(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】断熱パワー補償型示差走査熱量計
(51)【国際特許分類】
G01N 25/20 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
G01N25/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511631
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021038193
(87)【国際公開番号】W WO2022035507
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523050999
【氏名又は名称】ウー, フランク エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】ウー, フランク エル
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA02
2G040AB01
2G040AB08
2G040BA02
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA03
2G040DA14
2G040DA16
2G040EA02
2G040EB02
2G040EB05
2G040EC09
2G040FA01
2G040FA04
2G040GA03
2G040HA01
2G040HA11
2G040HA18
2G040ZA05
(57)【要約】
試料と参照との間の温度差を最小化するための断熱パワー補償型示差走査熱量計を提供するシステム及び方法が開示される。例えば、方法は、予めプログラムされた昇温速度に基づいて試料容器と参照容器を加熱するためのランプアップ加熱パワーを提供することと、試料容器、参照容器、及び少なくとも1つの炉の間の温度差を最小にすることと、試料物質の自己発熱活動が検出されたときに試料容器及び参照容器に補償熱を提供することと、試料物質の自己発熱活動が検出された場合、試料容器に容器のみの補償熱を供給することにより、試料物質から試料容器への熱伝達を遮断することと、参照容器に補償熱を供給することにより容器のみの補償熱の計算と制御を容易にすることと、を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己発熱反応過程の真の断熱温度上昇及び温度速度を測定するための断熱パワー補償型示差走査熱量計であって、
断熱パワー補償型示差走査熱量計は、
前記断熱パワー補償型示差走査熱量計により検査される試料物質を収容するように構成された試料容器と、
0.1mlから100mlの間の体積の前記試料容器に等温的に結合して取り囲む試料補償ヒータブロックであって、前記試料容器の温度を測定するように構成された試料温度センサを含む、試料補償ヒータブロックと、
前記断熱パワー補償型示差走査熱量計により検査される参照物質を収容するか、何も収容しないように構成された参照容器と、
0.1mlから100mlの間の体積の前記参照容器に等温的に結合された参照補償ヒータブロックであって、前記参照容器の温度を測定するように構成された参照温度センサを含む、参照補償ヒータブロックと、
前記試料物質の予めプログラムされた昇温及び自己発熱昇温の間、前記試料補償ヒータブロック及び前記参照補償ヒータブロックを断熱的に遮蔽するように構成された少なくとも一つの炉と、
前記少なくとも1つの炉、前記試料補償ヒータブロック、及び前記参照補償ヒータブロックを取り囲むように構成された熱遮蔽体と、
自己発熱速度、断熱温度及び圧力上昇、並びに発熱反応の活性化エネルギー用の熱補償制御測定システムと
を含み、
前記熱補償制御測定システムは、
予めプログラムされた昇温速度に基づいて前記試料容器と前記参照容器を加熱するためのランプアップ加熱パワーを提供し、
前記試料容器、前記参照容器、及び前記少なくとも1つの炉の間の温度差を最小にし、前記試料容器、前記参照容器、及び前記少なくとも1つの炉の温度が、予めプログラムされた昇温速度に従うようにし、
前記試料容器と前記参照容器との間の加熱パワー差に基づき、前記試料物質の熱容量を算出し、
前記試料物質の自己発熱活動が検出されると、前記試料容器に容器のみの補償熱を提供して前記試料物質から前記試料容器への熱伝達を遮断し、前記試料物質の温度が予めプログラムされた昇温速度から逸脱し、反応完了まで自己推進することを可能にし、
前記参照容器に補償熱を供給することにより容器のみの補償熱の計算と制御を容易にする
ように構成された、断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項2】
前記試料温度センサが、前記試料補償ヒータブロックの底部に熱的に結合されており、
前記参照温度センサは、前記参照補償ヒータブロックの底部に熱的に結合されている、
請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項3】
前記試料温度センサ及び前記参照温度センサは、アルミニウム、銅、及び銀の少なくとも1つを含む高熱伝導性物質で作られている、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項4】
前記試料容器は、約0.02mmから0.2mmの間の継ぎ目を有する前記試料補償ヒータブロックに密着しており、前記試料補償ヒータブロックが前記試料容器の全体に熱を供給することにより前記試料補償ヒータブロックと前記試料容器との間の高速熱伝達を可能にし、
前記参照容器は、約0.02mmから0.2mmの間の継ぎ目を有する前記参照補償ヒータブロックに密着しており、前記参照補償ヒータブロックが前記参照容器の全体に熱を供給することにより前記参照補償ヒータブロックと前記参照容器との間の高速熱伝達を可能にする、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項5】
前記試料補償ヒータブロックは、前記試料容器を内包する円筒形の試料補償ヒータブロックであり、前記参照補償ヒータブロックは、前記参照容器を内包する円筒形の参照補償ヒータブロックである、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項6】
前記試料補償ヒータブロック及び前記参照補償ヒータブロックは、前記試料補償ヒータブロック及び前記参照補償ヒータブロックに埋め込まれたカートリッジ発熱体又はワイヤ発熱体の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項7】
前記試料補償ヒータブロックが前記試料容器に等温的に結合され、前記参照補償ヒータブロックが前記参照容器に等温的に結合されている、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項8】
前記少なくとも1つの炉が、前記試料補償ヒータブロック及び前記参照補償ヒータブロックの周囲に断熱的に配置された熱遮蔽体である、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項9】
前記少なくとも1つの炉が、前記試料補償ヒータブロック及び前記参照補償ヒータブロックから約0.5cm~5cmの間隔を空けている、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項10】
前記少なくとも1つの炉は、前記少なくとも1つの炉の側壁に配置された温度センサを含む、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項11】
前記少なくとも1つの炉が、前記試料容器、前記参照容器、前記試料補償ヒータブロック、及び前記参照補償ヒータブロックに対して断熱的に制御されている、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項12】
前記熱遮蔽体は、一定の温度環境を提供する発熱体及び冷却体を含む、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項13】
前記予めプログラムされた昇温速度は、約0.00℃/分と100℃/分との間である、請求項1に記載の断熱パワー補償型示差走査熱量計。
【請求項14】
自己発熱する試料又は化学反応の温度上昇及び温度速度を決定する方法であって、以下のステップ:
断熱パワー補償型示差走査熱量計を提供することであって、前記断熱パワー補償型示差走査熱量計は、
前記断熱パワー補償型示差走査熱量計により検査される試料を収容するように構成された試料容器と、
0.1mlから100mlの間の体積の前記試料容器に等温的に結合して取り囲む試料補償ヒータブロックであって、前記試料容器の温度を測定するように構成された試料温度センサを含む、試料補償ヒータブロックと
前記断熱パワー補償型示差走査熱量計により検査される参照物質を収容するか、何も収容しないように構成された参照容器と、
0.1mlから100mlの間の体積の前記参照容器に等温的に結合された参照補償ヒータブロックであって、前記参照容器の温度を測定するように構成された参照温度センサを含む、参照補償ヒータブロックと、
前記参照物質の予めプログラムされた昇温及び自己発熱昇温の間、前記試料補償ヒータブロック及び前記参照補償ヒータブロックを断熱的に遮蔽するように構成された少なくとも一つの炉と、
前記少なくとも1つの炉、前記試料補償ヒータブロック、及び前記参照補償ヒータブロックを取り囲むように構成された熱遮蔽体と、
自己発熱速度、断熱温度及び圧力上昇、並びに発熱反応の活性化エネルギー用の熱補償制御測定システムと、を含む断熱パワー補償型示差走査熱量計を提供することと、
予めプログラムされた昇温速度に基づいて、前記試料容器と前記参照容器を加熱するためのランプアップ加熱パワーを提供することと、
前記試料容器、前記参照容器、及び前記少なくとも1つの炉の間の温度差を最小にし、前記試料容器、前記参照容器、及び前記少なくとも1つの炉の温度が、あらかじめプログラムされた昇温速度に従うようにすることと、
試料物質の自己発熱活動が検出された場合に、前記試料容器と前記参照容器に補償熱を供給することと、
前記試料容器と前記参照容器との間の加熱パワー差に基づき、前記試料物質の熱容量を算出することと、
前記試料物質の自己発熱活動が検出されると、前記試料容器に容器のみの補償熱を提供して前記試料物質から前記試料容器への熱伝達を遮断し、前記試料物質の温度が予めプログラムされた昇温速度から逸脱し、反応完了まで自己推進させることと、
前記参照容器に補償熱を供給することにより容器のみの補償熱の計算と制御を容易にすることと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記試料容器及び前記参照容器に供給される前記補償熱の総量は、予めプログラムされた昇温速度及び前記試料物質の自己加速温度速度に基づく、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料補償ヒータブロックへのパワー出力と前記参照補償ヒータブロックへのパワー出力とを制御して前記試料容器と前記参照容器との間の温度差を最小にすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記試料物質の発熱活動を検出すると、前記試料容器への補償パワーを増加させて、前記試料物質が前記予めプログラムされた温度傾斜速度から逸脱し、最高温度まで自己推進させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記試料物質の発熱活動を検出した際に、補償パワーを減少させて前記発熱活動のバランスをとり、前記試料と前記参照とを前記予めプログラムされた昇温率に従わせることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記試料物質の吸熱活動を検出すると、補償パワーを増加させて前記吸熱活動のバランスをとり、前記試料と参照とを前記予めプログラムされた昇温率に従わせることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記予めプログラムされた昇温速度は、およそ0.0℃/分と100℃/分との間である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[定義]
試料:試料物質又は反応物が入った容器。
参照:参照物質が入った容器、又は何も入っていない容器。
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年8月14日に米国特許商標庁に出願され、米国特許第11,047,748号として発行された米国特許出願第16/993,802号の優先権の利益を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示の主題は、概して示差走査熱量計の分野に関し、より詳細には、試料物質又は反応物を、予めプログラムされた昇温から徐々に逸脱させ、反応完了まで断熱的に自己推進させるパワー補償型示差走査熱量計を利用するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱量測定は、物性、分子間相互作用、及び反応速度の測定に有用な技術である。熱量計には、示差走査熱量計等の動的熱量計(温度プログラム式等)と、反応熱量計等の静的熱量計があり、断熱式と等温式のいずれかであり得る。
【0004】
示差走査熱量計は、結晶化熱、融解熱、酸化熱、重合熱等の熱化学的・熱物理的特性の測定に便利な分析機器として利用されている。また、試料物質を予めプログラムされた昇温に供することができ、これにより吸熱・発熱変換を起こさせてもよい。一般に、示差走査熱量計による分析の温度プログラムは、試料と参照温度が時間の関数として直線的に上昇するように設計されている。そのため、実験中、試料と参照はほぼ同じ温度に保たれる。
【0005】
そのため、自己発熱する化学物質や反応物の全エネルギーポテンシャルを評価し、先行する方法やパワー補償型示差走査熱量計に伴う問題を克服する装置と方法を提供する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示並びにその特徴及び利点のより完全な理解を提供するために、添付の図面と併せて行われる以下の説明を参照されたい。
【0007】
【
図1】いくつかの実施形態による、2つの炉を有する断熱パワー補償型示差走査熱量計の一例の断面図である。
【0008】
【
図2】いくつかの実施形態による、単一の炉を有する断熱パワー補償型示差走査熱量計の一例の断面図である。
【0009】
【
図3】いくつかの実施形態による、パワー補償型示差走査熱量計の昇温及び熱流の例示的なグラフを示す図である。
【0010】
【
図4】いくつかの実施形態による、断熱パワー補償型示差走査熱量計を利用するための例示的なプロセスを示す図である。
【0011】
【
図5A】いくつかの実施形態による、システムの例を示す図である。
【
図5B】いくつかの実施形態による、システムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の様々な例について詳細に説明する。具体的な実施について説明されているが、これは説明のためのみに行われたものであることを理解すべきである。関連技術に精通する当業者であれば、本技術の精神と範囲を逸脱することなく、他の構成要素や構成を用いることができることを認識するであろう。いくつかの例では、1つ又は複数の態様の説明を容易にするために、周知の構造及び装置をブロック図の形態で示している。さらに、特定のシステム構成要素によって行われるものとして説明されている機能は、図示されたものよりも多い又は少ない構成要素によって実行されてもよいことを理解されたい。
【0013】
示差走査熱量計(DSC)は、化学的不安定性の迅速かつ簡便なスクリーニングツールとして活用することができる。DSCの結果は、より複雑な熱量分析が必要かどうかを判断するために使用することができる。その他の分析ツールとしては、断熱又は等温反応熱量計がある。これらは反応熱、自己発熱率、断熱温度上昇、活性化エネルギー、反応順序、変換等の詳細な熱力学的及び動力学的特性を得るのに使用されることがある。この種の熱量計は、熱力学や反応速度論の定量的情報を提供できる反面、実験に時間がかかる(例えば8~24時間続く等)、操作に広範なトレーニングが必要である、計装や保守コストが高いという問題に関連する、等の制限がある。
【0014】
DSCは、1)熱流束DSC、2)熱・パワー補償型DSCの2つのクラスに分けられる。化学的又は物理的な変化において、試料物質から吸収又は放出された熱は、熱流束DSCではヒートシンクに受動的に流入させることがあり、パワー補償型DSCでは電気ヒータによって逆に補償されることがある。
【0015】
パワー補償型DSCは2つの熱量計の組み合わせであってもよく、そのうち一つの熱量計を試料用とし、第2の熱量計を参照用としてもよい。2つの熱量計は、(
図2に示すように)1つの炉を共有してもよいし、(
図1に示すように)2つの個々の炉を共有してもよい。DSCは、試料、参照、対応する炉(複数可)に同時に熱エネルギーを加える装置と方法を含むことができ、これにより、予めプログラムされた昇温に従うことができる。事前にプログラムされた昇温によって熱的に誘導され得る物理的又は化学的変化が試料に起こると、試料温度は参照及び事前にプログラムされた昇温から逸脱し始める可能性がある。試料補償ヒータは、試料と参照との間の温度偏差がゼロに戻るように、逆向きにその電熱加熱力を調整(例えば、上げる又は下げる)することができる。一例として、発熱現象が発生した場合、試料のヒータは、事前にプログラムされた昇温と比較して、直ちにその加熱力を(逆向きに)減らし、試料温度を変化させないように保持することができる。
【0016】
従来のパワー補償型DSCは、断熱反応熱量計と比較した場合、本開示に記載されているような定量的な温度及び圧力速度、並びに他の動力学的情報、特に自己発熱動力学を決定するための断熱プロセスを含まない熱変換を測定するための熱分析ツールであり得る。
【0017】
従来のパワー補償型DSCが断熱的であることから利用できない理由としては、次のようなものがある。1)従来のパワー補償型DSCは、試料への熱を逆向きに調整し、試料温度を予めプログラムされた昇温として維持することにより自己推進式自己発熱反応過程が変更されること、及び、2)試料と参照及び炉の間の温度差、即ち熱交換を最小限にすることによって、従来のパワー補償型DSCは、試料と炉の間に断熱境界を確立するが、試料物質とその容器との間に断熱境界はなく、断熱パワー補償型DSCについて本開示で説明するような、正確な自己発熱動力学及び熱力学が決定できる真の熱力学的断熱環境でないことである。
【0018】
自己発熱過程の一例として、従来のパワー補償型DSCでは、ランプアップ力を下げることで試料物質から放出される熱を逆向きに補償することができるが、本書に記載されているような真の断熱パワー補償型DSCでは、試料容器への熱を正の向きに補償することができる。したがって、真の断熱パワー補償型DSCは、試料物質から試料容器への熱伝達を遮断することで、試料温度が予めプログラムされた昇温から逸脱することを許容することができる。さらに、真の断熱パワー補償型DSCでは、試料物質の断熱的な自己発熱プロセスも変化しない。
【0019】
従来のパワー補償型DSCは、平らな試料るつぼ(例えば、5~15mgの試料塊が入るもの)を平らなベース補償ヒータプレート上に置くような構造も可能である。フラットベースヒータの設計と同様に、試料塊に熱の一部を奪われることなしに試料容器に対し補償された熱伝達させることができない場合がある。
【0020】
本明細書に記載された真の断熱パワー補償型DSCでは、試料物質の温度上昇に合わせるために試料容器が必要とする熱を試料補償ヒータで補償できるため、試料物質又は反応物によって放出される熱のすべてを試料物質自体に収め、試料物質の自己発熱又は試料反応の自己推進のために消費させることができる。容器のみのパワー補償型DSCシステムとして、試料物質と試料容器の間に真の断熱境界を設けることができ、それにより真の断熱温度上昇測定のための真の熱力学的境界条件を提供することができる。
【0021】
いくつかの実施例では、容器のみのパワー補償型DSCシステムは、試料物質又は試料反応によって放出される熱が試料容器内に沈まないように提供することができ、したがって、漸進的な断熱温度上昇を実現することができる。
【0022】
本明細書で使用する「断熱」という用語は、試料物質がその周囲、主に試料容器と熱交換しない物理化学的プロセスを意味する。「断熱的温度上昇」とは、ユーザ定義の線形温度上昇から昇温(ランプアップ)の寄与を取り除いた温度上昇を指す。
【0023】
図1は、いくつかの実施形態による、2つの炉を有する断熱パワー補償型示差走査熱量計(DSC)100の一例を示す断面図である。断熱パワー補償型DSC100は、参照容器101、試料容器102、参照補償ヒータブロック105、試料補償ヒータブロック106、参照炉109、試料炉110、及び熱遮蔽体115を含み得る。
【0024】
いくつかの例では、熱遮蔽体115は、温度センサ116、発熱体117、及び冷却体118を含み得る。熱遮蔽体115は、参照炉109と試料炉110の周囲に温度制御された部屋121を形成してもよい。熱遮蔽体115は、温度制御された熱遮蔽体とすることができる。
【0025】
いくつかの実施例では、参照炉109は、発熱体111、温度センサ113、及び参照炉の蓋123を含み得る。参照炉109と参照炉蓋123は、参照127、参照容器101、及び参照補償ヒータブロック105を内包し、精密な温度制御環境を提供することができる。さらに、
図1では、発熱体111が参照炉109の側面に埋め込まれている、又は巻きつけられている状態を示している。但し、発熱体111は、参照炉109の全面に埋めこまれたり、巻き付けられたり、熱的に結合されたりすることも想定される。
【0026】
他の実施例では、試料炉110は、発熱体112、温度センサ114、及び試料炉の蓋122を含み得る。試料炉110の温度センサ114は、参照炉109の温度センサ113と同じ種類の温度センサであってもよい。試料炉110及び試料炉蓋122は、試料補償ヒータブロック106を封入し、温度制御された環境を提供することができる。さらに、
図1では、発熱体112が試料炉110の側面に埋め込まれている、又は巻きつけられている状態を示している。但し、発熱体112は、試料炉110の全面に埋め込まれたり、巻き付けられたり、熱的に結合されたりすることも想定される。いくつかの例では、参照炉109及び試料炉110の平均温度は、自己発熱事象の検出の前後の異なるモードに従って変化してもよい。
【0027】
別の例では、参照補償ヒータブロック105は、発熱体103及び参照温度センサプレート107を含み得る。参照補償ヒータブロック105と参照温度センサプレート107は、参照容器101を封入し、精密な温度制御環境を提供することができる。例えば、参照補償ヒータブロック105は、参照容器101の外表面の大部分が参照補償ヒータブロック105の内表面に密着することで、参照容器101に補償熱伝達をシームレスに提供するように、参照容器101を取り囲むことができる。参照温度センサプレート107は、参照容器101の底面に熱的に結合されていてもよい。
【0028】
さらに別の実施例では、試料補償ヒータブロック106は、発熱体104と試料温度センサプレート108とを含み得る。試料補償ヒータブロック106と試料温度センサプレート108は、試料容器101を封入し、精密な温度制御環境を提供することができる。例えば、試料補償ヒータブロック106は、試料容器102の外表面の大部分が試料補償ヒータブロック106の内表面に密着することで、試料容器102に補償熱伝達をシームレスに提供するように、試料容器102を取り囲むことができる。試料温度センサプレート108は、試料容器102の底面に熱的に結合されていてもよい。
【0029】
断熱パワー補償動作中、参照補償ヒータブロック105は参照容器101に熱を供給することができ、試料補償ヒータブロック106は試料容器102に熱を供給することができる。参照補償ヒータブロック105と試料補償ヒータブロック106は、加熱力を増減させることで参照容器101と試料容器102の間の温度差を積極的に最小化することが可能である。
【0030】
いくつかの例において、断熱パワー補償型DSC100は、参照容器101及び試料容器102を差圧マニホールド(
図1には示されていない)に結合し得る管119,120をさらに含み得る。
【0031】
試料容器102は、断熱パワー補償型DSC100によって試験される試料物質126を含み得る。参照容器101と試料容器102の寸法や構成材料は、同一にすることができる。
【0032】
温度センサ113、温度センサ114、及び温度センサ116は、白金抵抗器、熱電対、抵抗温度検出器、半導体ベースの温度センサ、又は意図する目的に適し、当業者によって理解される任意の他の温度センサとすることができる。試料126,102の温度、参照127,101の温度、及び試料126,102と参照127,101の温度差は、参照温度センサプレート107と試料温度センサプレート108で監視することが可能である。
【0033】
参照補償ヒータブロック105、試料補償ヒータブロック106、参照炉109、試料炉110、及び熱遮蔽体115の発熱・冷却体103,104,111,112,117,118は、マイクロプロセッサやコンピュータ(例えば、熱補償制御システム)により独立して制御することができる。いくつかの例では、参照補償ヒータブロック105及び試料補償ヒータブロック106の精密温度制御は、差動温度測定センサ(例えば、参照温度センサプレート107及び試料温度センサプレート108)に基づくものであってもよい。
【0034】
発熱性試料物質126を有する断熱パワー補償型DSC100を利用する実験の例は、式1によって記述される4項昇温方程式を利用することをさらに含み得る。
【0035】
δQ/δt=δQr/δt+δQs/δt+δQc-/δt+δQc+/δt (1)
【0036】
式中、δQr/δtは、ユーザ定義の昇温率を有するワット単位の第1項パワーであることができ、δQs/δtは、試料物質の静電容量を補償するために正の向きに調整された第2項パワーであることができ、δQc-/δtは、吸熱を補償するために正の向きに、又は発熱を補償するために逆の向きに調整された第3項パワーであることができ、δQc+/δtは、自己発熱の吸熱を補償するために正の向きに調整された第4項パワーであることができる。
【0037】
試料物質又は反応物126によって放出される、又は時間間隔δt内の反応によって放出される反応熱δQ0の増分、試料物質の静電容量Cs、及び試料容器102及び参照容器101の静電容量Cvを考慮すると、事前にプログラムされた昇温から逸脱する試料物質126の増分温度上昇は以下のようであり得る。
【0038】
δT0=δQ0/Cs (2)
【0039】
しかし、試料容器102のヒートシンク効果により、δQ0の一部は必然的に試料容器102に吸収され、試料系(例えば、試料126及び試料容器102)の平均温度上昇δT1がより小さく、すなわち、δT1<δT0であり、次の式を提供し得る。
【0040】
δT1=δQ0/(Cs+Cv) (3)
【0041】
試料容器102に吸収されるδQ0の熱量分は、以下のように記述することができる。
【0042】
δq1=δT1*Cv (4)
【0043】
従来のパワー補償型DSCが補償熱のパワーを小さくするのに対して、試料補償ヒータブロック106によって試料126,102にδq1を供給することができる。しかし、δq1の一部が試料容器102によって吸収されることがあり、これにより試料温度上昇をさらにより小さくすることができる。
【0044】
δT2=δq1/(Cs+Cv) (5)
【0045】
同様に、試料容器102に吸収されたδq1の熱量分は、次のように記述することができる。
【0046】
δq2=δT2*Cv (6)
【0047】
式(4)を(5)に代入すると、以下のようになる。
【0048】
δT2=δT1*Cv/(Cs+Cv) (7)
【0049】
δq2が試料126,102に補償されると、q2からの熱の一部が試料容器102に伝達され、これにより試料温度上昇をさらにより小さくすることができる。
【0050】
δT3=δq2/(Cs+Cv) (8)
【0051】
試料容器102が吸収した熱量分は、以下のように記述することができる。
【0052】
δq3=δT3*Cv (9)
【0053】
式(6)及び(7)を式(8)に代入すると、以下のようになる。
【0054】
δT3=δT1*Cv2/(Cs+Cv)2 (10)
【0055】
同様に、試料容器102が吸収した最後の熱量分は、以下のように定義することができる。
【0056】
δqn=δTn*Cv (11)
【0057】
また試料温度上昇の結果は以下のように記述することができる。
【0058】
δTn=δT1*Cvn-1/(Cs+Cv)n-1 (12)
【0059】
上記の補償熱量分方程式により、試料容器102内の総補償熱量δQcを求めることができる。
【0060】
δQc=δq1+δq2+δq3+...+δqn=(δT1+δT2+...+δTn)*Cv (13)
【0061】
これにより以下の式が提供され得る。
【0062】
δQc=δT1*Cv*[1+Cv/(Cs+Cv)+...+Cvn-1/(Cs+Cv)n-1] (14)
【0063】
パワー補償ステップの増分が無限大に近づくと、上記シリーズの数学的な記述は、以下のようになる。
【0064】
δQc=δT1*Cv*(1+Cv/Cs) (15)
【0065】
反応熱δQ0が試料物質126によって放出され、総補償熱量δQcが試料容器102によって消費され得ることを考慮すると、増分昇温ステップδtにおける試料系の目標温度上昇δTtは、次のようになり得る。
【0066】
δTt=(δQ0+δQc)/(Cs+Cv) (16)
【0067】
式(3)及び(15)を式(16)に代入すると、次のようになる。
【0068】
δTt=δQ0/Cs=δT0 (17)
【0069】
これは、時間間隔δtで試料物質126が放出する熱δQ0を完全に補償して試料物質126に収容できる(すなわち、試料容器102への熱損失がない)ことを示す。試料物質の温度δTtの上昇は、理論状態δT0に達し得る。そのため、式1のパワー補償δQc/δtの第4項を定義することができる。この増分補正加熱制御ステップを発熱事象の全過程で繰り返すことで、自己推進式断熱温度上昇曲線を求めることができる。
【0070】
断熱パワー補償型DSC100は、断熱熱補償制御方式と動的パワー補償型示差走査熱量計とを組み合わせて、自己推進式自己発熱反応過程を適用することができる。
【0071】
いくつかの実施例では、断熱パワー補償型DSC100は、試料容器102にのみ熱を正補償し、従来のパワー補償型DSCのように試料物質126又は反応物に逆補償しないことができる。試料温度は、ユーザが設定した昇温速度から徐々に逸脱し、自己加速的に反応ステージを完了するまで自律的に進行させることが可能である。
【0072】
他の実施例では、断熱パワー補償型DSC100は、式1で定義されるような4項ランプ補償制御をさらに含み得る。試料物質126、試料容器102、及び参照127は、RD(Ramp-Detect)ステージにおいて、ユーザ定義の昇温に供され得る。RD段階の初期には、ランプ加熱パワーδqr/δtを試料126,102と参照127,101に等しく供給することができる。試料容器102と参照容器101の熱容量は同一であってもよい。試料126,102と参照127,101の間の温度差が検出された場合、追加の試料加熱パワーδqs/δtを供給することができる。試料126,102と参照127,101との間の温度差を最小化することにより、断熱パワー補償型DSC100は、試料126,102及び参照127,101の温度が、RDステージにおいてユーザが予めプログラムした昇温に従うようにすることができる。その後、増加したランプ補償パワーを記録し、試料物質126の熱容量を計算するために使用することができる。
【0073】
RDステージの終わりに向かって自己発熱事象が検出された場合、δqs/δtに加えて、断熱補償加熱パワーδqc+/δtを断熱パワー補償型DSC100によって供給し、発熱事象全体を通して試料温度がユーザ定義された事前プログラムの昇温から逸脱することを可能にできる。例えば、RDステージの終了時に発熱事象を検出すると、試料126は、試料温度が指数関数的に上昇し始める自己発熱(SH)ステージに入ることができる。追加加熱パワーδqc+/δtを試料容器102に連続的に補償して、試料物質126の試料容器102への熱伝達を防止することができる。
【0074】
式1の最初の2つの項(例えば、δQr/δt及びδQs/δt)は、試料容器102及び試料物質126が予めプログラムされた昇温に従うために必要なエネルギーを提供し得る。それは、一定及び/又は線形であり得るか、且つ/又は試料容器102の熱容量、試料物質126、及びユーザ定義の事前プログラムされた昇温率に関連し得る。式1の第3項(例えば、δQc-/δt)は、吸熱を補償するために正の向きにエネルギーを提供し、又は発熱を補償するために逆の向きにエネルギーを提供し、第4項のパワーδQc+/δtは、試料容器102が試料物質126の自己推進する発熱に従うために必要なエネルギーを補償するように正の向きに調整することができる。
【0075】
式1の最終項(例えば、δQc+/δt)は、試料容器102及び参照容器101に供給される加熱パワーを制御することができる断熱差動パワー補償制御であり得る。試料物質自体126が最高温度まで自己発熱し、自己推進するよう、試料物質126が発生する熱は完全に取り込まれて消費され得る。
【0076】
いくつかの実施例では、断熱パワー補償型DSC100は、RDステージにおいて予めプログラムされた昇温によって開始され得る。断熱パワー補償型DSC100は、さらに、ランプ補償加熱制御により、試料126,102と参照127,101との間の熱容量により誘導される温度差を検出して最小化することができる。自己発熱事象を検出すると(例えば、昇温がSH段階に入ると)、断熱補償加熱制御を作動させ、試料ヒータ104の熱出力を調整して、試料物質126が放出する反応熱が試料容器102に伝達されるのを防止することができる。このように、自己発熱する試料物質126を最高温度まで断熱的に自己推進させることができる。
【0077】
他の実施例では、式1の補償パワーの第4項(例えば、δQc+/δt)を差動パワー補償制御アルゴリズムに組み込むことができる。補償熱を動的に比較し、試料126,102と参照127,101の温度差を最小にすることで、断熱補償加熱制御の収束を確実にすることができる。例えば、過剰補償も過少補償も生じないため、真の断熱昇温の状態を得ることができる。
【0078】
いくつかの例では、試料温度センサプレート108は、試料容器102の底部に熱的に結合することができ、参照温度センサプレート107は、参照容器101の底部に熱的に結合することができる。試料温度センサプレート108及び参照温度センサプレート107は、アルミニウム、銅、及び銀の少なくとも1つを含む高熱伝導性材料を有するシース型白金抵抗温度計又はシース型熱電対を含む任意の適切な熱感知技術で構成することができる。試料容器102は、試料補償ヒータブロック106と約0.02mmから0.2mmの間の継ぎ目で密着することができ、試料補償ヒータブロック106は試料容器102の全体に対して熱を供給する。参照容器101は、試料補償ヒータブロック105と約0.02mmから0.2mmの間の継ぎ目で密着することができ、参照補償ヒータブロック105は参照容器101の全体に対して熱を供給する。
【0079】
別の例では、試料補償ヒータブロック106は、試料容器102を包囲し、試料容器102に密着することができる円筒形の試料補償ヒータブロックとすることができる。参照補償ヒータブロック105は、参照容器101を内包し、参照容器101に密着できる円筒形の参照補償ヒータブロックとすることができる。試料補償ヒータブロック106及び参照補償ヒータブロック105は、試料補償ヒータブロック106及び参照補償ヒータブロック105に埋め込むことができるワイヤ発熱体又はカートリッジ発熱体の少なくとも1つを含み得る。ヒータブロック105,106と容器101,102の間が密着しているため、試料補償ヒータブロック106は試料容器102と等温になることができ、参照補償ヒータブロック105は参照容器101と等温になることができる。
【0080】
さらに別の例では、少なくとも1つの炉109,110は、試料補償ヒータブロック106及び参照補償ヒータブロック105の周囲に配置された熱遮蔽体であり得る。少なくとも1つの炉109,110は、試料補償ヒータブロック106及び参照補償ヒータブロック105から約0.1cm~10cmの間隔をあけることができる。少なくとも1つの炉109,110は、少なくとも1つの炉109,110の側壁に配置された温度センサ113,114を含み得る。少なくとも1つの炉109,110は、試料容器102、参照容器101、試料補償ヒータブロック106、及び参照補償ヒータブロック105に対して断熱的であり得る。
【0081】
いくつかの例では、熱遮蔽体115は、一定の温度環境を提供する発熱体117及び冷却体118を含むことができる。予めプログラムされた温度上昇速度は、およそ0.0℃/分と100℃/分の間とすることができる。
【0082】
図2は、いくつかの実施形態による、単一の炉を有する断熱パワー補償型示差走査熱量計(DSC)200の一例を示す断面図である。
図1の断熱パワー補償型DSC100と同様に、断熱パワー補償型DSC200は、参照容器201、試料容器202、参照補償ヒータブロック205、試料補償ヒータブロック206、参照炉209、試料炉210、及び筐体215を含み得る。
【0083】
いくつかの例では、筐体215は、温度熱遮蔽体であり得る。参照炉209と試料炉210は、接続されていてもよいし、モノリシックな炉であってもよい。この例では、発熱体211,212は、接続されていてもよいし、モノリシックな発熱体であってもよい。筐体215は、温度センサ216、発熱体217、及び冷却体218を含み得る。また、筐体215は、参照炉209及び試料炉210の周囲に温度制御された部屋221を形成してもよい。
【0084】
いくつかの実施例では、参照炉209は、発熱体211、温度センサ213、及び参照炉の蓋223を含み得る。参照炉209及び参照炉蓋223は、参照補償ヒータブロック205を封入し、温度制御された環境を提供することができる。さらに、
図2では、発熱体211が参照炉209の側面に埋め込まれている、又は巻きつけられている状態を示している。但し、発熱体211は、参照炉209の全面に埋め込まれたり、巻き付けられたり、熱的に結合されたりすることも想定される。
【0085】
他の実施例では、試料炉210は、発熱体212、温度センサ214、及び試料炉の蓋222を含み得る。試料炉210の温度センサ214は、参照炉209の温度センサ213と同じ種類の温度センサであってもよい。試料炉210及び試料炉蓋222は、試料補償ヒータブロック206を封入し、温度制御された環境を提供することができる。さらに、
図2では、発熱体212が試料炉210の側面に埋め込まれている、又は巻きつけられている状態を示している。但し、発熱体212は、試料炉210の全面に埋め込まれたり、巻き付けられたり、熱的に結合されたりすることも想定される。いくつかの例では、参照炉209及び試料炉210の平均温度は、自己発熱事象の検出の前後の異なるモードに従って変化してもよい。
【0086】
別の例では、参照補償ヒータブロック205は、発熱体203及び参照温度センサプレート207を含み得る。参照補償ヒータブロック205と参照温度センサプレート207は、参照容器201を封入し、温度制御環境を提供することができる。例えば、参照補償ヒータブロック205は、参照容器201の外表面の大部分が参照補償ヒータブロック205の内表面に密着することで、参照容器201に補償熱伝達を提供するように、参照容器201を取り囲むことができる。参照温度センサプレート207は、参照容器201の底面に熱的に結合されていてもよい。
【0087】
さらに別の実施例では、試料補償ヒータブロック206は、発熱体204と試料温度センサプレート208とを含み得る。試料補償ヒータブロック206と試料温度センサプレート208は、試料容器201を封入し、温度制御環境を提供することができる。例えば、試料補償ヒータブロック206は、試料容器202の外表面の大部分が試料補償ヒータブロック206の内表面に密着することで、試料容器202に補償熱伝達を提供するように、試料容器202を取り囲むことができる。試料温度センサプレート208は、試料容器202の底面に熱的に結合されていてもよい。
【0088】
断熱パワー補償動作中、参照補償ヒータブロック205は参照容器201に熱を供給することができ、試料補償ヒータブロック206は試料容器202に熱を供給することができる。参照補償ヒータブロック205と試料補償ヒータブロック206は、加熱力を増減させて参照容器201と試料容器202の間の温度差を積極的に最小化することが可能である。
【0089】
いくつかの例において、断熱パワー補償型DSC200は、参照容器201及び試料容器202を差圧マニホールド(
図2には示されていない)に結合し得る管219,220をさらに含み得る。試料容器202は、断熱パワー補償型DSC200によって試験される試料物質226を含み得る。参照容器201と試料容器202の寸法や構成材料は、同一にすることができる。
【0090】
試料226,202の温度、参照227,201の温度、及び試料226,202と参照227,201の間の温度差は、参照温度センサプレート207と試料温度センサプレート208で監視することができる。
【0091】
参照補償ヒータブロック205、試料補償ヒータブロック206、参照炉209、試料炉210、及び筐体215の発熱体及び冷却体203,204,211,212,217,218は、マイクロプロセッサ又はコンピュータによって独立して制御してもよい。いくつかの例では、参照補償ヒータブロック205及び試料補償ヒータブロック206の温度制御は、差動温度測定センサ(例えば、参照温度センサプレート207及び試料温度センサプレート208)に基づくものであってもよい。
【0092】
図3は、いくつかの実施形態による、断熱パワー補償型示差走査熱量計(100,200)及び従来の示差走査熱量計の昇温及び熱流の例示的なグラフ300を示す図である。試料(126)と参照(127)の間の温度差は、
図3に示すように、試料(126)と参照(127)が予めプログラムされた昇温の間に加熱されるときに連続的に測定することができる。
【0093】
補償ヒータ(105,106,205,206)は、試料容器(102,202)と参照容器(101,201)を同じ速度で加熱するように、予めプログラムされた温度制御装置によって制御することができる。試料容器と参照容器の温度が変化する速度は、試験開始時の予めプログラムされた走査速度、又は発熱事象の検出時の自己発熱速度と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、スキャン速度は、0.0℃~100℃/分の間、又は意図された目的に適し、当業者によって理解される任意の他の走査速度とすることができる。
【0094】
いくつかの例では、断熱パワー補償型DSC(100,200)の動作温度範囲は、-100℃~1000℃の間であり得る。断熱パワー補償型DSC(100,200)は、試料容器及び参照容器、参照炉、試料炉、及び熱遮蔽体の温度を、±0.01℃の温度精度及び±0.002℃の温度ばらつきで測定することができる。当業者であれば、断熱パワー補償型DSC(100,200)は、圧力追跡及びベント能力を有する試料容器を含む広範なDSCアクセサリで変更することができることを理解するであろう。
【0095】
図3に示すように、断熱パワー補償型DSC(100,200)と従来のパワー補償型DSCの昇温と熱流を示す。
【0096】
従来のパワー補償型DSCの典型的なサーモグラムは、「a」、「b」、「c」、及び「d」の曲線で表され、「a」及び「b」はそれぞれ、予めプログラムされた線形昇温から得られる試料温度スキャンと参照温度スキャンとを表している。曲線「c」は、ユーザ定義のベースライン「d」を持つ反応の熱量(mW)を表す。反応によって放出された総エネルギーは、時間期間「i」と「j」の間の「c」と「d」の曲線間で積分することができる。「i」点で発熱が起こると、従来のパワー補償型DSCの補償ヒータは、試料物質や反応によって発生する熱と釣り合うように加熱力を低下させる。これにより、試料温度は予めプログラムされた昇温に従い、直線的な温度曲線が得られる(例えば、試料については「a」、参照については「b」)。
【0097】
断熱パワー補償型DSC(100,200)の昇温及び熱量は、「A」、「B」、「C」、及び「D」の曲線として表すことができ、「A」及び「B」はそれぞれ、ユーザ定義の昇温及び重なった自己推進式昇温の結果生じる試料温度及び参照温度を表し得る。点「i」で発熱事象が検出された場合、曲線「C」は、反応の自己発熱速度を表し得る。断熱パワー補償型DSC(100,200)の試料補償ヒータブロックは、その容器のみの補償パワー出力を増加させて試料物質からその容器への熱伝達を遮断することができる。試料補償ヒータブロックによる出力の増加により、試料物質の温度はそれ自体の自己発熱速度に追従することができ、予めプログラムされた直線的な昇温(例えば、試料については「A」、参照については「B」)から逸脱することができる。時間分解自己発熱速度、最大温度上昇、試料熱容量、放出される総エネルギー、活性化エネルギーは、傾き「D」で定義するか、熱量曲線「C」で決定することができる。
【0098】
いくつかの例示的なシステム構成要素及び概念を開示したが、本開示は、次に、断熱パワー補償差動走査熱量計を利用するための例示的な方法400を示す
図4に着目する。本明細書で概説したステップは例示的なものであり、特定のステップを除外、追加、又は変更する組み合わせを含む、その任意の組み合わせで実施することができる。
【0099】
ステップ402において、方法400は、断熱パワー補償型示差走査熱量計を提供することを含み得る。断熱パワー補償型差動走査熱量計は、断熱パワー補償型差動走査熱量計によって試験される試料を収容するように構成された試料容器であって、試料容器の温度を測定するように構成された試料温度センサプレートを含む試料容器と、0.1ml~100mlの間のサイズの容積の試料容器に等温結合した試料補償ヒータブロックと、断熱パワー補償型示差走査熱量計によって試験される参照物質を収容するか、又は何も収容しないように構成された参照容器であって、参照容器の温度を測定するように構成された参照温度センサプレートと、0.1ml~100mlの間のサイズの容積の参照容器に等温的に結合された参照補償ヒータブロックと、試料補償ヒータブロックと参照補償ヒータブロックとを断熱的に遮蔽するように構成された少なくとも一つの炉と、少なくとも一つの炉を囲むように構成された熱遮蔽体と、自己発熱率、断熱温度及び圧力上昇、並びに発熱反応の活性化エネルギーの熱補償制御・測定システムと、を含み得る。
【0100】
ステップ404において、方法400は、ランプアップ加熱パワーを提供することで予めプログラムされた昇温率に基づいて試料容器及び参照容器を加熱することを含み得る。
【0101】
ステップ406において、方法400は、試料容器、参照容器、及び少なくとも1つの炉の間の温度差を最小化すること、並びに試料容器、参照容器、及び少なくとも1つの炉の温度が予めプログラムされた昇温率に従うようにすることを含み得る。
【0102】
ステップ408において、方法400は、試料物質の自己発熱活動が検出された場合に、試料容器及び参照容器に補償熱を提供することを含み得る。
【0103】
ステップ410において、方法400は、試料物質の自己発熱活動が検出されると、試料容器に容器のみの補償熱を提供して試料物質から試料容器への熱伝達を遮断し、試料物質の温度が予めプログラムされた昇温速度から逸脱し、反応完了まで自己推進させることを含み得る。
【0104】
ステップ412において、方法400は、参照容器に補償熱を供給することにより容器のみの補償熱の計算及び制御を容易にすることを含み得る。
【0105】
一部の例では、試料容器及び参照容器に提供される補償熱の総量は、予めプログラムされた昇温速度及び試料物質の自己加速温度速度に基づき得る。
【0106】
いくつかの例では、予めプログラムされた昇温速度は、おおよそ0.0℃/分と100℃/分との間である。
【0107】
方法400は、試料補償ヒータブロックへのパワー出力と参照補償ヒータブロックへのパワー出力とを制御して試料容器と参照容器の間の温度差を最小化することをさらに含み得る。
【0108】
方法400は、試料物質の発熱活動を検出すると、試料容器への補償パワーを増加させて、試料物質が予めプログラムされた温度傾斜速度から逸脱し、最高温度まで自己推進させることをさらに含み得る。
【0109】
方法400は、試料物質の発熱活動を検出した際に、補償パワーを減少させて発熱活動のバランスをとり、試料と参照とを予めプログラムされた昇温率に従わせることをさらに含み得る。
【0110】
方法400は、試料物質の吸熱活動を検出すると、補償パワーを増加させて吸熱活動のバランスをとり、試料と参照とを予めプログラムされた昇温率に従わせることをさらに含み得る。
【0111】
図5A及び
図5Bは、様々な実施形態によるシステムを示す。より適切なシステムは、様々な実施形態を実践する際に、当業者にとって明らかになるであろう。また、当業者であれば、他のシステムが可能であることを容易に理解できるであろう。
【0112】
図5Aは、システムの構成要素がバス505を用いて互いに電気的に連絡しているバスコンピューティングシステム500の一例を示す図である。コンピューティングシステム500は、処理装置(CPU又はプロセッサ)510と、読み取り専用メモリ(ROM)520及びランダムアクセスメモリ(RAM)525等のシステムメモリ515を含む種々のシステムコンポーネントをプロセッサ510に結合し得るシステムバス505とを含み得る。コンピューティングシステム500は、プロセッサ510の一部と直接、近接して、又は統合されて接続された高速メモリのキャッシュ512を含み得る。コンピューティングシステム500は、プロセッサ510による迅速なアクセスのために、メモリ515、ROM520、RAM525、及び/又は記憶装置530からキャッシュ512にデータをコピーできる。このようにして、キャッシュ512は、データ待ちの間のプロセッサの遅延を回避する性能向上を提供することができる。これらのモジュール及び他のモジュールは、プロセッサ510を制御して様々なアクションを実行させることができる。他のシステムメモリ515も同様に使用可能である。メモリ515は、異なる性能特性を有する複数の異なるタイプのメモリを含み得る。プロセッサ510は、任意の汎用プロセッサと、プロセッサ510を制御するように構成された、記憶装置530に格納されたモジュール1 532、モジュール2 534、及びモジュール3 536等のハードウェアモジュール又はソフトウェアモジュールと、ソフトウェア命令が実際のプロセッサ設計に組み込まれる特殊目的プロセッサとを含み得る。プロセッサ510は、本質的に、複数のコア又はプロセッサ、バス、メモリコントローラ、キャッシュ等を含む、完全に自己完結型のコンピューティングシステムであってもよい。マルチコアプロセッサは、対称的であっても非対称的であってもよい。
【0113】
コンピューティングシステム500とのユーザインタラクションを可能にするために、入力装置545は、発話用のマイクロフォン、ジェスチャ又はグラフィカル入力用のタッチ保護されたスクリーン、キーボード、マウス、動作入力、発話等の任意の数の入力機構を表すことができる。出力装置535は、当業者に知られているいくつかの出力機構のうちの1つ又は複数であることもできる。いくつかの例では、マルチモーダルシステムは、コンピューティングシステム500と通信するための複数のタイプの入力をユーザに提供することを可能にし得る。通信インターフェース540は、ユーザ入力とシステム出力を支配し管理することができる。特定のハードウェア配置で動作することに制限はなく、したがって、ここでの基本的な機能は、改良されたハードウェア又はファームウェア配置が開発された場合に、容易に置換され得る。
【0114】
記憶装置530は、不揮発性メモリとすることができ、ハードディスクや、磁気カセット、フラッシュメモリカード、ソリッドステートメモリ装置、デジタル多用途ディスク、カートリッジ、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、及びそれらのハイブリッド等の、コンピュータによってアクセス可能なデータを格納できる他のタイプのコンピュータ可読媒体とすることができる。
【0115】
上述したように、記憶装置530は、プロセッサ510を制御するためのソフトウェアモジュール532,534,536を含み得る。他のハードウェア又はソフトウェアモジュールも想定される。記憶装置530は、システムバス505に接続することができる。いくつかの実施形態では、特定の機能を実行するハードウェアモジュールは、機能を実行するために必要な、プロセッサ510、バス505、出力装置535等のハードウェアコンポーネントに関連する、コンピュータ可読媒体に格納されたソフトウェアコンポーネントを含み得る。
【0116】
図5Bは、実施形態に従って使用することができるチップセットコンピューティングシステム550のための例示的なアーキテクチャを示す。コンピューティングシステム550は、特定された計算を実行するように構成されたソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェアを実行することができる任意の数の物理的及び/又は論理的に異なるリソースを代表する、プロセッサ555を含み得る。プロセッサ555は、プロセッサ555への入力及びプロセッサ555からの出力を制御することができるチップセット560と通信することができる。この例では、チップセット560は、ディスプレイ等の出力装置565に情報を出力することができ、磁気媒体、固体媒体、及び他の適切な記憶媒体を含むことができる記憶装置570から情報を読み取り、かつ記憶装置570に情報を書き込むことができる。チップセット560は、RAM575からデータを読み出し、またRAM575にデータを書き込むことができる。チップセット560と連動するために、様々なユーザ・インターフェース・コンポーネント585と連動するためのブリッジ580を提供することができる。ユーザ・インターフェース・コンポーネント585は、キーボード、マイク、タッチ検出及び処理回路、マウス等のポインティングデバイス等を含み得る。コンピューティングシステム550への入力は、機械的に生成された及び/又は人間が生成した、様々なソースのいずれかから行うことができる。
【0117】
チップセット560は、異なる物理的インターフェースを有することができる1つ又は複数の通信インターフェース590と連動することもできる。通信インターフェース590は、有線及び無線LANのためのインターフェース、広帯域無線ネットワークのためのインターフェース、並びにパーソナルエリアネットワークを含み得る。本明細書に開示された技術を生成、表示、及び使用するための方法のいくつかの応用は、物理的インターフェースを介して順序付けられたデータセットを受信することを含むことができ、又はプロセッサ555が記憶装置570又はRAM575に格納されたデータを分析することによってマシン自体によって生成される。さらに、コンピューティングシステム550は、ユーザ・インターフェース・コンポーネント585を介してユーザからの入力を受け取り、プロセッサ555を用いてこれらの入力を解釈することにより、ブラウジング機能等の適切な機能を実行できる。
【0118】
コンピューティングシステム500及び550は、それぞれ複数のプロセッサ510及び555を有することができ、又は、より大きな処理能力を提供するために共にネットワーク接続されたコンピューティングデバイスのグループ又はクラスタの一部であり得ることが理解されるであろう。
【0119】
説明を明確にするために、いくつかの例では、様々な実施形態は、デバイス、デバイスコンポーネント、ソフトウェアで具現化された方法におけるステップ又はルーチン、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせからなる機能ブロックを含む個々の機能ブロックを含むものとして提示することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶装置、媒体、及びメモリは、ビットストリーム等を含むケーブル又は無線の信号を含むことができる。しかし、言及された場合、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体は、エネルギー、キャリア信号、電磁波、及び信号それ自体のような媒体を明示的に除外する。
【0121】
上述の実施例による方法は、コンピュータ可読媒体から記憶されるか、又は他の方法でコンピュータ可読媒体から利用可能なコンピュータ実行可能命令を用いて実施することができる。このような命令は、例えば、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は特殊用途処理装置に特定の機能又は機能群を実行させるか、又は実行するようにそれらのコンピュータを構成する命令及びデータを含み得る。使用するコンピュータリソースの一部は、ネットワーク経由でアクセスすることができる。コンピュータ実行可能な命令は、例えば、バイナリ、アセンブリ言語等の中間フォーマット命令、ファームウェア、又はソースコードであってもよい。説明した実施例による方法の中で、命令、情報、及び/又は作成される情報を格納するために使用され得るコンピュータ可読媒体の例は、磁気又は光ディスク、フラッシュメモリ、不揮発性メモリを備えるUSBデバイス、ネットワーク接続されたストレージデバイス等を含む。
【0122】
これらの開示による方法を実施するデバイスは、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアで構成され、様々なフォームファクタのいずれかをとることができる。このようなフォームファクタの例としては、サーバ、ラックマウントデバイス、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ等の汎用コンピューティングデバイス、又はタブレットコンピュータ、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント、ウェアラブルデバイス等の汎用モバイルコンピューティングデバイス等が挙げられる。本書で説明する機能は、周辺機器やアドインカードに具現化することができる。このような機能は、さらに例を挙げると、回路基板上で、1つのデバイスで実行される異なるチップ又は異なるプロセス間で実装することもできる。
【0123】
命令、そのような命令を伝えるための媒体、それらを実行するためのコンピューティングリソース、及びそのようなコンピューティングリソースをサポートするための他の構造は、これらの開示に記載されている機能を提供するための手段である。
【0124】
添付の特許請求の範囲に含まれる態様を説明するために様々な例及び他の情報を用いたが、当業者であれば、これらの例を使用して多種多様な実施形態を導き出すことができるため、このような例の特定の特徴又は配置に基づいて特許請求の範囲を限定することを意味しない。さらにまた、いくつかの主題は、構造的特徴及び/又は方法ステップの例に特有の言語で説明されたかもしれないが、添付の特許請求の範囲に定義される主題は、必ずしもこれらの説明された特徴又は行為に限定されないことが理解される。例えば、そのような機能性は、本明細書で特定される以外の構成要素において、異なる形で配分され、又は実行され得る。むしろ、記載された特徴及びステップは、添付の特許請求の範囲内のシステム及び方法の構成要素の例として開示される。
【0125】
ある集合の「少なくとも1つ」を説明する請求項の文言は、集合の中の1つのメンバー又は集合の中の複数のメンバーが請求項を満たすことを示す。例えば、「A及びBの少なくとも1つ」を記載した請求項の文言は、A、B、又はA及びBを意味する。
【国際調査報告】