(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】部品の熱処理
(51)【国際特許分類】
C21D 1/00 20060101AFI20230901BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C21D1/00 B
C21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512151
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2021072123
(87)【国際公開番号】W WO2022037979
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102020121672.6
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315015977
【氏名又は名称】シュヴァルツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラー,ダーヴィト
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4K034
4K042
【Fターム(参考)】
4K034AA04
4K034DB02
4K034DB03
4K034FA01
4K034FB05
4K034FB07
4K034FB09
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042BA11
4K042DA01
4K042DD05
4K042EA01
(57)【要約】
部品(2)を熱処理する装置(1)であって、部品(2)は、装置(1)において、第1の方向(x)と第1の方向に垂直な第2の方向(y)とによって定められる部品平面(E)に配置することができ、装置(1)は、部品(2)の第1の領域(7)を加熱するための加熱手段(5)を有する加熱部(3)と、部品(2)の第2の領域(8)を冷却するための冷却手段(6)を有する冷却部(4)とを備えており、冷却部(4)は、第2の方向(y)において加熱部(3)の下流にあり、冷却手段(6)は、冷却流体(10)を部品(2)上に吐出するためのノズル(9)を有し、ノズル(9)は、第2の方向(y)において下に向かうように方向付けられており、ノズル(9)は、ノズル開口部(16)を有する流体流路(15)を有する。記載した装置(1)によって、部品(2)を、より詳細には、自動車用の鋼鉄製部品を、異なる領域を個別に熱処理でき、領域(7,8)の間に特に明確な境界設定が可能である。この目的のために、ノズル(9)は、加熱部3から離れる方に向けられており、ノズル開口部(16)を有する流体流路(15)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(2)を熱処理する装置(1)であって、
前記部品(2)は、前記装置(1)において、第1の方向(x)と前記第1の方向に垂直な第2の方向(y)とによって定められる部品平面(E)に配置することができ、
前記装置(1)は、
前記部品(2)の第1の領域(7)を加熱するための加熱手段(5)を有する加熱部(3)と、
前記部品(2)の第2の領域(8)を冷却するための冷却手段(6)を有する冷却部(4)と
を備え、
前記冷却部(4)は、前記第2の方向(y)において前記加熱部(3)の下流にあり、
前記冷却手段(6)は、冷却流体(10)を前記部品(2)上に吐出するためのノズル(9)を有し、
前記ノズル(9)は、前記第2の方向(y)において下に向かうように方向付けられており、
前記ノズル(9)は、ノズル開口部(16)を有する流体流路(15)を有する、
装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)であって、
前記流体流路(15)は、前記ノズル開口部(16)の上流に、長さ(l
g)が少なくとも5mmの直線部分(17)を有する、
装置(1)。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
前記加熱部(3)の方に面している前記ノズル(9)の外壁(11)は、前記第2の方向(y)において少なくとも部分的に下向きになっている、
装置(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
前記加熱部(3)と前記冷却部(4)との間に、分割壁(19)をさらに備え、
前記加熱部(3)の方に面している前記ノズル(9)の外壁(11)は、前記第2の方向(y)において前記分割壁(19)から離れて配置されている、
装置(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
前記冷却部(4)において前記ノズル(9)の上方に配置されたカバープレート(20)をさらに備える、
装置(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
ガイドプレート(12)をさらに備え、
前記ガイドプレート(12)は、前記冷却部(4)において前記ノズル(9)を基準にして前記加熱部(3)から遠い側に、前記部品平面(E)に平行に配置されている、
装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(1)であって、
前記ガイドプレート(12)のうちの前記ノズル(9)の方に面している縁部(13)は、曲線状である、
装置(1)。
【請求項8】
請求項6又は請求項7のいずれかに記載の装置(1)であって、
前記部品(2)を前記ガイドプレート(12)からある距離の位置に保持するために、少なくとも1つのスペーサーピン(14)が、前記ガイドプレート(12)に配置されている、
装置(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
前記流体流路(15)は、前記ノズル開口部(16)の上流にある部分(17)において、前記第1の方向(x)に垂直である、0.1mmから3mmの範囲の一定の幅(b
g)を有する、
装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
前記ノズル(9)は、前記部品平面(E)に対して15°から60°の範囲にある第1の角度(α)に配されているか、又は、
前記ノズル(9)の、前記加熱部(3)の方に面している外壁(11)は、前記部品平面(E)と共に、15°から60°の範囲にある第2の角度(β)を少なくとも部分的に囲んでいるか、又は、
その両方である、
装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品、特に自動車用の鋼鉄製部品の熱処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車業界においては、鋼鉄製部品を熱処理によって選択的に硬化させることが知られている。このような目的で、Bピラー等の鋼鉄製部品は、領域ごとに異なった態様で熱処理される。そのため、領域ごとに硬さが異なるものとなり、これはこのような部品の衝突時の挙動には有利である。
【0003】
領域ごとに異なるように鋼鉄製部品を処理する方法は様々なものが知られている。公知の方法はいずれも、個々の温度範囲の間の境界設定が不十分であるという共通点を有する。それにより、このように処理された部品の事故時の挙動をシミュレーションすることが特に難しくなっている。
【0004】
記載した先行技術から生じる本発明の目的は、部品の領域同士が特に明らかな態様で互いから分かれているように各領域を熱処理することが可能な、部品を熱処理する装置を提供することである。
【0005】
この目的は、独立請求項に記載の装置により達成される。本装置の有利な実施形態は、従属請求項に明示されている。特許請求の範囲及び明細書において提示する特徴は、技術的に有意な態様で互いに組み合わせることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、部品を熱処理する装置が提供される。
部品は、本装置において、第1の方向と第1の方向に垂直な第2の方向とによって定められる部品平面に配置することができる。本装置は、
部品の第1の領域を加熱するための加熱手段を有する加熱部と、
部品の第2の領域を冷却するための冷却手段を有する冷却部と
を備え、
冷却部は第2の方向において加熱部の下流にあり、冷却手段は、冷却流体を部品上に吐出するためのノズルを有し、ノズルは、第2の方向において下に向かうように方向付けられており、ノズルは、ノズル開口部を有する流体流路を有する。
【0007】
本装置については、第1の方向、第2の方向及び第3の方向を有する座標系を用いて説明する。これらの方向は、いずれの2つの方向が互いに垂直となっている。第1の方向及び第2の方向は、共に、部品平面と称される平面を定める。本装置は部品を備えていないが、部品を受けることが意図されており、受けるように構成されている。このように、本装置には、部品が部品平面に位置するように、部品を挿入することができる。第3の方向における部品が延在する範囲は無視できる。
【0008】
本装置は、鋼鉄製部品の熱処理、特に、自動車用の鋼鉄製部品の熱処理に特に適している。例えば、Bピラーは、このような部品とすることができる。本装置は、温度制御ステーションと称してもよい。本装置を用いて処理される部品は、本装置から取り出された後に硬化されることが好ましい。その場合、本装置は、本装置の下流にプレスを有する機構の一部となっている。
【0009】
本装置では、領域ごとに異なった態様で部品を熱処理することができる。このような目的で、本装置は、加熱部及び冷却部を備える。冷却部は、第2の方向において加熱部の下流にある。そのため、冷却部及び加熱部は、第2の方向に沿って見たときに、一方が他方の後ろにくるように配置されている。第2の方向は加熱部から冷却部に向かう方向である。好ましくは、冷却部と加熱部とは互いに隣接している。
【0010】
部品の第1の領域は、加熱部において加熱することができる。部品の第2の領域は、冷却部において冷却することができる。これは同時に行うことができる。部品は、装置に挿入可能であり、好ましくは、第1の方向又はその反対方向に挿入可能である。部品は装置内で熱処理することができる。熱処理中においては、部品は、好ましくは、静置されている。熱処理後においては、部品は、装置の外に移動可能であり、好ましくは、第1の方向又はその反対方向に移動可能である。ただし、ここで、第1の方向は、部品の移動方向とは独立して、基本的に定義されていることに留意されたい。部品が第1の方向に移動する場合は、部品の移動方向は第1の方向と一致する。しかし、これの代わりに、任意の他の方向に部品を移動させることもできる。
【0011】
部品の第1の領域と第2の領域とは互いに異なっている。好ましくは、部品は、第1の領域及び第2の領域に区分されており、すなわち、さらなる領域を有しない。しかし、これの代わりに、部品は、第1の領域及び第2の領域に加えてさらなる領域を有することもできる。第1の領域及び第2の領域は、必ずしもそうとは限らないが、好ましくは、いずれの場合も連続した領域を形成する。部品の第1の領域及び第2の領域は、部品平面において定められる。
【0012】
熱処理が異なることによって、後続の硬化において、第1の領域は第2の領域よりも硬くなる。これは、例えば、Bピラーの(第2の領域としての)フランジを、Bピラーの(第1の領域としての)残りの部分よりも、軟らかくするために用いることができる。その結果、衝突特性を狙い通りに調整することに加えて、Bピラーの組立てを容易にすることもできる。そのため、特に、リベット及び圧着が可能になる。溶接時においては、溶接スポットの熱の影響を受けるゾーンにおいてひび割れのリスクが軽減される。
【0013】
冷却部における冷却は、好ましくは、第2の領域において冷却流体を部品に施すことによって行われ、この冷却流体はノズルから吐出される。冷却流体は、好ましくは、気体状である。圧縮空気又は圧縮窒素が冷却流体として好ましい。冷却流体は、好ましくは、2バールから4バールの範囲の圧力で吐出される。ノズルは、好ましくは、部品に接触しない。そのため、装置は、温度や固有応力による部品の位置調整エラーや変形に対して特に耐性がある。
【0014】
ノズルは、好ましくは、スロットノズルとして設計されている。好ましくは、ノズル開口部と、特にその上流の流体流路とが、アスペクト比が少なくとも1対5の流れ断面を有する。これは、ある方向の(好ましくは第1の方向に沿った)流れ断面の延在している範囲が、その方向に垂直な流れ断面の延在している範囲よりも少なくとも5倍大きいことを意味する。ノズルは、好ましくは、ノズル開口部の長い方の辺が部品平面に平行となるように方向付けられている。スロットノズルによって、冷却流体の、特に均一な流れを実現できる。そのために、ノズル開口部が鋭利な縁部を有することが特に好ましい。
【0015】
ノズルは、第2の方向において、下に向かうように方向付けられている。したがって、加熱部から冷却部の方向に見たときにノズルは、部品平面の方向に下向きに傾斜している。部品が装置に配置されているとき、ノズルは、第2の方向において部品に対して斜めに方向付けられている。ノズルの向きは、冷却流体がノズルから吐出される方向を指す。吐出がフラットジェットの形態で行われる場合は、その向きは、フラットジェットの重心によって、すなわち、フラットジェットの軸に沿って定められる。
【0016】
ノズルの前述した向きにより、冷却流体は、装置に位置する部品に向かう方向であって且つ加熱部から離れる方向に吐出される。冷却流体は、部品に当たった後に、部品の表面に沿って第2の方向に流れる。したがって、冷却流体は、第2の方向の成分であって加熱部から離れる向きの成分を有する運動量を有する。その結果、冷却流体を加熱部に特にほとんど侵入させずに部品の第2の領域を冷却できる。この点で、第1の領域及び第2の領域の熱処理において特に明確な境界設定を実現可能である。遷移領域の幅は、部品内の熱伝導の結果として回避不能な、最小限の幅まで低減できる。説明した実施形態は、加熱部と冷却部との間の「空気力学な密閉部分(aerodynamische Abdichtung)」と称することができる。
【0017】
また、試験により、ノズル上流に直線部分がある流体流路を有する該ノズルによって第1の領域と第2の領域との間の境界設定をさらに強化できることが示されたが、それは結果として好ましいことである。したがって、流体流路は、好ましくは、少なくともノズル開口部に隣接する部分では直線状に形成されている。この場合、冷却流体は、ノズル開口部から出る直前においては直線の流路に沿って流れる。このことが特に均一なジェットの形成を実現する。これにより、冷却流体は加熱部に特にほとんど到達しない。そのため、部品の領域の特に明確な境界設定を実現できる。さらに、第2の領域は、均一なジェットの形成によって特に均一に冷却することができる。ノズル開口部の上流の直線部分の代わりに、ノズル開口部の上流に湾曲部分を配置することもできる。これは、部品の形状によっては好適な場合がある。
【0018】
具体的には、流体流路は直線部分を有し、その直線部分がノズル開口部の上流にあり、長さが少なくとも5mmである、本装置の好ましい実施形態において、特に均一なジェットの形成が実現されることが分かった。
【0019】
直線部分の長さは流体流路に沿って測定される。好ましくは、流体流路の直線部分は、長さが5mm及び40mmの範囲にあり、特に10から15mmの範囲にある。
【0020】
本装置のさらなる好ましい実施形態において、加熱部の方に面しているノズルの外壁は、第2の方向において少なくとも部分的に下向きになっている。
【0021】
冷却流体は、ノズル開口部における排出速度が非常に高速である。物理法則によれば、強い陰圧が生み出され、その陰圧によって、ノズル開口部の周りから大量の空気が取り込まれる。移動される全体の質量流は、冷却流体の質量流よりも最大100倍大きくなる可能性がある。このような状況であることにより、部品を特に効率的に冷却することが可能になる。本実施形態では、取り込まれた空気の流れがノズル開口部の周りから狙い通りに案内されるため、そのことはなおさら当てはまる。そのために、加熱部の方に面しているノズルの外壁は、ガイド面として用いられる。ノズルのこの外壁は、第2の方向において少なくとも部分的に下向きになっている。このように下向きになっていることにより、取り込まれた空気が部品に向かって且つ加熱部から離れる方に流れるように、ノズル開口部の周りから空気が取り込まれる。そのため、冷却流体自体と同様に、取り込まれた空気は、加熱部に特にほとんど到達しないように流れる。このことも、部品の領域を境界設定を特に明確にすることに寄与する。
【0022】
ノズルの外壁が鋭利な縁部を有しないことが好ましい。そのため、空気は、可能な限り抵抗がない状態でノズルの周りを流れることができ、それにより、空気が可能な限り妨害されずにノズル開口部に到達できる。
【0023】
さらなる好ましい実施形態において、本装置は、加熱部と冷却部との間に分割壁をさらに備え、加熱部の方に面しているノズルの外壁は、第2の方向において分割壁から離れて配置されている。
【0024】
分割壁は隔壁と称してもよい。分割壁は、第1の領域と第2の領域とを互いから特に明確に分割するために使用することができる。分割壁は、好ましくは、加熱部の方に面しているノズルの外壁に平行に配されている。分割壁は、好ましくは、部品のすぐ上まで延在しており、これにより、部品と分割壁との間に残っている隙間を可能な限り小さくする。本装置において異なる厚さの部品を処理可能とするために、分割壁は、好ましくは、その隙間が調節可能な範囲を有するように設計されている。
【0025】
加熱部の方に面しているノズルの外壁は、第2の方向において分割壁から離れて配置されている。したがって、分割壁とノズルとの間に隙間が形成され、その隙間を通って、ノズル開口部で冷却流体によって取り込まれた空気が流れることができる。このような空気流により、ノズル開口部で冷却流体によって特に大量の空気を取り込むことができ、これにより、部品の第2の領域を特に効率的に冷却することができる。
【0026】
分割壁は、好ましくは、ノズルボックスの一部であり、ノズルボックスは、分割壁の隣にカバープレートを備える。好ましい実施形態では、本装置はカバープレートを備え、冷却部においてノズルの上方に配置されている。分割壁及びカバープレートは、互いに隣接していることが好ましく、1つの部材になるように形成することもできる。
【0027】
分割壁及びカバープレートによって形成されるノズルボックスは、好ましくは、冷却部の境界設定の少なくとも一部を成す。部品の第2の領域は、ノズルボックスによって特に効率的に冷却することができる。特に、冷却流体の広がりをノズルボックスによって制限でき、そのことによって、冷却流体の消費を低く維持できる。
【0028】
さらなる好ましい実施形態において、本装置はガイドプレートをさらに備え、ガイドプレートは、冷却部においてノズルを基準にして加熱部から遠い側に、部品平面に平行に配置されている。
【0029】
第2の方向に沿って見たときは、本実施形態における並びは、加熱部、選択的に設けられる分割壁、冷却部の順であり、冷却部はノズル、ガイドプレートの順でこれらを有する。
【0030】
ガイドプレートは、好ましくは、ノズルからある距離の位置に配置されており、これにより、空気がノズルとガイドプレートとの間を流れることができる。その空気は、ノズル開口部から出る冷却流体によって取り込むことができる。この空気の取り込みは、加熱部の方に面しているノズルの外壁に沿って流れており且つ同様にノズル開口部から出る冷却流体によって取り込まれる空気に加えて、行われる。
【0031】
ガイドプレートは、部品平面に平行に配置されており、すなわち、第1の方向及び第2の方向によって定められる平面にある。その平面において、ガイドプレートは、好ましくは、部品の第2の領域をほぼ完全に覆う程度に遠くまで延在している。ガイドプレートは、好ましくは、第1の方向において10から200mmの範囲で延在している。ガイドプレートは、好ましくは、第2の方向において50から250mmの範囲で延在している。
【0032】
ガイドプレートは、第3の方向においては、部品平面の上方に、すなわち、部品を基準にしてノズルも配置されている側に配置されている。ガイドプレートは、部品と共に流路を形成しており、冷却流体及び冷却流体によって取り込まれた空気がその流路を通って部品上を流れることができる。この流路は、ノズル内の流体流路とは区別するべきである。ガイドプレートは、望ましくない乱流を防止することが可能である。乱流は、特に第2の方向において部品の延在する範囲が大きい場合に起こる可能性がある。したがって、ガイドプレートがあることにより、本装置は大型の部品に特に適している。
【0033】
本装置のさらなる好ましい実施形態において、ガイドプレートのうちのノズルの方に面している縁部は曲線状である。
【0034】
曲線状の縁部は、特に、薄いガイドプレートの縁部を曲げることによってか、又は、厚いガイドプレートの縁部を機械加工することによって得ることができ、これにより、当初の鋭利な縁部は破壊される。
【0035】
ガイドプレートの曲線状の縁部は、冷却流体及び冷却流体によって取り込まれた空気の流れを改善する。特に、縁部が鋭利な場合に生じる可能性がある乱流が軽減されるか又は防止されることすらある。さらに、薄いガイドプレートの場合は特に、縁部が曲線状であることによってその安定性を改善することができる。
【0036】
本装置のさらなる好ましい実施形態において、部品をガイドプレートからある距離の位置に保持するために、少なくとも1つのスペーサーピンがガイドプレートに配置されている。
【0037】
流速は、ガイドプレートと部品とによって形成された流路においてほぼ一定に維持されている。したがって、流路内の陰圧により浮力が生じる可能性がある。浮力によって、薄い又は大型又はその両方である部品は持ち上げられる可能性がある。本実施形態では、これはスペーサーピンによって制限される。少なくとも1つのスペーサーピンは、好ましくは、第3の方向に沿って配されている。少なくとも1つのスペーサーピンは、好ましくは、通常の動作中に、ガイドプレートから第3の方向の反対方向に、特に部品表面のすぐ上の位置まで延在している。
【0038】
本装置のさらなる好ましい実施形態において、流体流路は、ノズル開口部の上流にある直線部分において、第1の方向に垂直である、0.1mmから3mmの範囲の一定の幅を有する。
【0039】
第1の方向に垂直な流体流路の幅は、第1の方向に垂直な平面内で見たときに、流体流路の2つの対向する側壁の間の最短距離として定められる。本実施形態では、その幅は、直線部分全体にわたって同じであり、0.1mmから3mmの範囲にある。冷却流体に関する流れ断面は、このように定められた幅及び流体流路が第1の方向に沿って延在する範囲によるものである。好ましくは、流体流路は、10mmから300mmの範囲、具体的には、60mm及び100mmの範囲で第1の方向に沿って延在している。その結果、第2の領域を冷却するために、第2の領域に十分な冷却流体を施すことができる。
【0040】
流体流路の幅が定められた範囲内にある場合は、部品表面に対する明確に境界設定された冷却流体の流れを実現することができる。さらに、ノズル開口部の周りからの空気を特に効率的に取り込むことができる。そのため、概して、流体流路の前述の幅によって、部品の第2の領域が特に効率的に冷却される。
【0041】
本装置のさらなる好ましい実施形態においては、ノズルは、部品平面に対して15°から60°の範囲にある第1の角度に配されているか、又は、ノズルの、加熱部の方に面している外壁は、部品平面と共に、15°から60°の範囲にある第2の角度を少なくとも部分的に囲んでいるか、又は、その両方である。
【0042】
第1の角度は、部品平面と、ノズルから冷却流体が吐出される方向との間に定められる。これがフラットジェットの形態で起こる場合は、第1の角度は、フラットジェットの中央線、すなわち、フラットジェットの軸と、部品平面との間に定められる。
【0043】
好ましくは、加熱部の方に面しているノズルの外壁の平坦な部分は、部品平面と共に、15°から60°の範囲にある第2の角度を囲んでいる。この平坦な部分は、好ましくは、ノズル開口部まで延在している。本実施形態によれば、冷却流体によって取り込まれた空気は、その空気がノズルの外壁を離れる直前まで、直線的な流路に沿って流れる。これにより、その空気が部品の表面に特に均一に到達することを可能となる。これにより、冷却流体又は取り込まれた空気又はその両方が加熱部へ侵入することを防止できる。そのため、さらに、第2の領域を特に均一に冷却することができる。そのために、加熱部の方に面しているノズルの外壁が、流体流路の直線部分の外側で流体流路に平行に形成されていることが特に好ましい。これは、流体流路の直線部分は、加熱部の方に面している面において一定の厚さの外壁によって区分されていることを意味する。この結果、流体流路内の冷却流体及び冷却流体によって取り込まれた空気は、冷却流体及び空気がノズルを離れる前まで、互いに平行な直線の各流路を通って、ノズルの外壁上を流れる。このことが特に均一な流れをもたらす。
【0044】
好ましくは、ノズルは、部品平面に対して15°から60°の範囲にある第1の角度に配されており、且つ、ノズルの、加熱部の方に面している外壁は、部品平面と共に、15°から60°の範囲にある第2の角度を少なくとも部分的に囲んでいる。特に好ましくは、第1の角度と第2の角度とは同じ大きさである。好ましくは、第1の角度及び第2の角度の少なくとも一方は、それぞれ45°である。
【0045】
以下で、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面は特に好適な実施形態を示すが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。図面及びそこに示す比率は概略的なものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明による、部品を熱処理する装置の断面図を示す。
【
図3】
図1における装置のノズルの流れ断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、部品2の熱処理のための装置1を示す。装置1については、第1の方向x、第2の方向y及び第3の方向zを有する座標系を用いて説明する。これらの方向は、いずれの2つの方向が互いに垂直となっている。第1の方向x及び第2の方向yは、共に、部品平面Eと称される平面を定める。部品2は、部品平面Eに存在する(第3の方向zにおいて部品2が延在する範囲は無視する)。
【0048】
装置1は、部品2の第1の領域7を加熱するための加熱手段5を有する加熱部3と、部品2の第2の領域8を冷却するための冷却手段6を有する冷却部4とを備える。冷却部4は、第2の方向yにおいて加熱部3の下流にあり、すなわち、図では加熱部3の右に配置されている。
【0049】
冷却手段6は、冷却流体10を部品2上に吐出するためのノズル9を有する。冷却流体10は、矢印によって示されている。冷却流体は、連結部18を介してノズル9に供給することができる。
【0050】
ノズル9は、第2の方向yにおいて、下に向かうように方向付けられている。これは、
図1の例ではノズル9が冷却流体10を右下に吐出することを意味する。ノズル9は流体流路15を有し、流体流路15は、ノズル開口部16と、前記ノズル開口部の上流の直線部分17とを有する。さらに、加熱部3の方に面しているノズル9の外壁11も、第2の方向yにおいて下向きになっている。図示の実施形態では、外壁11は、流体流路15の直線部分17に平行に形成されている。
【0051】
装置1はさらにノズルボックス22を備え、ノズルボックス22は、加熱部3と冷却部4との間に分割壁19を有し、冷却部4においてノズル9の上方に配置されたカバープレート20を有する。加熱部3の方に面しているノズル9の外壁11は、第2の方向yにおいて分割壁19から離れて配置されている。分割壁19は外壁11に平行となる方向に向けられている。
【0052】
装置1はガイドプレート12をさらに備える。ガイドプレート12は、冷却部4においてノズル9を基準にして加熱部3から遠い側に、部品平面Eに平行に配置されている。ガイドプレート12のうちのノズル9の方に面している縁部13は曲線状になっている。これは、
図1の例ではガイドプレートの左縁部13である。これは下向きに曲げられて、曲線状となっている。部品2をガイドプレート12からある距離の位置に保持するために、ガイドプレート12に複数のスペーサーピン14が配置されている。
【0053】
装置1は、加熱部3の下と、ノズルボックス22の上とに、断熱材21をさらに備える。
【0054】
図2は、
図1におけるノズル9の拡大図を示す。ノズル9は、冷却手段6の一部である。具体的には、流体流路15の直線部分17を見ることができる。さらに、加熱部3(ここでは不図示)の方に面している外壁11を見ることができる。流体流路15の直線部分17の長さl
gも示されている。長さは少なくとも5mmである。さらに、第1の方向xに垂直な流体流路15の幅b
gが示されている。その幅は、0.1から3mmの範囲の一定の値を有する。さらに、第1の角度αが示されており、この第1の角度αでノズル9は部品平面Eと位置合わせされている。第2の角度βも示されており、第2の角度βは、ノズル9の、加熱部3の方に面している外壁11と、部品平面Eとに囲まれている。図示の実施形態では、第1の角度と第2の角度とは等しく、15°から60°の範囲にある。
【0055】
図3は、
図1における装置のノズルの流れ断面図を示す。ノズル開口部16が示されており、その幅は、流体流路15の直線部分17の幅b
gに対応する。さらに、第1の方向xにおけるノズル開口部16の広がりaが示されている。
【0056】
記載した装置1によって、部品2を、より詳細には、自動車用の鋼鉄製部品を、異なる領域を個別に熱処理でき、領域7と8との間に特に明確な境界設定が可能である。この目的のために、ノズル9は、加熱部3から離れる方に向けられており、ノズル開口部16を有する流体流路15を有する。
【符号の説明】
【0057】
1 装置
2 部品
3 加熱部
4 冷却部
5 加熱手段
6 冷却手段
7 第1の領域
8 第2の領域
9 ノズル
10 冷却流体
11 外壁
12 ガイドプレート
13 縁部
14 スペーサーピン
15 流体流路
16 ノズル開口部
17 直線部分
18 連結部
19 分割壁
20 カバープレート
21 断熱材
22 ノズルボックス
x 第1の方向
y 第2の方向
z 第3の方向
E 部品平面
lg 直線部分の長さ
bg 直線部分の幅
a ノズル開口部の伸長
α 第1の角度
β 第2の角度
【国際調査報告】