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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】キノロン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/233 20060101AFI20230901BHJP
   C07D 491/056 20060101ALI20230901BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230901BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20230901BHJP
   C07D 317/62 20060101ALI20230901BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230901BHJP
【FI】
C07D215/233 CSP
C07D491/056
C07D471/04 114N
C07D405/04
C07D317/62
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511971
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 IN2021050790
(87)【国際公開番号】W WO2022044033
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202011036288
(32)【優先日】2020-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511219191
【氏名又は名称】カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ・アン・インディアン・レジスタード・ボディ・インコーポレイテッド・アンダー・ザ・レジストレーション・オブ・ソサエティーズ・アクト・(アクト・21・オブ・1860)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スリハリ・パッバラージャ
(72)【発明者】
【氏名】ゴヴェルダン・メータ
(72)【発明者】
【氏名】シュウェタ・シン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C065
4H039
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB07
4C050CC17
4C050DD10
4C050EE01
4C050FF05
4C050GG03
4C050HH01
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC81
4C063DD14
4C063EE10
4C065AA04
4C065BB09
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH10
4C065JJ04
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ01
4H039CA42
4H039CH10
(57)【要約】
本発明は、式(I)のキノロン類、及びアリールイノン類へのアミン挿入によるその製造方法に関する。本発明はさらに、天然物、例えば、グラベオリン、グラベオリニン、シューダンIV、シューダンVII、シューダンVIII、及びシューダンXIIを得る方法にも関する。本発明はまた、合成したキノロンからの簡便なアプローチでのウォルテリオンFの全合成の方法も説明する。
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物の製造方法であって、以下のステップ:
式(II):
【化2】
(式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、H、又はCHであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、Br、又はOMeであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。)
の予め準備されたイノン類へのワンポット法において、添加剤及びアンモニア源を使用するステップ、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、式(I)の化合物が、以下のものからなる群から選択される、製造方法:
【化3】
【化4】
【請求項3】
下記式(2g):
【化5】
の化合物。
【請求項4】
極性溶媒中で式(II)のブロモアリールイノンを無機塩基と反応させ、その混合物を添加剤の存在下でアンモニア源と共に80~120℃において、8~15時間加熱して、式(I)のキノロン類を得るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
無機塩基が、炭酸セシウム、DBU、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、及び炭酸アンモニウムからなる群から選択され、かつ、極性溶媒が、エーテル、アルコール、エステル、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アンモニア源が、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、及びギ酸アンモニウムから選択され、かつ、添加剤が、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、及び酢酸銅から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
下記一般式(II)の化合物:
【化6】
式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。
【請求項8】
以下の化合物からなる群から選択される、請求項7に記載の式(II)の化合物:
【化7】
【請求項9】
以下の式のグラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、及びシューダンXII(6)の製造方法であって、
【化8】
下記式(II):
【化9】
(式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。)
のイノンを、DMF又はホルムアミドから選択される極性溶媒中で、添加剤として金属ハロゲン化物の存在下で、アンモニア源で処理するステップを含む、製造方法。
【請求項10】
式(7)のウォルテリオンFの製造方法であって、
【化10】
以下のステップ:
i)8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オン(2o)を臭素化して、対応する臭素化生成物(8)を得るステップ、及び
ii)臭素化生成物(8)を、ヨウ化銅の存在下、ナトリウムメトキシドで処理して、ウォルテリオンF(7)を得るステップ、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のキノロン類及び類似体;並びにアリールイノン類へのアミン挿入によるその製造方法に関する。
【化1】
式中、X=C、N、C-OMe、R=H、CH、R=C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニルである。R=H、OMe、R=H、C-Cアルキル、ブロモ、R=H、R=Hであり、但しR及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。
【0002】
本発明はまた、一般式(I)のキノロン類として、グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、シューダンXII(6)、及びウォルテリオンF(7)の製造方法にも関する。
【化2】
【0003】
特に、本発明はまた、一般式Iの、グラベオリン(graveolin)(1)、グラベオリニン(graveolinine)(2)、シューダン(pseudane)IV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、シューダンXII(6)、及びウォルテリオン(waltherione)F(7)の全合成にも関する。
【背景技術】
【0004】
現在の方法は、キノロン類とよばれる二環式窒素含有複素環式化合物の合成に焦点を当てている。キノロン及びその誘導体は、いくつかの天然物、医薬に広く存在すること、及び生物学的特性の幅広いプロファイルを示すことから、大きな注目を集めている (J. Med. Chem. 2014, 57, 1952, Chem. Rev. 2011, 111, 152)。4-キノロン環は、いくつかのアルカロイド中に存在する共通のモチーフであり、重要な薬剤活性を示す薬物の重要なモチーフとして機能し、それゆえ、医薬のための特別なビルディングブロックと考えられる。様々な治療剤としてのキノロン及びその誘導体の重要性は、抗腫瘍剤 (米国特許出願公開第2005/0032832号明細書、国際公開第96/10563号)、抗有糸分裂剤(国際公開第02/26730号、Eur. J. Med. Chem. 2011, 46, 6046)、抗マラリア薬(J. Med. Chem. 2014, 57, 3818)、抗ウイルス薬、キサンチンオキシダーゼ及びカテプシン阻害活性(Arch. Pharm. 2013, 346, 7)、自己誘導因子(国際公開第02/18342号)、C-MYC/MAX/DNA複合体の形成阻害剤(国際公開第2018/021810A1号)、抗菌剤又は抗真菌剤、亜鉛センサー(国際公開第2017/017631A2号、国際公開第2017/220205A1号)、リジルオキシダーゼ様2(LOXL2)阻害剤(国際公開第2017/139274A1号)、アピコンプレキサン寄生虫関連障害の治療(国際公開第2017/112678A1号)、チロシナーゼ及び関連タンパク質の活性の阻害剤(国際公開第2017/181379A1号)、アルツハイマー病、統合失調症に伴う痛み、又は睡眠障害などの疾患の治療のためのアロステリックモジュレーターとしての作用(国際公開第2017/160670A1号)、緑膿菌の細胞間情報伝達系において細胞間シグナル分子として働くオートインデューサー(国際公開第02/18342A2号)などによい先例がある。
【0005】
4-キノリノン類の合成の古典的方法には、Lappin環化(J. Am. Chem. Soc. 1948, 70, 3348)、Niementowski法(Tetrahedron Lett. 2002, 43, 3911)、Conrad-Limpet法(Eur. J. Org. Chem. 2010, 2010, 5841)、Camps環化(Chem. Ber. 1899, 32, 3228, Org. Lett. 2008, 10, 2609)及びGrohe-Heitzer合成(Liebigs Ann. Chem. 1987, 1987, 29)が含まれる。合成の多くでは、エナミノン前駆体を構築するために多段階の手順が必要とされ、環化が起こるには高温が必要である。Campsのアプローチは、アニリンをMeldrum酸 (又はその誘導体)及びオルトギ酸トリメチルと縮合して、対応するエナミンを得て、これを高沸点溶媒中(Synthesis 1987, 482) 又はマイクロ波条件下 (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2005, 15, 1015) で環化させて環化を達成し、キノロン類を得るというものである。上記以外にも遷移金属触媒を用いたキノロン類の合成についてのいくつかの別の報告がある(J. Org. Chem. 2007, 72, 7968, Eur. J. Org. Chem. 2012, 3001, Eur. J. Org. Chem. 2014, 4044)。合成においては、わずかな手順に、高圧又は有毒な一酸化炭素(Chem. Heterocycl. Compd. 2009, 45, 757)、あるいはときどき、キノロン類の合成についての限定要因/ボトルネックを構成する入手困難なN-(o-ケトアリール)アミドが関与している。キノロンとその誘導体の重要性により、いくつかのグループがキノロン類の合成のためのワンポット法に注目するようになった。キノロン類を得るためのいくつかの多成分法には、溶媒媒体として水を用い、置換3-(2-ハロフェニル)-3-オキソプロパン、アルデヒド類、及びNH水を用いた、銅によって触媒される3成分合成(Adv. Synth. Catal. 2019, 361, 1-15)、アミドによるイノン類のアミノアシル化による置換-3-アロイルキノリン-4(1H)-オン骨格を得ること(Org. Lett. 2010, 12, 212, J. Org. Chem. 2016, 81, 12181, Org. Lett. 2018, 20, 3907)、アルキン又はアルケンによるアニリンのオルト官能化及びアザ-マイケル付加代替アプローチ(J. Org. Chem. 2015, 80, 1464, J. Org. Chem. 2018, 83, 2694)、パラジウム触媒存在下でのo-ヨードアニリンと末端アセチレン及び一酸化炭素とのカルボニル化カップリング(Tetrahedron Lett. 1991, 32, 237) などが含まれる。キノロン類の多種多様な用途の点から、一般的な困難を克服する新しい方法の開発、及びワンポット法に焦点を当てるなかでそれらの方法の利用可能性のための環境にやさしい戦略が非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0032832号明細書
【特許文献2】国際公開第96/10563号
【特許文献3】国際公開第02/26730号
【特許文献4】国際公開第02/18342号
【特許文献5】国際公開第2018/021810A1号
【特許文献6】国際公開第2017/017631A2号
【特許文献7】国際公開第2017/220205A1号
【特許文献8】国際公開第2017/139274A1号
【特許文献9】国際公開第2017/112678A1号
【特許文献10】国際公開第2017/181379A1号
【特許文献11】国際公開第2017/160670A1号
【特許文献12】国際公開第02/18342A2号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Med. Chem. 2014, 57, 1952
【非特許文献2】Chem. Rev. 2011, 111, 152
【非特許文献3】Eur. J. Med. Chem. 2011, 46, 6046
【非特許文献4】J. Med. Chem. 2014, 57, 3818
【非特許文献5】Arch. Pharm. 2013, 346, 7
【非特許文献6】J. Am. Chem. Soc. 1948, 70, 3348
【非特許文献7】Tetrahedron Lett. 2002, 43, 3911
【非特許文献8】Eur. J. Org. Chem. 2010, 2010, 5841
【非特許文献9】Chem. Ber. 1899, 32, 3228
【非特許文献10】Org. Lett. 2008, 10, 2609
【非特許文献11】Liebigs Ann. Chem. 1987, 1987, 29
【非特許文献12】Synthesis 1987, 482
【非特許文献13】Bioorg. Med. Chem. Lett. 2005, 15, 1015
【非特許文献14】J. Org. Chem. 2007, 72, 7968
【非特許文献15】Eur. J. Org. Chem. 2012, 3001
【非特許文献16】Eur. J. Org. Chem. 2014, 4044
【非特許文献17】Chem. Heterocycl. Compd. 2009, 45, 757
【非特許文献18】Adv. Synth. Catal. 2019, 361, 1-15
【非特許文献19】Org. Lett. 2010, 12, 212
【非特許文献20】J. Org. Chem. 2016, 81, 12181
【非特許文献21】Org. Lett. 2018, 20, 3907
【非特許文献22】J. Org. Chem. 2015, 80, 1464
【非特許文献23】J. Org. Chem. 2018, 83, 2694
【非特許文献24】Tetrahedron Lett. 1991, 32, 237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、式(I)の新規なキノロン類及び類似体を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、アミン挿入法による、式(I)のキノロン類及び類似体を製造するための効率的な方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、式(II)の予め準備されたイノン類を使用するワンポットアプローチにおいて、添加剤及びアンモニア源を使用することによるプロトコルを使用することによって実施できるプロセスを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、天然物、例えば、グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、及びシューダンXII(6)の全合成である。
【0012】
本発明の別の目的は、上記の方法を拡張し、得られたキノロン生成物の1つを、簡潔なやり方で天然物ウォルテリオンF(7)の全合成に利用することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
<本発明のまとめ>
したがって、本発明は、下記式(I)の化合物を提供する:
【化3】
式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、H、又はCHであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、Br、又はOMeであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。
【0014】
一実施形態では、本発明は、詳細な説明に記載したステップを含む、アミン挿入法による一般式(I)のキノロン類の製造方法を提供する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、下記式(2g)の化合物を提供する。
【化4】
【0016】
一実施形態において、本発明は、下記一般式(II)の化合物を提供する。
【化5】
式中、置換基R、R、R、R、及びXは、上で定義したものと同じである。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)のキノロン類の製造方法を提供し、 その方法は、極性溶媒、例えばDMFあるいはホルムアミド中、添加剤として金属ハロゲン化物の存在下で、約80~120℃において約8~15時間、アンモニア源、例えば、炭酸アンモニウム、アンモニアで式(II)のイノンを処理するステップを含む。
【化6】
【0018】
別の実施形態において、本発明は、下記式を有する、グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、及びシューダンXII(6)の製造方法を提供する。
【化7】
【0019】
別の実施形態において、本発明は、一般式(I)のキノロンを中間体として用いる、式(7)のウォルテリオンFの製造方法を提供する。
【化8】
【0020】
さらに別の実施形態において、本発明は、以下のステップを含む、式(7)のウォルテリオンFの製造方法を提供する。
【化9】
【発明を実施するための形態】
【0021】
<本発明の詳細な説明>
本発明は、キノロン類及びその誘導体を製造するための新規かつ効率的なプロセス及びその中間体を提供する。
【0022】
本発明の戦略は、上で得られたキノロン生成物の1つを天然物の全合成のために利用することへと拡張され、天然物として以下が挙げられるがそれらに限定されない:グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、 シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、シューダンXII(6)、及びウォルテリオンF(7)。
【0023】
本明細書で使用する場合、修飾語「約」は、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するものと考えられるべきである。例えば、「約1から約4まで」という表現は、「1から4まで」の範囲も開示する。単一の数値を修飾するために使用される場合、「約」という用語は、示された数値を含めたその数値の±10%を指すことができる。例えば、「約10%」は9%から11%の範囲をカバーすることができ、「約1」は0.9~1.1を意味する。
【0024】
一実施形態において、本発明は、下記式(I)の化合物を提供する。
【化10】
式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、H、又はCHであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、Br、又はOMeであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。
【0025】
別の実施形態において、式(I)の化合物は、以下のものから選択される。
【化11】
【化12】
【0026】
最も好ましい実施形態では、式(I)の化合物は下記の化合物である。
【化13】
【0027】
一実施形態において、本発明は、式(I)の上記化合物2kから誘導される化合物グラベオリニン(2)を提供する。
【化14】
【0028】
一実施形態では、本発明は、アミン挿入法による、一般式(I)のキノロン類の製造方法を提供する。
【0029】
ここでのプロセスは、予め準備されたイノン(ynone)類を用いるワンポット法において、添加剤及びアンモニア源を使用する方法を採用することによって、高い収率及び純度で行うことができる。この新しく開発されたプロセスは、スキーム1に示すように、予め準備されたイノン(式I)から出発する。
【0030】
【化15】
【0031】
式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、H、又はCHであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、Br、又はOMeであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
及びRは一緒になって-OCHO-を形成してもよい。
【0032】
本プロセスは、広範囲の原料を用いて非常に効果的に行うことができ、キノロン類及び類似体の工業規模の生産に最も適した非常に実施可能な方法である。さらに、このプロセスは、キノロン部分を含む中間体及び関連分子の大規模なライブラリの生成に最適である。全ての反応/実験には、一般的なプロセスにおいて示されるように、個々の反応生成物の精製及び体系的な特性分析が含まれる。
【0033】
キノロン類及び類似体の調製、特にスキーム1に示されるアミン挿入法によるキノロン類及び類似体の調製のための本プロセスは、添加剤及びアンモニア源ならびに他の反応パラメーターを用いる手順を含む最も便利かつ単純な方法である。
【0034】
特に、極性溶媒中、例えば、DMF又はホルムアミド又はDMSO又はジオキサン中で、式(II)のブロモアリールイノン類の化合物と無機塩基、例えば、KCO又はCsCO又はNaCOとの反応、その混合物をヨウ化銅(I)の存在下で酢酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムと一緒に加熱することにより、式(I)のキノロン類がもたらされる。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明は、極性溶媒、例えば、DMF又はホルムアミド中で、添加剤として金属ハロゲン化物の存在下で、約80~120℃において8~15時間式(II)のイノン類をアンモニア源、例えば、炭酸アンモニウム、アンモニアで処理するステップを含む、一般式(I)のキノロン類の製造方法を提供する。
【0036】
一実施形態において、本発明は、添加剤としての金属ハロゲン化物が、ヨウ化銅、臭化銅、及び塩化銅から選択される、一般式(I)のキノロン類の製造方法を提供する。
【0037】
一実施形態において、本発明は、下記一般式(II)の化合物を提供する。
【化16】
式中、置換基R、R、R、R、及びXは、上で定義したものと同じである。
【0038】
別の実施形態では、式(II)の化合物は、以下のものから選択される。
【化17】
【化18】
【0039】
最も好ましい実施形態において、式(II)の化合物は以下の化合物である。
【化19】
【0040】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)を有する、グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、及びシューダンXII(6)の製造方法を提供する。
【化20】
【0041】
別の実施形態では、本発明は、 一般式(I)の、グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、及びシューダンXII(6)の製造方法を提供し、その方法は、式(II)のイノン類をアンモニア源、例えば、炭酸アンモニウム、アンモニアと、添加剤としての金属ハロゲン化物の存在下で、極性溶媒、例えば、DMF又はホルムアミド中で処理するステップを含む。
【0042】
一実施形態において、本発明は、 一般式(I)の、グラベオリン(1)、グラベオリニン(2)、シューダンIV(3)、シューダンVII(4)、シューダンVIII(5)、及びシューダンXII(6)の製造方法を提供し、その方法では、添加剤としての上記の金属ハロゲン化物は、ヨウ化銅、臭化銅、及び塩化銅から選択される。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)のキノロンを中間体として用いる、式(7)のウォルテリオンFの製造方法を提供する。
【化21】
【0044】
さらに別の実施形態において、本発明は、以下のステップを含む、式(7)のウォルテリオンFの製造方法を提供する。
【化22】
【0045】
別の実施形態において、本発明は、特に、8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オン(2o)の製造方法、及びウォルテリオンF(7)の全合成のための中間体としてその有用性を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、ウォルテリオンF(7)の製造方法を提供し、その方法は以下のステップを含む:8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オン(2o)を臭素化して、対応する臭素化生成物(8)を得るステップ、及び臭素化生成物(8)をヨウ化銅の存在下、ナトリウムメトキシドで処理して、ウォルテリオンF(7)を得るステップ。
【化23】
【0047】
<略語の一覧>
HPLC=高圧液体クロマトグラフィー
TLC=薄層クロマトグラフィー
NMR=核磁気共鳴
UV=紫外
HRMS=高分解能質量分析
GC=ガスクロマトグラフィー
IR=赤外
DCM=ジクロロメタン
THF:テトラヒドロフラン
DCM:ジクロロメタン
【0048】
<試験に使用した材料及び方法>
このプロセスにおいて使用した試薬と化学物質は、AVRA又はSpectrochem又はSigma-Aldrichから購入し、さらに精製することなくそのまま使用した。このプロセスでは、試薬等級の溶媒を使用して処理(ワークアップ)及び精製手順を行った。全ての反応/試験のステップは、薄層クロマトグラフィーによって監視し、得られた未精製生成物は、結晶化又はクロマトグラフィー又は蒸留又は抽出又は濾過を使用する精製にかけて、純粋な化合物を良好な収率で得た。さらに、得られた全ての化合物/生成物は、さまざまな分析法及びスペクトル法を使用して体系的に特性分析をした。
【0049】
<測定方法>
高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Xero-G2-XS-QTOF HRMS装置及びThermo Fisher Scientific Exactive (APCI)装置によって得られた。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、CDCl又はDMSO-d溶媒中で、Bruker 600又は500又は400又は300 MHzで記録した。H NMRの化学シフトは、テトラメチルシラン(δ 0.00ppm)に対する百万分率(ppm)で表される。13C NMRの化学シフトはCDCl(δ 77.0ppm) に対するppm単位で表される。データは次のように報告される:化学シフト(ケミカルシフト)、多重度(s=一重線(シングレット)、d=二重線(ダブレット)、dd=複合二重線(ダブルダブレット)、t=三重線(トリップレット)、q=四重線(カルテット)、quin=五重線(クインテット)、sext=六重線(セクステット)、m=多重線(マルチプレット)、カップリング定数(Hz)、及び積分強度。
【実施例
【0050】
以下の実施例は、説明のために与えられたものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
例1: 2-フェニルキノリン-4(1H)-オン(2a):
例2: 2-(4-フルオロフェニル)キノリン-4(1H)-オン(2b):
例3: 2-(4-エチルフェニル)キノリン-4(1H)-オン(2c):
例4: 2-(4-メトキシフェニル)キノリン-4(1H)-オン(2d):
例5: 2-フェニル-1,8-ナフチリジン-4(1H)-オン(2e):
例6: 2-(2-フルオロフェニル)キノリン-4(1H)-オン(2f):
例7: 5-ブロモ-2-フェニルキノリン-4(1H)-オン(2g):
例8: 6-フェニル-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]キノリン-8(5H)-オン(2h):
例9: 6-(2-フルオロフェニル)-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]キノリン-8(5H)-オン(2i):
例10: 2-(4-メトキシフェニル)-1,8-ナフチリジン-4(1H)-オン(2j):
例11: 2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-1,8-ナフチリジン-4(1H)-オン(2k):
例12: 2-シクロヘキシルキノリン-4(1H)-オン(2l):
例13: 2-メチルキノリン-4(1H)-オン(2m):
例14: 2-シクロプロピルキノリン-4(1H)-オン(2n):
例15: 8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オン(2o):
例16: 2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-1-メチルキノリン-4(1H)-オン、グラベオリン(1):
例17: 2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-4-メトキシキノリン、グラベオリニン(2):
例18: 2-ブチルキノリン-4(1H)-オン、シューダンIV(3):
例19: 2-ヘプチルキノリン-4(1H)-オン、シューダンVII(4):
例20: 2-オクチルキノリン-4(1H)-オン、シューダンVIII(5):
例21: 2-ドデシルキノリン-4(1H)-オン、シューダンXII(6):
【0051】
<スキ-ム1に示す式Iの化合物(2a~2o)の調製手順>
【化24】
【0052】
式中、
Xは、C、N、又はC-OMeであり、
は、H、又はCHであり、
は、C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、又は3,4-メチレンジオキシフェニルであり、
は、H、Br、又はOMeであり、
は、H、C-Cアルキル、又はブロモであり、
及びRはHであり、及び
-Rは-OCHO-であってもよい。
【0053】
一般手順1:エース圧力管(Sigma)中で、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒(1.5mL)中の式IIのイノン(0.2mmol)の撹拌溶液に、室温において、アンモニア又は炭酸アンモニウムなどのアンモニア源(1.0mmol)、及びヨウ化銅などの金属ハロゲン化物(0.02mmol)を添加し、キャップをしっかり閉め、その反応混合物を予熱した油浴中で100℃において12時間加熱した。その後、その反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc(5mL)及び冷水(5mL)で希釈し、層を分離し、水層をEtOAc(5mL×2)で抽出した。一緒にした有機抽出物をブライン溶液(5mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、揮発性物質を減圧下で除去し、得られた未精製化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、キノロン類(2a~2q)及び(3,4,5,6)を得た。
【0054】
<例1>: 2-フェニルキノリン-4(1H)-オン(2a):
【化25】
【0055】
エース圧力管(Sigma)内のホルムアミド(1.5mL)中のイノン1a(57.0mg,0.2mmol)の撹拌溶液に、室温において、炭酸アンモニウム(97mg,1.0mmol)及びヨウ化銅(4.0mg、0.02mmol)を添加し、キャップをしっかり閉め、その反応混合物を、予熱したオイルバス中で100℃において12時間加熱した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc(5mL)及び冷水(5mL)で希釈し、層を分離し、水層をEtOAc(5mL×2)で抽出した。一緒にした有機抽出物をブライン溶液(5mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、揮発性物質を減圧下で除去し、得られた未精製化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、キノロン2aが薄茶色の固体として得られた(35.4mg,80%);
Rf = 0.3 (50 %EtOAc+ヘキサン); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.72 (s, 1H), 8.11 (dd, J = 8.1, 1.3 Hz, 1H), 7.87 - 7.81 (m, 2H), 7.78 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.68 (ddd, J = 8.4, 7.0, 1.5 Hz, 1H), 7.63 - 7.56 (m, 3H), 7.35 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.34 (s, 1H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 177.43, 150.48, 141.01, 134.71, 132.28, 130.93, 129.49, 127.90, 125.36, 125.21, 123.74, 119.21, 107.83. IR (neat): υmax 3545, 2922, 1692, 1627, 1589, 1502, 756 cm-1; HRMS (ESIMS): C15H12NOに対して計算して [M+H]+: 計算値 m/z 222.0919; 測定値: 222.0912。
【0056】
式2b~2oの化合物は、例1(2a)で上述した手順、及び式IIの対応する反応原料、ヨウ化銅、及び溶媒としてホルムアミドを用いる一般手順に従って合成した。
【0057】
【表1】
【0058】
<例16>: 2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-1-メチルキノリン-4(1H)-オン: グラベオリン(1):
【0059】
無水THF(2ml)中の化合物2k(30mg,0.11mmol)の撹拌溶液に0℃においてNaH(9mg,0.22mmol)及びMeI(18μl,0.33mmol)を添加し、室温で 3時間撹拌を続け、2mLの水で希釈した飽和NHCl水で失活させ、EtOAc(5ml×3)で抽出した。一緒にした有機抽出液をNaSO上で乾燥させ、揮発性物質を減圧下で除去して未精製化合物を得て、これをカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物1を淡褐色固体として得た(22.4mg,71%)。
Rf = 0.35 (50% EtOAc + ヘキサン); Mp: 188-190℃; 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.48 (dd, J = 8.0, 1.5 Hz, 1H), 7.70 (ddd, J = 8.6, 7.1, 1.6 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.42 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.90 (dt, J = 8.0, 4.7 Hz, 2H), 6.86 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 6.28 (s, 1H), 6.06 (s, 2H), 3.63 (s, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 162.80, 158.17, 149.10, 148.77, 148.30, 134.86, 130.00, 129.06, 125.24, 121.69, 121.63, 120.30, 108.42, 108.06, 101.40, 97.59, 55.66; IR (neat): υmax 2854, 2100, 1622, 1541, 1434, 1201, 1108, 1023, 784 ; HRMS (ESIMS) : C17H14NO3に対して計算して [M+H]+: 計算値 m/z 280.0974 ; 測定値: 280.0980。
【0060】
<例17>: 2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-4-メチルキノリン、グラベオリニン(2):
【0061】
無水DMF(2ml)中の化合物2k(30mg,0.11mmol) の撹拌溶液に、KCO(30mg,0.22mmol)及びMeI(18μL,0.33mmol)を室温で添加し、80℃において30分間撹拌を続け、2mLの水で希釈した飽和NHCl水で失活させ、EtOAc(5mL×3)で抽出した。一緒にした有機抽出液をNaSO上で乾燥させ、揮発性物質を減圧下で除去して未精製化合物を得て、これをカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物2を淡褐色固体として得た(21.5mg、68%)。
Rf = 0.5 (50% EtOAc + ヘキサン); Mp: 115-117℃; 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.54 (s, 1H), 8.08 (dd, J = 8.0, 1.4 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.66 (ddd, J = 8.4, 6.9, 1.5 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 8.1, 1.9 Hz, 1H), 7.35 - 7.29 (m, 1H), 7.13 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.30 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.16 (s, 2H), 3.32 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 162.81, 158.15, 149.06, 148.77, 148.30, 134.80, 130.01, 129.02, 125.24, 121.70, 121.62, 120.30, 108.42, 108.05, 101.39, 97.58, 55.66; IR (neat): υmax 2776, 1728, 1597, 1498, 1409, 1239, 1045, 815 ; HRMS (ESIMS) : C17H14NO3に対して計算して、[M+H]+: 計算値 m/z 280.0974 ; 測定値: 280.0975。
【0062】
<例18>: 2-ブチルキノリン-4(1H)-オン、シューダンIV(3):
【0063】
一般手順1に従い、イノン1nを用いて、シューダンIV(3)を薄茶色の固体として調製した(31.7mg、79%)。
【0064】
<例19>: 2-ヘプチルキノリン-4(1H)-オン、シューダンVII(4):
【0065】
一般手順1に従い、イノン1oを使用して、シューダンVII(4)を薄茶色の固体 (39.8mg,82%)として調製した。Rf = 0.4 (50% EtOAc + ヘキサン)。
【0066】
<例20>: 2-オクチルキノリン-4(1H)-オン、シューダンVIII(5):
【0067】
一般手順1に従い、イノン1pを使用して、シューダンVIII(5)を薄茶色の固体(39.0mg,76%)として調製した。 Rf = 0.4 (50% EtOAc + ヘキサン)。
【0068】
<例21>: 2-ドデシルキノリン-4(1H)-オン、シューダンXII(6):
【0069】
一般手順1に従い、イノン1qを用いて、シューダンXII(6)を淡褐色固体(48.8mg,78%)として調製した。 Rf = 0.4 (50% EtOAc + ヘキサン)。
【0070】
本発明はまた、上で得られた生成物(2o)の1つからのウォルテリオンF(7)の全合成のための簡潔なアプロ-チを提供し、それは以下に記載されている:
【化26】
【0071】
アセトニトリル(8ml)中の8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オン(2o)(100mg,0.31mmol)の撹拌溶液に、アセトニトリル(5mL)中のN-ブロモコハク酸イミド(60mg,0.35mmol)を添加し、室温でさらに撹拌した。2時間攪拌した後、その反応混合物をCHCl(20mL)で希釈し、水(2×10mL)で洗い、水相をジクロロメタン(10mL)で抽出し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、3-ブロモ-8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オンを淡褐色の固体として得た(79mg,70%)。DMF(5mL)中の3-ブロモ-8-メトキシ-2-メチル-5-オクチルキノリン-4(1H)-オン(79mg,0.22mmol)、NaOMe(0.20mL,1.08mmol)及びCuI(20mg,0.11mmol)を50mlの丸底フラスコに入れた。その混合物を120℃に加熱し、次いで2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を、セライトを通して濾過し、その濾液を減圧下で濃縮して黄色固体を得た。その生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から7%メタノール)によって精製して、ウォルテリオンF(7)を淡黄色固体として得た(47mg,62%)。
M.p. 110-112°C ; 1H NMR (500 MHz, MeOD4) δ 7.02 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.00 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.28 - 3.23 (m, 2H), 2.48 (s, 3H), 1.59 (dt, J = 15.2, 7.4 Hz, 2H), 1.42 - 1.35 (m, 2H), 1.34 - 1.22 (m, 10H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, MeOD4) δ 175.93, 147.86, 143.21, 142.79, 136.73, 132.40, 125.38, 125.02, 110.57, 60.23, 56.54, 36.35, 33.72, 33.08, 30.90, 30.80, 30.56, 23.75, 14.44, 14.11; IR (neat): υmax 2920, 1715, 1621, 1570, 1521, 1241, 1182, 1021, 810, 668 ; HRMS (ESIMS) : C20H30NO3に対して計算して[M+H]+:計算値 m/z 332.226 ; 測定値: 332.226。
【0072】
<式IIの2-ブロモアリール-イノンの調製>
【化27】
式中、X=C、N、C-OMeであり、R=H、CHであり、R=C-C12アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-メトキシフェニル、4-エチルフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニルであり、R=H、C-Cアルキル、ブロモであり、R=H、R=Hであり、又はR-R=-OCHO-であってもよい。
【0073】
【化28】
【化29】
【0074】
<一般手順2>:代表的なキノロン類の合成に利用される式IIの2-ブロモアリールイノン類(1a-1s)の調製のため:
LiHMDSなどの塩基又はn-BuLi(1.6M,5mmol)を、-25℃から-15℃において、無水THF(30mL)中のアルキン(6mmol)の撹拌溶液に添加し、得られた反応混合物をさらに15分~30分間、同じ温度で撹拌した。これに、THF(5mL)中の2-ブロモアリールアルデヒド(5mmol)を滴下により添加し、室温まで温まるようにしておき、その反応をTLCで監視した。出発原料が完全に消費された後(HLCで監視して)、反応混合物を飽和NHCl水溶液(10mL)の滴下による添加によって失活させ、HO(50mL)及びEtOAc(20mL)で希釈した。層を分離し、水層をEtOAc(3×10mL)で抽出した。一緒にした有機層をブライン溶液で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して未精製生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン,1:5)で精製してプロパルギルアルコールを得た。DMSO(20mL)中のプロパルギルアルコール(10mmol)の撹拌溶液に、室温にて、IBX(12mmol)を添加し、反応混合物を2~3時間撹拌した。出発物質が完全に消費された後 (TLCによる監視)、反応混合物を EtOAcを用いてセライトを通して濾過し、得られた濾液を冷たいHO(20mL×2)、EtOAc(30mL)、及びブライン溶液(10mL)で洗浄し、有機層を無水NaSO上で乾燥させた。揮発性物質を減圧下で除去し、得られた未精製混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:5)で精製して、臭素化された置換イノンを得た。
【0075】
一般手順2及び対応する特定の出発物質を用いることにより、以下の化合物を調製した。
【0076】
【表2】
【0077】
<例33>: 1-(2-ブロモフェニル)ブタ-2-イン-1-オン(1l):
【0078】
10mLのTHF中の2-ブロモベンズアルデヒド(925mg,5.0mmol)の 撹拌溶液に、0℃において、1-プロピニルマグネシウムブロマイド(12.0mL,THF中0.5M,6.0mmol)を添加し、1時間撹拌し、飽和NHCl水溶液(5mL)で失活させ、水(25ml)で希釈し、有機層をEtOAc(2×25mL)で抽出し、一緒にした有機抽出液をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、未精製の二級アルコールを得て、これをさらに精製することなく次の反応に用いた。DMSO(15mL)中のプロパルギルアルコール(5.0mmol)の撹拌溶液に、室温において、IBX(1.68g,6.0mmol)を添加し、その反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物を、EtOAc(25mL)を用いてセライトを通して濾過し、得られた濾液を冷たいHO(25mL×2)で洗浄し、水層をEtOAc(25mL)で抽出し、一緒にした有機抽出液をブライン溶液(25mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させた。揮発性物質を減圧下で除去し、得られた未精製混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:5)で精製して、ブロモ-イノン(1l)を無色の液体として得た(870mg,78%)。
【0079】
<例40>: 1-(2-ブロモ-3-メトキシ-6-オクチルフェニル)ブタ-2-イン-1-オン(1s):
【0080】
二口丸底フラスコを高真空下で脱気し、ジイソプロピルアミン(0.64mL,4.52mmol)をN下で無水THF(10.0mL)に添加し、その撹拌溶液にn-BuLi(2.8mL,THF中1.6M,4.52mmol)を-78℃において滴下により添加した。30分間撹拌した後、10mLのTHF中の2,4-ジブロモ-1-メトキシベンゼン(1.0g、3.77mmol)及びDMF(0.21mL,2.65mmol)を順次その黄色の懸濁液に添加し、反応混合物を室温において15分間さらに撹拌し、その後、それを塩化アンモニウムの飽和溶液(10mL)で失活させた。その反応混合物を水(25mL)で希釈し、EtOAc(2×25mL)を使用して有機層を抽出し、一緒にした有機抽出液をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して未精製化合物を得て、これをシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、ジブロモアルデヒドを淡黄色の固体として得た(800mg,73%)。
Mp: 120-122℃; 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 10.29 (s, 1H), 7.73 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 3.91 (s, 4H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 190.20, 160.13, 137.69, 126.52, 126.29, 118.14, 112.49, 56.50; IR (neat): υmax 2886, 1692, 1574, 1456, 1380, 1267, 1184, 1128, 1033, 814, 767; HRMS (ESIMS): C8H7O2Br2に対して計算して [M+H]+: 計算値 m/z 292.8813 ; 測定値: 292.8828。
【0081】
エース圧力管を脱気した後、エース圧力管に、2,6-ジブロモ-3-メトキシベンズアルデヒド(750mg,2.56mmol)、n-オクチルボロン酸(485mg,3.07mmol)を仕込み、Pd(PPH(148mg,0.13mmol)及びKCO(530mg,3.84mmol)を連続して添加し、無水トルエン(12mL)を添加した。そのチューブを注意深く密封し、反応混合物を油浴上で100℃において12時間加熱した。室温まで冷却した後、反応混合物を、セライトを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮して未精製化合物を得て、これをカラムクロマトグラフィーによる精製にかけて、カップリング生成物を無色の液体として得た(544mg,65%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 10.52 (s, 1H), 7.65 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.05 (dd, J = 9.2, 6.6 Hz, 2H), 1.54 - 1.20 (m, 12H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 191.56, 162.13, 145.14, 138.20, 124.80, 117.75, 110.64, 56.03, 32.76, 31.94, 29.96, 29.86, 29.35, 29.33, 22.73, 14.16; IR (neat): υmax 2927, 2857, 1690, 1575, 1460, 1408, 1270, 1173, 1100, 811, 768; HRMS: (ESIMS) : C16H24O2Brに対して計算して、[M+H]+: 計算値 m/z 327.0960; 測定値: 327.0969。
【0082】
10mLのTHF中のオクチル-ブロモ-アルデヒド(530mg,1.62mmol)の撹拌溶液に、0℃において、1-プロピニルマグネシウムブロマイド(3.9mL,THF中0.5M,1.95mmol)を添加し、1時間撹拌し、飽和NHCl水溶液(5mL)で失活させ、水(25mL)で希釈し、有機層をEtOAc(2×25mL)を使用して抽出し、一緒にした有機抽出液をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、未精製の二級アルコールを得て、これはさらに精製することなく次の反応に使用した。DMSO(10mL)中のプロパルギルアルコール(595mg,1.62mmol)の撹拌溶液に、室温において、IBX(545mg,1.95mmol)を添加し、反応混合物を2時間撹拌した。その反応混合物を、EtOAc(25mL)を用いてセライトを通して濾過し、得られた濾液を冷たいHO(25mL×2)で洗浄し、水層をEtOAc(25mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物をブライン溶液(25mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させた。揮発性物質を減圧下で除去し、得られた未精製混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:5)によって精製して、ブロモ-イノン(1s)を無色の液体(473mg,80%)として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.49 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 2.71 - 2.61 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.60 - 1.51 (m, 1H), 1.40 - 1.21 (m, 11H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 181.10, 155.84, 139.90, 134.34, 131.57, 116.04, 110.59, 92.80, 81.71, 56.13, 33.34, 31.89, 29.85, 29.26, 22.71, 14.15, 4.54; IR (neat): υmax 2926, 2857, 2225, 1659, 1575, 1461, 1274, 1091, 923, 809, 765; HRMS (ESIMS) : C19H26O2Brに対して計算して、[M+H]+: 計算値m/z 365.116; 測定値: 365.1135。
【0083】
<行った仕事の意義>
キノロン類の重要性を考慮して、CuIの存在下で、2-ブロモアリール-イノン類及びアンモニア源としての炭酸アンモニウムからキノロン類を調製するための新規かつ効率的な方法(プロセス)が提示されている。このイノン類は、容易に入手できる市販の物質から2段階のプロセスで簡単に得ることができる。本発明者による式Iの置換キノロン類のここでの合成法は、いくつかのキノロン類の合成のための非常に効果的な新しい方法、及び天然生成物であるシューダンIV、VII、VIII、XII、及びウォルテリオンFのそれぞれの合成のためのプロセスとして役に立つ。
【0084】
<本発明の利点>
本プロセスの様々な利点を以下に示す。
1.本発明の方法は、キノロン類及び類似体の製造、特にアミン挿入法によるキノロン類及び類似体の製造のための非常に効率的かつ規模拡大可能な製造方法として役立つ。
2.本発明の利点は、上記のプロセスを、アンモニア源及び添加剤を使用してワンポットで実施できることである。
3.本発明の別の利点は、非常に実現可能な反応パラメ-タを含むことである。
4.生成物の単離及び/又は精製が簡単である。
5.これは、キノロン類及び類似体、特にキノロン類を製造するための魅力的かつ経済的な方法である。
6.このプロセスは、プロセス中間体及びキノロン類の類似体の大規模なライブラリを生成するために採用することができる。
7.このプロセスは、グラベオリン(graveoline)の合成を直接もたらす。
8.このプロセスは、グラベオリニン(graveolinine)の合成を直接もたらす。
9.このプロセスは、シューダン(pseudane)IVの合成を直接もたらす。
10.このプロセスは、シューダン(pseudane)VIIの合成を直接もたらす。
11.このプロセスは、シューダン(pseudane)VIIIの合成を直接もたらす。
12.このプロセスは、シューダン(pseudane)XIIの合成を直接もたらす。
13.このプロセスの別の利点には、天然物ウォルテリオンFの合成のための開発されたプロセスによって合成されたキノロンの有用性が含まれる。
【国際調査報告】