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特表2023-538519AAVベクターを使用したプラコフィリン-2(PKP2)遺伝子治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】AAVベクターを使用したプラコフィリン-2(PKP2)遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230901BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230901BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230901BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230901BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20230901BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P9/04
A61P9/06
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023507876
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 US2021045220
(87)【国際公開番号】W WO2022032226
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/063,032
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521067485
【氏名又は名称】スペースクラフト セブン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハーツォグ クリストファー ディーン
(72)【発明者】
【氏名】サクラメント チェスター ビッテンコート
(72)【発明者】
【氏名】プラバカール ラジ
(72)【発明者】
【氏名】リックス デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084MA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA37
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA17
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA37
(57)【要約】
例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用した、PKP2(プラコフィリン-2)の遺伝子治療を本明細書において提供する。ベクターのプロモーターは、MHCK7プロモーターまたは心筋トロポニンT(HTNNT2)プロモーターであり得る。キャプシドは、AAV9もしくはAAVrh74キャプシドまたはその機能的バリアントであり得る。他のプロモーターまたはキャプシドを使用してもよい。さらに、治療方法、例えば静脈内、冠動脈内、頸動脈内、または心臓内のrAAVベクターの投与による治療方法、ならびに他の組成物および方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現カセット、および
任意で、隣接するアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)
を含む、ポリヌクレオチドであって、
プロモーターに動作可能に連結された、プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列
を含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記プロモーターが心臓特異的プロモーターである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記プロモーターが筋特異的プロモーターである、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記プロモーターが心筋細胞特異的プロモーターである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記プロモーターがミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記プロモーターが心筋トロポニンT(hTNNT2)プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記hTNNT2プロモーターが、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記発現カセットが、心筋トロポニンT(hTNNT2)遺伝子のエクソン1を含み、
任意で、前記hTNNT2プロモーターおよびエクソン1が一緒に、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記プロモーターがユビキタスプロモーター、任意でCMVプロモーターまたはCAGプロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記発現カセットがポリAシグナルを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記ポリAシグナルがヒト成長ホルモン(hGH)ポリAである、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記発現カセットが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、任意でWPRE(x)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントがPKP2である、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記PKP2が機能的PKP2である、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記PKP2がヒトPKP2である、請求項14または請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記PKP2がPKP2アイソフォームAである、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記PKP2アイソフォームAが、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記PKP2がPKP2アイソフォームBである、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記PKP2が、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、ヒトPKP2ポリヌクレオチドである、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
少なくとも約4.0kb、少なくとも約4.1kb、少なくとも約4.2kb、少なくとも約4.3kb、少なくとも約4.4kb、または少なくとも約4.5kbを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
最大で約4.1kb、最大で約4.2kb、最大で約4.3kb、最大で約4.4kb、最大で約4.5kb、または最大で約4.6kbを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
4.0kb~4.6kb、4.0kb~4.5kb、または4.0kb~4.4kbを含むか、あるいは4.0kb~4.3kb、4.0kb~4.2kb、または4.0kb~4.1kbを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記PKP2またはその機能的バリアントが、少なくとも800個または少なくとも830個のアミノ酸を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
配列番号8~15のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項1~27のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記発現カセットが、5’および3’の逆位末端反復(ITR)によって隣接されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記ITRがAAV2 ITRであり、および/または
前記ITRが、配列番号20~26のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、
請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
【請求項32】
前記遺伝子治療ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
前記rAAVベクターがAAV9またはその機能的バリアントである、請求項32に記載のベクター。
【請求項34】
前記rAAVベクターが、配列番号77のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項33に記載のベクター。
【請求項35】
前記rAAVベクターがAAVrh10またはその機能的バリアントである、請求項32に記載のベクター。
【請求項36】
前記rAAVベクターが、配列番号79のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項35に記載のベクター。
【請求項37】
前記rAAVベクターがAAV6またはその機能的バリアントである、請求項32に記載のベクター。
【請求項38】
前記rAAVベクターが、配列番号78のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項37に記載のベクター。
【請求項39】
前記rAAVベクターがAAVrh74またはその機能的バリアントである、請求項38に記載のベクター。
【請求項40】
前記rAAVベクターが、配列番号80のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項39に記載のベクター。
【請求項41】
それを必要とする対象において疾患または障害を治療および/または予防する方法であって、請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターを前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項42】
前記疾患または障害が心障害である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患または障害が心筋症である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記心筋症が、不整脈源性右室心筋症(ARVC)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記心筋症が、肥大型心筋症または拡張型心筋症である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患または障害が、心筋の線維脂肪性浸潤によって特徴付けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または障害が心不全である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が哺乳動物である、請求項41~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が霊長類である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象がヒトである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象がPRP2遺伝子に変異を有する、請求項41~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ベクターが、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される、請求項41~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約5%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約30%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約70%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与が、PKP2発現を約5%~約10%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与が、PKP2発現を約30%~約50%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与が、PKP2発現を約50%~約70%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記投与が、PKP2発現を約70%~約100%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記疾患または障害を治療および/または予防する、請求項41~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
有効量の前記ベクターを投与する工程を含む、請求項41~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記疾患または障害が、前記対象のPKP2の機能喪失に関連するかまたはそれにより引き起こされる、請求項41~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記疾患または障害が、前記対象のPKP2の機能獲得に関連するかまたはそれにより引き起こされる、請求項41~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記対象が、
配列番号2の配列を有するヒトPKP2をコードするヒトPKP2遺伝子に対して、p.Arg490Trp、Asp26Asn、Thr50_Val51SerfsX60、Arg79X、Tyr86X、Gln133X、Val406SerfsX3、Tyr616X、Trp676X、Cys796Arg、Cys796E、Tyr807X、Glu62Lys、S688P、Trp848X、Y86X、V406X、Y616X、W848X、およびY807Xから選択されるアミノ酸置換を引き起こす変異
を有する、請求項41~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
有効量の前記ベクターを含む医薬組成物を投与する工程を含む、請求項41~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
約1×1011ベクターゲノムから約1×1013ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程、約1×1012ベクターゲノムから約1×1014ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程、または約1×1013ベクターゲノムから約1×1015ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程を含む、請求項41~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターを含む、医薬組成物。
【請求項68】
請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項68に記載の医薬組成物および任意で使用説明書を含む、キット。
【請求項69】
任意で請求項41~66のいずれか一項に記載の方法による、疾患または障害の治療における請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項70】
任意で請求項41~66のいずれか一項に記載の方法による、疾患または障害の治療における使用のための請求項31~40のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項71】
配列番号12~15および89~92のいずれか一つまたは配列番号8~11および93~96のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項72】
前記プロモーターがMHCK7プロモーターである、請求項71に記載のポリヌクレオチド。
【請求項73】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項72に記載のポリヌクレオチド。
【請求項74】
前記PKP2がヒトPKP2である、請求項71に記載のポリヌクレオチド。
【請求項75】
前記PKP2がPKP2アイソフォームAである、請求項74に記載のポリヌクレオチド。
【請求項76】
前記PKP2アイソフォームAが、配列番号1と少なくとも80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項75に記載のポリヌクレオチド。
【請求項77】
請求項71~76のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
【請求項78】
前記遺伝子治療ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項77に記載のベクター。
【請求項79】
前記rAAVベクターがAAV9ベクターである、請求項78に記載のベクター。
【請求項80】
前記rAAVベクターがAAVrh74ベクターである、請求項78に記載のベクター。
【請求項81】
PRP2遺伝子に変異を有すると特定された対象において心障害を治療および/または予防する方法であって、請求項77~80のいずれか一項に記載のベクターを前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項82】
前記心障害が、心筋症、任意で不整脈源性右室心筋症(ARVC)、肥大型心筋症、または拡張型心筋症である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記心障害が心不全である、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記対象が哺乳動物である、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記ベクターが、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される、請求項81~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
左心室駆出率(LVEF%)の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
左心室短縮率(FS%)の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
平方ミリメートル単位の右心室面積(RV面積(mm2))の増加を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
毎秒ミリメートル単位の右心室速度時間積分(RV VTI(mm/秒))の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
左心室または右心室の線維症の増加を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~89のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月7日に出願された米国仮特許出願第63/063,032号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、ROPA_021_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは約212KBで、2021年8月8日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
背景
不整脈源性右室心筋症(ARVC)は、成人発症型心疾患の一種であり、1,000人に1人から1,250人に1人が罹患すると推定される。心臓の筋肉壁(心筋)が経時的に破壊され、これにより、異常な心拍(不整脈)のリスクが上昇し、罹患した個人が激しい運動をすると突然死するリスクが高まることが明らかである。患者にはまた、心臓の不規則な鼓動またはドキドキ感(動悸)、ふらつき、失神(卒倒)、息切れ、脚または腹部の異常な腫脹も起こる。経時的に、ARVCは心不全につながる可能性がある。
【0004】
少なくとも13個の遺伝子がARVCに関与しており、その多くが、細胞間に強い接着をもたらす細胞内接合部である、デスモソームの生合成に関与している。デスモソームが適切に形成されない場合、心筋細胞は互いに分離して死に至る場合がある。特に右心室は衰弱し、脂肪沈着物および瘢痕組織が損傷した心筋に取って代わり、右心室の膨張につながる場合がある。これらの変化は、最終的に効果的な心臓ポンプを妨げ、心拍を制御する電気信号を混乱させ、不整脈につながる。常染色体優性プラコフィリン-2(PKP2)心筋症は、PKP2に影響を及ぼす変異が検出される遺伝性ARVCである。
【0005】
したがって、ARVCを含むPKP2関連の疾患および障害の治療に対するアンメットニーズが当技術分野に残されている。本明細書に開示される組成物および方法は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明は、概して、PKP2を発現するベクターまたはその機能的バリアントを使用した、疾患または障害、例えば、心疾患または心障害のための遺伝子治療に関する。
【0007】
一態様では、本開示は、発現カセット、および任意で、隣接するアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)を含むポリヌクレオチドであって、プロモーターに動作可能に連結された、プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
一部の実施形態では、プロモーターは、心臓特異的プロモーターである。
【0009】
一部の実施形態では、プロモーターは、筋特異的プロモーターである。
【0010】
一部の実施形態では、プロモーターは、心筋細胞特異的プロモーターである。
【0011】
一部の実施形態では、プロモーターは、ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーターである。
【0012】
一部の実施形態では、MHCK7プロモーターは、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0013】
一部の実施形態では、プロモーターは、心筋トロポニンT(hTNNT2)プロモーターである。
【0014】
一部の実施形態では、hTNNT2プロモーターは、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0015】
一部の実施形態では、発現カセットは、心筋トロポニンT(hTNNT2)遺伝子のエクソン1を含み、任意で、hTNNT2プロモーターおよびエクソン1は一緒に、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0016】
一部の実施形態では、プロモーターはユビキタスプロモーター、任意でCMVプロモーターまたはCAGプロモーターである。
【0017】
一部の実施形態では、発現カセットは、ポリAシグナルを含む。
【0018】
一部の実施形態では、ポリAシグナルは、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリAである。
【0019】
一部の実施形態では、発現カセットは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、任意でWPRE(x)を含む。
【0020】
一部の実施形態では、プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントは、PKP2である。
【0021】
一部の実施形態では、PKP2は機能的PKP2である。
【0022】
一部の実施形態では、PKP2はヒトPKP2である。
【0023】
一部の実施形態では、PKP2は、PKP2アイソフォームAである。
【0024】
一部の実施形態では、PKP2アイソフォームAは、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0025】
一部の実施形態では、PKP2は、PKP2アイソフォームBである。
【0026】
一部の実施形態では、PKP2は、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0027】
一部の実施形態では、PKP2をコードするポリヌクレオチド配列は、ヒトPKP2ポリヌクレオチドである。
【0028】
一部の実施形態では、PKP2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0029】
一部の実施形態では、PKP2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0030】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは少なくとも約4.0kb、少なくとも約4.1kb、少なくとも約4.2kb、少なくとも約4.3kb、少なくとも約4.4kb、または少なくとも約4.5kbを含む。
【0031】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、最大で約4.1kb、最大で約4.2kb、最大で約4.3kb、最大で約4.4kb、最大で約4.5kb、または最大で約4.6kbを含む。
【0032】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、4.0kb~4.6kb、4.0kb~4.5kb、または4.0kb~4.4kbを含むか、あるいはポリヌクレオチドは、4.0kb~4.3kb、4.0kb~4.2kb、または4.0kb~4.1kbを含む。
【0033】
一部の実施形態では、PKP2またはその機能的バリアントは、少なくとも800個または少なくとも830個のアミノ酸を含む。
【0034】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号8~15のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0035】
一部の実施形態では、発現カセットは、5’および3’の逆位末端反復(ITR)によって隣接されている。
【0036】
一部の実施形態では、ITRはAAV2 ITRであり、および/またはITRは、配列番号20~26のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0037】
別の態様では、本開示は、前述の実施形態のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0038】
一部の実施形態では、遺伝子治療ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。
【0039】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV9またはその機能的バリアントである。
【0040】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号77のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。
【0041】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAVrh10またはその機能的バリアントである。
【0042】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号79のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。
【0043】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV6またはその機能的バリアントである。
【0044】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号78のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。
【0045】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAVrh74またはその機能的バリアントである。
【0046】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号80のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。
【0047】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象において疾患または障害を治療および/または予防する方法であって、前述の実施形態のいずれか一つに記載のベクターを対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0048】
一部の実施形態では、疾患または障害は、心障害である。
【0049】
一部の実施形態では、疾患または障害は、心筋症である。
【0050】
一部の実施形態では、心筋症は、不整脈源性右室心筋症(ARVC)である。
【0051】
一部の実施形態では、心筋症は、肥大型心筋症または拡張型心筋症である。
【0052】
一部の実施形態では、疾患または障害は、心筋の線維脂肪性浸潤によって特徴付けられる。
【0053】
一部の実施形態では、疾患または障害は心不全である。
【0054】
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。
【0055】
一部の実施形態では、対象は霊長類である。
【0056】
一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0057】
一部の実施形態では、対象は、PRP2遺伝子に変異を有する。
【0058】
一部の実施形態では、ベクターは、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される。
【0059】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を少なくとも約5%増加させる。
【0060】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を少なくとも約30%増加させる。
【0061】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を少なくとも約70%増加させる。
【0062】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を約5%~約10%増加させる。
【0063】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を約30%~約50%増加させる。
【0064】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を約50%~約70%増加させる。
【0065】
一部の実施形態では、投与は、PKP2発現を約70%~約100%増加させる。
【0066】
一部の実施形態では、本方法は、疾患または障害を治療および/または予防する。
【0067】
一部の実施形態では、本方法は、有効量のベクターを投与する工程を含む。
【0068】
一部の実施形態では、疾患または障害は、対象のPKP2の機能喪失に関連するかまたはそれにより引き起こされる。
【0069】
一部の実施形態では、疾患または障害は、対象のPKP2の機能獲得に関連するかまたはそれにより引き起こされる。
【0070】
一部の実施形態では、対象は、配列番号2の配列を有するヒトPKP2をコードするヒトPKP2遺伝子に対して、p.Arg490Trp、Asp26Asn、Thr50_Val51SerfsX60、Arg79X、Tyr86X、Gln133X、Val406SerfsX3、Tyr616X、Trp676X、Cys796Arg、Cys796E、Tyr807X、Glu62Lys、S688P、Trp848X、Y86X、V406X、Y616X、W848X、およびY807Xから選択されるアミノ酸置換を引き起こす変異を有する。
【0071】
一部の実施形態では、本方法は、有効量のベクターを含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0072】
一部の実施形態では、本方法は、約1×1011ベクターゲノムから約1×1013ベクターゲノムのベクターを対象に投与する工程、約1×1012ベクターゲノムから約1×1014ベクターゲノムのベクターを対象に投与する工程、または約1×1013ベクターゲノムから約1×1015ベクターゲノムのベクターを対象に投与する工程を含む。
【0073】
別の態様では、本開示は、前述の実施形態のいずれか一つに記載のベクターを含む、医薬組成物を提供する。
【0074】
別の態様では、本開示は、前述の実施形態のいずれか一つに記載のベクターまたは前述の実施形態に記載の医薬組成物および任意で使用説明書を含むキットを提供する。
【0075】
別の態様では、本開示は、任意で前述の実施形態のいずれか一つに記載の方法による、疾患または障害の治療における前述の実施形態のいずれか一つに記載のベクターの使用を提供する。
【0076】
別の態様では、本開示は、任意で前述の実施形態のいずれか一つに記載の方法による、疾患または障害の治療における使用のための前述の実施形態のいずれか一つに記載のベクターを提供する。
【0077】
別の態様では、本開示は、配列番号12~15および89~92のいずれか一つまたは配列番号8~11および93~96のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0078】
一部の実施形態では、プロモーターは、MHCK7プロモーターである。
【0079】
一部の実施形態では、MHCK7プロモーターは、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0080】
一部の実施形態では、PKP2はヒトPKP2である。
【0081】
一部の実施形態では、PKP2は、PKP2アイソフォームAである。
【0082】
一部の実施形態では、PKP2アイソフォームAは、配列番号1と少なくとも80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0083】
別の態様では、本開示は、前述の実施形態のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0084】
一部の実施形態では、遺伝子治療ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。
【0085】
一部の実施形態では、rAAVベクターはAAV9ベクターである。
【0086】
一部の実施形態では、rAAVベクターはAAVrh74ベクターである。
【0087】
別の態様では、本開示は、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された対象において心障害を治療および/または予防する方法であって、前述の実施形態のいずれか一つに記載のベクターを対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0088】
一部の実施形態では、心障害は、心筋症、任意で不整脈源性右室心筋症(ARVC)、肥大型心筋症、または拡張型心筋症である。
【0089】
一部の実施形態では、心障害は心不全である。
【0090】
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。
【0091】
一部の実施形態では、ベクターは、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される。
【0092】
一部の実施形態では、本方法は、左心室駆出率(LVEF%)の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0093】
一部の実施形態では、本方法は、左心室短縮率(FS%)の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0094】
一部の実施形態では、本方法は、平方ミリメートル単位の右心室面積(RV面積(mm2))の増加を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0095】
一部の実施形態では、本方法は、毎秒ミリメートル単位の右心室速度時間積分(RV VTI(mm/秒))の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0096】
一部の実施形態では、本方法は、左心室または右心室の線維症の増加を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0097】
様々な他の態様および実施形態が、以下の詳細な説明に開示されている。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1図1は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号12である。発現カセットは配列番号8である。本明細書に記載のMHCK7プロモーターは、図中「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図2図2は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号13である。発現カセットは配列番号9である。
図3図3は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号14である。発現カセットは配列番号10である。本明細書に記載のMHCK7プロモーターは、図中「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図4図4は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号15である。発現カセットは配列番号11である。
図5図5A図5Bは、形質導入された分化AC16細胞におけるPKP2タンパク質の発現を示す。図5Aは、PKP2(上パネル)またはローディングコントロールであるGAPDH(下パネル)のウェスタンブロット(WB)を示す。図5Bは、ウェスタンブロットの棒グラフを示す。AAVベクター血清型(AAV9またはrh74)およびプロモーター(MHCK7またはhTnT)が記録される。対照には、GFPベクター(CON-GFP)および形質導入なし(Tdxnなし)が含まれていた。
図6図6A図6Dは、正常なマウス(左の棒)、未処置PKP2ノックアウトマウス(真ん中の棒、cKO PKP2)、または処置されたマウス(右の棒)に対する左心室駆出率(LVEF%)を示す。図6Aは、AAV9ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAV9-MHCK7)を用いた結果を示す。図6Bは、AAVrh.74ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAVrh.74-MHCK7)を用いた結果を示す。図6Cは、AAV9ベクターおよびhTnTプロモーター(AAV9-hTnT)を用いた結果を示す。図6Dは、AAVrh.74ベクターおよびhTnTプロモーター(AAVrh.74-hTnT)を用いた結果を示す。
図7図7A図7Dは、正常なマウス(左の棒)、未処置PKP2ノックアウトマウス(真ん中の棒、cKO PKP2)、または処置されたマウス(右の棒)に対する左心室短縮率(FS%)を示す。図7Aは、AAV9ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAV9-MHCK7)を用いた結果を示す。図7Bは、AAVrh.74ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAVrh.74-MHCK7)を用いた結果を示す。図7Cは、AAV9ベクターおよびhTnTプロモーター(AAV9-hTnT)を用いた結果を示す。図7Dは、AAVrh.74ベクターおよびhTnTプロモーター(AAVrh.74-hTnT)を用いた結果を示す。
図8図8A図8Dは、正常なマウス(左の棒)、未処置PKP2ノックアウトマウス(真ん中の棒、cKO PKP2)、または処置されたマウス(右の棒)の右心室面積を平方ミリメートル(RV面積(mm))で示す。図8Aは、AAV9ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAV9-MHCK7)を用いた結果を示す。図8Bは、AAVrh.74ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAVrh.74-MHCK7)を用いた結果を示す。図8Cは、AAV9ベクターおよびhTnTプロモーター(AAV9-hTnT)を用いた結果を示す。図8Dは、AAVrh.74ベクターおよびhTnTプロモーター(AAVrh.74-hTnT)を用いた結果を示す。
図9図9A図9Dは、正常なマウス(左の棒)、未処置PKP2ノックアウトマウス(真ん中の棒、cKO PKP2)、または処置されたマウス(右の棒)について、右心室速度時間積分を毎秒ミリメートル(RV VTI(mm/秒))で示す。図9Aは、AAV9ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAV9-MHCK7)を用いた結果を示す。図9Bは、AAVrh.74ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAVrh.74-MHCK7)を用いた結果を示す。図9Cは、AAV9ベクターおよびhTnTプロモーター(AAV9-hTnT)を用いた結果を示す。図9Dは、AAVrh.74ベクターおよびhTnTプロモーター(AAVrh.74-hTnT)を用いた結果を示す。
図10図10A図10Bは、心臓のトリクローム組織学的染色後のパーセントコラーゲンの定量化に基づく、左心室および右心室における線維症の程度を示す。条件付きPKP2遺伝子ノックアウトのない対照動物(Cre Neg群)は、コラーゲンがほとんどないことが見出され、製剤緩衝液を受けている対照PKP2ノックアウト動物(CKO FB群)は、左右両方の心室において、コラーゲンの実質的に高い割合を有することが見出された。AAVを介したPKP2の過剰発現は、すべてのAAV注射群で様々な程度のコラーゲンの強力な減衰をもたらした〔全群でn=4;p値は、ボンフェローニ事後分析による一元配置分散分析の結果を反映する〕。図10Aは、左心室のパーセントコラーゲンの棒グラフである。図10Bは、右心室のパーセントコラーゲンの棒グラフである。
図11図11は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号89である。発現カセットは配列番号93である。本明細書に記載のMHCK7プロモーターは、図中「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図12図12は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号90である。発現カセットは配列番号94である。
図13図13は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号91である。発現カセットは配列番号95である。本明細書に記載のMHCK7プロモーターは、図中「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図14図14は、ベクターゲノムの非限定的な例を表す図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号92である。発現カセットは配列番号96である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
発明の詳細な説明
本開示は、PKP2ポリペプチドまたはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドを送達するPKP2用の遺伝子治療ベクターを、使用方法、ならびに他の組成物および方法と共に提供する。特定の実施形態では、本開示は、PKP2ポリペプチドまたはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたプロモーター配列を含む、遺伝子治療ベクターに関する。一部の実施形態では、プロモーターは、ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーターである。一部の実施形態では、AAVベクターはAAV9ベクターである。一部の実施形態では、プロモーターはMHCK7プロモーターであり、AAVベクターはAAV9ベクターである。一部の実施形態では、プロモーターは、hTNNT2プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターはhTNNT2プロモーターであり、AAVベクターはAAV9ベクターである。一部の実施形態では、PKP2はヒトPKP2aである。一部の実施形態では、PKP2はヒトPKP2bである。一部の実施形態では、AAVベクターはrh74ベクターである。一部の実施形態では、プロモーターはMHCK7プロモーターであり、AAVベクターはrh74ベクターである。一部の実施形態では、プロモーターは、hTNNT2プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターはhTNNT2プロモーターであり、AAVベクターはrh74ベクターである。一部の実施形態では、PKP2はヒトPKP2aである。一部の実施形態では、PKP2はヒトPKP2bである。
【0100】
本開示はさらに、本開示の遺伝子治療ベクターを対象に投与することによって、対象における障害または障害を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、障害または障害は、不整脈源性右室心筋症(ARVC)である。
【0101】
特定の実施形態では、治療される対象は、PKP2遺伝子中に一つまたは複数の変異を有するARVC患者である。ARVC患者の半数以上が、タンパク質プラコフィリン-2(PKP2)をコードするデスモソーム遺伝子PKP2において変異を保有している。PKP2は、ブルガダ症候群(BrS)および特発性心室細動とも関連している。これは、アルマジロリピートおよびプラコフィリンタンパク質ファミリーのメンバーである。タンパク質は、N末端ドメインおよびC末端ドメインに隣接した九つの中央で保存されたアルマジロリピートドメインを含有する。カドヘリンを細胞骨格内の中間フィラメントに連結させる働きをする。
【0102】
プラコフィリン2は、細胞デスモソームおよび核に局在し、プラコグロビン、デスモプラキン、およびデスモソームカドヘリンを、N末端頭部ドメインを介して結合する。PKP2は、細胞間接触を促進するデスモソーム中間フィラメントアセンブリに横方向の安定化力を提供する。また、細胞内シグナル伝達調節、電気生理学的および輸送調節、ならびに転写プロセスの制御における役割も果たす可能性がある。
【0103】
野生型マウスの心臓にPKP2aのC末端欠失変異体(R735X)をコードするAAV9ベクターを静脈内注射すると、処置したマウスが運動訓練を受けると、ARVCの出現が加速される。Cruz et al.J Am Coll Cardiol.65(14):1438-50(2015)を参照されたい。変異PKP2aは疾患の表現型を引き起こし、非変異PKP2aを発現するコントロールAAV9ベクターは、野生型マウスで表現型の変化を引き起こさない。野生型ヒトPKP2aの異種発現は、疾患または機能変化をしない。これらの研究は、変異型PKP2aが疾患の表現型を引き起こす可能性があることを実証している。非変異PKP2の異種発現は、野生型マウスにおいて表現型の変化をもたらさなかったため、PKP2の治癒的役割を実証できなかった。
【0104】
本発明によれば、PKP2またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドであって、PKP2またはその機能的バリアントが、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸を含む(例えば、Arg-735ではC末端切断なし)ポリヌクレオチドは、遺伝子治療ベクターの生成に用いられ得る。結果として生じるベクターは、例えば、ARVC、ブルガダ症候群(BrS)、特発性心室細動、拡張型心筋症(DCM)などの例えば、PKP2-関連疾患または障害などの疾患または障害の治療に使用され得る。
【0105】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施において使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、本明細書に記載される材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0106】
本明細書に記載されるすべての刊行物および特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書の任意の定義を含めて本出願が優先される。しかしながら、本明細書に引用される任意の参照文献、記事、刊行物、特許、特許公開、および特許出願の言及は、有効な先行技術を構成するか、または世界の任意の国で共通の一般知識の一部を形成するという承認または任意の形態の提案とされるものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0107】
本記載では、別段の示唆がない限り、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲、または整数範囲は、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその分数(例えば、整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。用語「約」は、数字または数の直前にある場合、その数字または数がプラスまたはマイナス10%の範囲であることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「a」および「an」は、別段の示唆がない限り、列挙された構成要素のうちの「一つまたは複数」を指すことが理解されるべきである。代替物(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。用語「および/または」は、選択肢の一方または両方を意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む(include)」および「含む(comprise)」は同義で使用される。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」および「同一である」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に関して、BLASTアルゴリズムによって生成されたアライメントなどの、その「クエリー」配列と「対象」配列とのアライメントにおける、完全に一致している残基のパーセンテージを指す。同一性は、特に明記しない限り、対象配列の全長にわたって計算される。したがって、クエリー配列が、対象配列と整列しているときに、対象配列中の残基の少なくともx%(切り捨て)が、クエリー配列中の対応する残基と完全に一致するように整列される場合、クエリー配列は、対象配列と「少なくともx%の同一性を共有する」。対象配列が可変位置(例えば、Xで示される残基)を有する場合、クエリー配列中の任意の残基へのアライメントは、一致としてカウントされる。配列アライメントは、NCBI Blastサービス(BLAST+バージョン2.12.0)を使用して実施されてもよい。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「動作可能に連結された」は、二つ以上の核酸(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、転写された配列に対する転写調節配列の機能的関係を指す。例えば、プロモーター配列は、適切な宿主細胞または他の発現系においてコード配列の転写を刺激するか、または調節する場合、コード配列に動作可能に連結される。一般に、転写された配列に動作可能に連結されたプロモーター転写調節配列は、転写された配列に物理的に連続しており、すなわち、それらはシス作用性である。しかしながら、エンハンサーなどのいくつかの転写調節配列は、それらが転写を促進するコード配列に物理的に連続している、または近接して配置されている必要はない。
【0110】
本明細書で使用される場合、「AAVベクター」または「rAAVベクター」は、AAV逆位末端反復配列(ITR)が隣接する一つまたは複数の対象ポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含む組換えベクターを指す。かかるAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物をコードし発現するプラスミドでトランスフェクトされた宿主細胞中に存在するとき、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされ得る。あるいは、AAVベクターは、rep遺伝子とcap遺伝子を発現するように安定的に操作された宿主細胞を使用して、感染性粒子にパッケージングされてもよい。
【0111】
本明細書で使用される場合、「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」は、少なくとも一つのAAVキャプシドタンパク質およびキャプシド化ポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子を指す。本明細書で使用される場合、粒子が、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、通常、これは、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と呼ばれる。したがって、AAVベクター粒子の産生は、ベクターがAAVベクター粒子内に含まれるため、必然的にAAVベクターの産生を含む。
【0112】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」は、真核細胞においてポリヌクレオチドからのRNA転写の開始を促進することができるポリヌクレオチド配列を指す。
【0113】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」は、ベクター(例えば、rAAVビリオン)によってパッケージングされたポリヌクレオチド配列を指し、隣接配列(AAV中、逆位末端反復)を含む。用語「発現カセット」および「ポリヌクレオチドカセット」は、隣接ITR配列間のベクターゲノムの部分を指す。「発現カセット」は、ベクターゲノムが、発現を駆動するエレメント(例えば、プロモーター)に動作可能に連結された遺伝子産物をコードする少なくとも一つの遺伝子を含むことを意味する。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「必要としている患者」または「必要としている対象」は、本明細書に開示される組換え遺伝子治療ベクターまたは遺伝子編集システムを用いた治療または改善に適している疾患、障害、または状態のリスクのあるまたは罹患している患者または対象を指す。必要とする患者または対象は、例えば、心臓に関連する障害と診断された患者または対象であってもよい。対象は、PKP2タンパク質の異常な発現を引き起こす、PKP2遺伝子の変異、またはPKP2遺伝子の全部もしくは一部の欠失、または遺伝子調節配列の欠失を有し得る。「対象」および「患者」は、本明細書では互換的に使用される。本明細書に記載される方法によって治療される対象は、成人または子供であってよい。対象は年齢の範囲であり得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「バリアント」は、親タンパク質と比較して、一つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有するタンパク質を指す。本明細書で使用される場合、用語「機能的バリアント」は、親タンパク質と比較して、一つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有し、親タンパク質の一つまたは複数の所望の活性を保持するタンパク質を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「治療する」とは、疾患または障害の一つまたは複数の症状を改善することを指す。用語「予防する」は、疾患もしくは障害の一つまたは複数の症状の発症を遅延もしくは中断すること、またはPKP2-関連疾患もしくは障害、例えば、不整脈源性右室心筋症(ARVC)の進行を遅延させることを指す。
【0117】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは約4.7kbの長さであり、二つの約145ヌクレオチド逆位末端反復(ITR)を含む。AAVには複数の公知のバリアントがあり、抗原エピトープによって分類される場合、血清型と呼ばれることもある。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV-1の全ゲノムは、GenBank登録番号NC_002077で提供され、AAV-2の全ゲノムは、GenBank 登録番号NC_001401およびSrivastava et al.,J.Virol.,45:555-564(1983)で提供され、AAV-3の全ゲノムは、GenBank登録番号NC_1829で提供され、AAV-4の全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001829で提供され、AAV-5のゲノムは、GenBank登録番号AF085716で提供され、AAV-6の全ゲノムは、GenBank登録番号NC_00 1862で提供され、AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenBank登録番号AX753246およびAX753249で提供され、AAV-9のゲノムは、Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)で提供され、AAV-10のゲノムはMol.Ther.,13(1):67-76(2006)で提供され、AAV-11ゲノムはVirology,330(2):375-383(2004)で提供される。AAVrh.74ゲノムの配列は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,434,928号で提供されている。ウイルスDNA複製(rep)、キャプシド形成/パッケージング、および宿主細胞染色体組込みを導くシス作用配列は、AAV ITR内に含まれる。三つのAAVプロモーター(それらの相対マップ位置からp5、p19、およびp40と命名)は、rep遺伝子およびcap遺伝子をコードする二つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一のAAVイントロン(ヌクレオチド2107および2227)のディファレンシャルスプライシング(differential splicing)と連動して二つのrepプロモーター(p5およびp19)は、rep遺伝子から四つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、およびrep40)を産生する。Repタンパク質は、ウイルスゲノムの複製を最終的に担う複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、三つのキャプシドタンパク質VP1,VP2、およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位は、三つの関連するキャプシドタンパク質の産生に関与する。単一のコンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95にある。AAVのライフサイクルと遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)で概説されている。
【0118】
AAVは、例えば遺伝子治療などで外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的な独自の特徴を有している。培養中の細胞のAAV感染は非細胞変性であり、ヒトおよび他の動物の自然感染は無症状および無症候性である。さらに、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染し、インビボで多くの異なる組織を標的化する可能性を許容する。さらに、AAVはゆっくりと分裂する細胞と分裂しない細胞に形質導入し、転写的に活性な核エピソーム(染色体外エレメント)として、これらの細胞の生存期間に本質的に存続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド内にクローン化DNAとして挿入され、これにより組換えゲノムの構築が実現可能となる。さらに、AAV複製およびゲノムのキャプシド化を指示するシグナルは、AAVゲノムのITR内に含まれているため、ゲノムの内部約4.3kbの一部またはすべて(複製および構造キャプシドタンパク質、rep-capをコードする)は、外来DNAで置換されてもよい。AAVベクターを生成するために、repタンパク質およびcapタンパク質をトランスで提供してもよい。AAVのもう一つの重要な特徴は、AAVが非常に安定した強力なウイルスであることである。アデノウイルスの不活化に使用される条件(56°~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性を軽減する。AAVは凍結乾燥することもできる。最後に、AAV感染細胞は重複感染に耐性がない。
【0119】
本発明の実施に有用な遺伝子送達ウイルスベクターは、分子生物学の技術分野で周知の方法論を利用して構築され得る。典型的には、導入遺伝子を担持するウイルスベクターは、導入遺伝子、適切な調節因子、およびウイルスタンパク質の産生に必要な要素をコードするポリヌクレオチドから構築され、これは細胞形質導入を媒介する。かかる組換えウイルスは、当技術分野で周知の技術によって、例えば、パッケージング細胞をトランスフェクトすることによって、またはヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過性トランスフェクションによって生成され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例には、HeLa細胞、SF9細胞(任意選択的にバキュロウイルスヘルパーベクターを有する)、293細胞などが含まれるが、これらに限定されない。US2017/0218395A1に記載されるように、ヘルペスウイルス系システムを使用してAAVベクターを産生することができる。かかる複製欠損組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコルは、例えば、W095/14785、W096/22378、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号およびW094/19478に記載されており、それら各々の完全な内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
本開示は、プラコフィリン-2(PKP2)タンパク質またはポリペプチドに関連する組成物および使用方法を企図する。PKP2の様々な変異は、van Tintelen et al.Circulation 113:1650-58(2006);Novelli Front.Cardiovasc.Med.(2008);および他の情報源に記載されているような疾患を含む、心筋症および心不全に関連することが知られている。したがって、ウイルスベクターを介したPKP2遺伝子の送達は、心筋症および心不全などのPKP2-関連ヒト疾患に対する実行可能な治療法としての役目を果たし得る。
【0121】
不整脈源性右室心筋症(ARVC)を有する人では、230を超えるPKP2遺伝子の変異が特定されている。(“PKP2 gene,”MedlinePlusを参照)。この状態は、心臓の二つの下腔の一つである右心室を囲む心筋に最も一般的に影響を与える。ARVCは、異常な心拍(不整脈)および突然死のリスクを高める。PKP2遺伝子変異の一部は、異常に短いプラコフィリン2の産生につながる。他の変異は、そのタンパク質構成要素(アミノ酸)のうちの一つまたは複数を追加、削除、または変更することによって、プラコフィリン2の構造を変化させる。研究は、改変されたタンパク質が、デスモソームの形成および機能を損なうことを示唆している。
【0122】
正常なデスモソームがなければ、心筋の細胞は互いに分離し、特に心筋にストレスが加わると(激しい運動中など)死滅する。損傷した心筋は、徐々に脂肪および瘢痕組織によって置換される。この異常な組織が蓄積すると、右心室の壁が伸張し、心臓が効果的に血液をポンプで送ることができなくなる。これらの変化はまた、不整脈につながる可能性がある、鼓動を制御する電気信号も破壊する。PKP2-関連疾患の説明は、以下の参考文献に見出すことができる:Bonne et al.Genomics 51:452-454(1998)[PubMed:9721216];Bonne et al.Cytogenet.Cell Genet.88:286-287(2000)[PubMed:10828611];Dalal et al.,Circulation 113:1641-1649(2006)[PubMed:16549640];Gerull et al.Nature Genet.36:1162-1164 (2004 [PubMed:15489853];Grossmann et al.J.Cell Biol.167:149-160(2004)[PubMed:15479741];Marcus et al.Circulation 65:384-398(1982)[PubMed:7053899];and Mertens et al.J.Cell Biol.135:1009-1025(1996)[PubMed:8922383].See also OMIM.org entry 602861(“PLAKOPHILIN 2;PKP2”)。
【0123】
ヒトPKP2aおよびそのアイソフォームPKP2bの天然配列を以下に示し、Arg-735に下線を引いた:
PKP2a(配列番号1)-837アミノ酸
1 MAAPGAPAEY GYIRTVLGQQ ILGQLDSSSL ALPSEAKLKL
41 AGSSGRGGQT VKSLRIQEQV QQTLARKGRS SVGNGNLHRT
81 SSVPEYVYNL HLVENDFVGG RSPVPKTYDM LKAGTTATYE
121 GRWGRGTAQY SSQKSVEERS LRHPLRRLEI SPDSSPERAH
161 YTHSDYQYSQ RSQAGHTLHH QESRRAALLV PPRYARSEIV
201 GVSRAGTTSR QRHFDTYHRQ YQHGSVSDTV FDSIPANPAL
241 LTYPRPGTSR SMGNLLEKEN YLTAGLTVGQ VRPLVPLQPV
281 TQNRASRSSW HQSSFHSTRT LREAGPSVAV DSSGRRAHLT
321 VGQAAAGGSG NLLTERSTFT DSQLGNADME MTLERAVSML
361 EADHMLPSRI SAAATFIQHE CFQKSEARKR VNQLRGILKL
401 LQLLKVQNED VQRAVCGALR NLVFEDNDNK LEVAELNGVP
441 RLLQVLKQTR DLETKKQITG LLWNLSSNDK LKNLMITEAL
481 LTLTENIIIP FSGWPEGDYP KANGLLDFDI FYNVTGCLRN
521 MSSAGADGRK AMRRCDGLID SLVHYVRGTI ADYQPDDKAT
561 ENCVCILHNL SYQLEAELPE KYSQNIYIQN RNIQTDNNKS
601 IGCFGSRSRK VKEQYQDVPM PEEKSNPKGV EWLWHSIVIR
641 MYLSLIAKSV RNYTQEASLG ALQNLTAGSG PMPTSVAQTV
681 VQKESGLQHT RKMLHVGDPS VKKTAISLLR NLSRNLSLQN
721 EIAKETLPDL VSIIPDTVPS TDLLIETTAS ACYTLNNIIQ
761 NSYQNARDLL NTGGIQKIMA ISAGDAYASN KASKAASVLL
801 YSLWAHTELH HAYKKAQFKK TDFVNSRTAK AYHSLKD
PKP2b(配列番号2)-881アミノ酸
1 MAAPGAPAEY GYIRTVLGQQ ILGQLDSSSL ALPSEAKLKL
41 AGSSGRGGQT VKSLRIQEQV QQTLARKGRS SVGNGNLHRT
81 SSVPEYVYNL HLVENDFVGG RSPVPKTYDM LKAGTTATYE
121 GRWGRGTAQY SSQKSVEERS LRHPLRRLEI SPDSSPERAH
161 YTHSDYQYSQ RSQAGHTLHH QESRRAALLV PPRYARSEIV
201 GVSRAGTTSR QRHFDTYHRQ YQHGSVSDTV FDSIPANPAL
241 LTYPRPGTSR SMGNLLEKEN YLTAGLTVGQ VRPLVPLQPV
281 TQNRASRSSW HQSSFHSTRT LREAGPSVAV DSSGRRAHLT
321 VGQAAAGGSG NLLTERSTFT DSQLGNADME MTLERAVSML
361 EADHMLPSRI SAAATFIQHE CFQKSEARKR VNQLRGILKL
401 LQLLKVQNED VQRAVCGALR NLVFEDNDNK LEVAELNGVP
441 RLLQVLKQTR DLETKKQITD HTVNLRSRNG WPGAVAHACN
481 PSTLGGQGGR ITRSGVRDQP DQHGLLWNLS SNDKLKNLMI
521 TEALLTLTEN IIIPFSGWPE GDYPKANGLL DFDIFYNVTG
561 CLRNMSSAGA DGRKAMRRCD GLIDSLVHYV RGTIADYQPD
601 DKATENCVCI LHNLSYQLEA ELPEKYSQNI YIQNRNIQTD
641 NNKSIGCFGS RSRKVKEQYQ DVPMPEEKSN PKGVEWLWHS
681 IVIRMYLSLI AKSVRNYTQE ASLGALQNLT AGSGPMPTSV
721 AQTVVQKESG LQHTRKMLHV GDPSVKKTAI SLLRNLSRNL
761 SLQNEIAKET LPDLVSIIPD TVPSTDLLIE TTASACYTLN
801 NIIQNSYQNA RDLLNTGGIQ KIMAISAGDA YASNKASKAA
841 SVLLYSLWAH TELHHAYKKA QFKKTDFVNS RTAKAYHSLK
881 D
【0124】
PKP2-関連疾患の実験モデルの一つはR735Xモデルであり、Cruz et al.J Am Coll Cardiol 65:1438-50(2015)に記載される通りである。R735Xは、PKP2bアイソフォームに従って番号付けされる。PKP2aのR735X変異体は、Arg-690でのC末端切断のため、690アミノ酸長である(PKP2b、配列番号2に対してArg-735)。
【0125】
一部の実施形態では、PKP2タンパク質は、配列番号1または配列番号2のいずれか一つと、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、PKP2タンパク質は、野生型または天然のPKP2タンパク質、例えば、ヒトPKP2aまたはヒトPKP2bである。
【0126】
一部の実施形態では、本開示は、キャプシドおよびベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供し、ベクターゲノムは、プロモーターに動作可能に連結されたPKP2またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示は、キャプシドおよびベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供し、ベクターゲノムは、プロモーターに動作可能に連結されたPKP2をコードするポリヌクレオチド配列を含む。PKP2aをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0127】
PKP2bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号4と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0128】
任意選択的に、ベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド配列は、GCCACCATGG(配列番号5)を含むがこれに限定されないコザック配列を含んでもよい。コザック配列は、PKP2aタンパク質またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列と重複してもよい。例えば、ベクターゲノムは、配列番号6と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列(最初の十個のヌクレオチドがコザック配列を構成する)を含み得る。
【0129】
コザック配列は、PKP2bタンパク質またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列と重複してもよい。例えば、ベクターゲノムは、配列番号7と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列(最初の十個のヌクレオチドがコザック配列を構成する)を含み得る。
【0130】
一実施形態では、コザック配列は、以下のいずれか一つを含む、またはいずれか一つからなる代替コザック配列である:
(gcc)gccRccAUGG(配列番号16);
AGNNAUGN;
ANNAUGG;
ANNAUGC;
ACCAUGG;および
GACACCAUGG(配列番号18)。
【0131】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、コザック配列を含まない。
【0132】
ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されてもよい。例えば、ベクターゲノムは、配列番号87と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、PKP2aをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0133】
ベクターゲノムは、配列番号88と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、PKP2bをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0134】
本開示のAAVビリオンは、ベクターゲノムを含む。ベクターゲノムは、発現カセット(またはポリヌクレオチド配列の発現を必要としない遺伝子編集用途のためのポリヌクレオチドカセット)を含んでもよい。任意の好適な逆位末端反復(ITR)を使用してもよい。ITRは、AAVビリオン中に存在するキャプシドと同じ血清型からのAAV ITRであってもよく、またはキャプシドとは異なる血清型のAAV ITRであってもよい(例えば、AAV2 ITRは、AAV9キャプシドまたはAAVrh74キャプシドを有するAAVビリオンと共に使用されてもよい)。いずれの場合も、キャプシドの血清型は、ビリオンに適用される名称を決定する。ITRは、概して、ベクターゲノムの5’末端および3’末端の要素である。ベクターゲノムはまた、概して、プロモーター、導入遺伝子、3’非翻訳領域(UTR)配列(例えば、WPRE要素)、およびポリアデニル化配列を、5’から3’の順に含有する。変形では、ベクターゲノムは、エンハンサーエレメント(一般にプロモーターの5’側)および/またはエクソン(一般にプロモーターの3’側)を含む。変形では、本開示のベクターゲノムは、遺伝子編集システムで修復テンプレートとして使用される、部分的または完全な導入遺伝子配列をコードする。こうした変形では、ベクターゲノムは、外因性プロモーターを含んでもよく、または遺伝子編集システムは、導入遺伝子を、心臓または筋細胞特異的プロモーターなどの内因性プロモーターを有するゲノム内の座位内に挿入してもよい。
【0135】
一部の実施形態では、5’ITRは、配列番号20と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0136】
一部の実施形態では、5’ITRは、配列番号21と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0137】
一部の実施形態では、5’ITRは、配列番号22と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0138】
一部の実施形態では、5’ITRは、配列番号23と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0139】
一部の実施形態では、3’ITRは、配列番号24と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0140】
一部の実施形態では、3’ITRは、配列番号25と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0141】
一部の実施形態では、3’ITRは、配列番号26と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0142】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、例えば、配列番号27、配列番号28、または配列番号29と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、一つまたは複数のフィラー(filler)配列を含む。
【0143】
一部の実施形態では、PKP2タンパク質、またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列は、プロモーターに動作可能に連結される。特定の実施形態では、プロモーターは、MHCK7プロモーターである。特定の実施形態では、プロモーターは、TNNT2プロモーターである。
【0144】
本開示は、様々なプロモーターの使用を企図する。本開示の実施形態で有用なプロモーターとしては、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、またはCMVエンハンサーと、ニワトリベータ-アクチンプロモーターおよびウサギベータ-グロビン遺伝子の一部(CAG)とから構成されるプロモーター配列が挙げられる。場合によっては、プロモーターは合成プロモーターであってもよい。合成プロモーターの例は、Schlabach et al.PNAS USA.107(6):2538-43(2010)によって提供される。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号30と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0145】
一部の実施形態では、PKP2タンパク質、またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに動作可能に連結される。誘導性プロモーターは、薬剤の添加もしくは蓄積に応答して、または薬剤の除去、分解、もしくは希釈に応答して、ポリヌクレオチド配列を転写的に発現させるか、または転写的に発現させないように構成され得る。薬剤は薬物であってもよい。薬剤は、テトラサイクリンまたはその誘導体の一つであってもよく、これには限定されないが、ドキシサイクリンが含まれる。場合によっては、誘導性プロモーターは、tet-onプロモーター、tet-offプロモーター、化学的に調節されたプロモーター、物理的に調節されたプロモーター(すなわち、光の存在もしくは不在、または低温もしくは高温に応答するプロモーター)である。誘導性プロモーターには、重金属イオン誘導性プロモーター(マウス乳腺腫瘍ウイルス(mMTV)プロモーターまたは様々な成長ホルモンプロモーターなど)、およびT7 RNAポリメラーゼの存在下で活性なT7ファージ由来のプロモーターが含まれる。誘導性プロモーターのこのリストは非限定的である。
【0146】
場合によっては、プロモーターは、非心細胞よりも心細胞で発現を駆動することができるプロモーターなどの組織特異的プロモーターである。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターは、以下に限定されないが、デスミン(Des)、アルファ-ミオシン重鎖(α-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心筋トロポニンC(cTnC)、心筋トロポニンT(hTNNT2)、筋クレアチンキナーゼ(CK)、およびMHCK7などのそれらのプロモーター/エンハンサーの領域の組み合わせを含む、任意の様々な心細胞特異的プロモーターから選択される。場合によっては、プロモーターはユビキタスプロモーターである。「ユビキチンプロモーター」は、実験条件または臨床条件下で組織特異的ではないプロモーターを指す。場合によっては、ユビキタスプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)、イトメガロウイルス初期エンハンサーエレメント、ニワトリベータ-クチン遺伝子イントロン、ウサギベータ-ロビン遺伝子(CAG)、ユビキチンC(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EF1-アルファ)、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、シミアンウイルス40(SV40)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ニワトリベータアクチン、およびヒトベータアクチンプロモーターのいずれか一つである。
【0147】
一部の実施形態では、プロモーター配列は、表3から選択される。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号31~51と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号31~51のいずれか一つのポリヌクレオチド配列の断片、例えば、配列番号31~51のいずれか一つの少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%を含む断片を含む。
【0148】
(表3)
【0149】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号31と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号32と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号33と、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0150】
プロモーターの更なる例示的な例は、シミアンウイルス40由来のSV40後期プロモーター、バキュロウイルス多面体エンハンサー/プロモーターエレメント、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV tk)、サイトメガロウイルス(CMV)由来の最初期プロモーター、およびLTRエレメントを含む様々なレトロウイルスプロモーターである。多種多様な他のプロモーターが公知であり、当技術分野で一般的に利用可能であり、多くのそのようなプロモーターの配列は、GenBankデータベースなどの配列データベースで利用可能である。
【0151】
場合によっては、本開示のベクターは、エンハンサー、イントロン、ポリAシグナル、2Aペプチドコード配列、WPRE(ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)、およびHPRE(B型肝炎転写後調節エレメント)からなる群から選択される一つまたは複数の調節エレメントをさらに含む。
【0152】
一部の実施形態では、ベクターはCMVエンハンサーを含む。
【0153】
特定の実施形態では、ベクターは、一つまたは複数のエンハンサーを含む。特定の実施形態では、エンハンサーは、CMVエンハンサー配列、GAPDHエンハンサー配列、β-アクチンエンハンサー配列、またはEF1-αエンハンサー配列である。前述の配列は、当該技術分野で公知である。例えば、CMV最初期(IE)エンハンサーの配列は、配列番号50である。
【0154】
特定の実施形態では、ベクターは、一つまたは複数のイントロンを含む。特定の実施形態では、イントロンは、ウサギグロビンイントロン配列、ニワトリβ-アクチンイントロン配列、合成イントロン配列、SV40イントロン、またはEF1-αイントロン配列である。
【0155】
特定の実施形態では、ベクターはポリA配列を含む。特定の実施形態では、ポリA配列は、ウサギグロビンポリA配列、ヒト成長ホルモンポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列、PGKポリA配列、SV40ポリA配列、またはTKポリA配列である。一部の実施形態では、ポリAシグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGHpA)であってもよい。
【0156】
特定の実施形態では、ベクターは、一つまたは複数の転写物安定化エレメントを含む。特定の実施形態では、転写物安定化エレメントは、WPRE配列、HPRE配列、足場付着領域、3’UTR、または5’UTRである。特定の実施形態では、ベクターは、5’UTRおよび3’UTRの両方を含む。
【0157】
一部の実施形態では、ベクターは、表4から選択される5’非翻訳領域(UTR)を含む。一部の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号51~61のいずれか一つと、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0158】
(表4)
【0159】
一部の実施形態では、ベクターは、表5から選択される3’非翻訳領域を含む。一部の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号62~70のいずれか一つと、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0160】
(表5)
【0161】
一部の実施形態では、ベクターは、表6から選択されるポリアデニル化(ポリA)シグナルを含む。一部の実施形態では、ポリAシグナルは、配列番号71~75のいずれか一つと、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0162】
(表6)
【0163】
例示的ベクターゲノムは、図1~4、および11~14に示され、配列番号12~15、および89~92として提供される。各配列の発現カセットは、配列番号8~11または93~96である。一部の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号12~15、および89~92のいずれか一つと、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を共有する、任意にITR配列を伴うか、または伴わないポリヌクレオチド配列を含むか、それから本質的になる、またはそれからなる。一部の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号8~11、および93~96のいずれか一つと、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含むか、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0164】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、MHCK7プロモーター、PKPa導入遺伝子、WPRE(x)エレメント、pAGH-HS配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号31、配列番号3、6、および87のいずれか一つ、配列番号63、および配列番号75、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2a導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0165】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、hTnnT2プロモーター、PKPa導入遺伝子、WPRE(x)エレメント、pAGH-HS配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号32または33、配列番号3、6、および87のいずれか一つ、配列番号63、および配列番号75、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2a導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0166】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、MHCK7プロモーター、PKPb導入遺伝子、WPRE(x)エレメント、pAGH-HS配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号31、配列番号4、7、および88のいずれか一つ、配列番号63、および配列番号75、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2b導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0167】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、hTnnT2プロモーター、PKPb導入遺伝子、WPRE(x)エレメント、pAGH-HS配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号32または33、配列番号4、7、および88のいずれか一つ、配列番号63、および配列番号75、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2b導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0168】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、MHCK7プロモーター、PKPa導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号31、配列番号3、6、および87のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2a導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0169】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、hTnnT2プロモーター、PKPa導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号32または33、配列番号3、6、および87のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2a導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0170】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、MHCK7プロモーター、PKPb導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号31、配列番号4、7、および88のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2b導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0171】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、hTnnT2プロモーター、PKPb導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号32または33、配列番号4、7、および88のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2b導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0172】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、MHCK7プロモーター、SV40イントロン、PKPa導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、5’から3’の順に、ポリヌクレオチド配列の配列番号31、配列番号53または61、配列番号3、6、および87のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2a導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0173】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、hTnnT2プロモーター、SV40イントロン、PKPa導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号32または33、配列番号53または61、配列番号3、6、および87のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2a導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0174】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、MHCK7プロモーター、SV40イントロン、PKPb導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、5’から3’の順に、ポリヌクレオチド配列の配列番号31、配列番号53または61、配列番号4、7、および88のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2b導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0175】
特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’ITR、hTnnT2プロモーター、SV40イントロン、PKPb導入遺伝子、任意にWPRE(x)エレメント、ポリアデニル化配列、および3’ITRを、5’から3’の順に含む。ベクターゲノムは、ポリヌクレオチド配列の配列番号32または33、配列番号53または61、配列番号4、7、および88のいずれか一つ、または前述の各々に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を、5’から3’の順に含んでもよい。特定の実施形態では、このベクターゲノムは、AAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この実施形態のPKP2b導入遺伝子は、全長導入遺伝子、すなわち、少なくとも800または少なくとも830のアミノ酸のPKPをコードする導入遺伝子である。
【0176】
それぞれの場合で、任意でWPRE要素が存在してもよく、または存在しなくてもよい。
【0177】
アデノ随伴ウイルスベクター
本発明の実践において有用なAAVベクターは、アデノウイルスベースおよびヘルパーフリーシステムを含む様々なシステムを使用して、AAVビリオン(ウイルス粒子)にパッケージングされ得る。AAV生物学における標準的な方法には、以下に記載されるものが含まれる。Kwon and Schaffer.Pharm Res.(2008)25(3):489-99;Wu et al.Mol.Ther.(2006)14(3):316-27.Burger et al.Mol.Ther.(2004)10(2):302-17;Grimm et al.Curr Gene Ther.(2003)3(4):281-304;Deyle DR,Russell DW.Curr Opin Mol Ther.(2009)11(4):442-447;McCarty et al.Gene Ther.(2001)8(16):1248-54;およびDuan et al.Mol Ther.(2001)4(4):383-91。ヘルパーフリーシステムには、US6,004,797、US7,588,772、およびUS7,094,604に記載されているものが含まれていた。
【0178】
rAAVゲノム中のAAV DNAは、組換えウイルスが誘導され得る任意のAAVバリアントまたは血清型由来であってもよく、AAVバリアントまたは血清型には、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、およびAAVrh10が含まれるが、これらに限定されない。シュードタイプ化されたrAAVの製造は、例えば、WO01/83692に開示されている。キャプシド変異を伴うrAAVなどの他のタイプのrAAVバリアントも意図されている。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は、当該技術分野で公知である。
【0179】
場合によっては、rAAVは自己相補的なゲノムを含む。本明細書で定義されるように、「自己相補的」または「二本鎖」ゲノムを含むrAAVは、以下に記載されるように、rAAVのコード領域が分子内二本鎖DNAテンプレートを形成するように構成されるように操作されたrAAVを指す。McCarty et al.Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis.Gene Therapy.8(16):1248-54(2001)。本開示は、感染(形質導入のような)時に、rAAVゲノムの第二の鎖の細胞介在性合成を待つのではなく、scAAVの二つの相補的な半分が、すぐに複製および転写ができる一つの二重鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成するので、場合によっては、自己相補的ゲノムを含むrAAVの使用を企図する。rAAVに見られる完全コード容量(4.7~6kb)の代わりに、自己相補的ゲノムを含むrAAVは、その量の約半分(約2.4kb)しか保持できないことが理解されよう。
【0180】
他の場合では、rAAVベクターは一本鎖のゲノムを含む。本明細書で定義されるように、「単一標準」ゲノムは、自己相補的ではないゲノムを指す。ほとんどの場合、非組換えAAVは一本鎖DNAゲノムを有している。rAAVは、細胞の効率的な形質導入を達成するためにscAAVであるべきといういくつかの兆候があった。しかしながら、本開示は、rAAVベクターの他の遺伝子改変が、標的細胞において最適な遺伝子転写を得るために有益であり得るという理解の下で、自己相補的ゲノムではなく、一本鎖ゲノムを有するかもしれないrAAVベクターを企図している。場合によっては、本開示は、マウス眼の前眼部への効率的な遺伝子導入を達成できる一本鎖rAAVベクターに関する。Wang et al.Single stranded adeno-associated virus achieves efficient gene transfer to anterior segment in the mouse eye.PLoS ONE 12(8):e0182473(2017)を参照されたい。
【0181】
場合によっては、rAAVベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh10、またはAAVrh74のベクターである。シュードタイプ化されたrAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示されている。キャプシド変異を伴うrAAVなどの他のタイプのrAAVバリアントも意図されている。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。場合によっては、rAAVベクターは血清型AAV9のベクターである。一部の実施形態では、当該rAAVベクターは、血清型AAV9のベクターであり、一本鎖ゲノムを含む。一部の実施形態では、当該rAAVベクターは、血清型AAV9のベクターであり、自己相補的ゲノムを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV2の逆位末端反復(ITR)の配列を含む。一部の実施形態では、rAAVベクターはAAV2ゲノムを含み、その結果、rAAVベクターはAAV-2/9ベクター、AAV-2/6ベクター、またはAAV-2/8ベクターである。
【0182】
最も良く知られているAAVに対する完全長配列およびキャプシド遺伝子の配列は、米国特許第8,524,446号に提供され、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0183】
AAVベクターは、野生型AAV配列を含んでよく、または野生型AAV配列に対する一つまたは複数の改変を含んでもよい。特定の実施形態では、AAVベクターは、キャプシドタンパク質、任意に、VP1、VP2および/またはVP3内に、任意に、置換、欠失、または挿入などの一つまたは複数のアミノ酸改変を含む。特定の実施形態では、改変は、AAVベクターが対象に提供されるとき、免疫原性の低下をもたらす。
【0184】
rAAVのキャプシドタンパク質は、rAAVが内皮細胞、またはより具体的には内皮端細胞などの対象の特定標的組織に標的化されるように改変されてもよい。一部の実施形態では、rAAVは対象の脳室内に直接注射される。
【0185】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV2 rAAVビリオンである。キャプシドの多くは、AAV2キャプシドまたはその機能的バリアントである。一部の実施形態では、AAV2キャプシドは、例えば、配列番号76などの参照AAV2キャプシドと少なくとも98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0186】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV9 rAAVビリオンである。キャプシドの多くは、AAV9キャプシドまたはその機能的バリアントである。一部の実施形態では、AAV9キャプシドは、例えば、配列番号77などの参照AAV9キャプシドと少なくとも98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0187】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV6 rAAVビリオンである。キャプシドの多くは、AAV9キャプシドまたはその機能的バリアントである。一部の実施形態では、AAV6キャプシドは、例えば、配列番号78などの参照AAV6キャプシドと少なくとも98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0188】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、AAVrh.10 rAAVビリオンである。キャプシドの多くは、AAV9キャプシドまたはその機能的バリアントである。一部の実施形態では、AAVrh.10キャプシドは、例えば、配列番号79などの参照AAVrh.10キャプシドと少なくとも98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0189】
一部の実施形態では、キャプシドタンパク質は、トランスファープラスミドに、トランスでプラスミド上に供給されるポリヌクレオチドによってコードされる。野生型AAVrh74キャップのポリヌクレオチド配列は、配列番号80として提供される。
【0190】
本開示はさらに、配列番号81~83、および相同体またはその機能的バリアントを含むAAVrh74 VP1、VP2およびVP3のタンパク質配列を提供する。
【0191】
特定の事例では、AAVrh74キャプシドは、配列番号81に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号81に記載されるAAVrh74 VP1のアミノ酸配列と、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より一般的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一な配列を含む、または本質的にからなる、またはさらになるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号82に記載されるAAVrh74 VP2のアミノ酸配列と、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より一般的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一な配列を含む、または本質的にからなる、またはさらになるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号83に記載されるAAVrh74 VP3のアミノ酸配列と、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より一般的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一な配列を含む、または本質的にからなる、またはさらになるポリペプチドを含む。
【0192】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV-PHP.B rAAVビリオンまたはその好中球性バリアントであり、例えば、国際特許公開第WO2015/038958A1号および第WO2017/100671A1号に開示されているものなどであるが、これらに限定されない。例えば、AAVキャプシドは、配列TLAVPFK(配列番号85)またはKFPVALT(配列番号86)からの少なくとも4つの連続アミノ酸を含んでもよく、例えば、AAV9のアミノ酸588および589をコードする配列の間に挿入される。
【0193】
キャプシドの多くは、AAV-PHP.Bキャプシドまたはその機能的バリアントである。一部の実施形態では、AAV-PHP.Bキャプシドは、例えば、配列番号84などの参照AAV-PHP.Bキャプシドと少なくとも98%、99%、または100%の同一性を共有する。
【0194】
本開示のrAAVビリオンに使用される更なるAAVキャプシドには、国際特許公開第WO2009/012176A2号および第WO2015/168666A2号に開示されているものが含まれる。
【0195】
理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、AAV9ベクター、AAVrh.74、またはAAVrh.10ベクターが、ベクターに望ましい心臓向性を付与すると決定した。理論に拘束されるものではないが、本発明者らはさらに、AAV9ベクター、AAVrh.74、またはAAVrh.10ベクターが、心細胞に望ましい特異性を提供し得ると決定した。
【0196】
一態様では、本開示は、本開示のrAAVビリオンと、一つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0197】
任意に、注射による投与の目的のために、滅菌水溶液などの様々な溶液を使用することができる。このような水溶液は、所望により緩衝されてもよく、液体希釈剤は、生理食塩水またはグルコースによって最初に等張することができる。遊離酸(DNAは酸性リン酸基を含有する)または薬理学的に許容可能な塩としてのrAAVの溶液は、例えば、0.001%または0.01%でPoloxamer 188などの界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。rAAVの分散体は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物、ならびに油中で調製されてもよい。通常の保存および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含有する。この関連で、使用される滅菌水性媒体はすべて、当業者に周知の標準技術によって容易に取得可能である。
【0198】
注射可能な使用に適した医薬品形態としては、これらに限定されないが、滅菌水溶液または分散液、ならびに滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合も、形態は滅菌されており、容易に注射可能な(syringability)程度に流動的でなければならない。製造および保管の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合に必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0199】
滅菌注射可能な溶液は、必要に応じて、上記で列挙された様々な他の成分と、適切な溶媒中に必要な量のrAAVを組み込み、その後に濾過滅菌することにより調製され得る。一般的に、分散剤は、滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体および上記で列挙されたものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌された注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、特定の調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、活性成分に加えて、事前に滅菌濾過された溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0200】
別の態様では、本開示は、本開示のrAAVビリオンと、使用説明書と、含む、キットを含む。
【0201】
ある態様において、本開示は、細胞においてPKP2活性を増加させる方法を提供し、この方法は、細胞を本開示のrAAVと接触させることを含む。別の態様では、本開示は、対象におけるPKP2活性を増加させる方法を提供し、この方法は、本開示のrAAVを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、細胞および/または対象は、PKP2メッセンジャーRNAまたはPKP2タンパク質の発現レベルおよび/または活性が欠損しており、および/またはPKP2の機能喪失変異を含む。細胞は、心細胞、例えば、心筋細胞であってもよい。特定の実施形態では、対象は哺乳類、例えばヒトである。
【0202】
一部の実施形態では、本方法は、例えば、心筋細胞などの心細胞の生存を、細胞培養で、および/またはインビボで促進する。一部の実施形態では、本方法は、心臓の機能を促進および/または回復させる。
【0203】
別の態様では、本開示は、疾患または障害の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法を提供し、この方法は、有効量の本開示のrAAVビリオンを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、疾患または障害は、心疾患または障害である。心障害の例には、心不全、不整脈源性右室心筋症(ARVC)、ブルガダ症候群(BrS)、および特発性心室細動などが挙げられる。特定の実施形態では、対象は、不整脈源性右室心筋症(ARVC)に罹患しているか、またはそのリスクがある。特定の実施形態では、対象は、PKP2遺伝子に機能喪失変異を有する哺乳類、例えばヒトである。特定の方法では、rAAVビリオンを用いた治療は、対象、例えば、対象の心臓または心組織において、rAAVビリオンによってコードされるPKP2タンパク質の発現をもたらす。特定の実施形態では、rAAVビリオンを用いた治療は、対象の心臓内で検出可能な少なくとも二倍、少なくとも五倍、少なくとも十倍、またはそれ以上のPKP2タンパク質レベルをもたらす。
【0204】
AAVを介したPKP2タンパク質の心臓への送達は、寿命を延ばし、心細胞の変性、心不全、瘢痕化、駆出率の低下、不整脈、狭心症、運動不耐性、狭心症(胸痛)、心臓突然死、労作性筋肉痛および痙攣を予防または軽減する可能性がある。AAVを介したPKP2タンパク質の心臓への送達は、病理学的心電図、心臓MRI、心臓生検の使用によって検出される正常な疾患経過からの改善、または予防を示し、発作性心室性不整脈の減少、心臓突然死の減少、および/または右心室心筋における線維脂肪沈着のさらなる発達の減少もしくは欠如をもたらし得る。本開示の方法は、右心室駆出率(RVEF)の減少、回復、および/または増加を防止し得る。
【0205】
本明細書中に開示する方法によって、心臓における効率的な生体分布が提供され得る。それらによって、心細胞、例えば、心筋細胞の全て、または実質的な割合での持続的な発現がもたらされ得る。注目すべきことに、本明細書中に開示する方法によって、AAVベクター投与後の対象の寿命を通して、PKP2タンパク質の持続性の発現が提供され得る。一部の実施形態では、治療に応答してのPKP2タンパク質発現は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、または40年持続する。
【0206】
併用療法も本発明によって企図される。本発明の方法の標準的な医学的治療(例えば、コルチコステロイドまたは局所的減圧薬)との組み合わせが、新規の療法との組み合わせと同様に、具体的に企図される。一部の場合では、対象は、本明細書中に記載するrAAVの投与に対する免疫応答を防止または低減するためにステロイドおよび/または免疫抑制剤の併用で治療され得る。
【0207】
一部の実施形態では、AAVベクターは、対象の総体重の1キログラム当たりのAAVベクター(vg)の約1×1012~5×1014ベクターゲノム(vg)または約1×1012~6×1014vgの用量(vg/kg)で投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1013~5×1014vg/kgの間の用量で投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約5×1013~3×1014vg/kgの間の用量で投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約5×1013~1×1014vg/kgの間の用量で投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1012vg/kg未満、約3×1012vg/kg未満、約5×1012vg/kg未満、約7×1012vg/kg未満、約1×1013vg/kg未満、約3×1013vg/kg未満、約5×1013vg/kg未満、約7×1013vg/kg未満、約1×1014vg/kg未満、約3×1014vg/kg未満、約5×1014vg/kg未満、約7×1014vg/kg未満、約1×1015vg/kg未満、約3×1015vg/kg未満、約5×1015vg/kg未満、または約7×1015vg/kg未満の用量で投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。一部の事例では、AAV rh74ベクターにはAAV9ベクターよりも高用量を使用することが有利であり得る。
【0208】
一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1012vg/kg、約3×1012vg/kg、約5×1012vg/kg、約7×1012vg/kg、約1×1013vg/kg、約3×1013vg/kg、約5×1013vg/kg、約7×1013vg/kg、約1×1014vg/kg、約3×1014vg/kg、約5×1014vg/kg、約7×1014vg/kg、約1×1015vg/kg、約3×1015vg/kg、約5×1015vg/kg、または約7×1015vg/kgの用量で投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0209】
一部の実施形態では、AAVベクターは1×1012vg/kg、3×1012vg/kg、5×1012vg/kg、7×1012vg/kg、1×1013vg/kg、3×1013vg/kg、5×1013vg/kg、7×1013vg/kg、1×1014vg/kg、3×1014vg/kg、5×1014vg/kg、7×1014vg/kg、1×1015vg/kg、3×1015vg/kg、5×1015vg/kg、または7×1015vg/kgの用量で投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0210】
一部の実施形態では、AAVベクターは、対象の総体重の1キログラム当たり、AAVベクター(vg)の約1×1012~5×1014ベクターゲノム(vg)の用量(vg/kg)で全身的に投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1013~5×1014vg/kgの間の用量で全身的に投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約5×1013~3×1014vg/kgの間の用量で全身的に投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約5×1013~1×1014vg/kgの間の用量で全身的に投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1012vg/kg未満、約3×1012vg/kg未満、約5×1012vg/kg未満、約7×1012vg/kg未満、約1×1013vg/kg未満、約3×1013vg/kg未満、約5×1013vg/kg未満、約7×1013vg/kg未満、約1×1014vg/kg未満、約3×1014vg/kg未満、約5×1014vg/kg未満、約7×1014vg/kg未満、約1×1015vg/kg未満、約3×1015vg/kg未満、約5×1015vg/kg未満、または約7×1015vg/kg未満の用量で全身的に投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0211】
一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1012vg/kg、約3×1012vg/kg、約5×1012vg/kg、約7×1012vg/kg、約1×1013vg/kg、約3×1013vg/kg、約5×1013vg/kg、約7×1013vg/kg、約1×1014vg/kg、約3×1014vg/kg、約5×1014vg/kg、約7×1014vg/kg、約1×1015vg/kg、約3×1015vg/kg、約5×1015vg/kg、または約7×1015vg/kgの用量で全身的に投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0212】
一部の実施形態では、AAVベクターは、1×1012vg/kg、3×1012vg/kg、5×1012vg/kg、7×1012vg/kg、1×1013vg/kg、3×1013vg/kg、5×1013vg/kg、7×1013vg/kg、1×1014vg/kg、3×1014vg/kg、5×1014vg/kg、7×1014vg/kg、1×1015vg/kg、3×1015vg/kg、5×1015vg/kg、または7×1015vg/kgの用量で全身的に投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0213】
一部の実施形態では、AAVベクターは、対象の総体重の1キログラム当たりAAVベクター(vg)の約1×1012~5×1014ベクターゲノム(vg)の間の用量(vg/kg)で静脈内投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1013~5×1014vg/kgの間の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約5×1013~3×1014vg/kgの間の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約5×1013~1×1014vg/kgの間の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1012vg/kg未満、約3×1012vg/kg未満、約5×1012vg/kg未満、約7×1012vg/kg未満、約1×1013vg/kg未満、約3×1013vg/kg未満、約5×1013vg/kg未満、約7×1013vg/kg未満、約1×1014vg/kg未満、約3×1014vg/kg未満、約5×1014vg/kg未満、約7×1014vg/kg未満、約1×1015vg/kg未満、約3×1015vg/kg未満、約5×1015vg/kg未満、または約7×1015vg/kg未満の用量で静脈内投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0214】
一部の実施形態では、AAVベクターは、約1×1012vg/kg、約3×1012vg/kg、約5×1012vg/kg、約7×1012vg/kg、約1×1013vg/kg、約3×1013vg/kg、約5×1013vg/kg、約7×1013vg/kg、約1×1014vg/kg、約3×1014vg/kg、約5×1014vg/kg、約7×1014vg/kg、約1×1015vg/kg、約3×1015vg/kg、約5×1015vg/kg、または約7×1015vg/kgの用量で静脈内投与される。
【0215】
一部の実施形態では、AAVベクターは、1×1012vg/kg、3×1012vg/kg、5×1012vg/kg、7×1012vg/kg、1×1013vg/kg、3×1013vg/kg、5×1013vg/kg、7×1013vg/kg、1×1014vg/kg、3×1014vg/kg、5×1014vg/kg、7×1014vg/kg、1×1015vg/kg、3×1015vg/kg、5×1015vg/kg、または7×1015vg/kgの用量で静脈内投与される。特定の実施形態では、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0216】
患者における機能改善、臨床的利益または有効性の証拠は、ニューヨーク心臓協会の機能分類(NYHAクラス)、病理心電図、心臓MRI、心臓生検の変化、発作性心室性不整脈の減少、心臓突然死の減少、および/または右心室心筋における線維脂肪沈着物のさらなる発達の減少または欠如によって明らかにされ得る。有益性は、通常、T波逆転、S波アップストロークの延長、局所的QRS拡大、および/または発作性心室頻拍などの不整脈源性右室心筋症に関連する心電図特徴で観察され得る。
【0217】
一部の実施形態では、本方法は、PKP2の機能喪失に関連するまたはそれによって引き起こされる疾患または障害に罹患している、またはそのリスクがある、未治療の対象において観察された減少と比較して、左心室駆出率(LVEF%)の減少を、任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0218】
一部の実施形態では、本方法は、PKP2の機能喪失に関連するまたはそれによって引き起こされる疾患または障害に罹患している、またはそのリスクがある、未治療の対象において観察された減少と比較して、左心室短縮率(FS%)の減少を、任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0219】
一部の実施形態では、本方法は、PKP2の機能喪失に関連するまたはそれによって引き起こされる疾患または障害に罹患している、またはそのリスクがある、未治療の対象において観察された増加と比較して、平方ミリメートルでの右心室面積(RV面積(mm2))の増加を、任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0220】
一部の実施形態では、本方法は、PKP2の機能喪失に関連するまたはそれによって引き起こされる疾患または障害に罹患している、またはそのリスクがある、未治療の対象において観察された低下と比較して、ミリメートル毎秒での右心室速度時間積分(RV VTI(mm/秒))の低下を、任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0221】
一部の実施形態では、本方法は、PKP2の機能喪失に関連するまたはそれによって引き起こされる疾患または障害に罹患している、またはそのリスクがある、未治療の対象において観察された増加と比較して、左心室または右心室の線維症の増加を、任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する。
【0222】
組成物の有効用量の投与は、限定されないが、全身的、局所的、直接注射、静脈内、心臓内投与を含む、当技術分野において標準の経路により得る。一部の場合では、投与は、全身的、局所的、直接注射、静脈内、心臓内注射を含む。投与は、心臓カテーテル法により実施してもよい。
【0223】
一部の実施形態では、本開示は、有効用量の本発明のrAAVおよび組成物の局所投与および全身投与を提供する。例えば、全身投与は、全身が影響を受けるように循環系に投与され得る。全身投与には、注射、注入、または移植による親(parental)投与が含まれる。本明細書中に開示する組成物のための投与の経路は、静脈内(「IV」)投与、腹腔内(「IP」)投与、筋肉内(「IM」)投与、病変内投与、もしくは皮下(「SC」)投与、または徐放装置、例えば、ミニ浸透圧ポンプ、デポ製剤などの移植を含む。一部の実施形態では、本開示の方法は、本開示のAAVベクター、またはその医薬組成物を、静脈内、筋肉内、動脈内、腎内、尿道内、心臓内、冠動脈内、心筋内、皮内、硬膜外、皮下、腹腔内、脳室内、イオントフォレーシス、または頭蓋内投与により投与することを含む。
【0224】
特に、本発明のrAAVの投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織中に輸送する任意の物理的方法を使用することにより達成され得る。投与は、以下に限定されないが、心臓中への注射を含む。
【0225】
一部の実施形態では、本開示の方法は、心臓内送達を含む。注入は、注入ポンプを使用して、専用カニューレ、カテーテル、シリンジ/針を使用して実施してもよい。投与は、心臓への、有効量のrAAVビリオン、またはrAAVビリオンを含む医薬組成物の送達を含み得る。これらは、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腎内、尿道内、心臓内、冠動脈内、心筋内、皮内、硬膜外、皮下、腹腔内、脳室内、イオントフォレーシス、または頭蓋内投与を介して達成され得る。本開示の組成物は、さらに静脈内投与されてもよい。
【0226】
本明細書中に開示する治療の方法は、心室肥大、心室頻拍、運動不耐性、狭心症、およびRVEFの低下を含むがこれらに限定されない一つまたは複数の症状を軽減および/または予防し得る。
【実施例
【0227】
実施例1:前臨床生物活性および有効性
図1図4に示すベクターを試験する。AAVベクターまたはそれぞれの発現カセットを、培養心筋細胞(例えば、多能性幹細胞心筋細胞、iPSC-CM)、またはこれらの構築物を用いたトランスフェクションまたは形質導入に適している他の細胞を使用して、インビトロで試験する。PKP2の発現を、免疫蛍光およびウェスタンブロットにより評価する。患者iPSC由来の心筋細胞を用いた細胞ベースの研究が、PKP2の密度の増加に関連する、脂肪生成能の低下(例えば、脂質蓄積の減少)、アップレギュレーションの低下、または異常なペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ活性化による、PKP2導入遺伝子の過剰発現(AAVベクター形質導入および/またはベクタープラスミドによるトランスフェクションのいずれか)の利点を明らかにする。
【0228】
選択されたベクターを、心筋症の変異マウスモデル(例えば、PKP2-cKOなど)を使用してインビボで試験する。PKP2のAAVを介した過剰発現の利益の証拠は、「PKP2-cKO」と呼ばれる、心筋細胞特異的、タモキシフェン活性化、PKP2ノックアウトマウス系統を使用して明らかにされ得る。このマウスモデルは、PKP2発現喪失の開始の制御を可能にし、成体筋細胞へのPKP2の喪失を制限し、このマウスでは右心室優勢で、不整脈源性心筋症につながる分子的および機能的事象の進行を開始する。類似の病理過程をもたらす追加のマウスモデルも利用して、心筋細胞におけるPKP2のAAVを介した過剰発現の利益を明らかにすることができる。AAVを介したPKP2過剰発現の利益は、生存率の増加、左心室および/または右心室からの心エコー図で観察される心筋症の正常な進行の軽減(例えば、PKP cKO製剤緩衝液対照動物と比較して、左心室駆出率、左心室短縮率、および右心室速度時間間隔の増大)によって示される。
【0229】
PKP2タンパク質のAAV媒介送達の機能的利益の電気生理学的証拠は、影響を受けた心筋細胞における疾患関連の破壊されたカルシウムダイナミクスの軽減によって実証され、特に、L型カルシウム電流、筋小胞体カルシウム漏出、拡張期カルシウム漏出の測定、ならびにピーク振幅までの時間および弛緩時定数など、影響を受けた(例えば、PKP2欠損)心筋細胞におけるカルシウム移行の標準測定で実証される。組織学的解析は、cKO製剤緩衝液注入対照と比較して、心室を含む心臓の様々な領域で、疾患関連のコラーゲン沈着(例えば、トリクローム染色による)の出現の減少により、AAVを介したPKP2過剰発現の利益を明らかにする。非AAV-PKP2処置したPKP2-cKO疾患対照と比較して、Casq2、および/またはTrdn、および/またはCav 1.2、および/またはAnkBおよび/またはRyR2の相対レベルの増加(すなわち、正規化)によって測定した、カルシウムシグナル伝達経路に関与する心筋細胞の心室タンパク質を評価することによって、さらなる利益も明らかにされる。
【0230】
実施例2:アデノ随伴ウイルスベクターのインビトロ試験
本明細書に記載されるAAVベクター(図11図12を参照)を調製し、ヒト心筋細胞株である分化したAC16細胞を形質導入するために使用した。PKP2(PKP2aアイソフォーム)の発現レベルをウェスタンブロットで評価した(図5A図5B)。驚くべきことに、MHCK7プロモーターは、心筋細胞でPKP2の強固な発現を引き起こすが、hTnnT2プロモーター(「hTnT」)は、現在の試験条件下では、バックグラウンドを超えるわずかなPKP2レベルを生成する。AAVrh.74血清型は、AAV9血清型ベクターよりも高いPKP2の発現を誘導した。
【0231】
これらの結果に基づいて、AAV9ベクターまたはAAVrh74ベクターを効果的に使用して、心筋細胞においてPKP2を発現させることができ、またPKP2発現の相対レベルのみを評価する場合、MHCK7プロモーターは、hTnnT2プロモーターよりも優れていると結論付けた。
【0232】
実施例3:アデノ随伴ウイルスベクターのインビボ有効性
Cerrone et al.,Nat Comm.,2017に記載されるようなPKP2欠損の「PKP2-cKO」マウスモデルを得た。この心筋細胞特異的、タモキシフェン活性化PKP2ノックアウトマウス系統(αMHC-Cre-ER(T2)/Pkp2 fl/fl、「PKP2-cKO」と称される)を利用して、PKP2発現喪失の開始を制御した(Cerrone et al.,Nat Comm,2017を参照)。このマウスモデルにおけるPKP2発現の条件付き喪失は、成体筋細胞に限定され、PKP2-cKOの結果としての分子的、構造的および機能的事象の経時的進行が確立されている(Cerrone et al.,Nat Comm,2017)。成人の心室筋細胞のPKP2欠損は、ARVCの疾患表現型と一致する、「特徴的な」機能的、分子的、および構造的な指標を含む、RV優勢の不整脈源性心筋症を引き起こすのに十分である。
【0233】
PKP2-Ckoマウスにタモキシフェンを注射し、筋細胞特異的なPKP2のノックアウトを引き起こした。マウスに、AAVベクター(以下に説明)を3×1013vg/kgで静脈内(尾静脈)注射した。四週間後、PKP2の筋細胞特異的ノックアウトは、マウスをタモキシフェンで処置することによって誘導された。使用したベクターゲノムは:
【0234】
5’ITR;MHCK7プロモーター(そのエンハンサーエレメントを含む);SV40イントロン;コザック配列;PKPa導入遺伝子;WPRE(x);hGHポリアデニル化配列);3’ITR-図11に示す。
【0235】
5’ITR;hTnnT2プロモーター(エクソン1を含む);コザック配列;PKPa導入遺伝子;WPRE(x);hGHポリアデニル化配列);3’ITR-図12に示す。
【0236】
各ベクターゲノムを、AAV9血清型またはAAVrh74血清型ベクターで試験した。
【0237】
AAV処置の25週間後または32週間後である、タモキシフェン処置の21日後または28日後に、マウスを、Cerrone et al.,Nat Comm,2017に本質的に記載されるように、または当技術分野で公知の標準方法論を使用して、様々な生理パラメータについて評価した。疾患の治療における有効性は、左心室駆出率(LVEF%)(図6A図6D)、左心室短縮率(FS%)(図7A図7D)、平方ミリメートル単位の右心室面積(RV面積(mm))(図8A図8D)、毎秒ミリメートル単位の右心室速度時間積分(RV VTI(mm/秒))(図9A図9D)、および線維症の程度(図10A図10B)によって評価された。これらの測定値は、ヒト疾患におけるARVCを示す重要なパラメータの一つであるため、心筋細胞におけるAAVを介したPKP2過剰発現の潜在的な有効性を評価するための適切な機能的および形態学的指標である。一般的に、右心室は通常、(疾患に関係なく)わずかに多くの線維症を有し、これは、cKOモデルにおけるPKP2の欠損と共にさらに悪化する。タモキシフェン注射はPKP遺伝子の筋細胞特異的ノックアウトを引き起こすため、タモキシフェン注射から21日以内にこれらのパラメータの進行性の悪化が観察された。
【0238】
AAV9およびAAVrh.74を介したPKP発現の後に、程度の差こそあれ、疾患表現型の緩和の証拠が観察された。前処理パラダイム(タモキシフェン誘発PKP cKOの4週間前にAAV)を使用してこれまでに研究された用量(3×1013vg/kg)では、AAV9は驚くべきことに、すべてのパラメータに対して最も強固な効果をもたらした。それにもかかわらず、AAVrh74の心臓指向性、およびこのモデルにおいてAAVrh.74を介したPKP2の過剰発現により生物学的効果(例えば、LVEF%、FS%、および右心室面積)が観察されたことを考慮すると、適切なプロモーター(すなわち、MHCK7またはhTnnT2のいずれか)と組み合わせたAAVrh.74の用量の最適化は、このベクターに対する強固な治療能力を可能にし得る。
【0239】
これらの結果は、AAV9およびAAVrh.74の両方が、PKP-cKOマウスが適切なモデルと考えられている、不整脈源性右室心筋症(ARVC)[不整脈源性右室異形成(ARVD)または不整脈源性心筋症(ACM)としても知られる]などのPKP2-関連疾患を治療するために使用できることを実証している。さらに、MHCK7プロモーターまたはhTnnT2プロモーターのいずれかを有するベクターは、PKP2-関連疾患の治療に効果的であることが示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023538519000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現カセット、および
任意で、隣接するアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)
を含む、ポリヌクレオチドであって、
プロモーターに動作可能に連結された、プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列
を含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記プロモーターが心臓特異的プロモーターである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記プロモーターが筋特異的プロモーターである、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記プロモーターが心筋細胞特異的プロモーターである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記プロモーターがミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記プロモーターが心筋トロポニンT(hTNNT2)プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記hTNNT2プロモーターが、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記発現カセットが、心筋トロポニンT(hTNNT2)遺伝子のエクソン1を含み、
任意で、前記hTNNT2プロモーターおよびエクソン1が一緒に、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記プロモーターがユビキタスプロモーター、任意でCMVプロモーターまたはCAGプロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記発現カセットがポリAシグナルを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記ポリAシグナルがヒト成長ホルモン(hGH)ポリAである、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記発現カセットが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、任意でWPRE(x)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントがPKP2である、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記PKP2が機能的PKP2である、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記PKP2がヒトPKP2である、請求項14または請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記PKP2がPKP2アイソフォームAである、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記PKP2アイソフォームAが、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記PKP2がPKP2アイソフォームBである、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記PKP2が、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、ヒトPKP2ポリヌクレオチドである、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
少なくとも約4.0kb、少なくとも約4.1kb、少なくとも約4.2kb、少なくとも約4.3kb、少なくとも約4.4kb、または少なくとも約4.5kbを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
最大で約4.1kb、最大で約4.2kb、最大で約4.3kb、最大で約4.4kb、最大で約4.5kb、または最大で約4.6kbを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
4.0kb~4.6kb、4.0kb~4.5kb、または4.0kb~4.4kbを含むか、あるいは4.0kb~4.3kb、4.0kb~4.2kb、または4.0kb~4.1kbを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記PKP2またはその機能的バリアントが、少なくとも800個または少なくとも830個のアミノ酸を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
配列番号8~15のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項1~27のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記発現カセットが、5’および3’の逆位末端反復(ITR)によって隣接されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記ITRがAAV2 ITRであり、および/または
前記ITRが、配列番号20~26のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、
請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
【請求項32】
前記遺伝子治療ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
前記rAAVベクターがAAV9またはその機能的バリアントである、請求項32に記載のベクター。
【請求項34】
前記rAAVベクターが、配列番号77のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項33に記載のベクター。
【請求項35】
前記rAAVベクターがAAVrh10またはその機能的バリアントである、請求項32に記載のベクター。
【請求項36】
前記rAAVベクターが、配列番号79のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項35に記載のベクター。
【請求項37】
前記rAAVベクターがAAV6またはその機能的バリアントである、請求項32に記載のベクター。
【請求項38】
前記rAAVベクターが、配列番号78のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項37に記載のベクター。
【請求項39】
前記rAAVベクターがAAVrh74またはその機能的バリアントである、請求項38に記載のベクター。
【請求項40】
前記rAAVベクターが、配列番号80のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項39に記載のベクター。
【請求項41】
それを必要とする対象において疾患または障害を治療および/または予防する方法であって、請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターを前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項42】
前記疾患または障害が心障害である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患または障害が心筋症である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記心筋症が、不整脈源性右室心筋症(ARVC)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記心筋症が、肥大型心筋症または拡張型心筋症である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患または障害が、心筋の線維脂肪性浸潤によって特徴付けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または障害が心不全である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が哺乳動物である、請求項41~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が霊長類である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象がヒトである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象がPP2遺伝子に変異を有する、請求項41~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ベクターが、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される、請求項41~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約5%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約30%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約70%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与が、PKP2発現を約5%~約10%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与が、PKP2発現を約30%~約50%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与が、PKP2発現を約50%~約70%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記投与が、PKP2発現を約70%~約100%増加させる、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記疾患または障害を治療および/または予防する、請求項41~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
有効量の前記ベクターを投与する工程を含む、請求項41~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記疾患または障害が、前記対象のPKP2の機能喪失に関連するかまたはそれにより引き起こされる、請求項41~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記疾患または障害が、前記対象のPKP2の機能獲得に関連するかまたはそれにより引き起こされる、請求項41~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記対象が、
配列番号2の配列を有するヒトPKP2をコードするヒトPKP2遺伝子に対して、Arg490Trp、Asp26Asn、Thr50_Val51SerfsX60、Arg79X、Tyr86X、Gln133X、Val406SerfsX3、Tyr616X、Trp676X、Cys796Arg、Cys796E、Tyr807X、Glu62Lys、S688P、Trp848X、Y86X、V406X、Y616X、W848X、およびY807Xから選択されるアミノ酸置換を引き起こす変異
を有する、請求項41~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
有効量の前記ベクターを含む医薬組成物を投与する工程を含む、請求項41~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
約1×1011ベクターゲノムから約1×1013ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程、約1×1012ベクターゲノムから約1×1014ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程、または約1×1013ベクターゲノムから約1×1015ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程を含む、請求項41~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターを含む、医薬組成物。
【請求項68】
請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項68に記載の医薬組成物および任意で使用説明書を含む、キット。
【請求項69】
任意で請求項41~66のいずれか一項に記載の方法による、疾患または障害の治療における請求項31~40のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項70】
任意で請求項41~66のいずれか一項に記載の方法による、疾患または障害の治療における使用のための請求項31~40のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項71】
配列番号12~15および89~92のいずれか一つまたは配列番号8~11および93~96のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項72】
前記プロモーターがMHCK7プロモーターである、請求項71に記載のポリヌクレオチド。
【請求項73】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項72に記載のポリヌクレオチド。
【請求項74】
前記PKP2がヒトPKP2である、請求項71に記載のポリヌクレオチド。
【請求項75】
前記PKP2がPKP2アイソフォームAである、請求項74に記載のポリヌクレオチド。
【請求項76】
前記PKP2アイソフォームAが、配列番号1と少なくとも80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を共有する、請求項75に記載のポリヌクレオチド。
【請求項77】
請求項71~76のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
【請求項78】
前記遺伝子治療ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項77に記載のベクター。
【請求項79】
前記rAAVベクターがAAV9ベクターである、請求項78に記載のベクター。
【請求項80】
前記rAAVベクターがAAVrh74ベクターである、請求項78に記載のベクター。
【請求項81】
P2遺伝子に変異を有すると特定された対象において心障害を治療および/または予防する方法であって、請求項77~80のいずれか一項に記載のベクターを前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項82】
前記心障害が、心筋症、任意で不整脈源性右室心筋症(ARVC)、肥大型心筋症、または拡張型心筋症である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記心障害が心不全である、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記対象が哺乳動物である、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記ベクターが、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される、請求項81~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
左心室駆出率(LVEF%)の減少を、PP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
左心室短縮率(FS%)の減少を、PP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
平方ミリメートル単位の右心室面積(RV面積(mm2))の増加を、PP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
毎秒ミリメートル単位の右心室速度時間積分(RV VTI(mm/秒))の減少を、PP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
左心室または右心室の線維症の増加を、PP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、請求項81~89のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
[本発明1001]
発現カセット、および
任意で、隣接するアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)
を含む、ポリヌクレオチドであって、
プロモーターに動作可能に連結された、プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列
を含む、前記ポリヌクレオチド。
[本発明1002]
前記プロモーターが心臓特異的プロモーターである、本発明1001のポリヌクレオチド。
[本発明1003]
前記プロモーターが筋特異的プロモーターである、本発明1001または本発明1002のポリヌクレオチド。
[本発明1004]
前記プロモーターが心筋細胞特異的プロモーターである、本発明1001~1003のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1005]
前記プロモーターがミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーターである、本発明1001~1004のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1006]
前記MHCK7プロモーターが、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1005のポリヌクレオチド。
[本発明1007]
前記プロモーターが心筋トロポニンT(hTNNT2)プロモーターである、本発明1001~1004のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1008]
前記hTNNT2プロモーターが、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1007のポリヌクレオチド。
[本発明1009]
前記発現カセットが、心筋トロポニンT(hTNNT2)遺伝子のエクソン1を含み、
任意で、前記hTNNT2プロモーターおよびエクソン1が一緒に、配列番号32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、
本発明1001~1008のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1010]
前記プロモーターがユビキタスプロモーター、任意でCMVプロモーターまたはCAGプロモーターである、本発明1001~1004のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1011]
前記発現カセットがポリAシグナルを含む、本発明1001~1010のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1012]
前記ポリAシグナルがヒト成長ホルモン(hGH)ポリAである、本発明1011のポリヌクレオチド。
[本発明1013]
前記発現カセットが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、任意でWPRE(x)を含む、本発明1001~1012のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1014]
前記プラコフィリン-2(PKP2)またはその機能的バリアントがPKP2である、本発明1001~1013のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1015]
前記PKP2が機能的PKP2である、本発明1014のポリヌクレオチド。
[本発明1016]
前記PKP2がヒトPKP2である、本発明1014または本発明1015のポリヌクレオチド。
[本発明1017]
前記PKP2がPKP2アイソフォームAである、本発明1016のポリヌクレオチド。
[本発明1018]
前記PKP2アイソフォームAが、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1017のポリヌクレオチド。
[本発明1019]
前記PKP2がPKP2アイソフォームBである、本発明1016のポリヌクレオチド。
[本発明1020]
前記PKP2が、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1019のポリヌクレオチド。
[本発明1021]
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、ヒトPKP2ポリヌクレオチドである、本発明1001~1020のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1022]
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1001~1021のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1023]
PKP2をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1001~1021のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1024]
少なくとも約4.0kb、少なくとも約4.1kb、少なくとも約4.2kb、少なくとも約4.3kb、少なくとも約4.4kb、または少なくとも約4.5kbを含む、本発明1001~1023のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1025]
最大で約4.1kb、最大で約4.2kb、最大で約4.3kb、最大で約4.4kb、最大で約4.5kb、または最大で約4.6kbを含む、本発明1001~1024のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1026]
4.0kb~4.6kb、4.0kb~4.5kb、または4.0kb~4.4kbを含むか、あるいは4.0kb~4.3kb、4.0kb~4.2kb、または4.0kb~4.1kbを含む、本発明1001~1025のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1027]
前記PKP2またはその機能的バリアントが、少なくとも800個または少なくとも830個のアミノ酸を含む、本発明1001~1025のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1028]
配列番号8~15のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1001~1027のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1029]
前記発現カセットが、5’および3’の逆位末端反復(ITR)によって隣接されている、本発明1001~1028のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1030]
前記ITRがAAV2 ITRであり、および/または
前記ITRが、配列番号20~26のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、
本発明1029のポリヌクレオチド。
[本発明1031]
本発明1001~1030のいずれかのポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
[本発明1032]
前記遺伝子治療ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、本発明1031のベクター。
[本発明1033]
前記rAAVベクターがAAV9またはその機能的バリアントである、本発明1032のベクター。
[本発明1034]
前記rAAVベクターが、配列番号77のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、本発明1033のベクター。
[本発明1035]
前記rAAVベクターがAAVrh10またはその機能的バリアントである、本発明1032のベクター。
[本発明1036]
前記rAAVベクターが、配列番号79のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、本発明1035のベクター。
[本発明1037]
前記rAAVベクターがAAV6またはその機能的バリアントである、本発明1032のベクター。
[本発明1038]
前記rAAVベクターが、配列番号78のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、本発明1037のベクター。
[本発明1039]
前記rAAVベクターがAAVrh74またはその機能的バリアントである、本発明1038のベクター。
[本発明1040]
前記rAAVベクターが、配列番号80のいずれか一つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、本発明1039のベクター。
[本発明1041]
それを必要とする対象において疾患または障害を治療および/または予防する方法であって、本発明1031~1040のいずれかのベクターを前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1042]
前記疾患または障害が心障害である、本発明1041の方法。
[本発明1043]
前記疾患または障害が心筋症である、本発明1041または1042の方法。
[本発明1044]
前記心筋症が、不整脈源性右室心筋症(ARVC)である、本発明1043の方法。
[本発明1045]
前記心筋症が、肥大型心筋症または拡張型心筋症である、本発明1043の方法。
[本発明1046]
前記疾患または障害が、心筋の線維脂肪性浸潤によって特徴付けられる、本発明1041の方法。
[本発明1047]
前記疾患または障害が心不全である、本発明1041または1042の方法。
[本発明1048]
前記対象が哺乳動物である、本発明1041~1057のいずれかの方法。
[本発明1049]
前記対象が霊長類である、本発明1048の方法。
[本発明1050]
前記対象がヒトである、本発明1049の方法。
[本発明1051]
前記対象がPRP2遺伝子に変異を有する、本発明1041~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記ベクターが、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される、本発明1041~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約5%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約30%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1055]
前記投与が、PKP2発現を少なくとも約70%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1056]
前記投与が、PKP2発現を約5%~約10%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記投与が、PKP2発現を約30%~約50%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記投与が、PKP2発現を約50%~約70%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1059]
前記投与が、PKP2発現を約70%~約100%増加させる、本発明1041~1052のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記疾患または障害を治療および/または予防する、本発明1041~1059のいずれかの方法。
[本発明1061]
有効量の前記ベクターを投与する工程を含む、本発明1041~1060のいずれかの方法。
[本発明1062]
前記疾患または障害が、前記対象のPKP2の機能喪失に関連するかまたはそれにより引き起こされる、本発明1041~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
前記疾患または障害が、前記対象のPKP2の機能獲得に関連するかまたはそれにより引き起こされる、本発明1041~1061のいずれかの方法。
[本発明1064]
前記対象が、
配列番号2の配列を有するヒトPKP2をコードするヒトPKP2遺伝子に対して、p.Arg490Trp、Asp26Asn、Thr50_Val51SerfsX60、Arg79X、Tyr86X、Gln133X、Val406SerfsX3、Tyr616X、Trp676X、Cys796Arg、Cys796E、Tyr807X、Glu62Lys、S688P、Trp848X、Y86X、V406X、Y616X、W848X、およびY807Xから選択されるアミノ酸置換を引き起こす変異
を有する、本発明1041~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
有効量の前記ベクターを含む医薬組成物を投与する工程を含む、本発明1041~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
約1×10 11 ベクターゲノムから約1×10 13 ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程、約1×10 12 ベクターゲノムから約1×10 14 ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程、または約1×10 13 ベクターゲノムから約1×10 15 ベクターゲノムのベクターを前記対象に投与する工程を含む、本発明1041~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
本発明1031~1040のいずれかのベクターを含む、医薬組成物。
[本発明1068]
本発明1031~1040のいずれかのベクターまたは本発明1068の医薬組成物および任意で使用説明書を含む、キット。
[本発明1069]
任意で本発明1041~1066のいずれかの方法による、疾患または障害の治療における本発明1031~1040のいずれかのベクターの使用。
[本発明1070]
任意で本発明1041~1066のいずれかの方法による、疾患または障害の治療における使用のための本発明1031~1040のいずれかのベクター。
[本発明1071]
配列番号12~15および89~92のいずれか一つまたは配列番号8~11および93~96のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
[本発明1072]
前記プロモーターがMHCK7プロモーターである、本発明1071のポリヌクレオチド。
[本発明1073]
前記MHCK7プロモーターが、配列番号31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1072のポリヌクレオチド。
[本発明1074]
前記PKP2がヒトPKP2である、本発明1071のポリヌクレオチド。
[本発明1075]
前記PKP2がPKP2アイソフォームAである、本発明1074のポリヌクレオチド。
[本発明1076]
前記PKP2アイソフォームAが、配列番号1と少なくとも80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を共有する、本発明1075のポリヌクレオチド。
[本発明1077]
本発明1071~1076のいずれかのポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
[本発明1078]
前記遺伝子治療ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、本発明1077のベクター。
[本発明1079]
前記rAAVベクターがAAV9ベクターである、本発明1078のベクター。
[本発明1080]
前記rAAVベクターがAAVrh74ベクターである、本発明1078のベクター。
[本発明1081]
PRP2遺伝子に変異を有すると特定された対象において心障害を治療および/または予防する方法であって、本発明1077~1080のいずれかのベクターを前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1082]
前記心障害が、心筋症、任意で不整脈源性右室心筋症(ARVC)、肥大型心筋症、または拡張型心筋症である、本発明1081の方法。
[本発明1083]
前記心障害が心不全である、本発明1081の方法。
[本発明1084]
前記対象が哺乳動物である、本発明1081~1083のいずれかの方法。
[本発明1085]
前記ベクターが、静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法により投与される、本発明1081~1084のいずれかの方法。
[本発明1086]
左心室駆出率(LVEF%)の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、本発明1081~1085のいずれかの方法。
[本発明1087]
左心室短縮率(FS%)の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、本発明1081~1086のいずれかの方法。
[本発明1088]
平方ミリメートル単位の右心室面積(RV面積(mm2))の増加を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、本発明1081~1087のいずれかの方法。
[本発明1089]
毎秒ミリメートル単位の右心室速度時間積分(RV VTI(mm/秒))の減少を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された減少と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、本発明1081~1088のいずれかの方法。
[本発明1090]
左心室または右心室の線維症の増加を、PRP2遺伝子に変異を有すると特定された未治療の対象において観察された増加と比較して任意で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、防止または低減する、本発明1081~1089のいずれかの方法。
様々な他の態様および実施形態が、以下の詳細な説明に開示されている。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】