(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】消毒に有用な新規な方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20230901BHJP
A61L 2/22 20060101ALI20230901BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20230901BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230901BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230901BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230901BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A01N59/00 Z
A61L2/22
A01N25/06
A01P3/00
A01P1/00
A61L9/01 F
A61L9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512149
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 SE2021050800
(87)【国際公開番号】W WO2022039652
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514040848
【氏名又は名称】ライフクリーン・インターナショナル・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レナーネス、ボー
(72)【発明者】
【氏名】ミリンガー、カール-グスタフ
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058JJ01
4C058JJ28
4C058JJ30
4C180AA07
4C180CB01
4C180CB08
4C180EA57X
4C180EB14Y
4C180EB15Y
4C180GG06
4C180GG09
4C180LL20
4C180MM07
4H011AA02
4H011AA03
4H011AA04
4H011BA05
4H011BB18
4H011BC04
4H011DA21
4H011DD05
4H011DE15
(57)【要約】
極性を有するか又は帯電した、二酸化塩素を含むエアロゾル化組成物で、病原体を除去する方法が開示される。前記エアロゾル化組成物は、帯電した界面活性剤を少なくとも1種含む酸性二酸化塩素組成物から生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原性微生物を除去するための、1~120μmのサイズを有する液滴のエアロゾル組成物であって、前記液滴は極性を有する及び/又は帯電しており、前記組成物は、10~2000ppmの二酸化塩素(CD)、少なくとも1種の帯電した界面活性剤、及び酸を含み、任意で他の添加剤(excipients)を含む、pH7.5未満の水性組成物からエアロゾル化されたものである、エアロゾル組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選択される炭化水素イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭化水素イオン性界面活性剤が、アミンオキシド、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アリールスルホネート及びそれらの塩の少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が少なくとも1種のアミンオキシドであり、好ましくは炭素原子を6~18個有するアルキル基を有する少なくとも1種のアミンオキシドであり、より好ましくは、前記界面活性剤は炭素原子を6~18個有するアルキル基を有するアミンオキシドを2種以上含み、ここで少なくとも2種のアミンオキシドは有しているアルキル基の炭化水素鎖長の差が炭素原子4個分以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、2%(v/v)未満の量で、好ましくは0.1~2%(v/v)の量で存在する、請求項3又は請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記pHが1~5であり、前記CD量が100~500ppmであり、前記界面活性剤が炭素原子を8個有するアミンオキシドと炭素原子を12個有するアミンオキシドとの組み合わせであり、好ましくは、前記アミンオキシドはオクチルジメチルアミンオキシド及びラウリルジメチルアミンオキシドである、請求項4又は請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記pHが1.8~2.0であり、前記CD量が300ppmであり、前記界面活性剤が0.1~0.2%(v/v)の量で存在する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記液滴が静電的に帯電している、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記液滴が正に帯電している、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記液滴が、水性組成物1ml当たり1ミリクーロン以上、好ましくは水性組成物1ml当たり1~10の電荷を有する、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
病原性微生物を除去する方法であって:
(i)有効量の二酸化塩素(CD)と、酸性pHかつCD存在下において機能できる(operable)少なくとも1種の帯電した界面活性剤とを含み、任意で(optionally)1種以上の適切な添加剤(excipient)を含む、7.5未満のpHを有するエアロゾル化可能な水性組成物を準備すること;
(ii)1~120μmの液滴サイズを有し、極性を有する及び/又は帯電したエアロゾルを形成すること;及び
(iii)病原体除去の標的とされる領域に前記エアロゾルを分布させること
を含む方法。
【請求項12】
前記エアロゾルを静電的に帯電させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記液滴が、正電荷を得る、好ましくはエアロゾル化可能な組成物1ml当たり1~10ミリクーロンの正電荷を得る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記病原性微生物が、空中浮遊病原体、好ましくは呼吸器ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
居住標的領域(populated target regions)に0.1ppm以下のCDを導入する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のエアロゾル組成物を形成することを含む、請求項11~請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、増幅された抗菌効果を有する、標的領域を消毒(disinfection)する二酸化塩素含有エアロゾル化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感染者の呼吸器系から吐出又は放出されるマイクロメートルサイズの液滴中に生存可能な病原性ウイルスが存在し、吸入により感染を拡げるのに十分な時間、空気中、特に限られた空間中を、当該液滴が循環し得ることは、周知の事実である。このような問題を解決するために、特開2002-272827号公報には、浮遊ウイルス、例えば空調システムから到着するウイルスからの感染を防止するために二酸化塩素ガスを使用することが記載されている。
【0003】
二酸化塩素は確立された消毒剤であり、水浄化、水処理、及び工業的衛生化のために広く使用されている。それは、不安定な揮発性化合物であり、多くの態様においてその適用性を制限する強力な酸化剤であることが知られている。また、これは高濃度では非常に刺激性が強いため、アメリカ合衆国の労働安全衛生局(OSHA)のような規制当局では、大気中における8時間の許容曝露限度を0.1ppm(0.28mg/m3)に制限している。
【0004】
国際公開第03/063917号は、二酸化塩素を含む消毒溶液の静電的に帯電したエアロゾルを用いて表面を消毒することを記載しており、炭疽菌などの胞子形成微生物の除去における有効性が示唆されている。しかしながら、消毒溶液の特定の又は完全に概説された組成は開示されておらず、消毒の結果は実証されていない。
【0005】
国際公開第2014/129956号は、界面活性剤の相補的系によってサポートされた、表面上の胞子形成細菌の除去において改善された効力を有する、100~2000ppmの二酸化塩素を含有する酸性消毒組成物を記載している。
【0006】
欧州特許第1955719号公報(B1)は、空間内の呼吸器ウイルス(respiratory virus)を不活性化し、呼吸器ウイルスに感染した感染生体を処置するための、0.0001~0.1ppmの濃度の二酸化塩素ガスの使用を記載している。これらの目的のために、試験動物を曝露させて0.1ppm以下のレベルの曝露の潜在的な安全性を確認するための、低レベル二酸化塩素ガス吸入曝露チャンバーが、A AkamatsuらによりJournal of Occupational Medicine and Toxicology, 2012, 7:2, page 1-8において概説された。二酸化塩素の抗ウイルス活性は例えば、K Kaly-Kullai et al Physiology International 2020, 107 1, 1-11、及びS Andreu et al. Viruses, 2021, 13(3). 531ffを参照されたい。
【0007】
様々なグレードの呼吸器系におけるウイルス感染に罹患している対象を処置するために、治療において潜在的に有用である人口の多い空間においても、空気からのウイルスを含む病原性微生物を安全かつ効果的に除去するための、改善された二酸化塩素系組成物及び送達形成が、依然として必要とされている。
【0008】
病院、ケアセンター、及び救急車両のより小さな部屋を消毒する従来の方法は、気体状又は拡散物状の過酸化水素などの過酸化物を使用することである。しかしながら、これらの方法は不快な臭気が発生する可能性があり、敏感な電子機器が損傷を受ける可能性があるという事実から、いくつかの一般的な欠点を有する。したがって、二酸化塩素に基づく代替的な有効な消毒方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一般的な目的は、二酸化塩素を用いて広範囲の病原体を除去する、部屋及び他の空間の消毒方法を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、選択された部屋又は空間の広範囲の病原体の有効な消毒のための量の二酸化塩素を含むか、又は治療に適しかつ有効な量の二酸化塩素を含む、エアロゾル組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、選択された空間におけるその分布をサポートするための極性又は電荷を有するエアロゾル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般的な態様では、本発明は、(a)有効量の二酸化塩素(CD)と、酸性pHかつCD存在下において機能できる少なくとも1種の帯電した界面活性剤とを含み、任意で(optionally)1種以上の適切な添加剤(excipient)を含む、生理学的に許容される7.5未満のpHを有するエアロゾル化可能な水性組成物を準備すること、(b)1~120μmの液滴サイズを有する前記組成物から極性を有する又は帯電したエアロゾルを形成すること、及び(c)病原体除去の標的とされる領域に前記エアロゾル組成物を分布させることを含む、病原性微生物を除去する方法に関する。
【0013】
この一般的な態様における病原性微生物は、典型的には、Mycobacterium tuberculosisやBordetella pertussisなどの細菌、アスペルギルスなどの菌類、ウイルス、例えばインフルエンザウイルスやコロナウイルスなどのタイプ、ライノウイルス及びカリシウイルスなどのような呼吸器ウイルスである。本方法の一実施形態では、病原性微生物は呼吸器ウイルスであり、循環エアロゾル小滴中に存在し、空気循環が制限されている部屋内の感染対象からの表面上に分布している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
機能できる(operable)界面活性剤という用語は、界面活性剤がCDの存在下及び帯電エアロゾル液滴中で、所与のpHにおける湿潤化(wetting)及び/又は可溶化(solubilization)などの界面活性剤能力(surfactant capacity)を有し、したがって、病原体除去に寄与するか又は病原体除去を補助することができることを意味する。
【0015】
病原体除去又は消毒の標的領域(target region)という用語は、本発明の文脈において、任意の閉鎖空間、部屋又は区画を意味し、ここで、生存可能な病原体は例えば、吐出又は排出されたエアロゾル様液滴中にあって、循環している及び/又は表面上に存在している。
【0016】
病原体除去の標的とされる領域に分布する(distribute)という用語は、記載されるエアロゾル化組成物が能動的又は受動的に領域に分布させられることを意味し、これは、従来の静電噴霧装置、ネブライザー又は他の手段を含み得る。
【0017】
好ましくは、本方法によれば、液滴は正に帯電され、好ましくはエアロゾル化可能な組成物1ml当たり1ミリクーロン以上、例えば、エアロゾル化可能な組成物1ml当たり1~10ミリクーロンのレベルに帯電される。
【0018】
ある態様では、本方法は、CDの一般的な衛生規準に従うために、居住標的領域(populated target regions)で実施されてCDを0.1ppm(0.3mg/m3)以下導入するように調整される。
【0019】
他の態様では、本方法は、曝露時間を変化させて短時間で効果的な消毒を達成するために、CDを実質的により高いレベルにして実施することができる。エアロゾル化可能な組成物について規定されたCD濃度範囲内である10~2000ppmにおいて、必要に応じて、所望の消毒結果を得るためにいくつかのレベルの有効性に達しうる。
【0020】
ある態様では、本方法は、区画又は部屋の消毒手順として実施され、20~60μm、好ましくは約40μmの平均液滴サイズを有し、200~600ppmの二酸化塩素を含み、pHが1~3、好ましくは1.8であり、帯電した界面活性剤を1種又は複数種、好ましくは少なくとも2種含む水性エアロゾル化可能組成物から生成されたエアロゾルが導入される。
【0021】
別の一般的な態様では、本発明は、病原性微生物を除去するための、1~120μmのサイズを有する液滴のエアロゾル組成物であって、液滴が極性を有する及び/又は帯電しており、前記組成物が、10~2000ppmの二酸化塩素(CD);少なくとも1種の帯電した界面活性剤;及び酸を含み、任意で他の添加剤を含む、pH7未満の酸性水性組成物からエアロゾル化されたものである、エアロゾル組成物に関する。
【0022】
好ましくはこの一般的な態様によれば、少なくとも1種の界面活性剤はカチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選択される炭化水素イオン性界面活性剤である。
【0023】
炭化水素イオン性界面活性剤は、アミンオキシド、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アリールスルホネート及びそれらの塩の少なくとも1つから選択することができる。界面活性剤が少なくとも1つのアミンオキシドである場合、好ましくはそのアルキル基は炭素原子を6~18個有する。
【0024】
ある態様では、界面活性剤は、炭素原子を6~18個有するアルキル基を有するアミンオキシドを2種以上含み、ここで少なくとも2種のアミンオキシドは有しているアルキル基の炭化水素鎖長の差が炭素原子4個分以上である。
【0025】
界面活性剤が少なくとも1つのアミンオキシドである場合、界面活性剤は、好ましくは2%(v/v)未満の量で、好ましくは0.1~2%(v/v)の量で存在する。
【0026】
エアロゾル化可能な酸性水性組成物の特定の実施形態では、pHは1~5であり、CD量は100~500ppmであり、界面活性剤は炭素鎖の長さが異なる複数種のアミンオキシドの組み合わせ、好ましくは炭素原子を8個有するアミンオキシド1種と炭素原子を12個有するアミンオキシドとの組み合わせであり、好ましくは前記複数種のアミンオキシドはオクチルジメチルアミンオキシド及びラウリルジメチルアミンオキシドである。特に好ましい態様において、pHは1.8~2.0であり、CDの量は名目上300ppmであり、界面活性剤は0.1~0.2%(v/v)の量で存在する。
【0027】
前記のエアロゾル液滴は、静電的に帯電していることが好ましく、静電的に正に帯電していることがより好ましい。
【0028】
好ましくは、液滴は、水性組成物1ml当たり1ミリクーロン以上、より適切には水性組成物1ml当たり1~10ミリクーロンの電荷を有する。
【0029】
本発明による方法及びエアロゾル組成物について、消毒用途における例を示すが、治療的に有効な許容可能なレジメンで投与される場合には、例えばARDS(成人呼吸窮迫症候群)のような、重篤な感染呼吸器病原体から生じる感染及び合併症を治療する、欧州特許第1955719号に概説される治療用途でも有用であると考えられる。したがって、本発明は、消毒用途及び治療用途の両方を包含範囲とすること(coverage)を請求するものとみなされるべきである。
【実施例】
【0030】
実施例1
LifeClean(登録商標)(LifeClean International AB社製、スウェーデン、Uddevalla)は、広範囲の細菌、ウィルス、及び真菌に対する表面消毒作用が実証されている市販の二酸化塩素製剤である。https://www.lifeclean.se/media/203776/lifeclean-microbiological-efficacy-summary-20200416.pdf。
【0031】
LifeClean(登録商標)(LC)はpH約1.8の酸性組成物中に約300ppmの二酸化塩素(CD)を含み、カチオン性界面活性剤であるオクチルジメチルアミンオキシド及びラウリルジメチルアミンオキシドの系を含む。LCの界面活性剤系は選択された有効pHでイオン性のままであり、二酸化塩素に耐性であり、相補的な湿潤化・可溶化効果を示すように選択されている。
【0032】
本実験は、閉鎖された潜在的汚染環境における病原体を除去するためのLCの有効性を、気体状二酸化塩素を含む従来の二酸化塩素製剤と比較して評価し、それによって本発明の有利な実施形態を評価するために実施された。
【0033】
この目的のために、97リットルの水槽という閉じられた空間で細菌適用を行った。発光細菌(Aliivibrio fischeri)を、製品LumoStixTMを用いて得て、説明書に従って緩衝液と混合し、水槽内の所定の位置に設置するための吸収パッド上に配置した。以下の実験のために、ルミノメーターKikkoman PD30型を用いて発光を測定した。この装置は、40~110マイクロメートルの粒径を有し静電的に正に帯電したエアロゾル及び非帯電エアロゾルの両方を生成することができる噴霧スプレー装置である、Victory Ecostatic型を備えていた。
【0034】
実験のために、以下の薬剤を試験した。
・LC…水槽内のプレート上に分配された18mlのLifeClean製品
・LCa…非静電スプレー/エアロゾルとして適用されるLifeClean製品
・LCa+…静電スプレー/エアロゾルとして適用されるLifeClean製品
・Xa…非静電スプレー/エアロゾルとして適用される二酸化塩素約300ppmのpH中性純水溶液
・Xa+…静電スプレー/エアロゾルとして適用される二酸化塩素約300ppmのpH中性純水溶液
【0035】
全ての実験において、前記ルミノメーターを用いた相対測定で、細菌Aliivibrio fischeriの発光を、二酸化塩素曝露の直前の発光と比較した。最初の実験(試験1~2)では、緩衝液を含むLumoStixTM装置の安定性を試験し、効果をLC単独と比較した。緩衝液と細菌は、LumoStixTMの使用説明書に従って混合し、発光の低下を認めた。これらの試験では、細菌をLumoStixTM吸収パッドに塗布した後、細菌を消毒剤(ClO2)に曝露した。試験1では、18mlのLCをプレート上の水槽に入れた。この設定は、試験対象物のみにClO2ガスを適用することに類似している。エアロゾルを使用しない、且つ/又は追加の製品製剤添加剤を使用しない。これは、LCaを生成する噴霧装置を用いた10秒間の吹き付けに相当する。細菌LumoStixTM吸収パッドを閉鎖水槽に30秒間曝露した。これらの試験の目的は、さらなる評価のための可能性のある利点をチェックすることであった。試験4では、LCaをLCa+と比較した。細菌に対する効果は劇的であり、吹き付け時間は5秒に短縮され、インキュベーションは15秒であった。試験5は試験4のコピーであったが、薬剤はLC/LCa/LCa+に代えてXa/Xa+であった。
【0036】
以下の実験を行った。
試験1は、LumoStixTM装置がLC試験に適しているかどうかの評価、及びLCa対LCの比較であった。試験2は、細菌緩衝液の安定性をチェックするために実施した。試験3は、LCa対LCの性能の比較であった。試験4は、LCa+対LCaの性能の比較であった。試験5は、性能Xa対Xa+の比較であった。
【0037】
試験1からの結果を以下の表1に示し、LCと比較した18mlのLCaのより良好な効果を示している。
【0038】
以下の表2は試験4からの結果を示し、3つの異なる曝露におけるLCaの曝露からの細菌生存に対する効果を実証している。
【0039】
以下の表3は試験4からの結果を示し、3つの異なる曝露におけるLCa+の曝露からの細菌生存に対する効果を実証している。表2及び表3を比較すると、LCa+がLCaよりも本試験モデルにおいて細菌を除去するのにより有効であることが明らかである。
【0040】
以下の表4及び表5は試験5からの結果を示し、それぞれXa及びXa+の効果を実証している。表1及び表3の結果と比較すると、LCa及びLCa+が本試験モデルにおいてXa/Xa+よりも有効であることが明らかである。
【0041】
結論として、試験(1~2)から、緩衝液は室温(約1時間)である必要があり、測定はいかなる二酸化塩素曝露でも曝露の約3分後に行われるべきであることが見出された。LCaは、LCよりも顕著な効果を有することも示された(表1参照)。細菌は二酸化塩素に対して適切に感受性であり、したがって、LumoStixTMは、以下の試験3~5に適した系である。
【0042】
試験3~5を示す表2~表5から、実験期間中、LCと比較してLCaの方が有効であると結論付けることができる(試験3)。試験4では、LCa+はLCaよりも1.7~1.8倍有効であった。この効果は、添加剤LifeClean(登録商標)を含まないXa対Xa+を比較する試験5では認められなかった。
【0043】
細菌の発光の低減として測定される生存率は、LCaをLCと比較して用いることにより、より高いことが示されている。この効果は、LCの静電的帯電、すなわちLCa+の生成によって、増強された。純粋なClO2(Xa+)を用いると、静電的帯電に対する効果を示すことはできなかった。また、発光はLCa及びLCa+を用いた試験ではさらに低下したが、LC及びXa/Xa+を用いた試験では低下しなかったことも認められた。
【0044】
要約すると、少なくとも1種の帯電表面活性成分を含む二酸化塩素組成物をベースとした本発明による方法及びエアロゾル組成物は、微生物の除去において改善された効力を有する。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
実施例2
この実施例は、緊急車両の内部に代表される標的空間内の病原体を除去する本発明の方法及び組成物の有効性を実証する。
【0051】
大腸菌K12(1.5cm培養、Heraco)をNaCl中に懸濁し、10μlの従来の針で、ウマ血液を含む寒天プレートに3回移植し、寒天プレートを1/3回転させながら、従来のジグザグパターンで分布させた。このように調製した寒天プレートを1時間馴化し、24時間インキュベートした。4枚のプレートを対照として保持し、7枚を緊急車両の区画内の異なる部分に配置した。
【0052】
二酸化塩素約300ppmを含むLifeClean(登録商標)(LC)を、実施例1のネブライザーであるVictory Ecostaticを用いて、体積8m3の緊急車両の車室に導入し、40ミクロンノズルを用いてLCを3.4オンス/分又は97ml/分提供した。ネブライザーを30秒の休憩間隔で1分間ずつ6回操作し、続いて、3分間の曝露を行うことで、11~12分間の総曝露時間を与えた。車室中の気体状二酸化塩素の理論上の推定最大濃度は約20ppmであった。実際には、二酸化塩素は、気体として存在する分と、曝露中にエアロゾル液滴中に溶解する分の両方がある。
【0053】
曝露後、対照プレート及び曝露プレートの両方を、インキュベーション及びCFU(コロニー形成単位)計数の前に通気して、制御に影響を及ぼす二酸化塩素を回避した。
【0054】
CFU計数後の結果を表6に示す。対照プレートは全てCFUが400超であった。
【0055】
【0056】
寒天プレート7が外れ値であっても、表6の結果は、本発明による方法及び組成物が潜在的に感染した緊急車両中の病原体を除去する際の衛生処置において明確な有効性を有することを示す。この結果は、除去率が92~95%に達することを示す。したがって、本発明は驚くほど迅速に広範囲の病原体を効果的に除去するのに有用であり、空中浮遊病原体(airborne pathogens)が閉鎖された空間及び部屋を汚染すると予想される多くの臨床的状況及び公共的状況において有用である。
【国際調査報告】