(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(54)【発明の名称】がん及び自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/15 20150101AFI20230831BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230831BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230831BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230831BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K35/15
A61P37/00
A61P37/02
A61P35/00
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532639
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021076051
(87)【国際公開番号】W WO2022063818
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523101501
【氏名又は名称】ウニクム セラピューティクス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バク,ラスムス オトキヤー
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン,マーティン ロールスゴー
(72)【発明者】
【氏名】ローストセン,アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ウルリク
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087MA17
4C087MA55
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、操作された細胞を使用して、疾患、特にがん及び自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象における疾患を治療する方法であって、
細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をその表面上に発現し、
細胞が、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると免疫応答を活性化し、かつ
細胞が、形質細胞様樹状細胞である、方法。
【請求項2】
疾患が、がん、自己免疫疾患、又は炎症性疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をその表面上に発現する、操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項4】
免疫応答が、サイトカイン、例えば炎症促進性サイトカイン若しくは抗炎症性サイトカインの分泌を含むか、又は宿主免疫細胞、例えばTreg又は細胞傷害性リンパ球の動員若しくは活性化を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項5】
外因性構築物が、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項6】
構築物が、キメラ抗原受容体又は合成Notch受容体である、請求項5に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項7】
細胞内シグナル伝達ドメインが、1つ以上のTCRシグナル伝達成分を含むか、又は1つ以上の転写因子を含む、請求項5又は請求項6に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項8】
細胞外抗原認識ドメインが、単鎖抗体フラグメント(scFv)又は組み換えT細胞受容体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項9】
細胞外抗原認識ドメインが、腫瘍関連抗原、自己免疫疾患に関連する自己抗原、又は組織特異的抗原を認識する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項10】
操作された形質細胞様樹状細胞が、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項11】
操作された形質細胞様樹状細胞が、TRAIL、CD123、CD303、CD304、CD4、HLA-DR、I型IFN、II型IFN、III型IFN、IRF7、TLR7及び/又はTLR9を発現する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法又は操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項12】
請求項3~11のいずれか一項に記載の操作された形質細胞様樹状細胞、及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
疾患を治療する方法に使用するための、請求項3~11のいずれか一項に記載の操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項14】
がん、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療に使用するための、請求項3~11のいずれか一項に記載の操作された形質細胞様樹状細胞。
【請求項15】
以下、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- サイトカイン、増殖因子及び/又はインターフェロン(IFN)を含む1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ、1つ以上のサイトカイン、増殖因子、インターフェロン(IFN)及び/又はアリール炭化水素受容体(AHR)アンタゴニスト(例えばステムレゲニン-1)を含み得る、1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ、及び
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で、分化前の前記HSPCを形質転換するか、又は分化後の前記pDCを形質転換するステップ
を含む、操作された形質細胞様樹状細胞を含む治療用組成物を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作された細胞を使用して、疾患、特にがん及び自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、がんを治療するための確立された成功した手法である。CAR-T療法では、T細胞集団は、患者又はドナーから得られ、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作される。典型的なCARの細胞外ドメインは、腫瘍関連抗原を認識するモノクローナル抗体の抗原結合部位に由来するVHドメイン及びVLドメイン(単鎖可変領域フラグメント(scFv))からなる。scFvは、柔軟な膜貫通ドメインに連結され、その後に、例えば、チロシンベースの活性化モチーフ、例えばCD3z由来のものと、任意選択で、T細胞を活性化し、それらの生存及び増殖を増強するのに役立つ、CD28及びCD137(41BB)などの共刺激分子由来の追加の活性化ドメインとを有する細胞内シグナル伝達ドメインが続く。CAR T細胞は、患者に投与され、CARは、腫瘍細胞を認識し結合する。がん細胞の結合は、T細胞における細胞溶解機構の活性化を引き起こし、これは、結合したがん細胞を特異的に殺滅する。様々な前臨床試験及び初期臨床試験は、固形腫瘍及び造血性悪性腫瘍を有するがん患者を治療するCAR T細胞の有効性を強調する。
【0003】
CAR-T療法の成功の妨げとしては、腫瘍からの標的化抗原の喪失、腫瘍微小環境におけるTreg及び骨髄由来抑制細胞(MDSC)などの免疫抑制細胞、T細胞の細胞溶解活性を阻害し得る、アデノシン、細胞外カリウム、及び活性酸素種(ROS)などの腫瘍微小環境における因子、並びにCAR-T細胞が受容体を持たないケモカインを発現する腫瘍が挙げられる。
【0004】
CARと共に使用する他の細胞が提案されている。ナチュラルキラー細胞は、天然でウイルス感染細胞及び腫瘍細胞を攻撃する細胞傷害性リンパ球の一種であり、CARを用いて操作されてCAR-NK細胞を形成することができる。WO2017019848は、細胞傷害性の能力がある他の食細胞、特にマクロファージの使用を記載する。
【0005】
形質細胞様樹状細胞(pDC)は、自然免疫系と適応免疫系とをつなぐ鍵となると考えられている、珍しいタイプの免疫細胞である。それらは、ウイルス感染に応答して大量の1型インターフェロン(IFN)を分泌することが知られており、免疫応答を開始するだけでなく、外因性抗原及び内因性抗原に対する寛容性を誘導する能力も有する、細胞性免疫における重要なエフェクターである。形質細胞様樹状細胞は、ワクチンでの使用について提案されており、それらは抗原を提示し、リンパ節に送達されて、T細胞を活性化する(Charles et al., 2020, Oncology, 9(1))。WO2018/206577は、pDCの集団を生成する方法を提供する。
【0006】
がん及び他の疾患を治療するための改善された方法に対する必要性が、当技術分野において依然としてある。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、特定の細胞を標的とし、免疫学的経路を増強し又は変化させ、かつ疾患を治療する、形質細胞様樹状細胞(pDC)の固有の特性を利用する免疫療法を開発した。本発明によれば、pDCは、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をそれらの表面上に発現するように操作される。細胞外抗原認識ドメインは、pDCが、疾患細胞及び組織を特異的に標的として、疾患微小環境において免疫応答を活性化し、疾患を治療することを可能にする。pDCの多面的な性質は、それらを使用して、炎症促進性サイトカイン又は阻害因子を分泌すること、又は免疫細胞、例えばTreg又は細胞傷害性リンパ球を動員及び活性化することによって、免疫応答に対する様々な効果を活性化できることを意味する。結果として、pDCは、所望の免疫応答に不応性の疾患微小環境においても、強力で広範な効果を発揮することが予想される。pDCはまた、免疫細胞への抗原提示の能力がある可能性があり、標的細胞のTRAIL媒介性直接的殺滅を行い得る。
【0008】
特定の実施形態では、外因性構築物はまた、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。このような構築物は、認識ドメインが標的抗原に結合すると、カスタマイズされた免疫応答が活性化されることを可能にする。
【0009】
実施例は、pDCが、細胞外抗原認識ドメイン及び他のドメインを含む外因性構築物を発現できることを実証する。pDCは、それらの機能性及びI型IFN応答を維持しており、標的細胞を首尾よく認識し、結合し、その後、免疫応答を活性化するために使用することができる。
【0010】
したがって、本発明は、操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象における疾患を治療する方法であって、細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をその表面上に発現し、細胞が、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると免疫応答を活性化し、かつ細胞が、形質細胞様樹状細胞である、方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をその表面上に発現する、操作された形質細胞様樹状細胞を提供する。
【0012】
好ましい実施形態では、外因性構築物は、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合した時に細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとをさらに含む。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明の方法及び細胞は、がん又は自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療に使用するためのものである。免疫調節因子を分泌し、かつ免疫阻害性又は炎症性環境を変化させるpDCの能力は、疾患の原因となる細胞が特定の免疫微小環境に存在し、かつ特定の免疫微小環境によって維持される疾患を治療するために特に有用であることが予想される。また、がん細胞、自己応答性T細胞及び自己抗原は、細胞外抗原認識ドメインによって認識され得る特定の抗原を提示し、標的化療法を提供する。炎症性疾患及び移植片拒絶の治療もまた、疾患組織を特異的に標的とすることができるpDCから恩恵を受ける。
【0014】
好ましい実施形態では、構築物は、キメラ抗原受容体(CAR)又は合成Notch受容体である。このような構築物は、それらの細胞外抗原認識ドメインを使用して、特定の細胞を効果的に標的とすることができ、それらの細胞内シグナル伝達ドメインを用いて、カスタマイズされた免疫応答を提供することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、活性化される免疫応答は、サイトカイン、例えば炎症促進性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの分泌を含む。
【0016】
さらに好ましい実施形態では、免疫応答は、宿主免疫細胞、例えばTreg又は細胞傷害性リンパ球の動員又は活性化を含む。これは、pDCによる宿主免疫細胞への抗原提示を含み得る。
【0017】
pDCはまた、標的細胞の直接的TRAIL媒介性殺滅を行い得る。
【0018】
好ましい実施形態では、pDCは、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞(SC-pDC)である。このような細胞は、造血幹/前駆細胞(HSPC)から生成することができ、造血幹/前駆細胞は、患者又はドナーから得ることができる。HSPCは、SC-pDCへの分化の前に、外因性構築物を用いて操作してもよい。
【0019】
特に好ましい実施形態では、本発明は、操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象におけるがんを治療する方法であって、細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性キメラ抗原受容体をその表面上に発現し、細胞が、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である、方法を提供する。
【0020】
さらに特に好ましい実施形態では、本発明は、操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象における自己免疫疾患を治療する方法であって、細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性キメラ抗原受容体をその表面上に発現し、細胞が、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である、方法を提供する。
【0021】
同様に、特に好ましい実施形態では、本発明は、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性キメラ抗原受容体を発現する、操作された幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞を提供する。
【0022】
さらに特に好ましい実施形態では、本発明は、操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象におけるがんを治療する方法であって、細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば転写因子とを含む外因性合成Notch受容体を発現し、細胞が、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である、方法を提供する。
【0023】
さらに特に好ましい実施形態では、本発明は、操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象における自己免疫疾患を治療する方法であって、細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性合成Notch受容体を発現し、細胞が、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である、方法を提供する。
【0024】
同様に、特に好ましい実施形態では、本発明は、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性合成Notch受容体を発現する、操作された幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞を提供する。
【0025】
本発明はまた、有効量の、本明細書に記載される操作された形質細胞様樹状細胞、及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明はまた、疾患の治療に使用するための、例えばがん又は炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療に使用するための、本発明の操作された形質細胞様樹状細胞を提供する。
【0027】
本発明はまた、疾患を治療するための医薬、例えばがん又は炎症性疾患又は自己免疫疾患を治療するための医薬の調製における、本発明の操作された形質細胞様樹状細胞の使用を提供する。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明は、以下、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で前記HSPCを形質転換するステップ、
- 典型的には1つ以上のサイトカイン、増殖因子、インターフェロン(IFN)及び/又はアリール炭化水素受容体(AHR)アンタゴニスト(例えばステムレゲニン-1)を含み得る、1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ
を含む、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、以下、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 典型的には1つ以上のサイトカイン、増殖因子、インターフェロン(IFN)及び/又はアリール炭化水素受容体(AHR)アンタゴニスト(例えばステムレゲニン-1)を含み得る、1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ、
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で前記pDCを形質転換するステップ
を含む、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】腫瘍細胞を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するSC-pDCを示す。CARは、細胞外抗原認識ドメインを介して特定の腫瘍関連抗原(TAA)を認識する。CAR SC-pDCのTAAへの結合は、CAR中のシグナル伝達ドメインを介したpDCの活性化を引き起こし、その結果、pDCによる炎症促進性サイトカイン及びインターフェロンの分泌が生じ、抗腫瘍応答を促進する。
【
図2】腫瘍細胞を認識する合成Notch(synNotch)受容体を発現するSC-pDCを示す。受容体が特定の分子、例えば腫瘍関連分子に結合すると、特定のカスタマイズされた合成免疫応答がSC-pDCにおいて誘導され、直接カスタマイズされた応答を可能にする。
【
図3】synNotch受容体の構造を示す。synNotch受容体は、カスタム細胞外認識ドメイン(例えばscFv)、コア調節領域(タンパク質分解/切断を制御する)及びカスタム細胞質転写因子(例えばGal4-VP64)を含む。転写因子に対する認識要素を有するカスタム応答要素は、カスタム遺伝子の発現を活性化する。このシステムは、カスタム転写プログラムを直接調節することによって、細胞において活性化される特定の応答の制御を提供する。
【
図4】CAR SC-pDCのがん患者への注入を示す。CARを発現するSC-pDCを患者に注射する。CAR SC-pDCは、腫瘍部位へ向かって進み、特定の腫瘍抗原を認識すると活性化され、炎症促進性サイトカイン及びインターフェロンを分泌する。これは、次に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の腫瘍部位への輸送を促進する。さらに、炎症促進性環境は、腫瘍細胞が生成する免疫阻害性環境を消失させ、「冷たい」腫瘍を「熱い」腫瘍に変え、抗腫瘍応答を促進する。
【
図5】標的化がん療法のためのCAR SC-pDCを生成し、投与するための例示的なプロセスを示す。CAR遺伝子は、レンチウイルス形質導入を使用するか、又は(図に示されるように)AAV6媒介性ドナー送達を用いたCRISPRシステムを使用して、CD34+ HSPCに挿入することができる。その後、CAR発現CD34+ HSPCを、SC-pDCに分化させる。CAR SC-pDCは、抗腫瘍応答を誘導するために患者に直接注射するか、又は複数のワクチンレジメンのために凍結保存することができる。
【
図6】CAR中の細胞内ドメインに応じてSC-pDCにおいて活性化される様々な免疫応答を示す。CAR中の細胞内ドメインに応じて、多種多様な免疫学的応答が、SC-pDCにおいて活性化され、達成され得る。免疫原性細胞内ドメイン(例えばMyD88、CD137及びCD40)は、SC-pDCの活性化、及び例えば、I型IFN又は炎症促進性タンパク質の産生を誘導し、生存を促進し、抗原提示を促進することができる。また、寛容原性細胞内ドメイン(例えばCD85g、PDL-1、ICOS-L)は、自己応答性T細胞の寛容を含む、SC-pDCの寛容原性機能を誘導することができる。
【
図7A】従来のCARがSC-pDCにおいて発現され得ることを示す。A)従来の第2世代の抗CD19 CARの模式図を示す。構築物は、4-1BB及びCD3z細胞内ドメインを含む。T細胞において、CAR構築物の発現は、細胞が、CD19に結合するとT細胞応答を誘発することを可能にする。さらに、セーフ・ハーバー座位(safe-harbour locus)CCR5に対する相同性アームが、構築物に隣接する。これは、CARが、CRISPR/Cas9媒介性の相同性指向性修復(HDR)を使用して、この遺伝子に安全に挿入されることを可能にする。
【
図7B】従来のCARがSC-pDCにおいて発現され得ることを示す。B)SC-pDCにおける抗CD19 CARの発現を示す代表的なフロープロットを示す。
【
図7C】従来のCARがSC-pDCにおいて発現され得ることを示す。C)3人のドナーについての抗CD19 CAR+ SC-pDCのパーセンテージを示すカラム図を示す。
【
図8】CRISPR/Cas9を使用してCD19-CARを発現するように遺伝子改変されたSC-pDCのI型IFN応答を示す。細胞の30%が抗CD19 CARを発現するプライミングされたSC-pDC(RNP+ドナー)、又は構築物を発現しないSC-pDC(偽+ドナー)を、TLR7(R837)、TLR9(CpGA)に対するアゴニストで20時間刺激するか、又は無刺激のまま(UT)とした。その後、上清を回収し、生物活性のあるI型IFNを、市販のI型IFNバイオアッセイ(HEK-blue I型IFNレポーターバイオアッセイ)を使用して評価した。
【
図9】CARを発現するように改変されたSC-pDCのサイトカイン応答を示す。I型及びII型IFNを補充した培地中で3日間プライミングされた(A)、又はプライミングされないままの(B)、SC-pDCを示す。その後、細胞を、CD19+標的細胞株(NALM-6)と、1:1のエフェクター:標的の比率で共培養した。潜在的なバックグラウンドを排除するために、標的細胞を、エフェクター細胞なし(0:1)でも播種した。20時間後、上清を回収し、サイトカインIFN-ベータ、IL-6、CXCL10及びTNF-アルファのレベルを、Mesoscaleマルチプレックスサイトカインアッセイ(MSD)を使用して定量化した。1人のドナーからのデータ。
【
図10】synNotch受容体及びsynNotch応答要素の造血幹/前駆細胞(HSPC)へのレンチウイルス同時形質導入と、それに続く、幹細胞のSC-pDCへの分化による、synNotch SC-pDCの生成を示す模式図を示す。(synNotch受容体がその同種抗原に結合することによって)SynNotch SC-pDCが標的細胞を認識すると、SynNotch SC-pDCが活性化され、その結果、目的の特定の遺伝子、例えばインターロイキン12(IL-12)の転写を引き起こす。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【
図11】CD19を標的とするsynNotch受容体及びIL-12応答要素を示す模式図を示す。
【
図12】SC-pDC上の応答要素の発現を示す。SC-pDCにおけるSynNotch受容体及びSynNotch応答要素の発現レベル。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【
図13】SynNotch pDCが標的細胞に結合し、IL-12分泌を引き起こすことを示す。プライミングされた又はプライミングされていないsynNotch SC-pDCの、標的細胞との共培養、及びsynNotch受容体活性(IL12分泌)の分析。SynNotch SC-pDC(プライミングされた又はプライミングされていない)を、CD19+標的細胞(NALM6若しくはREH6)又はCD19陰性の非標的細胞(K562)と共培養するか、又は細胞なしで(単独で)培養した。標的:エフェクター細胞の比率は、5:1(5倍多い標的細胞)であった。24時間後に上清を収集し、synNotch応答要素の活性化を、ELISAによってIL-12のレベルを分析することによって評価した。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【
図14】プライミングされたSC-pDC上でのsynNotch受容体及び応答要素の発現を示す。HSPCを解凍し、低密度で予備増殖させた。3日間の培養後、HSPCを、SynNotch構築物で同時形質導入し、その後、SC-pDCに分化させた。16日間の培養後、pDCを単離し、プライミングし、その後、synNotch受容体及び応答要素の発現を、pDC(系統陰性、CD11c陰性、CD303+細胞)で評価した。示されるデータは、1人のドナーについてのものである。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【
図15】CD19+標的細胞の認識の際のSC-pDCの活性化を示す。100,000個のプライミングされたSC-pDCを、CD19+ NALM6若しくはREH6標的細胞、又は非標的細胞K562(対照)と、1:1及び1:3のエフェクター:標的の比率で共培養した。刺激の20時間後に上清を収集し、IL12のレベルを、ELISAを使用して分析した。示されるデータは、1人のドナー及び生物学的三重反復についてのものである。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【
図16】プライミングされたSC-pDCでのsynNotch受容体及び応答要素の発現を示す。HSPCを解凍し、低密度で予備増殖させた。3日間の培養後、HSPCを、SynNotch構築物で同時形質導入し、その後、SC-pDCに分化させた。16日間の培養後、SC-pDCを単離し、プライミングし、その後、synNotch受容体及び応答要素の発現を、SC-pDC(系統陰性、CD11c陰性、CD303+細胞)で評価した。示されるデータは、1人のドナーについてのものである。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【
図17】CD19+標的細胞の認識の際のSC-pDCの活性化を示す。100,000個のプライミングされたSC-pDCを、CD19+ NALM6若しくはREH6標的細胞、又は非標的細胞K562(対照)と、1:1、1:2、1:4及び1:8のエフェクター:標的の比率で共培養した。刺激の20時間後に上清を収集し、IL12のレベルを、ELISAを使用して分析した。示されるデータは、1人のドナー及び生物学的三重反復についてのものである。「U-pDC」は、SC-pDCを指すために同様に使用される代替用語である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
細胞外抗原認識ドメインを含む構築物
本発明は、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をそれらの表面上に発現する、操作された形質細胞様樹状細胞、及びこのような細胞を使用して疾患を治療する方法を提供し、細胞は、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると免疫応答を活性化する。外因性構築物は、細胞が、特定の標的細胞を認識して結合し、結合すると免疫応答を活性化することを可能にする。好ましい実施形態では、外因性構築物は、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、外因性構築物は、ウイルス構築物である。いくつかの実施形態では、ウイルス構築物は、AAV構築物、アデノウイルス構築物、レンチウイルス構築物、又はレトロウイルス構築物である。
【0033】
いくつかの実施形態では、外因性構築物は、操作された細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性構築物は、操作された細胞のゲノムに組み込まれない。いくつかの実施形態では、外因性構築物は、トランスポザーゼ、レトロトランスポザーゼ、エピソームプラスミド、mRNA、又はランダムな組み込みによって導入される。好ましくは、外因性構築物は、遺伝子編集システム、例えばTALEN、ジンクフィンガー、又は最も好ましくはCRISPR/Cas9を用いて導入される。さらに好ましい実施形態では、外因性構築物は、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを用いた形質導入を介して導入される。
【0034】
外因性という用語は、本明細書で使用される場合、その通常の意味を有する。特に、外因性構築物は、細胞に導入されており、かつ未改変細胞では同じ配置又は位置に存在しない構築物である。外因性構築物は、内因性(好ましくはヒト)配列を使用して構築してもよい。
【0035】
各ドメインは、異種混在であってもよく、すなわち、異なるタンパク質鎖に由来する配列で構成されていてもよい。
【0036】
細胞外抗原認識ドメインは、標的細胞上の抗原を認識し、所望の治療用途又は標的細胞に応じて設計又は選択することができる。いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、抗体又はそのフラグメント、例えば、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)2、dAb、又は好ましくは、1つ以上の単一ドメイン抗体(「ナノボディ」)又は1つ以上の単鎖抗体フラグメント(「scFv」)である。scFvは、連結された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を有する単鎖抗体フラグメントである。単一ドメイン抗体は、ナノボディとしても知られ、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。scFv及びナノボディは、他のCAR成分とともに単鎖の一部として発現されるように操作され得るため、キメラ抗原受容体において有用である。
【0037】
細胞外抗原認識ドメインは、一般に細胞表面抗原を認識する。特定の実施形態では、例えばがんを治療するために使用される場合、細胞外抗原認識ドメインは、腫瘍関連抗原を認識し、特異的に結合し、ここで腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞のみで発現されるか、又は腫瘍細胞によって健康な細胞に比べてより高いレベルで発現される抗原である。特定の実施形態では、例えば自己免疫疾患を治療するために使用される場合、細胞外抗原認識ドメインは、自己免疫疾患を引き起こしている病原性自己応答性免疫細胞によって標的とされる自己抗原(autoantigen)(又は自己抗原(self-antigen))を認識し、特異的に結合する。特定の実施形態では、例えば炎症性疾患を治療するために使用される場合、細胞外抗原認識ドメインは、組織特異的であり、かつ特定の組織、例えば炎症を起こしている組織、移植された組織、又は炎症から損傷を受けている若しくは炎症からの損傷のリスクがある組織、の細胞の表面上に発現される抗原を認識し、特異的に結合する。
【0038】
特定の実施形態では、細胞外抗原認識は、二重特異性又は多重特異性であり、2つ以上の目的の標的に対する特異性を有する。
【0039】
細胞外抗原認識ドメインは、標的細胞上の抗原を認識する。したがって、抗原は、標的抗原であり得る。特定の実施形態では、ドメインは、抗原に特異的に結合し、任意の他の抗原に対して有意な結合を示すか、又は任意の他の抗原よりも標的抗原に対して有意により強い結合を示す。
【0040】
好ましい実施形態では、細胞外抗原認識ドメインによって認識される抗原は、腫瘍抗原、好ましくは腫瘍関連表面抗原である。特定の実施形態では、腫瘍抗原は、5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CA-125、がん胎児性抗原(CEA)、がん胎児性抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD70、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、管上皮ムチン、EBV特異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1、HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rアルファ、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGF1)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、カッパ鎖、LAGA-1a、ラムダ鎖、ラッサウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系統特異的又は組織特異的抗原、例えばCD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン、テロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシン-CのA1ドメイン(TnC A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異的表面抗原、例えばHIV特異抗原(例えばHIV gp120)、並びにこれらの表面マーカーの任意の誘導体又は変異体からなる群から選択される。
【0041】
好ましい実施形態では、細胞外抗原認識ドメインは、BCMA、CD19、CLL1、CS1、STEAP1、STEAP2、CD70、及びCD20からなる群から選択される抗原を認識する。いくつかの実施形態では、細胞外抗原認識ドメインは、CD19を特異的に標的とする。
【0042】
さらに好ましい実施形態では、細胞外抗原認識ドメインによって認識される抗原は、治療されるべき自己免疫疾患に関連する自己抗原である。標的とされるべき例示的抗原としては、以下が挙げられる(括弧内に治療されるべき関連疾患とともに): GAD65(1型糖尿病)、インスリノーマ関連タンパク質2-IA-2(1型糖尿病)、甲状腺ペルオキシダーゼ-TPO(甲状腺自己免疫疾患、橋本病及びグレーブス病)、サイロトロピン受容体-TSHR(甲状腺自己免疫疾患、橋本病及びグレーブス病)、副腎皮質刺激ホルモン受容体-ACTHR(アジソン副腎不全)、21-ヒドロキシラーゼ(アジソン副腎不全)、17-アルファ-ヒドロキシラーゼ(卵巣炎)、P450側鎖切断酵素(卵巣炎)、精子抗原(睾丸炎)、下垂体サイトゾルタンパク質(リンパ球性下垂体炎)、カルシウム感知受容体-CaSR(自己免疫性副甲状腺機能低下症)、NACHT LRR及びPYDドメイン含有タンパク質5-NALP5(自己免疫性副甲状腺機能低下症)、IV型コラーゲンのアルファ3鎖(グッドパスチャー病)、ミオシン(自己免疫性心筋炎)、M型ホスホリパーゼA2受容体-PLA2R(膜性腎症)、シトクロムP450 1A2(自己免疫性肝炎)、トロポミオシンアイソフォーム5-hTM5(潰瘍性大腸炎)、主要チモーゲン顆粒膜糖タンパク質2-GP2(クローン病)、ミエリン塩基性タンパク質-MBP(多発性硬化症)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質-MOG(多発性硬化症)、ニコチン性アセチルコリン受容体-AChR(重症筋無力症)、アクアポリン-4-AQP4(視神経脊髄炎)。
【0043】
炎症性疾患を治療するために使用される場合、外因性構築物中の細胞外抗原認識ドメインは、罹患臓器、例えば膵臓若しくはランゲルハンス島、腎臓、心臓、肺、肝臓、腸、皮膚又は関節を標的とするように選択される。標的とされるべき例示的抗原としては、以下が挙げられる(括弧内に関連臓器とともに): GAD65(膵臓又はランゲルハンス島)、インスリノーマ関連タンパク質2-IA-2(膵臓又はランゲルハンス島)、M型ホスホリパーゼA2受容体-PLA2R(腎臓)、ミオシン(心臓)、IV型コラーゲンのアルファ3鎖(肺)、シトクロムP450 1A2(肝臓)、主要チモーゲン顆粒膜糖タンパク質2-GP2(腸)、トロポミオシンアイソフォーム5-hTM5(腸)、がん胎児性抗原-CEA(腸)。
【0044】
移植片拒絶を治療するために使用される場合、外因性構築物中の細胞外抗原認識ドメインは、罹患臓器、例えば膵臓若しくはランゲルハンス島、腎臓、心臓、肺、肝臓又は腸を標的とするように選択される。標的とされるべき例示的抗原としては、以下が挙げられる(括弧内に関連臓器とともに): GAD65(膵臓又はランゲルハンス島)、インスリノーマ関連タンパク質2-IA-2(膵臓又はランゲルハンス島)、M型ホスホリパーゼA2受容体-PLA2R(腎臓)、ミオシン(心臓)、IV型コラーゲンのアルファ3鎖(肺)、シトクロムP450 1A2(肝臓)、主要チモーゲン顆粒膜糖タンパク質2-GP2(腸)、トロポミオシンアイソフォーム5-hTM5(腸)、がん胎児性抗原-CEA(腸)。あるいは、外因性構築物中の細胞外抗原認識ドメインは、HLA分子を標的としてもよく、細胞外抗原認識ドメインが、移植された臓器のみを認識するため、これは、HLA異種移植の状況で特に効果的であり得る。
【0045】
細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると、細胞において免疫応答を活性化する。所望の治療用途に応じて、免疫応答は炎症性であってもよく、又はそれは抗炎症性であってもよい。
【0046】
好ましい実施形態では、細胞において活性化される免疫応答は、サイトカインの分泌である。所望の治療効果及び状況に応じて、サイトカインは、恒常性サイトカイン、ケモカイン、炎症促進性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン、エフェクター、及び/又は急性期タンパク質を含み得る。例えば、恒常性サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)7及びIL-15は、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症促進性サイトカインは、炎症性応答を促進する可能性があり、これは、がん療法に有用であり得る。恒常性サイトカインの例としては、以下に限定されないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15、及びインターフェロン(IFN)ガンマが挙げられる。炎症促進性サイトカインの例としては、以下に限定されないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞増殖因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D、及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例としては、以下に限定されないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)、及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例としては、以下に限定されないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。細胞内シグナル伝達ドメインの活性化後に発現される好ましいサイトカインとしては、IFNα、IFNβ、IFNλ、TNFα、IL-6、CXCL9、CXCL10及び/又はCXCL11が挙げられる。
【0047】
特定の実施形態では、活性化される免疫応答は、TRAIL媒介性殺滅を含む。
【0048】
特定の実施形態では、活性化される免疫応答は、チェックポイント阻害剤の発現を含む。
【0049】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ、ベータ、デルタ、イプシロン、ガンマ、ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD96(タクタイル(Tactile))、CD1-1a、CD1-1b、CD1-1c、GDI-Id、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、インテグリン、1TGA4、1TGA4、1TGA6、1TGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14、TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6、又はそれらのフラグメント、トランケーション、若しくは組み合わせからなる群から選択される分子に由来する1つ以上の刺激又は共刺激ドメインを含む。上記のドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインは、がんを治療するために特に有用である。
【0050】
好ましい細胞内シグナル伝達ドメインとしては、CD3z、CD40、MyD88(ΔTIR)、MyD88、CD300a、CD300c、CD137(4-1BB)、DAP-10、DAP-12、FCGR2、FCERG、TLR1(TIR)、TLR7(TIR)、TLR9(TIR)、CD335(NKp46)、CD158(KIR2DL)、CD19及びFKBPv36(誘導性)が挙げられる。
【0051】
特定の実施形態では、特に自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療において、細胞内シグナル伝達ドメインは、寛容原性又は抗炎症性応答を活性化する。このような実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD85g、CD275、CD279、CD303、CD305及びIL10Rからなる群から選択される分子に由来するドメインを含んでもよい。
【0052】
特定の実施形態では、活性化される免疫応答は、免疫細胞、例えばTreg(特に自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するため)又は細胞傷害性リンパ球(特にがんを治療するため)の動員である。
【0053】
好ましい実施形態では、外因性構築物は、キメラ抗原受容体(CAR)である。CARは、細胞外抗原認識ドメインを含み、これは、一般に、特定の細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に対する特異性を有するscFvであり、細胞内シグナル伝達ドメインに直接的又は間接的に連結される。細胞内シグナル伝達ドメインは、別個のドメイン、例えば1つ以上の共刺激ドメイン及び/又は1つ以上の活性化ドメインを含んでもよい。成分は、任意の順序で配置してよい。いくつかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインが別個のポリペプチド鎖として発現されるように操作される。好ましいCARは、上記のように細胞外抗原認識ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0054】
さらに好ましい実施形態では、外因性構築物は、合成Notch(synNotch)受容体である。SynNotch受容体は、細胞外抗原認識ドメイン(特定の細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に対する特異性を有するscFvであり得る)、膜貫通ドメイン(タンパク質分解及び切断を制御する)、及び細胞内シグナル伝達ドメイン(転写因子であり得る)を含む。抗原認識ドメインの結合により転写因子が放出され、これは、転写因子に対する認識要素を有する応答要素を標的とし、遺伝子又は遺伝子のセットの発現を駆動することができ、それにより免疫応答を活性化する。SynNotch受容体は、構築物によって活性化される免疫応答が、任意の遺伝子又は遺伝子のセットの発現を駆動することによって、所望の治療効果のためにカスタマイズされることを可能にする。システムはまた、複数の転写因子ドメイン及び/又は応答要素を用いて多重化することができる。
【0055】
外因性構築物が合成Notch(synNotch)受容体である実施形態では、操作された細胞はまた、一般に、細胞内シグナル伝達ドメインによって活性化される応答要素を含み、細胞内シグナル伝達ドメインは、好ましくは転写因子(例えばGal4-VP64、Gal4-VP16、TetR-VP64、LacI-VP64など、又は例えばGal4-VP64、Gal4-VP16、Gal4-VPR、TetR-VP64、LacI-VP64など)である。好ましい転写因子は、Gal4-VP64である。応答要素は、構築物によって活性化される免疫応答を媒介する遺伝子に作動可能に連結される。応答要素及び遺伝子は、ゲノムに組み込まれてもよく、又はベクター、例えばプラスミド上に存在してもよい。応答要素及び遺伝子は、任意の適切な技術、例えばトランスポザーゼ、レトロトランスポザーゼ、エピソームプラスミド又はランダムな組み込みによって導入してもよい。好ましくは、応答要素は、遺伝子編集システム、例えばTALEN、ジンクフィンガー、又は最も好ましくはCRISPR/Cas9を用いて導入される。さらに好ましい実施形態では、応答要素は、レンチウイルス形質導入によって導入される。好ましいsynNotch受容体は、上に記載される細胞外抗原認識ドメインを含む。好ましいsynNotch受容体は、上に記載されるサイトカイン又は上に記載される刺激分子の発現を活性化する、転写因子などの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、応答要素は、TRAIL、チェックポイント阻害剤、例えばPDL1、IL-12又はI型IFNをコードする。好ましい実施形態では、PD-L1又はIL10の発現が活性化される。さらに好ましい実施形態では、IL12の発現が活性化される。
【0056】
好ましいNotch遺伝子は、NOTCH1である。代替のNotch遺伝子としては、NOTCH2、NOTCH3及びNOTCH4が挙げられる。
【0057】
外因性構築物は、細胞外抗原認識ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを連結する膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、4-1BB/CD137、T細胞受容体のアルファ鎖、T細胞受容体のベータ鎖、T細胞受容体のガンマ鎖、T細胞受容体のデルタ鎖、CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD4、CD5、CD8アルファ、CD9、CD16、CD19、CD22、CD33、CD34、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、又はT細胞受容体のゼータ鎖、又はそれらの任意の組み合わせの膜貫通ドメインに由来し得る。
【0058】
特定の実施形態では、外因性構築物は、特に細胞外抗原認識ドメインの自由な動きを可能にするために、ヒンジ又はスペーサーを含む。適切なヒンジ又はスペーサーとしては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、及びIgMの領域、又はそれらのフラグメントが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヒンジ又はスペーサーは、CD8アルファ由来である。任意選択で、短いリンカーは、構築物の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインのいずれか又はいくつかの間の結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリンの反復に由来してもよい。リンカーはまた、ペプチドタグとして使用してもよい。リンカーペプチド配列は、目的の1つ以上のタンパク質を接続するのに適切な任意の長さであってよく、好ましくは、それが接続するペプチドの一方又は両方の適切な折り畳み及び/又は機能及び/又は活性を可能にするように十分に柔軟であるように設計される。
【0059】
好ましい実施形態では、外因性構築物は、
a)抗CD19 scFvである細胞外抗原認識ドメイン、
b)CD8膜貫通ドメイン、
c)4-1BB細胞内シグナル伝達ドメイン、
d)CD3z細胞内シグナル伝達ドメイン、及び
e)BGHポリ(A)細胞内シグナル伝達ドメイン、
又は(a)~(e)の2つ以上、例えば(a)~(e)の3つ又は4つ
を含む、キメラ抗原受容体である。
【0060】
さらに好ましい実施形態では、外因性構築物は、
a)プロモーター、例えばPGK、
b)抗CD19 scFvである細胞外抗原認識ドメイン、
c)NOTCH1
d)Gal4-VP64転写因子、及び
e)任意選択で、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)転写後調節要素(WPRE)
を含む、synNotch受容体であり、
操作された細胞はまた、
a)synNotch受容体中の転写因子に応答するプロモーター、例えば、Gal4に対する標的配列である5xUAS要素が先行する最小CMVプロモーター、
b)IL-12、
c)IRES、
d)マーカー、例えばmCherry、
e)プロモーター、例えばPGKと、それに続くレポーター、例えばtBFP、及び
f)任意選択で、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)転写後調節要素(WPRE)
を含む、応答要素を含む。
【0061】
実施例は、このような構築物が、pDCによって発現されることができ、pDCが、それらの機能性及びI型IFN応答を維持し、このような構築物を使用して、標的細胞を首尾よく認識し、結合し、その後、活性化されて、IFN-ベータ及び炎症促進性因子を産生できることを実証する。
【0062】
特定の実施形態では、外因性構築物は、細胞外抗原認識ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。このような構築物は、膜貫通ドメインを含有してもよいし、又は含有しなくてもよい。特定のこのような実施形態では、細胞外抗原認識ドメインは、単鎖抗体フラグメント(scFv)又は組み換えT細胞受容体である。このような実施形態では、操作された細胞は、疾患部位を標的とし、免疫応答を活性化する。pDCは、例えば、Tregを活性化し、増殖させ、かつ動員することが知られており、これは、炎症性疾患、自己免疫疾患及び移植片拒絶の治療に有用である。応答は、例えばCD3ζによる、TCRシグナル伝達によって媒介され得る。
【0063】
特定の実施形態では、外因性構築物は、組み換えT細胞受容体(TCR)である。TCRは、抗原提示細胞又は任意の有核細胞(例えば、赤血球を除く体内のすべてのヒト細胞)の表面上に主要組織適合性複合体(MHC)の産物の関連で提示される抗原性ペプチドを認識する役割を担う抗原特異的分子である。対照的に、抗体は、典型的には、可溶性抗原又は細胞表面抗原を認識し、MHCによる抗原の提示を必要としない。このシステムは、細胞内で短いペプチドに処理され、細胞内MHC分子に結合し、かつペプチド-MHC複合体として表面に送達される、細胞によって発現されるあらゆる細胞内抗原(ウイルスタンパク質を含む)を認識する潜在能力を、T細胞に、それらのTCRを介して与える。このような実施形態では、標的の結合の際にpDCによって活性化される免疫応答は、内因性TCRシグナル伝達経路によって媒介され得る。
【0064】
疾患を治療するための形質細胞様樹状細胞(pDC)
本発明で使用するための操作された細胞は、形質細胞様樹状細胞(pDC)である。形質細胞様樹状細胞(pDC)は、免疫系において多面的な役割を有し、これにより、それらは、本発明の標的化治療に大いに適応可能なものとなる。pDCは、免疫応答を開始するだけでなく、外因性抗原及び内因性抗原に対する寛容性を誘導する能力も有する、細胞性免疫における重要なエフェクターである(Swiecki, and Colonna, Nat Rev Immunol, 2015. 15(8))。pDCは、従来のDCとは異なる。なぜならば、それらの発生の最終段階が骨髄内で生じ、それらの抗原が、受容体媒介性エンドサイトーシスによって取り込まれ、それらが、高レベルのインターフェロン調節因子7を発現し、また、それらが、主にtoll様受容体(TLR)7及び9を介して病原体を感知するからである(Swiecki and Colonna, Nat Rev Immunol, 2015. 15(8)、及びTangand Cattral, Cell Mol Life Sci, 2016)。これらのパターン認識受容体を介して、病原体の核酸は、pDCを活性化して、高レベルのI型インターフェロン(IFN)を産生することができる。こうして、活性化されたpDCは、抗原提示細胞(APC)活性と組み合わされたサイトカイン産生を介して、自然免疫系と適応免疫系とをつなぐ。さらに、pDC機能性はまた、感染中に抗ウイルス状態を達成し、ワクチン接種の状況で重要なアジュバント活性を提供するために、また、活性化の際の免疫原性抗腫瘍応答を促進するために不可欠である(Swiecki, and Colonna, Nat Rev Immunol, 2015. 15(8)、Tovey, et al. Biol Chem, 2008. 389(5)、及びRajagopal, et al. Blood, 2010. 115(10): p. 1949-57)。しかし、pDCの過度の活性化は、ウイルス感染、自己免疫疾患及び腫瘍形成を含む、いくつかの疾患の病因と関連しているため、微妙なバランスが維持されなければならない(Swiecki and Colonna, Nat Rev Immunol, 2015. 15(8)、及びTang and Cattral, Cell Mol Life Sci, 2016)。
【0065】
T細胞、NK細胞、マクロファージ、並びにがん及び自己免疫疾患を治療するためにCAR構築物とともに従来から使用される他の細胞とは違って、本発明の操作されたpDCの治療効果は、著しく異なり、それらは、サイトカインを放出し、かつ他の免疫細胞を活性化することによって免疫応答を間接的に活性化するpDCの能力を利用する。
【0066】
好ましくは、操作されたpDCは、TRAILを発現する。別の実施形態では、前記pDCは、CD123、CD303、CD304、CD4及び/又はHLA-DRを発現する。さらに別の実施形態では、前記pDCは、I型IFN、II型IFN、III型IFN及び/又は炎症促進性サイトカインを発現する。さらなる実施形態では、前記pDCは、IRF7、TLR7及び/又はTLR9を発現する。一実施形態では、前記pDCは、CD40、CD80、CD83及び/又はCD86を発現する。例えば、前記pDCは、TRAIL、CD123、CD303、CD304、CD4、HLA-DR、I型IFN、II型IFN、III型IFN、IRF7、TLR7及び/又はTLR9を発現する。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態では、pDCは、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を発現する。TRAILは、CD253とも呼ばれ、がん細胞の表面上のTRAIL受容体(細胞死受容体5、DR5)と相互作用し、それによりアポトーシスを引き起こすことによって、がん細胞の殺滅に関与するリガンドである。
【0068】
本発明の操作されたpDCは、好ましくは、血液pDCに強く類似する表面表現型を有する成熟細胞である。好ましい実施形態では、前記pDCは、CD123、CD303、CD304、CD4及び/又はHLA-DRを発現する。
【0069】
別の好ましい実施形態では、前記pDCは、I型IFN、II型IFN、III型IFN及び/又は炎症促進性サイトカインを発現する。
【0070】
pDCは、好ましい一実施形態では、Toll様受容体、例えばToll様受容体7(TLR7)及び/又はToll様受容体9(TLR9)を発現し得る。
【0071】
さらに別の好ましい実施形態では、前記pDCは、インターフェロン調節因子7(IRF7)を発現する。
【0072】
好ましい実施形態では、前記pDCは、IL-6を分泌する。
【0073】
好ましい実施形態では、操作された形質細胞様樹状細胞は、I型IFN応答の能力がある。
【0074】
別の好ましい実施形態では、前記pDCは、分化抗原群80(CD80)を発現し、これは、T細胞活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供する、樹状細胞、活性化B細胞及び単球上に見出されるタンパク質である。
【0075】
pDCはまた、好ましい実施形態では、抗原提示細胞に特徴的なタンパク質、例えば分化抗原群86(CD86)及び/又は分化抗原群40(CD40)を発現し得る。CD86は、T細胞活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供する抗原提示細胞上に発現されるタンパク質であり、一方、CD40は、抗原提示細胞上に見出される共刺激タンパク質であり、それらの活性化に必要とされる。
【0076】
好ましくは、前記pDCは、CD40、CD80、CD83及び/又はCD86を発現する。別の好ましい実施形態では、前記pDCは、インターロイキン6(IL-6)を発現する。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明の操作されたpDCは、幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である。
【0078】
特定の実施形態では、pDCは、自己由来である。このような治療は、移入細胞の拒絶のあらゆるリスクを最小限に抑え得る。代替の実施形態では、細胞は、同種異系であり、例えば健康なドナーから単離される。このような治療は、ことによると、より迅速に準備し、「在庫品」で提供することができる。特定の実施形態では、細胞は、凍結保存されるか、又は凍結保存されている。さらに、細胞は、異種であってもよい。
【0079】
疾患を治療する方法
本発明は、操作された細胞を対象に投与するステップを含む、対象における疾患を治療する方法であって、細胞が、標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物をその表面上に発現し、細胞が、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると免疫応答を活性化し、かつ細胞が、形質細胞様樹状細胞である、方法を提供する。したがって、本発明は、新しい養子細胞療法を提供する。養子細胞療法は、エクスビボ(ex vivo)で増殖させた細胞、最も一般的には免疫由来細胞の宿主への移入であり、移入細胞の免疫学的機能性及び特徴を移入することを目的としている。養子細胞療法は、様々な免疫調節効果及び活性を有する様々な移入免疫細胞を使用するが、がん及び自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するために十分に確立されている。
【0080】
本発明の特定の実施形態では、治療方法は、(i)治療されるべき対象又は健康なドナーのいずれかから自己由来の造血幹前駆細胞(HSPC)を収集するステップ、(ii)例えば以下に論じる方法を使用して、操作されたpDCを調製するステップ、(iii)任意選択で、対象にリンパ球除去化学療法を施すステップ、及び(iv)対象に操作されたpDCを投与するステップ、を含み得る。
【0081】
特定の実施形態では、本発明の方法は、2つ以上の外因性構築物を発現する細胞を投与するステップを含んでもよい。個々の細胞は、2つ以上の構築物を発現してもよく、又は投与される細胞の集団は、複数の異なる細胞を含んでもよい。
【0082】
特定の実施形態では、操作された細胞は、免疫調節タンパク質、例えばサイトカイン(例えば、IL-2、IL-12又はIL-15)を発現するようにさらに改変され、免疫調節タンパク質は、T細胞活性化及び動員を刺激する可能性があり、したがって、腫瘍微小環境との闘いを支援する可能性がある。したがって、細胞は、外因性構築物を発現し、かつ免疫調節タンパク質、例えば、IL-2、IL-12、又はIL-15をさらに発現する、細胞の集団を含んでもよい。
【0083】
特定の実施形態では、操作された細胞は、対象から単離され、リンパ球除去とともに(例えば、前に、同時に又は後に)、新鮮な状態で使用してもよく、又は後の使用のために凍結してもよい。
【0084】
特定の実施形態では、操作された細胞は、用量分割によって対象に投与してもよく、総用量の第1のパーセンテージは、治療の初日に投与され、総用量の第2のパーセンテージは、治療のその後の日に投与され、任意選択で、総用量の第3のパーセンテージは、治療のさらにその後の日に投与される。
【0085】
例示的な総用量は、対象の体重1kgあたり103~1011個の細胞、例えば、体重1kgあたり103~1010個の細胞、又は対象の体重1kgあたり103~109個の細胞、又は対象の体重1kgあたり103~108個の細胞、又は対象の体重1kgあたり103~107個の細胞、又は対象の体重1kgあたり103~106個の細胞、又は対象の体重1kgあたり103~105個の細胞を含む。さらに、例示的な総用量は、対象の体重1kgあたり104~1011個の細胞、例えば、体重1kgあたり105~1011個の細胞、又は対象の体重1kgあたり106~1011個の細胞、又は対象の体重1kgあたり107~1011個の細胞を含む。
【0086】
例示的な総用量は、体重ではなく患者の体表面積に基づいて投与してもよい。したがって、総用量は、1m2あたり103~1013個の細胞を含んでもよい。
【0087】
本発明の特定の実施形態では、方法は、リンパ球除去を含む。リンパ球除去は、任意の適切な手段によって達成してよい。リンパ球除去は、操作された細胞の投与前又は投与後に行ってよい。特定の実施形態では、リンパ球除去は、操作された細胞の投与前及び投与後の両方に行われる。
【0088】
本発明の特定の実施形態では、方法は、1つ以上の追加の治療剤の投与を含んでもよい。例示的な治療剤としては、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
治療剤は、当技術分野で公知の任意の標準的な投与計画に従って投与し得る。例示的な化学療法剤としては、抗有糸分裂剤、例えばタキサン、例えばドセタキセル、及びパクリタキセル、並びにビンカアルカロイド、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びビノレルビンが挙げられる。例示的な化学療法剤としては、トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカンが挙げられる。例示的な化学療法剤としては、増殖因子阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、P38a MAPキナーゼ阻害剤、血管新生(angiogenesis)、新血管形成(neovascularization)、及び/又は他の血管形成(vascularization)の阻害剤、コロニー刺激因子、赤血球生成剤、抗アネルギー剤、免疫抑制剤及び/又は免疫調節剤、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫チェックポイント阻害剤、BCR阻害剤(例えば、BTK、P13Kなど)、免疫代謝剤(例えば、IDO、アルギナーゼ、グルタミナーゼ阻害剤など)などが挙げられる。本発明の特定の態様によれば、1つ以上の治療剤は、抗骨髄腫剤を含んでもよい。例示的な抗骨髄腫剤としては、デキサメタゾン、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、プレドニゾン、カルムスチン、エトポシド、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びサリドマイドが挙げられ、これらのうちのいくつかは、化学療法剤、抗炎症剤、又は免疫抑制剤として上に示される。
【0090】
本発明によれば、疾患の治療は、疾患負荷、疾患発生率、又は疾患重症度の減少として現れ得る生物学的効果を指す。例えば、がん治療に関連して、これは、腫瘍体積の低減、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移数の減少、全生存期間又は無増悪生存期間の増加、平均余命の増加、又は腫瘍に関連する様々な生理学的症状の改善として現れ得る。
【0091】
本発明の操作された細胞は、任意の適切な経路によって投与してよい。一般に、細胞は、静脈内注入によって投与される。
【0092】
がんを治療する方法
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法及び細胞は、がんの治療に使用するためのものである。免疫調節因子を分泌し、かつ免疫阻害性の腫瘍微小環境を変化させるpDCの能力は、がんを治療するのに特に有用であることが予想される。また、がん細胞は、細胞外抗原認識ドメインによって認識され得る特定の抗原を提示し、健康な細胞を避けて腫瘍部位に標的化療法を提供する。
【0093】
好ましい実施形態では、がんは、固形腫瘍である。本発明の細胞は、固形腫瘍の微小環境を標的とし、変化させるのに特に効果的であり得る。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の方法及び細胞は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性骨髄性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄発生性白血病(chronic myelogenous leukemia、CML)、慢性骨髄性白血病、慢性又は急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、有毛細胞白血病、ホジキン病、悪性リンパ増殖性疾患、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖障害(無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)を含む)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、形質細胞腫(形質細胞障害、孤立性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、髄外形質細胞腫、及び多発性形質細胞腫を含む)、POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群、高月病、及びPEP症候群としても知られる)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、小細胞又は大細胞型濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、T細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、又はワルデンストレームマクログロブリン血症、又はそれらの組み合わせの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、がんは、骨髄腫である。特定の一実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんは、白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、再発性又は難治性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)・非特定型、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、又は濾胞性リンパ腫から生じるDLBCLである。
【0095】
外因性構築物中の細胞外抗原認識ドメインは、治療されるべきがんの表面上に発現される抗原に結合するように選択される。例示的な細胞外抗原認識ドメインは、上に記載されている。
【0096】
いくつかの実施形態では、方法は、化学療法剤を投与するステップをさらに含む。特定の実施形態では、選択される化学療法剤は、リンパ球除去(プレコンディショニング)化学療法剤であり、好ましくは、本発明の細胞の前に投与される。このような化学療法剤の投与は、移植された細胞の生存を改善し得る。
【0097】
好ましい実施形態では、本発明の方法又は細胞は、がんの治療に使用するためのものであり、細胞は、腫瘍関連抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において抗腫瘍免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性キメラ抗原受容体又はsynNotch受容体を発現する、操作された幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である。
【0098】
本発明の治療方法において、操作された細胞は、がん又はその症状の1つ以上を治癒、緩和又は部分的に阻止するのに十分な量で、がんにすでに罹患している対象に投与される。このような治療処置は、寛解、安定化、転移の低減、又はがんの排除をもたらし得る。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。対象は、がんに罹患しており、かつ任意の適切な手段による養子細胞移入免疫療法に適していると特定されていてもよい。
【0099】
自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療する方法
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法及び細胞は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療に使用するためのものである。免疫調節因子を分泌し、かつ炎症組織又は自己免疫攻撃の部位を変化させるpDCの能力は、自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するのに特に有用であることが予想される。また、自己免疫疾患は、患者の免疫系によって標的とされる特定の自己抗原によって引き起こされることが多く、これらの自己抗原は、細胞外抗原認識ドメインによって認識され、炎症部位に標的化治療を提供することができる。同様に、炎症を起こしている、又は移植された特定の組織は、本発明の細胞における細胞外抗原認識ドメインを使用して標的とすることができる。
【0100】
(マウス喘息モデルにおける)pDCの枯渇が、T細胞媒介性過剰応答性をもたらし、その結果、寛容性の崩壊をもたらすため(Jan de Heer, 2004, J Exp Med, 200(1):89-98を参照)、操作されたpDCを炎症組織及び炎症性疾患の部位に標的化することが効果的であることが予想される。pDCはまた、同種異系幹細胞移植後の長期移植片生存に重要である(Peric et al. Biol Blood Marrow Transplant, 2015, 21(8)、Goncalves et al. Biol Blood Marrow Transplant, 21(7)、及びWaller et al. J Clin Oncol, 2014, 32(22)を参照)。また、pDCにおけるPD-L1/CD86の高発現は、肝移植寛容におけるT-regの増加と相関する(Tokita et al., Transplantation. 2008, 85(3):369-77を参照)。また、ドナーpDCの養子移入(術前)は、心臓移植の生存を大いに促進する(PMID: Bjorck et al. J Heart Lung Transplant, 2005, 24(8)及びAbe et al., Am J Transplant, 2005, 5(8)を参照)。
【0101】
特定の実施形態では、自己免疫疾患は、1型糖尿病、甲状腺自己免疫疾患(例えば橋本病及びグレーブス病)、アジソン副腎不全、卵巣炎、睾丸炎、リンパ球性下垂体炎、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性副甲状腺機能低下症、グッドパスチャー病、自己免疫性心筋炎、膜性腎症、自己免疫性肝炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、視神経脊髄炎からなるリストから選択される。
【0102】
特定の実施形態では、炎症性疾患は、嚢胞性線維症、慢性炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎又はクローン病、血管炎、特に川崎病、慢性気管支炎、炎症性関節炎疾患、例えば、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、及び全身型若年性関節リウマチ(SOJRA、スティル病)、移植片対宿主病、喘息、乾癬、全身性エリテマトーデス及び同種移植片拒絶からなるリストから選択される。
【0103】
特定の実施形態では、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、移植片拒絶又は移植片対宿主病(GVHD)である。本発明に従って治療されるべき例示的な臓器移植としては、腎臓、心臓、肺、肝臓、腸、膵臓及びランゲルハンス島が挙げられる。
【0104】
外因性構築物中の細胞外抗原認識ドメインは、治療されるべき疾患に関連する自己抗原を標的とするように選択される。標的とされるべき例示的抗原としては、以下が挙げられる(括弧内に治療されるべき関連疾患とともに): GAD65(1型糖尿病)、インスリノーマ関連タンパク質2-IA-2(1型糖尿病)、甲状腺ペルオキシダーゼ-TPO(甲状腺自己免疫疾患、橋本病及びグレーブス病)、サイロトロピン受容体-TSHR(甲状腺自己免疫疾患、橋本病及びグレーブス病)、副腎皮質刺激ホルモン受容体-ACTHR(アジソン副腎不全)、21-ヒドロキシラーゼ(アジソン副腎不全)、17-アルファ-ヒドロキシラーゼ(卵巣炎)、P450側鎖切断酵素(卵巣炎)、精子抗原(睾丸炎)、下垂体サイトゾルタンパク質(リンパ球性下垂体炎)、カルシウム感知受容体-CaSR(自己免疫性副甲状腺機能低下症)、NACHT LRR及びPYDドメイン含有タンパク質5-NALP5(自己免疫性副甲状腺機能低下症)、IV型コラーゲンのアルファ3鎖(グッドパスチャー病)、ミオシン(自己免疫性心筋炎)、M型ホスホリパーゼA2受容体-PLA2R(膜性腎症)、シトクロムP450 1A2(自己免疫性肝炎)、トロポミオシンアイソフォーム5-hTM5(潰瘍性大腸炎)、主要チモーゲン顆粒膜糖タンパク質2-GP2(クローン病)、ミエリン塩基性タンパク質-MBP(多発性硬化症)、ニコチン性アセチルコリン受容体-AChR(重症筋無力症)、アクアポリン-4-AQP4(視神経脊髄炎)。
【0105】
移植片拒絶を治療するために使用される場合、外因性構築物中の細胞外抗原認識ドメインは、適切な臓器を標的とするように選択される。標的とされるべき例示的抗原としては、以下が挙げられる(括弧内に関連臓器とともに): GAD65(膵臓又はランゲルハンス島)、インスリノーマ関連タンパク質2-IA-2(膵臓又はランゲルハンス島)、M型ホスホリパーゼA2受容体-PLA2R(腎臓)、ミオシン(心臓)、IV型コラーゲンのアルファ3鎖(肺)、シトクロムP450 1A2(肝臓)、主要チモーゲン顆粒膜糖タンパク質2-GP2(腸)、トロポミオシンアイソフォーム5-hTM5(腸)。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明の方法又は細胞は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療に使用するためのものであり、細胞は、自己抗原又は組織特異的抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞外抗原認識ドメインが標的細胞に結合すると細胞において抗炎症性免疫応答を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインとを含む外因性キメラ抗原受容体又はsynNotch受容体を発現する、操作された幹細胞由来の形質細胞様樹状細胞である。
【0107】
本発明の治療方法において、操作された細胞は、1つ以上の症状を治癒、緩和、又はその頻度を低減させるのに十分な量で、自己免疫疾患にすでに罹患している対象に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。対象は、自己免疫疾患に罹患しており、かつ任意の適切な手段による養子細胞移入免疫療法に適していると特定されていてもよい。
【0108】
本発明の細胞を生成する方法
操作されたpDCは、任意の適切な方法によって生成してよい。著しい量のpDCを生成するための例示的な方法は、WO2018/206577に提供される。本発明はまた、操作された形質細胞様樹状細胞を生成する方法を提供する。
【0109】
特定の実施形態では、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法は、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で前記HSPCを形質転換するステップ、
- 典型的には1つ以上のサイトカイン、増殖因子、インターフェロン(IFN)及び/又はアリール炭化水素受容体(AHR)アンタゴニスト(例えばステムレゲニン-1)を含み得る、1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ
を含む。
【0110】
特定の実施形態では、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法は、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 典型的には1つ以上のサイトカイン、増殖因子、インターフェロン(IFN)及び/又はアリール炭化水素受容体(AHR)アンタゴニスト(例えばステムレゲニン-1)を含み得る、1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ、
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で前記pDCを形質転換するステップ
を含む。
【0111】
したがって、特定の実施形態では、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法は、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 典型的には1つ以上のサイトカイン、増殖因子、インターフェロン(IFN)及び/又はアリール炭化水素受容体(AHR)アンタゴニスト(例えばステムレゲニン-1)を含み得る、1つ以上の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCは前駆体pDCに及びpDCに分化する、ステップ、及び
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で、分化前の前記HSPCを形質転換するか、又は分化後の前記pDCを形質転換するステップ
を含む。
【0112】
細胞の形質転換は、任意の適切な技術によって達成することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、外因性構築物は、ウイルス構築物である。いくつかの実施形態では、ウイルス構築物は、AAV構築物、アデノウイルス構築物、レンチウイルス構築物、又はレトロウイルス構築物である。構築物は、レポーター遺伝子、例えばGFP、mCherry、切断型EGFR、若しくは切断型tNGFRを含んでもよく、又はCAR若しくはsynNotchの細胞外ドメインは、構築物を有するpDCの選別を支援するためにエピトープを含有してもよい。いくつかの実施形態では、ウイルス構築物は、レンチウイルス構築物であり、形質導入は、レトロネクチン被覆プレートを使用して、又はレンチブースト(lentiboost)及び硫酸プロタミンを使用して行われる。
【0114】
好ましい実施形態では、CD34+ HSPCは、形質転換され、次いで、pDCに分化する。
【0115】
特定の実施形態では、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法は、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で前記HSPCを形質転換するステップ、
- サイトカイン及び増殖因子を含む第1の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCが前駆体pDCに分化する、ステップ、
- インターフェロン(IFN)を前記第1の培地に添加して、第2の培地を得るステップであって、それにより、前記前駆体pDCはpDCに分化する、ステップ
を含む。
【0116】
特定の実施形態では、操作された形質細胞様樹状細胞(pDC)を産生する方法は、
- 造血幹前駆細胞(HSPC)を提供するステップ、
- 標的細胞上の抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインを含む外因性構築物で前記HSPCを形質転換するステップ、
- サイトカイン及び増殖因子を含む第1の培地中で前記HSPCをインキュベートするステップであって、それにより、前記HSPCが前駆体pDCに分化する、ステップ、
- 幹細胞因子(SCF)及びステムレゲニン1(SR1)を第1の培地中に添加して、高収量の前駆体pDCを得るステップ、
- インターフェロン(IFN)を含む第2の培地を提供するステップ、
- 前記第2の培地中のインターフェロン(IFN)を、前駆体pDCを含む前記第1の培地に添加するステップであって、それにより、前記前駆体pDCは、変化して、第2の培地中の高収量の完全に活性化され分化したpDCを得、それにより、前記前駆体pDCはpDCに分化する、ステップ
を含む。
【0117】
好ましい実施形態では、前記第2の培地は、IFN-γ及び/又はIFN-βを含む。別の実施形態では、前記第2の培地は、IL-3をさらに含む。好ましくは、前記第2の培地は、IL-3、IFN-γ及びIFN-βを含む。
【0118】
前駆体pDCは、例えば、少なくとも24時間、前記第2の培地中でインキュベートしてもよい。好ましくは、前記前駆体pDCは、24~72時間、前記第2の培地中でインキュベートされる。
【0119】
一実施形態では、前記第1の培地は、Flt3リガンド、トロンボポエチン及び/又はインターロイキン-3を含む。別の実施形態では、前記第1の培地は、幹細胞因子及びステムレゲニン1をさらに含む。別の実施形態では、前記第1の培地は、幹細胞因子及びUM171をさらに含む。別の実施形態では、前記第1の培地は、ウシ胎児血清(FCS)を補充したRPMI培地をさらに含む。別の実施形態では、前記第1の培地は、無血清培地(SFEM)を含む。好ましくは、前記第1の培地は、Flt3リガンド、トロンボポエチン、SCF、インターロイキン-3及びステムレゲニン1を含む。
【0120】
HSPCは、例えば、21日間、前記第1の培地中でインキュベートしてもよい。
【0121】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、分化したpDCを濃縮するための免疫磁気ネガティブ選択のステップをさらに含む。
【0122】
「造血幹細胞」(HSC)は、本明細書で使用される場合、骨髄系統及びリンパ系統を含むすべての血液細胞型を生じさせることができる多能性幹細胞(multipotent stem cell)である。骨髄系統は、例えば、単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板及び樹状細胞を含み得るが、一方、リンパ系統は、T細胞、B細胞及びNK細胞を含み得る。
【0123】
好ましい実施形態では、HSCは、造血幹/前駆細胞(HSPC)である。HSC又はHSPCは、ヒトの骨髄に、例えば骨盤、大腿骨、及び胸骨に見出される。それらは、臍帯血及び末梢血にも見出される。
【0124】
幹/前駆細胞は、針及び注射器を使用して、腸骨稜で骨盤から採取することができる。細胞は、例えば、細胞の形態を観察するためのスミアを行うために、液体として取り出すことができ、又はそれらは、例えば、細胞の構造、又は細胞の相互の及び骨との関係を維持するために、コア生検によって取り出すことができる。
【0125】
HSC又はHSPCはまた、末梢血から回収してもよい。循環末梢血からHSC又はHSPCを回収するために、骨髄から出て血管内を循環するように細胞を誘導するサイトカインを、血液ドナーに注射することができる。サイトカインは、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、GM-CSF顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びシクロホスファミドからなる群から選択してもよい。それらは、通常、皮下脂肪組織への注射として、約4~6日間毎日投与される。
【0126】
HSC又はHSPCはまた、骨髄から回収又は精製してもよい。幹細胞は、末梢血中よりも骨髄中に10~100倍多く濃縮されている。寛骨(骨盤)は、体内で最も大量の活性骨髄及び多数の幹細胞を含有する。骨髄からの幹細胞の回収は、通常、手術室で行われる。
【0127】
HSC又はHSPCはまた、ヒト臍帯血(UCB)から精製してもよい。この方法では、血液は、赤ん坊が生まれた後すぐに臍帯から収集される。提供ごとに収集される幹細胞の量は非常に少ないため、これらの細胞は、通常、子供又は小さな成人に使用される。
【0128】
第1の培地は、分化培地であり、そこでHSCは、前駆体pDCに分化する。したがって、第1の培地は、分化因子を含む。
【0129】
HSCの前駆体pDCへの分化前に、HSCは、分化因子を含まない培養培地中で培養してもよい。培養培地には、従来の細胞培養成分、例えば血清、例えばウシ胎児血清、b-メルカプトエタノール、抗生物質、例えばペニシリン及び/又はストレプトマイシン、栄養素、及び/又は非必須アミノ酸を補充してもよい。従来の細胞培養成分はまた、従来のペニシリン及び/又はストレプトマイシンを補充した従来の無血清培地の代わりに使用することができる。
【0130】
HSCの前駆pDCへの分化を開始するために、分化因子、例えばFlt3リガンド、トロンボポエチン、並びに/又はインターロイキン-3、IFN-b及びPGE2から選択される少なくとも1つのインターロイキンが、培地に添加される。SCF及び/又はSR1も使用することができる。
【0131】
したがって、好ましい実施形態では、前記第1の培地は、Flt3リガンド、トロンボポエチン、並びに/又はインターロイキン-3、IFN-b及びPGE2から選択される少なくとも1つのインターロイキンを含む。より好ましくは、前記第1の培地は、Flt3リガンド、トロンボポエチン及び/又はインターロイキン-3を含む。別の好ましい実施形態では、第1の培地は、SCF及び/又はSR1を含む。
【0132】
適切な培養培地は、例えばWO 2018/206577のガイダンスを使用して、当業者によって調製することができる。
【0133】
HSPCは、ヒト細胞培養に典型的であり、かつ当業者に周知である条件下で、第1の培地中でインキュベートされる。細胞培養のインキュベーションのための典型的な条件は、例えば、温度37℃、湿度95%及び5%CO2である。
【0134】
一実施形態では、HSPCは、少なくとも1日間、例えば少なくとも2日間、少なくとも3日間、例えば少なくとも4日間、例えば少なくとも5日間、少なくとも6日間、例えば少なくとも7日間、例えば少なくとも8日間、少なくとも9日間、例えば少なくとも10日間、例えば少なくとも12日間、少なくとも14日間、前記第1の培地中でインキュベートされる。より好ましい実施形態では、培養物は、少なくとも16日間、例えば少なくとも18日間、少なくとも20日間、又は例えば少なくとも21日間、前記第1の培地中でインキュベートされる。
【0135】
HSCは、例えば、1週間、2週間、3週間又は4週間、前記第1の培地中でインキュベートしてもよい。好ましい実施形態では、前記HSPCは、21日間、前記第1の培地中でインキュベートされる。
【0136】
一実施形態では、第1の培地は、インキュベーション期間中にリフレッシュされる。培地は、例えば、インキュベーション期間中、2日ごと、3日ごと又は4日ごとにリフレッシュしてもよい。第1の培地は、好ましくは、本明細書中及び上に記載されるように、第1の培地の1つ以上の成分を含有する培地でリフレッシュされる。好ましくは、培地は、サイトカインを含む培地でリフレッシュされる。
【0137】
HSCが前駆体pDCに分化する、第1の培地中でのHSPCのインキュベーション後、IFNが第1の培地に添加され、それにより第2の培地を得る。
【0138】
あるいは、IFN、例えばI型IFN、II型IFN及び/又はIII型IFNを含む、第2の培地が提供される。
【0139】
一実施形態では、前記第2の培地は、IFN-α、IFN-γ及び/又はIFN-βを含む。
【0140】
好ましい一実施形態では、前記第2の培地は、IFN-γ及び/又はIFN-βを含む。好ましくは、前記第2の培地は、IFN-γ及びIFN-βを含む。
【0141】
別の好ましい実施形態では、前記第2の培地は、インターロイキン-3(IL-3)を含む。第1の培地がIL-3を含む実施形態では、IL-3は、例えばインターフェロンとともに、培地に再び添加してもよい。3つの成分は、任意の順序で添加できることが理解される。特定の好ましい実施形態では、前記第2の培地は、IFN-γ、IFN-β及びIL-3を含む。
【0142】
前駆体pDCは、ヒト細胞培養に典型的であり、かつ当業者に周知である条件下で、第2の培地中でインキュベートされる。細胞培養のインキュベーションのための典型的な条件は、例えば、温度37℃、湿度95%及び5%CO2である。
【0143】
一実施形態では、前記前駆体pDCは、前記第2の培地中で、少なくとも1時間、例えば少なくとも5時間、例えば少なくとも10時間、例えば少なくとも15時間又は例えば少なくとも20時間、前記第2の培地中でインキュベートされる。好ましい一実施形態では、前駆体pDCは、少なくとも24時間、前記第2の培地中でインキュベートされる。
【0144】
別の実施形態では、前記前駆体pDCは、前記第2の培地中で少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間又は少なくとも4日間インキュベートされる。
【0145】
総則
開示される製品及び方法の様々な適用が、当技術分野における具体的な必要性に合わせて適合され得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することだけを目的としており、限定することは意図されないことも理解すべきである。
【0146】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容が明確に他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのポリペプチド(a polypeptide)」への言及は、「複数のポリペプチド(polypeptides)」を含むなどである。
【0147】
特に禁止されない限り、本明細書に開示される方法のステップは、任意の適切な順序で実施してよく、ステップが列挙される順序は、限定するものと見なされるべきではない。
【0148】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0149】
[実施例1]
造血幹/前駆細胞HSPCを、CCR5に対するCas9酵素sgRNAからなるリボ核タンパク質(RNP)複合体で電気穿孔した。その後、細胞を、
図7Aに示される相同性指向性修復のためのCCR5相同性アームが隣接するCAR構築物を保有するアデノ随伴ウイルス6(AAV6)で形質導入した。続いて、細胞をSC-pDCに分化させた。
図7Bは、代表的なFACSプロットを示し、SC-pDCにおける抗CD19 CAR構築物の発現を示す(偽=AAV6ベクターを受けなかった細胞)。
図7Cは、3人のドナーについての抗CD19 CAR+ SC-pDCのパーセンテージを示すカラム図を示す。
【0150】
この実施例は、従来のCARが、pDC、特にCAR構築物で形質転換されたHSPCから分化したpDCにおいて発現され得ることを実証する。
【0151】
[実施例2]
細胞の30%が抗CD19 CARを発現するプライミングされたSC-pDC(RNP+ドナー)、又は構築物を発現しないSC-pDC(偽+ドナー)を、TLR7(R837)、TLR9(CpGA)に対するアゴニストで20時間刺激するか、又は無刺激のまま(UT)とした。
【0152】
その後、上清を回収し、生物活性のあるI型IFNを、市販のI型IFNバイオアッセイ(HEK-blue I型IFNレポーターバイオアッセイ)を使用して評価した。
【0153】
図8におけるデータは、I型IFN応答(pDC活性化の特徴の1つ)が、抗CD19 CARを発現するSC-pDCの集団において影響を受けないことを示す。
【0154】
[実施例3]
細胞の30%が抗CD19 CARを発現するSC-pDC(RNP+ドナー)、又は構築物を発現しないSC-pDC(偽+ドナー)を、I型及びII型IFNを補充した培地中で3日間プライミングするか(
図9A)、又はプライミングしないままとした(
図9B)。その後、細胞を、CD19+標的細胞株(NALM-6)と、1:1のエフェクター:標的の比率で共培養した。潜在的なバックグラウンドを排除するために、標的細胞を、エフェクター細胞なし(0:1)でも播種した。20時間後、上清を回収し、サイトカインIFN-ベータ、IL-6、CXCL10及びTNF-アルファのレベルを、Mesoscaleマルチプレックスサイトカインアッセイ(MSD)を使用して定量化した。データは、1人のドナーからのものである。
【0155】
データは、抗CD19 CARを発現するSC-pDCの集団が、標的細胞株を認識し、その後、活性化されて、IFN-ベータ及び炎症促進性因子(IL-6、CXCL10及びTNF-アルファ)を産生することを示す。
【0156】
[実施例4]
SC-pDCが、SynNotch成分で形質導入され、受容体及び応答要素の両方を首尾よく発現できることを確認するために、
図10に模式的に示されるように、SynNotch SC-pDCを生成した。
【0157】
臍帯血に由来する造血幹/前駆細胞(HSPC)を解凍し、3日間低密度で予備増殖させた。3日間の予備増殖後、100,000個の細胞を、
図11に示されるように、CD19-SynNotch受容体又はIL-12 SynNotch応答要素を保有するレンチウイルスで同時形質導入した。細胞を、レトロネクチン被覆プレートを使用して、又はレンチブースト及び硫酸プロタミンを使用して形質導入した。形質導入の24時間後、HSPCを洗浄し、pDC分化培地中に再懸濁し、pDC分化を開始した。16日間の培養後、pDCを単離し、特定の共培養セットアップを行った。
【0158】
図12は、SC-pDCが、SynNotch受容体及びSynNotch応答要素の両方を首尾よく発現することを示す。これらのデータ及び他の実施例のデータに基づいて、pDCはまた、細胞外抗原認識ドメインを有する代替の外因性構築物、特に代替の標的に対するCAR-T構築物及びSynNotch受容体を首尾よく発現し、さらにまた、代替の応答要素、特に代替の誘導性導入遺伝子を有するものを首尾よく発現することが予想される。これは、任意のそのような構築物が、本実施例に示されるのと実質的に同じ方法で、HSPCに形質導入され、pDCによって発現されることが予想されるためである。
【0159】
[実施例5]
SC-pDCによって発現されるSynNotch成分が機能できること、及びSynNotch SC-pDCが特定の細胞を標的とし、認識し、かつ特定の細胞を認識した際に応答、特に免疫応答を活性化するのに効果的であることを確認するため、先行する実施例に従って生成されたSynNotch SC-pDC細胞の活性化を分析した。
【0160】
プライミングされた及びプライミングされていないsynNotch SC-pDCを、様々な標的細胞と共培養し、synNotch受容体の活性化を、ELISAを使用してIL-12分泌を測定することによって分析した。標的:エフェクター細胞の比率は、5:1であった(すなわち、エフェクター細胞より5倍多くの標的細胞があった)。24時間後に上清を収集し、synNotch応答要素の活性化を、ELISAによってIL-12のレベルを分析することによって評価した。データは、
図13に示される。読み取り値が標準曲線の外側にあったため、データはOD値として示される。
【0161】
図13は、pDCをCD19+標的細胞(NALM6又はREH6)と接触させた場合の、応答要素の強力な活性化及びIL-12の分泌を実証するが、CD19陰性の非標的細胞(K562)と接触させた場合、又は細胞なしで培養した場合(単独)はそうではない。これらのデータは、synNotch受容体及び応答要素が、SC-pDCにおいて機能性であること、及びsynNotch成分を保有するSC-pDCが、標的細胞を認識し、細胞に結合すると免疫応答を活性化できることを確認する。これらのデータ及び他の実施例のデータに基づいて、代替の標的に対する代替の細胞外抗原認識ドメイン又はSynNotch受容体が使用される場合も、pDCは様々な細胞を首尾よく認識することが予想される。なぜならば、pDCにおけるそれらの発現が、本実施例に示されるものと実質的に同じであるからである。同様に、これらのデータ及び他の実施例のデータに基づいて、代替の構築物又は誘導性導入遺伝子が使用される場合、pDCはまた、代替の免疫応答を首尾よく活性化することが予想される。なぜならば、標的細胞結合及び応答誘導が、本実施例に示されるものと実質的に同じであるからである。最後に、本実施例に示されるIL-12の頑強で特異的な発現に基づいて、また、他の実施例のデータに基づいて、pDCは、疾患を治療するのに有用な免疫応答を活性化するのに効果的であることが予想される。
【0162】
[実施例6]
実施例4及び5に記載される形質導入及び活性化を、別のドナーからのHSPCを用いて繰り返した。実施例4に記載されるように、HSPCの形質導入、pDCへの分化、及び16日間の培養後、SC-pDCを単離し、プライミングし、その後、
図14に示されるように、synNotch受容体及び応答要素の発現を、pDC(系統陰性、CD11c陰性、CD303+細胞)で評価した。これらのデータは、pDCが首尾よく形質導入され、SynNotch受容体及びSynNotch応答要素の両方を首尾よく発現できることをさらに確認する。
【0163】
CD19+標的細胞との接触後のpDCの活性化を、ELISAを使用してIL-12分泌を測定することによって分析した。100,000個のプライミングされたpDCを、CD19+ NALM6若しくはREH6標的細胞、又は非標的細胞K562(対照)と、1:1及び1:3のエフェクター:標的の比率で共培養した。刺激の20時間後に上清を収集し、IL12のレベルを、ELISAを使用して分析した。データは
図15に示され、これは、1人のドナー及び生物学的三重反復についてのデータを示す。これらのデータは、pDCをCD19+標的細胞と接触させた場合の、応答要素の強力な活性化及びIL-12の分泌を示す。これらのデータはまた、活性化が用量依存的であることを示し、より多くの標的細胞を使用すると活性化及びIL-12の分泌がより大きくなる。これらのデータは、pDCが、標的細胞を認識し、細胞に結合すると免疫応答を活性化できることをさらに確認する。
【0164】
[実施例7]
実施例4及び5に記載される形質導入及び活性化を、別のドナーからのHSPCを用いて繰り返した。実施例4に記載されるように、HSPCの形質導入、pDCへの分化、及び16日間の培養後、SC-pDCを単離し、プライミングし、その後、
図16に示されるように、synNotch受容体及び応答要素の発現を、SC-pDC(系統陰性、CD11c陰性、CD303+細胞)で評価した。これらのデータは、pDCが首尾よく形質導入され、SynNotch受容体及びSynNotch応答要素の両方を首尾よく発現できることをさらに確認する。
【0165】
次いで、CD19+標的細胞の認識の際のSC-pDCの活性化を試験した。100,000個のSynNotch SC-pDC又は非形質導入SC-pDC(偽)を、U底96ウェルプレートに播種し、その後、様々なエフェクター:標的の比率、例えば1:1(100,000個のSC-pDC:100,000個の標的細胞)、1:2(100,000個のSC-pDC:200,000個の標的細胞)で標的細胞で覆った。標的細胞として、CD19+ NALM6又はREH6を使用した。非標的細胞として、CD19陰性K562細胞株を使用した。20時間の共培養後、上清を収集し、IL-12のレベルを、IL-12 ELISAを使用して評価した。データは
図17に示され、それらは、pDCをCD19+細胞と共培養すると誘導され、かつエフェクター:標的細胞の比率が高いほど増加する、頑強で特異的な応答を示す。これらのデータは、pDCが、標的細胞を認識し、細胞に結合すると免疫応答を活性化できることをさらに確認する。
【0166】
別段示されない限り、使用される方法は、標準的な生化学及び分子生物学の技術である。
【国際調査報告】