(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電気的に制御可能な光学特性を有する機能素子と高周波数透過のための型とを含むペイン
(51)【国際特許分類】
C03C 17/38 20060101AFI20230831BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20230831BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C03C17/38
C03C27/06 101H
C03C27/06 101K
B60J1/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512179
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021072767
(87)【国際公開番号】W WO2022058109
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504416080
【氏名又は名称】セイジ・エレクトロクロミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ドロステ
【テーマコード(参考)】
4G059
4G061
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB07
4G059AB11
4G059AC06
4G059AC08
4G059AC14
4G059AC30
4G059DA01
4G059DA02
4G059DA03
4G059DA04
4G059DA05
4G059DA06
4G059DA07
4G059DA09
4G059DB02
4G059DB09
4G059EA03
4G059FA07
4G061AA26
4G061AA30
4G061AA31
4G061AA33
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB06
4G061CD25
(57)【要約】
【課題】電気的に制御可能な光学特性を有する機能素子を有するペインの提供。
【解決手段】電気的に制御可能な光学特性を有する機能素子(2)を有するペイン(10)であって、このペイン(10)は、少なくとも1つの第一のペインと、少なくとも、以下の順序で上下に平らに配置された、第一の表面電極(3.1)、活性層(4)、及び第二の表面電極(3.2)を含む、少なくとも1つの、電気的に制御可能な光学特性を有する機能素子(2)と、電気伝導的に第一の表面電極(3.1)と接触している少なくとも1つの第一のバスバー(5.1)及び電気伝導的に第二の表面電極(3.2)と接触している少なくとも1つの第二のバスバー(5.2)と、端部領域(R)における少なくとも1つの端部側構造(6)とを含み、端部側構造は、第一の表面電極(3.1)及び/又は第二の表面電極(3.2)内のはぎ取られた線形の領域(7)によって形成されており、このようにして、線形の領域(7)は、第一のバスバー(5.1)及び/又は第二のバスバー(5.2)に隣接して位置し、かつ、そこから出発して、周囲端部(K)の対向するセクションの方向に延びるようになっており、端部側構造(6)は、第一の表面電極(3.1)及び第二の表面電極(3.2)内に電気的に分離されたゾーンを有さない、ペイン(10)。
【選択図】1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子(2)を有するペイン(10)であって、このペイン(10)は、
- 第一の側(I)と、第二の側(II)と、周囲端部(K)に隣接する端部領域(R)とを有する少なくとも1つの第一のペイン(1.1)、
- 前記第一のペイン(1.1)の前記第一の側(I)に平らに配置された、少なくとも1つの前記電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子(2)であって、少なくとも、以下の順序で上下に平らに配置された、第一の表面電極(3.1)、活性層(4)、及び第二の表面電極(3.2)を含む、前記機能素子(2)、
- 電気伝導的に前記第一の表面電極(3.1)と接触している少なくとも1つの第一のバスバー(5.1)、及び電気伝導的に前記第二の表面電極(3.2)と接触している少なくとも1つの第二のバスバー(5.2)、
- 前記第一の表面電極(3.1)及び/又は前記第二の表面電極(3.2)内の脱コーティングされた線形の領域(7)によって形成された、前記端部領域(R)における少なくとも1つの端部側パターン(6)であって、前記線形の領域(7)は、前記第一のバスバー(5.1)及び/又は前記第二のバスバー(5.2)に沿って隣接して位置し、かつ、そこから出発して、前記周囲端部(K)の対向するセクションの方向に延びるようになっている、前記端部側パターン(6)
を含み、
前記端部側パターン(6)は、前記第一の表面電極(3.1)及び前記第二の表面電極(3.2)内に電気的に分離されたゾーンを有さない、ペイン(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第一のバスバー(5.1)及び前記少なくとも1つの第二のバスバー(5.2)が、前記周囲端部(K)の対向するセクションに配置されている、請求項1に記載のペイン(10)。
【請求項3】
前記脱コーティングされた線形の領域(7)が、波状の形状又は実質的に波状の形状、好ましくは、少なくとも幾つかのセクションにおける正弦曲線の経路及び/又は少なくとも幾つかのセクションにおけるジグザグ経路を有する、請求項1又は2に記載のペイン(10)。
【請求項4】
前記端部側パターン(6)の前記脱コーティングされた線形の領域(7)が、直線の経路又は実質的に直線の経路を有する、請求項1又は2に記載のペイン(10)。
【請求項5】
前記脱コーティングされた線形の領域(7)が、隣接する前記第一のバスバー(5.1)又は隣接する前記第二のバスバー(5.2)に対して、10°~50°、好ましくは20°~45°、特に好ましくは25°~40°の角度を有する、請求項4に記載のペイン(10)。
【請求項6】
前記端部側パターン(6)の前記脱コーティングされた線形の領域(7)が、前記周囲端部(K)の方向において増加する線密度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のペイン(10)。
【請求項7】
前記第一の表面電極(3.1)及び/又は前記第二の表面電極(3.2)が、脱コーティングされた線形の領域(7)の群を有し、この線形の領域(7)は、同じ群の線形の領域(7)に対して平行であるか、実質的に平行であり、同じ群の、隣接する脱コーティングされた領域間の距離は、好ましくは1.0mm~20.0mm、特に好ましくは1.0mm~10.0mm、特に、2.0mm~5.0mmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のペイン(10)。
【請求項8】
前記第一の表面電極(3.1)及び/又は前記第二の表面電極(3.2)が、少なくとも1つの中心パターン(8)を有し、この中心パターン(8)は、前記端部領域(R)の外側の領域に少なくとも部分的に導入されており、前記中心パターン(8)は、前記第一の表面電極(3.1)及び前記第二の表面電極(3.2)内に電気的に分離されたゾーンを有さない、請求項1~7のいずれか一項に記載のペイン(10)。
【請求項9】
前記中心パターン(8)は、脱コーティングされた線形の領域(7)を有し、好ましくは、この線形の領域(7)は、前記第一の表面電極(3.1)内で、前記第一のバスバー(5.1)の近くの前記端部側パターン(6)から出発し、前記第二のバスバー(5.2)の方向に延びており、かつ/または前記第二の表面電極(3.2)内で、前記第二のバスバー(5.2)の近くの前記端部側パターン(6)から出発し、前記第一のバスバー(5.1)の方向に延びている、請求項8に記載のペイン(10)。
【請求項10】
バスバー(5.1,5.2)が配置されていない前記周囲端部(K)のセクションに沿って、電気的に分離されたゾーン(13)が、前記第一の表面電極(3.1)及び/又は前記第二の表面電極(3.2)内の前記端部領域(R)において導入されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のペイン(10)。
【請求項11】
前記機能素子(2)が、エレクトロクロミック機能素子、SPD素子、PDLC素子、又はエレクトロルミネッセンス素子である、請求項1~10のいずれか一項に記載のペイン(10)。
【請求項12】
少なくとも、
- 請求項1~11のいずれか一項に記載のペイン(10)、
- 少なくとも電気伝導性コーティング(11)を含む第二のペイン(1.2)、
- 前記第二のペイン(1.2)を前記ペイン(10)に連結する周囲スペーサー(21)
を含む、遮断グレージング(20)であって、
少なくとも1つの端部側パターン(6)が、前記端部領域(R)において、前記電気伝導性コーティング(11)内に導入されている、遮断グレージング(20)。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のペイン(10)を製造する方法であって、少なくとも、
a.電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子(2)を有する第一のペイン(10)を提供し、
b.脱コーティングされた線形の領域(7)を含む少なくとも1つの端部側パターン(6)を、前記第一の表面電極(3.1)及び/又は前記第二の表面電極(3.2)内に形成して、前記線形の領域(7)が、前記第一のバスバー(5.1)及び/又は前記第二のバスバー(5.2)に隣接して位置し、かつ、そこから出発して前記周囲端部(K)の対向するセクションの方向に延びているようにし、
前記端部側パターン(6)は、電気的に分離されたゾーンを前記第一の表面電極(3.1)及び前記第二の表面電極(3.2)内に有さない、方法。
【請求項14】
前記端部側パターン(6)が、レーザーパターニングによって導入される、請求項12に記載のペイン(10)を製造する方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のペイン(10)又は請求項12に記載の遮断グレージング(20)の、陸上、水上、又は空中での輸送手段の乗り物の本体又は乗り物のドアにおける、好ましくはウィンドシールドとしての、高周波電磁放射線の透過損失が低いグレージングとしての使用、建築物における、外部ファサードの部分又は建物の窓の部分としての高周波電磁放射線の透過損失が低いグレージングとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子を含むペインであって、高周波領域における電磁放射線に対して低い透過損失を有する、ペインに関する。本発明はさらに、そのようなペインを製造する方法及びその使用、並びにそのようなペインを含む遮断グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のグレージングは、ラジオ受信、好ましくは、AMバンド、FMバンド、又はDABバンドにおけるラジオ受信、GSM900及びDCS1800、UMTS、LTE、及び5Gバンドでの携帯電話通信、並びに衛星を利用したナビゲーション(GPS)、及びWLANなどの基本サービスの動作のために電磁放射線を送受信するための様々な技術デバイスを要求する。特に、自動車のグレージングの分野において、様々なアプローチが、電磁放射線の透過の改善について知られている。しかし、現代の切り替え可能な建築のグレージングの結果として、これらの問題は、この分野でもますます生じている。
【0003】
現代のグレージングは、すべての側で、表面全体にわたって、ますますコーティングを有し、コーティングは、電気伝導性であり、可視光に対して透明である。EP 378917 Aから知られているように、これらの透明な電気伝導性コーティングは、内部を、例えば、太陽光による過熱又は冷却に対して、入射熱放射を反射することによって保護する。WO2010/043598 A1から知られているように、透明な電気伝導性コーティングは、電圧の印加によって、ペインの選択的加熱を達成することができる。
【0004】
透明な電気伝導性コーティングに共通するのは、さらに、それらが高周波領域の電磁放射線に対して不透過性であるという事実である。乗り物のグレージングが、すべての側で、表面全体にわたって透明な電気伝導性コーティングを含むことに起因して、内部での電磁放射線の送受信はもはや可能ではない。雨センサ、カメラシステム、又は固定アンテナなどのセンサの動作のために、一般的に、電気伝導性透明コーティングの1つ又は2つの局所的な領域が脱コーティングされる。これらの脱コーティングされた領域は、いわゆる「コミュニケーションウィンドウ」又は「データ伝送ウィンドウ」を形成し、これらは、例えば、EP 1 605 729 A2から知られている。透明な電気伝導性コーティングはペインの色及び反射率に影響を及ぼすため、通信ウィンドウは、視覚的にかなり目立つ。脱コーティングされた領域は、ペインの視野に障害を引き起こす場合がある。
【0005】
EP 0 717 459 A1、US2003/0080909 A1、及びDE 198 17 712 C1から知られているのは、金属コーティングを含むペインであり、そのすべては、金属コーティングのグリッド状の脱コーティングを有する。グリッド状の脱コーティングは、入射高周波電磁放射線のローパスフィルターとして働く。グリッドスペースは、高周波電磁放射線の波長と比較して小さく;したがって、コーティングの比較的大きい割合がパターン化され、透視は、比較的大きい程度で害される。層の比較的大きい部分の除去には、時間とコストがかかる。
【0006】
US2020/056423 A1及びUS2018/307111 A1は、電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子を含む遮断グレージングを記載する。
【0007】
WO2015/091016 A1は、透明な電気伝導性コーティングを含むペインを開示し、そこには、脱コーティングされたパターンが導入され、脱コーティングされたパターンは、全表面が脱コーティングされた矩形、又は脱コーティングされた矩形の枠の形態を有する。
【0008】
EP 2 586 610 A1から知られているのは、電気伝導性コーティングを赤外線反射コーティングとして含むペインであり、そこでは脱コーティングされたラインがコーティングへ導入されている。
【0009】
US2004/0113860 A1は、加熱層として、又は赤外線放射を反射するために用いることができる金属層を含むグレージングを開示し、そこでは、改善された電磁透過性を可能にすることが意図された開口部が層へ導入されている。
【発明の概要】
【0010】
ここで、本発明の目的は、電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子を有するペインであって、高周波電磁放射線の改善された透過性と、同時に、機能素子の均質な切り替え動作、及び透視の低い障害とを有するペイン、そのようなペインを含む遮断グレージング、その製造方法、及びその使用の提供にある。これら及び他の目的は、独立クレームの特徴を含むペインによって、本発明の提案に従って達成される。本発明の有利な実施態様は、従属クレームの特徴によって示される。高周波透過性を有するペインの製造方法、及びそのようなペインの使用は、さらなる独立クレームから明らかになる。
【0011】
本発明に係るペインは、第一の側と、第二の側と、周囲端部と、周囲端部に隣接する端部領域とを有する少なくとも1つの第一のペインを含み、電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子は、第一のペインの第一の側に平らに配置されている。機能素子は、少なくとも、上下に平らに配置された、第一の表面電極及び第二の表面電極を含み、その間に、機能素子の活性層が位置する。電圧は、電気伝導的に第一の表面電極と接触する第一のバスバー及び電気伝導的に第二の表面電極と接触する第二のバスバーを介して、表面電極に印加することができる。ペインの端部領域において、第一のバスバーの近く及び/又は第二のバスバーの近くに、端部側パターンが、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極内に導入され、端部側パターンは、脱コーティングされた線形の領域によって形成される。脱コーティングされた線形の領域は、それぞれの表面電極の表面の中心に面するバスバーの端部と、表面の中心との間でバスバーに沿って配置され、そこから出発して、ペインの周囲端部の対向するセクションの方向に延びる。線形の脱コーティングされた領域は、最も近いバスバーに対して種々様々の経路及び角度をとることができ;線形の脱コーティングされた領域の経路において、最も近いバスバーからの距離は、単に増加するのがよく、周囲端部の対向するセクションへの距離は、単に減少するのがよい。端部側パターンは、第一の表面電極及び第二の表面電極内に電気的に分離されたゾーンを有さない。したがって、表面電極のうちの1つ内の脱コーティングされた線形の領域は、表面領域を完全には囲んでいない。
【0012】
本発明は、高周波電磁放射線に対して良好な透過性を有する電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子を含むペインを設計することを可能にする。したがって、表面電極の大面積の脱コーティングを回避することができる。加えて、脱コーティングされた線形の領域によって形成されたパターンは、ペインの端部領域内に配置されるため、ペインを通した透視は、害されないか、わずかしか害されない。さらに、実際には、機能素子のバスバーは、不透明なマスキングプリントによって隠されることが多く、それによって、有利なことに、端部側パターンの少なくともサブ領域が、同様に隠される。さらに、ペインの端部側パターンは、第一の表面電極及び第二の表面電極のいずれの表面領域も完全には囲んでいない。その結果として、電気的に分離されたゾーンが表面電極内に生成されないため、機能素子の切り替え動作が不十分な領域が生成されない。したがって、機能素子の良好な切り替え動作と、透明状態における良好な光学的透視と、高周波電磁放射線に対する十分な透過性とを有するペインが得られる。
【0013】
好ましくは、端部側パターンは、ペインの端部領域において、少なくとも第一の表面電極内で第一のバスバーの近く、及び/又は少なくとも第二の表面電極内で第二のバスバーの近くに導入される。
【0014】
端部側パターンは、バスバーが位置する端部領域において、バスバーに沿って延在し、端部側パターンは、好ましくは、最も近いバスバーの長さの少なくとも80%に沿って、特に好ましくは、最も近いバスバーの長さの90%に沿って、特に、最も近いバスバーの全長に沿って、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極内に導入される。本開示では、バスバーの長さは、ペインの周囲端部の最も近いセクションに沿ったバスバーの寸法として定義される。
【0015】
好ましくは、端部側パターンは、第一のバスバーに隣接して、及び第二のバスバーに隣接して、それぞれ導入される。
【0016】
好ましくは、端部側パターンは、第一の表面電極内に、第一のバスバーに隣接して、及び第二の表面電極内に、第一のバスバーに隣接して、その両方に導入される。好ましくは、端部側パターンは、同様に、第二の表面電極内で第二のバスバーの近く、及び第一の表面電極内で第二のバスバーの近くに導入される。したがって、バスバーの近くで、両方の表面電極は、好ましくは、端部側パターンを備える。これは、これらの領域における高周波電磁放射線に対する両方の表面電極の良好な透過性を達成するのに有利である。第一の表面電極で透過された放射線は、したがって、第二の表面電極でも透過される。共通の端部領域内に位置する第一の表面電極及び第二の表面電極の端部側パターンは、異なるように設計しても、同じように設計してもよい。端部側パターンが同じように設計されている場合でも、それらは、実質的に一致して配置しても、互いに対してずれて配置してもよい。
【0017】
好ましくは、異なる極性のバスバーが、ペインの周囲端部の対向するセクションに配置される。その結果として、均質な電流の流れ、及び機能素子の均一な切り替え動作が達成される。対向する端部の方向において延在する脱コーティングされた線形の領域は、隣接するライン間の電流パスを形成する。好ましくは、端部側パターンは、それぞれ、第一のバスバーから出発し、及び第二のバスバーから出発して、それぞれの対向する端部の方向に延びる。端部側パターンは、好ましくは、関連するバスバーが位置する周囲端部の全体の端部セクションに沿って配置される。このように、一方では、ペインを通した電磁放射線の透過性を増加させることができ;他方では、表面電極を介した電流の流れを、脱コーティングされた線形の領域間で形成された電流パスによって導くことができる。好ましくは、バスバーが配置されていない周囲端部の端部セクションは、表面電極に沿った電流の流れの乱れ、及び機能素子の関連する不均質な切り替え動作を回避するために、脱コーティングされた線形の領域を含む端部側パターンを備えない。しかし、任意選択的に、バスバー及び端部側パターンを有さない周囲端部の端部セクションは、表面電極の異なるパターニングを備えることもできる。特に、バスバーが延在しないペインの端部セクションに沿って、表面電極の表面脱コーティングを端部領域において設けることができる。これは、機能素子の切り替え性を省いてもよいペインの領域、例えば、ペインの透視領域の外側でのみなされる。このように、電磁放射線の透過性をさらに増加させることができる。
【0018】
本発明に係るペインを通した高周波電磁放射線の透過は、電磁放射線の一定の周波数範囲が、端部側パターンによって形成されたグリッド上で増幅されるという原理に基づく。隣接する脱コーティングされた線形の領域間の距離が小さいほど、高周波のより大きい透過性が優勢であり、ライン間の距離が大きいほど、高周波電磁放射線の比較的低い周波数が増幅されて透過される。さらに、入射電磁放射線の場のベクトルに対する脱コーティングされた線形の領域の配向は、その透過性に決定的である。脱コーティングされた線形の領域間の距離は、GSM900及びDCS1800、UMTS、LTE、及び5Gバンドにおいて携帯電話通信を操作するための放射線、並びに衛星を利用したナビゲーション(GNSS)、及び他のISM周波数、たとえば、WLAN、Bluetooth(商標)、又はCBラジオなどの一定の波長の電磁放射線の透過性を決定する要因である。一方、本発明に係るパターンは、脱コーティングされたラインの配向による、及び任意選択的に存在する他のラインとの交差領域による、さらなる変形を許容する。このように、複数の周波数バンドに対する透過率の最適化を同時に達成することさえ、容易に可能である。本発明に係る端部側パターンは、ローパスフィルターとして機能し、言いかえれば、それらは、カットオフ周波数より低い周波数が通過することを許容し、それより上ではカットオフ周波数より高い周波数の透過性が悪くなる、カットオフ周波数に最適化することができる。当業者に一般的に知られているように、カットオフ周波数の選択は、グリッドパターンを形成する脱コーティングされたラインの間隔を決定する。電磁透過性はそれらによって影響を受け、ライン間の最大距離が小さいほど、カットオフ周波数は高くなり、最大でカットオフ周波数までは、透過性は影響されないままである。例えば、脱コーティングされた領域間の最大距離が、垂直方向において2.0mmであり、水平全方向において5.0mmである場合、得られるカットオフ波長は、これらの値の20倍以内であると見積もることができる。関連する相関関係及び見積もりについては、DE 195 08 042 A1の説明が参照される。しかし、原理的には、どのような偏光も透過することができる。
【0019】
好ましい実施態様において、脱コーティングされた線形の領域は、直線として実装され、これは、最も近いバスバーに対して例えば15°~90°の角度で、周囲端部の対向するセクションの方向に延びる。脱コーティングされた線形の領域と、最も近いバスバーとの間の角度を決定する場合、鋭角が考えられる。電磁放射線の透過性は、脱コーティングされた線形の領域及び入射放射線の電場ベクトルの偏向方向の、相対的な配置によって決定される。脱コーティングされた線形の領域に対して平行な偏向方向を有する放射線は、わずかしか透過されず、一方で、それに対して垂直な偏向方向を有する放射線は、透過される。それらの間の偏向方向については、それぞれ、線形の領域に対して垂直な偏向方向を有する成分だけが、主に透過される。十分な全体的な透過性を達成するために、ここで、例えば、1つの偏向方向を無視することができ、一方で、それに対して垂直な方向において、最大の透過性が達成される。この文脈において、好ましい実施態様において、脱コーティングされた線形の領域は、それぞれの最も近いバスバーに対して90°の角度に配向される。
【0020】
別の好ましい実施態様において、脱コーティングされた線形の領域は、波状の形状又は実質的に波状の形状を有する。「実質的に波状」は、例えば、波動関数によって大まかに記述することができる、複数の接触する直線セクションから形成された形状を指す。したがって、実質的に波状の形状は、波形状の全体的な印象を維持しつつ、波動関数によって記述される形状からわずかだけ外れている。本発明の文脈において、用語「正弦曲線の形状」は、特に、線形の領域のラインが、曲率を有するか、それぞれ、それらの経路において、少なくとも幾つかのセクションにおいて交互に異なる曲率を有することを意味する。脱コーティングされた領域の曲率(1つ又は複数)は、曲率の一定の角度、及び曲率の可変の角度の両方で延在することができる。特に、この用語は、「完全な」正弦曲線の形状を有する曲がった線形の領域、及び不「完全な」正弦曲線の形状、言いかえれば、任意の波形を有する、曲がった線形の領域の両方を包含する。特に好ましいのは、端部側パターンの脱コーティングされた線形の領域の少なくとも幾つかのセクションにおける、正弦曲線の経路及び/又はジグザグ経路である。脱コーティングされた線形の領域の方向における関連した変化を伴うそのような波状又はジグザグの経路は、互いに対して垂直な両方の偏向方向の改善された透過性に寄与する。正弦曲線の経路が、透過される放射線の割合の点で特に有利であると分かった。さらに、正弦曲線のパターン又は任意の波状のパターンは、観察者にとっての外観において、より直線的なパターンより邪魔にならない。これは、特に、正弦曲線のパターン又は波状パターンで、角が比較的少なく、特に、パターン中の直角又は鋭角の角が少ないという事実に起因する。脱コーティングされた線形の領域の波状の経路は、透過性の点で非常に有利であるが、表面電極に沿った電流の流れに対するそのような端部側パターンの影響を考慮に入れる必要がある。特に、波状の経路の振幅が大きい場合、及び/又は脱コーティングされた波状の領域が端部領域において比較的長距離にわたって延在する場合、表面電極へ導入される電流パスの長さは増加する。これは、電気抵抗の増加、及び関連する電圧降下をもたらす。
【0021】
好ましい実施態様によれば、端部側パターンの脱コーティングされた線形の領域は、直線の経路又は実質的に直線の経路を有する。これは、隣接する脱コーティングされた線形の領域間で生成する電流パスの距離をできる限り短くするという点で有利である。実質的に直線の経路は、直線からわずかだけ外れ、この文脈において、実質的に直線の経路の場合、経路を実質的に表す直線の優勢の方向は、実質的に直線の経路の場合に維持される。好ましくは、脱コーティングされた線形の領域は、隣接する第一のバスバー又は隣接する第二のバスバーに対して、10°~50°、特に好ましくは20°~45°、特に、25°~40°の角度をとる。この場合、脱コーティングされた線形の領域とバスバーとの間の鋭角が考えられる。これらの領域内で、有利には、高い透過率を達成すること、及び端部側パターンの領域における望ましくない大きい電圧降下を回避することの両方が可能である。
【0022】
端部側パターンの脱コーティングされた線形の領域は、隣接するバスバーに対して好ましい範囲内の同じ角度又は異なる角度をとることができる。可能な実施態様において、脱コーティングされた線形の領域は、互いに平行に延在する。別の可能な実施態様において、端部側パターンは、脱コーティングされた線形の領域の少なくとも2つの群を有し、その群の要素は、互いに平行に延在する。第一の表面電極の端部領域の第一のセクションは、第一のバスバーの近くに、第一の脱コーティングされた線形の領域の少なくとも1つの群を有し、この線形の領域は、互いに実質的に平行に延在する。第一の表面電極の端部領域の第二のセクションは、第一のセクションに隣接し、脱コーティングされた線形の領域の少なくとも1つの第二の群を有し、この線形の領域は、同様に、互いに実質的に平行に延在する。脱コーティングされた線形の領域の第一の群、及び脱コーティングされた線形の領域の第二の群は、互いに対して10°~100°、好ましくは40°~90°の角度をとる。第二の表面電極も同様に、互いに対して平行でない、脱コーティングされた線形の領域の少なくとも2つの群を有することができる。経路が互いに対して平行でない、脱コーティングされた線形の領域の少なくとも2つの群は、異なる偏向方向の電磁放射線の透過性の改善に有利である。特に好ましい実施態様において、線形の領域の第一の群及び線形の領域の第二の群が、それぞれ、最も近いバスバーに対してとる角度の大きさは、等しいか、ほぼ等しい。したがって、脱コーティングされた線形の領域の群の所望の異なる配向を達成することができ、同時に、電流パスの経路について、最も有利なラインの角度を選択することができる。
【0023】
好ましくは、端部領域内の端部側パターンの脱コーティングされた線形の領域の線密度は、周囲端部の方向において増加する。したがって、異なる長さの脱コーティングされた線形の領域が、端部領域へ導入される。脱コーティングされた線形の領域のうちの幾つかは、それに隣接する脱コーティングされた線形の領域より大きい長さを有し、対向する端部の方向に、より大きく延びる。これにより、比較的長い長さの1つ又はそれより多くの脱コーティングされた線形の領域と、比較的短い長さの1つ又はそれより多くの脱コーティングされた線形の領域との交互配置が生成する。比較的長い長さの線形の領域は、端部側パターンの、バスバーとは反対側の端部で、比較的長い長さの同様の領域にのみ隣接し;それに応じて、比較的短い長さの線形の領域は、表面の中心の方向に遠くまで突き出ない。このように、脱コーティングされた領域の線密度が比較的高い端部側パターンのセクションは、最も近いバスバーの近くに形成されるが、端部側パターンの、バスバーとは反対側の端部では、ライン間の距離が比較的大きく、したがって、線密度が比較的低い。透過される波長の周波数は、隣接する線形の領域間の距離に依存し、比較的高い線密度の領域は、比較的高い周波数の透過に有利であり、比較的低い線密度の領域では、主として高周波電磁放射線の比較的低い周波数が透過する。したがって、この実施態様は、スペクトルの多種多様な周波数の良好な透過を達成するのに有利である。任意選択的に、比較的高い線密度の領域は、ペインの光学的外観に悪影響を及ぼさないように、不透明なマスキングプリントを有する領域に制限することができる。
【0024】
好ましくは、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極は、それぞれ、脱コーティングされた線形の領域の群を有し、この線形の領域は、同じ群の線形の領域に対して平行か、実質的に平行である。好ましくは、同じ群の隣接する脱コーティングされた線形の領域間の距離は、1.0mm~20.0mm、好ましくは1.0mm~10.0mm、特に好ましくは2.0mm~5.0mmである。高周波電磁放射線の有利な透過性が、これらの領域内で生じる。
【0025】
記載されたすべての実施態様において、言及された脱コーティングされた線形の領域に加えて、さらなる脱コーティングされた線形の領域を表面電極に導入することができる。これらは、記載された角度以外のバスバーに対する角度も想定することができる。例えば、さらなる脱コーティングされた線形の領域及び脱コーティングされた線形の領域は、交差してもよい。好ましい実施態様において、脱コーティングされた線形の領域は、他の脱コーティングされた線形の領域と90°の角度で交差し、さらなる脱コーティングされた線形の領域が、十字形の構造の4つの末端部に取り付けられ、これらの領域は、それぞれ、それらが取り付けられた末端部のラインに対して垂直に延在する。ここで、十字形の構造の末端部に取り付けられた終端のラインが、互いに交差しないことに注意する必要がある。したがって、端部側パターン内の電気的に分離されたゾーンの形成が回避される。交差するラインの末端部に終端の脱コーティングされた線形の領域を含む脱コーティングされた線形の領域の十字形の構造は、4つの矩形の構造を囲み、それらのうちの2つは、互いに隣り合って配置され、それらのうちの2つは、互いに上下に配置される。脱コーティングされた線形の領域によって外形が描かれた4つの矩形は、共に、大きい矩形を形成し、その角において、脱コーティングされた線形の領域は省かれ、すなわち、その角には脱コーティングはない。この領域を介して、矩形内に位置する表面電極の表面部分は、周囲の表面電極に電気伝導的に接続されるため、端部側パターン内に電気的に分離されたゾーンはない。好ましくは、複数のこれらの十字形の構造は、第一の表面電極内又は第二の表面電極内で、第一のバスバー及び/又は第二のバスバーに沿って、互いに隣り合って導入される。そのような端部側パターンは、電場ベクトルの異なる偏向方向の良好な透過性と様々な周波数の良好な透過性、及びペインの透視領域における機能素子の切り替え動作をほとんど損なわないことの両方を達成する。好ましくは、交差する脱コーティングされた線形の領域の長さは、それぞれ、10mm~40mm、好ましくは20mm~30mmであり、その一方で、終端の線形の領域の長さは、8mm~30mm、好ましくは15mm~25mmである。隣接する十字形の構造間の距離は、隣接する構造の2つのライン間の最も小さい距離として決定され、1.0mm~5.0mm、例えば、2.0mmである。これらの範囲において、透過性の点で良好な結果を達成することができる。
【0026】
任意選択的に、本発明に係るペインは、少なくとも1つの中心パターンをさらに有し、それは、少なくともペインのサブ領域において端部領域の外側にさらに配置される。中心パターンは、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極へ導入され、それぞれ、第一の表面電極及び第二の表面電極内に電気的に分離されたゾーンを有さない。したがって、中心パターンは、第一の表面電極及び第二の表面電極内のいかなる領域も、完全には囲んでいない。中心パターンが提供される場合、それは、通常、両方の表面電極に導入される。このようにして、透過性が、両方の表面電極を通して等しく生じる。第一の表面電極及び第二の表面電極は、異なるか同一の中心パターンを有することができ、それらは、任意選択的に、互いに一致して配置されるか、互いに対してずれて配置される。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つの中心パターンは、脱コーティングされた線形の領域を含む。好ましくは、中心パターンの脱コーティングされた線形の領域は、第一の表面電極内で、第一のバスバーの近くの端部側パターンから出発し、第二のバスバーの方向に延び、かつ/または中心パターンの脱コーティングされた線形の領域は、第二の表面電極内で、第二のバスバーの近くの端部側パターンから出発し、第一のバスバーの方向に延びる。特に、脱コーティングされた線形の領域の形態の中心パターンが、両方の表面電極にあることが好ましい。1つのバスバーから出発した、反対極性のバスバーの方向への脱コーティングされた線形の領域の経路が、一方では、ペインの透視領域における透過を可能にしつつ、他方では、機能素子の良好な切り替え性を維持する。脱コーティングされた線形の領域間に生成される電流パスは、機能素子の良好な切り替え性にとって決定的である。
【0028】
第一及び第二のバスバーは、ペインの複数の側端部に取り付けることもでき、ペインは、好ましくは矩形の外形を有する。周囲端部は、4つの直線的な端部セクションを含み、そのうちの2つは、それぞれ、互いに対向する。好ましい実施態様において、第一のバスバーは、2つの隣接する端部セクションに沿って延在し、第二のバスバーは、これらに対向する端部セクションに沿って同様に延在する。したがって、第一のバスバー及び第二のバスバーは、それぞれ、周囲端部の2つの隣接する端部セクションに沿って延在する。バスバーと、バスバーに電気的に接触される表面電極との間の接触表面は増加し、電流が表面電極を介して流れなければならない距離は最小限にされる。したがって、より均質な切り替え動作を含む改善された切り替え性を達成することができる。原理的には、端部側パターンは、前述のパターン及び経路をすべて想定することができる。例えば、脱コーティングされた線形の領域は、バスバーの最も近いセクションに対して90°の角度を有することができ、脱コーティングされた線形の領域の2つの配向間の緩やかな移行が、オーバーラップした角領域で生じ、この角領域では、バスバーは、2つの隣接する端部セクションを含む。別の好ましい実施態様において、端部側パターンは、脱コーティングされた線形の領域として実装され、最も近いバスバーの隣接するセクションに対して、10°~50、特に好ましくは20°~45°、特に、25°~40°の角度で延在する。ここで、脱コーティングされた線形の領域と、バスバーとの間の鋭角が考えられる。特に好ましくは、隣接するバスバーの最も近いセクションに対する脱コーティングされた線形の領域の角度は、可変である。好ましくは、隣接するバスバーの最も近いセクションに対して90°の角度を有する脱コーティングされた線形の領域と、隣接するバスバーの最も近いセクションに対して45°の角度を有する脱コーティングされた線形の領域との間での、緩やかな移行がある。45°の角度が、関連するバスバーがまたがるペインの角において達成されるが、端部の中心の領域では、角度は90°である。このようにして、電場ベクトルのすべての偏向方向を、等しく透過させることができ、均質な視覚的外観を達成することができる。可変の角度を用いる場合、脱コーティングされた線形の領域は、一定の長さを有することも、端部の中心から角に向かって増加する長さを有することもできる。一定の長さは、脱コーティングされる領域を維持し、関連する製造の労力をできる限り少なく維持するのに有利である。端部の中心から角に向かって増加する長さが選択される場合、脱コーティングされた線形の領域を、関連するバスバーとは反対側を向くそれらの末端部が、周囲端部の最も近いセクションから一定の距離に位置するように実装することができ、このようにして、特に魅力的な視覚的外観が達成される。
【0029】
脱コーティングされた線形の領域の、前述の必要なパターン、又は任意選択のパターンに加えて、電気的に分離されたゾーンを、端部領域において、バスバーが配置されてない周囲端部のセクションに沿ってさらに設けることができる。これらの電気的に分離されたゾーンは、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極内、好ましくは両方の表面電極内に設けられる。電気的に分離されたゾーンを含むペインの端部領域では、機能素子はもはや切り替えることができない。端部領域において、表面電極は、例えば、完全に脱コーティングされてよく、線形の脱コーティングされた領域のパターニングを備えてもよく、それは、表面電極の部分を含む。これにより、バスバーと電気的に接触されていない電気的に分離されたゾーンが生成する。これらの電気的に分離されたゾーン内では、パターニングは、表面電極に沿った電流の流れを考慮せずに行うことができる。ペインの設置位置において、例えば、遮断グレージングにおいて、電気的に分離されたゾーンは、好ましくは、視界領域の外側に位置し、かつ/または例えば、不透明なマスキングプリントによって隠される。本発明によれば、機能素子の透視領域における均質な切り替え性を可能にするために、そのような電気的に分離されたゾーンは、それらに隣接するバスバーに沿って排除される。
【0030】
電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子は、エレクトロクロミック機能素子、SPD素子、PDLC素子、又はエレクトロルミネッセンス素子として実装することができる。特に好ましくは、機能素子はエレクトロクロミック機能素子である。
【0031】
エレクトロクロミック機能素子は、少なくとも1つの電気化学的に活性な層を含み、この層は、電荷を可逆的に貯蔵することができる。貯蔵された状態と放出された状態の酸化状態は、色が異なり、これらの状態のうちの1つは透明である。貯蔵反応は、外部から印加された電位差を介して制御することができる。したがって、エレクトロクロミック機能素子の基本構造は、タングステン酸化物などの少なくとも1種のエレクトロクロミック材料を含み、それは、イオン伝導性電解質などの表面電極、及び電荷源の両方と接触する。加えて、エレクトロクロミック層構造は、同様にカチオンを可逆的に貯蔵できかつイオン伝導性電解質に接触している対電極と、対電極に接続された別の表面電極とを含有する。表面電極は、外部電圧源に接続され、外部電圧源は、活性層に印加される電圧を調整することができる。表面電極は、通常、電気伝導性材料(多くの場合インジウムスズ酸化物(ITO))の薄層である。多くの場合、表面電極のうちの少なくとも1つは、例えば、カソードスパッタリングによって、第一のペインの表面に直接適用される。
【0032】
他の可能な機能素子は、表面電極間に配置される活性層のタイプによって本質的に異なる。他の可能な実施態様において、活性層は、SPD層、PDLC層、エレクトロクロミック層、又はエレクトロルミネッセンス層である。
【0033】
SPD機能素子(懸濁粒子デバイス)は、懸濁粒子を含む活性層を含有し、活性層による光の吸収は、表面電極に電圧を印加することによって変更することができる。吸収の変化は、電圧が印加された際の電場中でのロッド状粒子の配向に基づく。SPD機能素子は、例えば、EP 0876608 B1、及びWO2011/033313 A1から知られている。
【0034】
可能な実施態様において、機能素子は、PDLC機能素子(高分子分散型液晶)である。PDLC機能素子の活性層は、ポリマーマトリクスに埋め込まれた液晶を含有する。電圧が表面電極に印加されない場合、液晶は乱雑に配向し、活性層を通過する光の強い散乱をもたらす。電圧が表面電極に印加される場合、液晶は共通の方向において整列し、活性層を通した光の透過が増加する。そのような機能素子は、例えば、DE 102008026339 A1から知られている。
【0035】
エレクトロルミネッセンス機能素子において、活性層は、エレクトロルミネッセンス材料、特に、有機エレクトロルミネッセンス材料を含有し、その発光は、電圧の印加によって刺激される。エレクトロルミネッセンス機能素子は、例えば、US2004/227462 A1、及びWO2010/112789 A2から知られている。エレクトロルミネッセンス機能素子は、単純な光源として、又は任意のディスプレイを示すことができるディスプレイとして、用いることができる。
【0036】
原則として、任意のタイプの透明な電気伝導性コーティングが、第一の表面電極及び第二の表面電極として知られている。第一の表面電極及び/又は第二の表面電極は、少なくとも1種の金属、好ましくは、銀、ニッケル、クロム、ニオブ、スズ、チタン、銅、パラジウム、亜鉛、金、カドミウム、アルミニウム、ケイ素、タングステン、若しくはこれらの合金、並びに/又は少なくとも1種の金属酸化物層、好ましくは、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO、SnO2:F)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO、SnO2:Sb)、並びに/又はカーボンナノチューブ、並びに/又は光学的に透明な電気伝導性ポリマー、好ましくは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホネート、ポリ(4,4-ジオクチル-シクロペンタジチオフェン)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、これらの混合物及び/若しくはコポリマーを含む。
【0037】
表面電極の厚さは、大きく変更することができ、個々の場合の要件に適合させることができる。ここで、透明な電気伝導性コーティングの厚さを、電磁放射線、好ましくは300~1300nmの波長の電磁放射線、特に可視光に対して不透過性になるほど大きくしてはならないことが重要である。透明な電気伝導性コーティングは、好ましくは、10nm~5μm、特に好ましくは30nm~1μmの層厚さを有する。
【0038】
第一の表面電極及び/又は第二の表面電極に導入された、線形の脱コーティングされた領域は、それぞれ5μm~500μm、好ましくは、それぞれ10μm~140μmの脱コーティングされた領域のライン幅を有する。これらのライン幅内では、機能素子の切り換え操作が目に見えて害されることはない。さらに、これらのライン幅は、市販で入手可能なレーザーを用いて簡単に導入することができる。
【0039】
機能素子の表面電極は、いわゆる「バスバー」を介して電気伝導的に接触され、かつ、バスバーを介して給電線に接続され、給電線は、外部電源に接続される。例えば、電気伝導性材料のストリップ又は電気伝導性インプリントは、バスバーとして用いることができ、これに表面電極が接続される。バスバーは、電力を伝送し、均質な電圧分布を可能にするために用いられる。バスバーは、有利には、伝導性ペーストの印刷によって製造される。伝導性ペーストは、好ましくは、銀粒子及びガラスフリットを含有する。伝導性ペーストの層の厚さは、好ましくは、5μm~20μmである。
【0040】
代替的な実施態様において、薄く細い金属箔ストリップ又は金属ワイヤ、好ましくは、銅及び/又はアルミニウムを含有するものがバスバーとして用いられ;特に、例えば約50μmの厚さを有する銅箔ストリップが用いられる。銅箔ストリップの幅は、好ましくは1mm~10mmである。表面電極として機能する機能素子の電気伝導性層とバスバーとの間の電気的接触は、例えば、はんだ付け、又は電気伝導性接着剤による接着により確立することができる。
【0041】
バスバーを外部電圧源と接触させるために用いられる給電線は、導電体、好ましくは、銅を含有する導電体である。他の電気伝導性材料を用いることもできる。例としては、アルミニウム、金、銀、又はスズ、及びこれらの合金が挙げられる。給電線は、平板導体又は丸形導体として設計することができ、両方の場合において、単線又は多重線(より線)の導体として設計することができる。
【0042】
給電線は、好ましくは、0.08mm2~2.5mm2の導体断面を有する。
【0043】
箔導体も供給線として用いることができる。箔導体の例は、DE 42 35 063 A1、DE 20 2004 019 286 U1、及びDE 93 13 394 U1に記載されている。
【0044】
平板導体とも呼ばれる柔軟な箔導体、又はリボン導体は、好ましくは、0.03mm~0.1mmの厚さ、及び2mm~16mmの幅を有するスズめっき銅ストリップからなる。銅は、そのような導体トラックに適していることが証明されている。なぜならば、それは、良好な電気伝導率、及び箔への良好な加工性を有するからである。同時に、原料コストは低い。
【0045】
本発明は、本発明に係る機能素子を含むペインと、第二のペインと、ペインを第二のペインに接続する周囲スペーサー枠とを含む遮断グレージングをさらに含む。少なくとも1つの電気伝導性コーティングが、第二のペイン上に平らに配置され、少なくとも1つの端部側パターンが、電気伝導性コーティング内で端部領域に導入される。第二のペインの端部領域は、第二のペインの周囲端部に隣接する領域である。端部側パターンは、特に、機能素子を有するペイン上への投影において、ペインの端部側パターンが既に存在している領域に提供される。第二のペインの端部側パターンは、原理的には、第一のペインの端部側パターンについて説明されたすべてのパターンをとることができる。第一のペイン及び第二のペイン上に位置する端部側パターンは、同じように設計しても、異なるように設計してもよく、それによって、同一のパターンの場合には、それらは、一致して配置しても、互いに対してずれて配置してもよい。
【0046】
第二のペインの電気伝導性コーティング、及び第一のペイン上に位置する機能素子は、スペーサーに面するペイン表面に取り付けられ、したがって、遮断グレージングの内側のペイン間スペースに位置しており、それらは、外界の影響から保護される。
【0047】
好ましくは、第二のペインの電気伝導性コーティングは、赤外線反射コーティングである。赤外線反射コーティングは、遮断グレージングを通した熱伝達を低減し、冬の熱損失を回避することができるようになる。一方、夏には、赤外線反射コーティングは、入ってくる太陽輻射に起因する内部の加熱を防止する。特に、エレクトロクロミック機能素子との組み合わせにおいて、赤外線反射コーティングの使用は有利である。なぜならば、このように、機能素子の廃熱の熱伝達も回避されるからである。
【0048】
赤外線反射コーティングは、好ましくは、390nm~780nmの波長領域の可視光に対して透明である。「透明」は、ペインの全透過率、特に、可視光についての全透過率が、好ましくは>70%、特に、>75%であることを意味する。その結果として、グレージングの視覚的な印象、及び透視は害されない。
【0049】
赤外線反射コーティングは、太陽光保護のために用いられ、この目的のために、光スペクトルの赤外線領域において反射特性を有する。赤外線反射コーティングは、特に低い放射率(低いE)を有する。その結果として、太陽輻射の結果としての建物の内部の加熱が、有利に低減される。そのような赤外線反射コーティングを備えるペインは、市販で入手可能であり、低-E(低放射率)ガラスと呼ばれる。
【0050】
低-Eコーティングは、通常、拡散バリア、金属又は金属酸化物を含有する多層、及びバリア層を含有する。拡散バリアは、ガラス表面に直接適用され、ガラス中への金属原子の拡散に起因する変色を防止する。二重の銀層又は三重の銀層が、多層として用いられることが多い。種々様々の低-Eコーティングは、例えば、DE 10 2009 006 062 A1、WO2007/101964 A1、EP 0 912 455 B1、DE 199 27 683 C1、EP 1 218 307 B1、及びEP 1 917 222 B1から知られている。
【0051】
低-Eコーティングは、好ましくは、それ自体知られている、マグネトロン増強カソードスパッタリングの方法を用いて堆積される。マグネトロン増強カソードスパッタリングによって堆積した層は、アモルファス構造を有し、ガラス又は透明ポリマーなどの透明基材の曇りを引き起こす。アモルファス層の温度処理は、結晶構造を、改善された透過率を有する結晶層に変化させる。コーティングへの温度入力は、火炎処理、プラズマトーチ、赤外線放射、又はレーザー処理によって行うことができる。
【0052】
そのようなコーティングは、典型的には、少なくとも1種の金属、特に、銀又は銀含有合金を含有する。赤外線反射コーティングは、複数の個々の層のシーケンス、特に、少なくとも1つの金属層と、(例えば、少なくとも金属酸化物を含有する)誘電体層とのシーケンスを含むことができる。金属酸化物は、好ましくは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど、及びこれらの1種又は複数種の組み合わせを含有する。誘電材料は、窒化ケイ素、炭化ケイ素、又は窒化アルミニウムを含有することもできる。
【0053】
特に適切な透明赤外線反射コーティングは、少なくとも1種の金属、好ましくは、銀、ニッケル、クロム、ニオブ、スズ、チタン、銅、パラジウム、亜鉛、金、カドミウム、アルミニウム、ケイ素、タングステン、若しくはこれらの合金、並びに/又は少なくとも1種の金属酸化物層、好ましくは、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO、SnO2:F)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO、SnO2:Sb)、並びに/又はカーボンナノチューブ、並びに/又は光学的に透明な電気伝導性ポリマー、好ましくは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホネート、ポリ(4,4-ジオクチル-シクロペンタジチオフェン)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、これらの混合物及び/若しくはコポリマーを含有する。
【0054】
赤外線反射コーティングは、好ましくは10nm~5μm、特に好ましくは30nm~1μmの層厚さを有する。赤外線反射コーティングのシート抵抗は、例えば、0.35オーム/スクエア~200オーム/スクエア、好ましくは0.6オーム/スクエア~30オーム/スクエア、特に、2オーム/スクエア~20オーム/スクエアである。
【0055】
1つの可能な実施態様において、ニッケルクロム及び/又はチタンを含有する0.5nm~2nmの厚さを有する2つのバリア層によって囲まれた、6nm~15nmの厚さを有する銀層が、赤外線反射コーティングとして用いられる。25nm~35nmの厚さを有し、Si3N4、TiO2、SnZnO、及び/又はZnOを含有する拡散バリアが、好ましくは、一方のバリア層と、ガラス表面との間に適用される。35nm~45nmの厚さを有し、ZnO及び/又はSi3N4を含有する拡散バリアが、好ましくは、環境に面する上側のバリア層に適用される。この上側の拡散バリアは、任意選択的に、厚さが1nm~5nmでありかつTiO2及び/又はSnZnO2を含む保護層を備える。すべての層の総厚みは、好ましくは、67.5nm~102nmである。
【0056】
スペーサーは、通常、ペイン上で周方向に配置される。第一のバスバー及び第二のバスバーは、好ましくは、第一のグレージング内部でスペーサーに対して平行に延在し、好ましくは、第一のペインの2つの対向するペイン端部上に延在する。
【0057】
スペーサーは、通常、平面視において、矩形の形をしている。通常は、スペーサーは対称的であり、すなわち、それは、遮断グレージングのすべての側の遮断グレージングの端部から同じ距離である。
【0058】
遮断グレージングは、スペーサーによって互いから距離をおいて維持された少なくとも2つのペインを含む。遮断グレージングは、第三のペイン、又は追加のペインをさらに含むことができる。これらは、例えば、追加のスペーサーを介して、ペイン又は第二のペインに取り付けることができる。
【0059】
好ましい実施態様において、機能素子を有する遮断グレージングの第一のペインは、複合ペインを形成するための熱可塑性の結合フィルムを介して、別のペインにラミネートされる。複合ペインは、改善された抵抗率及び安定性を有する。第一のペインにラミネートされた第三のペインはまた、第一のペインのたわみ及び熱膨張を妨げる。さらに、複合ペインは、改善された貫入抵抗を有する。特に、これは、機能素子の保護のために有利である。
【0060】
適切な熱可塑性の結合フィルムは、当業者に知られている。熱可塑性の結合フィルムは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、好ましくは、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、若しくはポリウレタン(PU)、又はこれらの混合物若しくはコポリマー若しくは誘導体を含有する。熱可塑性の結合フィルムの厚さは、好ましくは0.2mm~2mm、特に好ましくは0.3mm~1.5mmである。例えば、0.38mm又は0.76mmの厚さのポリビニルブチラールが、特に好ましくは、2つのガラスペインのラミネート加工に用いられる。
【0061】
遮断グレージングのスペーサーは、好ましくは、少なくとも1つの本体を含み、この本体は、2つのペイン接触表面、グレージング内部表面、外側表面、及びキャビティを含む。
【0062】
第一のペイン及び第二のペインは、ペイン接触表面に、好ましくは、封止剤を介して取り付けられ、この封止材は、第一のペイン接触表面とペインとの間、及び/又は第二のペイン接触表面と第二のペインとの間に取り付けられる。
【0063】
封止剤は、好ましくは、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリエチレンビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、ポリオレフィンゴム、これらのコポリマー、及び/又はこれらの混合物を含有する。
【0064】
封止剤は、好ましくは、スペーサーとペインとの間の隙間に、0.1mm~0.8mm、特に好ましくは0.2mm~0.4mmの厚さで導入される。
【0065】
第一のペイン接触表面及び第二のペイン接触表面は、スペーサーが設置されたときに、遮断グレージングの外側のペイン(ペイン及び第二のペイン)が取り付けられるスペーサーの面を構成する。第一のペイン接触表面及び第二のペイン接触表面は、互いに平行に延在する。
【0066】
グレージング内部表面は、遮断グレージングにおけるスペーサーの設置後にグレージング内部の方向に向くスペーサー本体の表面として定義される。グレージング内部表面は、ペインの間に位置する。
【0067】
スペーサー本体の外側表面は、グレージング内部表面の反対側にあり、それは、外側のシールの方向に、遮断グレージングの内部からみて外方を向く。
【0068】
可能な実施態様において、スペーサーの外側表面は、それぞれ、ペイン接触表面に隣接して傾いていてよく、このようにして、本体の安定性が向上する。外側表面は、それぞれ、ペイン接触表面に隣接して、例えば、外側表面に対して30~60°傾いていてよい。
【0069】
本体のキャビティは、グレージング内部表面に隣接しており、グレージング内部表面は、キャビティの上方に位置し、スペーサーの外側表面は、キャビティの下方に位置する。この文脈において、「上方」は、遮断グレージング中にスペーサーが設置された状態において、遮断グレージングの内側のペイン間スペースに面することとして定義され;「下方」は、ペイン内部からみて外方を向くこととして定義される。
【0070】
スペーサーのキャビティは、中実で形成されたスペーサーと比較して軽量化をもたらし、乾燥剤などの追加の成分を収容するために利用可能である。
【0071】
遮断グレージングの外側のペイン間スペースは、外側のシールで好ましくは充填される。この外側のシールは、主として、2つのペインを結合するために用いられ、したがって、遮断グレージングの機械的安定性に役立つ。
【0072】
外側のシールは、好ましくは、ポリスルフィド、シリコーン、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリアクリレート、これらのコポリマー及び/又は混合物を含有する。そのような物質は、外側のシールがペインの確実な結合を保証するような、ガラスに対する良好な接着性を有する。外側のシールの厚さは、好ましくは2mm~30mm、特に好ましくは5mm~10mmである。
【0073】
遮断グレージングのペインは、有機ガラス、又は好ましくは無機ガラスで製造することができる。本発明に係る遮断グレージングの有利な実施態様において、ペインは、互いに独立して、板ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、又はホウケイ酸ガラスで製造することができる。各ペインの厚さは可変であり、したがって、個々の場合の要件に適合させることができる。好ましくは、1mm~19mm、好ましくは2mm~8mmの標準厚さを有するペインが用いられる。ペインは、無色であっても、有色であってもよい。
【0074】
グレージング内部は、空気、又は別のガス、特に、アルゴン又はクリプトンなどの不活性ガスで充填することができる。スペーサーのグレージング内部表面は、グレージング内部に面する。
【0075】
外側のペイン間スペースは、第一のペイン、第二のペイン、スペーサー、及びペインとペイン接触表面との間に位置する封止剤によって形成され、遮断グレージングの外側の端部領域において、グレージング内部の反対側に位置する。外側のペイン間スペースは、スペーサーの反対側の側で開いている。スペーサーの外側表面は、外側のペイン間スペースに面する。
【0076】
スペーサーの本体は、当業者に知られている種々様々の金属又はポリマーの実施態様を有することができる。適切な金属は、特に、アルミニウム又はステンレス鋼である。ポリマー製本体は、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、好ましくは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステル(ASA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、PET/PC、PBT/PC、及び/又はこれらのコポリマー若しくは混合物を含有する。好ましくは、ポリマー製本体は、ガラス繊維強化されている。本体は、好ましくは、20%~50%、特に好ましくは30%~40%のガラス繊維含有量を有する。ポリマー製本体中のガラス繊維分は、強度及び安定性を同時に高める。
【0077】
好ましい実施態様において、スペーサーは、乾燥剤、好ましくは、シリカゲル、モレキュラーシーブ、CaCl2、Na2SO4、活性炭、シリケート、ベントナイト、ゼオライト、及び/又はこれらの混合物を含有する。
【0078】
スペーサーは、好ましくは、1つ又は複数のキャビティを有してよい。キャビティは、好ましくは、乾燥剤を含有する。グレージング内部表面は、好ましくは、スペーサー中に存在する乾燥剤による大気水分の吸収を容易にする開口部を有する。開口部の総数は、遮断グレージングのサイズに依存する。開口部は、キャビティを内側のペイン間スペースに接続し、それらの間のガス交換を可能にする。これにより、キャビティ内に位置する乾燥剤による大気水分の吸収が可能となり、したがってペインの曇りを防止する。開口部は、好ましくはスリットとして、特に好ましくは幅0.2mm及び長さ2mmのスリットとして実装される。スリットは、乾燥剤がキャビティからグレージング内部へ進入可能でない場合、最適の空気交換を保証する。
【0079】
ポリマー製本体が用いられる場合、ガス及び蒸気バリアは、好ましくは、少なくともポリマー本体の外側表面に適用される。ガス及び蒸気バリアは、ガス損失及び水分の浸入に対するスペーサーの密閉性を改善する。好ましくは、バリアは、ペイン接触表面のおよそ二分の一から三分の二に適用される。ポリマー製本体を含む適切なスペーサーは、例えば、WO2013/104507 A1に開示される。
【0080】
本発明はさらに、本発明に係るペインを製造する方法であって、少なくとも:
a.電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子を有する第一のペインを提供し、
b.脱コーティングされた線形の領域を含む少なくとも1つの端部側パターンを、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極内に形成して、線形の領域が、第一のバスバー及び/又は第二のバスバーに隣接して位置し、かつ、そこから出発して周囲端部の対向するセクションの方向に延びているようにし、
端部側パターンは、電気的に分離されたゾーンを第一の表面電極及び第二の表面電極内に有さない、方法に関する。
【0081】
第一の表面電極及び/又は第二の表面電極における端部側パターンの脱コーティングは、好ましくは、レーザー光によって行われる。薄い金属箔をパターン化する方法は、例えば、EP 2 200 097 A1、又はEP 2 139 049 A1から知られている。脱コーティングの幅は、好ましくは5μm~150μm、特に好ましくは5μm~100μm、最も特に好ましくは10μm~50μm、特に、15μm~30μmである。この範囲において、特にきれいで残留物のない脱コーティングが、レーザー光によって起こる。レーザー光による脱コーティングは、特に有利である。なぜならば、脱コーティングされたラインは、視覚的に全く目立たず、外観及び透明性に対する悪影響がほとんどないからである。レーザーカットの幅より広い幅dのラインの脱コーティングは、ラインをレーザー光で繰り返し走査することによって実施される。したがって、プロセスの所要時間と加工コストは、ライン幅が増加するにつれて増加する。
【0082】
本発明に係る方法の有利な実施態様において、脱コーティングされたパターンは、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極にレーザーパターニングによって導入される。レーザー光は、ペイン及び/又は機能素子の任意のキャリアフィルムを通って、第一の表面電極及び/又は第二の表面電極上で集束することができる。
【0083】
本発明はさらに、上記のペイン又は対応する遮断グレージングの、陸上、水上、又は空中での輸送手段の乗り物の本体又は乗り物のドアにおける、好ましくはウィンドシールド(フロントガラス)としての、高周波電磁放射線の透過損失が低いグレージングとしての使用、建築物における、外部ファサードの部分又は建物の窓の部分としての高周波電磁放射線の透過損失が低いグレージングとしての使用に広がる。
【0084】
本発明は、図面及び例に関連しての以下で詳細に説明される。図面は、完全には縮尺どおりではない。本発明は、図面によって全く制限されない。それらは、次のものを表す。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1a】
図1aは、平面図における本発明に係るペインの概略図である。
【
図1b】
図1bは、切断線A-A’に沿った、
図1aの本発明に係るペインの断面図である。
【
図2】
図2は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図である。
【
図3】
図3は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図である。
【
図4】
図4は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図である。
【
図5】
図5は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図である。
【
図6】
図6は、
図5の拡大詳細
図Z内の、本発明に係るペインの代替的な実施態様である。
【
図7】
図7は、
図5の拡大詳細
図Z内の、本発明に係るペインの代替的な実施態様である。
【
図8】
図8は、
図5の拡大詳細
図Z内の、本発明に係るペインの代替的な実施態様である。
【
図9】
図9は、
図5の拡大詳細
図Z内の、本発明に係るペインの代替的な実施態様である。
【
図10】
図10は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図である。
【
図11】
図11は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図である。
【
図12】
図12は、本発明に係るペインを含む、本発明に係る遮断グレージングである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1aは、平面図において、本発明に係るペイン10の概略図を表す。
図1bは、切断線AA’に沿ったこのペインの断面図を表す。ペイン10は、第一のペイン1.1を含み、その第一の側Iに、機能素子2が平らに配置される。機能素子2は、活性層4としてエレクトロクロミック層を含み、これは、第一の表面電極3.1と、第二の表面電極3.2との間に平らに配置され、表面電極3.1、3.2は、活性層4と直接接触している。第一の表面電極3.1及び第二の表面電極3.2は、それぞれ、キャリアフィルム12に適用される。機能素子2は、キャリアフィルム12の、表面電極3.1とは反対側の表面を介して、熱可塑性の結合フィルム9によって、第一のペイン1.1に結合される。代わりに、第一のペイン1.1に最も近い第一の表面電極3.1は、第一のペイン1.1に直接適用されてもよく、その場合には、熱可塑性の結合フィルム9と、第一の表面電極3.1のキャリアフィルム12とは、省くことができる。第一のバスバー5.1及び第二のバスバー5.1は、周囲端部Kの2つの対向するセクションに沿って、ペイン10の端部領域Rに取り付けられ、第一のバスバー5.1は、第一の表面電極3.1と電気伝導的に接触し、第二のバスバー5.2は、第二の表面電極3.2と電気伝導的に接触する。電圧を表面電極3.1、3.2にバスバー5.1、5.2を介して印加することにより、活性層4の切り換え動作が引き起こされる。端部領域Rにおいて、第一のバスバー5.1及び第二のバスバー5.2に隣接して、それぞれ、端部側パターン6が、第一の表面電極3.1及び第二の表面電極3.2内に、それぞれ導入される。端部側パターン6は、脱コーティングされた線形の領域7によって形成され、この領域7は、最も近いバスバー5.1、5.2から出発し、それぞれの反対側のバスバー5.1、5.2の方向に延びる。ペインの高さに応じて、脱コーティングされた線形の領域7は、対向するバスバー間の距離のおよそ5%~30%の長さを有し、それぞれの隣接する脱コーティングされた線形の領域7から2.0mmの距離を有する。表面電極3.1、3.2の材料は、脱コーティングされた線形の領域7に沿って存在せず、これは、例えば、レーザーパターニングによって、除去又は分解された。端部側パターン6は、そうでなければ高周波電磁放射線に対して不透過性である表面電極3.1、3.2を透過性にする。端部側パターン6は、例えば、レーザーパターニングによって脱コーティングされ、非常に小さいライン幅だけ、例えば、0.1mmのライン幅を有する。本発明に係るペイン10を通した視界は、著しく害されることはなく、脱コーティングされたパターン6は、ほとんど検知できない。電流パス(これに沿って、バスバー5.1、5.2から、バスバーに関連する表面電極3.1、3.2を介して、反対側のバスバーの方向に電流の流れが生じる)が、隣接する脱コーティングされた線形の領域7の間に形成される。端部側パターン6は、表面電極3.1、3.2の閉じた領域を囲んでおらず、機能素子2の切り替え性は、影響を受けない。
【0087】
図2は、本発明に係るペイン10の別の実施態様を表す。ペイン10は、
図1aのペイン10に実質的に対応し、それとは対照的に、端部側パターン6は、波形の脱コーティングされた線形の領域7から形成される。これらは、正弦曲線の形状を有する。これは、場のベクトルが線形の領域7の優勢の方向に対して平行な成分を有する電磁放射線の透過性を改善する。
【0088】
図3は、本発明に係るペイン10の別の実施態様を表す。ペイン10は、
図1aのペイン10に実質的に対応し、それとは対照的に、端部側パターン6は、さらなる脱コーティングされた線形の領域7を有し、このさらなる脱コーティングされた線形の領域7は、最も近いバスバー5.1、5.2に平行に延在する。バスバー5.1、5.2に平行に延在するこれらの線形の領域7は、十字形の構造を形成し、線形の領域7は、反対側のバスバー5.1、5.2の方向に延びる。十字を形成するラインの末端部に位置するのは、さらなる脱コーティングされた線形の領域7であり、これは、それらが取り付けられる末端部において、それぞれ、十字形の構造のラインに対して垂直に延在する。十字形の構造を有する線形の領域は、共に、25mmの長さを有し、一方で、脱コーティングされた線形の領域7の終端セクションは、19mmの長さを有する。したがって、十字形の構造は、閉じた領域を形成しない。隣接する十字形の構造間の距離は、2mmである。
図3の端部側パターン6は、様々な周波数の電磁放射線の良好な透過性を有し、機能素子2の切り替え動作は、わずかにしか悪影響を受けない。
【0089】
図4は、本発明に係るペイン10の別の実施態様を表す。ペイン10は、
図1aのペイン10に実質的に対応し、それとは対照的に、線形の脱コーティングされた領域7は、最も近いバスバー5.1、5.2に対して45°の角度で延びる。それぞれ、脱コーティングされた線形の領域7の2つの群が、バスバー5.1、5.2の各々に取り付けられ、同じ群の線形の領域7は、それぞれ、互いに平行に延在する。2つの異なる群の線形の領域7は、互いに対して90°の角度にあり、すなわち、角度45°の絶対値の符号において、バスバーに対するそれらの配向の点で異なる。線形の領域7の2つの群の異なる配向は、異なる場のベクトルの電磁放射線の改善された透過性に寄与する。
【0090】
図5は、本発明に係るペイン10の別の実施態様を表す。ペイン10は、
図4のペイン10に実質的に対応し、それとは対照的に、端部側パターン6の線形の脱コーティングされた領域7は、最も近いバスバー5.1、5.2に対して25°の角度で延びる。これに加えて、中心パターン8が、第一の表面電極3.1及び第二の表面電極3.2内に導入される。中心パターン8は、バスバー5.1、5.2に対して垂直に延在しかつ端部側パターン6を互いに接続する線形の領域7を含む。中心パターン8は、端部側パターン6の脱コーティングされた領域7に直接取り付けてよく、端部側パターン6から少し離れていてもよい。電流パスが、第一のバスバー5.1に隣接する端部側パターン6と、第二のバスバー5.2に隣接する端部側パターン6との間に形成されるため、機能素子の切り替え動作は、ほとんど影響を受けない。同時に、ペイン10の透視領域における電磁放射線の透過は、中心パターンを介しても起こることができる。
【0091】
図6は、
図5の拡大詳細
図Z内の本発明に係るペイン10の代替的な実施態様を表す。
図5に記載されたペインとは対照的に、
図6のペイン10は、互いに対して直角に配置された周囲端部Kの2つの隣接する端部セクションをカバーする第一のバスバー5.1を有する。第二のバスバー5.2(図示せず)も、同様に、バスバー5.1の2つの隣接する端部セクションに対向する2つの隣接する端部セクション上に延在する。両方の端部セクションにおいて、端部側パターン6の脱コーティングされた線形の領域7は、隣接するバスバー5.1の最も近いセクションに対して90°の角度をとり、脱コーティングされた線形の領域7の2つの配向間の緩やかな移行が、バスバー5.1の角領域において生じる。第二のバスバー5.2に隣接する端部側パターン6(図示せず)も、同様に構築される。脱コーティングされた線形の領域7の配向が多種多様であるため、有利なことに、電磁放射線の高い透過率が得られる。任意選択的に、中心パターンを、例えば、第一のバスバー5.1及び第二のバスバー5.2の、端部側パターン6間に延在する線形の領域の形態で、この場合にも設けることができる。
【0092】
図7は、
図5の拡大詳細
図Z内の本発明に係るペインの別の代替的な実施態様を表す。
図7の実施態様は、
図6に実質的に対応し、それとは対照的に、最も近いバスバーセクション2に対する90°の角度における脱コーティングされた線形の領域7の配置から、45°の角度における配向への非常に緩やかな移行がある。90°の角度が端部の中心で採用され、一方で角領域において、45°の角度に到達する。脱コーティングされた線形の領域の長さは、レーザーパターニングのプロセス時間を増加させないように、実質的に一定のままである。
図7で達成された線形の領域の角度のより大きい多様性は、電磁放射線の異なる場のベクトルの透過の点で有利である。
【0093】
図8は、
図5の拡大詳細
図Z内の本発明に係るペインの別の代替的な実施態様を表し、この実施態様は、
図7の実施態様に実質的に対応する。それとは対照的に、脱コーティングされた線形の領域7の長さは、端部の中心からペイン10の角へ増加する。一定の高さに位置する端部側パターン6の端部は、より視覚的に魅力的であると認識され得る。
【0094】
図9は、
図5の拡大詳細
図Z内の本発明に係るペインの別の代替的な実施態様を表し、基本的な特徴は、
図8の実施態様に対応する。それとは対照的に、
図9の脱コーティングされた線形の領域7は、交互に配置された異なる長さのラインを含む。その結果として、バスバー5.1に隣接する領域では、透視領域に隣接する端部側パターンの端部よりも線密度が大きい。より高い線密度の領域では、より小さい線密度を有する端部側パターンの領域における比較的低い周波数の改善された透過性と比較して、比較的高い周波数の透過が優勢である。
【0095】
図10は、平面図において、本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図を表す。
図10のペイン10は、
図1aのペイン10に実質的に対応し、その違いは以下に説明される。端部側パターン6は、脱コーティングされた線形の領域7によって形成され、この領域7は、第一及び第二の表面電極3.1、3.2内で、最も近いバスバー5.1、5.2から出発して、それぞれの反対側のバスバー5.1、5.2の方向に延びる。存在する例示的な実施態様において、端部側パターン6の線形の領域7は、バスバー5.1、5.2に対して実質的に垂直に延在し、中心パターン8へ直接移行する。中心パターン8及び端部側パターン6は、共に、互いに平行な脱コーティングされたライン7を形成し、これらは、第一のバスバー5.1と第二のバスバー5.2との間に延在する。電流パスは、脱コーティングされたライン7間に形成される。端部側パターン6及び中心パターン8は、表面電極3.1、3.2の閉じた領域を囲んでおらず、機能素子2の切り替え性は影響を受けない。中心パターン8は、ペインの領域全体には設けられておらず、特に、ペイン10の表面の中心は、ペイン10を通した改善された透視を保証するために、空いたままである。また、端部側パターン6及び中心パターン8内の、隣接する脱コーティングされたライン7間の距離は、バスバーのない端部セクションからペインの中心の方向に増加する。その結果として、脱コーティングされた線形の領域7は、ペインの中心の透視領域の方向に、より目立たなくなる。隣接する脱コーティングされたライン7間の距離は、2mm~10mmである。バスバーが取り付けられていない周囲端部Kのセクションに沿って、電気的に分離されたゾーン13がある。これらの電気的に分離されたゾーン13は、囲まれた表面電極3.1及び3.2の領域を含むグリッドパターンとして実装され、このゾーン13は、機能素子2の切り替え可能な領域の部分ではない。本発明によれば、そのような閉じた領域は、バスバーに沿った端部側パターンとして適用することができず、中心パターンにおいて形成されることもない。バスバーのない端部セクションでのみ、そのような表面領域を切り替え可能な機能素子2から除外することができ、残りの機能素子の切り替え動作は影響を受けない。
図10の実施態様は、高周波電磁放射線の良好な透過性を達成しつつ、機能素子の良好な切り替え動作及び良好な視覚的外観を保証するのに特に有利である。
【0096】
図11は、平面図における本発明に係るペインの別の例示的な実施態様の概略図を表し、この実施態様は、
図10に記載されたものに実質的に対応する。それとは対照的に、端部側パターン6の脱コーティングされた線形の領域7のすべてが、中心パターン8の線形の脱コーティングされた領域7に移行するわけではない。ペイン10の中心の透視領域の領域において、中心パターン8はないが、端部側パターン6はある。端部側パターン6及び中心パターン8の、隣接する脱コーティングされた線形の領域7間の距離は、2mmである。この実施態様はさらに、高周波電磁放射線の特に良好な透過性と、機能素子の良好な切り替え動作及び良好な視覚的外観とを有する。
【0097】
図12は、本発明に係るペイン10を含む、本発明に係る遮断グレージング20を表す。エレクトロクロミック機能素子2は、第一のペイン1.1に取り付けられ、電気伝導性コーティング11は、第二のペイン1.2に適用される。電気伝導性コーティング11は、赤外線反射性である。第一のペイン1.1は、熱可塑性の中間層9によって、機能素子2とは反対側の表面で第三のペイン1.3と組み合わせられ、複合ペインの形態のペイン10を形成する。ペイン10及び第二のペイン1.2は、スペーサー21を介して連結され、遮断グレージング20を形成する。スペーサー21は、封止剤26を介して、第一のペイン1.1と第二のペイン1.2との間で周方向に取り付けられる。封止剤26は、スペーサー21のペイン接触表面22.1及び22.2をペイン1.1及び1.2に接続する。スペーサー21は、キャビティ29を含むポリマー製本体として実装される。気密かつ水密のバリアフィルム(図示せず)は、スペーサー21の外側表面23に適用される。キャビティ29は、乾燥剤28を含有し、この乾燥剤28は、残留水分をグレージング内部表面24における開口部を介してグレージング内部25から吸収することができる。スペーサー21のグレージング内部表面24に隣接するグレージング内部25は、ペイン1.1、1.2及びスペーサー21によって画定されたスペースとして定義される。スペーサー21の外側表面23に隣接する外側のペイン間スペースは、グレージングのストリップ状の周囲のセクションであり、それは、一方の側では、各々2つのペイン1.1、1.2によって、別の側では、スペーサー21によって画定され、その第四の端部は開いている。グレージング内部25は、アルゴンで充填される。ペイン1.1、1.2と、スペーサー21との間の隙間を密閉する封止剤26は、それぞれ、ペイン接触表面22.1又は22.2と、隣接するペイン1.1又は1.2との間にそれぞれ導入される。封止剤26は、ポリイソブチレンである。第一のペイン1.1及び第二のペイン1.2を結合する機能を果たす外側のシール27は、外側のペイン間スペースにおいて外側表面23に配置される。外側のシール27は、シリコーンで製造される。外側のシール27は、第一のペイン1.1及び第二のペイン1.2のペイン端部と同一面になるように終端する。第二のペイン1.2は、4.0mmの厚さを有し、かつ、赤外線反射コーティング11を、グレージング内部25に面するペイン表面に有する。エレクトロクロミック機能素子2は、機能素子2の電気的接触のための第一のバスバー5.1を備え、グレージング内部25に面する第一のペイン1.1のペイン表面Iに取り付けられる。第二のバスバーは、この図では示されていない。バスバー5.1、5.2は、伝導性ペーストの印刷によって製造され、エレクトロクロミック機能素子2上に電気的に接触する。銀ペーストとも呼ばれる伝導性ペーストは、銀粒子及びガラスフリットを含有する。バスバーは、グレージング内部25において第一のペイン1.1上で、スペーサー21のグレージング内部表面24に平行に延在する。第一のペイン1.1は2.0mmの厚さを有し、2.0mmの厚さの第三のペイン1.3に、0.76mmのPVBで製造された熱可塑性の結合フィルム9を介してラミネートされる。第一のペイン1.1及び第三のペイン1.3を含む複合ペイン10は、建築グレージングの外側のペインを構成し、一方で第二のペイン1.2は、内側のペインである。本発明に係る遮断グレージング20は、エレクトロクロミック機能素子2に由来する良好な放熱性、及び赤外線反射コーティング11に起因する建物内部の良好な熱遮断を有する。機能素子2は、
図5に示されるように設計され、第一及び第二の表面電極3.1、3.2は、
図5に示されるような端部側パターン6及び中心パターン8を備える。赤外線反射コーティングとして働く第二のペインの電気伝導性コーティング11も、
図5で説明された、端部側パターン及び中心パターン6、8を備える。
【符号の説明】
【0098】
参照番号のリスト
10 ペイン
1.1 第一のペイン
1.2 第二のペイン
1.3 第三のペイン
2 電気的に切り替え可能な光学特性を有する機能素子
3 表面電極
3.1 第一の表面電極
3.2 第二の表面電極
4 活性層
5 バスバー
5.1 第一のバスバー
5.2 第二のバスバー
6 端部側パターン
7 線形の領域
8 中心パターン
9 熱可塑性の中間層
11 電気伝導性コーティング
12 キャリアフィルム
13 電気的に分離されたゾーン
20 遮断グレージング
21 スペーサー
22 ペイン接触表面
22.1 第一のペイン接触表面
22.2 第二のペイン接触表面
23 スペーサーの外側面
24 スペーサーのグレージング内部表面
25 グレージング内部
26 封止剤
27 外側のシール
28 乾燥剤
29 キャビティ
I 第一の側
II 第二の側
K 周囲端部
R 端部領域
【国際調査報告】