(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】肥料顆粒用の微量栄養素を含むコーティング
(51)【国際特許分類】
C05G 5/30 20200101AFI20230901BHJP
C05D 9/02 20060101ALI20230901BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20230901BHJP
A62D 3/174 20070101ALI20230901BHJP
【FI】
C05G5/30
C05D9/02
B01J2/00 B
B01J2/00 C
A62D3/174
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509683
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021045661
(87)【国際公開番号】W WO2022036035
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509157373
【氏名又は名称】ザ・モザイク・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】ロスリン・ベアード
(72)【発明者】
【氏名】シェルビン・カビリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフィエン・デグリース
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ・コキ・ダ シルバ
【テーマコード(参考)】
4G004
4H061
【Fターム(参考)】
4G004BA00
4H061AA01
4H061AA02
4H061DD01
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4H061EE06
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4H061FF24
4H061GG26
4H061GG41
4H061HH03
4H061LL25
4H061LL26
(57)【要約】
肥料顆粒の表面の疎水性と耐摩耗性を高める一方で、土壌に微量栄養素を供給することができる肥料顆粒のためのワックスベースのコーティングが開示されている。このワックスベースのコーティングは、徐放性および速放性の微量栄養素の配合設計を柔軟にできるようにし、微量栄養素がすべての肥料顆粒に均一にコーティングされるようにする。単一または複数の栄養素の組み合わせのコーティングが可能であり、配合設計の柔軟性を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の肥料顆粒を含む肥料製品であって、それぞれの顆粒が、
一次栄養素を含むベースの肥料組成物と、
ベースの肥料組成物の外面に適用される微量栄養素コーティングとを備え、
微量栄養素コーティングが、ワックス成分と、ワックス成分内に懸濁された微量栄養素源の粒子とを含む、肥料製品。
【請求項2】
請求項1に記載の肥料製品であって、ワックス成分が、カンデリラワックス、カルナウバワックス、蜜ろう、食品産業からリサイクルされたワックス、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、肥料製品。
【請求項3】
請求項1に記載の肥料製品であって、ワックス成分が、スラックワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、アルキルケテンダイマーワックス、油とワックスの混合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、肥料製品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の肥料製品であって、微量栄養素源が、ホウ素、銅、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、肥料製品。
【請求項5】
請求項4に記載の肥料製品であって、微量栄養素源が、硫酸塩、酸化物、オキシ硫酸塩、塩化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、酸、オキシアニオン、キレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、肥料製品。
【請求項6】
請求項1に記載の肥料製品であって、微量栄養素コーティングがさらに、窒素、リン、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一次栄養素源、カルシウム、マグネシウム、硫黄及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二次栄養素源、またはその両方を含む、肥料製品。
【請求項7】
請求項1に記載の肥料製品であって、微量栄養素源の粒子がミクロンサイズ、ナノサイズ、またはその両方の組み合わせである、肥料製品。
【請求項8】
請求項1に記載の肥料製品であって、微量栄養素源の粒子が、コーティングの約0.01wt%~約10wt%含まれる、肥料製品。
【請求項9】
請求項8に記載の肥料製品であって、微量栄養素源の粒子が、コーティングの約0.1wt%~約5wt%含まれる、肥料製品。
【請求項10】
請求項8に記載の肥料製品であって、微量栄養素源の粒子が、コーティングの約0.5wt%~約2wt%含まれる、肥料製品。
【請求項11】
請求項1に記載の肥料製品であって、コーティングが、顆粒の総重量の0.1重量%~5重量%の量である、肥料製品。
【請求項12】
請求項1に記載の肥料製品であって、微量栄養素源の粒子が、硫酸塩の形態と酸化物の形態との組み合わせを含む、肥料製品。
【請求項13】
請求項12に記載の肥料製品であって、硫酸塩の形態と酸化物の形態との割合が、3:1、2:1、1:1、1:2、および1:3から選択される、肥料製品。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の肥料製品であって、一次栄養素が、窒素、リン、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、肥料製品。
【請求項15】
請求項14に記載の肥料製品であって、顆粒がさらに、元素硫黄、硫酸塩の形態における硫黄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、またはそれらの組み合わせを含む、肥料製品。
【請求項16】
微量栄養素コーティングされた肥料または種子製品を製造する方法であって、
複数の肥料顆粒または種子を提供するステップと、
複数の肥料顆粒または種子を微量栄養素コーティングでコーティングするステップとを備え、微量栄養素コーティングがワックス成分と、ワックス成分内に懸濁された微量栄養素源の粒子とを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
複数の肥料顆粒または種子をコーティングする前に、微量栄養素源の粒子を含むワックス成分を液体担体内で乳化するステップをさらに備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
複数の肥料顆粒または種子をコーティングした後、液体担体を除去するステップをさらに備える、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、液体担体が水及び/又は有機溶媒である、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、有機溶媒がイソプロパノール、エタノール、またはアセトンを含む、方法。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか一項に記載の方法であって、微量栄養素コーティングがさらに乳化剤を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、乳化剤が、オリーブオイル、ポリソルベート、セテアリルアルコール、オレイン酸塩、ホウ砂、レシチン、モノグリセリド及びジグリセリド、またはそれらの組合せを含む、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、ワックス成分が、カンデリラワックス、カルナウバワックス、蜜ろう、食品産業からリサイクルされたワックス、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項24】
請求項17に記載の方法であって、ワックス成分が、スラックワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、アルキルケテンダイマーワックス、油とワックスの混合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項25】
請求項17に記載の方法であって、微量栄養素源が、ホウ素、銅、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、微量栄養素源が、硫酸塩、酸化物、オキシ硫酸塩、塩化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、酸、オキシアニオン、キレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項27】
肥料顆粒をコーティングするための微量栄養素コーティングであって、コーティングがワックス成分とその中に懸濁された微量栄養素源の粒子とを含む、コーティング。
【請求項28】
請求項27に記載のコーティングであって、ワックス成分が、カンデリラワックス、カルナウバワックス、蜜ろう、食品産業からリサイクルされたワックス、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、コーティング。
【請求項29】
請求項27に記載のコーティングであって、ワックス成分が、スラックワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、アルキルケテンダイマーワックス、油とワックスの混合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、コーティング。
【請求項30】
請求項27に記載のコーティングであって、微量栄養素源が、ホウ素、銅、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、コーティング。
【請求項31】
請求項30に記載のコーティングであって、微量栄養素源が、硫酸塩、酸化物、オキシ硫酸塩、塩化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、酸、オキシアニオン、キレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、コーティング。
【請求項32】
請求項27に記載のコーティングであって、微量栄養素コーティングがさらに、窒素、リン、カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一次栄養素源、カルシウム、マグネシウム、硫黄及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二次栄養素源、またはその両方を含む、コーティング。
【請求項33】
請求項27に記載のコーティングであって、微量栄養素源の粒子がミクロンサイズ、ナノサイズ、またはその両方の組み合わせである、コーティング。
【請求項34】
請求項27に記載のコーティングであって、微量栄養素源の粒子が、硫酸塩の形態と酸化物の形態との組み合わせを含む、コーティング。
【請求項35】
請求項34に記載のコーティングであって、硫酸塩の形態と酸化物の形態との割合が、3:1、2:1、1:1、1:2、および1:3から選択される、コーティング。
【請求項36】
請求項27に記載のコーティングであって、液体担体をさらに含み、微量栄養素源の粒子を含有するワックス成分が液体担体内で乳化されている、コーティング。
【請求項37】
請求項27~36のいずれか一項に記載のコーティングでコーティングされた種子。
【請求項38】
請求項37に記載の種子であって、微量栄養素源の粒子が、コーティングの約0.01wt%~約10wt%含まれる、種子。
【請求項39】
請求項38に記載の種子であって、微量栄養素源の粒子が、コーティングの約0.1wt%~約5wt%含まれる、種子。
【請求項40】
請求項39に記載の種子であって、微量栄養素源の粒子が、コーティングの約0.5wt%~約2wt%含まれる、種子。
【請求項41】
請求項37に記載の種子であって、コーティングが、種子の総重量の0.1重量%~5重量%の量である、種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は概して肥料製品と種子製品のためのコーティングに関する。より具体的には、本開示は種子、肥料顆粒、肥料ペレット、及び肥料プリルのための微量栄養素を含むコーティングに関する。
【0002】
関連出願
本願は2020年8月12日に出願された米国仮出願第63/064,550号の利益を主張し、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
肥料業界では、取り扱い時の埃っぽさや保管時の固結を減らすために、古くからコーティング剤を採用してきた。早くも1964年の時点で、油やワックスなどの結合剤を加えて細かい微量栄養素材料を顆粒の表面に付着させることにより、微量栄養素を顆粒肥料に配合することが可能であることが研究により示された(例えばHignett,T.P.1964,Com.Fertilizer108,No.1,23-25参照)。ワックスコーティングは、例えばZaayengaに対する米国特許第3,192,031号(以下「Zaayenga」)に開示されているように、栄養分の放出速度を低下させるのに有効な結合剤として認識されていた。しかしながら、これらの結合剤の脂肪性・疎水性の性質は、肥料顆粒の表面に頑強なコーティングを確立することを妨げ、業界慣行としてのそれらの使用に対して反対の教示がなされた(例えばWalterに対する米国特許第5,152,821号(1992年)を参照)。
【0004】
さらに、栄養分の放出を遅らせるためにワックスコーティングを使用する場合、コーティングされた肥料のワックス含有量は、通常、その地域で予想される降雨量に合わせられる。例えば、比較的降雨量の少ない地域での約20重量%から、比較的降雨量の多い地域での約50重量%の範囲に及ぶ。しかし、Zaayengaで議論されているように、これは生産コストを劇的に増加させ、潜在的な用途の汎用性を低下させる。代わりとして、Zaayengaは、珪藻土などの不活性物質からなるプレコーティングを適用することを提案した。しかし、これらの方法でも生産コストが高くなり、用途の汎用性も低くなる。
【0005】
作物の栄養には、窒素、リン、カリウムといった肥料の多量栄養素のほかに、二次栄養素や微量栄養素も不可欠である。微量栄養素は、二次栄養素や多量栄養素に比べ、比較的少量での施用が必要である。農業従事者にとって施用コストを抑えるには、多量栄養素と微量栄養素の両方を同時に散布することが理想的であろう。しかし、必要とされる割合は大きく異なる。例えば、0.5kg/haのホウ素(無水ホウ砂肥料として2.3kg/ha)と同時に、Pは60kg/haの割合で(リン酸一アンモニウムまたは「MAP」として273kg/ha)、銅、マンガン、モリブデン、鉄、亜鉛などの微量の栄養素とともに圃場に必要とされ、適用することができる。
【0006】
微量栄養素のみの肥料の粒径は、粒状の多量栄養素肥料顆粒よりもはるかに小さいことがあるため、これらの肥料を合わせて物理的に混合した場合、施用量の違いや、取り扱い、輸送、散布時の分離により、圃場において均一に分布させられる保証はない。これらの混合肥料は、必然的に取り扱い時の粉塵負荷が高くなることが多く、結果として健康や安全上の問題を引き起こす可能性がある。この問題に対処するため、微量栄養素を多量栄養素肥料に組み込むなどの代替案が、少数の微量栄養素について実現されてきたが、これでは多様な作物と土壌の異なる栄養要求に対して肥料を提供するにあたって限界がある。
【0007】
あるいは、微量栄養素をより柔軟に組み合わせることができるコーティングも製造されている。コーティングによっては、微細な乾燥粉末として添加される微量栄養素を有する。例えば、Greenに対する米国特許第7,445,657号は、乾燥剤の必要性をなくすために、乾燥肥料顆粒と混合した、微量栄養素を含む乾燥粉末を開示している。しかしながら、粉塵を生成することなく、取り扱いや輸送を通じたコーティングの磨耗とその後の劣化に耐えるために、これらの粒子の接着は非常に強力である必要がある。
【0008】
他のコーティングは、油担体中の微量栄養素の懸濁液である。例えば、Wardらに対する米国特許第10,118,867号は、コーティングのための微量栄養素を懸濁させるために油及び分散剤を使用することを開示している。油はすべての取り扱い温度で液体であるため、正しく適用されないと、表面が硬化しないため、コーティングされた製品は、粘着性があり、取り扱いが難しくなるというリスクが常に存在する。この粘着性は、油の表面吸収が異なるため、下にある顆粒または小球の多孔性に依存し得る。
【0009】
油は低コストであるため、多くのコーティングのベースとして使用されている。しかし、粒状肥料の物性に対するそれらの影響は、長い保存期間や農機具の過酷な扱いに資するものではない。しばらくの間、油は粉塵抑制剤として肥料に添加されてきた。そのことはLundgren,D.A.ら(1988)(以下「Lundgren」)による「Fugitive DustControl for Phosphate Fertilizer: Final Report」と題する出版物で報告されている(https://doi.org/01-015-069から入手可能である。)。この報告によると、重過リン酸石灰(「TSP」)について試験した油のほとんどは、初期の粉塵制御にはある程度良好であったが、長期にわたって発塵制御する優れた粉塵抑制剤であったワックスと比較して、粉塵放出量が増加することを示した。またLundgrenは、適用する油の動粘度が高くなると粉塵放出が減少することを見出したが、その利点はスプレー塗料コーティングの担体(キャリア)として必要な低粘度の油では上手くいきそうにない。
【0010】
肥料に適用される他の既知の微量栄養素コーティングは、固形分含有量が高く、不均質な懸濁液である。これらの懸濁液は粘度が高く、スプレー塗布が非常に困難であり、容器の底に沈殿した固形物を再分散させるためには、こそぎ落として激しく攪拌する必要があり、塗布機へのポンプ搬送中は継続的に攪拌する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本開示の実施形態は、疎水性または超疎水性の低コストでワックスベースのコーティングを対象とする。このコーティングには、例えば肥料顆粒、ペレット、およびプリルなどの、種子および肥料製品のための微量栄養素が含まれており、効率化のために本明細書ではこれらをまとめて「顆粒」と呼ぶ。そのコーティングは、ワックス全体に均一に分散される様々な微量栄養素を一緒にまたは単独で支持することができ、種子および顆粒のケーキング傾向を低くし、種子および顆粒の多湿条件に対する耐性を高め、肥料顆粒の破壊および粉塵の生成を減らすことができる。微量栄養素は、容易に入手可能な形態、徐放性の形態、またはその両方の組み合わせでコーティングに含まれ得る。微量栄養素は、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、ホウ素、モリブデンまたはそれらの混合物の、任意の農業上許容される化合物であってもよい。これらは例えば、硫酸塩、酸化物、オキシ硫酸塩、塩化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、酸、オキシアニオン、及び/又は、キレートの形態からなってもよい。ミクロンサイズ及び/又はナノサイズの微量栄養素、又はそれらの混合物をワックスに取り込むことができる。
【0012】
一実施形態として、コーティングは、溶融ワックスと混合された1つまたは複数の微量栄養素を含み、肥料製造の最終工程において、タンブリング中の種子または肥料顆粒全体に均一にウォームメルト添加または(スプレー)噴霧することによって適用される。別の実施形態として、高固形エマルジョン配合物を水または有機溶媒で希釈し、微量栄養素と十分に混合し、ワンステップの方法で肥料顆粒または種子の表面に散布することができる。
【0013】
本発明によるコーティングの実施形態は、表面粗さまたは真球度(球形度)に関係なく、任意の肥料または種子に適用することができる。肥料については、製品および発送方法に応じて、肥料の製造や流通段階における任意の都合のよいところでコーティングを行うことができる。例えば、コーティングは、製品の温度に応じて造粒ドラム、乾燥機または冷却器を出る製品に、および/または鉄道車両またはトラックドラムに積み込む前に備蓄された後に製品に適用することができる。さらにまたはその代わりに、配送センターで、および/または圧縮および破砕後の圧縮肥料(例えば塩化カリウム)に適用することができる。コーティングは、利用可能な塗布装置のタイプに応じて、ペースト、ポンプで入れられる粘性液体、または噴霧される低粘性コーティングとして、肥料または種子に添加することができる。コーティングの粘度は、溶剤や水で希釈することで所望の用途に合わせて調整することができる。ワックスベースのコーティングは、他のコーティングよりも表面粗さによって生じる肥料や種子の表面の空隙を埋める能力が高いため、どのようなコーティングの適用方法を選択しても、保管や取り扱い中の破壊に対する耐性が向上し、より良いコーティングの被覆が可能になる。
【0014】
上記の概要は、図示された各実施形態または本明細書の主題のあらゆる実装を説明することを意図するものではない。図とそれに続く詳細な説明とは、様々な実施形態をより具体的に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書の主題は、添付の図に関連する様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解され得る。
【
図1】
図1は多量栄養素Kの肥料であるMOP上のワックスコーティングにおける硫酸塩および酸化物の両形態からの微量栄養素ZnおよびMnの放出速度を、実験室での溶出試験で示したグラフである。
【
図2】
図2は色素トレーサを4mL/100gの割合で適用した油ベースの微量栄養素コーティングを有するMAP-ES共顆粒(co-granules)を示している。
【
図3】
図3はコーティングされた肥料とコーティングされていない肥料について、80%RH条件による3時間後の水分吸収量を示しており、真球度と表面粗さとが異なるコーティングされていない多量栄養素の画像を下に示す。
【
図4】
図4はコーティングされていない、または本発明の実施形態でコーティングされた3つの異なる形状の肥料の比較磨耗データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な実施形態は、様々な修正形態および代替形態とする余地はあるが、その詳細は、図面において例として示されており、詳細に説明されるであろう。しかしながら、その意図は、特許請求の範囲に記載した発明を説明した特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図は、特許請求の範囲によって規定される主題の趣旨および範囲内に入るすべての修正物、均等物、および代替物を網羅することである。
【0017】
前述のように、本開示の実施形態は、疎水性または超疎水性で低コストのワックスをベースとするコーティングに向けたものである。このコーティングには、種子のための微量栄養素と、顆粒、プリル(小球)、及びペレットを含む肥料製品とを含む。効率化のために以下の記載を通して顆粒の形態の肥料製品を参照するが、実施形態のコーティングは種子にも適用可能であることは理解されたい。また「顆粒」は、顆粒(造粒により形成されたものなど)、圧縮顆粒、ペレット、及びプリルを含むように広範に使用されることは理解されたい。コーティングは、ワックスと、ワックス内に分散または懸濁された1または複数の微量栄養素とを含むことができる。代替の実施形態として、微量栄養素を含むワックスは、水や有機溶媒などの液体担体中で乳化される。コーティングの主要な疎水性部分は肥料に適用されるワックスであり、その量はコーティングされた肥料の総重量の0.1重量%~5重量%(及び存在する場合は乳化剤)で、より具体的には約0.5重量%~2重量%のワックスである。
【0018】
ワックス成分には、約40℃~約105℃(約104°F~約221°F)の融点を有する任意の植物性または化学物質ベースのワックスを含むことができる。実施形態によっては、ワックス成分には、カンデリラワックス、カルナウバワックス、蜜ろう、食品産業からリサイクルされたワックス、またはそれらの組み合わせを含むことができる。他の実施形態として、ワックス成分には、スラックワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどの石油産業由来のワックス、アルキルケテンダイマーワックスなどの化学ワックス、油とワックスの混合物、またはそれらの組み合わせを含むことができる。さらに他の実施形態として、ワックス成分には、上記したワックスの任意の組み合わせ、および多数の比率の任意の組み合わせを含む。
【0019】
コーティングは、ワックス内に分散または懸濁される1または複数の微量栄養素をさらに含み、ホウ素、銅、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、コバルト、またはそれらの組み合わせを含むことができる。微量栄養素は、容易に利用可能な形態(例えば易溶性または高い溶解性の化合物)として、より遅い放出形態(例えば徐溶性または低い溶解性化合物)として、またはその両方の組み合わせとして組み込むことができ、速い栄養放出と遅い栄養放出の利益を生み出すことができる。例えば、微量栄養素は、硫酸塩、酸化物、オキシ硫酸塩、塩化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、酸、オキシアニオン、キレート、又はそれらの組み合わせの形態で存在することができる。一実施形態として、コーティングは、硫酸塩と酸化物などの微量栄養素源の2つの形態の組み合わせ、又は任意の速放性形態及び徐放性形態の組み合わせを含む。その組み合わせの比率は、例えば、3:1、2:1、1:1、1:2、又は1:3とすることができる。実施形態において、微量栄養素はマイクロサイズまたはナノサイズの微量栄養素であるか、またはそれらの混合物を適用することができる。このコーティングでは、すぐに利用可能な化合物と徐溶性化合物の両方を利用して、速い栄養放出と遅い栄養放出の利点を生み出すことができる。他の実施形態として、追加の一次栄養素(N、P、及び/又はK)や二次栄養素(Ca、Mg、及び/又はS)が、微量栄養素と共に又は微量栄養素無しでワックスコーティングに組み込まれる。
【0020】
図1を参照すると、様々なコーティングの放出速度または溶解速度が描かれている。
図1において、塩化カリウム(MOP)肥料について3つの二重微量栄養素のワックスエマルジョンコーティングが試験された。それぞれのコーティングでは、微量栄養素ZnおよびMnの両方の酸化物形態に対する硫酸塩の比率が異なる。
図1におけるすべての製品は0.5wt%Zn/0.5wt%MnでコーティングされたMOPで、硫酸塩と酸化物との比率が50:50、25:75、および0:100であった。示すように、等量の硫酸塩と酸化物を含む配合では、72時間後に50wt%のMnが放出され、25:75の比率で硫酸塩と酸化物を含む配合では、72時間後に15wt%のMnが放出された。示すように、酸化物に対する硫酸塩の比率が小さくなると、微量栄養素の溶解速度が低下することから、硫酸塩形態の微量栄養素は酸化物形態の微量栄養素よりも溶解度が高いことを示している。
【0021】
一実施形態として、コーティングは、コーティングの約0.01wt%~約10wt%、より具体的には約0.1wt%~約5wt%、より具体的には約0.5wt%~約2wt%で1または複数の微量栄養素を含み、溶融ワックスと混合される。コーティングは、肥料製造の最終段階において、肥料乾燥機/冷却機内で約50℃~約150℃の温度で肥料顆粒をタンブリングする間、均一にウォームメルト添加(warm melt dosing)または(スプレー)噴霧することによって適用することができる。他の実施形態として、コーティングは倉庫または他の施設など、現場外で適用することができる。
【0022】
他の実施形態として、高固形ワックスエマルジョン(例えば、エマルジョンが20wt%以上の量のワックス)が、1または複数の微量栄養素を取り込んだ、上に挙げた1または複数のワックスを用いて作られる。ワックスは水および/または、イソプロパノール、エタノール、またはアセトンなどの有機溶剤の担体中で乳化され、それによってワックスは溶剤担体中で十分に混合され、コーティングがウェットアウトすると揮発または蒸発して肥料の表面上に疎水性コーティングを形成することになる。加熱された成分、すなわちワックス、微量栄養素、必要に応じて乳化剤、および担体は、高速ミキサーで結合される。ワックスはその融解温度に達すると融解し、その後すぐに乳化される。成分によっては、このコーティングは超疎水性とみなすことができ、これはコーティングが150°より高い静的接触角を持つ表面を備えていることを意味する。静的接触角とは、水滴が表面となす角度の測定値であり、言い換えれば、コーティング表面がどれだけ耐水性であるかということである。一実施形態として、エマルジョンは、微量栄養素含有ワックスを最大40wt%、(乳化剤として作用する)溶媒を約50wt%以上含むことができる。このコーティングは、最終的なコーティングが、約0.1wt%~約1wt%の微量栄養素に加えて、肥料顆粒に対して約0.5wt%~約5wt%のワックス、より具体的には約1~約2wt%のワックスとなる量で肥料顆粒にコーティングされ得るが、これはコーティング内に分散された微量栄養素の量に依存する。
【0023】
一実施形態として、油などの乳化剤がワックスに加えられる。ワックス乳化剤の1つの非限定的な例はオリーブオイルであるが、当業者に知られている任意の適切なワックス乳化剤、例えば、非イオン性界面活性剤/洗剤が考えられる。一般的に使用される乳化剤のいくつかには、例えば、ポリソルベート、セテアリルアルコール、オレイン酸塩、ホウ砂、レシチン、モノグリセリド及びジグリセリド、又はそれらの組合せなどが含まれる。一つの特定の実施形態として、乳化剤は、最終的にコーティングされた肥料の約0.01~約1.0wt/wt%、より具体的には約0.1~約0.5wt/wt%、さらにより具体的には0.25wt/wt%添加される。
【0024】
実施形態として、ホットメルトとしてまたはエマルジョンとしてのこのコーティングでは、分散剤または懸濁剤および増粘剤は必要とされない。油中の微量栄養素の懸濁液は、分散剤、沈降防止剤、および増粘剤の混合物を必要とし、これらはヒュームドシリカ、重合脂肪酸エステル、脂肪酸改質ポリエステル、および粘土のような化合物であり得る。これらはまとめて製品の5重量%ほどを占めることが可能である。他の実施形態として、分散剤または懸濁剤をコーティング組成物に取り込むことができる。
【0025】
本開示の実施形態はまた、米国出願第16/746,011号に記載された1つまたは複数の実施形態と組み合わせて使用することができる。これは「HYDROPHOBIC COATINGS TO IMPROVE THE PHYSICAL QUALITY PARAMETERS OFFERTILIZERS」(「’011出願」)と題され、その全体が参照により本願に援用される。その中で、凝集、分解、およびダストを低減する目的で、肥料および種子の湿度および温度サイクルの影響を最小限にする低表面エネルギー化合物(これに限定されないが、例えば微量栄養素など)を使った粗コーティングまたは表面処理が用いられる。’011出願のコーティングは、種子、肥料顆粒、プリル、およびペレットについて本明細書で説明したコーティングと組み合わせるか(例えば一緒にブレンド並びに配合するかまたは別のコーティングとして)、または本明細書に記載のコーティングの代替物として使用することができる。
【0026】
実施例
本開示の非限定的な実施形態は、以下の実施例において見出される。
【0027】
表1における下記のワックスコーティング組成物の懸濁液5mLを、200gの塩化カリウム(MOP)肥料にシリンジで導入し、実験室規模のドラムブレンダーにおいて周囲温度(20℃)で2分間ブレンドした。得られた製品はコーティング組成物で均一にコーティングされ、イソプロパノールを追い出し、超疎水性ワックスと0.5wt%のZnを含む微量栄養素コーティングを残した。
【0028】
【0029】
別の実施形態として、第1実施例の高固形分エマルジョン配合物を水で希釈し、周囲温度で肥料顆粒に一段階プロセスで噴霧した。液体担体が追い出された後、超疎水性ワックスと0.5wt%のZnを含む微量栄養素コーティングが顆粒表面に残った。
【0030】
【0031】
次にコーティングの性能について、多量栄養素肥料の中には他よりもコーティングしやすいものがある。尿素または硝酸アンモニウムをベースにした顆粒やプリルはより球状であることが多く、表面の平滑性が高いため、タンブリング時により効率的にコーティングを濡らし、それらの間を移動させ、コーティングがより均一に供給される。しかし、他のほとんどの粒状肥料は、真球度が低く、表面の平滑性がかなり変化しやすい。いくつか例を挙げると、過リン酸塩、リン酸アンモニウム、硫黄(硫酸塩、元素、またはその両方)および/または亜鉛(酸化物または硫酸塩)で富化したリン酸塩、造粒石膏、およびMOPなどの圧縮製品である。顆粒の湿潤性の不整合性を示すために、
図2は、球形度と表面の平滑性が異なるリン酸一アンモニウム(「MAP」)+ES(元素硫黄)顆粒に色素トレーサを用いた従来技術の油ベースの微量栄養素コーティングのコーティング被覆範囲の変動を示す。
【0032】
これらの顆粒の場合、本開示の実施形態のワックスベースのコーティングを用いた空隙の充填が良好であり、これは最終的に、相対湿度(「RH」)で示される湿度の高い貯蔵条件に対する優れた耐性をもたらす。例えば、
図3は、コーティングされた肥料とコーティングされていない肥料について、80%RH条件において3時間後の水分取り込み(wt%水分増加)を示し、グラフのそれぞれの部分の下には、コーティングされていない多量栄養素の画像を付し、顆粒の真球度と表面粗さが異なることを示している。
【0033】
また、やむを得ない取り扱いが起こること、散布機などの機材の粗さ(harshness)、及び粉塵発生の性質を考慮すると、コーティングの粘り強さも重要である。耐摩耗性が高いと粉塵の発生が少なく、多量栄養素の表面に適用されるコーティングは表面劣化が少ないことが必要である。実験室での過酷な摩耗試験をシミュレートした場合、本開示の実施形態によるコーティングは、顆粒の表面劣化を著しく低下させ、これはコーティングされていない顆粒の40倍もの差になり得る。そのような実験室での摩耗試験の結果が
図4に要約されており、これは、コーティングされたもの対コーティングされていないものの、3つの異なる形状とされた肥料顆粒についての比較摩耗データを描いている。コーティングされた顆粒は、0.5%のCu、0.5%のMn、および0.5%のZnを含むワックスコーティングを含む。
【0034】
本開示の実施形態には、例えば以下のような様々な利点がある。
【0035】
先行技術のワックスベースのコーティングとは異なり、本発明による実施形態は、プレコーティングあるいは適用のために肥料顆粒の表面を調製することを必要とせず、単一工程で適用され得る。
【0036】
単一または複数の栄養素を組み合わせたものでコーティングして配合に柔軟性を持たせる能力を通じて微量栄養素をすべての顆粒に確実に付着させることによって、このコーティングは既存のバルク混合よりも均質であり、かつ、微量栄養素を取り込んだ肥料よりも適応性が高くなっている。
【0037】
このコーティングは、ベースとなる顆粒またはプリルに対し、摩耗の少ないコーティング表面を提供するため、粉塵が発生しにくい。ワックスが存在することにより、低粘度のオイルコーティングと比較してこの利点を長持ちさせることが示されており、ワックスコーティングの強度は、粉塵を発生させやすい微粒子微量栄養素コーティングよりも高いと考えられる。
【0038】
このコーティングは、疎水性または超疎水性ワックスの層をその表面に提供する。この層は、肥料を保管したり取り扱ったりする間、高湿度や循環温度にさらされている期間中、結露しにくい。
【0039】
このコーティングによって、市販されている他の製品とは異なり、徐放性および速放性の微量栄養素を柔軟に配合することができる。
【0040】
本明細書では、システム、装置、および方法の様々な実施形態について説明してきた。これらの実施形態は、例示としてのみ与えられており、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を制限することは意図していない。さらに、これまで説明してきた実施形態の様々な特徴を様々な方法で組み合わせて、多数の追加の実施形態を生み出せることを理解されたい。さらに、開示した実施形態で使用する様々な材料、寸法、形状、構成、配置などについて説明してきたが、開示したもの以外のものも、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を超えない範囲で利用することができる。
【0041】
関連する技術分野の当業者であれば、本発明の主題が、上述の個々の実施形態で説明したものよりも少ない特徴からなるものであってもよいことを認識できるであろう。本明細書に記載した実施形態は、本明細書の主題の様々な特徴を組み合わせることができる方法を網羅的に提示することを意図していない。したがって、実施形態は、相互に排他的な特徴の組み合わせではなく、むしろ、当業者が理解するように、様々な実施形態は、異なる個々の実施形態から選択された異なる個々の特徴の組み合わせを含むことができる。さらに、一実施形態に関して記載された要素は、特に断りのない限り、そのような実施形態に記載されていない場合でも、他の実施形態で実装することができる。
【0042】
従属請求項は、特許請求の範囲において、1つ以上の他の請求項との特定の組み合わせについて言及することもあるが、他の実施形態も、従属請求項と他の各従属請求項の主題との組み合わせ、または1つ以上の特徴と他の従属請求項または独立請求項との組み合わせを含むこともできる。本明細書では、具体的な組み合わせを意図していないということが記載されていない限り、そのような組み合わせが提示されている。
【0043】
上記の文書の参照による援用は、本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように制限される。上記の文書の参照による援用は、文書に含まれる請求項が参照により本明細書に援用されないよう、さらに制限される。上記文書の参照による援用は、文書内に提供されている定義が、本明細書に明示的に含まれていない限り、参照によって本明細書に援用されないように、さらに制限される。
【0044】
特許請求の範囲を解釈する上で、「~のための手段」または「~のステップ」という特定の用語が特許請求の範囲に記載されていない限り、35U.S.C.§112(f)の規定は適用されないことが明示的に意図されている。
【国際調査報告】