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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】砂の付着を低減するための生成物
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/22 20060101AFI20230901BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20230901BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20230901BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20230901BHJP
   C08G 18/54 20060101ALI20230901BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
B22C1/22 B
B22C1/00 B
B22C1/22 P
B22C1/10 E
C08G18/40 045
C08G18/54
C08G18/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023501326
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 DE2021100601
(87)【国際公開番号】W WO2022008007
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】102020118314.3
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516319588
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ASK CHEMICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】Reisholzstrasse 16-18, 40721 Hilden (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリーベ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター,マティアス
【テーマコード(参考)】
4E092
4J034
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092AA03
4E092AA04
4E092AA31
4E092AA32
4E092AA41
4E092AA48
4E092AA55
4E092AA60
4E092BA20
4E092CA01
4E092CA02
4E092CA04
4E092DA03
4E092GA01
4J034BA07
4J034BA09
4J034DA01
4J034DA05
4J034DB03
4J034DB07
4J034DB08
4J034DJ02
4J034DJ08
4J034DK00
4J034DK09
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA04
4J034RA11
(57)【要約】
本開示は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂と、ポリイソシアネートと、更に、エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体、又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体とに基づく、ポリウレタン結合剤を含む鋳型材料の混合物に関する。本開示は更に、イソシアネート成分と、フェノール酸に基づく及びポリウレタン結合剤とに関し、鋳型材料の混合物を用いて生成された中子、金型、又は押湯に関し、離型剤としてのポリブタジエン誘導体の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型材料の混合物であって、少なくとも
(a)1種の耐火性の鋳型基材と、
(b)ベンジルエーテル型のフェノール樹脂と、ポリイソシアネート又はポリイソシアネートの転化物とをそれぞれ含む1種の結合剤と、
(c)エポキシド基とヒドロキシル基とを含む1種のポリブタジエン誘導体、又は無水コハク酸基を含む1種のポリブタジエン誘導体
を含む
鋳型材料の混合物。
【請求項2】
前記ポリブタジエン誘導体は、無水コハク酸基を含み、
前記ポリブタジエン誘導体は特に、マイケル付加反応又はディールス-アルダー反応の形態でポリブタジエンに無水マレイン酸を付加することによって生成可能である
請求項1に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項3】
ポリブタジエン誘導体は、無水コハク酸基を有しており、ポリブタジエン分子につき、1~3の無水マレイン酸分子が、無水コハク酸基の形態でポリブタジエン鎖に付加される
請求項1又は2に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項4】
エポキシド基を有する前記ポリブタジエン誘導体のヒドロキシル基は、末端ヒドロキシル基を有するか、あるいは、エポキシド基を有する前記ポリブタジエン誘導体のヒドロキシル基は末端基であり、更に代替的には、前記ヒドロキシル基がポリイソシアネートで転化される
請求項1に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項5】
前記ポリブタジエン誘導体は、エポキシド基とヒドロキシル基とを有し、前記ポリブタジエン誘導体のエポキシド基は、分子につき、1.5~10、好適には2~8である
請求項1又は4に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項6】
前記ポリブタジエン誘導体は、鋳型材料の混合物に基づく各々の場合において、それぞれ0.0005~0.1重量パーセント、好適には0.001~0.08重量パーセント、更に好適には0.001~0.06重量パーセントの量で鋳型材料の混合物に含有される
請求項1~5のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項7】
前記ポリブタジエン誘導体は、前記結合剤を基準として、前記結合剤の推定溶媒を含めて、0.15~3.0重量パーセント、好適には0.25~2.0重量パーセント、更に好適には0.3~1.75重量パーセントの量で鋳型材料の混合物に含有される
請求項1~6のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項8】
前記ポリブタジエン誘導体の平均分子量(数平均)は、500~50000g/mol、好適には750~40000g/mol、更に好適には1000~20000g/mol、最も好適には1200~10000g/molである
請求項1~7のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項9】
前記ポリブチレン誘導体は、特に、イソシアネート成分の溶媒中に溶解した形態で用いられる
請求項1~8のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項10】
特にイソシアネート成分のための溶媒として、前記ポリブタジエン誘導体のための溶媒を更に含み、
前記溶媒は好適には、アルキル芳香族化合物、脂肪酸エステル、ケイ酸エステル、及びそれらの混合物から選択される
請求項1~9のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項11】
ベンジルエーテル型の前記フェノール樹脂の平均分子量(MW)は、600~1200g/mol、特に600~1000g/molである
請求項1~10のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項12】
耐火性の前記鋳型基材は、石英砂、ジルコニウム砂、又はクロム鉱砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、シャモット、ガラスビーズ、ガラス顆粒、ケイ酸アルミニウムの中空球、及びそれらの混合物のうちの1又は少数の部材から選択され、
それとは更に独立して、耐火性の前記鋳型基材を基準として、それらの混合物のうちの20重量パーセント超は、石英砂からなる
請求項1~11のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項13】
前記鋳型材料の混合物のうちの70重量パーセント超、好適には80重量パーセント超、更に好適には90重量パーセント超は、耐火性の鋳型基材である
請求項1~12のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項14】
耐火性の前記鋳型基材の平均粒径は、ふるい分析により測定して、100μm~600μm、好適には120μm~550μmである
請求項1~13のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項15】
少なくとも、相互に別個に存在する、
(i)ベンジルエーテル型のフェノール樹脂を含むポリオール成分と、
(ii)イソシアネート成分であって、
分子につき、2以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、
前記イソシアネート成分のための溶媒と、
エポキシド基、及び更にヒドロキシル基又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体と
を含むイソシアネート成分と
を含む
結合剤。
【請求項16】
分子につき、2以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、
前記イソシアネート成分のための溶媒と、
エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体と
を含む
イソシアネート成分。
【請求項17】
前記ポリオール成分、前記ポリブタジエン誘導体、及び前記イソシアネート成分のための溶媒は、更に相互に独立して、請求項1~11のいずれか一項によって更に特徴付けられる
請求項15又は16にそれぞれ記載の結合剤又はイソシアネート成分。
【請求項18】
前記ポリブタジエン誘導体は、前記イソシアネート成分に基づく各々の場合において、0.3~6.0重量パーセント、更に好適には0.5~4.0重量パーセント、最も好適には0.6~3.5重量パーセントの量で前記イソシアネート成分に含有される
請求項16又は17に記載のイソシアネート成分。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のポリオール成分、イソシアネート成分、ポリブタジエン誘導体、及び耐火性の鋳型基材を結集し、特にPUコールドボックス法により、第三級アミンを添加して硬化させることにより、金型、中子、又は押湯を製造する方法。
【請求項20】
エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体、又は離型剤、特に鋳造鋳型又は中子のための内部離型剤としての無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体の使用であって、
前記鋳造鋳型又は前記中子は、特にポリイソシアネートと、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂とを含む結合剤を用いることによって製造される
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[導入]
本開示は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂と、ポリイソシアネートと、更に、エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体、又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体とに基づく、ポリウレタン結合剤を含む鋳型材料の混合物に関する。本開示は更に、イソシアネート成分と、フェノール樹脂に基づく及びポリウレタン結合剤とに関し、中子、鋳造鋳型、又は押湯に関し、それぞれ離型剤又は砂の付着を低減するための剤としてのポリブタジエン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[背景技術及び従来技術]
PUCB及び/又はPUNB工程による中子及び金型の製造は、鋳造産業において非常に重要になっている。二成分ポリウレタン系が用いられることによって、耐火性の鋳型基材を結合している。ポリオール成分は、分子につき、2以上のOH基を有する1種のポリオールからなり、イソシアネート成分は、分子につき、2以上のNCO基を有する1種のポリイソシアネートからなる。特に、フェノールホルムアルデヒド樹脂は、ポリオール成分として用いられる。PUCB工程の場合においては、鋳型材料の混合物とも略称される、少なくとも鋳型基材と結合剤との混合物の硬化は、低沸点の第三級アミンを用いて行われ、第三級アミンは、ガス状の形態又はエーロゾルとして鋳造後に鋳型材料の混合物を通して案内される(特許文献1参照)。上述は、通常、担体気体、例えば、大気、窒素、又はCOを用いて行われ、担体気体において、1以上の第三級アミンが計量して供給される。PUNB工程の場合、液体の第三級アミン及び/又は金属化合物の添加は、触媒として鋳型材料の混合物に作用する。
【0003】
ポリブタジエン及びポリブタジエンの誘導体は、フェノール樹脂の改質剤として、特許文献2又は特許文献3にそれぞれ提示されている。ポリブタジエン及びポリブタジエンの誘導体は、本質的に、軟化剤の機能を満たしている。ベンジルエーテル樹脂は、記載されていないし、フェノール樹脂をポリイソシアネートで転化して結合剤を得ることも、記載されていない。
【0004】
特許文献4は、ビニルの含有量が40%を超え、分子量Mが5000~50000g/molの高ビニル性の1,3-ブタジエン誘導体を含有する鋳造用結合剤が記載されている。鋳造用結合剤は、砂と混合され、乾燥剤及び/又は過酸化物によって、部分的に高温にして酸化的に硬化される。フェノール樹脂又はイソシアネートは、添加されていない。
【0005】
油ゴムに基づく添加剤は、特許文献5により、金型の付着傾向及び中子取りにおける中子の付着傾向を低減させることで知られている。当該文献においては、本開示の背景について、鋳型材料の混合物に有機添加剤を添加して、鋳造表面を改善する水ガラス結合型の金型が周知であることを説明している。列挙すると、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンといったポリオレフィン、例えば、酢酸ビニル又はスチレンといった更なる共重合体用単量体を有する、例えばエチレン及び/又はプロピレンといったオレフィンの共重合体、及び/又は例えば、ブタジエンといったジエン単量体が、好適な有機添加剤として述べられている。同一の情報は、特許文献6に更に見出される。しかしながら、ポリブタジエンは、本開示の観点において誘導体化されていない。
【0006】
ウレタン結合型の鋳型材料の構成成分としての離型剤は、特許文献7に記載されている。離型剤は、ポリブタジエン鎖の両端にアルコール基を有する改質型のポリブタジエンである。特に、各々の場合において、フェノール性のヒドロキシル基であることが特定されている。芳香族のジイソシアネート及びフェノール樹脂は、結合剤成分として提示されている。フェノール改質型のポリブタジエンは、分子の両端にアルコールヒドロキシル基を有するポリブタジエンが、分子の両端又は一端でイソシアネート基を形成することにより、ジイソシアネート化合物で最初に転化することで生成される。次いで、分子における2以上のフェノール性の基幹部分を有する化合物により、転化が行われる。フェノール改質型のポリブタジエンの数平均分子量は、500~10000g/molであることが好適である。用いられるジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、MDI重合体、又はヘキサメチレンジイソシアネートといった脂肪族ポリイソシアネートである。ビスフェノールF及びビスフェノールAといったビスフェノール、トリスフェノール及びテトラフェノールといったフェノールオリゴマ、ノボラック型のフェノール樹脂、レゾール型のフェノール樹脂、及びベンジルエーテル型のフェノール樹脂は、2以上のフェノール性の基幹部分を有する化合物の例である。上述は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3409579号明細書
【特許文献2】欧州特許第2310434号明細書
【特許文献3】米国特許第9102778号明細書
【特許文献4】米国特許第4321186号明細書
【特許文献5】国際公開第2018/177480号
【特許文献6】国際公開第2014/059969号
【特許文献7】特開2003-181594号公報
【特許文献8】米国特許第3485797号明細書
【特許文献9】欧州特許第1137500号明細書
【特許文献10】米国特許第4268425号明細書
【特許文献11】米国特許第5447968号明細書
【特許文献12】米国特許第4540724号明細書
【特許文献13】欧州特許第2374320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[本開示の目的]
本開示の目的は、中子又は金型の製造中において、特に中子取りにおける砂の付着を低減する鋳型材料の混合物を提供することである。鋳型材料の混合物を用いることによる、鋳型材料の混合物又は金型又は中子の製造はそれぞれ、わずかな洗浄労力しか要しないため、更に生産的にでき、選択的には、当該方法で製造される金型及び中子の表面の改善に更に導くことができる。したがって、本開示の目的は、良好な内部離型剤を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、独立請求項の主題によって解決された。更なる開発の利点は、従属請求項の主題であるか、あるいは以下に記載している。本開示による鋳型材料の混合物は、少なくとも
(a)1種の耐火性の鋳型基材と、
(b)ベンジルエーテル型のフェノール樹脂と、ポリイソシアネート又はポリイソシアネートの転化物とをそれぞれ含む1種の結合剤と、
(c)エポキシド基とヒドロキシル基とを含む1種のポリブタジエン誘導体、又は無水コハク酸基を含む1種のポリブタジエン誘導体
を含む。
【0010】
したがって、本開示の目的は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂とポリイソシアネートとを結合剤として含む、鋳型材料の混合物の一部としてのポリブタジエン誘導体の使用である。独立して又は共同で、エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体は、以下においては、単に「ポリブタジエン誘導体」と更に称される。
【0011】
本開示の目的は更に、2以上の成分を含む結合剤であり、相互に別個に存在する、
(i)1以上のベンジルエーテル型のフェノール樹脂を含むポリオール成分と、
(ii)イソシアネート成分であって、
分子につき、2以上のイソシアネート基を含む1以上のポリイソシアネートと、
エポキシド基及びヒドロキシル基を有する1以上のポリブタジエン誘導体又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体と、
ポリイソシアネート及びポリブタジエン誘導体のための溶媒と
を含むイソシアネート成分と
を含む。
【0012】
したがって、本開示の目的は、結合剤成分に加えて、イソシアネート成分の一部としてポリブタジエン誘導体を含有する更なる結合剤である。
【0013】
本開示の目的は更に、
分子につき、2以上のイソシアネート基を含む1以上のポリイソシアネートと、
エポキシド基及びヒドロキシル基を有する1以上のポリブタジエン誘導体又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体と
ポリイソシアネート及びポリブタジエン誘導体のための溶媒と
を含む
イソシアネート成分である。
【0014】
ポリブタジエン誘導体においては、ポリブタジエンは主鎖を形成し、ブタジエンモノマー単位は、シス型結合(1,4位で組み込み)、トランス型結合(1,4位で組み込み)、及び/又はビニル結合(1,2位で組み込み)できる。
【0015】
ポリブタジエン誘導体の平均分子量(数平均)は、例えば、500~50000g/mol、好適には750~40000g/mol、更に好適には1000~20000g/mol、最も好適には1200~10000g/molである。
【0016】
ポリブタジエンは、主鎖中の二重結合の比例的な転化である、
エポキシド基を得るための比例的な二重結合のエポキシド化、又は
無水コハク酸基を得るための無水マレイン酸のポリブタジエンの二重結合への比例的な付着
によって誘導体化される。
【0017】
無水マレイン酸の付加は、以下に記載のマイケル付加反応の形態で、かつ/あるいは、二重結合の異性化後のディールス-アルダー反応の形態で行うことができる。
【0018】
【化1】
【0019】
式中における、ポリブタジエン主鎖のブタジエン単位を1つのみ以下に例示する(無水コハク酸基と更に称する)。
【0020】
【化2】
【0021】
例えば、ポリブタジエン分子につき、1~3の無水マレイン酸分子がポリブタジエン鎖の非転化二重結合に加えて、特に無水コハク酸基の形態で、好適にはマイケル付加反応によって、ポリブタジエン鎖に付加される。
【0022】
本開示の更なる代替によると、ポリブタジエン誘導体は、エポキシド基及びヒドロキシル基、特に末端ヒドロキシル基を有する。
【0023】
上述の構造例は、以下のとおりである。
【0024】
【化3】
【0025】
イソシアネート成分においては、OH基は、ポリイソシアネートと転化できる。しかしながら、一般的には、触媒が存在せず、温度処理がない場合、OH基はポリイソシアネートと転化しないと推定される。
【0026】
エポキシド基は、場合によってはエポキシ基と更に称され、好適にはシス型及び/又はトランス型に1,4位に組み込まれたブタジエン基の二重結合に付加される。当該製品は、Cray Valley社から市販されている。ポリブタジエン誘導体は、エポキシ化ポリブタジエンと更に称する場合がある。
【0027】
ポリブタジエン誘導体は、例えば分子につき、1.5~10、好適には2~8のエポキシド基を有する。したがって、ポリブタジエンの二重結合は、比例的にのみ転化される。ポリブタジエンは、主鎖を形成する。
【0028】
更に、ポリイソシアネートの1以上のNCO官能基を維持すべく、ポリイソシアネート(例えば、TDI)のヒドロキシル基への結合を行うことができる。
【0029】
ポリブタジエン誘導体は、好適には溶媒、特にイソシアネート成分の溶媒に溶解される。
【0030】
更に、ポリブタジエン誘導体を、それぞれ溶液又は乳濁液/分散液又は純粋なポリブタジエン誘導体の形態で、第3成分として、鋳型材料の混合物に別個に添加することが可能である。溶液として用いる場合、同一の溶媒を用いることができ、イソシアネート成分に更に用いられる。乳濁液/懸濁液として用いる場合、乳化剤を添加できる。
【0031】
用いられるポリブタジエン誘導体の量は、以下のように規定できる。
【0032】
イソシアネート成分におけるポリブタジエン誘導体の量(イソシアネート成分における量に限る)は、好適には0.3~6.0重量パーセント、更に好適には0.5~4.0重量パーセント、最も好適には0.6~3.5重量パーセントである。ポリオール成分へのポリブタジエン誘導体の同時又は単独の添加は、好適性が低い。
【0033】
用いられる結合剤(溶媒を含む場合には、溶媒を含む結合剤)に対して用いられるポリブタジエン誘導体の量は、好適には0.15~3.0重量パーセント、更に好適には0.25~2.0重量パーセント、最も好適には0.3~1.75重量パーセントである。
【0034】
全ての実施形態によると、鋳型材料の混合物に基づくポリブタジエン誘導体の量は、好適には0.0005~0.1重量パーセント、更に好適には0.001~0.08重量パーセント、最も好適には0.001~0.06重量パーセントである。
【0035】
耐火性の鋳型基材は、融点(融解温度)が高く、粒状形態で存在する材料である。耐火性の鋳型基材の融点は、600℃を超える。耐火性の鋳型基材は、好適には鋳型材料の混合物のうちの80重量パーセント超を占める。耐火性の鋳型基材の平均径は、一般的には100~600μmである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[本開示の詳細な説明]
従来用いられている全てのフェノール化合物は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂を生成するのに好適である。非置換型のフェノールに加えて、置換型のフェノール又はそれらの混合物を用いることができる。フェノール化合物は、好適には双方のオルト位又は一方のオルト位のいずれかが置換されておらず、パラ位において置換されていない。残余の環炭素原子は、置換できる。置換型のフェノールの例は、アルキル置換型、アルコキシ置換型、アリール置換型、及びアリールオキシ置換型のフェノールである。
【0037】
-CH-の結合のフェノール単位に加えて、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂の基本構造は、必然的に-CH-O-CH-の結合のフェノール単位を有し、(ホルムアルデヒドでのみ転化された生成物について)例示的な方法においては、以下のように例示できる。
【0038】
【化4】
【0039】
個別の当該単位は、一般的には統計的に分布される。上述によって、Rは各々の場合において(特に、m及びnについて)独立しており、水素又はヒドロカルビルであり、特にアルキル-、又は炭素原子数が1~26、好適には炭素原子数が1~15(飽和型又は不飽和型、直鎖型又は分枝鎖型)の-O-ヒドロカルビルの置換基であり、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位、メタ位、又はパラ位にあり、m及びnの合計は2以上であり、m/nの比率は、好適には1以上であり、Rは独立しており、水素、-CHOH、又は-CHO-Rであり、Rは炭素原子数が1~9の炭化水素である。基Rは、直鎖型又は分枝鎖型、飽和型又は不飽和型にできる。ベンジルエーテル型のフェノール樹脂において、最大25モル%の-CHOH基をエーテル化できる。
【0040】
好適なフェノール化合物の例は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,4,5-トリメチルフェノール、3-エチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、p-ブチルフェノール、3,5-ジブチルフェノール、p-アミルフェノール、シクロヘキシルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、ジノニルフェノール、3,5-ジシクロヘキシルフェノール、p-クロチルフェノール、p-フェニルフェノール、3,5-ジメトキシフェノール、カルダノール、カルドール、及びp-フェノキシフェノールである。特に、フェノールに加えて、1又は複数の置換型のフェノールが共重合体用単量体として用いられる。
【0041】
好適な多価フェノール性の化合物は、2~4のフェノール性のヒドロキシル基を有する。好適な多価フェノールの具体例は、ピロカテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、2,5-ジメチルレゾルシン、4,5-ジメチルレゾルシン、5-メチルレゾルシン、又は5-エチルレゾルシンである。別個の一価フェノール及び多価フェノール並びに/若しくは置換型のフェノール並びに/又は縮合フェノールの混合物は、ベンジルエーテル樹脂の生成に用いることが更にできる。
【0042】
フェノールそのものは、特に好適である。更なる高縮合のフェノール、例えばビスフェノールAは、好適である。2以上のフェノール性のヒドロキシル基を有する多価フェノールは、更に好適である。
【0043】
ホルムアルデヒドは一般的に、アルデヒドとして用いられ、その水性形態においては、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンとして用いられる。ホルムアルデヒドに加えて、以下の式のアルデヒドは、フェノール樹脂の生成のための更なるアルデヒドとして、更に好適である。
【0044】
【化5】
【0045】
上述の式において、Rは、好適には2~8、特に好適には2又は3の炭素原子を有する炭素基である。具体的な例は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フルフルアルデヒド、及びベンズアルデヒドである。
【0046】
Mn、Zn、Cd、Mg、Co、Ni、Fe、Pb、Ca、及びBaといった金属の二価イオンの塩、特にZn塩は、触媒であり、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂を生成するのに好適である。酢酸亜鉛は、好適に用いられる。一般的な金属触媒の量は、フェノール化合物及びアルデヒド化合物の総量を基準として、0.02~0.3重量パーセント、好適には0.02~0.18重量パーセントである。
【0047】
フェノール化合物のモル数を基準として、当量以上のアルデヒド化合物は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂を得るために用いられる。フェノールに対するアルデヒドのモル比は、好適には1.05:1.0~2.5:1、更に好適には1.1:1~2.2:1、最も好適には1.2:1~2.0:1である。
【0048】
ベンジルエーテル型のフェノール樹脂の生成は、当該技術分野の当業者に周知の工程に従って行われる。当該工程によって、フェノール化合物及びアルデヒド化合物は、好適には130℃未満の温度で、二価金属イオンの存在下で転化される。得られた水は留去する。当該目的のために、好適な添加溶剤、例えばトルオール又はキシロールを反応混合物に添加できるか、あるいは蒸留は、減圧下で行われる。
【0049】
ベンジルエーテル型のフェノール樹脂は、例えば、特許文献8及び特許文献9に記載されており、その開示は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂自体、及びその生成に関して明示的に参照され、その開示は更に、上述の点において本出願の対象となる。
【0050】
ベンジルエーテル型のフェノール樹脂の平均分子量(MW)は、特にDIN 55672-1に従って測定して、好適には600~1200g/mol、特に600~1000g/molである。
【0051】
結合系のイソシアネート成分は、脂肪族、脂環式、又は芳香族のイソシアネートの単量体又は重合体を含み、好適には、分子当たり平均2~5のイソシアネート基を有する。所望の特性に応じて、イソシアネートの混合物は、更に用いられる場合がある。
【0052】
好適なイソシアネートは、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族のイソシアネート、例えば4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのような脂環式のイソシアネート、及びそのジメチル誘導体を含む。好適な芳香族イソシアネートの例は、トルオール-2,4-ジイソシアネート、トルオール-2,6-ジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びそれらのメチル誘導体、並びにポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。好適なイソシアネートは芳香族のイソシアネートであり、特に好適なのは、例えば、工業用の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートといったポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、すなわち、異性体及び高級同族体の一部を有する4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0053】
イソシアネートは、イソシアネート基の一部がビウレット基、アロファネート基、ウレトジオン(uretidone)基、又はカルボジイミド基に誘導体化されるように、二価イソシアネートが相互に転化されるという点で誘導体化できる。対象は、例えば、ウレトジオン基を有する二量化生成物、例えばMDI又はTDIである。しかしながら、当該基型の誘導体化イソシアネートは、好適には上記の非誘導体化イソシアネートに加えて、1つの成分としてのみ用いられる。
【0054】
イソシアネートは、好適にはイソシアネート基の数がポリオール成分又はベンジルエーテル型のフェノール樹脂における、遊離ヒドロキシル基の数を基準として、80~120%となるような量で用いられる。
【0055】
一実施形態によると、ポリオール成分における50重量パーセント超のポリオール、特に80重量パーセント超のポリオール、及び全ての更なるポリオールは、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂である。
【0056】
イソシアネート成分は、イソシアネート成分のための有機溶媒を有する。溶媒は例えば、結合剤の成分を十分に低粘度の状態に保持するために必要となる場合がある。ポリブタジエン誘導体は、均質に溶解すべきであり、安定な様式(例えば、防霜様式)で溶解すべきである。
【0057】
アルキル芳香族化合物は、好適であり、アルキル基は、1又は複数の炭素原子数が1~20の炭化水素基である。例えば、ベンゾールに基づき、芳香環は、例えば、1又は複数のアルキル基及び/又はアルキレン基で置換され、当該アルキル基及び/又はアルキレン基の鎖長は、各々の場合において、炭素原子数が1~20、好適には3~16である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖の場合もあり、又は分枝鎖での場合もある。例を挙げると、例えば、solvesso 100又はsolvesso 150 NDといったナフサ溶剤である。
【0058】
アルカン含有溶媒/アルケン、例えばパラフィン系の溶媒、石油エーテル、及び石油蒸留留分は、上述のアルキル芳香族化合物に加えて、溶媒として、特に共溶媒として同様に好適である。
【0059】
飽和型又は不飽和型、直鎖型又は分枝鎖型の炭素原子数が6~32の脂肪酸を、直鎖型又は分枝鎖型の炭素原子数が1~8のモノアルコールと転化することにより得ることができる脂肪酸エステルは、イソシアネート成分のための溶媒として更に好適である。当該例を挙げると、脂肪酸メチルエステル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、及びオレイン酸ブチルエステルである。
【0060】
ケイ酸エステル、特にオルトケイ酸のエステルは、イソシアネート成分のための溶媒として更に好適であり、各々のアルコール基の炭素原子は1~6である。単量体又は重合体のテトラエチルケイ酸エステルは、例えば、ケイ酸エステルについてのものである。
【0061】
上述の溶媒は、イソシアネート成分において相互に混合物として更に用いることができる。
【0062】
イソシアネート成分のための溶媒は、好適にはイソシアネート成分を基準として、5~40重量パーセント、更に好適には10~35重量パーセント、最も好適には12~30重量パーセントの量で用いられる。
【0063】
好適には、イソシアネート成分のうちの95~60重量パーセント、更に好適には90~65重量パーセント、最も好適には88~70重量パーセントは、ポリイソシアネートである。
【0064】
例えば、上述のアルキルベンゾール、脂肪酸エステル、又はケイ酸エステルは、ポリオール成分のための有機溶媒として好適である。
【0065】
酸素原子の多い極性のある有機溶媒は、更に用いられる場合がある。特に、ジカルボン酸エステル、グリコールエーテルエステル、グリコールジエステル、環式ケトン、環式エステル(ラクトン)、環式カーボネート、若しくはケイ酸エステル、又はそれらの混合物は好適である。ジカルボン酸エステル、環状ケトン、及び環状カーボネートは、好適に用いられる。
【0066】
一般的なジカルボン酸エステルは、RO(O)C-R-C(O)ORの式を有し、R1は、各々が相互に独立して、1~12、好適には1~6の炭素原子を有するアルキル基を示す(特に、2番目のR、及びRは、炭素原子が1~7個の直鎖型又は分枝鎖型の炭化水素基である)。例を挙げると、炭素原子が4~6のカルボン酸のジメチルエステルであり、DuPont社から、例えば、「Dibasic Ester」(二塩基エステル)の名称で入手可能である。
【0067】
一般的なグリコールエステルは、R-O-R-O(O)CRの式の化合物であり、Rは、炭素原子が1~4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子が2~4の炭化水素基であり、Rは、炭素原子が1~3のアルキル基であり、例えば、ブチルグリコールアセテート、グリコールエーテルアセテートが好適である。
【0068】
したがって、一般的なグリコールジエステルは、RC(O)O-R-O(O)CRの一般式を有し、R~Rは上述のように定義されるものあり、基は各々の場合において、相互に独立して選択される(例えば、プロピレングリコールジアセテート)。グリコールジアセテートは、好適である。グリコールジエーテルは、R-O-R-O-Rの式によって特徴付けることができ、R~Rは、上述のように定義されるものであり、基は各々の場合において、相互に独立して選択される(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)。
【0069】
一般的な環式ケトン、環式エステル、及び炭素原子が4~5の環式カーボネートは、同様に更に好適である(例えば、炭酸プロピレン)。炭素は、分枝鎖型又は非分枝鎖型に結合でき、飽和型又は不飽和型の形態で存在できる。
【0070】
溶媒は、ポリオール成分を基準として、好適には10~70重量パーセント、更に好適には26~55重量パーセント、最も好適には41~50重量パーセントの量で用いられる。
【0071】
既に言及した成分に加えて、結合系は、更なる添加剤、例えば、シラン(例えば、特許文献9による)、乾燥油(例えば、特許文献10による)、錯化剤(例えば、特許文献11による)、例えば、ケイ素界面活性剤といった流動性向上剤、及び加工時間を延長するための添加剤(例えば、特許文献12による)、又はそれらの混合物を含有できる。
【0072】
本開示は更に、鋳型材料の混合物から硬化後に製造される中子、金型、及び押湯に関する。金属鋳造、特に鉄及びアルミニウム鋳造のための中子、鋳型及び押湯の使用は、更に本開示の対象である。
【0073】
一般的な周知の材料及びそれらの混合物は、鋳造鋳型の製造のための耐火性の鋳型基材(以下、約言して鋳型基材)として用いることができる。例えば、石英砂、ジルコニウム砂、クロム鉱砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、シャモット、及びいわゆる人工鋳型基材が好適であり、したがって、工業的な鋳造工程によって球形又は略球形(例えば楕円形)の形態にされた鋳型基材が好適である。上述についての例は、ガラスビーズ、ガラス顆粒、又はいわゆるCerabeads(登録商標)であるとともに、Spherichrome(登録商標)、Spherox(登録商標)、又はCARBOACCUCAST(登録商標)である人工的で球状のセラミック性の砂、及び中空の微小球であり、上述は、特に例えば、ケイ酸アルミニウムの中空球(いわゆる微小球)のようなフライアッシュから、例えば成分として単離できる。上述の耐火性の材料の混合物は、同様に更に採用可能である。
【0074】
耐火性の鋳型基材は、用いられる耐火性の鋳型基材を基準として、特に20重量パーセントを超える石英砂、更に好適には40重量パーセントを超える石英砂、最も好適には60重量パーセントを超える石英砂を含む。
【0075】
耐火性の鋳型基材は、融点(融解温度)の高い材料であると理解されたい。耐火性の鋳型基材の融点は、好適には600℃を超え、好適には900℃を超え、更に好適には1200℃を超え、最も好適には1500℃を超える。
【0076】
耐火性の鋳型基材は、好適には鋳型材料の混合物のうちの80重量パーセント超、特に90重量パーセント超、更に好適には95重量パーセント超を占める。
【0077】
耐火性鋳型基材の平均径は、一般に100μm~600μm、好適には120μm~550μm、更に好適には150μm~500μmである。粒径は、例えば、DIN ISO 3310に従ったふるい分けによって決定できる。特に好適な粒子形状は、最小長さの幅に対する最大長さの幅(相互に直角であり、各々の場合において、全ての空間方向についての最小長さの幅に対する最大長さの幅)は、1:1~1:5又は1:1~1:3である。言い換えると、例えば、繊維状ではないものである。
【0078】
耐火性の鋳型基材は、好適には特に、従来の中子の射出成形機(shooting machine)において本開示による鋳型材料の混合物を処理することができるように、自由流動状態を有する。
【0079】
好適な触媒は、第三級アミンであり、別個に又は組み合わせて用いることができる。更に、例えば特許文献13に記載されているように、異なる第三級アミンを順次使用することが可能である。トリメチルアミン(「TMA」、CAS登録番号75-50-3)、ジメチルエチルアミン(「DMEA」、CAS番号75-64-9)、ジメチルイソプロピルアミン(「DMIPA」、CAS番号996-35-0)、ジメチルプロピルアミン(「DMPA」、CAS登録番号926-63-6)、及びトリエチルアミン(「TEA」、CAS登録番号121-44-8)などの揮発性の第三級アミンは、PUCB工程に用いられる。
【0080】
液体の第三級アミンは、PUNB工程に用いられる。室温(25℃)においては、上述は、液体の第三級アミン、及び例えば40℃に加熱した後に液体になるもの、又は好適な溶媒に溶解したものを含む。例を挙げると、トリス(3-ジメチルアミノ)プロピルアミン、イソキノリン、アリールピリジン、例えばフェニルピリジン、ピリジン、アクリジン、2-メトキシピリジン、ピリダジン、3-クロロピリジン、キノリン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、4,4’-ジピリジン、4-フェニルプロピルピリジン、1-メチルベンゾイミダゾール、N-ビニルイミダゾール、及び1,4-チアジンである。
【0081】
更に、本開示は、金型又は中子の製造方法に関し、
(a)鋳造鋳型又は中子を得るために、耐火性の鋳型基材を、本開示による結合剤(少なくともベンジルエーテル型のフェノール樹脂とイソシアネート)に、耐火性の鋳型基材の量及び後に別個に添加される触媒の量を基準として、0.2~15重量パーセント、好適には0.3~14重量パーセント、更に好適には0.4~12重量パーセントの結合量で混合する工程と、
(b)工程(a)で得られた鋳型材料の混合物を鋳造工具に導入する工程と、
(c)後に別途添加される触媒を添加し、中子又は鋳造鋳型を得るために、本開示の触媒により、鋳造工具において、鋳型材料の混合物を硬化させる工程と、
(d)次いで中子又は鋳造鋳型を当該工具から分離し、選択的に更なる硬化を行う工程と
を含む。
【0082】
ポリブタジエン誘導体は、イソシアネート成分と共に添加されない(次段階で、溶媒を含有する)か、又は結合剤と共に添加されない場合、それぞれ、結合剤の前後に、溶液又は乳濁液/懸濁液に添加でき、そうでない場合は、ポリブタジエン誘導体は、それぞれ、結合剤又はイソシアネート成分の一部である。
【0083】
鋳型材料の混合物の製造のために、結合系の成分は、最初に一体化でき、次いで、耐火性の鋳型基材に添加できる。しかしながら、結合剤の成分を、耐火性の鋳型基材に、同時に、又は任意の順序で順次添加することも可能である。
【0084】
一般的な方法は、鋳型基材の成分の均一な混合を達成するために用いることができる。更に、鋳型基材の混合物は任意に、酸化鉄、粉砕した亜麻繊維、おが屑のペレット、ピッチ、及び耐火性の金属といった他の従来の成分を含むことができる。
【0085】
PUCB工程又はPUNB工程による硬化が行われ、PUCB工程が好適である。PUCB工程の場合においては、低沸点の第三級アミンは、硬化のために不活性な搬送気体によって、気体の形態で、あるいはエアゾールとして成形された鋳型材料の混合物に導かれる。全ての周知のコールドボックスのアミン触媒は、用いることができる。PUNB工程の場合においては、アミン又は金属触媒は、結合系に事前に溶解できるか、あるいは別個の成分として耐火性の材料に添加でき、添加量は、耐火性の材料における結合剤の総含有量を基準として、約0.1重量パーセント~約5重量パーセントである。
【0086】
当該方法によって製造された鋳型の形状は、それ自体、鋳造分野で一般的な任意なものにできる。好適な実施形態においては、鋳型は、鋳造鋳型、中子、又は押湯の形状で存在する。上述は、機械的安定性が高いことに特徴づけられる。
【0087】
本開示は更に、金属鋳造、特に鉄及びアルミニウム鋳造のための当該鋳型の使用に関する。
【0088】
以下、本開示は、好適な実施形態又は実験例を基準として詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0089】
[実験の部]
全ての規格は重量パーセントとする。
【0090】
[使用した材料]
KATALYST 706:ジメチルプロピルアミン 供給業者:ASK Chemicals社
石英砂:H32 供給業者:Quarzwerke社
Lupranat M 20 S:高分子MDI、機能性2,6 供給業者: BASF社
直鎖アルキルベンゾール:炭素原子数が10~13のアルキルベンゾール 供給業者:ISU社
石油 芳香族化合物、アルカン、及びシクロアルカンの混合物 供給業者:Brenntag社
炭酸プロピレンの供給業者 :Aldrich社
Butyl tallate:トールオイル脂肪酸ブチルエステル、Valliflex B 供給業者:Umicore社
Tetraethoxysilicate:テトラエトキシシリケート 供給業者:Aldrich社
Solvesso 100:ソルベントナフサライト、Sdp 140~180℃ 供給業者:Exxon社
Poly bd 605-E:エポキシド基を含有するヒドロキシ末端のポリブタジエン誘導体 供給業者:Cray Valley社 分子量:1450g/mol。
Cresol LBH-P 2000 :ヒドロキシ末端のポリブタジエン誘導体 供給業者:Cray Valley社
Polyvest HT:ヒドロキシ末端のポリブタジエン 供給業者:Evonik社
Polyvest EPMA 120:コハク酸基を含有するポリブタジエン 供給業者:Evonik社
ASKOCURE 388:芳香族溶媒及び脂肪酸エステルにおけるベンジルエーテル型のフェノール樹脂 供給業者:ASK Chemicals社
ECOCURE 10 DR 4531/1:芳香族溶媒及び脂肪酸エステルにおいて改質されたベンジルエーテル型のo-クレゾールのフェノール樹脂 供給業者:ASK Chemicals社
ECOCURE BLUE 30 HE 1:溶媒としてのエステルにおいて1%未満の遊離フェノールのあるベンジルエーテル型のフェノール樹脂 供給業者:ASK Chemicals社
【0091】
[試料溶液の生成]
ポリブタジエン誘導体は、好適な容器において室温で秤量し、各々、実施例A1~A15又はB1~B14に記載の溶媒と混合し、振とうにより完全に溶解させた。次いで、Lupranat M 20 Sが転化され、混合物は、振とうにより再度均一に混合された。
【0092】
[溶解度の評価]
生成の30分後、気泡を含まない混合物は、目視で評価された。
【0093】
全ての試料は、-18℃で24時間保存した。室温への温度適応が生じた後に、外観を再度評価した。
【0094】
【表1-1】
【0095】
【表1-2】
【0096】
【表1-3】
【0097】
【表1-4】
【0098】
【表1-5】
【0099】
【表1-6】
【0100】
[結果の溶解度]
表は、純粋なヒドロキシル基を含有するポリブタジエンと比較して、エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体、又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体は、イソシアネート及び非極性溶媒と組み合わせて、著しく改善された溶解性及び低温安定性を呈することを示している。
【0101】
[付着傾向の測定]
石英砂H32と対応する結合剤成分との鋳型材料の混合物を、Hobart撹拌機において生成した。当該目的のために、両方の成分は、それぞれ1分間均質に撹拌した。鋳型材料の混合物の組成は、表に示されている。
【0102】
鋳型材料の混合物は、を中子の射出成形機に移動させ、射出成形機の鋳型において、11cm×5cm×1.2cmの寸法(l×b×h)の中子を、圧縮空気により4バールの射出圧で生成した。射出成形機の鋳型は鉄製であり、最初の使用に先立ってアセトンによって脱脂し、外部離型剤で処理しなかった。
【0103】
鋳型に射出された中子は、KATALYST 706(1ml、洗浄圧2バールで10秒間)により硬化された。硬化後、中子は、鋳型から離型した。当該工程は、鋳型をその間で洗浄することなく、又は外部離型剤で処理することなく、1つの同一の砂の混合物を用いて合計10回反復した。10回の射出工程の後、射出成形機の鋳型を除去し、形成された砂の付着物(2つの射出ノズルの直下)を機械的に除去し、秤量した。グラム単位の砂の付着である砂の付着量は、試験した砂の混合物の付着傾向の尺度である。
【0104】
更に、中子の強度を試験で測定した。
【0105】
【表2-1】
【0106】
【表2-2】
【0107】
【表3-1】
【0108】
【表3-2】
【0109】
【表3-3】
【0110】
【表3-4】
【0111】
[離型の効果]
エポキシド基又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体は、中子取りにおける砂の付着性の低下の効果があることが、実施例から分かる。当該効果は、濃度(B1~B3)の機能である。ポリブタジエン誘導体は、5秒後、すなわちガス化工程の終了直後の強度を著しく低下させない点で有効である。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型材料の混合物であって、少なくとも
(a)1種の耐火性の鋳型基材と、
(b)ベンジルエーテル型のフェノール樹脂と、ポリイソシアネート又はポリイソシアネートの転化物とをそれぞれ含む1種の結合剤と、
(c)エポキシド基とヒドロキシル基とを含む1種のポリブタジエン誘導体、又は無水コハク酸基を含む1種のポリブタジエン誘導体
を含む
鋳型材料の混合物。
【請求項2】
前記ポリブタジエン誘導体は、無水コハク酸基を含み、
前記ポリブタジエン誘導体は特に、マイケル付加反応又はディールス-アルダー反応の形態でポリブタジエンに無水マレイン酸を付加することによって生成可能である
請求項1に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項3】
ポリブタジエン誘導体は、無水コハク酸基を有しており、ポリブタジエン分子につき、1~3の無水マレイン酸分子が、無水コハク酸基の形態でポリブタジエン鎖に付加される
請求項1又は2に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項4】
エポキシド基を有する前記ポリブタジエン誘導体のヒドロキシル基は、末端ヒドロキシル基を有するか、あるいは、エポキシド基を有する前記ポリブタジエン誘導体のヒドロキシル基は末端基であり、更に代替的には、前記ヒドロキシル基がポリイソシアネートで転化される
請求項1に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項5】
前記ポリブタジエン誘導体は、エポキシド基とヒドロキシル基とを有し、前記ポリブタジエン誘導体のエポキシド基は、分子につき、1.5~10、好適には2~8である
請求項1又は4に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項6】
前記ポリブタジエン誘導体は、鋳型材料の混合物に基づく各々の場合において、それぞれ0.0005~0.1重量パーセント、好適には0.001~0.08重量パーセント、更に好適には0.001~0.06重量パーセントの量で鋳型材料の混合物に含有される
請求項1~5のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項7】
前記ポリブタジエン誘導体は、前記結合剤を基準として、前記結合剤の推定溶媒を含めて、0.15~3.0重量パーセント、好適には0.25~2.0重量パーセント、更に好適には0.3~1.75重量パーセントの量で鋳型材料の混合物に含有される
請求項1~6のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項8】
前記ポリブタジエン誘導体の平均分子量(数平均)は、500~50000g/mol、好適には750~40000g/mol、更に好適には1000~20000g/mol、最も好適には1200~10000g/molである
請求項1~7のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項9】
前記ポリブチレン誘導体は、特に、イソシアネート成分の溶媒中に溶解した形態で用いられる
請求項1~8のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項10】
特にイソシアネート成分のための溶媒として、前記ポリブタジエン誘導体のための溶媒を更に含み、
前記溶媒は好適には、アルキル芳香族化合物、脂肪酸エステル、ケイ酸エステル、及びそれらの混合物から選択される
請求項1~9のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項11】
ベンジルエーテル型の前記フェノール樹脂の平均分子量(MW)は、600~1200g/mol、特に600~1000g/molである
請求項1~10のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項12】
耐火性の前記鋳型基材は、石英砂、ジルコニウム砂、又はクロム鉱砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、シャモット、ガラスビーズ、ガラス顆粒、ケイ酸アルミニウムの中空球、及びそれらの混合物のうちの1又は少数の部材から選択され、
それとは更に独立して、耐火性の前記鋳型基材を基準として、それらの混合物のうちの20重量パーセント超は、石英砂からなる
請求項1~11のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項13】
前記鋳型材料の混合物のうちの70重量パーセント超、好適には80重量パーセント超、更に好適には90重量パーセント超は、耐火性の鋳型基材である
請求項1~12のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項14】
耐火性の前記鋳型基材の平均粒径は、ふるい分析により測定して、100μm~600μm、好適には120μm~550μmである
請求項1~13のいずれか一項に記載の鋳型材料の混合物。
【請求項15】
少なくとも、相互に別個に存在する、
(i)ベンジルエーテル型のフェノール樹脂を含むポリオール成分と、
(ii)イソシアネート成分であって、
分子につき、2以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、
前記イソシアネート成分のための溶媒と、
エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体と
を含むイソシアネート成分と
を含む
結合剤。
【請求項16】
鋳型材料の混合物のための結合剤の一部としてのイソシアネート成分の使用であって、前記イソシアネート成分は、
分子につき、2以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、
前記イソシアネート成分のための溶媒と、
エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体又は無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体と
を含む
使用
【請求項17】
前記結合剤は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂と、前記イソシアネート成分とを含む
請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記ポリオール成分、前記ポリブタジエン誘導体、及び前記イソシアネート成分のための溶媒は、更に相互に独立して、請求項1~11のいずれか一項によって更に特徴付けられ、かつ/あるいは、
前記ポリブタジエン誘導体は、前記イソシアネート成分を基準として、0.3~6.0重量パーセント、更に好適には0.5~4.0重量パーセント、最も好適には0.6~3.5重量パーセントの量で前記イソシアネート成分に含有され
請求項15記載の結合剤
【請求項19】
前記ポリブタジエン誘導体は、前記イソシアネート成分に基づく各々の場合において、0.3~6.0重量パーセント、更に好適には0.5~4.0重量パーセント、最も好適には0.6~3.5重量パーセントの量で前記イソシアネート成分に含有される
請求項16又は17に記載の使用
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載のポリオール成分、イソシアネート成分、ポリブタジエン誘導体、及び耐火性の鋳型基材を結集し、特にPUコールドボックス法により、第三級アミンを添加して硬化させることにより、金型、中子、又は押湯を製造する方法。
【請求項21】
エポキシド基及びヒドロキシル基を有するポリブタジエン誘導体、又は離型剤、特に鋳造鋳型又は中子のための内部離型剤としての無水コハク酸基を有するポリブタジエン誘導体の使用であって、
前記鋳造鋳型又は前記中子は、特にポリイソシアネートと、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂とを含む結合剤を用いることによって製造される
使用。
【国際調査報告】