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特表2023-538549金属有機構造体の合成方法およびリサイクル方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】金属有機構造体の合成方法およびリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/02 20060101AFI20230901BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230901BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20230901BHJP
   C07C 211/10 20060101ALI20230901BHJP
   C07C 65/10 20060101ALI20230901BHJP
   C07C 209/00 20060101ALI20230901BHJP
   C07C 51/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C07F3/02 Z
B01J20/22 A
B01J20/30
C07F13/00 A
C07C211/10
C07C65/10
C07C209/00
C07C51/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509860
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 US2021045741
(87)【国際公開番号】W WO2022036094
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】62/706,389
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アブニー,カーター ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリム,メアリー エス
(72)【発明者】
【氏名】イバシュコ,アナ シー
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジュリー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,アーロン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】カペレフスキー,マシュー ティ
(72)【発明者】
【氏名】マハノ サンチェス,ヘラルド
(72)【発明者】
【氏名】サトラー,ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン,サイモン シー
【テーマコード(参考)】
4G066
4H006
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA02
4G066FA11
4G066FA17
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC90
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BS30
4H048AA02
4H048AC90
4H048VA60
4H048VB10
4H050AA02
(57)【要約】
本明細書は、金属有機構造体に付加された複数の配位子を気相付加することにより、金属有機構造体システムを合成する新規な方法を提供する。また、配位子を剥離し、同じ配位子を再付加するか、または異なる配位子を金属有機構造体に付加して、リサイクルされたまたは再利用された金属有機構造体システムを提供することにより金属有機構造体システムをリサイクルする方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機構造体と、該金属有機構造体に付加された複数の配位子とを含む金属有機構造体システムを合成する方法であって:
少なくとも1つのオープン金属部位を含む金属有機構造体を提供すること;および
気相中の配位子をオープン金属部位で該金属有機構造体に付加して金属有機構造体システムを形成すること
のステップを含む、方法。
【請求項2】
金属有機構造体システムを製造する方法であって:
金属有機構造体を製造すること、ここに該金属有機構造体は複数のオープン金属部位を含み、リンカーが該複数のオープン金属部位のうちの少なくとも1つを別のものに架橋し;
複数の配位子を蒸発させて気相を生成すること;および
該気相において、該複数の配位子のうちの少なくとも1つを、金属有機構造体のオープン金属部位のうちの少なくとも1つに結合させて、金属有機構造体システムを形成すること
のステップを含む、方法。
【請求項3】
金属有機構造体を溶媒中に懸濁させることのステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属有機構造体から溶媒を濾過することのステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
配位子を加熱して気相を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
不活性ガスが該気相を通過する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
不活性ガスが窒素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって生成する金属有機構造体システムであって、該金属有機構造体システムが、エチレンジイミンビスサリチル酸と共に連結して、複数の金属部位、および2-アミノメチルピぺリジンおよび/またはN,N-ジメチルエチレンジアミンで気相中で付加された複数の金属部位を形成して、金属有機構造体システムを提供するマグネシウムイオンおよび/またはコバルトイオンを含む金属有機構造体を含む、金属有機構造体システム。
【請求項9】
エチレンジイミンビスサリチル酸と共に連結して、複数のオープン金属部位を形成するマグネシウムイオンおよび/またはコバルトイオンの金属有機構造体を含む金属有機構造体システムであって、複数のオープン金属部位が2-アミノメチルピペリジンおよび/またはN,N-ジメチルエチレンジアミンで付加された、金属有機構造体システム。
【請求項10】
金属有機構造体システムをリサイクルする方法であって、
金属有機構造体システムから複数の第1の付加配位子を剥離して金属有機構造体を提供すること、ここで金属有機構造体の構造は無傷のままであり;および
複数の第2の付加配位子の少なくとも1つを金属有機構造体に付加して、リサイクルされた金属有機構造体システムを提供すること
のステップを含む、方法。
【請求項11】
金属有機構造体システムおよび金属有機構造体を順次浸漬して、リサイクルされた金属有機構造体システムを提供することのステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属有機構造体システムを溶媒中で洗浄して、複数の第1の付加配位子を除去することのステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
複数の第2の付加配位子の少なくとも1つを気相中で金属有機構造体に付加することのステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
複数の第1の付加配位子が、使用済みジアミン付加配位子である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
複数の第2の付加配位子が、リサイクルされた複数の第1の付加配位子である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
複数の第1の付加配位子が、複数の第2の付加配位子と異なる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
金属有機構造体システムが、金属有機構造体に付加されたジアミンを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
金属有機構造体が、1つ以上の別個の金属元素の複数と、1つ以上の別個の金属元素の複数のそれぞれが複数のリンカーの1つ以上によって架橋されて金属サイトを形成する複数のリンカーとを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上の別個の金属元素の複数が、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、および/またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
別個の金属元素がMgである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
配位子がアミンである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
複数の配位子がアルコールである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
リンカーが、第3の結合部位と共に架橋されている第1の結合部位および第2の結合部位を含む多座有機配位子である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
多座有機配位子の第1の結合部位および第2の結合部位がそれぞれサリチレート部位を含み、第3の結合部位がジアミン基を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
多座有機リンカーが5,5’-(((1E,2E)-エタン-1,2-ジイリデン)ビス-(アザネイルイリデン))ビス(2-ヒドロジ安息香酸)である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年8月13日に出願された米国仮出願第62/706,389号の優先権および利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
本発明は、金属有機構造体システムを含む二酸化炭素吸収剤に関し、より詳細には、ジアミン付加配位子を有するMOF-274金属有機構造体をベースとする金属有機構造体システムならびにその製造方法およびリサイクル方法に関する。
【0003】
金属有機構造体MOF-274をベースとするアミン付加金属有機構造体は、排ガスからのCO選択的回収の有力候補である。従来、この材料は、アミン含有非配位溶媒に新生の金属有機構造体を分散させ、その後洗浄を繰り返すことで形成されてきた。様々なアミンが実証されているが、四級アミンを含む場合は、過剰なアミンを解放し、所望の充填(loading)を生成するために、添加後に追加の加熱が必要である。うまく官能化された場合、これらのアミン付加金属有機構造体は、COに対してユニークなV型等温線を示し、NまたはOよりも選択的に結合する。
【0004】
エチレンジイミンコアで架橋されたサリチレートを含むMOF-274の共役は、MOF-274金属有機構造体と同じ性質を持ち、骨格にアミンを付加する能力もある。このようなアミンを付加した吸収体材料は、二酸化炭素を含む流れからCOを高い容量で、かつV型等温線で捕捉するのに有用である。ジイソプロピルベンゼンやブタノールのような高沸点またはより極性の高い溶媒も使用されているが、結晶性が劇的に低下する結果となる。
【0005】
さらに、アミン付加MOFを循環させると、時間の経過とともにアミン損失が進行し、目的の分離のために材料が不活性化する。特定のシステムでは、結合したCOを脱離するために金属有機構造体を蒸気と接触させると、アミン損失が加速される。さらに、MOF-274ファミリーの一部の金属有機構造体は、安定性が低く、溶媒にさらされると分解してしまい、アミン付加がうまくいかず、その後のCO捕捉のための使用が妨げられる。
【0006】
さらに、CO捕捉用途では、ジアミンで官能化された金属有機構造体MOF-274は、望ましいV型等温線が得られる。しかし、異なるジアミンを設置することにより、蒸気安定性の付与やCO吸着に必要なCO分圧/温度の変化など、吸着剤の特性が変化する。この汎用性により、ジアミン付加MOF-274金属有機構造体は、さまざまな流れからのCO捕捉に利用できる可能性を有している。しかし、金属有機構造体であるMOF-274に選択されたアミンが付加されると、現在のパラダイムでは、その材料は使用期間中、その特定の形態に留まることになる。
【0007】
使用済みのジアミン付加MOF-274金属有機構造体システムのリサイクル、または異なるジアミンを充填して異なる性能を達成する目的で金属有機構造体システムから意図的にアミンを除去することには、ほとんど関心が払われていない。さらに、新しい有利なアミン付加MOF-274金属有機構造体システムが発見されると、新しいジアミンの設置を通じて吸着剤システムをアップグレードする能力が、de novoのMOF合成を排除し、費用、浪費、および吸着剤のダウンタイムを最小化する。
【0008】
したがって、長期間にわたってアミンが失われることなく循環させることができ、かつ/または、同じまたは異なるCO捕捉条件で使用するために異なるアミンでリサイクルおよび/または再利用することができる新規または既存の金属有機構造体の合成方法に対する要望が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書では、金属有機構造体と、金属有機構造体に気相で付加された複数の配位子とを含む金属有機構造体システムの合成方法を提供する。また、金属有機構造体システムのリサイクルおよび再利用の方法も提供する。金属有機構造体は、複数の1つ以上の異なる金属元素および複数のリンカーを有する。複数の1つ以上の異なる金属元素の各々は、複数のリンカーのうちの1つ以上によって架橋されて、オープン金属部位を形成する。ある局面において、金属有機構造体システムは、金属有機構造体のオープン金属部位に付加されたジアミンを含む。ある局面において、複数の1つ以上の異なる金属元素は、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、および/またはそれらの組み合わせを含む。ある局面において、異なる金属元素はMgである。ある局面において、複数の配位子は、アミンまたはアルコールである。
【0010】
本発明の方法は、以下のステップを含む:(a)少なくとも1つのオープン金属部位を含む金属有機構造体を提供すること;および(b)オープン金属部位で金属有機構造体に気相で配位子を付加して金属有機構造体システムを形成すること。
【0011】
さらに、本明細書に提供するのは、以下のステップを含む、金属有機構造体システムを製造する方法である:(a)金属有機構造体を製造すること;(b)複数の配位子を蒸発させて気相を生成すること;および(c)気相中で、複数の配位子のうちの少なくとも1つを、金属有機構造体のオープン金属部位のうちの少なくとも1つに結合させて、金属有機構造体システムを形成すること。金属有機構造体は、複数のオープン金属部位を含み、そこではリンカーが複数のオープン金属部位のうちの少なくとも1つを別のものに架橋すされる。別の局面において、本方法は、金属有機構造体を溶媒中に懸濁させるステップをさらに含むことができる。ある局面において、本方法は、金属有機構造体から溶媒を濾過するステップをさらに含むことができる。ある局面において、本方法は、気相を形成するために加熱された複数の配位子をさらに含むことができる。ある局面において、本方法は、複数の配位子が気相を形成するように減圧することをさらに含むことができる。ある局面において、本方法は、不活性ガスが気相を通過することをさらに含むことができる。
【0012】
本発明の新規な方法は、2-アミノメチルピペリジンおよび/またはN,N-ジメチルエチレンジアミンで気相中に付加された複数のオープン金属部位を形成するエチレンジアミンビサリチル酸と一緒に結合した金属イオンを有する金属有機構造体を含む新規な金属有機構造体システムを生成することができる。このように、2-アミノメチルピペリジンおよび/またはN,N-ジメチルエチレンジアミンを付加したMOF-274金属有機構造体のマグネシウムバリアントを含む新規な金属有機構造体システムが提供される。
【0013】
さらに、本明細書では、以下のステップを含む、金属有機構造体システムのリサイクルまたは再使用の方法が提供される:(a)複数の第1の付加配位子を金属有機構造体システムから剥離して、金属有機構造体の構造がそのまま残っている金属有機構造体を提供すること;および(b)複数の第2の付加配位子の少なくとも1つを金属有機構造体に付加して、リサイクルされた金属有機構造体システムを生成すること。ある局面において、リサイクル方法は、リサイクルされた金属有機構造体システムを提供するために、金属有機構造体システムおよび金属有機構造体を順次浸漬するステップをさらに含む。ある局面において、これらの方法は、複数の第1の付加配位子を除去するために、金属有機構造体システムを溶媒中で洗浄するステップをさらに含む。ある局面において、これらの方法は、少なくとも1つの複数の第2の付加配位子を気相で金属有機構造体に付加するステップをさらに含む。ある局面において、複数の第1の付加配位子は、使用済みジアミン付加配位子である。局面において、複数の第2の付加配位子は、複数の第1の付加配位子がリサイクルされたものである。ある局面において、複数の第1の付活配位子は、複数の第2の付加配位子と異なる。
【0014】
ある局面において、リンカーは、第3の結合部位と一緒に架橋される第1の結合部位および第2の結合部位を含む多座有機配位子である。ある局面において、多座有機配位子の第1の結合部位および第2の結合部位は、それぞれ、サリチレート部分を含み、第3の結合部位は、ジアミン部分を含む。ある局面において、多座有機リンカーは、5,5’-(((1E,2E)-エタン-1,2-ジイリデン)ビス-(アザネイルイリデン))ビス(2-ヒドロキシ安息香酸)である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1Aおよび図1Bは、実施例1の金属有機構造体の50℃で行った等温線であり、実施例1の金属有機構造体は配位子であるN,N-ジメチルエチレンジアミンを付加されており、実施例1の金属有機構造体に配位子2-アミノメチルピペリジン(2-ampd)が付加されている。図1Aは、線形圧力スケールでの等温線である。図1Bは、対数圧力スケールのものである。
【0016】
図2は、実施例1の金属有機構造体(プリスチン)、および実施例1の金属有機構造体の溶媒中または蒸気中でのアミン含浸後の金属有機構造体システムの粉末X線回折(「PXRD」)パターンである。
【0017】
図3は、金属有機構造体MOF-274およびEMM-44と示される、金属有機構造体MOF-274の気相アミン付加後に得られた金属有機構造体システムについて収集したPXRDデータである。
【0018】
図4は、5%マンガン、95%マグネシウムMOF-274構造体に2-ampdを付加することによって調製した金属有機構造体の熱重量分析(「TGA」)であり、低温での巻き込み溶媒の除去を考慮して100℃に正規化したものである。
【0019】
図5は、2-ampdの気相付加によって生成した実施例3の金属有機構造体1のH NMRスペクトルである。
【0020】
図6は、実施例3の金属有機構造体システム1についてのCO等温線である。
【0021】
図7は、配位子であるmmenを気相アミンに付加した後に得られた実施例3の金属有機構造体MOF-274および金属有機構造体システム2について収集したPXRDデータである。
【0022】
図8は、実施例3の金属有機構造体システム2のH NMRスペクトルである。
【0023】
図9は、実施例3の金属有機構造体システム2についてのCO等温線である。
【0024】
図10は、V型等温挙動の存在を明確に示すためにX軸を制限した、図9のCO等温線である。
【0025】
図11は、N,N’-ジメチルエチレンジアミン配位子の化学構造を示す右側に芸術的に表示する、オープン金属部位に配位するジアミンを有するMOF-274の結晶構造の表示である。
【0026】
図12は、市販の金属有機構造体システム、mmen@MOF-274のH NMRスペクトルである。
【0027】
図13は、金属有機構造体システム、mmen@MOF-274の水中浸漬後のH NMRスペクトルである。
【0028】
図14は、金属有機構造体システム、mmen@MOF-274のメタノール浸漬後のH NMRスペクトルである。
【0029】
図15は、エタノールに浸漬した後の金属有機構造体システム、mmen@MOF-274のH NMRスペクトルである。
【0030】
図16は、配位子であるmmenを水、メタノール、またはエタノールで剥離した金属有機構造体システム、mmen@MOF-274および金属有機構造体、MOF-274の粉末X線回折パターンの比較である。
【0031】
図17Aおよび図17Bは、金属有機構造体システム、mmen@MOF-274から水またはメタノール、および水およびメタノールをそれぞれ用いてmmenを剥離した後の金属有機構造体についてのCOアイソバーである。
【0032】
図18は、金属有機構造体システムの複数の第1の付加配位子、2-ampdが水を用いて剥離され、金属有機構造体(MOF-274)が複数の第2の付加配位子、同じく2-ampdで再付加されたリサイクル金属有機構造体システムのH NMRスペクトルである。
【0033】
図19は、複数の第1の付加配位子であるmmenをメタノールを用いて剥離し、複数の第2の付加配位子である2-ampdを金属有機構造体に付加した金属有機構造体システム(mmenを有するMOF-274)から得られたリサイクル金属有機構造体システムのH NMRスペクトルである。
【0034】
図20は、複数の第1の付加配位子、mmenを付加し、複数の第2の付加配位子2-ampdを再付加した金属有機構造体システムMOF-274を含む金属有機構造体のH NMRである。
【0035】
図21は、実施例5に記載し、図18図19および図20に示した試料のCOアイソバーである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[発明の詳細な説明]
本開示の目的のために、以下の定義が適用される:
【0037】
本明細書で使用される場合、「a」および「the」という冠詞は、単数形と同様に複数形を包含するものと理解される。
【0038】
用語「アリール」は、特に断らない限り、単環または複数の環が融合しているか共有結合していることができる多価不飽和、芳香族置換基を意味する。ある局面において、置換基は、1~11個の環、より具体的には、1~3個の環を有する。用語「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含むアリール置換基(または環)を示し、ここで、窒素原子および硫黄原子は所望により酸化されていてもよく、窒素原子(複数可)は所望により四級化されていてよい。例示的なヘテロアリール基は、6員アジン、例えば、ピリジニル、ジアジニルおよびトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルを含む。上記アリールおよびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、以下に記載する許容し得る置換基の群から選択される。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」は、所望により、示された種の置換型および非置換型の両方を含み得る。アリール基およびヘテロアリール基の置換基は、一般的に「アリール基置換基」という。置換基は、例えば、以下から選択される:ゼロから芳香族環系上のオープン価の総数までの数で、炭素またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、SiまたはB)を介してヘテロアリールまたはヘテロアレーンの核に結合した基から選択され、限定されないが、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、--OR’、=O、=NR’、=N--OR’、--NR’R’’、--SR’、-ハロゲン、--SiR’R’’R’’’、--OC(O)R’、--C(O)R’、--COR’、--CONR’R’’、--OC(O)NR’R’’、--NR’’C(O)R’、--NR’--C(O)NR’’R’’’、--NR’’C(O)R’、--NR--C(NR’R’’R’’’)NR’’’’、--NR--C(NR’R’’)=NR’’’、--S(O)R’、--S(O)R’、--S(O)NR’R’’、--NRSOR’、--CNおよび--R’、--、--CH(Ph)、フルオロ(C-C)アルコキシ、およびフルオロ(C-C)アルキルを含む。上記の基の各々は、アリールまたはヘテロアリール核に直接またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、SiまたはB)を介して結合し;ここで、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、好ましくは水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから独立して選ばれる。本発明の化合物が1つ以上のR基を含む場合、例えば、R基の各々は、これらの基が1つ以上存在する場合、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基と同様に独立して選択される。
【0040】
用語「アルキル」は、それ自体または別の置換基の一部として、特に断らない限り、直鎖または分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、これらは完全に飽和、モノまたは多不飽和であってもよく、ジ、トリおよび多価ラジカルを含むことができ、指定した炭素原子数(すなわち、C-C10とは炭素数1~10を意味する)を有する。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体とアイソマーなどの基があるがこれに限らない。不飽和アルキル基は、二重結合または三重結合を1つ以上有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニルおよびこれらの上位同族体および異性体などが挙げられるが、これらに限定されない。用語「アルキル」は、特に断りのない限り、「ヘテロアルキル」など、以下に詳細に定義するアルキルの誘導体を任意に含んでよいことも意図する。
【0041】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、特に断らない限り、記載された数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる安定な直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、ここで窒素原子および硫黄原子は任意で酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は任意で4級化されていてもよい。ヘテロ原子(複数可)O、NおよびSおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置またはアルキル基が分子の残部に結合している位置に配置されてよい。その例は、--CH--CH--O--CH、--CH--CH.--NH--CH、--CH--CH--N(CH)--CH、--CH--S--CH--CH、--CH--CH、--S(O)--CH、--CH--CH--S(O)--CH、--CH=CH--O--CH、--Si(CH、--CH-CH=N--OCHおよび--CH=CH--N(CH)-CHを含むが、これらに限定されるものではない。最大2つのヘテロ原子が連続してもよく、例えば、--CH--NH--OCHおよび--CH--O--Si(CHなどである。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体または別の置換基の一部として、--CH--CH--S--CH--CH--および--CH--S--CH--CH--NH--CH--に例示されるが、これらに限られず、ヘテロアルキル由来の二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基については、ヘテロ原子はまた、鎖末端のいずれかまたは両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基については、連結基の式が記載される方向によって、連結基の向きが暗示されることはない。例えば、式--COR’--は、--C(O)OR’および--OC(O)R’の両方を表す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)、ホウ素(B)およびリン(P)を含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「配位子」は、ルイス塩基(電子供与体)として機能することができる1つ以上の置換基を含む分子を意味する。本明細書で提供するある局面において、配位子は、アミンまたは1~10個のアミン基を含むアミンであり得る。
【0044】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体または別の置換基の一部として、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の原子を意味する。
【0045】
記号「R」は、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す一般的略称である。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「周期表」は、2015年12月付けの国際純正・応用化学連合(IUPAC)の元素の周期表を意味する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「等温線」は、系の温度が一定に保持されている間、濃度の関数としての吸着物の吸着を示す。ある局面において、吸着物はCOであり、濃度はCO圧力として測定することができる。本明細書に記載するように、等温線は、多孔質材料を用いて、見かけの表面積を計算するために適用される様々な数学モデルを使用して行い得る。S.Brunauer、P.H.EmmettおよびE.Teller. J.Am.Chem.Soc.1938,60,309-319;K.Walton and R.Q.Snurr,J.Am.Chem.Soc.2007,129,8552-8556;I.Langmuir,J.Am.Chem.Soc.1916,38,2221。
【0048】
本明細書で使用する場合、等温線の用語「ステップ」は、シグモイド吸収プロファイルによって定義され、別称、V型等温線として知られている。S.J.Gregg and K.S.W.Sing,Adsorption,Surface Area and Porosity,2nd Ed.このステップは、一般に等温線の正の二次導関数、それに続く変曲点、それに続く等温線の負の二次導関数で定義することができる。例えば、COが金属-アミン結合に挿入されたとき、あるいは動的構造体の孔が開いた場合のように、吸着剤の結合部位が特定のガス分圧でのみアクセス可能になる場合に、このステップが発生する。
【0049】
用語「塩(複数可)」は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の配位子または置換基に応じて、酸または塩基の中和によって調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態と十分な量の所望の塩基を、ニートまたは適切な不活性溶媒中で接触させることにより得ることができる。塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、またはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヒドリド酸、またはリン酸などの無機酸から得られるものが挙げられる、同様に、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルフォン、p-トリルスルフォン、クエン酸、酒石、メタンスルフォンなどの比較的非毒性の有機酸から得られる塩が挙げられる。本開示の特定の化合物は、化合物を塩基性または酸付加塩のいずれかに変換することを可能にする塩基性および酸性の両方の官能基を含む。塩の水和物もまた含まれる。
【0050】
金属有機構造体
金属有機構造体は、複数の1つ以上の異なる金属元素と複数のリンカーを有し、複数の1つ以上の異なる金属元素(金属イオン)の各々は、複数のリンカーの1つ以上によって架橋される。特定の態様において、これは、オープンメタルサイトを形成する。局面において、複数の1つまたは複数の異なる金属元素は、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、および/またはそれらの組み合わせからなる。本明細書に記載されるように、金属有機構造体は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnの群から独立して選択される1つまたは複数の別個の元素からなり得る。局面において、別個の金属元素は、Mgである。
【0051】
金属有機構造体は、一般構造式Iであり得る。
(2-x)(A)

ここで、Mは金属またはその塩であり、Mは金属またはその塩であり、MはMと同じであってよく、Xは1であり、またはMはMではなく、Xは0.01~1.99の値である。Aは有機リンカーである。
【0052】
適切なリンカー(本明細書では「有機リンカー」とも呼ばれる)は、金属有機構造体の構造および有機リンカーの金属ノードに結合する部分を関連付ける対称性操作から決定することができる。化学的または構造的に異なるが、金属ノード結合領域をC2軸の対称性で関連付けることができるリンカーは、同一のトポロジーを有する金属有機構造体を形成する。ある局面では、有機リンカーは、炭素1,1’で結合した2つのフェニル環によって形成され、炭素3,3’にカルボン酸、炭素4,4’にアルコールが存在することができる。カルボン酸とアルコールの位置を入れ替えても(例えば、後述の「pc-H4DOBPDC」または「pc-MOF-274」)、金属有機構造体のトポロジーは変わらない。
【0053】
また、リンカーは、第3の結合部位と一緒に架橋される第1の結合部位および第2の結合部位からなる多座の有機配位子であり得る。局面において、多座有機配位子の第1の結合部位および第2の結合部位はそれぞれサリチル酸部分からなり、第3の結合部位はジアミン部分からなる。局面において、多座有機リンカーは、5、5’-((1E,2E)-エタン-1,2-ジイリデン)ビス-(アザネイルリデン))ビス(2-ヒドロジベンゾイックアシッド)である。
金属有機構造体システム
【0054】
本明細書に記載されるように、金属有機構造体は、金属有機構造体に付加された配位子を含んでいる。一般に、金属有機構造体は、一般構造式IIであり得る。
(2-x)(A)(B)
II
【0055】
ここで、Mは、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから独立して選択され、Mは、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから独立して選択され、Mは、Mと同じであり得、Xは1、またはMはMではなく、Xは0.01から1.99までの値である。Aは有機リンカー、Bは配位子である。一般に、配位子(B)の数は、金属部位の数に相当することになる。しかし、実施例5に記載されているようなポリアミンについては、配位子の数は2未満であることができ、理想的には1つの配位子に対して2つの金属の割合である。
【0056】
本明細書に記載するように、配位子は、アミンまたはアルコールであり得る。より具体的には、アミンは、ジアミン、環状ジアミン、トリアミン、および/またはテトラミンとすることができる。さらに、金属有機構造体は、二酸化炭素への曝露時にV型ステップCO等温線プロファイルを示すことができる。米国特許出願番号62/839261号に記載されているように、金属の選択および/または金属有機構造体システムに組み込まれる金属の比率によって、V型ステップを調節することが可能である。ある局面において、金属有機構造体は、金属有機構造体に付加されたジアミンを含む。
【0057】
さらに、本明細書に記載の金属有機構造体の1つまたは複数を含む吸着剤が提供される。本発明の吸着剤は、様々なタイプのガス流から二酸化炭素を除去する方法に使用することができる。
【0058】
金属有機構造体を製造する従来の合成法
従来の金属有機構造体製造のための合成では、溶媒に固体を完全に溶解して反応溶液を形成し、その後、高温で金属有機構造体の成長を促進する。このような合成の前提条件として、試薬の溶解に必要な大量の溶媒が必要となることがある。しかし、結晶成長のためには、金属有機構造体を製造するために必要な固体試薬の量が制限要因になることが多い。
【0059】
本明細書で言及されるように、従来の合成は、典型的には、並行反応を伴わない従来の電気加熱によって実施される適用反応である。伝統的な合成では、反応温度は、金属有機構造体の合成の主要なパラメータであり、ソルボサーマルおよび非ソルボサーマルという2つの温度範囲が通常区別され、使用されるべき反応セットアップの種類を規定するものである。ソルボサーマル反応は、一般に密閉容器内で、使用する溶媒の沸点程度の自生圧力で行われる。非溶媒熱反応は、常圧下で沸点以下、または沸点で行われるため、合成の要件が簡素化される。非溶媒熱反応は、さらに室温と高温に分類することができる。
【0060】
従来の金属有機構造体の合成は、溶媒中で、室温から約250℃の範囲の温度で行われる。熱は、高温のソースであるオーブンから、対流によって伝達される。あるいは、電位、電磁波、機械波(超音波)、または機械的にエネルギーを導入することもできる。エネルギー源は、系に導入される時間、圧力、および分子あたりのエネルギーと密接な関係があり、これらのパラメータの各々は、形成される金属有機構造体とそのモルフォロジーに強い影響を与えることができる。
【0061】
従来の金属有機構造体の合成は、McDonald,T.,Mason,J.,Kong,X.et al,Cooperative insertion of CO in diamine-appended metal-organic frameworks,Nature 519,303-08(2015)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。一般に、0.10mmolのリンカー、0.25mmolの金属塩、および10mLの溶媒、すなわちメタノール/ジメチルホルムアミド(「DMF」)を、20mLのガラスシンチレーションバイアルに一緒に入れる。その後、バイアルを密封し、393°Kのホットプレート上の深さ2cmのウェルプレートに約12時間置き、その後、バイアルの底と壁に粉末が形成される。その後、金属有機構造体材料をデカンテーションし、残った粉末をDMFに3回、次にメタノールに3回浸漬する。その後、金属有機構造体を濾過して集め、動的真空下(10μbar以下)、523°Kで24時間加熱することで完全に脱溶媒する。この特定の方法論を使用すると、従来の合成方法では、約0.073mmolの金属有機構造体、または73%の収率(生成した金属有機構造体のmmolをリンカーの初期mmolと比較)または反応溶液1リットル当たり2.7グラムの体積正規化質量ベースの収率を得ることができる。
【0062】
参照により本明細書に組み込まれる、Nature,2015,519,303-308に記載される従来の合成に加えて、金属有機構造体を生成する合成は、さらに、Nature.J.Am.Chem.Soc.2012,134,7056-7065;Chem.Sci.2018,9,160-174;米国特許第8,653,292号および米国特許出願公開番号2007/0202038、2010/0307336、および2016/0031920に記載されている。
【0063】
1つの局面において、配位子は、配位子を構造体システムの1つまたは複数の金属に配位させるために使用される他の構造要素を含むことができ、以下の官能基:カルボキシレート、トリアゾレート、ピラゾレート、テトラゾレート、ピリジン、アミン、アルコキシドおよび/または硫酸基が挙げられるがこれらに限定はされない。
【0064】
例として、アミン付加金属有機構造体は、以下のようにスキーム1に示す2段階プロセスで調製することができる:
【化1】
【0065】
ステップ1において、Mの好適な塩およびMの好適な塩を、適切な溶媒中でリンカーAと組み合わせ、加熱して、一般に式Iで表される金属有機構造体システムを提供する。例えば、MnClおよびMg(NO・6HOを、メタノールおよびN,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)中の4,4’-ジオキシド-3,3’-ビフェニルジカルボキシレート(HDOBPDC)と結合させて、MがMn、MがMgおよびAがDOBPDCである式Iの組成物を提供する。
【0066】
ステップ2では、式Iの金属有機構造体を、適切な溶媒中で配位子(B)と結合させる。例えば、MはMnであり、MはMgであり、AはDOBPDCである、はトルエン中で2-ampdと結合され、式IIの混合金属有機構造体を提供し、ここで、MはMn、MはMg、AはDOBPDC、Bは2-ampdである。アミンの数は、金属の数に相当することになる。
【0067】
新規な本方法および組成物を開示し、説明する前に、特に指定しない限り、本発明は、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、配位子、触媒構造、メタロセン構造などに限定されず、そのようなものは変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0068】
金属有機構造体への配位子の気相付加
本明細書に記載されているように、金属有機構造体システムを製造する現在の方法は、システムを製造するために使用される溶媒の蒸発によって影響を受ける。より高沸点またはより極性の高い溶媒を利用することにより、溶媒の蒸発を低減することができるが、材料の結晶化度も低下する可能性がある。そこで、気相中の配位子を金属有機構造体に接触させ、金属有機構造体に結合させ、金属有機構造体システムを提供するという新しい合成法を開発しました。この新しい手法では、結晶性が維持され、場合によっては、金属有機構造体の信号強度やピーク幅の向上が観察され、高次で結晶性が向上していることが示される。実際、結晶性の低い金属有機構造体の吸着等温線は、望ましい吸着ステップを示さないことから、この気相法によるアプローチの優位性が示された。
【0069】
さらに、アミン付加金属有機構造体を循環させると、時間の経過とともにアミン損失が進行し、所望の分離のための材料が不活性化することがある。特定のシステムでは、結合したCOを脱離するために金属有機構造体を水蒸気と接触させると、アミン損失が加速される。特に、MOF-274ファミリーの一部の金属有機構造体は安定性が低く、溶媒に触れると分解してしまうため、アミン付加がうまくいかず、その後のCO回収に使用できない。これらの問題は、金属有機構造体を気相でアミンと接触させることで解決されます。アミンが沸点以上に加熱され、金属有機構造体の上を通過することで、金属部位にアミンが付加され、目的の吸着材が生成される。金属有機構造体は、元の担持プロトコルを再現することでアミンで再機能化することができるが、このようなアプローチでは、プロセスユニットから吸着剤を完全に除去する必要があり、費用とダウンタイムが発生する。また、吸着剤にアミンを溶解させたものを流し込むこともできる。有機溶媒で合成することができるが、大量の有機溶媒を使用する必要があり、安全上の問題が生じ、不必要な有害廃棄物の流れが生じ、追加の費用が発生する。
【0070】
以下の実施例に記載されるように、金属有機構造体システムを合成する新規な方法は、以下のステップを含む:(a)少なくとも1つのオープン金属部位を含む金属有機構造体を提供するステップ;および(b)オープン金属部位で金属有機構造体に気相中の配位子を付加(結合)して、金属有機構造体を形成するステップ。
【0071】
1つの局面において、本方法は、以下のステップを含む金属有機構造体システムの製造方法である:(a)金属有機構造体を作る;(b)複数の配位子を蒸発させて気相を生成する;および(c)気相において、複数の配位子のうちの少なくとも1つを、金属有機構造体のオープン金属部位のうちの少なくとも1つに結合させて、金属有機構造体システムを形成する。金属有機構造体は、複数のオープン金属部位を含み、リンカーが複数のオープン金属部位のうちの少なくとも1つを別のものに架橋する。本方法は、金属有機構造体を溶媒に懸濁させるステップをさらに含むことができる。局面において、本方法は、金属有機構造体から溶媒を濾過するステップをさらに含むことができる。局面において、本方法は、複数の配位子を加熱して気相を形成することをさらに含むことができる。局面において、本方法は、複数の配位子が減圧下で気相を形成することをさらに含むことができる。局面において、本方法は、不活性ガスが気相を通過することをさらに含むことができる。
【0072】
選択的なCO捕捉に特化した、アミン付加金属有機構造体の製造および再生の革新的な新しい方法。プロセスからの溶媒の除去はまた、新規な物質組成、すなわち、従来の溶液相のアミン付加努力によって調製することができない、MOF-274金属有機構造体の種々のアミン付加形態の調製を容易にする。重要なことは、実施例に記載されているように、気相付加アプローチによって調製された材料について、望ましいV型CO等温線が保持されることである。
【0073】
それゆえ、配位子、特にアミンの気相付加は、以前は不安定であった新規な金属有機構造体を製造することができる。本発明の新規な金属有機構造体は、マグネシウムイオンおよび/またはコバルトイオンがエチレンジアミンビサリチル酸で連結されて複数の開放金属部位を形成し、複数の開放金属部位が気相中で付加されて金属有機構造体が提供されてなる。より具体的には、新規な金属有機構造体としては、MOF-274金属有機構造体を構成する。また、複数のオープンメタルサイトは、2-アミノメチルピペリジンおよび/またはN,N-ジメチルエチレンジアミンで付加される。
【0074】
金属有機構造体のリサイクルおよび/または再利用
先に述べたように、金属有機構造体、MOF-274は、ジアミンで機能化することができ、望ましいV型等温線をもたらすため、CO捕捉用途の有力候補を形成する。異なるジアミンを導入することで、蒸気安定性の付与やCO吸着に必要なCO分圧・温度の変化など、吸着剤の性質が変化します。この汎用性により、ジアミンを添加したMOF-274は、広範囲の異なる流れからのCO捕捉のための潜在的な有用性を有することができる。
【0075】
本明細書で提供するのは、(1)MOF-274金属有機構造体からジアミンを剥離する;および(2)本明細書で「CO流」というCOを含む異なる流れに金属有機構造体システムを再利用するために異なるジアミンを金属有機構造体に充填することによる金属有機構造体システムの再利用の方法である。
【0076】
実施例に記載されているように、リサイクルされたジアミン付加MOF-274吸着剤(「リサイクルされた金属有機構造体システム」という)は、望ましいV型等温線を示し、多くの金属有機構造体が同様の条件で分解、崩壊、または孔閉塞を起こすことが知られているため、調製溶媒に連続して浸漬することに対する驚くべき安定性を示している。このため、ジアミンを添加したMOF-274をリサイクルしたり、別のジアミンを付加したMOF-274を別のCO回収条件下で使用することができない問題があった。そこで、ジアミンを付加したMOF-274を配位性溶媒に含浸し、この溶媒を非配位性溶媒と交換し、剥離したMOF-274(元のジアミンが含まれない金属有機構造体)を別のジアミンで処理して、全く別の吸着剤を得ることによりこの問題を解決した。逆に、先行技術の解決策は、新しいMOF-274材料の合成、次いで所望のジアミンでの付加である。
【0077】
実施例に記載されているように、金属有機構造体システムをリサイクルおよび/または再利用する方法は、金属有機構造体システムから複数の配位子の少なくとも1つ以上をストリッピング(剥離、または他の方法で除去)するステップを含む。金属有機構造体のリサイクルの目的のために、有用な溶媒は、水、メタノール、エタノール、またはそれらの組合せを含む。溶媒は、完全に除去するために配位子と適合させることができ、同時にプロセスの柔軟性と最適化のための複数のオプションを提供する。配位子を除去するために、金属有機構造体は、少なくとも約10分~約18時間の間、溶媒に浸漬する。
【0078】
金属有機構造体への配位子の付加または再付加は、溶液(液体)中または本明細書に記載の新規の気相法を使って行うことができる。以下の実施例で教示されるように、金属有機構造体は、異なるまたは同じ複数の配位子で付加され得る。
【0079】
例えば、金属有機構造体システムに異なるジアミンを設置すると、蒸気安定性の付与、またはCO吸着に影響を与えるのに必要なCO分圧および温度の変化など、吸着剤特性が変化する。このような汎用性により、金属有機構造体は、様々な異なる流れからCOを捕捉するための潜在的な有用性を有している。しかしながら、本明細書に記載するように、金属有機構造体が選択されたアミンで付加されると、現在のパラダイムは、金属有機構造体がその使用期間中、その特定の形態に留まるというものである。使用済みの金属有機構造体のリサイクルや、異なる配位子を担持して異なる性能を得る目的で金属有機構造体から意図的に配位子を剥離することは、これまでほとんど注目されてこなかった。さらに、新しい有利なアミン付加金属有機構造体が発見された場合、新しいジアミンの設置によって吸着剤システムをアップグレードすることができ、金属有機構造体の合成を新たに行う必要がないため、費用、廃棄物、および吸着剤のダウンタイムを最小限に抑えることができるようになる。
【0080】
金属有機構造体システムのリサイクル/再利用は、大規模に実施すれば顕著な利益をもたらし、蒸留、吸着床、膜などの様々な分離アプローチによる配位子のその後の回収と再利用を促進することができる。
【0081】
合成、リサイクル、再利用された金属有機構造体
上記のように、本発明の新規な方法で合成またはリサイクル/再利用された金属有機構造体は、バリエーションおよび異なる局面を含むことができる。例えば、ある局面では、本方法は、一般式のリンカーを有する金属有機構造体および金属有機構造体システムを提供することができる:
【化2】

ここで、RはR’に連結され、RはR’’に連結する。
【0082】
そのようなリンカーの例としては、以下のものを含む:
【化3】
ここで、Rはいずれかの分子フラグメントである。
【0083】
好適な有機リンカーの例としては、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(HDOBPDC);4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(HDOTPDC);および3,3’-ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(PC-DOBPDCとも呼ばれるパラカルボキシレートHDOBPDC)ならびに以下の化合物である:
【化4】
【0084】
1つの態様において、リンカーは下式を有する:
【化5】

ここで、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される。
【0085】
ある態様において、リンカーは、下式を有する:
【化6】
【0086】
ここで、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される。
【0087】
ある態様において、リンカーは、下式を有する:
【化7】

ここで、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択され、R17は置換または非置換のアリール、ビニル、アルキニルおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される。
【0088】
ある態様において、リンカーは、下式を有し得る:
【化8】

ここで、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択され、R17は、置換または未置換のアリール、ビニル、アルキニル、および置換または未置換のヘテロアリールから選択される。
【0089】
一態様において、有機リンカーは、2つ(またはそれ以上)のフェニル環を有する分子、またはビニルもしくはアルキニルによって結合された2つのフェニル環などの複数の架橋されたアリール種を含む。
【0090】
合成、リサイクル、再利用された金属有機構造体システム
本明細書で提供するように、配位子は、酸素、リン、硫黄などの好適なルイス塩基(電子供与体)として機能できる1つまたは複数の基、または1~10個のアミン基を有するアミンを含み得る。本方法は、金属有機構造体に様々な種類の配位子を付加することができる金属有機構造体システムを提供できる。ある態様において、Bは、以下からなる群から選択される配位子である:
【化9】
【0091】
ここで、Zは炭素、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄、またはセレンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、メチル、ハロゲン置換メチル、およびヒドロキシルから選ばれる。1つの態様において、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれHであり、Zは炭素である。
【0092】
本発明の金属有機構造体システムの製造方法に適した配位子は、(少なくとも)2つの官能基を有することができる:1)COを結合するために用いられる官能基;および2)金属を結合するために用いられる官能基である。金属を結合させる第2の官能基は、アミンであり得る。アルコール、エーテルまたはアルコキシドのような酸素含有基、カルベンのような炭素基またはアルケンまたはアルキンのような不飽和結合、または硫黄原子のような他の官能基を使用することもできる。
【0093】
本明細書に記載の金属有機構造体システムは、二酸化炭素/窒素、二酸化炭素/水素、二酸化炭素/メタン、二酸化炭素/酸素、一酸化炭素/窒素、一酸化炭素/メタン、一酸化炭素/水素、硫化水素/メタンおよび硫化水素/窒素などの複合ガスの流れからの個々のガスの分離を含む様々なガス分離用のアソルベント(吸着材)として有用である。
【0094】
固体材料への物理吸着の主な利点の中には、水性アミンに必要な再生エネルギーと比較して、低い再生エネルギーがある。しかしながら、この利点は、しばしば、低容量および貧弱な選択性を犠牲にしている。本発明の金属有機構造体システムは、固体材料に化学吸着によってCOを結合する部位を組み込むことにより、2つのアプローチの架橋ができる吸着剤(吸着材)を提供する。これらの材料は、水性溶媒の必要性を排除し、従来のアミンスクラバーと比較して再生コストを著しく低くすることができ、しかも低圧でのCOに対する並外れた選択性と高容量を維持することができる。
【0095】
本明細書の詳細な説明および請求項内のすべての数値は、実験誤差および変動を考慮して、示された値を「約」または「約」で修正する。
【0096】
簡潔にするために、本明細書では特定の範囲のみを明示的に開示する。しかし、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて、明示的に復唱されていない範囲を復唱してもよく、同様に、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせて、明示的に復唱されていない範囲を復唱してもよく、同様に、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせて、明示的に復唱されていない範囲を復唱してもよい。さらに、範囲内には、明示的に記述されていなくても、その端点間のあらゆる点または個々の値が含まれる。したがって、すべての点または個々の値は、他の点または個々の値、あるいは他の下限または上限と組み合わされて、それ自体の下限または上限として機能し、明示的に説明されていない範囲を説明することができる。
【0097】
本発明の特徴は、以下の非限定的な実施例で説明される。
【0098】
実施例1
金属有機構造体の気相法による付加反応
本明細書に記載された従来の方法によってまず金属有機構造体システムを作り、その後、複数のアミン配位子を気相で金属有機構造体に付加することによって、金属有機構造体システムを作った。具体的には、以前にUS Pat. App. 62/839,261号に記載されている金属有機構造体の混合金属体を作製し、トルエンに懸濁させ、すりガラスフリット付き側腕型フィルターファネルの上部に移した。漏斗に空の丸底フラスコを取り付け、真空濾過で溶媒を空の丸底フラスコに移し、ガラスフリット上に金属有機構造体の均一なウェットケーキを作成した。フィルターをセプタムでキャップし、針でベントした。廃棄した溶媒を、金属有機構造体の量に対して2.5モル当量のN,N’-ジメチルエチレンジアミン(mmen)に置換した。次に、ウェットケーキ(金属有機構造体)に窒素を通しながら、丸底フラスコをアミン沸点以上の120℃に加熱した。複数のアミン配位子が蒸発するまで加熱を続け、二酸化炭素を捕捉することができる吸収体を得た。
【0099】
実施例2
実施例1の吸着材の特性評価
上述したように、実施例1の吸収体は、二酸化炭素を捕捉することができる金属有機構造体システムを合成してなるものである。この金属有機構造体システムは、エチレンジアミンビサリチル酸(以下、「EDBSA」という)リンカーとオープンメタルサイトからなる1次元六角形の金属有機構造体を含んでいた。ジ-アミン付加配位子およびテトラ-アミン付加配位子の組み込みを通じて、二酸化炭素の急峻な吸着が、段階的にもたらされた。
【0100】
図1Aおよび図1Bは、金属有機構造体に対する飽和アミンの効果を示す。金属有機構造体は、典型的なタイプ1の吸着等温線を示した。アミンを付加した金属有機構造体(金属有機構造体システム)は、強いタイプ5の等温線を示した。図1Aおよび図1Bは、金属有機構造体、N,N-ジメチルエチレンジアミン配位子を付加した金属有機構造体システム、および2-アミノメチルピペリジン(2-ampd)を付加した金属有機構造体システムの50℃での等温線図である。図1Aでは、等温線が直線圧力スケールで表示されている。図1Bでは、等温線は対数圧力スケールで表示されている。
【0101】
本発明の方法を用いて、配位子(アミン配位子)を沸点以上に加熱し、キャリアガス(窒素など)を用いて配位子の気相を金属有機構造体に輸送する。金属有機構造体は、配位子のアミンとの共有結合を可能にし、かつ配位子の凝縮や固化を防ぐために、かなり高い温度まで加熱された。その結果、金属有機構造体の結晶性が保たれることが確認された。図2は、実施例1の金属有機構造体システムを溶媒中および気相中で処理した試料の粉末X線回折パターンを示している(「気相」)。気相処理した試料は、信号強度やピーク幅が向上しており、高次化、結晶性の向上が認められる。実際、結晶性の低い材料の吸着等温線は、もはや望ましい吸着ステップを示さず、気相中で配位子を付加することの利点を実証している。
【0102】
実施例3
金属有機構造体MOF-274の気相付加反応
アミンを付加した金属有機構造体、MOF-274は、排ガスからの選択的なCO捕獲のための有力な候補となる。従来、金属有機構造体システムは、アミン含有非配位溶媒に新生金属有機構造体MOF-274を分散させ、その後、洗浄を繰り返すことで形成されてきた。アミンからなる様々な配位子は、テトラアミンを含むものの、過剰なアミンを解放し、所望の負荷を生成するために、付加後の追加加熱を必要とすることが実証されている。うまく機能化されると、これらのアミンが付加された金属有機構造体は、COに対してユニークなV型等温線を示し、窒素(N)または酸素(O)よりも選択的にそれらを結合する。
【0103】
具体的には、米国特許出願第62/839,261号に記載されている金属有機構造体、MOF-274をトルエンに懸濁し、粉砕ガラスフリットを有する側腕型フィルター漏斗の上部に移した。漏斗に空の丸底フラスコを取り付け、真空濾過で溶媒を空の丸底フラスコに移し、ガラスフリット上に金属有機構造体の均一なウェットケーキを作成した。フィルターをセプタムでキャップし、針でベントした。溶媒を捨て、適当な量のアミンで置換した。次に、丸底フラスコをアミン沸点以上に加熱し、窒素の流れをフィルターフラスコのサイドアームに通し、アミン含有丸底フラスコから金属有機構造体ウェットケーキを通過させた。加熱は、丸底フラスコからすべてのアミンが蒸発するまで続けられた。得られた材料は、所望のタイプVのCO等温線を示した。
【0104】
気相付加に使用したアミンは、すぐ下に示す2-(アミノメチル)ピペリジン(「2-ampd」)およびN,N’-ジメチルエチレンジアミン(「mmen」)を使用して、金属有機構造体システム1および金属有機構造体システム2をそれぞれ生成した。
【化10】
【0105】
実施例4
金属-有機骨格系の追加的な気相付加反応
2-ampdの気相付加によって、金属有機構造体システム1を調製した。アミン付加の後、金属有機構造体および金属有機構造体システムについて粉末X線回折データを収集し、図3に提供する。図3に示すように、2-ampdの気相アミン付加後も金属有機構造体の結晶性は維持された。さらに、図4に示すように、5%マンガンMOF-274金属有機骨格系に配位子(2-ampd)を付加して調製した金属有機骨格系1の熱重量分析を行い、低温での巻き込み溶媒の除去を考慮して100℃に規格化した。図4のグラフに示すように、250~400℃における42.6wt%の損失は、金属有機構造体システムの理論的な重量損失と完全に一致するものである。同様に、100~250℃での11.8wt%の損失は、気相負荷後に金属有機構造体チャネルに残った物理吸着2-ampdを示す。図5は、金属有機構造体システム1のH NMRを示す。リンカー上の1対のプロトン(シングレット、7.95ppm)の積分に対して、最も上方にある4つの多重項の積分は、金属有機構造体システムが100%付加された場合に12となるはずである。この例では、4つの最も上方にある多重項を合計すると14となり、117%のアミンが付加されていることを示し、これは図4に示したTGAデータと一致する。図6に示すように、金属有機構造体システム1はまた、所望のタイプ-V等温挙動を示した。
【0106】
金属有機構造体システム2を、金属有機構造体(MOF-274)に配位子であるmmenを気相添加することによって調製した。図7は、金属有機構造体MOF-274および気相法アミン付加に続いて得られた金属有機構造体システム2について収集した粉末X線回折データを提供する。このデータは、配位子の気相アミン付加に続いて結晶性が保持されたことを示す。
【0107】
図8に示すように、金属有機構造体システム2は、H NMR分光法によってさらに分析された。リンカー上のプロトンのペア(シングレット、7.95ppm)の統合に関連して、4つの最もアップフィールドの多重項の統合は、100%アペンド材料について10に合計する必要がある。この例では、和が11となり、110%のアミンが付加されていることが示された。金属有機構造体システム2もまた、望ましいV型等温線挙動を示した(図9)。図10では、金属有機構造体システム2のCO等温線のX軸を0~1kPaに制限して、タイプ-V等温挙動の存在をより明確に表示した。
【0108】
アミン付加の別の方法として、装置全体をオーブンに入れ、適当な温度まで加熱してアミンを気化させた。システム全体を加熱することで、アミンは気相にとどまり、漏斗のフリット上で凝縮したり固化したりすることはなかった。この方法は、以下に示す2-ampd、スペルミン、トリエチレンテトラミンなどのアミンに特に有効である。
【化11】
【0109】
実施例5
金属有機骨格系のリサイクル 金属有機骨格系MOF-274からのジアミン配位子の脱離
本明細書に記載されているように、金属有機構造体、MOF-274は、ジアミンで機能化することができ、望ましいタイプ-V等温線をもたらすことにより、CO捕捉アプリケーションの有力候補を形成する。異なるジアミン(配位子)を導入することで、蒸気安定性の付与やCO吸着に必要なCO分圧・温度の変化など、吸着剤の特性を変化させることができる。この汎用性により、ジアミンを添加した金属有機構造体システム(MOF-274)は、広範囲の異なる流れからCOを捕捉するための潜在的な有用性を有している。
【0110】
金属有機構造体であるMOF-274が選択されたアミンで付加されると、現在のパラダイムは、材料がその使用期間中、その特定の形態に留まるというものである。使用済みのジアミン付加MOF-274、金属有機構造体システムのリサイクル、または異なるジアミンを充填して異なる性能を達成する目的で金属有機構造体MOF-274から配位子/アミンを意図的に剥離して離脱させることにはほとんど注意が払われてこなかった。さらに、新しい有利なアミン付加MOF-274材料が発見されると、吸着剤系をアップグレードすることができる。新しいジアミンを導入することで、金属有機構造体の合成が不要になり、費用、廃棄物、吸着剤のダウンタイムを最小限に抑えることができる。
【0111】
この例では、金属有機構造体システムからジアミンを剥離し、その後、異なるジアミンを金属有機構造体に付加(付着/結合)させた。このように、リサイクルされたジアミン付加MOF-274吸着剤は、望ましいV型等温線を示し、多くのMOFが同様の条件で分解、崩壊、または孔閉塞を起こすことが知られているため、調整溶媒に連続して浸すことに対する驚くべき安定性を示している。
【0112】
具体的には、アミンで官能化された金属有機構造体MOF-274 CO吸着剤を、MOF-274金属有機構造体の完全性を維持したままアミンを除去し、別の配位子(ジアミン)で再付加し、CO捕捉に使用した。
【0113】
従来のアミン付加金属有機構造体システムは、図11に示すように、mmen@MOF-274、mmen(N,N’-ジメチルエチレンジアミン)である。Siegelman,T.M.ら、Controlling Cooperative CO Adsorption in Diamine-Appended Mg2 (dobpdc) Metal-Organic Frameworks,J.Am.Chem.2017, 139, 1026-1053.図11では、ジアミンがオープン金属部位に配位したMOF-274の結晶構造が芸術的に表示されている。金属有機構造体の右側には、N,N’-ジメチルエチレンジアミンの化学構造がある。金属有機構造体(MOF-274)にmmenを付加して、本明細書ではmmen@MOF-274という金属有機構造体システムを提供する。
【0114】
図12に示すように、金属有機構造体システムmmen@MOF-274のアミン担持の程度は、H NMRで決定した。mmen(配位子)からのシグネチャーピークは、リンカー上の芳香族プロトンに対する理論積分が8および12(それぞれ)である、約3.25および2.55ppmに位置していた。2という等しい値を持つ3つのダウンフィールド積分は、リンカーの芳香族プロトンに割り当てられた。mmenプロトンの実験的積分は8と12.25であり、これは理論値と同等であり、アミンが100%オープンな金属部位を配位することを示すものであった。
【0115】
金属有機構造体システム、mmen@MOF-274のサンプルを、(1)水、(2)メタノール、(3)エタノールに24時間かけて浸漬し、遠心分離により回収した。図13図14および図15は、浸漬および消化後のmmen@MOF-274材料について収集したそれぞれのH NMRスペクトルを示す。配位子であるmmenに帰属するピークは効果的に除去されており、金属有機構造体システムから配位子が完全に除去されていることがわかる。
【0116】
具体的には、図13は、水中浸漬後の金属有機構造体システムmmen@MOF-274のH NMRを示す。mmenのピークは、99.5%以上の配位子が除去されたことを示唆する値まで積分されている。図14は、この金属有機構造体システムのメタノール浸漬後のH NMRを示す。配位子であるmmenのピークが積分され、99%のアミンが除去されたことを示唆する値になっています。図15は、同じ金属有機構造体システム(mmen@MOF-274)をエタノールに浸漬した後のH NMRを示したものである。配位子 mmen のピークは、金属有機構造体システムから97.75%のアミンが除去されたことを示唆する値まで統合されている。
【0117】
図16は、水、メタノール、およびエタノールで配位子を除去した後の金属有機構造体システム、mmen@MOF-274、および金属有機構造体MOF-274の粉末X線回折データの比較を示す。区別できない回折データは、金属有機構造体の結晶性が剥離プロセスを通じて維持されたことを示す。
【0118】
図17Aに示すように、mmenを水またはメタノールで剥離して得られた金属有機構造体MOF-274のCO吸着性能は、COアイソバーによって評価された。アミンが除去されているため、望ましいV型等温線は観測されなかった。得られたCO容量は、40℃以下で2.72-3.41mmol CO/g MOF-274 (100-150mg CO/g MOF-274)が吸着し、金属有機構造体の表面積が維持されていることが示された。エタノールで剥離したmmen@MOF-274については、比較可能なデータがまだ得られていない。
【0119】
図17Bは、水とメタノールで剥離したmmenの金属有機構造体MOF-274のCO吸着アイソバーである。これらの場合、配位溶媒は、非配位溶媒(例えば、トルエン)で洗い流されることはなかった。その結果、リサイクルされた金属有機構造体システムの容量は理論値よりも低く、潜在的には、HOがMeOHよりも強固に結合している配位溶媒に起因する。
【0120】
複数の異なる剥離溶媒がジアミン除去に有効であることが実証され、大規模に実施した場合に顕著な効果が得られ、その後の配位ジアミンの回収と再利用が容易になる可能性がある。剥離溶剤は、ジアミンを完全に除去するために調製され、同時にプロセスの柔軟性と最適化のための複数のオプションを提供することができる。
【0121】
実施例6
リサイクル・再使用された金属製有機構造体システム
実施例4に記載のアミン除去後、金属有機構造体をトルエン溶液中の20vol%の2-アミノメチルピペリジン(「2-ampd」)配位子に浸漬し、金属有機構造体システム、2-ampd@MOF-274を生成した。これらの試料(リサイクル金属有機構造体システム)は、消化およびH NMRによって特性評価した。リサイクルされた金属有機構造体システムの特徴的なピークは、1.25~2.0ppmに位置し、金属有機構造体MOF-274内に完全に充填された場合、理論積分値12を有することになる。
【0122】
図18~20に示すように、リサイクルされた金属有機構造体システムは、化学量論的な負荷を与えることができた。具体的には、図18は、複数の第1の付加配位子である2-ampdが水を用いて剥離され、金属有機構造体(MOF-274)が複数の第2の付加配位子である同じく2-ampdで再付加されたリサイクルされた金属有機構造体システムのH NMRを示す。1.25~2.0ppmの基準ピークは12.07の値に積分され、配位子である2-ampdの金属有機構造体への100.6%担持が確認された。ジアミンである2-アミノメチルピペリジンはスペクトルに示されている。
【0123】
図19は、複数の第1付加配位子であるmmenをメタノールを用いて剥離し、次に複数の第2付加配位子である2-ampdを金属有機構造体MOF-274に付加してなる金属有機構造体システム(mmen付きMOF-274)をリサイクルして得られたリサイクル物のH NMRを示す。1.25~2.0ppmの参照ピークを積分すると12.36となり、配位子である2-ampdが金属有機構造体に103%担持されていることが確認された。図20は、金属有機構造体システム(金属有機構造体システムMOF-274に複数の第1付加配位子mmenを付加してなる金属有機構造体システム)をエタノールを用いて剥離し、複数の第2の付加配位子2-ampdを再付加したときのH NMRを示す。1.25~2.0ppmの基準ピークは12.04となり、金属有機構造体MOF-274に配位子2-ampdが100.3%担持されていることが確認された。
【0124】
図18図19図20の試料のCOアイソバーは、図21に示す通りである。図21に示すように、リサイクルされた金属有機構造体システムの試料は、4mmol CO/g金属有機構造体の理論的最大値に近い更新を示した。すべての試料において、実験的なCO取り込み量は、金属有機構造体システムの理論的な最大値である4mmol CO/gのすぐ下にあり、構造体の完全性は、mmen剥離と2-ampd付加によって影響を受けていないことを示し、ジアミン付加MOF-274金属有機構造体システムをリサイクル金属有機構造体システムに変換するこのアプローチの可能性を確認することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機構造体と、該金属有機構造体に付加された複数の配位子とを含む金属有機構造体システムを合成する方法であって:
少なくとも1つのオープン金属部位を含む金属有機構造体を提供すること;および
気相中の配位子をオープン金属部位で該金属有機構造体に付加して金属有機構造体システムを形成すること
のステップを含む、方法。
【請求項2】
金属有機構造体システムを製造する方法であって:
金属有機構造体を製造すること、ここに該金属有機構造体は複数のオープン金属部位を含み、リンカーが該複数のオープン金属部位のうちの少なくとも1つを別のものに架橋し;
複数の配位子を蒸発させて気相を生成すること;および
該気相において、該複数の配位子のうちの少なくとも1つを、金属有機構造体のオープン金属部位のうちの少なくとも1つに結合させて、金属有機構造体システムを形成すること
のステップを含む、方法。
【請求項3】
金属有機構造体を溶媒中に懸濁させること、および金属有機構造体から溶媒を濾過することのステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
配位子を加熱して気相を形成しもしくは不活性ガスが該気相を通過し、またはそれらの組合せである請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
エチレンジイミンビスサリチル酸と共に連結して、複数のオープン金属部位を形成するマグネシウムイオンおよび/またはコバルトイオンの金属有機構造体を含む金属有機構造体システムであって、複数のオープン金属部位が2-アミノメチルピぺリジンおよび/またはN,N-ジメチルエチレンジアミンで付加されている、金属有機構造体システム。
【請求項6】
金属有機構造体システムをリサイクルする方法であって、
金属有機構造体システムから複数の第1の付加配位子を剥離して金属有機構造体を提供すること、ここで金属有機構造体の構造は無傷のままであり;および
複数の第2の付加配位子の少なくとも1つを金属有機構造体に付加して、リサイクルされた金属有機構造体システムを提供すること
のステップを含む、方法。
【請求項7】
金属有機構造体システムおよび金属有機構造体を順次浸漬して、リサイクルされた金属有機構造体システムを提供することのステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
金属有機構造体システムを溶媒中で洗浄して、複数の第1の付加配位子を除去すること、および複数の第2の付加配位子の少なくとも1つを気相中で金属有機構造体に付加することのステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
金属有機構造体が、1つ以上の別個の金属元素の複数と、1つ以上の別個の金属元素の複数のそれぞれが複数のリンカーの1つ以上によって架橋されて金属サイトを形成する複数のリンカーとを有1つ以上の別個の金属元素の複数が、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、および/またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~4および6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
リンカーが、第3の結合部位と共に架橋されている第1の結合部位および第2の結合部位を含む多座有機配位子であり、多座有機配位子の第1の結合部位および第2の結合部位が所望によりそれぞれサリチレート部位を含んでよく、第3の結合部位が所望によりジアミン基を含んでよく、または多座有機リンカーが5,5’-(((1E,2E)-エタン-1,2-ジイリデン)ビス-(アザネイルイリデン))ビス(2-ヒドロジ安息香酸)である、請求項1~4および6~9のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】