(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】抗CD73抗体とその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230831BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230831BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230831BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230831BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230831BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230831BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230831BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230831BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230831BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230831BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K19/00
C07K16/46
A61K39/395 P
A61K39/395 U
A61P31/12
A61P33/00
A61P31/10
A61P31/04
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511960
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 CN2021112771
(87)【国際公開番号】W WO2022037531
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010828886.4
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011152518.9
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404676
【氏名又は名称】アケソ バイオファーマ カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ワン チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】チン シアオピン
(72)【発明者】
【氏名】リー パイヨン
(72)【発明者】
【氏名】シア ユイ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB22
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC02
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、抗CD73抗体、及びコロナウイルス感染によって引き起こされる疾患の治療におけるその適用に関する。具体的には抗体の重鎖可変領域は、配列番号15~17に示されるHCDR1~HCDR3などのアミノ酸配列を含み、及び抗体の軽鎖可変領域は配列番号18~20に示されるLCDR1~LCDR3などのアミノ酸配列を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス感染によって引き起こされる疾患を治療するための抗CD73(例えばヒトCD73)抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗CD73抗体は、
配列番号2に示されるV
Hに含まれるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3、並びに配列番号4に示されるV
Lに含まれるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
好ましくは前記抗CD73抗体は、
配列番号15に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR1;
配列番号16に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR2;
配列番号17に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR3;
配列番号18に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR1;
配列番号19に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR2;及び
配列番号20に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR3、を含む上記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項1に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、
前記抗体のV
Hは、
配列番号2、配列番号6、又は配列番号10、これと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、若しくは90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又は配列番号2、配列番号6、若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、及び
前記抗体のV
Lは、
配列番号4、配列番号8、配列番号12 又は配列番号14、これと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、若しくは90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又は配列番号4、配列番号8、配列番号12 若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、上記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号2に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号4に示される通りであり;
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号8に示される通りであり;
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号10に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号12に示される通りであり;又は
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号10に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号14に示される通りである、上記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
抗体のC
HがIgガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であり、C
LがIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834である、請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで
前記抗体が、モノクローナル抗体(好ましくは抗CD73抗体が、保存番号CCTCC NO:C2018137のハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体である)、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)であり、好ましくは抗体の重鎖アミノ酸配列は配列番号23に示される通りであり、及び軽鎖アミノ酸配列は配列番号24に示される通りである、上記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab'、F(ab')
2、Fd、Fv、dAb、Fab/c、CDR断片、単鎖抗体(例えばscFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は二重特異性抗体から選択される、請求項1又は2に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び結合部分を含む、コロナウイルス感染に起因する疾患を治療するための結合体であって、ここで、前記結合部分は、精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識物、又は小分子薬であり;好ましくは前記結合部分は、放射性核種、蛍光物質、化学発光物質、着色物質、ポリエチレングリコール、又は酵素であり;好ましくは前記小分子薬は小分子細胞傷害性薬であり;より好ましくは前記小分子薬は腫瘍化学療法薬であり、より好ましくは前記抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、リンカーによって前記小分子薬に連結されており;例えばリンカーは、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はペプチド結合であり;より好ましくは前記抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、特定のモル比で前記小分子薬に連結され;例えば前記モル比は1:(2~4)である、上記結合体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む、コロナウイルス感染に起因する疾患を治療するための融合タンパク質又は多重特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体)。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体を含むキットであって、好ましくは前記キットは、ワクチンとして使用される二次抗体又は抗原をさらに含み、抗CD73抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する前記二次抗体はウイルス感染(好ましくはコロナウイルス科のウイルス感染)を治療するためのものであり、ワクチンとして使用される抗原は、ウイルス、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、寄生虫、プリオン、又は腫瘍から選択され;任意選択的に、二次抗体は、検出可能な標識物、例えば放射性核種、蛍光物質、化学発光物質、着色物質、又は酵素をさらに含み;好ましくはキットは、試料中のCD73の存在又はそのレベルを検出するために使用される、上記キット。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体を含む、コロナウイルス感染によって引き起こされる疾患を治療するための医薬組成物又は単一薬物投与単位であって、任意選択的に、前記医薬組成物又は単一薬物投薬単位は、医薬的に許容し得るベクター及び/又は賦形剤をさらに含み、好ましくは前記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射、又は病巣内注射による投与に適した形態であるである、上記組成物又は単一薬物投与単位。
【請求項11】
好ましくは新規コロナウイルスであるSARS-CoV-2、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV、及び/又はMERS-CoVから選択される、コロナウイルス感染を治療及び/又は予防するための薬物又はキットの調製における、請求項1~6に記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体の使用目的。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体の有効量を被験体又は患者に投与することを含む、コロナウイルス感染を治療及び/又は予防するための方法であって、好ましくは前記コロナウイルス科ウイルスは、新規コロナウイルスであるSARS-CoV-2、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV、及び/又はMERS-CoVから選択され、より好ましくは抗ウイルス薬は被験体又は患者に同時又は連続的に投与され、好ましくは抗ウイルス薬はRNAウイルス阻害剤である、上記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、より好ましくは抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、結合体、融合タンパク質、又は多重特異性抗体の有効用量は、0.001mg~1,000mg、より好ましくは0.001mg~900mg、0.001mg~800mg、0.001mg~700mg、0.001mg~600mg、0.001mg~500mg、0.001mg~400mg、0.001mg~300mg、0.001mg~200mg、又は0.001mg~100mg、最も好ましくは100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1,000mgであり、又は有効用量は、被験体又は患者の体重に基づいて0.1~100mg/kg、好ましくは1~90mg/kg、1~80mg/kg、1~70mg/kg、1~60mg/kg、1~50mg/kg、1~40mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、又は1~10mg/kgである、上記方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、抗ウイルス薬の有効量は、100~2,400mg、好ましくは100mg~2,300mg、100mg~2,200mg、100mg~2,100mg、100mg~2,000mg、100mg~1,900mg、100mg~1,800mg、100mg~1,700mg、100mg~1,600mg、100mg~1,800mg、100mg~1,800mg、100mg~1,800mg、100mg~1800mg、又は100mg~1800mg、より好ましくは100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mgであり;あるいは、抗ウイルス薬の有効用量は、被験体又は患者の体重に基づいて0.1~100mg/kg、好ましくは1~90mg/kg、1~80mg/kg、1~70mg/kg、1~60mg/kg、1~50mg/kg、1~40mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、又は1~10mg/kgである、上記方法。
【請求項15】
抗原に対する生物の免疫を増強するための補助剤として使用される、請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体。
【請求項16】
抗原は、ウイルス、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、寄生虫、プリオン、又は腫瘍に由来し;
好ましくはウイルスは、RNAウイルス及びDNAウイルスを含み;
好ましくはRNAウイルスは、コロナウイルス科ウイルスを含み;
好ましくはコロナウイルスは、2019年の新規コロナウイルス(新規コロナウイルス肺炎COVID-19を誘発する2019-nCoV又はSARS-CoV-2)、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV(これらは重症の急性呼吸器症候群を誘発する)、及びMERS-CoV(これは中東呼吸器症候群を誘発する)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体。
【請求項17】
ワクチン接種の前又は後に、請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体を被験体に投与することを含む、ワクチンの有効性を上昇させるか又はワクチンに対する生物の応答性を増強する方法であって、
好ましくは、ワクチンに含まれる抗原は、ウイルス、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、寄生虫、プリオン、又は腫瘍に由来し;
好ましくはウイルスは、RNAウイルス及びDNAウイルスを含み;
好ましくはRNAウイルスは、コロナウイルス科ウイルスを含み;
好ましくはコロナウイルスは、2019年の新規コロナウイルス(新規コロナウイルス肺炎COVID-19を誘発する2019-nCoV又はSARS-CoV-2)、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV(これらは重症の急性呼吸器症候群を誘発する)、及びMERS-CoV(これは中東呼吸器症候群を誘発する)を含む、上記方法。
【請求項18】
請求項1~6のいずれかに記載の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の結合体、又は請求項8に記載の融合タンパク質若しくは多重特異性抗体が、1回以上(好ましくは静脈内に)投与される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫学の分野に関する。特に本発明は、抗CD73抗体とその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エクト-5'-ヌクレオチダーゼ、すなわちCD73タンパク質は、NT5E遺伝子によってコードされるタンパク質分子量70KDの多機能糖タンパク質であり、グリコシルホスファチジルリノシトール(GPI)により細胞膜に固定されている(Zimmermann H. Biochem J. 1992; 285: 345-365)。
【0003】
CD73はヒト組織細胞の表面に広く分布しており、及びまた樹状細胞、調節性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)などの免疫細胞の表面にも広く発現している。
【0004】
CD73は加水分解酵素活性と非加水分解酵素活性の両方を有する。CD73の酵素的及び非酵素的機能の免疫抑制メカニズムは、CD73-アデノシン代謝シグナル伝達経路によって媒介される。CD73の上流のCD39は、ATPによるアデノシン一リン酸(AMP)の生成を触媒することができ、生成されたAMPはCD73によってアデノシンに変換される。アデノシンは下流のアデノシン受容体(A2AR)に結合し、これは、LCK、MAPK、PKCなどの一連の免疫活性化関連シグナル伝達経路を阻害し、プロテインキナーゼA(PKA)及びCskを活性化することによってT細胞の免疫殺傷を阻害し、こうして免疫抑制効果を発揮する(Antonioli L, et al Nat Rev Cancer. 2013; 13: 842-857)。
【0005】
コロナウイルス科のウイルスには、2019新型コロナウイルス(新型コロナウイルス肺炎COVID-19を誘発する2019-nCoV又はSARS-CoV-2)、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群を誘発する)、及びMERS-CoV(中東呼吸器症候群を誘発する)が含まれる。上記のウイルス感染症は、重度の臨床症状を引き起こしたり、生命を脅かすことさえある。
【0006】
SARS-CoVは、さまざまなメカニズムを通して免疫応答と戦う。これらのメカニズムの1つは、1型インターフェロン(IFN-1)の発現とシグナル伝達を阻害する(Kindler, E., Thiel et al. SARS-CoV and IFN: Too Little, Too Late. Cell Host Microbe 2016, 19 (2), 139-141)。誘導性I型インターフェロンは、ウイルス感染に対する細胞耐性を誘導し、ウイルス感染細胞のアポトーシスを促進することにより、抗ウイルス免疫応答において重要な役割を果たす。SARS-CoVはIFN-Iの急速な増加を妨害し、これがコロナウイルスの複製を促進する。ATPはIFN産生を促進し、改善された細胞外ATPは、シグナル伝達経路P38/JNK/ATF-2を介してIFN分泌を促進することにより、このサイクルを逆転できることが証明されている。従って、ATPを欠く細胞は、SARS-CoVやCOVID-19などのウイルス感染の影響に対してより感受性になる(Taghizadeh-Hesary F., Akbari H. The Powerful Immune System Against Powerful COVID-19: A Hypothesis. Medical Hypotheses, 2020, 109762)。インビトロ実験では、SARS-CoV-2が、インターフェロンを阻害する複数のタンパク質を発現することが示されており(Konno, Yoriyuki, et al. SARS-CoV-2 ORF3b is a potent interferon antagonist whose activity is further increased by a naturally occurring elongation variant. bioRxiv (2020 Yuen, Chun-Kit, et al. SARS-CoV-2 nsp13, nsp14, nsp15 and orf6 function as potent interferon antagonists. Emerging Microbes and Infections (2020): 1 - 29)、これが、効果的な初期免疫応答を阻害する重要なメカニズムであることを証明している。
【0007】
インターフェロンは、急性期での役割に加えて、免疫抑制性Tregの発生にも重要な役割を果たす。重症のCOVID-19患者の肺損傷は、サイトカイン放出症候群(CRS)と関連しており、免疫抑制メカニズムが時間内に活性化されない可能性があることを示している(Acharya, D., Liu, G. & Gack, M.U. Dysregulation of type I interferon responses in COVID-19. Nat Rev Immunol 20, 397-398 (2020)).これはCOVID-19患者のTreg数によって裏付けられており、これが疾患の重症度に反比例する。
【0008】
ATP分解経路の阻害は、COVID-19を治療するためのメカニズムとして使用できる可能性がある。ATPはインターフェロンの分泌を刺激し、SARS-CoV-2の強力なインターフェロン阻害メカニズムと戦うことができる。うまく行けば、これは感染の初期段階でウイルスを排除するのに役立つであろう。
【0009】
COVID-19患者の2つの臨床症状は、低酸素症と低酸素血症である。低酸素誘導因子-1(HIF-1)及び他の分子のアップレギュレーションにより、CD73が広範囲に発現される(Synnestvedt K, et al. J Clin Invest. 2002; 110: 993 - 1002)。さらに、A2B受容体は、低酸素状態でより容易に活性化される。A2B受容体の活性化は、関連細胞による大量のIL-6の産生を直接促進し、肺線維細胞の分化を誘導する(Hongyan Zhong, Luiz Belardinelli et al. Synergy between A2B Adenosine Receptors and Hypoxia in Activating Human Lung Fibroblasts. Am J Respir Cell Mol Biol, 2005, 32: 2 - 8)。さらに、IL-6は、COVID-19患者のサイトカインストームにおける主要な炎症因子の1つである。従って、アデノシンレベルを下げることは、CRSと呼吸窮迫の患者にとって特に有益となり得る。多くの研究で、重篤かつ重篤なCOVID-19患者で、IL-6とGM-CSFが有意に上昇していることが報告されている(Characteristics of lymphocyte subsets and cytokines in peripheral blood of 123 hospitalized patients with 2019 novel coronavirus pneumonia (NCP). Wan SX, Yi QJ, Fan SB, Lv JL, Zhang XX, Guo L, Lang CH, Xiao Q, Xiao KH, et al. medRxiv 02/10/2020. 20021832; Chen Lei, Liu Huiguo, Liu Wei et al. Analysis of clinical characteristics of 29 patients with COVID-19. Chinese Journal of Tuberculosis and Respiratory Diseases, 2020, 43: E005)。重症の急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)感染に関する研究でも、SARS-CoV3aタンパク質がマクロファージのNLRP3インフラマソーム(inflammasome)を直接活性化し、下流のIL-6上昇を媒介するメカニズムが確認されている(Chen IY, Moriyama M, Chang MF, Ichinohe T. Severe Respiratory Syndrome Coronavirus Viroporin 3a Activates the NLRP3 Inflammasome. Front Microbiol. eCollection 2019).
【0010】
免疫応答を強化することで、ウイルスクリアランスの高速化、回復時間の短縮、合併症の減少、免疫の長期化、再感染の防止につながる可能性がある。免疫応答を強化する能力は、COVID-19やその他の流行病を治療する潜在的な機会を提供する。
【0011】
CD73は、ヒトB細胞、T細胞、骨髄細胞、骨髄間質細胞、胸腺上皮細胞に発現している。研究(Giovanni Forte, Rosalinda Sorrentino et al. Inhibition of CD73 Improves B Cell-Mediated Anti-Tumor Immunity in a Mouse Model of Melanoma. The Journal of Immunology, 2012, 189: 2226 - 2233.)では、CD73の拮抗作用が、抗菌、抗毒素、抗ウイルス抗体の主要成分であるIgGの産生においてIL-17Aを介してB細胞の活性に影響を与え得ることが示されている。同じコロナウイルス科ウイルスの感染によって引き起こされたCOVID-19で死亡した患者の剖検で、患者の血液中のCD4+及びCD8+T細胞の数が大幅に減少していたが、IL-17Aを産生するTh17細胞の割合が有意に高かったことが判明した(Xu Z, Shi L, Wang YJ, Zhang JY, Huang L, Zhang C et al. Pathological findings of COVID-19 associated with acute respiratory distress syndrome. The Lancet Respiratory Medicine. 2020).
【0012】
要約すると、CD73をブロックすることは、CD73のアデノシン経路を調節し、免疫応答に影響を与えることにより、COVID-19を含むコロナウイルス科のウイルスによって引き起こされる疾患を治療するために、使用できる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の要約
本開示の発明者らは、組換えヒトCD73を抗原として発現する哺乳動物細胞発現系を用いてマウスを免疫し、マウス脾細胞とミエローマ細胞を融合させてハイブリドーマを得ることを開示する。本発明者らは、多数の試料をスクリーニングすることにより、ハイブリドーマ細胞株LT014(保存番号CCTCC NO:C2018137)を得た。
【0014】
本開示の発明者らは、驚くべきことに、ハイブリドーマ細胞株LT014が、それぞれ、ヒトCD73に特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(19F3と命名)を分泌及び産生できることを見出した。さらに、本開示の発明者らは、抗ヒトCD73ヒト化抗体(19F3H2L3と命名)を作製した。
【0015】
本開示の発明者らはまた、驚くべきことに、本開示の抗体19F3H2L3が、非基質競合的にCD73の酵素活性を阻害し、アデノシンの産生を減少させ、細胞膜表面でのCD73のエンドサイトーシスを促進し、及びB細胞の活性化と増殖を刺激するのに非常に有効であることを見出した。本開示の抗体は、コロナウイルス感染に関連する疾患を治療することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の1つの態様は、コロナウイルスによって引き起こされる感染症を治療及び/又は予防するための抗CD73(例えばヒトCD73)抗体又はその抗原結合断片に関し、ここで抗CD73抗体は以下を含む:
配列番号2、配列番号6、又は配列番号10に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号4、配列番号8、配列番号12、又は配列番号14に示される軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3;
【0017】
好ましくはIMGT番号付けシステムによれば、抗CD73抗体は以下を含む:
配列番号15に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR1;
【0018】
配列番号16に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR2;
【0019】
配列番号17に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR3;
【0020】
配列番号18に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR1;
【0021】
配列番号19に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR2;及び
【0022】
配列番号20に示されるアミノ酸配列、それと少なくともと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又はその配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、又は3)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR3。
【0023】
本開示のいくつかの実施態様において、
抗体の重鎖可変領域は、以下の配列を含むか又はそれからなる:
配列番号2、配列番号6、又は配列番号10、これと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又は配列番号2、配列番号6、若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列;及び
【0024】
抗体のVLは、以下の配列を含むか又はそれからなる:
配列番号4、配列番号8、配列番号12 又は配列番号14、これと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列、又は配列番号4、配列番号8、配列番号12 若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)の保存的アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入、又は欠失)を有するアミノ酸配列。
【0025】
本開示のいくつかの実施態様において、抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号2に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号4に示される通りであり;
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号8に示される通りであり;
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号10に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号12に示される通りであり;又は
抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号10に示される通りで、及び抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号14に示される通りである。
【0026】
本開示のいくつかの実施態様において、抗体の重鎖定常領域は、Igガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であり、軽鎖定常領域はIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834である。
【0027】
軽鎖と重鎖の可変領域が抗原結合を決定し;各鎖の可変領域には、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域が含まれる(重鎖(H)のCDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3、そして軽鎖(L)のCDRは、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、これらは、Kabat et al.(Bethesda M.d., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 1991; 1 - 3: 91 - 3242を参照)によって命名された。
【0028】
好ましくはCDRは、IMGT番号付けシステムによっても定義できる。Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas, and Marie-Paule Lefranc. IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF. Nucleic acids research 2009; 38(suppl_1): D301 - D307を参照されたい。
【0029】
モノクローナル抗体配列のCDRのアミノ酸配列は、IMGTの定義に従って、当業者に周知の技術によって、例えばVBASE2データベースによって分析される。
【0030】
抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域配列がわかっている場合、抗体のCDRを決定するためのいくつかの方法(Kabat、IMGT、Chothia、及びAbM番号付けシステムを含む)がある。
【0031】
しかし、抗体又はその変種に関する各CDR定義の適用は、本明細書で定義及び使用される用語の範囲内である。抗体の可変領域のアミノ酸配列が与えられている場合、当業者は一般に、配列自体以外の実験データに依存することなく、どの残基が特定のCDRを含むかを判定することができる。
【0032】
本開示が関係する抗体19F3、19F3H1L1、19F3H2L2、及び19F3H2L3は、同じCDRを有する:
その重鎖可変領域の3つのCDRのアミノ酸配列は以下の通りである:
HCDR1:GYSFTGYT(配列番号15)、
HCDR2:INPYNAGT(配列番号16)、
HCDR3:ARSEYRYGGDYFDY(配列番号17);
その軽鎖可変領域の3つのCDRのアミノ酸配列は以下の通りである:
LCDR1:QSLLNSSNQKNY(配列番号18)、
LCDR2:FAS(配列番号19)、
LCDR3:QQHYDTPYT(配列番号20)。
【0033】
本開示のいくつかの実施態様において、抗体はモノクローナル抗体である。本開示のいくつかの実施態様において、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)であり、好ましくは抗CD73抗体の重鎖アミノ酸配列は配列番号23に示される通りであり、及び軽鎖アミノ酸配列は配列番号24に示される通りである。
【0034】
本開示のいくつかの例において、抗原結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb、Fab/c、CDR断片、単鎖抗体(例えばscFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は二重特異性抗体から選択される。
【0035】
本開示の別の態様は、抗体と結合部分とを含む、コロナウイルスによって引き起こされる感染を治療及び/又は予防するための結合体に関し、ここで、本開示の任意の項目において、抗体は、抗CD73抗体又はその抗原結合断片であり、結合部分は、精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識物、又は小分子薬であり;好ましくは結合部分は、放射性核種、蛍光物質、化学発光物質、着色物質、ポリエチレングリコール、又は酵素であり;好ましくは小分子薬は小分子細胞傷害性薬であり;より好ましくは小分子薬は腫瘍化学療法薬であり、より好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、リンカーによって小分子薬に連結されており;例えばリンカーは、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はペプチド結合であり;より好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、特定のモル比で小分子薬に連結され;例えばモル比は1:(2~4)である。
【0036】
本開示のさらに別の態様は、コロナウイルスによって引き起こされる感染症を治療及び予防するための融合タンパク質又は多重特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体)に関し、前記融合タンパク質又は多重特異性抗体は、本開示の任意の項目において抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0037】
本開示のさらに別の態様は、コロナウイルスによって引き起こされる感染症を治療及び予防するためのキットに関し、前記キットは、有効用量(例えば0.001mg~1,000mg)の本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、本開示の結合体、融合タンパク質、又は多重特異性抗体を含み、及び任意選択的に1つ又は複数の抗ウイルス薬の有効用量(例えば100~2,400mg)をさらに含む。
【0038】
本開示のさらに別の態様は、コロナウイルスによって引き起こされる感染症を治療及び予防するためのキットに関し、前記キットは、本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、本開示の結合体、融合タンパク質、又は多重特異性抗体を含み、及びウイルス、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、寄生虫、プリオン、又は腫瘍から選択されるワクチンとして使用される抗原を含む。
【0039】
本開示のさらに別の態様は、コロナウイルスによって引き起こされる感染症を治療及び予防するための医薬組成物に関し、前記医薬組成物は、本開示の任意の項目の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、及び本開示の結合体、融合タンパク質、又は多重特異性抗体を含み、任意選択的に、前記医薬組成物はさらに、医薬的に許容し得るベクター及び/又は賦形剤を含む。好ましくは医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射、又は病巣内注射による投与に適した形態である。
【0040】
本開示のさらに別の態様は、好ましくは、新規コロナウイルスであるSARS-CoV-2、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV、及び/又はMERS-CoVから選択される、コロナウイルス感染を治療及び/又は予防するための薬物又はキットの調製における、コロナウイルスによって引き起こされる感染症を治療及び予防するための抗体又はその抗原結合断片、結合体、又は融合タンパク質、又は多重特異性抗体の使用目的に関する。
【0041】
本開示のさらに別の態様は、有効用量の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、結合体、又は融合タンパク質、又は多重特異性抗体を被験体又は患者に投与することを含む、コロナウイルス感染症を治療及び/又は予防する方法に関し、好ましくはコロナウイルス科ウイルスは、新規コロナウイルスであるSARS-CoV-2、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV、及び/又はMERS-CoVから選択される。いくつかの実施態様において、前記方法は、被験体又は患者に抗ウイルス薬(ファビピラビルなど)を同時又は連続的に投与することを含み、好ましくは抗ウイルス薬はRNAウイルス阻害剤である。
【0042】
いくつかの実施態様において、本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、抗体-薬物結合体、又は二重特異性抗体の有効用量は、0.001mg~1,000mg、より好ましくは0.001mg~900mg、0.001mg~800mg、0.001mg~700mg、0.001mg~600mg、0.001mg~500mg、0.001mg~400mg、0.001mg~300mg、0.001mg~200mg、又は0.001mg~100mg、最も好ましくは100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1,000mgであり、又は有効用量は、被験体又は患者の体重に基づいて0.1~100mg/kg、好ましくは1~90mg/kg、1~80mg/kg、1~70mg/kg、1~60mg/kg、1~50mg/kg、1~40mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、又は1~10mg/kgである。
【0043】
本開示の上記実施態様のいずれかにおいて、1つ又は複数の抗ウイルス薬(例えばファビピラビル)の有効用量は、100~2,400mg、好ましくは100mg~2,300mg、100mg~2,200mg、100mg~2,100mg、100mg~2,000mg、100mg~1,900mg、100mg~1,800mg、100mg~1,700mg、100mg~1,600mg、100mg~1,800mg、100mg~1,800mg、100mg~1,800mg、100mg~1800mg、又は100mg~1800mg、より好ましくは100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mgである。あるいは、本開示の上記の実施態様のいずれかにおいて、抗ウイルス薬の有効用量は、被験体又は患者の体重に基づいて0.1~100mg/kg、好ましくは1~90mg/kg、1~80mg/kg、1~70mg/kg、1~60mg/kg、1~50mg/kg、1~40mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、又は1~10mg/kgである。本開示の別の態様は、0.001mg~1,000mgの本開示の抗体又はその抗原結合断片、好ましくは0.001mg~900mg、0.001mg~800mg、0.001mg~700mg、0.001mg~600mg、0.001mg~500mg、0.001mg~400mg、0.001mg~300mg、0.001mg~200mg、又は0.001mg~100mg、より好ましくは100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1,000mgの本開示の抗体又はその抗原結合断片を含有する単回薬物投与単位に関する。
【0044】
本開示のさらに別の態様は、2018年6月21日に中国の武漢にある中国タイプカルチャーコレクションセンター(China Center for Type Culture Collection:CCTCC)で保存番号CCTCC NO:C2018137で保存されたハイブリドーマ細胞株LT014に関する。
【0045】
本開示の別の態様はまた、抗原に対する生物の免疫応答を増強するための補助剤として使用される、本開示の抗CD73抗体、又は抗原結合断片、結合体、又は融合タンパク質、又は多重特異性抗体に関する。いくつかの実施態様において、抗原は、ウイルス、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、寄生虫、プリオン、又は腫瘍に由来し;
好ましくはウイルスは、RNAウイルス及びDNAウイルスを含み;
好ましくはRNAウイルスは、コロナウイルス科ウイルスを含み;
好ましくはコロナウイルスは、2019年の新規コロナウイルス(COVID-19を誘発する2019-nCoV又はSARS-CoV-2)、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV(これらは重症の急性呼吸器症候群を誘発する)、及びMERS-CoV(これは中東呼吸器症候群を誘発する)を含む。
【0046】
本発明の別の態様は、ワクチン接種の前又は後に、本開示の抗CD73抗体、又は抗原結合断片、結合体、融合タンパク質、又は多重特異性抗体を被験体に投与することを含む、ワクチンの有効性を高める方法又はワクチンに対する生物の応答性を増強する方法に関し、好ましくはワクチンに含まれる抗原は、ウイルス、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、寄生虫、プリオン、又は腫瘍に由来し;
好ましくはウイルスは、RNAウイルス及びDNAウイルスを含み;
好ましくはRNAウイルスは、コロナウイルスを含み;
好ましくはコロナウイルスは、2019年の新規コロナウイルス(COVID-19を誘発する2019-nCoV又はSARS-CoV-2)、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV(これらは重症の急性呼吸器症候群を誘発する)、及びMERS-CoV(これは中東呼吸器症候群を誘発する)を含む。
【0047】
いくつかの実施態様において、抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、結合体、融合タンパク質、又は多重特異性抗体は、(好ましくは静脈内に)1回又は複数回投与される。
【0048】
本開示において、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、特に明記しない限り、当業者によって一般的に理解されている意味を有する。さらに、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学の実験操作手順はすべて、それぞれの技術分野で広く使用されている日常的な工程である。同時に、本開示をよりよく理解するために、関連する用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0049】
EC50という用語は、最大効果の50%のための濃度を指し、これは、最大効果の50%を誘発することができる濃度を指す。
【0050】
本明細書で使用される用語「抗体」は、典型的には2対のポリペプチド鎖(各対は「軽」(L)鎖及び「重」(H)鎖を有する)からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体軽鎖は、κ軽鎖及びλ軽鎖として分類され得る。重鎖はμ、δ、γ、α、又はεとして分類され、抗体のアイソタイプはそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義される。軽鎖及び重鎖内で、可変領域と定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はさらに、約3個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)から構成される。CHは3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)から構成される。CLは、1つのドメインCLで構成される。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。VH及びVL領域はまた、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分され得る。各VH及びVLは、以下の順序である:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4であり、アミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRと4つのFRから構成される。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)がそれぞれ抗原結合部位を形成する。各領域又はドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda M.d. (1987 and 1991)、又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 1987; 196: 901 - 917; Chothia et al. Nature 1989; 342: 878 - 883、又はEhrenmann, Francois, Quentin Kaas, and Marie-Paule Lefranc. “IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.” Nucleic acids research 2009; 38(suppl_1): D301 - D307に従う。「抗体」という用語は、特定の抗体産生方法によって限定されない。例えばこれは特に、組換え抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含む。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はIgM抗体であり得る。
【0051】
本明細書で使用される用語「mAb」及び「モノクローナル抗体」は、相同性の高い抗体分子の群からの抗体又は抗体の断片を指し、また、自発的に発生する自然変異を除いて同一である抗体分子の群を指す。mAbは、抗原上の単一のエピトープに対して非常に特異的である。ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体と比較して、通常、抗原上の異なるエピトープを典型的に認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は通常、Kohler et al. (Kohler G, Milstein C. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity [J]. nature, 1975; 256 (5517): 495)によって最初に報告されたハイブリドーマ技術を使用して得られるが、組換えDNA技術(米国特許第4,816,567号参照)を使用して得ることもできる。
【0052】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」は、ヒト免疫グロブリン(リセプター抗体)のCDRの全部又は一部が非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDRで置換された後に得られる抗体又は抗体断片を指し、ここで、ドナー抗体は、予想される特異性、親和性、又は反応性を有する非ヒト(例えばマウス、ラット、又はウサギ)抗体でもよい。さらに、リセプター抗体のFRのいくつかのアミノ酸残基はまた、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基、又は他の抗体のアミノ酸残基で置換されて、その抗体の性能をさらに改良又は最適化することもできる。ヒト化抗体のさらなる詳細については、例えばJones et al., Nature 1986; 321: 522 - 525; Reichmann et al., Nature 1988; 332: 323 - 329; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992; 2: 593 - 596; 及び Clark M. Antibody humanization: a case of the ‘Emperor's new clothes'?[J]. Immunol. Today, 2000; 21 (8): 397 - 402を参照されたい。
【0053】
本明細書で使用される用語「分離された」又は「単離された」は、自然な状態で用手法的に得られることを指す。「別個の」物質又は成分が自然界に存在する場合、それが存在する自然環境が変化したか、又はその物質が自然環境から単離されたか、又はその両方である。例えば特定の単離されていないポリヌクレオチド又はポリペプチドは生きている動物に自然に存在し、そのような自然状態から分離された高純度の同一のポリヌクレオチド又はポリペプチドは、分離されたと言われる。「分離された」又は「単離された」という用語は、人工又は合成材料と混合された物質を除外するものではなく、物質の活性に影響を与えない他の不純な物質の存在を除外するものでもない。
【0054】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸ビヒクルを指す。挿入されたポリヌクレオチドにコードされたタンパク質の発現を可能にするベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入、又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができ、その結果、それによって運ばれる遺伝物質要素が宿主細胞で発現される。ベクターは当業者に周知されており、特に限定されるものではないが、以下のものを含む:プラスミド;バクテリオファージ;コスミド;人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC);バクテリオファージの例は、λバクテリオファージ又はM13バクテリオファージ及び動物ウイルスなどである。ベクターとして使用できる動物ウイルスには、特に限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバビリセテス(例えばSV40)が含まれる。ベクターは、特に限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素、及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御する様々な要素を含み得る。さらに、ベクターは複製開始点をむ得る。
【0055】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、ベクターを導入するために使用できる細胞を指し、特に限定されるものではないが、原核細胞、例えば大腸菌又は枯草菌;真菌細胞、例えば酵母細胞又はコウジカビ属;昆虫細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞又はSf9;又は動物細胞、例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、GS細胞、BHK細胞、HEK293細胞;又はヒト細胞を含む。
【0056】
「特異的結合」という用語は、2つの分子間の非ランダム結合反応、例えば抗体とそれに対する抗原との間の反応などを指す。特定の実施態様において、抗原に特異的に結合する抗体(又は抗原に特異的な抗体)は、例えば約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M以下の親和性(KD)で抗原に結合する抗体を指す。
【0057】
本明細書で使用される用語「KD」は、抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。解離平衡定数が小さいほど、抗体と抗原の結合が強くなり、抗体と抗原の間の親和性が高くなります。典型的には、抗体は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M以下の解離平衡定数(KD)で抗原(例えばPD-1タンパク質)に結合する。KDは、当業者によく知られている方法を使用して、例えばFortebio分子相互作用装置を使用して決定することができる。
【0058】
本明細書で使用される「mAb」及び「モノクローナル抗体」という用語は、同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。「ポリクローナル抗体」と「pAb」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用できる。「ポリペプチド」と「タンパク質」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用することができる。また本開示では、アミノ酸は、典型的には当技術分野で周知の1文字及び3文字の略語で表される。例えばアラニンは、A又はAlaで表すことができる。
【0059】
本明細書で使用される用語「医薬的に許容し得るベクター及び/又は賦形剤」は、被験体及び活性成分と薬理学的及び/又は生理学的に適合することが当技術分野で周知のベクター及び/又は賦形剤(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照)を指し、特に限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、補助剤、及びイオン強度増強剤を含む。例えばpH調整剤には、特に限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水が含まれ;界面活性剤には、特に限定されるものではないが、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性界面活性剤、例えばTween(登録商標)-80が含まれる;イオン強度増強剤には、特に限定されるものではないが、塩化ナトリウムが含まれる。
【0060】
本開示において用語「単一薬物投与単位」は、投与レジメンの時点で被験体又は患者に1アンプル単位などで投与される、本開示の抗体若しくはその抗原結合断片、抗体-薬物結合体、又は二重特異性抗体(又はそれを含む医薬組成物)の単一薬物投与形態を意味する。本明細書で使用される用語「有効用量」は、所望の効果を得るのに又は少なくとも部分的に得るのに十分な用量を指す。例えば疾患(例えばコロナウイルス科のウイルス、好ましくはCOVID-19によって引き起こされる疾患)を予防するための有効用量は、疾患の発生を予防、停止、又は遅らせるのに十分な量を指し、疾患を治療するための有効用量は、すでに疾患を有する患者の疾患及びその合併症を治癒又は少なくとも部分的に止めるのに十分な用量を指す。
【0061】
本発明の有益な効果:
本開示のモノクローナル抗体は、良好な特異性でCD73に結合することができ、非常に効果的に、非基質競合的にCD73の酵素活性を阻害し、細胞表面でCD73のエンドサイトーシスを誘導することができ、こうして、アデノシンの産生を低下させ;また、アデノシンに依存しない方法でB細胞の活性化と増殖を刺激することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】19F3H2L3によって誘導されたB細胞CD69のMFI値。
【0063】
【
図2】19F3H2L3によって誘導されたB細胞CD83のMFI値。
【0064】
【
図3】抗CD73抗体を添加されたMDA-MB-231細胞の酵素活性の検出結果。
【0065】
【
図4】抗CD73抗体を添加されたU87-MG細胞の酵素活性の検出結果。
【0066】
【
図5】MDA-MB-231細胞に抗CD73抗体を添加して細胞膜表面でのCD73エンドサイトーシスを誘導した後の検出結果であり、ここで、
図5AはMFI値を表し、
図5Bはインターナリゼーション(internalization)率を表す。
【0067】
【
図6】U87-MG細胞に抗CD73抗体を添加して細胞膜表面でのCD73エンドサイトーシスを誘導した後の検出結果であり、ここで、
図6AはMFI値を表し、
図6Bはインターナリゼーション率を表す。
【0068】
【
図7】COVID-19Sタンパク質に対する抗体産生の誘導における、抗CD73抗体の有効性の検出結果。
【0069】
【
図8】CD8+T細胞及びCD19+B細胞に対する抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)の結合活性の、FACSによる検出結果。
【0070】
【
図9】ヒトPBMC膜により発現されたCD73の酵素活性の阻害の、抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)による検出結果。
【0071】
【
図10】抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)によるB細胞活性の効果的な誘導の、FACSによる検出結果。
【0072】
【
図11】抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)によるB細胞増殖の刺激の検出結果。
【発明を実施するための形態】
【0073】
具体的な実施態様
実施態様に関連して、本開示の例が以下で詳細に説明される。以下の実施例が例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを、当業者は理解しているであろう。実施例に特定の技術又は条件が記載されていない場合、それらは当該技術分野の文献に記載されている技術又は条件に従って実施される(例えばJ. Sambrook et al. による Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 及び Huang Peitang et al.により翻訳された第3版, Science Pressを参照)か、又は製品の説明書に従っている。製造業者が特定されていない試薬や機器の従来品は、市場から購入することができる。例えばMDA-MB-231細胞及びU87-MG細胞は、ATCCから購入できる。
【0074】
本開示の以下の実施例において、使用されたBALB/cマウスは、広東医学研究所動物センター(Guangdong Medical Laboratory Animal Center)から購入された。
【0075】
以下の本開示の実施例において、陽性対照抗体MEDI9447(Oleclumab)は、Akeso Biopharma Co., Ltd.製のものを使用し、その配列は、Medlmmune LimitedによりWHO薬物情報データベース及び関連特許(https://www.who.int/medicines/publications/druginformation/innlists/en/)に開示されたOleclumabアミノ酸配列を用いて構築・合成したものであり、実施例ではMEDI9447又はMEDI9447(Akeso)又はMEDI-9447(Akeso)とラベル付けされている。
【0076】
本開示の以下の実施例において、使用された対照抗体CPI-006は、医薬品の一般名がムパドリマブ(Mupadolimab)であり、Akeso Biopharma Co., Ltd.によって製造され、その配列はWHOにおける配列(WHO薬物情報,提唱された国際一般名(Proposed INN)(List 125. 2021, 35(2): 484 - 485)に一致している。CPI-006(ムパドリマブ)の重鎖アミノ酸配列は配列番号21の通りであり、CPI-006の軽鎖アミノ酸配列は配列番号22の通りである。
【0077】
本開示の以下の実施例において、使用されたアイソタイプ対照抗体、ヒト抗鶏卵リゾチームIgG(すなわち、抗HEL抗体、又はhIgGと略されるヒトIgG、又はアイソタイプ対照)の配列は、Acierno et al.(Acierno et al. J Mol Biol. 2007; 374 (1): 130 - 146)によって発表された「親和性成熟は抗タンパク質抗体のFvドメインの安定性及び可塑性を増加させる」中のFab F10.6.6配列の可変領域配列由来であった。実施例で使用したhIgG1DMは、hG1DM定常領域配列を有する抗HELアイソタイプ対照抗体であり、Akeso Biopharma Co., Ltd.の研究室で調製された。
【0078】
本開示の以下の実施例において、使用された正常ヒト末梢血はZhongshan血液銀行からのものであり、ヒト末梢血細胞は、提供者からインフォームドコンセントを得て、Akeso Biopharma Co., Ltd.によって単離及び調製された。
【0079】
本開示の以下の実施例において、使用されたFITC標識抗ヒトCD3抗体は、Biolegend(カタログ番号344804)から得た。使用されたPE標識抗ヒトCD19抗体は、Biolegend(カタログ番号302254)から得た。使用されたAPC標識抗ヒトCD69抗体は、Biolegend(カタログ番号310910)から得た。使用したAPC標識抗ヒトCD83抗体は、Biolegend(カタログ番号305312)から得た。使用されたアクリジンオレンジ染色液は、Thermofisher(カタログ番号93001)から得た。使用されたヨウ化プロピジウム染色液はBD(カタログ番号51-66211E)から得た。使用されたAPC標識マウスIgG1アイソタイプ対照抗体は、Biolegend(カタログ番号400122)から得た。使用されたマウスIgG1アイソタイプ対照抗体は、Thermofisher(カタログ番号10400C)から得た。使用されたウシ血清アルブミン(BSA)はSigma(カタログ番号V900933-1KG)から得た。使用されたRPMI1640はGibco(カタログ番号は22400-089)から得た。使用されたウシ胎児血清は、Excell bio(カタログ番号FSP500)から得た。使用されたピルビン酸ナトリウムは、Gibco(カタログ番号11360-070)から得た。使用された非必須アミノ酸は、Gibco(カタログ番号11140-050)から得た。使用されたL-グルタミンはGibco(カタログ番号25030-081)から得た。使用されたMDA-MB-231はATCC(カタログ番号HTB-26)から得た。使用されたU87-MGはATCC(カタログ番号HTB-14)から得た。使用されたCTG色原体溶液は、promega(カタログ番号G8461)からのCellTiter-Glo(登録商標)One Solution Assayキットであった。使用されたAlexa Fluor(登録商標)647標識マウス抗ヒトIgG二次抗体は、Southern Biotech(カタログ番号9040-31)から得た。
【実施例】
【0080】
実施例1:抗CD73抗体19F3の調製
1.ハイブリドーマ細胞株LT014の調製
抗CD73抗体の調製に使用した抗原は、ヒトNT5E-His(NT5EはGenbank ID:NP_002517.1、位置:1-552)であった。免疫したマウスの脾細胞をマウスミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを調製した。ヒトNT5E(NT5EはGenbank ID:NP_002517.1、位置:1-552)-ビオチンを抗原とし、間接ELISA法によりハイブリドーマをスクリーニングして、CD73に特異的に結合する抗体を分泌することができるハイブリドーマを得た。スクリーニングされたハイブリドーマに対して希釈クローニングを行うことにより、安定したハイブリドーマ株が得られた。上記のハイブリドーマ株はそれぞれハイブリドーマ細胞株LT014と命名され、分泌されたモノクローナル抗体はそれぞれ19F3と命名される。
【0081】
ハイブリドーマ株LT014(CD73-19F3としても知られている)は、2018年6月21日にCCTCCに保存番号CCTCCNO:C2018137でで保存され、保存先は、中国、武漢、武漢大学(Wuhan University)、郵便番号430072である。
【0082】
2.抗CD73抗体19F3の調製
上記で調製したLT014細胞株をCD培地(化学合成培地)(1%ペニシリンを含有するCD培地、セルインキュベーター中5%CO2、37℃で培養)を用いて、それぞれ培養した。7日後、細胞培養上清を採取し、高速で遠心分離し、微多孔膜で真空濾過し、HiTrapプロテインA HPカラムを用いて精製し、抗体19F3をそれぞれ調製した。
【0083】
実施例2:抗CD73抗体19F3の配列解析
mRNAは、実施例1で培養したLT014細胞株から、培養細胞/細菌用総RNA抽出キット(Tiangen、カタログ番号DP430)の方法に従って抽出した。
cDNAは、RT-PCRキットのInvitrogen SuperScript(登録商標)III First-Strand Synthesis Systemの説明書に従って合成し、PCR増幅を行った。
【0084】
TAクローニングは、PCR増幅産物に対して直接実施した。具体的な手順については、pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen CT101)の説明書を参照されたい。
TAクローニング産物は直接配列決定され、配列決定結果は以下の通りである:
VHの核酸配列は配列番号1に示される通りで、長さは363bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号2に示される通りで、長さは121aaであった;
ここで、重鎖CDR1の配列は配列番号15に示される通りであり、重鎖CDR2の配列は配列番号16に示される通りであり、及び重鎖CDR3の配列は配列番号17に示される通りである.
【0085】
VLの核酸配列は配列番号3に示される通りで、長さは339bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号4に示される通りで、長さは113aaであった;
ここで、軽鎖CDR1の配列は配列番号18に示される通りであり、軽鎖CDR2の配列は配列番号19に示される通りであり、及び軽鎖CDR3の配列は配列番号20に示される通りである。
【0086】
実施例3:ヒトCD73に対するヒト化抗体の軽鎖及び重鎖の設計と調製
1.ヒトCD73に対するヒト化抗体19F3H1L1、19F3H2L2、及び19F3H2L3の軽鎖及び重鎖の設計
抗体19F3H1L1、19F3H2L2、19F3H2L3の可変領域配列は、ヒトCD73タンパク質の三次元結晶構造(Hage T, Reinemer P, Sebald W. Crystals of a 1:1 complex between human interleukin-4 and the extracellular domain of its receptor alpha chain. Eur J Biochem. 1998; 258 (2): 831 - 6)及び実施例2で得られた抗体19F3の配列(抗体定常領域配列、NCBIのデータベース、Igガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857はCHに使用された;Igκ鎖C領域、ACCESSION:P01834はCLに使用された)に従って、コンピューターシミュレートされたモデルにより設計された突然変異により得られた。
【0087】
設計された可変領域配列は以下の通りである:
(1)ヒト化モノクローナル抗体19F3H1L1のVH及びVL配列
VHの核酸配列は配列番号5に示される通りで、長さは363bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号6に示される通りで、長さは121aaであり、ここで、重鎖CDR1の配列は配列番号15に示される通りであり、重鎖CDR2の配列は配列番号16に示される通りであり、及び重鎖CDR3の配列は配列番号17に示す通りである。
【0088】
VLの核酸配列は配列番号7に示される通りで、長さは339bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号8に示される通りで、長さは113aaであり、ここで、軽鎖CDR1の配列は配列番号18に示される通りであり、軽鎖CDR2の配列は配列番号19に示される通りであり、及び軽鎖CDR3の配列は配列番号20に示す通りである。
【0089】
(2)ヒト化モノクローナル抗体19F3H2L2のVH及びVL配列
VHの核酸配列は配列番号9に示される通りで、長さは363bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号10に示される通りで、長さは121aaであり、ここで、重鎖CDR1の配列は配列番号15に示される通りであり、重鎖CDR2の配列は配列番号16に示される通りであり、及び重鎖CDR3の配列は配列番号17に示される通りである。
【0090】
VLの核酸配列は配列番号11に示される通りで、長さは339bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号12に示される通りで、長さは113aaであり、ここで、軽鎖CDR1の配列は配列番号18に示される通りであり、軽鎖CDR2の配列は配列番号19に示される通りであり、及び軽鎖CDR3の配列は配列番号20に示される通りである。
【0091】
(3)ヒト化モノクローナル抗体19F3H2L3のVH及びVL配列
VHの核酸配列は配列番号9に示される通りで、長さは363bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号10に示される通りで、長さは121aaであり、ここで、重鎖CDR1の配列は配列番号15に示される通りであり、重鎖CDR2の配列は配列番号16に示される通りであり、及び重鎖CDR3の配列は配列番号17に示される通りである。
【0092】
VLの核酸配列は配列番号13に示される通りで、長さは339bpであった。
これによりコードされるアミノ酸配列は配列番号14に示される通りで、長さは113aaであり、ここで、軽鎖CDR1の配列は配列番号18に示される通りであり、軽鎖CDR2の配列は配列番号19に示される通りであり、及び軽鎖CDR3の配列は配列番号20に示される通りである。
【0093】
3.ヒト化抗体19F3H1L1、19F3H2L2、及び19F3H2L3の調製
Igガンマ-1鎖C領域(ACCESSION:P01857)がCHに使用され、Igカッパ鎖C領域(ACCESSION:P01834)がCLに使用された。
【0094】
19F3H1L1重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、19F3H2L2重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、及び19F3H2L3重鎖cDNA及び軽鎖cDNAを、それぞれpUC57simple(GenScriptにより提供された)ベクターにクローニングして、pUC57simple-19F3H1、pUC57simple-19F3L1、pUC57simple-19F3H2、pUC57simple-19F3L2、及びpUC57simple-19F3L3を得た。"Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第2版)"で紹介されている標準技術を参考に、EcoRIとHindIIIを消化して、重鎖と軽鎖の全長遺伝子を合成し、制限酵素(EcoRIとHindIII)の消化を介して、発現ベクターpcDNA3.1にサブクローニングして、発現プラスミドpcDNA3.1-19F3H1、pcDNA3.1-19F3L1、pcDNA3.1-19F3H2、pcDNA3.1-19F3L2、及びpcDNA3.1-19F3L3を得て、組換え発現プラスミドの重鎖/軽鎖遺伝子について配列決定分析を行った。続いて、対応する軽鎖及び重鎖組換えプラスミド設計を含む遺伝子の組み合わせ(pcDNA3.1-19F3H1/pcDNA3.1-19F3L1、pcDNA3.1-19F3H2/pcDNA3.1-19F3L2、及びpcDNA3.1-19F3H2/pcDNA3.1-19F3L3)を、それぞれ293F細胞で同時トランスフェクトし、培養液を採取して精製した。配列決定の検証に合格した後、エンドトキシングレードの発現プラスミドを調製し、このプラスミドを抗体発現のためにHEK293細胞で一時的にトランスフェクトした。7日間培養した後、細胞培養液を採取し、プロテインAカラムを用いてアフィニティー精製を行い、ヒト化抗体を得た。
【0095】
4.ヒト化抗体19F3H2L3(hG1DM)の調製
Igカッパ鎖C領域(ACCESSION:P01834)が、19F3H2L3(hG1DM)抗体のCLに使用された(配列番号22を参照)。
【0096】
Igガンマ-1鎖C領域(ACCESSION:P01857)に基づいて、CHの234位にロイシンからアラニンへの点突然変異(L234A)を導入し、235位にロイシンからアラニンへの点突然変異(L235A)を導入して、19F3H2L3(hG1DM)と名付けたヒト化抗体を得た。19F3H2L3(hG1DM)の全長重鎖アミノ酸配列については配列番号23を参照し、19F3H2L3(hG1DM)の全長軽鎖アミノ酸配列については配列番号24を参照されたい。
【0097】
19F3H2L3(hG1DM)の重鎖cDNA及び軽鎖cDNAを、それぞれpUC57simple(GenScriptにより提供された)ベクターにクローニングして、それぞれpUC57simple-19F3H2(hG1DM)及びpUC57simple-19F3L3を得た。「MolecularCloning:ALaboratoryManual(第2版)」で紹介されている標準技術を参考に、EcoRIとHindIIIを消化して、重鎖と軽鎖の全長遺伝子に合成し、制限酵素(EcoRI&HindIII)の消化を介して、発現ベクターpcDNA3.1にサブクローニングして、発現プラスミpcDNA3.1-19F3H2(hG1DM)及びpcDNA3.1-19F3L3を得て、組換え発現プラスミドの重鎖/軽鎖遺伝子について配列決定分析を行った。続いて、軽鎖及び重鎖組換えプラスミド設計を含む遺伝子の組み合わせ(pcDNA3.1-19F3H2(hG1DM)/pcDNA3.1-19F3L3)を、それぞれ293F細胞で同時トランスフェクトし、培養液を採取して精製した。配列決定の検証に合格した後、エンドトキシングレードの発現プラスミドを調製し、このプラスミドを抗体発現のためにHEK293細胞で一時的にトランスフェクトした。7日間培養した後、細胞培養液を採取し、プロテインAカラムを用いてアフィニティー精製を行い、ヒト化抗体を得た。
【0098】
実施例4:抗CD73抗体によるB細胞活性化の効果的な誘導
CD69はC型膜貫通糖タンパク質であり、活性化されたT、B、NK、及びその他のリンパ球の表面に発現されることが多く、通常はリンパ球の早期活性化のマーカーとして使用される。CD83は、成熟DCで広く発現されるもう1つの早期活性化マーカーであり、Bリンパ球などの活性化免疫細胞でも発現される。CD83は、細胞表面のMHCクラスII及びCD86分子の分解を防ぐことができ、免疫調節に関与する。B細胞は活性化されると、抗体やサイトカインを分泌する記憶B細胞や形質細胞になり、ウイルスなどの外因性微生物による感染に対する免疫応答に関与する。
【0099】
この試験では、CD69とCD83がB細胞活性化の分子マーカーとして使用され、CD69及びCD83のMFI値と陽性率はB細胞活性化活性に正比例していた。
【0100】
実験工程:Ficoll-PaqueTM Plusキットの単離培地の説明書に従って、健康なヒト末梢血PBMCを単離し、単離したPBMCを後で使用するために凍結保存した。実験当日、PBMCはいつも通り蘇生し、完全培地(RPMI1640+10%FBS+1%ピルビン酸ナトリウム+1%非必須アミノ酸+1%L-グルタミン)に再懸濁し、240×104細胞/500μL/ウェルで12ウェルプレートに接種し、対応する抗体濃度の溶液500μLを、1群あたり2重ウェルで加え、ウェルを一晩培養した。翌日、ウェル内の細胞をピペッティングにより分散させ、各群を5ウェルに分け、750×gで5分間遠心分離し、細胞を採取し、100μLのマウスIgGアイソタイプ対照抗体(最終濃度5μg/mL)を各ウェルに加え、氷上で20分間インキュベートし、750×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、以下の二次抗体100μLを各群の対応する各ウェルにそれぞれ添加し[FITC標識抗ヒトCD3抗体(50倍希釈)、PE標識抗ヒトCD19抗体(50倍希釈)APC標識抗ヒトCD69抗体(100倍希釈)、APC標識抗ヒトCD83抗体(50倍希釈)、APC標識マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(100倍希釈)]、氷上でインキュベートし、40分間遮光し、1%PBSA(1%BSAを含むPBS)100μLを各ウェルに加え、750×gで5分間遠心分離し、上清を除去した。細胞を200μL/チューブの1%PBSAで再懸濁し、沈殿させ、フローチューブに移し、検出のためにフローサイトメーター(FACS Calibur)にロードした。
【0101】
フローイングソフトウェアを使用してフローヒストグラムと散布図をプロットし、CD3-CD19+細胞サブセットのCD69とCD83によって表されるMFI値を分析した。Graphpad prismソフトウェアを使用して、対応するMFI値に従って平均±標準偏差SDをプロットし、一元配置分散分析を実行した。P<0.05は差が有意であることを示し、P<0.01は差が非常に有意であることを示した。
【0102】
その結果は
図1及び2に示される。19F3H2L3処理群のCD69及びCD83のMFI値は、アイソタイプ対照の値よりも有意に高く、19F3H2L3がB細胞の活性化を誘導し、CD69及びCD83の発現をアップレギュレートすることができ、その活性が、臨床研究下で同一標的対照抗体MEDI9447よりも優れていることを示している。しかし、CD73酵素活性阻害剤APCP(Sigma、カタログ番号M3763-10MG)は、B細胞表面のCD69及びCD83の発現に影響を与えなかったことから、19F3H2L3が、CD73酵素活性阻害とは異なるシグナル伝達経路を介してB細胞の活性化を誘導できることを示している。
【0103】
この試験の検出結果は、19F3H2L3がB細胞(CD3-CD19+)の表面上のCD69及びCD83の発現を有意にアップレギュレートできることを示しており、19F3H2L3がB細胞の活性化を誘導する生物学的活性を有することを示しており、この活性は、臨床研究下で同一標的対照抗体MEDI9447よりも有意に優れていることを示している。同時に、検出結果は、CD73酵素活性阻害剤APCPが、B細胞の表面上のCD69及びCD83の発現に影響を与えなかったことを示し、これは、19F3H2L3がCD73酵素活性阻害とは異なるシグナル伝達経路を介してB細胞の活性化を誘導し、それによってウイルス抗原に対する免疫応答を促進できることを示している。抗体19F3、抗体19F3H1L1、及び抗体19F3H2L2は同様の結果を達成した。
【0104】
実施例5:抗CD73抗体による内因的に発現されたCD73の酵素活性の阻害の検出
1.抗CD73抗体によるMDA-MB-231細胞で内因的に発現されたCD73の酵素活性の阻害活性の検出
実験工程は以下の通りである。良好な状態の対数期MDA-MB-231細胞を採取し、無血清RPMI-1640培地に再懸濁して計数した。MDA-MB-231細胞を96ウェルプレートに3×104細胞/100μL/ウェルで接種した。抗体は無血清RPMI-1640培地で希釈し、初期濃度200μg/mLで2.5倍勾配希釈を行った。抗体を96ウェルプレートに50uL/ウェルで添加し、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、RPMI-1640で希釈した50μLの600μM AMPを各ウェルに加えた。3時間後に25μLの細胞培養上清を採取し、新しい96ウェルプレートに移し、25μLの100μM ATPを各ウェルに添加した。50uLのCTG(CellTiter-Glo(登録商標)One Solution Assay、promega、Cat:G8461)色素原溶液を使用して発色させ、マルチラベルマイクロプレート検出器(PerkinElmer 2140-0020)でデータを読み取った。
【0105】
実験結果:結果は
図3に示される。19F3H2L3及び同一標的陽性対照薬MEDI9447の両方は、AMPをアデノシンに触媒するMDA-MB-231に内因的に発現されるCD73の酵素活性を用量依存的に阻害することができ、こうして、生成される平均蛍光強度(MFI)RLU(相対光単位)が用量依存的に低下した。
【0106】
上記の実験結果は、追加されたAMPが、CD73抗体処理がない場合、MDA-MB-231の細胞表面に内因的に発現されるCD73の酵素触媒下でアデノシンに変換され、それによってルシフェラーゼ活性の阻害を緩和する可能性があることを示している。抗体の添加後、CD73は抗体によって結合され、これがその酵素触媒活性を低下させ、AMPからアデノシンへの変換が妨げる。これは、抗CD73抗体がCD73の酵素活性を非基質競合的に効果的に阻害し、アデノシンの産生を低下させることを示唆している。
【0107】
2.U87-MG細胞に添加された抗CD73抗体の酵素活性の検出
実験工程は以下の通りである。良好な状態の対数期U87-MG細胞を採取し、無血清RPMI-1640培地に再懸濁して計数した。U87-MG細胞を96ウェルプレートに3×104細胞/100μL/ウェルで接種した。抗体は無血清RPMI-1640培地で希釈し、初期濃度200μg/mLで2.5倍勾配希釈を行った。抗体を96ウェルプレートに50μL/ウェルで添加し、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、RPMI-1640で希釈した50μLの600μM AMPを各ウェルに加えた。3時間後に25μLの細胞培養上清を採取し、新しい96ウェルプレートに移し、25μLの100μM ATPを各ウェルに添加した。50uLのCTG(CellTiter-Glo(登録商標)One Solution Assay、promega、Cat:G8461)色素原溶液を使用して発色させ、マルチラベルマイクロプレート検出器(PerkinElmer 2140-0020)でデータを読み取った。
【0108】
実験結果:結果は
図4に示される。19F3H2L3及び同一標的陽性対照薬MEDI9447の両方が、AMPをアデノシンに触媒するMDA-MB-231に内因的に発現されるCD73の酵素活性を用量依存的に阻害することができ、こうして、生成されるMFI RLUが用量依存的に低下した。
【0109】
上記の実験結果は、追加されたAMPが、CD73抗体処理がない場合、87-MGの細胞表面に内因的に発現されるCD73の酵素触媒下でアデノシンに変換され、それによってルシフェラーゼ活性の阻害を緩和する可能性があることを示している。抗体の添加後、CD73は抗体によって結合され、これがその酵素触媒活性を低下させ、AMPからアデノシンへの変換が妨げられる。これは、抗CD73抗体がCD73の酵素活性を非基質競合的に効果的に阻害し、アデノシンの産生を低下させることを示唆している。抗体19F3、抗体19F3H1L1、及び抗体19F3H2L2は同様の結果を達成した。
【0110】
実施例6:抗CD73抗体による細胞膜表面でのCD73発現のインターナリゼーションの効果的な誘導
この試験では、FACS法を使用して、MDA-MB-231細胞及びU87-MG細胞の膜表面での19F3H2L3を介したCD73のインターナリゼーションの生物学的活性を評価した。間接的インターナリゼーション法のMFI値は、エンドサイトーシス活性に反比例した。
【0111】
実験工程:細胞を完全培地で対数増殖期まで培養し、170×gで5分間遠心分離し、細胞を採取し、計数して、生存率を30w/試料で測定した。対応する濃度に希釈した抗体溶液を実験計画に従って100μL/チューブで添加し、ブランク及びアイソタイプ対照を設計し、氷上で1時間インキュベートした。1%PBSAを1,000μL加え、1,200×gで5分間遠心分離後、上清を廃棄し、洗浄を1回繰り返した。対応する完全培地200μLを各チューブに加え、エンドサイトーシスを37℃でさまざまな時間行った。エンドサイトーシス後、1%PBSA(0.05%アジ化ナトリウム含有、SIGMA、カタログ番号S2002-25G)を1,000μL加え、1200×gで5分間遠心分離した。100μLの対応する蛍光二次抗体を各チューブに加え、充分混合し、氷上で光を遮断して40分間インキュベートした。1%PBSA(0.05%アジ化ナトリウム含有)1,000μLを加え、1,200×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。200μLの1%PBSA(0.05%アジ化ナトリウムを含む)/チューブを加え、細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー試料ローディングチューブに移し、ローディングしして試験した。
【0112】
インターナリゼーションの結果は
図5及び6に示される。MDA-MB-231細胞及びU87-MG細胞で37℃で0.5時間インキュベートした後、19F3H2L3のMFI値の減少が明確に観察され(
図5A及び6Aを参照)、19F3H2L3のみが細胞膜表面でのCD73のインターナリゼーションを迅速に媒介できることを示している。22時間のインキュベーション後、MDA-MB-231細胞における19F3H2L3を介したインターナリゼーション率は60.75%に達し、及び同一標的対照薬MEDI9447のインターナリゼーション率は50.53%であり、19F3H2L3よりも10.22%低かった(
図6Bを参照)。22時間後、U87-MG細胞における19F3H2L3を介したCD73のインターナリゼーション率は82.39%で、及び同一標的対照抗体MEDI9447の22時間のインターナリゼーション率は73.65%であり、これは、19F3H2L3より8.74%低かった(
図5Bを参照)。抗体19F3、抗体19F3、抗体19F3H1L1、及び抗体19F3H2L2は同様の結果を達成した。
【0113】
実施例7:ELISAによって決定された、抗原ヒトNT5E-ビオチンに対する抗CD73抗体の結合活性
実験工程:マイクロプレートを2μg/mLのストレプトアビジンでコーティングした後、マイクロプレートを4℃で12時間インキュベートした。インキュベーション終了後、抗原をコーティングしたマイクロプレートをPBSTで1回リンスした後、マイクロプレートブロッキング緩衝液として1%BSA PBST溶液を用いて2時間ブロッキングした。ブロッキング終了後、PBSTを用いてマイクロプレートを3回洗浄した。抗原であるヒトNT5E-ビオチン(Akeso Biopharma Co., Ltd.により調製された、バッチ番号20160505)を0.5μg/mLで添加し、37℃で30分間インキュベートし、PBSTを用いてプレートを3回洗浄した。PBST溶液で連続希釈した抗体をマイクロプレートウェルに添加した。抗体希釈勾配の詳細については、表1を参照されたい。被験抗体を含むマイクロプレートを37℃で30分間インキュベートし、インキュベーション終了後、マイクロプレートをPBSTを用いて3回洗浄した。プレートを洗浄後、1:5,000の比率でに希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson、カタログ番号109-035-088)、又は1:5,000の比率で希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson、カタログ番号115-035-062)二次抗体使用溶液を加え、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション終了後、PBSTを用いてプレートを4回洗浄し、TMB(Neogen、308177)を添加し、5分間遮光して発色させ、停止液を添加して発色反応を停止させた。マイクロプレートを直ちにマイクロプレートリーダーにセットし、450nmの光学波長を選択してマイクロプレートの各ウェルのOD値を読み取った。データは、SoftMax Pro 6.2.1ソフトウェアを使用して分析及び処理した。
【0114】
抗原ヒトNT5E-ビオチンへの抗CD73抗体の結合を検出するための各用量のOD値については、表1を参照されたい。抗体濃度を横軸、吸光度を縦軸にしてカーブフィッティングを行い、抗体の結合EC50を算出した。結果は以下の表1に示される。
【0115】
実験結果は、抗体19F3H1L1、19F3H2L2、19F3H2L3、及びマウス抗体19F3がヒトNT5E-ビオチンに効果的に結合でき、結合効率が用量依存的であることを示した。基本的に同じ実験条件下で、ヒトNT5E-ビオチンへの19F3H1L1の結合のEC50は0.049nM、ヒトNT5E-ビオチンへの19F3H2L2の結合のEC50は0.064nM、ヒトNT5E-ビオチンへの19F3H2L3の結合のEC50は0.061nMであり、ヒトNT5E-ビオチンへの同一標的陽性薬MEDI9447の結合のEC50は0.048nMであり、ヒトNT5E-ビオチンへのマウス抗体19F3の結合のEC50は0.018nMであった。
【0116】
上記の実験結果から、ヒトNT5E-ビオチンへの19F3H1L1、19F3H2L2、19F3H2L3、及びマウス抗体19F3の結合活性は、同じ実験条件下で、それぞれ同一標的陽性薬MEDI9447と同等であることが示され、19F3H1L1、19F3H2L2、及び19F3H2L3が、CD73に効果的に結合する機能を有することを示唆している。
【表1】
【0117】
実施例8:抗CD73抗体によるCOVID-19Sタンパク質に対する抗体産生の効果的な誘導
1.実験材料:
hIgG1DM、Akeso Biopharma Co., Ltd.製;S-タンパク質(nCoV_SRBD-mFc、配列はYP_009724390.1参照)、Akeso Biopharma Co., Ltd.製;CFA(完全フロイントアジュバント)、SIGMAから購入、カタログ番号F5881-10ml;IFA(不完全フロイントアジュバント)、SIGMAから購入、カタログ番号F5506-10ml。
【0118】
2.実験方法:
実験プロトコールと投与計画を以下の表に示す。
【表2】
【0119】
3.実験結果:
図7に示されるように、モデル群では、マウスにSタンパク質(25μg/マウス)+アジュバント誘導注射を施した後、マウス血清中のSタンパク質特異的IgGのレベルが上昇し、Sタンパク質(25μg/マウス)+アジュバントが、COVID-19Sタンパク質に対する体の免疫応答を効果的に誘導することができることを示唆している。19F3H2L3(hG1DM)投与群におけるマウス血清中のS蛋白特異的IgGは、アイソタイプ対照群と比較して、様々な程度で増加した。51日目に、19F3H2L3(hG1DM)の高用量群と低用量群の差は統計的に有意であり(T検定)、マウスにおけるSタンパク質特異的IgGの促進効果は、低用量の19F3H2L3(hG1DM)(10mg/kg)群で有意性がより高かった。抗体19F3、抗体19F3H1L1、及び抗体19F3H2L2は同様の結果を達成した。
【0120】
実施例9:CD8+T細胞及びCD19+B細胞に対する抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)の結合活性のFACSによる検出
実験工程は以下の通りである。PBMCを蘇生させ、1,200rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、完全培地に再懸濁し、計数し、37℃で一晩インキュベートした。溶液を1,200rpmで5分間遠心分離し、細胞を採取し、希釈抗体溶液を100μL/ウェルで添加し、充分混合し、4℃の冷蔵庫で1時間インキュベートした。溶液を750×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、200μLの1×PBS(1%BSA及び0.05%NaN3を含む)で2回洗浄した。抗ヒトCD3-FITC(2μL/100μL)、抗ヒトCD19-PE(2μL/100μL)(Biolegend、製品番号302254)、抗ヒトCD8-PerCP Cy5.5(1μL/100μL)、抗ヒトIgG Fc-AF647(1:300)(Southern Biotech、カタログ番号9040-31)を加え、4℃で30分間インキュベートした。溶液を750×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、200μLの1×PBS(1%BSA及び0.05%NaN3を含む)で1回洗浄し、300μLの1×PBS(1%BSA及び0.05%NaN3を含む)に再懸濁し、フローチューブに移し、ロードして試験した。
【0121】
その結果は
図8及び
図3に示される。CD8+T細胞に対する抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)及び陽性対照抗体CPI-006の結合活性EC
50(nM)は、それぞれ0.087nM及び0.288nMであり、CD19+B細胞に対する抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)及び陽性対照抗体CPI-006の結合活性EC
50(nM)は、それぞれ0.018nM及び0.108nMであった。19F3H2L3(hG1DM)と同一標的陽性対照CPI-006の両方が、ヒトCD8
+T細胞及びCD19
+B細胞によって発現されるCD73に用量依存的に結合し、それによってMFIが用量依存的に増加した。
【0122】
上記の結果は、同じ実験条件下で、19F3H2L3(hG1DM)が陽性対照抗体CPI-006よりも強くCD8+T細胞及びCD19+B細胞に結合することを示している。
【表3】
【0123】
実施例10:抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)による、ヒトPBMC膜に発現されたCD73の酵素活性の阻害
実験工程は以下の通りである:密度勾配遠心分離によって新鮮なヒトPBMCを分離し、アッセイ培地(無血清RPMI-1640)に再懸濁した。細胞数を数え、生存率を測定し、溶液を10×104細胞/ウェルに基づいて96ウェルプレートに60μL/ウェルで接種した。抗体は、アッセイ培地を使用して次の濃度に希釈した:30、10、3.3、1.1、0.11、0.011、0.0011、及び0.00011μg/mL。抗体を96ウェルプレートに60μL/ウェルで添加し、細胞と穏やかに混合し、37℃で30分間インキュベートした。60μMの濃度のAMP溶液(TCI、カタログ番号A0158)を、後で使用するためにアッセイ培地を使用して調製した。30μMの濃度のATP溶液を、後で使用するためにTMバッファー(akesobio、20191009)を使用して調製した。細胞抗体を30分間インキュベートした後、調製したAMP溶液を60μL/ウェルで添加し、穏やかに混合し、37℃で一晩(10時間)インキュベートした。一晩のインキュベーションが終了する前に、きれいな黒色の96ウェルプレートを取り出し、CTG(promega、カタログ番号G8461)を40μL/ウェルで加えた。一晩インキュベーションの終了後、インキュベーター内の96ウェルプレートを取り出し、750×gで5分間遠心分離し、上清をウェルあたり100μL/ウェルのCTGを有するた黒色の96ウェルプレートに移し、プレートをを軽くたたき、光を避けて室温で5分間置いた。5分後、調製したATP溶液を黒色の96ウェルプレートに10μL/ウェルで加え、プレートを軽くたたいて充分混合し、室温で15分間置いて遮光した。15分後、Envisionマイクロプレートリーダーを使用してRLU値を検出した。
【0124】
実験結果:結果は
図9及び表4に示される。ヒトPBMC膜によって発現されたCD73の阻害における19F3H2L3(hG1DM)、MEDI9447、及びCPI-006の酵素活性及び有効性EC50(nM)は、それぞれ0.033nM、0.0064nM、及び0.2258nMであった。19F3H2L3(hG1DM)及び同一標的陽性対照薬MEDI9447及びCPI-006のすべてが、AMPをアデノシンに触媒するヒトPBMCによって発現されたCD73の酵素活性を用量依存的に阻害し、それによって、産生されるMFIを用量依存的に減少させた。さらに、抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)の阻害率は、陽性対照薬MEDI9447及びCPI-006よりも大きかった。
【表4】
【0125】
実施例11:FACSによって検出される、抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)によるB細胞活性化の効果的な誘導
CD69はC型膜貫通糖タンパク質であり、活性化されたT、B、NK、及びその他のリンパ球の表面に発現されることが多く、通常はリンパ球の早期活性化のマーカーとして使用される。CD83は、成熟DCで広く発現されるもう1つの早期活性化マーカーであり、Bリンパ球などの活性化免疫細胞でも発現される。CD83は、細胞表面のMHCクラスII及びCD86分子の分解を防ぐことができ、免疫調節に関与する。B細胞は活性化された後、記憶B細胞や形質細胞になることができ、これらは抗体やサイトカインを分泌し、ウイルスなどの外因性微生物による感染に対する免疫応答に関与する。活性化されたB細胞は、IgM主体の抗体を産生する。HLA-DRはB細胞に発現されるMHCクラスII分子であり、HLA-DR発現の増加はBリンパ球活性化のマーカーである。従って、この試験では、CD69、CD83、HLA-DR、及びIgMがB細胞活性化の分子マーカーとして使用され、CD69、CD83、HLA-DR、及びIgMのMFI値と陽性率は、B細胞活性化活性に正比例した。
【0126】
実験工程は以下の通りである。
B細胞を蘇生させ、完全培地に再懸濁し、計数し、96ウェルプレートに100,000細胞/100μL/ウェルで接種し、各群に2重のウェルを設定した。抗体又はAPCP(アデノシン5'-(α,β-メチレン)二リン酸(Sigma、カタログ番号M3763-10MG)を加え、充分混合し、インキュベーターでインキュベートした。実験ウェル(50μLのhIgG1(Akesobio、バッチ番号20170424)を添加)を最初にB細胞と30分間インキュベートし、次に対応する抗体濃度の溶液50μLを添加した。それぞれ4時間と3日間のインキュベーション後、B細胞を採取し、フローサイトメトリーを行ってCD3-CD19+B細胞のCD69/CD83/HLA-DR/IgM発現レベルを検出した。
【0127】
FACS操作手順:ウェルプレートの各ウェルのB細胞を穏やかに混合し、96ウェルプレートの5つのウェルに均等に移し、750×gで5分間遠心分離し、上清を除去し、PBSA(1%BSAを含むPBS)に再懸濁し、及びマウスIgG(マウスIgGアイソタイプ対照)を100uL/ウェルで添加して、5μg/mlの最終濃度を得た。溶液を氷上で20分間インキュベートし、750×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、Mix1/2/3/4/5/6/7をそれぞれ加えた。
【0128】
Mix1:100uLのPBSA;
Mix2:100μLのPBSAが、2μLのFITC抗ヒトCD3(Biolegendから購入、カタログ番号344804)+2μLのPE抗ヒトCD19(Biolegendから購入、カタログ番号302254)を含む;
Mix3:100μLのPBSAが、2μLのFITC抗ヒトCD3+2μLのPE抗ヒトCD19+1μLのAPC抗ヒトCD69(Biolegendから購入、カタログ番号310910)を含む;
Mix4:100μLのPBSAが、2μLのFITC抗ヒトCD3+2μLのPE抗ヒトCD19+2μLのAPC抗ヒトCD83(Biolegendから購入、カタログ番号305312)を含む;
Mix5:100μLのPBSAが、2μLのFITC抗ヒトCD3+2μLのPE抗ヒトCD19+2μLのAPC抗ヒトHLA-DR(Biolegendから購入、カタログ番号361610)を含む;
Mix6:100μLのPBSAが、2μLのFITC抗ヒトCD3+2μLのPE抗ヒトCD19+2μLのAPC抗ヒトIgD(Biolegendから購入、カタログ番号348222)+2μLのPerCP/シアニン5.5抗ヒトCD27抗体(Biolegend、カタログ番号356408)を含む;
Mix7:100μLのPBSAが、2μLのFITC抗ヒトCD3+2μLのPE抗ヒトCD19+2μLのAPC抗ヒトIgM(Biolegendから購入、カタログ番号314510)を含む。
【0129】
溶液を氷上で40分間インキュベートし、200μLのPBSA/ウェルを加え、750×gで5分間遠心分離し、洗浄した。200μLのPBSA/ウェルを添加し、細胞を再懸濁し、ロードして試験した。
【0130】
結果は
図10に示される。19F3H2L3(hG1DM)処理群のCD69、CD83、HLA-DR、及びIgMのMFI値は、アイソタイプ対照の値よりも有意に高く、これは、19F3H2L3(hG1DM)がB細胞の活性化を誘導し、CD69、CD83、HLA-DR、及びIgMの発現をアップレギュレートし、その活性が、臨床研究中の同一標的対照抗体MEDI9447及びCPI-006よりも優れていることを示している。しかし、CD73酵素活性阻害剤APCP(Sigma、カタログ番号M3763-10MG)は、B細胞表面のCD69、CD83、HLA-DR、及びIgMの発現に影響を与えなかったため、これは、19F3H2L3(hG1DM)が、CD73酵素阻害とは異なるシグナル伝達経路を介してB細胞の活性化を誘導することができることを示している。
【0131】
実施例12:抗CD73抗体19F3H2L3(hG1DM)によるB細胞増殖の刺激
実験工程は以下の通りである。PBMCを蘇生させ、250×gで5分間遠心分離し、完全培地に再懸濁して、計数した。溶液を遠心分離し、完全培地を廃棄し、RPMI-1640で1回洗浄し、再懸濁した。0.25μMのCFSE(Biolegend、カタログ番号423801)溶液を1×106細胞/mLになるように添加し、インキュベーター内で37℃で2分間遮光してインキュベートした。2~3倍血清含有培地を加えて反応を停止させ、溶液を250×g(1,200rpm)で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞をRPMI-1640完全培地に再懸濁し、計数し、細胞懸濁液を24ウェルプレートに2.4×106細胞/ウェルで添加し、対応する濃度の抗体溶液を実験計画に従って各ウェルに添加し、二酸化炭素インキュベーターで37℃、5%CO2で7日間インキュベートした。24ウェルプレートの上清の半分をD3で廃棄し、完全培地で希釈した対応する濃度の抗体溶液を加えた。培養のD6で、24ウェルプレートの上清の半分を廃棄し、完全培地で希釈した対応する濃度の抗体溶液を加えた。培養のD7で、細胞を24ウェルプレートから採取し、以下の手順に従ってフローサイトメーターにロードした。細胞を1,200×gで5分間遠心分離し、採取し、対応する細胞番号群を取得し、5μg/mLのMSマウスIgG(Thermofisher、カタログ番号10400C)で20分間インキュベートした。溶液を遠心分離し、洗浄し、対応する蛍光抗体を加えて60分間インキュベートした。溶液を1%PBSAに再懸濁し、フローチューブに移し、ロードして試験した。
【0132】
結果は
図11に示される。異なる抗体をヒトPBMCに添加し、7日間処理した後、ヒトIgG1DMと比較して、MEDI9447処理群ではB細胞の増殖は観察されなかったが、一方B細胞の増殖は、0.05μg/mLという低濃度の19F3H2L3によって有意に促進することができた。抗体19F3、抗体19F3H1L1、及び抗体19F3H2L2は同様の結果を達成した。
【0133】
配列表
Akeso Biopharma Co., Ltd.
発明の名称:抗CD73抗体及びその使用
19F3 VHの核酸配列(配列番号1)
GAGGTGCAGCTGCAGCAGTCCGGACCAGAGCTGGTGAAGCCTGGCGCCTCCATGCGGATGTCTTGTAAGGCCTCTGGCTACAGCTTCACCGGCTATACAATGAACTGGGTGAAGCAGTCTCACGGCAAGAATCTGGAGTGGATCGGCCTGATCAACCCTTACAATGCCGGCACCAGCTATAACCAGAAGTTTAAGGGCAAGGCCACCCTGACAGTGGACAAGAGCTCCTCTACCGCCTACATGGAGCTGCTGTCCCTGACATCTGAGGATAGCGCCGTGTACTATTGCGCCCGGTCCGAGTACAGATATGGCGGCGACTACTTTGATTATTGGGGCCAGGGCACCACACTGACAGTGAGCTCC
【0134】
19F3 VHのアミノ酸配列(配列番号2)
EVQLQQSGPELVKPGASMRMSCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWIGLINPYNAGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCARSEYRYGGDYFDYWGQGTTLTVSS
【0135】
19F3 VLの核酸配列:(配列番号3)
GACATCGTGATGACCCAGTCTCCAAGCTCCCTGGCAATGAGCGTGGGACAGAAGGTGACAATGTCTTGTAAGTCTAGCCAGAGCCTGCTGAACTCCTCTAATCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCAGGCCAGTCTCCCAAGCTGCTGGTGTACTTTGCCAGCACCAGGGAGTCCGGAGTGCCTGACAGATTCATCGGCTCCGGCTCTGGCACAGACTTCACCCTGACAATCAGCTCCGTGCAGGCAGAGGACCTGGCAGATTATTTCTGCCAGCAGCACTACGACACCCCTTATACATTTGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
【0136】
19F3 VLのアミノ酸配列:(配列番号4)
DIVMTQSPSSLAMSVGQKVTMSCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLVYFASTRESGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSVQAEDLADYFCQQHYDTPYTFGGGTKLEIK
【0137】
19F3H1L1 VHの核酸配列:(配列番号5)
CAGGTGCAGCTGCAGCAGTCTGGAGCAGAGGTGGTGAAGCCAGGAGCCTCTATGAAGATGAGCTGTAAGGCCAGCGGCTACTCCTTCACCGGCTATACAATGAACTGGGTGAAGCAGGCCCACGGCCAGAATCTGGAGTGGATCGGCCTGATCAACCCTTACAATGCCGGCACCTCTTATAACCAGAAGTTTCAGGGCAAGGCCACCCTGACAGTGGACAAGTCCACCTCTACAGCCTACATGGAGCTGAGCTCCCTGCGGAGCGAGGATACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGTCCGAGTACAGATATGGCGGCGACTACTTTGATTATTGGGGCCAGGGCACCACACTGACCGTGTCTAGC
【0138】
19F3H1L1 VHのアミノ酸配列:(配列番号6)
QVQLQQSGAEVVKPGASMKMSCKASGYSFTGYTMNWVKQAHGQNLEWIGLINPYNAGTSYNQKFQGKATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSEYRYGGDYFDYWGQGTTLTVSS
【0139】
19F3H1L1 VLの核酸配列:(配列番号7)
GACATCGTGATGACCCAGTCCCCAAGCTCCCTGGCAATGTCTGTGGGAGAGAGGGTGACAATGTCCTGTAAGTCTAGCCAGTCTCTGCTGAACTCCTCTAATCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCTAAGCTGCTGGTGTACTTTGCCTCTACCAGGGAGAGCGGAGTGCCAGACAGATTCTCTGGCAGCGGCTCCGGCACAGACTTCACCCTGACAATCAGCTCCGTGCAGGCAGAGGACCTGGCAGATTATTTCTGCCAGCAGCACTACGATACCCCCTATACATTTGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
【0140】
19F3H1L1 VLのアミノ酸配列:(配列番号8)
DIVMTQSPSSLAMSVGERVTMSCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQAPKLLVYFASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDLADYFCQQHYDTPYTFGGGTKLEIK
【0141】
19F3H2L3 VHの核酸配列:(配列番号9)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGAGCAGAGGTGGTGAAGCCAGGAGCCTCTGTGAAGGTGAGCTGTAAGGCCAGCGGCTACTCCTTCACCGGCTATACAATGAACTGGGTGAGGCAGGCACCAGGACAGAATCTGGAGTGGATCGGCCTGATCAACCCTTACAATGCCGGCACCTCTTATAACCAGAAGTTTCAGGGCAAGGTGACCCTGACAGTGGACAAGTCCACCTCTACAGCCTACATGGAGCTGAGCTCCCTGCGGAGCGAGGATACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGTCCGAGTACAGATATGGCGGCGACTACTTTGATTATTGGGGCCAGGGCACCACACTGACCGTGTCTAGC
【0142】
19F3H2L2及び19F3H2L3 VHのアミノ酸配列:(配列番号10)
QVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYSFTGYTMNWVRQAPGQNLEWIGLINPYNAGTSYNQKFQGKVTLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSEYRYGGDYFDYWGQGTTLTVSS
【0143】
19F3H2L2 VHの核酸配列:(配列番号11)
GACATCGTGATGACCCAGTCCCCAAGCTCCCTGGCCGTGTCTGTGGGAGAGCGGGTGACAATCTCCTGTAAGTCTAGCCAGTCTCTGCTGAACTCCTCTAATCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCTAAGCTGCTGATCTACTTCGCCTCTACCAGGGAGAGCGGAGTGCCAGACAGATTCTCTGGCAGCGGCTCCGGCACAGACTTCACCCTGACAATCAGCTCCGTGCAGGCAGAGGACGTGGCAGATTACTATTGCCAGCAGCACTACGATACCCCCTATACATTTGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
【0144】
19F3H2L2 VLのアミノ酸配列:(配列番号12)
DIVMTQSPSSLAVSVGERVTISCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQAPKLLIYFASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDVADYYCQQHYDTPYTFGGGTKLEIK
【0145】
19F3H2L3 VLの核酸配列:(配列番号13)
GACATCGTGATGACCCAGTCCCCAAGCTCCCTGGCCGTGTCTGTGGGAGAGCGGGTGACAATCTCCTGTAAGTCTAGCCAGTCTCTGCTGAACTCCTCTAATCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCTAAGCTGCTGATCTACTTCGCCTCTACCAGGGAGAGCGGAGTGCCAGACAGATTCTCTGGCAGCGGCTCCGGCACAGACTTCACCCTGACAATCAGCTCCCTGCAGGCAGAGGACGTGGCCGTGTACTATTGCCAGCAGCACTACGATACCCCCTATACATTTGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
【0146】
19F3H2L3 VLのアミノ酸配列:(配列番号14)
DIVMTQSPSSLAVSVGERVTISCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQAPKLLIYFASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYDTPYTFGGGTKLEIK
【0147】
19F3及び19F3H2L3のCDR
HCDR1:GYSFTGYT(配列番号15)
HCDR2:INPYNAGT (配列番号16)
HCDR3:ARSEYRYGGDYFDY (配列番号17)
LCDR1:QSLLNSSNQKNY (配列番号18)
LCDR2:FAS (配列番号19)
LCDR3:QQHYDTPYT (配列番号20)。
【0148】
CPI-006重鎖のアミノ酸配列:(配列番号21)
QVQLVQSGAEVEKPGASVKVSCKASGYTFTSYWITWVRQAPGQGLEWMGDIYPGSGNTNYNEKFKTRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKEGGLTTEDYALDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0149】
CPI-006軽鎖のアミノ酸配列:(配列番号22)
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKNVSTSGYSYMHWYQQKPGQAPRLLIYLASNLESGIPPRFSGSGYGTDFTLTINNIESEDAAYYFCQHSRELPFTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0150】
19F3H2L3(hG1DM)重鎖の全長アミノ酸配列(配列番号23)
QVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYSFTGYTMNWVRQAPGQNLEWIGLINPYNAGTSYNQKFQGKVTLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSEYRYGGDYFDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0151】
19F3H2L3(hG1DM)軽鎖の全長アミノ酸配列:(配列番号24)
DIVMTQSPSSLAVSVGERVTISCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQAPKLLIYFASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYDTPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
注:下線部分はCDR配列を表す。
【配列表】
【国際調査報告】