IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 慶北大学校 産学連携財団の特許一覧

特表2023-538373新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤
<>
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図1
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図2
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図3
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図4
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図5
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図6
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図7
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図8
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図9
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図10
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図11
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図12
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図13
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図14
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図15
  • 特表-新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20230831BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20230831BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C07D257/02 CSP
A61K49/10
C07F5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512054
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2021013576
(87)【国際公開番号】W WO2022092602
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143616
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520422072
【氏名又は名称】慶北大学校 産学連携財団
【氏名又は名称原語表記】KYUNGPOOK NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、アルム
【テーマコード(参考)】
4C085
4H048
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085KA09
4C085KA28
4C085KB15
4C085LL05
4C085LL18
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB20
4H048VA20
4H048VA32
4H048VA70
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤に関する。本発明の化合物は、優れた速度論的安定性に基づき、生体内へのガドリニウムイオンの流出によるMRI造影剤の副作用を最小化することができ、生体MRI画像において、他の臓器に対して、肝臓造影増強程度が優れており、肝疾患診断用のMRI造影剤として極めて有用に用いられ得る。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表われる化合物:
[化学式1]
前記化学式1において、
Rは、-COO-、-CHCOO-または-CHCHCOO-を示す。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式1-1で表われることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
[化学式1-1]
【請求項3】
前記化学式1は、下記化学式1-2で表われることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
[化学式1-2]
【請求項4】
前記化学式1は、下記化学式1-3で表われることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
[化学式1-3]
【請求項5】
前記化合物は、肝組織に特異的に結合することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物を含有するMRI造影剤。
【請求項7】
前記MRI造影剤は、肝疾患の診断に用いられることを特徴とする請求項6に記載のMRI造影剤。
【請求項8】
前記MRI造影剤は、癌の肝転移、肝嚢腫、肝がん、または胆道閉塞症の診断に用いられることを特徴とする請求項6に記載のMRI造影剤。
【請求項9】
前記MRI造影剤は、4.7T磁気共鳴画像において、5mM-1-1乃至10mM-1-1の磁気緩和度を有することを特徴とする請求項6に記載のMRI造影剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤に関する。具体的に、本発明は、高い生体内安定性を有し、肝疾患の診断が可能な新規な化合物、及びそれを含有するMRI造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Image、以下、MRIという。)は、体内組織間の水素原子の分布が異なり、磁場中で水素原子が弛緩される現象を用いて、身体の解剖学的、生理学的、生化学的な情報画像を得る方法である。
【0003】
MRIは、CTやPETとは異なり、人体に有害な放射線を用いることなく、強い磁場下で、磁場の勾配及びラジオ派を用いて、身体内部のイメージを生成するので、非浸湿的であり、解像度が高く、軟部組織の検査に有利である。
【0004】
このようなMRI装備をさらに精密に活用するために、造影剤(contrast agent)を対象体に注入して、MRI画像を得る。MRIイメージ上での組織間のコントラストは、組織内の水分子核スピンの平衡状態に戻る緩和作用が組織によって異なるため生じる現象である。
【0005】
造影剤は、常磁性または超常磁性を帯びる物質を用いて、前記緩和作用に影響を及ぼして、組織間の緩和度の差を開き、MRI信号の変化を誘発して、組織間のコントラストをさらに鮮明にする役割をする。
【0006】
現在、臨床的に最も一般に用いられている造影剤は、ガドリニウム(Gd)キレートに基づいた造影剤であり、その中で、微細肝がん及びその他の肝疾患のMRI画像診断のための臨床用の肝臓特異的MRI造影剤としては、線状キレート構造に基づいた造影剤が用いられている。
【0007】
しかしながら、常用の肝臓特異的MRI造影剤は、線状キレート構造によって、生体内安定性が低く、体内へのガドリニウムイオンの流出可能性があり、これにより、制限的に使用可能であるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、高い生体内安定性を有し、肝疾患の診断が可能である新規な化合物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記化合物を含有するMRI造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、下記化学式1で表われる化合物が提供される:
【0011】
[化学式1]
【0012】
前記化学式1において、Rは、-COO-、-CHCOO-または-CHCHCOO-を示す。
【0013】
一実施例において、前記化学式1は、下記化学式1-1、1-2または1-3で表われることを特徴とする。
【0014】
[化学式1-1]
【0015】
[化学式1-2]
【0016】
[化学式1-3]
【0017】
一実施例において、前記化合物は、肝組織に特異的に結合することを特徴とする。
【0018】
また、本発明によれば、前記化学式1で表われる化合物を含有するMRI造影剤が提供される。
【0019】
一実施例において、前記MRI造影剤は、肝疾患の診断、より具体的には、癌の肝転移、肝嚢腫、肝がん、または胆道閉塞症の診断に用いられてもよい。
【0020】
一実施例において、前記MRI造影剤は、4.7T磁気共鳴画像において、5mM-1-1乃至10mM-1-1の磁気緩和度を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による化合物は、適切な磁気弛緩率を有し、優れた速度論的安定性を有し、生体内安定性が向上しているので、MRI造影剤として活用される場合、生体内へのガドリニウムイオンの流出によるMRI造影剤の副作用を最小化することができる。
【0022】
さらに、本発明による化合物は、生体MRI画像において、他の臓器に対して、肝臓造影増強程度に優れており、肝疾患診断用のMRI造影剤として極めて有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による化合物の合成時に生成された化合物(1)のH NMR(500MHz)スペクトルである。
図2】本発明による化合物の合成時に生成された化合物(2)のH NMR(500MHz)スペクトルである。
図3】本発明による化合物の合成時に生成された化合物(4)のHR-FABMS(ポジティブモード)分析結果を示す。
図4】本発明の実施例1による化合物(Gd-suc)のHPLC分析結果を示す。
図5】本発明の実施例1による化合物(Gd-suc)のHR-FABMS(ポジティブモード)分析結果を示す。
図6】本発明の実施例1による化合物(Gd-suc)のHR-ESIMS(ネガティブモード)分析結果を示す。
図7】本発明による化合物の合成時に生成された化合物(6)のH NMR(500MHz)スペクトルである。
図8】本発明による化合物の合成時に生成された化合物(7)のH NMR(500MHz)スペクトルである。
図9】本発明による化合物の合成時に生成された化合物(9)のHR-ESIMS(ネガティブモード)分析結果を示す。
図10】本発明の実施例2による化合物(Gd-glu)のHR-ESIMS(ネガティブモード)分析結果を示す。
図11】本発明の実施例による化合物、及び常用造影剤の速度論的安定性の評価結果を示す。
図12】本発明の実施例1による化合物(Gd-suc)の時間によるin vivo T MRI肝臓造影増強現象を示すイメージである。
図13】常用造影剤であるプリモビスト(Primovist)の時間によるin vivo T MRI肝臓造影増強現象を示すイメージである。
図14】本発明の実施例2による化合物(Gd-glu)の時間によるin vivo T MRI肝臓造影増強現象を示すイメージである。
図15】本発明の実施例1による化合物(Gd-suc)の5分以内のin vivo T MRI肝臓造影増強現象を示すイメージである。
図16】本発明の実施例1による化合物(Gd-suc)、常用肝臓造影剤であるプリモビスト、マルチハンス(Multihance)の濃度による24時間経過後の細胞生存度の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本出願において用いられる用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。異なる定義が無い限り、技術用語及び科学用語を含めて、ここに用いられる全ての用語は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に用いられる辞書に正義されている用語は、関連技術における文脈上有する意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本出願において、明らかに定義しない限り、理想化され、または、過度に形式的な意味として解釈されるべきではない。
【0025】
本発明の一実施例による化合物は、下記化学式1で表われる。
[化学式1]
【0026】
前記化学式1において、Rは、-COO-、-CHCOO-または-CHCHCOO-を示す。好ましくは、前記Rは、-CHCOO-または-CHCHCOO-であってもよい。さらに好ましくは、前記Rは、-CHCOO-であってもよい。
【0027】
本発明の一実現例によれば、前記化学式1は、下記化学式1-1で表われるものであってもよい。
【0028】
[化学式1-1]
【0029】
本発明の一実現例によれば、前記化学式1は、下記化学式1-2で表われるものであってもよい。
【0030】
[化学式1-2]
【0031】
本発明の一実現例によれば、前記化学式1は、下記化学式1-3で表われるものであってもよい。
【0032】
[化学式1-3]
【0033】
前記化学式1-1、1-2または1-3で表われる本発明の化合物は、適切な親油性(lipophilicity)を有するエトキシベンジル基(ethoxybenzyl group)が陰イオン性環状DOTA骨格にコンジュゲイション(conjugation)された構造を有するリガンドをガドリニウム錯体化して合成されたものであって、適切な磁気緩和率を有し、陰イオン性の環状MRI造影剤として用いられ得る。
【0034】
本発明の一実施例によれば、本発明の化合物は、肝組織に特異的に結合することができる。より具体的には、本発明の化合物は、肝組織細胞(hepatocyte)の特定輸送タンパク質(transporter)である有機アニオン輸送ポリペプチド(organic-anion transporting peptide)等を介して肝細胞の内部に流入されて、肝細胞の正常及び異常の生長の有無を判断することができる。
【0035】
本発明の他の実施例によるMRI造影剤は、前記化学式1で表われる化合物を含有する。
【0036】
本発明の一実施例によれば、前記MRI造影剤は、生体のMRI画像において、他の臓器に対して、肝臓造影増強程度が優れており、上述したように、肝組織細胞(hepatocyte)の特定輸送タンパク質を介して肝細胞の内部に流入されて、肝細胞の正常及び異常の生長の有無を判断することができる。
【0037】
したがって、前記MRI造影剤は、肝疾患の診断に用いられ得る。より具体的には、前記MRI造影剤は、癌の肝転移、肝嚢腫、肝がん、または胆道閉塞症の診断に用いられ得る。
【0038】
本発明の一実施例によれば、前記MRI造影剤は、4.7T磁気共鳴画像において、5mM-1-1乃至10mM-1-1の磁気緩和度を有することを特徴とする。
【0039】
本発明のMRI造影剤は、線状構造である臨床用の肝臓特異的MRI造影剤に比べて、優れた速度論的安定性を有するので、生体内安定性が向上し、これにより、生体内へのガドリニウムイオンの流出によるMRI造影剤の副作用を最小化することができ、臨床用の肝臓特異的MRI造影剤として活用されることができる。
【0040】
特に、前記化学式1-1で表われる化合物を含有するMRI造影剤の場合、高い速度論的安定性を有し、これは、化合物のアルキル鎖構造によって、化合物の安定性が最適化されるからである。
【0041】
以下、本発明の詳細な理解のために、本発明の代表化合物を挙げて、本発明による化合物、その製造方法、及びそれを含有するMRI造影剤について説明する。ただし、本発明が、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0042】
1. 本発明の実施例による化合物の合成
1-1.実施例1(Gd-suc)の合成
【0043】
1)ジメチル-2-ブロモスクシネート(bromosuccinate)(1)の合成
方法1)硫酸(Sulfuric acid)(1.3ml、95%grade)を、常温のメタノール(75ml)に溶かしたプロモコハク酸(bromosuccinic acid)(5g、25.38mmol)溶液に添加しながら撹拌した。以降、無色の反応溶液を、還流装置下、120℃で、1時間加熱撹拌させた。
【0044】
反応が終わった後、反応物を常温で冷やし、メタノールを回転蒸発させて除去した後、反応物のpHを6に中和するために、5% NaHCO溶液を加えてから、ジエチルエーテル(200ml)を添加して反応物を抽出した。5% NaHCO溶液とジエチルエーテルを用いた抽出過程は2回繰り返し、以降、生成物が含まれた有機層を、さらに飽和NaCl(saturated NaCl)溶液を用いて2回洗浄した。抽出及び洗浄が完了した有機層は、無水MgSOを加えて脱水し、回転蒸発させて、無色の油状の生成物(1)を得た。(4.91g、21.83mmol、86%)
【0045】
方法2)塩化チオニル(thionyl chloride)(3.66ml、50.76mmol)をメタノール(120ml)に溶かして、0℃に冷却したプロモコハク酸(bromosuccinic acid)(5g、25.38mmol)溶液にゆっくり添加しながら撹拌した。塩化チオニルの添加が終わった後、反応混合物の温度を常温に高め、24時間、撹拌して反応させた。
【0046】
反応が終わった後、メタノールを回転蒸発させて除去し、5% NaHCO溶液を加えて中和した。中和した反応物にジエチルエーテル(200ml)を添加して反応物を抽出した。5% NaHCO溶液とジエチルエーテルを用いた抽出過程は2回繰り返し、以降、生成物が含まれた有機層を、さらに飽和NaCl溶液を用いて2回洗浄した。抽出及び洗浄が完了した有機層は、無水MgSOを加えて脱水し、回転蒸発させて、無色の油状の生成物(1)を得た。生成されたオイルは、シリカカラム(石油エーテル/酢酸エチル(patroleum ether/ethtyl acetate))によって得た。(4.63g、20.56mmol、81%)、H NMR(500MHz、CDCl)δ 4.55(dd、J=8.8、6.2Hz、1H)、3.78(s、3H)、3.68(s、3H)、3.25(dd、J=17.2、8.8Hz、1H)、2.96(dd、J=17.2、6.2、3.3Hz、1H)。前記生成物(1)のH NMR(500MHz)スペクトルは、図1に示した。
【0047】
2)ジメチル2-(4,10-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)スクシネート(2)の合成
ACN(20ml)に溶かしたジメチル-2-ブロモスクシネート(1)(0.5g、2.22mmol)溶液を、ジ-tert-ブチル2,2'-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-ジイル)ジアセテート(0.89g、2.22mmol)とNaHCO(1.23g、8.89mmol)の常温混合溶液(ACN 100ml)に2日間ゆっくり加えながら(シリンジポンプ:0.35ml/hr)撹拌した。反応が終わった時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(silica、DCM:MeOH=95:5)によって確認した。
【0048】
反応終了後、塩基固形物をろ過して除去し、減圧下で、反応物のACNを回転蒸発させて除去した。反応物は、n-ヘキサンで再結晶して、無色結晶の生成物(2)を得た。(0.94g、1.73mmol、78%)、H NMR(500MHz、アセトン-d)δ 4.09(dd、J=9.5、4.1Hz、1H)、3.81(s、J=20.0Hz、3H)、3.65(s、3H)、3.54-3.42(m、4H)、3.25-3.11(m、6H)、3.02-2.60(m、12H)、1.45(s、18H)。前記生成物(2)のH NMR(500MHz)スペクトルは、図2に示した。
【0049】
3)ジメチル2-(4,10-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-7-(4-エトキシベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)スクシネート(3)の合成
1-(クロロメチル)-4-エトキシベンゼン(2.69g、15.76mmol)を前記生成物(2)(5.17g、9.49mmol)とKCO(3.93g、28.47mmol)の常温混合溶液(ACN 100ml)に添加して、常温で、18時間撹拌した。反応が終わった時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(silica、DCM:MeOH=95:5)によって確認した。
【0050】
反応が終わった後、塩基固形物は、ろ過して除去し、減圧下で、ACNを回転蒸発させて除去した。溶媒が除去された反応混合物にジエチルエーテル(300ml)を添加して溶かし、1M HCl水溶液を添加して、3回抽出した。有機層の副生成物を除去し、残った水溶液層のpHを3M NaOH溶液を加えて、pH6-7に中和すると、生成物が白色の固体で析出され、ここに、さらにDCM(300ml)を添加して、生成物を有機層として抽出する。生成物が抽出された有機層は、無水MgSOで脱水し、回転蒸発させて、淡黄色の固形物を得て、これを、さらにシリカカラム(クロロホルム/MeOH)で精製して、白色固形の生成物(3)を得た。(5.35g、7.88mmol、83%)
【0051】
4)2-(4,10-ビス(カルボキシメチル)-7-(4-エトキシベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)コハク酸(4)の合成
前記生成物(3)(4.68g、6.89mmol)をTHF(175ml)、0.3M LiOH水溶液(175ml)に溶かして、18時間、常温で撹拌した。反応終了時点は、LC/MSで確認し、反応終了後、減圧下で、回転蒸発させて、THFの除去及び水分量を10mlまで減らす。反応混合物を洗浄したamberlite(アンバーライト) IR 120(Hform)を通して酸性化させ、反応物中の水を除去した。前記反応物を、さらにDCM(150ml)及びトリフルオロ酢酸(150ml)に溶かして、18時間反応させた。
【0052】
反応終了後、保護基が除去された反応混合物の溶媒を全て除去し、メタノールに溶かして、ジエチルエーテル条件で精製及び沈殿物を得た。沈殿物は、0.1% TFAが添加された3次蒸溜水に溶かして、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、sfar C18 30g)またはsemi-prep HPLC(YMC、Hydrosphere C18)で精製して、最終的に白色の固形物である生成物(4)を得た。(3.38g、6.27mmol、91%)、HR-FABMS:Calc.539.2717、found.539.2718[M+H]。前記生成物(4)のHR-FABMS(ポジティブモード)分析結果を、図3に示した。
【0053】
5)ガドリニウム錯体(Gd-suc)(5)の合成
ナトリウム塩(sodium salt))前記生成物(4)(0.317g、5.89mmol)を3次蒸溜水(40ml)に溶かした溶液にGd(1.07g、2.95mmol)を添加して、90℃で、18時間撹拌した。反応終了時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(C18、水:ACN=7:3)によって確認した。
【0054】
反応が終わった後、1M NaOH水溶液を添加してpHを7に合わせ、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、sfar C18 30g)またはsemi-prep HPLC(YMC、Hydrosphere C18)で精製して、最終的に白色の固形物であるガドリニウム錯体(5)を得た。
【0055】
メグルミン塩(meglumine salt))前記生成物(4)(0.317g、5.89mmol)を3次蒸溜水(40ml)に溶かした溶液にGd(1.07g、2.95mmol)を添加して、90℃で、18時間撹拌した。反応終了時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(C18、水:ACN=7:3)によって確認した。
【0056】
反応が終わった後、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、sfar C18 30g)またはsemi-prep HPLC(YMC、Hydrosphere C18)で精製し、精製された生成物にメグルミン(5.89mmol)を添加して塩化し、凍結乾燥して、白色の固形物であるガドリニウム錯体(5)(以下、Gd-sucと命名する)を得た。(3.79g、5.48mmol、93%)、HR-FABMS:Calc.694.1723、found.694.1720[M+2H]、HR-ESIMS:Calc.692.1537、found.692.1578、[M]。前記Gd-suc(5)のHPLC分析結果、HR-FABMS(ポジティブモード)及びHR-ESIMS(ネガティブモード)分析結果を、それぞれ図4図6に示した。
【0057】
1-2. 実施例2(Gd-glu)の合成
【0058】
1)ジメチル(R)-2-ブロモペンタンジオエート(bromopentanedioate)(6)の合成
0℃下で、亜硝酸ナトリウム(sodium nitrite)(15.6g、mmol)を、L-グルタミン酸(15g、mmol)と臭化ナトリウム(sodium bromide)(26.22g、mmol)を2N HBr溶液(125ml)に溶かした反応物にゆっくり30分間添加した。添加が完了した後、常温で、5分間撹拌し、常温で撹拌した反応物に硫酸(95%、5ml)を添加して、常温で、1.5時間撹拌した。
【0059】
反応が完了した混合物にジエチルエーテル(200ml)を入れ、有機層で生成物を抽出する過程を3回繰り返した。抽出した有機層を、無水MgSOを用いて脱水し、減圧下で、回転蒸発させて、黄色のオイルを得た。黄色のオイルは、MeOH(65ml)に溶かし、SOCl(4ml)を添加して、常温で、2日間反応させた。
【0060】
反応が完了した後、過量のSOClは、5% NaHCO溶液で中和し、及びDCM(150ml)で抽出した。抽出した有機層を無水MgSOで脱水し、減圧下で、回転蒸発させて、明るい黄色のオイルを得た。前記明るい黄色のオイルは、シリカカラム(石油エーテル/酢酸エチル)を用いて精製して、無色のオイル生成物(6)を得た。(5.29g、0.022mmol、21.57%)、H NMR(500MHz、CDCl)δ 4.43-4.34(m、J=8.5、5.8Hz、1H)、3.79(s、3H)、3.70(s、3H)、2.60-2.46(m、2H)、2.44-2.25(m、2H)。前記生成物(6)のH NMR(500MHz)スペクトルは、図7に示した。
【0061】
2)ジメチル(R)-2-(4,10-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタンジオエート(pentanedioate)(7)の合成
ACN(100ml)に溶かしたジメチル(R)-2-ブロモペンタンジオエート(6)(5.1g、21.33mmol)溶液を、ジ-tert-ブチル2,2'-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-ジイル)ジアセテート(8.55g、21.33mmol)とKCO(2.95g、21.33mmol)の常温混合溶液(ACN 100ml)に2日間ゆっくり加えながら(シリンジポンプ:5ml/hr)撹拌した。反応が終わった時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(silica、DCM:MeOH=95:5)によって確認した。
【0062】
反応終了後、塩基固形物をろ過して除去し、減圧下で、反応物のACNを回転蒸発させて除去して、明るい黄色のオイルを得た。前記明るい黄色のオイルをシリカカラム(CHCl/MeOH)によって無色のオイルとして得て、これをジエチルエーテルに沈殿させて、白色の固体生成物(7)を得た。(9.17g、16.44mmol、56%)、H NMR(500MHz、CDCl)δ 3.73-3.62(m、6H)、3.49(dt、J=15.4、7.7Hz、1H)、3.40-3.16(m、4H)、3.04-2.45(m、17H)、2.30-2.24(m、J=13.1Hz、2H)、2.07-1.87(m、2H)、1.51-1.40(m、18H)。前記生成物(7)のH NMR(500MHz)スペクトルは、図8に示した。
【0063】
3)ジメチル(S)-2-(4,10-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-7-(4-エトキシベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタンジオエート(8)の合成
1-(クロロメチル)-4-エトキシベンゼン(0.93g、5.34mmol)を、前記生成物(7)(1.99g、3.56mmol)とKCO(1.48g、10.69mmol)の常温混合溶液(ACN 60ml)に添加して、常温で、18時間撹拌した。反応が終わった時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(silica、DCM:MeOH=95:5)によって確認した。
【0064】
反応が終わった後、塩基固形物は、ろ過して除去し、減圧下で、ACNを回転蒸発させて除去した。溶媒が除去された反応混合物にジエチルエーテル(100ml)を添加して溶かし、1M HCl水溶液を添加して、3回抽出する。有機層の副生成物を除去し、残った水溶液層のpHを3M NaOH溶液を加えて、pH6-7に中和すると、生成物が白色の固体で析出され、ここに、さらにDCM(100ml)を添加して、生成物を有機層として抽出する。生成物が抽出された有機層は、無水MgSOで脱水し、回転蒸発させて淡黄色の固形物を得て、これを、さらにシリカカラム(クロロホルム/MeOH)で精製して、白色固形の生成物(8)を得た。(0.70g、1.01mmol、28.37%)
【0065】
4)(S)-2-(4,10-ビス(カルボキシメチル)-7-(4-エトキシベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン二酸(pentanedioic acid)(9)の合成
前記生成物(8)(0.7g、1.01mmol)を5M NaOH水溶液(4.4ml)及びMeOH(4.4ml)に溶かして、18時間、常温で撹拌した。反応終了時点は、LC/MSで確認し、反応終了後、減圧下で回転蒸発させて、MeOHを除去し、及び水分量を2mlまで減らす。
【0066】
反応混合物を、洗浄したamberlite IR 120(Hform)を通して酸性化させ、反応物から水を除去する。前記反応物を、さらにDCM(50ml)及びトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)(50ml)に溶かして、18時間反応させる。
【0067】
反応終了後、保護基が除去された反応混合物の溶媒を全て除去し、メタノールに溶かして、ジエチルエーテル条件で精製及び沈殿物を得た。沈殿物は、0.1% TFAが添加された3次蒸溜水に溶かして、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、sfar C18 30g)またはsemi-prep HPLC(YMC、Hydrosphere C18)で精製して、最終的に白色の固形物である生成物(9)を得た。(0.24g、0.43mmol、43%)、HR-ESIMS:Calc.553.2874、found.553.2877、[M+H]。前記生成物(9)のHR-ESIMS(ポジティブモード)分析結果を、図9に示した。
【0068】
5)ガドリニウム錯体(Gd-glu)(10)の合成
ナトリウム塩(sodium salt))前記生成物(9)(0.5g、0.905mmol)を3次蒸溜水(15ml)に溶かした溶液にGd(0.295g、0.453mmol)を添加して、90℃で、18時間撹拌した。反応終了時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(C18、水:ACN=7:3)によって確認する。
【0069】
反応が終わった後、1M NaOH水溶液を添加してpHを7に合わせ、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、sfar C18 30g)またはsemi-prep HPLC(YMC、Hydrosphere C18)で精製して、最終的に白色の固形物であるガドリニウム錯体(10)を得た。
【0070】
メグルミン塩(meglumine salt))前記生成物(9)(0.5g、0.905mmol)を3次蒸溜水(15ml)に溶かした溶液にGd(0.295g、0.453mmol)を添加して、90℃で、18時間撹拌した。反応終了時点は、LC/MSまたは薄層クロマトグラフィー(C18、水:ACN=7:3)によって確認する。
【0071】
反応が終わった後、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、sfar C18 30g)またはsemi-prep HPLC(YMC、Hydrosphere C18)で精製する。精製された生成物にメグルミン(0.905mmol)を添加して塩化し、凍結乾燥して、白色の固形物であるガドリニウム錯体(10)(以下、Gd-gluという。)を得た。(0.44g、0.62mmol、69%)、HR-ESIMS:Calc.706.1723、found.706.1734、[M]。前記Gd-glu(10)のHR-ESIMS(ポジティブモード)分析結果を、図10に示した。
【0072】
2. MRI造影効果
本発明の実施例による化合物(Gd-suc、Gd-glu)及び常用MRI造影剤のMRI造影効果を調べるために、磁気緩和度及び親油性を分析し、その結果を下記の表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
磁気緩和度(mM-1-1)は、単位濃度当たり造影効率を意味するパラメーターであり、T造影剤の場合、r/r比は、0.5-1.5の値を有すると知られている。
【0075】
前記表1を参照すると、本発明の化合物であるGd-sucの場合、細胞外液製剤として用いられる臨床MRI造影剤に比べて、高いレベルのr、r値を有し、肝臓特異的製剤として用いられる臨床MRI造影剤(プリモビスト、マルチハンス)とほとんど同じレベルの磁気緩和度及び親油性を有することがわかる。
【0076】
3.速度論的安定性の評価
ガドリニウム錯体を利用したMRI造影剤は、リガンド構造に応じて、体内イオンとの相互作用による構造不安定性が存在することができる。したがって、本発明の実施例による化合物(Gd-suc、Gd-glu)及び常用MRI造影剤の速度論的安定性を評価するために、時間による磁気緩和率の変化を測定し、その結果を図11に示した。
【0077】
具体的に、Gd-suc、Gd-glu及び常用MRI造影剤をそれぞれ溶かした溶液(常温、2.5mM、PBS)に塩化亜鉛(1eq.ZnCl)を添加した後、体内pH環境(pH7.4)において、ガドリニウムと亜鉛イオンの金属交換反応を誘導し、その磁気弛緩率を測定(3T MRI、GE Healthcare、Architect)して確認した。
【0078】
図11に示すように、本発明の化合物であるGd-sucは、常用肝臓特異的造影剤であるプリモビスト、マルチハンスと比べて、顕著に高い速度論的安定性を示し、これは、Gd-DOTAであるドタレムとほとんど同じ値を示す。
【0079】
4.in vivo MRI造影効果
本発明の実施例による化合物(Gd-suc、Gd-glu)と常用肝臓造影剤であるプリモビストの肝臓特異的T造影効果を小動物(Balb/C mouse、male、5w、25g、0.1mmol/kg)の腹部T強調画像(Bruker、4.7T)によって確認し、その結果を図12-15に示した。
【0080】
図12を参照すると、本発明の化合物であるGd-sucは、マウス尾静脈投与後から15分以内には、速い肝・胆道系造影増強現象及び排出を示した。これは、肝臓特異的造影製剤の特徴であり、胆嚢(gall bladder)における造影増強現象として確認が可能である。
【0081】
また、Gd-sucの肝臓特異的造影増強程度は、常用肝臓特異的MRI造影剤であるプリモビスト(図13参照)とほとんど同じレベルを示した。
【0082】
一方、図14を参照すると、本発明の化合物であるGd-gluも、胆嚢造影増強効果を示すことがわかり、これにより、肝疾患特異的MRI造影剤として使用可能であることがわかる。
【0083】
また、図15をみると、Gd-sucは、5分以内のin vivo MRI画像において、極めて強い肝臓造影増強現象を示し、これは、臨床的には、速い腹部MRI画像を可能にする。
【0084】
5.in vitro細胞生存度(cell-viability)実験
正常肝細胞(hepatocyte)における細胞毒性の有無を確認するために、AML12細胞株を用いて、本発明の実施例による化合物であるGd-suc、及び常用肝臓造影剤であるプリモビストとマルチハンスを濃度別に処理し、24時間後の細胞生存度を公知のCCK方法によって分析し、その結果を図16に示した。
【0085】
図16に示すように、本発明の化合物であるGd-sucは、400μMの濃度でも、95%以上の細胞生存度を示し、細胞毒性がないのに対して、常用肝臓造影剤であるプリモビストとマルチハンスは、それぞれ400ul、200μM以上の濃度で、80%以下の細胞生存度を有し、有意な細胞毒性を示すことがわかる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者であれば、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域を逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更できることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】