(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】原子炉用の格納構造物および構成
(51)【国際特許分類】
G21C 13/00 20060101AFI20230831BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G21C13/00 200
G21C13/00 300
G21C15/18 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511624
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 US2021020946
(87)【国際公開番号】W WO2022039784
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ブライアン シー.
(57)【要約】
原子炉用の安全システムは、第1格納構造物および第2格納構造物を含む。二重格納構成は、独立的な冗長性によって、全ての設計基準事故および設計基準を超える事象に適合するように設計および構成されている。反応度を制御し、崩壊熱を除去し、核分裂生成物を保持する残りのシステムは、業務のシステム、構造およびコンポーネントとして分類および設計され得る。そのため、当該残りのシステムを、業務システム用の適切な品質等級に従って、設計および認可することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉であって、
原子炉炉心と、
原子炉容器であって、前記原子炉炉心が当該原子炉容器内にある原子炉容器と、
業務システムとして分類される反応度制御システムと、
業務システムとして分類される崩壊熱除去システムと、
業務システムとして分類される核分裂生成物保持システムと、
前記原子炉容器を取り囲む第1格納構造物であって、第1安全システムとして分類される第1格納構造物と、
前記第1格納構造物を取り囲む第2格納構造物であって、第2安全システムとして分類される第2格納構造物と、
を備え、
前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、全ての設計基準事故に適合するのに十分であり、
前記第2格納構造物は、前記第1格納構造物に対して冗長性を提供している、原子炉。
【請求項2】
前記原子炉に関連する安全関連設備は、
前記第1格納構造物と、
前記第2格納構造物と、
から実質的になる、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記崩壊熱除去システムは、安全関連設備として分類されない、請求項1に記載の原子炉。
【請求項4】
前記第1格納構造物は、コンクリートによって取り囲まれた気密鋼鉄構造物を含む、請求項1に記載の原子炉。
【請求項5】
前記第2格納構造物は、強化コンクリートを含む、請求項1に記載の原子炉。
【請求項6】
前記第2格納構造物は、鋼鉄強化コンクリートを含む、請求項5に記載の原子炉。
【請求項7】
前記第1格納構造物は、第1容積を画定しており、
前記第2格納構造物は、前記第1容積よりも大きい第2容積を画定している、請求項1に記載の原子炉。
【請求項8】
前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、10よりも大きい、請求項7に記載の原子炉。
【請求項9】
前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、20よりも大きい、請求項7に記載の原子炉。
【請求項10】
前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、50よりも大きい、請求項7に記載の原子炉。
【請求項11】
原子炉容器を取り囲む第1格納構造物と、
前記第1格納構造物を取り囲む第2格納構造物と、
から実質的になる、原子炉用の安全システム。
【請求項12】
前記第1格納構造物は、強化コンクリートを含む、請求項11に記載の安全システム。
【請求項13】
前記第1格納構造物は、密閉された鋼鉄構造物を含む、請求項11に記載の安全システム。
【請求項14】
前記第1格納構造物は、前記第1格納構造物の内側部分へのアクセスを提供するために、前記第1格納構造物を貫通するエアロックを含む、請求項13に記載の安全システム。
【請求項15】
前記第2格納構造物は、強化コンクリートを含む、請求項11に記載の安全システム。
【請求項16】
前記第2格納構造物は、鋼鉄強化コンクリートを含む、請求項15に記載の安全システム。
【請求項17】
前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、互いに分離されている、請求項11に記載の安全システム。
【請求項18】
前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、設計基準事故のいかなる公共安全上の結果も排除するように設計されている、請求項11に記載の安全システム。
【請求項19】
前記第1格納構造物は、第1容積を画定しており、
前記第2格納構造物は、前記第1容積よりも大きい第2容積を画定している、請求項11に記載の安全システム。
【請求項20】
前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、10よりも大きい、請求項19に記載の安全システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2020年8月17日に出願された「MODULAR MANUFACTURE, DELIVERY, AND ASSEMBLY OF NUCLEAR REACTOR」という名称の米国仮特許出願第63/066,778号の利益を主張するものである。その内容全体が、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔背景〕
米国原子力規制委員会によれば、格納構造物は、核分裂生成物を封じ込めるための、原子炉の周りの気密シェルまたはその他のエンクロージャである。さもなければ、当該核分裂生成物は、事故の際に大気中に放出されてしまう可能性がある。通常、かかるエンクロージャは、ドーム形状であり、鋼鉄強化コンクリートで作られている。
【0003】
当該格納構造物は、特定の規制ガイドラインに適合する必要があり、通常、設計基準事故の際の最後の防御線である。通常、その他の安全システムには、特に、燃料被覆、原子炉容器、および冷却材システムが含まれている。これらの他の安全システムは、設計基準事故に対処するように設計および建設される必要があり、また、規制認可要件に合格する必要がある。したがって、これらのシステムはしばしば、複雑かつ堅牢(ロバスト)であり、多数の設計基準事故のうちのいずれの設計基準事故にも耐える安全率を有するように設計施工(エンジニアリング)されている。結果として、これらの安全関連システムの設計施工、建設および認可はしばしば、困難で、かつ、時間集約的および資本集約的なプロセスとなる。原子炉に関連するこれらの安全システムは、建設費用、建設時間、および規制認可の障害の主たる動因のうちの一部となっている。
【0004】
当該システム、建設時間および規制認可要件を単純化することは、著しい利点となるだろう。これらの利点、およびその他の利点は、以下の説明、および付属する図面から、容易に明らかとなるだろう。
【0005】
〔概要〕
一部の実施形態によれば、原子炉に関する安全等級システムは、第1格納構造物と、第2格納構造物と、から実質的になる。例えば、原子炉は、原子炉炉心と、原子炉容器であって、前記原子炉炉心が当該原子炉容器内にある原子炉容器と、業務システムとして分類される反応度制御システムと、業務システムとして分類される崩壊熱除去システムと、業務システムとして分類される核分裂生成物保持(保留)システムと、前記原子炉容器を取り囲む第1格納構造物であって、第1安全システムとして分類される第1格納構造物と、前記第1格納構造物を取り囲む第2格納構造物であって、第2安全システムとして分類される第2格納構造物と、を備えていてもよく、前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、全ての設計基準事故に適合するのに十分であり、前記第2格納構造物は、前記第1格納構造物に対して冗長性を提供している。本明細書において使用する場合、業務システムとして「分類される(categorized)」システムは、業務システムとして設計、建設、および認可されるシステムであり、安全等級システムを含まない。安全等級システムは、その設計、構造、重要性、および必要とされる冗長性に関して、特定の規制を有する。他方、業務システムは、設計、建設、重要性、および冗長性の点において、はるかに少ない要件を有する。
【0006】
一部の場合において、原子炉に関連する安全関連設備は、前記第1格納構造物と、前記第2格納構造物と、から実質的になる。
【0007】
例えば、一部の実施形態において、前記崩壊熱除去システムは、安全関連設備として分類されない。前記第1格納構造物は、コンクリートによって取り囲まれた気密鋼鉄構造物を含んでもよい。前記第2格納構造物は、強化コンクリートを含んでもよい。一部の場合において、前記第2格納構造物は、鋼鉄強化コンクリートで形成されている。
【0008】
一部の実施形態によれば、前記第1格納構造物は、第1容積を画定しており、前記第2格納構造物は、前記第1容積よりも大きい第2容積を画定している。一部の場合において、前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、10よりも大きく、20よりも大きく、50よりも大きく、または、100よりも大きい。
【0009】
一部の実施形態によれば、原子炉用の安全システムは、原子炉容器を取り囲む第1格納構造物と、前記第1格納構造物を取り囲む第2格納構造物と、から実質的になる。
【0010】
前記第1格納構造物は、強化コンクリートで形成されていてもよい。一部の場合において、前記第1格納構造物は、密閉された鋼鉄構造物を含んでもよい。前記第1格納構造物は、前記第1格納構造物の内部部分へのアクセスを提供するための、前記第1格納構造物を通るエアロックを備えてもよい。
【0011】
一部の場合において、前記第2格納構造物は、強化コンクリートを含む。前記第2格納構造物は、鋼鉄強化コンクリートを含んでもよい。
【0012】
一部の実施形態によれば、前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、互いに分離されている。
【0013】
一部の場合において、前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、設計基準事故のいかなる公共安全上の結果も排除するように設計されている。
【0014】
前記第1格納構造物は、第1容積を画定していてもよく、前記第2格納構造物は、前記第1容積よりも大きい第2容積を画定していてもよい。一部の場合において、前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、10、20、30、40、50、80、100、または、それ以上の数よりも大きい。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、軽水炉(「LWR(light water reactor)」)用の格納構造物の模式図である。
【0016】
図2は、一部の実施形態による、原子炉と共に使用されるサンプルシステムの分類されたリストである。
【0017】
図3は、一部の実施形態による、例示的な安全関連のシステムおよび機能を示す。
【0018】
図4は、一部の実施形態による、設計基準事故に適合するための例示的な安全システムを示す。
【0019】
〔詳細な説明〕
本開示は概して、原子炉用の格納構造物と、設計基準事故を軽減するための戦略とに関する。一部の点において、本明細書に記載された格納構造物および構成は、原子炉の設計施工、建設、および認可の時間および費用を、著しく低減する。本明細書に記載された格納容器は、安全率が大きいことによって、任意の設計基準事故(「DBA(design basis accident)」)および設計基準を超える事象(「BDBE(beyond design basis events)」)に効率的に耐えることができるからである。
【0020】
米国では、一般設計基準は、連邦法によって支配されており、格納容器壁を貫通する隔離ライン(isolating line)を含む格納構造物の基本的設計基準の概略を示している。一般に、格納容器建屋は、原子炉を包囲する気密構造物であり、外部の大気から密閉されている。通常、格納容器建屋は、満載状態における旅客機の衝突に、構造物が破れることなく耐えるよう、構築されている。
【0021】
格納構造物に関する要件は、原子炉の大きさおよびタイプ、当該原子炉の世代、ならびに原子力プラントの他の特定の必要性に大きく依存する。典型的な原子炉設備において、抑制システムは、安全性解析にとって非常に重要であり、格納構造物の設計に影響を及ぼす。
【0022】
通常、設計基準事故の際の冗長的格納を提供する格納構造物および隔離システムの必須試験がある。加えて、事故時に漏洩が起こる可能性がある箇所を特定し、漏洩経路を決定するために、局所漏洩率試験が定期的に実施される。多くの場合において、原子力プラントのオペレータには、各運転停止事象後の再始動前に、十分な格納容器完全性を証明することが要求される。
【0023】
多くの場合において設計基準事故に対する最後の防御線である格納構造物に加え、設計基準事故に耐え、かつ/または設計基準事故に対処するように設計および建設される必要がある、多数の追加的な安全システムがある。例えば、原子炉のタイプに応じて、事故が起きた際に、原子炉の運転を停止し、当該原子炉を運転停止状態に維持し、放射性物質の放出を防止するように設計された安全システムが存在する。
【0024】
安全システムの例として、炉心内における制御棒;原子炉保護システム(「RPS(reactor protection system)」)、非常用炉心冷却システム(「ECCS(emergency core cooling system)」)、崩壊熱除去システム、ナトリウム-水反応保護システム(SWRPS(sodium-water reaction protection system))、非常用電気システム、緊急ガス処理システム(「SGTS(standby gas treatment system)」)、格納(封じ込め)システム、および換気システムが挙げられる。もちろん、原子炉のタイプに応じて、付加的なシステムまたはより少数のシステムが、規制認可のために必要とされ得る。上記のリストは、代表的なものとして提供されている。一般に、制御棒は、中性子吸収体として働き、炉心に挿入して、中性子束を低減し、臨界核反応を終了させることができる。原子炉保護システムは、緊急停止事象を開始し、通常は負の反応度の物質を炉心に挿入することによって、核反応を終了させるように構成されている。当該負の反応度の物質は制御棒であり得る。ECCSは、事故の際に原子炉を安全に停止するように設計されており、減圧システム、冷却材注入システム、隔離システム、および格納容器スプレーシステム等の、追加のシステムを含み得る。
【0025】
非常用電気システムは、安全システムが事故の際に意図通りに機能できるように、ディーゼル発電機、バッテリ、グリッド電力、または他の何らかの形態の電力を含み得る。SGTSは、二次格納容器からの空気をフィルタリングおよび圧送し、放射性物質の放出が防止されるように当該二次格納容器内を負圧に維持する。換気システムは、空気から放射能を除去するように構成され得、これにより、放射能の影響から、制御室およびプラントオペレータを保護する。
【0026】
一般に、構造、システム、およびコンポーネント(「SSC(structures, systems, and components)」)は、原子力プラントのライフサイクルにおける深層防護(defense in depth)アプローチの一部として分類されている。より高い安全上の重要性を有するシステムが、より高品質かつより堅牢であり、故障に耐えることができ、ハザードに対してより耐性が高くなければならないことを義務付ける、安全性に対する等級別アプローチが存在する。安全性クラスは、設計、資格、品質保証、フォールトトレランス、システムアーキテクチャ、およびニュークリアアイランド(nuclear island)内におけるレイアウト/ロケーションに関する諸要件に対して、直接的な影響を有する。
【0027】
原子炉に関連する安全システムのうちの多くの安全システムは、高い安全上の重要性を有する。そのため、当該多くの安全システムは、設計基準故障(design basis failure)の際にも、公共または環境への危害のリスクが最小限となることが保証されるように、非常に高い品質標準に合わせて設計、建設、および認可される必要がある。予想されるであろうように、多くの場合において、安全システムの設計、建設および認可に伴う費用および時間は、システムまたはコンポーネントの安全性分類にいくぶん結び付き得る。
【0028】
国際原子力機関(「IAEA(International Atomic Energy Agency)」)によれば、システムは、安全上重要な機能を果たすものと、安全上重要でない機能を果たすものとに大別される。安全上重要なシステムとは、機能不全または故障が現場職員または公衆の成員の放射線被曝につながり得る項目(アイテム)である。当該安全上重要なシステムには、反応度の制御、残留熱の除去、放射性物質の封じ込め等が含まれる。
【0029】
安全関連システムは、その機能および安全上の重要性に応じて、さらに複数の分類へと分けられる。多くの場合において、安全関連設備に関する階層的分類システムには、3つの階層が含まれる。安全性分類の国際的なハーモナイゼーションは現状では存在しないが、本明細書に記載された思想は、局所的な管轄区域におけるいかなる分類システムに対しても十分なものだろう。
【0030】
冗長性を提供するため、事故を防止し、かかる事故の結果を軽減する一次的な手段は、独立かつ冗長である多様なバックアップシステムを提供する深層防護の適用である。これによって、潜在的な人間または機械の失敗または故障を補償するために、いかなる単一の安全層にも、それがどれほど堅牢であれ、専ら依存することがないことが保証される。
【0031】
図1に関して、LWRに関する典型的な格納容器建屋100が示されている。格納容器建屋100は通常、鋼鉄、コンクリート、および/または鋼鉄強化コンクリートで形成されている。格納容器建屋100は、環境への放射性物質の制御されていない放出を防止するように設計されている。一部の場合において、格納容器建屋は、冷却材喪失(「LOC(loss of coolant)」)事故等による当該格納容器建屋内の圧力上昇を封じ込めるよう成形されている。このため、格納容器建屋は通常、半球形状、円筒形状、またはこれらの組合せ(例えば、ドーム状円筒体)となるように成形されている。
【0032】
多くの場合において、この分野の現状の格納構造物には鋼鉄シェル102が含まれ、該鋼鉄シェル102は、原子炉容器および原子炉炉心106を取り囲み、強化コンクリート104によって取り囲まれる。
【0033】
図2に関して、原子力プラント設備の様々なカテゴリを示す、プラント設備の高水準の総称が図示されている。高水準において、プラント設備200は、安全項目202または業務項目204のいずれかのカテゴリに分けることができる。規制上の観点から、安全項目202は、原子炉の安全運転を促進または保証し、公害を防止するSSCである。原子炉の日々の稼働を支援するものであって、安全性を特に指向するものではないその他のシステムは、業務項目204として分類することができる。
【0034】
安全項目202は、安全関連のSSC206と、特定の安全システムのSSC208と、にさらに分けることができる。安全システム208には、特に、保護システム210、安全作動システム212、および安全支援システム214等のシステムが含まれる。一般に、安全項目202のカテゴリまたは下位カテゴリのいずれかのカテゴリに該当するSSCは、DBAに耐え、当該DBAを軽減するように建設される必要がある。
【0035】
安全項目202の分類に該当し、したがって厳格な諸認可要件の遵守が必要とされる全ての冗長システムを含む、多数のSSCが存在していることを理解されたい。LWRに関する数十年の経験の結果として義務付けられたこれらの厳格な認可要件を遵守することには困難があるため、これまでの規範的方法をより先進的な原子炉設計に適用することは困難となっている。これらの認可要件は、固有の安全性特徴を有する次世代原子炉設計には必ずしも直接的に適用可能なものではない。それゆえ、多くの規制当局によって、当該要件のうちの一部からの免除が与えられるか、あるいは、より先進的な原子炉設計に対する認可が拒否されるかのいずれかがなされる必要があった。
【0036】
結果として、米国では、NRCが認可の現代化プロジェクト(Licensing Modernization Project)を完了し、非LWR原子炉テクノロジーの認可への新たなアプローチがもたらされた。この新たなガイドラインによって、業界内の規制上の不確実性が低減され、先進的原子炉の設計および認可プロセスが能率化される。
【0037】
最終決着したアプローチは、(従来の規範に基づく認可アプローチではなく)テクノロジーインクルーシブ(technology-inclusive)で、リスクインフォームド(risk-informed)で、かつパフォーマンスベースの(performance-based)レビュープロセスに焦点を当てるものである。当該アプローチでは、各々の先進的原子炉設計の独自の態様に合わせて、そのセーフティケースの明確かつ一貫性のあるレビューが提供される。要するに、このガイダンスにおいては、認可基準事象の特定、SSCに関するパフォーマンス基準の分類および確立、ならびに先進的原子炉設計の安全マージンの評価に焦点が当てられる。
【0038】
規制上の確実性を高める機会が与えられている場合でも、原子炉SSCの設計施工(エンジニアリング)、設計および認可が認可のパフォーマンス基準に適合することには、依然として重大な障害が存在する。例えば、安全項目202のカテゴリまたは下位カテゴリ内に過去に分類されていたシステムのうちの多くのシステム、または大部分のシステムを、業務項目204として設計することができ、それゆえ、これらのSSCを、より低い閾値の設計標準に合わせて設計することができる。考えられる全てのDBAに、その他のシステムによって前もって対処することによって、DBAおよびBDBEに関する全ての認可要件を依然として満たしつつ、従来の安全システムおよびその冗長システムのうちの多くのシステムを排除することができ、または、より低い標準に合わせて設計することができる。
【0039】
明確なパフォーマンスベースの認可アプローチでは、パフォーマンスベースの基準に効率的かつ費用効果の高い方法で適合する機会が生じる。例えば、基本となる安全機能については、引き続き、反応度制御、崩壊熱除去、核分裂生成物保持に焦点が当てられているが、DBAおよび一部の重要性の高いBDBEに対応するために設計者によって選択されたシステムおよび機能のみが安全に関連するものとして、適切に分類される。先進的原子炉の多くの設計者は過去の認可規制に慣れており、安全関連のSSCの堅牢な設計を続けているが、格納容器は通常、DBA目標に適合するのに必要な安全システムとしては認定されなくてもよい。
【0040】
図3Aは、原子炉容器302と、直接的原子炉補助冷却システム(「DRACS(direct reactor auxiliary cooling system)」)304と、原子炉容器302内にまたは原子炉容器302に隣接して配置された多数のSSC306a、306b、306nと、を含む、安全関連システムの典型的なケースを示す。格納容器建屋308は、通常、DBA目標に適合する必要はないものと認定され、したがって、認定された安全システムではない。非安全関連システムを破線のアウトラインで示し、安全関連システムを実線で示す。想像できるように、堅牢な認可標準に合わせて設計される必要がある、多数の安全関連のSSCが存在する。
【0041】
しかしながら、テクノロジーインクルーシブで、リスクインフォームドで、かつパフォーマンスベースの原子炉認可要件へのパラダイムシフトに伴い、今や認可要件は、事象のリスク重大性を評価するための定量的なリスク評価基準に依拠している。その結果、事故を防止および軽減するためのSSCの能力および信頼性に関するパフォーマンスターゲットが、明確に表される。これは、より大きな安全マージンを提供しつつ、設計および認可の努力を安全性の達成目標と整合させるものである。
【0042】
図3Bに示すように、一部の実施形態によれば、格納容器を、安全に関連するものとして特定することができ、DBA目標およびBDBE目標の全てに適合するように設計することができる。すなわち、格納容器は、事故が防止および軽減されるように、全てのパフォーマンスターゲットに適合するように設計することができる。一部の認可レジームの下では、SSCは、核分裂生成物が格納構造物へ放出されることを予期して設計される必要がある。したがって、堅牢な格納構造物を設け、当該格納構造物を安全に関連するものとして特定することにより、それをDBA条件およびBDBE条件に適合するように設計することができる。そのうえ、一部の実施形態によれば、2つの格納構造物を、安全に関連するものとして特定することができ、それによって、SSCの全てに対して、冗長バックアップをもたらすことができ、従って、SSCの全ては、安全性分類を有することが要求されなくてもよい。原子炉容器および原子炉炉心302には引き続き、DRACS404等の熱除去システムが含まれ得るが、それはもはや、安全関連設備として特定される必要がなくてもよい。同様に、反応度制御、崩壊熱除去、および核分裂生成物保持に関する設備406a、406b、406c...406nが引き続き、設けられ得るが、もはや安全に関連するものとして特定されなくてもよい。
【0043】
認可の現代化プロジェクトによれば、予想される運転上の出来事(「AOO(Anticipated Operational Occurrences)」)には、原子力プラントの寿命の間に1回または複数回発生することが予期される、予想されるイベントシーケンスが包含される。当該原子力プラントには、1または複数の原子炉モジュールが含まれ得る。1×10-2/プラント年以上の平均頻度を有するイベントシーケンスは、AOOとして分類される。AOOには、安全性分類とは無関係に、プラント内における全てのSSCの予期される応答が考慮される。設計基準事象(「DBE(Design Basis Events)」)には、原子力プラントの寿命中に発生することが予期されず、AOOよりも起こりにくい、低頻度のイベントシーケンスが包含される。当該原子力プラントには、1または複数の原子炉モジュールが含まれ得る。1×10-4/プラント年から1×10-2/プラント年までの平均頻度を有するイベントシーケンスは、DBEとして分類される。DBEには、安全性分類とは無関係に、プラント内における全てのSSCの予期される応答が考慮される。設計基準を超える事象(「BDBE(Beyond Design Basis Events)」)は、原子力プラントの寿命中に発生することが予期されず、DBEよりも起こりにくい、稀なイベントシーケンスである。当該原子力プラントには、1または複数の原子炉モジュールが含まれ得る。5×10-7/プラント年から1×10-4/プラント年までの平均頻度を有するイベントシーケンスは、BDBEとして分類される。BDBEには、安全性分類とは無関係に、プラント内における全てのSSCの予期される応答が考慮される。
【0044】
一部の実施形態によれば、第1格納構造物408および第2格納構造物410は、全てのAOO、DBA、およびBDBEを軽減するための二重格納構成として、適切に設計することができる。その結果、潜在的な事故結果が許容可能となる。これにより、ほぼ全ての場合において、公共的結果(影響)がゼロになる。全ての線量要件は、2つの格納障壁によって満たすことができる。これにより、残りの設備を、安全項目として分類するのではなく、むしろ、プラント生成物保持および通常の原子炉運転に関する業務項目として分類できるようになる。
【0045】
この方法体系によれば、SSCの分類は、(1)安全等級設備、および、(2)業務等級設備の、2つのカテゴリに減ずる。このとき、プラントSSCの大部分は、業務等級設備の指定に該当する。一部の実施形態によれば、第1格納構造物408および第2格納構造物410は、一次的安全等級システムである。一部の例では、第1格納構造物408および第2格納構造物410は、唯一の安全等級システムであり、放射性核種を保持するとともに、崩壊熱負荷による連続的な熱の増加を抑制するため、環境へ十分に熱伝達できるように構成されている。一部の実施形態において、DBAまたはBDBEを処理するのに役立つ、さらなる安全等級SSCが存在してもよい。
【0046】
図3Bは、二重格納構造物の構成を示す。当該構成では、一次格納構造物408が原子炉を取り囲み、二次格納構造物410が当該一次格納構造物を包囲する。安全等級設備には、一次格納構造物408および二次格納構造物410が含まれ得る。一部の場合において、安全等級設備は、一次格納構造物408および二次格納構造物410から実質的になる。一次格納構造物408は、原子炉および付属の構造物を取り囲む。二次格納構造物410は、一次格納構造物408を包囲するように構成することができる。この二重格納構成は、全てのDBAおよびBDBEに対する、安全性要件および認可要件を上回るように設計することができる。したがって、当該二重格納構成は、パフォーマンスベースの認可基準に適合するために用いることができる。一次格納構造物408および二次格納構造物410は、一方の構造物に影響を及ぼすインシデントが他方の構造物に伝わらないように、互いに分離することができる。結果的に、一次格納構造物408および二次格納構造物410によって、全てのDBAおよびBDBEに適合するように、分離されかつ冗長な安全システムが提供され得る。
【0047】
実線で示されている通り、一次格納構造物408および二次格納構造物410は、安全関連設備として示されている。残りの設備は、点線で示されている。当該残りの設備には、原子炉容器302、DRACS404、および原子炉容器内におけるSSC406a...406nが含まれる。当該残りの設備は、安全関連設備とはみなされない。したがって、当該残りの設備を、業務等級設備標準に合わせて、設計および建設することができる。
【0048】
もちろん、非安全関連設備は、原子炉の信頼性の高い運転のために引き続き必要とされてもよい。公共的安全を保証するために、原子炉の信頼性の高い運転のために必要な設備にはもはや頼っていないことが、パラダイムシフトである。もちろん、原子炉は引き続き、反応度を制御し、運転停止を確実にし、崩壊熱を除去するように設計されてもよい。
【0049】
一次格納構造物および二次格納構造物は、同じように建設されてもよく、または、異なる建設材料、厚さ、および特性を有してもよい。一次格納構造物および二次格納構造物は、設計上の決定を促進する助けとなる決定論的入力および確率論的入力に基づいて、設計されてもよい。一例として、一次格納構造物は、主に内的ハザードからの保護を与えるように設計されてもよく、一方、二次格納構造物は、主に外的ハザードからの保護を与えるように設計されてもよい。いずれの場合にも、仮定されたイベントシーケンスを用いて、パフォーマンスの達成目標に適合する一次格納構造物および二次格納構造物に関する設計基準を設定することができる。言い換えれば、二重格納構造物を、所定の線量限界の範囲内において、仮定された任意のイベントシーケンス結果に適合するように、設計することができる。
【0050】
一部の場合において、格納構造物は、任意の適切な鋼鉄、コンクリートで形成されていてもよい。当該格納構造物には、繊維強化コンクリート、鋼鉄強化コンクリート、ジオポリマー(geopolymer)コンクリート、またはその他の適切な材料が含まれてもよい。当該格納構造物のうちの1または複数の格納構造物は、代替的にまたは追加的に、鋼鉄で形成されていてもよく、鋼鉄をコンクリートマトリックスに組み込んでいてもよく、または、鋼鉄でライニングされたコンクリート構造物であってもよい。多くの場合において、一次格納構造物および/または二次格納構造物は、大気から密閉されている。一部の場合において、二次格納構造物には、ミサイルシールドによって取り囲まれた、密閉された鋼鉄構造物が含まれる。当該ミサイルシールドは、コンクリート等の任意の適切な材料で形成され得る。当該鋼鉄構造物は、当該ミサイルシールドから隔てられていてもよく、または、当該ミサイルシールドに結合されていてもよい。二次格納構造物が潜在的な外的ハザードに対処するように構成され得る場合には、一次格納構造物は、内的ハザードを軽減するように構成され得、二次格納構造物とは異なるように建設されてもよい。例えば、硬化したプレストレストコンクリート建屋が、外側格納容器として用いられてもよく、一方、内側格納容器は、一次冷却材システムの故障を仮定したときに炉心が確実に覆われたままとなるよう、冷却材に適合する、相対的に薄い金属構造物であってもよい。一部の場合において、内側格納容器は、金属構造物であってもよい。一部の場合において、当該金属構造物は、平均で1インチ~6インチ、または平均で2インチ~4インチの壁厚を有してもよい。
【0051】
一部の実施形態において、一次格納構造物は、密閉されていてもよく、放射性物質が出ていくことが抑制されるように、エアロックを通じてのアクセスのみが可能になっていてもよい。一次格納構造物および/または二次格納構造物は、例えば、3フィートを上限とする厚さ、4フィートを上限とする厚さ、5フィートを上限とする厚さ、または、さらに大きな厚さ等の、任意の適切な厚さを有してもよい。一部の場合において、一次格納構造物は、一次冷却材システムが故障した場合に炉心を覆うように構成された、金属構造物である。一部の場合において、二次格納構造物は、硬化した構造物であり、一次格納構造物よりも大きい容積を提供している。一部の実施形態によれば、一次格納構造物は、第1容積を画定しており、二次格納構造物は、当該第1容積よりも大きい第2容積を画定している。第1容積に対する第2容積の比率は、1.5、2、3、4もしくは5のオーダー、またはそれ以上のオーダーであってもよい。一部の実施形態において、第1容積に対する第2容積の比率は、約10以上、約20以上、約50以上、約80以上もしくは約100以上、またはそれ以上である。一部の場合において、容積におけるこの相違によって、一次格納構造物と二次格納構造物との間の離隔がもたらされ、また、第1格納構造物が圧力破断によって機能しなくなった場合における、気体が膨張するためのかなりの容積がもたらされる。一例として、一次格納構造物は、約2,000m3のオーダーの内部の第1容積を有してもよく、第2格納構造物は、約100,000m3のオーダーの第2容積を有してもよい。
【0052】
一部の場合において、一次格納構造物は、円筒体として形成されてもよい。一部の場合において、当該一次格納構造物は、1または複数の半球形端部を有してもよい。一部の場合において、一次格納構造物は、球形状であってもよい。一部の実施形態において、二次格納構造物は、概ね長方形状、角柱形状、または他の任意の建屋形状であってもよい。一部の場合において、二次格納構造物は、形状、アスペクト比、建屋材料等の点において、通常の建屋であるように見えてもよい。例えば、原子炉ホール(reactor hall)を、第2格納構造物として構成することができる。当該原子炉ホールは、十分に冗長な安全システムが一次格納構造物に提供されるように、安全等級標準に合わせて設計および建設することができる。
【0053】
一部の場合において、二次格納構造物は、一次格納建屋よりも大きな容積を有する金属製建屋として作られてもよい。二次格納建屋は、低い総漏洩率(integral leakage rate)を提供してもよく、いかなる放射性核種が環境へ放出されることも封じ込めるよう構成されてもよい。一次格納構造物は、外的ハザードから原子炉を保護するための硬化したシールドとして構成されてもよい。
【0054】
一部の場合において、一次格納構造物および二次格納構造物は、同様または同一の材料で形成されており、概ね同一の形状および建設技術を有してもよい。主な違いは、冗長でかつ分離された安全システムが提供されるように、二次格納構造物の容積が一次格納構造物を完全に封入するような大きさであることである。
【0055】
その結果、原子炉認可プロセスは非常に効率的となる。各SSCが、セーフティケースに関して設計または評価される必要があるのではなく、むしろ格納構造物が、全てのDBAおよびBDBEに関するあらゆるセーフティケースに適合することができるからである。さらなる結果として、最悪の場合のシナリオにおいてさえ、公共に対する潜在的な危害がなくなる。格納構造物は、起こり得るいかなるイベントシーケンスも軽減し、いかなる公共的事故の結果も回避するよう、設計されているからである。
【0056】
一部の場合において、残留崩壊熱は、DRACSユニットによって扱うことができ、または、追加的にもしくは代替的に、熱慣性および通常の流路に基づいて、一次格納容器と二次格納容器との間で処理されることができる。一部の実施形態において、二次格納容器は、一次格納構造物の任意の熱除去システムとは別個の、専用の崩壊熱除去システムを含んでもよい。提案された構成の別の利点は、DRACSシステムが、もはや一次的安全システムとして必要とはされないものの、依然として、非安全等級システムとして提供され得ることである。同様に、SCRAMシステムは、もはや一次的安全システムとして必要とはされない。結局、これらのシステムは提供されてもよいのだが、それらは安全システムとして必要ではないため、安全等級要件に適合するように設計または建設される必要はない。
【0057】
多くの場合において、一次格納構造物および二次格納構造物は、互いに独立しており、それによって、仮定された任意のDBAまたはBDBEからの防御保護における、十分な冗長性および深さを提供している。二次格納容器410は、その一次格納構造物408を包囲するという性質によって、一次格納構造物の容積よりも大きな、実質的な容積を有することとなり、一次格納容器が破損して圧力が急上昇した際の圧力状態を受け入れることができる。
【0058】
本開示は、例示的な実施形態を提示するものである。それゆえ、本開示は、いかなる点においても、本開示の実施形態の範囲および添付した特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特定された機能およびそれらの関係の実装を示す機能構成ブロックの助けを借りつつ、実施形態を上述してきた。本明細書において、これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、任意に定められている。特定された機能およびそれらの関係が適切に実施される程度に、代替的な境界が定められてもよい。
【0059】
本開示の実施形態の一般的性質は、本開示の実施形態の一般的思想から逸脱することなく、当業者の知識を適用することで、様々な応用のために特定の実施形態を他者が過度の実験なしに容易に修正および/または適合し得る程度に十分に、かかる特定の実施形態の前述した説明によって明らかとなるだろう。それゆえ、かかる適合および修正は、本明細書に提示された教示および導きに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の中にあることが意図されている。本明細書における語法または用語は、本明細書に提示された教示および導きに照らして、当該本明細書の用語または語法が当業者によって解釈されるように説明することを目的とするものであって、限定を目的とするものではない。
【0060】
本開示の実施形態の広さおよび範囲は、上述した例示的実施形態のいずれの実施形態によっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ画定されるべきである。
【0061】
別段の定めのない限り、または、使用された文脈内で別様に理解されない限り、とりわけ「し得る」、「し得るだろう」、「してもよいだろう」または「してもよい」等の、条件に関する語は概して、特定の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含み得る一方で、他の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含まないことを伝えることを意図したものである。このように、かかる条件に関する語は概して、特徴、要素および/もしくは動作が何らかの形で、1もしくは複数の実装形態に求められることを意図するものではなく、または、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態に含まれるものなのか、あるいは、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態において実行されるべきものなのかを判定するための論理が、ユーザ入力もしくはプロンプトの有無とは無関係に、1もしくは複数の実装形態に必ず含まれることを意図するものではない。
【0062】
明細書および添付した図面には、分離機器の制御および最適化を提供し得る、システム、装置、デバイスおよび技術の例が開示されている。勿論、本開示の様々な特徴を説明する目的のために、要素および/または方法の考えられる全ての組合せについて述べることは不可能である。しかしながら、当業者には、開示された特徴のさらなる多数の組合せおよび置換が可能であることが認識される。したがって、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正が行われ得る。さらに、明細書および添付した図面について考察することで、また、本明細書に提示された、開示された実施形態を実施することで、本開示のその他の実施形態が明らかとなり得る。本明細書および添付した図面において提示された実施例は、あらゆる点において、限定的なものではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらの用語は一般的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定を目的として使用されたものではない。
【0063】
一部の実装形態において、上に論じたプロセス、システムおよび構成によって提供される機能が、代替的な方法で提供され得ることを、当業者ならば理解するだろう。図示され本明細書で説明された様々な方法、構成および配置は、例示的な実施形態を表すものである。以上から、本明細書には特定の実装形態が例示の目的で記載されているが、添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲において列挙された要件から逸脱せずに、様々な修正が行われ得ることが理解されるだろう。加えて、特定の態様が特定の特許請求の形態において以下に提示されているが、本発明者らは、利用可能な任意の特許請求の形態において、様々な態様を想定している。例えば、一部の態様のみが特定の構成において具現化されるものとして目下、説明がなされ得る一方で、その他の態様が同様に、そのようにして具現化され得る。本開示の利益を得る当業者には明らかであろうような様々な修正および変更が行われ得る。全てのかかる修正および変更を包含することが意図されている。したがって、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味において、上記の説明が考察されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】軽水炉(「LWR」)用の格納構造物の模式図である。
【
図2】一部の実施形態による、原子炉と共に使用されるサンプルシステムの分類されたリストである。
【
図3】一部の実施形態による、例示的な安全関連のシステムおよび機能を示す。
【
図4】一部の実施形態による、設計基準事故に適合するための例示的な安全システムを示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2020年8月17日に出願された「MODULAR MANUFACTURE, DELIVERY, AND ASSEMBLY OF NUCLEAR REACTOR」という名称の米国仮特許出願第63/066,778号の利益を主張するものである。その内容全体が、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔背景〕
米国原子力規制委員会によれば、格納構造物は、核分裂生成物を封じ込めるための、原子炉の周りの気密シェルまたはその他のエンクロージャである。さもなければ、当該核分裂生成物は、事故の際に大気中に放出されてしまう可能性がある。通常、かかるエンクロージャは、ドーム形状であり、鋼鉄強化コンクリートで作られている。
【0003】
当該格納構造物は、特定の規制ガイドラインに適合する必要があり、通常、設計基準事故の際の最後の防御線である。通常、その他の安全システムには、特に、燃料被覆、原子炉容器、および冷却材システムが含まれている。これらの他の安全システムは、設計基準事故に対処するように設計および建設される必要があり、また、規制認可要件に合格する必要がある。したがって、これらのシステムはしばしば、複雑かつ堅牢(ロバスト)であり、多数の設計基準事故のうちのいずれの設計基準事故にも耐える安全率を有するように設計施工(エンジニアリング)されている。結果として、これらの安全関連システムの設計施工、建設および認可はしばしば、困難で、かつ、時間集約的および資本集約的なプロセスとなる。原子炉に関連するこれらの安全システムは、建設費用、建設時間、および規制認可の障害の主たる動因のうちの一部となっている。
【0004】
当該システム、建設時間および規制認可要件を単純化することは、著しい利点となるだろう。これらの利点、およびその他の利点は、以下の説明、および付属する図面から、容易に明らかとなるだろう。
【0005】
〔概要〕
一部の実施形態によれば、原子炉に関する安全等級システムは、第1格納構造物と、第2格納構造物と、から実質的になる。例えば、原子炉は、原子炉炉心と、原子炉容器であって、前記原子炉炉心が当該原子炉容器内にある原子炉容器と、業務システムとして分類される反応度制御システムと、業務システムとして分類される崩壊熱除去システムと、業務システムとして分類される核分裂生成物保持(保留)システムと、前記原子炉容器を取り囲む第1格納構造物であって、第1安全システムとして分類される第1格納構造物と、前記第1格納構造物を取り囲む第2格納構造物であって、第2安全システムとして分類される第2格納構造物と、を備えていてもよく、前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、全ての設計基準事故に適合するのに十分であり、前記第2格納構造物は、前記第1格納構造物に対して冗長性を提供している。本明細書において使用する場合、業務システムとして「分類される(categorized)」システムは、業務システムとして設計、建設、および認可されるシステムであり、安全等級システムを含まない。安全等級システムは、その設計、構造、重要性、および必要とされる冗長性に関して、特定の規制を有する。他方、業務システムは、設計、建設、重要性、および冗長性の点において、はるかに少ない要件を有する。
【0006】
一部の場合において、原子炉に関連する安全関連設備は、前記第1格納構造物と、前記第2格納構造物と、から実質的になる。
【0007】
例えば、一部の実施形態において、前記崩壊熱除去システムは、安全関連設備として分類されない。前記第1格納構造物は、コンクリートによって取り囲まれた気密鋼鉄構造物を含んでもよい。前記第2格納構造物は、強化コンクリートを含んでもよい。一部の場合において、前記第2格納構造物は、鋼鉄強化コンクリートで形成されている。
【0008】
一部の実施形態によれば、前記第1格納構造物は、第1容積を画定しており、前記第2格納構造物は、前記第1容積よりも大きい第2容積を画定している。一部の場合において、前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、10よりも大きく、20よりも大きく、50よりも大きく、または、100よりも大きい。
【0009】
一部の実施形態によれば、原子炉用の安全システムは、原子炉容器を取り囲む第1格納構造物と、前記第1格納構造物を取り囲む第2格納構造物と、から実質的になる。
【0010】
前記第1格納構造物は、強化コンクリートで形成されていてもよい。一部の場合において、前記第1格納構造物は、密閉された鋼鉄構造物を含んでもよい。前記第1格納構造物は、前記第1格納構造物の内部部分へのアクセスを提供するための、前記第1格納構造物を通るエアロックを備えてもよい。
【0011】
一部の場合において、前記第2格納構造物は、強化コンクリートを含む。前記第2格納構造物は、鋼鉄強化コンクリートを含んでもよい。
【0012】
一部の実施形態によれば、前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、互いに分離されている。
【0013】
一部の場合において、前記第1格納構造物および前記第2格納構造物は、設計基準事故のいかなる公共安全上の結果も排除するように設計されている。
【0014】
前記第1格納構造物は、第1容積を画定していてもよく、前記第2格納構造物は、前記第1容積よりも大きい第2容積を画定していてもよい。一部の場合において、前記第1容積に対する前記第2容積の比率は、10、20、30、40、50、80、100、または、それ以上の数よりも大きい。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、軽水炉(「LWR(light water reactor)」)用の格納構造物の模式図である。
【0016】
図2は、一部の実施形態による、原子炉と共に使用されるサンプルシステムの分類されたリストである。
【0017】
図3Aは、一部の実施形態による、例示的な安全関連のシステムおよび機能を示す。
【0018】
図3Bは、一部の実施形態による、設計基準事故に適合するための例示的な安全システムを示す。
【0019】
〔詳細な説明〕
本開示は概して、原子炉用の格納構造物と、設計基準事故を軽減するための戦略とに関する。一部の点において、本明細書に記載された格納構造物および構成は、原子炉の設計施工、建設、および認可の時間および費用を、著しく低減する。本明細書に記載された格納容器は、安全率が大きいことによって、任意の設計基準事故(「DBA(design basis
accident)」)および設計基準を超える事象(「BDBE(beyond design basis events)」)に効率的に耐えることができるからである。
【0020】
米国では、一般設計基準は、連邦法によって支配されており、格納容器壁を貫通する隔離ライン(isolating line)を含む格納構造物の基本的設計基準の概略を示している。一般に、格納容器建屋は、原子炉を包囲する気密構造物であり、外部の大気から密閉されている。通常、格納容器建屋は、満載状態における旅客機の衝突に、構造物が破れることなく耐えるよう、構築されている。
【0021】
格納構造物に関する要件は、原子炉の大きさおよびタイプ、当該原子炉の世代、ならびに原子力プラントの他の特定の必要性に大きく依存する。典型的な原子炉設備において、抑制システムは、安全性解析にとって非常に重要であり、格納構造物の設計に影響を及ぼす。
【0022】
通常、設計基準事故の際の冗長的格納を提供する格納構造物および隔離システムの必須試験がある。加えて、事故時に漏洩が起こる可能性がある箇所を特定し、漏洩経路を決定するために、局所漏洩率試験が定期的に実施される。多くの場合において、原子力プラントのオペレータには、各運転停止事象後の再始動前に、十分な格納容器完全性を証明することが要求される。
【0023】
多くの場合において設計基準事故に対する最後の防御線である格納構造物に加え、設計基準事故に耐え、かつ/または設計基準事故に対処するように設計および建設される必要がある、多数の追加的な安全システムがある。例えば、原子炉のタイプに応じて、事故が起きた際に、原子炉の運転を停止し、当該原子炉を運転停止状態に維持し、放射性物質の放出を防止するように設計された安全システムが存在する。
【0024】
安全システムの例として、炉心内における制御棒;原子炉保護システム(「RPS(reactor protection system)」)、非常用炉心冷却システム(「ECCS(emergency core cooling system)」)、崩壊熱除去システム、ナトリウム-水反応保護システム(SWRPS(sodium-water reaction protection system))、非常用電気システム、緊急ガス処理システム(「SGTS(standby gas treatment system)」)、格納(封じ込め)システム、および換気システムが挙げられる。もちろん、原子炉のタイプに応じて、付加的なシステムまたはより少数のシステムが、規制認可のために必要とされ得る。上記のリストは、代表的なものとして提供されている。一般に、制御棒は、中性子吸収体として働き、炉心に挿入して、中性子束を低減し、臨界核反応を終了させることができる。原子炉保護システムは、緊急停止事象を開始し、通常は負の反応度の物質を炉心に挿入することによって、核反応を終了させるように構成されている。当該負の反応度の物質は制御棒であり得る。ECCSは、事故の際に原子炉を安全に停止するように設計されており、減圧システム、冷却材注入システム、隔離システム、および格納容器スプレーシステム等の、追加のシステムを含み得る。
【0025】
非常用電気システムは、安全システムが事故の際に意図通りに機能できるように、ディーゼル発電機、バッテリ、グリッド電力、または他の何らかの形態の電力を含み得る。SGTSは、二次格納容器からの空気をフィルタリングおよび圧送し、放射性物質の放出が防止されるように当該二次格納容器内を負圧に維持する。換気システムは、空気から放射能を除去するように構成され得、これにより、放射能の影響から、制御室およびプラントオペレータを保護する。
【0026】
一般に、構造、システム、およびコンポーネント(「SSC(structures, systems, and components)」)は、原子力プラントのライフサイクルにおける深層防護(defense in depth)アプローチの一部として分類されている。より高い安全上の重要性を有するシステムが、より高品質かつより堅牢であり、故障に耐えることができ、ハザードに対してより耐性が高くなければならないことを義務付ける、安全性に対する等級別アプローチが存在する。安全性クラスは、設計、資格、品質保証、フォールトトレランス、システムアーキテクチャ、およびニュークリアアイランド(nuclear island)内におけるレイアウト/ロケーションに関する諸要件に対して、直接的な影響を有する。
【0027】
原子炉に関連する安全システムのうちの多くの安全システムは、高い安全上の重要性を有する。そのため、当該多くの安全システムは、設計基準故障(design basis failure)の際にも、公共または環境への危害のリスクが最小限となることが保証されるように、非常に高い品質標準に合わせて設計、建設、および認可される必要がある。予想されるであろうように、多くの場合において、安全システムの設計、建設および認可に伴う費用および時間は、システムまたはコンポーネントの安全性分類にいくぶん結び付き得る。
【0028】
国際原子力機関(「IAEA(International Atomic Energy Agency)」)によれば、システムは、安全上重要な機能を果たすものと、安全上重要でない機能を果たすものとに大別される。安全上重要なシステムとは、機能不全または故障が現場職員または公衆の成員の放射線被曝につながり得る項目(アイテム)である。当該安全上重要なシステムには、反応度の制御、残留熱の除去、放射性物質の封じ込め等が含まれる。
【0029】
安全関連システムは、その機能および安全上の重要性に応じて、さらに複数の分類へと分けられる。多くの場合において、安全関連設備に関する階層的分類システムには、3つの階層が含まれる。安全性分類の国際的なハーモナイゼーションは現状では存在しないが、本明細書に記載された思想は、局所的な管轄区域におけるいかなる分類システムに対しても十分なものだろう。
【0030】
冗長性を提供するため、事故を防止し、かかる事故の結果を軽減する一次的な手段は、独立かつ冗長である多様なバックアップシステムを提供する深層防護の適用である。これによって、潜在的な人間または機械の失敗または故障を補償するために、いかなる単一の安全層にも、それがどれほど堅牢であれ、専ら依存することがないことが保証される。
【0031】
図1に関して、LWRに関する典型的な格納容器建屋100が示されている。格納容器建屋100は通常、鋼鉄、コンクリート、および/または鋼鉄強化コンクリートで形成されている。格納容器建屋100は、環境への放射性物質の制御されていない放出を防止するように設計されている。一部の場合において、格納容器建屋は、冷却材喪失(「LOC(loss of coolant)」)事故等による当該格納容器建屋内の圧力上昇を封じ込めるよう成形されている。このため、格納容器建屋は通常、半球形状、円筒形状、またはこれらの組合せ(例えば、ドーム状円筒体)となるように成形されている。
【0032】
多くの場合において、この分野の現状の格納構造物には鋼鉄シェル102が含まれ、該鋼鉄シェル102は、原子炉容器および原子炉炉心106を取り囲み、強化コンクリート104によって取り囲まれる。
【0033】
図2に関して、原子力プラント設備の様々なカテゴリを示す、プラント設備の高水準の総称が図示されている。高水準において、プラント設備200は、安全項目202または業務項目204のいずれかのカテゴリに分けることができる。規制上の観点から、安全項目202は、原子炉の安全運転を促進または保証し、公害を防止するSSCである。原子炉の日々の稼働を支援するものであって、安全性を特に指向するものではないその他のシステムは、業務項目204として分類することができる。
【0034】
安全項目202は、安全関連のSSC206と、特定の安全システムのSSC208と、にさらに分けることができる。安全システム208には、特に、保護システム210、安全作動システム212、および安全支援システム214等のシステムが含まれる。一般に、安全項目202のカテゴリまたは下位カテゴリのいずれかのカテゴリに該当するSSCは、DBAに耐え、当該DBAを軽減するように建設される必要がある。
【0035】
安全項目202の分類に該当し、したがって厳格な諸認可要件の遵守が必要とされる全ての冗長システムを含む、多数のSSCが存在していることを理解されたい。LWRに関する数十年の経験の結果として義務付けられたこれらの厳格な認可要件を遵守することには困難があるため、これまでの規範的方法をより先進的な原子炉設計に適用することは困難となっている。これらの認可要件は、固有の安全性特徴を有する次世代原子炉設計には必ずしも直接的に適用可能なものではない。それゆえ、多くの規制当局によって、当該要件のうちの一部からの免除が与えられるか、あるいは、より先進的な原子炉設計に対する認可が拒否されるかのいずれかがなされる必要があった。
【0036】
結果として、米国では、NRCが認可の現代化プロジェクト(Licensing Modernization Project)を完了し、非LWR原子炉テクノロジーの認可への新たなアプローチがもたらされた。この新たなガイドラインによって、業界内の規制上の不確実性が低減され、先進的原子炉の設計および認可プロセスが能率化される。
【0037】
最終決着したアプローチは、(従来の規範に基づく認可アプローチではなく)テクノロジーインクルーシブ(technology-inclusive)で、リスクインフォームド(risk-informed)で、かつパフォーマンスベースの(performance-based)レビュープロセスに焦点を当てるものである。当該アプローチでは、各々の先進的原子炉設計の独自の態様に合わせて、そのセーフティケースの明確かつ一貫性のあるレビューが提供される。要するに、このガイダンスにおいては、認可基準事象の特定、SSCに関するパフォーマンス基準の分類および確立、ならびに先進的原子炉設計の安全マージンの評価に焦点が当てられる。
【0038】
規制上の確実性を高める機会が与えられている場合でも、原子炉SSCの設計施工(エンジニアリング)、設計および認可が認可のパフォーマンス基準に適合することには、依然として重大な障害が存在する。例えば、安全項目202のカテゴリまたは下位カテゴリ内に過去に分類されていたシステムのうちの多くのシステム、または大部分のシステムを、業務項目204として設計することができ、それゆえ、これらのSSCを、より低い閾値の設計標準に合わせて設計することができる。考えられる全てのDBAに、その他のシステムによって前もって対処することによって、DBAおよびBDBEに関する全ての認可要件を依然として満たしつつ、従来の安全システムおよびその冗長システムのうちの多くのシステムを排除することができ、または、より低い標準に合わせて設計することができる。
【0039】
明確なパフォーマンスベースの認可アプローチでは、パフォーマンスベースの基準に効率的かつ費用効果の高い方法で適合する機会が生じる。例えば、基本となる安全機能については、引き続き、反応度制御、崩壊熱除去、核分裂生成物保持に焦点が当てられているが、DBAおよび一部の重要性の高いBDBEに対応するために設計者によって選択されたシステムおよび機能のみが安全に関連するものとして、適切に分類される。先進的原子炉の多くの設計者は過去の認可規制に慣れており、安全関連のSSCの堅牢な設計を続けているが、格納容器は通常、DBA目標に適合するのに必要な安全システムとしては認定されなくてもよい。
【0040】
図3Aは、原子炉容器302と、直接的原子炉補助冷却システム(「DRACS(direct reactor auxiliary cooling system)」)304と、原子炉容器302内にまたは原子炉容器302に隣接して配置された多数のSSC306a、306b、306nと、を含む、安全関連システムの典型的なケースを示す。格納容器建屋308は、通常、DBA目標に適合する必要はないものと認定され、したがって、認定された安全システムではない。非安全関連システムを破線のアウトラインで示し、安全関連システムを実線で示す。想像できるように、堅牢な認可標準に合わせて設計される必要がある、多数の安全関連のSSCが存在する。
【0041】
しかしながら、テクノロジーインクルーシブで、リスクインフォームドで、かつパフォーマンスベースの原子炉認可要件へのパラダイムシフトに伴い、今や認可要件は、事象のリスク重大性を評価するための定量的なリスク評価基準に依拠している。その結果、事故を防止および軽減するためのSSCの能力および信頼性に関するパフォーマンスターゲットが、明確に表される。これは、より大きな安全マージンを提供しつつ、設計および認可の努力を安全性の達成目標と整合させるものである。
【0042】
図3Bに示すように、一部の実施形態によれば、格納容器を、安全に関連するものとして特定することができ、DBA目標およびBDBE目標の全てに適合するように設計することができる。すなわち、格納容器は、事故が防止および軽減されるように、全てのパフォーマンスターゲットに適合するように設計することができる。一部の認可レジームの下では、SSCは、核分裂生成物が格納構造物へ放出されることを予期して設計される必要がある。したがって、堅牢な格納構造物を設け、当該格納構造物を安全に関連するものとして特定することにより、それをDBA条件およびBDBE条件に適合するように設計することができる。そのうえ、一部の実施形態によれば、2つの格納構造物を、安全に関連するものとして特定することができ、それによって、SSCの全てに対して、冗長バックアップをもたらすことができ、従って、SSCの全ては、安全性分類を有することが要求されなくてもよい。原子炉容器および原子炉炉心302には引き続き、DRACS404等の熱除去システムが含まれ得るが、それはもはや、安全関連設備として特定される必要がなくてもよい。同様に、反応度制御、崩壊熱除去、および核分裂生成物保持に関する設備406a、406b、406c...406nが引き続き、設けられ得るが、もはや安全に関連するものとして特定されなくてもよい。
【0043】
認可の現代化プロジェクトによれば、予想される運転上の出来事(「AOO(Anticipated Operational Occurrences)」)には、原子力プラントの寿命の間に1回または複数回発生することが予期される、予想されるイベントシーケンスが包含される。当該原子力プラントには、1または複数の原子炉モジュールが含まれ得る。1×10-2/プラント年以上の平均頻度を有するイベントシーケンスは、AOOとして分類される。AOOには、安全性分類とは無関係に、プラント内における全てのSSCの予期される応答が考慮される。設計基準事象(「DBE(Design Basis Events)」)には、原子力プラントの寿命中に発生することが予期されず、AOOよりも起こりにくい、低頻度のイベントシーケンスが包含される。当該原子力プラントには、1または複数の原子炉モジュールが含まれ得る。1×10-4/プラント年から1×10-2/プラント年までの平均頻度を有するイベントシーケンスは、DBEとして分類される。DBEには、安全性分類とは無関係に、プラント内における全てのSSCの予期される応答が考慮される。設計基準を超える事象(「BDBE(Beyond Design Basis Events)」)は、原子力プラントの寿命中に発生することが予期されず、DBEよりも起こりにくい、稀なイベントシーケンスである。当該原子力プラントには、1または複数の原子炉モジュールが含まれ得る。5×10-7/プラント年から1×10-4/プラント年までの平均頻度を有するイベントシーケンスは、BDBEとして分類される。BDBEには、安全性分類とは無関係に、プラント内における全てのSSCの予期される応答が考慮される。
【0044】
一部の実施形態によれば、第1格納構造物408および第2格納構造物410は、全てのAOO、DBA、およびBDBEを軽減するための二重格納構成として、適切に設計することができる。その結果、潜在的な事故結果が許容可能となる。これにより、ほぼ全ての場合において、公共的結果(影響)がゼロになる。全ての線量要件は、2つの格納障壁によって満たすことができる。これにより、残りの設備を、安全項目として分類するのではなく、むしろ、プラント生成物保持および通常の原子炉運転に関する業務項目として分類できるようになる。
【0045】
この方法体系によれば、SSCの分類は、(1)安全等級設備、および、(2)業務等級設備の、2つのカテゴリに減ずる。このとき、プラントSSCの大部分は、業務等級設備の指定に該当する。一部の実施形態によれば、第1格納構造物408および第2格納構造物410は、一次的安全等級システムである。一部の例では、第1格納構造物408および第2格納構造物410は、唯一の安全等級システムであり、放射性核種を保持するとともに、崩壊熱負荷による連続的な熱の増加を抑制するため、環境へ十分に熱伝達できるように構成されている。一部の実施形態において、DBAまたはBDBEを処理するのに役立つ、さらなる安全等級SSCが存在してもよい。
【0046】
図3Bは、二重格納構造物の構成を示す。当該構成では、一次格納構造物408が原子炉を取り囲み、二次格納構造物410が当該一次格納構造物を包囲する。安全等級設備には、一次格納構造物408および二次格納構造物410が含まれ得る。一部の場合において、安全等級設備は、一次格納構造物408および二次格納構造物410から実質的になる。一次格納構造物408は、原子炉および付属の構造物を取り囲む。二次格納構造物410は、一次格納構造物408を包囲するように構成することができる。この二重格納構成は、全てのDBAおよびBDBEに対する、安全性要件および認可要件を上回るように設計することができる。したがって、当該二重格納構成は、パフォーマンスベースの認可基準に適合するために用いることができる。一次格納構造物408および二次格納構造物410は、一方の構造物に影響を及ぼすインシデントが他方の構造物に伝わらないように、互いに分離することができる。結果的に、一次格納構造物408および二次格納構造物410によって、全てのDBAおよびBDBEに適合するように、分離されかつ冗長な安全システムが提供され得る。
【0047】
実線で示されている通り、一次格納構造物408および二次格納構造物410は、安全関連設備として示されている。残りの設備は、点線で示されている。当該残りの設備には、原子炉容器302、DRACS404、および原子炉容器内におけるSSC406a...406nが含まれる。当該残りの設備は、安全関連設備とはみなされない。したがって、当該残りの設備を、業務等級設備標準に合わせて、設計および建設することができる。
【0048】
もちろん、非安全関連設備は、原子炉の信頼性の高い運転のために引き続き必要とされてもよい。公共的安全を保証するために、原子炉の信頼性の高い運転のために必要な設備にはもはや頼っていないことが、パラダイムシフトである。もちろん、原子炉は引き続き、反応度を制御し、運転停止を確実にし、崩壊熱を除去するように設計されてもよい。
【0049】
一次格納構造物および二次格納構造物は、同じように建設されてもよく、または、異なる建設材料、厚さ、および特性を有してもよい。一次格納構造物および二次格納構造物は、設計上の決定を促進する助けとなる決定論的入力および確率論的入力に基づいて、設計されてもよい。一例として、一次格納構造物は、主に内的ハザードからの保護を与えるように設計されてもよく、一方、二次格納構造物は、主に外的ハザードからの保護を与えるように設計されてもよい。いずれの場合にも、仮定されたイベントシーケンスを用いて、パフォーマンスの達成目標に適合する一次格納構造物および二次格納構造物に関する設計基準を設定することができる。言い換えれば、二重格納構造物を、所定の線量限界の範囲内において、仮定された任意のイベントシーケンス結果に適合するように、設計することができる。
【0050】
一部の場合において、格納構造物は、任意の適切な鋼鉄、コンクリートで形成されていてもよい。当該格納構造物には、繊維強化コンクリート、鋼鉄強化コンクリート、ジオポリマー(geopolymer)コンクリート、またはその他の適切な材料が含まれてもよい。当該格納構造物のうちの1または複数の格納構造物は、代替的にまたは追加的に、鋼鉄で形成されていてもよく、鋼鉄をコンクリートマトリックスに組み込んでいてもよく、または、鋼鉄でライニングされたコンクリート構造物であってもよい。多くの場合において、一次格納構造物および/または二次格納構造物は、大気から密閉されている。一部の場合において、二次格納構造物には、ミサイルシールドによって取り囲まれた、密閉された鋼鉄構造物が含まれる。当該ミサイルシールドは、コンクリート等の任意の適切な材料で形成され得る。当該鋼鉄構造物は、当該ミサイルシールドから隔てられていてもよく、または、当該ミサイルシールドに結合されていてもよい。二次格納構造物が潜在的な外的ハザードに対処するように構成され得る場合には、一次格納構造物は、内的ハザードを軽減するように構成され得、二次格納構造物とは異なるように建設されてもよい。例えば、硬化したプレストレストコンクリート建屋が、外側格納容器として用いられてもよく、一方、内側格納容器は、一次冷却材システムの故障を仮定したときに炉心が確実に覆われたままとなるよう、冷却材に適合する、相対的に薄い金属構造物であってもよい。一部の場合において、内側格納容器は、金属構造物であってもよい。一部の場合において、当該金属構造物は、平均で1インチ~6インチ、または平均で2インチ~4インチの壁厚を有してもよい。
【0051】
一部の実施形態において、一次格納構造物は、密閉されていてもよく、放射性物質が出ていくことが抑制されるように、エアロックを通じてのアクセスのみが可能になっていてもよい。一次格納構造物および/または二次格納構造物は、例えば、3フィートを上限とする厚さ、4フィートを上限とする厚さ、5フィートを上限とする厚さ、または、さらに大きな厚さ等の、任意の適切な厚さを有してもよい。一部の場合において、一次格納構造物は、一次冷却材システムが故障した場合に炉心を覆うように構成された、金属構造物である。一部の場合において、二次格納構造物は、硬化した構造物であり、一次格納構造物よりも大きい容積を提供している。一部の実施形態によれば、一次格納構造物は、第1容積を画定しており、二次格納構造物は、当該第1容積よりも大きい第2容積を画定している。第1容積に対する第2容積の比率は、1.5、2、3、4もしくは5のオーダー、またはそれ以上のオーダーであってもよい。一部の実施形態において、第1容積に対する第2容積の比率は、約10以上、約20以上、約50以上、約80以上もしくは約100以上、またはそれ以上である。一部の場合において、容積におけるこの相違によって、一次格納構造物と二次格納構造物との間の離隔がもたらされ、また、第1格納構造物が圧力破断によって機能しなくなった場合における、気体が膨張するためのかなりの容積がもたらされる。一例として、一次格納構造物は、約2,000m3のオーダーの内部の第1容積を有してもよく、第2格納構造物は、約100,000m3のオーダーの第2容積を有してもよい。
【0052】
一部の場合において、一次格納構造物は、円筒体として形成されてもよい。一部の場合において、当該一次格納構造物は、1または複数の半球形端部を有してもよい。一部の場合において、一次格納構造物は、球形状であってもよい。一部の実施形態において、二次格納構造物は、概ね長方形状、角柱形状、または他の任意の建屋形状であってもよい。一部の場合において、二次格納構造物は、形状、アスペクト比、建屋材料等の点において、通常の建屋であるように見えてもよい。例えば、原子炉ホール(reactor hall)を、第2格納構造物として構成することができる。当該原子炉ホールは、十分に冗長な安全システムが一次格納構造物に提供されるように、安全等級標準に合わせて設計および建設することができる。
【0053】
一部の場合において、二次格納構造物は、一次格納建屋よりも大きな容積を有する金属製建屋として作られてもよい。二次格納建屋は、低い総漏洩率(integral leakage rate)を提供してもよく、いかなる放射性核種が環境へ放出されることも封じ込めるよう構成されてもよい。一次格納構造物は、外的ハザードから原子炉を保護するための硬化したシールドとして構成されてもよい。
【0054】
一部の場合において、一次格納構造物および二次格納構造物は、同様または同一の材料で形成されており、概ね同一の形状および建設技術を有してもよい。主な違いは、冗長でかつ分離された安全システムが提供されるように、二次格納構造物の容積が一次格納構造物を完全に封入するような大きさであることである。
【0055】
その結果、原子炉認可プロセスは非常に効率的となる。各SSCが、セーフティケースに関して設計または評価される必要があるのではなく、むしろ格納構造物が、全てのDBAおよびBDBEに関するあらゆるセーフティケースに適合することができるからである。さらなる結果として、最悪の場合のシナリオにおいてさえ、公共に対する潜在的な危害がなくなる。格納構造物は、起こり得るいかなるイベントシーケンスも軽減し、いかなる公共的事故の結果も回避するよう、設計されているからである。
【0056】
一部の場合において、残留崩壊熱は、DRACSユニットによって扱うことができ、または、追加的にもしくは代替的に、熱慣性および通常の流路に基づいて、一次格納容器と二次格納容器との間で処理されることができる。一部の実施形態において、二次格納容器は、一次格納構造物の任意の熱除去システムとは別個の、専用の崩壊熱除去システムを含んでもよい。提案された構成の別の利点は、DRACSシステムが、もはや一次的安全システムとして必要とはされないものの、依然として、非安全等級システムとして提供され得ることである。同様に、SCRAMシステムは、もはや一次的安全システムとして必要とはされない。結局、これらのシステムは提供されてもよいのだが、それらは安全システムとして必要ではないため、安全等級要件に適合するように設計または建設される必要はない。
【0057】
多くの場合において、一次格納構造物および二次格納構造物は、互いに独立しており、それによって、仮定された任意のDBAまたはBDBEからの防御保護における、十分な冗長性および深さを提供している。二次格納容器410は、その一次格納構造物408を包囲するという性質によって、一次格納構造物の容積よりも大きな、実質的な容積を有することとなり、一次格納容器が破損して圧力が急上昇した際の圧力状態を受け入れることができる。
【0058】
本開示は、例示的な実施形態を提示するものである。それゆえ、本開示は、いかなる点においても、本開示の実施形態の範囲および添付した特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特定された機能およびそれらの関係の実装を示す機能構成ブロックの助けを借りつつ、実施形態を上述してきた。本明細書において、これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、任意に定められている。特定された機能およびそれらの関係が適切に実施される程度に、代替的な境界が定められてもよい。
【0059】
本開示の実施形態の一般的性質は、本開示の実施形態の一般的思想から逸脱することなく、当業者の知識を適用することで、様々な応用のために特定の実施形態を他者が過度の実験なしに容易に修正および/または適合し得る程度に十分に、かかる特定の実施形態の前述した説明によって明らかとなるだろう。それゆえ、かかる適合および修正は、本明細書に提示された教示および導きに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の中にあることが意図されている。本明細書における語法または用語は、本明細書に提示された教示および導きに照らして、当該本明細書の用語または語法が当業者によって解釈されるように説明することを目的とするものであって、限定を目的とするものではない。
【0060】
本開示の実施形態の広さおよび範囲は、上述した例示的実施形態のいずれの実施形態によっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ画定されるべきである。
【0061】
別段の定めのない限り、または、使用された文脈内で別様に理解されない限り、とりわけ「し得る」、「し得るだろう」、「してもよいだろう」または「してもよい」等の、条件に関する語は概して、特定の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含み得る一方で、他の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含まないことを伝えることを意図したものである。このように、かかる条件に関する語は概して、特徴、要素および/もしくは動作が何らかの形で、1もしくは複数の実装形態に求められることを意図するものではなく、または、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態に含まれるものなのか、あるいは、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態において実行されるべきものなのかを判定するための論理が、ユーザ入力もしくはプロンプトの有無とは無関係に、1もしくは複数の実装形態に必ず含まれることを意図するものではない。
【0062】
明細書および添付した図面には、分離機器の制御および最適化を提供し得る、システム、装置、デバイスおよび技術の例が開示されている。勿論、本開示の様々な特徴を説明する目的のために、要素および/または方法の考えられる全ての組合せについて述べることは不可能である。しかしながら、当業者には、開示された特徴のさらなる多数の組合せおよび置換が可能であることが認識される。したがって、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正が行われ得る。さらに、明細書および添付した図面について考察することで、また、本明細書に提示された、開示された実施形態を実施することで、本開示のその他の実施形態が明らかとなり得る。本明細書および添付した図面において提示された実施例は、あらゆる点において、限定的なものではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらの用語は一般的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定を目的として使用されたものではない。
【0063】
一部の実装形態において、上に論じたプロセス、システムおよび構成によって提供される機能が、代替的な方法で提供され得ることを、当業者ならば理解するだろう。図示され本明細書で説明された様々な方法、構成および配置は、例示的な実施形態を表すものである。以上から、本明細書には特定の実装形態が例示の目的で記載されているが、添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲において列挙された要件から逸脱せずに、様々な修正が行われ得ることが理解されるだろう。加えて、特定の態様が特定の特許請求の形態において以下に提示されているが、本発明者らは、利用可能な任意の特許請求の形態において、様々な態様を想定している。例えば、一部の態様のみが特定の構成において具現化されるものとして目下、説明がなされ得る一方で、その他の態様が同様に、そのようにして具現化され得る。本開示の利益を得る当業者には明らかであろうような様々な修正および変更が行われ得る。全てのかかる修正および変更を包含することが意図されている。したがって、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味において、上記の説明が考察されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】軽水炉(「LWR」)用の格納構造物の模式図である。
【
図2】一部の実施形態による、原子炉と共に使用されるサンプルシステムの分類されたリストである。
【
図3A】一部の実施形態による、例示的な安全関連のシステムおよび機能を示す。
【
図3B】一部の実施形態による、設計基準事故に適合するための例示的な安全システムを示す。
【国際調査報告】