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特表2023-538575荷重の突然の喪失時にブームの転倒を抑制するための補助デバイスを備えた吊上げデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】荷重の突然の喪失時にブームの転倒を抑制するための補助デバイスを備えた吊上げデバイス
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/92 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
B66C23/92
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511974
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021071898
(87)【国際公開番号】W WO2022037960
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】2020/5573
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・ヴァンデン・ブランデン
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA05
3F205DA01
(57)【要約】
荷重を実質的に垂直方向に吊り上げるための巻上げケーブルを備えるブームが、傾斜可能に接続される力吸収ベースを備えた吊上げデバイスが述べられる。吊上げデバイスは、突然に荷重を喪失した場合、ブームの転倒を抑制するための補助デバイスを備える。補助デバイスは、吊上げデバイスのベースに接続され、ブームの接触面と恒久的に接触している、または転倒が生じた場合に、それと接触するようになる接触面を提供し、またブームが転倒した結果、接触面間の所定の力を超えたとき、ブームの動きを停止するように構成された駆動および制御システムをさらに備える。述べられる補助デバイスは、自律的な形態をとることができ、吊上げデバイス上に配置することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に垂直方向に荷重を吊り上げるための巻上げケーブルを備えるブームが、傾斜可能に接続される力吸収ベースを備える吊上げデバイスであって、前記吊上げデバイスは、例えば、前記巻上げケーブルの破断に起因するなど、突然に荷重を喪失した場合に、前記ブームの転倒を抑制するための補助デバイスをさらに備え、前記補助デバイスは、前記吊上げデバイスの前記ベースに接続され、前記ブームの接触面と接触している、または転倒した場合には、前記ブームの前記接触面に接触するようになる接触面を提供し、かつ前記ブームが転倒した結果、前記接触面間の所定の力を超えたとき、前記ブームの動作を停止するように構成された駆動および制御システムをさらに備え、
前記駆動および制御システムは、前記ブームが、転倒中は、限定された加速だけが可能であるように、前記補助デバイスの前記接触面および前記ブームの前記接触面を小さな相互距離に保持するように構成される、
吊上げデバイス。
【請求項2】
前記補助デバイスの前記接触面は、前記補助デバイスを前記ブームに接続することにより、前記ブームの前記接触面と接触する、
請求項1に記載の吊上げデバイス。
【請求項3】
前記2つの接触面の間の前記相互距離は、最小距離と最大距離の間に保たれる、
請求項1に記載の吊上げデバイス。
【請求項4】
前記最小距離は、1mmと10mmの間になり、また前記最大距離は、5mmと30mmの間になる、
請求項3に記載の吊上げデバイス。
【請求項5】
前記2つの接触面の間の前記相互距離は一定に保たれる、
請求項3または請求項4に記載の吊上げデバイス。
【請求項6】
前記相互距離は、水平方向の前記相互距離である、
請求項3から5のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項7】
前記駆動および制御システムは、前記ブームが傾斜したとき、前記ブームの前記接触面の向かい側にあるように、前記補助デバイスの前記接触面を垂直方向に変位させるように構成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項8】
前記ブームは、2本の脚を有し、また前記補助デバイスは、前記ブームの対応する接触面と接触している2つの接触面を、または転倒が生じた場合、前記ブームの前記2つの対応する接触面と接触するようになる2つの接触面を提供する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項9】
前記ブームは、傾斜点の回りで傾斜可能であり、前記ブームの前記接触面は、前記傾斜点から前記ブーム長さの少なくとも2/5に、またより好ましくは、前記ブームの長さに沿って少なくとも中間に存在する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項10】
前記ベースは、前記吊上げデバイスのAフレームを備え、また前記補助デバイスは、前記吊上げデバイスの前記Aフレームに接続される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項11】
前記補助デバイスは、前記Aフレームの上側に接続される、
請求項10に記載の吊上げデバイス。
【請求項12】
前記補助デバイスは、前記駆動システムを用いて端部位置の間で水平方向に変位可能な支持ビームが取り付けられるフレームを備え、前記支持ビームの端面は、前記接触面を形成する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項13】
前記駆動システムは、ピニオンによって駆動される歯車ラックを備えるラック&ピニオンシステムを備える、
請求項1から12のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項14】
前記ブームが転倒した結果、所定のトルクを超えた場合、前記ピニオンは、前記ピニオンに対するブレーキの作用によって、前記ブームの動作を停止させる、
請求項13に記載の吊上げデバイス。
【請求項15】
前記制御システムは、前記2つの接触面の間の前記相互距離を測定するための測定手段を備える、
請求項1から14のいずれか一項に記載の吊上げデバイス。
【請求項16】
前記測定手段は、前記補助デバイスの前記接触面の位置に設けられる、請求項15に記載の吊上げデバイス。
【請求項17】
前記測定手段は、光学的な測定手段を備える、
請求項15または16に記載の吊上げデバイス。
【請求項18】
例えば、荷重がそこから吊るされている巻上げケーブルが破断したことに起因して、突然に前記荷重を喪失した場合、ブームの転倒を抑制するための補助デバイスであって、前記補助デバイスは、吊上げデバイスのベースに接続され、前記ブームの接触面と接触している、または転倒した場合には、前記ブームの接触面に接触するようになる接触面を提供し、かつ前記ブームが転倒した結果、前記接触面間の所定の力を超えたとき、前記ブームの動作を停止するように構成された駆動および制御システムをさらに備え、
前記駆動および制御システムは、前記ブームが、転倒中は、限定された加速だけが可能であるように、前記補助デバイスの前記接触面および前記ブームの前記接触面を小さな相互距離に保持するように構成される、
補助デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に垂直方向に、荷重を吊り上げるための巻上げケーブルを備えたブームが、傾斜可能に接続される力吸収ベースを備えた吊上げデバイスに関し、吊上げデバイスは、例えば、巻上げケーブルの破断に起因するなど、突然に荷重を喪失した場合、ブームの転倒を抑制するための補助デバイスをさらに備える。本発明は、同様に、突然に荷重を喪失した場合のブームの転倒を抑制するための補助デバイスに関する。
【0002】
本発明は、原則として、陸上(沿岸)と海上(沖合)の両方で、任意の対象物を吊り上げることに適用され得る。しかし、本発明の利点は、対象物を沖合で吊り上げるとき最も明らかになる。例えば、典型的な用途は、風力タービン用の基台を沖合で設置することに関する。
【背景技術】
【0003】
荷重を吊り上げるための吊上げデバイスは、概して、力吸収ベースを備え、例えば、いわゆるAフレームがその一部を形成し、それに対して、水平軸回りで傾斜可能なブームが接続される。ベースは、ブーム上に作用する力を、例えば船のデッキおよび船体などの基面に伝えるように構成される。ベースとブームの間の枢動接続は、ブームが、垂直方向に対して最小の角度で位置する最も上げた位置と、ブームが垂直方向に対して最大の角度で位置する最も下げた位置との間で、垂直平面内で、いわゆる引込みケーブルを用いて、ブームを傾斜させることができる。その場合、ブームの動作範囲は、これらの2つの位置の間に存在する。ブームに接続されるのは、荷重を吊り上げるために、荷重が取り付けられ得る巻上げケーブルであり、その巻上げケーブルは、実質的に垂直方向に延びる。
【0004】
荷重を吊り上げるとき、ブームが、突然後方に倒れて、最も上げられた位置を超えるように強制される可能性がある。このようなブームの転倒は、例えば、巻上げケーブルの破断に起因して、または荷重が突然に巻上げケーブルから外れた場合など、突然荷重を喪失した場合に生ずるおそれがある。荷重が吊り上げられたとき、荷重にかかる重力に対する力が吊上げデバイスに加わる。この力は、特に、巻上げケーブル、ブーム、および引込みケーブルに加えられる。2本のケーブルと比較して、ブームは比較的剛性があり、大きく変形することはない。しかし、巻上げケーブルおよび引込みケーブルには、弾性エネルギーが高まることになる。このような、いわゆる荷重の突然の喪失の場合、引込みケーブルに高まった弾性エネルギーの突然の解放に起因して、ブームが荷重から「放たれる」傾向がある。吊上げデバイスが船上に位置し、ブームが、例えば、右舷(SB)などの、横方向に突き出ている場合、平衡を回復するために、水のバラストを、反対側の左舷(PS)に置くことができる。その場合、突然に荷重を喪失した場合に、平衡が崩壊した場合、船は、荷重から離れて、この場合PS方向に傾き始めることになる。これは、ブームがベース回りで連動して傾き、いわばさらに上げられた結果になる。これは、転倒作用を強め、次いで、ブームが、その垂直の平衡点を越えて移動し、それ自体を破壊する可能性さえある。このような状況は、当然であるが非常に望ましくない。
【0005】
「転倒」という用語は、平衡の垂直点を越える、ブームの前述の動作に限定されないことに留意されたい。ブームが、このように「転倒する」ことがなく、それに代えて、ブームの突然の後方移動(荷重から離れる)に起因して、引込みケーブルが緩くなった場合であっても、引込みケーブルは、その後に、突然の力に伴って、再度、張力下に置かれる可能性がある。ブームも同様であるが、引込みケーブルは、このような突然の荷重により、過負荷状態になるおそれがある。この現象もまた、「転倒」として分類され、これも回避されなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、突然に荷重を喪失した場合に、ブームの転倒を抑制するための補助デバイス、および補助デバイスを備える吊上げデバイスを提供することである。こうすることは、転倒に関連する損害を回避する、または少なくともその危険を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の特徴を備える吊上げデバイスを提供することにより達成される。本発明の吊上げデバイスは、荷重を実質的に垂直方向に吊り上げるための巻上げケーブルを備えるブームが傾斜可能に接続される力吸収ベースを備え、また、例えば巻上げケーブルの破断に起因して突然に荷重を喪失した場合、ブームの転倒を抑制する補助デバイスをさらに備え、ここにおいて、補助デバイスは、吊上げデバイスのベースに接続され、ブームの接触面と接触している、または転倒した場合、ブームの接触面と接触するようになる接触面を提供し、またブームが転倒した結果、接触面間の所定の力を超えた場合、ブームの動作を停止する、またはブロックするように構成された駆動および制御システムをさらに備える。
【0008】
補助デバイスの接触面が、ブームの接触面と接触している実施形態では、ブームは、ブームの通常の動作中は、所定の最大力よりも低い力を補助デバイスに加えることになる。補助デバイスの接触面はその場合、ブームの動作と共に自由に変位可能である。転倒した場合、補助デバイスに加えられる力は、所定の最大力を超えることになる。駆動および制御システムは、その場合、確実に、接触面の動きが停止される、抑制される、または例えば、この目的に適したブロック手段によりブロックされるようにする。こうすることにより、ブームの転倒が阻止される。
【0009】
転倒した場合に補助デバイスの接触面をブームの接触面と接触させる実施形態において、ブームは、ブームの通常動作中は、補助デバイスに対して実質的に力を加えることはない。この実施形態では、ゼロであっても、その他の形で前述の実施形態とは異なる値を有することのできる所定の力を超えていないため、補助デバイスの接触面は、ブームの動作と共に自由に変位可能であり、ブームの動きに追従することになる。転倒した場合、ブームは、補助デバイスの接触面と接触することになる。補助デバイスに加えられる力は、その場合、所定の力を超え、それにより、駆動および制御システムは、確実に、接触面の動きを停止する、抑制する、または例えば、ブロック手段によりブロックされるようにする。こうすることにより、ブームの転倒が阻止される。
【0010】
吊上げデバイスの実施形態では、補助デバイスの接触面は、補助デバイスを、より具体的には、その動作部分を、好ましくは、この動作部分の外側端部において、ブームに対して接続することにより、ブームの接触面と接触状態になる。
【0011】
吊上げデバイスの別の実施形態では、駆動および制御システムは、転倒中に、ブームには限定された加速が可能であるに過ぎないように、わずかな相互距離で、補助デバイスの接触面およびブームの接触面を保持するように構成される。
【0012】
本発明の補助デバイスは、荷重の突然の喪失後、直ちに(または比較的短い時間内に)ブームを停止させることができる。こうすることは、ブームが運動エネルギーを加速する、または高め得ることを阻止する。補助デバイスは、例えば船の船体などのベースに接続された基面に対して、ブームがはね返ることにより生じる力を伝達できるように、ベースに接続される。
【0013】
吊上げデバイスは、陸上で、またさらに任意のタイプの船で使用することができ、ここにおいて、本発明の利点は、単胴形クレーン船における使用において特に明らかになる。補助デバイスは、最も上げた位置と、最も下げた位置の間に存在する(加速している)ブームを停止するようにさらに構成される。本発明によれば、最も上げた位置と、最も下げた位置の間に存在するすべての位置における(加速している)ブームを停止させる必要はない。例えば、最も上げた位置から最も下げた位置への半分など、この範囲の一部だけを提供することで十分であり得る。
【0014】
本発明の実施形態によれば、補助デバイスの接触面は、駆動および制御システムにより、ブームの接触面からわずかな相互距離に保持され、したがって、ブームは、転倒中に限定された程度に加速され得るに過ぎない。補助デバイスは、したがって、この実施形態では、ブームに接続されない。こうすることは、通常の使用中に、ブームのいずれの動きも(例えば、ねじれ、または曲げなど)、補助デバイスに伝達されることはないという利点を有する。補助デバイスは、このように、比較的軽量な形態にすることができる。
【0015】
わずかな相互距離は、制限範囲内で選択することができる。実際的な実施形態は、2つの接触面の間の相互距離が、最小距離と最大の距離の間に保たれる吊上げデバイスに関する。
【0016】
適切な実施形態においては、最小距離が、1mmと10mmの間になり、また最大距離が、5mmと30mmの間になる吊上げデバイスが提供される。ブームの通常使用において(すなわち、転倒が生じていない状況)、補助デバイスの接触面は、その場合、1mmと30mmの間に存在し得る距離に保持される。
【0017】
2つの接触面の間の相互距離が、駆動および制御システムによって、一定に保たれるように吊上げデバイスを特徴付けるとさらに有利である。例えば、ここで、ベクトル距離に基づいて制御することが可能である。吊上げデバイスのさらに向上させた実施形態は、相互距離を、水平方向に、好ましくは、それを限度内に保つ、さらにより好ましくは、それを一定に保って制御するように構成される駆動および制御システムを備える。
【0018】
本発明の適切な実施形態は、ブームが2本の脚を有し、また補助デバイスが、転倒した場合にブームの2つの対応する接触面と接触する2つの接触面を提供する吊上げデバイスを提供する。
【0019】
本発明の実施形態では、ブームが傾斜点の回りで傾斜可能であり、ブームの接触面が、傾斜点からのブームの長さの少なくとも2/5に、より好ましくは、長さに沿って少なくとも中間に存在するように吊上げデバイスを特徴付けることがさらに可能である。こうすることは、転倒した場合に、補助デバイス上に作用する力を制限することを可能にする。
【0020】
別の実施形態では、吊上げデバイスのベースはAフレームを備え、補助デバイスは、吊上げデバイスのAフレームに、好ましくは、Aフレームの上側に接続される。
【0021】
補助デバイスは、ブームに対する接触面を提供し、かつブームを、荷重から遠ざかる突然の後方動作を行う場合に停止できる限り、任意の適切な形態をとることができる。
【0022】
実際的な実施形態は、吊上げデバイスに関し、その場合、補助デバイスは、駆動システムを用いて、端部位置の間で水平方向に変位可能な支持ビームが取り付けられるフレームを備え、支持ビームの端面は接触面を形成する。
【0023】
実施形態では、特に適切な駆動システムは、ピニオンにより駆動される歯車ラックを備えるラック&ピニオンシステムを備える。歯車ラックの外側端部は、ブームとの接触面を提供する。ラック&ピニオンシステムは、転倒の場合、加速するブームにより補助デバイスに作用する力を吸収することができ、したがって、ブームの動きが抑制されるような形態をとる。
【0024】
適切な実施形態では、吊上げデバイスは、ブームが転倒した結果、所定の最大トルクを超えたとき、例えば、ピニオンに作用するブレーキなど、ブロック手段のアクションにより、ピニオンがブームの動作を停止させる特徴を有する。ピニオンは、例えば、電気モータなど、電気的な駆動によって駆動され得る。転倒したとき、駆動トルクが所定のトルク(所定の力に由来するもの)を超えた場合、電気駆動に対するブレーキが作動して、この駆動は停止され、かつブロックされる。適切なブレーキは、例えば、電磁石で離れて保持されるいくつかのプレートを備えることができる。ブレーキを活動化させると、電磁石をオフにし、それにより、ばねが、プレートを互いに対して「閉じる」ようにする。複数の選択肢が存在すること、および本発明は、この特有の実施形態に限定されないことは明らかであろう。
【0025】
ラック&ピニオンシステムは、それ自体知られており、例えば、ジャッキアッププラットフォームで、特に、このようなジャッキアッププラットフォームの脚を上方に、下方に動かすために使用される。ラック&ピニオンシステムは、比較的大きな力を伝達することができる。
【0026】
接触面の間の相互距離を自動的に調整できるために、吊上げデバイスは、実施形態において、2つの接触面の間の相互距離を測定するための測定手段を備える制御システムを備える。原則的に、この目的に適した任意の測定手段を適用することができる。測定手段は、光学的な測定手段であることが好ましい。
【0027】
実施形態では、測定手段は、補助デバイスの接触面の位置に設けられる。
【0028】
吊上げデバイスに設けられる補助デバイスは、吊上げデバイスと一体化することができる。しかし、本発明の別の態様によれば、補助デバイスは、自律的に提供され、吊上げデバイス上に配置することができる。突然に荷重を喪失した場合に、ブームの転倒を抑制するためのこのような補助デバイスは、吊上げデバイスのベースに接続することができ、転倒した場合にブームの接触面と接触する接触面を提供し、かつ補助デバイスの接触面およびブームの接触面を、転倒中にブームが限定された加速だけが可能であるようにわずかな相互距離に保持するように構成された駆動および制御システムをさらに備える。
【0029】
補助デバイスの可能な実施形態は、すでに上記で詳細に述べられており、この記述への参照は、本明細書の以下のもので十分であろう。
【0030】
例えば、風力タービンの構成要素に対してなど、補助デバイスが、海上で荷重を吊り上げるための吊上げデバイスと組み合わせて適用される場合、作業は、(浮いている)船から、またはより安定性を提供するジャッキアッププラットフォームから行われることが好ましい。
【0031】
さらなる実施形態、ならびにその特徴およびさらなる利点は、添付図を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態による吊上げデバイスの等角側面図である。
図2図1の吊上げデバイスの細部の等角背面図である。
図3】本発明の実施形態による吊上げデバイスが配置された船の概略的な上面図である。
図4A】異なる傾斜角における、本発明の実施形態による補助デバイスを備えた吊上げデバイスの側面図である。
図4B】異なる傾斜角における、本発明の実施形態による補助デバイスを備えた吊上げデバイスの側面図である。
図4C】異なる傾斜角における、本発明の実施形態による補助デバイスを備えた吊上げデバイスの側面図である。
図5A図4Aの側面図の細部である。
図5B図4Bの側面図の細部である。
図5C図4Cの側面図の細部である。
図6】本発明の実施形態による補助デバイスの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
同じまたは同様の構成要素は、同じ参照数字を用いて図に示されている。
【0034】
図1は、本発明による吊上げデバイス1を示す。この実施形態は、いくつかある中で特に、それ自体、底部フレーム11およびAフレーム12からなる力吸収ベースからなる。ブーム10は、力吸収ベース上に傾斜可能に配置される。引込みケーブル13は、荷重を実質的に垂直方向に吊り上げるために、底部フレーム11の概略の高さから、Aフレーム12の上方外側端部を越えて、ブーム10の少なくとも上部外側端部14へとさらに配置される。引込みケーブル13はまた、他の経路に沿っても張力を加えることができる。吊上げデバイス1はまた、任意選択で、回転可能であるが、それは、底部フレーム11が回転可能な底部フレームであるため、または底部フレーム11は、他の回転可能な要素上に配置されるためである。
【0035】
このような吊上げデバイスは、転倒を受けやすく、それは、突然に荷重を喪失した場合に生ずる。これは、例えば、巻上げケーブルが破断したとき、巻上げケーブルを荷重に接続するフックもしくは他の接続手段が破損したとき、または荷重それ自体が、部分的に、もしくは全体的に崩れたときに生ずる可能性がある。
【0036】
転倒は、ブーム10に高まった張力が解放された結果生ずるブーム10の何らかの望ましくない動作を含む。重大な転倒の場合、ブーム10は、完全に直立位置で終わり、かつ残っている運動量が、この点を越えてブーム10の全体または一部を傾斜させ、その後に、この直立点を越えて傾斜したブーム10の一部は、後方に倒れることになる危険がある。これはまた、完全な転倒と呼ばれる。重大さは少ないが、そうではあっても危険を含む転倒の場合、ブーム10が、部分的にだけ直立し、それにより、引込みケーブル13が緩むことになる危険がある。ブーム10が、次いで、後方に、または前に倒れたとき、突然の力で、引込みケーブル13に張力が戻ることになる。これはまた、スナッチロード(snatch load)とも呼ばれる。完全な転倒と同様に、スナッチロードは、損害の大きい結果を有する。
【0037】
図1は、したがって、吊上げデバイス1が、補助デバイス3を備えることをさらに示しており、それは、この実施形態では、Aフレーム12の上方外側端部に配置される。それはまた、補助デバイス3を、Aフレーム12の下方に、または力吸収ベースの異なる部分に取り付けることも可能である。補助デバイス3は、いくつかある中で特に、フレーム31からなり、その上に、ラック&ピニオンシステム32と方向付けデバイス34とが配置される。この実施形態では、ラック&ピニオンシステム32と方向付けデバイス34とは、駆動および制御システムを形成し、また他の実施形態では、駆動および制御システムはまた、異なる構成要素から構成することができる。支持ビーム30が、各ラック&ピニオンシステム32に配置される。ブーム10に向けられている支持ビーム30の外側端部は、接触面33を提供する。支持ビーム30は、駆動および制御システムにより、この実施形態では、ラック&ピニオンシステム32により、端部位置の間で、実質的に水平方向に変位させることができる。
【0038】
接触面33'の対応する数をブーム10上で指定することができ、これは、接触面33が、突然に荷重を喪失した場合に、ブーム10と接触する位置である。
【0039】
ブーム10が転倒中に運動量を取得しないように、すなわち、ブーム10が過度に加速しないようにするために、接触面33、33'の間の距離は小さく保たれる。この実施形態では、駆動システムは接触面33を変位させることができる。
【0040】
接触面33、33'が互いに接触すると直ちに、ブーム10の運動量の一部は、補助デバイス3に吸収される。この部分は、接触面33'の下に存在するブーム10の部分に比例する。接触面33により吸収されないブーム10の運動量の残りの部分は、ブーム10の完全性を歪ませる。残りの運動量が、補助デバイス3にかかわらずブーム10の完全性に対して過度のものである場合、ブーム10は、さらに転倒する可能性がある。したがって、接触面33'は、ブーム10上で、可能な限り上方に高く位置することが好ましい。したがって、特定の実施形態では、ブーム10上のこれらの接触面は、ブーム10の高さに沿って、ブーム10の少なくとも2/5に、好ましくは、少なくとも中間に位置する。
【0041】
方向付けデバイス34は、フレーム31から、ブーム10に対する支持ビーム30の方向付けの角度を制御する。このように支持ビーム30を方向付けることは、接触面33'を、ブーム10の傾斜角とは独立させることができ、それは、ブーム10の接触面を補強することが望ましい場合、ブーム10のわずかな部分だけを補強する必要があるという利点を有する。この方法において、ブーム10に対して接触面33を方向付けるさらなる利点は、接触面33、33'が互いに接触したとき、この面は、直ちに可能な限り大きくなること、または言い換えると、接触面33、33'は、可能な限り最も前面を向いて互いに接触することである。支持ビーム30が、ある角度でブーム10と接触する場合、ブーム10の運動量の吸収が劣り、かつ/またはブーム10に望ましくない損傷を与える可能性があるため、こうすることが望ましい。
【0042】
補助デバイス3の示された実施形態は、2つの接触面33を備える。1つだけ、または3つ以上の接触面を提供することも可能である。望ましい接触面の数は、例えば、ブーム10の脚の数に基づいて決定される。示された実施形態では、ブーム10は2本有しているが、1本だけの脚からなるブーム10も可能である。
【0043】
示された実施形態では、ベースは、Aフレーム12を備える。図は、2本のわずかに傾斜したポスト、およびポストを接続するいくつかのビームを示す。Aフレームは、任意選択で、Aフレーム12の上部から下に、さらに後方に延びる2本の後脚をさらに備える。この機能を満たすさらなるフレーム形態もまた、提供され得る。
【0044】
図2は、吊上げデバイス1の細部を示し、再度、ブーム10、Aフレーム12、および引込みケーブル13を示す。この図は、フレーム31の構成をさらに示し、この場合、その上に2本の支持ビーム30が載置される。各支持ビームに対して、フレーム31は、水平脚31Aおよび斜行脚31Bを備え、ここにおいて、これらの脚は、突き出ている外側端部31Dにおいて、また反対側にある外側端部31C、31Eにおいて、互いに取り付けられ、共にAフレーム12に接続される。
【0045】
図1および図2は共に、吊上げデバイス1のこの実施形態が、その第1の側面で荷重を吊り上げるのに適していることを示している。この実施形態において、ブーム10は、吊上げデバイス1のこの第1の側面に向けて傾斜可能であるようにベース上に配置される。ブーム10から分かるように、それが傾斜できる方向の側面はまた、第1の側面であり、ブーム10は、それに向けて、吊り上げるように構成される。補助デバイス3が設けられていない場合、ブーム10は、荷重が突然解放されたとき、傾斜できる方向とは反対の方向に加速されることになる。
【0046】
この実施形態では、補助デバイス3は、したがって、第1の側面とは反対に位置する、ブーム10の第2の側面上に配置されることが好ましく、補助デバイス3、特に接触面33は、突然に荷重を喪失した場合に、ブーム10が移動する経路に存在する。
【0047】
図3に、本発明による吊上げデバイス1を備える船2の概略的な上面図を示す。この実施形態では、吊上げデバイス1はまた、回転することができる。この実施形態では、ブーム10は、したがって、ブーム10が可能な限り直立して位置する内側半径40から、ブーム10が可能な限り遠く前方に傾斜する外側半径41に延びる領域における荷重を吊り上げるように構成される。補助デバイス3は、危険の低い領域42内で、この荷重の吊り上げ中に、突然の荷重の喪失におけるブーム10の転倒を回避できるようにする。上記で示したように、ブーム10を、補助デバイス3が転倒を阻止できる点を越えて傾斜するように構成することも可能であり、その領域43では危険は従来通りのままである。
【0048】
図4Aから図4Cは、図1および図2を参照して上記で述べられた吊上げデバイス1の側面図を示す。特に、図4Aから図4Cは、再度、ブーム10、Aフレーム12、および補助デバイス3を示しており、補助デバイス3のこの実施形態は、再度、フレーム31、駆動および制御システム32、34、および接触面33を備える支持ビーム30からなる。図5Aから図5Cは、これらの側面図の細部を示し、同じ文字指定を有する図は、互いに対応する。
【0049】
示された側面図の中で、ブーム10は、図4Aにおいて、最大のアウトリーチを有する。この場合、補助デバイス3は、ブーム10が、この第1の傾斜角を超えて傾斜したとき、接触面間の距離を小さく保つことがもはやできない。補助デバイス3が、ブーム10の転倒を抑制できる有効性はしたがって、ブーム10がこの角度を超えてどれだけ遠く傾くかに比例して減少することになる。したがって、第2の傾斜角を指定することができるが、それは、ブーム10が、それを超えて傾斜した場合に、補助デバイス3は、ブームが突然に荷重の喪失を受けた場合にブーム10の転倒をもはや阻止できない場合である。
【0050】
図5Aは、接触面33と、対向するブーム10の接触面の間の距離を小さく保つために、支持ビーム30が極限の位置まで延ばされることをより詳細に示す。この場合、方向付けデバイス34は、支持ビーム30を最大の可能な角度で下方に向けている。
【0051】
図4Bでは、ブーム10は、図4Aよりも小さいアウトリーチを有する。好ましい実施形態では、2つの接触面の間の相互距離は、ブーム10が調整されている間は常に、一定に保たれる。例えば、ブーム10が図4Aで示される傾斜角から図4Bで示されるより小さい傾斜角へと調整されるときである。
【0052】
これを実現するために、吊上げデバイス1は、2つの接触面の間の相互距離を測定するための測定手段を備えることができる。このような測定手段は、例えば、光学的な測定手段を備えることができ、それは、特に、フレーム31に、または支持ビーム30に配置することができる。フレーム31からは、ブーム10の絶対傾斜角を測定することができ、またそれは、接触面間の相互距離を小さく保つために、支持ビーム30はどれだけ遠くに突き出る必要があるかを推定することが可能である。支持ビーム30からは、ビーム10と測定手段の間の相対距離を測定することができる。これらの測定手段が、固定的に支持ビーム30に配置される場合、接触面33とブーム10の間の距離も導くことができ、したがって、測定手段により制御される駆動および制御システム32が支持ビーム30を変位させることにより、距離を一定に保つことができる。
【0053】
図5Bは、接触面33と、対向するブーム10の接触面との間の距離を小さく保つために、支持ビーム30が、ブーム10と共に変位されていることをより詳細に示す。ブーム10に対して支持ビーム30を方向付ける角度は、方向付けデバイス34により低減されている。
【0054】
示された側面図の中で、図4Cにおいて、ブーム10は、最小のアウトリーチを有する。これらの実施形態のそれぞれにおいて、2つの接触面の間の相互距離が、最小距離と最大距離の間に保たれる。最小距離は、例えば、1mmと5mmの間になり、最大距離は、例えば、5mmと10mmの間になる。この相互距離は、主として、水平方向における相互距離に関する。
【0055】
図5Cは、接触面33と、対向するブーム10の接触面の間の距離を小さく保つために、支持ビーム30が、再度、駆動および制御システム32、34によりブーム10と共に変位されていることをより詳細に示す。ブーム10に対して支持ビーム30を方向付ける角度もまた低減されており、支持ビーム30は、この位置において、実質的に水平である。
【0056】
図6は、本発明による補助デバイス3の実施形態の横断面図を示す。再度、吊上げデバイス1は、ブーム10と、力吸収ベースの一部としてのAフレーム12と、補助デバイス3とを備える。この実施形態では、ラック&ピニオンシステム32は、ピニオン37と、支持ビーム30上に配置された歯車ラック36とからなる。ピニオン37が回転したとき、支持ビーム30は、歯車ラック36を介して望ましい方向に変位される。上記で述べたように、これは、接触面33、33'の間の距離を小さく保つために行われる。
【0057】
しかし、転倒した場合、支持ビーム30が、力吸収ベースに接続されたフレーム31に対して動かない、またはほとんど動かないことが望ましい。好ましい実施形態では、ラック&ピニオンシステム32は、したがって、転倒した場合、水平脚31Aに対して支持ビーム30のどんな動きも抑制するブロック手段を備える。この実施形態において、水平脚31Aは、斜行脚31Bよりも重い形態をとり、したがって、接触面33、33'が接触したときに、水平脚31Aの圧壊する危険が最小化されることも理解されたい。
【0058】
ブロック手段は、例えば、支持ビーム30がもはや動かされていない、すなわち、ブーム10が一定の傾斜角を有するとき、直ちに支持ビーム30の動きをブロックすることができる。この場合、支持ビーム30は、予防的にブロックされ、実際に、転倒した場合、より高い頻度でブロックされることになる。しかし、ブーム10の傾斜角は、しばしば一定ではなく、それはまたブーム10が吊上げデバイス1により傾斜されること以外の理由による。例えば、風の力によって、ブーム10がわずかに傾斜またはねじれる場合、接触面33、33'の間の距離を小さく保つことがなお望ましい。したがって、支持ビーム30は、高い頻度で調整され、その場合、それにより、支持ビーム30は、同じ頻度でブロックされないことが分かることになる。したがって、好ましい実施形態では、ラック&ピニオンシステム32は、外部の力が、例えば、ブーム10からの方向に、支持ビーム30に加えられているかどうかを検出して、支持ビーム30をブロックすべくブロックデバイスを制御するように構成された力検出手段を備える。
【符号の説明】
【0059】
1 吊上げデバイス
2 船
3 補助デバイス
10 ブーム
11 底部フレーム
12 Aフレーム
13 引込みケーブル
14 上部外側端部
30 支持ビーム
31 フレーム
31A 水平脚
31B 斜行脚
31C 外側端部
31D 外側端部
31E 外側端部
32 ラック&ピニオンシステム、駆動および制御システム
33 接触面
33' 接触面
34 方向付けデバイス
36 歯車ラック
37 ピニオン
40 内側半径
41 外側半径
42 危険の低い領域
43 領域
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】