~約27kDa、約8~約25kDa、約8~約22kDa、約8~約20kDa、約8~約18kDa、約8~約16kDa、約8~約15kDa、約8~約13kDa、約8~約11kDa、約8~約10kDa、約9~約15kDa、約9~約14kDa、約9~約13kDa、約9~約12kDa、約9~約11kDa、約9.5~約10.5kDa、又は約10kDaであるが、これらに限定されるものではない。
【0210】
また、具体的な一実施形態における前記結合体は、ペプチド(X)と免疫グロブリンFc領域(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーを介して共有結合により連結された構造であるが、これに限定されるものではない。
【0211】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモポリマー、PEGコポリマー又はモノメチル置換PEGポリマー(mPEG)の形態を包括するものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0212】
本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性を有し、エチレングリコール繰り返し単位を含む重合体であればいかなるものでもよい。前記非ペプチド性重合体の分子量は、0超~約100kDaの範囲、約1~約100kDaの範囲、具体的には約1~約20kDaの範囲、又は約1~約10kDaの範囲であるが、これらに限定されるものではない。また、前記Fに該当するポリペプチドに結合される本発明の非ペプチド性リンカーは、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよい。
【0213】
一具体例として、前記リンカーの両末端は、免疫グロブリンFc領域のチオール基、アミノ基、ヒドロキシル基、及びペプチド(X)のチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシル基に結合されるが、これらに限定されるものではない。
【0214】
具体的には、前記リンカーは、両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びペプチド(X)に結合される反応基、より具体的には、免疫グロブリンFc領域のシステインのチオール基と、N末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置するアミノ基と、C末端に位置するヒドロキシル基とからなる群から選択される少なくとも1つに結合され、ペプチド(X)のシステインのチオール基と、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基と、アジドリシンのアジド基と、ヒドロキシル基とからなる群から選択される少なくとも1つに結合される反応基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0215】
さらに具体的には、前記リンカーの反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0216】
上記において、アルデヒド基の例として、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0217】
上記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0218】
前記リンカーは、上記反応基を介して、免疫グロブリンFc領域であるF、及びペプチド(三重活性体)であるXに連結され、リンカー連結部に変換されてもよい。
【0219】
また、アルデヒド結合による還元性アミノ化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHではN末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。
【0220】
また、前記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、両末端にアルデヒド基を有するものであってもよく、一末端にはマレイミド基、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、又はブチルアルデヒド基を有するものであってもよい。しかし、非ペプチド性リンカーの各末端にF、具体的には免疫グロブリンFc領域とXが結合されるものであれば、特にこれに限定されるものではない。
【0221】
例えば、前記非ペプチド性リンカーの一末端には反応基としてマレイミド基を含み、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基などを含んでもよい。
【0222】
両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、市販されている修飾された反応基を有するポリエチレングリコールを用いることにより、本発明の持続型タンパク質結合体を作製することができる。
【0223】
具体的な一実施形態において、前記非ペプチド性重合体は、Xのシステイン残基、より具体的にはシステインの-SH基に連結されたものであるが、これらに限定されるものではない。
【0224】
例えば、前記Xに該当するペプチドにおいて、10番目のシステイン残基、13番目のシステイン残基、15番目のシステイン残基、17番目のシステイン残基、19番目のシステイン残基、21番目のシステイン残基、24番目のシステイン残基、28番目のシステイン残基、29番目のシステイン残基、30番目のシステイン残基、31番目のシステイン残基、40番目のシステイン残基、又は41番目のシステイン残基に前記非ペプチド性重合体が連結されたものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0225】
具体的には、前記システイン残基の-SH基に非ペプチド性重合体の反応基が連結されてもよい。反応基については前述した通りである。マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はXの-SH基にチオエーテル(thioether)結合で連結することができ、アルデヒド基はF、具体的には免疫グロブリンFcの-NH2基に還元的アミノ化反応により連結することができるが、これらに限定されるものではなく、これらは一例にすぎない。
【0226】
他の具体的な実施形態において、前記非ペプチド性重合体は、Xのリシン残基、より具体的にはリシンのアミノ基に連結されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0227】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2に連結されたものであってもよいが、これは一例にすぎない。
【0228】
マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はペプチドの-SH基にチオエーテル(thioether)結合で連結することができ、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基に還元的アルキル化反応により連結することができるが、これらに限定されるものではなく、これらは一例にすぎない。
【0229】
このような還元的アルキル化により、PEGの一末端に位置する酸素原子に免疫グロブリンFc領域のN末端アミノ基が-CH2CH2CH2-の構造を有するリンカー官能基を介して互いに連結され、-PEG-O-CH2CH2CH2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成することができ、チオエーテル結合により、PEGの一末端がペプチドのシステインに位置する硫黄原子に連結された構造を形成することができる。前述したチオエーテル結合は、化学式(3)の構造を有するものであってもよい。
【0230】
・・・(3)
【0231】
しかし、上記例に特に限定されるものではなく、これは一例にすぎない。
【0232】
また、前記結合体において、リンカーの反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2に連結されたものであってもよいが、これは一例にすぎない。
【0233】
さらに、前記結合体において、本発明によるペプチドは、反応基を有するリンカーにC末端を介して連結されてもよいが、これは一例にすぎない。
【0234】
本発明における「C末端」とは、ペプチドのカルボキシ末端を意味し、本発明の目的上、リンカーに結合する位置を意味する。例えば、これらに限定されるものではないが、C末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、C末端周辺のアミノ酸残基が全て含まれ、具体的には最末端から1~20番目のアミノ酸残基が含まれる。
【0235】
また、前述した結合体は、Fが修飾されていないXより効力の持続性が向上したものであり、このような結合体には、前述した形態だけでなく、生分解性ナノ粒子に封入された形態などが全て含まれる。
【0236】
本明細書において特に断らない限り、本発明による「ペプチド」又はそのペプチドが生体適合性物質に共有結合で連結された「結合体」についての明細書の詳細な説明や請求の範囲の記述は、当該ペプチド又は結合体は言うまでもなく、当該ペプチド又は結合体の塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容される塩)、又はその溶媒和物の形態が全て含まれるカテゴリーにも適用される。よって、明細書に「ペプチド」又は「結合体」とのみ記載されていたとしても、当該記載内容はその特定の塩、その特定の溶媒和物、その特定の塩の特定の溶媒和物にも同様に適用される。これらの塩の形態は、例えば薬学的に許容される任意の塩を用いた形態であってもよい。前記塩の種類は、特に限定されるものではない。もっとも、個体、例えば哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0237】
前記塩の種類は、特に限定されるものではない。もっとも、個体、例えば哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0238】
前記「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用できる物質を意味する。
【0239】
本発明における「薬学的に許容される塩」には、薬学的に許容される無機酸、有機酸又は塩基から誘導された塩が含まれる。好適な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。好適な塩基から誘導された塩には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アンモニウムなどが含まれる。
【0240】
また、本発明における「溶媒和物」とは、本発明によるペプチド又はその塩が溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0241】
本発明による組成物は、ペプチド(三重活性体)又はその結合体を含むものであってもよく、具体的には、薬理学的有効量のペプチド又はその結合体を含むものであってもよい。また、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。本発明の組成物は、血圧降下用途を有するものであってもよい。あるいは、高血圧の予防、治療又は改善用途を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0242】
本発明における「薬学的に許容される」とは、治療効果を発揮する程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、同時に用いられる薬物などの医学分野における公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
【0243】
薬学的に許容される担体は、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容される担体と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、使い捨てアンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0244】
なお、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0245】
また、本発明の組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれかの剤形を有してもよい。
【0246】
さらに、前記結合体は、生理食塩水や有機溶媒のように薬剤に許容される様々な担体(carrier)と混合して用いることができ、安定性や吸収性を向上させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)、グルタチオンなどの抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質、他の安定化剤(stabilizers)などを薬剤として用いることができる。
【0247】
本発明の組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類により決定される。具体的には、本発明の組成物は、前記ペプチド又はその結合体を薬学的有効量で含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0248】
前記ペプチド又はその結合体を薬学的有効量で含むとは、ペプチド又はその結合体による目的とする薬理活性(例えば、血圧降下)が得られる程度に含むことを意味し、また、投与される個体に毒性や副作用がないか、僅かなレベルであって、薬学的に許容されるレベルで含むことを意味するが、これらに限定されるものではない。このような薬学的有効量は、投与回数、患者、剤形などを総合的に考慮して決定される。
【0249】
本発明の前記薬学的組成物は、上記成分(有効成分)を0.01~99重量対体積%で含有するが、特にこれに限定されるものではない。
【0250】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与量(single dose)で患者に投与してもよく、複数回投与量(multiple dose)で長期間投与する分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量を変えてもよい。具体的には、本発明のペプチド又はその持続型結合体の総用量は、1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましい。しかし、前記ペプチド又はその持続型結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率などの様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、これらを考慮すると、当該分野における通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができるであろう。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏するものであれば、その剤形、投与経路及び投与方法が特に限定されるものではない。
【0251】
例えば、本発明の組成物は、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、又は1カ月に1回投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0252】
以上の内容は、本発明の他の具体例又は他の態様にも適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0253】
本発明を実現する他の態様は、ペプチド、その結合体又はそれを含む組成物を個体に投与するステップを含む血圧降下方法である。
【0254】
前記ペプチド、その結合体、組成物及び血圧降下については前述した通りである。
【0255】
本発明における前記個体とは、血圧降下が有利に働く個体であり、ヒトをはじめとしてマウス、家畜などが含まれる哺乳動物を意味するが、本発明のペプチド、その結合体又はそれを含む組成物による血圧降下効果が有利に働く個体であればいかなるものでもよい。特に、メタボリックシンドローム又は肝疾患を有する個体であるが、これらに限定されるものではない。一具体例として、前記個体は、肥満を有する個体、脂肪肝を有する個体、又は肥満及び脂肪肝を有する個体であるが、これらに限定されるものではない。
【0256】
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者(個体)に所定の物質を導入することを意味し、前記ペプチド、その結合体又はそれを含む組成物の投与経路は、特にこれらに限定されるものではないが、前記ペプチド、その結合体又はそれを含む組成物を生体内の標的に送達できるあらゆる一般的な経路で投与することができ、例えば腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられる。
【0257】
一実施例において、非経口投与することができ、皮下投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0258】
また、前記ペプチド、その結合体又はそれを含む組成物は、薬学的分野における通常の方法による患者の体内投与に適した単位投与型の製剤、具体的にはタンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化し、当該技術分野で通常用いる投与方法を用いて経口、又は皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路が含まれる非経口投与経路で投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0259】
本発明のペプチド、その結合体又はそれを含む組成物は、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、又は1カ月に1回投与するものであるが、これらに限定されるものではない。一実施例において、前記組成物は、1週間に1回非経口投与するものであるが、これに限定されるものではない。
【0260】
また、一実施例において、前記組成物は、4週間にわたって週に1回投与し、その後用量を増加して週に1回投与するものであるが、これに限定されるものではない。
【0261】
本発明の方法は、前記ペプチド又はその結合体を含む組成物を薬学的有効量で投与するステップを含んでもよい。好適な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否か、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に又は同時に投与される薬物をはじめとする様々な因子や、医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる量であることが好ましい。
【0262】
一実施例において、前記ペプチド又は持続型結合体は、1週間に1回0.1~15mgを非経口投与するものであるが、これに限定されるものではない。
【0263】
本発明の前記ペプチド又は持続型結合体の1週間投与用量は、0.1~15mg、0.1~14mg、1~14mg、1~13mg、1~10mg、1~9mg、1.5~10mg、1.5~3mg、1.5~2.5mg、2mg、2~10mg、2.5~5mg、2.5~4.5mg、3~4.5mg、4mg、3.5~10mg、4~9.5mg、4.5~8.5mg、5~7mg、5.5~7mg、5.5~6.5mg、6mg、6~10mg、6~9mg、6.5~9.5mg、7~9mg、7.5~9.5mg、7.5~8.5mg、8mgであるが、これらに限定されるものではない。
【0264】
本発明の前記持続型結合体の1週間投与用量は、0.1~15mg、0.1~14mg、1~14mg、1~13mg、1~10mg、1~9mg、1.5~10mg、1.5~3mg、1.5~2.5mg、2mg、2~10mg、2.5~5mg、2.5~4.5mg、3~4.5mg、4mg、3.5~10mg、4~9.5mg、4.5~8.5mg、5~7mg、5.5~7mg、5.5~6.5mg、6mg、6~10mg、6~9mg、6.5~9.5mg、7~9mg、7.5~9.5mg、7.5~8.5mg、8mgであるが、これらに限定されるものではない。
【0265】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、4週間にわたって週に1回1mg~10mgを非経口投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0266】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記持続型結合体は、4週間にわたって週に1回1mg~10mgを非経口投与するものであるが、これに限定されるものではない。
【0267】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチド又は持続型結合体は、4週間にわたって週に1回2mg、4mg、6mg又は8mgを非経口投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0268】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記持続型結合体は、4週間にわたって週に1回2mg、4mg、6mg又は8mgを非経口投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0269】
本発明を実現するさらに他の態様は、ペプチド又はその結合体の血圧降下用途である。
【0270】
本発明を実現するさらに他の態様は、ペプチド又はその血圧降下用途を有する薬剤の製造のための用途である。
【0271】
前記ペプチド、その結合体、組成物及び血圧降下については前述した通りである。
【0272】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0273】
三重活性体の作製
GLP-1、GIP及びグルカゴン受容体の全てに対して活性を示す三重活性体を作製した。表1にその配列を示す。
【0274】
【表1】






【0275】
表1に示す配列において、Xで表記したアミノ酸は非天然アミノ酸であるAib(2-aminoisobutyric acid)であり、下線及び太字で示すアミノ酸は互いに環を形成することを意味する。また、表1において、CAは4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)を意味し、Yはチロシンを意味する。
【実施例2】
【0276】
三重活性体の持続型結合体の作製
両末端にそれぞれマレイミド基及びアルデヒド基を有する10kDaのPEG、すなわちマレイミド-PEG-アルデヒド(10kDa,NOF, 日本)を実施例1の三重活性体(配列番号21、22、42、43、50、77及び96)のシステイン残基にペグ化するために、三重活性体とマレイミド-PEG-アルデヒドのモル比を1:1~3とし、タンパク質の濃度を1~5mg/mlとし、低温で0.5~3時間反応させた。ここで、反応は、50mM Tris緩衝液(pH7.5)に20~60%イソプロパノールを添加した環境下で行った。反応終了後に、上記反応液をSPセファロースHP(GE healthcare, 米国)に適用し、システインにモノペグ化された三重活性体を精製した。
【0277】
次に、前述したように精製したモノペグ化された三重活性体と免疫グロブリンFc(配列番号123のホモ二量体)のモル比を1:1~5とし、タンパク質の濃度を10~50mg/mlとし、4~8℃で12~18時間反応させた。反応は、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤である10~50mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムと10~30%イソプロパノールを添加した環境下で行った。反応終了後に、上記反応液をブチルセファロースFF精製カラム(GE healthcare, 米国)とSource ISO精製カラム(GE healthcare, 米国)に適用し、三重活性体と免疫グロブリンFcとを含む結合体を精製した。精製した持続型結合体は、分子内において三重活性体ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、Fc二量体が1:1:1のモル比で共有結合により連結された構造であり、PEGリンカーは、Fc二量体の2本のポリペプチド鎖のうち1本の鎖にのみ連結されている。
【0278】
一方、前記免疫グロブリンFcは、配列番号123のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有する2つの単量体が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間にジスルフィド結合によりホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合が形成されたものである。
【0279】
作製後に逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーで分析した純度は95%以上であった。
【0280】
ここで、配列番号21の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGリンカーを介して連結された結合体を「配列番号21と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号21の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0281】
ここで、配列番号22の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGリンカーを介して連結された結合体を「配列番号22と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号22の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0282】
ここで、配列番号42の三重活性体と免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を「配列番号42と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号42の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0283】
ここで、配列番号43の三重活性体と免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を「配列番号43と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号43の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0284】
ここで、配列番号50の三重活性体と免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を「配列番号50と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号50の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0285】
ここで、配列番号77の三重活性体と免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を「配列番号77と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号77の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0286】
ここで、配列番号96の三重活性体と免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を「配列番号96と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号96の持続型結合体」と命名した。これらは、本発明において混用される。
【0287】
実験例1:三重活性体及びその持続型結合体のin vitro活性の測定
実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体の活性を測定するために、GLP-1受容体、グルカゴン(GCG)受容体及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を用いて、in vitroで細胞活性を測定する方法を行った。
【0288】
前記各細胞株は、CHO(chinese hamster ovary)がヒトGLP-1受容体、ヒトGCG受容体及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GLP-1、GCG及びGIPの活性を測定するのに適している。よって、それぞれの形質転換細胞株を用いて各部分の活性を測定した。
【0289】
実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体のGLP-1活性の測定のために、ヒトGLP-1を50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前述したように培養したヒトGLP-1受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。上記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer, USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGLP-1に対する相対力価を表2と表3に示す。
【0290】
実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体のGCG活性の測定のために、ヒトGCGを50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前述したように培養したヒトGCG受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。上記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer, USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGCGに対する相対力価を表2と表3に示す。
【0291】
実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体のGIP活性の測定のために、ヒトGIPを50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1及び2で作製した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前述したように培養したヒトGIP受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。上記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer, USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGIPに対する相対力価を表2と表3に示す。
【0292】
【表2】




【0293】
【表3】

【0294】
前記三重活性体及びその結合体は、GLP-1受容体、GIP受容体及びグルカゴン受容体の全てを活性化させる三重活性体としての機能を有する。
【0295】
実験例2:三重活性体持続型結合体のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC: Human umbilical vein endothelial cell)の血管拡張機能の確認
実施例1及び2で作製した配列番号42の持続型結合体の心血管疾患に対する効果を評価するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC: Human umbilical vein endothelial cell)を用いて、in vitro血管拡張指標として用いられる内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS: endothelial nitric oxide synthase)のリン酸化を測定することにより、内皮型一酸化窒素合成酵素の発現及び活性の程度を確認した。
【0296】
実施例1及び2で作製した三重活性体持続型結合体の血管拡張機能を評価するために、配列番号42の持続型結合体の賦形剤のみで処理した対照群、配列番号42の持続型結合体(10μM)処理群、及びリラグルチド(50μM)処理群における効果を同時に評価できるようにヒト臍帯静脈内皮細胞を培養した。前述したように培養した細胞に各物質を添加し、1時間後に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を用いて細胞を溶解させ、ウェスタンブロット(western blot)により各細胞における内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化の程度を確認し、相互比較した(図1)。
【0297】
その結果、本発明による三重活性体持続型結合体は、ヒト臍帯静脈内皮細胞において、三重活性体持続型結合体の賦形剤のみで処理した対照群、及びリラグルチド(50μM)で処理した比較群に比べて、内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化が有意に増加することが確認された。これは、三重活性体持続型結合体が血管拡張機能を有することを意味するので、目的とする疾患の治療的物質として有用であることを示唆するものである。
【0298】
内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化の程度はbeta-actinにより補正し、統計処理は1元ANOVAを用いて対照群と試験群を比較した。
【0299】
実験例3:三重活性体持続型結合体の血圧降下効果の確認
実施例1及び2で作製した配列番号42の持続型結合体の血圧降下効果を直接確認するために、次の実験を行った。
【0300】
配列番号42の持続型結合体をヒトに0.01~0.08mg/kgで反復皮下投与し、投与前と比較した投与12週間後の血圧降下効果を確認した。
【0301】
具体的には、対照群(placebo)には免疫グロブリンFc領域とPEGのみ連結された結合体(配列番号42の三重活性体は含まない)を含む無色の滅菌溶液を投与し、実験群には異なる投与量(0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.04mg/kg、0.06mg/kg及び0.08mg/kg)で投与し、投与後継続して血圧を測定(24-hour ABPM, ambulatory blood pressure monitoring)し、心拍数(HR)、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)及び心筋酸素消費量(RPP, Rate pressure product)を測定した。
【0302】
その結果、本発明の配列番号42の持続型結合体を投与した全てのヒトにおいて、収縮期血圧及び拡張期血圧が対照群に比べて減少することが確認された。よって、本発明の三重活性体持続型結合体が血圧降下効果を有することが確認された(表4)。
【0303】
【表4】
【0304】
これらの結果から、本発明の三重活性体持続型結合体によりヒトにおいて血管拡張が引き起こされ、それにより血圧降下効果が得られることが確認された。これは、血圧降下が求められる様々な疾病の治療剤として本発明の三重活性体が有用であることを示唆するものである。
【0305】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
【配列表】
2023538236000001.app
【国際調査報告】