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特表2023-538348炭化水素の製造及びプロセス装置並びに方法の使用
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  • 特表-炭化水素の製造及びプロセス装置並びに方法の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】炭化水素の製造及びプロセス装置並びに方法の使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/22 20060101AFI20230831BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20230831BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20230831BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20230831BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C07C4/22
C08J11/14 ZAB
C07C11/06
C07C11/04
C07B61/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511677
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 FI2021050561
(87)【国際公開番号】W WO2022038316
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】20205809
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】ニエミネン マッティ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401BA06
4F401CA25
4F401CA73
4F401CB10
4F401CB11
4F401DA07
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA11Z
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AC26
4H006AD19
4H006BC10
4H006BC19
4H006BD81
(57)【要約】
本発明は、ガス化プロセスによってプラスチック含有原材料から炭化水素を製造するための方法及びプロセス装置であって、プラスチック含有原材料(1)は、炭化水素を含む生成物混合物(4)を形成するために、流動床ガス化装置(2)内で680~740℃という低いガス化温度で蒸気(3)を用いてガス化され、滞留時間は、上記ガス化温度で4秒未満であり、生成物混合物(4)は、ガス化プロセスのプロピレン収率を高めるために、プラスチック含有原材料のガス化反応を緩慢化及び/又は停止させるために、ガス化後急速に、640℃未満の温度に冷却される方法及びプロセス装置に関する。さらに、本発明はこの方法の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化プロセスによってプラスチック含有原材料から炭化水素を製造する方法であって、
炭化水素を含む生成物混合物(4)を形成するために、流動床ガス化装置(2)内で680~740℃という低いガス化温度で蒸気(3)を用いて前記プラスチック含有原材料(1)をガス化する工程であって、滞留時間は前記ガス化温度で4秒未満である工程と、
前記ガス化プロセスのプロピレン収率を高めるために、前記プラスチック含有原材料の前記ガス化反応を緩慢化及び/又は停止させるために、前記ガス化後急速に、前記生成物混合物(4)を640℃未満の温度に冷却する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガス化装置(2)がバブリング流動床ガス化装置であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス化プロセスのプロピレン収率が15重量%超、好ましくは20重量%超であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス化温度が700~730℃であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記滞留時間が前記ガス化温度で3.5秒未満であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記滞留時間が前記ガス化温度で2~3秒であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物混合物(4)が400~600℃の温度に冷却されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチック含有原材料が、少なくともポリオレフィン及び他のポリマーを含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記冷却後に固体粒子が前記生成物混合物から除去されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成物混合物が少なくともエチレン及びプロピレンを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ガス化プロセスによってプラスチック含有原材料から炭化水素を製造するためのプロセス装置であって、前記プロセス装置は、
炭化水素を含む生成物混合物(4)を形成するために、前記プラスチック含有原材料(1)が680~740℃という低いガス化温度で、前記ガス化温度での4秒未満の滞留時間で、蒸気(3)を用いてガス化される流動床ガス化装置(2)と、
前記ガス化プロセスのプロピレン収率を高めるために、前記プラスチック含有原材料の前記ガス化反応を緩慢化及び/又は停止させるために、前記ガス化後急速に、前記生成物混合物(4)を640℃未満の温度に冷却するための少なくとも1つの冷却装置と
を含むことを特徴とするプロセス装置。
【請求項12】
前記ガス化装置(2)がバブリング流動床ガス化装置であることを特徴とする請求項11に記載のプロセス装置。
【請求項13】
前記冷却装置が熱交換器及び/又は水急冷装置であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のプロセス装置。
【請求項14】
前記プロセス装置が、冷却された前記生成物混合物を濾過するための少なくとも1つの高温ガスフィルタを含むことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項15】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法の使用であって、前記方法が前記プラスチック含有原材料からオレフィン等の炭化水素を製造する際に使用されることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、炭化水素、例えばエチレン及び/又はプロピレン等のオレフィンを製造するための、請求項1に記載の方法及び請求項11に記載のプロセス装置に関する。さらに、本願は、請求項15に記載の当該方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分解(クラッキング)プロセスによって化石原料から炭化水素及びオレフィンを製造することが従来技術から公知である。さらに、プラスチック廃棄物を処理して、エネルギー又は製品を生成してもよいことは、先行技術から公知である。しかしながら、プラスチック廃棄物は、リサイクルし、新しい製品の原材料として利用するには困難である。
【0003】
欧州特許出願公開第0544840号明細書から、ポリマー廃棄材料からエチレンを回収する方法であって、ポリマー廃棄材料が、CFB熱分解装置内で、循環する伝熱材料を用いて約500~50000℃/秒の速度で650~1000℃の温度に加熱され、ポリマー廃棄材料及び伝熱材料は並流で供給され、伝熱材料とポリマー廃棄材料との比は約100:1~1:1である方法が公知である。滞留時間は、上記エチレンを回収するために2秒未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0544840号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、プラスチック含有原材料からオレフィン等の炭化水素を製造するための新しいタイプの方法及びプロセス装置を開示することである。さらに、目的は、生成物収率及び生成物分布を改善する方法及びプロセス装置を開示することである。さらに、目的は、プロピレン収率を改善する方法及びプロセス装置を開示することである。さらに、目的は、オレフィン製造、例えばエチレン及び/又はプロピレンの製造におけるバージン(未使用)化石原材料を置き換えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該方法、プロセス装置及び使用は、特許請求の範囲に提示されるものによって特徴付けられる。
【0007】
当該方法及びプロセス装置では、プラスチック含有原材料は、生成物混合物を形成するために流動床ガス化装置において低いガス化温度で蒸気を用いてガス化され、生成物混合物はガス化後に冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
図1図1は、1つの実施形態に係るプロセスのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ガス化プロセスによってプラスチック含有原材料から炭化水素を製造する当該方法では、プラスチック含有原材料(1)は、炭化水素を含む生成物混合物(4)を形成するために、流動床ガス化装置(2)内で680~740℃という低いガス化温度で蒸気(スチーム)(3)を用いてガス化され、滞留時間は、ガス化温度、すなわちガス化装置内でのガス化中の反応温度で4秒未満であり、生成物混合物(4)は、ガス化プロセスのプロピレン収率を高めるために、プラスチック含有原材料のガス化反応を緩慢化及び/又は停止させるため、例えば少なくとも減速するため、又はさらには停止するために、ガス化後急速にかつ直ちに、640℃未満の温度に冷却される。好ましくは、生成物混合物は、ガス化後急速にかつ直ちに冷却される。
【0010】
プラスチック含有原材料から炭化水素を製造するためのプロセス装置は、炭化水素を含む生成物混合物(4)を形成するために、プラスチック含有原材料(1)が680~740℃という低いガス化温度で、そのガス化温度での4秒未満の滞留時間で、蒸気(3)を用いてガス化される流動床ガス化装置(2)と、ガス化プロセスのプロピレン収率を高めるために、プラスチック含有原材料のガス化反応を緩慢化及び/又は停止させるために、ガス化後急速にかつ直ちに、生成物混合物(4)を640℃未満の温度に冷却するための少なくとも1つの冷却装置とを含む。
【0011】
当該方法及びプロセス装置の1つの実施形態が図1に示されている。
【0012】
これに関連して、プラスチック含有原材料(1)は、少なくともプラスチック及び/又はポリマーを含む任意の材料を意味する。プラスチック含有原材料は、1種以上の原材料成分からなってもよい。プラスチック含有原材料は、廃棄物又は廃棄材料を含んでもよい。さらに、プラスチック含有原材料は、廃棄材料及び他の材料、例えば、任意のプラスチック材料、リサイクル材料、回収燃料材料等を含んでもよい。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、少なくともプラスチック含有廃棄物、例えばプラスチック廃棄物を含む。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、プラスチック含有廃棄物からなる。プラスチック含有廃棄物は、少なくともプラスチック及び/又はポリマーを含む任意の廃棄物を意味する。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、プラスチック材料と、リサイクル材料、回収燃料材料等のうちの少なくとも1種とを含んでいてもよい。多くの場合、プラスチック含有原材料は、不均質材料である。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、少なくともポリオレフィン、例えばポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む。プラスチック含有原材料は、他のポリマーも含んでいてもよい。さらに、プラスチック含有原材料は、紙、厚紙及び/又はアルミニウム材料、例えばアルミニウム箔等の他の成分も含有してもよい。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は混合原材料である。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、他のプラスチック、他の成分及び/又は不純物を含む。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、固体形態にあり、例えば、細断された材料の形態にある。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、フィーダ内への補給(供給、supply)の前に、例えば粉砕、切削、チョッピング、細断等によって処理される。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料は、破砕及び/又は粉砕される。1つの実施形態では、プラスチック含有原材料の粒子サイズ(粒径)は、平坦な形態の粒子では例えば0.1mm~100mm、球状タイプの粒子では例えば0.1mm~50mm、1つの実施形態では0.1mm~25mmの間で変わることができる。
【0013】
1つの実施形態では、プラスチック含有原材料はポリマー系廃棄物である。これに関連して、ポリマー系廃棄物は、1種以上のポリマーを含むか、又は1種以上のポリマーからなる任意の廃棄物を意味する。多くの場合、ポリマー系廃棄物は、不均質材料である。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、少なくともポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンを含む。ポリマー系廃棄物は、他のポリマーも含んでもよい。さらに、ポリマー系廃棄物は、紙、厚紙及び/又はアルミニウム材料等の他の成分も含有してもよい。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は混合プラスチック材料である。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、多層プラスチックのパッケージ及び製品を含む。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、80重量%超、好ましくは90重量%超のポリオレフィンを含む。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、80重量%未満、1つの実施形態では70重量%未満、1つの実施形態では60重量%未満、1つの実施形態では50重量%未満のポリオレフィンを含む。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、1つの実施形態では2重量%未満のPVCプラスチックを含む。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、固体形態にあり、例えば、細断された材料の形態にある。1つの実施形態では、ポリマー系廃棄物は、ガス化装置への補給の前に、例えば、粉砕、切削、チョッピング、細断、ブリケッティング、ペレット化によって、及び/又は他の好適な処理によって処理される。
【0014】
これに関連して、生成物混合物(4)は、ガス化及びガス化装置(2)からの任意の生成物混合物、生成物組成物又は生成物、例えば生成物ガスを意味し、この生成物混合物は少なくとも炭化水素を含む。通常、生成物混合物は炭化水素の混合物であり、他の成分及び/又は化合物をさらに含んでもよい。生成物混合物は、例えば、気体成分及び/又は気化成分であってもよい1種以上の成分を含む。1つの実施形態では、生成物混合物は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、芳香族炭化水素及び/又は他の炭化水素を含有してもよい。1つの実施形態では、生成物混合物は少なくともオレフィンを含む。1つの実施形態では、生成物混合物は少なくともエチレン及び/又はプロピレンを含む。1つの実施形態では、生成物混合物は少なくともエチレン及びプロピレンを含む。生成物混合物は、固体粒子及び/又は水蒸気も含んでもよい。
【0015】
これに関連して、ガス化装置におけるガス化は、蒸気による任意のガス化プロセスを意味する。ガス化は、プラスチック含有原材料をガス状生成物、例えばオレフィン等の炭化水素に変換するプロセスである。これは、原材料を適切な温度で、好ましくは制御された量の蒸気で処理することによって達成される。
【0016】
流動床ガス化装置(2)又はガス化において、任意の好適な床材料を流動床中の床材料として使用することができる。1つの実施形態では、床材料は砂及び/又はカルシウム含有床材料である。
【0017】
1つの実施形態では、ガス化装置(2)は、バブリング流動床ガス化装置(BFBガス化装置)である。1つの実施形態では、ガス化は、バブリング流動床ガス化(BFBガス化)である。また、望ましくない成分、例えばアルミニウム箔を含むプラスチック含有材料も、バブリング流動床ガス化装置内でガス化することによって処理することができる。1つの実施形態では、ガス化装置は循環流動床ガス化装置(CFBガス化装置)である。
【0018】
1つの実施形態では、ガス化温度、すなわちガス化反応温度は700~740℃である。1つの実施形態では、ガス化温度は700~730℃である。
【0019】
1つの実施形態では、ガス化は、ガス化装置(2)において大気圧下又は大気圧に近い圧力下で行われる。1つの実施形態では、ガス化は、4バール(bar)未満、1つの実施形態では3バール未満、1つの実施形態では2バール未満の圧力で行われる。
【0020】
1つの実施形態では、滞留時間は、上記ガス化温度で3.5秒未満である。1つの実施形態では、滞留時間は、上記ガス化温度で3.0秒未満である。1つの実施形態では、滞留時間は、上記ガス化温度で2~3.5秒である。1つの実施形態では、滞留時間は、上記ガス化温度で2~4秒、1つの実施形態では2~3秒である。
【0021】
好ましくは、生成物混合物(4)は、ガス化(2)の直後に冷却される。生成物混合物は、ガス化反応の後で急速に冷却される。1つの実施形態では、生成物混合物は、600℃未満、1つの実施形態では550℃未満の温度に冷却される。1つの実施形態では、生成物混合物は400~600℃の温度に冷却される。1つの実施形態では、生成物混合物は400~550℃、1つの実施形態では400~500℃の温度に冷却される。1つの実施形態では、生成物混合物は600~640℃の温度に冷却される。1つの実施形態では、生成物混合物は、2秒未満の時間で所望の温度に冷却される。好ましくは、生成物混合物は冷却装置によって冷却される。1つの実施形態では、当該プロセス装置は、生成物混合物(4)を冷却するための少なくとも1つの冷却装置を含む。1つの実施形態では、プロセス装置は、生成物混合物(4)を冷却するための複数の冷却装置を含む。1つの実施形態では、冷却装置は、熱交換器、水急冷装置(water quench)、又は他の適切な冷却装置から選択される。1つの実施形態では、冷却装置は熱交換器及び/又は水急冷装置である。1つの実施形態では、冷却装置は熱交換器である。1つの実施形態では、冷却装置は水急冷装置である。ガス化反応が緩慢化する、例えば著しく遅くなる、又は停止すると、メタン、ベンゼン及びタールの収率が減少することが可能であり、生成物混合物中のプロピレンの収率を増加させることができる。そして、オレフィンの収率も増加させることができる。
【0022】
1つの実施形態では、生成物混合物は、冷却後に濾過される。1つの実施形態では、生成物混合物は、高温ガスフィルタによって濾過される。あるいは、固体粒子は、任意の好適なフィルタ、サイクロン、又は他の粒子除去装置によって、生成物混合物から除去することができる。1つの実施形態では、当該プロセス装置は、生成物混合物を濾過するための少なくとも1つのフィルタ、例えば、高温ガスフィルタ又は他の好適なフィルタ若しくは濾過装置を含む。濾過では、固体粒子又は固体不純物等の固体成分を生成物混合物から除去することができる。1つの実施形態では、当該プロセス装置は、少なくとも1つのサイクロン又は他の粒子除去装置を含む。
【0023】
1つの実施形態では、当該プロセス装置は、プラスチック含有原材料(1)をガス化装置(2)に補給するための少なくとも1つの供給入口を含む。1つの実施形態では、当該プロセス装置は、ガス化装置(2)から及び/又は冷却装置から生成物混合物(4)を排出するための少なくとも1つの出口を含む。供給入口は、それ自体公知の任意の適切な入口、例えばパイプ、ポート等であってもよい。出口は、それ自体公知の任意の適切な出口、例えばパイプ、出口ポート等であってもよい。
【0024】
1つの実施形態では、当該プロセス装置は、プラスチック含有原材料(1)をガス化装置(2)に供給するための少なくとも1つの供給装置を含む。これに関連して、供給装置は、任意の供給装置、フィーダ又は他の適切な装置であることができる。
【0025】
1つの実施形態では、蒸気(3)は、例えば底又は底部からガス化装置(2)に補給される。
【0026】
当該方法及びプロセス装置は、連続プロセスとして操作することができる。
【0027】
1つの実施形態では、生成物混合物(4)は、冷却後、45重量%超のオレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、1つの実施形態では50重量%を超えるオレフィンを含む。1つの実施形態では、ガス化プロセスのプロピレン収率は、冷却後、15重量%超、好ましくは18重量%超、1つの実施形態では20重量%超である。1つの実施形態では、炭化水素からなる生成物混合物は、冷却後に、15重量%超のプロピレン、1つの実施形態では18重量%超のプロピレン、1つの実施形態では20重量%超のプロピレンを含む。
【0028】
1つの実施形態では、生成物混合物(4)は、炭化水素の回収プロセスにおいて所望のプロセス又は所望のプロセス工程に補給されてもよい。
【0029】
1つの実施形態では、当該方法及びプロセス装置は、オレフィン、例えばエチレン及び/又はプロピレン等の炭化水素を、プラスチック含有原材料から、例えばプラスチック含有廃棄物から製造する際に使用及び利用される。炭化水素等の生成物混合物は、そのまま使用することができ、又は例えば、追加の処理段階に、例えば、所望の留分を回収することができる回収段階に、若しくは重合プロセス、酸化プロセス、ハロゲン化プロセス、アルキル化プロセス若しくは他の化学プロセス等の所望のプロセスに、若しくはプラスチックの製造に補給することができる。例えば、エチレン及びプロピレンは、プラスチック製品、石油化学製品及び化学製品のための基本単位(ビルディングブロック)である。
【0030】
本発明によれば、プラスチック含有原材料を容易かつ効果的に処理及び利用することができる。オレフィンのような所望の炭化水素を生成することができ、オレフィン収率を向上させることができる。さらに、プロピレンのシェアを増加させることができ、メタン、ベンゼン及びタールの収率を低下させることができる。とりわけ、エチレン及びプロピレン等の軽質オレフィンの収率を最大にすることができる。
【0031】
本発明は、プラスチック含有原材料から炭化水素、とりわけオレフィンを製造するための工業的に適用可能な、簡単で手頃な方法を提供する。さらに、当該方法及びプロセス装置は、プラスチック系廃棄物を容易に、かつエネルギー及び費用効率面で良好に処理する可能性を提供し、廃棄物をアップグレードすることができる。本発明は、廃ポリオレフィンをオレフィンに戻してリサイクルするための柔軟で経済的に実現可能な方法を提供する。当該方法及びプロセス装置は、製造プロセスに関連して実現するのが容易かつ単純である。
【実施例
【0032】
図1は、ポリマー系廃棄物から炭化水素を連続的に製造する方法及びプロセス装置を提示する。
【0033】
図1のプロセスは、生成物混合物(4)を形成するために、ポリマー系廃棄物(1)が、680~740℃、例えば700~730℃の低いガス化温度で蒸気(3)を用いてガス化されるバブリング流動床ガス化装置(2)を含む。蒸気は、ガス化装置の底からガス化装置に供給される。ガス化は、ガス化装置(2)において大気圧下又は大気圧に近い圧力下で行われ、滞留時間は、ガス化反応温度で4秒未満、例えば3.5秒未満、例えば2~3.5又は2~3秒である。
【0034】
生成物混合物(4)は、ガス化の直後に急速に、640℃未満の温度、例えば400~600℃の温度に冷却される。当該プロセス装置は、少なくとも1つの冷却装置、例えば熱交換器及び/又は水急冷装置を含む。
【0035】
生成物混合物(4)は少なくともエチレン及びプロピレンを含む。さらに、生成物混合物は、他の炭化水素を含んでもよい。好ましくは、生成物混合物は少なくともプロピレンを含む。所望の炭化水素留分又は所望の留分は、冷却された生成物混合物から分離されてもよい。
【0036】
1つの実施形態では、当該プロセス装置は、冷却された生成物混合物(4)を濾過するため、及び冷却された生成物混合物から固体成分を除去するための少なくとも1つの濾過装置、例えば高温フィルタを含んでもよい。
【0037】
例1
ガス化プロセスを、ベンチスケールのバブリング流動床ガス化装置で研究した。
【0038】
ポリオレフィンに富むプラスチック廃棄物を供給原料として使用し、蒸気をガス化装置内のガス化剤として使用した。低いガス化温度を使用し、ガス化中の温度は710~740℃であった。滞留時間は、ガス化装置におけるガス化反応温度で2.5~4秒であった。ガス化装置内でのガス化中に生成物ガスが生成した。生成物ガスを、ガス化反応を減速するため、さらには停止するために、ガス化後急速にかつ直ちに温度600~640℃に冷却した。4つの試験期間を実施し、分析した。生成物成分の収率等の試験結果及び滞留時間を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
上記結果を、約710℃の温度及び4~8秒の滞留時間を用いてバブリング流動床ガス化装置中でガス化することによってプラスチック廃棄物から生成物ガスを形成した比較結果と比較した。この比較ガス化において、エチレンの収率は約30~35重量%であり、プロピレンの収率は約8~9重量%であり、ベンゼンの収率は約11~15重量%であり、タールの収率は16~20重量%であり、メタンの収率は17~18重量%であった。
【0041】
上記試験において、4秒未満の滞留時間を使用した場合、高いオレフィン収率を達成することができ、とりわけプロピレンの収率を生成物ガス中で増加させることができることが観察された。試験結果から、エチレンの収率は28~32重量%であり、プロピレンの収率は18~20.5重量%であり、軽質オレフィンの全体収率は46.5~52.1重量%であることが観察された。ベンゼンの収率は7~8重量%であり、他のタール化合物の収率は10~12重量%であった。生成物ガスは驚くべきことにプロピレンに富んでいた。さらに、メタン収率、ベンゼン収率及びタール収率を低下させることができる。
【0042】
これらの例で使用される当該プロセスのデバイス及び設備は、それ自体は当該技術分野で公知であり、従って、これらは、本文脈においてこれ以上詳細に記載されない。
【0043】
当該方法及びプロセス装置は、異なるプラスチック含有原材料から炭化水素、例えばプロピレンを製造するための異なる実施形態において適している。
【0044】
本発明は、上記の例のみに限定されるものではない。代わりに、特許請求の範囲によって定義される本発明の思想の範囲内で多くの変形例が可能である。
図1
【国際調査報告】