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  • 特表-多成分フラックス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】多成分フラックス
(51)【国際特許分類】
   C22B 9/10 20060101AFI20230831BHJP
   C01F 7/54 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C22B9/10 101
C01F7/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507751
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021044370
(87)【国際公開番号】W WO2022031721
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/061,556
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515257689
【氏名又は名称】パイロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マスター,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スラヴィチェック,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ヅゥオ,シン
(72)【発明者】
【氏名】ハーグード,ヴィジャイ
【テーマコード(参考)】
4G076
4K001
【Fターム(参考)】
4G076AA04
4G076AA05
4G076AA06
4G076AB03
4G076AB04
4G076CA02
4G076DA30
4K001AA02
4K001AA30
4K001AA34
4K001AA38
(57)【要約】
(a)アルカリ塩化物塩、(b)アルカリ土類塩化物塩ならびに(c)少なくとも1種の硝酸塩、炭酸塩、もしくは硫酸塩および/またはフッ化物含有塩を含む圧縮顆粒からなる固体金属フラックス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルカリ塩化物塩、(b)アルカリ土類塩化物塩ならびに(c)少なくとも1種の硝酸塩、炭酸塩、もしくは硫酸塩および/またはフッ化物含有塩を含む圧縮顆粒からなる固体金属フラックス。
【請求項2】
前記フッ化物含有塩および硝酸、炭酸、または硫酸のうちの少なくとも1種の塩の両方を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
約1~3mmの間の粒度を有する、請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記アルカリ塩化物塩が、重量で顆粒の最大百分率を構成する、請求項1に記載のフラックス。
【請求項5】
前記アルカリ土類塩化物塩が、重量で顆粒の最大百分率を構成する、請求項1に記載のフラックス。
【請求項6】
25~75wt.%の間のアルカリ塩化物塩、5~60wt.%の間のアルカリ土類塩化物塩、5~25wt.%の間のフッ化物含有塩、および5~25wt.%の間の硝酸塩、または炭酸塩、硫酸塩からなる、請求項1に記載のフラックス。
【請求項7】
30~75wt.%の間のアルカリ塩化物塩、20~60wt.%の間のアルカリ土類塩化物塩、5~25wt.%の間のフッ化物含有塩、および8~18wt.%の間の硝酸塩、または炭酸塩、硫酸塩からなる、請求項1に記載のフラックス。
【請求項8】
共晶である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項9】
420~800℃の間の、好ましくは720℃未満の溶融温度を有する、請求項1に記載のフラックス。
【請求項10】
粉末形態の材料を用意すること、組み合わせられた前記材料を混合すること、組み合わせられた前記材料を溶融すること、溶融した組み合わせられた前記材料を凝固させて、融合化合物を得ること、ならびに前記融合化合物を破砕および篩分けすることを含む、請求項1に記載の塩を製造する方法。
【請求項11】
少なくとも二成分塩材料の細粒が使用される、粉末形態の前記塩を用意すること、組み合わせられた前記塩を混合すること、組み合わせられた前記塩を圧縮して、圧縮材料を得ること、ならびに前記圧縮材料を破砕および篩分けすることを含む、請求項1に記載の塩を製造する方法。
【請求項12】
アルカリ塩化物塩およびアルカリ土類塩化物塩が二成分材料で用意される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
金属浴の処理のための方法であって、少なくともアルカリ塩化物塩、アルカリ土類塩化物塩および少なくとも1種の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、フッ化物含有塩またはそれらの組合せを混合して、混合物を生成すること、前記混合物のフラックス顆粒を生成すること、ならびに続いて前記フラックス顆粒を前記金属浴に供給することを含む、方法。
【請求項14】
前記フラックス顆粒が25~75wt.%の間のアルカリ塩化物塩、5~60wt.%の間のアルカリ土類塩化物塩、5~25wt.%の間のフッ化物含有塩、および5~25wt.%の間の硝酸塩、または炭酸塩、硫酸塩からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フラックス顆粒が30~75wt.%の間のアルカリ塩化物塩、20~60wt.%の間のアルカリ土類塩化物塩、5~25wt.%の間のフッ化物含有塩、および8~18wt.%の間の硝酸塩、または炭酸塩、硫酸塩からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ塩化物塩が、重量で顆粒の最大百分率を構成する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ土類塩化物塩が、重量で顆粒の最大百分率を構成する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記フラックス顆粒が、420~800℃の間の、好ましくは720℃未満の溶融温度を有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2020年8月5日に出願された米国仮特許出願第63/061,556号の利益を主張する。
【0002】
本例示的実施形態は、特有のフラックス化合物に関する。それは、アルミニウム、アルミニウム合金、ならびに亜鉛、リチウム、またはマグネシウムなどの他の非鉄金属、およびそれらの合金の処理のために使用される塩含有フラックス化合物として特に適用される。
【0003】
本開示は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などの金属の処理のための塩フラックスの使用に関する。アルカリ塩化物およびアルカリ土類塩化物に基づくフラックスは、合金の精錬のために頻繁に使用される。フラックスは、酸化を防止する目的で合金の表面に保護層を形成するために使用することもできる。一部のフラックスは、ドロスを清浄化し、かつ酸化物層内に捕捉されたアルミニウムを除去するためにも使用される。
【背景技術】
【0004】
伝統的に、アルミニウムの精錬は、濾過、脱ガスおよび/または溶融金属中への塩素のバブリングにより行われた。塩素の使用は特に効果的であるが、塩素および塩酸の排出のために環境問題を生み出す。より生態学的に優しい解決策として塩ブレンドの使用が採用された。塩ブレンドは、金属産業において「フラックス」として一般に既知である。
【0005】
ナトリウムおよびカルシウムは、ホール・エルー法から得られるアルミニウム中に不純物として常に存在する。残念ながら、マグネシウムを含むアルミニウム合金において、ナトリウムの存在は、熱間圧延プロセスにおいて支障をきたすことがある。MgClは、合金中の不純物の除去のために使用される化学的活性剤のうちの1つである。その濃度および分布は、カルシウムおよびナトリウムの除去の速度論に対して直接的な影響を有する。
【0006】
もちろん、塩化マグネシウムに基づくフラックスの多くの例が存在する。米国特許第1,377,374号は、マンガンまたはマグネシウム合金の生産のための塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウムの等モル組成を有するフラックスの使用に関する。米国特許第1,754,788号は、マグネシウムの清浄化のためのプロセスにおけるこの同じフラックスの使用に関する。米国特許第1,519,128号は、この組成物への塩化カルシウムの添加に関する。米国特許第2,262,105号は、塩化カルシウムに加えて塩化カリウムおよび酸化マグネシウムの添加に関する。米国特許第5,405,427号は、金属の処理のための塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムおよび炭素に基づくフラックスについて述べている。これらの特許のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
いくつかの方法を使用して、塩フラックスを合金に取り込むことができる。米国特許第4,099,965号(その開示が参照により本明細書に組み込まれる)は、アルミニウムの添加前に予熱されたコンテナの底部にフラックスが固体形態で添加される方法に関する。さらに最近では、金属の表面下のパイプ内の不活性ガスによりフラックスが添加される(ランス・フラクシング)。あるいは、中空シャフトにより塩フラックスをガスキャリヤーと共に合金に導入し、塩フラックスは撹拌機により分散される(回転式フラックス注入)。この方法は、合金中の塩フラックスの分散を増加させながら、精製を行うために必要とされる塩フラックスの量を減少させる。金属への塩フラックスの添加後、不純物、および塩が最も典型的には液体金属の表面に浮き、かつ除去され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第1,377,374号
【特許文献2】米国特許第1,754,788号
【特許文献3】米国特許第1,519,128号
【特許文献4】米国特許第2,262,105号
【特許文献5】米国特許第5,405,427号
【特許文献6】米国特許第4,099,965号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Utigard、Friesen、Roy、Lim、SilnyおよびDupuisによる論文「The Properties and Uses of Fluxes in Molten Aluminum Processing」、JOM、1998年11月
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、フラックス材料が、プロセスに優しい溶融温度を有する顆粒化粒子における組合せとして存在する、溶融金属へのフラックス添加の主要な利点を提供するフラックス材料に関する。本開示の実施形態は、以下の利点を示す:経済的利点;より低い生産コスト;より低い原材料コスト;既存の周知の塩フラックスを使用する精製方法と同等の効率;およびアルミニウムまたはアルミニウム合金重量、とりわけ3重量%よりも高いマグネシウム含有量を有するアルミニウム合金内でナトリウムの著しい蓄積を何らもたらさない既存の塩フラックスの経済的代替。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下は図面の簡単な説明であり、本明細書に開示される例示的実施形態を示す目的で提示され、それを限定する目的で提示されない。
【0012】
図1】本フラックスの製造に適した例示的な装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
簡単な説明
基本的な理解を提供するために本開示の様々な詳細が以下にまとめられる。本概要は、本開示の広範な概要ではなく、かつ本開示のある種の要素を特定することも、その範囲を叙述することも意図されない。むしろ、本概要の主な目的は、以下に提示されるより詳細な説明の前に本開示のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0014】
第1の実施形態によれば、圧縮顆粒からなる固体金属フラックスが提供される。フラックスは、(a)アルカリ塩化物塩、(b)アルカリ土類塩化物塩、ならびに(c)硝酸、炭酸、硫酸のうちの少なくとも1種の塩またはそれらの混合物および/またはフッ化物含有塩を含む。
【0015】
さらなる実施形態によれば、金属浴の処理のための方法が提供される。本方法は、アルカリ塩化物塩、アルカリ土類塩化物塩、ならびに硝酸、炭酸、硫酸のうちの少なくとも1種の塩またはそれらの組合せおよび/またはフッ化物含有塩を組み合わせて、混合物を生成することを含む。顆粒は、混合物から生成され、かつ金属浴に添加される。
【0016】
さらなる実施形態によれば、段落[0012]の塩を製造する方法が提供される。本方法は、粉末形態の材料を用意すること、組み合わせられた材料を混合すること、組み合わせられた材料を溶融すること、溶融した組み合わせられた材料を凝固させて、融合化合物を得ること、および融合化合物を破砕し、次いで、篩分けすることを含む。
【0017】
別の実施形態によれば、段落[0012]の塩を製造する方法が提供される。本方法は、少なくとも融合二成分塩材料の細粒が含まれる、粉末形態の塩を用意すること、組み合わせられた塩を混合すること、組み合わせられた塩を圧縮すること、および圧縮材料を破砕し、次いで、篩分けすることを含む。
【0018】
詳細な説明
本明細書に開示される構成要素、プロセスおよび装置のより完全な理解は、添付図面を参照することにより得ることができる。図は、便宜および本開示を示す容易さに基づく概略図であり、したがって、デバイスもしくはその構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すこと、ならびに/または例示的実施形態の範囲を定義もしくは限定することは意図されない。
【0019】
明確にするために特定の用語が以下の説明において使用されるが、これらの用語は、図面において例示のために選択された実施形態の特定の構造のみを参照することが意図され、本開示の範囲を定義または限定することは意図されない。図面および以下に続く説明において、同様の数字表示は、同様の機能の構成要素を指すことが理解されるべきである。
【0020】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により特に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
本明細書において使用されるとき、約(about)、一般的に(generally)、実質的に(substantially)という用語は、そのような用語により修飾される要素または数字の目的に著しく影響しない構造的または数値的修正を包含することが意図される。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、用語「を含む(comprising)」は、実施形態「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含み得る。用語「を含む(comprise(s))」、「を含む(include(s))」、「を有する(having)」、「を有する(has)」、「できる(can)」、「を含む(contain(s))」、およびそれらの変種は、本明細書において使用されるとき、挙げられた成分/ステップの存在を必要とし、かつ他の成分/ステップの存在を許容するオープンエンドの移行句、用語、または語であることが意図される。しかし、そのような説明は、組成物またはプロセスを挙げられた成分/ステップ「からなる」および「から本質的になる」ものとも記載するものと解釈されるべきであり、それは、結果としてそれから生じる可能性がある任意の不純物と共に、挙げられた成分/ステップのみの存在を許容し、かつ他の成分/ステップを除外する。
【0023】
本開示は、アルミニウム、アルミニウム合金、ならびに亜鉛、リチウム、またはマグネシウムなどの他の非鉄金属およびそれらの合金の処理のために使用することができる特有の融合フラックス顆粒化材料に関する。融合フラックスは、塩化合物のブレンドである顆粒を包含することが意図される。顆粒という用語は、粒子、ブリケット、ペレット、ストリップ、シェービングなどのような形態を包含することが意図されることを当業者は理解されよう。
【0024】
フラックスは、様々な技法を使用して溶融金属浴内または上に分布させることができる。語句「金属浴」は、金属の大部分が液体形態で存在し、小部分のみが例えばスキャブ(scab)の成分として、またはスラグの成分として固体形態で存在する金属の任意の溶融物を意味すると理解される。液体金属流は金属浴とも呼ばれる。
【0025】
フラックスは金属浴に導入されて、物理的および化学的に相互反応し(intereact)、金属を精錬する。介在物およびアルカリ除去に最も効果的な処理方法は、一般に、何らかのタイプの表面下分布技法(例えば、不活性ガス注入)および機械式ローターまたは電磁ポンプ/インダクターによるなど、撹拌を使用するものである。
【0026】
本フラックス材料は、少なくとも3つの主要な金属処理機能を有利に提供する。本フラックスの3つの機能的態様は以下を含み得る:(1)望まれない非金属介在物および不純物を除去する、(2)アルカリおよびアルカリ土類元素(ナトリウム、カルシウム、およびリチウム)を除去する、および(3)金属浴の表面に形成する金属酸化物「ドロス」の層を乾燥する(すなわち、ドロス層内のより低い液体金属含有量)。特定の実施形態において、本フラックス材料は、結晶粒微細化、水素除去および/または化学改質も実現することになる。様々なフラックス材料の効果に関する良好な情報源は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Utigard、Friesen、Roy、Lim、SilnyおよびDupuisによる論文「The Properties and Uses of Fluxes in Molten Aluminum Processing」、JOM、1998年11月に見出すことができる。
【0027】
構成成分のうちの1つは、塩化ナトリウム(Na)および/または塩化カリウム(K)および/または塩化リチウム(Li)など、アルカリ塩化物塩であり得る。アルカリ塩化物塩は、比較的低温で酸化アルミニウムと融合することができ、化学反応を通じた、または物理的分離による除去を可能にする。同様に、溶融物中の液体を生成後、これらの塩はまた、介在物を除去することにより役立ち、かつ浮選を通じて水素除去を補助する。加えて、アルカリ塩化物塩は、溶融物に対して被覆効果をもたらして、溶融金属の追加の酸化を防止することができる。アルカリ塩化物塩はまた、アルミニウムとドロスの界面において反応することができて、捕捉された液体アルミニウムを含む酸化物皮膜を貫通する。アルカリ塩化物塩は、表面下に注入されたとき炉環境を清浄化することもできる。
【0028】
構成成分のうちのもう1つは、塩化マグネシウム(Mg)、塩化バリウム(Ba)、塩化ストロンチウム(Sr)、および/または塩化カルシウム(Ca)など、アルカリ土類塩化物塩であり得る。アルカリ土類塩化物塩を使用して、アルカリおよびアルカリ土類元素をppm以下のレベルまで除去することができ、多くの場合、塩素を置き換えることができる。アルカリ土類塩化物塩はまた、アルカリ塩化物塩と共晶を生成して、より低い塩溶融温度を与えることができる。
【0029】
構成成分のうちのもう1つは、アルカリ土類フッ化物、フッ化アルミニウム、および/または複塩、例えば、アルカリ金属フッ化物、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムナトリウム、フッ化アルミニウムカリウム、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化カリウムおよびアルカリ金属シリコ-フッ化物などのフッ化物塩であり得る。フッ化物塩は、アルミニウムの表面張力を低下させることができ、液滴合体を可能にする。一部のフッ化物はAlFなど、金属化学に影響することもあり、それは、マグネシウムおよびアルカリ元素を除去する。フッ化物はまた、フラックスと金属、およびフラックスと金属酸化物の間の表面張力を低下させることが文献において一般に既知である。また、酸化アルミニウムはそれらにわずかに溶け、したがってドロスを崩壊させるのに役立つと考えられる。
【0030】
フラックスは、炭酸、硫酸、および/または硝酸の塩、特にアルカリおよび/もしくはアルカリ土類炭酸塩、硫酸塩、ならびに/または硝酸塩を有利に含んでもよい。これらの化合物は、有利なスキャビング(scabbing)挙動をもたらして、ドロス乾燥を助ける。これらの塩は、ドロス中のアルミニウム粒子が熱の発生を伴って発火することを可能にすることもできる。フラックスからのフッ化物塩の存在と関連するこの発熱反応は金属粒子が合体するのを可能にし、それらが分離してドロスから金属浴中へ戻るのを可能にする。
【0031】
フラックスは、塩構成物の以下のファミリーのうちの設計された比の少なくとも3つから構成することができる:アルカリ塩化物塩(例えば、LiCl2、NaCl、KCl);アルカリ土類塩化物塩(例えば、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2);フッ素を含む塩(例えば、NaF、CaF2、MgF、AlF3、NaAlF6、Na2SiF6、KAlF4など);および硝酸塩、炭酸塩、または硫酸塩(例えば、CaCO3、KNO3、K2SO4)。特定の実施形態において、塩構成物カテゴリーの4つすべてが存在することになる。
【0032】
一般に、アルカリ塩化物塩は、全フラックス組成物の最高濃度を構成し得る。あるいは、アルカリ土類塩は、全フラックス組成物の最高濃度を構成し得る。
【0033】
フラックスの例示的な組成は、約25~75wt.%もしくは約30~75wt.%の間のアルカリ塩化物塩、約5~60wt.%もしくは約20~60wt.%の間のアルカリ土類塩化物塩、および/または約5~25wt.%もしくは約8~18wt.%の間の少なくとも1種の硝酸塩、炭酸塩、もしくは硫酸塩(存在するとき)、および/または約5~25wt.%の間のフッ化物含有塩(存在するとき)を含み得る。個々の構成成分の有効性を確実にするために、それらがそれぞれの場合において金属浴フラックス中に5%以上存在すると有利である。
【0034】
選択された実施形態において、各顆粒の化学は、原材料塩の少なくとも実質的に均等な分布である。同様に、フラックスバッチの顆粒間比較は、原材料濃度の実質的に問題にならないばらつき(例えば、約5%未満のばらつき)を与えるであろう。
【0035】
フラックス組成物は顆粒の形態で提供され、ここで各顆粒は、少なくとも3種の別々の固体構成成分(すなわち、列挙された塩)を含む。「別々の固体構成成分」は、構成成分がかなりの程度まで化学的に組み合わせられず、むしろ、異なる塩が単一の顆粒へと物理的にプレスされることを意味すると理解されるべきである。構成成分は、依然として固体状態でありながら所望の程度まで浴中で反応することができ、構成成分を溶融物中で分離させ、かつ適宜分布させることを可能にする。さらに、塩の一部は溶融金属温度で液化することになる。硝酸塩、炭酸塩、または硫酸塩など、他の塩は反応し始める。
【0036】
主題のフラックス顆粒は、効率的なアルカリおよび介在物除去;ドロス中の金属含有量の低減および溶融物回収の改善に効率的なドロス乾燥作用;塩素注入および塩素排出の置換または低減;ロータリーおよびランスフラックス注入システムを通じた注入のための標準粒度;吸湿性の低下;は、同等の粉末ブレンドよりも効果的であり、より低い適用速度を必要とし、かつ;炉の清浄度および炉バッチ間の再現性の改善を有利に実現する。
【0037】
本フラックス材料は有利に、その成分のいくつかを別々に導入される場合よりも低い温度で溶融金属へと溶融させることを可能にする共晶であることが見出された。本フラックス材料は、約400℃~800℃の間の融点を有することができ、720℃未満であり得る。ある種の適用については、400℃~600℃の間のフラックス融点を有することが望ましいであろう。さらに、急速に溶融するフラックスは、全体の性能に有益であり得る。
【0038】
本フラックス顆粒は、同一の構成成分を使用することができるため、既知の単一または二成分金属浴塩フラックスの対応する精製能力を達成することができる。しかし、本開示の方法は、金属浴フラックスのためにただ1つの適用ステップが必要とされ、かつ極度の動作信頼性で行うことができるため、従来の方法よりもはるかに経済的である。
【0039】
顆粒中に混合された成分を提供する他の利点は、フラックスにより処理されるそれぞれの場所がすべての処理構成要素(すなわち、ドロス乾燥作用、表面張力低下、アルカリ清浄化など)を受けることを含む。加えて、高温での望まれない燃焼のために失われ得る塩の廃棄物が減少する。さらに、炉排気システムまたはバーナーシステムによりブローされ得る軽量凝集体の廃棄物が減少する。
【0040】
本フラックス材料は、約1.5~2.0g/cmの間の密度を有することができる。顆粒化材料の粒度は、ある一定のバンド幅内で変化し得る。例示的な範囲は、0mm超~6mmの間、特に0.5mm~4mmの間、または0.8~3mmの間である。これに関連して、粒度は分布して、例えばガウス分布して一般に存在することが理解される。
【0041】
粒状物は、金属浴に容易に供給される十分な固有安定性を有することができる。同じく、粒状物は、比較的化学的に安定であり、かつ外部の影響から容易に保護することができるため、長時間にわたる保管が容易に可能である。さらに、主題の粒状物は、輸送中にその構造を少なくとも実質的に保持するのに十分な耐久性がある。
【0042】
さらに、融合二成分化合物がMgClの源である場合、プロセスは、望ましくないことに吸湿性であり、かつ粘着性になり、かつ取扱い設備を固め得るMgCl単独の使用を有利に回避する。溶融アルミニウム炉内で水分を回避することが重要であるので、吸湿による粘着性フラックスは望ましくない。さらに、水分は、水素源、および金属中の爆発または「蒸気のはじけ」を引き起こすことによる危害である。
【0043】
本開示の顆粒化微粒子フラックスは、例えば粉末形態の所望の構成物をブレンドすることにより生成することができる。次いで、ブレンドされた粉末は高圧下で圧縮されて(例えば、ロール圧縮)、ブリケットまたは圧延リボンのいずれかを生成する。次いで、ブリケット/リボン形は、ミル粉砕技法(例えば、破砕)を使用して顆粒化され、所望の粒径分布まで篩分けされる。図のロール圧縮システムは、本開示のフラックスの生産に適した装置である。
【0044】
このプロセスにおいて、塩原材料のうちの少なくとも2種が既に融合された二成分材料として用意されることが潜在的に有利である。二成分材料は、多面的な精錬剤(例えば、Promag(登録商標)Plus)の細粒から得ることができる。出発材料としての二成分細粒の使用は、生成物収率を改善し、顆粒内および顆粒間の化学均一性を改善し、かつ微粒子の耐久性を改善する(例えば、脆さがより小さい)ことが見出された。
【0045】
あるいは、すべての構成成分は個々に、炉内の無水固相中で塩を混合することにより一緒に顆粒化することができる。オーブンの温度を上昇させて、液体形態の融合化合物を実現する。液体を冷却、摩砕および篩分けして、所望の粒度分布を得ることができる。
【0046】
粒状物微粒子フラックスは、液体溶液から例えば結晶を培養することにより、または再結晶により得ることもできる。
【0047】
【実施例
【0048】
清浄化して、先の生産運転からの任意の不純物を除去することより生産ラインを準備した。最小150kgバッチの調製について重量パーセント比5% KCl、5% KNO3、10% K2SO4、15% MgCl2、15% AlF3、50% Promag RI Fines/Powder(Promag RI=43% MgCl2、57% KCl)にしたがって原材料を中間コンテナ内で秤量および調製した。最小バッチサイズが均質な混合に望ましい。
【0049】
過剰なダストを防ぐために低い混合速度で原材料を水平ダブルリボンミキサーにゆっくり送り込んだ。原材料をミキサーに送り込んだ後、ミキサーを密封し、混合速度を増加させた。均質な混合物が得られるまで混合を継続した。
【0050】
密封されたスクリューオーガーにより混合された原材料をロール圧縮ユニットに送り込み、ここで粉末状の原材料を中間圧縮リボン生成物へと圧縮した。この中間生成物を品質および硬度に関して確認した後、クラッシャーに通した。
【0051】
クラッシャーは中間圧縮リボンをより小さい顆粒に砕き、それをコンベヤーにより工業的規模の振動篩アセンブリに送り込んだ。公称粒度を許容範囲(名目上1~3mm)内と決定した。公称範囲よりも大きい顆粒を再循環流内のクラッシャーに送り返し、細粒(<1mm)を圧縮機に送り返した。完成した篩分けされた生成物を気密ポリエチレン袋に充填して、空気または水分のいかなる侵入も防いだ。
【0052】
アルミニウム鋳造に一般的ないわゆる「輸送取鍋」へのロータリー注入を使用して、生産されたフラックス顆粒を評価した。得られたアルミニウムは、良好なアルカリ除去およびドロス乾燥を実証した。
【0053】
好ましい実施形態を参照して例示的実施形態が記載されてきた。明らかに、先行する詳細な説明を読み、理解することで他者は修正および改変を思いつくであろう。例示的実施形態は、添付の請求項またはその均等物の範囲内に入る限りにおいて、すべてのそのような修正および改変を含むものと解釈されることが意図される。
【0054】
ここに添付する特許請求の範囲の解釈において特許庁ならびに本出願および任意の生じる特許の任意の読者を助けるために、出願人らは、語「のための手段」または「のためのステップ」が特定の請求項において明示的に使用されない限り、添付の請求項または請求項の要素のいずれかが35 U.S.C.112(f)を援用することを意図しない。
図1
【国際調査報告】