(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ガイドワイヤセンシング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20230831BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230831BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B10/00 K
G01N21/64 Z
G01N21/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507438
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 AU2021050845
(87)【国際公開番号】W WO2022027094
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021674
【氏名又は名称】ベイカー ハート アンド ダイアベーツ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター,カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユン-チー
(72)【発明者】
【氏名】ストッダート,ポール
(72)【発明者】
【氏名】デル ロザル ラベス,ブランカ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター,ミルセア
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043AA04
2G043BA16
2G043BA17
2G043CA05
2G043CA09
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA03
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2G043HA01
2G043HA03
2G043HA05
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2G043JA01
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2G043JA03
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2G043KA02
2G043KA09
2G043LA01
2G043LA02
2G043LA03
2G043MA01
2G043MA11
2G043NA13
(57)【要約】
【解決手段】 生物学的被検体の血管内でセンシングを行うセンシング装置。センシング装置は、生物学的被検体の血管内に位置決めされるように構成されるガイドワイヤであって、遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓、ガイドワイヤの近位端から窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ、および窓に近接して位置決めされて光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器を含むガイドワイヤを含む。円錐形反射器は、光ファイバから放出された刺激放射を反射して、刺激放射が窓を実質的に半径方向に通過するようにし、それによって血管を刺激放射に露出させるように、そして血管内から放出された試料放射を反射して試料放射を光ファイバに伝達するように構成される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 生物学的被検体の血管内に位置決めされるように構成されるガイドワイヤであって:
i) 遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓;
ii) 前記ガイドワイヤの近位端から前記窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ;および、
iii) 前記窓に近接して位置決めされ、光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器であって:
(1) 前記光ファイバから放出された刺激放射を反射して、前記刺激放射が前記窓を実質的に半径方向に通過するようにし、それによって前記血管を前記刺激放射に露出させるように;そして、
(2) 前記血管内から放出された試料放射を反射して前記試料放射を前記光ファイバに伝達するように構成される円錐形反射器;
を含むガイドワイヤ、ならびに、
b) 前記光ファイバに結合され、前記光ファイバを介して刺激放射を放出するように構成される放射源;
c) 前記光ファイバを介して受けられた試料放射を検出するように構成される検出器;ならびに、
d) 一つまたは複数の処理装置であって:
i) 前記検出された試料放射を分析するように;そして、
ii) 前記分析の結果を示す指標を生成するように構成される処理装置、
を含む、生物学的被検体の血管においてセンシングを行うセンシング装置。
【請求項2】
前記反射器と、前記光ファイバの遠位端とのうちの少なくとも一方が支持材料に埋め込まれている、請求項1に記載のセンシング装置。
【請求項3】
前記反射器が反射面コーティングを含む、請求項1または請求項2に記載のセンシング装置。
【請求項4】
前記反射器が:
a) 湾曲した円錐形表面;
b) 刺激放射をコリメートさせるように構成される湾曲した円錐形表面;
c) 少なくとも部分的に放物線状の表面;および、
d) 平坦な円錐形表面、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項5】
前記反射器が前記光ファイバの直径より大きい直径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項6】
前記反射器が:
a) 90°にオフセットした角度で前記光ファイバから刺激放射が放出されるように構成されること;ならびに、
b) 円錐角度であって:
i) 45°から135°の間である;および、
ii) 90°からオフセットしている
円錐角度
を有すること、
のうちの少なくとも一つである、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項7】
前記反射器が:
a) 10μmより大きい;
b) 50μmより大きい;
c) 200μm未満である;および、
d) 約100μmである、
のうちの少なくとも一つの長手方向幅を有する刺激放射の環状ビームを生成するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項8】
前記光ファイバが:
a) マルチモード光ファイバ;および、
b) ダブルクラッド光ファイバ、
のうちの少なくとも一つである、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項9】
前記光ファイバが、ダブルクラッド光ファイバである、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンシング装置であって、前記ダブルクラッドファイバの遠位端に結合されたビーム拡大器を含み、前記ビーム拡大器が、回折によって前記刺激放射を拡大して、反射器の直径と類似のまたはそれより小さい直径を刺激放射のビームが有するように構成される、センシング装置。
【請求項10】
前記ビーム拡大器が、前記ダブルクラッド光ファイバに継ぎ合わされたマルチモードファイバを含む、請求項9に記載のセンシング装置。
【請求項11】
前記放射源がレーザダイオードを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項12】
前記放射源が600nmから900nmの範囲の放射を生成する、請求項1から11のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項13】
前記試料放射が検出器に到達する前に試料放射をフィルタリングするように構成されるフィルタを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項14】
前記フィルタが:
a) 前記刺激放射の波長より大きい波長を有する放射を透過させること;
b) 前記刺激放射の波長より20nm以上大きい波長を有する放射を透過させること;および、
c) 刺激放射を抑制すること、
のうちの少なくとも一つを行うように構成されるロングパスフィルタである、請求項1から13のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項15】
前記検出器と前記放射源とを前記光ファイバに結合するように構成されるカプラを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項16】
少なくとも前記検出器と放射源とを含む読み取り器を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項17】
前記光ファイバを前記読み取り器から物理的に切り離すコネクタを含む、請求項16に記載のセンシング装置。
【請求項18】
後方散乱された刺激放射を検出するように構成される第2の検出器を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項19】
横断方向には柔軟であるが、長手方向にはおよび長手方向軸周りの回転移動下では硬い金属製シースを、前記ガイドワイヤが含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項20】
前記ガイドワイヤが:
a) 放射線不透過性の無外傷性先端部;および、
b) 遠位端にある成形可能な区分、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項21】
前記ガイドワイヤが:
a)
i) 1.5から2.0m;
ii) 1.75から1.9m;および、
iii) 近似的に1.85m;
のうちの少なくとも一つの作業長さ、ならびに、
b)
i) 300μmから400μm;
ii) 325μmから375μm;および、
iii) 近似的に350μm、
のうちの少なくとも一つの外径、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項22】
a) 前記検出器から受けられた信号に基づいて試料放射特性を決定すること;
b) 前記試料放射特性を使用して、前記血管内に特徴が存在するかどうかを特定すること;および、
c) 特徴が存在する場合には、指標を生成すること、
によって前記試料放射を分析するように一つまたは複数の処理装置が構成される、請求項1から21のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項23】
前記試料放射特性が:
a) 試料放射の測定された強度;
b) 試料放射の測定された強度から導出された値;および
c) 試料放射の測定された強度の変化、
のうちの少なくとも一つを示す、請求項22に記載のセンシング装置。
【請求項24】
前記一つまたは複数の処理装置が:
a) 前記検出器からの信号に基づいて試料放射の強度を決定すること;
b) 前記強度を閾値と比較すること;および、
c) 前記強度が前記閾値を超える場合には、指標を生成すること、
によって前記試料放射を分析するように構成される、請求項1から23のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項25】
前記一つまたは複数の処理装置が:
a) 試料放射の測定された強度を:
i) 後方散乱された刺激放射の測定された強度;および、
ii) バックグラウンド放射の測定された強度、
のうちの少なくとも一つに基づいて正規化すること;ならびに、
b) 前記閾値を:
i) 後方散乱された刺激放射の測定された強度;
ii) バックグラウンド放射の測定された強度;および、
iii) 後方散乱された刺激放射の測定された強度およびバックグラウンド放射の測定された強度に基づく複合値、
のうちの少なくとも一つに基づいて選択すること、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項24に記載のセンシング装置。
【請求項26】
a) 触覚的フィードバック;
b) 前記指標を示す可聴性出力;および、
c) 前記指標を示す視覚的出力、
のうちの少なくとも一つを生成するように構成される出力を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項27】
前記試料放射が:
a) ラマン散乱;
b) 蛍光;および、
c) 自家蛍光、
のうちの少なくとも一つの結果として放出される、請求項1から26のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項28】
前記試料放射が血管内の粥腫から放出される、請求項1から27のいずれか一項に記載のセンシング装置。
【請求項29】
前記指標が:
a) 脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の存在;および、
b) 脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の脆弱性の程度、
のうちの少なくとも一つを示す、請求項1から28のいずれか1項に記載のセンシング装置。
【請求項30】
a) 生物学的被検体の血管内にガイドワイヤを位置決めすることであって、前記ガイドワイヤが:
i) 前記ガイドワイヤの遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓;
ii) 前記ガイドワイヤの近位端から前記窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ;および、
iii) 前記窓に近接して位置決めされ、前記光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器であって:
(1) 前記光ファイバから放出された刺激放射を反射して、前記刺激放射が前記窓を実質的に半径方向に通過するようにし、それによって前記血管を前記刺激放射に露出させるように;そして、
(2) 前記血管内から放出された試料放射を反射して前記試料放射を前記光ファイバに伝達するように
構成される円錐形の反射器
を含むこと;
b) 前記光ファイバに結合された放射源を使用して、前記光ファイバを介して刺激放射を放出すること;
c) 検出器を使用して、前記光ファイバを介して受けられた試料放射を検出すること;ならびに、
d) 一つまたは複数の処理装置を使用して:
i) 前記検出された試料放射を分析し;
ii) 前記分析の結果を示す指標を生成すること、
を含む、センシング方法。
【請求項31】
前記血管内で前記ガイドワイヤを移動させることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記一つまたは複数の処理装置において:
a) 前記検出器からの受けられた信号に基づいて試料放射特性を決定すること;
b) 前記試料放射特性を使用して、前記血管内に特徴が存在するかどうかを特定すること;および、
c) 特徴が存在するならば、指標を生成すること、
によって試料放射を分析することを含む、請求項30または請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記試料放射特性が:
a) 試料放射の測定された強度;
b) 試料放射の測定された強度から導出された値;および、
c) 試料放射の測定された強度の変化、
のうちの少なくとも一つを示す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記一つまたは複数の処理装置において:
a) 前記検出器からの信号に基づいて試料放射の強度を決定すること;
b) 前記強度を閾値と比較すること;および、
c) 前記強度が閾値を超えるならば、指標を生成すること、
によって前記試料放射を分析することを含む、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記一つまたは複数の処理装置において:
a) 試料放射の測定された強度を:
i) 後方散乱された刺激放射の測定された強度;および、
ii) バックグラウンド放射の測定された強度、
のうちの少なくとも一つに基づいて正規化すること;ならびに、
b) 前記閾値を:
i) 後方散乱された刺激放射の測定された強度;
ii) バックグラウンド放射の測定された強度;および、
iii) 後方散乱された刺激放射の測定された強度とバックグラウンド放射の測定された強度とに基づく複合値、
のうちの少なくとも一つに基づいて選択すること、
のうちの少なくとも一つを含む、方法請求項34に記載の方法。
【請求項36】
a) 指標が生成されるまで、血管内で前記ガイドワイヤを移動させること;および、
b) 前記ガイドワイヤの位置に基づいて、脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の場所を特定すること、
を含む、請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
指標の出力に応答して:
a) 前記ガイドワイヤを前記読み取り器から切り離すこと;
b) 前記ガイドワイヤ上で前記血管にカテーテルを挿入すること;および、
c) 前記カテーテルを使用して処置を行うこと、
を含む、請求項30から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
生物学的被検体の血管内に位置決めされるように構成される、生物学的被検体の血管内でセンシングを実行するセンシング装置用ガイドワイヤであって:
a) 遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓;
b) 前記ガイドワイヤの近位端から前記窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ;
c) 前記窓に近接して位置決めされ、前記光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器であって:
i) 前記光ファイバから放出された刺激放射を反射して、前記窓を実質的に放射状に前記刺激放射が通過するようにし、それによって前記血管を刺激放射に露出させるように;そして、
ii) 前記血管内から放出された試料放射を反射して前記試料放射を前記光ファイバに伝達するように構成される円錐形反射器、
を含むガイドワイヤ。
【請求項39】
前記反射器と、前記光ファイバの遠位端とのうちの少なくとも一方が支持材料に埋め込まれている、請求項38に記載のガイドワイヤ。
【請求項40】
前記反射器が反射面コーティングを含む、請求項38または請求項39に記載のガイドワイヤ。
【請求項41】
前記反射器が:
a) 湾曲した円錐形表面;
b) 刺激放射をコリメートさせるように構成される湾曲した円錐形表面;
c) 少なくとも部分的に放物線状の表面;および、
d) 平坦な円錐形表面、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項38から請求項40のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項42】
前記反射器が:
a) 10μmより大きい;
b) 50μmより大きい;
c) 200μm未満である;および、
d) 約100μmである、
のうちの少なくとも一つである長手方向幅を有する、刺激放射の環状ビームを生成する、請求項38から41のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項43】
前記光ファイバが:
a) マルチモード光ファイバ;および、
b) ダブルクラッド光ファイバ、
のうちの少なくとも一つである、請求項38から42のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項44】
前記光ファイバが、ダブルクラッド光ファイバであり、前記装置が、前記ダブルクラッドファイバの遠位端に結合されたビーム拡大器を含み、前記ビーム拡大器が、前記反射器の直径と類似の直径を前記刺激放射のビームが有するように回折によって前記刺激放射を拡大可能にするように構成される、請求項38から42のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項45】
前記ビーム拡大器が、前記ダブルクラッド光ファイバに継ぎ合わされたマルチモードファイバを含む、請求項44に記載のガイドワイヤ。
【請求項46】
前記光ファイバを読み取り器から物理的に切り離すコネクタを含む、請求項38から45のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項47】
横断方向には柔軟であるが、長手方向にはおよび長手方向軸回りの回転移動下では剛性である金属製シースを含む、請求項38から46のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項48】
a) 放射線不透過性の無外傷性先端部;および、
b) 遠位端にある成形可能な区分、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項38から47のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項49】
a)
i) 1.5から2.0m;
ii) 1.75から1.9m;および、
iii) 近似的に1.85m、
のうちの少なくとも一つの作業長さ;ならびに、
b)
i) 300μmから400μm;
ii) 325μmから375μm;および、
iii) 近似的に350μm、
の少なくとも一つの外径、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項38から48のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的被検体の血管中でセンシングを実行するセンシング装置および関連する方法に関するものであり、一詳細実施例では、ガイドワイヤを使用して血管内でセンシングを実行し、例えば脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫を検出するセンシング装置および付随する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、いかなる先行公開文献(またはそれらに由来する情報)、またはいかなる公知の事項への言及であっても、それは、その先行公開文献(またはそれに由来する情報)または公知の事項が、本明細書の関連する試みの分野における共通の一般知識の一部をなしているということを、自覚している、または自認している、またはいかなる形であっても示唆しているとはみなされるものではなく、またそうでないのが望ましい。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は現在、世界的に死亡率および罹患率の主要原因である。アテローム性動脈硬化症粥腫は、身体の様々な部位の様々な動脈に影響を及ぼして、多数の臨床提示につながる可能性がある。これらの病変は、何年もの間、全く無症状である可能性があり、労作性狭心症のような安定した症状を呈する可能性があり、または突然、心筋梗塞または脳卒中のような、生命の危険性のある合併症につながる可能性がある。
【0004】
泡沫細胞(脂質で満たされたマクロファージ)から構成される脂肪縞は、アテローム性動脈硬化症の最早期の病変である。これらの脂肪縞は無害であり、完全に可逆的である。これらのうちの一部だけが、アテローム性動脈硬化症のさらに進んだステージに進行する。さらに進行した粥腫は不可逆的となり、様々な割合の細胞(平滑筋細胞、マクロファージ、T細胞を含む)、細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン類を含む)、および脂質(細胞内および細胞外)を含有する。様々な形態学的タイプの粥腫が、それらの組成に応じて出現する。いくつかは、脂質に富んだ核を伴わない線維性組織と石灰化からなる線維性粥腫であり、またいくつかは、線維性薄被膜で覆われ脂質に富んだ核を伴う線維性アテロームになる。
【0005】
アテローム性動脈硬化症は、広く炎症性疾患とみなされている。炎症細胞は、粥腫の進行の病因においてのみならず、粥腫の不安定化(炎症性サイトカインおよびタンパク質分解酵素が、粥腫破綻および合併症につながる線維性薄膜の破壊を引き起こす)においても重要な役割を演じている。
【0006】
アテローム性動脈硬化症粥腫の発達は、非常に多様である。いくつかの粥腫は、何年も静穏なままであり、いくつかの粥腫は、粥腫破綻またはびらんにつながる複雑な粥腫となる。複雑な粥腫は、血栓症や動脈の閉塞の原因となり、潜在的に破滅的な結果をもたらす。粥腫破綻は、冠状動脈血栓症の最も一般的な原因である。
【0007】
一般に易破綻性として知られる、急速に進行して血栓症または破綻に至りやすい粥腫は、「高リスク/脆弱な粥腫」と呼ばれる。脆弱な粥腫の特徴である薄被膜線維性粥腫(TCFA)は、いくつかの古典的な形態学的特徴、すなわち、<65μmという線維性薄被膜、大きな壊死性核、粥腫炎症の増加、血管のポジティブリモデリング、微小血管の血管新生の増加、および粥腫内出血を有することが記載されている。
【0008】
しかしながら、心臓血管医学の分野における広範な進歩にもかかわらず、合併症を起こしやすい粥腫(高リスク/脆弱な粥腫)を、それらが破綻する前に早期検出できるかどうかは、依然として不明である。
【0009】
TCFAを検出するために,いくつかの侵襲的な粥腫撮像技術が開発されつつある。これらの方法は、現状では理想からは程遠く、脆弱な粥腫の特徴の全てではなく一部しか検出できない可能性がある。例えば、IVUS(血管内超音波)は、ポジティブリモデリングを検出することができるが、100から250μmの分解能では、線維性被膜の厚さや粥腫の炎症を検出することは不可能である。IVUS-VH(Virtual Histology(仮想組織学))は、IVUSの後方散乱高周波信号を使用して粥腫の組成、詳細には壊死性核を検出する。一方、高分解能(10~15μm)の光干渉断層撮影(OCT)は、線維性薄被膜、マクロファージ、壊死性核の検出用に提案されているが、ポジティブリモデリングには好適ではない。
【0010】
他の登場してきた方法には、血管内MRI(壊死性核の検出のため)、血管造影(粥腫の表面外観の可視化のため)、サーモグラフィー(粥腫の代謝活動の検出のため)および分光学が含まれる。
【0011】
アテローム性動脈硬化症粥腫の特性評価および検出には、様々なタイプの分光学的撮像が使用されてきた。アテローム性動脈硬化症の化学組成については、様々なエクスビボのヒトアテローム性動脈硬化症粥腫において、ラマン分光法やフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による分析に成功している。
【0012】
赤外反射分光法は、インビボおよびインビトロの両方で、様々な粥腫成分をそれらの特徴的な吸光度/反射率特性に基づいて差別化できることが示されている。インフラレドックス・インコーポレーティッド社(InfraReDx, Inc.)(バーリントン(Burlington)、マサチューセッツ州、米国)は、この技術を用いた冠動脈内プローブを開発し、後にIVUSと組み合わせた(LipiScan IVUSシステム)。SPECTACL(SPECTroscopic Assessment of Coronary Lipid(冠動脈脂質の分光学的評価))試験は、生きた患者においてNIRS(Near Infra-Red Spectroscopy(近赤外分光))システムによる脂質核含有粥腫検出の安全性と実現可能性を示した最初のヒト多施設研究である。
【0013】
UV(Ultra-Violet(紫外線))蛍光分光法は、アテローム性動脈硬化症粥腫の分光学的評価の別のモダリティとして使用される。コラーゲン、エラスチン、いくつかの細胞外脂質、およびセロイド類/リポフスチンなどの粥腫の成分のいくつかは、紫外光、および紫色から青色(325から475nm)の範囲の可視光によって励起されると固有の蛍光を有することが示されている。しかし、UV蛍光は、光子吸収およびかなりの組織自家蛍光を含め、複数の欠点を抱えており、このやり方での粥腫の検出を問題のあるものにしている。
【0014】
国際公開第2005/052558号には、ラマンスペクトルおよびバックグラウンド蛍光スペクトルの特徴を使用することによって癌組織を分類する方法および装置が記載されている。スペクトルは、近赤外波長で取得される場合がある。試験組織のラマンスペクトルおよびバックグラウンド蛍光スペクトルの特徴を認める、そして試験組織が異常である可能性についての指示をもたらす分類関数を得るために、基準スペクトルの主成分分析および線形判別分析が用いられる場合がある。この方法および装置は、皮膚癌または他の疾患のスクリーニングに適用される。
【0015】
米国特許公開第2015/0080686号明細書には、アテローム性動脈硬化症粥腫を検出する装置が記載されている。この装置は、電子処理装置を含んでおり、この電子処理装置が、第1の赤外線波長での放射に動脈の少なくとも一部が露出されることに応答して、第2の赤外線波長でセンサによってセンシングされた蛍光のレベルを決定し、その蛍光のレベルを使用して蛍光指標を決定する。蛍光指標は、アテローム性動脈硬化症粥腫の存在、不在、または程度を示す。
【0016】
したがって、この開示は、この手法がうまく働くようにするために外来性蛍光剤を動脈に導入することが必要である。さらに、採用される装置は、近位端と遠位端との間に延在する一本または複数本の光ファイバを含むカテーテルを含む。
【0017】
しかし、上記の仕組みのいずれも、血管内の脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫、または他の特徴を容易に検出するシステムを提供するものではない。
【0018】
米国特許公開第2019/0059734号明細書には、試料アームと、基準アームと、OCTプローブとを含む光干渉断層撮影(OCT)システムが記載されている。プローブは、ダブルクラッドファイバ(DCF)を透過した試料ビームの光を、体腔、および体腔内に含有される流体に照射する。第1の検出器は、基準ビームと、体腔内で反射してDCFのコアを伝搬する光とを検出して、OCT干渉信号を生成する。体腔によって、および体腔内に含有される流体によって後方散乱された光は、DCFのクラッドを伝搬し、第2の検出器によって検出されて、強度信号が生成される。プロセッサが強度信号を分析し、プローブの引き戻しをトリガし、後方散乱された光の強度が所定の閾値に達したことに応答して体腔のOCT画像の記録を開始する。
【0019】
中国特許第109381167号明細書には、液体レンズ自己集束に基づくバイモーダル内視鏡装置(bimodal endoscope apparatus based on liquid lens self-focusing)が記載されており、これはシェルを含んでいて、このシェルは、回転式走査キャビティに設定され、シェル内には反射鏡があり、回転式走査空洞によって受けられるOCE信号と蛍光信号、それぞれシングルモード光ファイバとマルチモードファイバによる励起光と出力試料反射は、パノラマスキャンを実現するためのものであるが、本発明は、OCEとFLE技術を一体化することによるものであって、リアルタイム高分解能バリフォーカル撮像が、生体内部の構造および機能に対して行われ、正確で効果的な形態学的構造情報画像が提供されて消化管系疾患の早期検出を正確に監視し、非常な高感度と高特異性とを同時に提供する定量的な光学系は、蛍光二次元および三次元バイモーダル画像と関連している。
【0020】
国際公開第2017/147845号には、小型モータ内蔵型の光-音響一体型自己回転式血管内撮像プローブ(opto-acoustic integrated self-rotating endovascular imaging probe)が記載されている。この光-音響一体型自己回転式血管内撮像プローブは、ステンレス鋼チューブと、ステンレス鋼チューブ上でシースに収められた光透過性および音透過性の筐体と、ステンレス鋼チューブにより光透過性および音透過性の筐体内に導入されるモノモード光ファイバと、モノモード光ファイバに対応して光透過性および音透過性の筐体内に配置されたGRINレンズと、GRINレンズ上でシースに収められた環状の超音波トランスデューサと、光透過性および音透過性の筐体内部に配置された電磁モータとを含んでなる。GRINレンズのところのモータロータの端部には、反射傾斜面が設けられている。反射傾斜面には、高い音響インピーダンスの鏡面層が設けられている。引き込み中、IVUS画像が得られ、対応する同期レジストレーションを伴う光検出が同時に実行され、それゆえ、同期レジストレーションを伴う血管壁構造および組成の光-音響一体型画像が得られ、より包括的で正確な血管内撮像が実現される。
【0021】
「Jessica Mavadia, Jiefeng Xi, Yongping Chen, and Xingde Li, Biomedical Optics Express 3(11):2851, 1 November 2012」による「OCTおよび蛍光イメージングに向けた全光ファイバ光学式内視鏡プラットフォーム(An all-fiber-optic endoscopy platform for simultaneous OCT and fluorescence imaging)」には、光干渉断層撮影(OCT)および蛍光撮像用の全光ファイバ光学式内視鏡プラットフォームが記載されている。この設計では、内視鏡内でダブルクラッドファイバ(DCF)を使用して、OCT源と蛍光励起光を送達しつつ、後方散乱されたOCT信号を、シングルモードコアを通し、蛍光発光をDCFの大きな内部クラッディングを通して集めることが必要である。内視鏡の遠位端のところの小型DCモータを用いて45°反射器を回転させることによって、円周方向のビーム走査が実行された。加えて、特製のDCFカプラと波長分割マルチプレクサ(WDM)を利用して、両方の撮像モダリティを継ぎ目なく一体化して、完全にファイバ光学式のデュアルモダリティ撮像システムが実現されている。
【0022】
「Shanshan Liang, Arya Saidi, Joe Jing and Gangjun Liu, Journal of Biomedical Optics 17(7):070501, July 2012)」による「蛍光と光干渉断層撮影法を組み合わせた血管内アテローム性動脈硬化症撮像(Intravascular atherosclerotic imaging with combined fluorescence and optical coherence tomography probe based on a double-clad fiber combiner)には、ダブルクラッドファイバ(DCF)コンバイナを用いたマルチモダリティ蛍光および光干渉断層撮影プローブが記載されている。このプローブは、DCFコンバイナ、grinレンズ、遠位端のところのマイクロモータから構成されている。一体化された波長掃引光源光干渉断層撮影および蛍光強度撮像のシステムが、アテローム性動脈硬化症の早期診断に向けて組み合せプローブを用いて開発された。このシステムは、画像表示だけでなくリアルタイムのデータ取得と処理が可能である。蛍光撮像の場合には、アテローム性動脈硬化症の炎症と、アネキシンVに結合させたCy5.5とともに形成された壊死性核とが画像化された。ニュージーランド白ウサギの動脈のエクスビボ撮像により、この組み合わせシステムの能力が実証された。
【0023】
しかし、上の手法は全て、血管内の撮像に依存しており、これが今度は複数の問題につながる。例えば、対象となる点を撮像するために血管内で撮像装置を位置決めすることは問題を生じる可能性があって、装置を位置決めすることが必要になることが多く、引き戻しを実行して、対象となる特徴を過ぎて撮像装置を一定速度で移動させることで、これを完全に撮像することが可能になる。加えて、このような装置の光学系は典型的には、特徴に焦点を合わせることが必要であり、これが今度は、撮像視野を走査してそれによって特徴全体を撮像するために、撮像装置、または焦点レンズもしくは反射器の回転を必要とする複雑な構成につながる。
【0024】
米国特許第7,328,058号明細書には、早期ステージの不安定な冠動脈粥腫を検出して特性評価する血管内撮像用の装置が記載されている。この検出器は、粥腫に結合してベータ線放出する放射性医薬品を特定して位置特定することによってうまく働く。
【0025】
よって、この手法は、ベータ線放出する放射性医薬品を必要とし、実際、その先端部に凹型円錐形の鏡を有する光ファイバを使用しており、この光ファイバを囲む管状に形成されたシンチレーティング蛍光体撮像プレートからの発光を集める。高感度の光電子増倍管が、撮像プレートからの低レベルの発光を検出するために使用されている。したがって、これが著しく複雑な仕組みであり、実際、ガイドワイヤ上で留置されるカテーテルとして実装され、これが実際上、必ずしも使いやすいとは言えないことは理解されよう。加えて、これはベータ線放出する放射性医薬品を使用することが必要であり、これは一般に望ましくない。
【0026】
米国特許公開第2009/0175576号明細書には、コアと、光ファイバ先端部の遠位端のところで前記コア内に形成された凹部とを含んでなる光ファイバ先端部が記載されており、前記凹部は前記コア内部に頂点を有している。
【0027】
しかし、この作製技術では、製造できる先端部の構成が制限される結果、得られる仕組みが極めて繊細であることから、多くの用途には適さない。
【0028】
米国特許第10,517,669号明細書には、バルーン構造と、心房細動の治療において肺静脈(PV)に病変を作り出す、バルーン内の側面発射レーザ管腔とを含む、カテーテル装置が記載されている。バルーンが膨張したときに肺静脈に接触するようにバルーンに取り付けられているのが、一つまたは複数の電極であり、測定モード、治療モード、またはその両方で使用される場合がある。この仕組みは、血管への照射のみを想定しており、光学的検出技術を実行することはできず、また、カテーテルの一部としてこれを実装することが必要である。
【0029】
米国特許公開第2010/0094138号明細書には、血管粥腫層などの材料層の深さを測定する装置、システム、および方法が記載されている。バルーンカテーテルに格納されたファイバ光学系の束は、レーザドットを円錐形の鏡に向かって投影し、この円錐形の鏡が、ドットを粥腫の表面上に垂直に反射させる。レーザドットは粥腫層から反射され、実質的にガウス分布の強度プロファイルを有して戻ってくる。円錐形の鏡は、反射された画像をファイバ光学系の束に指向させて戻し、このファイバ光学系の束が画像をセンサに送達する。粥腫層の深さは、画像強度プロファイルの直径を、予め得られている正規化されたデータセットと比較することによって決定することができる。
【0030】
しかし、またしてもこれは実際には、ガイドワイヤ上で留置されるカテーテルとして実施される複雑な仕組みであり、これは実際上、必ずしも使い易くはない。
【0031】
米国特許公開第2021/0041366号明細書には、ラマン分光システム用の分光プローブ、およびそのプローブ用のフィルタを準備する方法が開示されている。また、随意にプローブと共に使用することができるSERS基板を形成する方法も記載されている。分光プローブは、ダブルクラッド光ファイバプローブ先端部、シングルモードコアと、マルチモード内部クラッドと、外部クラッドとを有するダブルクラッド光ファイバ(DCF)、および光ファイバプローブ先端部の遠位端に固定されたマイクロフィルタを使用して形成されている。マイクロフィルタは、シングルモードコアでのレーザ励起により生成されたシリカのラマンバックグラウンドをフィルタリングするよう、DCFコアと整列するように構成されるショートパスフィルタまたはバンドパスフィルタと、内側クラッドをラマン散乱波長が透過するようにしつつ試料からのレイリー散乱を抑制するように構成されるロングパスフィルタとを有している。しかし、この前方視型プローブは、前方を向く設計であることに起因して、動脈の壁/管腔を連続的に走査することはできない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
一つの幅広い形態という点では、本発明の一態様は、生物学的被検体の血管内に位置決めされるように構成されるガイドワイヤであって:遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓;ガイドワイヤの近位端から窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ;および窓に近接して位置決めされ、光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器であって:光ファイバから放出された刺激放射を反射して、刺激放射が窓を実質的に半径方向に通過するようにし、それによって血管を刺激放射に露出させるように;そして、血管内から放出された試料放射を反射して試料放射を光ファイバに伝達するように構成される円錐形反射器;を含むガイドワイヤ、ならびに、光ファイバに結合され、光ファイバを介して刺激放射を放出するように構成される放射源;光ファイバを介して受けられた試料放射を検出するように構成される検出器;ならびに、一つまたは複数の処理装置であって:検出された試料放射を分析するように;そして、分析の結果を示す指標を生成するように構成される処理装置、を含む、生物学的対象の血管においてセンシングを行うセンシング装置を提供しようとするものである。
【0033】
一実施形態では、反射器と、光ファイバの遠位端とのうちの少なくとも一つが、支持材料に埋め込まれている。
【0034】
一実施形態では、反射器は、反射面コーティングを含む。
【0035】
一実施形態では、反射器は:湾曲した円錐形表面;刺激放射をコリメートさせるように構成される湾曲した円錐形表面;少なくとも部分的に放物線状の表面;および、平坦な円錐形表面、のうちの少なくとも一つを含む。
【0036】
一実施形態では、反射器は:10μmより大きい;50μmより大きい;200μmより小さい;および、約100μm、のうちの少なくとも一つの長手方向幅を有する、刺激放射の環状ビームを生成するように構成される。
【0037】
一実施形態では、光ファイバは:マルチモード光ファイバ;および、ダブルクラッド光ファイバ、のうちの少なくとも一つである。
【0038】
一実施形態では、光ファイバは、ダブルクラッド光ファイバであり、装置は、ダブルクラッドファイバの遠位端に結合されたビーム拡大器を含み、ビーム拡大器は、回折によって刺激放射を拡大させることで、反射器の直径と類似のまたはそれより小さい直径を刺激放射のビームが有するようにするよう構成される。
【0039】
一実施形態では、ビーム拡大器は、ダブルクラッド光ファイバに継ぎ合わされたマルチモードファイバを含む。
【0040】
一実施形態では、放射源は、レーザダイオードを含む。
【0041】
一実施形態では、放射源は、600nmから900nmの範囲の放射を生成する。
【0042】
一実施形態では、装置は、試料放射が検出器に到達する前に試料放射をフィルタリングするように構成されるフィルタを含む。
【0043】
一実施形態では、フィルタは:刺激放射の波長より長い波長を有する放射を透過させること;刺激放射の波長より20nm以上長い波長を有する放射を透過させること;および、刺激放射を抑制すること、のうちの少なくとも一つを行うように構成されるロングパスフィルタである。
【0044】
一実施形態では、装置は、検出器と放射源を光ファイバに結合するように構成されるカプラを含む。
【0045】
一実施形態では、装置は、少なくとも検出器と放射源とを含む読み取り器を含む。
【0046】
一実施形態では、装置は、読み取り器から光ファイバを物理的に切り離すコネクタを含む。
【0047】
一実施形態では、装置は、後方散乱された刺激放射を検出するように構成される第2の検出器を含む。
【0048】
一実施形態では、ガイドワイヤは、横断方向には柔軟であるが、長手方向にはおよび長手方向軸周りの回転移動下では剛性である金属製シースを含む。
【0049】
一実施形態では、ガイドワイヤは:放射線不透過性の無外傷性先端部;および、遠位端のところの成形可能な区分、のうちの少なくとも一つを含む。
【0050】
一実施形態では、ガイドワイヤは:1.5から2.0m;1.75から1.9m;および、近似的に1.85m;のうちの少なくとも一つの作業長さ、ならびに、300μmから400μm;325μmから375μm;および、近似的に350μm、のうちの少なくとも一つの外径、のうちの少なくとも一つを含む。
【0051】
一実施形態では、検出器から受けられた信号に基づいて試料放射特性を決定すること;試料放射特性を使用して、特徴が血管内に存在するかどうかを特定すること;および、特徴が存在する場合には指標を生成することによって、試料放射を分析するように一つまたは複数の処理装置が構成される。
【0052】
一実施形態では、試料放射特性は:試料放射の測定された強度;試料放射の測定された強度から導出された値;および、試料放射の測定された強度の変化、のうちの少なくとも一つを示す。
【0053】
一実施形態では、一つまたは複数の処理装置は:検出器からの信号に基づいて試料放射の強度を決定すること;強度を閾値と比較すること;および、強度が閾値を超える場合に指標を生成すること、によって試料放射を分析するように構成される。
【0054】
一実施形態では、一つまたは複数の処理装置は:後方散乱された刺激放射の測定された強度;および、バックグラウンド放射の測定された強度、のうちの少なくとも一つに基づいて試料放射の測定された強度を正規化すること;ならびに、後方散乱された刺激放射の測定された強度;バックグラウンド放射の測定された強度;および、後方散乱された刺激放射の測定された強度とバックグラウンド放射の測定された強度とに基づく複合値の、少なくとも一つに基づいて閾値を選択すること、のうちの少なくとも一つを含む。
【0055】
一実施形態では、装置は:触覚的フィードバック;指標を示す可聴性出力;および、指標を示す視覚的出力、のうちの少なくとも一つを生成するように構成される出力を含む。
【0056】
一実施形態では、試料放射は:ラマン散乱;蛍光;および、自家蛍光、のうちの少なくとも一つの結果として放出される。
【0057】
一実施形態では、試料放射は、血管内の粥腫から放出される。
【0058】
一実施形態では、指標は:脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の存在:および、脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の脆弱性の程度、のうちの少なくとも一つを示す。生物学的被検体の血管内にガイドワイヤを位置決めすることであって、ガイドワイヤが:ガイドワイヤの遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓;ガイドワイヤの近位端から窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ;および、窓に近接して配置され、光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器であって:光ファイバから放出された刺激放射を反射して、刺激放射が窓を実質的に半径方向に通過するようにし、それによって血管を刺激放射に露出させるように;そして、血管内から放出された試料放射を反射して試料放射を光ファイバに伝達するように構成される円錐形反射器を含むこと;光ファイバに結合された放射源を使用して、光ファイバを介して刺激放射を放射すること;検出器を使用して、光ファイバを通じて受けられた試料放射を検出すること;ならびに、一つまたは複数の処理装置を使用して:検出された試料放射を分析し;分析の結果を示す指標を生成すること、を含む、センシング方法。
【0059】
一実施形態では、方法は、血管内でガイドワイヤを移動させることを含む。
【0060】
一実施形態では、方法は、一つまたは複数の処理装置において:検出器から受けられた信号に基づいて試料放射特性を決定すること;試料放射特性を使用して、特徴が血管内に存在するかどうかを特定すること;および、特徴が存在するならば指標を生成することによって、前記試料放射を分析することを含む。
【0061】
一実施形態では、試料放射特性は:試料放射の測定された強度;試料放射の測定された強度から導出された値;および、試料放射の測定された強度の変化、のうちの少なくとも一つを示す。
【0062】
一実施形態では、方法は、一つまたは複数の処理装置において、検出器からの信号に基づいて試料放射の強度を決定すること、強度を閾値と比較すること、および、強度が閾値を超えるならば指標を生成することによって、試料放射を分析することを含む。
【0063】
一実施形態では、方法は、一つまたは複数の処理装置において、後方散乱された刺激放射の測定された強度;および、バックグラウンド放射の測定された強度のうちの少なくとも一つに基づいて試料放射の測定された強度を正規化すること;ならびに、後方散乱された刺激放射の測定された強度;バックグラウンド放射の測定された強度;および、後方散乱された刺激放射とバックグラウンド放射の測定された強度に基づく複合値、のうちの少なくとも一つに基づいて閾値を選択すること、の少なくとも一つを含む。
【0064】
一実施形態では、方法は:指標が生成されるまで血管内でガイドワイヤを移動させること;および、ガイドワイヤの位置に基づいて脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の場所を特定すること、を含む。
【0065】
一実施形態では、方法は:指標の出力に応答して、読み取り器からガイドワイヤを切り離すこと;ガイドワイヤ上で血管内にカテーテルを挿入すること;および、カテーテルを使用して処置を実行すること、を含む。
【0066】
一つの幅広い形態という点では、本発明の一態様は、生物学的被検体の血管内に位置決めされるように構成される、生物学的被検体の血管内でセンシングを実行するセンシング装置用ガイドワイヤであって:遠位端に近接して位置決めされた円周方向の窓;ガイドワイヤの近位端から窓に近接した位置まで実質的に延在する光ファイバ;窓に近接して位置決めされ、光ファイバの軸と整列した実質的に円錐形の反射器であって:光ファイバから放出された刺激放射を反射して、窓を実質的に半径方向状に刺激放射が通過するようにし、それによって血管を刺激放射に露出させるように;そして、血管内から放出された試料放射を反射して試料放射を光ファイバに伝達するように構成される円錐形反射器、を含むガイドワイヤを提供しようとするものである。
【0067】
一実施形態では、反射器と、光ファイバの遠位端とのうちの少なくとも一つが、支持材料に埋め込まれている。
【0068】
一実施形態では、反射器は、反射面コーティングを含む。
【0069】
一実施形態では、反射器は:湾曲した円錐形表面;刺激放射をコリメートさせるように構成される湾曲した円錐形表面;少なくとも部分的に放物線状の表面;および、平坦な円錐形表面、のうちの少なくとも一つを含む。
【0070】
一実施形態では、反射器は、10μmより大きい;50μmより大きい;200μmより小さい;および、約100μm、のうちの少なくとも一つの長手方向幅を有する、刺激放射の環状ビームを生成するように構成される。
【0071】
一実施形態では、光ファイバは:マルチモード光ファイバ;および、ダブルクラッド光ファイバ、のうちの少なくとも一つである。
【0072】
一実施形態では、光ファイバは、ダブルクラッド光ファイバであり、装置は、ダブルクラッドファイバの遠位端に結合されたビーム拡大器を含み、ビーム拡大器は、反射器の直径と類似の直径を刺激放射のビームが有するように回折によって刺激放射を拡大可能にするように構成される。
【0073】
一実施形態では、ビーム拡大器は、ダブルクラッド光ファイバに継ぎ合わされたマルチモードファイバを含む。
【0074】
一実施形態では、ガイドワイヤは、光ファイバを読み取り器から物理的に切り離すコネクタを含む。
【0075】
一実施形態では、ガイドワイヤは、横断方向には柔軟であるが、長手方向にはおよび長手方向軸回りの回転移動下では剛性である金属製シースを含む。
【0076】
一実施形態では、ガイドワイヤは、放射線不透過性の無外傷性先端部;および、遠位端のところの成形可能な区分、のうちの少なくとも一つを含む。
【0077】
一実施形態では、ガイドワイヤは:1.5から2.0m;1.75から1.9m;および、近似的に1.85m、のうちの少なくとも一つの作業長さ、ならびに:300μmから400μm;325μmから375μm;および、近似的に350μm、のうちの少なくとも一つの外径、のうちの少なくとも一つを含む。
【0078】
本発明の幅広い形態およびそれらのそれぞれの特徴を、併せておよび/または独立して使用することができ、別個の広範な形式への言及が、限定することを意図していないことは理解されよう。さらに、本方法の特徴を、本システムまたは装置を使用して実行することができること、そしてシステムまたは装置の特徴を、本方法を使用して実装することができることは理解されよう。
【0079】
以下、本発明の様々な実施例および実施形態を、添付の図面を参照しつつ説明するが、その中で:
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1A】
図1Aは、生物学的被検体の血管内でセンシングを行うセンシング装置の一実施例の概略図であり;
【
図2】
図2は、生物学的被検体の血管内でセンシングを行う方法の一実施例の流れ図であり;
【
図3】
図3Aは、
図1Aのガイドワイヤの先端部の代替実施例の概略図であり;
図3Bは、円錐形反射器の代替実施例の概略詳細図であり;
【
図4】
図4Aは、
図1Aのガイドワイヤの先端部のさらなる代替実施例の概略図であり;
図4Bは、ダブルクラッド光ファイバの一例の概略的な端面図であり;
図4Cは、
図4Bのダブルクラッド光ファイバの概略的な斜視切り取り図であり;
【
図5】
図5は、生物学的被検体の血管内でセンシングを行うセンシング装置用の読み取り器の代替実施例の概略図であり;
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、生物学的被検体の血管内でセンシングを実行する方法の具体的な実施例の流れ図であり;
【
図7-1】
図7Aから
図7Cは、凹状に湾曲した円錐形反射器を近似する表面要素の数を徐々に増加させた円錐形反射器の光線追跡シミュレーションの例の概略図である。
図7Dから
図7Fは、それぞれ、
図7Aから
図7Cの光線追跡シミュレーションのための、凹状に湾曲した円錐形反射器を近似する表面要素の例の概略図である。
【
図7-2】
図7Gから
図7Iは、ビーム拡大区分の長さを徐々に増大させた場合の光線追跡シミュレーションの例の概略図である。
図7Jは、試料放射の戻りパワーとビーム拡大長さの増大との関係を示すグラフであり;そして
【
図8】
図8は、円錐形反射器の一実施例の走査型電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、センシング装置の一実施例を、
図1Aおよび
図1Bを参照しつつ記載する。
【0082】
この例では、装置100は、読み取り器120に接続されたガイドワイヤ110を含み、この読み取り器には、ガイドワイヤ110を使用してセンシングを実行可能にする電子回路が組み込まれている。
【0083】
図1Bにさらに詳細に示されるガイドワイヤ110の遠位端111は、使用のさいに生物学的被検体の血管内に入れられて、そこでセンシングの実行を可能にする。ガイドワイヤは、遠位端111に近接して位置決めされた周方向の窓114を含み、光ファイバ112は、ガイドワイヤの近位端からその窓に近接した位置まで実質的に延在している。実質的に円錐形の反射器115は、窓114に近接して位置決めされる。一詳細実施例では、円錐形反射器115は、窓114の半径方向内側に設けられ、光ファイバ112の軸と整列し、光ファイバ112の端部は、円錐形反射器115の近傍に、またはそれと当接して設けられる。
【0084】
光ファイバ112の遠位端と反射器115の物理的関係を維持するために、これらを、刺激放射および試料放射に対して透過性である支持材料、例えばシリコーン製の鉢型部113、または類似のものに埋め込んでもよい。しかし、他の好適な仕組みが使用できる可能性があることは理解されよう。
【0085】
使用のさいには、円錐形反射器115は、光ファイバ112から放出された刺激放射(実線矢印で示される)を反射させるように構成されて、刺激放射が窓114を実質的に半径方向に通過することによって血管を刺激放射に露出させるようにする。加えて、円錐形反射器115は、血管内から放出された試料放射(点線の矢印で示される)を反射するように構成されて、試料放射が光ファイバ112に戻されるようにする。具体的には、一実施例では、窓114は、ガイドワイヤ110の実質的に全周の周りに延在しており、これによって、反射器115の円錐形状との組み合わせで、刺激放射をガイドワイヤの全周にわたって放出させると同時に、ガイドワイヤの全周の周りの血管内からの試料放射を受けるよう保証される。窓の性質は様々であり、放射を透過させる材料を含むものとすることができる可能性があるし、透過させる放射に対する障害を最小限に抑えつつ物理的な支持を提供するメッシュまたは支柱を随意に含む開口部とすることができる可能性もある。
【0086】
この例では、読み取り器120は、光ファイバ112に光学的に結合された、放射源121と検出器122とを含む。放射源121は、光ファイバ112を介して刺激放射を放出するように構成され、同時に検出器122は、光ファイバ112を介して受けられた試料放射を検出するように構成される。放射源121および検出器122は、実行されるセンシングの性質に応じて、いずれの適切な形態とすることもできるが、一実施例では、レーザダイオードおよびフォトダイオードを含む。放射源121は概して、特定の波長または波長範囲(一般に刺激波長と称される)を有する刺激放射を生成するように構成されており、その一方で検出器122は、刺激波長とは異なる特定の波長または波長範囲(一般に試料波長と称される)を有する試料放射を検出するように構成することもできる。この文脈において、刺激波長および試料波長という用語が、ある波長範囲にまたがるまたは複数波長を含む放射を包含しており、特定の波長に限定することを必ずしも意図していないことは留意されよう。
【0087】
誘導波長および試料波長の性質は、実行されるセンシングに依存して様々となり、例えば、検出される特徴の刺激特性および発光特性に依存する場合がある。例えば、アテローム性動脈硬化症粥腫を検出する場合には、600nm~900nmの範囲の刺激波長を有する刺激放射を使用してもよく、自家蛍光の形態での試料放射は、さらに長い試料波長で検出される。しかし、他の好適な範囲を使用できる可能性があること、そしていくつかの状況では、試料放射は刺激放射の波長よりも短い波長で検出される場合があることは理解されよう。
【0088】
検出された試料放射を分析して、分析の結果を示す指標を生成するように構成される一つまたは複数の処理装置123も提供することができる。処理装置123は典型的には、マイクロプロセッサ、マイクロチッププロセッサ、論理ゲート構成、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array))などの実装論理を随意に伴うファームウェアなどのいずれかの電子処理装置、またはいずれかの他の電子装置、システム、もしくは仕組みである。システムは複数の処理装置を使用することができ、処理は一つまたは複数の装置によって実行されるとはいえ、例示を容易にする目的で、以下の実施例では単一の装置を参照するが、単一の処理装置への参照が複数の処理装置を包含し逆もまた然りであって、処理が適宜、それらのデバイス間で分散されると理解されるのが望ましいことは認識されよう。処理装置123は典型的には、読み取り器の一部を形成するが、これは本質的ではなく、遠隔処理装置123を使用できる可能性があるか、または別法として、処理を、読み取り装置120の内部および外部の処理装置123の間で分散させることができる可能性がある。
【0089】
実行される分析の性質は、好ましい実装および検出されている特徴の性質に依存して様々である。例えば、特徴が特性波長で放射を放出するならば、このことには、特性波長で放出された試料放射の強度をセンシングし、これを閾値と比較して、特徴が存在するかどうかを確認することが含まれ得る。
【0090】
以下、センシングを実行する装置の動作の一実施例を、
図2を参照しつつ記載する。
【0091】
この例では、ステップ200で、ガイドワイヤ110は血管内に位置決めされ、放射源121に刺激放射を生成させることによってセンシングが開始される。刺激放射は、光ファイバ112を介してガイドワイヤに沿って伝達されることで、反射器115によって反射されて、窓114を介してガイドワイヤ110から横断方向に放出され、それによって血管の内部およびその中のあらゆる特徴を刺激放射に露出させることができる。反射されるか、さもなければ放出されるかして得られた放射はいずれも、次いで窓114、円錐形反射器115、および光ファイバ112を介して検出器122に戻すことができ、これを、ステップ220で検出器122によって受けることが可能になる。
【0092】
例えば、血管が、脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫などの特徴を含有する場合には、これが刺激放射に露出されるならば、粥腫は異なるさらに長波長で自己蛍光する結果、試料放射が検出器122に伝達されて受けられることになる。脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫においては、刺激放射は600~900nmの波長範囲である場合があるが、他の波長範囲が使用される場合がある。試料放射が、蛍光、ラマン散乱などを含む、自家蛍光以外の機構の結果として放出され得ることは理解されよう。したがって、他の特徴を検出するために他の好適な波長範囲を使用できる可能性があることは理解されよう。
【0093】
ステップ230では、処理装置123は、検出された放射を分析して、これが、対象となっている特徴、例えば脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫の特徴であるかどうかを確認することができる。よって、処理装置は、いずれの検出された試料放射の強度および/または試料波長をも閾値または特性波長と比較して、対象となっている特徴を試料放射が示しているかどうかを決定することができる。加えて、および/または別法として、試料放射を複数波長にわたって分析することができる可能性があり、これは例えば、試料放射のスペクトルを調べてこれを異なる特徴を示す基準スペクトルと比較することによってなされ、特徴を検出および/または特定することが可能になる。
【0094】
アテローム性動脈硬化症粥腫の状況では、適切な刺激波長と、アテローム性動脈硬化症粥腫の自家蛍光から生じる試料放射の分析とを、アテローム性動脈硬化症粥腫が脆弱であるかどうかを特定するのに使用することができる。このようなセンシングおよび分析を行う技術は、米国特許第20150080686号明細書にさらに詳細に記載されており、その内容は、相互参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0095】
よってこの実例では、装置は、アテローム性動脈硬化症粥腫によって放出される赤外蛍光の強度を分析するのに使用することができ、これは次いで、粥腫の脆弱性の程度を確認するのに使用することができ、よって、粥腫上へのステントの配置などの好適な治療方針を医療従事者が特定することが可能になる。この例では、蛍光のセンシングは刺激波長を使用することによって行われ、蛍光の検出は、刺激波長よりも長い別の試料波長のところで実行される。これにより、刺激放射を使用して、蛍光から識別されることになる組織を露出させること、詳細には、刺激放射によって偽の結果が生じるのを防ぐことが可能になる。
【0096】
また、刺激放射および試料放射は、他のやり方、例えば時間分解技術を使用することによって識別できることは理解されよう。詳細には、組織の露出とそれに続く蛍光の生成との間には通常、数ナノ秒のオーダーのわずかな時間の遅れがある。したがって、センシング装置は、例えばゲーティングされたセンシング装置を使用して、放射源が放射を放出しなくなった後に放射のみを検出するように適合させることができ、それによって、蛍光から生じた放射のみを、検出された放射が含むことが保証される。
【0097】
対象となっている特徴が検出される場合には、ステップ240で、指示、例えば視覚的および/または可聴性の警告を随意に生成して随意の出力装置130を介して提示することができて、適切な動作をとること、たとえば処置を実行することが可能になる。対象となっている特徴が検出されない場合には、次いで、ガイドワイヤを血管に沿って引き続き移動させることで、血管の点検が完了するまで、および/または対象となっている特徴が検出されるまで、この過程を連続して繰り返すことが可能になる。
【0098】
上記の仕組みにおいて、円錐形反射器および周方向の窓の使用により、血管の全周方向領域を刺激放射に露出させることが可能になり、この全領域にわたって試料放射を集めることが可能になることで、ガイドワイヤを連続して(または実質的に連続して)移動させることにより、血管の全区分を連続過程においてモニタリング可能になることは理解されよう。
【0099】
結果として、このことによって、従来の先行技術の手法において要求される、血管の内部をスキャンするために撮像装置または反射器を回転させる必要性が避けられ、センシングの仕組みおよびその動作の複雑さが低減する。例えば、このことによって、回転機構をシステムに組み込む必要性、および/または使用者が手動で装置を移動および回転させる必要性が避けられる。回転と引き戻しをこのように同期させることは、近位端と遠位端の間で摩擦とずれが変化することによって一方または両方の移動(構成に依存する)が乱される可能性を考慮すると、極めて困難な課題である。
【0100】
さらに、ガイドワイヤは、スキャンまたは他の類似の過程を実行することができるように血管内で静的に保持する必要がなく、代わりに、ガイドワイヤを血管内で連続して移動させつつ検出を実行することができる。これにより、操作者は、ガイドワイヤを血管内に単に位置決めして、読み取り器を起動させ、次いで、特徴が検出されて対応する指標が決定されるまで、ガイドワイヤを血管に沿って移動させるだけである。したがってこれは、スキャン過程の複雑さのみならず、センシングを実行するのに要する時間を削減し、血管内の特徴を特定するために直截的で効果的な機構を提供する。この点に関して、この形態のセンシングは、物理的処置、例えばステントまたはバルーンが半径方向の対称性を有しているという知識を活用しており、周方向/半径方向に特徴の場所が特定されるからといって実際上なんら利点が得られるわけではないことを意味することに留意されたい。逆に、血管内の長手方向位置は必要な情報であり、よって、この仕組みは、長手方向に特徴の位置を特定するために血管の実質的に全環状部分の周方向露出を使用しており、その一方で周方向/半径方向の位置特定の複雑さを避けている。
【0101】
加えて、撮像を避けることにより、要求される信号処理の複雑さが低減することで、今度は、ガイドワイヤを血管に沿って移動させるさいに実質的にリアルタイムで指示を生成することが可能になる。これはまた、有用な診断を行うのに必要な要求される空間分解能を有する画像データを集める必要性という、先行技術を用いてセンシングを実行できる速度を制限するおそれも避けられる。加えて、先に記載されたとおり、従来の仕組みでは、血管の内面全体がスキャンされるよう保証するには、横方向移動と回転移動の速度が相互依存する場合がある一方、上記の仕組みでは、血管に沿った移動速度の点でさらに柔軟性が得られる。これは、測定値をさらに速やかに、移動のスピードにそれほど関係なく集めることを可能にするだけでなく、困難なしに、使用者が停止させ、次いで特徴上を戻したり前進させたりすることを可能にすることで、実行される特徴検出の向上が可能になる。
【0102】
よって、これにより、操作者、例えば臨床医または外科医は、ガイドワイヤを血管に単に挿入し、センシングが実行されるとガイドワイヤを血管に沿って徐々に移動させることができる。特徴が検出される場合には、可聴性のまたは視覚的な警告などの指示を生成することができて、操作者がガイドワイヤの移動を停止することが可能になり、次いでガイドワイヤ位置を使用して血管内の特徴の位置を特定することで、処置の実行が可能になる。
【0103】
上記の仕組みは、ガイドワイヤを使用して実施され、これが、カテーテルを用いる仕組みとは著しく異なることは留意されよう。
【0104】
例えば、ガイドワイヤは、いかなる追加の留置機構なしでも留置することができるが、一方でカテーテルは、血管内にカテーテルを位置決めする追加の装置を使用してしか留置できない。その結果として、カテーテルを用いたシステムを使用して実現できるワークフローは、総体的に非効率的である可能性があり、これは、ステント用カテーテルを挿入するためにカテーテルを繰り返し挿入および除去する必要があることに起因する。
【0105】
加えて、ガイドワイヤは、十分な柔軟性、および場合によってはある程度の操作性を有するので、これらを動脈内で容易に位置決めすることができる。逆に、カテーテルの場合には、これはやはり、動脈内でカテーテルを位置決めするためにガイドワイヤを必要とし、その結果として、半径方向反射器の横断方向の視界が、ガイドワイヤによって片側で遮蔽されて、動脈の一部からの信号の損失につながる。このことは、カテーテルを用いる手法が、実際にはこの手法を実際の応用には好適ではないものにする複数の欠点を抱えていることを意味する。
【0106】
加えて、当業者には理解されるであろうとおり、ガイドワイヤは典型的には、カテーテルよりも小さい直径を有する。例えば、標準的な冠状動脈ガイドワイヤは、典型的には350μmの直径を有する一方、従来のセンシングカテーテルを用いる仕組みは、典型的には1mm(上記のインフラレドックス・インコーポレーティッド社の場合)、または600μm(Komachi Y, Sato H, Matsuura Y, Miyagi M, Tashiro H, “Micro-optical fiber probe for use in an intravascular Raman endoscope,” (2005) Opt Lett 30:2942-2944において、内視鏡プローブとして記載)のオーダーの直径を有する。これは、ガイドワイヤでは先行技術の教示を単純には実装不可能である可能性があることを意味する。
【0107】
この点に関して、複数の先行技術の仕組みが複数の光ファイバを利用しており、これは概して、350μmの標準的な冠状動脈ガイドワイヤサイズに適合していない。NIR分光法は、反射された光のレベルに基づいているので、低い光レベルの技術とは通常、見なされない可能性がある。しかし、血管フラッシング、血管閉塞、組織圧着に頼らずに血液中で測定を実行するならば、信号レベルは低下することになる。よって、長手方向の引き戻しスピードは、実際の応用には十分でない0.5mm/sに制限される。
【0108】
よって、低い光レベルの信号の分光学的測定のこれらの例はすべて、比較的大きい直径を有するカテーテルまたは内視鏡装置において現在実施されており、よってこうした例に基づくと、これらの分光学的技術をガイドワイヤにおいて実際に実施することはできないことが明らかである。
【0109】
対照的に、上記の仕組みは、ガイドワイヤとして留置するためのある程度の柔軟性と小さいサイズと、低レベルの光信号の分光学的測定、すなわち異なる波長での光の強度の測定を実行するために使用できることとを規定する。
【0110】
以下、複数のさらなる特徴について説明する。
【0111】
ガイドワイヤは、いずれの適切な形態とすることもできるが、典型的には、横断方向には柔軟であるが、長手方向にはおよび長手方向軸回りの回転移動下では剛性である金属製シースを含む。一実施例では、ガイドワイヤは、ステンレス鋼および/またはニチノール(ニッケルチタン)製のコイル状もしくは編組みのワイヤまたはスロット付きチューブであり、随意に、潤滑性を高めるためにポリマー、例えばシリコーンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされている。留置中の摩擦を低減し、蛇行した血管内でのさらに容易な移動を可能にするために、親水性コーティングを使用することもできる。
【0112】
ガイドワイヤは典型的には、血管に沿ってガイドワイヤが移動することを可能にするのに使用されるカテーテルの遠位端111のところに先端部118を含む。先端部は、様々な血管の解剖学的構造をナビゲートするのに役立つように、「J」曲線、様々な角度のまたはまっすぐの先端部を含め、様々な構成をとらせることができる。しかしさらに典型的には、先端部118は、放射線不透過性の無外傷性先端部、または放射線不透過性の特徴を含む先端部であり、遠位端のところに成形可能な区分を含む。これによって、血管を通るナビゲーションを容易にするように先端部の形状を調整することが可能になり、同時に放射線不透過性の性質によって、センシングの仕組み、例えばX線または同類のもの使用して血管内の先端部の場所をセンシングすることが可能になる。特徴の位置を特定する際に、放射線不透過性の特徴と窓との間のオフセットを考慮する必要があることは理解されるであろうが、ただし別の実施例では、円錐形反射器上の金属鏡コーティングが、放射不透過性領域を提供する二重の目的を果たす場合がある。これは、信号場所の長手方向位置の推定を向上させる可能性があり、高反射率の鏡に要求される厚さよりも鏡コーティングの厚さを増加させることによってこれを増強させることができる可能性があって、これは、放射線不透過性にとって利点であるはずである。
【0113】
ガイドワイヤは典型的には、1.5から2.0m、1.75から1.9m、より典型的には近似的に1.85mの作業長さを含み、同時にガイドワイヤは、典型的には300μmから400μm、325μmから375μm、より典型的には近似的に350μmの外径を含む。ガイドワイヤ110はまた、ガイドワイヤ110の位置の挿入および操作を可能にするハンドル117を含んでいてもよい。
【0114】
ガイドワイヤ110および光ファイバ112を読み取り器120から物理的に切り離し、それによってガイドワイヤ110を読み取り器120から分離可能にする、雄および雌コネクタ部分116、126を含むコネクタを提供することができる。これを使用できて、カテーテルまたは他の外科用器具をガイドワイヤ110上に供給することが可能になることで、必要に応じて処置を実行すること、例えば血管内にステントを位置決めすることが可能になる。コネクタは、把持機構および/または取り外し可能なハンドルを含んでいてもよく、これは、コネクタの両側でファイバを整列させる役割を果たし、ガイドワイヤの取り扱い、詳細には回転を支援するものである。
【0115】
一実施例では、読み取り器120とハンドル117とを組み合わせて単一の構成要素にすることができ、コネクタを、読み取り器120とガイドワイヤの残りの部分との間に位置決めすることで、ハンドル117および読み取り器120をガイドワイヤから切り離すことが可能になる。コネクタ116は、読み取り器120の回転を必要とせずにガイドワイヤを回転可能にするように、自由に回転することが意図される場合がある。これにより、被検体内でのガイドワイヤの操作を支援することができ、同時に、読み取り器がかなりのサイズである場合に問題となる可能性がある、読み取り器120をも回転させる必要性を避けることができる。この場合には、コネクタ116には回転力を伝達する能力がないので、ハンドル117をコネクタ116とガイドワイヤの先端部との間に位置決めすることができて、ハンドルを使用してガイドワイヤを回転させることが可能になる。この状況では、ハンドル117は、例えば、ハンドルをガイドワイヤから摺動させて外すか、またはハンドルにガイドワイヤを把持させることによって、取り外し可能となる可能性があることで、カテーテル、ステント、または類似のものなどの機器を、上述のとおりにガイドワイヤに沿って通過させることが可能となる。
【0116】
典型的には、放射源は、レーザダイオードを含むが、他の適切な源が使用できる可能性がある。放射源121は、血管の熱損傷閾値以下のパワーレベルで、600nmから900nmの範囲の刺激放射を生成する。一詳細実施例では、放射源121は、波長範囲600nm~900nm、650nm~850nm、700nm~850nm、750nm~850nm、800nm~850nm、650nm~800nm、700nm~800nm、750nm~800nm、650nm~700nm、650nm~750nm、650nm~800nm、または700nm~750nmのうちの一つまたは複数のところで刺激放射を生成する。しかし、好ましい実装および検出される特徴の性質に応じて他の範囲を使用できる可能性があるので、例えば500nm以下の波長を使用できる可能性があることは理解されよう。
【0117】
放射源のパワーレベルは、これが安全であることを保証するよう調節することもできる可能性がある。例えば、後方散乱された試料放射の強度の測定結果を使用して放射源を調節することで、組織上で安全な強度を維持し、血管径が変化するさいの感度の過度の変動を防止するようにすることができる可能性がある。
【0118】
検出器の性質は、好ましい実装に依存して様々となることになり、光検出器、光電子増倍管、赤外線カメラ、分光器、または同類のものを含むことができる可能性がある。
【0119】
特定の試料波長でセンシングを実行可能にするよう、装置は典型的には、試料放射が検出器122に到達する前に試料放射をフィルタリングするように構成されるフィルタ124を含む。一実施例では、フィルタ124は、刺激放射の波長より20nm大きい波長を有する放射を透過させるように構成されるロングパスフィルタである。
【0120】
一実施例では、センシングは、刺激放射の波長より長い波長のところで実行され、詳細には波長範囲600nm~1150nm、650nm~1150nm、700nm~1150nm、750nm~1150nm、800nm~1150nm、850nm~1150nm、900nm~1150nm、950nm 1150nm、1000nm~1150nm、1050nm~1150nm、1100nm~1150nm、600nm~1100nm、650nm~1100nm、650nm~1100nm、700nm~1100nm、750nm 1100nm、800nm~1100nm、850nm~1100nm、900nm~1100nm、950nm~1100nm、1000nm~1100nm、1050nm~1100nm、600nm~1050nm、650nm~1050nm、700nm~1050nm、750nm~1050nm、800nm~1050nm、850nm~1050nm、900nm~1050nm、950nm~1050nm、1000nm~1050nm、600nm~1000nm、650nm~1000nm、700nm~1000nm、750nm~1000nm、800nm~1000nm、850nm~1000nm、900nm~1000nm、950nm~1000nm、600nm~950nm、650nm~950nm、700nm~950nm、750nm 950nm、800nm~950nm、850nm~950nm、900nm~950nm、600nm~900nm、650nm~900nm、700nm~900nm、750nm~900nm、800nm~900nm、850nm~900nm、600nm~850nm、650nm~850nm、700nm~850nm、750nm~850nm、800nm~850nm、600nm~800nm、650nm~800nm、700nm~800nm、750nm~800nm、600nm~750nm、650nm~750nm、700nm~750nm 600nm~700nm、600nm~650nm、または650nm~700nmのうちの一つまたは複数のところで実行される。またしても、しかし、好ましい実装および検出される特徴の性質に依存して、他のセンシング波長が使用できる可能性があることは理解されよう。
【0121】
波長の範囲は、範囲の各端点における数値を包含することは理解されよう。例えば、600nmと900nmとの間の波長は、600nmの波長と900nmの波長とを包含する。さらに、値の範囲が提供される場合には、その範囲の上限と下限の間に介在する値が、文脈が明らかにそうでないと規定しているのでない限り下限の単位の10分の1までその範囲内に包含されること、そしてその記載された範囲内の他の記載されたまたは介在する値がいずれもその範囲内に包含されることは理解される。これらのさらに小さい範囲の上限および下限がそれらのさらに小さい範囲に独立して含まれる場合のあることは、その記載された範囲内において具体的に除外されるいかなる限界も前提条件として本発明内に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合には、含まれるそれらの限界の両方のいずれかを除く範囲もまた、その範囲に含まれる。
【0122】
本実施例では、光ファイバがマルチモード光ファイバであることで、複数の伝送モードを、共通のコアを通して伝送させて、光ファイバが刺激放射を標的組織に伝送し試料放射を検出器に戻すことができるようにすることが可能になる。マルチモードファイバは典型的には、110μm径のコア、125μm径のクラッド、および外側ポリマーバッファを有する最大250μmの全径を有するが、ただし他の好適な仕組みが使用できる可能性がある。
【0123】
装置は典型的には、検出器122と放射源121とを光ファイバ110に結合するように構成されるカプラ125を含む。この例では、カプラ125は、マルチモードファイバ・カプラであり、これは、レーザ光を、放射源121から延在する放射源側光ファイバ121.1からマルチモードファイバ112に伝送し、光ファイバ112からの試料放射を、検出器まで延在する検出器側マルチモード光ファイバ122.2に伝送するものである。マルチモードファイバは、刺激放射を効率的に送達し試料放射を集めることを可能にし、送達経路と集光経路との間の光の適度に効率的な分離を提供するカプラに適合するのみならず、頑健な構造である。マルチモードファイバはまた、ファイバへの刺激放射の効率的な結合を可能にするが、ただし、他の仕組みを使用できる可能性があることは理解されようし、ダブルクラッド光ファイバおよび付随するカプラを使用する実施例を、以下にさらに詳細に記載することにする。
【0124】
使用時には、処理装置123は、放射源121を制御し、検出器122からの信号を分析して、被検体内の特徴を特定することを可能にする。処理装置123はまた、入力装置、例えばタッチスクリーン、キーパッド、入力ボタン、または同類のものにも接続可能であることで、読み取り器の動作を制御して、例えば、測定過程を開始すること、読み取り器120を出力装置130または同類にものに接続することが可能になる。
【0125】
処理装置123はまた、インタフェース127に接続されてもよく、このインタフェースは、処理装置123を、周辺装置、例えば通信ネットワーク、データベース、他の記憶装置、出力装置130、遠隔装置、例えば計算機システム、スマートフォン、タブレット、または同類のものに接続するのに利用できるものである。単一の外部インタフェース127が示されているが、これは例示目的だけのものであり、実際には、様々な方法(例えば、イーサネット、シリアル、USB、無線、または同類のもの)を使用する複数のインタフェースが提供される場合がある。好ましい一実施例では、インタフェース127は、読み取り器を出力装置130に無線で接続可能にするのに使用されるが、ただしこれは本質的ではなく、他の仕組みを使用できる可能性もある。
【0126】
加えて、および/または別法として、読み取り器120の動作は、遠隔装置、例えば計算機システム、スマートフォン、タブレット、または同類のものによって制御することができる。この実例では、結果の分析も、全体的または部分的に遠隔装置において実行することができる可能性があって、読み取り器内で要求される処理量が削減されること、そして出力を遠隔装置によって、例えば内蔵ディスプレイまたは類似のものを使用することによって提示してもよいことは理解されよう。この実例では、読み取り器120内の処理装置123は典型的には、遠隔装置からの信号に基づいて放射源121を制御する、そして分析のために検出器122からの信号を遠隔装置にアップロードするという最小限の機能を実行する。また、処理装置と遠隔装置との間でのタスクのいかなる分割も、好ましい実装に応じて使用できる可能性があることは理解されよう。
【0127】
一実施例では、反射器は反射表面コーティングを含み、詳細には、反射面コーティングを有する円錐形インセットを含むことができるが、ただし、円錐形表面と、全内部反射を可能にする構造の残りの部分との間の空気ギャップなどの他の仕組みが使用できる可能性がある。反射面が使用される場合には、表面の不完全性は刺激放射および/または試料放射の散乱につながり得るので、不完全性を最小化しそれによって信号強度を、よって特徴を正確に検出する能力を最大化することが好ましい。その結果、一実施例では、円錐形インサートは、光開始剤とモノマーとを含む材料の光重合に基づく2光子ステレオリソグラフィーを使用して製造される。2光子光開始剤は、化学種または化学品の組み合わせであって、2つの光子を効率的に吸収して励起状態を生成し、そこからラジカルまたはイオンを作り出してモノマーの重合を開始させることができるものである。例示的な材料には、アクリラートモノマーと、4,4’-ジアルキルアミノトランススチルベン、ビスドナー型ビス(スチリル)ベンゼンまたはビス(フェニル)ポリエン、フルオレン類、およびケトクマリン誘導体などの光開始剤などが挙げられる。また、表面には、追加のおよび/または代替の処理ステップとしてレーザ研磨をほどこしてもよい。
【0128】
一具体例では、反射器は、ORMOSILポリマー(ORganic MOdified SILicate、SZGel、SZ2080 Silica-Zirconia Hybrid)を使用して製造される。これは、光学性能に光開始剤が及ぼす悪影響を避けるために非光増感型として使用することができるが、光増感剤であるIrgacure 369光開始剤を含むこともできる。ORMOSILは、他の手法と比較して、向上した寸法安定性を提供することができる。光開始剤を避けることはまた、医療装置とって好ましく、これは、光開始剤がフリーラジカルを生成し、細胞毒性に寄与する可能性があるためであるが、ただしこれは、反射器をカプセル化できることを考えると必要ではない可能性がある。
【0129】
円錐形反射器は、
図1Bに示されるものと類似の平坦な円錐形表面である表面を有することができる。この例では、平坦な円錐形表面は、軸方向に一定の割合で増加する半径を有する。この形態での仕組みは、実質的に一定の長手方向幅を有する環状放射ビームを生成する。しかし、これは本質的ではなく、円錐形表面は、湾曲した円錐形表面とすることができる可能性があり、この例が
図3Aに示されている。
【0130】
この例では、増分200として増加させた類似の参照符号を使用して、
図1Bの仕組みと類似の特徴を指示しているので、これらを詳細に記載することはしない。
【0131】
よって、ガイドワイヤは、周方向の窓314を含み、光ファイバ312が、ガイドワイヤの近位端から、円錐形反射器315に近接した位置まで実質的に延在している。
【0132】
この例では、円錐形反射器315は、刺激放射ビームをさらにきつく集束するために内側に湾曲しており(角状の形状)、よって、組織上での刺激放射の広がりを低減して空間分解能を高め、光ファイバ312のファセット上に試料放射を集束させる支援をする。この例では、窓314はまた、より多くの試料放射を窓314に入れることが可能になるように長手方向に延在しており、これは、光ファイバ312上に集束され、それによって、受けられる試料放射の大きさが増加し、これが今度は、検出された試料放射の信号強度を向上させる手助けとなる。集光量の大幅な増加を実現するためには、光ファイバの直径を超えて反射器を拡張して、光ファイバの直径よりも大きい直径を反射器が有するようにすることが好ましい。これを使用して、検出された試料放射の信号強度を最大化することができ、これを、弱い自家蛍光を検出しバックグラウンド放射から識別できるよう保証するのに役立てることができる。このような仕組みは、先行技術のカテーテルを用いる仕組みと相いれないことは留意されよう。
【0133】
一実施例では、これには、刺激放射をコリメートさせるように、そして血管壁と反射器との間の間隔に関係なく血管壁の均一な露出を保証するように構成される、実質的に放物線状のプロファイルおよび/または湾曲した円錐形表面を使用することが必要となってくる。しかし、刺激放射をより広く分散させることが望まれる場合には、外側に湾曲した(半楕円体形状)反射器を使用できる可能性があることは理解されよう。実際には、このようなやり方での円錐形反射器のテーパ付けは、上記の2光子重合過程を使用して実行することができる。
【0134】
鏡の直径の増大と円錐形表面の曲率の増大とを組み合わせると、平坦な円錐形表面と比較して少なくとも100%の集光効率の増加につながり、今度はこれを手助けとして、動脈内の他の発光および反射から生じるバックグラウンド放射を上回って、動脈内の自家蛍光から生じる試料信号を検出できるよう保証することができる。
【0135】
以下、
図3Bを参照しつつ、別の例示的な反射器構成を記載する。
【0136】
この例では、円錐形反射器315は、光ファイバ312の直径よりも大きい直径dを有し、これは、上記のとおり、検出された試料放射の信号強度を増加させる手助けとなる。この例では、拡大領域319が、光ファイバ312の端部と円錐形反射器315との間に設けられて、回折によってビームが拡大するのを可能にし、これはまた、反射器から反射されて戻る試料放射を光ファイバ上に集束させることを支援する。この例では、拡大領域319の遠位端は、円錐形反射器と同じ直径であり、一方で近位端は、光ファイバ312の直径以上の直径を有することができる。
【0137】
光線追跡シミュレーションを使用して、鏡の直径の増大と円錐形表面の曲率の増大の組み合わせがどのように集光効率の増加につながるかを実証した。この点に関して、
図7Aから
図7Cは、
図7Dから
図7Fの対応する反射器の仕組みの場合の例示的な光線追跡を示しており、ここで、徐々に数を増加させた表面要素を使用して、湾曲した円錐形反射器を近似している。これらのシミュレーションは、理想的な湾曲した鏡面を近似する表面要素の数を増加させるにつれて、光ファイバによって捕捉される光子の数がいかに増加するかを示している。検出器で受けられたパワーは、単一の円錐角である基準の場合と比較して、四つの要素の場合、実効的に2倍になる。シミュレーションでは、光線はすべて血管の壁上の同じ点源(これらの例で示された光学系の区域の上方に位置する)から来るが、鏡が見込む範囲よりも広い範囲を対象として無作為に選択された伝搬角を有する。
図7Dから
図7Fは、ファイバ端面に相対的な円錐面の簡略化された2Dでの例示である。ここでは、便宜上、円錐断面の上半分のみが示されている。
【0138】
さらに、適切な長さのビーム拡大区分の存在を使用できることで、光ファイバの端面上での収束を強化することが可能になる。この点に関して、
図7Gから
図7Iは、ビーム拡大区分を徐々に増加させることの効果を示しており、結果として得られる試料放射の戻りパワーが
図7Jに示されている。これは、0.3mmから0.5mm、好ましくは0.4mmの長さを有するビーム拡大領域が、試料放射にとって最適な戻りパワーをもたらすことを強調するものであるが、ただしこの値は、反射器の直径、円錐角、および曲率のみならず、光ファイバの開口数に依存して様々となる場合のあることは理解されよう。
【0139】
ともにこれらのシミュレーションは、鏡の直径を増大させ、鏡面を湾曲させ、適切なビーム拡大長さを選択することによって、集光効率の実質的な向上が得られることを実証している。
【0140】
概して、反射器315は典型的には、少なくとも80μmの直径dを有することになる可能性があるが、これは、ガイドワイヤにおいて実際に使用されることになる可能性のある最小の「標準的な」直径の光ファイバに相当する。反射器315の最大直径は典型的には、ガイドワイヤの直径によって制約される可能性があり、最大350μmとなる可能性がある。円錐形反射器315の高さhは、平坦な円錐形表面の場合には円錐形直径dの近似的には半分となる可能性があり、曲線または放物線形状の反射器を使用するならば、わずかに大きいまたは小さい値も可能である。
【0141】
【0142】
加えて、円錐角αによって、ガイドワイヤから光が出現する角度を決定することができる。一実施例では、これは90゜の円錐角とすることができる可能性があり、その結果、ガイドワイヤの長手方向軸に対して実質的に垂直な発光が得られる。しかし、例えば、さらに緩和された製造公差、または動脈壁に沿った異なるレベルの空間分解能を可能にするために、好ましい実装に応じて他の角度を使用できる可能性がある。
【0143】
一詳細実施例では、反射器は、90゜にオフセットした角度で刺激放射が光ファイバから放出されるように構成される。これにより、放出されたサンプリング放射が血管壁から反射されてまっすぐ反射器上にもどり、よって試料放射として検出され、これは、血管内の自家蛍光から生じる信号を圧倒できる可能性がある。その結果として、45゜と135゜との間の円錐角を使用できる可能性があり、一実施例では、90゜からオフセットした、より好ましくは85゜から95゜にオフセットした円錐角が使用される。
【0144】
典型的には、反射器115、315は、10μmより大きい、50μmより大きい、200μmより小さい、または約100μmである、のうちの少なくとも一つの長手方向幅を有する、刺激放射の環状ビームを生成するように構成されるが、ただし好ましい実装に依存して、他の幅を使用できる可能性があることは理解されよう。
【0145】
上記の実施例では、マルチモード光ファイバが使用される。しかし、これは本質的ではなく、別法としてダブルクラッド光ファイバを使用することができ、以下、この例について、
図4Aから
図4Cを参照しつつ記載する。
【0146】
この例では、増分300として増加させた類似の参照符号を使用して、
図1Bの仕組みと類似の特徴を指示しているので、これらを詳細に記載することはしない。
【0147】
よって、ガイドワイヤは、周方向の窓414と、窓414から半径方向内方に、そして先端部418から後方に位置決めされた円錐形反射器415とを含む。この例では、ダブルクラッド光ファイバ412が、ガイドワイヤの近位端から、円錐形反射器415に近接して位置決めされたビーム拡大器419まで実質的に延在している。またしても、光ファイバ412の遠位端、ビーム拡大器419、および円錐形反射器415は、支持材料413、例えばシリコーン製の鉢型部よって定位置に保持されている。
【0148】
ダブルクラッド光ファイバ412は、シングルモードコア412.1、第1のマルチモードクラッド層412.2、および第2の外側クラッド層412.3を含む。シングルモードコア412.1および第1のマルチモードクラッド層412.2は、125μm以下の直径を有し、同時に光ファイバの全径は、ポリマー外側クラッド層412.3を含めて最大250μmである。
【0149】
使用時には、シングルモードコア412.1は、放射源121からの刺激放射を伝搬させるのに使用され、一方でマルチモードクラッド層412.2は、試料放射を伝送して検出器122に戻すのに使用される。この例では、ビーム拡大器419は、ダブルクラッドファイバ412の端部に継ぎ合わされた、上記のものと類似の標準的なマルチモードファイバを含む。ビーム拡大器419は、シングルモードレーザー光を回折によって拡大可能にするように動作して、半径方向反射器のサイズと刺激放射のビームが一致するようにする。ビーム拡大器419のサイズは、内腔上の所望の空間的範囲と、試料放射を集めるために利用可能な反射器の直径とに依存することになるが、典型的には長さが近似的に1.5mmまでである。
【0150】
この例では、読み取り器120は、ダブルクラッドファイバカプラ125を含み、このカプラは、刺激放射をシングルコアシングルモード放射源側光ファイバ121.1から内側コア412.1に伝送し、後方散乱された試料放射をダブルクラッドファイバの内側クラッド412.2からマルチモード検出器側光ファイバ122.2に伝送するものである。
【0151】
ダブルクラッドファイバ412を使用することで、刺激放射を効率的に送達し、後方散乱された試料放射を集めることが可能になる。ダブルコアファイバ412はまた、送達経路と集光経路との間で光の効率的な分離を提供するファイバカプラ125と適合するのみならず、頑健な構造を有する。
【0152】
この例では、ビーム拡大器419は、ダブルコアファイバを半径方向の発光および信号の収集に適応させる上で重要な役割を果たし、これは主に、可能な限り大きな範囲の試料放射を円錐形反射器の表面によって収集しファイバの内側コアに戻すよう保証することによってなされる。加えて、ビーム拡大器は、空間的に小さな刺激放射源が効率的に反射され潜在的に集束されて刺激放射の環状ビームにできるよう保証し、このビームがガイドワイヤ110の全周から放出される。
【0153】
またしてもこの例では、半径方向反射器415は、平坦または湾曲したものとすることができる可能性があるが、いずれにしても、試料放射、例えば自家蛍光の検出にとって充分に画定された空間的場所(血管の長手方向軸に沿って)を提供して、原理的には、マルチモードファイバを用いて得られるものより空間分解能が良好であるはずであり、これは、より小さな放射源サイズを集束してより狭い環状ビームにできることに起因する。
【0154】
上の実施例は、マルチモードファイバまたはダブルクラッド光ファイバの使用に焦点を当ててきたとはいえ、他の形態のファイバ、例えば微細構造化光ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、または同類のものを使用することができること、そしてマルチモードファイバまたはダブルクラッド光ファイバへの言及が、限定するものであるわけではないとみなされるのが望ましいことは理解されよう。
【0155】
上記の実施例では、読み取り器は、試料放射を検出するように構成される単一の検出器122を含む。しかし、受けられた試料放射の強度は、特徴の存在のみならず、血管内の放射の散乱を含め、複数の要因に依存して様々となり得る。例えば、刺激放射および試料放射は、血液中で強く散乱される可能性が高い。一実施例では、そのような散乱は、例えば、内容が相互参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7539530B2号明細書に記載される技術と類似の技術を使用して、血管壁からのガイドワイヤの間隔をモニタリングすることによって対応することができる。加えて、および/または別法として、測定中に測定窓から血液をフラッシングすることが必要な場合があり、これは、動脈を可視化するために使用される造影剤、例えばVISIPAQUE(商標)を用いて実現することができる。
【0156】
さらなる代替例では、後方散乱された刺激放射を検出するために第2の検出器が設けられることで、これを使用して、受けられた試料放射の測定結果を較正することが可能になり、この実施例が
図5に示されている。
【0157】
この例では、増分400として増加させた類似の参照符号を使用して、
図1Aの仕組みと類似の特徴を指示しているので、これらを詳細に説明することはしない。
【0158】
よって、この例では、読み取り器520は、放射源521、放射源側ソース光ファイバ521.1、処理装置523、ファイバカプラ525、コネクタ526、インタフェース527、および随意の入力528を含む。
図1Aの単一の検出器は、第1および第2の検出器522.1、522.2に置き換えられており、これらは、フィルタ/ビームスプリッタの仕組み524.1およびレンズ524.2を介して検出器側光ファイバ522.3に結合され、これらは、入射した放射を、それぞれ第1および第2の検出器522.1に向かう試料放射と後方散乱された刺激放射とに分割するよう動作する。これにより、後方散乱された刺激放射を使用して、例えば、刺激放射と試料放射の比を使用することによって、試料放射の受けられた強度を較正することが可能になり、この比を使用することで、血管内で生じる散乱の量が分析で考慮されるようになる。例えば、この比によって、血管のサイズの変化が考慮される可能性があり、これにより、1/R
2の係数(ここで、Rは血管半径である)が導入される。
【0159】
バックグラウンド信号はまた、光ファイバ内部のシリカガラスから生成されるラマン散乱からも生じる場合がある。この例では、ダブルクラッド光ファイバからのそのようなラマン散乱を除去するために、同時係属の米国特許出願公開第2021/0041366号明細書に記載されているものと類似のマイクロフィルタの仕組みを採用できる可能性がある。この例では、フィルタのこの仕組みは、
図4Aから
図4Cを参照しつつ上記されたダブルクラッドファイバの仕組みにおけるビーム拡大器419の一部として一体化することができる可能性がある。
【0160】
別法として、別の実施例では、第3の波長でのバックグラウンド放射の強度を測定することができ、これは、環状ビームを照射された他の組織成分から放出されたバックグラウンド放射、例えば健康な組織および/または安定な粥腫から放出された蛍光または自家蛍光、または同類のものを表している。この場合には、対象となっている信号は、試料放射とバックグラウンド放射との間の比とすることができる。一実施例では、不安定な粥腫に起因するいかなるNIRAF信号も臨床的には有意となるので、検出の閾値は、バックグラウンド信号のノイズレベルによって決まる。例えば、バックグラウンド放射の強度の変動が10%であるならば、事象を有意とするには比が1.3より大きい(閾値としてSNR>3に対応する)ことが要求され得る。
【0161】
処理装置523は典型的には、試料放射の特性を決定することによって、そしてこれを使用して、試料放射が特徴の存在または不在を示すか否かを評価することによって、受けられた試料放射を分析するように構成される。例えば、特徴が、特徴的な周波数で放射を放出する場合があり、その場合には、その周波数での試料放射の検出を使用して、その特徴が存在することを特定することができる。
【0162】
一詳細実施例では、処理装置523は、試料放射特性、例えば試料放射の測定された強度、試料放射の測定された強度から得られる値、または試料放射の測定された強度の変化を決定することによって、試料放射を分析するように構成される。次いで試料放射特性を使用して、血管に特徴が存在するかどうかが特定され、その場合に、特徴があれば指標が生成される。
【0163】
よって、例えば、特定の波長での試料放射の強度を使用して、特徴、例えば脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫が存在するかどうかを評価することができる。この例では、処理装置は典型的には、検出器から受けられた信号に基づいて試料放射の強度を決定し、次いでその強度を閾値と比較する。試料放射の強度が閾値を超えるならば、これを、特徴の存在、および/または特徴の定量化、例えばアテローム性動脈硬化症粥腫の脆弱性の程度を示すものとすることができる。閾値は、絶対値、例えば複数の特徴の分析から得られる値とすることができる可能性があるが、別法として相対値とすることができる可能性、および/またはバックグラウンド放射または後方散乱された刺激放射の測定に基づいて導出できる可能性がある。
【0164】
これにより今度は、例えば、可聴性の、触覚的な、および/または視覚的な警告となる対応する指示の生成が可能になるか、または随意に、受けられた試料放射のスペクトルが表示される。一実施例では、いずれかの検出された特徴に付随するリスクを表す数値指標を、例えば、リスクの程度を示すために1から10の間で目盛付けられた値を使用することによって表示できる可能性がある。この点に関して、受けられた信号の強度は、粥腫内出血のサイズおよび/または程度に依存する可能性があって、受けられた信号の強度が高いほど、粥腫が大きいかまたは脆弱であるかのいずれかを意味し、これらのいずれも、被検体にとってより大きなリスクを表すので、強度を目盛付けてそのような指標を提供することが可能になる。
【0165】
加えて、および/または別法として、ガイドワイヤの移動につれて決定される強度の変化を使用して、健康である血管の部分と、特徴を含有する血管の部分とを比較できる可能性がある。よって、例えば、健康な血管の領域から、脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫を含む血管の部分にガイドワイヤが移動するさいに、検出された試料放射の強度に階段状の変化が存在することになる。一実施例では、変化の程度、例えば血管の健康な部分および特徴を含有する部分からの試料放射の比を使用して、特徴の存在を評価することができる。
【0166】
血管内でのガイドワイヤの移動の速度が、空間分解能を「ぼかす」場合があることは理解されよう。しかし、検出閾値という観点でのサンプリングレート調整を使用してこれを説明することができ、これは例えば、小信号を使用して高速サンプリングレートを提供することによってなされる。しかし、これは、ノイズレベルが高くなると感度低下につながり、遅いサンプリングについてはその逆も然りであって、サンプリングレート、空間分解能、感度での妥協がこの過程に必要である場合のあることを意味している。加えて、これを、血管の直径の変化、安定な粥腫の存在、または他の要因を考慮に入れて調整する必要がある場合がある。よって、一実施例では、システムは、信号サンプリングおよび信号閾値を制御するために、追加データ、例えば予想される血管径を使用してもよく、それによって、本シナリオに合わせて実行される分析を最適化してもよい。加えておよび/または別法として、例えば血管内を通るガイドワイヤの移動スピードを考慮に入れることができる空間的な強度変化の割合を使用する、さらなる処理が必要である場合がある。
【0167】
前述したとおり、異なる量の散乱が血管内で発生する可能性があり、その場合には、試料放射を分析するさいに、後方散乱された刺激放射の測定結果を使用することができる。例えば、後方散乱された刺激放射の測定された強度を使用して、試料放射の測定された強度を正規化することができるか、または試料放射を分析するさいに使用される閾値を変更することができる。例えば、後方散乱された刺激放射の測定された強度が増加するならば、これは追加の散乱が起こっていることを示唆しており、よって、特徴の存在を特定するのに必要な閾値を変更できる可能性がある。この点については、閾値は、測定された指標の特定の値、例えば健康な組織からのバックグラウンド放射に対する、特徴からの測定された試料放射の強度の比、または同類のものとすることができる可能性がある。
【0168】
実際には、使用される手法は、様々な要因、例えば特徴の性質、血管内の環境、または同類のものに依存する場合があることは理解されよう。一実施例では、これを最もよく考慮するには、スペクトル全体、すなわち多くの波長での強度を測定する手法がある。次いでこれを、多変量の技術および/または機械学習の手法を使用して分析することができて、最も適切な技術を使用して特徴検出を実行することが可能になる。
【0169】
上述のとおり、装置は、出力、例えばディスプレイ装置、計算機モニタ、タッチスクリーン、タブレット、スピーカ、または同類のものを含むことができ、これらを、指標を示す可聴性の、視覚的な、または触覚的な出力を生成するように構成することができる。例えば、モニタまたはディスプレイを使用して、測定された試料放射から導出された強度マップを表示することができる。このマップはさらに、放射線不透過性先端部の位置を背景にしてレジストレーションがなされ、蛍光透視画像の対応する領域上に投影されることで、臨床医が特徴の場所を視覚化することが可能になる。加えて、および/または別法として、他の形態のデータ表現、例えば可聴性信号を用いることができる可能性があり、これは、画面を観察しなければならないことでガイドワイヤの管理から臨床医の注意がそらされるかもしれないということなしに、臨床医が特徴を特定することが可能になるという利点を有する。
【0170】
以下、特徴のセンシングを実行する好ましい過程の一実施例を、
図6Aおよび6Bを参照しつつ記載する。例示を目的として、この例を、
図5の装置を参照しつつ説明するが、ただし本明細書に記載される他の装置の仕組みを使用して、広く類似の過程を実行できることは理解されよう。
【0171】
この例では、ステップ600で、操作者がガイドワイヤ110を被検体の血管に挿入し、入力528を使用して測定手順を開始し、それによってステップ605で放射源521が作動するように処理装置523にさせる。
【0172】
この時点で、操作者は、ステップ610で血管に沿ってガイドワイヤを移動させ始めるが、これは例えば、ガイドワイヤを後退させて、脆弱なアテローム性動脈硬化症粥腫などの特徴を含有する危険性のある血管の一部を通過させることによってなされる。
【0173】
ステップ615では、放射が、第1および第2の検出器522.1、522.2によって受けられ、検出器からの信号が処理装置523によって使用されて、ステップ620で、試料放射および後方散乱された刺激放射、および/またはバックグラウンド放射の強度が決定される。ステップ625では、処理装置523が使用されて、後方散乱された刺激放射の強度に基づいて試料放射の強度が正規化される。これは、血管内の散乱の量を考慮するために試料放射の強度の大きさを調整しようとするものであり、これが今度は、受けられた試料放射の強度に影響し得る。
【0174】
一実施例では、上の手法は、健康な組織または同類のものから放出されて検出されたバックグラウンド放射の強度よりも著しく高い強度を有するいかなる試料放射をも検出する。バックグラウンド放射を同時に測定することで、血管径および組織の特性の変動を考慮することができる。加えて、および/または別法として、測定された試料放射の強度は、後方散乱された刺激放射の強度の測定値と組み合わせて、健康な組織および/または安定な粥腫からの自家蛍光を含むバックグラウンド放射の測定された強度に基づく複合的な読み取り値と比較できる可能性がある。
【0175】
ステップ630では、正規化された試料放射強度が閾値と比較され、比較の結果を処理装置523が使用して、血管内に特徴が存在するかどうかが確認される。存在しないならば、過程はステップ610に戻り、操作者は血管に沿ってガイドワイヤを引き続き移動させる。
【0176】
しかし、特徴が存在するならば、ステップ640では、例えば、ディスプレイを更新する、および/または警告を鳴らすことによって、指示が生成されて提示される。これにより、操作者は、ステップ645でガイドワイヤを読み取り器から切り離すことで、ステップ650で処置を開始することが可能になる。
【0177】
上記の過程は実質的に連続的に行うことができるので、実際には、ガイドワイヤを血管内に静的に保持する必要はなく、代わりに、ガイドワイヤが血管内で移動するにつれ検出を実質的に連続的に行うことができることは理解されよう。したがってこれは、血管内の特徴を特定するために、容易で、効果的な、時宜を得た機構を提供する。
【0178】
上記の手法を使用して、広範囲の状況において特徴の検出を実行することができる。これは、例えば、外来性蛍光、または追加の外来性マーカーなしに特徴の蛍光から生じる自家蛍光に起因する蛍光の結果として試料放射が放出される状況において、最も有用である傾向がある。一つの好ましい仕組みでは、装置は、血管内のアテローム性動脈硬化症粥腫から放出される試料放射を検出するように構成されており、その結果得られる指標は、粥腫の存在または程度または脆弱性を示す。
【0179】
上の手法は、ガイドワイヤとして留置される、柔軟性と小さいサイズを有する装置を提供することで、この装置をさらに直截的に採用することが可能になり、低レベルの光信号の分光学的測定、すなわち異なる波長での光の強度の測定を実行するのに使用することができる。
【0180】
血管内の分光学的測定のために評価されてきた別の形態の分光法が近赤外反射分光法であり、これは、段落0012に記載されている。InfraReDx NIR分光システムは、機械的な引き戻しと回転を伴う3.2F撮像カテーテル(直径1.07mm)からなる。カテーテルは、回転するコアと、NIR光を送達し集める光ファイバのみならず、ガイドワイヤを備え密閉された外側シースとを含む(Waxman S, “Near infrared spectroscopy for plaque characterization,” J Interv Cardiol 2008, 21:452-458に記載)。複数の光ファイバを使用することは概して、350μmの標準的な冠状動脈ガイドワイヤサイズと相容れない。NIR分光法は反射された光のレベルに基づいているので、低い光レベルの技術とは通常見なされてはいない。しかし、血管フラッシング、血管閉塞、組織圧着に頼らずに血液中で測定を実行するならば、信号レベルは低下することになる。よって、長手方向の引き戻しスピードは、0.5mm/sに制限される。
【0181】
低い光レベルの信号の分光学的測定のこれらの例に基づくと、これらは全て、比較的大きい直径を有するカテーテルまたは内視鏡装置において現在実装されているが、これらの分光学的技術は、上で考察された先行技術において開示されている装置のいずれを有するガイドワイヤにおいても実際上実現できないことは明らかであり、その理由は、これらの特許が(a)装置を標準的な冠状動脈ガイドワイヤの規模に小型化すること、そして(b)実際の応用において必要とされるレベルの感度(よって走査スピード)にとって充分な集光効率を提供することを、いかにして行うか示していないからである。
【0182】
本明細書、および添付の特許請求の範囲を通じて、文脈上他に必要とされない限り、語句「含んでなること」、およびその変形の「含んでなる」または「含んでなっている」は、記載された完全体、または完全体もしくはステップの群を含むが、他の完全体、または完全体の群を排除しないことを示唆しているものと理解されよう。本明細書で使用されるとおり、他に断りのない限り、用語「近似的に」または「約」は、±20%を意味する。
【0183】
当業者にとっては、多数の変形例および修正例が明らかになることは理解されよう。当業者には明らかになる全てのそのような変形例および修正例は、先に記載された広義の本発明の趣旨および範囲に収まると見なされるのが望ましい。
【国際調査報告】