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特表2023-538504眼科レーザ手術システムのための患者インターフェース
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】眼科レーザ手術システムのための患者インターフェース
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/009 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
A61F9/009
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506516
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 IB2021057637
(87)【国際公開番号】W WO2022043837
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,783
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ビットネベル
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アーブラハム
(57)【要約】
特定の実施形態では、眼科レーザシステムのための患者インターフェースが、インターフェース部分と取り付け部分とを備える。インターフェース部分は、接触部分と、円錐状の壁と、1つ又は複数の構造とを備える。接触部分は、眼の角膜に接触するように構成された当接面を有する。円錐状の壁は、接触部分よりも外側に配置され、円錐の内部を画定する。円錐状の壁は内面及び外面を有し、内面が円錐の内部を画定する。円錐状の壁は上部及び下部を有し、下部が接触部分に結合される。1つ又は複数の構造は、円錐状の壁からの光を円錐の内部に向けて導く。取り付け部分は、眼の角膜にインターフェース部分を取り付ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェース部分であって、
眼の角膜に接触するように構成された当接面を有する接触部分と、
前記接触部分よりも外側に配置された円錐状の壁であって、前記円錐状の壁が円錐の内部を画定し、前記円錐状の壁が内面及び外面を有し、前記内面が前記円錐の内部を画定し、前記円錐状の壁が上部及び下部を有し、前記下部が前記接触部分に結合される、円錐状の壁と、
前記円錐状の壁からの光を前記円錐の内部に向けて導くように構成された1つ又は複数の構造と
を備える、インターフェース部分と、
前記眼の前記角膜に前記インターフェース部分を取り付けるように構成された取り付け部分と
を備える、眼科レーザシステムのための患者インターフェース。
【請求項2】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁の前記内面のステップ状の形体を含む、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項3】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁の少なくとも2つの材料によって形成されたステップ状の形体を含み、前記材料が異なる屈折率を有する、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項4】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁の前記内面に配置された拡散構造を含み、前記拡散構造が、前記円錐状の壁から進む光を前記円錐の内部に向けて拡散させるように構成される、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項5】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁に配置された反射構造を含み、前記反射構造が、前記円錐の内部に向けて光を反射させるように構成される、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項6】
前記反射構造が、前記円錐状の壁の前記内面に配置される、請求項5に記載の患者インターフェース。
【請求項7】
前記反射構造が、前記円錐状の壁の前記外面に配置される、請求項5に記載の患者インターフェース。
【請求項8】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁内で前記下部に向けて光を導くように構成される、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項9】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁内で前記下部に向けて光を導くように構成された導光体を含む、請求項8に記載の患者インターフェース。
【請求項10】
前記1つ又は複数の構造が、前記円錐状の壁内で前記下部に向けて光を導くように構成された複数の反射構造を含み、前記複数の反射構造が、内側反射構造及び外側反射構造を含み、
前記内側反射構造が、前記円錐状の壁の前記内面に配置され、前記内側反射構造が、前記外側反射構造に向けて光を反射させるように構成され、
前記外側反射構造が、前記円錐状の壁の前記外面に配置され、前記外側反射構造が、
前記内側反射構造に向けて、且つ
前記内面の前記内側反射構造を持たない部分を通して
光を反射させるように構成される、請求項8に記載の患者インターフェース。
【請求項11】
前記1つ又は複数の構造が、前記内面の前記内側反射構造を持たない前記部分に配置された拡散構造を更に含み、前記拡散構造が、前記円錐状の壁から進む光を前記円錐の内部に向けて拡散させるように構成される、請求項10に記載の患者インターフェース。
【請求項12】
前記1つ又は複数の構造が、前記インターフェース部分の前記接触部分に配置された構造を含み、前記構造が、前記接触部分の手術部位部分に向けて光を導くように構成される、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項13】
前記1つ又は複数の構造が、前記当接面の前記円錐状の壁に隣接する部分に配置された反射構造を更に含む、請求項12に記載の患者インターフェース。
【請求項14】
前記1つ又は複数の構造が、前記接触部分の手術部位部分に向けて光を屈折させるように構成された屈折構造を含む、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項15】
前記1つ又は複数の構造が、前記接触部分の手術部位部分に向けて光を散乱させるように構成された散乱構造を含む、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項16】
インターフェース部分であって、
眼の角膜に接触するように構成された当接面を有する接触部分と、
前記接触部分よりも外側に配置された円錐状の壁であって、前記円錐状の壁が円錐の内部を画定し、前記円錐状の壁が内面及び外面を有し、前記内面が前記円錐の内部を画定し、前記円錐状の壁が上部及び下部を有し、前記下部が前記接触部分に結合される、円錐状の壁と、
前記円錐状の壁内で前記上部から前記下部に向けて光を導くように構成された導光体を含む、1つ又は複数の構造と
を備える、インターフェース部分と、
前記眼の前記角膜に前記インターフェース部分を取り付けるように構成された取り付け部分と
を備える、眼科レーザシステムのための患者インターフェース。
【請求項17】
前記1つ又は複数の構造が、前記接触部分の手術部位部分に向けて光を散乱させるように構成された散乱構造を更に含む、請求項16に記載の患者インターフェース。
【請求項18】
前記1つ又は複数の構造が、前記眼に向けて光を散乱させるように構成された散乱構造を更に含む、請求項16に記載の患者インターフェース。
【請求項19】
前記1つ又は複数の構造が、前記接触部分の手術部位部分に向けて光を反射させるように構成された反射構造を更に含む、請求項16に記載の患者インターフェース。
【請求項20】
前記導光体が、前記接触部分の手術部位部分に向けて光を導くように湾曲する、請求項16に記載の患者インターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、眼科レーザ手術システムに関し、より詳細には、眼科レーザ手術システムのための患者インターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の眼科レーザ手術システムは、眼の手術を行うためにパルスレーザビームを発生させる。一部の手術では、レーザビームは、治療パターンにしたがって眼の特定の位置に光破壊を生じる。レーザビームがパターンに正確に一致する光破壊を生じ得るように、眼は、手術の間はずっと動かないようにされなければならない。
【0003】
手術中に所定の位置に眼を保持するために、普通、患者インターフェース(patient interface、PI)が使用される。患者インターフェースは、通常、手術中にレーザビームが手術部位に作用することを可能にするために所定の位置に眼を固定する真空減圧を利用することにより眼に取り付けられる。いくつかのシステムでは、光源が患者インターフェースを介して手術部位を照明する。照明により、カメラによる手術部位の撮像が改善され得る。また、照明により、治療パターンに対して眼を位置合わせするために使用される特徴の識別が可能になり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定の実施形態では、眼科レーザシステムのための患者インターフェースが、インターフェース部分と取り付け部分とを備える。インターフェース部分は、接触部分と、円錐状の壁と、1つ又は複数の構造とを備える。接触部分は、眼の角膜に接触するように構成された当接面を有する。円錐状の壁は、接触部分よりも外側に配置され、円錐の内部を画定する。円錐状の壁は内面及び外面を有し、内面が円錐の内部を画定する。円錐状の壁は上部及び下部を有し、下部が接触部分に結合される。1つ又は複数の構造は、円錐状の壁からの光を円錐の内部に向けて導く。取り付け部分は、眼の角膜にインターフェース部分を取り付ける。
【0005】
実施形態は、以下の特徴のうち、いずれをも含まなくてもよいし、1つ、いくつか、又はすべてを含んでもよい。
【0006】
*円錐状の壁は、円錐台状又は円筒状の形状を有する。
【0007】
*1つ又は複数の構造は、円錐状の壁の内面のステップ状の形体を含む。
【0008】
*1つ又は複数の構造は、円錐状の壁の少なくとも2つの材料によって形成されたステップ状の形体を含み、材料が異なる屈折率を有する。
【0009】
*1つ又は複数の構造は、円錐状の壁の内面に配置された拡散構造を含む。拡散構造は、円錐状の壁から進む光を円錐の内部に向けて拡散させる。
【0010】
*1つ又は複数の構造は、円錐状の壁に配置された反射構造を含む。反射構造は、円錐の内部に向けて光を反射させる。反射構造は、円錐状の壁の内面及び/又は外面に配置され得る。
【0011】
*1つ又は複数の構造は、円錐状の壁内で下部に向けて光を導く。1つ又は複数の構造は、円錐状の壁内で下部に向けて光を導く導光体を含み得る。
【0012】
*1つ又は複数の構造は、円錐状の壁内で下部に向けて光を導く。1つ又は複数の構造は、円錐状の壁内で下部に向けて光を導く反射構造を含み得る。反射構造は、内側反射構造及び外側反射構造を含み得る。内側反射構造は、円錐状の壁の内面に配置され、外側反射構造に向けて光を反射させる。外側反射構造は、円錐状の壁の外面に配置され、内側反射構造に向けて、且つ内面の内側反射構造を持たない部分を通して光を反射させる。1つ又は複数の構造は、内面の内側反射構造を持たない部分に配置された拡散構造を更に含んでもよく、拡散構造は、円錐状の壁から進む光を円錐の内部に向けて拡散させる。
【0013】
*1つ又は複数の構造は、インターフェース部分の接触部分に配置された構造を含む。構造は、接触部分の手術部位部分に向けて光を導く。1つ又は複数の構造は、当接面の円錐状の壁に隣接する部分に配置された反射構造を更に含んでもよい。
【0014】
*1つ又は複数の構造は、接触部分の手術部位部分に向けて光を屈折させる屈折構造を含む。
【0015】
*1つ又は複数の構造は、接触部分の手術部位部分に向けて光を散乱させる散乱構造を含む。
【0016】
特定の実施形態では、眼科レーザシステムのための患者インターフェースが、インターフェース部分と取り付け部分とを備える。インターフェース部分は、接触部分と、円錐状の壁と、1つ又は複数の構造とを備える。接触部分は、眼の角膜に接触するように構成された当接面を有する。円錐状の壁は、接触部分よりも外側に配置され、円錐の内部を画定する。円錐状の壁は内面及び外面を有し、内面が円錐の内部を画定する。円錐状の壁は上部及び下部を有し、下部が接触部分に結合される。1つ又は複数の構造は、円錐状の壁内で上部から下部に向けて光を導く導光体を含む。取り付け部分は、眼の角膜にインターフェース部分を取り付ける。
【0017】
実施形態は、以下の特徴のうち、いずれをも含まなくてもよいし、1つ、いくつか、又はすべてを含んでもよい。
【0018】
*1つ又は複数の構造は、接触部分の手術部位部分に向けて光を散乱させる散乱構造を更に含む。
【0019】
*1つ又は複数の構造は、眼に向けて光を散乱させる散乱構造を更に含む。
【0020】
*1つ又は複数の構造は、接触部分の手術部位部分に向けて光を反射させる反射構造を更に含む。
【0021】
*導光体は、接触部分の手術部位部分に向けて光を導くように湾曲する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、特定の実施形態による、手術部位の照明を容易にする患者インターフェースを備えた眼科手術システムの一例を示す。
図2図2は、特定の実施形態による患者インターフェースの一例を示す。
図3A-3C】図3A-3Cは、患者インターフェースの特定の実施形態の拡散構造及び反射構造の例を示す。
図4図4は、患者インターフェースの特定の実施形態の拡散構造及び反射構造の構成の一例を示す。
図5図5は、患者インターフェースの特定の実施形態の接触部分に配置された拡散構造の例を示す。
図6図6は、患者インターフェースの特定の実施形態の導光体の一例を示す。
図7A-7C】図7A-7Cは、患者インターフェースの特定の実施形態の導光体の他の例を示す。
図8A-8B】図8A-8Bは、光を分布させる構造の有無に関して患者インターフェースにおける輝度分布を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、説明及び図面を参照して、開示される装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を詳細に示す。説明及び図面は、網羅的であることを意図するものでも、図面において示され、説明において開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定することを意図するものでもない。図面は可能な実施形態を表すが、図面は必ずしも原寸に比例しておらず、実施形態をよりよく示すために特定の特徴を簡略化、誇張、削除、又は部分的に分割している場合がある。
【0024】
特定の眼科レーザ手術システムでは、光源が患者インターフェースを介して手術部位を照明する。発生し得る課題は、患者インターフェースが光を変化させて、結果として得られる手術部位における照明が十分に明るくなくなる、及び/又は均一ではなくなるというものである。本明細書で説明される患者インターフェースの特定の実施形態は、この課題に対処する。
【0025】
図1は、特定の実施形態による、手術部位の照明を容易にする患者インターフェース20を備えた眼科手術システム10の一例を示している。本実施形態では、患者インターフェース20は、円錐状の壁と接触部分とを有するインターフェース部分を備える。円錐状の壁は、円錐の内部を画定する形状を有する。患者インターフェース20はまた、インターフェース20の手術部位部分(例えば、眼の手術部位に接触する部分インターフェース20)を照明するために、円錐状の壁からの光を円錐の内部及び/又は接触部分の中央領域に向けて導く1つ又は複数の構造を備え、これにより、手術部位においてより明るく、より均一な照明がもたらされ得る。照明が改善されることにより、カメラが手術部位をより良く撮像することができ、レーザ治療において眼を適切に位置合わせするための特徴をより高い信頼性で及び/又は効果的に識別することができる。
【0026】
図示の例では、システム10は、図示のように結合されたレーザデバイス15と、患者インターフェース20と、カメラ38と、制御コンピュータ30とを備える。コンピュータ30は、図示のように結合されたロジック31と、(コンピュータプログラム34を記憶する)メモリ32と、ディスプレイ36とを備える。レーザデバイス15は、図示のように結合されたレーザ源12、スキャナ16、1つ又は複数の光学要素17、集束対物系18、及び光源39などの制御可能な構成要素を備える。患者インターフェース20は、図示のように結合される。
【0027】
システム10の各部に目を向けると、レーザ源12は、超短パルスでレーザビームを発生させる。超短パルスとは、ピコ秒、フェムト秒、又はアト秒などのオーダーのナノ秒未満の持続時間を有する光パルスをいう。レーザビームは、340~350nm(例えば、347nm±1nm)など、300~1500ナノメートル(nm)の範囲の波長(例えば、300~650、650~1050、1050~1250、及び/又は1250~1500nmの範囲の波長)などの任意の適切な波長を有してもよい。レーザビームの焦点は、組織(例えば、角膜)においてレーザ誘起光破壊(laser-induced optical breakdown、LIOB)を生じさせて、組織において光破壊を生じさせることができる。レーザビームは、正確な光破壊を生じさせるために正確に集束され得、このことにより他の組織の不必要な破壊を低減又は回避し得る。
【0028】
スキャナ16は、横方向及び縦方向にレーザビームの焦点を導く。縦方向とは、レーザビームの伝播の方向をいい、z方向としても知られる。横方向とは、ビームの伝播の方向に直交する方向をいい、xy方向としても知られる。特定の実施形態では、患者インターフェース20の当接面は、z=0におけるxy-平面として選択される。
【0029】
スキャナ16は、任意の適切な仕方でレーザビームを横方向に導き得る。例えば、スキャナ16は、相互に垂直な軸に関してチルトさせることができる、1対のガルバノメトリック式駆動型スキャナミラーを備え得る。別の例として、スキャナ16は、レーザビームを電気光学的に操縦できる電気光学結晶を備えてもよい。スキャナ16は、任意の適切な仕方でレーザビームを縦方向に導き得る。例えば、スキャナ16は、縦方向に調節可能なレンズ、屈折力が可変のレンズ、又はビーム焦点のz位置を制御し得る変形可能なミラーを備えてもよい。スキャナ16の構成要素は、ビーム経路に沿って任意の適切な仕方で、例えば同じ又は異なるモジュール式ユニットに配置されてもよい。
【0030】
1つ(又は複数)の光学要素17は、集束対物系18に向けてレーザビームを導く。光学要素17は、レーザビームに作用(例えば、透過、反射、屈折、回折、コリメート、調整、整形、集束、変調、及び/又は他の仕方で作用)し得る。光学要素の例としては、レンズ、プリズム、ミラー、回折光学要素(diffractive optical element、DOE)、ホログラフィック光学要素(holographic optical element、HOE)、及び空間光変調器(spatial light modulator、SLM)が挙げられる。本例では、光学要素17はミラーである。集束対物系18は、患者インターフェース20を通してレーザビームの焦点を眼22の一点に向けて集束させる。本例では、集束対物系18は、対物レンズであり、例えばfθ対物系である。
【0031】
カメラ38は、眼22の動きの画像を記録する。カメラ38の例としては、ビデオ、光干渉断層撮影(optical coherence tomography、OCT)、又は視線追跡カメラが挙げられる。カメラ38は、眼22の記録された画像を表す画像データをコンピュータ30に送達する。コンピュータ30は、眼を位置合わせするために眼の特徴を識別するように、画像データに対して画像処理を行ってもよい。
【0032】
光源39(39a、39b)は、手術部位を照明する光を供給する。光源39は、手術部位に向けて光を導く任意の適切な構成を有し得る。特定の実施形態では、光源39は、視野に向けられる照明を提供する1つ又は複数の照明要素を備える。1つ又は複数の照明要素は、視野を照明するために視野を部分的又は完全に囲んでもよいし視野の上方に配置されてもよい。図示の例では、光源39は、実施形態39a、39bを含み、システム10は、実施形態の一方を含んでもよいし、両方を含んでもよいし、両方とも含まなくてもよい。光源39aは、患者インターフェース20の上部の直径に略等しい直径を有する環状形状を有する。光源39bは、患者インターフェース20の光源39bにより包囲される部分に略等しい直径を有する環状形状を有する。
【0033】
患者インターフェース20は、レーザデバイス15に眼22を結合するために、眼22の角膜と接する。患者インターフェース20は、レーザビームが眼22を治療し得るように、所定の位置に眼22を固定する役割を果たす。患者インターフェース20は、図2を参照してより詳細に説明される。
【0034】
コンピュータ30は、コンピュータプログラム34にしたがって制御可能な構成要素(例えば、レーザ源12、スキャナ16、光学要素17、及び/又は集束対物系18)を制御する。コンピュータプログラム34は、角膜の一領域にレーザビームを集束させ、その領域の少なくとも一部分を光破壊するように制御可能な構成要素に命令するコンピュータコードを含む。
【0035】
図2は、患者インターフェース20の一例を示している。特定の実施形態では、患者インターフェース20は、取り付け部分21とインターフェース部分26とを備える。取り付け部分21は、任意の適切な仕方、例えば、吸引又は機械的な取り付けを介して、患者インターフェース20を眼22に取り付ける。インターフェース部分26は、通常は手術部位の上方で、眼22の角膜に接触する。取り付け部分21及びインターフェース部分26は、一体として形成されてもよいし、互いに適合する2つ以上の別個の部品として形成されてもよい。
【0036】
本例では、患者インターフェース20は、吸引リング24を備える取り付け部分21と、図示のように結合されたインターフェース部分26とを備える。吸引リング24は、リング軸及び開口部44を有する略環状形状を有する。吸引リング24は、吸引源42に結合された1つ又は複数の排気チャネル40(40a、40b)を備える。吸引源42は吸引力を供給する。排気チャネル40は、患者インターフェース20を眼22に結合するための吸引を可能にする。本例では、排気チャネル40aを通る吸引力が吸引リング24を眼22に取り付ける、及び/又は排気チャネル40bを通る吸引力がインターフェース部分26を吸引リング24に固定する。
【0037】
インターフェース部分26は、円錐軸と、円錐の内部47を画定する円錐状の壁46とを有する略円錐台状又は円筒状の形状を有する。インターフェース部分26は、開口部44内に少なくとも部分的に嵌合するように形状を定められる。円錐状の壁46は内面70及び外面72を有し、内面70が円錐の内部47を画定する。円錐状の壁46は上部74及び下部76を有し、下部76が接触部分48に結合される。接触部分48は、眼22の角膜に接触する当接面49を有する。接触部分48は、レーザビームに対して半透明又は透明であってもよく、角膜と接する当接面49を有する。当接面49は、一般に、手術部位から外側に向かうように配置される。特定の実施形態では、当接面49は平面であり、角膜上に平面領域を形成し、これがxy平面を画定し得る。他の実施形態では、当接面49は平面である必要はなく、例えば、凸面又は凹面であってもよい。
【0038】
特定の実施形態では、患者インターフェース20は、インターフェース20の手術部位部分(例えば、眼の手術部位に接触する部分インターフェース20)を照明するために、円錐状の壁46からの光を円錐の内部47及び/又は接触部分48の中央部分に向けて導く1つ又は複数の構造を有する。構造は、任意の適切な構成を有し得る。例えば、構造は、円錐状の壁46の内面70に配置された拡散構造であってもよい。拡散構造は、円錐状の壁46から進む光を円錐の内部47に向けて拡散させる。別の例として、構造が、円錐状の壁46に配置された反射構造であってもよい。反射構造は、円錐の内部47に向けて光を反射させる。別の例として、構造が、円錐状の壁46内で下部76に向けて光を導いてもよい。別の例として、構造が、インターフェース部分26の接触部分48に配置されてもよい。構造は、接触部分48の中央に向けて光を導く。構造の例は、図3図6を参照してより詳細に説明される。
【0039】
図3A図3Cは、患者インターフェース20の特定の実施形態の拡散構造50(50a~50c)、52及び反射構造54の例を示している。拡散構造は、例えば光を屈折及び/又は散乱させることによって、材料を通過する光を拡散させる材料の構造であってもよい。特定の実施形態では、拡散構造は、粗面など、材料の表面の構造であってもよい。粗面は、任意の適切な仕方で生成されてもよい。例えば、表面は粗い金型から成形されてもよい。別の例として、平滑面が粗面(例えば、サンドペーパー)で擦ったり、レーザビームでエッチングしたりすることにより粗面化されてもよい。
【0040】
他の実施形態では、拡散構造が、材料を通過する光を拡散させる材料内の構造であってもよい。例えば、拡散構造は、フェムト秒レーザビームによって作られた光分解された構造であってもよい。別の例として、拡散構造は、異なる屈折率を有する材料から形成され得る、材料における屈折の変化であってもよい。更に他の実施形態では、拡散構造は、円錐状の壁46の内面70の格子などステップ状の形体であってもよい。ステップ状の形体は、1つ、2つ、又はそれ以上のステップを有する形体であってもよく、ステップが光の方向を変える。更に他の実施形態では、拡散構造は、異なる屈折率の材料で円錐状の壁46内に形成された格子などステップ状の形体であってもよい。
【0041】
図3Aは、拡散パネル50及び拡散構造52aを含む拡散構造を備える患者インターフェース20を説明している。拡散パネル50は、光源39からの光を拡散させる透明又は半透明の材料(例えば、プラスチック)を含む。拡散構造52aは、円錐状の壁46の内面70に配置され、円錐状の壁46から進む光を円錐の内部47に向けて拡散させる。
【0042】
本例では、患者インターフェース20はまた、反射構造54を備える。反射構造54の例としては、ミラーなどの反射面54が挙げられる。図示の例では、反射面54は、円錐状の壁46の外面72に配置された外側反射構造82を含む。外側反射構造82は、内面70に向けて光を反射させる。本例では、光の一部が内面70を通過し、一部の光が外側反射構造82に向けて反射されて戻る、及び/又は一部の光が患者インターフェース20の下部76を通過する。下部76を通過する光は、患者インターフェース20の眼22へのドッキング、すなわち、患者インターフェース20の眼22に向けた下降及び患者インターフェース20の眼22への取り付けを照明し得る。
【0043】
図3Bは、円錐状の壁46の内面70のステップ状の形体(例えば、格子)である拡散構造52bを説明している。拡散構造52bは、不連続な光の出射領域を有する。本例では、出射領域は、構造52bの略垂直な領域53である。本例では、「垂直」とは、患者インターフェース20がレーザデバイス15に結合されているときにz軸に平行であることをいう。
【0044】
図3Cは、異なる屈折率の材料55(55a、55b)で円錐状の壁46内に形成されたステップ状の形体(例えば、格子)である拡散構造52cを説明している。本例では、材料55aは、材料55bとは異なる屈折率を有する。光が円錐状の壁46を通過するとき、材料は円錐の内部47に向けて光を屈折させる。
【0045】
図4は、患者インターフェース20の特定の実施形態の拡散構造52及び反射構造54の構成の一例を示している。本例では、患者インターフェース20は、レンズなどの光学要素60を備える。特定の実施形態では、レンズは、治療用レーザビームのための集束レンズであってもよい。拡散構造52及び反射構造54は、患者インターフェース20の任意の好適な位置に任意の好適な構成で配置されてもよい。図示の例では、拡散構造52は、光学要素60と接触部分48との間の内面70に配置される。拡散構造52は、円錐の内部47に向けて進む光を拡散させる。反射構造54は、光学要素60に近接し、患者インターフェース20の上部に向けて外面72及び内面70に配置される。外面72に配置された反射構造54は、内面70に向けて光を導き、内面70に配置された反射構造54は、外面72に配置された反射構造54に向けて光を導く。
【0046】
図5は、患者インターフェース20の特定の実施形態の接触部分48に配置された拡散構造62の一例を示している。拡散構造62は、接触部分48の中央に向けて進む光を拡散させる。特定の実施形態では、接触部分48はまた、当接面49の円錐状の壁47に隣接する部分に配置された反射構造54を含む。反射構造54は、拡散構造62に向けて光を反射させる。
【0047】
図6は、患者インターフェース20の特定の実施形態の導光体66(66a)の一例を示している。導光体66aは、患者インターフェース20の円錐状の壁46内で上部74から下部76に向けて光を導く。本例では、患者インターフェース20は、光学要素64(例えば、レンズ)を備え、円錐状の壁46に向けて光を導く。導光体66aは、上部74から下部76に光を導くように構成された内側反射構造80及び外側反射構造82を含む反射構造54を含んでもよい。内側反射構造80は、円錐状の壁46の内面70に配置され、外側反射構造82に向けて光を反射させる。外側反射構造82は、円錐状の壁46の外面72に配置される。一部の光は、接触部分48の中央に向けて内面70の内側反射構造80を持たない部分84を通過する。
【0048】
本例では、患者インターフェース20はまた、散乱構造63などの拡散構造を含む。散乱構造63は、z方向、すなわち眼22に向けて光を散乱させる。この照明は、患者インターフェース20の眼22へのドッキング、すなわち、患者インターフェース20の眼22に向けた下降及び患者インターフェース20の眼22への取り付けを容易にし得る。
【0049】
図7A図7Cは、患者インターフェース20の特定の実施形態の導光体66(66b)の例を示している。図7Aは、患者インターフェース20の円錐状の壁46内で上部74から下部76に向けて光を導く導光体66bの一例を説明している。本例では、患者インターフェース20は、光学要素64(例えば、レンズ)を備え、導光体66bに向けて光を導く。導光体66bは、上部74から下部76に光を導く。特定の例では、導光体66bが下部76に到達すると、導光体66bは、円錐の内部47に向けて及び/又は接触部分48の中央に向けて光を導き得る。導光体66bの例としては、光ファイバ、例えば、ステップインデックス型(step-index)ファイバ又は分布屈折率(gradient-index)ファイバが挙げられる。図7Aの例では、患者インターフェース20はまた、図6のものと同様の散乱構造63を含む。
【0050】
図7Bは、図7Aの散乱構造63の代わりに反射構造54を説明している。反射構造54は、円錐の内部47に向けて、及び/又は接触部分48の中央に向けて光を反射させる。
【0051】
図7Cは、円錐の内部47に向けて及び/又は接触部分48の中央に向けて光を導くように形状を定められた(例えば、湾曲した)導光体66bを説明している。
【0052】
図8A及び図8Bは、光を分布させる構造を持たない患者インターフェースと、光を分布させる構造を有する患者インターフェースとで輝度分布を比較するグラフである。y軸は、患者インターフェース20の接触部分48における照明の強度を表し、x軸は、接触部分48の直径に沿った位置を表している。
【0053】
図8Aは、円錐状の壁46からの光を円錐の内部47に向けて導く構造を持たない患者インターフェースの輝度分布を説明している。ほとんどの光は円錐状の壁46に残り、手術部位では照度が低下し、不均一になる。
【0054】
図8Bは、円錐状の壁46からの光を円錐の内部47に向けて導く構造を有する患者インターフェース20の輝度分布を説明している。光は円錐状の壁から離れて導かれて、手術部位をより均一に照明する。特定の実施形態では、特定のインターフェース設計のための構造は、接触部分48にわたって略均一な(すなわち、一様な)輝度分布をもたらすように配置されてもよい。他の実施形態では、特定のインターフェース設計のための構造は、接触部分48の特定の領域においてより多くの輝度をもたらすように配置されてもよい。例えば、接触部分48の手術部位部分、例えば、眼の手術部位に接触している部分において、より多くの輝度が望まれる場合がある。この部分は、接触部分48の半径の25%未満、25%~50%、50%~75%、及び/又は75%~95%の半径で、接触部分48の略中央に配置されてもよい。
【0055】
当接面49に接触する眼の領域において、輝度が増加及び/又は均一化することにより、カメラ38によるより正確な及び/又は精密な撮像が実施され得る。輝度が増加及び/又はより均一化することはまた、眼の位置合わせに使用され得る形体(例えば、血管、虹彩構造、瞳孔縁、又は辺縁)のより効率的及び/又は高い信頼性での識別をもたらし得る。
【0056】
本明細書に開示されるシステム及び装置の(コンピュータ30などの)コンポーネントは、インターフェース、ロジック、及び/又はメモリを含んでもよく、これらのうちの任意のものがコンピュータハードウェア及び/又はソフトウェアを含んでもよい。インターフェースは、コンポーネントへの入力を受信する、及び/又はコンポーネントからの出力を送信することができ、通常、ソフトウェア、ハードウェア、周辺機器、ユーザ、及びこれらの組み合わせなどの間で情報を交換するために使用される。ユーザインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI))は、ユーザがコンピュータと対話するために利用され得るインターフェースの一種である。ユーザインターフェースの例としては、ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ジェスチャセンサ、マイクロフォン、及びスピーカが挙げられる。
【0057】
ロジックは、コンポーネントの動作を実行することができる。ロジックは、データを処理する、例えば命令を実行して入力から出力を生成する、1つ又は複数の電子デバイスを含み得る。そのような電子デバイスの例としては、コンピュータ、プロセッサ、マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、及びコンピュータチップが挙げられる。ロジックは、動作を実行するために電子デバイスによって実行され得る命令をエンコードするコンピュータソフトウェアを含み得る。コンピュータソフトウェアの例としては、コンピュータプログラム、アプリケーション、及びオペレーティングシステムが挙げられる。
【0058】
メモリは、情報を記憶することができ、有形のコンピュータ可読及び/又はコンピュータ実行可能な記憶媒体を含み得る。メモリの例としては、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み出し専用メモリ(ROM))、マスストレージ媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオ若しくは多用途ディスク(DVD))、データベース、ネットワークストレージ(例えば、サーバ)、及び/又は他のコンピュータ可読媒体が挙げられる。特定の実施形態は、コンピュータソフトウェアを用いてエンコードされたメモリを対象とすることができる。
【0059】
特定の実施形態に関して本開示を説明してきたが、実施形態の修正形態(例えば、変更、置換、追加、省略、及び/又は他の修正形態)が、当業者には明らかになるはずである。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対する修正がなされ得る。例えば、本明細書で開示されたシステム及び装置に対する修正がなされ得る。当業者には明らかであるように、システム及び装置の構成要素が統合されても分離されてもよいし、システム及び装置の動作が、より多くても、より少なくても、他のコンポーネントによって実行されてもよい。別の例として、本明細書で開示された方法に対する修正がなされ得る。当業者には明らかであるように、方法は、より多い、より少ない、又は他のステップを含んでもよく、ステップは、任意の適当な順序で実行されてもよい。
【0060】
特許庁及び読者が特許請求の範囲における請求項を解釈するのを助けるために、出願人は、特定の請求項において「のための手段(means for)」又は「のためのステップ(step for)」という語が明示的に使用されていない限り、請求項又は請求項の要素のいずれもが、米国特許法第112条(f)の適用を受けることを意図していないことを言及しておく。請求項内の他の用語(例えば、「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「部材」、「装置」、「機械」、「システム」、「プロセッサ」、又は「コントローラ」)の使用は、関連技術における当業者に知られている構造を指すと出願人には理解されており、米国特許法第112条(f)の適用を受けることを意図していない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A-8B】
【国際調査報告】