(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】天然スキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20230831BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20230831BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230831BHJP
A61Q 19/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/64
A61K8/58
A61Q19/10
A61Q19/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509784
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 US2021045680
(87)【国際公開番号】W WO2022036051
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522482290
【氏名又は名称】ローカス ソリューションズ アイピーシーオー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック,ケン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA081
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AB051
4C083AB331
4C083AC101
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC301
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD411
4C083AD471
4C083AD491
4C083AD571
4C083AD621
4C083BB21
4C083BB41
4C083BB44
4C083BB45
4C083BB46
4C083BB48
4C083BB51
4C083BB60
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC17
4C083CC18
4C083CC19
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD34
4C083DD35
4C083DD41
4C083DD45
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C083EE17
4C083EE18
(57)【要約】
本発明の局所化粧品組成物及び方法は、例えば、様々な皮膚状態を処置及び/又は予防することによって、皮膚の健康及び/又は外観を改善するのに用いることができる。本発明はまた、サンレスタンニングを増強する組成物及び方法も提供する。生体両親媒性分子は、活性成分、皮膚活性成分のための製剤エンハンサー及び/又は送達容器として用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の1つ以上の生体両親媒性分子(BAMs)と、皮膚科学的に許容される担体と、1つ以上の活性及び/又は不活性化粧品成分とを含む局所化粧品組成物。
【請求項2】
前記BAMsは、糖脂質、リポペプチド及び/又はリン脂質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記糖脂質は、マンノシルエリトリトール脂質(MEL)、ソホロ脂質(SLP)、トレハロース脂質(TL)及びラムノ脂質(RLP)から選択され、前記リポペプチドは、サーファクチン、イチュリン、リケニシン及びフェンギシンから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記糖脂質及びリポペプチドは、細菌、酵母又は真菌によって生成される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記リン脂質は、ホスファチジン酸、リゾ-ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロホスフェート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロホスホグリセロール、ビス(モノアシルグリセロ)ホスフェート(BMP)、ビス(ジアシルグリセロ)ホスフェート(BDP)、アシルホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、及びカルジオリピン、スフィンゴミエリン、プラスマローゲン、リゾリン脂質、
それらの水素化、部分水素化、及び非水和誘導体、
それらの類似体、ならびに
それらのPEG化誘導体から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記リン脂質は、カルジオリピン又はホスファチジルグリセロールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記リン脂質は、レシチンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記リン脂質は、卵黄、大豆、ベニバナ油、ヒマワリ油、キャノーラ油、コーン油、臓器肉、赤身肉、魚類、貝類、穀粒及び/又は乳から抽出される、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記糖脂質及び前記リン脂質を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記糖脂質は、MEL及び/又はSLPであり、前記リン脂質は、カルジオリピン及び/又はホスファチジルグリセロールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記皮膚科学的に許容される担体は、水、生理食塩水、アルコール、水性懸濁液、油性懸濁液、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中シリコーン型エマルジョン、シリコーン中水型エマルジョン、水中ワックス型エマルジョン、水-油-水トリプルナノエマルジョン及びマイクロエマルジョンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記活性及び/又は不活性化粧品添加剤は、有機溶媒、シリコーン、pH調整剤、キレート剤、ゲル化剤、タンパク質、ビタミン、皮膚軟化剤、油、ヒドロキシ酸、剥離剤、レチノイド、粘度調節剤、ポリマー、ミネラル、防虫剤、潤滑剤、防腐剤、植物性成分、清澄剤、保湿剤、非バイオサーファクタント、抗酸化剤、増粘剤、柔軟剤、日焼け止め剤、モイスチャライザー、染料、着色剤、香料、研磨剤、吸収剤、精油などの美容成分、皮膚感覚剤、収れん剤、抗ニキビ剤、固化防止剤、消泡剤、抗微生物剤、脱色剤、抗炎症剤、糖化最終産物(AGE)阻害剤、ステロイド、結合剤、生体添加剤、緩衝剤、充填剤、化学添加剤、変性剤、外用鎮痛剤、角質溶解薬、落屑剤、ケラチノサイト増殖促進剤、コラゲナーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、フィルム形成剤又は材料、乳白剤、噴射剤、還元剤、酵素、金属イオン封鎖剤、皮膚漂白及び美白剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚の鎮静及び/又は治癒剤、増粘剤、日焼け活性成分、ミネラル、ビタミン並びにそれらの誘導体から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、液体、クリーム、ゲル、軟膏、ワイプ、ローション、石鹸、シャンプー、コンディショナー、スプレー、エアロゾル、フォーム、セラム、パッチ、エリキシル剤又はマスクとして製剤化され、前記製剤はヒトの皮膚への直接適用に適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記BAMは、活性成分、皮膚活性物質のための製剤エンハンサー及び/又は送達容器である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記BAMsは、皮膚の質感を改善し、小じわやしわを減少させ、微生物及び/又はバイオフィルムを制御するための活性成分である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記BAMsは、乳化剤、安定剤、増粘剤、皮膚軟化剤、防腐剤、洗剤、粘度調整剤、消泡剤、発泡剤、及び/又はUV耐光剤として作用することによる製剤エンハンサーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記BAMsは、皮膚層を透過して皮膚活性物質を輸送することができる、及び/又は活性成分として作用し得るリポソームを形成する、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
対象の皮膚の健康及び/又は外観を改善する方法であって、1つ以上のBAMs、皮膚科学的に許容される担体、並びに1つ以上の活性及び/又は不活性化粧品成分を含む組成物を対象の皮膚に直接適用することを含む、方法。
【請求項19】
前記組成物は、1日1回又は2回適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、その中に吸収されるように前記皮膚に擦り込まれる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物を、少なくとも30秒間皮膚上に放置し、次いで皮膚から濯ぎ流す、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記BAMsは、糖脂質、リポペプチド及び/又はリン脂質である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記糖脂質は、マンノシルエリトリトール脂質(MEL)、ソホロ脂質(SLP)、トレハロース脂質(TL)及びラムノ脂質(RLP)から選択され、前記リポペプチドは、サーファクチン、イチュリン、リケニシン及びフェンギシンから選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記糖脂質及びリポペプチドは、細菌、酵母又は真菌によって生成される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記リン脂質は、ホスファチジン酸、リゾ-ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロホスフェート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロホスホグリセロール、ビス(モノアシルグリセロ)ホスフェート(BMP)、ビス(ジアシルグリセロ)ホスフェート(BDP)、アシルホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、及びカルジオリピン、スフィンゴミエリン、プラスマローゲン、リゾリン脂質、
それらの水素化、部分水素化、及び非水和誘導体、
それらの類似体、
ならびにそれらのPEG化誘導体から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記リン脂質は、カルジオリピン又はホスファチジルグリセロールである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記リン脂質は、レシチンである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記リン脂質は、卵黄、大豆、ベニバナ油、ヒマワリ油、キャノーラ油、コーン油、臓器肉、赤身肉、魚類、貝類、穀粒及び/又は乳から抽出される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は、糖脂質及びリン脂質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記糖脂質は、MEL及び/又はSLPであり、前記リン脂質は、カルジオリピン及び/又はホスファチジルグリセロールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
皮膚の健康及び/又は外観は、顔のライン、小じわ、しわ、目じりのしわ、くま、シミ、老化斑、妊娠線、たるみ、乾燥、皮膚バリア修復特性の弱化、及びそれらの組み合わせから選択される老化の兆候を低減することによって改善される、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
皮膚の健康及び/又は外観の改善は、皮膚の厚み、弾力性、弾性回復力、保湿、色調、質感、輝き、光沢、明るさ、透明度、輪郭、均一性、硬さ、張り、しなやかさ、柔らかさ、感受性、毛穴サイズ、水分損失の減少、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を増加及び/又は改善することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
皮膚の健康及び/又は外観の改善は、UV又は他の放射光を使用することなく皮膚に日焼けした外観を提供することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
皮膚の健康及び/又は外観の改善は、乾癬、湿疹、皮膚炎、日焼け、エストロゲン不均衡、色素沈着症、低色素沈着、変色、黄変、そばかす、皮膚萎縮、皮膚の吹き出物、皮膚脆弱性、乾燥、あかぎれ、たるみ、菲薄化、過形成、線維症、毛穴の広がり、セルライト形成、あざ、ニキビ形成、ニキビ痕、アポトーシス、細胞分化、細胞脱分化、腫瘍誘導又は腫瘍進行の予防、、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、クモ状静脈(毛細血管拡張症)、多毛症、酒さ、そう痒症、虫刺され、タコ、イボ、ウオノメ、光損傷、瘢痕、ケロイド、ループス、魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、慢性創傷、床擦れ、毛孔性角化症、皮脂性嚢胞、白斑、メリスマ、イボ、炎症性皮膚病、炎症後色素沈着症、角化症、皮膚疾患、乾燥症、扁平苔癬、結節性痒疹、微生物感染、体臭、脂漏性皮膚炎、フケ、汗疹及びアレルギー反応から選択される皮膚状態を処置及び/又は予防することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
対象の皮膚にサンレスタンニングを提供する方法であって、1つ以上のBAMs、皮膚科学的に許容される担体、及び日焼け活性成分を含む組成物を、対象の皮膚に直接適用することを含む、方法。
【請求項36】
前記日焼け活性成分は、DHA及び/又はエリトルロースである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物は、エアロゾルスプレー、スプレーゲル、ローション、クリーム、ムース、セラム、ゲル、粉末として製剤化され、及び/又はスポンジ、ウェットワイプ、タオル若しくはローラーボールに含浸される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物は、加圧スプレーシステムを用いてミストの形態で全身に適用される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2020年8月12日出願の米国仮出願第63/064,468号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の最大の器官である。それは、表皮、真皮及び真皮下層を含む層から構成される。表皮は、最外層であり、とりわけ、細胞及び組織からの水の損失を制御する。真皮は、表皮の下の層であり、血管、リンパ管、毛包及び汗腺を含む。真皮下層は、主に脂肪貯蔵に使用される。
【0003】
最外表皮は、基底膜を有する重層扁平上皮から構成される。それは、血管を含まず、真皮からの拡散によって栄養が与えられる。表皮を構成する主な種類の細胞は、ケラチノサイトであり、メラニン細胞及びランゲルハンス細胞も存在する。表皮はさらに、以下の層(strata)(最外層で始まる):角質層、透明層、顆粒層、有棘層、基底層に細分化することができる。細胞は、最内層の有糸分裂によって形成される。それらは、分化し、ケラチンで満たされるようになるにつれて、形状及び組成を変化させながら、層を上に移動する。それらは、最終的に角質に達して、脱落する。このプロセスは角質化と呼ばれ、約30日以内に行われる。
【0004】
皮膚、主に、表皮の環境への曝露及び保護バリアとしてのその目的のために、皮膚は、長期間にわたって損傷を受ける可能性がある。紫外線、環境汚染及び大気汚染、風、熱、低相対湿度レベル、家庭用界面活性剤及び他の化学物質との接触、研磨剤、喫煙、アルコール、薬物、食事、ストレス、機械的ストレス、重度の大気状態及び遺伝は、皮膚の外観及び健康に影響を及ぼす可能性があり、曝露及び/又は時間の増加は、皮膚損傷の増加につながることが多い。
【0005】
皮膚における老化及び他の生化学的変化、ホルモンの変動、疲労、ストレス、ニキビ、妊娠、日焼け、食事、疾患、損傷、血腫及び血液微小循環の障害等の他の因子もまた、皮膚の外観及び/又は健康に有害な影響を与える可能性がある。そのような皮膚への有害な影響のいくつかの例としては、乾燥、小じわやしわの発症、弾力性(elasticity)の喪失、皮膚の無駄(wasting)及びたるみ、弾力の喪失、皮膚の菲薄化、顔色の均一性の喪失、くすんだ顔色、色素沈着過剰、老人性黒子、老化斑(age spots)、赤い斑点、日焼け跡、粗い表面の質感、色素沈着、瘢痕化、及び剥離(peeling)が挙げられる。
【0006】
これらの老化に関連する皮膚状態、他の慢性状態に対抗するために開発された、いくつかの局所適用スキンケア製品及び皮膚科治療がある。しかしながら、これらの製品の有効性には一貫性がなく、不明瞭であることが多い。そのような製品の1つは、ビタミン-A(レチノール)及びレチノイドと呼ばれるビタミン-A誘導体であり、皮膚の最上層を緩め、細胞のターンオーバーを促進することによって作用すると考えられている局所治療である。さらに、フリーラジカルを中和するビタミンC(アスコルビン酸)の局所適用を用いて、皮膚を治癒し、小じわやしわの発症を低減する。ビタミンKは、破損した血管、クモ状静脈瘤、打撲傷、目の下のクマ、及び赤い発疹の治癒の補助として、局所的に適用される。アルファ-ヒドロキシ酸(AHA)及びベータ-ヒドロキシ酸(BHA)は皮膚の活力を改善し、ニキビを予防するのに役立つ局所用剥離剤(topical exfoliants)である。上皮成長因子(EGF)の局所適用は、皮膚機能を改善し、全体的により若々しい外観を作り出すことができる。
【0007】
ニキビ、前癌性病変、瘢痕、色素沈着障害、湿疹、乾癬、及び脂漏性皮膚炎等の特定の慢性的な皮膚の問題は、多くの場合、経口薬、過酷な化学的剥離、及び局所軟膏等の処置を必要とするが、これらの処置の多くは、皮膚の灼熱感及び剥離、脱毛、胎児への害及び先天性欠損(妊娠中に利用される場合)等の望ましくない副作用を引き起こし得る成分を含む。
【0008】
皮膚を保護しながら若々しい外観を維持するための他の解決策は、太陽又は他のUV放射源への曝露を回避することによるものである。そのような曝露は、皮膚に有害な影響を及ぼす可能性があり、実際には、日焼け、皮膚の水疱形成、早期皮膚老化又は皮膚癌を引き起こす可能性がある。セルフタンニング又はサンレスタンニング組成物は、安全な代替物を提供し、各自、所望の日焼けした外観を得ることを可能にする。
【0009】
サンレスタンニング剤の中で最も顕著なものは、ジヒドロキシアセトン(「DHA」が1,3-ジヒドロキシ-2-プロパノンとしても化学的に知られている)である。DHAは、適用後、そのヒドロキシル基と、ヒドロ脂質ペリクル及び皮膚の角質層の第1の層に自然に存在するアミノ酸及びペプチドのアミノ基との間の相互作用を介してその効果を発揮すると考えられる。これらのいわゆるメイラード反応は、皮膚における褐色色素の形成をもたらし、それによって、自然に得られる日焼けと同様の外観を与えると考えられる。有害な放射光への曝露を低減する利点は、サンレスタンニング溶液の使用によって達成されるが、多くの製品はストリーキング(streaking)なしに均一に適用することが困難であり、不適切な投与のために皮膚に望ましくないオレンジ色の着色を引き起こし、及び/又は不快な臭いを与える。これらの局所用組成物は、有害な又は皮膚刺激性の合成添加剤を含有することもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】"International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook," 10th Edition (2004), published by the Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association (CTFA), at pp. 2177-2299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
皮膚の健康は、長い健康的な生活にとって極めて重要である。加えて、皮膚の健康は、多くの場合、美しさと若さの外的表現である。様々な皮膚状態を治療及び/又は予防するため、あるいは皮膚の健康及び/又は外観を向上させるための様々な製品及び治療選択肢が存在する。しかしながら、これらの治療の多くは、負の副作用を有する厳しい処方又は手段を利用する。他のより穏やかな選択肢は、単にすべての人に効果的ではない、又は店頭で効果的に使用することが困難である。従って、改善された、安全かつ有効な化粧品組成物が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、多目的生体両親媒性分子(BAMs:biological amphiphilic molecules)を含む局所化粧品組成物を提供し、BAMsは、皮膚の健康及び/又は外観を改善するための活性成分、活性成分のための製剤エンハンサー(formulation enhancers)及び/又は送達剤として作用する。さらに、本発明は、局所用組成物を使用して、慢性及び/又は老化に関連する皮膚状態を含む1つ以上の皮膚状態を処置及び/又は予防するための方法を提供する。利点を挙げると、本発明の局所用組成物及び方法は、環境に優しく、無毒であり、費用効率が高い。
【0013】
特定の実施形態において、本発明の局所化粧品組成物は、皮膚の外観及び/又は健康に対して1つ以上の直接的又は間接的なプラスの影響を有する1つ以上のBAMsを含む。いくつかの実施形態において、局所組成物は、皮膚科学的に許容される担体、及び/又は1つ以上の活性及び/又は不活性化粧品成分、例えば、ビタミン、植物、染料(dyes)、香料、日焼け止め剤、剥離剤(exfoliants)、精油等をさらに含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、BAMは、例えば、糖脂質及びリポペプチド等のバイオサーファクタントを含む。いくつかの実施形態において、BAMsは、リン脂質及び/又はリン脂質混合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、糖脂質及びリン脂質等の2つ以上のタイプのBAMsの混合物を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、BAMsは、生体細胞、例えば、微生物によって生成される。いくつかの実施形態において、BAMsは、例えば、植物又は植物油等の生体材料から抽出される。いくつかの実施形態において、BAMは、合成的に生成される。
【0016】
本発明の組成物のBAMsは、組成物中に含まれる場合、1つ以上の目的を果たすことができる。例えば、BAMsは、活性成分、活性成分のための製剤エンハンサー及び/又は送達容器(delivery vessels)とすることができる。
【0017】
一実施形態において、BAMsは、例えば、しわ、たるみ、乾燥、粗さ、剥離、湿疹、乾癬、皮膚炎、老化斑、色素沈着過剰、瘢痕、ケロイド、妊娠線、脂漏性皮膚炎、ニキビ、体臭等の皮膚状態を処置又は予防することによって、皮膚の健康及び/又は外観を改善するための活性成分として作用し得る。例示的な実施形態において、BAMは、表皮、例えば、角質層又は白層の表面を変化させて、質感や強度を改善し、皮脂生成を促進及び/又は阻害し、水分保持を促進し、小じわやしわの発症を低減し、及び/又は顔色を明るくすることができる。他の例示的な実施形態において、BAMは、抗菌特性及び/又は抗バイオフィルム特性を有することができる。
【0018】
一実施形態において、BAMsは、例えば、ローション、セラム、及びクリームとして製剤化される場合、局所組成物のための製剤エンハンサーとして作用し得る。例示的な実施形態において、BAMは、乳化剤(O/W及びW/O)、安定剤、増粘剤、皮膚軟化剤、防腐剤、洗剤、粘度調整剤、消泡剤、発泡剤、及び/又はUV光防護剤として作用し得、染料と活性成分の劣化を防止する。従って、いくつかの実施形態において、BAMsは、化粧品及びスキンケア製剤の安定性、貯蔵寿命及び外観を改善するために有用であり得る。
【0019】
一実施形態において、BAMsは、送達容器及び/又は皮膚浸透エンハンサーとしての役割を果たすことができ、それは表皮を通る、他のBAMsを含む皮膚活性成分の通過を促進することができ、及び/又はそのような活性成分を皮膚の所望の層に送達することができる。例示的な実施形態において、BAMsは、脂質小胞、又はリポソームを形成することができ、その中に任意の活性成分が組み込まれる。リポソームは、親水性及び/又は親油性活性成分、例えば、抗酸化剤、ビタミン、抗菌剤、油、抗炎症剤、血液循環促進剤、美白剤、皮膚コンディショナー、老化防止剤、モイスチャライザー、ホルモン、着色剤、及びタンパク質を含有してもよい。
【0020】
特定の実施形態において、組成物は、油中水型もしくは水中油型エマルジョン又は水性セラム等の皮膚科学的に許容される担体を含む。
【0021】
局所用組成物は、例えば、懸濁液、エマルジョン、ナノエマルジョン、ヒドロゲル、多相溶液、リポソーム分散液、ローション、クリーム、ゲル、フォーム、軟膏、ペースト、スプレー、コンディショナー、シャンプー、マスク、クレンザー、ミセル水、トニック、メーキャップ(例えば、リップスティック、ファンデーション、ブロンザー、ルージュ、アイシャドー)及び/又はアフターシェーブとして製剤化することができる。
【0022】
好ましい実施形態において、皮膚の健康及び/又は外観を改善するための方法が提供され、本発明の実施形態による局所化粧品組成物は、それを必要とする対象の皮膚の領域に直接適用される。
【0023】
いくつかの実施形態において、組成物を「適用する」ことは、所望の審美的、予防的、治療的又は他の美容的利益を達成するために、有効量の組成物を、対象の皮膚と直接接触させること、及び、好ましくは、組成物を皮膚に一定の時間、例えば、約20秒~1時間放置することを含むことができる。組成物は、指を用いて、又は器具もしくは装具(例えば、パッド、綿球、ブラシ、布、アプリケーターペン、スプレーアプリケーター等)を用いて適用することができる。
【0024】
特定の実施形態において、組成物がその中に吸収されるように、組成物は皮膚に擦り込まれる。いくつかの実施形態において、組成物を一定時間皮膚に適用し、次いで、例えば水を用いて皮膚から濯ぎ流すことができる。
【0025】
特定の実施形態において、局所化粧品組成物は、例えば、1日おき、1日1回、又は1日2回適用される。いくつかの実施形態において、局所組成物は、所望の効果を達成及び/又は維持するために、1日おき、1日1回、又は1日2回、不定期、例えば、少なくとも1、2、3週間、又はそれ以上で、適用される。
【0026】
いくつかの実施形態において、本方法は、皮膚の老化の兆候を改善するために、例えば、小じわやしわの外観を減少させるために、年齢及び日光斑の外観を減少させるために、顔色のバランスをとるために、皮膚の色調を明るくするために、質感を滑らかにするために、及び/又は皮膚の若々しい外観を回復するために使用することができる。
【0027】
一実施形態において、本方法は、例えば、サンレスタンニング組成物によって皮膚の色素沈着を増加させるために使用することができる。言い換えれば、組成物は、UV又は他の放射光を使用することなく、皮膚に日焼けした外観を提供するために使用することができる。従って、本発明の方法は、日光浴に対する対象の要望を低下させながら、日焼け及び日光起因の皮膚癌のリスクを低下させるために使用することができる。
【0028】
加えて、本方法は、例えば、ニキビ、シミ(blemishes)、酒さ、光損傷、しわ、たるみ/緩み、乾燥症、老化斑、瘢痕、妊娠線(stretch marks)、皮膚炎、セルライト、ケロイド、ループス、乾癬、魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、慢性創傷、床擦れ、毛孔性角化症、皮脂性嚢胞、白斑、メリスマ、イボ(warts)、炎症性皮膚病、炎症後色素沈着症、角化症、皮膚疾患、乾癬、掻痒、扁平苔癬、結節性痒疹、微生物感染、体臭、脂漏性皮膚炎、熱傷、日焼け、フケ、及び汗疹を含む、皮膚状態を処置及び/又は予防するために使用される。
【0029】
いくつかの実施形態において、本方法は、皮膚上のメイク、油分及び他の不純物を除去及び/又は溶解するために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、多目的生体両親媒性分子(BAMs)を含む局所化粧品製剤を提供し、BAMsは、皮膚の健康及び/又は外観を改善するための活性成分、活性成分のための製剤エンハンサー及び/又は送達剤として作用する。さらに、本発明は、局所用組成物を使用して、慢性及び/又は老化に関連する皮膚状態を含む1つ以上の皮膚状態を処置及び/又は予防するための方法を提供する。利点を挙げると、本発明の局所用組成物及び方法は、環境に優しく、無毒であり、費用効率が高い。
【0031】
選択された定義
本明細書で使用される場合、「活性成分(active ingredients)」、「活性化粧品成分(active cosmetic ingredient)」及び「皮膚活性物質(skin actives)」成分は、生物学的に活性である物質を含み、皮膚において所望の治療効果及び/又は美容効果を引き起こすことを意味する。これは、例えば、活性成分を担持、送達及び/又は安定化することを意味するが、所望の治療効果及び/又は美容効果を引き起こさない賦形剤及び/又はビヒクルを含む不活性成分とは対照的である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「皮膚状態」という用語には、表皮、真皮(結合組織、皮脂腺及び毛包を含む)、及び/又は皮下組織(真皮下層)に影響を及ぼすヒト及び動物の状態、障害、又は疾患が包含される。特定の実施形態において、本明細書に記載した組成物、生成物及び方法を用いて、処置及び/又は予防できる皮膚状態としては、これらに限定されないが、創傷(例えば、火傷を含む)、瘢痕、ニキビ、シミ、酒さ、毛包炎、癌腫、黒色腫、全身性皮膚炎、口周囲炎、蜂巣炎、吹出物、光損傷、日焼け、皮膚老化(例えば、しわや乾燥)、斑点、乾癬、魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、発疹(これらに限定されないが、紅斑、黄斑、丘疹及び/又は水疱性状態を含む)、慢性創傷、床擦れ、毛孔性角化症、皮脂性嚢胞、白斑、メリスマ、イボ、炎症性皮膚病、アロディニア、アトピー性皮膚炎、毛細血管拡張症、炎症後色素沈着症、皮膚疾患、湿疹、心因性掻痒症、扁平苔癬、結節性掻痒症、微生物感染、体臭、頭皮の状態、及び汗疹が含まれる。皮膚状態の症状としては、例えば、皮膚の刺激/感受性、シミ及び他の吹き出物様症状、色素沈着又は喪失、紅潮、炎症、しわ、乾燥、たるみ、肥厚、鱗屑、瘢痕、フレーキング、発疹、蕁麻疹、水疱、潰瘍、剥離、脱毛、ならびに皮膚の健康、機能及び外観における他の変化を挙げることができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物、特に、美容、処方箋不要の医療、医薬医療処置及び予防ケアを含む処置を受ける哺乳動物を指す。本発明の文脈における好ましい対象はヒトである。対象は、赤ん坊、乳児、幼児、プレティーン、ティーンエイジャー及び成人を含む、任意の年齢又は発達段階である。対象は、任意の性別とすることができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「局所」は、皮膚の外部への局所適用、又は皮膚適用に適していることを意味する。言い換えれば、局所組成物は、経口、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、皮下、舌下、頬側、直腸、膣、吸入、眼又は耳経路を介した対象への適用を意図していない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「皮膚科学的に許容される」、「化粧品として許容される」及び「局所的に許容される」は、区別なく使用され、特定の成分が使用されるレベルで外皮(例えば、皮膚)に適用するために安全かつ非毒性であることを意味することが意図される。一実施形態において、組成物の成分は、一般に安全とみなされる(GRAS)と認識される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「有効量」及び「有効用量」という用語は、何かの量(例えば、化合物、組成物、時間)を指すために使用され、所望の結果(例えば、皮膚の健康及び/又は外観の改善)を引き起こすことができる。実際の量は、所望の結果、処置される状態の重篤度、対象の大きさ、年齢、及び健康、ならびに投与経路を含むが、これらに限定されない多くの因子に応じて変化する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、状態又は障害の程度、徴候又は症状を、任意の程度に根絶、軽減、改善又は反転させることを指し、必須ではないが、状態又は障害の完全な治癒を含む。処置は、障害の治癒、改善、又は部分的な改善である。
【0038】
本明細書で使用される場合、状態又は障害を「予防する」とは、状態又は障害の特定の徴候又は症状の発症を回避、遅延、予防又は最小限にすることを指す。予防は、絶対的又は完了すべきものであるが、必須ではなく、すなわち、徴候又は症状が後に発症し得ることを意味する。予防には、そのような状態又は障害の発症の重症度を低下させること、及び/はその状態又は障害が、より重篤な状態又は障害への進行を阻害することが含まれ得る。例えば、一実施形態において、色素沈着過剰を予防することは、最終的に発症する色素沈着過剰領域の暗さ又は大きさを低減する等、皮膚色素沈着過剰に関連する1つ以上の望ましくない特徴を回避、遅延、阻止又は最小限にすることを指すことができる。他の例として、一実施形態において、ニキビを予防することは、ニキビに関連する1つ以上の望ましくない特徴を回避、遅延、阻止又は最小限にすることを指すことができ、例えば、最終的に発症するコメドンの数、暗さ、及び/又は大きさを低減させること、最終的に発症するニキビの重篤度を低減させること、及び/又はP. acnesの増殖、ニキビ跡の発症、及びニキビの他の症状を、完全に、もしくはほぼ完全に防止することを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「微生物ベースの組成物」は、微生物又は他の細胞培養物の増殖の結果として生成された成分を含む組成物を意味する。このように、微生物ベースの組成物は、微生物自体及び/又は微生物増殖副生成物(例えば、バイオサーファクタント、溶媒及び/又は酵素)を含む。細胞は、栄養成長期、胞子形態、又は両者の混合物であってもよい。細胞は、プランクトンであっても、バイオフィルム形態であっても、又は両方の混合物であってもよい。細胞は、無傷であっても溶解されていてもよい。細胞は、例えば、組成物1ミリリットル当たり、増殖したブロスと共に、例えば、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011以上の細胞で存在し得る。一実施形態において、微生物ベースの組成物は、細胞が増殖し、細胞が除去されたブロスのみを含んでいてもよい。増殖副生成物は、ブロス中に存在してもよく、例えば、代謝物、細胞膜成分、発現タンパク質及び/又は他の細胞成分を含み得る。
【0040】
本発明は、さらに、所望の結果を得るために、実際適用される生成物である「微生物ベースの生成物」を提供する。微生物ベースの生成物は、微生物培養プロセスから採取された単純な微生物ベースの組成物である。あるいは、微生物ベースの生成物は、添加された成分をさらに含む場合もある。追加された成分としては、例えば、安定剤、緩衝剤、水や塩分溶液等の適切な担体、その他適切な担体、さらなる微生物増殖をサポートする添加栄養素、適用される環境において微生物及び/又は組成物の追跡を促す非栄養素増殖因子及び/又は薬剤が挙げられる。微生物ベースの生成物はまた、微生物ベースの組成物の混合物も含んでいてもよい。微生物ベースの生成物はまた、これらに限定されないが、ろ過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等、何らかの方法で、処理された微生物ベースの組成物の1つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0041】
「代謝産物」とは、代謝によって生成される任意の物質又は特定の代謝プロセスに関与するのに必要な物質を指す。代謝産物は、代謝の出発材料、中間体又は最終生成物である有機化合物とすることができる。代謝産物の例としては、酵素、酸、溶媒、アルコール、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、バイオポリマー及びバイオサーファクタントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「単離された」又は「精製された」化合物、例えば、ポリヌクレオチドやポリペプチドは、自然の状態で結合した、及び/又は生成された細胞材料、遺伝子、遺伝子配列、アミノ酸やアミノ酸配列等の他の化合物を実質的に含まない。微生物株の文脈における「単離された」は、自然の状態で存在する及び/又は培養された環境から株が取り出されたことを意味する。このように、単離された株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、又は芽胞(又は株のその他の形態)として存在する。
【0043】
特定の実施形態において、精製化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%である。好ましくは、調製物は、目的の化合物の少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、最も好ましくは、少なくとも99重量%である。例えば、精製化合物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、98重量%、99重量%又は100重量%(w/w)の所望の化合物である。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析等、適切な標準的な方法により測定される。
【0044】
ここに示す範囲は、範囲に含まれる値の全てについて簡潔にしたものである。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20からなる群からの任意の数字、数字の組み合わせ、又は下位範囲を含むものとして、また、同じく、上述した整数間の途中の小数点の値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9も含むものと考えられる。下位範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子下位範囲」が、具体的に考えられる。例えば、1~50の例示範囲の入れ子の下位範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30及び1~40、他方向に50~40、50~30、50~20及び50~10である。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「減少」とはマイナスの変更を指し、「増加」とはプラスの変更を指し、それぞれ、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%又は100%である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「参照」とは、標準又は対照条件を指す。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「界面活性剤」とは、2つの液体間、液体と気体間及び液体と固体間の表面張力(又は界面張力)を低下させる化合物を指す。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び分散剤として作用する。「バイオサーファクタント」は、生存生物により生成された界面活性剤である。
【0048】
移行句「含む(comprising)」は、「有する(including)」、「含有する(containing)」と同義であり、包括的で、制限がなく、追加の、列挙されていない、要素や方法ステップを排除しない。対照的に、移行句「からなる」は、請求項で指定していない要素、ステップや成分を排除する。移行句「から実質的になる」は、請求項の範囲を、指定した材料やステップ、そして請求した発明の、「基本かつ新規な特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。移行句「含む」の使用は、列挙した要素「からなる」及び/又は「から実質的になる」実施形態が想定される。
【0049】
特に断りのない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で用いる「又は」という用語は、包括的と考えられる。特に断りのない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で用いる「1つの(a、an)」及び「前記(the)」は単数又は複数と考えられる。
【0050】
特に断りのない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で用いる「約」は、通常の許容範囲と考えられ、例えば、平均の2標準偏差以内である。「約」は、表示値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と考えられる。
【0051】
本明細書の可変要素の定義において、化学基の列挙には、単一の基又は列挙した基の組み合わせとしての可変要素の定義が含まれる。本明細書の可変要素や態様についての実施形態の列挙には、単一の実施形態や他の実施形態やその一部との組み合わせとしての実施形態が含まれる。
【0052】
本明細書に示した組成物や方法は、本明細書に示した他の組成物や方法の1つ以上と組み合わせることができる。
【0053】
本発明の他の特徴や利点は、以下の好ましい実施形態の説明及び請求項から明らかになるであろう。本明細書で引用した参考文献は全て参照として援用される。
【0054】
局所化粧品組成物
本発明は、スキンケア組成物及びその使用方法を提供する。特に、本発明は、例えば、皮膚状態を処置及び/又は予防することによって、皮膚の健康及び/又は外観を改善することができるスキンケア及び化粧品を提供する。特定の実施形態において、組成物は、化粧品として向上する品質を皮膚の外観に付与するために使用することができる。
【0055】
特定の実施形態において、本発明の局所化粧品組成物は、皮膚の外観及び/又は健康に対して1つ以上の直接的又は間接的なプラスの影響を有する1つ以上のBAMを含む。いくつかの実施形態において、局所組成物は、皮膚科学的に許容される担体、及び1つ以上の活性又は不活性化粧品成分、例えば、ビタミン、モイスチャライザー、染料、香料、日焼け止め剤、セルフタンニング色素(self-tanning pigments)、剥離剤、精油、植物抽出物等をさらに含むことができる。
【0056】
好ましい実施形態において、多目的生体両親媒性分子(BAM)を含む局所化粧品組成物が提供され、BAMは、活性成分、活性化粧品成分のための製剤エンハンサー及び/又は送達剤として役立つ。
【0057】
いくつかの実施形態において、BAMは、例えば、糖脂質及びリポペプチド等のバイオサーファクタントを含む。いくつかの実施形態において、BAMは、リン脂質及び/又はリン脂質混合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、糖脂質及びリン脂質等の2つ以上のタイプのBAMの混合物を含む。
【0058】
本発明に従って有用な追加のBAMには、マンノプロテイン、ベータ-グルカン、ならびに生体乳化特性及び表面/界面張力低減特性を有する他の代謝物が含まれる。
【0059】
好ましい実施形態において、BAMsは、生体細胞、例えば、微生物によって生成される。いくつかの実施形態において、微生物BAMsは、粗製形態で利用され、分子は、微生物が培養されるブロス中に存在し、精製することなくそこから収集される。粗製形態は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%w/vのBAMをブロス中に含むことができる。いくつかの実施形態において、BAMは、培養生成物から精製されている。
【0060】
いくつかの実施形態において、BAMsは、例えば、植物や植物油等の生体材料から抽出される。BAMは、抽出後にさらに精製することができる。いくつかの実施形態において、BAMsは、合成的に生成されてもよい。
【0061】
バイオサーファクタント
微生物により生成される界面活性剤、すなわち、バイオサーファクタントは、極性(親水性)部分と非極性(疎水性)基の2つの部分からなる両親媒性物質である。バイオサーファクタントは、例えば、糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び/又は多糖-タンパク質-脂肪酸複合体等の高分子量ポリマーを含むことができる。
【0062】
それらの両親媒性構造により、バイオサーファクタントは、液体、固体及び気体の分子間の表面張力及び界面張力を低減する。さらに、バイオサーファクタントは、界面に蓄積し、溶液中で凝集したミセル構造の形成をもたらす。バイオサーファクタントが孔を形成し、生体膜を不安定化する能力は、例えば、抗菌剤及び抗真菌剤としての使用を可能にする。さらに、それらは、種々の表面への微生物の密着を阻害し、バイオフィルムの形成を防止し、強力な乳化特性及び解乳化特性を有することができる。
【0063】
本方法によるバイオサーファクタントは、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、セロビオース脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質及びトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アンスロファクチン及びリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体等の高分子量ポリマーから選択することができる。
【0064】
特定の実施形態において、BAMは、マンノシルエリスリトール脂質(MEL)、ソホロ脂質(SLP)、トレハロース脂質(TL)、セロビオース脂質及び/又はラムノ脂質(RLP)等の糖脂質である。特定の実施形態において、BAMは、サーファクチン、イチュリン、リケニシン、アンスロファクチン及び/又はフェンジシン等のリポペプチドである。一実施形態において、組成物がこれらのバイオサーファクタントのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0065】
一実施形態において、バイオサーファクタントは、糖脂質であり、これは一般に、スフィンゴ脂質又はアセチル化又はアルキル化され得るグリセロール基に付加した単糖又はオリゴ糖基と、1つ以上の脂肪酸とを含む。
【0066】
一実施形態において、糖脂質は、MELである。MELは、親水性部分として、4-O-B-D-マンノピラノシル-メソ-エリスリトール又は1-O-B-D-マンノピラノシル-メソ-エリスリトールを、疎水性部分として、脂肪酸基及び/又はアセチル基を含む。ヒドロキシルの1つ又は2つ、典型的には、マンノース残基のC4及び/又はC6で、アセチル化することができる。さらに、鎖長に8~12個以上の炭素の1~3個のエステル化脂肪酸が存在し得る。
【0067】
MEL及びMEL様物質(例えば、マンノースベースの物質)は、主にPseudozyma spp.及びUstilago spp.によって生成され、各種により生成されるMEL構造間に大きな違いがある。MELと同様の特性を有する特定のマンノースベースの物質もまた、Meyerozyma guilliermondii酵母によって生成することができる。
【0068】
MELは、非毒性であり、広い温度及びpH範囲で安定である。さらに、MELは、追加の防腐剤なく使用することができる。
【0069】
MELは、5つの主要なカテゴリー、すなわち、MEL A、MEL B、MEL D、トリアセチル化MEL A、及びトリアセチル化MELB/Cに該当する93を超える異なる組合せで生成することができる。これらの分子は、合成か自然に、変性することができる。例えば、MELは、異なる炭素長鎖又は異なる数のアセチル基及び/又は脂肪酸基を含むことができる。
【0070】
本発明によるMEL分子及び/又はその変性形態は、例えば、トリアシル化、ジアシル化、モノアシル化、トリアセチル化、ジアセチル化、モノアセチル化及び非アセチル化MEL、同様に、その立体異性体及び/又は構成異性体を含むことができる。
【0071】
類似の構造及び類似の特性を示す他のマンノースベースの物質/MEL様物質、例えば、マンノシル-マンニトール脂質(MML)、マンノシル-アラビトール脂質(MAL)、及び/又はマンノシル-リビトール脂質(MRL)も、本発明に従って使用することができる。
【0072】
利点を挙げると、MELは、化粧品組成物中の活性成分又は不活性成分としていくつかの利点を有し得る。これらには、例えば、皮膚の炎症を低減すること、SDS等の合成界面活性剤の使用によって引き起こされる細胞損傷を防止すること、毛球細胞及び毛髪成長を刺激すること、損傷した毛髪を修復及び/又は強化すること、線維芽細胞の生存率を増加させること、及び/又は老化斑中のメラニン含有量を減少させることが含まれ得る。
【0073】
好ましい実施形態において、局所化粧品組成物中のMEL(又はMEL様物質)の濃度は、全組成物の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、又は0.1重量%~2.0重量%である。
【0074】
一実施形態において、糖脂質はSLPである。Candida apicola及びStarmerella bombicolaを含むStarmerellaクレード酵母は、SLPの2つの主要な生産源である。SLPは、長鎖ヒドロキシ脂肪酸に結合した二糖類ソホロースからなる。これらのSLPは、17-L-ヒドロキシオクタデカン又は17-L-ヒドロキシ-Δ9-オクタデセン酸にβ-グリコシド付加した部分的にアセチル化された2-O-β-D-グルコピラノシル-D-グルコピラノース単位である。ヒドロキシ脂肪酸は、一般に、16又は18個の炭素原子であり、1つ以上の不飽和結合を含有していてもよい。脂肪酸カルボキシル基は、遊離(酸性又は開放型)又は4"-位で内部エステル化したもの(ラクトン型)とすることができる。
【0075】
SLPは、広範囲の温度、pH及び塩分条件において、環境適合性、高い生分解性、低い毒性、高い選択性及び比活性を有する。
【0076】
利点を挙げると、SLPは、化粧品組成物中の活性又は不活性成分としていくつかの利点を有することができる。これらには、例えば、乳化水中油又は油中水混合物;炎症及び酸化ストレスの低減;皮膚の上層からの損傷ケラチノサイトの除去;抗菌及び抗炎症効果による創傷治癒の増強;線維芽細胞の代謝の改善;コラーゲン合成及び皮膚の色調調整/再構築;脂肪細胞を介したレプチン合成の刺激及び瘢痕を引き起こす皮下脂肪過負荷の低減の補助;エラスターゼ活性の阻害及びしわの外観の低減;皮膚上の落屑及び色素脱失点の阻害;微生物フケ、ニキビ及び体臭の制御;及び/又は皮膚炎、湿疹及び乾癬等の炎症状態の低減が含まれ得る。
【0077】
好ましい実施形態において、局所化粧品組成物中のSLP濃度は、全組成物の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、又は0.1重量%~2.0重量%である。一実施形態において、局所用組成物は、酸性形態のSLPを含む。
【0078】
特定の好ましい実施形態において、本発明の局所用組成物は、約0.1重量%~2.0重量%のMEL、好ましくは、約1.0重量%のMELを含み、さらに、約0.01重量%~約1.0重量%のSLP、好ましくは、約0.5重量%のSLPを含む。
【0079】
一実施形態において、糖脂質は、RLPである。RLPは、グリコシル頭部基(すなわち、ラムノース)部分、及び3-(ヒドロキシアルカノイルオキシ)アルカン酸(HAA)脂肪酸尾部、例えば、3-ヒドロキシデカン酸を含む。2つの主要な部類のラムノ脂質、それぞれ1つ又は2つのラムノース部分を含むモノ及びジラムノ脂質が存在する。HAA部分は、例えば、増殖培地及び環境条件に応じて、分枝の長さ及び程度を変えることができる。
【0080】
RLPは、主に、Pseudomonas細菌、例えば、P. chlororaphisによって生成される。それらは天然乳化剤であり、化粧品組成物中の非バイオサーファクタント、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム及びラウレス硫酸ナトリウムと置き換えるために本発明に従って使用することができる。さらに、RLPは、保湿性を増加させるか、又は皮膚を潤滑し、しわの出現を最小限にし、皮膚の滑らかさを増加させるように製剤化することができる。さらに、RLPは、抗菌剤(グラム陽性)及び抗真菌剤として使用することができる。
【0081】
好ましい実施形態において、局所化粧品組成物中のRLP濃度は、全組成物の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~2.0重量%の範囲である。
【0082】
一実施形態において、糖脂質は、トレハロース脂質(TL)である。TLは、例えば、細菌Rhodococcus erythropolisによって生成される糖脂質である。TLは、乳化及び分散特性を有する。それらは、表面活性のレベルの増加を示し、特定の抗ウイルス及び抗菌特性を有する。
【0083】
好ましい実施形態において、局所化粧品組成物中のTL濃度は、全組成物の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~2.0重量%の範囲である。
【0084】
いくつかの実施形態において、バイオサーファクタントはリポペプチドである。リポペプチドは、大きな多酵素複合体を用いて細菌によって合成されるオリゴペプチドである。それらは、抗生物質化合物として使用されることが多く、界面活性剤活性に加えて、広い抗菌スペクトルの作用を示す。全てのリポペプチドは、ペプチド部分に組み込まれたβ-アミノ又はβ-ヒドロキシ脂肪酸からなる共通の環状構造を共有する。Bacillus spp.細菌の多くの株は、リポペプチド、例えば、Bacillus subtilis及びBacillus amyloliquefaciensを生成することができる。特定の実施形態において、リポペプチドは、B. subtilisNRRL B-68031及び/又はB. amyloliquefaciensNRRL B-67928によって生成される。
【0085】
最も一般的に研究されているリポペプチド系列、サーファクチン系列は、13~15個の炭素原子を有するβ-ヒドロキシ脂肪酸を含有するヘプタペプチドからなる。サーファクチンは、最も強力なバイオサーファクタントのいくつかと考えられる。サーファクチンは、高レベルの表面活性化機能を有し、極めて親水性であり、他のバイオサーファクタントよりも広い範囲の濃度で透明なゲルを形成する。このバイオサーファクタントは、化粧品のための皮膚浸透剤、発泡剤及び乳化剤として作用することができる。さらに、サーファクチンは、有効な抗菌性(グラム陰性)、抗真菌剤及び抗ウイルス性を示す。さらに、サーファクチンはまた、安定なバイオフィルムの確立における重要な因子であり得、一方、グラム陰性細菌を含む他の細菌のバイオフィルム形成も阻害する。
【0086】
プリパスタチンを含むフェンジシン系列は、β-ヒドロキシ脂肪酸を有するデカペプチドを含む。フェンジシンは、ペプチド部分にオルニチンを含む。それらは、抗真菌活性を有することができる。
【0087】
例えば、イチュリンA、ミコサブチリン及びバシロマイシンによって表されるイチュリン系列は、β-アミノ酸脂肪酸を有するヘプタペプチドである。イチュリンも強い抗真菌活性を示す。
【0088】
好ましい実施形態において、組成物は、全組成物の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは0.01重量%~2.0重量%の濃度で含まれる。
【0089】
リン脂質
特定の実施形態において、局所用組成物のBAMは、天然もしくは合成のリン脂質又はリン脂質の混合物である。好ましい実施形態において、本発明によるリン脂質は、少なくとも1つのホスファチジン酸(PA)分子からなる極性頭部を含む構造を有する。いくつかの実施形態において、PAは、グリセロールに結合している。
【0090】
例示的なリン脂質としては、これらに限定されないが、ホスファチジン酸、リゾ-ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロホスフェート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロホスホグリセロール、ビス(モノアシルグリセロ)ホスフェート(BMP)、ビス(ジアシルグリセロ)ホスフェート(BDP)、アシルホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、及びプラスマローゲンが挙げられる。
【0091】
特定の実施形態において、リゾリン脂質、水素化、部分水素化及び/若しくは非水和リン脂質誘導体、リン脂質類似体、並びに/又はPEG化リン脂質が利用される。
【0092】
リゾリン脂質は、アシルラジカルがリン脂質(例えば、リゾレシチン)からホスホリパーゼAによって切断されるときに得られる。1,3-ビスホスファチジルグリセロールのようなカルジオリピンは、グリセロールを介して連結された2つのホスファチジン酸から構成されるリン脂質である。スフィンゴミエリンは、典型的には、ホスホリルコリン及びセラミドからなるスフィンゴ脂質の一種である。プラスマローゲンは、グリセロールの第1の炭素位置がエーテル結合アルケンを有し、第2の炭素が典型的なエステル結合脂肪酸を有し、第3の炭素が典型的にはコリン又はエタノールアミンのようなリン脂質頭部基を有するエーテル脂質である。
【0093】
特定の実施形態において、リン脂質混合物が利用され、これには、限定されないが、粗レシチン、リゾレシチン、及び、ホスファチジルコリン等のリン脂質画分で脱油、分画、噴霧乾燥、アセチル化、加水分解、ヒドロキシル化、水素化、及び/又は濃縮されたレシチン、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0094】
レシチンは、主に、コリン、脂肪酸、グリセロール、糖脂質、トリグリセリド、炭水化物及びリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトール)から構成される混合物である。レシチンは、植物及び動物細胞の卵黄及び原形質膜中に見出すことができ、卵黄から、又は化学的又は機械的に抽出される大豆、ベニバナ、キャノーラ又はコーン油等の植物油から単離される。
【0095】
いくつかの実施形態において、リン脂質は、微生物によって生成される。例示的な実施形態において、微生物は、例えば、Wickerhamomyces anomalusのようなWickerhamomyces属及び/又はPichia属の酵母である。
【0096】
いくつかの実施形態において、リン脂質は、他の天然供給源、例えば、大豆、ベニバナ油、キャノーラ油、コーン油、卵黄、内臓肉、赤身肉(lean meat)、穀粒(cereal grains)、乳、魚、ロー及び/又はオキアミから抽出される。
【0097】
いくつかの実施形態において、リン脂質は合成される。
【0098】
好ましい実施形態において、組成物は、全組成物の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは0.01重量%~2.0重量%の濃度で含まれる。
【0099】
多機能BAM
いくつかの実施形態において、局所用組成物は、異なるBAMの混合物を含む。例示的な一実施形態において、組成物は、糖脂質及びリン脂質を含む。特定の例示的な実施形態において、組成物は、カルジオリピン及び/又はホスファチジルグリセロールを有するSLP及び/又はMELを含む。他の特定の例示的な実施形態において、組成物は、SLP及びMELを、任意で、リポペプチド又はリン脂質BAMと共に含む。
【0100】
BAMsは、組成物中に含まれる場合、1つ以上の目的に役立つことができる。例えば、BAMは、活性成分、活性化粧品成分のための製剤エンハンサー及び/又は送達容器である。
【0101】
特定の実施形態において、本発明によるBAMのサイズ、及び/又はBAMによって形成されるミセルのサイズは、10nm未満、好ましくは、8nm未満、より好ましくは、5nm未満である。特定の例示的な実施形態において、SLP分子及び/又はミセルのサイズは、0.8nm~1.5nm、又は約1.0~1.2nmである。
【0102】
利点を挙げると、特定の実施形態において、本BAMsのサイズが小さいことにより、ナノメートルサイズの空間及び気孔、例えば、バイオフィルムの細胞外マトリックス、微生物の細胞膜又は細胞壁、皮膚の毛穴、ならびに真皮細胞とコラーゲン線維との間の空間へのその浸透が増強される。従って、本発明のBAMは、合成界面活性剤等のより大きい従来の両親媒性分子より、さらに有効であり得る。
【0103】
一実施形態において、BAMsは、例えば、しわ、たるみ、乾燥、粗さ、剥離、湿疹、乾癬、老化斑、色素沈着過剰、瘢痕、ケロイド、妊娠線、脂漏性皮膚炎、ニキビ、体臭、及び本明細書の他の箇所に記載される他のものから選択される皮膚状態を処置又は予防することによって、皮膚の健康及び/又は外観を改善するための活性成分として作用し得る。例示的な実施形態において、BAMは、表皮、例えば、角質層又は白層の表面を変化させて、質感や強度を改善し、皮脂生成を促進及び/又は阻害し、水分保持を促進し、小じわやしわの発症を低減し、及び/又は顔色を明るくすることができる。他の例示的な実施形態において、BAMsは、抗菌特性及び/又は抗バイオフィルム特性を有することができる。
【0104】
一実施形態において、BAMは、例えば、ローション、セラム、及びクリームとして製剤化される場合、局所組成物のための製剤エンハンサーとして作用し得る。例示的な実施形態において、BAMは、乳化剤(O/W及びW/O)、安定剤、増粘剤、皮膚軟化剤、防腐剤、洗剤、粘度調整剤、消泡剤、発泡剤、及び/又は染料及び活性成分の劣化を防止するためのUV光防護剤として作用し得る。従って、いくつかの実施形態において、BAMは、化粧品製剤の安定性、貯蔵寿命及び外観を改善するために有用であり得る。
【0105】
一実施形態において、BAMsは、送達容器及び/又は皮膚浸透エンハンサーとして作用し得、それは表皮を通る、他のBAMsを含む皮膚活性成分の通過を促し、及び/又はそのような活性成分を皮膚の所望の層に送達することができる。例示的な実施形態において、BAMは、脂質小胞、又はリポソームを形成することができ、その中に任意の活性成分が組み込まれる。リポソームは、親水性及び/又は親油性活性成分、例えば、抗酸化剤、ビタミン、抗菌剤、油、抗炎症剤、血液循環促進剤、美白剤、皮膚コンディショナー、老化防止剤、モイスチャライザー、ホルモン、着色剤、及びタンパク質を含有していてもよい。
【0106】
本発明に従って使用されるリポソームは、多ラメラベシクル、小さい単ラメラベシクル、大きい単ラメラベシクル及び渦巻き型ベシクルを含む、当技術分野で公知の多種多様な脂質ベシクルのいずれかであり得、多数の製造方法のいずれかに従って作製され得る。リポソームを形成するための材料及び手順は、当業者に周知されている。一般に、脂質又は親油性物質(例えば、バイオサーファクタント及び/又はリン脂質)は、有機溶媒に溶解される。溶媒が回転蒸発による真空下等で除去されると、脂質残渣は、容器の壁に膜を形成する。
【0107】
次いで、典型的に、電解質又は親水性の生物学的活性物質を含有する水溶液が膜に添加される。場合によっては、リポソームの安定性を高めるために、シクロデキストリン又は他のポリマーが含まれる。脂質分子は、極性に従って並び、疎水性の尾部は内側を指し、極性の頭部基は外側を指す。多ラメラベシクルにおいて、膜の一方の表面における極性基は、ベシクルの内部を指し、他方の表面におけるものは、外部環境を指す。ベシクがその製造中に形成されると、水に添加された任意の水溶性分子は、球体内部の水性空間に組み込まれるが、ベシクル形成中に添加された任意の脂溶性分子はベシクルのコアに組み込まれる。
【0108】
追加成分
局所用組成物は、懸濁液(例えば、リポソーム懸濁液)、エマルジョン、ナノエマルジョン、ハイドロゲル、多相溶液、リポソーム分散液、ローション、クリーム、ゲル、エッセンス、フォーム、液体、ケーキ、軟膏、ペースト、セラム、スプレー、エアロゾル、コンディショナー、シャンプー、マスク、クレンザー、トニック、メーキャップ(例えば、リップスティック、ファンデーション、ブロンザー、ルージュ、アイシャドー)、パッチ、鉛筆、粉末、トワレ、石鹸、クレンザー、スティック、ムース、エリキシル剤(elixer)、濃縮物及び/又はアフターシェーブとして製剤化することができる。
【0109】
組成物は、広範囲のpHレベル内で製剤化することができる。一実施形態において、局所用組成物のpHは、1.0~13.0の範囲である。いくつかの実施形態において、局所用組成物のpHは、2.0~12.0の範囲である。本組成物に適した他のpH範囲としては、3.5~7.0、又は7.0~10.5が挙げられる。水酸化ナトリウム、クエン酸及びトリエタノールアミン等の適切なpH調整剤を加えて、pHを所望の範囲内にすることができる。
【0110】
特定の実施形態において、局所用組成物は、追加の化粧品成分を含む。これらの成分は活性成分又は不活性成分と考えられ、それらが提供する利益によって、又はそれらの想定される作用機序によって分類することができる。しかしながら、いくつかの例において、追加の成分は、2つ以上の利益を提供するか、又は2つ以上の作用機序を介して作用することができると考えられる。従って、本明細書における分類は便宜上なされたものであり、薬剤を列挙された特定の用途に限定することを意図するものではない。
【0111】
そのような成分部類の例としては、有機溶媒、シリコーン、pH調整剤、キレート剤、ゲル化剤、タンパク質、ビタミン、皮膚軟化剤、油、ヒドロキシ酸、剥離剤、レチノイド、粘度調節剤、ポリマー、ミネラル、防虫剤、潤滑剤、防腐剤、植物性成分、清澄剤、保湿剤(humectants)、非バイオサーファクタント(non-biological surfactants)、抗酸化剤、増粘剤、柔軟剤、日焼け止め剤、モイスチャライザー、染料(dyes)、着色剤、香料、研磨剤、吸収剤、精油等の美容成分(aesthetic components)、皮膚感覚剤(skin sensates)、収れん剤(astringents)、抗ニキビ剤、固化防止剤、消泡剤、抗微生物剤(antimicrobial agents)、脱色剤、抗炎症剤、糖化最終産物(AGE)阻害剤、ステロイド、結合剤、生体添加剤(biological additives)、緩衝剤、充填剤(bulking agent)、キレート剤、化学添加剤(chemical additives)、変性剤、外用鎮痛剤、角質溶解薬(keratolytic agents)、落屑剤(desquamating agents)、ケラチノサイト増殖促進剤、コラゲナーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、フィルム形成剤又は材料、乳白剤、噴射剤(propellants)、還元剤、酵素、金属イオン封鎖剤、皮膚漂白及び美白剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚の鎮静及び/又は治癒剤、増粘剤、ミネラル、ビタミン並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0112】
これら及び他の適切な化粧品成分に関する詳細は、その全体が参照により本明細書に援用される非特許文献1に見出すことができる。
【0113】
活性であろうと不活性であろうと、各成分の量は、意図される目的を達成するために化粧品分野で従来使用されている量であり、典型的には、組成物の約0.0001%~約25%、又は約0.001%~約20%の範囲であるが、量はこれらの範囲外であってもよい。これらの成分の性質及び量は、本開示の組成物の生成及び機能に適合するものでなければならない。
【0114】
いくつかの実施形態において、局所用組成物は、皮膚科学的に許容される又は化粧品として許容されるビヒクル又は担体を含むことができる。
【0115】
化粧品として許容されるビヒクルは、エマルジョンの形態であってもよい。適切なエマルジョンの例としては、これらに限定されるものではないが、クリーム、ゲル、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンの外観を有する油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中シリコーン型エマルジョン、シリコーン中水型エマルジョン、水中ワックス型エマルジョン、水-油-水トリプルエマルジョン等が挙げられる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「油」という用語は、別段の指示がない限り、シリコーン油を含む。エマルジョンは、乳化剤、例えば、非イオン性、アニオン性もしくは両性界面活性剤、又はガラントを、典型的には、約0.001重量%~約5重量%の量で含んでいてもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、化粧品として許容されるビヒクルは、水;植物油;ミネラルオイル;エステル油、例えば、オクタルパルミテート、イソプロピルミリステート及びイソプロピルパルミテート;エーテル、例えば、ジカプリルエーテル及びジメチルイソソルビド;アルコール、例えば、エタノール及びイソプロパノール;脂肪族アルコール、例えば、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール;イソパラフィン、例えば、イソオクタン、イソドデカン(IDD)及びイソヘキサデカン;シリコーン油、例えば、シクロメチコン、ジメチコン、ジメチコンクロスポリマー、ポリシロキサン及びそれらの誘導体、好ましくは、PDMSを含む有機変性誘導体、ジメチコンコポリオール、ジメチコノール、及びアモジメチコノール;炭化水素油、例えば、ミネラルオイル、ワセリン、イソエイコサン、及びポリオレフィン、例えば、(水素化)ポリイソブテン;ポリオール、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール;ワックス、例えば、蜜蝋、カルナウバ、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びボタニカルワックス;又はこれらの任意の組み合わせ又は混合物を含んでいてもよい。水性ビヒクルは、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールを含む、水と混和性の1種類以上の溶媒を含んでいてもよい。ビヒクルは、組成物の約1重量%~約99重量%、10重量%~約85重量%、25重量%~75重量%、又は50重量%~約65重量%含まれていてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、局所化粧品組成物は、有効量で、微生物によって生成される酵素及び/又はタンパク質を含むことができる。例えば、約0.001重量%~約20重量%、好ましくは、約0.01重量%~約15重量%、又は約0.05重量%~約10重量%の1つ以上の酵素及び/又はタンパク質を含むことができる。これらには、エキソ-β-1,3-グルカナーゼ、「キラー毒素」、キチナーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、アミラーゼ、及び皮膚の健康を改善するのに有益なプロテアーゼが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0119】
一実施形態において、組成物は、例えば、カフェイン、エキナセア、チョウセンニンジン、グルコサミン、硫酸コンドロイチン、ニンニク抽出物、セント・ジョンズ・ワート、ソーパルメット、イチョウ、メラトニン、ベータカロチン、フラボノイド(例えば、アントシアニン)、チア、コラーゲンペプチド、アサイー、活性炭、アルファルファ、アルニカ、アストラガルス、アロエベラ、アッシュワガンダ、ベラドンナ、ベルベリー、ビルベリー、ベタイン、ビターメロン、ビターオレンジ、ブラックコホシュ、ブラックオオバコ、紅茶、ニオイヤグルマ、ブロンドサイリウム、ブルーベリー、ブルーグリーン藻類、ホウ素、バターバー、カレンデュラ、カンナビジオール(CBD)、カプサイシン、カプシカム、キャッツクロー、カモミール、チェストベリー、キトサン、シナモン、クローブ、ココナッツ、クランベリー、タンポポ、ディアーベルベット、デビルズクロー、トウキ、エゾウコギ、エフェドラ、ユーカリ、エルダーベリー、イブニングプリムローズ、フェヌグリーク、フィーバーヒュー、フラックスシード、fucus vesiculosus、ジンジャー、グリチルリチン、クコの実、ゴールデンシール、グレープ、グレープシード、グレープフルーツ、グリーンコーヒー、緑茶、ガラナ、グアーガム、ギムネマ、サンザシ、ヘンプ、ハイビスカス、ハチミツ、ホノキアール、フーディア、ホップ、ホースチェストナット、ホーニーゴートウィード、ホーステール、カヴァ、コーラナッツ、ラベンダー、レモングラス、リコリス根、ルテイン、リコピン、マカ、マンゴスチン、メチルスルホニルメタン、ミルクシスル、ヤドリギ、モノラウリン、ナイアシンアミド、ノニ、オーツ、オリーブ、オレガノ、パーム油、パパイヤ、パウダルコ、ピーナツ油、ペニーロイヤル、ペパーミント、ザクロ、プロポリス、ケルセチン、ローズヒップ、ラズベリーケトン、レッドクローバー、レッドイーストライス、霊芝、レスベラトロール、ローズヒップ、セージ、ソーパルメット、Satureja bachtiarica油、センナ、スリッパリーエルム、大豆、スペアミント、ステビア、タルトチェリー、ティーツリー油、サンダーゴットバイン、ビートルート、テリマグランジンII、ターメリック、バレリアン、ワイルドヤム、柳の樹皮、イェルバマテ、ヨヒンベ、5-HTP等の植物抽出物を含むことができる。
【0120】
一実施形態において、組成物は、レチノイドを含む。本明細書で使用される場合、「レチノイド」は、皮膚におけるビタミンAの生物学的活性を有するビタミンAの全ての天然及び/又は合成類似体、又はレチノール様化合物、ならびにこれらの化合物の幾何異性体及び立体異性体を含む。レチノイドは、好ましくは、レチノール、レチノールエステル(例えば、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニルを含むレチノールのC2~C22アルキルエステル)、レチナール、及び/又はレチノイン酸(オールトランスレチノイン酸及び/又は13-シス-レチノイン酸を含む)、より好ましくは、レチノイン酸以外のレチノイドである。他の適切なレチノイドは、トコフェリルレチノエート[レチノイン酸のトコフェロールエステル(トランス-又はシス-)、アダパレン{6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸}、及びタザロテン(エチル6-[2-(4,4-ジメチルチオクロマン-6-イル)-エチニル]ニコチネート)である。
【0121】
一実施形態において、組成物は、これらに限定されるものではないが、植物性成分(例えば、Butea frondosa抽出物);フィトール;フィトン酸;本明細書に記載されたもの以外のリン脂質;シリコーン:ワセリン;トリグリセリド;オメガ脂肪酸;レチノイド;ヒドロキシ酸(アルファ-ヒドロキシ酸及びベータ-ヒドロキシ酸を含む)、サリチル酸及びサリチル酸アルキル;剥離剤(exfoliating agent)(例えば、グリコール酸、3,6,9-トリオキサウンデカン二酸等)、エストロゲン合成酵素刺激化合物(例えば、カフェイン及び誘導体);5アルファ-レダクターゼ活性を阻害することができる化合物(例えば、リノレン酸、リノール酸、フィナステリド及びこれらの混合物)ならびにバリア機能増強剤(例えば、セラミド、グリセリド、コレステロール及びそのエステル、アルファ-ヒドロキシ及びオメガ-ヒドロキシ脂肪酸及びそのエステル)を含んでいてもよい。存在する場合、追加の老化防止化合物は、約0.0001重量%~約5重量%、より典型的には、約0.01重量%~約2.5重量%、又は約0.1重量%~約1.0重量%の量で含まれ得る。
【0122】
一実施形態において、組成物は、剥離剤(exfoliating agent)を含んでいてもよい。適切な剥離剤としては、例えば、アルファ-ヒドロキシ酸、ベータ-ヒドロキシ酸、オキサ-酸、オキサジ酸、及びそれらの誘導体、例えば、それらのエステル、無水物及び塩が挙げられる。適切なヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、2-ヒドロキシアルカン酸、マンデル酸、サリチル酸及びそれらの誘導体が挙げられる。1つの例示的な剥離剤は、グリコール酸である。存在する場合、剥離剤は、組成物の約0.001重量%~約20重量%含まれていてもよい。
【0123】
一実施形態において、組成物は、1つ以上の抗酸化剤を含んでいてもよい。適切な抗酸化剤としては、例えば、フェノール性ヒドロキシ官能基を有する化合物、例えば、アスコルビン酸及びその誘導体/エステル;ベータ-カロテン;カテキン;クルクミン;フェルラ酸誘導体(例えば、フェルラ酸エチル、フェルラ酸ナトリウム);没食子酸誘導体(例えば、没食子酸プロピル);リコペン;還元酸;ロスマリン酸;タンニン酸;テトラヒドロクルクミン;トコフェロール及び酢酸トコフェリルを含むその誘導体;尿酸;又はそれらの任意の混合物が挙げられる。他の適切な抗酸化剤は、還元型又は非還元型のいずれかの1つ以上のチオール官能基(-SH)を有するもの、例えば、グルタチオン、リポ酸、チオグリコール酸、及び他のスルフヒドリル化合物である。抗酸化剤は、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、亜硫酸塩、又は硫黄を含有する他の無機塩及び酸等の無機物であってもよい。抗酸化剤は、組成物の総重量の約0.001%~約10%(w/w)、又は約0.01%~約5%(w/w)を個々に又はまとめて含んでいてもよい。
【0124】
非バイオサーファクタントもまた、製剤に添加することができる。界面活性剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム/アンモニウム及びラウレス硫酸ナトリウム/アンモニウム)、両性物質(例えば、アンホアセテート及びアンホプロピオン酸塩)、スルホスクシネート、アルキルポリグルコシド、ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン(CAPB))、スルタイン、サクロシネート、イセチオネート、タウレート、エトキシル化ソルビタンエステル、アルカノールアミド及びアミノ酸系界面活性剤が挙げられる。
【0125】
粘度調整剤はまた、例えば、コカミドDEA、オレアミドDEA、塩化ナトリウム、セルロースポリマー、ポリアクリレート、エトキシル化エステル、アルコール、グリコール、キシレンスルホネート、ポリソルベート20、アルカノールアミド、及びセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース)を含む組成物に添加することができる。
【0126】
例えば、キサンタンガム、グアーガム、ポリクオタニウム-10、PEG-120メチルグルコースジオレエート、PEG-150ジステアレート、PEG-150ポリグリセリル-2トリステアレート及びPEG-150ペンタエリスリチルテトラステアレートを含むポリマーも添加することができる。
【0127】
UVA及びUVB線の両方から皮膚を保護するために、日焼け止め剤又は日焼け止め剤の組み合わせを含めてもよい。本発明の組成物に用いることができる日焼け止め剤の中には、アボベンゾン、ケイ皮酸誘導体(例えば、オクチルメトキシケイ皮酸塩)、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、オクトクリレン、二酸化チタン、酸化亜鉛、又はそれらの任意の混合物がある。日焼け止め剤は、組成物の総重量の約1重量%~約30重量%で存在させてよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、組成物は、モイスチャライザーを含む。モイスチャライザーは、保湿剤として提供することができる。一般に、保湿剤は、その吸湿性のために水の保持を促進する吸湿剤である。例示的な保湿剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリマーグリコール、ならびにソルビトール溶液等のソルビトール、ピロリドンカルボン酸、尿素、又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0129】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の質感を改善するための皮膚軟化剤を含む。皮膚軟化剤(an emollient)は、皮膚を滑らかにし、軟化させるのに役立つ油質又は油性の物質であり、また、その粗さ、ひび割れ、又は刺激を低減し得る。皮膚軟化剤としては、これらに限定されるものではないが、ミネラルオイル、ラノリン油、ココナッツ油、ココアバター、オリーブ油、アーモンド油、ナッツ油、合成ホホバ油、天然ソノラホホバ油、ベニバナ油、コーン油、液体ラノリン、綿実油及び落花生油が挙げられる。
【0130】
他の適切な皮膚軟化剤としては、スクワラン、ヒマシ油、ポリブテン、無臭のミネラルスピリット、スイートアーモンド油、アボカド油、カロフィラム油、リシン油、酢酸ビタミンE、オリーブ油、リノレンアルコール、オレイルアルコール、穀類胚芽油、例えば、小麦胚芽油、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル(米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのイノレックス社の商品名、レクソルEHPとして市販されている)、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、グリセリン酸アセチル、(C12~C45)アルコールのオクタン酸塩及び安息香酸塩、グリコール及びグリセロールのようなアルコール及びポリアルコールのオクタノエート及びデカノエート、アジピン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル及びドデカン酸オクチルのようなアルコール及びポリアルコールのリシンオレエートが挙げられる。
【0131】
室温又は周囲温度で固体又は半固体である他の適切な皮膚軟化剤は、液体局所組成物を提供するのに十分な量で使用してよい。そのような固体又は半固体の化粧用皮膚軟化剤には、水素化ラノリン、ヒドロキシル化ラノリン、アセチル化ラノリン、ワセリン、ラノリン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、乳酸ミリスチル、セチルアルコール、イソステアリルアルコール及びラノリン酸イソセチルが含まれる。
【0132】
いくつかの実施形態において、組成物は、皮膚に容易に適用できるように、粘度を調整するための増粘剤を含む。増粘剤又は粘度制御剤としては、これらに限定されるものではないが、セルロースガム、アルカントリオール;アクリレート;置換セルロース、例えばメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース;ヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース;セチルアルコール;ガム、例えば、天然ガム又は合成ガム(例えばグアーガム、キサンタンガム);長鎖アルコール、例えば、約9~約24個の炭素原子を有するもの;ポリグリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、又はそれらの混合物;ワックス、例えば、天然ワックス又は合成ワックス;水素化油;グリコールエステル;脂肪酸エステル;長鎖酸;酸アミド;ケイ酸塩;及びそれらの混合物が挙げられる。
【0133】
着色剤は、皮膚への組成物の均一なコーティングのゲージ適用を助けるために、組成物中に含まれていてもよい。例示的な着色剤としては、各バッチが、食品医薬品局(FDA)純度検査に合格するように製造された合成有機コールタール誘導体である、認定された染料が挙げられる。FDAによって承認された場合、これらの染料は、食品、医薬品、化粧品(FDA色)、医薬品及び食品のみ(DC色)、又は局所適用医薬品及び化粧品(外部DC色)における使用のために認定されている。認定された染料は、水溶性又はレーキである。レーキは、顔料の組成物の必須部分である反応性又は吸収性層上に可溶性染料を沈殿させることによって調製される有機顔料である。大半のレーキは、アルミニウム、バリウム、又はカルシウム由来である。これらの不溶物顔料は、皮膚を汚さない一時的な色が望ましい場合(油溶性染料がそうする傾向があるので)、粉末又は液体のいずれかのメークアップ製品に主に使用される。レーキは、酸化鉄、酸化亜鉛、及び二酸化チタン(最も白い白色顔料)等の無機色とともに、これらの製品に使用される。
【0134】
水溶性染料、例えば、FDC青色1号、FDC青色2号、FDC緑色3号、FDC赤色3号、FDC赤色40号、FDC黄色5号、FDC黄色6号、DC緑色5号、DC赤色22号、DC赤色28号、DC赤色33号、DC黄色10号、ExtDC紫色2号、ExtDC黄色7号、DC緑色8号、DCオレンジ色4号及びDC黄色8号等も使用してよい。水溶性のカラー染料はまた、カラメル色又はクルミ種抽出物色のような天然色とすることもできる。
【0135】
いくつかの実施形態において、組成物は、細菌、真菌、及び/又は酵母汚染を防止するための防腐剤を含むことができる。例示的な防腐剤としては、フェノキシエタノール、安息香酸、安息香酸の誘導体及び塩、パラベン、オキサゾリジン、塩素化芳香族化合物及びフェノール、ヒダントイン、クレゾール及び誘導体、イミアゾリジニル尿素、ヨードプロパノールブチルカルバメート、亜硫酸塩、及び重亜硫酸塩が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態において、組成物は、皮膚の利益を提供し、及び/又は貯蔵寿命を延ばすのを助けるために抗酸化剤を含むことができる。使用することができる例示的な抗酸化剤としては、ビタミン、例えば、ビタミンE、ビタミンEアセテート、ビタミンC、ビタミンA、及びビタミンD、ならびにそれらの誘導体等が挙げられる。例示的な抗酸化剤としては、天然又は合成ビタミンEとして特徴付けられ得るα-トコフェロールが挙げられる。さらなる例示的な抗酸化剤としては、没食子酸のプロピル、オクチル及びドデシルエステル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)(通常、オルト及びメタ異性体の混合物として)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びノルジヒドログアイアレチン酸、ならびにメチルパラベン及びプロピルパラベン等のアルキル化パラベンが挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、組成物は、キレート剤を含むことができる。キレート剤は、特定の複素環構造を有する金属イオンをキレート化又は結合するために使用される物質であり、関与する環の各々からの化学結合によってイオンは保持される。適切なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA三ナトリウム、EDTA四ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、EDTA三ナトリウム、EDTA四ナトリウム及びEDTA二カリウムが挙げられる。
【0138】
組成物は、皮膚浸透促進剤;保湿剤(例えば、グリセリン、ヘキシルリルグリコール、カプリリルグリコール);皮膚プランパー(skin plumpers)(例えば、パルミトイルオリゴペプチド、コラーゲン及び/又はグリコサミノグリカン(GAG)増強剤);抗炎症剤(例えば、アロエベラ、バイオフラボノイド、ジクロフェナク、サリチル酸);キレート剤(例えば、EDTA又はその塩、例えば、EDTA二ナトリウム);ビタミン(例えば、トコフェロール及びアスコルビン酸);ビタミン誘導体(例えば、モノパルミチン酸アスコルビル、酢酸トコフェリル、パルミチン酸ビタミンE);ゲル化剤(例えば、エステル末端ポリエステルアミド);構造化剤(a structuring agent);タンパク質(例えば、ラクトフェリン);免疫変調成分(例えば、コルチコステロイド及び非ステロイド性免疫変調成分);及び日焼け活性成分(例えば、ジヒドロキシアセトンDHA)、1,3,4-トリヒドロキシ-2-ブタノン(エリトルロース)、及び植物抽出物、例えば、Betula alba及びEclipta alba、クルミ油、ホホバ、バニラ、紅茶及びコーヒー)を含むが、これに限定されない、当業者に公知の他の成分、添加剤又はアジュバントを任意に含んでもよい。
【0139】
皮膚の健康及び/又は外観を改善するための方法
好ましい実施形態において、例えば、対象における皮膚状態を処置及び/又は予防することによって、皮膚の健康及び/又は外観を改善する方法が提供され、本発明の実施形態による局所化粧品組成物は、それを必要とする対象の皮膚の領域に直接適用される。
【0140】
いくつかの実施形態において、組成物を「適用する」ことは、所望の審美的、予防的、治療的又は他の美容的利益を達成するために、有効量の組成物を、対象の皮膚と直接接触させること、そして、好ましくは、組成物を皮膚に一定の時間、例えば、約20秒~1時間放置することを含むことができる。組成物は、指を用いて、又は、器具もしくは装具(例えば、パッド、綿球、ブラシ、布、アプリケーターペン、スプレーアプリケーター等)を用いて適用することができる。
【0141】
特定の実施形態において、組成物は、組成物が吸収されるように、皮膚に擦り込まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、ある時間(例えば、マスクの形態で)皮膚に適用され、次いで、例えば、水を使用して皮膚から濯ぎ流すことができる。
【0142】
特定の実施形態において、組成物は、パッチ上に充填され、皮膚に接着させて、連続適用させることができる。パッチは、好ましくは、睡眠中に、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、又は一晩、皮膚に放置される。
【0143】
一実施形態において、組成物は、皮膚1cm2あたり約0.001~約100mg、より典型的には、約0.01~約20mg/cm2、又は約0.1~約10mg/cm2で皮膚に適用することができる。しかしながら、処置すべき皮膚の領域の大きさに応じて、これより多く、又は少なく使用してもよい。
【0144】
特定の実施形態において、対象の顔及び首の皮膚が、本方法に従って処置される。いくつかの実施形態において、例えば、耳、胸、肩、背中、腕、脇、手、胃、臀部、脚及び足を含む、対象の皮膚の任意の部分を処置することができる。
【0145】
いくつかの実施形態において、本方法を用いて、皮膚の健康及び/又は外観を改善することができる。一実施形態において、本発明は、老化の兆候を改善する方法を提供し、本発明の組成物は、老化の兆候を改善するのに十分な有効量で皮膚に局所適用される。老化の例示的なサインには、顔のライン、小じわ、しわ、目じりのしわ(crow's feet)、くま、シミ、老化斑、妊娠線、たるみ、乾燥、皮膚バリア修復特性の弱化、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
他の実施形態において、本発明は、皮膚の美的外観を改善する方法を提供し、本発明の組成物は、皮膚の美的外観を改善するのに十分な有効量で皮膚に局所適用される。皮膚の厚み、弾力性(elasticity)、弾力回復力(resiliency)、保湿、色調、質感、輝き、光沢、明るさ、透明度、輪郭、均一性、硬さ、張り(tautness)、しなやかさ、柔らかさ、感受度(sensitivity)、毛穴サイズ、水分損失の低減、又はそれらの組み合わせに関連する改善が挙げられる。
【0147】
一実施形態において、組成物は、例えば、サンレスタンニング組成物によって、皮膚の色素沈着を増加させる。言い換えれば、組成物は、UV又は他の放射光を使用することなく、皮膚に日焼けした外観を提供するために使用することができる。このように、本発明の方法は、日光浴に対する対象の要望を低下させながら、日焼け及び日光起因の皮膚癌のリスクを低下させるために使用することができる。
【0148】
加えて、いくつかの実施形態において、本方法は、乾癬、湿疹、皮膚炎、日焼け、エストロゲン不均衡、色素沈着症、低色素沈着、変色、黄変、そばかす、皮膚萎縮、皮膚の吹き出物、皮膚脆弱性、乾燥、あかぎれ、たるみ、菲薄化、過形成、線維症、毛穴の広がり、セルライト形成、あざ、ニキビ形成、ニキビ痕、アポトーシス、細胞分化、細胞脱分化、腫瘍誘導又は腫瘍進行の予防、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、クモ状静脈(毛細血管拡張症)、多毛症、酒さ、そう痒症、虫刺され(insects bite or sting)、タコ、イボ、ウオノメ、光損傷、瘢痕、ケロイド、ループス、魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、慢性創傷、床擦れ、毛孔性角化症、皮脂性嚢胞、白斑、メリスマ、イボ、炎症性皮膚病、炎症後色素沈着症、角化症、皮膚疾患、乾燥症、扁平苔癬、結節性痒疹、微生物感染、体臭、脂漏性皮膚炎、フケ、汗疹、アレルギー反応及び本明細書に記載したその他のものからなる群から影響を受けるか、又はそれらから生じる皮膚状態を処置及び/又は予防するために使用される。
【0149】
皮膚の審美的又は美容的外観を改善することに加えて、本発明の局所用組成物は、皮膚の全身の健康、活力及び外観を増強するために局所的に適用してよい。例えば、本組成物は、微小循環、皮膚細胞間のコミュニケーション、必須栄養素又は皮膚成分の補充を改善するために、又は皮膚細胞の代謝、拡散、増殖、ターンオーバー及び/又は剥離を改善するために皮膚に適用してよい。
【0150】
微生物の増殖及び微生物増殖副生成物の生成
本発明は、微生物を培養し、微生物代謝産物及び/又は微生物増殖の他の副生成物を生成する方法を提供する。本明細書中で使用される場合、「発酵」は、制御された条件下での細胞の増殖を指す。増殖は、好気性又は嫌気性でよい。
【0151】
一実施形態において、本発明は、バイオマス(例えば、生存細胞材料)、細胞外代謝産物(例えば、小分子及び排泄タンパク質)、残留栄養素及び/又は細胞内成分(例えば、酵素及び他のタンパク質)を生成する材料及び方法を提供する。
【0152】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、工業的使用のための任意の発酵槽又は培養反応器である。一実施形態において、容器は、pH、酸素、圧力、温度、撹拌機シャフト出力、湿度、粘度、及び/又は微生物密度及び/又は代謝産物濃度等の培養プロセスにおける重要な因子を測定するために、機能的制御/センサを有してもよく、又は接続されていてもよい。
【0153】
さらなる実施形態において、容器は、容器内の微生物の増殖を監視(例えば、細胞数及び増殖期の測定)することもできる。あるいは、毎日のサンプルを容器から採取し、希釈プレーティング技術等の当技術分野で公知の技術による計数に供してもよい。
【0154】
一実施形態において、方法は、窒素源を用いて培養を補充することを含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、及び/又は塩化アンモニウムとすることができる。これらの窒素源は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用してよい。
【0155】
本方法において、増殖培養物を酸素化することができる。一実施形態は、低酸素含有空気を除去し、酸素化空気を導入するために、空気の緩慢な動きを利用する。酸素化空気は、液体の機械的撹拌のためのインペラ、及び液体中への酸素の溶解のために液体に気体の気泡を供給するための空気スパージャーを含む機構によって毎日補充される周囲空気であってもよい。
【0156】
本方法は、培養物に炭素源を補充することをさらに含むことができる。炭素源は、典型的には、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、及び/又はマルトース等の炭水化物;酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、及び/又はピルビン酸等の有機酸;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、及び/又はグリセロール等のアルコール;大豆油、米ぬか油、オリーブ油、コーン油、ゴマ油、及び/又は亜麻仁油等の油脂等である。これらの炭素源は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
一実施形態において、微生物の増殖因子及び微量栄養素が培地に含まれる。これは、それらが必要とするビタミンの全てを生成することができない微生物を増殖させる場合に特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン及び/又はコバルトのような微量元素を含む無機栄養素もまた、培地に含まれてもよい。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、及び微量元素の源は、例えば、コーン粉等の穀粉又はミールの形態で、又は酵母エキス、ジャガイモエキス、牛エキス、大豆エキス、バナナ皮エキス等のエキスの形態で、又は精製された形態で含まれ得る。各種アミノ酸、例えば、タンパク質の生合成に有用な各種アミノ酸もまた含まれ得る。
【0158】
一実施形態において、無機塩も含まれていてもよい。使用可能な無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、及び/又は炭酸ナトリウムとすることができる。これらの無機塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
いくつかの実施形態において、培養方法は、培養プロセスの前及び/又は間に、液体培地中に追加の酸及び/又は抗菌剤を添加することをさらに含んでもよい。抗菌剤又は抗生物質は、培養物を汚染から保護するために使用される。さらに、培養中の泡の形成及び/又は蓄積を防止するために、消泡剤を添加してもよい。
【0160】
混合物のpHは、目的の微生物に適したものとする。緩衝液、及び炭酸塩及びリン酸塩等のpHレギュレータを使用して、pHを好ましい値付近に安定化させてよい。金属イオンが高濃度で存在する場合、液体培地中でのキレート剤の使用が必要である。
【0161】
微生物の培養及び微生物副生成物の生成の方法及び装置は、バッチ式、準連続式、又は連続式のプロセスで実施することができる。
【0162】
一実施形態において、微生物の培養方法は、約5℃~約100℃、好ましくは、15℃~60℃、より好ましくは、25℃~50℃で実施される。さらなる実施形態において、培養物は、一定温度で連続的に実施されてもよい。他の実施形態において、培養が変化する温度にさらされてもよい。
【0163】
一実施形態において、方法及び培養プロセスで使用される装置は無菌である。反応器/容器のような培養装置は、滅菌ユニット、例えば、オートクレーブから分離されていても、接続されてもよい。また培養装置は、接種を開始する前にインサイチュで滅菌する滅菌ユニットを有してもよい。空気は、当技術分野で公知の方法によって滅菌することができる。例えば、周囲空気は、容器内に導入される前に、少なくとも1つのフィルタを通過することができる。他の実施形態において、培地は、低温殺菌されてもよく、又は任意で、熱を全く加えなくてもよく、低水分活性及び低pHの使用が、細菌増殖を制御するために利用されてもよい。
【0164】
一実施形態において、本発明は、代謝産物の増殖及び生成に適した条件下で、本発明の微生物株を培養することによって、例えば、バイオサーファクタント、酵素及び/又は他のタンパク質を含む微生物代謝産物を生成する方法を提供する。得られる培養物の代謝物含量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0165】
発酵ブロスのバイオマス含量は、例えば、5g/l~180g/l以上、又は10g/l~150g/lである。
【0166】
目的の微生物によって生成される微生物培養副生成物は、微生物中に保持されるか、又は液体培地中に分泌されてもよい。他の実施形態において、微生物増殖副生成物を生成する方法は、目的の微生物増殖副生成物を濃縮及び精製するステップをさらに含んでもよい。さらなる実施形態において、液体培地は、微生物増殖副生成物の活性を安定化させる化合物を含有していてもよい。
【0167】
一実施形態において、微生物培養物の全ては、培養の完了時に(例えば、培地中の所望の細胞密度、又は特定の代謝産物の密度を達成した時に)取り出される。このバッチ手順において、全く新しいバッチが、第1のバッチの採取時に開始される。
【0168】
他の実施形態において、発酵産物の一部のみが、任意の時点で取り出される。この実施形態において、生細胞を有するバイオマスは、新しい培養バッチのための接種物として容器内に残る。除去される組成物は、無細胞ブロスとする、又は細胞を含有することができる。このようにして、準連続システムが生成される。
【0169】
利点を挙げると、この方法は、複雑な設備や高いエネルギー消費を必要としない。目的の微生物は、現場で小規模又は大規模に培養でき、さらには培地と混合したままでも利用することができる。同様に、微生物代謝産物はまた、必要な部位で大量に生成することもできる。
【0170】
微生物は、例えば、細菌、酵母及び/又は真菌である。これらの微生物は、天然の微生物であってもよく、又は遺伝的に改変された微生物であってもよい。例えば、微生物は、特定の特徴を示すために特定の遺伝子で形質転換されてもよい。また、微生物は、所望の株の突然変異体であってもよい。本明細書中で使用される場合、「変異体」は、基準微生物の株、遺伝的変異体又はサブタイプを意味し、ここで、変異体は、基準微生物と比較して、1つ以上の遺伝的変異(例えば、点変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失、重複、フレームシフト変異又は反復拡大)を有する。変異体を作製するための手順は、微生物学的技術分野において周知である。例えば、UV突然変異誘発及びニトロソグアニジンは、この目的のために広く使用されている。
【0171】
特定の実施形態において、微生物は、両親媒性分子、酵素、タンパク質及び/又はバイオポリマーを生成可能である。特に、微生物バイオサーファクタントは、細菌、真菌及び酵母等、様々な微生物により生成される。例えば、Agrobacterium spp.(例えば、A. radiobacter)、Arthrobacter spp.、Aspergillus spp.、Aureobasidium spp.(例えば、A. pullulans)、Azotobacter(例えば、A. vinelandii、A. chroococcum)、Azospirillum spp.(例えば、A. brasiliensis)、Bacillus spp.(例えば、B. subtilis、B. amyloliquefaciens、B. pumillus、B. cereus、B. licheniformis、B. firmus、B. laterosporus、B. megaterium)、Blakeslea、Candida spp.(例えば、C. albicans、C. rugosa、C. tropicalis、C. lipolytica、C. torulopsis)、Clostridium(例えば、C. butyricum、C. tyrobutyricum、C. acetobutyricum, and C. beijerinckii)、Campylobacter spp.、Cornybacterium spp.、Cryptococcus spp.、Debaryomyces spp.(例えば、D. hansenii)、Entomophthora spp.、Flavobacterium spp.、Gordonia spp.、Hansenula spp.、Hanseniaspora spp.(例えば、H. uvarum)、Issatchenkia spp; Kluyveromyces spp.、Meyerozyma spp.(例えば、M. guilliermondii)、Mortierella spp.、Mycorrhiza spp.、Mycobacterium spp.、Nocardia spp.、Pichia spp.(例えば、P. anomala、P. guilliermondii、P. occidentalis、P. kudriavzevii)、Phycomyces spp.、Phythium spp.、Pseudomonas spp.(例えば、P. aeruginosa、P. chlororaphis、P. putida、P. florescens、P. fragi、P. syringae)、Pseudozyma spp.(例えば、P. aphidis)、Ralslonia spp.(例えば、R. eulropha)、Rhodococcus spp.(例えば、R. erythropolis)、Rhodospirillum spp.(例えば、R. rubrum)、Rhizobium spp.、Rhizopus spp.、Saccharomyces spp.(例えば、S. cerevisiae、S. boulardii sequela、S. torula)、Sphingomonas spp.(例えば、S. paucimobilis)、Starmerella spp.(例えば、S. bombicola)、Thraustochytrium spp.、Torulopsis spp.、Ustilago spp.(例えば、U. maydis)、Wickerhamomyces spp.(例えば、W. anomalus)、Williopsis spp.及び/又はZygosaccharomyces spp.(例えば、Z. bailii)が挙げられる。
【0172】
一実施形態において、本方法は、酵母、例えば、Wickerhamomyces anomalus、Pseudozyma aphidis、Starmerella bombicola、Pichia kudriavzevii又はPichia guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)等を利用する。これらの酵母は、リン脂質、糖脂質、酵素及び他の有用な代謝物をはじめとする様々な両親媒性分子を生成するのに有効である。
【0173】
一実施形態において、本方法は、例えば、Bacillus sp等の細菌を利用する。特定の実施形態において、細菌は、B. subtilis株B4(株NRRL B-68031)又はB. amyloliquefaciens「B. amy」(株NRRL B-67928)である。
【0174】
特定の実施形態において、B. amyは、B. amyloliquefaciensやBacillus spp.の参照株のバイオサーファクタント生成能力に比べて、独特なリポペプチドバイオサーファクタントの混合物を生成する能力により、特に有益である。このリポペプチド混合物は、サーファクチン、リケニシン、フェンギシン及びイチュリンAを含む。ある実施形態において、B. amyは、Bacillus amyloliquefaciensの参照株に比べて、生成されるバイオサーファクタントの総量が多い。
【0175】
いくつかの実施形態において、株B4は、増加した量のリポペプチドバイオサーファクタント、特に、サーファクチンを生成する。利点を挙げると、いくつかの実施形態において、B4及び/又はそれが生成する増加した量のサーファクチンは、家畜の消化器及び排泄物において、メタン生成バイオフィルムを大幅に破断させるのに特に役立つ。
【0176】
いくつかの実施形態において、B4は、「界面活性剤過剰生成」である。例えば、この株は、少なくとも0.1~10g/L、例えば、0.5~1g/Lのバイオサーファクタントを、又は、他のB. subtilis細菌に比べて、例えば、少なくとも10%、25%、50%、100%、2倍、5倍、7.5倍、10倍、12倍、15倍以上生成する。例えば、いくつかの実施形態において、ATCC39307を参照株として用いることができる。
【0177】
B. amy及びB4株の培養物は、農研機構機関北部地域研究所(NRRL)カルチャーコレクション、1400 Independence Ave.,S.W.,Washington,DC,20250,USAに寄託された。B. amy寄託物は、寄託機関によって受託番号NRRL B-67928を割り当てられ、2020年2月26日に寄託された。B4寄託物は、寄託機関によって受託番号NRRL B-68031を割り当てられ、2021年5月6日に寄託された。
【0178】
本培養物はそれぞれ、37CFR 1.14及び35U.S.C122に基づいて特許商標局長が権利を有すると決定したものに対して、本特許出願の係属中に培養物へのアクセスが利用可能であることを保証する条件下で寄託されている。寄託物は、対象出願の対応出願又はその子孫出願がされている国において、外国特許法により要求されているように利用可能である。しかしながら、寄託物の利用可能性は、政府の措置によって付与された特許権の無効化において本発明を実施するためのライセンスを構成しないことを理解されたい。
【0179】
さらに、本培養物寄託物はそれぞれ、微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定に従い、保管され、公衆に利用可能にされる、すなわち、寄託物のサンプルの提供のための最新の要求の後、少なくとも5年間、及び、いずれの場合も、寄託の日の後少なくとも30年間、又は培養物を開示することができる特許の実施可能期間、生存可能で汚染されないようにするために必要な全ての注意をもって保管される。寄託者は、寄託の条件のために、要求されたときにサンプルを提供することができない場合、寄託物を交換する義務を承認するものとする。本培養寄託物の公衆への利用可能性に関する全ての制限は、それを開示する特許の付与に際して取消不能に除去される。
【0180】
例えば、有意な量の、例えば両親媒性分子を蓄積することができる他の株を含む他の微生物株を、本発明に従って使用することができる。本発明に従って有用なさらなる代謝産物としては、マンノプロテイン、ベータ-グルカン、ならびに生体乳化特性及び表面/界面張力低減特性を有する他の分子が挙げられる。
【0181】
微生物ベースの生成物の作製
本発明の1つの微生物ベースの生成物は、単に、微生物及び/又は微生物によって生成される微生物代謝産物及び/又は任意の残留栄養素を含有する発酵ブロスである。発酵産物は、抽出又は精製することなく直接使用してもよい。
【0182】
しかしながら、抽出及び精製は、文献に記載されている標準的な抽出及び/又は精製方法又は技術を用いて容易に行うことができる。例えば、特定の実施形態において、微生物ベースの生成物は、粗製又は精製された形態のいずれかの微生物増殖副生成物を単に含む。特定の実施形態において、副生成物は、本発明に従って増殖させた微生物によって生成されるバイオサーファクタントである。
【0183】
微生物増殖から生じる微生物及び/又はブロスは、増殖容器から取り出され、例えば、直ちに使用するための管を介して移すことができる。
【0184】
他の実施形態において、組成物(微生物、ブロス、又は微生物及びブロス)は、例えば、意図される使用、想定される適用方法、発酵タンクのサイズ、及び微生物増殖施設から使用場所への任意の輸送モードを考慮して、適切なサイズの容器に入れることができる。このように、微生物ベースの組成物を入れる容器は、例えば、1ガロン~1,000ガロン以上であってもよい。他の実施形態において、容器は、2ガロン、5ガロン、25ガロン、又はそれ以上である。
【0185】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、以下の1つ以上を含む、バイオサーファクタント単独に勝る利点を有する。すなわち、酵母細胞壁の外表面の一部としての高濃度のマンノプロテイン(マンノプロテインは80%の乳化指数を有する可能性のある非常に有効なバイオ乳化剤である)、酵母細胞壁中のバイオポリマーベータ-グルカン(乳化剤)の存在、表面張力及び界面張力の両方を低減することができる培養物中のバイオサーファクタントの存在、及び代謝産物(例えば、乳酸、エタノール等)の存在である。
【0186】
増殖容器から微生物ベースの組成物を採取すると、採取した生成物を容器に入れ、及び/又は管に通す(又は使用のために輸送する)際に、さらなる成分を添加することができる。添加剤は、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる施設で製造された他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、防腐剤、微生物増殖のための栄養素、追跡剤、溶媒、殺生物剤、他の微生物、及び意図される使用に特定の他の成分とすることができる。
【0187】
本発明による製剤中に含有されていてもよい他の適切な添加剤としては、そのような配合に慣例的に使用される物質が挙げられる。このような添加剤の例としては、界面活性剤、乳化剤、潤滑剤、緩衝剤、溶解性制御剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤及び紫外線耐性剤が挙げられる。
【0188】
一実施形態において、組成物は、有機及びアミノ酸又はそれらの塩を含む緩衝剤をさらに含んでもよい。適切な緩衝剤には、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクト糖酸塩、グルカル酸塩、タルトロ酸塩、グルタミン酸塩、グリシン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニン及びそれらの混合物が含まれる。また、リン酸及び亜リン酸又はそれらの塩を用いてもよい。合成緩衝液を使用することが適切であるが、有機及びアミノ酸又は上記に列挙したそれらの塩等の天然の緩衝液を使用することが好ましい。
【0189】
さらなる実施形態において、pH調整剤としては、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム又は重炭酸塩、塩酸、硝酸、硫酸又はそれらの混合物が挙げられる。
【0190】
一実施形態において、塩の水性調製物、例えば、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、のような追加の成分を、配合に含めることができる。
【0191】
利点を挙げると、本発明によれば、微生物ベースの生成物は、微生物が増殖した培地を含んでいてもよい。生成物は、例えば、少なくとも1重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、75重量%、又は100重量%の増殖培地である。生成物中のバイオマスの量は、例えば、それらの間の全てのパーセンテージを含めて0重量%~100重量%のいずれかである。
【0192】
任意で、生成物は、使用前に保管することができる。保管時間は短いのが好ましい。従って、保管時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、又は12時間未満であってもよい。好ましい実施形態において、生細胞が生成物中に存在する場合、生成物は、例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃未満等の低温で保管される。一方、バイオサーファクタント組成物は、典型的には周囲温度で保管することができる。
【0193】
実施例
本発明及びその多くの利点は、例示として与えられる以下の実施例からより理解ができる。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態及び変形のいくつかを例示するものである。それらは、本発明を限定するものではない。
【0194】
実施例1 サンレスタンニング製剤
サンレスタンニング組成物は、皮膚の色素沈着を増加させるために皮膚に適用される局所組成物である。結果は、UV又は他の放射光を使用しない一時的な「日焼け」である。
【0195】
特定の実施形態において、本発明は、1つ以上のBAMを含む局所サンレスタンニング製剤を提供する。対象の皮膚にサンレスタンニングを提供するための方法も提供され、サンレスタンニング組成物が、対象の皮膚に直接適用される。好ましくは、組成物は、色素沈着の増加が望まれる皮膚の全ての部分上に、均一かつ均一に皮膚に適用される。
【0196】
本発明の方法は、日光浴に対する対象の要望を低下させながら、日焼け及び日光起因の皮膚癌のリスクを低下させるために使用することができる。
【0197】
本発明のサンレスタンニング組成物は、例えば、エアロゾルスプレー、スプレーゲル、ローション、フォーム、クリーム、ムース、セラム、ゲル、粉末として製剤化することができ、及び/又はスポンジ、ウェットワイプ、タオル若しくはローラーボールに含浸させることができる。
【0198】
さらに、本組成物は、加圧サンレスタンニングスプレーを使用する、プロの日焼けサロンで適用することができる。これらのサンレスタンニングスプレーは、密閉ブース又は手持ち式スプレー装置のいずれかにおいて、ミストの形態で全身に送達することができる。
【0199】
好ましい実施形態において、サンレスタンニング組成物は、例えば、0.1重量%~50重量%、又は0.5重量%~25重量%、又は1.0重量%~15重量%、又は2.0重量%~10重量%、又は3重量%~5重量%のBAMを含む。特定の好ましい実施形態において、BAMは、ソホロ脂質である。ソホロ脂質は、ラクトン性SLP、リニアSLP、及び/又はそれらの誘導体の混合物を含有することができる。特定の実施形態において、比は例えば、0:1~1:10、又は1:4~1:5の範囲のリニア対ラクトン性SLPである。
【0200】
利点を挙げると、BAMは、組成物をエマルジョンとして維持するのを補助でき、これは、数ヶ月(例えば、2~24ヶ月)を含む期間、室温に置いた後の相分離に対して耐性であることを意味する。加えて、BAMは、十分に低い粘度を維持することができ、発泡を引き起こすことなく、容易に適用できる。さらに、BAMは、例えば、皮膚のための湿潤剤(a wetting agent)として作用すること、ストリーキングを低減すること、活性日焼け成分の分散を改善すること、ならびに皮膚に適用された際の着色剤の耐久性、粘着性及び浸透性を改善することによって、サンレスタンニング製剤の適用及び外観を向上させることができる。
【0201】
特定の実施形態において、BAMは、界面活性剤の代わりに、又は界面活性剤に加えて使用され、例えば、本明細書の他の箇所に列挙されているもの、及びステアリン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート、例えば、Tween60、ステアリン酸ポリオキシエチレン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0202】
好ましい実施形態において、組成物は、日焼け活性成分を含み、その結果、組成物が皮膚に適用されると、皮膚の外観は暗くなる。日焼け活性成分としては、これらに限定されるものではないが、ジヒドロキシアセトン(DHA)、1,3,4-トリヒドロキシ-2-ブタノン(エリトルロース)、及び植物抽出物、例えば、Betula alba及びEclipta alba、クルミ油、ホホバ、バニラ、紅茶及びコーヒーが挙げられる。
【0203】
日焼け活性成分は、所望のレベルの皮膚の暗色化を提供する量で、サンレスタンニング組成物に含めることができる。特定の実施形態において、日焼け活性成分は、約0.1重量%~約25重量%、又は約0.5重量%~約20重量%、又は約1.0重量%~約15重量%で、サンレス日焼け組成物中に含めることができる。
【0204】
特定の実施形態において、BAMは、低レベルの活性物質を使用して所望の効果を提供することができるように、日焼け活性成分の徐放性を提供するのに役立つ。さらに、特定の日焼け活性成分は、特定の高いレベルで、皮膚に対して刺激性である可能性があり、従って、いくつかの実施形態において、BAMは、そのような適用の結果として、皮膚刺激を低減するのに有用である。
【0205】
いくつかの実施形態において、活性日焼け成分は、不快な臭いを有し得る。DHAは、この特性について知られている。従って、サンレスタンニング組成物中に香料成分及び/又は臭気中和剤を含めることが必要な場合がある。香料の例としては、植物源から抽出された香料物質(すなわち、バラの花弁、クチナシの花、ジャスミンの花等)が挙げられ、これらは単独で、又は任意の組み合わせで使用して、精油を作製することができる。あるいは、香料を配合するためにアルコール抽出物を調製してもよい。1つ以上の香料は、任意で、約0.001~約10重量%、又は約0.05~約5重量%の範囲の量で組成物中に含めることができる。
【0206】
加えて、臭気中和剤を使用して、サンレスタンニング組成物を比較的無臭にすることができる。使用することができる例示的な臭気中和剤は、Bell Aire FragrancesからOrdenoneの名称で入手可能である。組成物が臭気中和剤を含む場合、組成物は、特定の臭気を中和するのに十分な量、例えば、約0.05重量%~約1重量%で含めることができる。
【0207】
いくつかの実施形態において、サンレスタンニング組成物は、サンレスタンニング効果の外観を向上させ、及び/又は寿命を延ばすために、皮膚結合成分、マキシマイザー、チングル、オプティマイザー及び促進剤をさらに含むことができる。
【0208】
特定の実施形態において、組成物は、日焼け活性成分を皮膚組織に十分な長さの時間露光した状態に保持して、日焼け活性成分が皮膚に暗色化効果を提供することを可能にする、ポリマー皮膚結合成分を含む。例えば、皮膚結合成分は、日焼け成分を、皮膚に少なくとも1時間、少なくとも4時間又は少なくとも8時間接着させることができる。利点を挙げると、皮膚結合成分が、日焼け組成物の適用後の時間を短縮することができ、対象は日焼け組成物を洗い流すことなくシャワーを浴びることができる。
【0209】
皮膚結合成分は、所望のレベルの皮膚暗色化を提供する量で、サンレスタンニング組成物中に含めることができる。特定の実施形態において、皮膚結合成分は、約0.1重量%~約50重量%、又は約0.5重量%~約30重量%、又は約1.0重量%~約25重量%でサンレスタンニング組成物に含めることができる。特定の実施形態において、本発明のBAMは、ポリマー皮膚結合成分を増強及び/又は置き換えることができる。
【0210】
いくつかの実施形態において、サンレスタンニング組成物は、約3.0~約5.0の所望のpH(例えば、約0.1重量%~約0.5重量%の量)を提供する量のpH調整剤を含む。pH調整剤は、例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、又はそれらの組み合わせである。
【0211】
いくつかの実施形態において、サンレスタンニング組成物は、皮膚の上に日焼け活性成分の所望の被覆範囲を提供しつつ、組成物が皮膚に適用されることを可能にするのに十分な量の水を含む。水成分は、例えば、脱イオン水、濾過水、蒸留水、逆浸透水、又は水道水として提供することができる。水が硬度又は他の成分を含む場合、水硬度に対処するために、ビルダー、金属イオン封鎖剤、及びキレート剤を含むことが望ましい場合がある。一般に、サンレスタンニング組成物は、少なくとも約50重量%~95重量%の水、又は約65重量%~約90重量%の水を含むことができる。
【0212】
いくつかの実施形態において、サンレスタンニング組成物は、染料、顔料又はティント等の着色剤を含む。サンレスタンニング組成物は、皮膚に最初に適用されたときに容易に視覚化される(すなわち、着色される)ことを可能にするのに十分な量の水溶性の染料(色指示薬)を含有することができ、その結果、エマルジョンが皮膚上に広げられた後に乾燥し、及び/又は手及び/又は指を使用して擦ると、色が実質的に消える。1つ以上の着色剤を、組成物の約0.00001~約0.5重量%、又は約0.0001~約0.2%、又は約0.001~約0.1%の量で組成物中で使用することができる。
【0213】
いくつかの実施形態において、サンレスタンニング組成物は、例えば、約0.1重量%~約2.0重量%、又は約0.5重量%~約1.0重量%の増粘剤;例えば、約0.5重量%~約3重量%、又は約1重量%~約2重量%の皮膚軟化剤;例えば、約0.5重量%~5.0重量%、又は約1.0重量%~約2.5重量%のモイスチャライザー;例えば、約0.25重量%~約1.0重量%、又は約0.3重量%~約0.5重量%の防腐剤;例えば、約0.1重量%~1.0重量%、又は約0.2重量%~約0.8重量%の抗酸化剤及び/又は、例えば、約0.001~約0.1重量%のキレート剤のうち1つ以上を任意で含む。
【国際調査報告】