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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】マイクロカプセルの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/14 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
B01J13/14 ZBP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507907
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2020072202
(87)【国際公開番号】W WO2022028705
(87)【国際公開日】2022-02-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ラーベ,ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】ロスト,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ケップケ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギ,ユリアン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4G005
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA01
4G005BB02
4G005BB05
4G005BB06
4G005DB05Y
4G005DB06Y
4G005DB12Y
4G005DC46Y
4G005DD03Z
4G005EA02
4G005EA03
4G005EA05
4G005EA07
(57)【要約】
本発明は、生分解性マイクロカプセル、特に生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセル、ならびに少なくとも1つの疎水性有効成分を封入する、そのようなマイクロカプセルの分散体(マイクロカプセルスラリー)の調製のためのプロセスに関する。加えて、本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができる生分解性マイクロカプセルに関する。別の態様では、本発明は、消費者製品の成分としてのマイクロカプセルおよび分散体の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセルの調製プロセスであって、以下のステップ、すなわち
(i)少なくとも1つの第1の架橋剤および少なくとも1つの疎水性有効成分、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる架橋剤を含む内部非水相を提供するステップ;
(ii)少なくとも1つのタンパク質および/または少なくとも1つの多糖、および必要に応じて、少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水相を提供し、必要に応じて、前記水相のpH値を、前記タンパク質の等電点より低いpH値に調整するステップ;
(iii)必要に応じて、少なくとも1つの安定剤および/または少なくとも1つの乳化剤の存在下で、前記内部非水相を前記外部水相に乳化または分散させて、水中油型エマルションまたは分散体を得るステップ;
(iv)必要に応じて、少なくとも1つのさらなる多糖および/または少なくとも1つのさらなるタンパク質を加えるステップ;
(v)少なくとも1つの触媒を加えることにより第1の架橋を行い、マイクロカプセルスラリーを得るステップ;
(vi)前記マイクロカプセルスラリーを少なくとも60℃の温度で硬化させ、必要に応じてさらなる多糖および/またはさらなるタンパク質を加えるステップ;
(vii)冷却し、必要に応じて少なくとも1つの第2の架橋剤を加えることにより、第2の架橋を行うステップ;および
(viii)必要に応じて、前記マイクロカプセルスラリーから前記マイクロカプセルを分離し、必要に応じて前記マイクロカプセルを乾燥させるか、または少なくとも1つの増粘剤を加えることにより前記マイクロカプセルスラリーの粘度を調整するステップ
をこの順序で含むプロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の架橋剤が、脂肪族、脂環式、ヒドロ芳香族、芳香族または複素環式ポリイソシアネート、それらの置換生成物ならびに前述の化合物の混合物からなる群から選択される、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、ならびに前述の第1の架橋剤の2つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択され、特に、前記少なくとも1つのポリイソシアネートは、2つの脂肪族ポリイソシアネートまたは1つの脂肪族および1つの芳香族ポリイソシアネートを含み、特に前記少なくとも1つのポリイソシアネートは、異なる鎖長を有する交互のモノマー、オリゴマーまたはポリマー構造のポリイソシアネートを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのさらなるまたは少なくとも1つの第2の架橋剤が、トランスグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、二次植物物質であって、ポリフェノール、特にタンニン、没食子酸、フェルラ酸、ヘスペリジン、シンナムアルデヒド、バニリン、カルバクロールからなる群から選択される二次植物物質、ならびに前記の架橋剤の2つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの疎水性有効成分が、芳香物質、香り物質、冷却剤、TRPV1およびTRPV3モジュレーター、皮膚もしくは粘膜に刺激味または温感もしくは熱感を生じさせる物質、または口もしくは喉にチクチク感を生じさせる物質、または刺激性もしくはえぐ味もしくは収斂作用を有する有効成分、殺虫剤、殺生物剤、殺虫薬、忌避剤の群からの物質、食品添加物、化粧品有効成分、医薬品有効成分、農業用化学物質、染料、着色剤、染料前駆体;発光塗料、蛍光増白剤、溶剤、ワックス、シリコーン油、潤滑剤、紙用の印刷コーティング、ならびに前述の有効成分の2つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多糖または前記少なくとも1つのさらなる多糖が、
- 難消化性繊維および食物繊維、特に不溶性食物繊維、特にセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、特に四級化ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)および微結晶性セルロース(MCC)、ヘミセルロース、リケニン(lichenin)、キチン、キトサン、リグニン、キサンタン、植物繊維、特に穀類繊維、ジャガイモ繊維、リンゴ繊維、柑橘類繊維、竹繊維、テンサイ抽出繊維;エンバク繊維および可溶性食物繊維、特にイヌリン、特にネイティブイヌリン、高溶解性イヌリン、粒状イヌリン、高性能イヌリン、ペクチン、アルギン酸塩、寒天、カラギーナン、アラビアゴム、コンニャクガム、カードラン(パラミロン)、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ラフィノース、キシロース、ポリデキストロース、およびラクツロース;
- デンプン、特に小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、米、タピオカおよびエンバク由来のデンプン、化学的、機械的、および/または酵素的に修飾されたデンプン;およびデンプン誘導体、例えばデキストリンまたはマルトデキストリン、特に小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、米およびエンバク由来のデキストリンおよびマルトデキストリン、特にマルトデキストリンDE8-10、DE17-20、DE18-20、シクロデキストリン、オリゴ糖、特にオリゴフルクトース;ならびに
- 糖アルコール、特にソルビトール、マンニトール、イソマルト、マルチトール、マルチトール(maltilol)シロップ、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール;
- ジェラン;グルコース、
ならびに上述の多糖の混合物
からなる群から選択される、請求項1から4の一または複数項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのタンパク質または前記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、タンパク質原性L-アミノ酸、動物または植物タンパク質、特にタンパク質単離物、分画の形態の動物または植物タンパク質、物理化学的プロセスまたは前記タンパク質の発酵もしくは酵素処理によって調製される部分的もしくは完全な加水分解物または中間体、特に、肉(哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚)、カニ、甲殻類、軟体動物、昆虫、卵、牛乳、特にカゼインおよびホエー、レンネットカゼイン、ホエータンパク質濃縮物80%、ゼラチン、藻類、穀物、特に小麦、大麦、ライ麦、スペルト小麦、グルテン、特に小麦グルテン、菜種、ヒマワリ、米、ジャガイモ、トウモロコシ、大豆、豆、エンドウ豆、レンズ豆、ルピナス、ピーナッツ、アルファルファ、麻、その他の食用植物由来のタンパク質からなる群のタンパク質、キトサン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から5の一または複数項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの保護コロイドが、
- ジオール、特にエタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、異性ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、および
- ポリオール、好ましくはトリオール、特にグリセリン、ならびにそのエトキシル化およびプロポキシル化生成物、トリメチロールプロパンならびにそのエトキシル化およびプロポキシル化生成物、ポリビニルアルコール(PVOH)およびその誘導体、特にアンモニウムまたはスルホネート官能化ポリビニルアルコール、ポリフェノール、好ましくは1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、多糖、特にグルコース、デンプン、または化学的、機械的および/または酵素的に修飾したデンプン、セルロース誘導体、例としてヒドロキシエチルセルロース、特に四級化ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース、
- ポリビニルピロリドン、マレイン酸ビニルコポリマー、リグノスルホン酸ナトリウム、無水マレイン酸/スチレンコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレンオキシド、プロピレンオキシドとポリエトキシル化ソルビトールの酸エステルのコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、
- 動物および植物ポリマー、特にアラビアゴム(セネガル型およびセイヤル型)、タンパク質、ゼラチン、オリバナム樹脂、セラック、リグニン、キトサン、サポニン
ならびに前述の化合物の混合物
からなる群から選択され、および/または前記保護コロイドをデンプンと組み合わせて使用する、請求項1から6の一または複数項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの触媒が、ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ビスマス触媒およびスズ触媒、ならびに前述の触媒の2つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から7の一または複数項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の架橋を、60℃~90℃の温度で実行する、請求項1から8の一または複数項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記マイクロカプセルの前記硬化を、60℃~90℃の温度および/または少なくとも3時間の持続時間で実行する、請求項1から9の一または複数項に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1から10の一または複数項に記載のプロセスによって得られる生分解性マイクロカプセルまたはマイクロカプセルスラリー。
【請求項12】
(a)少なくとも1つの疎水性有効成分を含むか、またはそれからなるコア;
(b)少なくとも1つの多糖および/または少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの第1の架橋剤の架橋マトリックスまたはユニット;ならびに必要に応じて少なくとも1つの第1の保護コロイドおよび/または必要に応じて少なくとも1つのさらなる架橋剤を含むか、またはそれらからなるカプセルシェル
を含むか、またはそれらからなる生分解性マイクロカプセル。
【請求項13】
前記カプセルシェルが、前記第1および必要に応じて前記さらなる架橋剤による少なくとも1つのタンパク質の重合および/もしくは架橋からの架橋マトリックスまたは架橋ユニット、ならびに/または前記第1および必要に応じて前記さらなる架橋剤による、少なくとも1つの多糖の重合および/または架橋からの架橋マトリックスまたは架橋ユニットを含むか、またはそれらからなる、請求項12に記載の生分解性マイクロカプセル。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを、必要に応じて増粘剤および/または防腐剤と組み合わせて含むマイクロカプセルスラリー。
【請求項15】
家庭用品、テキスタイルケア製品、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、香気促進剤、もしくは液状または固形の芳香増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、香料組成物、農業製品、医薬品、または紙用の印刷コーティングの調製のための、請求項11から13の一または複数項に記載のマイクロカプセルまたは請求項11もしくは請求項14に記載のマイクロカプセルスラリーの使用。
【請求項16】
請求項11から13のいずれか一項に記載のマイクロカプセルまたは請求項11もしくは請求項14に記載のマイクロカプセルスラリーを含む家庭用品、布地ケア製品、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、香気促進剤、および芳香増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、香料組成物、農業製品、または医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、最新従来技術(state of the art)によるマイクロカプセルと比較して、バランスのとれた生分解性、安定性および性能を有する生分解性マイクロカプセル、特に生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセル、ならびに少なくとも1つの疎水性有効成分を封入する、そのようなマイクロカプセルの分散体(マイクロカプセルスラリー)の、好ましくは香料または香り含有多糖およびタンパク質系マイクロカプセルの調製のためのプロセスに関する。加えて、本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができる少なくとも1つの疎水性活性剤を含む生分解性マイクロカプセルに関する。別の態様では、本発明は、家庭用品、テキスタイルケア製品、洗濯用洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、液状または固形の香気促進剤または芳香増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、香料組成物、農業製品、医薬品、または紙用の印刷コーティングにおける成分としてのマイクロカプセルおよび分散体の使用に関する。最後に、本発明は、そのようなマイクロカプセルまたはマイクロカプセル分散体を含む消費者製品に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、コアおよびコアを囲む壁材料を含む粒子であり、ここで、コアは、ポリマーの緻密な透過性または半透過性の壁材料によって囲まれた固体、液体、または気体の物質であり得る。製造中、出発成分のポリマーは、乳化およびコアセルベーションまたは界面重合の後、カプセル化される物質上に沈積する。コアは内部相とも呼ばれる。壁に使用される他の名称には、外相、シェル、またはコーティングが含まれる。マイクロカプセルの直径は、通常、1~1000μmの範囲で変化する。壁の厚さは、典型的には、0.5~150μmであるが、5・10-9m~5・10-6mの範囲で変化し得る。典型的には、25~95wt.%の使用量が可能であるが、1~99wt.%の使用量も可能である。
【0003】
好適な壁材料(コーティング材料)による有効成分のカプセル化は、いくつかの理由により行うことができる:
- 液体の、扱いやすい粉末形態への変換(例えば、植物油脂のコーティング);
- 物質の時間制御放出(投与量制御、医薬品、殺虫剤、および肥料のデポー効果);
- 味、臭気、および色のマスキング(例えば、苦味物質または刺激性の香り物質);
- 光、酸化、熱、酸または塩基(例えば、ビタミン、香り物質)に対する保護
- 防湿(例えば、吸湿性の塩またはミネラル);
- 揮発性成分(例えば、香り物質)の喪失の遅延;
- 他の混合成分との時期尚早な化学反応の防止;
- 加工前または加工中の取り扱いの改善(流動性、粉塵の形成);
- 有害または不快な物質(化学物質、香り濃縮物)からの人員の保護;または表面改質による溶解性/懸濁性の改善。
【0004】
芳香または香り物質などの疎水性有効成分は、カプセル化によって多数の多様な用途の配合物に容易に組み込むことができる。
【0005】
マイクロカプセルの内容物は、様々な方法で放出される可能性があり、特に、以下に説明する機構の1つに基づいている。
- カプセルは、粉砕またはせん断によって機械的に破壊される。この機構は、例えば、反応ノーカーボン紙において使用されている。
- カプセルを、壁材を溶融して破壊する。この機構に基づいて、膨張剤または香味料などの成分は、例えば焼成プロセス中にのみ焼成混合物に放出される。
- カプセルを、壁材を溶解して破壊する。この機構は、例えば、粉末洗剤で使用され、酵素などのカプセル化成分は、洗浄プロセス中にのみ放出される。
- カプセルは無傷のまま残り、カプセルの内容物はカプセル壁を通って拡散することにより徐々に放出される。この機構に基づいて、例えば、薬物成分を体内でゆっくりと均一に放出することができる。
【0006】
その特性に基づいて、マイクロカプセルは、特に、印刷産業、食品産業(ビタミン、香味料、植物抽出物、酵素、微生物)、農業化学(肥料、殺虫剤)、飼料産業(ミネラル、ビタミン、酵素、薬物、微生物)、製薬業界、洗剤業界、および化粧品業界において使用されている。
【0007】
洗浄剤、柔軟仕上げ剤、粉末洗剤、液体洗剤、シャワージェル、シャンプー、消臭剤、ボディローションなどの多くの日常使用品には、今日、芳香物質または芳香物質の混合物により香料が添加されている。非常に多くの場合、芳香物質は、配合物の他の成分と相互作用したり、香料添加製品のより揮発性の高い成分が時期尚早に蒸発したりする。これにより、通常、香水の芳香の印象が時間の経過とともに変化したり、完全に消失することもある。
【0008】
このような芳香混合物のマイクロカプセル化は、香料添加製品における相互作用または揮発性の高い芳香成分の蒸発を低減または完全に防止する可能性を提供する。
【0009】
マイクロカプセルの製造のために、様々なカプセル壁またはコーティング材料が知られている。カプセル壁は、天然材料、半合成材料、または合成材料のいずれかで作成することができる。天然シェル素材としては、アラビアガム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウム、脂肪および脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、シェラック、多糖、例としてデンプンまたはデキストラン、ポリペプチド、タンパク質加水分解物、スクロース、およびワックスが挙げられる。半合成カプセル壁材料としては、化学修飾セルロース、特にセルロースエステル、およびセルロースエーテル、例えば酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース、ならびにデンプン誘導体、特にデンプンエーテルおよびデンプンエステルが挙げられる。合成シェル材料は、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンなどのポリマーである。
【0010】
カプセル壁材料のタイプおよび製造プロセスに応じて、直径、サイズ分布、ならびに物理的および/または化学的特性に関して異なる特性を有するマイクロカプセルがそれぞれの場合に形成される。
【0011】
ポリイソシアネートとポリアミンおよび/またはジオールもしくはポリオールとの間の重合により形成されるポリ尿素マイクロカプセルまたはポリ尿素/ポリウレタンマイクロカプセルは、香水を含む様々な技術分野で使用される周知のカプセルである。
【0012】
2つのポリイソシアネートとポリアミンとを反応させることによって得られるポリ尿素マイクロカプセルは、例えば、WO2011/161229またはWO2011/160733に記載されている。WO2011/161229またはWO2011/160733によれば、ポリ尿素マイクロカプセルは、保護コロイドとしてポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で調製される。WO2012/107323は、アニオン安定剤またはアニオンポリビニルアルコールなどの界面活性剤の存在下におけるポリイソシアネートとグアナゾール(3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール)およびアミノ酸との反応生成物を含むポリ尿素シェルを有するポリ尿素マイクロカプセルを開示している。EP0537467Bは、ポリビニルアルコールなどの安定剤の存在下で、ポリエチレンオキシド基を含有するポリイソシアネートから調製されたマイクロカプセルを記載している。WO2007/096592によれば、マイクロカプセル化は、ポリビニルアルコールまたはそのカルボキシル化およびスルホン化誘導体などの界面活性剤系によって一般に安定化される連続水相中で乳化される油相中で行うことができる。
【0013】
上記の最新従来技術の例示的な送達システムは、良好な安定性、すなわち有効成分を保持する能力、したがってカプセルが揮発性成分の損失を回避する能力と、良好な性能、例えば、芳香剤または着臭剤カプセルの場合の芳香放出、の両方を呈する。
【0014】
しかし、上記の最新従来技術によるマイクロカプセルは、ポリマーカプセル壁またはカプセルシェル材料が、十分な安定性を確保し、有効成分の過度の損失を回避するために大量のポリマー含有量を必要とするという欠点を有する。加えて、マイクロカプセル化プロセスはプラスチックを環境に導入し、「マイクロプラスチック」として問題を引き起こし、環境破壊または健康への悪影響を必要に応じて引き起こす可能性がある。
【0015】
プラスチック粒子は、それらの環境への影響についてますます世論の批判を受けており、環境への配慮に関する社会的圧力がますます高まっているため、バイオ系および生分解性の解決策に対する需要が高まっているので、環境中のマイクロプラスチックの削減を実現するマイクロカプセル化のための新しい材料を開発する必要性がある。ここでは、バイオ系生分解性材料が注目されている。
【0016】
したがって、この見地から、バイオ系生分解性材料の調製においてますます生分解性カプセル壁材料を使用し、一方で、同時に、問題の用途に対して優れた安定性および放出特性を呈するマイクロカプセルを提供する必要性がある。カプセル壁自体の高分子材料だけでなく、崩壊中に形成される各断片も生体適合性があることが重要である。
【0017】
しかし、生分解性材料を使用して環境中のマイクロプラスチックの量を減らすというこの課題は、マイクロカプセル化の場合には自明ではない。嗅覚特性および高い安定性などの肯定的な二次特性などのマイクロカプセルの所望の機能として、毒物学的安定性は、多くの用途での急速な生分解性の要件と矛盾する。
【0018】
有効成分の良好な安定性と良好な放出の両方を有するマイクロカプセルを製造することは、特に困難である。有効成分を保持する能力、したがって揮発性成分の損失を回避するカプセルの能力は、特に製品ベースにおけるカプセルの安定性に依存する。しかし、特に安定性が良好なカプセルが、必ずしも良好な生分解性を呈するわけではない。
【0019】
架橋度が増加するにつれて、マイクロカプセルの安定性は増加するが、同時にカプセルシェルを生分解する能力は低下する。非常に安定なマイクロカプセルの場合、圧力や摩擦などによって壊れ、開いて有効成分を放出するマイクロカプセルの数が減少するため、感覚性能などの性能が低下する。それらが不安定すぎると、保存中にすでに破壊され、機能することもない。
【0020】
したがって、本発明は、好ましくは以下の要件の1つ、いくつか、または好ましくはすべてを満たすマイクロカプセルを提供するという複雑な課題に基づく:
- 生分解性の改善、
- ヒトおよび環境に対する毒性効果がないこと;
- 十分な安定性の維持、
- カプセル化される有効成分に関する幅広い変動性への適合性、
- カプセル化有効成分の優れた放出挙動、および
- 既知のマイクロカプセル製造プロセスによってアクセス可能であること、および
- 成分は容易に入手可能であることすなわち、バイオ系または持続可能な方法で生成された原材料から生成することができること。
【0021】
驚くべきことに、界面重合により、触媒の存在下で、水性エマルション中の多糖および/またはタンパク質ならびに架橋剤からマイクロカプセルを調製することにより、この課題を解決できることが見出された。架橋により、幅広い疎水性または親油性有効成分をそれぞれカプセル化するために使用することができる、生分解性で安定なカプセルシェルまたはカプセル壁を形成することが可能になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本問題は、独立特許請求項の目的によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の文言および以下の説明から明らかである。
【0023】
したがって、本発明の第1の目的は、生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセルの調製プロセスであって、以下のステップ、すなわち
(i)少なくとも1つの第1の架橋剤および少なくとも1つの疎水性有効成分、ならびに必要に応じて、少なくとも1つのさらなる架橋剤を含む内部非水相を提供するステップ;
(ii)少なくとも1つのタンパク質および/または少なくとも1つの多糖、ならびに必要に応じて、少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水相を提供し、必要に応じて、水相のpH値を、タンパク質の等電点より低いpH値に調整するステップ;
(iii)必要に応じて、少なくとも1つの安定剤および/または少なくとも1つの乳化剤の存在下で、内部非水相を外部水相に乳化または分散させて、水中油型エマルション/分散体を得るステップ;
(iv)必要に応じて、少なくとも1つのさらなる多糖および/または少なくとも1つのさらなるタンパク質を加えるステップ;
(v)少なくとも1つの触媒を加えることにより第1の架橋を行い、マイクロカプセルスラリーを得るステップ;
(vi)マイクロカプセルスラリーを少なくとも60℃の温度で硬化させ、必要に応じて少なくとも1つのさらなる多糖および/または少なくとも1つのさらなるタンパク質を加えるステップ;
(vii)少なくとも1つの第2の架橋剤を加えることにより、冷却および必要に応じて第2の架橋を行うステップ;および
(viii)必要に応じて、マイクロカプセルスラリーからマイクロカプセルを分離し、必要に応じてマイクロカプセルを乾燥させるか、または少なくとも1つの増粘剤を加えることによりマイクロカプセルスラリーの粘度を調整するステップ
をこの順序で含むプロセスに関する。
【0024】
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの親油性有効成分を含むマイクロカプセル、または本発明のプロセスに従って調製されたマイクロカプセルスラリーに関する。
【0025】
(a)少なくとも1つの疎水性活性剤を含むか、またはそれからなるコア;
(b)少なくとも1つの多糖および/または少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの第1の架橋剤の架橋マトリックスまたはユニット;ならびに必要に応じて少なくとも1つの第1の保護コロイドおよび/または必要に応じて少なくとも1つのさらなる架橋剤の架橋マトリックスまたはユニットを含むか、またはそれらからなるカプセルシェル
を含むかまたはそれらからなる生分解性マイクロカプセルを提供することも、本発明の目的である。
【0026】
最後に、別の態様では、本発明によるマイクロカプセルを含む分散体の、家庭用品、テキスタイルケア製品、洗濯用洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、香気促進剤、液状または固形の香気ローションまたは香気増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、香料組成物、農業製品、医薬品、または紙用の印刷コーティングの調製のための、本発明によるマイクロカプセルまたは本発明によるマイクロカプセルを含む分散体の使用に関する。
【0027】
驚くべきことに、本発明との関係において、マイクロカプセルの調製において、多糖類および/またはタンパク質の組み合わせ、およびその後の少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとの架橋によって、安定なマイクロカプセルがもたらされ、したがって、親油性有効成分の効率的なカプセル化と、これらの有効成分のその後の標的化放出が保証されると同時に、マイクロカプセルは、バイオ系および生分解性ビルディングブロックにより、良好な生分解性を示すことが見出された。
【0028】
多糖および/またはタンパク質を使用することにより、カプセル壁またはカプセルシェル材料のポリイソシアネート含有量を低減させる、すなわち、バイオ系カプセル壁成分に置き換えることができ、したがって、マイクロカプセル壁の安定性を犠牲にすることなく、バイオ系カプセル壁成分の割合を増加させることができる。
【0029】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を検討することにより、当業者には明らかとなるであろう。この点に関して、本発明の一態様からの任意の特徴または変形を、本発明の別の態様で使用または置換することができる。さらに、本明細書に開示される実施例は、本発明を説明および例示するが、本発明を限定することを意図するものではなく、特に、本発明はこれらの実施例に限定されないことが理解される。
【0030】
他に指示がない限り、パーセンテージはすべて重量による。「xからyまで」の形態で与えられる数値例は、前記の値を含む。複数の好ましい数値範囲がこの形式で与えられる場合、種々のエンドポイントの組み合わせから生じるすべての範囲も含まれることが理解される。
【0031】
本明細書で使用される「少なくとも1」または「1または複数」という用語は、1または複数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれよりも大きいものを指す。
【0032】
「および/または」という用語は、結合が存在すること、または代替物が提供されることを表す。
【0033】
「x~y」の形態で与えられる数値例は、所与の値を含む。複数の優先数値範囲がこの形式で指定されている場合、種々のエンドポイントを組み合わせて作成されたすべての範囲も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】

図1a-1d】異なる組成を有する本発明によるマイクロカプセルの粒度分布(d(0,5)値)のダイアグラムを示す。
図1e】最新従来技術によるマイクロカプセルと本発明によるマイクロカプセルの粒径分布の比較を示すダイアグラムである。粒度分布の測定には、MALVERN Mastersizer3000を使用した。対応する計算は、Mie理論に基づいている。
【0035】
図2】最新従来技術によるマイクロカプセルと比較した、本発明によるマイクロカプセルの遊離油含有量を示すダイアグラムである。
【0036】
図3】最新従来技術によるマイクロカプセルと比較した、本発明によるマイクロカプセルの遊離油含有量を示すダイアグラムである。
【0037】
図4】さらなる架橋剤を用いずに、および用いて調製された本発明によるマイクロカプセルの遊離油含有量を示すダイアグラムである。
【0038】
図5】柔軟仕上げ剤中の本発明によるマイクロカプセルの安定性を示すダイアグラムである。
【0039】
図6】本発明によるマイクロカプセルの官能評価を示すダイアグラムである。y軸の数値では、小数点以下の桁数にカンマを使用する。
【0040】
図7】架橋度の関数としてのマイクロカプセルの安定性、性能および生分解性の間の相関関係を一般的な用語で示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図2~6において、ドットは小数点記号として使用した。
【0042】
発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセルを調製するためのプロセスであって、以下のステップ、すなわち
(i)少なくとも1つの第1の架橋剤および少なくとも1つの疎水性有効成分、ならびに必要に応じて、少なくとも1つのさらなる架橋剤、および必要に応じて、少なくとも1つの触媒を含む内部非水相を提供するステップ;
(ii)少なくとも1つのタンパク質および/または少なくとも1つの多糖、ならびに必要に応じて、少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水相を提供し、必要に応じて、水相のpH値を、タンパク質の等電点より低いpH値に調整するステップ;
(iii)必要に応じて、少なくとも1つの安定剤および/または少なくとも1つの乳化剤の存在下で、内部非水相を外部水相に乳化または分散させて、水中油型エマルション/分散体を得るステップ;
(iv)必要に応じて、少なくとも1つのさらなる多糖および/または少なくとも1つのさらなるタンパク質を加えるステップ;
(v)少なくとも1つの触媒を加えることにより第1の架橋を行い、マイクロカプセルスラリーを得るステップ;
(vi)マイクロカプセルスラリーを少なくとも60℃の温度で硬化させ、必要に応じて少なくとも1つのさらなる多糖および/または少なくとも1つのさらなるタンパク質を加えるステップ;
(vii)少なくとも1つの第2の架橋剤を加えることにより、冷却および必要に応じて第2の架橋を行うステップ;および
(viii)必要に応じて、マイクロカプセルスラリーからマイクロカプセルを分離し、必要に応じてマイクロカプセルを乾燥させるか、または少なくとも1つの増粘剤を加えることによりマイクロカプセルスラリーの粘度を調整するステップ
をこの順序で含むプロセスに関する。
【0043】
本発明との関係において、マイクロカプセルは、カプセル内部のコア材料として少なくとも1つまたは複数の有効成分を含み、カプセルシェルまたはカプセル壁によって囲まれている微粒子であると理解される。有効成分は、好ましくは疎水性または親油性有効成分である。このような有効成分は、水に不溶性または難溶性であるが、油脂には易溶性である。「マイクロカプセル」および「カプセル」または「疎水性」および「親油性」という用語は、本発明の文脈内で同義的に使用される。
【0044】
本発明の文脈において、カプセルシェルまたはカプセル壁は、好ましくは、いくつかの架橋マトリックスまたは架橋ユニットから構成され、これの架橋マトリックスまたは架橋ユニットは、好ましくは異なる組成を有し、本発明によるマイクロカプセルの調製中のいくつかのプロセスステップまたはプロセス順序、特に架橋ステップによって生成される。架橋マトリックスは、少なくとも1つの多糖および/または少なくとも1つのタンパク質を含むか、またはそれらからなる。これらのカプセル壁成分は、多糖、タンパク質、および架橋剤の三次元ネットワークを形成するために、選択的に触媒される機構を介した界面重合によって、架橋剤および触媒によって互いに架橋される。
【0045】
本発明によるプロセスの第1のステップ(i)において、少なくとも1つの架橋剤と、カプセル化される少なくとも1つの疎水性活性剤と、必要に応じてさらなる架橋剤とを含む内部非水相を提供する。
【0046】
カプセルシェルまたはカプセル壁を調製するための本発明の第1および/または第2の態様による第1の架橋剤は、脂肪族、脂環式、ヒドロ芳香族、芳香族または複素環式ポリイソシアネートからなる群から選択される、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、それらの置換生成物からなる群から選択される架橋剤ならびに前述の第1の架橋剤の2つまたは複数の混合物である。
【0047】
生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセルを調製するための本発明によるプロセスで使用される、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートまたはポリイソシアネートは、カプセルシェルまたはカプセル壁を形成する、重合によりポリマーネットワークを形成するための少なくとも2つのイソシアネート基を含む。
【0048】
ポリイソシアネートは、イソシアン酸(HN=C=O)のR置換有機誘導体(R-N=C=O)である。有機イソシアネートは、イソシアネート基(-N=C=O)が有機ラジカルに結合した化合物である。多官能性イソシアネートまたはポリイソシアネートは、分子中に少なくとも2つまたはそれ以上、すなわち、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、100、200またはさらにそれ以上のイソシアネート基(-N=C=O)含有するそれらの化合物である。2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートは、ジイソシアネートとも呼ばれる。
【0049】
ポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、ヒドロ芳香族、芳香族もしくは複素環式イソシアネートまたはポリイソシアネートとして分類することができる。さらに、本発明によるポリイソシアネートは直鎖状または分岐鎖状であり得る。
【0050】
ポリイソシアネート、特に芳香族ポリイソシアネートは、反応性の高い化合物である。ポリイソシアネートとジオールまたはポリオールとの重付加反応は、ポリウレタン化学の基礎を形成し、ポリイソシアネートとアミンとの重付加反応は、ポリ尿素化学の基礎を形成する。
【0051】
本発明によれば、少なくとも二官能性、好ましくは多官能性のポリイソシアネートが使用される、すなわち、少なくとも2つの反応性イソシアネート基を有する限り、すべての脂肪族、脂環式および芳香族イソシアネートが好適である。
【0052】
脂肪族、脂環式、ヒドロ芳香族、芳香族または複素環式ポリイソシアネート、それらの置換生成物および前述のモノマーまたはオリゴマー化合物の混合物が特に好ましい。先に特定したポリイソシアネートのうち、脂肪族および/または芳香族化合物を使用するのが好ましい。
【0053】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、ポリイソシアネートは、平均して2~5個の官能基-N=C=O基を含有する。これらには、例えば、脂肪族、脂環式および芳香族ジ-、トリ-および高級ポリイソシアネートが含まれる。
【0054】
上述のポリイソシアネートのうち、ジイソシアネートおよび3つの官能基-N=C=O基を有するポリイソシアネートが特に好ましく、したがって、主に本発明の実施において使用される。好ましくは、一般構造O=C=N-R-N=C=O(式中、Rは脂肪族、脂環式または芳香族基を表す)を有するジイソシアネートが使用される。好ましくは、ラジカルは5個以上の炭素原子を有する。
【0055】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または芳香族ポリイソシアネートからなる群から選択される。本発明によるプロセスのさらにより好ましい変法では、少なくとも1つのポリイソシアネートは、2つの異なる脂肪族ポリイソシアネートの組み合わせ、または脂肪族および芳香族ポリイソシアネートの組み合わせである。
【0056】
官能基の数により、カプセル壁の最適な架橋またはネットワークが達成され、消費者製品において有効成分の長時間の徐放ならびに良好な安定性を呈するマイクロカプセルを提供する。
【0057】
本発明によるプロセスの好ましい変法では、ポリイソシアネートは脂肪族ポリイソシアネートである。
【0058】
「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族でない任意のポリイソシアネート分子を指す。さらに、分子は、少なくとも2つのイソシアネート基、すなわち、同じ脂肪族分子の対応する数の異なるC原子に直接結合した少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、100、200以上のイソシアネート基、およびそのような化合物の誘導体を含む。
【0059】
少なくとも2つのイソシアネート基、すなわち、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、100、200またはそれ以上のイソシアネート基を含有する脂肪族ポリイソシアネート分子は、さらに直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、例えば、脂肪族置換基、芳香族置換基、窒素、酸素、リンおよび/もしくは硫黄などの1つもしくは複数のヘテロ原子、フッ素、塩素、臭素および/もしくはヨウ素などのハロゲン、および/またはアルコキシ基などの他の官能基を含む、任意の置換基を有していてもよい。
【0060】
直鎖脂肪族ポリイソシアネート分子は、好ましくは、C2-~C20-直鎖アルキル、好ましくはC3-~C15-直鎖アルキル、C4-~C12-直鎖アルキル、C5-~C10-直鎖アルキル、C6-~C9-直鎖アルキル、またはC7-~C8-直鎖アルキルから選択される。好ましくは、直鎖状脂肪族分子は芳香族構造を含まない。
【0061】
分岐鎖脂肪族ポリイソシアネート分子は、好ましくは、C2-~C20-分岐鎖アルキル、好ましくはC3-~C15-分岐鎖アルキル、C4-~C12-分岐鎖アルキル、C5-~C10-分岐鎖アルキル、C6-~C9-分岐鎖アルキル、C7-~C8-分岐鎖アルキルから選択される。
【0062】
ポリイソシアネート分子の炭素鎖が短いほど、鎖のより長い類似体と比較して反応速度が速くなる。
【0063】
環状脂肪族ポリイソシアネート分子は、少なくとも1つ、すなわち1、2、3、4つまたはそれ以上の非芳香環構造を含み、環構造自体は好ましくはC原子のみからなる。もちろん、環構造のC原子は、好適な置換基を有し得る。少なくとも1つの環構造は、好ましくは、独立して、3員、4員、5員、6員、7員または8員環からなる。好ましくは、環状脂肪族分子は、2~20個のC原子、例えば、3~15個のC原子、4~12個のC原子、5~10個のC原子、6~9個のC原子、または7~8個のC原子を含む。
【0064】
本発明によるプロセスの別の変法では、ポリイソシアネートは芳香族ポリイソシアネートである。「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、2つまたはそれ以上のイソシアネート基が芳香族C原子に直接結合し、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチルまたはジフェニル部分を芳香族成分として含む任意のポリイソシアネート化合物ならびにこのようなポリイソシアネート化合物の誘導体を指す。
【0065】
芳香族ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートよりも著しく速く反応するため、本発明によるプロセスで好ましく使用される。
【0066】
直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族または芳香族ポリイソシアネートは、それぞれモノマーまたはポリマーとして存在し得る。単量体ポリイソシアネートは、別の分子に結合していない、特に1つまたは複数の架橋剤を介して別の分子に結合していない分子である。ポリマーポリイソシアネートは、1つまたは複数の架橋剤によって連結された少なくとも2つのモノマーを含む。少なくとも2つのモノマーは、必ずしも同じモノマーである必要はなく、異なっていてもよい。ポリマーポリイソシアネートは、好ましくは、少なくとも2つまたはそれ以上のモノマー、すなわち、少なくとも1つの架橋剤を介して互いに結合した少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、100またはそれ以上のモノマーを含む。
【0067】
直鎖状、分岐鎖状、または環状の脂肪族または芳香族ポリイソシアネートは、好ましくは、1つもしくは複数の架橋剤との反応性が可能になる限定されたサイズ/限定された分子量を有する。好適な分子量の例としては、好ましくは約100g/mol~5・10g/mol、好ましくは120g/mol~2・10g/mol、140g/mol~10g/mol、160g/mol~5・10g/mol、180g/mol~2・10g/mol、200g/mol~10g/mol、220g/mol~900g/mol、240g/mol~800g/mol、260g/mol~700g/mol、280g/mol~600g/mol、300g/mol~500g/mol、320g/mol~450g/mol、または340g/mol~400g/molが挙げられる。
【0068】
任意の数の異なる直鎖状、分岐鎖状および/または環状脂肪族および/または芳香族ポリイソシアネートを使用することができる。例えば、少なくとも1つ、すなわち、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の異なる直鎖状脂肪族ポリイソシアネートを使用する。例えば、少なくとも1つ、すなわち、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の異なる分岐鎖状脂肪族ポリイソシアネートを使用する。例えば、少なくとも1つ、すなわち、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の異なる(分岐鎖)環状脂肪族ポリイソシアネートを使用する。
【0069】
好ましくは、直鎖状、分岐鎖状および/または環状脂肪族ポリイソシアネートの誘導体が使用される。本明細書で使用される誘導体は、化学反応によって化合物から誘導される化合物として最も広い意味で理解される。誘導体の例には、上記の直鎖状または分岐鎖状脂肪族ポリイソシアネートのオリゴマーおよび/または付加物が含まれる。好ましいオリゴマーは、ビウレット、イソシアヌレート、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオンであり、好ましい付加物はトリメチロールプロパン付加物である。これらのオリゴマー/付加物は、当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第4,855,490(A)号または米国特許第4,144,268(A)号に開示されている。
【0070】
好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートは、モノマー形態および/またはダイマー化形態(イソシアネートとして)またはオリゴマー形態でのみ存在する。
【0071】
直鎖状、分岐鎖状または環状ポリイソシアネートおよび/またはそれらの混合物の誘導体は、ポリイソシアネートをポリアルコール(例えばグリセロール)、ポリアミン、ポリチオール(例えばジメルカプロール)と反応させることによっても得ることができる。
【0072】
上記で定義したイソシアネート化合物は、存在する場合、単独でまたは組み合わせて、種々の異性体を具体的に含む。例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)は、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)および/または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含む。
【0073】
例示的な脂肪族ポリイソシアネートには、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく脂肪族水分散性ポリイソシアネートである、BAYHYDURN304およびBAYHYDUR N3Q5、低粘度の多官能性ヘキサメチレンジイソシアネート系脂肪族ポリイソシアネートであるDESMODUR N3400、DESMODUR N3600、DESMODUR N3700、およびDESMODUR N3900、ならびにヘキサメチレンジイソシアネート系脂肪族ポリイソシアネートであるDESMODUR 3600およびDESMODUR N100などの市販のものが含まれ、これらのそれぞれは、Bayer Corporation、Pittsburgh、PAから入手可能である。
【0074】
本発明の別の好ましい変法によれば、直鎖状または分岐鎖脂肪族ポリイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネート(Mitsui Chemicals Inc.、Japan製のStabio D-370NまたはD-376N などのPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジントリイソシアネートエチルエステル、リジンジイソシアネートエチルエステル、およびそれらの誘導体からなる群から選択されるかまたは選択され、好ましくは、前記誘導体のそれぞれは、1つより多いイソシアネート基を含み、ビウレット、イソシアヌレート、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオンおよびトリメチロールプロパン付加物からなる群から選択される1つまたは複数の基を必要に応じてさらに含み、および/またはここで、環状脂肪族ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(Mitsui Chemicals Inc.、Japan製のTakenate 600などのH6XDI)、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)およびその誘導体からなる群から選択されるかまたは選択され、好ましくは、前記誘導体のそれぞれは、1つより多いイソシアネート基を含み、ビウレット、イソシアヌレート、ウレトジオン、イミノオキサジアジニオン、H6XDIのトリメチロールプロパン付加物(TMP付加物など)、特にMitsui Chemicals Inc.、Japan製のTakenate D-120Nからなる群から選択される1つまたは複数の基を必要に応じてさらに含む。
【0075】
再生可能な原材料、例としてPDI(Mitsui Chemicals Inc.、Japan製のStabio D-370NまたはD-376N)から得られる脂肪族ポリイソシアネートが特に好ましい。再生可能な原材料から得られたそのような脂肪族ポリイソシアネートは、コアシェルカプセルの品質/特性に影響を与えないことが見出された。
【0076】
他の好適な市販のポリイソシアネートとしては、平均nが0.7であるLUPRANAT M20(BASF);平均nが0.7であるPA PI 27(Dow Chemical);平均nが0.8であるMONDUR MR(Bayer); 平均 nが0.8であるMONDUR MR Light(Bayer);平均nが1.0であるMONDUR 489(Bayer);ポリ-[(フェニルイソシアネート)-co-ホルムアルデヒド(Aldrich Chemical、Milwaukee、WI)、DESMODUR N3200(Bayer)およびTAKENATE D110-N(Mitsui Chemicals Corporation、Rye Brook、NY)などの他のイソシアネートモノマーが挙げられる。他の代表的なポリイソシアネートとしては、TAKENATE D-110N(Mitsui)、DESMODUR L75(Bayer)、およびDESMODUR IL(Bayer)と称されるポリイソシアネートが挙げられる。
【0077】
好ましい変法では、本発明によるポリ尿素/ポリウレタンマイクロカプセルの調製に使用されるポリイソシアネートは、唯一のポリイソシアネート成分として、すなわちそれとは異なる他のポリイソシアネート成分を混合せずに使用される。
【0078】
本発明に従って使用することができ、少なくとも2つのポリイソシアネート基を含有する単量体ポリイソシアネートの例は:
エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチルジイソシアネート、エチレンジイソチオシアネート、テトラメチレンジイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネートと1,4-フェニレンジイソシアネートの混合物、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、2,4-トルイレンジイソシアネートと2,6-トルイレンジイソシアネートの混合物、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、およびキシリレン-1,4-ジイソシアネートとキシリレン-1,3-ジイソシアネートの混合物、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネートと2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネートの混合物、ヘキサヒドロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネートとヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネートの混合物、1,3-ジイソシアナトベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’‘-トリイソシアネート、トルイレン-2,4,6-トリイソシアネート、ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート、または前述の化合物の混合物
である。
【0079】
少なくとも2つのポリイソシアネート基を含有する重合性化合物として、好ましくは、大規模に製造されるジ-およびポリイソシアネート、例えば、TDI:トルイレンジイソシアネート(80:20の比率の2,4-および2,6-トルイレンジイソシアネートの異性体混合物)、HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート-(1,6)、IPDI:イソホロンジイソシアネートまたはDMDI:ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートが優先されることが好ましい。
【0080】
他の特に好ましい単量体ポリイソシアネート化合物は、ジイソシアネート、例として1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-ポリイソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-ポリイソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4-および2,6-ジイソシアナトメチルシクロヘキサンおよびそれらの混合物である。原則として、芳香族ポリイソシアネート、例えばトルイレンジイソシアネートまたは4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタも使用することができる。
【0081】
ジイソシアネートの他の具体例としては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXD1)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジ-およびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、必要に応じて混合物で、トルイレンジイソシアネート(TDI)の異性体、1-メチル-2,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン、塩素化および臭素化ジイソシアネート、リン含有ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトフェニルパーフルオロエタン、テトラメトキシブタン-1,4-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、フタル酸ビスイソシアナトエチルエステル、また、1-クロロメチルフェニル-2,4-ジイソシアネート、1-ブロモメチル-フェニル-2,6-ジイソシアネート、3,3-ビスクロロメチルエーテル-4,4’-ジフェニルジイソシアネートなどの反応性ハロゲン原子を有するポリイソシアネートが挙げられる。
【0082】
驚くべきことに、特に、6、7、8、9、10またはさらにそれ以上の炭素原子を有する長鎖脂肪族ジイソシアネートを使用すると、より安定なカプセルシェルまたはカプセル壁が形成されることが見出された。
【0083】
特に好ましい実施形態では、内部非水相は、混合重合体を形成することができる2つまたはそれ以上の異なる重合性ポリイソシアネート、例えば異なる鎖長を有するポリイソシアネートの混合物を含む。
【0084】
比例的に、上述のジイソシアネートまたはそれらの混合物を既知の方法で修飾することによって製造することができ、例えばウレトジオン、ウレタン、イソシアヌレート、ビウレットおよび/またはアロファネート基を含有するポリイソシアネートの誘導体も、本発明によるプロセスで使用することができる。
【0085】
少なくとも2つの異なる、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートの組み合わせ、または少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートとの組み合わせが、非常に特に好ましい。
【0086】
このような組み合わせでは、ポリイソシアネートの異なる反応速度が利用される:芳香族ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートよりも有意に速く反応し、反応速度は、長鎖類似体と比較して、短鎖脂肪族ポリイソシアネート、すなわち、1~5個の炭素原子、好ましくは3~5個の炭素原子を有する脂肪族ポリイソシアネートの方が速い。
【0087】
したがって、本発明のさらに好ましいさらなる実施形態では、異なる脂肪族および/または芳香族ポリイソシアネートはまた、異なる鎖長を有する。本文脈において、長鎖ポリイソシアネートは、好ましくは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、20、25またはそれ以上の炭素原子を有するが、さらにより好ましくは、それらは6~12個の炭素原子を有し、特に好ましくは6~8個の炭素原子を有する。より短い鎖のポリイソシアネートは、1~5個の炭素原子を有するポリイソシアネート、好ましくは3~5個の炭素原子を有するポリイソシアネートであると理解される。
【0088】
本発明によれば、好ましいのは、短鎖脂肪族ポリイソシアネート(C1、C2、C3、C4、C5)と長鎖脂肪族ポリイソシアネート(C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C20、C25もしくはそれ以上)との組み合わせ、または短鎖脂肪族ポリイソシアネート(C1、C2、C3、C4、C5)と長鎖芳香族ポリイソシアネート(C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C20、C25もしくはそれ以上)との組み合わせ、または長鎖脂肪族ポリイソシアネート(C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C20、C25もしくはそれ以上)と短鎖芳香族ポリイソシアネートとの組み合わせである。
【0089】
本文脈において特に好ましいのは、本発明による生分解性マイクロカプセルの調製のための、鎖中に1~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子、特に好ましくは4~7個の炭素原子の鎖長を有する2つ以上のイソシアネート基を有する異なる脂肪族ポリイソシアネートの混合物の使用である。
【0090】
脂肪族ポリイソシアネートは、バイオ系システムとの化学的関係により、本文脈において特に好ましい。例えば、リジンおよび1,5-ジイソシアナトペンタンはどちらも同じ分解生成物である1,5-ジアミノペンタンを有しており、したがって環境への配慮を考慮して、バイオ系生分解性マイクロカプセルの調製に使用するのに特に好適である。
【0091】
主要な実施形態は、長鎖ジイソシアネートの短鎖ジイソシアネートに対する任意の混合比の混合物を含む。より好ましくは、長鎖ジイソシアネートの短鎖ジイソシアネートに対する混合比は、4:1~1:4の範囲であり、特に好ましくは2:1~1:2の範囲である。
【0092】
少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートの好ましい特定の混合物の例は、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイソシアネートのトリメチロール付加物との混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとジイソシアネートのポリイソシアヌレートとの混合物、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。
【0093】
本発明によれば、上記の短鎖脂肪族ポリイソシアネートと長鎖脂肪族ポリイソシアネートとの組み合わせにおいて、または短鎖脂肪族ポリイソシアネートと長鎖芳香族ポリイソシアネートとの組み合わせにおいて、または、長鎖脂肪族ポリイソシアネートと短鎖芳香族ポリイソシアネートとの組み合わせにおいて、ポリイソシアネートは、それぞれモノマーまたはオリゴマーまたはポリマー形態の混合物で存在する。
【0094】
好ましくは、これにより、前述の短鎖および長鎖の定義を使用して、
本発明によるプロセスで使用するための以下の組み合わせが得られる:
- 短鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および短鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 短鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および長鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 短鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および短鎖芳香族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 短鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および長鎖芳香族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 長鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および短鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 長鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および長鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 長鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー)および短鎖芳香族ポリイソシアネート(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー);
- 長鎖脂肪族ポリイソシアネート(モノマー)および長鎖芳香族ポリイソシアネート(オリゴマーまたはポリマー)。
【0095】
異なる鎖長および重合度の少なくとも2つの脂肪族ポリイソシアネートの選択、または脂肪族および芳香族ポリイソシアネートの混合物の選択によって、ポリイソシアネート成分の反応速度、解離、架橋構造の違いにより、安定性および性能(芳香剤または着臭剤カプセルの場合の芳香放出)における有意な向上がもたらされることが観察された。
【0096】
前述のポリイソシアネートの組み合わせまたは2つの異なる脂肪族ポリイソシアネートまたは1つの脂肪族ポリイソシアネートと1つの芳香族ポリイソシアネートとのポリイソシアネート混合物を用いて、特に安定かつより良好な、すなわち、より密に分岐した架橋をカプセルシェル内に形成することができる。
【0097】
したがって、脂肪族および芳香族ポリイソシアネートの混合物または2つの異なる脂肪族ポリイソシアネートの混合物のいずれかから製造される高性能(芳香放出)マイクロカプセルは、本明細書に記載のプロセスに基づいて調製することができる。このようなマイクロカプセルは非常に安定であり、優れた芳香貯蔵特性を特徴としており、したがってこれは、例えば着臭剤または芳香剤カプセル化の分野におけるカプセルのより優れた性能(芳香放出)に反映されている。
【0098】
以下の実施形態に示すように、2つの異なるポリイソシアネートを使用すると、単一のポリイソシアネート系から製造されたマイクロカプセルの安定性をさらに超えるマイクロカプセルが得られる。
【0099】
脂肪族-脂肪族ポリイソシアネート混合物からなるマイクロカプセルは、以下の実施形態に示されるように、脂肪族-芳香族ポリイソシアネート混合物からなるマイクロカプセルと同様に良好である。したがって、原則として、少なくとも2つの異なる重合性(好ましくは脂肪族および/または芳香族)ポリイソシアネートの組み合わせが、本発明において好ましい。
【0100】
内部非水相中の第1の架橋剤の割合は、非水相の総重量に基づいて、0.1~5wt.%の範囲、好ましくは0.15~2.5wt.%の範囲である。最も好ましくは、第1の架橋剤を、非水相の総重量に基づいて、0.5~1wt.%の範囲で内部非水相に提供する。
【0101】
第1の架橋剤は、内部非水相にそのまま、例えば固体として、または水溶液の形態で加える。
【0102】
第1の架橋剤は、水溶液中に0.01~2mol/lの濃度で、好ましくは0.1~1.5mol/lの濃度で、最も好ましくは0.5~1.0mol/lの濃度で存在する。溶液は、7~14のpH値、好ましくは12のpH値を有する。
【0103】
少なくとも1つの多糖および/または少なくとも1つのタンパク質の架橋を改善するために、少なくとも1つのさらなる架橋剤を、必要に応じて内部非水相に加える。さらなる架橋剤は、第1の架橋剤とは異なる。
【0104】
さらなる架橋剤は、トランスグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、二次植物物質であって、ポリフェノール、特にタンニン、没食子酸、フェルラ酸、ヘスペリジン、シンナムアルデヒド、バニリン、カルバクロールからなる群から選択される二次植物物質、および前述の架橋剤の2つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択される。
【0105】
酵素としてのトランスグルタミナーゼは、2つのアミノ酸、すなわちグルタミンとリジンのイソペプチド結合を介した架橋を触媒する。二次植物化合物のフェノール基は、水素結合を介してペプチドを架橋する。アルデヒド、シンナムアルデヒドおよびバニリンは、反応性アルデヒド基を介してタンパク質の遊離アミノ基と共有結合的に反応する。
【0106】
前述のさらなる架橋剤の中で特に好ましいのは、シンナムアルデヒド、タンニンおよび没食子酸である。
【0107】
第1の架橋剤とさらなる架橋剤との特に有利な組み合わせは、
ポリイソシアネートとトランスグルタミナーゼ;
ポリイソシアネートとペルオキシダーゼ;
ポリイソシアネートとポリフェノール(polyphenyol);
ポリイソシアネートとタンニン;
ポリイソシアネートと没食子酸;
ポリイソシアネートとフェルラ酸;
ポリイソシアネートとヘスペリジン;
ポリイソシアネートとシンナムアルデヒド;
ポリイソシアネートとバニリン;
ポリイソシアネートとカルバクロール;または
ポリイソシアネートと上記のさらなる架橋剤の2つもしくはそれ以上の混合物
である。
【0108】
内部非水相中のさらなる架橋剤の含有量は、非水相の総重量に基づいて、0.05~5wt.%の範囲、好ましくは0.1~2wt.%の範囲である。最も好ましくは、さらなる架橋剤は、非水相の総重量に基づいて、0.15~1wt.%の範囲で内部非水相に使用される。
【0109】
さらなる架橋剤は、内部非水相にそのまま、例えば固体として、または水溶液の形態で加える。
【0110】
さらなる架橋剤は、水溶液中に0.01~2mol/lの濃度で、好ましくは0.1~1.5mol/lの濃度で、最も好ましくは0.5~1.0mol/lの濃度で存在する。溶液は、7~14のpH値、好ましくは12のpH値を有する。
【0111】
互いに異なる少なくとも1つの第1の架橋剤と少なくとも1つのさらなる架橋剤とを組み合わせて使用することにより、マイクロカプセルの安定性が大幅に改善され、したがって漏出香油の割合が低下する。
【0112】
ポリイソシアネート成分の比率が低いため、本発明によれば、タンパク質系および/または多糖系マイクロカプセルを調製することが可能であり、ここで、ポリイソシアネートの絶対比率は、カプセル化される少なくとも1つの親油性有効成分を含む全カプセルのわずか1/50である。したがって、カプセルの総重量に基づいてわずか0.6wt.%のポリイソシアネート含有量を有するタンパク質および/または多糖系マイクロカプセルを、本発明によるプロセスによって調製することができる。好ましくは、ポリイソシアネート含有量は、カプセルの約1.8wt.%である。ポリイソシアネート含有量が低いにもかかわらず、本発明によるマイクロカプセルは高い安定性を特徴とする。
【0113】
本発明によるプロセスのステップ(i)では、最初に、少なくとも1つの架橋剤を、カプセル化される少なくとも1つまたは複数の有効成分と一緒に、必要に応じて不活性非水性溶媒または不活性非水性溶媒の溶媒混合物中に実質的に溶解させる。「実質的に溶解した」という用語によって、前述の成分の少なくとも90wt.%、好ましくは少なくとも98wt.%、より好ましくは99.9wt.%を、溶媒または溶媒混合物中に溶解させて、これを本プロセスで使用することができる。好ましくは、カプセル化される少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つの有効成分を、溶媒または溶媒混合物に完全に溶解させる。溶媒がイソシアネートの十分な溶解性を提供しない場合、好適な溶解促進剤を使用することによってこの欠点を克服することが可能である。
【0114】
内部非水相に好ましい溶媒は、水と不混和性であり、イソシアネート成分または有効成分と反応せず、使用量においてほとんどまたは全く臭気がない。
【0115】
本発明の文脈における「溶媒」という用語は、すべてのタイプの油体または油成分、特に植物油、例としてキャノーラ油、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油など、修飾植物油、例えばアルコキシル化ヒマワリ油もしくは大豆油、合成(トリ)グリセリド、例えば、C6~C22脂肪酸のモノ-、ジ-、およびトリグリセリドの工業用混合物など、脂肪酸アルキルエステル、例えば、植物油のメチルまたはエチルエステル(Agnique(登録商標)ME18 RD-F、Agnique(登録商標)ME18 SD-F、Agnique(登録商標)ME12C-F、Agnique(登録商標)ME1270)、これらのC6~C22脂肪酸に基づく脂肪酸アルキルエステル、鉱油およびそれらの混合物を含む。好適かつ好ましい親油性溶媒の例は、以下の通り:6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を有する脂肪アルコールに基づくゲルベアルコール、直鎖C6~C22脂肪酸と直鎖もしくは分岐鎖C6~C22脂肪アルコールとのエステル、または分岐鎖C6~C13カルボン酸と直鎖もしくは分岐鎖C6~C22脂肪アルコールとのエステル、例として、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ミリスチル、イソステアリン酸ミリスチル、オレイン酸ミリスチル、ベヘン酸ミリスチル、エルカ酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、イソステアリン酸セチル、オレイン酸セチル、ベヘン酸セチル、セチルルケート、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、イソステアリン酸ステアリル、オレイン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、エルカ酸ステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソステアリル、オレイン酸イソステアリル、ベヘン酸イソステアリル、ミリスチン酸オレイル、パルミチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル、イソステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、ベヘン酸オレイル、エルカ酸オレイル、ミリスチン酸ベヘニル、パルミチン酸ベヘニル、ステアリン酸ベヘニル、イソステアリン酸ベヘニル、オレイン酸ベヘニル、ベヘン酸ベヘニル、エルカ酸ベヘニル、ミリスチン酸エルシル、パルミチン酸エルシル、ステアリン酸エルシル、イソステアリン酸エルシル、オレイン酸エルシル、ベヘン酸エルシル、およびエルカ酸エルシルである。
【0116】
また、直鎖C6~C22脂肪酸と分岐鎖脂肪アルコールとのエステル、特に2-エチルヘクサノール、C18~C38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐鎖C6~C22脂肪アルコールとのエステル、特にジオクチルマレート(dioctylalate)、直鎖および/または分岐鎖脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6~C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6~C18脂肪酸の液体モノ/ジ/トリグリセリド、C6~C22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル、C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルもしくは2~10個の炭素原子および2~6個のヒドロキシル基を含有するポリオールとのエステル、植物性油、分岐鎖第一級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖または分岐鎖C6~C22脂肪アルコールカーボネート、例としてジカプリリルカーボネート(Cetiol(登録商標)CC)、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を含有する脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、直鎖または分岐鎖C6~C22アルコールとの安息香酸エステル、アルキル基1つあたり6~22個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖、対称または非対称ジアルキルエーテル、例としてジカプリリルエーテル、ポリオールによるエポキシ化脂肪酸エステルの開環生成物、シリコーン油(シクロメチコン、シリコーンメチコングレード等)、脂肪族もしくはナフテン炭化水素、例としてスクアラン、スクアレン、またはジアルキルシクロヘキサン、および/または鉱油も、好適である。
【0117】
好ましい溶媒にはまた、直鎖C6~C22脂肪酸と分岐鎖脂肪アルコールとのエステル、C18~C38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐鎖C6~C22脂肪アルコール、直鎖または分岐鎖C6~C22脂肪アルコールとのエステル、特にジオクチルマレート、直鎖および/または分岐鎖脂肪酸と多価アルコール、例としてプロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール、および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6~C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6~C18脂肪酸に基づく液体モノ/ジ/トリグリセリド、C6~C22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル、C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルもしくは2~10個の炭素原子および2~6個のヒドロキシル基を含有するポリオールとのエステル、植物性油、分岐鎖第一級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分岐鎖C6~C22脂肪アルコールカーボネート、例としてジカプリリルカーボネート(Cetiol(商標)CC)、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を含有する脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖または分岐鎖C6~C22アルコールとのエステル、アルキル基1つあたり6~22個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖、対称または非対称ジアルキルエーテル、例えばジカプリリルエーテルなど(Cetiol(商標)OE)、ポリオールによるエポキシ化脂肪酸エステルの開環生成物、シリコーン油(シクロメチコン、シリコーンメチコンタイプ等)および/または脂肪族もしくはナフテン炭化水素、例としてスクアラン、スクアレン、またはジアルキルシクロヘキサンが含まれる。
【0118】
さらに、液体の直鎖および/もしくは分岐鎖および/または飽和もしくは不飽和炭化水素またはそれらの任意の混合物を、本発明の範囲内の溶媒として使用することができる。これらは、例えば、4~22個、好ましくは6~18個の炭素原子を有するアルカン、またはそれらの任意の混合物であり得る。
【0119】
内部非水相のための不活性溶媒として特に有利に好適であるのは、アルキル芳香族炭化水素、例えば、ジイソプロピルナフタレンまたは置換ビフェニル、塩素化ジフェニルなど、パラフィン、塩素化パラフィン、天然植物油、例えば綿実油、落花生油、パーム油など、リン酸トリクレシル、シリコーン油、フタル酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル、部分水素化テルフェニル、アルキル化ビフェニル、アルキル化ナフタレン、ジアリールエーテル、アリールアルキルエーテル、および高級アルキル化ベンゼン、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸イソプロピル、およびこれらの疎水性溶媒の任意の混合物、ならびにこれらの疎水性溶媒の単一または複数と灯油、パラフィン、および/またはイソパラフィンとの混合物である。
【0120】
好ましくは、植物油トリグリセリド、安息香酸ベンジルまたはミリスチン酸イソプロピルを、内部非水相を提供するための溶媒として使用する。最も好ましいのは、パーム油、大豆油、キャノーラ油、ヒマワリ油、パーム種子油、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、アマニ油、ベニバナ油、変性植物油、およびそれらの混合物からなる群から選択される植物油である。
【0121】
前述の溶媒は、本発明によるプロセスにおいて、個別に、または2つ以上の溶媒の混合物として使用される。
【0122】
本発明によるプロセスの別の好ましい変法では、少なくとも1つのポリイソシアネートを、少なくとも1つの有効成分、好ましくは1つもしくは複数の芳香または香り物質/物質または香油の溶液に直接溶解させ、したがって、上述のように、本発明によるマイクロカプセルのコアには本質的に溶媒が存在しない。マイクロカプセルコア内の溶媒を回避すると、製造コストを削減し、環境問題に対処するという点で有利である。
【0123】
特に、芳香または香り物質は、香料または香り産業で一般的に使用される溶媒に溶解させる。アルコールはイソシアネートと反応するので、溶媒は好ましくはアルコールではない。好適な溶媒の例としては、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(Eastmanから入手可能なコロホニー樹脂)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンまたは他のテルペンまたはイソパラフィンが挙げられる。好ましくは、溶媒は疎水性が高い。好ましくは、芳香または香り物質溶液は、30%未満の溶媒を含む。より好ましくは、芳香または香り物質溶液は、20%未満、さらにより好ましくは10%未満の溶媒を含み、これらのパーセンテージはすべて、芳香または香り物質溶液の総重量に対する重量で定義される。最も好ましくは、芳香または香りは、溶媒を実質的に含まない。
【0124】
少なくとも1つの疎水性有効成分が溶媒または溶媒混合物とすでに混合している場合、不活性溶媒または溶媒混合物の使用は必要ない。そのような場合、少なくとも1つの第1の架橋剤を疎水性活性剤と直接混合して、内部非水相を得ることができる。
【0125】
カプセル化される有効成分として、または本発明によるマイクロカプセルの調製のためのコア材料として、基本的に、マイクロカプセルに含めるのに好適な任意の材料を、本発明によるプロセスにおいて考慮することができる。好ましくは、疎水性、すなわち水不溶性または水不混和性の液体または固体、ならびに懸濁液は、カプセル化される有効成分と考えることができる。これらは、主に非極性物質である。このような疎水性物質はほとんど常に親油性である、すなわち、脂肪および油に良好に溶解する。
【0126】
本明細書の文脈において、コア材料は、疎水性の活性物質、すなわち、特定の効果を有するか、または特定の反応を引き起こす物質、例えば、薬物、殺虫剤、化粧品有効成分、食品有効成分などである。
【0127】
本発明によるプロセスで使用される、カプセル化される少なくとも1つの有効成分は、疎水性または親油性有効成分である。これにより、カプセル化される有効成分が、本発明によるマイクロカプセルの調製中に内部非水相にあり、外部水相と混合しないことが保証され、そうしないと、エマルションが形成されず、液滴表面でカプセル壁材料の沈積が発生しないためである。これにより、その後のカプセル壁成分の乳化および架橋中に、親油性薬物がコア材料としてマイクロカプセル内に完全に封入される。このように形成された内部非水相は、その有機疎水性、油性を特徴とする。
【0128】
本発明の特に好ましい変法では、少なくとも1つの親油性または疎水性有効成分は、特に、親油性もしくは疎水性の芳香もしくは香り物質、または親油性もしくは疎水性の香油もしくは香り(芳香または香り混合物)、冷却剤、TRPV1またはTRPV3モジュレーター、皮膚もしくは粘膜に刺激味または温感もしくは熱感を生じさせる物質、または口もしくは喉にチクチク感を生じさせる物質、または収斂効果を有する有効成分、殺虫剤、殺生物剤、殺虫薬、忌避剤の群からの物質、食品添加物、化粧品有効成分、医薬品有効成分、染料、染料前駆体;農業用化学物質、染料、発光塗料、蛍光増白剤、溶剤、ワックス、シリコーン油、潤滑剤、紙用の印刷コーティング、または前述の有効成分のうちの2つもしくはそれ以上の混合物である。
【0129】
本発明の好ましい変法では、疎水性または親油性有効成分には、特に、疎水性芳香物質または2つもしくはそれ以上の芳香物質(香油)の芳香混合物または疎水性香り物質または2つもしくはそれ以上の香り物質(香味)の香り物質混合物が含まれ、または生体成分も含まれる。
【0130】
本発明の第1および/または第2の態様による好ましい実施形態では、マイクロカプセルは、疎水性の単一の芳香物質または単一の臭気物質の形態のコア材料を有し、コア材料は、以下の群:天然原材料の抽出物、およびそれらの画分、またはそれらから単離された成分;炭化水素の群からの単一の芳香物質;脂肪族アルコール;脂肪族アルデヒドおよびアセタール;脂肪族ケトンおよびオキシム;脂肪族硫黄含有化合物;脂肪族ニトリル;脂肪族カルボン酸のエステル;非環式テルペンアルコールのホルメート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ブチレート、イソバレレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、クロトネート、チグリネートおよび3-メチル-2-ブテノエート;非環式テルペンアルデヒドおよびケトン、ならびにそれらのジメチルおよびジエチルアセタール;環状テルペンアルコールのホルメート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ブチレート、イソバレレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、クロトネート、チグリネートおよび3-メチル-2-ブテノエート;環状テルペンアルデヒドおよびケトン;環状および脂環式エーテル;環状および大環状ケトン;脂環式アルデヒド;脂環式ケトン;環状アルコールのエステル;脂環式カルボン酸のエステル;芳香族炭化水素;芳香脂肪族アルコール;芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル;芳香脂肪族エーテル;芳香族および芳香脂肪族アルデヒド;芳香族および芳香脂肪族ケトン;芳香族および芳香脂肪族カルボン酸およびそれらのエステル;窒素含有芳香族化合物;フェニルエーテルおよびフェニルエステル;複素環式化合物;ラクトン:ならびに上記有効成分の混合物、のうちの1つもしくは複数から選択される、少なくとも1つの単一の芳香物質もしくは単一の臭気物質またはそれらの混合物を含む。
【0131】
本発明によるカプセルの調製に好適な芳香剤および香味料は、文献に記載されている。
【0132】
好ましくは、本発明によるマイクロカプセルは、それぞれ疎水性の単一の芳香または単一の香りの形態のコア材料を有し、コア材料は、以下の群
- 炭化水素、例として3-カレン;α-ピネン;ベータ-ピネン;アルファ-テルピネン;ガンマ-テルピネン;p-シメン;ビサボレン;カンフェン;カリオフィレン;セドレン;ファルネセン;リモネン;ロンギフォレン;ミルセン;オシメン;バレンセン;(E,Z)-1,3,5-ウンデカトリエン;
- 脂肪族アルコール、例としてヘキサノール;オクタノール;3-オクタノール;2,6-ジメチルヘプタノール;2-メチルヘプタノール;2-メチルオクタノール;(E)-2-ヘキセノール;(E)-および(Z)-3-ヘキセノール;1-オクテン-3-オール:3,4,5,6,6-ペンタメチル-3.4-ヘプテン-2-オールおよび3,5,6,6-テトラメチル-4-メチレンヘプタン-2-オールの混合物;(E,Z)-2,6-ノナジエノール;3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール;9-デセノール;10-ウンデセノール;4-メチル-3-デセン-5-オール;
- 脂肪族アルデヒドおよびそれらのアセタール、例としてヘキセナール;ヘプタナール;オクタナール;ノナナール;デカナール;ウンデカナール;ドデカナール;トリデカナール;2-メチルオクタナール;2-メチルノナナール;(E)-2-ヘキセナール;(Z)-4-ヘプテナール;2,6-ジメチル-5-ヘプテナール;10-ウンデセナール;(E)-4-デセナール;2-ドデセナール;2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール;ヘプタナール-ジエチルアセタール;1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン;シトロネリルオキシアセタルデヒド;
- 脂肪族ケトンおよびそのオキシム、例として2-ヘプタノン;2-オクタノン;3-オクタノン;2-ノナノン;5-メチル-3-ヘプタノン;5-メチル-3-ヘプタノンオキシム;2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オン;
- 脂肪族硫黄-含有化合物、例として3-メチルチオヘキサノール;3-メチルチオヘキシルアセテート;3-メルカプトヘキサノール;3-メルカプトヘキシルアセテート;3-メルカプトヘキシルブチレート;3-アセチルチオヘキシルアセテート;1-メンテン-8-チオール;
- 脂肪族ニトリル、例として2-ノネン酸ニトリル;2-トリデセン酸ニトリル;2,12-トリデセン酸ニトリル;3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸ニトリル;3,7-ジメチル-6-オクテン酸ニトリル;
- 脂肪族カルボン酸およびそれらのエステル、例として(E)-および(Z)-3-ヘキセニルホルメート;エチルアセトアセテート;イソアミルアセテート;ヘキシルアセテート;3,5,5-トリメチルヘキシルアセテート;3-メチル-2-ブテニルアセテート;(E)-2-ヘキセニルアセテート;(E)-および(Z)-3-ヘキセニルアセテート;オクチルアセテート;3-オクチルアセテート;1-オクテン-3-イルアセテート;エチルブチレート;ブチルブチレート;イソアミルブチレート;ヘキシルブチレート;(E)-および(Z)-3-ヘキセニルイソブチレート;ヘキシルクロトネート;エチルイソバレレート;エチル-2-メチルペンタノエート;エチルヘキサノエート;アリルヘキサノエート;エチルヘプタノエート;アリルヘプタノエート;エチルオクタノエート;エチル-(E,Z)-2,4-デカジエノエート;メチル-2-オクチネート;メチル-2-ノニネート;アリル-2-イソアミルオキシアセテート;メチル-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエノエート;
- 非環式テルペンアルコール、例としてシトロネロール;ゲラニオール;ネロール;リナロオール;ラバンズオール;ネロリドール;ファルネソール;テトラヒドロリナロオール;テトラヒドロゲラニオール;2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;2,6-ジメチルオクタン-2-オール;2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール;2,6-ジメチル-5,7-オクタジエン-2-オール;2,6-ジメチル-3,5-オクタジエン-2-オール;3,7-ジメチル-4,6-オクタジエン-3-オール;3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール;2,6-ジメチル-2,5,7-オクタトリエン-1-オール;ならびにこれらのホルメート;アセテート;プロピオネート;イソブチレート;ブチレート;イソバレレート;ペンタノエート;ヘキサノエート;クロトネート;チグリネートおよび3-メチル-2-ブテノエート;
- 非環式テルペンアルデヒドおよびケトン、例としてゲラニアール;ネラール;シトロネラール;7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール;7-メトキシ-3,7-ジメチルオクタナール;2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール;ゲラニルアセトン;ならびにゲラニアール;ネラールおよび7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールのジメチルおよびジエチルアセタール;
- 環状テルペンアルコール、例としてメントール;イソプレゴール;α-テルピネオール;テルピネン-4;メンタン-8-オール;メンタン-1-オール;メンタン-7-オール;ボルネオール;イソボルネオール;リナロオールオキサイド;ノポール;セドロール;アンブリノール;ベチベロール;グアイオール;およびこれらのホルメート;アセテート;プロピオネート;イソブチレート;ブチレート;イソバレレート;ペンタノエート;ヘキサノエート;クロトネート;チグリネートおよび3-メチル-2-ブテノエート;
- 環状テルペンアルデヒドおよびケトン、例としてメントン;イソメントン;8-メルカプトメンタン-3-オン;カルボン;カンファー;フェンコン;α-イオノン;β-イオノン;α-n-メチルイオノン;β-n-メチルイオノン;α-イソメチルイオノン;β-イソメチルイオノン;α-イロン;β-イロン;α-ダマセノン;ベータダマセノン;ガンマダマセノン;d-ダマセノン;1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン;1,3,4,6,7,8a-ヘキサヒドロ-1,1,5,5-テトラメチル-2H-2,4a-メタノナフタレン-8(5H)-オン;ヌートカトン;ジヒドロヌートカトン;α-シネンサール;β-シネンサール;アセチル化シダー材油(メチルセドリルケトン);
- 環状アルコール、例として4-tert-ブチルシクロヘキサノール;3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール;3-イソカンフィルシクロヘキサノール;2,6,9-トリメチル-(Z2,Z5,E9)-シクロドデカトリエン-1-オール;2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール;脂環式アルコール、例として3,3,3-トリメチル-シクロヘキシルメタノール;2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)ブタノール;2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-2-ブテン-1-オール;2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-2-ブテン-1-オール;3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-ペンタン-2-オール;3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-4-ペンテン-2-オール;3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-4-ペンテン-2-オール;1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ペンタン-3-オール;1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールの群から;
- 環状および脂環式エーテル、例としてシネオール;セドリルメチルエーテル;シクロドデシルメチルエーテル;1,1-ジメトキシシクロドデカン;(エトキシメトキシ)シクロドデカン;α-セドレンエポキシド;3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン;3a-エチル-6,6,9a-トリメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン;1,5,9-トリメチル-13-オキサビシクロ-[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン;ローズオキシド;2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン;
- 環状ケトン、例として4-tert-ブチルシクロヘキサノン;2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン;2-ヘプチルシクロペンタノン;2-ペンチルシクロペンタノン;2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン;3-メチル-cis-2-ペンテン-1-イル-2-シクロペンテン-1-オン;3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン;3-メチル-4-シクロペンタデセノン;3-メチル-5-シクロペンタデセノン;3-メチルシクロペンタデカノン;4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン;4-tert-ペンチルシクロヘキサノン;5-シクロヘキサデセン-1-オン;6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン;9-シクロ-ヘプタデセン-1-オン;シクロペンタデカノン;シクロヘキサデカノン;
- 脂環式アルデヒド、例として2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;2-メチル-4-(2,2,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール;4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;
- 脂環式ケトン、例として1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)-4-ペンテン-1-オン;2,2-ジメチル-1-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパノン;1-(5,5-ジメチル-1-シクロ-ヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニルメチルケトン;メチル2,6,10-トリメチル-2,5,9-シクロドデカトリエニルケトン;tert-ブチル(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)ケトン;
- 環状アルコールのエステル、例として2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート;4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート;2-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート;4-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート;デカヒドロ-2-ナフチルアセテート;3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアセテート;デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチルアセテート;4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5または6-インデニルアセテート;4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5または6-インデニルプロピオネート;4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5または6-インデニルイソブチレート;4,7-メタノオクタヒドロ-5または6-インデニルアセテート;
- 脂環式カルボン酸のエステル、例としてアリル3-シクロヘキシルプロピオネート;アリルシクロヘキシルオキシアセテート;メチルジヒドロジャスモネート;メチルジャスモネート;メチル2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボキシレート;エチル2-エチル-6,6-ジメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレート;エチル2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセン-カルボキシレート;エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテート;
- 芳香族炭化水素、例としてスチレンおよびジフェニルメタン;
- 芳香脂肪族アルコール、例としてベンジルアルコール;1-フェニルエチルアルコール;2-フェニルエチルアルコール;3-フェニルプロパノール;2-フェニルプロパノール;2-フェノキシエタノール;2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール;2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール;1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアルコール;1,1-ジメチル-3-フェニルプロパノール;1-エチル-1-メチル-3-フェニルプロパノール;2-メチル-5-フェニルペンタノール;3-メチル-5-フェニルペンタノール;3-フェニル-2-プロペン-1-オール;4-メトキシベンジルアルコール;1-(4-イソプロピルフェニル)エタノール;
- 芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル、例としてベンジルアセテート;ベンジルプロピオネート;ベンジルイソブチレート;ベンジルイソバレレート;2-フェニルエチルアセテート;2-フェニルエチルプロピオネート;2-フェニルエチルイソブチレート;2-フェニルエチルイソバレレート;1-フェニルエチルアセテート;α-トリクロロメチルベンジルアセテート;α,α-ジメチルフェニルエチルアセテート;α,α-ジメチルフェニルエチルブチレート;シンナミルアセテート;2-フェノキシエチルイソブチレート;4-メトキシベンジルアセテート;
- 芳香脂肪族エーテル、例として2-フェニルエチルメチルエーテル;2-フェニルエチルイソアミルエーテル;2-フェニルエチル-1-エトキシエチルエーテル;フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール;フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール;ヒドラトロプアルデヒドジメチルアセタール;フェニルアセトアルデヒドグリセロールアセタール;2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン;4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン;4,4a,5,9b-テトラヒドロ-2,4-ジメチルインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン;
- 芳香族および芳香脂肪族アルデヒド、例としてベンズアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;3-フェニルプロパナール;ヒドロアトロパアルデヒド;4-メチルベンズアルデヒド;4-メチルフェニルアセトアルデヒド;3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール;2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール;2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール;3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール;シンナムアルデヒド;α-ブチルシンナムアルデヒド;α-アミルシンナムアルデヒド;α-ヘキシルシンナムアルデヒド;3-メチル-5-フェニルペンタナール;4-メトキシベンズアルデヒド;4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド;4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド;3,4-メチレン-ジオキシベンズアルデヒド;3,4-ジメトキシベンズアルデヒド;2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール;2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール;
- 芳香族および芳香脂肪族ケトン、例としてアセトフェノン;4-メチルアセトフェノン;4-メトキシアセトフェノン;4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン;4-フェニル-2-ブタノン;4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン;1-(2-ナフタレニル)エタノン;ベンゾフェノン;1,1,2,3,3,6-ヘキサメチル-5-インダニルメチルケトン;6-t-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニルメチルケトン;1-[2,3-ジヒドロ-1,1,2,6-テトラメチル-3-(1-メチル-エチル)-1H-5-インデニル]エタノン;5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-3’,5’,5’,6’,8’,8’-ヘキサメチル-2-アセトナフトン;
- 芳香族および芳香脂肪族カルボン酸およびそれらのエステル、例として安息香酸;フェニル酢酸;メチルベンゾエート;エチルベンゾエート;ヘキシルベンゾエート;ベンジルベンゾエート;メチルフェニルアセテート;エチルフェニルアセテート;ゲラニルフェニルアセテート;フェニルエチルフェニルアセテート;メチルシンナメート;エチルシンナメート;ベンジルシンナメート;フェニルエチルシンナメート;シンナミルシンナメート;アリルフェノキシアセテート;メチルサリチレート;イソアミルサリチレート;ヘキシルサリチレート;シクロヘキシルサリチレート;cis-3-ヘキセニルサリチレート;ベンジルサリチレート;フェニルエチルサリチレート;メチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート;エチル-3-フェニルグリシデート;エチル-3-メチル-3-フェニルグリシデート;
- 窒素原子含有芳香族化合物、例として2,4,6-トリニトロ-1,3-ジメチル-5-tert-ブチルベンゼン;3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-tert-ブチルアセトフェノン;ケイ皮酸ニトリル;5-フェニル-3-メチル-2-ペンテン酸ニトリル;5-フェニル-3-メチルペンテン酸ニトリル;メチルアントラニレート;メチル-N-メチルアントラニレート;7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールとメチルアントラニレートのシッフ塩基;2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールまたは2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;6-イソプロピルキノリン;6-イソブチルキノリン;6-sec.-ブチルキノリン;インドール;スカトール;2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン;2-イソブチル-3-メトキシピラジン;4-(4,8-ジメチル-3,7-ノナジエニル)-ピリジン;
- フェノール;フェニルエーテルおよびフェニルエステル、例としてエストラゴール;アネトール;オイゲノール;オイゲニルメチルエーテル;イソオイゲノール;イソオイゲノールメチルエーテル;チモール;カルバクロール;ジフェニルエーテル;β-ナフチルメチルエーテル;β-ナフチルエチルエーテル;β-ナフチルイソブチルエーテル;1,4-ジメトキシベンゼン;オイゲニルアセテート;2-メトキシ-4-メチルフェノール;2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール;p-クレジルフェニルアセテート;環状式化合物、例として2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン;2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-2H-フラン-3-オン;3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン;2-エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オンの群からのもの;
- ラクトン、例として1,4-オクタノリド;3-メチル-1,4-オクタノリド;1,4-ノナノリド;1,4-デカノリド;8-デセン-1,4-オリド;1,4-ウンデカノリド;1,4-ドデカノリド;1,5-デカノリド;1,5-ドデカノリド;1,15-ペンタデカノリド;cis-およびtrans-11-ペンタデセン-1,15-オリド;cis-およびtrans-12-ペンタデセン-1,15-オリド;1,16-ヘキサデカノリド;9-ヘキサデセン-1,16-オリド;10-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド;11-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド;12-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド;エチレン-1,12-ドデカンジオエート;エチレン-1,13-トリデカンジオエート;クマリン;2,3-ジヒドロクマリン;オクタヒドロクマリン;
ならびに上記物質の立体異性体、エナンチオマー、位置異性体、ジアステレオマー、シス/トランス異性体、エピマー
の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの単一の芳香剤または単一の香りを含む。
【0133】
本発明の精神の範囲内でカプセル化できる上記の単一の芳香物質または単一の臭気物質のうち、アルデヒド、カルボン酸またはエステル官能基を有する芳香剤または着臭剤が使用に特に好ましい。
【0134】
対応するアセタールならびにエステルおよびラクトンも含むアルデヒド芳香剤または着臭剤は、以下の群、すなわち
(i)脂肪族アルデヒドおよびそのアセタール;
(ii)脂環式アルデヒド;
(iii)芳香族または芳香脂肪族アルデヒド;
(iv)脂肪族、芳香族または芳香脂肪族エステル;および
(v)ラクトン;
およびこれらの混合物に、それぞれ分けることができる。
【0135】
アルデヒド、カルボン酸またはエステル官能基、ならびにそれらの混合物を有する前述の芳香物質および臭気物質は、以下の群:
- 脂肪族アルデヒドおよびそれらのアセタール、例としてヘキセナール;ヘプタナール;オクタナール;ノナナール;デカナール;ウンデカナール;ドデカナール;トリデカナール;2-メチルオクタナール;2-メチルノナナール;(E)-2-ヘキセナール;(Z)-4-ヘプテナール;2,6-ジメチル-5-ヘプテナール;10-ウンデセナール;(E)-4-デセナール;2-ドデセナール;2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール;ヘプタナール-ジエチルアセタール;1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン;シトロネリルオキシアセタルデヒド;
- 脂環式アルデヒド、例として2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;2-メチル-4-(2,2,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール;4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;
- 芳香族および芳香脂肪族アルデヒド、例としてベンズアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;3-フェニルプロパナール;ヒドロアトロパアルデヒド;4-メチルベンズアルデヒド;4-メチルフェニルアセトアルデヒド;3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール;2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール;2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール;3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール;シンナムアルデヒド;α-ブチルシンナムアルデヒド;α-アミルシンナムアルデヒド;α-ヘキシルシンナムアルデヒド;3-メチル-5-フェニルペンタナール;4-メトキシベンズアルデヒド;4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド;4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド;3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド;3,4-ジメトキシベンズアルデヒド;2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール;2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール;
- 脂肪族カルボン酸エステル、例として(E)-および(Z)-3-ヘキセニルホルメート;エチルアセトアセテート;イソアミルアセテート;ヘキシルアセテート;3,5,5-トリメチルヘキシルアセテート;3-メチル-2-ブテニルアセテート;(E)-2-ヘキセニルアセテート;(E)-および(Z)-3-ヘキセニルアセテート;オクチルアセテート;3-オクチルアセテート;1-オクテン-3-イルアセテート;エチルブチレート;ブチルブチレート;イソアミルブチレート;ヘキシルブチレート;(E)-および(Z)-3-ヘキセニルイソブチレート;ヘキシルクロトネート;エチルイソバレレート;エチル-2-メチルペンタノエート;エチルヘキサノエート;アリルヘキサノエート;エチルヘプタノエート;アリルヘプタノエート;エチルオクタノエート;エチル-(E,Z)-2,4-デカジエノエート;メチル-2-オクチネート;メチル-2-ノニネート;アリル-2-イソアミルオキシアセテート;メチル-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエノエート;
- 環状アルコールのエステル、例として2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート;4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート;2-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート;4-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート;デカヒドロ-2-ナフチルアセテート;3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアセテート;デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチルアセテート;4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5または6-インデニルアセテート;4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5または6-インデニルプロピオネート;4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5または6-インデニルイソブチレート;4,7-メタノオクタヒドロ-5または6-インデニルアセテート;
- 芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル、例としてベンジルアセテート;ベンジルプロピオネート;ベンジルイソブチレート;ベンジルイソバレレート;2-フェニルエチルアセテート;2-フェニルエチルプロピオネート;2-フェニルエチルイソブチレート;2-フェニルエチルイソバレレート;1-フェニルエチルアセテート;α-トリクロロメチルベンジルアセテート;α,α-ジメチルフェニルエチルアセテート;α,α-ジメチルフェニルエチルブチレート;シンナミルアセテート;2-フェノキシエチルイソブチレート;4-メトキシベンジルアセテート;
- 脂環式カルボン酸のエステル、例としてアリル3-シクロヘキシルプロピオネート;アリルシクロヘキシルオキシアセテート;メチルジヒドロジャスモネート;メチルジャスモネート;メチル2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボキシレート;エチル2-エチル-6,6-ジメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレート;エチル2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセン-カルボキシレート;エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテート;
- 芳香族および芳香脂肪族カルボン酸エステル、例としてメチルベンゾエート;エチルベンゾエート;ヘキシルベンゾエート;ベンジルベンゾエート;メチルフェニルアセテート;エチルフェニルアセテート;ゲラニルフェニルアセテート;フェニルエチルフェニルアセテート;メチルシンナメート;エチルシンナメート;ベンジルシンナメート;フェニルエチルシンナメート;シンナミルシンナメート;アリルフェノキシアセテート;メチルサリチレート;イソアミルサリチレート;ヘキシルサリチレート;シクロヘキシルサリチレート;cis-3-ヘキセニルサリチレート;ベンジルサリチレート;フェニルエチルサリチレート;メチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート;エチル-3-フェニルグリシデート;エチル-3-メチル-3-フェニルグリシデート、のうちの1つまたは複数から選択される。
【0136】
以下に、アルデヒド、アセタール、エステル、およびラクトンを、それらの商品名とともに列挙し、これらは、本発明によるプロセスの意味において、群(i)~(v)の代表として特に好ましい:
アルデヒド:2-メチルペンタナール;アルデヒドC12MNA HM;アルデヒドC4;アルデヒドC5;アルデヒドC6;アルデヒドC7;アルデヒドC8;アルデヒドC9;アルデヒドC10;アルデヒドC11イソ;アルデヒドC11MOA PURE;アルデヒドC11ウンデカナール;アルデヒドC11ウンデシレン酸;アルデヒドC12;;アルデヒドC12MNA;アルデヒドC13;アルデヒドマンダリン;アミルシンナムアルデヒドアルファ;アニサールアルデヒド-O;アニシルアルデヒド;ベンズアルデヒドNAT.;ベルガマール;ボロナール;ブルゲオナール(BOURGENOAL);カンホレンアルデヒド;シトラール;シトロネラールHM;シトロネリルオキシアセトアルデヒド;シトリラール;シトロイラールE HM;コルテックスアルデヒド;コルテックスアルデヒド50PCT PEMOSA;クロトン酸アルデヒド;クミナルアルデヒド;シクラメンアルデヒド;デカジエナルTRANS,TRANS-2,4,デカナールCIS-4;デカナールTRANS-2;デカナールTRANS-2 NAT;デカナールTRANS-4;デカナール-9,1;ドデカニエナル2,6;ドデカナールTRANS-2;デュピカル;エポキシデセナール-4,5-2 10%トリ;エチルヘキサナール;FARENAL(登録商標);フロルヒドラル;ゲルアルデヒド;ヘリオナール;ヘリオパン;ヘリオトロピン;ヘプタジエナールTRANS,TRANS,2-4;ヘプテナールCIS-4;ヘプテナールTRANS-2;ヘキセナールTRANS-2;ヘキシル桂皮酸アルデヒドアルファ;ヒドロアトロパ酸アルデヒド;ヒドロキシシトロネラール;イントレレベンアルデヒドSPEC.;イソノニルアルデヒド;イソ吉草酸アルデヒド;レモンアルデヒドH&R JS I;リリアル;リノラール;リラル;マジャンタル;マンドリナール;マンドラインアルデヒド10%IN TEC BHT;メフェラナール;MELONAL(登録商標);メトディシトロネラール;メチルブチルアルデヒド;メチル桂皮酸アルデヒドアルファ;メチルフェニルペンテナール-4,2,2;メチルチオプロパナール-3;メチルトリデカナール-12 10%VT;メチル-3-ブテン-2-アール;メチル-5-フェニル-2-ヘキセン-2-アール;ムゲナール50DPG;ネオシクロシトラール;ノナジエナール;TRANS,CIS-2,6;ノネナールCIS-6;ノネナールTRANS-2;ONCIDAL(登録商標)3/060251;ペンテナールTRANS-2;エゴマアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;フェニルブテナールTRANS-2,2;フェニルプロピルアルデヒド;ピノアセトアルデヒド;プロフェラネサル;プロピオナールアルデヒド2-(P-トリル);プロピオン酸アルデヒド;PS-イラルデインX NEU;サフラナール;サリチル酸アルデヒドFG;シルビアル;テトラヒドロシトラール;チグリン酸アルデヒド-2,2;トリルアルデヒドPARA FG;トリデセナールTRANS-2;トリフェルナール;ウンデカジエナール-2,4;ウンデセナールTRANS-2;ベルナールアルデヒド;ベルトシトラール;ベルトムガール;ベルチプレナール;ベトラール粗精製;シンナムアルデヒドNAT.HM;アセタール:フロロパー;ヘプタナールジエチルアセタール;ノナンジエナールジエチルアセタール;オコウマル;フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール;フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール;エステル:ジャスマール;ジャセマール;カリスマール;TIRAMISONE(登録商標)。
【0137】
本発明によるプロセスのさらなる変法では、香り物質はまた、単一の香りの形態でコア材料としてカプセル化することができ、コア材料は、有効成分として少なくとも1つの単一の香り物質またはそれらの混合物を含む。
【0138】
本発明に従ってカプセル化されてもよい香り物質の典型的な例は、アセトフェノン;アリルカプロネート;アルファ-イオノン;ベータ-イオノン;アニスアルデヒド;アニシルアセテート;アニシルホルメート;ベンズアルデヒド;ベンゾチアゾール;ベンジルアセテート;ベンジルアルコール;ベンジルベンゾエート;ブチルブチレート;ブチルカプロネート;ブチリデンフタリド;カルボン;カンフェン;カリオフィレン;シネオール;シンナミルアセテート;シトラール;シトロネロール;シトロネラール;シトロネリルアセテート;シクロヘキシルアセテート;シメン;ダマスコン;デルタ-デカラクトン;ジアセチル;ジヒドロクマリン;ジメチルアントラニレート;ドデカラクトン;エトキシエチルアセテート;エチル酪酸;エチルブチレート;エチルカプリネート;エチルカプロネート;エチルクロトネート;エチルフラネオール;エチルグアイアコール;エチルイソブチレート;エチルイソバレリアネート;エチルラクテート;エチルメチルブチレート;エチルプロピオネート;ユーカリプトール;オイゲノール;エチルヘプチレート;ゲラニオール;ゲラニルアセテート;ジヒドロジャスモン酸メチル(例えばHedion(登録商標));ヘリオトロピン;2-ヘプタノン;3-ヘプタノン;4-ヘプタノン;trans-2-ヘプテナール;cis-4-ヘプテナール;trans-2-ヘキセナール;cis-3-ヘキセノール;trans-2-ヘキセン酸;trans-3-ヘキセン酸;cis-3-ヘキセニルアセテート;cis-3-ヘキセニルカプロネート;trans-2-ヘキセニルカプロネート;cis-3-ヘキセニルホルメート;パラヒドロキシベンジルアセトン;イソアミルアルコール;イソアミルイソバレリアネート;イソブチルブチレート;イソブチルアルデヒド;イソオイゲノールメチルエーテル;イソプロピルメチルチアゾール;ラウリン酸;レブリン酸(leavulinic acid);リナロール;リナロールオキシド;リナリルアセテート;メントール;メントフラン;メチルアントラニレート;メチルブタノール;メチル酪酸;2-メチルブチルアセテート;メチルカプロネート;メチルシンナメート;5-メチルフルフラール;3,2,2-メチルシクロペンテノロン;6,5,2-メチルヘプテノン;ジャスモン酸メチル;2-メチルメチルブチレート;2-メチル-2-ペンテン酸(pentenolic acid);メチルチオブチレート;3,1-メチルチオヘキサノール;3-メチルチオヘキシルアセテート;ネロール;ネリルアセテート;trans,trans-2,4-ノナジエナール;2,4-ノナジエノール;2,6-ノナジエノール;ヌートカトン;デルタオクタラクトン;ガンマオクタラクトン;2-オクタノール;3-オクタノール;1,3-オクテノール;1-オクチルアセテート;3-オクチルアセテート;パルミチン酸;パラアルデヒド;フェランドレン;ペンタンジオン;フェニルエチルアセテート;フェニルエチルアルコール;フェニルエチルイソバレリアネート;プロピオンアルデヒド;プロピルブチレート;プレゴン;プレゴール;シネンサール;スルフロール;テルピネン;テルピネオール;テルピノール;8,3-チオメンタノン;4,4,2-チオメチルペンタノン;チモール;デルタ-ウンデカラクトン;ガンマ-ウンデカラクトン;バレンセン;吉草酸;バニリン;アセトイン;エチルバニリン;エチルバニリンイソブチレート(3-エトキシ-4-イソブチリルオキシベンズアルデヒド);2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンおよびその誘導体(好ましくはホモフラネオール(2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン)、ホモフロノール(2-エチル-5-メチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンおよび5-エチル-2-メチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン);マルトールおよびマルトール誘導体(好ましくはエチルマルトール);クマリンおよびクマリン誘導体;ガンマ-ラクトン(好ましくはガンマ-ウンデカラクトン;ガンマ-ノナラクトン;ガンマ-デカラクトン);デルタ-ラクトン(好ましくは4-メチルデルタ-デカラクトン;マソイラクトン;デルタ-デカラクトン;ツベロラクトン);メチルソルベート;ジバニリン;4-ヒドロキシ-2(または5)-エチル-5(または2)-メチル-3(2H)フラノン;2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテノン;3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2(5H)フラノン;酢酸イソアミルエステル;酪酸エチルエステル;酪酸-n-ブチルエステル;酪酸イソアミルエステル;3-メチル酪酸エチルエステル;n-ヘキサン酸エチルエステル;n-ヘキサン酸アリルエステル;n-ヘキサン酸-n-ブチルエステル;n-オクタン酸エチルエステル;エチル-3-メチル-3-フェニルグリシデート;エチル-2-trans-4-cis--デカジエノエート;4-(p-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン;1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキサン;2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-オール(2,6-dimethyl-5-heptene-1-al);フェニルアセトアルデヒド;2-メチル-3-(メチルチオ)フラン;2-メチル-3-フランチオール;ビス(2-メチル-3-フリル)ジスルフィド;フルフリルメルカプタン;メチオナール;2-アセチル-2-チアゾリン;3-メルカプト-2-ペンタノン;2,5-ジメチル-3-フランチオール;2,4,5-トリメチルチアゾール;2-アセチルチアゾール;2,4-ジメチル-5-エチルチアゾール;2-アセチル-1-ピロリン;2-メチル-3-エチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-3,6-ジメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;3-イソプロピル-2-メトキシピラジン;3-イソブチル-2-メトキシピラジン;2-アセチルピラジン;2-ペンチルピリジン;(E,E)-2,4-デカジエナール;(E,E)-2,4-ノナジエナール;(E)-2-オクテナール;(E)-2-ノネナール;2-ウンデセナール;12-メチルトリデカナール;1-ペンテン-3-オン;4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン;グアイアコール;3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン;3-ヒドロキシ-4-メチル-5-エチル-2(5H)-フラノン;シンナムアルデヒド;シンナアルコール;メチルサリチレート;イソプレゴール;ならびに本明細書で明確に言及されていないこれらの物質の立体異性体、エナンチオマー、位置異性体、ジアステレオマー、シス/トランス異性体またはエピマー;および前述の物質の混合物からなる群から選択される。
【0139】
本発明による別の実施形態では、本発明によるマイクロカプセルは、カプセル化される有効成分として、またはコア材料として、芳香物質混合物または香油それぞれ、または香り混合物または香りを使用する。これらは、少なくとも1つの芳香物質または1つの香り物質を含有する組成物である。そのような組成物、特に芳香混合物または香油は、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の芳香物質を含む。芳香混合物または香油はそれぞれ、好ましくは、天然の原材料からの抽出物、例として、精油、濃縮固形香料、アブソリュート、樹脂、樹脂状物質、バルサム、チンキ、例としてアンバーグリス油;アミリス油;アンジェリカ種子油;アンジェリカ根油;アニス油;バレリアン油;バジル油;フロウソウアブソリュート;ベイ油;オオヨモギ油;ベンゾイン樹脂;ベルガモット油;蜜蝋アブソリュート;バーチタール油;苦扁桃油;セイバリー油;ブッコ葉油;カブレバ油;ケイド油;カラマス油;樟脳油;カナンガ油;カルダモン油;カスカリラ油;カッシア油;カッシーアブソリュート;海狸香アブソリュート;ニオイヒバ油;シダーウッド油;柑橘油;シトロネラ油;シトロン油;コパイババルサム;コパイババルサム油;コリアンダー油;コスツス根油;クミン油;イトスギ油;ダバナ油;ディルハーブ油;ディルシード油;オーデブロウツアブソリュート;オークモスアブソリュート;エレミ油;タラゴン油;ユーカリシトリオドラ葉油;ユーカリ油;フェンネル油;トウヒ針葉油;楓子香油;楓子香樹脂;ゲラニウム油;グレープフルーツ油;グアヤクウッド油;グルジュンバルサム;グルジュンバルサム油、ヘリクリサムアブソリュート;ヘリクリサム油;ショウガ油;ハナショウブアブソリュート;ハナショウ油;ジャスミンアブソリュート;ショウブ油;カモミール油ブルー;カモミール油ローマ;ニンジン根油;カスカリラ油;松葉油;カーリーミント油;キャラウエイシード油;ラブダナム油;ラブダナムアブソリュート;ラブダナム樹脂;ラバンジンアブソリュート;ラバンジン油;ラベンダーアブソリュート;ラベンダー油;レモングラス油;ラベージ油;ライム油蒸留;ライム油圧搾;リナル油;リツエアクベバ油;ベイリーフ油;メース油;マジョラム油;マンダリン油;マッソ樹皮油;ミモザアブソリュート;ムスク粒油;ムスクチンキ;マスカット油;ミルラアブソリュート;ミルラ油;ギンバイカ油;チョウジ葉油;チョウジ花油;ネロリ油;オリバナムアブソリュート;オリバナム油;オポパナクス油;オレンジ花アブソリュート;オレンジ油;オリガヌム油;パルマローザ油;パチュリー油;シソ油;ペルーバルサム油;パセリ葉油;パセリ種子油;プチグレン油;ペパーミント油;コショウ油;オールスパイス油;パイン油;ポウリ油;バラアブソリュート;ローズウッド油;バラ油;ローズマリー油;セージ油ダルマチア;セージ油スペイン;ビャクダン油;セロリ種子油;スパイシーラベンダー油;スターアニス油;エゴノキ油;マリーゴールド油;ファーニードル油;ティーツリー油;テレビン油;タイム油;トルーバルサム;トンカアブソリュート;チューベローズアブソリュート;バニラ抽出物;スミレ葉アブソリュート;ビジョザクラ油;ベチベル油;ジュニパーベリー油;ワイン酵母油;ヨモギ油;冬緑油;イラン油;ヒソップ油;シベットアブソリュート;シナモン葉油;シナモン樹皮油;およびそれらの分画またはそれらから単離された成分、の群から選択される。
【0140】
本発明によるプロセスにおいて最も好ましく使用されるのは、アグルメクスLC;アグルニトリル;アルデヒドC11ウンデシレン酸;アルデヒドC12ラウリン酸;アルデヒドC12MNA;アルデヒドC14SOG;アルデヒドC16SOG.;アリルアミルグリコレート;アリルカプロネート;アリルシクロヘキシルプロピオネート;アリルヘプチレート;AMBROCENIDE(登録商標)10TEC;AMBROCENIDE(登録商標)KRIST.10%IPM;アンブロキシド;アネトールNAT.EXステルナニス;アニスアルデヒド純粋;APRIFLOREN(登録商標);ベンジルアセトン;ベンジルサリチレート;ボルネオールL/イソボルネオール65/35;ブッコブラテロエル(BUCCOBLAETTEROEL);シトロネロール950;クローナル;シクロヘキシルサリチレート;シモールPARA SUPRA;ダマスコンデルタ;ジヒドロミルセノール;ジメチルベンジルカルビニルブチレート;ジナスコン;エチレンブラシレート;ブチレート-2エチルメチル;エチルサフロネート;ユーカリプトールNAT.;ユーカリノキ油80/85%;ユーゲノールNAT.;FARENAL(登録商標);ウイキョウ油芳香型甘味NAT.;フィルベルトン10%IPM;フィルベルトン;フロロパール;ガルバスコン;ゲラニオール60;GLOBANONE(登録商標);へディオン;ハーバフロレート;ハーバネート;ハービルプロピネート;ヘキセニルアセテートCIS-3;ヘキセニルサリチレートCIS-3;ヘキシルアセテート;ヘキシルアセテート;ヘキシルイソブチレート;ヘキシルサリチレート;イソアミルブチレート;イソボルニルアセテート;イソプロピルメチルブチレート-2;イソラルデイン70;ジャバノール;ショウノウDL;クレゾールメチルエーテルP(CR<10PPM);レモニル;リグストラール;リリアル;リナロール;マンガネート;メロナー;メチルへプチンカーボネート;メチルオクチンカーボネート;ムスセノン;ネオシクロシトラール;ネロリンブロメリア;ネロリンヤラヤラCRYST.;ネロリオン;ノルリンバノール;オレンジノエル;オリボン;オゾニル;パチョリENTF.;植物油トリグリセリド;フェランドレン画分EXユーカリ油;PHENIRAT(登録商標);フェニルエチルアセテート;ローズオキシドHIGH CIS;SANDRANOL(登録商標);スチレンアセテート;SULTANENE(登録商標);テルピンガンマ;テトラヒドロリナロール;チンバーシルク;トリエチルシトレート;ウンデカベルトール;ベルトシトラール;ベルトフィックス;YSAMBER(登録商標)K、および上記活性剤の混合物からなる群から選択される芳香物質または香り物質である。
【0141】
本発明によるマイクロカプセルの製造において疎水性有効成分として使用される代表的な冷却剤としては、メントールおよびメントール誘導体(例えば、L-メントール、D-メントール、ラセミメントール、イソメントール、ネオイソメントール、ネオメントール)、メンチルエーテル(例えば、(1-メントキシ)-2-プロパンジオール、(1-メントキシ)-2-メチル-1,2-プロパンジオール、1-メンチルメチルエーテル)、メンチルエステル(例えば、ギ酸メンチル、酢酸メンチル、イソ酪酸メンチル、乳酸メンチル、L-乳酸メンチル、L-乳酸メンチル、D-乳酸メンチル、メンチル-(2-メトキシ)-アセテート、メンチル-(2-メトキシエトキシ)-アセテート、ピログルタミン酸メンチル)、メンチルカーボネート(例えば、メンチルプロピレングリコールカーボネート、メンチルエチレングリコールカーボネート、メンチルグリセロールカーボネートまたはそれらの混合物)、メントールとジカルボン酸またはその誘導体とのセミエステル(例えば、モノメンチルサクシネート、モノメンチルグルタレート、モノメンチルマロネート、O-メンチルサクシネート-N,N-(ジメチル)アミド、O-メンチルスクシンアミド)、メンタンカルボキサミド(例えば、メンタンカルボン酸-N-エチルアミド[WS3]、N-α-(メタンカルボニル)グリシンエチルエステル[WS5]、メンタンカルボン酸-N-(4-シアノフェニル)-アミド、メンタンカルボン酸-N-(アルコキシアルキル)アミド)、メントンおよびメントン誘導体(例えば、L-メントングリセロールケタール)、2,3-ジメチル-2-(2-プロピル)-ブタン酸誘導体(例えば、2,3-ジメチル-2-(2-プロピル)-ブタン酸-N-メチルアミド[WS23])、イソプレゴールまたはそのエステル(1-(-)-イソプレゴール、1-(-)-イソプレゴールアセテート)、メンタン誘導体(例えば、p-メンタン-3,8-ジオール)、クベボールまたはクベボールを含有する合成または天然の混合物、シクロアルキルジオン誘導体のピロリドン誘導体(例えば、3-(メチル)-2-(1-ピロリジニル)-2-シクロペンテン-1-オン)またはテトラヒドロピリミジン-2-オン(例えば、WO2004/026840に記載のイシリンまたは関連化合物)が挙げられる。他の冷却剤としては、メントール(L-メントール、D-メントール、ラセミメントール、イソメントール、ネオイソメントール、ネオメントール)、L-メンチルメチルエーテル、ギ酸メンチル、酢酸メンチル)、メントン、イソプレゴール、L-(-)-イソプレゴールアセテート)およびクベボールが挙げられ、これらは味を冷やす効果がある。好適な冷却剤は当技術分野において周知であり、例えば、米国特許出願公開第2017/216802(A1)号、米国特許出願公開第2010/273887(A1)号、EP2033688(A2)およびEP1958627(A2)に記載されている。
【0142】
代替的実施形態では、TRPV1またはTRPV3モジュレーターを、カプセル化される有効成分として、または本発明によるポリ尿素/ポリウレタンマイクロカプセル中のコア材料として使用する。TRPV1およびTRPV3モジュレーターは、先行技術において知られており、バニロイド(TRPV)サブファミリーのTRPチャネル(一過性受容体電位チャネル)を指す。TRPV1モジュレーターは、カプサイシンとピペリンに関連するスパイシーな味と熱い感覚を付与する。TRPV3タンパク質は、温度感覚および血管制御を含む、様々なプロセスで機能する非選択的カチオンチャネルのファミリーに属している。TRPV3チャネルは、カルバクロール、チモール、およびオイゲノールなどのいくつかの天然化合物によって直接活性化される。温かさの感覚を引き起こす、または皮膚感作物質である他のいくつかのモノテルペノイドも、チャネルを開くことができる。モノテルペノイドはまた、カルシウム非依存様式で、TRPV3チャネルのアゴニスト特異的脱感作を誘導する。
【0143】
別の変法では、本発明によるポリ尿素/ポリウレタンマイクロカプセルは、カプセル化される有効成分として、またはコア材料として、皮膚または粘膜に刺激味もしくは熱もしくは熱感覚を、または口や喉のヒリヒリ感を引き起こす物質からなる群から選択される有効成分、あるいは刺激性(pungent)、えぐ味(acrid)、収斂作用のある(astringent)有効成分を使用する。
【0144】
熱誘発性または刺激性有効成分は、好ましくはパプリカパウダー、唐辛子パウダー、パプリカ抽出物、ピーマン抽出物、唐辛子抽出物、ショウガ根抽出物、グレインオブパラダイス(Aframomum melegueta)抽出物、パラクレス(Jambu oleoresin; Spilanthes acmella、もしくはSpilanthes oleracea)抽出物、山椒(Zanthoxylum piperitum)抽出物、ケンフェリアガランガ抽出物、アルピニアガランガ抽出物、水トウガラシ(Polygonium hydropiper)抽出物、カプサイシノイド、特にカプサイシン、ジヒドロカプサイシンまたはノニバミド;ジンゲロール、特にジンゲロール-[6]、ジンゲロール-[8]、またはジンゲロール-[10];ショウガオール、特にショウガオール-[6]、ショウガオール-[8]、ショウガオール-[10];ジンジャージオン、特にジンジャージオン-[6]、ジンジャージオン-[8]、またはジンジャージオン-[10];パラドール、特にパラドール-[6]、パラドール-[8]、またはパラドール-[10];デヒドロジンジャージオン、特にデヒドロジンジャージオン-[6]、デヒドロジンジャージオン-[8]またはデヒドロジンジャージオン-[10];ピペリン;ピペリン誘導体;エチル-2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)アセテートおよび3-フェニルプロピル-2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)アセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0145】
刺激性またはえぐ味として知覚される有効成分は、好ましくは、芳香族イソチオシアネート、特にフェニルエチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、シクロプロピルイソチオシアネート、ブチルイソチオシアネート、3-メチルチオプロピルイソチオシアネート、4-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート、4-メトキシベンジルイソチオシアネートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0146】
ヒリヒリする感覚(ヒリヒリ感)を引き起こす有効成分は、2E,4E-デカジエン酸-N-イソブチルアミドtrans-ペリトリン)、特にWO2004/043906に記載のもの;2E,4Z-デカジエン酸-N-イソブチルアミド(cis-ペリトリン)、特にWO2004/000787に記載のもの;2Z,4Z-デカジエン酸-N-イソブチルアミド;2Z,4E-デカジエン酸-N-イソブチルアミド;2E,4E-デカジエン酸-N-([2S]-2-メチルブチル)アミド;2E,4E-デカジエン酸-N-([2S]-2-メチルブチル)アミド;2E,4E-デカジエン酸-N-([2R]-2-メチルブチルアミド);2E,4Z-デカジエン酸-N-(2-メチルブチル)アミド;2E,4E-デカジエン酸-N-ピペリド(アキレアミド(achilleamide));2E,4E-デカジエン酸-N-ピペリド(サルメンチン);2E-デセン酸-N-イソブチルアミド;3E-デセン酸-N-イソブチルアミド;3E-ノネン酸-N-イソブチルアミド;2E,6Z,8E-デカトリエン酸-N-イソブチルアミド(スピラントール);2E,6Z,8E-デカトリエン酸-N-([2S]-2-メチルブチル)アミド(ホモスピラントール);2E,6Z,8E-デカトリエン酸-N-([2R]-2-メチルブチル)アミド;2E-デセン-4-イン酸-N-イソブチルアミド;2Z-デセン-4-イン酸-N-イソブチルアミド;2E,6Z,8E,10E-ドデカテトラエン酸-N-(2-メチルプロピル)アミド(α-サンショオール);2E,6Z,8E,10E-ドデカテトラエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(α-ヒドロキシサンショオール);2E,6E,8E,10E-ドデカテトラエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(γ-ヒドロキシサンショオール);2E,4E,8Z,10E,12E-テトラデカペンタエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(γ-ヒドロキシサンショオール);2E,4E,8E,10E,12E-テトラデカペンタエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(γ-ヒドロキシイソサンショオール);2E,4E,8Z,10E,12E-テトラデカペンタエン酸-N-(2-メチル-2-プロペニル)アミド(ガンマ-デヒドロサンショオール);2E,4E,8Z,10E,12E-テトラデカペンタエン酸-N-(2-メチルプロピル)アミド(γ-サンショオール);2E,4E,8Z,11Z-テトラデカテトラエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(ブンゲアノール);2E,4E,8Z,11E-テトラデカテトラエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(イソブンゲアノール);2E,4E,8Z-テトラデカトリエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(ジヒドロブンゲアノール)および2E,4E-テトラデカジエン酸-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミド(テトラヒドロブンゲアノール)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0147】
収斂活性を有する有効成分は、好ましくは、カテキン、例えばエピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンおよびそれらのそれぞれの没食子酸エステル、特にエピガロカテキンガレートまたはエピカテキンガレート、それらのオリゴマー(プロシアニジン、プロアントシアニジン、プロデルフィニジン、プロシアニリン、テアルビゲニン、テオガリン)ならびにそれらのC-およびO-グリコシド;ジヒドロフラボノイド、例としてジヒドロミリセチン、タキシフォリン、およびそれらのC-およびO-グリコシド、フラボノール、例としてミリセチン、ケルセチンならびにそれらのCおよびO-グリコシド、例えばケルセトリン、ルチン、炭水化物の没食子酸エステル、例えばタンニン、ペンタガロイルグルコースまたはそれらの反応生成物、例としてエリガタンニン、アルミニウム塩、例えばミョウバン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0148】
本発明の第1および/または第2の態様による別の変法では、生体成分をコア材料としてカプセル化することもでき、コア材料は少なくとも1つの生体成分またはそれらの混合物を含む。
【0149】
生体成分とは、生物活性を有する有効成分、例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、パルミチン酸トコフェロール、アスコルビン酸、カルノチン、カルノシン、カフェイン、(デオキシ)リボ核酸およびその断片、β-グルカン、レチノール、ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、セラミド、シュードセラミド、精油、植物抽出物、ならびにビタミン複合体を意味する。
【0150】
本発明によるプロセスのさらなる変法では、紙用の印刷コーティングのための物質もまた、カプセル化される有効成分として、またはコア材料として、それぞれ米国特許第2800457(A)号に記載されているように使用され、この点に関するその開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0151】
内部非水相は、内部非水相の総重量に基づいて例えば、20~80wt.%、好ましくは25~75wt.%、さらにより好ましくは33~50wt.%のカプセル化される疎水性有効成分、0.1~5wt.%、好ましくは0.15~3.5wt.%、およびさらにより好ましくは0.5~2.5wt.%の第1の架橋剤、ならびに補足的に100wt.%までの疎水性溶媒を含有してもよい。
【0152】
このように、本発明によるプロセスを使用して、本発明によるマイクロカプセル中の有効成分の高使用量を達成することが可能である。
【0153】
本発明によるプロセスのさらなるステップ(ii)において、少なくとも1つのタンパク質および/または少なくとも1つの多糖、および必要に応じて少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水相が提供される。
【0154】
外部水相を調製するための好適な溶媒は、水、または水と少なくとも1つの水混和性有機溶媒との混合物である。好適な有機溶媒には、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および他の類似体が含まれる。しかし、好ましくは、溶媒は水である。
【0155】
本発明によれば、少なくとも1つのタンパク質は、タンパク質原性L-アミノ酸、動物または植物タンパク質、特にタンパク質単離物、分画の形態の動物または植物タンパク質、物理化学的プロセスまたはタンパク質の発酵もしくは酵素処理によって生成される部分的もしくは完全な加水分解物または中間体からなる群から選択され、特に、肉(哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚)、カニ、甲殻類、ムール貝、軟体動物、昆虫、卵、牛乳、特にカゼインおよびホエー、レンネットカゼイン、ホエータンパク質濃縮物80%、ゼラチン、藻類、穀物、特に小麦、大麦、ライ麦、スペルト小麦、グルテン、特に小麦グルテン、菜種、ヒマワリ、米、ジャガイモ、トウモロコシ、大豆、豆、エンドウ豆、レンズ豆、ルピナス、ピーナッツ、アルファルファ、麻、その他の食用植物由来のタンパク質からなる群のタンパク質、キトサン、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0156】
上記タンパク質のうち、ゼラチン、乳タンパク質、ホエータンパク質、エンドウ豆タンパク質が特に好ましい。
【0157】
アミノ酸は、タンパク新生L-アミノ酸である。L-アミノ酸は、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、およびL-バリンからなる群から選択される。
【0158】
上記アミノ酸のうち、L-グルタミンおよびL-リジンが特に好ましい。
【0159】
好ましい変法では、上記のタンパク質のうちの1つを、1つまたは複数の遊離L-アミノ酸と組み合わせて使用する。好ましい組み合わせは、乳タンパク質とL-グルタミンおよび/またはL-リジンである。このような組み合わせにより、大型分子と小型分子の両方がネットワークに取り込まれ、安定性が向上する。加えて、アミノ酸L-グルタミンおよび/またはL-リジンは、トランスグルタミナーゼなどの酵素的架橋剤によって特に容易に架橋することができる。
【0160】
上記タンパク質は、乳化作用を呈するという有利な効果を有する。上記タンパク質は、それらの乳化効果により、エマルションの安定化に寄与する。タンパク質は両親媒性であり、ある程度の柔軟な構造および分子内のそれらの異なる荷電領域のために界面活性である。例えば、物理的または化学的修飾によってタンパク質を修飾することにより、分子の二次および/または三次構造を変化させることができる。したがって、乳化特性への影響は、分子の荷電領域の空間的利用可能性を変更するか、またはアミノ酸側鎖を露出させることによって達成することができる。これらの有利な特性により、本発明によるプロセスでは、追加の乳化剤または保護コロイドを省くことができる。
【0161】
外部水相中の少なくとも1つのタンパク質の割合は、外部水相の総重量に基づいて、0.25~5.0wt.%の範囲、好ましくは0.5~3.0wt.%の範囲である。最も好ましくは、少なくとも1つのタンパク質は、外部水相の総重量に基づいて、1.0~1.5wt.%の範囲で使用される。
【0162】
本発明の第1および第2の態様によれば、少なくとも1つの多糖は、
- 難消化性繊維および食物繊維、特に不溶性食物繊維、特にセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、特に四級化ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)および微結晶性セルロース(MCC)、ヘミセルロース、リケニン(lichenin)、キチン、キトサン、リグニン、キサンタン、植物繊維、特に穀類繊維、ジャガイモ繊維、リンゴ繊維、柑橘類繊維、竹繊維、テンサイ抽出繊維;エンバク繊維および可溶性食物繊維、特にイヌリン、特にネイティブイヌリン、高溶解性イヌリン、粒状イヌリン、高性能イヌリン、ペクチン、アルギン酸塩、寒天、カラギーナン、アラビアガム(セネガル型、セヤル型)、コンニャクガム、ジェランガム、カードラン(パラミロン)、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ラフィノース、キシロース、ポリデキストロース、およびラクツロース;
- デンプン、特に小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、米、タピオカおよびエンバク由来のデンプン、修飾デンプン、およびデンプン誘導体、例えばデキストリンまたはマルトデキストリン、特に小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、米、エンドウ豆およびエンバク由来のデキストリンおよびマルトデキストリン、特にマルトデキストリンDE8-10、DE17-20、DE18-20、シクロデキストリン、オリゴ糖、特にオリゴフルクトース;ならびに
- 糖アルコール、特にソルビトール、マンニトール、イソマルト、マルチトール、マルチトール(maltilol)シロップ、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール;
- グルコース
ならびに上記の多糖のうちの2つまたはそれ以上の混合物
からなる群から選択される。
【0163】
上記の多糖のうち、アラビアガムおよびマルトデキストリンが特に好ましい。最も好ましいのは、マルトデキストリンDE8-10ジャガイモ;DE17-20トウモロコシ;DE17-20ジャガイモおよびDE18-20小麦である。
【0164】
外部水相中の少なくとも1つの多糖の割合は、外部水相の総重量に基づいて、0.5~7.0wt.%の範囲、好ましくは1.5~6.0wt.%の範囲である。最も好ましくは、少なくとも1つの多糖は、外部水相の総重量に基づいて、3.0~5.0wt.%の範囲で使用される。
【0165】
好ましくは、外部水相には、カプセルシェルの両方の主成分、すなわち、少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの多糖が提供される。タンパク質と多糖を組み合わせて使用すると、可溶性または不溶性のタンパク質-多糖複合体が形成される。このようにして形成されたエマルションは、凝集体を形成しにくいので、本発明によるプロセスでは保護コロイドまたは追加の乳化剤を加える必要がない。
【0166】
カプセル壁またはカプセルシェルを構築するために、タンパク質および多糖の以下の組み合わせが特に好ましい:ホエータンパク質とマルトデキストリン;乳タンパク質とマルトデキストリン;ホエータンパク質とアラビアガム;ゼラチンとマルトデキストリン;乳タンパク質、L-グルタミン、L-リジン、およびマルトデキストリン;ならびにゼラチン、乳タンパク質、およびマルトデキストリン。
【0167】
カプセルシェルを構築するために最も好ましいのは、ゼラチンとマルトデキストリンDE8-10ジャガイモとの組み合わせ、または乳タンパク質、L-グルタミンおよび/またはL-リジンとマルトデキストリンとの組み合わせである。このようなカプセルシェル材料を用いて調製されたマイクロカプセルは、イソプロパノール中の遊離油含有量≦1%のマイクロカプセルをもたらす。
【0168】
カプセル壁、タンパク質および多類を構築するための前述および例示された成分は、生物学的供給源から容易に入手可能である。さらに、それらはそのままで容易に生分解される。
【0169】
本発明によるプロセスの代替的変法では、外部水相には、カプセルシェル、タンパク質または多糖の主成分のうちの1つだけを提供する。この変法において、他の主成分である多糖またはタンパク質の添加は、必要に応じて、乳化/分散の後、プロセスステップ(v)における触媒の添加後、ステップ(iv)において、プロセスステップ(v)における触媒の添加前にまたは添加とともに、行われる。
【0170】
少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの多糖を使用することによって、カプセルシェル中の架橋剤ポリイソシアネートの含有量を、高いポリイソシアネート含有量を有する最新従来技術のマイクロカプセルと比較して、カプセルシェルに基づいて好ましくは最大50wt.%のイソシアネート含有量まで、さらにより好ましくは、最大20wt.%のイソシアネート含有量まで、低減することができるカプセル壁またはカプセルシェルを構築するための成分として、ポリイソシアネートをタンパク質および/または多糖に置き換えることにより、マイクロカプセル中のポリイソシアネート含有量が減少し、架橋度が低下する。
【0171】
しかしながら、驚くべきことに、以下の実施形態に示されるように、このより低い架橋度は、一方では安定なマイクロカプセルをもたらし、他方ではより良好な生分解性を有するマイクロカプセルをもたらす。
【0172】
保護コロイドを、外部水相に必要に応じて加えてもよい。
【0173】
保護コロイドは、懸濁液または分散体中の乳化、懸濁、または分散成分の凝集(凝集、凝固、凝塊)を防止するポリマー系である。溶媒和中、保護コロイドは大量の水を結合し、濃度に応じて水溶液に高粘度を生成する。水中油型エマルションの調製では、保護コロイドは疎水性部分で一次粒子にそれ自体付着し、その極性、すなわち親水性分子部分を水相に向ける。この界面への付着により、界面張力が低下し、一次粒子の凝集を防止する。加えて、これにより、エマルションが安定化し、比較的小さな液滴の形成が促進され、対応するマイクロカプセルの形成も促進される。
【0174】
本発明によるプロセスでは、保護コロイドは、上記の特性に加えて乳化特性も呈する。保護コロイド、例えば、カルボキシメチルセルロース、酸修飾デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのアンモニウム誘導体、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアクリレートなどの乳化特性が十分である場合、これにより、有利なことに、本発明によるプロセスの下流の乳化/分散ステップ(iii)において、乳化剤の使用を省略することも可能である。例えば、ヒヨコ豆系マイクロカプセルの場合、好ましくはポリビニルアルコールが、好ましくは水相に加えられる唯一の保護コロイドである。
【0175】
本発明によるプロセスにおいて使用される保護コロイドは、
- ジオール、特にエタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、異性ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、および
- ポリオール、好ましくはトリオール、特にグリセリン、ならびにそのエトキシル化およびプロポキシル化生成物、トリメチロールプロパンならびにそのエトキシル化およびプロポキシル化生成物、ポリビニルアルコール(PVOH)およびその誘導体、特にアンモニウムまたはスルホネート官能化ポリビニルアルコール、ポリフェノール、好ましくは1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、多糖、特にグルコース、デンプン、または化学的、機械的および/または酵素的に修飾したデンプン、セルロース誘導体、例としてヒドロキシエチルセルロース、特に四級化ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース、
- ポリビニルピロリドン、マレイン酸ビニルコポリマー、リグノスルホン酸ナトリウム、無水マレイン酸/スチレンコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレンオキシド、プロピレンオキシドとポリエトキシル化ソルビトールの酸エステルのコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、
- 動物および植物ポリマー、特にアラビアガム(セネガル型およびセイヤル型)、タンパク質、ゼラチン、オリバナム樹脂、セラック、リグニン、キトサン、サポニン
ならびに上記の化合物の混合物
からなる群から選択される。
【0176】
デンプン、特に修飾デンプン、または動物もしくは植物ポリマーは、生分解性の天然に存在する物質である。したがって、本明細書に記載のポリイソシアネートと組み合わせて、本プロセスは、バイオ系であり生分解性のカプセルシェルを提供することができる。したがって、本発明によるプロセスでは、デンプンならびに動物および植物ポリマーは、いわゆるバイオ架橋剤としても機能する。
【0177】
本発明によるプロセスで使用されるデンプンは、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、ライ麦デンプン、小麦デンプン、大麦デンプン、エンバクデンプン、米デンプン、エンドウ豆デンプン、タピオカデンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0178】
好ましくは、化学修飾デンプンは、酸修飾デンプン、アルカリ修飾デンプン、酸化デンプン、アセチル化デンプン、コハク化デンプン、またはオセンチルコハク化デンプンである。
【0179】
好ましくは、外部水相は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの保護コロイドを含む。ポリビニルピロリドンが、特に好ましい。市販の標準的なポリビニルピロリドンは、分子量が約2500~750000g/molの範囲である。
【0180】
さらにより好ましくは、ポリオール、ポリフェノールまたはデンプン、特に修飾デンプンを保護コロイドとして使用する。特に好ましくは、ポリビニルアルコールまたはそのアンモニウム誘導体、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、修飾デンプンまたはカルボキシメチルセルロースを、本発明によるマイクロカプセルの調製のための保護コロイドとして使用する。
【0181】
本発明によれば、2つまたはそれ以上の異なる保護コロイドの組み合わせもまた、本発明によるマイクロカプセルの調製において使用することができる。
【0182】
本発明によるプロセスでは、上記保護コロイドの1つと、さらなる保護コロイドとしてのデンプンとの組み合わせを外部水相で使用すると、特に有利であることが見出された。このような組み合わせは、官能性ヒドロキシル基の数が多いためにエマルションを安定化し、他方では、保護コロイドとポリイソシアネートとの間の反応に有利に働き、それによって、保護コロイドとポリイソシアネートとの反応の反応平衡は、生成物、すなわちポリウレタン側にシフトする。さらに、デンプン中の多数の官能性ヒドロキシル基により、空間的に特に顕著な架橋の形成が可能になる。
【0183】
官能基の数および/または保護コロイドのサイズに応じて、上記の保護コロイドは、少なくとも1つのポリイソシアネートのイソシアネート基との異なる反応速度を呈する。例えば、グリセリンは、そのサイズのために、例えば、デンプンよりもイソシアネート基とより速く反応する。したがって、ポリイソシアネートのイソシアネート基による保護コロイドの架橋は、保護コロイドの選択によって制御することができる。
【0184】
特に有利な組み合わせは、グリセリンとデンプンもしくは修飾デンプンとの組み合わせ、またはグリセリンと四級化ヒドロキシエチルセルロースもしくはアラビアガムセヤル型との組み合わせであることが証明されており、このような組み合わせにより、両方の保護コロイドの前述の特性、すなわち、一方ではグリセリンの反応速度が高く、他方では他の保護コロイドの重合可能な官能基の数が多くなる、という特性を利用できる。
【0185】
本発明によるプロセスで使用される保護コロイドは、一方で保護コロイドとして作用し、したがって乳化、懸濁または分散成分の凝集を防止し、続いて形成されるエマルションを安定化するという二重の機能を有し、小さな液滴の形成を促進し、最終的に形成されるマイクロカプセル分散を安定させる。
【0186】
したがって、使用される保護コロイドの量または使用される保護コロイドの組み合わせの量は、外部水相の総重量に基づいて、1~6wt.%の範囲、好ましくは2~4wt.%の範囲、さらにより好ましくは2~3wt.%の範囲にある。
【0187】
外部水相は、多糖および/またはタンパク質と、必要に応じて保護コロイドを、またはその逆で、外部水相に連続的に加えることによって、または成分を外部水相に同時に加えることによって、好ましくは撹拌下で調製する。
【0188】
タンパク質の溶解度を改善するために、外部水相のpH値を、タンパク質の等電点より低いpH値、すなわち使用したタンパク質の等電点より低いpH値に、必要に応じて調整する。
【0189】
等電点は、等電状態に達するpH値であり、つまり、両性電解質または両性イオン(例えば、アミノ酸およびタンパク質)において正電荷と負電荷が平衡状態となるpH値である。この値は、各アミノ酸の一定の特性であり、官能基のpKs値に依存する。アミノ酸に加えて、ペプチドおよびタンパク質も等電点を有する。等電点では、アミノ酸、したがってタンパク質も最低の水溶性を呈する。
【0190】
好ましくは、水相のpH値を、使用されるタンパク質の等電点の関数として、2.0~7.0の範囲のpH値に、さらにより好ましくは2.0~6.0の範囲のpH値に、最も好ましくは3.0~5.0の範囲のわずかに酸性のpH値に調整する。等電点未満のpH値、すなわちタンパク質の等電点未満のpH値にpH値を調整すると、そのようなpH値ではタンパク質の乳化特性および溶解性が最も高くなるという利点がある。
【0191】
外部水相のpH値は、有機酸を加えることによって調整する。この目的のために、有機酸、例えばギ酸または酢酸を乳化ステップの前に外水相に加え、上記範囲のpH値に調整する。
【0192】
少なくとも1つの第1の架橋剤および少なくとも1つの疎水性有効成分を含む内部非水相を、さらなるプロセスステップ(iii)で外部水相に乳化または分散させて、水中油エマルション/分散体を形成する。
【0193】
水中油エマルションは、内部非水相と外部水相を混合することによって調製する。内部非水相の外部水相に対する重量比は、好ましくは70:30~60:40の範囲、好ましくは30:70~60:40の範囲にある。
【0194】
内部非水相および外部水相からのエマルションまたは分散体の形成を促進し、形成されたエマルションまたは分散体をそれぞれ安定化し、内部非水相(油性/有機性/疎水性)と外部水相(親水性)の分離を防止するため、安定剤および/または乳化剤または乳化助剤を、本発明によるプロセスにおいてエマルションまたは分散体に必要に応じて加える。
【0195】
好ましくは、エマルション/分散体を安定化して内部非水(油性)相と外部水相との分離を防止する安定剤を、外部水相に加える。
【0196】
本発明による多糖およびタンパク質系マイクロカプセルを調製するための好ましい安定剤は、主に、スルホネート基を有するアクリルコポリマーである。また、アクリルアミドとアクリル酸のコポリマー、アルキルアクリレートとN-ビニルピロリドンのコポリマー、例としてLUVISKOL(登録商標)K15、K30、またはK90(BASF);ポリカルボン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルおよびメチルビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、ならびにエチレン、イソブチレンまたはスチレン-無水マレイン酸コポリマー、例えばVIVAPUR(登録商標)の名前で市販されている微結晶性セルロース、ジウタンガム、キサンタンガムまたはカルボキシメチルセルロースも、好適である。
【0197】
使用される安定剤の量は、それぞれ外部水相に基づいて、0.01~10wt.%の範囲、好ましくは0.1~3wt.%の範囲であってもよい。
【0198】
必要に応じて、乳化剤、好ましくはO/W-乳化剤を、本発明によるプロセスにおいて使用し、これにより、外部水相中の内部非水相の油滴の均一な分布が可能になり、エマルションが安定化する。このようにして得られた分散体を安定化するために、外部水相に固体の不溶性有効成分を混合する場合にも、同様のことが当てはまる。
【0199】
乳化剤の添加は、特にタンパク質または保護コロイドの乳化特性が全くないか、または低い、すなわち不十分である場合に、必要に応じて行われる。乳化タンパク質および/または保護コロイドを使用する場合、乳化剤の使用は、本発明によるプロセスにおいて有利に省くことができる。
【0200】
好適な乳化剤には、例えば、以下の群:
- 2~30モルのエチレンオキシドおよび/または0~5モルのプロピレンオキシドの、アルキル基中に8~22個のC原子を有する直鎖脂肪アルコールへの、12~22個のC原子を有する脂肪酸への、8~15個のC原子を有するアルキルフェノールへの、ならびにアルキルラジカル中に8~22個の炭素原子を有するアルキルアミンへの接着生成物;
- アルキル(アルケニル)ラジカル中に8~22個の炭素原子を有するアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドおよびそれらのエトキシル化類似体;
- ヒマシ油および/または硬化ヒマシ油への1~15molのエチレンオキシドの付加生成物;
- ヒマシ油および/または硬化ヒマシ油への15~60モルのエチレンオキシドの付加生成物;
- グリセリンおよび/またはソルビタンと、12~22個の炭素原子を有する不飽和直鎖または飽和分岐鎖脂肪酸および/または3~18個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸との部分エステル、および1~30モルのエチレンオキシドとのそれらの付加物;
- ポリグリセリン(平均自己縮合度2~8)、ポリエチレングリコール(分子量400~5000)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)、およびポリグルコシド(例えば、セルロース)と、12~22個の炭素原子を含む飽和および/もしくは不飽和の直鎖または分岐鎖の脂肪酸、および/または3~18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに1~30molのエチレンオキシドとのそれらの付加物、好ましくはCremophor(登録商標);
- ペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪族アルコールの混合エステル、ならびに/または6~22個の炭素原子を含有する脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール、好ましくはグリセリンまたはポリグリセリンの混合エステル;
- モノ-、ジ-およびトリアルキルホスフェート、ならびにモノ-、ジ-および/またはトリ-PEG-アルキルホスフェートおよびそれらの塩;
- 羊毛ワックスアルコール;
- ポリシロキサン-ポリアルキル-ポリエーテルコポリマーまたは対応する誘導体;
- ブロックコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール-30ジポリヒドロキシステアレート;
- ポリマー乳化剤、例えば、Goodrich製のpemuleneグレード(TR-1、TR-2)またはCognis製のCosmedia(登録商標)SP;
- ポリアルキレングリコールおよびグリセリンカーボネート、のうちの少なくとも1つからの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0201】
イソシアネート系マイクロカプセルを調製するための本発明によるプロセスで使用できる典型的なアニオン性乳化剤は、12~22個の炭素原子を有する脂肪族脂肪酸、例としてパルミチン酸、ステアリン酸、またはベヘン酸、および12~22個の炭素原子を有するジカルボン酸、例としてアゼライン酸またはセバシン酸である。
【0202】
さらに、双性イオン性界面活性剤は、多糖およびタンパク質系マイクロカプセルを調製するための本発明によるプロセスにおいて、乳化剤として使用することができる。双性イオン性界面活性剤は、分子内に少なくとも1つの第4級アンモニウム基と、少なくとも1つのカルボキシレート基と、1つのスルホネート基を有する界面活性化合物である。特に好適な双性イオン性界面活性剤は、いわゆるベタイン、例としてN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、およびアルキルまたはアシル基にそれぞれ8~18個のC原子を有する2-アルキル-3-カルボキシルメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン、ならびにココアシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。特に好ましいのは、CTFA名コカミドプロピルベタインの名称で知られている脂肪酸アミド誘導体である。
【0203】
また、好適な乳化剤は、両性界面活性剤である。両性界面活性剤とは、分子中のC8/18アルキルまたはアシル基に加えて、少なくとも1つの遊離アミノ基および少なくとも1つの-COOHまたは-SOH基を含有し、内部塩を形成することができる界面活性化合物を意味する。好適な両性界面活性剤の例は、それぞれ、アルキル基中に約8~18個のC-原子を有する、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸、アルキルアミノ酢酸である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ココアルキルアミノプロピオネート、ココサシルアミノエチル(cocosacylaminoethyl)アミノプロピオネートおよびC12/18アシルサルコシンである。
【0204】
最後に、カチオン性界面活性剤も乳化剤として使用することができ、エステルクワット型のもの、好ましくはメチル四級化ジ脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩、四級化ヒドロキシエチルセルロース、プロピレングリコールで修飾されたキトサンおよびエピクロロヒドリンで四級化されたジステアリルジメチルアンモニウムクロリド(DSDMAC)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルアルコニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(臭化セトリモニウム)、塩化デカリニウムが特に好ましい。
【0205】
乳化剤は、それぞれ外部水相の総重量に基づいて、約0.5~約10wt.%、および好ましくは約1~約5wt.%の量で外部水相に加えることができる。
【0206】
エマルション形成(液体有効成分の場合)または分散体形成(固体有効成分の場合)、すなわち、内部の非水相または油相と外部の水相または親水相との乳化または分散が、高乱流または高せん断下で行われ、それによって、乱流またはせん断の強さが、得られるマイクロカプセルの直径を決定する。マイクロカプセルの調製は、連続的または非連続的に行うことができる。水相の粘度が増加するか、または油相の粘度が低下するにつれて、カプセルのサイズは一般に減少する。
【0207】
多糖系およびタンパク質系のマイクロカプセルを調製するための本発明によるプロセスは、例えば、「インライン」技術に従って実行することができる。これにより、強制計量ポンプによって、内部非水相と外部水相は、最初に乳化タービンに別々に供給し、乳化タービンに入る直前に合わせるか、または1200~1500l/時間のスループット量で、乳化タービンで合わせる。加えて、多糖およびタンパク質系マイクロカプセルを調製するための本発明によるプロセスは、従来の分散装置または乳化装置で実行することもできる。
【0208】
外部水相および内部非水相の乳化または分散は、本発明によるマイクロカプセルの調製のために、例えば、乳化タービン(IKAEurostar20高速撹拌機)によって行う。
【0209】
本発明によるプロセスにおける乳化または分散のプロセスは、1000rpm~5000rpm、好ましくは3000rpm~4000rpmの撹拌速度で、30秒~20分、好ましくは1~4分、および最も好ましくは1~2.5分の間、10~50μm±5μmのカプセルサイズが得られるまで、有利に実行する。
【0210】
乳化または分散ステップ(iii)の完了後、カプセル化される有効成分を含む内部油相が外部水相に液滴の形態で微細に乳化または分散している水中油型エマルションまたは分散体が、存在する。
【0211】
本発明によるプロセスの代替的変法では、前述のように、乳化または分散ステップ(iii)の後、少なくとも1つの多糖または少なくとも1つのタンパク質の添加を、ステップ(iv)で必要に応じて実行する。プロセスステップ(ii)において外部水相に少なくとも1つのタンパク質主成分のみを提供する場合、少なくとも1つの多糖の添加は、プロセスステップ(iv)で行う。他方、プロセスステップ(ii)における外部水相が、少なくとも1つの多糖主成分のみを含む場合、少なくとも1つのタンパク質の添加は、プロセスステップ(iv)で行う。別々の添加により、複数の層が形成され(「1層ごとに」)、その個々の層を、後続のプロセスステップ(v)で互いに架橋させる。これにより、例えば、エマルションの電荷、ひいては凝集安定性を制御することができる。
【0212】
これに代えて、プロセスステップ(ii)からの少なくとも1つのタンパク質および/または少なくとも1つの多糖と同じかまたは異なる、または異なる電荷を有するか、またはpH値が変化すると電荷が変化する、別さらなるタンパク質および/または多糖を、必要に応じてプロセスステップ(iv)で加えることができる。別のタンパク質および/または多糖を加えることにより、さらなる層(「1層ごとに」)が構築され、その個々の層は、後続のプロセスステップ(v)で互いに架橋される。これによって、カプセル壁成分のより密でより安定なネットワークをもたらされ、その結果、より安定なカプセルシェルがもたらされ、これによりマイクロカプセルの安定性が向上する。
【0213】
さらなるタンパク質および/またはさらなる多糖は、プロセスステップ(ii)について上で詳細にすでに定義されたタンパク質および/または多糖の群から選択される。同じことが、本明細書に記載されているタンパク質および/または多糖の好ましい変形または好ましい組み合わせに関しても当てはまる。
【0214】
本発明によるプロセスの後続のプロセス(v)において、同様に撹拌しながら、カプセルシェルまたはカプセル壁の材料の第1の架橋を行う。
【0215】
第1の架橋は、乳化または分散後に、カプセル壁成分の上述の層を(「1層ごとに」)架橋し、得られたカプセルシェルを安定化するために、触媒を加えることにより行う。これにより、一方では多糖のカルボキシル基および/またはスルホ基および/またはヒドロキシル基とタンパク質のアミノ基との間の重合反応を触媒し、他方、第1の架橋剤のイソシアネート基は、外部水相と分散した内部相との間の界面、すなわちカプセル化した有効成分を囲む乳化または分散した油滴の界面で界面重合によって起こる。同様に、触媒がすでに内部非水相に加えられている場合、架橋は非水相と水相の乳化または分散後に同様に起こる。
【0216】
前述の層の少なくとも1つの多糖および/または少なくとも1つのタンパク質の官能基と第1の架橋剤の官能基との間の触媒架橋により、カプセルシェルまたはカプセル壁の構造用の第1の架橋ユニットまたは第1の架橋マトリックスが形成される。
【0217】
本発明によるプロセスにおける第1の架橋ユニットの形成は、多糖と第1の架橋剤および/またはタンパク質と第1の架橋剤との間の重付加反応に基づく。これにより、多糖のヒドロキシル基が第1の架橋剤のイソシアネート基と反応してポリウレタンを形成し、タンパク質のアミノ基が第1の架橋剤のイソシアネート基と反応してポリ尿素を形成する。ポリウレタンおよびポリ尿素に加えて、タンパク質および多糖の可溶性または不溶性複合体も、第1の架橋ステップ(v)中に形成され、カプセル壁マトリックスまたはカプセルシェルを構成する。
【0218】
カプセル壁ビルディングブロックの架橋官能基の数が多いほど、空間架橋が大きくなり、得られるマイクロカプセルのカプセルシェルまたはカプセル壁がより緻密で安定する。官能基の数に加えて、個々のカプセル壁ビルディングブロックの鎖長も、マイクロカプセルの機械的特性、すなわち安定性に大きな影響を与える:例えば、デンプンの多数のヒドロキシル基により、特に顕著な空間的架橋の形成が可能になり;より長い鎖のカプセル壁ビルディングブロック、例えばポリイソシアネートは、より安定なカプセル壁の形成をもたらす。
【0219】
第1の架橋マトリックスまたは第1の架橋ユニットの形成により、コア材料、すなわちカプセル化有効成分を有する乳化または分散した油滴は、界面で外側の架橋マトリックスまたは架橋ユニットによって囲まれ、こうして、カプセル壁が生成され、カプセル化有効成分の拡散がより困難になる。
【0220】
エマルジョンまたは分散液への少なくとも1つの触媒の添加は、多糖および/またはタンパク質と架橋剤との間の架橋反応を促進し、第1の架橋マトリックスまたは第1の架橋ユニットの形成に有利に反応を触媒する。
【0221】
本発明によるプロセスで加えられる触媒は、好ましくはジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)であり、トリエチレンジアミン(TEDA)としても知られ、二環式第三級アミンである。DABCOは、一般に、ポリウレタンプラスチックの製造用の触媒として使用される。自由電子対を有する第三級アミンは、第1の架橋剤のイソシアネート基と多糖のヒドロキシル基との間の反応を促進する。
【0222】
K.C.Frisch&L.P.Rumao,Catalysis in Isocyanate Reactions,Polymer Reviews、1970年、5:1、103~149頁、DOI:10.1080/15583727008085365に記載されているように、DABCOに加えて、例えば、ビスマスまたはスズに基づく触媒、例えばビスマス(II)塩またはビスマス(III)塩に基づく触媒なども、第1の架橋を触媒するために使用され、この点に関するその開示は、本明細書にその全体が組み込まれている。
【0223】
本発明によれば、DABCOと上記の触媒の1つとの組み合わせが好ましい。このような混合物は、K.C.Frisch&L.P.Rumao,Catalysis in Isocyanate Reactions,Polymer Reviews、1970年、5:1、103~149頁、DOI:10.1080/15583727008085365、に記載されているように、反応性の倍増をもたらし、この点に関する開示は、本明細書にその全体が組み込まれている。
【0224】
DABCOおよび上記の触媒は、好ましくは、本発明によるプロセスにおいて、2つまたはそれ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの重合性ポリイソシアネートとジオールまたはポリオールとの間のポリウレタン反応を触媒する。
【0225】
触媒が外部水相に加えられる量は、外部水相の総重量に基づいて、0.001~1wt.%の範囲、好ましくは0.02~0.75wt.%の範囲、特に好ましくは0.05~0.5wt.%の範囲である。しかし、重合が遅い場合には、触媒を増加させることもできる。
【0226】
触媒は、エマルションまたは分散体に、撹拌しながら、例えば固体として、または水溶液の形態で、好ましくは水中で加える。触媒は、0.5~2mol/l、好ましくは1mol/lの濃度で水溶液中に存在する。
【0227】
触媒を、500rpm~2000rpm、好ましくは1000rpm~1500rpmの撹拌速度で、20℃~30℃の範囲の温度で、好ましくは22℃~26℃の温度で加える。
【0228】
さらにより好ましくは、触媒による第1の架橋のプロセスステップ(v)は、エマルションまたは分散体を、60℃~90℃の範囲の温度まで、好ましくは65~85℃の範囲の温度まで、最も好ましくは70~80℃の範囲の温度まで徐々に加熱することによって実行する。本発明によるプロセスにおける第1の架橋は、約30分~90分の持続時間、好ましくは40分~70分の持続時間、最も好ましくは60分の持続時間実行する。
【0229】
カプセルシェルまたはカプセル壁の最初の架橋および形成の後、本発明によるプロセスに従って調製されたカプセルは、水性分散体またはスラリーの形態の粗製マイクロカプセルとして存在する。
【0230】
架橋後、スラリー中のマイクロカプセルは依然として柔軟なシェルを有しているが、これは特別な安定性を有しておらず、したがって容易に壊れて開く。この目的のために、シェルを硬化させる。プロセスステップ(vi)における硬化は、好ましくは、マイクロカプセルスラリーを少なくとも60℃の温度まで、好ましくは60℃~65℃の範囲の温度まで、マイクロカプセルスラリーの最大沸点まで徐々に上昇させることによって実行する。通常、少なくとも3時間、好ましくは4時間、最も好ましくは5時間、硬化を実行する。代替的に、例えば、ヒヨコ豆タンパク質系マイクロカプセルの場合、マイクロカプセルを、70℃の温度で1時間硬化させ、続いて温度を好ましくは80℃まで(約30分以内で)上昇させ、好ましくは80℃でさらに1時間、硬化させることが有益である。
【0231】
硬化のためにマイクロカプセルスラリーに物質を加えることがさらに有利である。この目的のために、タンニン型の天然の植物系なめし剤を使用し、これは、化学的観点から、特に熱帯および亜熱帯の双子葉植物、低木、および葉に見られるプロアントシアニジンである。テルペンは一般に、500~3000KDaの範囲の分子量を有する。好適なタンニンの好ましい例はコリガリン(corigallin)である。硬化のために、タンニンの水性調製物を、粗マイクロカプセルを含有する水性分散体に加える。典型的には、タンニンは、マイクロカプセルに基づいて、約0.1~約2wt.%、好ましくは約0.5~約1.5wt.%の量で加える。
【0232】
カプセル壁マトリックスの架橋を最適化するために、本発明によるプロセスの代替的変法において、必要に応じて、さらなるタンパク質および/またはさらなる多糖を、プロセスステップ(vi)においてマイクロカプセルスラリーに加えることができる。
【0233】
さらなるタンパク質および/またはさらなる多糖は、プロセスステップ(ii)について上で詳細にすでに定義されたタンパク質および/または多糖の群から選択される。タンパク質および/または多糖に関するものと同じ定義および好ましい実施形態および/または好ましい組み合わせは、さらなるタンパク質および/または多糖にも完全に有効である。
【0234】
さらなるタンパク質および/またはさらなる多糖は、プロセスステップ(ii)のタンパク質および/または多糖と同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、さらなるタンパク質および/またはさらなる多糖は、プロセスステップ(ii)のタンパク質および/または多糖とは異なる。
【0235】
さらなるタンパク質および/またはさらなる多糖の添加は、第1の架橋剤とのさらなる架橋をもたらし、カプセル壁ビルディングブロックの特に緻密かつ安定なネットワークの形成に寄与する。
【0236】
本発明によるプロセスの硬化ステップ(vi)の後に、マイクロカプセルスラリーを室温まで冷却するステップ、および必要に応じて、第2の架橋剤を加えることによるカプセル壁ビルディングブロックの第2の架橋ステップが続く。
【0237】
第2の架橋ステップのための第2の架橋剤として、本発明によるプロセスは、第1の架橋剤およびさらなる架橋剤との関係ですでに記載されている、トランスグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、二次植物化合物であって、ポリフェノール、特にタンニン、没食子酸、フェルラ酸、ヘスペリジン、シンナムアルデヒド、バニリン、カルバクロール群から選択される二次植物化合物からなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤、および前述の架橋剤の2つまたはそれ以上の混合物を使用する。第1およびさらなる架橋剤と同じ定義および好ましい実施形態は、第2の架橋剤にも完全に有効である。
【0238】
前述のさらなる架橋剤の中で特に好ましいのは、シンナムアルデヒド、タンニンおよび没食子酸である。
【0239】
本発明によるプロセスの好ましい変法では、第2の架橋剤は、プロセスステップ(i)における第1およびさらなる架橋剤とは異なる。
【0240】
第2の架橋剤の含有量は、非水相の総重量に基づいて、0.1~5wt.%の範囲、好ましくは0.15~2.5wt.%の範囲である。最も好ましくは、第2の架橋剤は、非水相の総重量に基づいて、0.5~1wt.%の範囲で内部非水相に使用される。
【0241】
第2の架橋剤は、エマルションまたは分散体に、撹拌しながら、例えば固体として、または水溶液の形態で加える。
【0242】
第2の架橋剤は、水溶液中に0.01~2mol/lの濃度で、好ましくは0.1~1.5mol/lの濃度で、最も好ましくは0.5~1.0mol/lの濃度で存在する。溶液は、7~14のpH値、好ましくは12のpH値を有する。
【0243】
さらにより好ましくは、プロセスステップ(vii)における第2の架橋は、エマルションまたは分散体を、20℃~50℃の範囲の温度まで、好ましくは30~40℃の範囲の温度まで徐々に加熱することによって実行する。本発明によるプロセスにおける第2の架橋は、約20分~10時間の持続時間、好ましくは30分~8時間の持続時間実行する。
【0244】
本発明によるプロセスのプロセスステップ(v)における第1の架橋および/またはプロセスステップ(vii)における第2の架橋を最適化するために、必要に応じて、エマルションまたは分散体のpH値を、使用されるタンパク質の等電点より高いまたは低いpH値に調整する。等電点より低いpH値では、タンパク質の正味の静電荷は正であり;等電点を超えると、タンパク質の正味の電荷は負になる。
【0245】
好ましくは、タンパク質の正電荷を得るために、pH値を、pH2.0~pH4.0の範囲のpH値に、より好ましくはpH2.5~pH3.5の範囲のpH値に、最も好ましくはpH3.0のpH値に調整する。タンパク質の負電荷を得るために、pH値を、pH8.0~pH12.0の範囲のpH値に、さらにより好ましくはpH9.0~pH10.0の範囲のpH値に、最も好ましくは9.5のpH値に調整する。
【0246】
この目的のために、有機酸、例えばギ酸もしくは酢酸、または塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液をエマルションまたは分散体に加えて、上記範囲のpH値を調整する。
【0247】
等電点より高いまたは低いpH値で第1の架橋および/または第2の架橋を実行すると、タンパク質の電荷が変更され、したがって静電相互作用がカプセル形成に正の影響を与えることができるという利点がある。加えて、タンパク質のこのような修飾は、それらの乳化能力に正の影響を与える。
【0248】
第1および第2の架橋ステップの間、形成中のマイクロカプセルを直ちに再び壊さないように、撹拌力を、例えば約800~1200rpmの撹拌速度に低下させる。
【0249】
マイクロカプセルの有用性の重要な基準は、コア材料のカプセル壁材料に対する重量比である。一方では、カプセルが可能な限り最高の利用価値を有することが可能になるように、コア材料の可能な限り高い割合が所望されるが、他方では、カプセルの安定性を確保するために、カプセルが依然として十分な割合のカプセル壁材料を有することが必要である。
【0250】
本発明によれば、マイクロカプセルが、50:50~90:10、好ましくは70:30~80:20であるコア材料のカプセル壁材料に対する重量比を有するように、マイクロカプセルを設計することが特に有利であることが見出された。
【0251】
完全な硬化後、本発明の方法に従って調製されたマイクロカプセルは、マイクロカプセル分散体またはマイクロカプセルスラリーとも呼ばれる水中分散体として存在する。この形態では、マイクロカプセルは原則としてすでに販売されている。
【0252】
このような懸濁液の分離またはクリーミングを防ぎ、したがって高い保存安定性を達成するために、懸濁液が12~1500mPasの粘度を有することが有利であることが証明された。懸濁液の所望の粘度を得るために、増粘剤を使用することが好ましい。
【0253】
増粘剤としては、好ましくは、キサンタンガム、ジウタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶性セルロース(MCC)またはグアーガムを使用する。
【0254】
貯蔵寿命を改善するために、必要に応じて1つまたは複数の防腐剤をマイクロカプセルスラリーに加えるか、またはマイクロカプセルスラリーを乾燥させる。
【0255】
防腐剤として、好ましくは、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、フェノキシエタノール系製品、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(2.5%)および2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(2.5%)の混合物からの製品などを使用する。
【0256】
代替的に、保存目的のために、マイクロカプセルスラリーを好ましくは乾燥させる。
【0257】
マイクロカプセルスラリーの乾燥については、凍結乾燥などのプロセスを考慮するが、参照するのは、例えば流動床における噴霧乾燥である。それにより、乾燥プロセスを支持し、このプロセス中にカプセルを保護する、約20~約50℃、好ましくは約40℃の温度で懸濁液にさらなる多糖、好ましくはデキストリン、特にマルトデキストリンを加えることが有利であることが証明された。それにより、使用される多糖の量は、分散体中のカプセル質量に基づいて、約50~約150wt.%、好ましくは約80~約120wt.%であり得る。
【0258】
噴霧乾燥自体は、従来の噴霧プラントで連続的またはバッチ式で行うことができ、入口温度は約170~約200℃、好ましくは約180~185℃であり、出口温度は約70~約80℃、好ましくは約72~78℃である。
【0259】
以下の実施形態に示されるように、多糖および/またはタンパク質と第1の架橋剤および必要に応じて第2の架橋剤との触媒架橋により、大型分子をカプセルシェルのネットワークに導入し、これによりカプセルシェルまたはマイクロカプセルスラリー中の天然成分の量を増加させ、したがってカプセルシェルの生分解性を増加させる。
【0260】
本発明によるプロセスは、主成分として、タンパク質および多糖およびポリイソシアネートを、特異的に触媒された機構を介して重合および/または架橋させ、したがって、生体適合性ポリマーに基づくバイオ系生分解性マイクロカプセルの調製が可能になることをさらに特徴とする。ポリイソシアネートがカプセルシェル材料の大部分を構成する最新従来技術のマイクロカプセルとは異なり、この場合では正反対である。ポリイソシアネートは、本発明によるマイクロカプセルの主材料としてはもはや機能せず、アミノ酸および上記の他の成分のための架橋剤として専ら機能する。
【0261】
したがって、本発明によるプロセスによって、ポリイソシアネートの一部を、タンパク質および/または多糖などの生分解性壁材料で置き換えることが可能になり、したがって、嗅覚特性などのマイクロカプセルの機能性および高い安定性、すなわち有効成分を保持する能力などの正の二次的特性の損失または低下を引き起こすことなく、ポリイソシアネート含有量を低下させる。したがって、マイクロカプセルは、一方では優れた機能性を有し、同時に容易に生分解される、本発明によるプロセスによって調製することができる。
【0262】
驚くべきことに、以下の実施形態に示すように、本発明によるプロセスを用いて、得られるマイクロカプセルの安定性の損失または低下を引き起こすことなく、カプセル化される有効成分の同一の量を維持しながら、最大25%、好ましくは最大50%、さらにより好ましくは最大75%減少した量の出発物質イソシアネートにより、または最新従来技術の他のマイクロカプセル出発物質により、マイクロカプセルを調製することができることが見出された。
【0263】
第2の態様では、本発明は、本発明のプロセスに従って調製されたマイクロカプセルまたはマイクロカプセルスラリーに関する。
【0264】
生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセルは、それらが
(a)少なくとも1つの疎水性有効成分を含むか、またはそれからなるコア;
(b)少なくとも1つの多糖および/または少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの第1の架橋剤架橋マトリックスまたはユニット;ならびに必要に応じて保護コロイドおよび/または必要に応じて第2の架橋剤を含むか、またはそれらからなるカプセルシェル
から構成されるかまたはそれらを含むことを特徴とする。
【0265】
本発明によるマイクロカプセルは、カプセルシェルまたはカプセル壁によって囲まれるかまたは包まれたコアを含む。本発明によるマイクロカプセルを調製するためのコア材料として、マイクロカプセルへのカプセル化に好適な任意の材料を使用することができる。好ましくは、疎水性、すなわち水不溶性または水不混和性の液体または固体、ならびに懸濁液は、カプセル化される材料であると考えられる。
【0266】
本明細書との関係において、コア材料は、上述のように、疎水性の有効成分、すなわち、特定の効果を有するか、または特定の反応を引き起こす物質、例えば、上記の薬物、殺虫剤、化粧品有効成分、食品有効成分などである。「疎水性有効成分」という用語は、カプセル化される有効成分が、マイクロカプセルの調製中に内部非水相にあり、外部水相と混合しないことを意味する。
【0267】
ポリイソシアネートによるタンパク質および/または多糖の官能基の重合および/または架橋によって、ポリ尿素およびポリウレタン、ならびにタンパク質と多糖の可溶性または不溶性複合体に基づく、交互かつ高密度の、したがって安定な架橋マトリックスまたは架橋ユニットの安定なカプセル壁がもたらされる。
【0268】
好ましい実施形態では、カプセルシェルは、第1および必要に応じて第2の架橋剤による少なくとも1つのタンパク質の重合および/もしくは架橋からの架橋マトリックスまたは架橋ユニット、ならびに/または第1および必要に応じて第2の架橋剤による、少なくとも1つの多糖の重合および/または架橋からの架橋マトリックスまたは架橋ユニットを含むか、またはそれらからなる。
【0269】
第1および必要に応じて第2の架橋剤による少なくとも1つのタンパク質の重合および/もしくは架橋からの架橋マトリックスまたは架橋ユニットは、主にポリ尿素系ネットワークであり、第1および必要に応じて第2の架橋剤による少なくとも1つの多糖の重合および/もしくは架橋からの架橋マトリックスまたは架橋ユニットは、主にポリウレタン系ネットワークならびにタンパク質および多糖の可溶性または不溶性複合体である。
【0270】
そのそれぞれの開示は、その全体が本明細書に組み込まれる、M.F.Sonnenschein、Introduction to Polyurethane Chemistry,Polyurethanes:Science,Technology,Markets,and Trends、第1版、2015年、John Wiley&Sons,105~126頁に記載のように、上記のポリ尿素形成および/またはポリウレタン形成に加えて、ポリイソシアネート、例えば、尿素、アロファネート、ビウレット、ウレチジオン、カルボジイミド、ウレトンイミンなどの反応性により、前述の架橋ステップ中に副生成物が形成される。これらの副生成物は、それぞれカプセルシェルまたはカプセル壁の一部である。
【0271】
いくつかの個別に定義された交互の架橋マトリックスまたは架橋ユニットに基づいてカプセル壁を構築することにより、優れた感覚性能を備えた特に安定なマイクロカプセルを調製すると同時に、シェル成分を大幅に削減することができる。
【0272】
上に列挙した主な成分に加えて、カプセルシェルは、必要に応じて保護コロイドおよび/または必要に応じてさらなる架橋剤を含んでもよい。
【0273】
第2の態様による好ましい変法では、本発明によるマイクロカプセルは、マイクロカプセルが外部水相に分散している分散体またはスラリーの形態である。分散体またはスラリー中のマイクロカプセルの重量パーセントは、約20~60wt.%、特に約25~50wt.%、より好ましくは約30~35wt.%である。
【0274】
本発明によるプロセスに従って調製されたマイクロカプセルは、それらの粒径分布のd(0.5)値を特徴とすることができる:カプセルの50%はこの値よりも大きく、カプセルの50%はこの値よりも小さい。
【0275】
粒径分布を決定するために、異なる組成を有する本発明によるマイクロカプセルを、動的プロセスの一部として水中に分散させ、次いでレーザー回折によって粒径を決定した。カプセルのサイズに応じて、レーザービームの屈折が異なるため、これをサイズに変換することができる。この目的のために、Mie理論を使用した。粒子測定には、MALVERN Mastersizer 3000を使用した。対応する計算は、Mie理論に基づいている。
【0276】
本発明によるマイクロカプセルは、18~50μmのd(0.5)値、好ましくは22~30μmのd(0.5)値で粒径分布を有することを特徴とする。
【0277】
本発明によるマイクロカプセルの対応する粒径分布は、図1a~1dに示されている:
図1a:SymcapB:20%イソシアネート含有量;ホエータンパク質/ペクチンおよびマルトデキストリン;本発明によるマイクロカプセル;
図1b:SymcapB:20%イソシアネート含有量。乳タンパク質およびマルトデキストリン、追加の架橋剤タンニン。本発明によるマイクロカプセル;
図1c:SymcapB:30%イソシアネート含有量;乳タンパク質、L-グルタミン、L-リジン、マルトデキストリン;本発明によるマイクロカプセル;
図1d:SymcapB:20%イソシアネート含有量;ゼラチンおよびマルトデキストリン;本発明によるマイクロカプセル;
図1e:粒径分布の比較:最新最新従来技術によるマイクロカプセル、すなわちSymcapG2.1:100%イソシアネート、ポリビニルアルコールおよび炭酸グアニジン;本発明によるマイクロカプセル、すなわちSymcapB:20%イソシアネート、乳タンパク質、タンニン。
【0278】
マイクロカプセルの直接比較は、本発明によるプロセスによって、最新従来技術のマイクロカプセルと同じ粒径分布を有するマイクロカプセルを達成することができることを示している。
【0279】
驚くべきことに、図2および3に示されるように、マイクロカプセル壁中のポリイソシアネート含有量の減少にもかかわらず、本発明のプロセスに従って調製されたタンパク質および/または多糖系マイクロカプセルは、最新従来技術によるマイクロカプセルに匹敵する安定性および意図せず漏出する香油の含有量を呈する。図2および図3に示されるように、追加の第2の架橋剤を用いて調製された本発明によるマイクロカプセルは、最新従来技術のマイクロカプセルと比較して、より良好ではないにしてもそれに匹敵する安定性を呈し、したがって遊離油のより低い含有量を呈しており、これは、特に臭気物質のより効率的なカプセル化に起因する可能性がある。
【0280】
特に、さらなる架橋剤の使用によって、特にイソシアネート含有量の減少とともに、安定性の有意な改善がもたらされ、したがって漏出する香油の割合が低下する(図2および3の試料7および8、試料3および4、5および6を参照のこと)。
【0281】
標的適用におけるマイクロカプセル、特にさらなる架橋剤を用いて調製されたマイクロカプセルの使用はまた、ポリイソシアネート含有量が減少しているにもかかわらず、最新従来技術のマイクロカプセルと比較して匹敵する安定性値を示す(図5を参照のこと)。
【0282】
本発明によるタンパク質および/または多糖系マイクロカプセルはまた、最新従来技術のカプセルと比較して感覚性能(芳香放出)における有意な改善を示し、これは安定な有効成分のカプセル化および関連する有効成分の損失が少ないことに起因する可能性がある。本発明によるマイクロカプセルは、図6に示されるように、機械的摩擦または圧力によってカプセルを開放することによって芳香が放出されるとき、有意に高い感覚強度を示す。
【0283】
架橋剤およびその濃度に依存する架橋度が増加するにつれて、マイクロカプセルの安定性も増加するが、同時にカプセルシェルを生分解する能力は低下する。図7は、架橋度の関数としてのマイクロカプセルの安定性、性能および生分解性の間の相関関係を一般に示す。例えば、マイクロカプセルが非常に安定である場合、擦ったり、圧力をかけたりすることなどで壊れて開いて有効成分を放出するマイクロカプセルの数が減少するため、感覚性能などの性能が低下する。マイクロカプセルが不安定すぎると、使用中または保存中にすでに破壊されており、機能することもない。
【0284】
本発明によるタンパク質系および/または多糖系のマイクロカプセルでは、以下の実施形態に示されるように、最新従来技術のポリ尿素/ポリウレタンマイクロカプセルと比較して、カプセル化されるマイクロカプセルの安定性または有効成分の使用量の損失または減少を引き起こすことなく、ポリイソシアネート含有量が最大75%減少する。最新従来技術のマイクロカプセルとは対照的に、イソシアネートはもはやカプセルシェルまたはカプセル壁の主材料として機能せず、カプセルシェルのタンパク質および/または多糖の架橋剤としてのみ機能する。したがって、本明細書に記載のマイクロカプセルの絶対ポリイソシアネート含有量は、全マイクロカプセルのわずか1.5%に相当する。
【0285】
一方ではカプセルシェルまたはカプセル壁におけるより低いポリイソシアネート含有量、および他方ではカプセル壁ビルディングブロックとしてのタンパク質および/または多糖の使用により、本発明によるマイクロカプセルは、最新従来技術のカプセルよりも生分解性に優れている。本発明によるマイクロカプセルは、以下の実施例に示されるように、著しく優れた生分解性を呈する。
【0286】
生分解性とは、微生物または菌類の存在下、温度、酸素、および水分の定義された条件下で、所定の時間後に、有機材料が水、二酸化炭素(CO)、およびバイオマスに分解される能力である。
【0287】
OECD 301Fによれば、壁材料の60%以上が28日後に分解された場合、マイクロカプセルは容易に生分解されると考えられる。
【0288】
本発明によるマイクロカプセルは、28日後に≧10%のOECD 301Fによる生分解性、好ましくは≧50%の生分解性、さらにより好ましくは≧70%の生分解性、最も好ましくは≧90%の生分解性を有する。
【0289】
出発成分の組み合わせにより、十分な安定性(使用時の機械的および拡散安定性)、高い感覚性能、および同時に優れた生分解性を有する本発明によるマイクロカプセルが可能になる。同時に、出発成分の組成により、架橋度を低く保つことができ、これによりマイクロカプセルの生分解性が大幅に向上する。したがって、感覚性能、高い架橋性、および生分解性の間の以前有効であった相関関係が崩れる可能性がある。
【0290】
マイクロカプセルの生分解性、優れた安定性および優れた放出能力、ならびに本発明によるマイクロカプセルを用いて広範囲の疎水性有効成分をカプセル化する可能性により、本発明によるタンパク質系および多糖系マイクロカプセルは、芳香付けおよび風味付けのための広範な用途に使用することができる。
【0291】
さらに、本発明によるマイクロカプセルは、個々の有効成分に対する制限がないように、最新従来技術による広範囲の芳香物質または香り物質、アルデヒド、カルボン酸、またはエステル官能基を有する芳香物質または香り物質をもカプセル化するために使用することができる万能カプセルである。
【0292】
それらの有利な特性、特に有効成分の安定性および標的化放出、ならびにそれらの生分解性により、本発明によるマイクロカプセルは、広範囲の用途に、特に、家庭用品、テキスタイルケア製品、洗濯用洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、香気促進剤、香気ローションおよび香気増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、農業製品、医薬品、または紙用の印刷コーティングなどにおける使用に好適である。
【0293】
したがって、別の態様では、本発明は、家庭用品、テキスタイルケア製品、洗濯用洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、香気促進剤、香気ローションおよび液状または固形の芳香増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、農業製品、医薬品、または紙用の印刷コーティングの調製のための、本発明による生分解性タンパク質および/もしくは多糖系マイクロカプセル、または本発明による生分解性タンパク質および/もしくは多糖系マイクロカプセルの分散体の使用に関する。本発明によるマイクロカプセルは、疎水性芳香物質または香り物質のカプセル化に特に好適であり、これは、種々の家庭用およびテキスタイルケア製品において使用することができる。
【0294】
最後に、本発明は、本発明による生分解性タンパク質および/もしくは多糖系マイクロカプセル、または本発明による生分解性タンパク質および/もしくは多糖系マイクロカプセルの分散体を含む家庭用品、テキスタイルケア製品、洗濯用洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、香気促進剤、香気ローションおよび芳香増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、農業製品、医薬品、または紙用の印刷コーティングなどに関する。
【0295】
前述の製品中のマイクロカプセルの割合は、製品の総重量に基づいて、0.05~15wt.%、好ましくは0.2~5wt.%である。
【0296】
実施形態の例
本発明による生分解性タンパク質および/または多糖系マイクロカプセルおよびそれらの有利な特性を、以下の実施例を参照してより詳細に説明する。
【実施例1】
【0297】
最新従来技術によるマイクロカプセルSYMCAP(登録商標)G2.1およびSYMCAP(登録商標)G3と比較した、本発明によるマイクロカプセルの遊離油含有量
【0298】
以下の安定性データは、香気促進剤または柔軟仕上げ剤などの市販の配合物における40℃での試験を指す。
【0299】
以下の実施例において、最新従来技術によるマイクロカプセルは、そのカプセル壁が専らポリ尿素ネットワークに基づくものとして選択した。使用したポリイソシアネートは、80:20の比率のヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートからなる混合物であった。保護コロイドとしてポリビニルアルコールを使用し、架橋には炭酸グアニジンを使用した。一般に、これらのカプセルの調製において触媒は使用せず、合成はpH値9で行った。
【0300】
本発明によるマイクロカプセルは、2つの異なるタンパク質で調製した。一方はゼラチン、他方はアミノ酸のグルタミンLおよびリジンLを追加的に加えた乳タンパク質によるものあった。両方の場合に使用された多糖は、マルトデキストリンDE8-10であった。ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの混合物を80:20の比率で使用した。触媒としてDABCOを使用した。さらなる架橋剤としてシンナムアルデヒドを使用した。
【0301】
すべての試料における香油の含有量は、得られたマイクロカプセルスラリーの35%であり、香油を植物油と1:1の比率で混合した。
【0302】
イソプロパノールにおける遊離油の量を測定する、すなわち、規定量のマイクロカプセルスラリーをイソプロパノールと混合し、30秒間撹拌し、そこから試料を採取する。採取した試料をGC-MSで測定する。結果は、カプセル化された油のどれだけがイソプロパノールに移行したか、または完全にカプセル化されていないかをそれぞれ示す。したがって、遊離油分は、プロセス自体が機能しているかどうか、つまり、香油が完全にカプセル化されているかどうか、および/または香油がイソプロパノールににじむのを防ぐのに十分な程度にカプセルシェルが安定しているかどうかの指標を提供する。この文脈では、1%未満の値は、カプセル化の成功および安定なカプセルシェルを示すと考えられる。
【0303】
本発明によるマイクロカプセルの遊離油含有量を、最新従来技術によるマイクロカプセルSYMCAP(登録商標)G2.1(100%)およびSYMCAP(登録商標)G3(75%)の遊離油含有量と比較した。
【0304】
最新従来技術によるマイクロカプセル、すなわち
試料1:SYMCAP(登録商標)G2.1:イソシアネート含有量:100%;ポリビニルアルコールおよび炭酸グアニジンで架橋。
試料2:SYMCAP(登録商標)G3:イソシアネート含有量:75%;ポリビニルアルコールおよび炭酸グアニジンで架橋。
【0305】
本発明によるマイクロカプセル:
試料3:SYMCAP B:イソシアネート含有量50%;ゼラチンおよびマルトデキストリン
試料4:SYMCAP B:ソシアネート含有量50%;ゼラチンおよびマルトデキストリン;追加の架橋剤没食子酸;
試料5:SYMCAP B:イソシアネート含有量30%;ゼラチンおよびマルトデキストリン
試料6:SYMCAP B:イソシアネート含有量30%;ゼラチンおよびマルトデキストリン;追加の架橋剤シンナムアルデヒド;
試料7:SYMCAP B:イソシアネート含有量50%;乳タンパク質+L-グルタミン+L-リジンおよびマルトデキストリン;
試料8:SYMCAP B:イソシアネート含有量50%;乳タンパク質+L-グルタミン+L-リジンおよびマルトデキストリン;追加の架橋剤シンナムアルデヒド;
試料9:SYMCAP B:イソシアネート含有量30%;乳タンパク質+L-グルタミン+L-リジンおよびマルトデキストリン;
試料10:SYMCAP B:イソシアネート含有量30%;乳タンパク質+L-グルタミン+L-リジンおよびマルトデキストリン;追加の架橋剤シンナムアルデヒド;
【0306】
50%のイソシアネート含有量で、すでに良好な結果が得られたので、イソシアネート含有量をさらに低減させ、第2の架橋によって最新従来技術によるマイクロカプセルに匹敵する結果を達成することを試みた。
【0307】
【表1】
【0308】
結果を図2および3に示す。
【0309】
上記の結果から分かるように、イソシアネート含有量が減少した本発明によるマイクロカプセルは、最新従来技術のマイクロカプセルと比較して、ほぼ匹敵する遊離油部分を有する。さらなる架橋剤で架橋することにより、マイクロカプセル壁の安定性をさらに高めることができ、遊離油含有量をさらに低減することができる。
【0310】
本発明による3つのマイクロカプセル試料はすべて、1%未満の遊離油含有量を有し、これはカプセル化の成功および安定なカプセルシェルの指標である。
【実施例2】
【0311】
追加の架橋剤(トランスグルタミナーゼ(TG))を含む場合と含まない場合の本発明によるマイクロカプセルの遊離油含有量
【0312】
マイクロカプセルは、3つの異なるタンパク質で調製された。第1にゼラチンを用い、第2に乳タンパク質を用い、さらにアミノ酸のL-グルタミンとL-リジンをさらに混合した乳タンパク質を用いた。両方の場合に使用された多糖は、マルトデキストリンDE8-10であった。触媒としてDABCOを使用した。マイクロカプセル試料は、別の架橋剤を使用しない場合と使用する場合でそれぞれ調製し;さらなる架橋剤として、トランスグルタミナーゼ(TG)を使用した。
【0313】
遊離油含有量は、実施例1に記載のように決定した。
【0314】
結果を図4に示す。
【実施例3】
【0315】
適用におけるマイクロカプセルの安定性
【0316】
前述のようにまたは類似の方法で調製された、本発明によるマイクロカプセルおよび最新従来技術によるマイクロカプセルの安定性を、標的適用において測定した。安定性試験は、代表的な柔軟剤(柔軟仕上げ剤)であってマイクロカプセルスラリーを1wt.%の量で組み込み、それぞれ室温および40℃で保存したものを使用して行った。規定時間間隔(24時間、1週間、2週間、4週間のエージング)の後、そこから試料を採取し、安定性を測定した。
【0317】
最新従来技術によるマイクロカプセル、すなわち
試料1:SYMCAP(登録商標)G2.1:イソシアネート含有量:100%;
試料2:SYMCAP(登録商標)G3:イソシアネート含有量:75%;
【0318】
本発明によるマイクロカプセル:
試料3:SymcapB:イソシアネート含有量50%、エンドウ豆タンパク質、デキストリン。
試料4:SymcapB:イソシアネート含有量50%;ゼラチン、マルトデキストリン
試料5:SymcapB:イソシアネート含有量50%、乳タンパク質、アミノ酸、架橋剤トランスグルタミナーゼ、マルトデキストリン
試料6:SymcapB:イソシアネート含有量30%;マルトデキストリン
試料7:SymcapB:イソシアネート含有量30%、ゼラチン、架橋剤タンニン、マルトデキストリン
【0319】
測定:カプセル内容物をヘッドスペースGC/MS(SPME-ファイバー:PDMS-DVB 65μmシース)により分析した。
【0320】
分析:
各香油化合物の面積の積算および安定性区間の計算
試料のすべてのカプセル化成分のΣGC面積 100%
カプセルの安定性=100%
定量標準の全香料成分のΣGC面積
【0321】
芳香成分の同定は、社内データベースならびに市販の芳香配合の分析データベースに基づいている。
【0322】
これにより、カプセル内に残っている香油のパーセンテージが得られる。例えば、98%という結果は、使用された香油の元の量の2%がもうカプセルにないことを意味する。
【0323】
結果を図5に示す。
【0324】
図5から分かるように、追加の架橋剤の使用は、ポリイソシアネート含有量の減少にもかかわらず、適用において同等の安定性値を示す。
【実施例4】
【0325】
本発明によるマイクロカプセルの官能評価
官能評価のために、本発明によるマイクロカプセルを、最新従来技術によるマイクロカプセル、すなわち、前述のように調製されたマイクロカプセルと比較した:
【0326】
最新従来技術によるマイクロカプセル、すなわち
試料1:SYMCAP(登録商標)G2.1:イソシアネート含有量:100%;
【0327】
本発明によるマイクロカプセル:
試料2:SYMCAP B:30%イソシアネート含有量;ゼラチンおよびマルトデキストリン;追加の架橋剤タンニン;
試料3:SYMCAP B:イソシアネート含有量20%;乳タンパク質およびマルトデキストリン;追加の架橋剤タンニン
香油:Tomcap
【0328】
官能評価は以下のように行った:記のマイクロカプセルを各々、0.4wt.%のスラリー濃度で柔軟仕上げ剤(香料Tomcap)に加え、次いで洗浄した。比較として、カプセルに17.5%の香油(+17.5%の植物油=総使用量35%)を充填し、0.4%のカプセルスラリーを注入すると、柔軟仕上げ剤中の純粋な香油の注入量が0.07%の香油になる。30gの柔軟仕上げ剤を、テリータオルを含む2kgの洗濯物量に使用した。洗濯指示は、以下の通りであった:テリータオル(綿布)を含む洗濯物量を洗濯機に入れ、柔軟仕上げ剤を柔軟仕上げ剤区画に入れた。洗濯プログラム「Express20;900rpm」を開始した。その後、テリータオルを室温で一晩乾燥させた。
【0329】
16人の試験者が、洗濯後のテリータオルの芳香強度を、柔軟仕上げ剤中の遊離香油の対応するレベルに対して、1(臭気なし)~9(非常に強い臭気)のスケールで一対比較試験により評価した。
【0330】
芳香放出は、3ステップで行った。第1のステップでは、未処理の布の匂いについて説明する。第2のステップでは、軽く揉んだ布の匂いについて説明しており、この目的のために、布を手の間で数回前後に動かすことにより、布にわずかな機械的応力を加え、カプセルを壊した。第3のステップでは、布を強く擦ってカプセルが壊れた後の匂いを説明する。各ステップの後、芳香強度を評価した。
【0331】
官能評価の結果を、表6に示す。
【0332】
本発明によるマイクロカプセルは、事実上、最新従来技術によるマイクロカプセルよりも強くないとしても同じ強さの臭気を有する。特に、さらなる架橋剤の使用によって、より優れた感覚性能がもたらされる。
【0333】
ここでの利点は、本発明によるマイクロカプセルの安定性によるものである。これらは、カプセルシェルに基づいてイソシアネートを30%に低減させても、匹敵する安定性を呈する。
【0334】
上記の有利な特性により、最新従来技術のマイクロカプセルと比較して、本発明によるマイクロカプセルを用いると、一貫した品質、およびしたがって感覚安定性も長期にわたって期待することができる。一方、最新従来技術によるマイクロカプセルは、本発明によるマイクロカプセルよりも分解性が低い。
【実施例5】
【0335】
本発明によるマイクロカプセルの生分解性
【0336】
OECD301Fによる生分解性を、以下のように決定した。圧力計呼吸(manometric respiration)(酸素消費量)によって測定された、接種材料が前適応されていない壁材料の分解性。
【0337】
【表2】
【0338】
イソシアネート(架橋剤)の量が減少すると、生分解性が増加する。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】