(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】カルシトニン受容体(CALCR)をコードするバリアント核酸分子を有する対象における肥満の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230901BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20230901BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20230901BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230901BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230901BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230901BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P3/04
A61K31/337
A61K31/55
A61K31/485
A61K38/16
A61K31/137
A61K31/155
A61K38/26
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511640
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 US2021045887
(87)【国際公開番号】W WO2022040035
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ロッタ、ルカ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】アクバリ、パーサ
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ、マヌエル アレン レベズ
(72)【発明者】
【氏名】バラス、アリス
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
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4C084BA23
4C084BA26
4C084CA62
4C084NA20
4C084ZA701
4C086AA01
4C086BA02
4C086BC32
4C086CB23
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA70
4C206AA01
4C206FA08
4C206FA09
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA20
4C206ZA70
(57)【要約】
本開示は、肥満及び/または増加した体格指数(BMI)を有する対象を治療する方法、ならび肥満及び/またはBMIを発症する高いリスクを有する対象を同定する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/または体格指数(BMI)を減少させる治療剤で対象を治療する方法であって、前記対象が、肥満及び/または増加したBMIを有し、前記方法が、
前記対象が、カルシトニン受容体(CALCR)の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有するかどうかを、
前記対象由来の生体試料を得るまたは得たこと;及び
前記対象が前記CALCRバリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを判定するために前記生体試料に対して配列解析を行うことまたは行ったことにより、判定することと;
前記対象に、CALCR参照である対象への標準投与量で、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する前記治療剤を投与することもしくは投与することを継続すること;または
前記CALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性もしくはホモ接合性である対象への標準投与量と同じかまたはそれより多い量で肥満及び/または増加したBMIを治療もしくは抑制する前記治療剤を前記対象に投与することもしくは投与することを継続することと、を含み、
前記CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在が、前記対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有していることを示す、前記方法。
【請求項2】
前記CALCRバリアント核酸分子がゲノム核酸分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配列解析が、前記生体試料中のCALCRゲノム核酸分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記CALCRバリアント核酸分子がmRNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記配列解析が、前記生体試料中のCALCRのmRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記CALCRバリアント核酸分子が、mRNA分子から生成されるcDNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記配列解析が、前記生体試料中のmRNA分子から生成される前記CALCRのcDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子が、ミスセンスバリアント、スプライス部位バリアント、ストップゲインバリアント、スタートロスバリアント、ストップロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはインフレームインデルバリアント、または切り詰めCALCRポリペプチドをコードするバリアントである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記CALCRバリアント核酸分子が切り詰めCALCRポリペプチドをコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記配列解析が、前記生体試料中の核酸分子全体を配列決定することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記配列解析が、
a)前記CALCRポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも一部を増幅することと;
b)前記増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;
c)前記標識された核酸分子を改変特異的プローブを含む支持体と接触させることと;
d)前記検出可能な標識を検出することと、を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記試料中の前記核酸分子がmRNAであり、前記mRNAが前記増幅ステップの前にcDNAに逆転写される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記配列解析が、
前記生体試料中の前記核酸分子を、検出可能な標識を含む改変特異的プローブと接触させることと、
前記検出可能な標識を検出することと、を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸分子が前記対象から得られた細胞内に存在する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミド、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、セトメラノチドと、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミドのうちの1つ以上との組み合わせである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記MC4Rアゴニストが、タンパク質、ペプチド、核酸分子、または小分子を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質がMC4Rのペプチド類似体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドがセトメラノチドである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記MC4Rアゴニストが、アミノ酸配列His-Phe-Arg-Trpを含むペプチドである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記小分子が1,2,3R,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記MC4RアゴニストがALB-127158(a)である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、CALCRアゴニストである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記CALCRアゴニストがカルシトニンまたはアミリンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
肥満及び/または増加した体格指数(BMI)を発症する高いリスクを有する対象を同定する方法であって、前記方法が、
前記対象から得られた生体試料におけるカルシトニン受容体(CALCR)の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の存在または非存在を判定することまたは判定したこと、
を含み、
前記対象がCALCR参照である場合、前記対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクが有さず、前記対象がCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、前記対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有している、前記方法。
【請求項27】
前記CALCRバリアント核酸分子がゲノム核酸分子である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記判定するステップが、前記生体試料中のCALCRゲノム核酸分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記CALCRバリアント核酸分子がmRNA分子である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記判定するステップが、前記生体試料中のCALCRのmRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記CALCRバリアント核酸分子が、mRNA分子から生成されるcDNA分子である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記判定するステップが、前記生体試料中のmRNA分子から生成される前記CALCRのcDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子が、ミスセンスバリアント、スプライス部位バリアント、ストップゲインバリアント、スタートロスバリアント、ストップロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはインフレームインデルバリアント、または切り詰めCALCRポリペプチドをコードするバリアントである、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記CALCRバリアント核酸分子が切り詰めCALCRポリペプチドをコードする、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記判定するステップが、前記生体試料中の核酸分子全体を配列決定することを含む、請求項26~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記判定するステップが、
a)前記CALCRポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも一部を増幅することと;
b)前記増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;
c)前記標識された核酸分子を改変特異的プローブを含む支持体と接触させることと;
d)前記検出可能な標識を検出することと、を含む、請求項26~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記試料中の前記核酸分子がmRNAであり、前記mRNAが前記増幅ステップの前にcDNAに逆転写される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記判定するステップが、
前記生体試料中の前記核酸分子を、検出可能な標識を含む改変特異的プローブと接触させることと、
前記検出可能な標識を検出することと、を含む、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記核酸分子が前記対象から得られた細胞内に存在する、請求項26~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、前記CALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性であり、前記対象が、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤をさらに投与される、請求項26~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミド、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、セトメラノチドと、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミドのうちの1つ以上との組み合わせである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記MC4Rアゴニストが、タンパク質、ペプチド、核酸分子、または小分子を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記タンパク質がMC4Rのペプチド類似体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ペプチドがセトメラノチドである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記MC4Rアゴニストが、アミノ酸配列His-Phe-Arg-Trpを含むペプチドである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記小分子が1,2,3R,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記MC4RアゴニストがALB-127158(a)である、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる前記治療剤が、CALCRアゴニストである、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記CALCRアゴニストがカルシトニンまたはアミリンである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
カルシトニン受容体(CALCR)の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントゲノム核酸分子;
CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントmRNA分子;または
CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントcDNA分子、を有する対象における肥満及び/または増加した体格指数(BMI)の治療における使用のための肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤。
【請求項53】
シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミド、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項52に記載の治療剤。
【請求項54】
セトメラノチドと、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミドのうちの1つ以上との組み合わせである、請求項53に記載の治療剤。
【請求項55】
メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストである、請求項52に記載の治療剤。
【請求項56】
前記MC4Rアゴニストが、タンパク質、ペプチド、核酸分子、または小分子を含む、請求項55に記載の治療剤。
【請求項57】
前記タンパク質がMC4Rのペプチド類似体である、請求項56に記載の治療剤。
【請求項58】
前記ペプチドがセトメラノチドである、請求項56に記載の治療剤。
【請求項59】
前記MC4Rアゴニストが、アミノ酸配列His-Phe-Arg-Trpを含むペプチドである、請求項56に記載の治療剤。
【請求項60】
前記小分子が1,2,3R,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸である、請求項56に記載の治療剤。
【請求項61】
前記MC4RアゴニストがALB-127158(a)である、請求項56に記載の治療剤。
【請求項62】
CALCRアゴニストである、請求項52に記載の治療剤。
【請求項63】
前記CALCRアゴニストがカルシトニンまたはアミリンである、請求項62に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表への参照
本出願は、2021年8月12日に作成された、18923803602SEQという名称の、271キロバイトのサイズのテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含む。この配列表は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、CALCRの予測された機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有する対象を、肥満を治療または抑制する治療剤で治療する方法、及び肥満を発症する高いリスクを有する対象を同定する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
肥満とその心臓代謝合併症、特に2型糖尿病と冠動脈疾患は、世界的に重大な罹患率と死亡率の原因となっている。肥満に対する安全で効果的な減量アプローチと治療法には、満たされていない実質的な医学的必要性がある。
【0004】
肥満や過体重を管理するための第一の選択肢は、ダイエット及び身体活動に関するライフスタイルの介入であるが、効果は限られている可能性があり、体重の再増加が一般的である。肥満手術は、重度の肥満またはリスクの高い患者の減量に非常に効果的であるが、侵襲性、費用、周術期死亡を含む周術期の有害事象のリスクにより、その使用は制限される。いくつかの治療剤は減量効果が実証されているが、肥満の治療のための薬物療法は、ほとんどの治療剤によって誘発される中程度の体重減少、一部の薬剤の副作用プロファイル、禁忌、低い服薬順守、処方不足などの治療への障壁によって制限されている。
【0005】
カルシトニン受容体(CALCR)は、視床下部及び脳の他の領域で高く発現するGタンパク質共役受容体である。ペプチドホルモンのカルシトニンとアミリンは、CALCRの既知のリガンドである。
【発明の概要】
【0006】
本開示はまた、肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる治療剤により対象を治療する方法であって、対象が肥満、及び/または増加したBMIを有し、方法が、対象から生体試料を得ることまたは得たこと、及び生体試料で配列解析を実施するかまたは実施したことで対象がCALCRバリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを判定することによって、対象が予測された機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有するか判定することと、CALCR参照である対象への標準投与量で肥満及び/または増加したBMIを治療もしくは抑制する治療剤を対象に投与することもしくは投与することを継続すること、またはCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性もしくはホモ接合性である対象への標準投与量と同じかまたはそれ以上の量で肥満及び/または増加したBMIを治療もしくは抑制する治療剤を対象に投与することもしくは投与することを継続することとを含み、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在が、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有することを示す、方法を提供する。
【0007】
本開示は、肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有する対象を同定する方法であって、方法が、対象から得られた生体試料においてCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の存在または非存在を判定することまたは判定したことを含み、対象がCALCR参照である場合、対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する増加したリスクを有しておらず、対象がCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性もしくはホモ接合性である場合、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有する、方法を提供する。
【0008】
本開示はまた、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントゲノム核酸分子;CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントmRNA分子;またはCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントcDNA分子を有する対象における肥満及び/または増加したBMIの治療において使用するための、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療薬を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】CALCRタンパク質の構造ドメインに対する、BMIに関連するCALCRバリアントの位置を示している(p<0.05);ピンク色の縦線は、より高いBMIに関連するバリアントを示す;青色の縦線は、より低いBMIに関連するバリアントを示す;黒色のボックスに示されているバリアントは次のとおりである:1)S18P、2)V62I、3)R92C、4)K125fs、5)I178V、6)S209N、7)R355Q、8)F390V、9)V392I、10)A422V、11)R432C、12)S456F、13)R461fs、14)L481P、及び15)N487fs;示されているアミノ酸配列は、ヒトCALCRスプライスバリアントから生じるタンパク質のいくつかのアイソフォームであり、上から下まで次のものを含む:H.sapiens NCBI NP_001158209.2、H.sapiens NCBI NP_001158210.1(Equ. P30988-2)、H.sapiens NCBI NP_001733.1(Equ. P30988-2)、H.sapiens Uniprot P30988-1、H.sapiens Uniprot P30988-2、H.sapiens Uniprot P30988-3、H.sapiens Uniprot P30988-4、H.sapiens Uniprot P30988-5、及びH.sapiens Uniprot P30988-6;黒色の下線部分は膜貫通ドメインを表し、緑色の下線部分は細胞外ドメインを表し、赤色の下線部分は細胞内ドメインを表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の態様に関するさまざま用語は、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される。別段示されない限り、このような用語には、当該技術分野における通常の意味を付与するものとする。具体的に定義されているその他の用語は、本明細書に示されている定義と一致する形で解釈されるものとする。
【0011】
別段に明示的な定めのない限り、本明細書に示されているいずれの方法または態様も、そのステップを特定の順序で行う必要があるものとして解釈するようには意図されていない。したがって、ステップを特定の順序に限定すべきことが、特許請求の範囲または説明において、方法クレームによって具体的に定められていない場合には、いかなる点においても、順序を定めるようには意図されていない。このことは、ステップもしくは作業フローの手筈に関する論理事項、文法構成もしくは句読法に由来する一般的意味、または本明細書に記載されている態様の数もしくは種類を含め、あらゆる考え得る非明示的な解釈基準についても同様である。
【0012】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が別のものを明確に指示しない限り、複数の指示対象を包む。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、列挙された数値が近似値であり、小さな変動が開示された実施形態の実施に大きな影響を及ぼさないことを意味する。数値が使用される場合、文脈によって別段の指示がない限り、「約」という用語は、数値が±10%変動し、開示された実施形態の範囲内に留まることができることを意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、特定の実施形態では、所望に応じて、「からなる」または「から本質的になる」と置き換えてよい。
本明細書で使用される場合、核酸分子またはポリペプチドに関して、「単離された」という用語は、核酸分子またはポリペプチドが、例えば、血液及び/または動物組織から離れて、その本来の環境以外の状態にあることを意味する。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子またはポリペプチドは、他の核酸分子または他のポリペプチド、特に動物起源の他の核酸分子またはポリペプチドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、核酸分子またはポリペプチドは、高度に精製された形態、すなわち、95%を超える純度または99%を超える純度であり得る。この文脈で使用される場合、用語「単離された」は、同じ核酸分子またはポリペプチドが、二量体などの代替的物理的形態、または代替的に、リン酸化形態もしくは誘導体化形態で存在することを除外するものではない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含むことができ、DNA及び/またはRNAを含むことができ、一本鎖、二本鎖、または多重鎖であることができる。核酸の一方の鎖はその相補体も指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語には、哺乳動物を含む任意の動物が含まれる。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタなど)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)、ならびに非ヒト霊長類動物(例えば、類人猿及びサル)が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、医師の管理下にある患者である。
【0016】
本開示に従って、CALCR機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の遺伝子荷重(これらのバリエーションが特定の対象においてホモ接合性であるかヘテロ接合性であるかにかかわらず)は、肥満及び/または上昇したBMIを発症する増加したリスクと関連していることが観察されている。CALCRの遺伝子またはタンパク質における機能喪失バリアントは、ゲノムワイドまたはエクソームワイドの関連研究において、肥満または上昇したBMIと関連していないと考えられている。したがって、肥満及び/または上昇したBMIと関連しているCALCRの予測された機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性またはヘテロ接合性である対象は、肥満及び/または上昇したBMIが抑制され、その症状が軽減され、及び/または症状の発現が抑制されるように治療され得る。また、そのような肥満及び/または上昇したBMIを有している対象は、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤で治療することができると考えられている。
【0017】
本開示の目的のために、ヒトなどの任意の特定の対象を、3つのCALCR遺伝子型、すなわち、i)CALCR参照、ii)CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性、またはiii)CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性、のうちの1つを有すると分類することができる。対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子のコピーを有していない場合、対象はCALCR参照である。対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の単一コピーを有する場合、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。CALCRバリアント核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するCALCRポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。部分的な機能喪失(または予測される部分的な機能喪失)を有するCALCRポリペプチドを有する対象は、CALCRについて低形質性である。対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の(同じかまたは異なる)2つのコピーを有する場合、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である。
【0018】
CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子について遺伝子型が決定されているか、ヘテロ接合性またはホモ接合性であると判定されている対象について、そのような対象は、増加したBMI、1型肥満、2型肥満、もしくは3型肥満などの肥満を発症する高いリスクを有するか、または増加したBMIを発症する高いリスクを有する。CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子について遺伝子型が決定されているか、ヘテロ接合性またはホモ接合性であると判定されている対象について、そのような対象は、増加したBMI、1型肥満、2型肥満、もしくは3型肥満などの肥満を治療するのに効果的な薬剤、または増加したBMIを治療するのに効果的な薬剤によって治療することができる。
【0019】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかでは、CALCRバリアント核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するCALCRポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子など)であり得る。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、参照CALCRと比較して、カルシトニン、アミリン、GCRP、アドレノメデュリン、またはCALCRの他のリガンドに対する減少したインビトロ応答に関連する。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、ヒト参照ゲノム配列と比較して、CALCRポリペプチドの時期尚早の切断をもたらす、またはもたらすと予測されるCALCR核酸分子である。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、Polyphen、SIFT、または同様のアルゴリズムなどのインビトロ予測アルゴリズムによって損傷を与えると予測されるバリアントである。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、CALCRポリペプチドにおいて非同義アミノ酸置換を引き起こす、または引き起こすと予測されるバリアントであり、その対立遺伝子の頻度は、対象が選択される母集団において1/1,000より少ない対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、任意のまれなミスセンスバリアント(対立遺伝子頻度<0.1%;または1,000対立遺伝子に1つ)、または任意のスプライス部位、ストップ-ゲイン、スタート-ロス、ストップ-ロス、フレームシフト、インフレームインデル、もしくはその他のフレームシフトCALCRバリアントである。いくつかの実施形態では、対象は、以下のCALCRバリアント核酸分子のうちの1つまたは2つを有する:7:93426412:C:A、7:93426422:GT:G、7:93426434:AT:A、7:93426501:CG:C、7:93426512:G:GT、7:93426517:A:AG、7:93426559:G:A、7:93426561:G:GC、7:93426564:C:T、7:93434252:C:T、7:93434288:AG:A、7:93434289:G:GA、7:93436171:C:A、7:93436171:C:T、7:93436171:CTGCAAATATACGG:C、7:93438056:TCAC:T、7:93438059:C:G、7:93438209:C:T、7:93443603:C:A、7:93443607:AGCCCAAGAGATAATACC:A、7:93443648:AAC:A、7:93443743:AATCTT:A、7:93443758:C:T、7:93460832:G:A、7:93460949:T:C、7:93462060:T:TA、7:93462112:T:C、7:93468789:G:T、7:93472373:A:G、7:93472384:C:CT、7:93472420:C:T、7:93472428:G:A、7:93472446:T:TA、7:93472483:CT:C、7:93477556:A:C、7:93477557:C:A、7:93477628:CCAGCA:C、7:93477660:AAT:A、7:93479387:G:A、7:93479426:G:A、7:93479450:T:TG、7:93486979:CATTTTTG:C、7:93487001:CTT:C、7:93487008:C:T、7:93495902:G:T、7:93495903:C:T、7:93495930:A:G、7:93495976:T:A、または7:93495976:T:C。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象は、以下のCALCRバリアント核酸分子のうちの1つまたは2つを有する:7:93426422:GT:G、7:93426441:A:G、7:93426501:CG:C、7:93426516:G:A、7:93426571:G:A、7:93434281:G:A、7:93436029:C:T、7:93436035:A:C、7:93436139:C:T、7:93460945:C:T、7:93468758:T:C、7:93472483:CT:C、7:93477654:G:A、7:93479432:C:T、または7:93486987:A:G。すべてのバリアントは、低下したBMIと関連している、7:93426441:A:G及び7:93479432:C:Tを除いて、増加したBMIと関連している。
【0021】
いくつかの実施形態では、対象は、以下のバリアントCALCRポリペプチドのうちの1つまたは2つを有する:S18P、V62I、R92C、K125fs、I178V、S209N、R355Q、F390V、V392I、A422V、R432C、S456F、R461fs、L481P、またはN487fs。減少したBMIに関連するV62I及びL481Pを除いて、すべてのバリアントは増加したBMIに関連している。多数のヒトCALCRスプライスバリアントは、タンパク質のいくつかのアイソフォームをもたらし、これらは、例えば以下のように指定できる:H.sapiens NCBI NP_001158209.2、H.sapiens NCBI NP_001158210.1(Equ. P30988-2)、H.sapiens NCBI NP_001733.1(Equ. P30988-2)、H.sapiens Uniprot P30988-1、H.sapiens Uniprot P30988-2、H.sapiens Uniprot P30988-3、H.sapiens Uniprot P30988-4、H.sapiens Uniprot P30988-5、及びH.sapiens Uniprot P30988-6。
【0022】
いくつかの実施形態では、対象は以下のCALCRバリアント核酸分子のうちの1つまたは2つを有する:7:93426364:A:G、7:93426378:A:G、7:93426384:T:G、7:93426385:T:A、7:93426398:C:G、7:93426408:T:C、7:93426412:C:A、7:93426412:C:T、7:93426412:C:G、7:93426414:C:T、7:93426422:GT:G、7:93426434:AT:A、7:93426451:G:A、7:93426456:A:G、7:93426469:T:A、7:93426475:C:A、7:93426481:C:A、7:93426490:C:T、7:93426496:C:A、7:93426501:CG:C、7:93426501:C:T、7:93426502:G:A、7:93426505:C:G、7:93426511:G:T、7:93426511:G:C、7:93426511:G:A、7:93426512:G:GT、7:93426517:A:AG、7:93426526:T:TC、7:93426528:C:T、7:93426530:C:G、7:93426531:C:G、7:93426534:C:T、7:93426534:C:G、7:93426535:G:C、7:93426538:G:T、7:93426543:C:T、7:93426545:C:G、7:93426546:T:C、7:93426561:G:GC、7:93426563:C:G、7:93426564:C:T、7:93426565:A:G、7:93426571:G:A、7:93426572:C:A、7:93426577:C:T、7:93426585:T:C、7:93426589:C:T、7:93434252:C:T、7:93434261:T:G、7:93434262:G:C、7:93434267:A:G、7:93434269:C:G、7:93434272:T:A、7:93434281:G:A、7:93434285:C:T、7:93434287:A:G、7:93434288:AG:A、7:93434289:GA:G、7:93435951:C:T、7:93435971:T:C、7:93435971:T:A、7:93435978:C:T、7:93435980:T:C、7:93435983:T:A、7:93435987:A:G、7:93435988:T:C、7:93436007:T:C、7:93436011:A:G、7:93436023:G:C、7:93436029:C:T、7:93436035:A:C、7:93436059:G:A、7:93436062:T:C、7:93436065:T:C、7:93436091:A:G、7:93436091:A:C、7:93436103:G:A、7:93436103:G:T、7:93436139:C:G、7:93436139:C:T、7:93436140:G:A、7:93436142:A:T、7:93436151:A:G、7:93436166:T:C、7:93436169:A:G、7:93436171:C:A、7:93438056:TCAC:T、7:93438059:C:G、7:93438070:G:A、7:93438070:G:T、7:93438072:C:A、7:93438073:A:G、7:93438074:T:C、7:93438077:C:G、7:93438080:G:T、7:93438080:G:A、7:93438103:T:C、7:93438106:G:A、7:93438115:C:T、7:93438116:T:C、7:93438125:A:G、7:93438127:C:T、7:93438209:C:T、7:93438226:C:T、7:93438229:C:T、7:93438238:T:G、7:93438243:T:A、7:93438247:T:A、7:93438247:T:C、7:93438252:G:A、7:93438256:G:T、7:93438264:G:A、7:93438266:G:C、7:93438270:C:A、7:93443603:C:A、7:93443605:C:G、7:93443607:AGCCCAAGAGATAATACC:A、7:93443611:CAA:C、7:93443618:T:C、7:93443621:T:C、7:93443623:C:T、7:93443624:C:A、7:93443625:A:G、7:93443628:G:A、7:93443634:G:A、7:93443637:G:C、7:93443642:T:C、7:93443648:AAC:A、7:93443652:C:T、7:93443658:C:T、7:93443678:T:C、7:93443681:A:T、7:93443682:T:G、7:93443694:G:A、7:93443696:A:G、7:93443703:A:G、7:93443705:T:C、7:93443708:T:G、7:93443711:C:G、7:93443718:T:C、7:93443719:C:G、7:93443727:G:C、7:93443727:G:T、7:93443729:T:A、7:93443733:A:G、7:93443739:G:C、7:93443739:G:T、7:93443743:AATCTT:A、7:93443746:C:G、7:93443746:C:A、7:93443758:C:T、7:93460819:AC:A、7:93460822:G:A、7:93460822:G:T、7:93460826:C:A、7:93460831:C:A、7:93460832:G:A、7:93460835:C:G、7:93460835:C:T、7:93460838:G:A、7:93460842:TC:T、7:93460845:A:C、7:93460855:A:C、7:93460856:C:T、7:93460856:C:A、7:93460867:T:C、7:93460888:T:C、7:93460891:A:G、7:93460900:G:T、7:93460909:A:G、7:93460919:G:A、7:93460924:GT:G、7:93460924:G:T、7:93460924:G:C、7:93460931:T:C、7:93460936:C:T、7:93460943:G:A、7:93460945:C:T、7:93460949:T:A、7:93460949:T:C、7:93462060:T:TA、7:93462062:C:T、7:93462066:G:A、7:93462066:G:T、7:93462067:C:A、7:93462086:C:G、7:93462087:A:G、7:93462090:G:T、7:93462090:G:A、7:93462091:GA:G、7:93462091:G:A、7:93462097:T:A、7:93462102:G:T、7:93462103:T:C、7:93462104:C:G、7:93462112:T:C、7:93468714:C:A、7:93468717:G:C、7:93468722:A:C、7:93468731:TC:T、7:93468753:G:T、7:93468758:T:C、7:93468759:TG:T、7:93468762:C:T、7:93468764:A:G、7:93468769:T:C、7:93468770:G:GACCCACA、7:93468772:C:G、7:93468775:A:G、7:93468781:G:C、7:93468787:T:G、7:93468789:G:T、7:93468799:T:C、7:93472374:C:T、7:93472377:T:C、7:93472379:A:G、7:93472381:T:A、7:93472383:T:C、7:93472384:C:CT、7:93472392:T:G、7:93472400:T:C、7:93472401:T:G、7:93472402:G:T、7:93472412:T:C、7:93472418:G:T、7:93472418:GA:G、7:93472418:G:C、7:93472424:G:T、7:93472427:C:T、7:93472428:G:A、7:93472432:G:C、7:93472437:C:T、7:93472446:T:TA、7:93472456:AC:A、7:93472470:A:G、7:93472473:A:G、7:93472479:TA:T、7:93472482:C:T、7:93472483:CT:C、7:93472486:T:G、7:93472488:C:T、7:93472489:T:C、7:93477556:A:C、7:93477557:C:G、7:93477567:CA:C、7:93477575:G:A、7:93477584:T:C、7:93477587:G:T、7:93477595:C:A、7:93477602:G:A、7:93477602:G:T、7:93477611:C:A、7:93477612:C:G、7:93477617:G:A、7:93477617:G:T、7:93477617:G:C、7:93477620:G:A、7:93477622:G:C、7:93477622:G:T、7:93477623:T:C、7:93477628:CCAGCA:C、7:93477633:A:C、7:93477633:A:G、7:93477638:C:G、7:93477639:A:G、7:93477644:T:C、7:93477650:G:A、7:93477650:G:T、7:93477653:C:T、7:93477654:G:A、7:93477656:T:C、7:93477660:A:G、7:93477661:A:T、7:93477668:C:A、7:93479372:G:A、7:93479381:G:A、7:93479383:A:T、7:93479386:C:T、7:93479386:C:G、7:93479387:G:A、7:93479393:A:T、7:93479410:T:C、7:93479413:A:G、7:93479422:T:C、7:93479425:C:T、7:93479426:G:A、7:93479450:T:TG、7:93479453:G:T、7:93479470:G:T、7:93486934:TAG:T、7:93486957:A:T、7:93486979:CATTTTTG:C、7:93486986:G:A、7:93486986:G:T、7:93486995:A:G、7:93487005:G:T、7:93487007:C:T、7:93487008:C:T、7:93495902:G:A、7:93495902:G:T、7:93495903:C:T、7:93495929:C:T、7:93495930:A:G、7:93495976:T:A、7:93495976:T:C、7:93426360:G:T、7:93426391:G:T、7:93426393:A:T、7:93426399:T:C、7:93426433:C:G、7:93426459:T:A、7:93426465:G:C、7:93426483:G:A、7:93426492:G:T、7:93426493:C:T、7:93426519:G:T、7:93426535:G:T、7:93426559:G:A、7:93426570:C:T、7:93426582:G:T、7:93435953:T:A、7:93436006:G:T、7:93436032:C:G、7:93436068:T:A、7:93436113:T:A、7:93436127:G:A、7:93438085:T:C、7:93438095:A:C、7:93438101:A:T、7:93438109:T:A、7:93438112:A:G、7:93438124:C:T、7:9
3438255:G:A、7:93438259:C:T、7:93443622:A:G、7:93443624:C:G、7:93443657:A:G、7:93443682:T:A、7:93443720:A:G、7:93443734:A:T、7:93443753:C:G、7:93460846:T:C、7:93460906:A:G、7:93460918:T:C、7:93460929:C:A、7:93460930:C:T、7:93460933:T:C、7:93460939:C:T、7:93462086:CA:C、7:93468759:T:C、7:93468769:T:G、7:93468781:G:A、7:93468787:T:C、7:93472373:A:G、7:93472397:G:C、7:93472415:T:C、7:93472420:C:T、7:93472458:C:A、7:93472472:T:C、7:93472482:C:A、7:93477557:C:A、7:93477566:T:A、7:93477590:C:T、7:93477623:T:G、7:93477626:T:G、7:93477632:C:A、7:93477637:C:G、7:93477644:T:A、7:93477654:G:C、7:93477662:T:C、7:93479371:G:A、7:93479404:T:C、7:93479426:G:C、7:93479456:C:T、7:93486944:A:G、7:93487001:CTT:C、7:93487005:G:A、7:93495910:T:A、7:93426376:C:T、7:93426588:A:C、7:93434289:G:GA、7:93435991:C:A、7:93436005:T:C、7:93436053:G:A、7:93436079:G:A、7:93436110:G:A、7:93436171:CTGCAAATATACGG:C、7:93436171:C:T、7:93438089:T:C、7:93438092:T:C、7:93443643:C:T、7:93443666:A:C、7:93443750:C:T、7:93460835:C:A、7:93460897:T:C、7:93468782:C:T、7:93472424:G:A、7:93472463:T:C、7:93477599:T:C、7:93477653:C:A、または7:93477660:AAT:A。
【0023】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、CALCRバリアント核酸分子は、参照配列としてCALCR参照ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列(配列番号1;GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のchr7:93,424,539-93,574,730を包含するENST00000426151.6;ENSG00000004948.15)を使用して、第7染色体の指定された位置にバリエーションを有する。追加の配列(GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のchr7:93,426,310-93,487,013を包含するENST00000360249.8;ENSG00000004948.15)もまたCALCR参照配列として使用できる。
【0024】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、タンパク質配列においてバリエーションをコードするCALCRバリアント核酸分子は、参照配列としてCALCR参照ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列(配列番号1;GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のchr7:93,424,539-93,574,730を包含するENST00000426151.6;ENSG00000004948.15)を使用して、第7染色体の指定された位置にヌクレオチドを含み得る。
【0025】
本明細書に記載のCALCRバリアントの任意の1つ以上(すなわち、任意の組合せ)を、本明細書に記載の任意の方法内で使用して、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症するリスクが高いかどうかを判断することができる。特定のバリアントの組み合わせは、CALCRと増加した肥満/BMIのリスクとの特定の相関関係の統計分析に使用されるマスクを形成し得る。
【0026】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドは、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有する任意のCALCRポリペプチドであり得る。
【0027】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、肥満は、1型肥満、2型肥満、または3型肥満である。本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、肥満は1型肥満である。本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、肥満は2型肥満である。本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、肥満は3型肥満である。本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、対象は増加したBMIを有する。
【0028】
肥満の症状としては、過剰な体脂肪の蓄積(特に腰の周り)、息切れ、増加した発汗、いびき、突然の身体活動に対処できない、毎日非常に疲れている、背中や関節の疼痛、皮膚の問題(皮膚のひだに蓄積する水分から)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本開示は、肥満及を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる治療剤で対象を治療する方法を提供する。これらの方法では、対象は肥満及び/または増加したBMIを有する。この方法は、対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有するかどうかを判定するステップを含む。これらの方法では、そのような判定ステップは、対象から生体試料を取得すること、または取得したことを含む。これらの方法では、そのような判定ステップはまた、対象がCALCRバリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを判定するために生体試料に対して配列解析を行うことまたは行ったことを含む。対象がCALCR参照である場合、方法は、標準投与量で肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤を対象に投与することまたは投与することを継続することをさらに含む。対象が、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸についてヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、方法は、標準投与量と同じかまたはそれを超える量で肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤を対象に投与することまたは投与することを継続することをさらに含む。CALCRバリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在は、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有することを示す。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象は肥満を有している。いくつかの実施形態では、対象は増加したBMIを有している。いくつかの実施形態では、対象はCALCR参照である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である。
【0031】
いくつかの実施形態では、治療する方法は、対象からの生体試料におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の存在または非存在を検出することをさらに含む。本開示全体を通して使用されるとき、「CALCRバリアント核酸分子」は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するCALCRポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子など)である。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、参照CALCRと比較して、カルシトニン、アミリン、GCRP、アドレノメデュリン、またはCALCRの他のリガンドに対する減少したインビトロ応答に関連する。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、ヒト参照ゲノム配列と比較して、CALCRポリペプチドの時期尚早の切断をもたらす、またはもたらすと予測される。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、Polyphen、SIFT、または同様のアルゴリズムなどのインビトロ予測アルゴリズムによって損傷を与えると予測されるバリアントである。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、CALCRにおいて非同義アミノ酸置換を引き起こす、または引き起こすと予測されるバリアントであり、その対立遺伝子の頻度は、対象が選択される母集団において1/1,000より少ない対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、CALCRバリアント核酸分子は、任意のまれなミスセンスバリアント(対立遺伝子頻度<0.1%;または1,000対立遺伝子に1つ)、または任意のスプライス部位、ストップ-ゲイン、スタート-ロス、ストップ-ロス、フレームシフト、インフレームインデル、もしくはその他のフレームシフトCALCRバリアントである。
【0032】
対象からの生体試料におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の存在または非存在を検出すること、及び/または対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有するかどうかを判定することは、本明細書に記載の方法のいずれかによって行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インビトロで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インシチュで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インビボで行うことができる。これらの実施形態のいずれかでは、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在し得る。
【0033】
本開示はまた、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤で対象を治療する方法であって、対象が肥満及び/または増加したBMIを有する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象から生体試料を得るまたは得たこと、及び対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを判定するために生体試料でアッセイを実施することまたは実施したことによって、対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するか否かを判定することを含む。対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有しない場合、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤は、標準的な投与量で対象に投与されるかまたは投与することが継続される。対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する場合、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤は、標準投与量と同じかまたはそれを超える量で対象に投与されるかまたは投与することが継続される。CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在は、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有することを示す。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有している。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有していない。
【0034】
対象からの生体試料におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在または非存在を検出すること、及び/または対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを判定することは、本明細書に記載の方法のいずれかによって行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インビトロで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インシチュで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インビボで行うことができる。これらの実施形態のいずれかでは、ポリペプチドは、対象から得られた細胞内に存在し得る。
【0035】
肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の例としては、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、トピラメート、ロルカセリン、ブプロピオン、Contrave(登録商標)(ナルトレキソン)、Saxenda(登録商標)(リラグルチド)、フェンテルミン、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、Symlin(登録商標)(プラムリンチド)、トピラメート、ゾニサミド、Ozempic(登録商標)(セマグルチド)、Tirzepatide(商標)(LY3298176)、ミアカルシン、アミリン、Myalept(登録商標)(メトレレプチン)、Qsymia(登録商標)(フェンテルミン-トピラメート)、Byetta(登録商標)(エクセナチド)、Trulicity(登録商標)(デュラグルチド)、AM833、ダバリンチド、KBP-088、GCRP、アドレノメデュリン、レプチン、PYY、コレシストキニン、PYY1875、LA-GDF15、PF-06882961、PF-07081532、コタデュチド(MEDI0382)、エフィノペグデュチド(HM12525A)、ペグベルフェルミン、BIO89-100、エフルキシフェルミン、YH-25724、BFKB-8488A、NGM-313、NGM-282、ラニフィブラノール、アルダフェルミン、レスメチロム、セラデルパー、Ocaliva(登録商標)(オベチコール酸)、AMG 171、NN9215、JNJ-9090、NGM395、NGM120、AV-380、efpeglenatide、AKR-001、アルダフェルミン(NGM282)、RG7992(BFKB-8488A)、BIO89-100、LLF-580、NGM-313、NN-9500、TSLB-1344、YH-25724、LY2405319、PF-05231023、Fc-FGF21(RGE)、BMS-986036、TBRIA(商標)(カルシトニン)、もしくはオキシントモジュリン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤は、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、トピラメート、ロルカセリン、ブプロピオン、ナルトレキソン、リラグルチド、フェンテルミン、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、ゾニサミド、セマグルチド、LY3298176、ミアカルシン、アミリン、メトレレプチン、フェンテルミン-トピラメート、エクセナチド、デュラグルチド、AM833、ダバリンチド、KBP-088、GCRP、アドレノメデュリン、レプチン、PYY、コレシストキニン、PYY1875、LA-GDF15、PF-06882961、PF-07081532、コタデュチド(MEDI0382)、エフィノペグデュチド(HM12525A)、ペグベルフェルミン、BIO89-100、エフルキシフェルミン、YH-25724、BFKB-8488A、NGM-313、NGM-282、ラニフィブラノール、アルダフェルミン、レスメチロム、セラデルパー、オベチコール酸、AMG 171、NN9215、JNJ-9090、NGM395、NGM120、AV-380、efpeglenatide、AKR-001、アルダフェルミン(NGM282)、RG7992(BFKB-8488A)、BIO89-100、LLF-580、NGM-313、NN-9500、TSLB-1344、YH-25724、LY2405319、PF-05231023、Fc-FGF21(RGE)、BMS-986036、カルシトニン、もしくはオキシントモジュリン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0036】
いくつかの実施形態では、肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる治療剤は、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストである。いくつかの実施形態では、MC4Rアゴニストは、タンパク質、ペプチド、核酸分子、または小分子を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質はMC4Rのペプチド類似体である。いくつかの実施形態では、ペプチドはセトメラノチドである。いくつかの実施形態では、肥満を治療もしくは抑制、及び/またはBMIを減少させる治療剤は、はセトメラノチドと、シブトラミン、オルリスタット、フェンテルミン、ロルカセリン、ナルトレキソン、リラグルチド、ジエチルプロピオン、ブプロピオン、メトホルミン、プラムリンチド、トピラメート、及びゾニサミドのうちの1つ以上との組み合わせである。いくつかの実施形態では、MC4Rアゴニストは、アミノ酸配列His-Phe-Arg-Trpを含むペプチドである。いくつかの実施形態では、小分子は、1,2,3R,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸である。いくつかの実施形態では、MC4RアゴニストはALB-127158(a)である。
【0037】
いくつかの実施形態では肥満を治療もしくは抑制する、及び/またはBMIを減少させる治療剤は、CALCRアゴニストである。いくつかの実施形態では、CALCRアゴニストは、カルシトニン、アミリン、GCRP、アドレノメデュリン、Symlin(登録商標)(プラムリンチド)、ミアカルシン、AM833、ダバリンチド、KBP-088、レプチン、PYY、またはコレシストキニン、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、CALCRアゴニストは、カルシトニン、アミリン、GCRP、アドレノメデュリン、プラムリンチド、ミアカルシン、AM833、ダバリンチド、KBP-088、レプチン、PYY、またはコレシストキニン、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、CALCRアゴニストは、カルシトニンまたはアミリンである。いくつかの実施形態では、CALCRアゴニストは、GCRPまたはアドレノメデュリンである。いくつかの実施形態では、CALCRアゴニストは、合成または非合成のCALCRアゴニストである。
【0038】
いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤は、肥満であるが、CALCRバリアント核酸分子またはCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを伴わない対象に投与することができる。そのような実施形態では、目標は、完全なCALCRシグナル伝達を有する対象において、CALCR媒介性抗肥満特性を利用することである。いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤は、肥満であるが、CALCRバリアント核酸分子またはCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する対象に投与することができる。そのような実施形態では、目標は、遺伝子型のためにCALCRシグナル伝達が相対的に欠損している対象において、CALCR媒介性抗肥満特性を増強することである。
【0039】
いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の用量は、CALCR参照である(標準投与量を受けてよい)対象と比較して、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である患者またはヒト対象に対して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させることができる(すなわち、標準投与量よりも多い)。いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の用量は、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%増加させることができる。加えて、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である対象の肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の用量は、CALCR参照である対象と比較して、高い頻度で投与することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の用量は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である対象と比較して、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である対象に対して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させることができる。いくつかの実施形態では、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の用量は、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%増加させることができる。加えて、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である対象の肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の用量は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である対象と比較して、高い頻度で投与することができる。
【0041】
肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の投与は、例えば、1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、1ヶ月後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、2ヶ月後、または3ヶ月後に反復することができる。反復投与は、同じ用量であっても、または異なる用量であってもよい。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上反復することができる。例えば、特定の投与レジメンによれば、患者は、長期間、例えば、6か月、1年、またはそれ以上の期間等の治療を受ける可能性がある。
【0042】
肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤の投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内が挙げられるがこれらに限定されない任意の好適な経路で行うことができる。投与用の医薬組成物は、無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造されることが望ましい。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与の投与量)で提供することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤を使用して製剤化することができる。製剤は、選択した投与経路に依存する。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤が製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに実質的に有害ではないことを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」ならびに「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、それぞれ、治療効果及び予防効果などの所望の生物学的応答を引き出すことを指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、薬剤または薬剤を含む組成物の投与後の、肥満及び/または増加したBMIの減少/軽減、肥満及び/または増加したBMIの重症度低下/軽減(例えば、肥満及び/または増加したBMIの発症の低減もしくは抑制など)、症状及び肥満に関連する影響の減少/軽減、症状及び肥満に関連する影響の発症の遅延、肥満に関連する影響の症状の重症度の軽減、症状及び肥満に関連する影響の数の低減、症状及び肥満に関連する影響の潜伏期の短縮、症状及び肥満に関連する影響の改善、二次的症状の軽減、肥満及び/または増加したBMIの再発予防、再発エピソードの回数もしくは頻度の減少、症候性エピソード間の潜伏期の延長、持続的進行までの時間の延長、迅速な回復、または代替治療法の有効性の増大もしくはそれに対する抵抗性の低下、及び/または罹患宿主動物の生存時間の増加のうちの1つ以上を含む。予防効果は、治療プロトコールの投与後の、肥満の発生/進行の完全または部分的な回避/抑制、または遅延(例えば、完全もしくは部分的な回避/抑制または遅延など)、及び罹患宿主動物の生存期間延長を含み得る。肥満及び/または増加したBMIの治療には、任意の臨床病期または臨床症状で何らかの形態の肥満及び/または増加したBMIを有するとすでに診断された患者の治療、肥満及び/または増加したBMIの症状または徴候の発症または進展または増悪または悪化の遅延、及び/または肥満及び/または増加したBMIの重症度の予防及び/または軽減が包含される。
【0044】
本開示はまた、肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有する対象を同定する方法も提供する。これらの方法は、対象から得られた生体試料におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子の存在または非存在を判定することまたは判定したことを含む。対象がCALCR参照である場合、対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有しない。対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有している。
【0045】
いくつかの実施形態では、対象は肥満を有している。いくつかの実施形態では、対象は増加したBMIを有している。いくつかの実施形態では、対象はCALCR参照である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である。
【0046】
対象が、対象からの生体試料においてCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有しているかどうか、及び/または対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を含むかどうかを判定することは、本明細書に記載の方法のいずれかによって行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インビトロで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インシチュで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、インビボで行うことができる。これらの実施形態のいずれかでは、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有すると同定されると、対象は、本明細書に記載されているように、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤でさらに治療される。いくつかの実施形態では、対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、対象は、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤を、標準投与量と同じかまたはそれより多い投与量で投与される。いくつかの実施形態では、対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である場合、対象は、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤を、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である対象に投与される投与量と同じかまたはそれより多い投与量で投与される。いくつかの実施形態では、対象はCALCR参照である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、肥満及び/または増加したBMIを発症する増加したリスクに関連するCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子(ゲノム、mRNA、またはcDNA)、及び/または肥満及び/または増加したBMIを発症する増加したリスクに関連するCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する対象の遺伝子荷重を判定することをさらに含むことができる。遺伝子荷重は、CALCR遺伝子のすべてのバリアントまたはまれなバリアントの集合体であり、肥満及び/または増加したBMIとの関連分析で実行できる。いくつかの実施形態では、対象は、肥満及び/または増加したBMIを発症する増加したリスクに関連するCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする1つ以上のCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、対象は、肥満及び/または増加したBMIを発症する増加したリスクに関連するCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする1つ以上のCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。関連分析の結果は、CALCRのまれな機能喪失及びミスセンスバリアントが、肥満及び増加したBMIの増加したリスクと関連していることを示唆している。
【0049】
いくつかの実施形態では、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする任意の1つ以上のCALCRバリアント核酸分子を有する対象の遺伝子荷重は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子のいずれかの複数の加重和を表す。いくつかの実施形態では、遺伝子荷重は、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000、または1,000,000を超える、CALCR遺伝子内またはその周辺(最大10Mb)に存在する遺伝的バリアントを使用して計算され、遺伝子荷重は、対立遺伝子の数に、それぞれの対立遺伝子についての肥満及び/または増加したBMIの発症または関連する結果(例えば、重み付けされた負荷スコア)との関連推定値を掛けたものである。これには、ゲノムアノテーションに関係なく、遺伝的関連分析における肥満及び/または増加したBMI関連形質とゼロでない関連性を示すCALCR遺伝子に近接する(遺伝子の周囲に最大10Mb)、任意の遺伝的バリアントを含めることができる。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアを超える遺伝子荷重を有する場合、対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有する。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコア未満の遺伝子荷重を有する場合、対象は肥満及び/または増加したBMIを発症する低いリスクを有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、遺伝子荷重は、例えば、上位五分位、中間五分位、及び下位五分位などの五分位に分けることができ、遺伝子荷重の上位五分位は最高リスク群に対応し、遺伝子荷重の下位五分位は最低リスク群に対応する。いくつかの実施形態では、より大きな遺伝子荷重を有する対象は、対象集団からの上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%の遺伝子荷重を含むが、これに限定されない最高加重の遺伝子荷重を含む。いくつかの実施形態では、遺伝的バリアントは、肥満及び/または増加したBMIとの関連性を、関連性のp値範囲の上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%に有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、同定された遺伝的バリアントのそれぞれは、約10-2、約10-3、約10-4、約10-5、約10-6、約10-7、約10-8、約10-9、約10-10、約10-11、約10-12、約10-13、約10-14、または約10-15以下のp値で肥満及び/または増加したBMIと関連性を有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、同定された遺伝的バリアントは5×10-8未満のp値で肥満及び/または増加したBMIと関連性を有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、同定された遺伝的バリアントは、オッズ比(OR)が分布の上位20%について、約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、もしくは約2.25以上;または約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、約2.25以上、約2.5以上、または約2.75以上である残りの参照集団と比較して、高リスク対象における肥満及び/または増加したBMIと関連する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、オッズ比(OR)は、約1.0~約1.5、約1.5~約2.0、約2.0~約2.5、約2.5~約3.0、約3.0~約3.5、約3.5~約4.0、約4.0~約4.5、約4.5~約5.0、約5.0~約5.5、約5.5~約6.0、約6.0~約6.5、約6.5~約7.0の範囲、または7.0を超えていてもよい。いくつかの実施形態では、高リスク対象は参照母集団にて上端の十分位数、五分位数、または三分位数で遺伝子荷重を有する対象を含む。遺伝子荷重の閾値は、意図される実際の用途の性質と、その実際の用途にとって意味があると考えられるリスク差に基づいて決定される。
【0051】
いくつかの実施形態では、対象が肥満及び/または増加したBMIを発症する高いリスクを有すると同定される場合、または肥満及び/または増加したBMIを発症する低いリスク有するとして同定される場合、対象は本明細書に記載のように治療することができる。
【0052】
本開示は、対象において肥満及び/または増加したBMIを診断する方法も提供する。この方法は、対象が、本明細書に記載のCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子のいずれか1つ以上を有するかどうかを判定することまたは判定したことを含む。対象が、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子を有し、肥満及び/または増加したBMIの1つ以上の症状を有する場合、対象は肥満及び/または増加したBMI有すると診断される。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、対象は、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、対象が肥満及び/または増加したBMIを有すると同定される場合(肥満及び/または増加したBMIの症状が1つ以上ある、ならびにCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子についてヘテロ接合性またはホモ接合性であるなど)、対象は、本明細書に記載されているもののいずれかなどの、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療剤でさらに治療される。
【0053】
本開示はまた、対象からの生体試料におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントゲノム核酸分子、及び/または対象からの生体試料におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントmRNA分子、及び/または対象からの生体試料におけるmRNA分子から生成されたCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントcDNA分子の存在または非存在を検出する方法も提供する。集団内の遺伝子配列、及びそのような遺伝子によってコードされるmRNA分子は、一塩基多型などの多型のために異なり得ることを理解されたい。
【0054】
生体試料は、対象からの任意の細胞、組織、または生体液に由来し得る。この試料は、骨髄試料、腫瘍生検標本、細針吸引生検標本、または血液、歯肉溝滲出液、血漿、血清、リンパ、腹水、嚢胞液もしくは尿などの体液の試料のようないずれかの臨床的に適切な組織を含んでよい。場合によっては、試料は、口腔スワブを含む。本明細書に開示される方法において使用される試料は、アッセイ形式、検出方法の性質、及び試料として使用される組織、細胞、または抽出物に基づいて異なる。生体試料は、採用されるアッセイに応じて異なる処理を行うことができる。例えば、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする任意のCALCRバリアント核酸分子を検出する場合、ゲノムDNAについて試料を単離するまたは濃縮するように設計された予備処理を採用することができる。この目的では、さまざま技術を使用することができる。CALCRバリアントmRNA分子のレベルを検出する場合、さまざまな技術を使用して生体試料のmRNAを濃縮することができる。mRNAの存在もしくはレベル、または特定のバリアントゲノムDNA遺伝子座の存在を検出するために、さまざま方法を使用することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、対象においてCALCRバリアント核酸分子を検出することは、生体試料におけるCALCRゲノム核酸分子、及び/または、生体試料におけるCALCRのmRNA分子、及び/または生体試料におけるmRNA分子から生成されるCALCRのcDNA分子が、機能喪失(部分的なまたは完全な)を引き起こす、または機能喪失(部分的なまたは完全な)引き起こすと予測される1以上のバリエーションを含むかどうかを判定するために対象から得られる生体試料で配列解析をアッセイするかまたは実施することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、対象におけるCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはmRNAから生成されたcDNA分子など)の存在または非存在を検出する方法は、対象から得られた生体試料でアッセイを実施することを含む。アッセイは、生体試料中の核酸分子が特定のヌクレオチド配列を含むかどうかを判定する。
【0057】
いくつかの実施形態では、生体試料は細胞または細胞溶解物を含む。そのような方法は、例えば、CALCRゲノム核酸分子またはmRNA分子を含む生体試料を対象から得ること、及びmRNAである場合、任意選択でmRNAをcDNAに逆転写することをさらに含み得る。そのようなアッセイは、例えば、特定のCALCR核酸分子のこれらの位置の同一性を判定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法はインビトロアッセイである。
【0058】
いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または配列解析は、生体試料中のCALCRゲノム核酸分子、CALCRのmRNA分子、またはCALCRのcDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部分を配列決定することを含み、配列決定された部分は、本明細書に記載のCALCRバリアント核酸分子のいずれかなどの、機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすか、または機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすと予測される1つ以上のバリエーションを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または配列解析は、生体試料中のCALCRゲノム核酸分子のヌクレオチド配列、生体試料中のCALCRのmRNA分子のヌクレオチド配列、または生体試料中のCALCRのcDNA分子のヌクレオチド配列の、少なくとも一部分を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または遺伝子型決定アッセイは、生体試料中のCALCRゲノム核酸分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または配列解析は、生体試料中のCALCRのmRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または配列解析は、生体試料中のCALCRのmRNA分子から生成されるCALCRのcDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、アッセイまたは配列解析は、核酸分子全体を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、CALCRゲノム核酸分子のみが解析される。いくつかの実施形態では、CALCRのmRNAのみが解析される。いくつかの実施形態では、CALCRのmRNAから得られたCALCRのcDNAのみが解析される。
【0061】
いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または配列解析は、a)CALCRポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも一部を増幅することと;b)増幅された核酸分子を検出可能な標識で標識することと;c)標識された核酸分子を改変特異的プローブを含む支持体と接触させることと;d)検出可能な標識を検出することと、を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、核酸分子はmRNAであり、判定するステップは、増幅するステップの前にmRNAをcDNAに逆転写することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、判定するステップ、検出するステップ、または遺伝子型決定アッセイは、生体試料中の核酸分子を検出可能な標識を含む改変特異的プローブと接触させることであって、改変特異的プローブがストリンジェントな条件下で増幅された核酸分子のヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸配列を含む、接触させることと、検出可能な標識を検出することと、を含む。核酸配列中のSNPなどの変異を検出するために改変特異的ポリメラーゼ連鎖反応技術を使用することができる。鋳型とのミスマッチが存在するとDNAポリメラーゼは伸長しないため、改変特異的プライマーを使用することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、試料中の核酸分子はmRNAであり、mRNAは、増幅するステップの前にcDNAに逆転写される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在する。
【0064】
いくつかの実施形態では、アッセイまたは配列解析は、生体試料を、ストリンジェントな条件下でCALCRバリアントゲノム核酸分子、CALCRバリアントmRNA分子、CALCRバリアントcDNA分子に特異的にハイブリダイズし、対応するCALCR参照配列にはハイブリダイズしない改変特異的プライマーまたは改変特異的プローブなどのプライマーまたはプローブと接触させることと、ハイブリダイゼーションが生じたかどうかを判定することと、を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、アッセイは、RNA配列決定(RNA-Seq)を含む。いくつかの実施形態では、アッセイはまた、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって、mRNAをcDNAに逆転写することも含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的ヌクレオチド配列に結合し、CALCRバリアントゲノム核酸分子、CALCRバリアントmRNA分子、またはCALCRバリアントcDNA分子を含むポリヌクレオチドを特異的に検出及び/または同定するのに十分なヌクレオチドの長さのプローブ及びプライマーを利用する。ハイブリダイゼーション条件または反応条件は、この結果を達成するように作業者が決定することができる。このヌクレオチドの長さは、本明細書で記載または例示される任意のアッセイを含めた選択された検出方法での使用に十分な、いかなる長さであってもよい。そのようなプローブ及びプライマーは、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズすることができる。プローブ及びプライマーは、標的ヌクレオチド配列内の連続したヌクレオチドの完全なヌクレオチド配列同一性を有し得るが、プローブは、標的ヌクレオチド配列とは異なり、かつ、標的ヌクレオチド配列を特異的に検出及び/または同定する能力を保持しているものを従来の方法で設計することができる。プローブ及びプライマーは、標的核酸分子のヌクレオチド配列と、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性または相補性を有し得る。
【0067】
例示的な核酸配列決定技術の例としては、鎖ターミネーター(サンガー)配列決定及びダイターミネーター配列決定が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法としては、精製DNA、増幅DNA、及び固定した細胞調製物を対象とする標識プライマーまたは標識プローブの使用を含む、配列決定以外の核酸ハイブリダイゼーション法(蛍光インシチュハイブリダイゼーション(FISH))が挙げられる。いくつかの方法では、標的核酸分子を、検出の前または検出と同時に増幅することができる。核酸増幅技術の実例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換型増幅法(SDA)、及び核酸配列ベースの増幅法(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法としては、リガーゼ連鎖反応、鎖置換型増幅法、及び高温SDA(tSDA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
ハイブリダイゼーション技術では、プローブまたはプライマーがその標的にハイブリダイズするように、ストリンジェントな条件が用いられ得る。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、その標的配列に、他の非標的配列に対するよりも、例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、またはそれ以上の、例えばバックグラウンドの10倍を超える、検知可能に高い程度でハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他の配列に対するよりも少なくとも2倍の検知可能に高い程度でハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他の配列に対するよりも少なくとも3倍の検知可能に高い程度でハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他の配列に対するよりも少なくとも4倍の検知可能に高い程度でハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他の配列に対するよりも10倍を超える検知可能に高い程度でハイブリダイズする。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる条件では異なる。
【0069】
DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件、例えば、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後の50℃での2×SSCの洗浄は、公知であるか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出すことができる。典型的には、ハイブリダイゼーション及び検知のためのストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3において約1.5M未満のNa+イオン、典型的には約0.01~1.0MのNa+イオン濃度(またはその他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば10~50個のヌクレオチド)では少なくとも約30℃、それよりも長いプローブ(例えば50個を超えるヌクレオチド)では少なくとも約60℃である条件となる。ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することで、厳しい条件を達成することもできる。任意選択により、洗浄緩衝液は、約0.1%~約1%のSDSを含んでもよい。ハイブリダイゼーションの持続期間は、概ね約24時間未満、通常約4~約12時間である。洗浄の持続期間は、少なくとも、平衡に達するのに十分な長さの時間である。
【0070】
本開示はまた、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在を検出する方法であって、対象から得られた試料でアッセイを実施し、対象のCALCRポリペプチドが、本明細書に記載のCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドのいずれかのように、ポリペプチドが機能喪失(部分的もしくは完全)または予測される機能喪失(部分的もしくは完全)を有する原因となる1つ以上のバリエーションを含むかどうかを判定することを含む方法を提供する。CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドは、本明細書に記載のCALCR切り詰め型バリアントポリペプチドのいずれかであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、検出するステップは、ポリペプチドの少なくとも一部を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、検出するステップは、ポリペプチドの存在を検出するためのイムノアッセイを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有していない場合、対象は、1型肥満、2型肥満、または3型肥満などの肥満を発症するか、増加したBMIを発症する高いリスクを有していない。いくつかの実施形態では、対象がCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドを有している場合、対象は、1型肥満、2型肥満、または3型肥満などの肥満を発症するか、増加したBMIを発症する高いリスクを有している。
【0073】
本開示の文脈において、「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブまたはプライマー(例えば、改変特異的プローブまたは改変特異的プライマーなど)が、CALCR参照ゲノム核酸分子、CALCR参照mRNA分子、及び/またはCALCR参照cDNA分子をコードする核酸配列にはハイブリダイズしないことを意味する。
【0074】
「改変特異的プローブ」は、ストリンジェントな条件下で対応するCALCR参照配列にハイブリダイズせず、CALCRバリアントゲノム核酸分子、CALCRバリアントmRNA分子、またはCALCRバリアントcDNA分子に特異的にハイブリダイズする。
【0075】
いくつかの実施形態では、プローブ(例えば、改変特異的プローブなど)は標識を含む。いくつかの実施形態では、標識は、蛍光標識、放射標識、またはビオチンである。
本開示はまた、本明細書に開示されるプローブのうちのいずれか1つ以上が結合している基質を含む支持体を提供する。固体支持体は、本明細書に開示されているプローブのいずれかなどの分子が会合できる固体状態の基質または支持体である。固体支持体の形態は、アレイである。固体支持体の別の形態は、アレイ検出器である。アレイ検知器は、複数の異なるプローブがアレイ状、グリッド状、またはその他の組織化されたパターンで結合している固体支持体である。固体状態の基質の一形態は、標準的な96ウェルタイプのようなマイクロタイターディッシュである。いくつかの実施形態では、通常、ウェルあたり1つのアレイを含むマルチウェルスライドガラスを用いることができる。
【0076】
CALCR参照ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列は、配列番号1(GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のchr7:93,424,539-93,574,730を包含するENST00000426151.6;ENSG00000004948.15)に示される。
【0077】
CALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号2に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号3に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号4に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号5に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号6に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号7に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号8に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号9に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号10に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号11に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号12に示されている。別のCALCR参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号13に示されている。
【0078】
CALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号14に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号15に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号16に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号17に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号18に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号19に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号20に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号21に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号22に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号23に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号24に示されている。別のCALCR参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号25に示されている。
【0079】
ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、任意の生物からのものであり得る。例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、ヒト、または非ヒト哺乳動物、げっ歯類、マウス、もしくはラットなどの別の生物からのオルソログであり得る。集団内の遺伝子配列は、一塩基多型などの多型のために変動し得ることを理解されたい。本明細書で提供される例は、例示的配列にすぎない。他の配列もまた可能である。
【0080】
CALCR参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号26に示されている。別のCALCR参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号27に示されている。別のCALCR参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号28に示されている。別のCALCR参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号29に示されている。別のCALCR参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号30に示されている。
【0081】
添付の配列表に列挙されているヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基の標準文字略語、及びアミノ酸の3文字コードを使用して示されている。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進み、3’末端に至る標準規則に従っている。それぞれのヌクレオチド配列の1本の鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示された鎖への言及によって包含されていると理解されたい。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端から始まりカルボキシ末端の方に(すなわち、それぞれの行において左から右に)進む標準的規則に従う。
【0082】
本開示はまた、i)CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントゲノム核酸分子;ii)CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントmRNA分子;またはiii)CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントcDNA分子を有する対象における肥満及び/または増加したBMIの治療において使用するための、肥満及び/または増加したBMIを治療または抑制する治療薬を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントゲノム核酸分子、CALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントmRNA分子、及び/またはCALCRの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCALCRバリアントcDNA分子のうちのいずれかを有している。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のCALCRバリアントゲノム核酸分子のいずれかを有している。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のCALCRバリアントmRNA分子のいずれかを有している。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のCALCRバリアントcDNA分子のいずれかを有している。肥満及び/または増加したBMIを治療または阻害する治療剤は、本明細書に記載の肥満及び/または増加したBMIを治療または阻害する治療剤のいずれかであり得る。
【0084】
上記または以下で引用されている特許文献、ウェブサイト、他の刊行物、アクセッション番号などはいずれも、個々の項目が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれている。あるアクセッション番号と関連付けられている配列のバージョンが、時期によって異なる場合には、本願の有効出願日に、そのアクセッション番号に関連付けられているバージョンを意味する。有効出願日とは、該当する場合、そのアクセッション番号について言及している実際の出願日と、優先権主張出願の出願日のうちの早い方を意味する。同様に、時期によって、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが刊行されている場合には、別段に示されていない限り、本願の有効出願日における最新刊行バージョンを意味する。本開示の任意の特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様は、特に明記しない限り、他の特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様と組み合わせて使用することができる。本開示を、明確化及び理解を目的として、例示及び例としてある程度詳細に説明してきたが、ある特定の変更及び改変が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【0085】
以下の実施例は、実施形態をより詳細に説明するために提供される。これらは、特許請求する実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。以下の実施例は、当業者に、本明細書に記載の化合物、組成物、物品、デバイス、及び/または方法がどのように作成及び評価されるかの開示及び説明を提供し、単に例示的なものであるように意図されており、いずれかの特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差及び偏差が考慮され得る。別段に示されていない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【実施例】
【0086】
実施例1:CALCRのpLOFバリアントは、上昇したBMIと肥満の増加したリスクに関連している
CALCRのまれな非同義バリアントと、遺伝子内のいくつかの個々のバリアントの荷重は、ヒトでのBMIと関連している。ゲノムワイド関連(GWAS)分析の結果、CALCRのpLOFミスセンスバリアントと増加したBMI及び増加した肥満リスクとの関連が得られ(表1及び表2を参照されたい)、CALCRでのLOFと肥満を関連付ける最初のヒト遺伝的証拠が構成された。表1は、CALCRのpLOFバリアント(またはpLOFバリアント及び異なる機能アノテーションを持つミスセンスバリアント)と増加したBMIとの関連を要約する。pLOF、pLOF及び予測される有害なミスセンスバリアント(M3.01、M4.01)、またはpLOF及びすべてのミスセンスバリアントを含む遺伝子荷重試験は、より高いBMI(M2.01;表1を参照されたい)と関連していた。表2は、CALCRのpLOFバリアント(またはpLOFバリアント及び異なる機能アノテーションを持つミスセンスバリアント)と肥満のより高いオッズとの関連を要約する。pLOF、pLOF及び予測される有害なミスセンスバリアント(M3.01、M4.01)、またはpLOF及びすべてのミスセンスバリアントを含む遺伝子荷重試験は、肥満のより高いオッズ(M2.01;表2を参照されたい)と関連していた。表3は、分析に含まれるCALCRのpLOFとミスセンスバリアントを列挙する。メタ分析からの個々の関連性を持つ100個を超える非同義バリアントのうち、15個はp<0.05でBMIに関連しており、低下したBMIに関連する2個のバリアントを含んだ(
図1)。これらの15個のバリアントのうち8個は、最後の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインにあり、BMI相関におけるベータアレスチン関連経路の役割の可能性を示唆している(
図1)。さらに、BMIとのエクソームワイド関連が観察された(遺伝的曝露=pLOF及びミスセンス;SD単位での対立遺伝子あたりのベータ95%CI=0.10(0.07、0.13);p値=1.4×10
-10;AAF=0.0049;kg/m
2単位での対立遺伝子あたりのベータ95%CI=0.6(0.4、0.7);ならびに体重のkgでの対立遺伝子あたりのベータ95%CI=1.6(1.1、2.1)。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
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【0097】
【0098】
【0099】
実施例2:上昇したBMIと肥満の増加したリスクと関連しているCALCRの拡大CWAS
参加コホート
英国(UK)バイオバンク(UKB)コホート、Geisinger Health System(GHS)のMyCode Community Health Initiativeコホート、及びメキシコシティ前向き研究(MCPS)で、遺伝的関連性の発見研究が実施された。UKBは、2006~2010年の間に英国の22か所の試験センターを通じて募集された40~69歳の人々の集団ベースのコホート研究である。利用可能な全エクソーム配列決定と臨床表現型データを持つ、合計428,719人のヨーロッパ系祖先の参加者が含まれていた(表4)。GHS MyCode研究は、2007~2019年に募集された中部及び東部ペンシルベニア州(米国)からの患者の医療システムに基づくコホートである。利用可能な全エクソーム配列決定と臨床表現型データを持つ、合計121,061人のヨーロッパ系祖先の参加者が含まれていた(表4)。MCPSは、2000~2004年に、メキシコシティの隣接する2つの都市地区から募集された35を超える年齢の人々のコホート研究である。利用可能な全エクソーム配列決定と臨床表現型データを持つ、合計95,846人の混合アメリカ系祖先が含まれていた(表4)。
【0100】
【0101】
表現型の定義
体格指数(BMI)は、研究来院の1つで行われた人体計測測定に基づいて、キログラム単位の体重をメートル単位の身長の2乗で割ったものとして計算された。BMI分類は、世界保健機関の分類に基づいて定義された。BMI値は、逆標準正規関数によって変換され、それぞれの祖先群内で、男性と女性で別々に適用された。全体的及び局所的な身体の除脂肪量と脂肪量、パーセンテージ、及び体表面の正規化された指数は、UKBコホートの生体電気インピーダンスによって測定された。
【0102】
遺伝子型データ
前述のように、カバレッジの高い全エクソームシーケンスを実行した。NimbleGenプローブ(VCRome)またはIntegrated DNA Technologies(IDT)から入手可能なxGenデザインの修正バージョンを標的配列捕捉に使用した。配列決定は、Illumina v4 HiSeq 2500または、NovaSeq機器で75bpペアエンドリードを使用して実行された。配列決定は、VCRome試料の96%で標的化塩基の85%を20倍超、IDT試料の99%で標的化塩基の90%を20倍超カバーするのに十分なカバー深度(すなわち、ゲノムの標的領域のそれぞれの塩基をカバーする配列リードの数)を有した。配列リードのアラインメントとバリアントコールは、GRCh38ヒトゲノム参照配列に基づいていた。Ensembl v85遺伝子定義を使用して、単一ヌクレオチドバリアントと挿入-削除の機能的影響を判定した。予測されるLOF遺伝子バリアントには次のものが含まれる:a)フレームシフトをもたらす挿入または欠失;b)未成熟終止コドンの導入または転写開始部位または終止部位の喪失をもたらす挿入、欠失または一塩基バリアント;c)ドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位のバリアント。ミスセンスバリアントは、SIFT、Polyphen2_HDIV及びPolyphen2_HVAR、LRT及びMutationTasterを使用して有害性を予測したインシリコ予測アルゴリズムの数に従って、機能への影響の可能性について分類された。それぞれの遺伝子について、代替対立遺伝子頻度(AAF)とそれぞれのバリアントの機能アノテーションにより、これら7個の遺伝子荷重曝露への包含が判定された。1)AAF<1%を有するpLOFバリアント;2)AAF<1%を有する5/5のアルゴリズムによりpLOFまたはミスセンスバリアントが有害であると予測される;3)AAF<0.1%を有する5/5のアルゴリズムによりpLOFまたはミスセンスバリアントが有害であると予測される;4)AAF<1%を有する少なくとも1/5のアルゴリズムによりpLOFまたはミスセンスバリアントが有害であると予測される;5)AAF<0.1%を有する少なくとも1/5のアルゴリズムによりpLOFまたはミスセンスバリアントが有害であると予測される;6)AAF<1%を有するpLOFまたはいずれかのミスセンス;7)AAF<0.1%を有するpLOFまたはいずれかのミスセンスバリアント。
【0103】
BMIについてのゲノムワイドポリジェニックスコアの生成
SNPアレイ遺伝子型決定は、前述のようにUKBで実行された。独立したデータセットでの以前の大規模なゲノムワイド関連研究の結果から、LDpredソフトウェアを使用して、250万を超える一般的なバリアントによる高いBMIの素因を捕捉する多遺伝子スコアが生成された。
【0104】
統計解析
BOLT-LMM v2.3.442または REGENIE v1.0.43を使用して混合効果回帰モデルをフィッティングすることにより、遺伝的バリアントのBMIまたはそれらの遺伝子荷重との関連性を推定した。これらのアプローチは、ゲノム全体からの遺伝子型を使用して多遺伝子スコアを推定することにより、関連性と集団構造を説明する。次いで、共変量としての多遺伝子スコアを条件として、遺伝的バリアントまたはそれらの荷重の関連付けが推定される。分析は、年齢、年齢2、性別、年齢ごとの交互作用項、実験的なバッチ関連の共変量、及び遺伝的主成分についてさらに調整された。荷重の関連付けがBMI関連の一般的な遺伝的バリアントから統計的に独立していることを確認するために、以下で説明するように、BMIと共通の対立遺伝子のゲノム全体の関連付けをファインマッピングすることによって同定された共通のバリアントについて、遺伝子荷重の関連付け分析をさらに調整した。コホート全体の結果は、逆分散加重メタ分析を使用してプールされた。
【0105】
次の分析は、次の手順で実行された:
1. BMI関連の一般的なバリアントは、ハプロタイプ参照コンソーシアムパネルを使用して推定された1,200万を超える一般的から低頻度の遺伝的バリアントを含むゲノム全体の関連研究を実行することによって同定された。GHS研究では、Illumina Human Omni Express Exomeアレイ(OMNIセット)とGlobal Screeningアレイ(GSAセット)で遺伝型決定された試料でインピュテーションが別々に実行された。次いで、補完されたバリアントからの投与量データを2つのGHSセット間でマージして、関連分析用の結合データセットを取得した。BOLT-LMMまたはREGENIEを使用して混合効果線形回帰モデルをフィッティングすることにより、GHS、UKB、及びMCPSコホートでゲノム全体の関連分析を個別に実行した。次に、UKB及びGHSの分析の結果を逆分散加重メタ分析によって組み合わせて、発見コホートのヨーロッパのサブセットにおけるゲノム全体のメタ分析を得た。
【0106】
2. 一般的なバリアントによって駆動される条件付きで独立した遺伝的関連シグナルを同定するために、BMIに関連する遺伝的バリアントを担持するゲノム領域でのファインマッピングが、FINEMAPソフトウェアを使用して、p<5×10-08のゲノム全体の有意性閾値で実行された。連鎖不均衡は、ゲノム全体の関連分析に含まれる正確な個人のセットからの遺伝データを使用して推定された。ファインマッピングは、ヨーロッパ系祖先のGHS及びUKBのコホートのメタ分析と、MCPSコホートにおける混合アメリカ系の祖先分析で別々に実行された。
【0107】
3. ファインマッピングされたそれぞれの遺伝子座について、95%信憑性のあるバリアントセットは、因果関係のある確率が最も高く、そのセットのリードコモンバリアント(マイナー対立遺伝子頻度≧1%)を保持するように同定された。合計で、ヨーロッパ系祖先サブセットの一般的なバリアントとの1,769の独立した関連付けと、より小さな混合アメリカ系のサブセットの134の関連付けが同定された。
【0108】
4. それぞれのコホートで、そのコホートの関連する祖先グループ内のファインマッピングによって同定されたBMI関連の一般的なバリアントの遺伝子型を共変量として使用して、遺伝子荷重関連のエクソーム全体の関連分析を実行した。次に、それぞれのコホート内のエクソーム全体の分析の結果をメタ分析して、BMI関連の一般的なバリアントとは無関係な遺伝子荷重関連の推定値を取得した(表5;CALCR;ゲノム座標7:93426355;pLOF及びミスセンス(1/5);AAF<0.1%)。
【0109】
結果
645,626人のエクソーム全体の分析では、CALCRは、エクソーム全体の統計的有意性レベルで、まれな非同義の遺伝的バリアントの荷重がBMIと関連していた16の遺伝子の1つであった(p<3.6×10-07、20,000の遺伝子及び7つのバリアント選択モデルのボンフェローニ補正;表5)。CALCRの関連付けは、メタ分析の構成データセット全体で一貫していた(表6)。
【0110】
16個の遺伝子のうち5個は、CALCRを含む脳及び中枢神経系で発現するGタンパク質共役受容体(GPCR;ヒトゲノムにおける薬物標的の最大のクラス)をコードしている。この研究は、CALCRのまれなコーディングバリエーションをBMI及び肥満関連の表現型に関連付ける最初のヒトの遺伝的証拠を提供する。
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【0114】
【0115】
本明細書で説明されるものに加えて、記載されている主題のさまざまな修正は、前述の説明から当業者には明らかとなろう。そのような修正はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。本出願で引用されたそれぞれの参考文献(雑誌記事、米国及び米国以外の特許、特許出願公開、国際特許出願公開、遺伝子バンクアクセッション番号、などを含むが、これらに限定されない)は、参照によってその全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】