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特表2023-538612糖尿病治療及びベータ細胞再生のための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】糖尿病治療及びベータ細胞再生のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230901BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230901BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20230901BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K31/18
A61K31/495
A61K31/352
A61K31/428
A61K31/395
A61K31/198
A61K31/216
A61K31/7088
A61K31/713
A61K31/7105
A61K48/00
A61K31/4745
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/444
A61K31/661
A61K31/4709
A61K31/381
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512171
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021046267
(87)【国際公開番号】W WO2022040161
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/067,187
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/169,776
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トゥザロヴァ-トラヨフスカ、スラヴィツァ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZC01
4C084ZC35
4C084ZC41
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BB02
4C086BB03
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC33
4C086BC50
4C086BC82
4C086CB22
4C086DA34
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC01
4C086ZC35
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB16
4C206DB43
4C206FA53
4C206JA13
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA17
4C206MA24
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZC01
4C206ZC35
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】本開示の態様は、HIF1α-PFKFB3経路の阻害によってβ細胞再生を促進するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】 本開示の態様は、HIF1α-PFKFB3経路の阻害によってβ細胞再生を促進するための方法及び組成物を対象とする。ある特定の態様は、2型糖尿病を含む、前糖尿病及び糖尿病の治療及び予防のための方法を記載する。また、β細胞再生を強化するための方法及び組成物も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を2型糖尿病について治療する方法であって、有効量のHIF1α阻害剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α分解を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α/HIF1β二量体形成を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α転写活性を低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記HIF1α阻害剤が、KC7F2、IDF-11774、アミノフラボン、AJM290、AW464、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、PX-478、又はFM19G11である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記HIF1α阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記HIF1α阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記HIF1α阻害剤が、EZN-2698である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記HIF1α阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記HIF1α阻害剤が、レスベラトロール、ラパマイシン、エベロリムス、CCI779、シリビニン、ジゴキシン、YC-1、フェネチルイソチオシアナイト、ケトミン、フラボピリドール、ボルテゾミブ、アンホテリシンB、Bay87-2243、PX-478、又はガネタシピブである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記HIF1α阻害剤が、抗HIF1α抗体又は抗体様分子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記HIF1α阻害剤が、ナノボディである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HIF1α阻害剤が、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、吸入を介して、又は2つ以上の投与経路の組み合わせを介して投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
PFKFB3阻害剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PFKFB3阻害剤が、3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン(3-PO)又はその類似体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PFKFB3阻害剤が、3-POの類似体であり、前記類似体が、1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン(PFK15)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記PFKFB3阻害剤が、BrAcNHEtOP、YN1、YZ9、PQP、PFK-158、化合物26、KAN0436151、又はKAN0436067である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記PFKFB3阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記PFKFB3阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記PFKFB3阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記PFKFB3阻害剤が、前記対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記標的化分子が、抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記標的化分子が、抗体様分子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的化分子が、GLP-1受容体に結合するように構成されている、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記HIF1α阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤が、前記対象に連続投与される、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記HIF1α阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤が、前記対象に実質的に同時に投与される、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記HIF1α阻害剤が、前記対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記標的化分子が、抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的化分子が、抗体様分子である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記標的化分子が、GLP-1受容体に結合するように構成されている、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記有効量の前記HIF1α阻害剤を投与することが、前記対象におけるインスリン感受性を高める、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、がんを有しないか、又はがんと診断されていない、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、2型糖尿病と診断されている、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与前に、前記対象を前記2型糖尿病と診断することを更に含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、2型糖尿病をすでに治療されている、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、以前の治療に対して耐性があると判断されている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、糖尿病腎症若しくは糖尿病網膜症を有しないか、又は糖尿病腎症若しくは糖尿病網膜症と診断されていない、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルを測定することを更に含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象からの前記β細胞中の前記PFKFB3の発現レベルが、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して上昇している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象を2型糖尿病について治療する方法であって、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して、前記対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルが上昇していると判断された対象に、有効量のHIF1α阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項41】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α分解を促進する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α/HIF1β二量体形成を阻害する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α転写活性を低減する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記HIF1α阻害剤が、KC7F2、IDF-11774、アミノフラボン、AJM290、AW464、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、PX-478、FM19G11である、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記HIF1α阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記HIF1α阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記HIF1a阻害剤が、EZN-2698である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記HIF1α阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記HIF1α阻害剤が、レスベラトロール、ラパマイシン、エベロリムス、CCI779、シリビニン、ジゴキシン、YC-1、フェネチルイソチオシアナイト、ケトミン、フラボピリドール、ボルテゾミブ、アンホテリシンB、Bay87-2243、PX-478、又はガネタシピブである、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記HIF1α阻害剤が、抗HIF1α抗体又は抗体様分子である、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記HIF1α阻害剤が、ナノボディである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記阻害剤が、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、吸入を介して、又は2つ以上の投与経路の組み合わせを介して投与される、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
PFKFB3阻害剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記PFKFB3阻害剤が、3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン(3-PO)又はその類似体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記PFKFB3阻害剤が、3-POの類似体であり、前記類似体が、1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン(PFK15)である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記PFKFB3阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記PFKFB3阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記PFKFB3阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記PFKFB3阻害剤が、前記対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記標的化分子が、抗体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記標的化分子が、抗体様分子である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記標的化分子が、GLP-1受容体に結合するように構成されている、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記HIF1α阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤が、前記対象に連続投与される、請求項53~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記HIF1α阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤が、前記対象に実質的に同時に投与される、請求項53~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記HIF1α阻害剤が、前記対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている、請求項40~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記標的化分子が、抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記標的化分子が、抗体様分子である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記標的化分子が、GLP-1受容体に結合するように構成されている、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記有効量の前記HIF1α阻害剤を投与することが、前記対象におけるインスリン感受性を高める、請求項40~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
対象を2型糖尿病について治療する方法であって、
(a)対象が、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して、前記対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルが上昇していると判断することと、
(b)有効量のHIF1α阻害剤を前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項71】
対象におけるインスリン感受性を高める方法であって、有効量のHIF1α阻害剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項72】
前記対象が、前糖尿病を患っている、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、インスリン抵抗性を患っている、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
PFKFB3を発現する損傷したβ細胞中の細胞死を刺激するための方法であって、前記方法が、HIF1α阻害剤を前記損傷したβ細胞に提供することを含む、方法。
【請求項75】
前記HIF1α阻害剤が、前記損傷したβ細胞にインビトロで提供される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記HIF1α阻害剤が、前記損傷したβ細胞にインビボで提供される、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
PFKFB3を発現しないβ細胞中の再生を刺激するための方法であって、前記方法が、HIF1α阻害剤を前記β細胞に提供することを含む、方法。
【請求項78】
前記HIF1α阻害剤が、前記β細胞にインビトロで提供される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記HIF1α阻害剤が、前記β細胞にインビボで提供される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
2型糖尿病を有する対象におけるβ細胞の再生を刺激する方法であって、前記β細胞が、PFKFB3を発現せず、前記方法が、有効量のHIF1α阻害剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項81】
糖尿病を有する対象におけるPFKFB3を発現する損傷したβ細胞を死滅させるための方法であって、有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することを含む、方法。
【請求項82】
対象を糖尿病について治療する方法であって、有効量のHIF1α阻害剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項83】
前記糖尿病が、1型糖尿病である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記糖尿病が、2型糖尿病である、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記対象が、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して、前記対象からのβ細胞中の前記PFKFB3の発現レベルが上昇していると判断されている、請求項82~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
対象を2型糖尿病について診断するための方法であって、
(a)前記対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルを測定することと、
(b)2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと、前記発現レベルを比較することと、
(c)前記対象からのβ細胞中の前記PFKFB3の発現レベルが、前記健康な対象からのβ細胞中の前記PFKFB3の発現レベルと比較して上昇していると判断し、それによって前記対象を2型糖尿病について診断することと、を含む、方法。
【請求項87】
(a)HIF1α阻害剤と、(b)PFKFB3阻害剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項88】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α分解を促進する、請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項89】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α/HIF1β二量体形成を阻害する、請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項90】
前記HIF1α阻害剤が、HIF1α転写活性を低減する、請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項91】
前記HIF1α阻害剤が、KC7F2、IDF-11774、アミノフラボン、AJM290、AW464、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、PX-478、又はFM19G11である、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項92】
前記HIF1α阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項93】
前記HIF1α阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項92に記載の医薬組成物。
【請求項94】
前記HIF1α阻害剤が、EZN-2698である、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項95】
前記HIF1α阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項92に記載の医薬組成物。
【請求項96】
前記HIF1α阻害剤が、レスベラトロール、ラパマイシン、エベロリムス、CCI779、シリビニン、ジゴキシン、YC-1、フェネチルイソチオシアナイト、ケトミン、フラボピリドール、ボルテゾミブ、アンホテリシンB、Bay87-2243、PX-478、又はガネタシピブである、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項97】
前記HIF1α阻害剤が、抗HIF1α抗体又は抗体様分子である、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項98】
前記HIF1α阻害剤が、ナノボディである、請求項97に記載の医薬組成物。
【請求項99】
前記PFKFB3阻害剤が、3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン(3-PO)又はその類似体である、請求項87~98のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項100】
前記PFKFB3阻害剤が、3-POの類似体であり、前記類似体が、1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン(PFK15)である、請求項87~100のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項101】
前記PFKFB3阻害剤が、BrAcNHEtOP、YN1、YZ9、PQP、PFK-158、化合物26、KAN0436151、又はKAN0436067である、請求項87~100のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項102】
前記PFKFB3阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項87~100のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項103】
前記PFKFB3阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項102に記載の医薬組成物。
【請求項104】
前記PFKFB3阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項102に記載の医薬組成物。
【請求項105】
前記PFKFB3阻害剤が、前記対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている、請求項87~104のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項106】
前記標的化分子が、抗体である、請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項107】
前記標的化分子が、抗体様分子である、請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項108】
前記標的化分子が、GLP-1受容体に結合するように構成されている、請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項109】
対象を2型糖尿病について治療する方法であって、請求項87~108のいずれか一項に記載の有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項110】
細胞の集団からバイホルモン細胞を排除する方法であって、有効量のPFKFB3阻害剤を前記細胞の集団に投与することを含む、方法。
【請求項111】
前記細胞の集団が、膵島細胞の集団である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記細胞の集団が、分化した幹細胞の集団である、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記分化した幹細胞が、分化した人工多能性幹細胞(iPSC)である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記分化した幹細胞が、分化した胚性幹細胞(ESC)である、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記PFKFB3阻害剤が、前記細胞の集団にインビトロで投与される、請求項110~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記PFKFB3阻害剤が、前記細胞の集団にインビボで投与される、請求項110~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記PFKFB3阻害剤が、3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン(3-PO)又はその類似体である、請求項110~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記PFKFB3阻害剤が、3-POの類似体であり、前記類似体が、1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン(PFK15)である、請求項110~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記PFKFB3阻害剤が、BrAcNHEtOP、YN1、YZ9、PQP、PFK-158、化合物26、KAN0436151、又はKAN0436067である、請求項110~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記PFKFB3阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項110~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記PFKFB3阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記PFKFB3阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項120に記載の方法。
【請求項123】
有効量のHIF1α阻害剤を前記細胞の集団に投与することを更に含む、請求項110~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
細胞の集団からバイホルモン細胞を排除する方法であって、有効量のHIF1α阻害剤を前記細胞の集団に投与することを含む、方法。
【請求項125】
前記細胞の集団が、膵島細胞の集団である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記細胞の集団が、分化した幹細胞の集団である、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記分化した幹細胞が、分化したiPSCである、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記分化した幹細胞が、分化したESCである、請求項112に記載の方法。
【請求項129】
前記HIF1α阻害剤が、前記細胞の集団にインビトロで投与される、請求項124~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記HIF1α阻害剤が、前記細胞の集団にインビボで投与される、請求項124~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記HIF1α阻害剤が、KC7F2、IDF-11774、アミノフラボン、AJM290、AW464、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、PX-478、又はFM19G11である、請求項124~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記HIF1α阻害剤が、核酸阻害剤である、請求項124~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記HIF1α阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記HIF1α阻害剤が、EZN-2698である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記HIF1α阻害剤が、siRNA又は短ヘアピンRNAである、請求項132に記載の方法。
【請求項136】
前記HIF1α阻害剤が、レスベラトロール、ラパマイシン、エベロリムス、CCI779、シリビニン、ジゴキシン、YC-1、フェネチルイソチオシアナイト、ケトミン、フラボピリドール、ボルテゾミブ、アンホテリシンB、Bay87-2243、PX-478、又はガネタシピブである、請求項124~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記HIF1α阻害剤が、抗HIF1α抗体又は抗体様分子である、請求項124~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記HIF1α阻害剤が、ナノボディである、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
有効量のPFKFB3阻害剤を前記細胞の集団に投与することを更に含む、請求項124~138のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年8月18日出願の米国仮特許出願第63/067,187号、及び2021年4月1日出願の米国仮特許出願第63/169,776号の優先権の利益を主張し、これらの全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2021年8月16日に作成された当該ASCIIコピーは、UCLA_P0116WO_Seq_Listing.txtと名付けられ、サイズが22,602バイトである。
【0003】
I.技術分野
本発明の態様は、少なくとも分子生物学及び医学の分野に関連する。
【背景技術】
【0004】
II.背景技術
膵島アミロイド膵臓ポリペプチド(IAPP)の毒性オリゴマーの蓄積に部分的に関連して、2型糖尿病(T2D)においてβ細胞機能が徐々に減少する[3~5]。十分に立証されたβ細胞ストレス(ミトコンドリアネットワーク及び活性の変化、Ca2+毒性、酸化的損傷及びDNA損傷)[6~9]にもかかわらず、T2Dの発症の数十年後でさえ、β細胞減少の速度は驚くほど遅く、β細胞量の保持は、35%~76%である[4]。しかしながら、β細胞量の相対的保持は、T2Dの発症前のβ細胞グルコース応答性の早期喪失と対照をなす。これは、T2Dにおけるほとんどのβ細胞が生存可能ではあるが、機能不全であることを示す。
【0005】
急性傷害時、健康な組織の細胞中で、低酸素誘導因子1-アルファ(HIF1α)が、組織修復の成功に必要とされる一連の工程を開始する[10、11]。第一に、ミトコンドリア依存性酸化的リン酸化から好気的解糖を介した高流量への、HIF1α標的6-ホスホフルクト-2-キナーゼ/フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ3(PFKFB3)によって媒介される、重大な代謝リモデリングがあり、酸素利用可能性に関係なく、ATPを生成する。好気的解糖へのエネルギー転換は、ペントースリン酸経路を介したヌクレオチド合成の増加によるDNA修復を可能にする[12]。高流量解糖はまた、ミトコンドリアネットワークが防御的な断片化された核周囲位置をとることを可能にし、これは、傷害によって発生したCa2+毒性からミトコンドリアを保護する[13]。第二に、DNA損傷を保持する細胞は、アポトーシスによって排除され、DNA損傷がない細胞は、喪失した組織を再生するために使用される。組織再生は、前駆幹細胞増殖、脱分化後の複製、又は分化転換のいずれかによって達成される。第三に、組織再生が完了すると、HIF1α-PFKFB3経路を誘発した傷害シグナルが弱まり、細胞がその機能的代謝状態を再度とる。
【0006】
健康な組織とは異なり、T2Dを有するヒトにおけるβ細胞は、HIF1α傷害/修復応答の生存促進段階に陥ったままであり、代謝の変化及びミトコンドリアネットワークは、β細胞機能を犠牲にして、細胞減少の速度を遅くする[2]。幅広い研究にもかかわらず、β細胞が再生に成功することができない理由はまだ明らかではない。損傷した細胞の排除及び健康な細胞(例えば、β細胞)の再生を誘発して、インスリン感受性を改善し、糖尿病を患っている対象をよりよく治療するための方法及び組成物の必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様は、2型糖尿病を含む、糖尿病及び関連状態の治療のための方法、並びにそのような方法に有用な組成物を提供する。本開示の実施形態は、場合によってはPFKFB3活性の阻害と組み合わせて、HIF1α活性の阻害によって、健康なβ細胞の再生を促進するための方法及び組成物を提供することによって、ある特定の必要性を満たす。ある特定の態様は、2型糖尿病の治療のための方法を対象とし、HIF1α阻害剤を提供することを含む。そのような方法は、PFKFB3阻害剤の投与を更に含んでもよい。また、いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤とPFKFB3阻害剤とを含む医薬組成物が開示される。
【0008】
本開示の実施形態は、対象をタンパク質ミスフォールディングに関連する障害について治療するための方法、対象を糖尿病について治療するための方法、対象を2型糖尿病について治療するための方法、対象を1型糖尿病について治療するための方法、2型糖尿病を診断するための方法、HIF1α阻害剤治療に対する、2型糖尿病を有する対象の感受性を決定するための方法、インスリン感受性を改善するための方法、HIF1α阻害剤をβ細胞に標的化するための方法、PFKFB3の発現レベルを決定するための方法、損傷したβ細胞を死滅させるための方法、健康なβ細胞の再生を刺激するための方法、1つ以上のHIF1α阻害剤を含む組成物、1つ以上のPFKFB3阻害剤を含む組成物、及びHIF1α阻害剤とPFKFB3阻害剤とを含む組成物を含む。開示される方法は、以下の工程のうちの少なくとも1、2、3、4、5、又はそれ以上を含むことができる:有効量のHIF1α阻害剤を提供する工程、有効量のPFKFB3阻害剤を提供する工程、対象を2型糖尿病について診断する工程、対象を1型糖尿病について診断する工程、対象が2型糖尿病を有すると特定する工程、対象が2型糖尿病のリスクがあると特定する工程、対象が前糖尿病を有すると特定する工程、対象におけるPFKFB3の発現レベルを測定する工程、対象のβ細胞中のPFKFB3の発現レベルを測定する工程、対象が対象のβ細胞中のPFKFB3発現レベルが上昇していると判断する工程、及び対象に、2型糖尿病のための1つ以上の追加の治療を提供する工程。上記の工程のうちの1つ以上は、本開示の実施形態から除外されてもよい。本開示の組成物は、以下のうちの1、2、3、4、又はそれ以上を含むことができる:HIF1α阻害剤、PFKFB3阻害剤、標的化分子、GLP-1受容体抗体、メトホルミン、GLP-1受容体アゴニスト、DPP-4阻害剤、スルホニル尿素、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤。上記の構成成分のうちの1つ以上は、本開示の実施形態から除外されてもよい。
【0009】
本明細書において、いくつかの実施形態では、対象を2型糖尿病について治療する方法が提供され、方法は、有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することを含む。また本明細書において、いくつかの実施形態では、対象を2型糖尿病について治療する方法が提供され、方法は、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して、当該対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルが上昇していると判断された対象に、有効量のHIF1α阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象を2型糖尿病について治療する方法が開示され、方法は、(a)対象が、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して、当該対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルが上昇していると判断することと、(b)有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、2型糖尿病を有する対象における健康なβ細胞の再生を刺激する方法が開示され、健康なβ細胞は、PFKFB3を発現せず、方法は、有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、HIF1α分解を促進する。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、HIF1α/HIF1β二量体形成を阻害する。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、HIF1α転写活性を低減する。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、KC7F2、IDF-11774、アミノフラボン、AJM290、AW464、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、PX-478、又はFM19G11である。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、核酸阻害剤である。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、EZN-2698である。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、siRNA又は短ヘアピンRNAである。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、レスベラトロール、ラパマイシン、エベロリムス、CCI779、シリビニン、ジゴキシン、YC-1、フェネチルイソチオシアナイト、ケトミン、フラボピリドール、ボルテゾミブ、アンホテリシンB、Bay87-2243、PX-478、又はガネタシピブである。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、抗HIF1α抗体又は抗体様分子である。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、ナノボディである。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、吸入を介して、又は2つ以上の投与経路の組み合わせを介して投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、PFKFB3阻害剤を対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン(3-PO)又はその類似体である。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、3-POの類似体であり、類似体は、1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン(PFK15)である。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP、YN1、YZ9、PQP、PFK-158、化合物26、KAN0436151、又はKAN0436067である。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、核酸阻害剤である。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、siRNA又は短ヘアピンRNAである。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、対象のβ細胞に結合するように構成された標的化分子に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、標的化分子は、抗体である。いくつかの実施形態では、標的化分子は、抗体様分子である。いくつかの実施形態では、標的化分子は、GLP-1受容体に結合するように構成されている。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、対象に連続投与される。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、対象に実質的に同時に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、有効量のHIF1α阻害剤を投与することは、対象におけるインスリン感受性を高める。いくつかの実施形態では、対象は、がんを有していないか、又はがんと診断されていない。いくつかの実施形態では、対象は、2型糖尿病と診断されている。いくつかの実施形態では、方法は、投与前に、対象を2型糖尿病と診断することを更に含む。いくつかの実施形態では、対象は、2型糖尿病についてすでに治療されている。いくつかの実施形態では、対象は、以前の治療に対して耐性があると判断されている。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病腎症若しくは糖尿病網膜症を有していないか、又は糖尿病腎症若しくは糖尿病網膜症と診断されていない。いくつかの実施形態では、方法は、対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルを測定することを更に含む。いくつかの実施形態では、対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルは、2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して上昇している。
【0013】
本開示の実施形態はまた、対象におけるインスリン感受性を高める方法を含み、方法は、有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、前糖尿病を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、インスリン抵抗性を患っている。また、いくつかの実施形態では、PFKFB3を発現する損傷したβ細胞中の細胞死を刺激するための方法が開示され、方法は、HIF1α阻害剤をβ細胞に提供することを含む。いくつかの実施形態では、PFKFB3を発現しないβ細胞中の再生を刺激するための方法が開示され、方法は、HIF1α阻害剤をβ細胞に提供することを含む。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、β細胞にインビトロで提供される。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、β細胞にインビボで提供される。
【0014】
ある特定の態様では、本明細書において、糖尿病を有する対象におけるPFKFB3を発現する損傷したβ細胞を死滅させるための方法が提供され、方法は、有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することを含む。また、いくつかの実施形態では、対象を糖尿病について治療する方法が提供され、方法は、有効量のHIF1α阻害剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、糖尿病は、1型糖尿病である。いくつかの実施形態では、糖尿病は、2型糖尿病である。
【0015】
ある特定の実施形態は、疾患又は障害の診断のための方法を対象とする。いくつかの実施形態では、対象を2型糖尿病について診断するための方法が開示され、方法は、(a)対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルを測定することと、(b)2型糖尿病を患っていない健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと、当該発現レベルを比較することと、(c)対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルが、健康な対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルと比較して上昇していると判断し、それによって対象を2型糖尿病について診断することと、を含む。
【0016】
本明細書において、いくつかの実施形態では、様々な医薬組成物が更に開示される。いくつかの実施形態では、(a)HIF1α阻害剤と、(b)PFKFB3阻害剤と、を含む、医薬組成物が開示される。HIF1α阻害剤は、任意のHIF1α阻害剤であってもよく、その例は、本明細書に開示される。PFKFB3阻害剤は、任意のPFKFB3阻害剤であってもよく、その例は、本明細書に開示される。
【0017】
また、いくつかの実施形態では、細胞の集団からバイホルモン細胞を排除する方法が開示され、方法は、有効量のPFKFB3阻害剤を細胞の集団に投与することを含む。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、細胞の集団にインビトロで投与される。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、細胞の集団にインビボで投与される。PFKFB3阻害剤は、任意のPFKFB3阻害剤であってもよく、その例は、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、細胞の集団からバイホルモン細胞を排除する方法が更に開示され、方法は、有効量のHIF1α阻害剤を細胞の集団に投与することを含む。HIF1α阻害剤は、任意のHIF1α阻害剤であってもよく、その例は、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、細胞の集団にインビトロで投与される。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、細胞の集団にインビボで投与される。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、膵島細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、分化した幹細胞の集団である。いくつかの実施形態では、分化した幹細胞は、分化した人工多能性幹細胞(iPSC)である。いくつかの実施形態では、分化した幹細胞は、胚性幹細胞(ESC)である。
【0018】
本願全体を通して、「約」という用語は、値が、測定又は定量方法についての誤差の固有の変動を含むことを示すために使用される。
【0019】
「含むこと」という用語と併せて使用される場合、「a」又は「an」という用語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ、又は2つ以上」の意味と一致もしている。
【0020】
「及び/又は」という語句は、「及び」又は「又は」を意味する。例示するために、A、B、及び/又はCは、A単独、B単独、C単独、A及びBの組み合わせ、A及びCの組み合わせ、B及びCの組み合わせ、又はA、B、及びCの組み合わせを含む。言い換えれば、「及び/又は」は、包含的論理和として機能する。
【0021】
「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含むことの任意の形態)、「有すること(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含むことの任意の形態)、又は「含有すること(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有することの任意の形態)という用語は、包含的又は非限定的であり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0022】
組成物及びそれらの使用のための方法は、本明細書全体を通して開示される成分又は工程のいずれか「を含む」、「から本質的になる」、又は「からなる」ことができる。開示される成分又は工程のいずれか「から本質的になる」組成物及び方法は、特許請求を、特許請求された発明の基本的かつ新規の特徴に大きな影響を与えない指定の材料又は工程に限定する。本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含むことの任意の形態)、「有すること(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含むことの任意の形態)、又は「含有すること(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有することの任意の形態)という用語は、包含的又は非限定的であり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。「含むこと」という用語の文脈で本明細書に記載される実施形態が、「からなる」又は「から本質的になる」という用語の文脈でも使用され得ることが企図される。
【0023】
本発明の一実施形態に関して考察される任意の限定が、本発明の任意の他の実施形態に適用され得ることが具体的に企図される。更に、本発明の任意の組成物が、本発明の任意の方法に使用され得、本発明の任意の方法が、本発明の任意の組成物を生成又は利用するために使用され得る。実施例に記載される一実施形態の態様は、異なる実施例の別の箇所、又は要約、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、及び図面の簡単な説明などの本願の別の箇所で考察される実施形態の文脈で使用され得る実施形態でもある。
【0024】
治療的、診断的、又は生理学的な目的又は効果の文脈における任意の方法はまた、記載された治療的、診断的、又は生理学的な目的又は効果を達成又は実施するための、本明細書で考察される任意の化合物、組成物、又は薬剤「の使用」などの「使用」という特許請求の用語で記載されてもよい。
【0025】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。しかしながら、発明を実施するための形態及び具体的な実施例は、本発明の具体的な実施形態を示すが、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正が、この発明を実施するための形態から当業者に明らかになるため、単なる実例として示されることが理解されるべきである。
【0026】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、本発明のある特定の態様を更に示すために含まれる。本発明は、本明細書に提示される具体的な実施形態の発明を実施するための形態と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A-1D】T2D患者並びに糖尿病のげっ歯類モデル(hIAPPトランスジェニックラット(HIP)及びマウス(hTG))におけるβ細胞が、低減された細胞適応度を示すことを実証する結果を示す。図1Aは、ミトコンドリアマーカーTom20について免疫染色されたT2D対疾患なし(ND)における膵島細胞の共焦点画像を示し、T2Dドナーからの膵島における低減されたミトコンドリア面積及び断片化されたミトコンドリアの核周囲分布を示す。図1Bは、Seahorseによって測定された基底呼吸の倍率として提示される酸素消費速度(OCR)を示し、高グルコース(16.7mM)による刺激後のWTラットと比較した、4.5ヶ月齢のHIPからの単離された膵島の低下を実証する。図1Cは、FURA2 AMで測定された細胞質Ca2+を示し、対照げっ歯類IAPP(rTG)トランスジェニックマウスと比較した、hIAPP(hTG)からの膵島の増加を実証する。図1Dは、3つのヒト非糖尿病(ND)膵島及び3つのT2Dドナー膵島からの全細胞抽出物(WCE)及び核画分の免疫ブロッティング分析を示し、傷害のマーカー:腫瘍抑制因子p53、p21WAF1、及びγH2A.X(遺伝毒性ストレスのマーカー)の増加に付随する、PFKFB3及びHIF1aの増加を明らかにする。
図2A-2D】T2Dを有するヒトにおけるβ細胞が、生存促進性HIF1α-PFKFB3経路による代謝リモデリングを示すことを実証する結果を示す。図2Aは、PFKFB3、インスリン、及び核について免疫染色された非糖尿病(ND)及びT2D対象からの膵島の免疫蛍光画像(nPODコレクション)を示す。図2Bは、ストレスを受けたβ細胞中のCa2+恒常性、ミトコンドリア、及びメタボロームを制御するPFKFB3の概略図を示す。図2C及び2Dは、hIAPP発現の存在下又は非存在下での、HIF1α阻害(図2C)又はPFKFB3 siRNAサイレンシング(図2D)後の、TUNEL陽性INS 832/13細胞による細胞死の定量化を示す。
図3A-3B】高脂肪食(HFD)下のPFKFB3βKO hIAPP+/-マウスの検証からの実験プロトコル及び結果を示す。図3Aは、実験タイムラインを示す。図3Bは、PFKFB3(赤色)、インスリン(緑色)、及び核(青色)について免疫染色された、hIAPP+/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WT及びPFKFB3βKOからの膵島の免疫蛍光画像を示す。PFKFB3WT hIAPP+/+を陽性対照として使用した。
図4A-4D】高脂肪食(HFD)下のPFKFB3βKO IAPP+/-マウスが、PFKFB3WT IAPP+/-マウスに対して、低減された空腹時グルコース、高まったインスリン感受性、及び同等のグルコース抵抗性異常、並びに低減されたC-ペプチド血漿中濃度を示すことを実証する結果を示す。図4Aは、空腹時血中グルコースを示す。図4Bは、腹腔内グルコース抵抗性試験(IP-GTT)結果を示す。図4Cは、実験プロトコルの終了時に測定された血漿C-ペプチド及びグルカゴンであり、図4Dは、インスリン抵抗性試験(ITT)である。
図5A-5E】PFKFB3βKO IAPP+/-マウスが、PFKFB3WT IAPP+/-マウスと比較して、増加したβ細胞複製を示すことを実証する結果を示す。図5Aは、MCM2、インスリン、及び核について免疫染色された、hIAPP+/-又はhIAPP-/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WTマウス及びPFKFB3βKO-マウスからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図5Bは、β細胞面積率を示す。図5Cは、β/α細胞比を示す。図5Dは、TUNELアッセイによって測定されたβ細胞死を示す。図5Eは、ミニ染色体維持タンパク質2(MCM2)免疫染色及び定量化(n=4、SEM*p<0.05)によって測定されたβ細胞複製を示す。
図6A-6C】PFKFB3βKO IAPP+/-マウスが、依然として残るHIF1α免疫陽性を示すことを実証する結果を示す。図6Aは、HIF1α、インスリン、及び核について免疫染色された、hIAPP+/-又はhIAPP-/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WTマウス及びPFKFB3βKO-マウスからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図6Bは、特定の抗体での免疫染色後のHIF1α陽性β細胞の定量化を示す。図6Cは、特定の抗体での免疫染色後のc-Myc陽性β細胞の定量化を示す(n=4、SEM*p<0.05)。
図7A-7B】LDHA陽性β細胞亜集団が、T2Dにおけるインスリン分泌関連遺伝子が豊富であることを実証する結果を示す。図7Aは、公開されたRNA-Seqデータからのβ細胞のUMAPクラスタリング[1]が、LDHA陽性β細胞と重複するクラスター7亜集団を特定することを示す。図7Bは、クラスター7対1及びLDHA陽性対陰性β細胞中で上方調節(UP)又は下方調節(DOWN)された差次的に発現された遺伝子の表である。
図8A-8D】HIF1αが、高脂肪食(HFD)下のPFKFB3βKO hIAPP+/-マウスにおいて上方調節されていることを実証する結果を示す。図8Aは、PFKFB3(赤色)、インスリン(緑色)、及び核(青色)について免疫染色された、hIAPP+/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WT及びPFKFB3βKOからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図8Bは、図8Aの画像の定量化を示す。図8Cは、HIF1α、インスリン、及び核について免疫染色された、hIAPP+/-又はhIAPP-/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WTマウス及びPFKFB3βKO-マウスからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図8Dは、図8Aの画像の定量化を示す(n=3、PFKFB3βKO hIAPP+/-についてはn=4、SEM*p<0.05)。
図9A-9I】高脂肪食(HFD)下のPFKFB3βKOIAPP+/-マウスが、PFKFB3WT IAPP+/-マウスと比較して、増加したグルコース抵抗性異常及び類似のインスリンを示すが、低減されたグルカゴン血漿中濃度を示すことを実証する結果を示す。図9Aは、高脂肪食(HFD)の開始の9週間後の腹腔内グルコース抵抗性試験(IP-GTT)からの結果を示す。図9Bは、図9Aの実験群におけるmg/dL×分としての曲線下面積(AUC)の定量化を示す。図9Cは、HFDの開始の12週間後の腹腔内グルコース抵抗性試験(IP-GTT)からの結果を示す。図9Dは、図9Cの実験群におけるmg/dL×分としての曲線下面積(AUC)の定量化を示す。図9Eは、HFDの開始の9週間後のインスリン抵抗性試験からの結果を示す。図9Fは、図9Eの実験群におけるmg/dL×分としての曲線下面積(AUC)の定量化を示す。図9G及び9Hは、β細胞量と比較して提示される、空腹時血漿インスリン(図9G)及びC-ペプチド(図9H)を示す(HFDの開始の12週間後)。図9Iは、空腹時血漿グルカゴンを示す(HFDの開始の12週間後)(n=3、PFKFB3βKO hIAPP+/-についてはn=4、SEM*p<0.05)。
図10A-10F】PFKFB3βKO IAPP+/-マウスが、PFKFB3WT IAPP+/-マウスと比較して、細胞死の増加にもかかわらず、増加したβ細胞/a細胞比を示すことを実証する結果を示す。図10Aは、β細胞面積率(%)の定量化を示す。図10Bは、β細胞量(mg)の定量化を示す。図10Cは、β細胞面積率と比較して表されるTUNELアッセイでの標識によって測定されたβ細胞死(%)の定量化を示す。図10Dは、示された実験群におけるa細胞数と比較したβ細胞の定量化を示す。図10Eは、切断カスパーゼ-3、インスリン、及び核について免疫染色された、hIAPP+/-又はhIAPP-/-バックグラウンド上及びP高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WTマウス及びPFKFB3βKO-マウスからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図10Fは、図10Eからの画像の定量化を示す。(n=3、PFKFB3βKO hIAPP+/-についてはn=4、SEM*p<0.05)。
図11A-11D】PFKFB3βKO IAPP+/-マウスが、PFKFB3WT IAPP+/-マウスと比較して、増加した健康なβ細胞複製を示すことを実証する結果を示す。図11Aは、MCM2、インスリン、及び核について免疫染色された、hIAPP+/-又はhIAPP-/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WTマウス及びPFKFB3βKO-マウスからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図11Bは、図11Aの画像の定量化を示す。図11Cは、c-Myc、インスリン、及び核について免疫染色された、hIAPP+/-又はhIAPP-/-バックグラウンド上及び高脂肪食(HFD)上の、PFKFB3WTマウス及びPFKFB3βKO-マウスからの膵島の代表的な免疫蛍光画像を示す。図11Dは、細胞が、図11Cの免疫染色によって明らかにされたように、hIAPP誘発性カルパイン活性化(損傷)を受けていることを示す、細胞質c-Myc(Myc-nick)の定量化を示す(n=3、PFKFB3βKO hIAPP+/-についてはn=4、SEM*p<0.05)。
図12A-12D】公開されたRNA(-Seqデータからのβ細胞のUMAPクラスタリング[26]が、LDHA陽性(HIF1αシグネチャを有するβ細胞)と重複するクラスター7亜集団を特定したことを実証する結果を示す。図12Aは、健康なドナー及びT2Dドナーからの膵臓細胞のUMAP-2クラスター分布を示す。図12Bは、同一性マーカーに基づいた、α細胞(アルファ)、β細胞(ベータ)、少ないカウントを有する細胞、不明確な同一性を有する細胞、腺房細胞、及び導管細胞のUMAP-2分布を示す。図12Cは、同一性マーカーの発現レベルに基づいた、9つの膵臓亜集団における膵臓細胞のUMAP-2分布を示す。図12Dは、ラクテートデヒドロゲナーゼの陽性及び陰性膵臓細胞(LDHA、HIF1αシグネチャを示すHIF1α標的)のUMAP-2分布を示す。
図13A-13D】ND又はT2Dからのβ細胞亜集団間の差次的遺伝子発現が、クラスター7及びLDHA陽性β細胞が二重同一性[インスリン(INS+)及びグルカゴン(GCG+)]を共有することを明らかにしたことを実証する結果を示す。β細胞クラスター7とクラスター1との間の差次的遺伝子発現は、非糖尿病患者(ND)(図13A)及びT2D(図13B)に示される。LDHA陽性及び陰性のβ細胞クラスター間の差次的遺伝子発現は、非糖尿病患者(ND)(図13C)及びT2D(図13D)に示される。
図14A-14E】PFKFB3βKO IAPP+/-マウスが、二重陽性インスリン+/グルカゴン+細胞の減少を示すことを実証する結果を示す。図14Aは、単一インスリン陽性β細胞と全ての単一陽性β及びα細胞との間の比率(%)の定量化を示す。図14Bは、単一グルカゴン陽性α細胞と全ての単一陽性β及びα細胞との間の比率(%)の定量化を示す。図14Cは、二重インスリン(INS+)及びグルカゴン(GCG+)陽性細胞と全ての単一インスリン又はグルカゴン陽性β及びα細胞のそれぞれとの間の比率(%)の定量化を示す。図14Dは、示された実験群における単一インスリン陽性β細胞、単一グルカゴン陽性α細胞、並びに二重インスリン及びグルカゴン陽性細胞の細胞組成を示す。WT、HFDなしで前糖尿病(プレDM)及び糖尿病(DM)ありのホモ接合性(hom)hIAPP+/+マウス(WT、hom TG-プレDM、及びhom TG-DM)を、研究実験群との比較のための使用した(n=3、PFKFB3βKO hIAPP+/-についてはn=4、SEM*p<0.05)。図14Eは、示された実験群における単一インスリン陽性β細胞、単一グルカゴン陽性α細胞、並びに二重インスリン陽性及びグルカゴン陽性細胞の細胞組成を示す(n=3、PFKFB3βKO DSについてはn=4、SEM*p<0.05)。
図15A-15D】実験の過程中の実験群間の体重が、影響を受けなかったことを実証する結果を示す。示された実験群における体重は、ベースライン(t=0)(図15A)、HFDの開始の1週間前(図15B)、HFDの4週目(図15C)、及びHFDの13週目(図15D)である。
図16A-16C】実験の過程中の実験群間の臓器重量が、影響を受けなかったことを実証する結果を示す。示された実験群における重量(g)は、膵臓(図16A)、肝臓(図16B)、及び脾臓(図16C)である。
図17A-17C】各ドナーからの細胞中の遺伝子の数(図17A)、転写物の数(図17B)、及びミトコンドリア発現のパーセンテージ(図17C)の分布を示すバイオリンプロットを示す。
図18A-18C】各クラスターからの細胞中の遺伝子の数(図18A)、転写物の数(図18B)、及びミトコンドリア発現のパーセンテージ(図18C)の分布を示すバイオリンプロットを示す。
図19】パーセンテージ(%)として表される、健康及びT2Dにおける9つの注釈付き膵臓細胞型の相対的分布を示す。
図20】健康なドナー及びT2Dドナーからのヒト膵島細胞の単一細胞RNAシーケンシング分析からの結果を示す。示されたクラスターを全ての他のクラスターと比較する発現倍率変化によって、マーカー遺伝子をランク付けした。ドットのサイズは、遺伝子が内部で検出された細胞のパーセンテージを表す。カラースケールは、スケーリングされた遺伝子の発現を表す。
図21】各クラスターについての最高のマーカー遺伝子を示すドットプロットを示す。示されたクラスターを全ての他のクラスターと比較する発現倍率変化によって、マーカー遺伝子をランク付けした。ドットのサイズは、遺伝子が内部で検出された細胞のパーセンテージを表す。カラースケールは、スケーリングされた遺伝子の発現を表す。
図22A-22B】健康(ND)(図22A)及び2型糖尿病(T2D)(図22B)における、クラスター7対クラスター1の差次的に発現された遺伝子間の関係を提示する、STRING分析からの結果を示す。
図23A-23B】健康(ND)(図23A)及び2型糖尿病(T2D)(図23B)における、LDHA陽性(クラスター7)対LDHA陰性β細胞(クラスター1)の差次的に発現された遺伝子間の関係を提示する、STRING分析からの結果を示す。
図24A-24B】クラスター1(図24A)又はLDHA陰性(図24B)β細胞のいずれかにおける、健康な(ND)対象の差次的に発現された遺伝子間の関係を提示する、STRING分析からの結果を示す。
図25】ストレス下のβ細胞補充におけるβ細胞適応度の役割についての、本明細書に開示されるモデルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、HIF1α-PFKFB3傷害/修復応答の活性化により、残りの健康なβ細胞との細胞競合によって、影響を受けたβ細胞が浄化選択を受けないことに起因するものとしての、T2Dにおけるβ細胞機能不全の特定に少なくとも部分的に基づいている。理論によって束縛されることを望むものではないが、リモデリングされた代謝を有する傷害を受けたβ細胞は、β細胞をグルコースに対して非応答性の状態にし、かつHIF1α-PFKFB3経路の長期活性化が、損傷したβ細胞を除去するのに必要な恒常性の細胞競合を妨げるTCAサイクルから離れ、高解糖を介して閉じ込められると考えられる。T2Dにおける傷害を受けたβ細胞の生存が、HIF1α-PFKFB3経路に依存することを所与として、HIF1α-PFKFB3傷害/修復経路は、傷害を受けたβ細胞が細胞競合による選択を逃れることを助け、かつリモデリングされた代謝によって阻害された細胞競合は、β細胞再生を妨げると考えられる。本明細書において、いくつかの実施形態では、HIF1α阻害、PFKFB3阻害、及びそれらの組み合わせを含む、HIF1α-PFKFB3経路の阻害によって、β細胞再生を促進するための方法及び組成物が開示される。本開示の態様は、1型糖尿病及び2型糖尿病を含む、糖尿病を患っている対象の治療を提供することによって、当該技術分野における様々な必要性に対応する。
【0029】
I.治療方法
本開示の態様は、ある特定の疾患及び障害の治療のための方法及び組成物を対象とする。いくつかの実施形態では、タンパク質ミスフォールディングに関連する(例えば、それを特徴とする)障害を有する対象の治療のための方法が開示される。いくつかの実施形態では、タンパク質ミスフォールディングに関連する障害には、糖尿病及び関連状態(例えば、前糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病)が含まれる。2型糖尿病の治療又は予防に関して記載されることが多いが、開示される方法及び組成物は、1型糖尿病及び前糖尿病を含む、タンパク質ミスフォールディングに関連する他の障害を治療又は予防するためにも使用され得ることが理解される。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書において、対象を2型糖尿病(T2D)について治療するための、及び/又は対象がT2Dを発症することを予防するための方法が開示され、方法は、対象の細胞中のHIF1α-PFKFB3経路を阻害することができる1つ以上の薬剤を提供することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dについて診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dを発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、前糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの1亜型、2亜型、又は3亜型を有する。T2D亜型は、当該技術分野において既知であり、例えば、Li L,Cheng WY,Glicksberg BS,et al.Sci Transl Med.2015;7(311):311ra174に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの1亜型を有する。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの2亜型を有する。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの3亜型を有する。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの1亜型を有しない。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの2亜型を有しない。いくつかの実施形態では、対象は、T2Dの3亜型を有しない。
【0031】
本明細書で認識されるように、HIF1α-PFKFB3経路の阻害は、T2Dにおける不健康なβ細胞の死滅を強化し、健康なβ細胞の再生に寄与する。いくつかの実施形態では、不健康なβ細胞は、PFKFB3を発現する(例えば、T2Dを有しない対象からのβ細胞よりも高いPFKFB3の発現レベルを有する)β細胞を説明する。いくつかの実施形態では、健康なβ細胞は、PFKFB3を発現しないか、又はT2Dを有しない対象からのβ細胞と大きくは異ならないPFKFB3の発現レベルを有するβ細胞を説明する。対象をT2Dについて治療することは、対象におけるT2Dの症状を改善すること、例えば、対象におけるインスリン感受性を高めることを含んでもよい。
【0032】
対象をT2Dについて治療するための方法は、有効量のHIF1α阻害剤を提供することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤を提供することは、対象のβ細胞中のPFKFB3レベルを低減する。対象をT2Dについて治療するための方法は、有効量のPFKFB3阻害剤を提供することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、開示される方法は、HIF1α阻害剤及びPFKFB3阻害剤の両方を対象に提供することを含む。HIF1α阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、連続的に、又は実質的に連続的に投与されてもよい。HIF1α阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、同じ組成物中で提供されてもよいか、又は別々の組成物中で提供されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように治療される対象は、がんを有していないか、又はがんと診断されていない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように治療される対象は、糖尿病腎症若しくは糖尿病網膜症を有していないか、又は糖尿病腎症若しくは糖尿病網膜症と診断されていない。
【0034】
開示される方法の態様は、更なる実施形態では、対象におけるPFKFB3の発現レベルを測定することを含む。いくつかの実施形態では、PFKFB3発現レベルは、対象からのβ細胞中で測定される。いくつかの実施形態では、PFKFB3発現レベルは、T2Dを有する対象を特定するために使用される。いくつかの実施形態では、PFKFB3発現レベルは、HIF1α及び/又はPFKFB3阻害剤を含む治療に対して感受性があるかどうかを判断するために使用される。いくつかの実施形態では、対象からのβ細胞は、健康な対象又は対照対象と比較して上昇したPFKFB3発現レベルを有すると判断される。いくつかの実施形態では、健康な対象は、糖尿病又は前糖尿病を有しない対象である。いくつかの実施形態では、健康な対象は、T2Dを有しない対象である。いくつかの実施形態では、対象からのβ細胞は、対象からの対照細胞と比較して上昇したPFKFB3発現レベルを有すると判断される。
【0035】
いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の追加の療法、例えば、2型糖尿病療法とともに、HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤で治療される。いくつかの実施形態では、対象は、GLP-1受容体アゴニストとともに、HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤で治療される。いくつかの実施形態では、対象は、メトホルミンとともに、HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤で治療される。いくつかの実施形態では、対象は、インスリンとともに、HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤で治療される。いくつかの実施形態では、対象は、DPP-4阻害剤とともに、HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤で治療される。
【0036】
II.HIF1α
低酸素誘導因子1-アルファ(HIF1α、同様にHIF1A)は、低酸素症に対する適応応答に関与するものを含む、様々な遺伝子の転写調節に関与する転写因子である。
【0037】
以下の配列は、ヒトにおけるHIF1α mRNAを例示する(配列番号1):
AGTGCACAGTGCTGCCTCGTCTGAGGGGACAGGAGGATCACCCTCTTCGTCGCTTCGGCCAGTGTGTCGGGCTGGGCCCTGACAAGCCACCTGAGGAGAGGCTCGGAGCCGGGCCCGGACCCCGGCGATTGCCGCCCGCTTCTCTCTAGTCTCACGAGGGGTTTCCCGCCTCGCACCCCCACCTCTGGACTTGCCTTTCCTTCTCTTCTCCGCGTGTGGAGGGAGCCAGCGCTTAGGCCGGAGCGAGCCTGGGGGCCGCCCGCCGTGAAGACATCGCGGGGACCGATTCACCATGGAGGGCGCCGGCGGCGCGAACGACAAGAAAAAGATAAGTTCTGAACGTCGAAAAGAAAAGTCTCGAGATGCAGCCAGATCTCGGCGAAGTAAAGAATCTGAAGTTTTTTATGAGCTTGCTCATCAGTTGCCACTTCCACATAATGTGAGTTCGCATCTTGATAAGGCCTCTGTGATGAGGCTTACCATCAGCTATTTGCGTGTGAGGAAACTTCTGGATGCTGGTGATTTGGATATTGAAGATGACATGAAAGCACAGATGAATTGCTTTTATTTGAAAGCCTTGGATGGTTTTGTTATGGTTCTCACAGATGATGGTGACATGATTTACATTTCTGATAATGTGAACAAATACATGGGATTAACTCAGTTTGAACTAACTGGACACAGTGTGTTTGATTTTACTCATCCATGTGACCATGAGGAAATGAGAGAAATGCTTACACACAGAAATGGCCTTGTGAAAAAGGGTAAAGAACAAAACACACAGCGAAGCTTTTTTCTCAGAATGAAGTGTACCCTAACTAGCCGAGGAAGAACTATGAACATAAAGTCTGCAACATGGAAGGTATTGCACTGCACAGGCCACATTCACGTATATGATACCAACAGTAACCAACCTCAGTGTGGGTATAAGAAACCACCTATGACCTGCTTGGTGCTGATTTGTGAACCCATTCCTCACCCATCAAATATTGAAATTCCTTTAGATAGCAAGACTTTCCTCAGTCGACACAGCCTGGATATGAAATTTTCTTATTGTGATGAAAGAATTACCGAATTGATGGGATATGAGCCAGAAGAACTTTTAGGCCGCTCAATTTATGAATATTATCATGCTTTGGACTCTGATCATCTGACCAAAACTCATCATGATATGTTTACTAAAGGACAAGTCACCACAGGACAGTACAGGATGCTTGCCAAAAGAGGTGGATATGTCTGGGTTGAAACTCAAGCAACTGTCATATATAACACCAAGAATTCTCAACCACAGTGCATTGTATGTGTGAATTACGTTGTGAGTGGTATTATTCAGCACGACTTGATTTTCTCCCTTCAACAAACAGAATGTGTCCTTAAACCGGTTGAATCTTCAGATATGAAAATGACTCAGCTATTCACCAAAGTTGAATCAGAAGATACAAGTAGCCTCTTTGACAAACTTAAGAAGGAACCTGATGCTTTAACTTTGCTGGCCCCAGCCGCTGGAGACACAATCATATCTTTAGATTTTGGCAGCAACGACACAGAAACTGATGACCAGCAACTTGAGGAAGTACCATTATATAATGATGTAATGCTCCCCTCACCCAACGAAAAATTACAGAATATAAATTTGGCAATGTCTCCATTACCCACCGCTGAAACGCCAAAGCCACTTCGAAGTAGTGCTGACCCTGCACTCAATCAAGAAGTTGCATTAAAATTAGAACCAAATCCAGAGTCACTGGAACTTTCTTTTACCATGCCCCAGATTCAGGATCAGACACCTAGTCCTTCCGATGGAAGCACTAGACAAAGTTCACCTGAGCCTAATAGTCCCAGTGAATATTGTTTTTATGTGGATAGTGATATGGTCAATGAATTCAAGTTGGAATTGGTAGAAAAACTTTTTGCTGAAGACACAGAAGCAAAGAACCCATTTTCTACTCAGGACACAGATTTAGACTTGGAGATGTTAGCTCCCTATATCCCAATGGATGATGACTTCCAGTTACGTTCCTTCGATCAGTTGTCACCATTAGAAAGCAGTTCCGCAAGCCCTGAAAGCGCAAGTCCTCAAAGCACAGTTACAGTATTCCAGCAGACTCAAATACAAGAACCTACTGCTAATGCCACCACTACCACTGCCACCACTGATGAATTAAAAACAGTGACAAAAGACCGTATGGAAGACATTAAAATATTGATTGCATCTCCATCTCCTACCCACATACATAAAGAAACTACTAGTGCCACATCATCACCATATAGAGATACTCAAAGTCGGACAGCCTCACCAAACAGAGCAGGAAAAGGAGTCATAGAACAGACAGAAAAATCTCATCCAAGAAGCCCTAACGTGTTATCTGTCGCTTTGAGTCAAAGAACTACAGTTCCTGAGGAAGAACTAAATCCAAAGATACTAGCTTTGCAGAATGCTCAGAGAAAGCGAAAAATGGAACATGATGGTTCACTTTTTCAAGCAGTAGGAATTGGAACATTATTACAGCAGCCAGACGATCATGCAGCTACTACATCACTTTCTTGGAAACGTGTAAAAGGATGCAAATCTAGTGAACAGAATGGAATGGAGCAAAAGACAATTATTTTAATACCCTCTGATTTAGCATGTAGACTGCTGGGGCAATCAATGGATGAAAGTGGATTACCACAGCTGACCAGTTATGATTGTGAAGTTAATGCTCCTATACAAGGCAGCAGAAACCTACTGCAGGGTGAAGAATTACTCAGAGCTTTGGATCAAGTTAACTGAGCTTTTTCTTAATTTCATTCCTTTTTTTGGACACTGGTGGCTCATTACCTAAAGCAGTCTATTTATATTTTCTACATCTAATTTTAGAAGCCTGGCTACAATACTGCACAAACTTGGTTAGTTCAATTTTGATCCCCTTTCTACTTAATTTACATTAATGCTCTTTTTTAGTATGTTCTTTAATGCTGGATCACAGACAGCTCATTTTCTCAGTTTTTTGGTATTTAAACCATTGCATTGCAGTAGCATCATTTTAAAAAATGCACCTTTTTATTTATTTATTTTTGGCTAGGGAGTTTATCCCTTTTTCGAATTATTTTTAAGAAGATGCCAATATAATTTTTGTAAGAAGGCAGTAACCTTTCATCATGATCATAGGCAGTTGAAAAATTTTTACACCTTTTTTTTCACATTTTACATAAATAATAATGCTTTGCCAGCAGTACGTGGTAGCCACAATTGCACAATATATTTTCTTAAAAAATACCAGCAGTTACTCATGGAATATATTCTGCGTTTATAAAACTAGTTTTTAAGAAGAAATTTTTTTTGGCCTATGAAATTGTTAAACCTGGAACATGACATTGTTAATCATATAATAATGATTCTTAAATGCTGTATGGTTTATTATTTAAATGGGTAAAGCCATTTACATAATATAGAAAGATATGCATATATCTAGAAGGTATGTGGCATTTATTTGGATAAAATTCTCAATTCAGAGAAATCATCTGATGTTTCTATAGTCACTTTGCCAGCTCAAAAGAAAACAATACCCTATGTAGTTGTGGAAGTTTATGCTAATATTGTGTAACTGATATTAAACCTAAATGTTCTGCCTACCCTGTTGGTATAAAGATATTTTGAGCAGACTGTAAACAAGAAAAAAAAAATCATGCATTCTTAGCAAAATTGCCTAGTATGTTAATTTGCTCAAAATACAATGTTTGATTTTATGCACTTTGTCGCTATTAACATCCTTTTTTTCATGTAGATTTCAATAATTGAGTAATTTTAGAAGCATTATTTTAGGAATATATAGTTGTCACAGTAAATATCTTGTTTTTTCTATGTACATTGTACAAATTTTTCATTCCTTTTGCTCTTTGTGGTTGGATCTAACACTAACTGTATTGTTTTGTTACATCAAATAAACATCTTCTGTGGACCAGG
【0038】
タンパク質配列は、以下によって例示される(配列番号2):
MEGAGGANDKKKISSERRKEKSRDAARSRRSKESEVFYELAHQLPLPHNVSSHLDKASVMRLTISYLRVRKLLDAGDLDIEDDMKAQMNCFYLKALDGFVMVLTDDGDMIYISDNVNKYMGLTQFELTGHSVFDFTHPCDHEEMREMLTHRNGLVKKGKEQNTQRSFFLRMKCTLTSRGRTMNIKSATWKVLHCTGHIHVYDTNSNQPQCGYKKPPMTCLVLICEPIPHPSNIEIPLDSKTFLSRHSLDMKFSYCDERITELMGYEPEELLGRSIYEYYHALDSDHLTKTHHDMFTKGQVTTGQYRMLAKRGGYVWVETQATVIYNTKNSQPQCIVCVNYVVSGIIQHDLIFSLQQTECVLKPVESSDMKMTQLFTKVESEDTSSLFDKLKKEPDALTLLAPAAGDTIISLDFGSNDTETDDQQLEEVPLYNDVMLPSPNEKLQNINLAMSPLPTAETPKPLRSSADPALNQEVALKLEPNPESLELSFTMPQIQDQTPSPSDGSTRQSSPEPNSPSEYCFYVDSDMVNEFKLELVEKLFAEDTEAKNPFSTQDTDLDLEMLAPYIPMDDDFQLRSFDQLSPLESSSASPESASPQSTVTVFQQTQIQEPTANATTTTATTDELKTVTKDRMEDIKILIASPSPTHIHKETTSATSSPYRDTQSRTASPNRAGKGVIEQTEKSHPRSPNVLSVALSQRTTVPEEELNPKILALQNAQRKRKMEHDGSLFQAVGIGTLLQQPDDHAATTSLSWKRVKGCKSSEQNGMEQKTIILIPSDLACRLLGQSMDESGLPQLTSYDCEVNAPIQGSRNLLQGEELLRALDQVN
【0039】
A.HIF1α阻害剤
HIF1α阻害剤は、HIF1α活性について200μM又はそれ以下の濃度、例えば、少なくとも又は最大又は約200、100、80、50、40、20、10、5、1μM、100、10、1nM、若しくはそれ以下の濃度(又はそれらから導き出され得る任意の範囲若しくは値)のIC50を有する化合物又は薬剤のクラスの任意のメンバーを指し得る。HIF1α阻害剤は、HIF1αの発現を阻害する任意の化合物又は薬剤を指し得る。阻害剤HIF1α活性又は機能の例としては、HIF1α/HIF1β二量体化を防げる薬剤、タンパク質発現を低減又は排除する薬剤、HIF1α分解(例えば、プロテオソーム分解)を促進する薬剤、HIF1αがDNAと相互作用することを防げる薬剤、及びHIF1α転写活性を阻害する薬剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、HIF1αに直接結合する薬剤である。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、HIF1αに直接結合しない。例示的なHIF1α阻害剤は、例えば、Onnis et al.,J.Cell.Mol.Med.2009 13(9a):2780-2786に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本開示の方法及び組成物は、1つ以上のHIF1α阻害剤を含んでもよい。開示されるHIF1α阻害剤のうちの1つ以上が、本開示のある特定の実施形態から除外されてもよいことが具体的に企図される。また本明細書において、記載されるHIF1α阻害剤の薬学的に許容される塩及びプロドラッグも企図される。ある特定の例示的なHIF1α阻害剤が本明細書に記載されるが、任意のHIF1α阻害剤が本開示のある特定の実施形態で使用され得ることが企図される。
【0040】
いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤は、標的化分子に作動可能に連結(例えば、共有結合、非共有結合など)されている。標的化分子は、特定の生物標的又は細胞標的に結合するように設計された分子を説明する。標的化分子は、薬剤(例えば、HIF1α阻害剤などの治療剤)を特定の生物組織又は細胞型(例えば、β細胞)に特異的に方向付ける又は標的化するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、標的化分子は、対象のβ細胞に結合するように構成されている。いくつかの実施形態では、標的化分子は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体に結合し、それによって、HIF1α阻害剤を対象のβ細胞に標的化するように構成されている。いくつかの実施形態では、標的化分子は、抗体、抗体断片、又は抗体様分子である。
【0041】
B.HIF1α阻害性核酸
当該技術分野において既知の阻害性核酸又はHIF1αの遺伝子発現を阻害する任意の方法が、ある特定の実施形態で企図される。阻害性核酸の例としては、アンチセンス核酸、例えば、siRNA(低分子干渉RNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA、及び任意の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。また、本明細書に記載される阻害剤のいずれかをコードするリボザイム又は核酸も含まれる。阻害性核酸は、遺伝子の転写を阻害し得るか、又は細胞中の遺伝子転写物の翻訳を妨げ得る。阻害性核酸は、16~1000ヌクレオチド長、及びある特定の実施形態では18~100ヌクレオチド長であってもよい。核酸は、少なくとも又は最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、90、又はそれらから導き出され得る任意の範囲のヌクレオチドを有してもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「単離された」とは、ヒト介入により自然の状態から変化した又は除去されたことを意味する。例えば、生きている動物において自然に存在するsiRNAは、「単離されて」いないが、合成siRNA、又はその自然な状態の共存物質から部分的若しくは完全に分離したsiRNAは、「単離されて」いる。単離されたsiRNAは、実質的に精製された形態で存在することができるか、又は例えば、siRNAが送達された細胞などの非天然環境において存在することができる。
【0043】
阻害性核酸は、当該技術分野において周知である。例えば、siRNA及び二本鎖RNAは、米国特許第6,506,559号及び同第6,573,099号、並びに米国特許公開第2003/0051263号、同第2003/0055020号、同第2004/0265839号、同第2002/0168707号、同第2003/0159161号、同及び第2004/0064842号に記載されており、これらの全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
具体的に、阻害性核酸は、少なくとも10%、20%、30%、若しくは40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%若しくはそれ以上、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲若しくは値、HIF1αの発現を減少させることが可能であり得る。
【0045】
更なる実施形態では、HIF1α阻害剤である合成核酸が存在する。阻害剤は、17~25ヌクレオチド長であってもよく、成熟HIF1α mRNAの5’から3’の配列の任意の部分に対して少なくとも90%相補的である5’から3’の配列を含んでもよい。ある特定の実施形態では、阻害剤分子は、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25ヌクレオチド長であるか、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲である。更に、阻害剤分子は、成熟HIF1α mRNA、特に成熟した自然発生mRNAの5’から3’の配列の任意の部分に対して90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、若しくは100%(若しくは少なくともそれらの数値)、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲、相補的である配列(5’から3’)を有する。当業者は、mRNA阻害剤の配列として、成熟mRNAの配列に対して相補的であるプローブ配列の一部分を使用し得る。更に、プローブ配列のその部分は、成熟mRNAの配列に対してなおも90%相補的であるように変化し得る。
【0046】
例示的なHIF1α阻害性核酸には、EZN-2698が含まれる。
【0047】
C.HIF1α阻害性ポリペプチド
ある特定の実施形態では、本明細書において、HIF1α阻害剤ポリペプチドが開示される。いくつかの実施形態では、HIF1α阻害剤ポリペプチドは、HIF1α抗体である。いくつかの実施形態では、抗HIF1α抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、阻害剤ポリペプチドは、抗体様分子である。いくつかの実施形態では、抗体様は、ナノボディである。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、又はscFvである。一実施形態では、抗体は、キメラ抗体、例えば、異種の非ヒト、ヒト、又はヒト化配列(例えば、フレームワーク及び/又は定常ドメイン配列)にグラフトされた非ヒトドナーからの抗原結合配列を含む抗体である。一実施形態では、非ヒトドナーは、マウスである。一実施形態では、抗原結合配列は、合成であり、例えば、変異誘発(例えば、ファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られる。一実施形態では、キメラ抗体は、マウスV領域及びヒトC領域を有する。一実施形態では、マウス軽鎖V領域は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトIgG1 C領域に融合されている。
【0048】
抗体断片の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインからなる「Fd」断片、(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなる「Fv」断片、(iv)VHドメインからなる「dAb」断片、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(vii)VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインが会合して結合ドメインを形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結されている、一本鎖Fv分子(「scFv」)、(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(例えば、米国特許第5,091,513号を参照されたい)、並びに(ix)遺伝子融合によって構築された多価又は多重特異性断片である、ダイアボディ(米国特許公開第2005/0214860号)。Fv、scFv、又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化し得る。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディもまた作製され得る(Hu et al,1996)。
【0049】
いくつかの実施形態では、例えば、糖尿病の治療における抗HIF1αナノボディの使用が開示される。
【0050】
D.HIF1α阻害性小分子
本明細書で使用される場合、「小分子」は、従来の有機化学方法(例えば、研究所における)を介して合成されるか、又は自然に見られる有機化合物を指す。典型的には、小分子は、いくつかの炭素-炭素結合を含み、約1500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、小分子は、約1000グラム/モル未満である。ある特定の実施形態では、小分子は、約550グラム/モル未満である。ある特定の実施形態では、小分子は、約200~約550グラム/モルである。ある特定の実施形態では、小分子は、ペプチド(例えば、ペプチジル結合によって結合された2つ以上のアミノ酸を含む化合物)を除外する。ある特定の実施形態では、小分子は、核酸を除外する。
【0051】
例えば、小分子HIF1α阻害剤は、HIF1α機能又は活性を阻害すると判断された任意の小分子であってもよい。そのような小分子は、インビトロ又はインビボでの機能アッセイに基づいて判断され得る。ある特定のHIF1α阻害性分子(すなわち、HIF1α阻害剤)は、当該技術分野において既知であり、例えば、KC7F2、IDF-11774、アミノフラボン、AJM290、AW464、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、PX-478、FM19G11、レスベラトロール、ラパマイシン、エベロリムス、CCI779、シリビニン、ジゴキシン、YC-1、フェネチルイソチオシアナイト、ケトミン、フラボピリドール、ボルテゾミブ、アンホテリシンB、Bay87-2243、PX-478、及びガネタシピブを含む。
【0052】
本明細書に記載されるHIF1α阻害剤のうちの1つ以上は、ある特定の本開示の実施形態から除外されてもよい。
【0053】
III.PFKFB3
PFKFB3は、6-ホスホフルクト-2-キナーゼ/フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ3、6PF-2-K/Fru-2,6-P2ase脳/胎盤型アイソザイム、腎臓がん抗原NY-REN-56、6PF-2-K/Fru-2,6-P2ase3、PFK/FBPase3、IPFK-2、誘発性6-ホスホフルクト-2-キナーゼ/フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ3、フルクトース-6-リン酸,2-キナーゼ/フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ3、6-ホスホフルクト-2-キナーゼ/フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ3、IPFK2、及びPFK2とも称される。
【0054】
以下の配列は、ヒトにおけるPFKFB3 mRNAを例示する(配列番号3)
ccctttcccc tccctcgccc gccccgccgc ccgcaggcgc cccgagtcgc ggggctgccg cttggacgtc gtcctgtctg ggtgtcgcgg gccggccccg cggggagcgc ccccggcgcg atgcccttca ggaaagcctg tgggccaaag ctgaccaact cccccaccgt catcgtcatg gtgggcctcc ccgcccgggg caagacctac atctccaaga agctgactcg ctacctcaac tggattggcg tccccacaaa agtgttcaac gtcggggagt atcgccggga ggctgtgaag cagtacagct cctacaactt cttccgcccc gacaatgagg aagccatgaa agtccggaag caatgtgcct tagctgcctt gagagatgtc aaaagctacc tggcgaaaga agggggacaa attgcggttt tcgatgccac caatactact agagagagga gacacatgat ccttcatttt gccaaagaaa atgactttaa ggcgtttttc atcgagtcgg tgtgcgacga ccctacagtt gtggcctcca atatcatgga agttaaaatc tccagcccgg attacaaaga ctgcaactcg gcagaagcca tggacgactt catgaagagg atcagttgct atgaagccag ctaccagccc ctcgaccccg acaaatgcga cagggacttg tcgctgatca aggtgattga cgtgggccgg aggttcctgg tgaaccgggt gcaggaccac atccagagcc gcatcgtgta ctacctgatg aacatccacg tgcagccgcg taccatctac ctgtgccggc acggcgagaa cgagcacaac ctccagggcc gcatcggggg cgactcaggc ctgtccagcc ggggcaagaa gtttgccagt gctctgagca agttcgtgga ggagcagaac ctgaaggacc tgcgcgtgtg gaccagccag ctgaagagca ccatccagac ggccgaggcg ctgcggctgc cctacgagca gtggaaggcg ctcaatgaga tcgacgcggg cgtctgtgag gagctgacct acgaggagat cagggacacc taccctgagg agtatgcgct gcgggagcag gacaagtact attaccgcta ccccaccggg gagtcctacc aggacctggt ccagcgcttg gagccagtga tcatggagct ggagcggcag gagaatgtgc tggtcatctg ccaccaggcc gtcctgcgct gcctgcttgc ctacttcctg gataagagtg cagaggagat gccctacctg aaatgccctc ttcacaccgt cctgaaactg acgcctgtcg cttatggctg ccgtgtggaa tccatctacc tgaacgtgga gtccgtctgc acacaccggg agaggtcaga ggatgcaaag aagggaccta acccgctcat gagacgcaat agtgtcaccc cgctagccag ccccgaaccc accaaaaagc ctcgcatcaa cagctttgag gagcatgtgg cctccacctc ggccgccctg cccagctgcc tgcccccgga ggtgcccacg cagctgcctg gacaaaacat gaaaggctcc cggagcagcg ctgactcctc caggaaacac tgaggcagac gtgtcggttc cattccattt ccatttctgc agcttagctt gtgtcctgcc ctccgcccga ggcaaaacgt atcctgagga cttcttccgg agagggtggg gtggagcagc gggggagcct tggccgaaga gaaccatgct tggcaccgtc tgtgtcccct cggccgctgg acaccagaaa gccacgtggg tccctggcgc cctgccttta gccgtggggc ccccacctcc actctctggg tttcctagga atgtccagcc tcggagacct tcacaaagcc ttgggagggt gatgagtgct ggtcctgaca ggaggccgct ggggacactg tgctgttttg tttcgtttct gtgatctccc ggcacgtttg gagctgggaa gaccacactg gtggcagaat cctaaaatta aaggaggcag gctcctagtt gctgaaagtt aaggaatgtg taaaacctcc acgtgactgt ttggtgcatc ttgacctggg aagacgcctc atgggaacga acttggacag gtgttgggtt gaggcctctt ctgcaggaag tccctgagct gagacgcaag ttggctgggt ggtccgcacc ctggctctcc tgcaggtcca cacaccttcc aggcctgtgg cctgcctcca aagatgtgca agggcaggct ggctgcacgg ggagagggaa gtattttgcc gaaatatgag aactggggcc tcctgctccc agggagctcc agggcccctc tctcctccca cctggacttg gggggaactg agaaacactt tcctggagct gctggctttt gcactttttt gatggcagaa gtgtgacctg agagtcccac cttctcttca ggaacgtaga tgttggggtg tcttgccctg gggggcttgg aacctctgaa ggtggggagc ggaacacctg gcatccttcc ccagcacttg cattaccgtc cctgctcttc ccaggtgggg acagtggccc aagcaaggcc tcactcgcag ccacttcttc aagagctgcc tgcacactgt cttggagcat ctgccttgtg cctggcactc tgccggtgcc ttgggaaggt cggaagagtg gactttgtcc tggccttccc ttcatggcgt ctatgacact tttgtggtga tggaaagcat gggacctgtc gtctcagcct gttggtttct cctcattgcc tcaaaccctg gggtaggtgg gacggggggt ctcgtgccca gatgaaacca tttggaaact cggcagcaga gtttgtccaa atgacccttt tcaggatgtc tcaaagcttg tgccaaaggt cacttttctt tcctgccttc tgctgtgagc cctgagatcc tcctcccagc tcaagggaca ggtcctgggt gagggtggga gatttagaca cctgaaactg ggcgtggaga gaagagccgt tgctgtttgt tttttgggaa gagcttttaa agaatgcatg tttttttcct ggttggaatt gagtaggaac tgaggctgtg cttcaggtat ggtacaatca agtgggggat tttcatgctg aaccattcaa gccctccccg cccgttgcac ccactttggc tggcgtctgc tggagaggat gtctctgtcc gcattcccgt gcagctccag gctcgcgcag ttttctctct ctccctggat gttgagtctc atcagaatat gtgggtaggg ggtggacgtg cacgggtgca tgattgtgct taacttggtt gtatttttcg atttgacatg gaaggcctgt tgctttgctc ttgagaatag tttctcgtgt ccccctcgca ggcctcattc tttgaacatc gactctgaag tttgatacag ataggggctt gatagctgtg gtcccctctc ccctctgact acctaaaatc aatacctaaa tacagaagcc ttggtctaac acgggacttt tagtttgcga agggcctaga tagggagaga ggtaacatga atctggacag ggagggagat actatagaaa ggagaacact gcctactttg caagccagtg acctgccttt tgaggggaca ttggacgggg gccgggggcg ggggttgggt ttgagctaca gtcatgaact tttggcgtct actgattcct ccaactctcc accccacaaa ataacgggga ccaatatttt taactttgcc tatttgtttt tgggtgagtt tcccccctcc ttattctgtc ctgagaccac gggcaaagct cttcattttg agagagaaga aaaactgttt ggaaccacac caatgatatt tttctttgta atacttgaaa tttatttttt tattattttg atagcagatg tgctatttat ttatttaata tgtataagga gcctaaacaa tagaaagctg tagagattgg gtttcattgt taattggttt gggagcctcc tatgtgtgac ttatgacttc tctgtgttct gtgtatttgt ctgaattaat gacctgggat ataaagctat gctagctttc aaacaggaga tgcctttcag aaatttgtat attttgcagt tgccagacca ataaaatacc tggttgaaat acatggacga agtaaa。
【0055】
タンパク質配列は、以下によって例示される(配列番号4):
MPFRKACGPKLTNSPTVIVMVGLPARGKTYISKKLTRYLNWIGVPTKVFNVGEYRREAVKQYSSYNFFRPDNEEAMKVRKQCALAALRDVKSYLAKEGGQIAVFDATNTTRERRHMILHFAKENDFKAFFIESVCDDPTVVASNIMEVKISSPDYKDCNSAEAMDDFMKRISCYEASYQPLDPDKCDRDLSLIKVIDVGRRFLVNRVQDHIQSRIVYYLMNIHVQPRTIYLCRHGENEHNLQGRIGGDSGLSSRGKKFASALSKFVEEQNLKDLRVWTSQLKSTIQTAEALRLPYEQWKALNEIDAGVCEELTYEEIRDTYPEEYALREQDKYYYRYPTGESYQDLVQRLEPVIMELERQENVLVICHQAVLRCLLAYFLDKSAEEMPYLKCPLHTVLKLTPVAYGCRVESIYLNVESVCTHRERSEDAKKGPNPLMRRNSVTPLASPEPTKKPRINSFEEHVASTSAALPSCLPPEVPTQLPGQNMKGSRSSADSSRKH。
【0056】
上記のタンパク質及びmRNA配列は、遺伝子の1つのアイソフォーム(アイソフォーム2)を表すが、他のアイソフォームが当該技術分野において既知である。例えば、以下のGenbank番号は、追加のアイソフォームを表す。これらのGenbank番号に関連する配列は、全ての目的で参照により組み込まれる。
【表1】
【0057】
この遺伝子によってコードされるタンパク質は、真核生物における解糖を制御する調節分子である、フルクトース-2,6-ビスリン酸の合成及び分解の両方に関与する、二官能性タンパク質のファミリーに属する。コードされたタンパク質は、フルクトース-2,6-ビスリン酸(F2,6BP)の合成に触媒作用を及ぼす6-ホスホフルクト-2-キナーゼ活性、及びF2,6BPの分解に触媒作用を及ぼすフルクトース-2,6-ビスホスファターゼ活性を有する。このタンパク質は、細胞サイクルの進行及びアポトーシスの防止に必要とされる。これは、グルコース代謝を腫瘍細胞中の細胞増殖及び生存に結び付ける、サイクリン依存性キナーゼ1の調節因子として機能する。
【0058】
A.PFKFB3阻害剤
PFKFB3阻害剤は、PFKFB3活性について200μM又はそれ以下の濃度、例えば、少なくとも又は最大又は約200、100、80、50、40、20、10、5、1μM、100、10、1nM、若しくはそれ以下の濃度(又はそれらから導き出され得る任意の範囲若しくは値)のIC50を有する化合物又は薬剤のクラスの任意のメンバー、あるいはPFKFB3の発現を阻害する任意の化合物又は薬剤を指し得る。PFKFB3活性又は機能の例としては、解糖の調節、キナーゼ活性、CDK1の調節、6-ホスホフルクト-2-キナーゼ活性、フルクトース-2,6-ビスリン酸2-ホスファターゼ活性、ATP結合活性、及び酵素触媒活性が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、阻害は、対照レベル又は試料と比較して減少し得る。更なる実施形態では、MTTアッセイ、細胞増殖アッセイ、Ki67免疫蛍光、アポトーシスアッセイ、又は解糖アッセイなどの機能アッセイが、PFKFB3阻害剤を試験するために使用されてもよい。本開示の方法及び組成物は、1つ以上のPFKFB3阻害剤を含んでもよい。開示されるPFKFB3阻害剤のうちの1つ以上が、本開示のある特定の実施形態から除外されてもよいことが具体的に企図される。また本明細書において、記載されるPFKFB3阻害剤の薬学的に許容される塩及びプロドラッグも企図される。ある特定の例示的なPFKFB3阻害剤が本明細書に記載されるが、任意のPFKFB3阻害剤が本開示のある特定の実施形態で使用され得ることが企図される。
【0059】
いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、標的化分子に作動可能に連結(例えば、共有結合、非共有結合など)されている。標的化分子は、特定の生物標的又は細胞標的に結合するように設計された分子を説明する。標的化分子は、薬剤(例えば、PFKFB3阻害剤などの治療剤)を特定の生物組織又は細胞型(例えば、β細胞)に特異的に方向付ける又は標的化するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、標的化分子は、対象のβ細胞に結合するように構成されている。いくつかの実施形態では、標的化分子は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体に結合し、それによって、PFKFB3阻害剤を対象のβ細胞に標的化するように構成されている。いくつかの実施形態では、標的化分子は、抗体又は抗体様分子である。
【0060】
B.PFKFB3阻害性核酸
当該技術分野において既知の阻害性核酸又はPFKFB3の遺伝子発現を阻害する任意の方法が、ある特定の実施形態で企図される。阻害性核酸の例としては、アンチセンス核酸、例えば、siRNA(低分子干渉RNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA、任意の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。また、本明細書に記載される阻害剤のいずれかをコードするリボザイム又は核酸も含まれる。阻害性核酸は、遺伝子の転写を阻害し得るか、又は細胞中の遺伝子転写物の翻訳を妨げ得る。阻害性核酸は、16~1000ヌクレオチド長、及びある特定の実施形態では18~100ヌクレオチド長であってもよい。核酸は、少なくとも又は最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、90、又はそれらから導き出され得る任意の範囲のヌクレオチドを有してもよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「単離された」とは、ヒト介入により自然の状態から改変又は除去されたことを意味する。例えば、生きている動物において自然に存在するsiRNAは、「単離されて」いないが、合成siRNA、又はその自然な状態の共存物質から部分的若しくは完全に分離したsiRNAは、「単離されて」いる。単離されたsiRNAは、実質的に精製された形態で存在することができるか、又は例えば、siRNAが送達された細胞などの非天然環境において存在することができる。
【0062】
阻害性核酸は、当該技術分野において周知である。例えば、siRNA及び二本鎖RNAは、米国特許第6,506,559号及び同第6,573,099号、並びに米国特許公開第2003/0051263号、同第2003/0055020号、同第2004/0265839号、同第2002/0168707号、同第2003/0159161号、同及び第2004/0064842号に記載されており、これらの全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
具体的に、阻害性核酸は、少なくとも10%、20%、30%、若しくは40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%若しくはそれ以上、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲若しくは値、PFKFB3の発現を減少させることが可能であり得る。
【0064】
更なる実施形態では、PFKFB3阻害剤である合成核酸が存在する。阻害剤は、17~25ヌクレオチド長であってもよく、成熟PFKFB3 mRNAの5’から3’の配列の任意の部分に対して少なくとも90%相補的である5’から3’の配列を含む。ある特定の実施形態では、阻害剤分子は、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25ヌクレオチド長であるか、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲である。更に、阻害剤分子は、成熟PFKFB3 mRNA、特に成熟した自然発生mRNAの5’から3’の配列の任意の部分に対して90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、若しくは100%(若しくは少なくともそれらの数値)、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲、相補的である配列(5’から3’)を有する。当業者は、mRNA阻害剤の配列として、成熟mRNAの配列に対して相補的であるプローブ配列の一部分を使用し得る。更に、プローブ配列のその部分は、成熟mRNAの配列に対してなおも90%相補的であるように改変され得る。
【0065】
PFKFB3の阻害剤核酸は、市販もされている。例えば、以下のmiRNAは、PFKFB3を阻害し得る:hsa-mir-26b-5p(MIRT028775)、hsa-mir-330-3p(MIRT043840)、hsa-mir-6779-5p(MIRT454747)、hsa-mir-6780a-5p(MIRT454748)、hsa-mir-3689c(MIRT454749)、hsa-mir-3689b-3p(MIRT454750)、hsa-mir-3689a-3p(MIRT454751)、hsa-mir-30b-3p(MIRT454752)、hsa-mir-1273h-5p(MIRT454753)、hsa-mir-6778-5p(MIRT454754)、hsa-mir-1233-5p(MIRT454755)、hsa-mir-6799-5p(MIRT454756)、hsa-mir-7106-5p(MIRT454757)、hsa-mir-6775-3p(MIRT454758)、hsa-mir-1291(MIRT454759)、hsa-mir-765(MIRT454760)、hsa-mir-423-5p(MIRT454761)、hsa-mir-3184-5p(MIRT454762)、hsa-mir-6856-5p(MIRT454763)、hsa-mir-6758-5p(MIRT454764)、hsa-mir-3185(MIRT527973)、hsa-mir-6892-3p(MIRT527974)、hsa-mir-6840-5p(MIRT527975)、及びhsa-mir-6865-3p(MIRT527976)。
【0066】
siRNA及びshRNAは、例えば、Santa Cruz biotechnology(それぞれsc-44011及びsc-44011-SH)からも市販されている。
【0067】
C.PFKFB3阻害性ポリペプチド
ある特定の実施形態では、本明細書において、PFKFB3阻害剤ペプチドが開示される。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤ポリペプチドは、PFKFB3抗体である。いくつかの実施形態では、抗PFKFB3抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体様分子である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、又はscFvである。一実施形態では、抗体は、キメラ抗体、例えば、異種の非ヒト、ヒト、又はヒト化配列(例えば、フレームワーク及び/又は定常ドメイン配列)にグラフトされた非ヒトドナーからの抗原結合配列を含む抗体である。一実施形態では、非ヒトドナーは、マウスである。一実施形態では、抗原結合配列は、合成であり、例えば、変異誘発(例えば、ファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られる。一実施形態では、キメラ抗体は、マウスV領域及びヒトC領域を有する。一実施形態では、マウス軽鎖V領域は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトIgG1 C領域に融合されている。
【0068】
抗体断片の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインからなる「Fd」断片、(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなる「Fv」断片、(iv)VHドメインからなる「dAb」断片、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(vii)VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインが会合して結合ドメインを形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結されている、一本鎖Fv分子(「scFv」)、(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(例えば、米国特許第5,091,513号を参照されたい)、並びに(ix)遺伝子融合によって構築された多価又は多重特異性断片である、ダイアボディ(米国特許公開第2005/0214860号)。Fv、scFv、又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化し得る。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディもまた作製され得る(Hu et al,1996)。
【0069】
D.PFKFB3阻害性小分子
本明細書で使用される場合、「小分子」は、従来の有機化学方法(例えば、研究所における)を介して合成されるか、又は自然に見られる有機化合物を指す。典型的には、小分子は、いくつかの炭素-炭素結合を含み、約1500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、小分子は、約1000グラム/モル未満である。ある特定の実施形態では、小分子は、約550グラム/モル未満である。ある特定の実施形態では、小分子は、約200~約550グラム/モルである。ある特定の実施形態では、小分子は、ペプチド(例えば、ペプチジル結合によって結合された2つ以上のアミノ酸を含む化合物)を除外する。ある特定の実施形態では、小分子は、核酸を除外する。
【0070】
例えば、小分子PFKFB3阻害剤は、PFKFB3機能又は活性を阻害すると判断された任意の小分子であってもよい。そのような小分子は、インビトロ又はインビボでの機能アッセイに基づいて判断され得る。いくつかの実施形態では、本開示のPFKFB3阻害剤は、PFKFB3阻害性分子である。PFKFB3阻害性分子は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許公開第20130059879号、同第20120177749号、同第20100267815号、同第20100267815号、及び同第20090074884号に記載され、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
例示的な阻害性化合物としては、以下が挙げられる:(1H-ベンゾ[g]インドール-2-イル)-フェニル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-フェニル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノンのHCl塩、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-3-イル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(5-メチル-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-フェニル-メタノン、フェニル-(7H-ピロロ[2,3-h]キノリン-8-イル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-クロロ-ピリジン-4-イル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(1-オキシ-ピリジン-4-イル)-メタノン、フェニル-(6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシルテニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ-フェニル)-メタノン、4-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-安息香酸メチルエステル、4-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-安息香酸、(4-アミノ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、5-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-2-ベンジルオキシ-安息香酸メチル、5-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-2-ベンジルオキシ-安息香酸メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-メトキシ-ピリジン-4-イル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メトキシ-フェニル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノン、(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ-フェニル)-(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-ヒドロキシメチル-フェニル)-メタノン、シクロヘキシル-(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-フルオロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-p-トリル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メトキシ-フェニル)-メタノール、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノール、3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボン酸フェニルアミド、3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボン酸(3-メトキシ-フェニル)-アミド、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ジメチルアミノ-フェニル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(5-ヒドロキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、N-[4-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-フェニル]-メタンスルホンアミド、3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボン酸(4-アミノ-フェニル)-アミド、(4-アミノ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-フルオロ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-フルオロ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-メトキシ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-メトキシ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-フルオロ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-フルオロ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-フルオロ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-フルオロ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-フェニル)-(7-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-フェニル)-(5-ヒドロキシ-3-メチル-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(7-アミノ-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メチル-ピリジン-4-イル)-メタノン、(5-アミノ-3H-ピロロ[3,2-f]イソキノリン-2-イル)-(3-メトキシ-ピリジン-4-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-メチル-フェニル)-(9-ヒドロキシ-3H-ピロロ[2,3-c]キノリン-2-イル)-メタノン、及び(4-アミノ-フェニル)-(7-メタンスルホニル-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン。
【0072】
更なる例示的な阻害性化合物としては、以下が挙げられる:1-ピリジン-4-イル-3-キノリン-4-イル-プロペノン、1-ピリジン-4-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、1-ピリジン-3-イル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-ピリジン-3-イル-3-キノリン-4-イル-プロペノン、1-ピリジン-3-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、1-ナフタレン-2-イル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-ナフタレン-2-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、1-ピリジン-4-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、3-(4-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(8-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-3-イル-プロペノン、3-キノリン-2-イル-1-p-トリル-プロペノン、3-(8-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(8-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-p-トリル-プロペノン、3-(4-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-p-トリル-プロペノン、1-フェニル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-ピリジン-2-イル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(2-ヒドロキシ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(2-アミノ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(4-アミノ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、4-(3-キノリン-2-イル-アクリロイル)-ベンズアミド、4-(3-キノリン-2-イル-アクリロイル)-安息香酸、3-(8-メチル-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、1-(2-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、3-(8-フルオロ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(6-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(8-メチルアミノ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(7-メチル-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、及び1-メチル-4-[3-(8-メチル-キノリン-2-イル)-アクリロイル]-ピリジニウム。
【0073】
更なる例示的な阻害性化合物としては、以下が挙げられる:PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、(2S)-N-[4-[[3-シアノ-1-(2-メチルプロピル)-1H-インドール-5-イル]オキシ]フェニル]-2-ピロリジンカルボキサミド3PO(3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン)、(2S)-N-[4-[[3-シアノ-1-[(3,5-ジメチル-4-イソキサゾリル)メチル]-1H-インドール-5-イル]オキシ]フェニル]-2-ピロリジンカルボキサミド、及び7-ヒドロキシ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸エチル。
【0074】
更なる例示的な阻害性化合物としては、以下が挙げられる:N-ブロモアセチルエタノールアミンリン酸(BrAcNHEtOP)、7,8-ジヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)クロメン-4-オン(YN1)、7-ヒドロキシ-2-オキソクロメン-3-カルボン酸エチル(YZ9)、1-(3-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン(PQP)、PFK-158、化合物26(Boyd et al.J.Med Chem 2015)、KAN0436151、及びKAN0436067。
【0075】
本明細書に記載されるPFKFB3阻害性分子のうちの1つ以上は、ある特定の本開示の実施形態から除外されてもよい。
【0076】
IV.バイホルモン細胞の排除
本開示の態様は、細胞の集団からのバイホルモン細胞の排除のための方法、並びにそれに使用するための組成物を対象とする。本明細書で使用される場合、「バイホルモン細胞」という用語(同様に「ポリホルモン細胞」)は、インスリン(すなわち、「インスリン」である)及びグルカゴン(すなわち、「グルカゴン」である)の両方を産生する細胞を指す。そのようなバイホルモン細胞は、当該技術分野において認識されており、例えば、JE,Erener S.et al.,Stem Cell Res.2014 Jan;12(1):194-208、及びAlvarez-Dominguez JR,et al.Cell Stem Cell.2020 Jan 2;26(1):108-122.e10に記載され、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
本明細書に開示されるように、PFKFB3及び/又はHIF1αの阻害は、例えば、膵島細胞の集団から、バイホルモン細胞を排除するために使用され得る。したがって、本開示の態様は、細胞の集団からのバイホルモン細胞の排除のための方法を対象とし、方法は、PFKFB3阻害剤及び/又はHIF1α阻害剤を提供することを含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、細胞の集団にインビトロで提供される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、細胞の集団にインビボで提供される。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、分化した幹細胞を含む。そのような分化した幹細胞には、例えば、分化した幹細胞由来の膵島細胞、及び分化した幹細胞由来のバイホルモン細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、1型糖尿病又は2型糖尿病を有するか、有するリスクがあるか、又は有すると疑われている患者から得られる。開示される方法は、PFKFB3阻害剤及び/又はHIF1α阻害剤を提供した後に、細胞の集団を対象に投与することを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、対象は、1型糖尿病又は2型糖尿病を有するか、有するリスクがあるか、又は有すると疑われている。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、対象に対して自家性である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、対象に対して自家性ではない。
【0078】
V.医薬組成物
実施形態は、HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤を含む組成物で糖尿病を治療するための方法を含む。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、HIF1α阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、PFKFB3阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、HIF1α阻害剤とPFKFB3阻害剤戸を含む。組成物の投与は、典型的には、任意の一般的な経路を介する。これには、経口、非経口、同所、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、又は静脈内注射が含まれるが、これらに限定されない。経口製剤は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放出製剤、又は粉末の形態をとり、約10%~約95%又は約25%~約70%の活性成分を含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与される。
【0079】
典型的には、組成物は、投与製剤と適合する方法で、かつ治療的に有効であり、免疫修飾するような量で投与される。投与される量は、治療される対象によって決まる。投与される必要がある活性成分の正確な量は、医師の判断によって決まる。
【0080】
適用方法は、広く異なり得る。医薬組成物の投与のための従来の方法のいずれも適用可能である。これらは、固形の生理学的に許容される塩基上又は生理学的に許容される分散体中での経口適用、非経口、注射によるものなどを含むと考えられる。医薬組成物の投与量は、投与経路によって決まり、対象の大きさ及び健康に応じて異なる。
【0081】
多くの場合、最大約又は少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の複数回投与を有することが望ましい。投与は、2日~12週間の間隔、より頻繁には1日~2週間の間隔の範囲であってもよい。投与過程の後には、HIF1α及び/又はPFKFB3活性についてのアッセイが続いてもよい。
【0082】
「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という語句は、動物又はヒトに投与されたときに有害反応、アレルギー反応、又は他の厄介な反応をもたらさない分子実体又は組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分と不適合でない限り、免疫原性組成物及び治療用組成物におけるその使用が企図される。
【0083】
「薬学的に許容される塩」とは、上で定義されるように薬学的に許容され、かつ所望の薬理活性を有する、本発明の塩(例えば、HIF1α阻害剤、PFKFB3阻害剤)を意味する。そのような塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、又は1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4′-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ及びジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、三級ブチル酢酸、トリメチル酢酸などの有機酸で形成される酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容される塩としてはまた、存在する酸性プロトンが無機又は有機塩基と反応することができる場合に形成され得る、塩基付加塩が挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化カルシウムが挙げられる。許容される有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが挙げられる。塩が全体として薬理学的に許容される限り、本発明の任意の塩の一部をなす特定のアニオン又はカチオンは重要ではないことが認識されるべきである。薬学的に許容される塩、並びにそれらの調製及び使用方法の追加の例は、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,and Use(P.H.Stahl & C.G.Wermuth eds.,Verlag Helvetica Chimica Acta,2002)に提示される。
【0084】
開示される組成物は、プロドラッグを含んでもよい。「プロドラッグ」とは、本発明に従った阻害剤に、インビボで代謝的に変換可能である化合物を意味する。プロドラッグ自体は同様に、所与の標的タンパク質に関して活性を有しても有しなくてもよい。例えば、ヒドロキシ基を含む化合物は、加水分解によってインビボでヒドロキシ化合物に変換され得るエステルとして投与されてもよい。インビボでヒドロキシ化合物に変換され得る好適なエステルとしては、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メチレン-ビス-β-ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチシン酸塩、イセチオン酸塩、ジ-p-トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、アミノ酸のエステルなどが挙げられる。同様に、アミン基を含む化合物は、加水分解によってインビボでアミン化合物に変換され得るアミドとして投与されてもよい。
【0085】
HIF1α阻害剤及び/又はPFKFB3阻害剤は、非経口投与のために製剤化され得、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、皮下、又は更には腹腔内の経路を介した注射のために製剤化され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内注射によって投与される。活性成分を含有する水性組成物の調製は、本開示を踏まえて当業者に知られるであろう。典型的には、そのような組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製され得、注射前に液体を添加して溶液又は懸濁液を調製するための使用に好適な固形形態もまた調製され得、調製物はまた、乳化され得る。
【0086】
注射剤使用に好適な医薬形態としては、滅菌水性溶液又は分散液;ゴマ油、落花生油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は、滅菌されていなければならず、容易に注射され得る程度まで流体でなければならない。また、製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0087】
組成物は、中性形態又は塩形態に製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)、及び例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される酸付加塩が挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来し得る。
【0088】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)を含有する、溶媒又は分散媒、それらの好適な混合物、並びに植物油であってもよい。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
【0089】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中の必要な量の活性成分を、上に列挙された様々な他の成分と組み込むことによって調製され、必要に応じて、その後に濾過滅菌が続く。概して、分散体は、様々な滅菌された活性成分を、塩基性分散媒を含有する滅菌ビヒクル、及び上に列挙されたものからの必要とされる他の成分に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技法であり、これらは、活性成分の粉末に加えて、すでに滅菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望の成分をもたらす。
【0090】
有効量の治療用又は予防用組成物は、意図された目的に基づいて決定される。「単位用量」又は「投与量」という用語は、対照における使用に好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、その投与、すなわち、適切な経路及びレジメンと関連して上で考察された所望の応答をもたらすように計算された、組成物の所定の量を含有する。治療回数及び単位用量の両方に従って投与される量は、所望の結果及び/又は保護によって決まる。組成物の正確な量もまた、医師の判断よって決まり、各個人に特有である。用量に影響を及ぼす要因には、対照の身体的及び臨床的状態、投与経路、治療の意図された目的(症状の緩和対治癒)、並びに特定の組成物の効力、安定性、及び毒性が含まれる。製剤化後、溶液は、投与製剤と適合する方法で、かつ治療的又は予防的に有効であるような量で投与される。製剤は、上記の注射用溶液などの様々な剤形で投与される。
【0091】
製剤化後、溶液は、投与製剤と適合する方法で、かつ治療的又は予防的に有効であるような量で投与される。製剤は、上記の注射用溶液などの様々な剤形で投与される。
【0092】
一例として、ヒト成人(体重およそ70キログラム)に対して、約0.1mg~約3000mg(それらの間の全ての値及び範囲を含む)、又は約5mg~約1000mg(それらの間の全ての値及び範囲を含む)、又は約10mg~約100mg(それらの間の全ての値及び範囲を含む)の化合物が投与される。これらの投与量範囲が、一例にすぎないこと、及び投与が当業者に既知の要因によって調整され得ることが理解される。
【0093】
ある特定の実施形態では、対象は、約、少なくとも約、又は最大約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7.3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0.19.5、20.0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、410、420、425、430、440、441、450、460、470、475、480、490、500、510、520、525、530、540、550、560、570、575、580、590、600、610、620、625、630、640、650、660、670、675、680、690、700、710、720、725、730、740、750、760、770、775、780、790、800、810、820、825、830、840、850、860、870、875、880、890、900、910、920、925、930、940、950、960、970、975、980、990、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、6000、7000、8000、9000、10000ミリグラム(mg)若しくはマイクログラム(mcg)若しくはμg/kg、又はマイクログラム/kg/分若しくはmg/kg/分、又はマイクログラム/kg/時間若しくはmg/kg/時間、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲、投与される。
【0094】
用量は、必要に応じて、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、若しくは24時間毎(若しくはそれらの中で導き出され得る任意の範囲)、又は1日当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9回以上(若しくはそれらの中で導き出され得る任意の範囲)、投与されてもよい。用量は、状態の兆候の前又は後に最初に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、患者は、患者が状態の兆候又は症状を経験した又は呈した1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間後(若しくはそれらの中で導き出され得る任意の範囲)、又は1、2、3、4、若しくは5日後(若しくはそれらの中で導き出され得る任意の範囲)、レジメンの初回投与を投与される。患者は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の日数(若しくはそれらの中で導き出され得る任意の範囲)、あるいは状態の症状が消失又は低減するまで、又は感染の症状が消失又は低減した6、12、18、若しくは24時間後、又は1、2、3、4、又は5日後まで治療されてもよい。
【0095】
VI.治療用組成物及び組み合わせの投与
本明細書に提供される療法は、第1の治療(例えば、HIF1α阻害剤)及び第2の治療(例えば、PFKFB3阻害剤)など、治療剤の組み合わせの投与を含んでもよい。療法は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法で投与されてもよい。例えば、第1及び第2の治療は、連続(異なる時間に)又は同時(同じ時間に)投与されてもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2の治療は、別個の組成物中で投与される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の治療は、同じ組成物中で投与される。
【0096】
本開示の実施形態は、治療用組成物を含む組成物及び方法に関する。異なる療法は、1つの組成物中で、又は2つの組成物、3つの組成物、若しくは4つの組成物など、2つ以上の組成物中で投与されてもよい。様々な薬剤の組み合わせが用いられてもよい。
【0097】
本開示の治療剤は、同じ投与経路によって、又は異なる投与経路によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、療法は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、皮内、腹腔内、眼窩内、移植、吸収、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内投与される。いくつかの実施形態では、抗生物質は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、皮内、腹腔内、眼窩内、移植、吸収、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内投与される。適切な投与量は、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度及び経過、個人の臨床状態、個人の病歴及び治療に対する応答、並びに担当医の判断に基づいて投与され得る。
【0098】
治療は、様々な「単位用量」を含んでもよい。単位用量は、所定の量の治療用組成物を含有するものとして定義される。投与される量、並びに特定の経路及び製剤は、臨床分野の当業者の判断の技術の範囲内にある。単位用量は、単一の注射として投与される必要はないが、設定期間にわたる連続注入を含んでもよい。いくつかの実施形態では、単位用量は、単一の投与可能な用量を含む。
【0099】
治療回数及び単位用量の両方に従って投与される量は、所望の治療効果によって決まる。有効用量は、特定の効果を達成するのに必要な量を指すことが理解される。ある特定の実施形態での実施において、10mg/kg~200mg/kgの用量が、これらの薬剤の保護能力に影響を及ぼすことができることが企図される。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、及び200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、若しくはmg/日、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲の用量を含むことが企図される。更に、そのような用量は、1日の間に複数回、及び/又は複数の日、週、若しくは月、投与され得る。
【0100】
ある特定の実施形態では、有効用量の医薬組成物は、約1μM~150μMの血中濃度を提供することができるものである。別の実施形態では、有効用量は、約4μM~100μM、若しくは約1μM~100μM、若しくは約1μM~50μM、若しくは約1μM~40μM、若しくは約1μM~30μM、若しくは約1μM~20μM、若しくは約1μM~10μM、若しくは約10μM~150μM、若しくは約10μM~100μM、若しくは約10μM~50μM、若しくは約25μM~150μM、若しくは約25μM~100μM、若しくは約25μM~50μM、若しくは約50μM~150μM、若しくは約50μM~100μM(又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲)の血中濃度を提供する。他の実施形態では、用量は、対象に投与される治療剤に起因する、以下の薬剤の血中濃度を提供することができる:約、少なくとも約、又は最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、若しくは100μM、又はそれらの中で導き出され得る任意の範囲。ある特定の実施形態では、対象に投与される治療剤は、体内で代謝されて代謝治療剤になり、この場合、血中濃度は、その薬剤の量を指し得る。あるいは、治療剤が治療剤によって代謝されない限りにおいて、本明細書で考察される血中濃度は、非代謝治療剤を指し得る。
【0101】
治療用組成物の正確な量もまた、医師の判断よって決まり、各個人に特有である。用量に影響を及ぼす要因には、患者の身体的及び臨床的状態、投与経路、治療の意図された目的(症状の緩和対治癒)、並びに対象が受けている可能性がある特定の治療用物質又は他の療法の効力、安定性、及び毒性が含まれる。
【0102】
μg/kg又はmg/kg体重の投与量単位は、4μM~100μMなどのμg/ml又はmM(血中濃度)の同等の濃度で変換及び表現され得ることが、当業者によって理解され、かつ知られるであろう。また、取り込みが種及び臓器/組織に依存することが理解される。適用される変換係数、並びに取り込み及び濃度測定値に関して行われる生理学的仮定は、周知であり、当業者が、1つの濃度測定値を別の濃度測定値に変換し、本明細書に記載される用量、有効性、及び結果に関して合理的な比較を行い、結論を出すことを可能にするであろう。
【0103】
VII.遺伝子シグネチャの検出
特定の実施形態は、個体における遺伝子シグネチャを検出する方法に関する。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャを検出するための方法には、例えば、選択的オリゴヌクレオチドプローブ、アレイ、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、分子ビーコン、制限断片長多型分析、酵素連鎖反応、フラップエンドヌクレアーゼ分析、プライマー伸長、5’-ヌクレアーゼ分析、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、一本鎖高次構造多型分析、温度勾配ゲル電気泳動、変性高速液体クロマトグラフィ、高解像度融解、DNAミスマッチ結合タンパク質分析、surveyorヌクレアーゼアッセイ、シーケンシング、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。遺伝子シグネチャを検出するための方法には、例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、アレイ、ポリメラーゼ連鎖反応、シーケンシング、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。遺伝子シグネチャの検出は、遺伝子シグネチャの1つの特徴を検出し、加えて、同じ方法又は異なる方法を使用して、遺伝子シグネチャの異なる特徴を検出するための特定の方法を使用することを伴ってもよい。複数の異なる方法は独立して、又は組み合わせて、同じ特徴又は複数の特徴を検出するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、開示される方法は、対象からの細胞(例えば、β細胞)中のPFKFB3の発現レベルを検出することを含む。
【0104】
A.DNAシーケンシング
いくつかの実施形態では、DNAは、シーケンシングによって分析されてもよい。DNAは、ライブラリ調製、ハイブリッド捕捉、試料品質管理、生成物利用ライゲーションベースのライブラリ調製、又はそれらの組み合わせなどの、当該技術分野において既知の任意の方法によって、シーケンシングのために調製されてもよい。DNAは、任意のシーケンシング技法のために調製されてもよい。いくつかの実施形態では、シーケンシングは、20×、25×、30×、35×、40×、45×、50×、又は50×超のカバレッジで、およそ70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上のパーセンテージの標的をカバーするために実施されてもよい。いくつかの実施形態では、DNAシーケンシングは、対象からの細胞(例えば、β細胞)中のPFKFB3の発現レベルを決定するために使用される。
【0105】
B.RNAシーケンシング
いくつかの実施形態では、RNAは、シーケンシングによって分析されてもよい。RNAは、ポリA選択、cDNA合成、鎖若しくは非鎖ライブラリ調製、又はそれらの組み合わせなどの、当該技術分野において既知の任意の方法によって、シーケンシングのために調製されてもよい。RNAは、鎖特異的RNAシーケンシングを含む、任意のタイプのRNAシーケンシング技法のために調製されてもよい。いくつかの実施形態では、シーケンシングは、ペアリードを含む、およそ10M、15M、20M、25M、30M、35M、40M、又はそれ以上のリードを生成するように実施されてもよい。シーケンシングは、およそ50bp、55bp、60bp、65bp、70bp、75bp、80bp、85bp、90bp、95bp、100bp、105bp、110bp、又はそれ以上のリード長で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、生のシーケンシングデータは、推定リードカウント(RSEM)、100万のマッピングされたリード当たりのキロベースの転写物当たりの断片(FPKM)、及び/又は100万のマッピングされたリード当たりのキロベースの転写物当たりのリード(RPKM)に変換されてもよい。いくつかの実施形態では、RNAシーケンシングは、対象からの細胞(例えば、β細胞)中のPFKFB3の発現レベルを決定するために使用される。
【0106】
C.プロテオミクス
いくつかの実施形態では、タンパク質は、質量分析によって分析されてもよい。タンパク質は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、質量分析のために調製されてもよい。本明細書に包含される任意の単離されたタンパク質を含むタンパク質は、DTT、続いてヨードアセトアミドで処理されてもよい。タンパク質は、エンドペプチダーゼ、プロテイナーゼ、プロテアーゼ、又はタンパク質を切断する任意の酵素を含む、少なくとも1つのペプチダーゼとインキュベートされてもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質は、エンドペプチダーゼ、LysC、及び/又はトリプシンとインキュベートされる。タンパク質は、およそ1:1000、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:1、又は間の任意の範囲のμgの酵素対μgのタンパク質の比率を含む、任意の比率で、1つ以上のタンパク質切断酵素とインキュベートされてもよい。いくつかの実施形態では、切断されたタンパク質は、カラム精製などによって精製されてもよい。ある特定の実施形態では、精製されたペプチドは、真空下で乾燥など、瞬間凍結及び/又は乾燥されてもよい。いくつかの実施形態では、精製されたペプチドは、逆相クロマトグラフィ又は塩基性逆相液体クロマトグラフィなどによって分画されてもよい。画分は、本開示の方法の実施のために組み合わされてもよい。いくつかの実施形態では、組み合わされた画分を含む1つ以上の画分は、親和性クロマトグラフィ及び/又は結合によるホスホ濃縮を含む、ホスホペプチド濃縮、イオン交換クロマトグラフィ、化学誘導体化、免疫沈降、共沈、又はそれらの組み合わせに供される。組み合わされた画分及び/又はホスホ濃縮画分を含む、1つ以上の画分の全体又は一部分は、質量分析に供されてもよい。いくつかの実施形態では、生の質量分析データは、少なくとも1つの関連するバイオインフォマティクスツールを使用して、処理及び正規化されてもよい。いくつかの実施形態では、プロテオミクスは、対象からの細胞(例えば、β細胞)中のPFKFB3の量を決定するために使用される。
【0107】
VIII.キット
本発明のある特定の態様はまた、本開示の組成物又は本開示の方法を実施するための組成物を含有するキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上のバイオマーカーを評価するために使用され得る。ある特定の実施形態では、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000、若しくはそれ以上のプローブ、プライマー若しくはプライマーセット、合成分子若しくは阻害剤、又はそれらの中で導き出され得る任意の値若しくは範囲及び組み合わせを含有するか、少なくともそれらを含有するか、又は最大でそれらを含有する。いくつかの実施形態では、細胞中のバイオマーカー活性を評価するためのキットが存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上のバイオマーカー活性の発現レベルを評価するためのキットが開示される。いくつかの実施形態では、対象からのβ細胞中のPFKFB3の発現レベルを評価するためのキットが開示される。
【0108】
キットは、管、ボトル、バイアル、注射器、又は他の好適な容器手段など、容器内に個々に包装又は配置され得る構成成分を含んでもよい。
【0109】
個々の構成成分はまた、濃縮された量でキット内に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、構成成分は、他の構成成分と溶液中にあるのと同じ濃度で個々に提供される。構成成分の濃度は、1×、2×、5×、10×、又は20×、又はそれ以上として提供されてもよい。
【0110】
予後用途又は診断用途のための本開示のプローブ、合成核酸、非合成核酸、及び/又は阻害剤を使用するためのキットは、本開示の一部として含まれる。本明細書で特定される任意のバイオマーカーに対応するような任意の分子が具体的に企図され、バイオマーカーには、バイオマーカーの非コード配列並びにバイオマーカーのコード配列を含み得る、バイオマーカーの全て又は一部に対して同一又は相補的である核酸プライマー/プライマーセット及びプローブが含まれる。ある特定の態様では、陰性及び/又は陽性の対照核酸、プローブ、及び阻害剤がいくつかのキットの実施形態に含まれる。
【0111】
名称でバイオマーカーを伴う本開示の任意の実施形態はまた、その配列が指定の核酸の成熟配列に対して少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるバイオマーカーを伴う実施形態を包含する。
【0112】
本開示の実施形態は、好適な容器手段内に2つ以上のバイオマーカープローブを含む試料についてのバイオマーカープロファイルを評価することによって、病理学的試料の分析のためのキットを含み、バイオマーカープローブは、本明細書で特定されたバイオマーカーのうちの1つ以上を検出する。キットは、試料中の核酸を標識するための試薬を更に含むことができる。キットはまた、アミン修飾ヌクレオチド、ポリ(A)ポリメラーゼ、及びポリ(A)ポリメラーゼ緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、標識試薬を含んでもよい。標識試薬は、アミン反応性色素を含むことができる。
【実施例
【0113】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。後に続く実施例で開示される技法が、本発明の実施において良好に機能することが本発明者によって発見された技法を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成するとみなされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を踏まえて、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更が行われ得、それでもなお同様又は類似の結果が得られ得ることを理解するべきである。
【0114】
実施例1-2型糖尿病におけるβ細胞の分析
方法
組織学的評価
より小さい片の切除後、膵臓を4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences 19202、Hatfield,PA,USA)中で4℃において一晩固定し、パラフィン包埋し、4μmの厚さで分割した。β細胞面積について、ウサギ抗インスリン抗体(Cell Signaling Technology C27C9、Danvers,MA,USA、1:400)、次いで、ビオチン-SPとのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-066-152、West Grove,PA,USA、IHCについて1:100)で連続的にインキュベートした脱パラフィン切片に対して、ペルオキシダーゼ及びヘマトキシリン染色を実施し、それらの工程の後、VECTASTAIN ABC Kit(HRP)(Vector Laboratories PK-4000、Burlingame,CA,USA)、DAB substrate Kit(HRP)(Vector Laboratories SK-4100、Burlingame,CA,USA)、及びハリスヘマトキシリンを適用し、その後、切片をPermount(Fisher SP15-100、Hampton,NH,USA)で封入した。Olympus IX70反転組織培養顕微鏡(Olympus、Center Valley,PA,USA)上で、Image-Pro Plus 5.1ソフトウェアを使用して、形態学的分析を実施した。各切片の実験的マウス遺伝子型について、盲検法で2人の観察者によって、撮像及びデータ分析を実施した。マルチチャンネル画像を使用して、膵島の縁部に境界線を引いた。ピクセル閾値化を使用して、インスリン及びヘマトキシリン陽性面積を各膵島について決定した。次いで、β細胞面積をインスリン陽性面積/ヘマトキシリン陽性面積×100%として計算した。
【0115】
Leica DM6000 B研究用顕微鏡上で、Openlab 5.5.0ソフトウェアにおいて、免疫蛍光分析を実施した。以下の抗体を使用した:ラビット抗PFKFB3(Origene AP15137PU-N、Rockville,MD,USA、1:100)、マウス抗MCM2(BD Transduction Laboratories 610700、San Diego,CA,USA、1:100)、ラビット抗切断カスパーゼ-3(Cell Signaling Technology 9664S、Danvers,MA,USA、1:400)、モルモット抗インスリン(Abcam ab195956、Cambridge,MA,USA、1:400)、マウス抗グルカゴン(Sigma-Aldrich G2654、St.Louis,MO,USA,IFについて1:1000)、マウス抗c-Myc(Santa Cruz Biotechnology Inc 9E10 sc-40、Dallas,Texas,USA、1:100)、マウス抗HIF1α(Novus Biologicals NB100-105、Centennial,CO,USA、1:50)。二次抗体は以下であった:FITCとのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 706-096-148、West Grove,PA,USA、IFについて1:200)、Cy3とのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-166-152、West Grove,PA,USA、IFについて1:200)、及びAlexa 647とのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 715-606-150、West Grove,PA,USA、IFについて1:100)。In Situ Cell Death Detection Kit(Roche Diagnostics Corporation 12156792910、Indianapolis,IN,USA)を、TUNELアッセイによる細胞死の決定のために使用した。Vectashield with DAPI(Vector Laboratories H1200、Burlingame,CA,USA)を使用して、スライドを封入した。
結果
【0116】
hIAPPの毒性オリゴマーの蓄積に部分的に関連したT2Dにおいて、β細胞機能は徐々に減少する[3-5]。hIAPPは、T2Dにおけるミスフォールドタンパク質ストレスに関与する膜透過性毒性オリゴマーを形成する。hIAPPによるミスフォールドタンパク質ストレスに応答して、T2Dを有するヒトからのβ細胞中のミトコンドリアは、ミトコンドリアネットワーク断片化を通して防御位置を獲得し(図1A)、これは、30%のミトコンドリア呼吸の減衰をもたらした(図1B)。ミトコンドリア形態及び機能の変化は、Ca2+毒性に曝露されたニューロンに非常に似ており、したがって、高細胞質Ca2+への適応を反映している。実際に、ヒトIAPPトランスジェニックマウス(hTG)からの膵島は、げっ歯類IAPP(rTG)対照同腹子と比較してより高い細胞質Ca2+濃度を実証した(図1C)。酸化的損傷及びDNA損傷は、DNA損傷応答タンパク質p53、p21WAF1、及びγH2A.Xの発現の増加によって示されるように、非糖尿病(ND)ドナーと比較して、T2Dを有するドナーからの膵島からの細胞下画分において明らかであった(図1D)。
【0117】
DNA損傷応答(p53/p21WAF1軸、及びγH2A.Xの蓄積)は、T2D及びT2Dのげっ歯類モデルにおけるβ細胞の損傷を記録する。タンパク質ミスフォールディングによるストレス、及び細胞質Ca2+の急上昇は、保存されたHIF1α-PFKFB3傷害/修復プログラムによって、T2Dにおける全てのβ細胞の約3分の1の保護的代謝リプログラミングを引き起こした(図2A)。PFKFB3は、ストレス下のβ細胞中のCa2+恒常性、ミトコンドリアリモデリング、及びメタボローム変化について責任があり(図2B)、最終的に、損傷したβ細胞の生存をもたらしたと特定された。これは、HIF1α阻害又はPFKFB3の存在下又は非存在下でhIAPPを発現するために、アデノウィルスでトランスフェクトされたINS 832/13細胞を使用したインビトロ分析によって確認された。HIF1α阻害(図2C)又はPFKFB3転写後サイレンシング(図2D)は、TUNELアッセイによって証明されるように、hIAPP発現細胞中の細胞死の増加をもたらした。
【0118】
実施例2-PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスの分析
方法
動物
ホモ接合性hIAPP+/+マウスは、Dr.Peter Butlerの研究所から贈与されたものであり、すでに記載されている[15]。フロックス化PFKFB3遺伝子を担持するマウス(JAX Laboratories)を、ラットインスリンプロモーターの制御下でCreリコンビナーゼを発現するマウス(RIP-CreERT)と交配することによって、β細胞特異的誘発性PFKFB3ノックアウトマウスモデル(RIP-CreERT:PFKFB3fl/fl)を開発した。ホモ接合性hIAPP+/+バックグラウンド上のマウスを、PFKFB3fl/fl又はRIP-CreERTマウスのいずれかと交配し、次いで、PFKFB3fl/fl hIAPP+/-及びPFKFB3fl/fl RIP-CreERTマウスをともに交配して、3つの実験的遺伝子型を生成した:RIP-CreERT PFKFB3wt/wt hIAPP-/-、RIP-CreERT PFKFB3wt/wt hIAPP+/-、及びRIP-CreERT PFKFB3fl/fl hIAPP+/-(本明細書において、PFKFB3WT hIAPP-/-、PFKFB3WT hIAPP+/-、及びPFKFB3βKO hIAPP+/-と称される)。全ての実験群を高脂肪食に供した。Pfkfb3におけるフロックス化部位のCre-loxP組換えを、20~27週齢にタモキシフェンの腹腔内注射によって誘発した。タモキシフェン注射後10週間、マウスに食餌を与え、次いで、全てのマウスを更に13週間、高脂肪食(HFD、Research Diets Inc、New Brunswick,NJ,USA)に曝露して、hIAPP+/-及びHFDに応答して糖尿病を誘発し、これは、hIAPP(hIAPP+/+)に対してホモ接合性のオスのマウスのみが糖尿病を自然発生的に発症するためである[15]。UCLA Institutional Animal Care and Use Committee(ARC)が承認したマウスコロニー施設において、マウスを12時間の昼/夜サイクルで維持した。30~37週齢で、大量の脂肪を含有する食餌(35%w/w又は脂肪からの60%のカロリー、番号D12492)を受けるように、全てのマウスを割り当てた。高脂肪食の脂肪組成は、32.2%の飽和脂肪、35.9%の一価不飽和脂肪、及び31.9%の多価不飽和脂肪であった。研究の期間中、マウスは食餌及び水に自由にアクセスできた。体重及び空腹時血漿グルコース濃度を毎週評価し、グルコース及びインスリン抵抗性試験(それぞれIP-GTT及びITT)を含んだ日に更なる測定を行った。
【0119】
インスリン及びグルコース抵抗性試験
腹腔内グルコース抵抗性試験(IP-GTT)を、HFDの9及び12週間後(タモキシフェン注射の19及び22週間後)に実施した。尾静脈血中グルコースを、グルコースボーラス注射の前、及び15、30、60、90、120分後に採取した。後眼窩出血を使用して、グルコースボーラス注射の前及び30分後に、第2のIP-GTTのために採血した。イソフルランへの短時間曝露(10秒間)によって、マウスを麻酔した。血液をEDTAコーティング微量遠心管に採取し、試料を10分間遠心分離(5000RCF、10分、4℃)することによって、血漿を得た。
【0120】
グルコース及びインスリンアッセイ
グルコースオキシダーゼ方法を使用して血漿グルコースを決定し、YSI 2300 STAT PLUS Glucose & L-Lactate Analyzerを用いて分析した。
【0121】
freestyle blood glucose meter(Abbott Diabetes Care Inc、Alameda,CA,USA)を使用して、尾から採取した血液からの空腹時血中グルコースを毎週、(定期にケージ及び寝床を交換し、かつ水を自由に提供しながら食餌を取り出した後)18時間の一晩の絶食後に測定した。
【0122】
マウスインスリン(Mercodia 10-1247-01、Uppsala,Sweden)、マウスc-ペプチド(Crystal Chem 90050、IL,USA)、及びマウスグルカゴン(Mercodia 10-1281-01、Uppsala,Sweden)について、Ultrasensitive ELISAを使用して、インスリン、c-ペプチド、及びグルカゴンの血漿中濃度を決定した。
【0123】
HFDの10週間後(タモキシフェン注射後の19週間後)、腹腔内インスリン抵抗性試験(0.75IU/kg)(Lilly insulin Lispro、LLC、Indianapolis,USA)を、6時間絶食した意識のあるマウスにおいて実施した。グルコース測定のために、インスリン投与の前、及びインスリン投与の0、20、40、60分後に尾静脈血液を採取した。
【0124】
膵臓灌流及び単離
IP-GTT及びITTの1週間後、頸椎脱臼によってマウスを安楽死させた。正中線切断を使用して腹腔及び胸腔を開くと同時に、右室の切断に続いて、左室に針で穴を開けて、膵臓の灌流のために10mlの低温リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をゆっくり注射した。灌流後、膵臓を低温PBS中に配置し、それを、周囲の脂肪を含む他の組織から分離した。次いで、余分なPBSを組織で吸収した後、膵臓を計量した。
【0125】
組織学的評価
より小さい片の切除後、膵臓を4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences 19202、Hatfield,PA,USA)中で4℃において一晩固定し、パラフィン包埋し、4μmの厚さで分割した。β細胞面積について、ウサギ抗インスリン抗体(Cell Signaling Technology C27C9、Danvers,MA,USA、1:400)、次いで、ビオチン-SPとのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-066-152、West Grove,PA,USA、IHCについて1:100)で連続的にインキュベートした脱パラフィン切片に対して、ペルオキシダーゼ及びヘマトキシリン染色を実施し、それらの工程の後、VECTASTAIN ABC Kit(HRP)(Vector Laboratories PK-4000、Burlingame,CA,USA)、DAB substrate Kit(HRP)(Vector Laboratories SK-4100、Burlingame,CA,USA)、及びハリスヘマトキシリンを適用し、その後、切片をPermount(Fisher SP15-100、Hampton,NH,USA)で封入した。Olympus IX70反転組織培養顕微鏡(Olympus、Center Valley,PA,USA)上で、Image-Pro Plus 5.1ソフトウェアを使用して、形態学的分析を実施した。各切片の実験的マウス遺伝子型について、盲検法で2人の観察者によって、撮像及びデータ分析を実施した。マルチチャンネル画像を使用して、膵島の縁部に境界線を引いた。ピクセル閾値化を使用して、インスリン及びヘマトキシリン陽性面積を各膵島について決定した。次いで、β細胞面積をインスリン陽性面積/ヘマトキシリン陽性面積×100%として計算した。
【0126】
Leica DM6000 B研究用顕微鏡上で、Openlab 5.5.0ソフトウェアにおいて、免疫蛍光分析を実施した。以下の抗体を使用した:ラビット抗PFKFB3(Origene AP15137PU-N、Rockville,MD,USA、1:100)、マウス抗MCM2(BD Transduction Laboratories 610700、San Diego,CA,USA、1:100)、ラビット抗切断カスパーゼ-3(Cell Signaling Technology 9664S、Danvers,MA,USA、1:400)、モルモット抗インスリン(Abcam ab195956、Cambridge,MA,USA、1:400)、マウス抗グルカゴン(Sigma-Aldrich G2654、St.Louis,MO,USA,IFについて1:1000)、マウス抗c-Myc(Santa Cruz Biotechnology Inc 9E10 sc-40、Dallas,Texas,USA、1:100)、マウス抗HIF1α(Novus Biologicals NB100-105、Centennial,CO,USA、1:50)。二次抗体は以下であった:FITCとのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 706-096-148、West Grove,PA,USA、IFについて1:200)、Cy3とのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-166-152、West Grove,PA,USA、IFについて1:200)、及びAlexa 647とのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 715-606-150、West Grove,PA,USA、IFについて1:100)。In Situ Cell Death Detection Kit(Roche Diagnostics Corporation 12156792910、Indianapolis,IN,USA)を、TUNELアッセイによる細胞死の決定のために使用した。Vectashield with DAPI(Vector Laboratories H1200、Burlingame,CA,USA)を使用して、スライドを封入した。
【0127】
統計分析
示されるマウスの数についての平均の誤差(標準誤差、SEM)としてデータが示される。IP-GTT及びITTについて、グルコース、インスリン、C-ペプチド、及びグルカゴンの曲線下面積(AUC)を、台形公式を使用して計算した。平均データを、スチューデントのt検定を使用した分析によって群間で比較した。0.05未満のP値を統計的に有意とみなした。
【0128】
結果
糖尿病における累積的リスク因子としてのインスリン抵抗性、ミスフォールドタンパク質ストレス、及び老齢の影響を模倣し、高い糖尿病誘発性ストレス下の損傷したβ細胞の保存におけるPFKFB3の役割を研究するために、hIAPP+/-バックグラウンド上のPfkfb3遺伝子のβ細胞特異的条件的破壊でマウスを生成し、高脂肪食に13週間曝露し(PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD)、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFD対照及びPFKFB3WT
【0129】
hIAPP-/-+HFD対照と比較した(実験タイムラインは図3Aに示される)。PFKFB3発現の効率的な破壊を、示された実験群からのマウスの膵臓切片のPFKFB3免疫染色によって、かつPFKFB3WT hIAPP+/+を陽性対照として使用して確認した(図3B)。
【0130】
PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスの代謝性能の分析は、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDと比較して、より低い空腹時グルコース濃度(図4A)、高まったインスリン感受性(図4D)、及び高まった同等のグルコース不耐性(図4B)を明らかにした。PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウス及びPFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスの両方は、PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と比較して、低減したC-ペプチド濃度を有した(図4C)。これらの結果は、高まったインスリン感受性とともに、PFKFB3の非存在において糖尿病誘発性ストレス下でβ細胞量を拡大することができなかったことに潜在的に起因する、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおけるインスリン分泌障害を示唆した。しかしながら、β細胞面積率及び量は、実験群間で変化しなかった(図5B)。
【0131】
PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD-マウスとPFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスとの間で比較可能なβ細胞量を最終的にもたらした成長動態を調査するために、TUNEL染色を実施してβ細胞死を決定し、MCM2免疫染色を実施してβ細胞複製を決定した。TUNEL分析によれば、β細胞死は、PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と比較して、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいて増加したが、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスとは同等であった(図5D)。β/α細胞比がPFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD-マウス及びPFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスの両方において低減される傾向があったため、細胞死は主にβ細胞に起因していた(図5C)。PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスからのβ細胞は、MCM2標識の3倍の増加を示し(*p<0.05)、hIAPP+/-+HFDマウスと比較して増加した、かつPFKFB3WT IAPP-/-+HFD対照と類似したβ細胞複製を示している(図5A及び5E)。PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおける細胞死及びβ細胞複製の両方の増加にもかかわらず、β細胞面積率は、3つ全ての群において同等であった(図5B)。
【0132】
β細胞量の回復にもかかわらず、β細胞機能を回復することができなかったことを明確にするために、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスの膵臓切片にHIF1α免疫染色を実施し、全てのβ細胞の約10%がHIF1αに対して陽性であったことがわかり、PFKFB3の遺伝的枯渇の後に残る、HIF1α陽性であるがPFKFB3陰性のβ細胞の画分を示している(図6A及び6B)。残りのHIF1α免疫染色は、β細胞機能を回復することができない原因となる進行中の損傷(ストレス)を示した。β細胞中に進行中の損傷があるかどうかを判断するために、β細胞損傷のマーカーである切断c-myc(Myc-nickと呼ばれる)[14]を使用した。半分まで低減されたにもかかわらず、Myc-Nick発現はなお、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいて持続的であった(図6C)。持続的なHIF1α陽性β細胞画分とともに、Myc-nick上方調節は、PFKFB3ノックアウトにもかかわらず、完全な機能をまだ回復していないPFKFB3βKO細胞の画分を示した。これは、PFKFB3の非存在下でさえ、β細胞機能の喪失におけるHIF1αの役割を示した。
【0133】
実施例3-2型糖尿病患者からのRNA-seqデータの分析
HIF1α-陽性β細胞の機能喪失への潜在的寄与を特徴付けるために、ヒトT2Dからの公開されたRNA Seqデータを分析した[1]。健康なドナー及びT2Dドナーからのβ細胞を再クラスター化し(umap_クラスター)、β細胞についてのインスリン(INS)などの遺伝子マーカーに基づいて、特異的な細胞型に注釈を付けた(umap_細胞型、図7A)。次いで、β細胞を健康な状態及びT2D状態からのものに分離した(umap_疾患、図示せず)。各状態について、かつ各遺伝子(例えば、一例としてLDHA)について、細胞を遺伝子(例えば、LDHA)陽性細胞及び遺伝子(例えば、LDHA)陰性細胞に分け、差次的発現分析を2つの群間で実施した。LDHAが、ストレスを受けたβ細胞の好気的解糖及び代謝リモデリングの最終工程をもたらすHIF1αの転写標的であるため、LDHA発現を使用して、健康なβ細胞を、ストレスを受けたβ細胞と区別した。LDHA陽性細胞は、クラスター7で描写されたβ細胞亜集団と重複し、代謝、Ca2+恒常性、及びイオンチャネル、並びにインスリン分泌調節に関連する遺伝子と共凝集した(図7A及び7B)。これらの結果は、糖尿病のマウスモデルと同様に、T2Dを有するヒトにおいて、β細胞の画分(クラスター7内のLDHA陽性細胞)が、β細胞機能の喪失を部分的に説明する遺伝子シグネチャを示すことを指摘した。
【0134】
実施例4-糖尿病誘発性ストレスにおけるHIF1α-PFKFB3シグナリングの役割の分析
方法
動物
ホモ接合性hIAPP+/+マウスは、Dr.Peter Butlerの研究所から贈与されたものであり、すでに記載されている(Janson et al.,1996)。フロックス化Pfkfb3遺伝子を担持するマウス(JAX Laboratories)を、ラットインスリンプロモーターの制御下でCreリコンビナーゼを発現するマウス(RIP-CreERT)と交配することによって、β細胞特異的誘発性PFKFB3ノックアウトマウスモデル(RIP-CreERT:PFKFB3fl/fl)を生成した。ホモ接合性hIAPP+/+バックグラウンド上のマウスを、PFKFB3fl/f又はRIP-CreERTマウスのいずれかと交配し、次いで、PFKFB3fl/flhIAPP+/-及びPFKFB3fl/fl RIP-CreERTマウスをともに交配して、3つの実験的遺伝子型を生成した:RIP-CreERT PFKFB3fl/fl hIAPP-/-、RIP-CreERT PFKFB3wt/wt hIAPP+/-、及びRIP-CreERT PFKFB3fl/fl hIAPP+/-(本明細書においてそれぞれ、PFKFB3WT hIAPP-/-、PFKFB3WT hIAPP+/-(PFKFB3WT糖尿病誘発性ストレス、又はPFKFB3WT DS)、及びPFKFB3βKO hIAPP+/-(PFKFB3βKO DS)と称される)。Pfkfb3におけるフロックス化部位のCre-loxP組換えを、20~27週齢にタモキシフェンの腹腔内注射によって誘発した。タモキシフェン注射後10週間、マウスを食餌下に置き、次いで、更に13週間、高脂肪食(HFD、Research Diets Inc、New Brunswick,NJ,USA)下に置いて、hIAPP+/-及びHFDに応答して糖尿病を誘発し、これは、hIAPP(hIAPP+/+)に対してホモ接合性のオスのマウスのみが糖尿病を自然発生的に発症するためである(Janson et al.,1996)。UCLA Institutional Animal Care and Use Committee(ARC)が承認したマウスコロニー施設において、マウスを12時間の昼/夜サイクルで維持した。30~37週齢で、高脂肪を含有する食餌(35%w/w又は脂肪からの60%のカロリー、D12492)を受けるように、全てのマウスを割り当てた。高脂肪食の脂肪組成は、32.2%の飽和脂肪、35.9%の一価不飽和脂肪、及び31.9%の多価不飽和脂肪であった。研究の期間中、マウスは食餌及び水に自由にアクセスできた。体重及び空腹時血中グルコース濃度を毎週評価し、グルコース及びインスリン抵抗性試験(それぞれIP-GTT及びITT)を含んだ日に更なる測定を行った。
【0135】
インスリン及びグルコース抵抗性試験
腹腔内グルコース抵抗性試験(IP-GTT)を、HFDの9及び12週間後(タモキシフェン注射の19及び22週間後)に実施した。尾静脈血中グルコースを、グルコースボーラス注射の前、及び15、30、60、90、120分後に採取した。後眼窩出血を使用して、グルコースボーラス注射の前及び30分後に、第2のIP-GTTのために採血した。イソフルランへの短時間曝露(10秒間)によって、マウスを麻酔した。血液をEDTAコーティング微量遠心管に採取し、試料を10分間遠心分離(5000RCF、10分、4℃)することによって、血漿を得た。
【0136】
グルコース及びインスリンアッセイ
freestyle blood glucose meter(Abbott Diabetes Care Inc、Alameda,CA,USA)を使用して、尾から採取した血液からの空腹時血中グルコースを毎週、(定期にケージ及び寝床を交換し、かつ水を自由に提供しながら食餌を取り出した後)18時間の一晩の絶食後に測定した。血中グルコースが血中グルコース測定器の検出範囲を超えた場合、グルコースオキシダーゼ方法を使用して血漿グルコースを決定し、YSI 2300 STAT PLUS Glucose & L-Lactate Analyzerで分析した。
【0137】
マウスインスリン(Mercodia 10-1247-01、Uppsala,Sweden)、マウスC-ペプチド(Crystal Chem 90050、IL,USA)、及びマウスグルカゴン(Mercodia 10-1281-01、Uppsala,Sweden)について、Ultrasensitive ELISAを使用して、インスリン、C-ペプチド、及びグルカゴンの血漿中濃度を決定した。
【0138】
HFDの10週間後(タモキシフェン注射後の19週間後)、腹腔内インスリン抵抗性試験(0.75IU/kg)(Lilly insulin Lispro、LLC、Indianapolis,USA)を、6時間絶食した意識のあるマウスにおいて実施した。グルコース測定のために、インスリン投与の前、及びインスリン投与の0、20、40、60分後に尾静脈血液を採取した。
【0139】
膵臓灌流及び単離
IP-GTT及びITTの1週間後、頸椎脱臼によってマウスを安楽死させた。正中線切断を使用して腹腔及び胸腔を開くと同時に、右室の切断に続いて、左室に針で穴を開けて、膵臓の灌流のために10mlの低温リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をゆっくり注射した。灌流後、膵臓を低温PBS中に配置し、周囲の脂肪を含む他の組織から分離した。次いで、余分なPBSを組織で吸収した後、膵臓を計量した。
【0140】
組織学的評価
より小さい片の切除後、膵臓を4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences 19202、Hatfield,PA,USA)中で4℃において一晩固定し、パラフィン包埋し、4μmの厚さで分割した。β細胞面積について、ウサギ抗インスリン抗体(Cell Signaling Technology C27C9、Danvers,MA,USA、1:400)、次いで、ビオチン-SPとのF(ab’)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-066-152、West Grove,PA,USA、IHCについて1:100)で連続的にインキュベートした脱パラフィンセクションに対して、ペルオキシダーゼ及びヘマトキシリン染色を実施し、それらの工程の後、VECTASTAIN ABC Kit(HRP)(Vector Laboratories PK-4000、Burlingame,CA,USA)、DAB substrate Kit(HRP)(Vector Laboratories SK-4100、Burlingame,CA,USA)、及びハリスヘマトキシリンを適用し、その後、セクションをPermount(Fisher SP15-100、Hampton,NH,USA)で封入した。Olympus IX70反転組織培養顕微鏡(Olympus、Center Valley,PA,USA)上で、Image-Pro Plus 5.1ソフトウェアを使用して、形態学的分析を実施した。各切片の実験的マウス遺伝子型について、盲検法で2人の観察者によって、撮像及びデータ分析を実施した。マルチチャンネル画像を使用して、膵島の縁部に境界線を引いた。ピクセル閾値化を使用して、インスリン及びヘマトキシリン陽性面積を各膵島について決定した。次いで、β細胞面積をインスリン陽性面積/ヘマトキシリン陽性面積*100%として計算した。
【0141】
Leica DM6000 B研究用顕微鏡上で、Openlab 5.5.0ソフトウェアにおいて、免疫蛍光分析を実施した。以下の抗体を使用した:ラビット抗PFKFB3(Abcam ab181861、Cambridge,MA,USA、1:100)、マウス抗MCM2(BD Transduction Laboratories 610700、San Diego,CA,USA、1:100)、ラビット抗切断カスパーゼ-3(Cell Signaling Technology 9664S、Danvers,MA,USA、1:400)、モルモット抗インスリン(Abcam ab195956、Cambridge,MA,USA、1:400)、マウス抗グルカゴン(Sigma-Aldrich G2654、St.Louis,MO,USA,1:1000)、マウス抗c-Myc(Santa Cruz Biotechnology Inc 9E10 sc-40、Dallas,Texas,USA、1:100)、マウス抗HIF1α(Novus Biologicals NB100-105、Centennial,CO,USA、1:50)。二次抗体は以下であった:FITCロバ抗モルモットIgG(H+L)とのF(ab’)2コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 706-096-148、West Grove,PA USA、IFについて1:200)、Cy3ロバ抗ウサギIgG(H+L)とのF(ab’)2コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-166-152、West Grove,PA,USA、IFについて1:200)、Cy3ロバ抗マウスIgG(H+L)とのF(ab’)2コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 711-165-151、West Grove,PA,USA、IFについて1:200)、及びAlexa 647ロバ抗マウスIgG(H+L)とのF(ab’)2コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 715-606-150、West Grove,PA,USA、IFについて1:100)。In Situ Cell Death Detection Kit(Roche Diagnostics Corporation 12156792910、Indianapolis,IN,USA)を、TUNELアッセイによる細胞死の決定のために使用した。Vectashield with DAPI(Vector Laboratories H1200、Burlingame,CA,USA)を使用して、スライドを封入した。
【0142】
単一細胞RNAシーケンシングデータ分析
単一細胞RNA-seqデータセットを、健康な細胞及び2型糖尿病細胞を使用したGEOアクセッションGSE124742から得た。異なる細胞型を特定し、各細胞型についてのシグネチャ遺伝子を見つけるために、RパッケージSeurat(バージョン3.1.2)を使用して、発現マトリックスを分析した。100個未満の遺伝子及び500UMIが検出された細胞を、更なる分析から除去した。Seurat関数のNormalizeDataを使用して、生カウントを正規化した。FindVariableGenes関数を使用して、可変遺伝子を特定した。Seurat ScaleData関数を使用して、次元削減のためにデータセット内の発現値をスケーリング及びセンタリングした。デフォルトパラメータを上記のSeurat関数に使用した。主成分分析(PCA)及び均一多様体近似及び投影(UMAP)を使用して、データの次元を削減し、最初の2つの次元をプロットに使用した。FindClusters関数を後に使用して、細胞をクラスター化した。FindAllMarkers関数を使用して、各クラスターについてのマーカー遺伝子を決定し、次いで、これを使用して細胞型を決定した。FindMarkers関数を使用して、2つの細胞群間の差次的発現分析を行った。ウィルコクソンの順位和検定を差次的分析で実施し、Benjamini-Hochberg手順を適用して、偽発見率を調整した。
【0143】
統計分析
示されるマウスの数についての平均の誤差(標準誤差、SEM)としてデータが示される。IP-GTT及びITTについて、グルコース、インスリン、C-ペプチド、及びグルカゴンの曲線下面積(AUC)を、台形公式を使用して計算した。平均データを、スチューデントのt検定を使用した分析によって群間で比較した。0.05未満のP値を有意とみなした。
【0144】
結果
インビボでの糖尿病誘発性ストレス下の損傷したβ細胞の生存における、HIF1αからのPFKFB3の役割を研究及び分析するために、hIAPP+/-バックグラウンド上のPfkfb3遺伝子のβ細胞特異的条件的破壊でマウスを生成し、高脂肪食に13週間曝露した(PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD)。インスリン抵抗性(肥満)、及びhIAPP+/-発現を介したミスフォールドタンパク質への曝露(両方が、高脂肪食並びに老齢を介して影響を受け、全て合わせて糖尿病における累積的リスク因子として知られる)を伴ったため、糖尿病誘発性ストレスは、高いとみなされた[16-18]。
【0145】
PFKFB3fl/fl hIAPP+/-マウスは、予測されたメンデル比で生まれた。マウスの監視の1週間前から実験終了まで、異なる実験群間の体重の差はなかった(図15A-15D)。膵臓重量の差は観察されなかったが、脾臓及び肝臓の両方は、PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と比較して、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウス及びPFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいてより低い重量を示したが、有意差には達しなかった(図16A-16C)。
【0146】
PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスをPFKFB3WT hIAPP+/-+HFD対照及びPFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と比較した。PFKFB3発現の効率的な破壊を、陽性対照としてPFKFB3WT hIAPP+/+を使用した、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスの膵臓切片のPFKFB3免疫染色によって確認した(図8A)。糖尿病誘発性ストレスは、T2Dを有するヒトについてすでに報告されたものと類似した、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウス(p<0.05)におけるβ細胞の33.9±6.4%のPFKFB3免疫標識をもたらした[18]。PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD処理マウスからのβ細胞のPFKFB3免疫標識は、3.7±1.9%であったが、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいては、これはうまく取り除かれ、1.0±0.8%に相当した(図8A及び8B)。
【0147】
このモデルにおけるPFKFB3がHIF1α発現に結び付けられるかを立証するために、全ての実験群からの膵臓切片をHIF1α抗体で免疫染色した。HIF1α発現は、PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対象と比較して、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスからのβ細胞中で18.4±4.2%まで増加した(*p<0.05)。PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいて、全てのβ細胞の14.2±3.8%(図8C及び8D)が、HIF1α免疫陽性の細胞質及び核を示し続けた。これは、PFKFB3ノックアウトが、ストレスに応答して代償性HIF1α発現を引き起こしたことを明確に示した。
【0148】
PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスの代謝性能の分析は、高脂肪食の開始の9(*p<0.05、n=4)及び12週間後の両方で、高まったグルコース不耐性を明らかにした(図9A-9D)。インスリン抵抗性試験は、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいてより高いインスリン感受性、及び有意ではないがより低い空腹時グルコース濃度を示し、差は、後の時点において実験群間で小さくなった。(図9C及び9D)。血漿インスリン濃度は、C-ペプチド濃度を反映し、PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と比較して、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD及びPFKFB3WT hIAPP+/-+HFDにおいてより低かった(p<0.05)(図9G~9H)。興味深いことに、血漿インスリンは、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウス及びPFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスについて低かったが、それらは後に、はるかにより高い血漿グルカゴン濃度を有し、一方で、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDは、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFD対照比較して急激な低減、及びPFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照に見られるものと同じ濃度を実証した(図9I)。これらの結果は、高まったインスリン感受性とともに、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおけるインスリン分泌障害を示唆した。次に、本発明者らは、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおけるインスリン分泌障害が、PFKFB3の非存在において糖尿病誘発性ストレス下でβ細胞量を拡大することができなかったことに起因したかどうかを求めた。
【0149】
したがって、β細胞面積率及び量を比較することが必須となった。β細胞面積率及び量は、実験群間で変化しなかった(図10A及び10B)。PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD-マウスとPFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスとの間で比較可能なβ細胞量を最終的にもたらした成長動態を調査するために、TUNEL染色を過去の細胞死の測定として(図10C)、及び切断カスパーゼ3免疫染色を能動的細胞死の測定として実施した(図10E及び10F)。β細胞死は、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスと比較して、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおいて増加した(図10C)。驚くべきことに、β/α細胞比は、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスと比較して、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFD-において増加した(図10D)。全ての実験マウス群の切断カスパーゼ3免疫染色に基づいて、能動的細胞死の差は観察されなかった。したがって、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスからのβ細胞は、他の群と比較して過去の細胞死が増加したこと、及び進行中の細胞死の差がないことを特徴とする。
【0150】
β/α細胞比の増加が、増加したβ細胞の生成に依存したかを更に解明するために、早期複製開始マーカーであるミニ染色体維持タンパク質2(MCM2)を用いた免疫標識を実施した[19,20]。結果は、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスからのβ細胞が、MCM2標識の3倍の増加を示し(5.3%±0.8%、*p<0.05)、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウス(1.9±0.04%)と比較して増加した、かつPFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と類似したβ細胞複製を示している((7.0±1.3%、図11A及び11B)。PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおける細胞死及びβ細胞複製の両方の増加にもかかわらず、β細胞面積率は、3つ全ての群において同等であった(図10A)。したがって、PFKFB3保護及び生存促進性の役割の非存在下での増加した細胞死、及び損傷したβ細胞の早期喪失(TUNELアッセイによって測定されるような)にもかかわらず、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDマウスにおけるβ細胞複製の増加は、β細胞量を維持するように見えた。
【0151】
β細胞を複製することが、任意の残っている傷害を有したかどうかを明確にするために、本発明者らは、β細胞中のhIAPPにより発生した損傷の特異的マーカーである、Myc-nickと呼ばれるタンパク質c-Mycのカルパインによって媒介される切断の細胞質蓄積を使用した[14]。c-Myc染色の分析は、糖尿病誘発性ストレス下でのPFKFB3WT hIAPP+/-(3.3±0.5%、*p<0.05)において、Myc-nick発現が増加したが、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDにおけるPFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照マウス濃度に対する逆転を明らかにした(それぞれ0.8±0.4%及び0.7±0.6%、図11C及び11D)。これらの結果は、健康なβ細胞が、おそらくhIAPPタンパク質ミスフォールディングストレスの低減後に、複製の増加に寄与したことを示した。
【0152】
PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDの膵臓切片におけるHIF1α免疫染色は、全てのβ細胞の約14%に影響を及ぼし、細胞質c-Mycによって測定されたミスフォールディングタンパク質ストレスの低減と一致したが、これは潜在的には、β細胞の複製における回復できない代謝機能の理由を示した(図8C及び8D)。これらのHIF1α陽性β細胞の機能喪失への潜在的寄与を特徴付けるために、T2Dを有するヒトからの公開された単一細胞RNA Seq(scRNA Seq)データを、非糖尿病患者との比較に使用した[1]。最初に、本発明者らは、品質を分析し、scRNA Seqデータを検証した(図11A-12D)。健康なドナー及びT2Dドナーからの膵臓細胞を再クラスター化し(umap_クラスター)、β細胞についてのインスリン(INS)などの遺伝子マーカーに基づいて、特異的な細胞型に注釈を付けた(umap_細胞型、図12A-12D)。9つの異なる細胞型を特定し、それらの差を描写した遺伝子発現が、図12C、20、及び21に示される。INSをβ細胞マーカーとして使用して、β細胞の2つのクラスター、クラスター1及びクラスター7を特定し、一方で、クラスター2~6、8、及び9は、他の膵臓細胞型を指した(図12B及び12C)。クラスター6(α細胞亜集団)、7(β細胞亜集団)、及び8(δ細胞)における組成は、健康なドナーとT2Dドナーとの間で最も異なった(図19)。HIF1αは、翻訳後に主に調節されるため、好気的解糖からのHIF1α転写標的であるラクテートデヒドロゲナーゼA(LDHA)の発現があるかないかに基づいて、β細胞を更に区別した(図12D)。各状態について、かつLDHA発現に基づいて、細胞をLDHA陽性細胞及びLDHA陰性細胞に分け、差次的発現分析を2つの群間で実施した。LDHA陽性β細胞は、クラスター7で描写されたβ細胞亜集団と重複し、疾患状態とは無関係に、LDHA、アリール炭化水素核輸送体2(ARNT2、すなわち、HIF1α)、グルコキナーゼ(GK)、ホスホフルクトキナーゼ1血小板型(PFKFP)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4(PDK4)などの代謝に関連する遺伝子、又はホスホエノールピルビン酸プールを介したFBP1などのインスリン分泌、若しくはグルカゴンなどの同一性(GCG、プロα細胞同一性)、及びアリスタレス関連ホメオボックス(ARX、プロα細胞同一性)、及びINS(より低い発現、β細胞同一性)に関連した遺伝子に関連していた。LDHA陽性又はクラスター7のβ細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1A1(ALDH1A1)などの遺伝子の上方調節に沿って、未成熟表現型を示した。これらの結果は、T2Dを有するヒトにおいて、β細胞の画分(クラスター7のβ細胞と重複するLDHA陽性)が、INS発現が低減し、GCG及びARX発現が増加した遺伝子シグネチャを有することを示唆した。Ingenuity Pathway Analysis(IPA)によるエンリッチメントデータは、クラスター1と7とにおける大幅に改変された遺伝子間、及びLDHA陽性細胞と陰性細胞との間の差が、LXR/RXRレチノイド受容体によって要約されることを明らかにし、この上方調節因子を、上位HIF1α-PFKFB3非標準代謝経路の一部として示している。更に、String分析は、クラスター1と7との間、並びにLDHA陰性β細胞と陽性β細胞との間の差が、健康において良好に保存されたが、これらの差は、T2Dにおいてかなり低減されたことを明確に示した。これらのデータは、T2Dにおいて、β細胞のクラスターが互いに類似し始め、差がストレス下で低減されることを示唆した(図22A-23B)。T2D個体と健康な個体とを比較すると、クラスター1又はLDHA陰性β細胞のいずれかにおける差次的に発現された遺伝子は、大幅な重複を示した。
【0153】
クラスター7又はLDHA陽性細胞におけるβ細胞集団の補体を見つけるために、本発明者らは、実験マウス群からの膵臓切片を特異的インスリン及びグルカゴン抗体で二重染色した。糖尿病誘発性ストレスは、PFKFB3WT hIAPP-/-+HFD対照と比較して、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDにおいて、二重陽性細胞の数の2倍増加した(それぞれ、2.7±1.8%と比較して5.7±2.8%)。PFKFB3ノックアウトは、PFKFB3WT DSと比較して、同時のインスリン及びグルカゴン免疫陽性を有する細胞の低減をもたらした(5.7±2.8%と比較して0.8±0.3%、図13A)。バイホルモン(インスリングルカゴン)細胞の画分が、PFKFB3陽性の損傷したβ細胞の排除により取り除かれただけでなく、これは、β細胞の有意な増加とも相関した(*p<0.05)。これは、PFKFB3破壊が、二重インスリン及びグルカゴン同一性を有するβ細胞の特異的な選別除去をもたらしたこと、並びに又は複製が、インスリンのみに陽性のβ細胞から刺激されることを示した。その反対が、全てのα細胞、β細胞、及びバイホルモン細胞を合わせたものと比較して、α細胞について当てはまった(図13B)。この比率は、対照レベルに達し、PFKFB3WT hIAPP+/-+HFDマウスと比較して、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDにおいて低減された(*p<0.05)。二重インスリン及びグルカゴン染色細胞は、高脂肪食に曝露された実験マウスにおいて明らかに存在し、前糖尿病又は糖尿病の齢のいずれにおいても、WT対照又はhIAPP+/+において検出されなかった(図13C及び13D)。
【0154】
したがって、PFKFB3ノックアウトは、二重インスリン及びグルカゴン同一性を有するβ細胞の消失をもたらし、それらが、hIAPP傷害後にPFKFB3によって媒介される生存に依存する細胞だけでなく、二重同一性を介して生存に適応する細胞でもあり、おそらく、両方がそれらの機能障害に寄与することを示す。
【0155】
興味深いことに、これらのデータは、PFKFB3βKO hIAPP+/-+HFDにおけるHIF1α陽性細胞が、二重β及びα同一性を有さないことを指摘し、二重β及びα同一性を有する細胞の生存が、HIF1αではなくPFKFB3に依存することを示している。
【0156】
これらの分析はまた、糖尿病のマウスモデルにおけるHIF1α陽性細胞の蓄積が、PFKFB3遺伝子枯渇後のβ細胞回復にもかかわらず、β細胞機能の喪失に寄与し得ることを示した。PFKFB3枯渇は、複製によって健康なβ細胞を補充するために十分かつ必要である、β細胞及びα細胞同一性の両方を有する損傷したβ細胞の選別除去を引き起こすように見える。しかしながら、HIF1αによる独立した免疫標識は、β細胞インスリン分泌を更に損なう。
【0157】
これらの研究は、PFKFB3の共標的化にかかわらず、HIF1αを標的化(すなわち、阻害)することが、機能的にコンピテントなβ細胞量の回復及び糖尿病の逆転をもたらすことを強く示唆する。
【0158】
考察
これらの研究において、本発明者らは、高い糖尿病誘発性ストレス下の成体マウスにおけるPfkfb3遺伝子の特異的β細胞破壊が、部分的な膵島再生をもたらすことを実証する。これは、損傷し、かつバイホルモン(インスリン及びグルカゴン陽性)の細胞の選別除去、並びに残存する健康なβ細胞の複製を介して達成される。
【0159】
選別除去はおそらく、相当な数のβ細胞に影響を及ぼす。リモデリングされた代謝におけるPFKFB3の関わりは、生存へのその影響を説明するが[13]、β細胞機能の保存に関連する問題を提示する。したがって、ミスフォールドタンパク質ストレス(hIAPP)におけるHIF1α-PFKFB3経路による代謝リモデリングは、von Hippel Lindau遺伝子(Vhl)の条件的不活性化の後の、HIF1α発現の影響を要約する[13,31]。糖尿病誘発性ストレスの存在下又は非存在下で、HIF1α活性化は、細胞質Ca2+濃度のグルコースによって刺激される変化、電気的活性、及びインスリン分泌の減少をもたらし、最終的に、膵臓β細胞中の全身グルコース抵抗性異常に至った[13,31]。
【0160】
HIF1αは、PFKFB3βKO DSマウスからの相当な数のβ細胞中で連続的に発現された(~14%)。これは、この糖尿病のマウスモデルにおいて、関係するHIF1α応答が、PFKFB3とは無関係であることを示した。PFKFB3βKO DSマウス及びPFKFB3WT DSマウスにおけるHIF1α発現レベル(それぞれ14%及び18%)は、WT対照と比較して、グルコース不耐性が同等であり、血漿インスリン及びC-ペプチド濃度がより低かった(p<0.05)。
【0161】
β細胞機能不全の分子基盤におけるHIF1αの役割を調査するために、肥満性T2Dを有するヒト及び非糖尿病患者(ND)からのsc RNA Seqデータ[27]を分析した。本発明者らは、LDHAが本物の標的であり、HIF1αのための代替マーカーとしての役割を果たすため、LDHA陽性対陰性のβ細胞の区別を使用した。HIF1αは、転写物レベルで変化がなく、主に翻訳後に調節される。LDHA陽性β細胞は、クラスター7βの細胞亜集団と重複し、HIF1a-(ARNT2、GK、PFKFP、PDK4)、及びバイホルモンシグネチャ(a及びβ細胞同一性)(GCG、ARX、及びINS)、並びにいくつかの未成熟マーカー(ALDH1A1)によって表された。マウスモデルにおける二重インスリン及びグルカゴン陽性細胞は、LDHA陽性又はクラスター7のβ細胞に類似し、脱分化β細胞又は分化転換に供されたβ細胞に由来し得る[32]。
【0162】
健康及びT2Dの両方において、LDHA陽性(クラスター7)β細胞とLDHA陰性(クラスター1)β細胞との間の比較のために使用されたIngenuity Pathway Analysis(IPA)は、マスター上方調節因子、肝臓X受容体、あるタイプのレチノイド受容体(LXR/RXR)[33]、潜在的に、上位HIF1α代謝経路の一部の存在を示した。この受容体の活性化は独立して、ヘキソキナーゼ1及び3(HK1及び3)並びにSLC2A1(GLUT1))の転写上方調節を介して、高脂肪食に応答して好気的解糖を増加させ、HIF1αと相互作用し得る[34]。
【0163】
興味深いことに、バイホルモンβ細胞亜集団は、HFD下の、肥満の非糖尿病患者及び我々のWT対照において存在し、バイホルモン細胞の形成が、増加した脂質生成及び高脂肪食に十分に適応応答し得ることを示している。したがって、二重インスリン及びグルカゴン陽性細胞は、前糖尿病又は糖尿病の齢のいずれにおいても、HFDの非存在下(陰性対照として使用)で、WT対照又はhIAPP+/+において検出されなかった。健康又はT2Dにかかわらず、バイホルモンβ細胞クラスター7(LDHA陽性β細胞)は、LXR/RXRの関わりによって、クラスター1と区別され得る。以前の報告は、インスリン分泌の需要の増加に適応応答している急性活性化とは異なり、LXRの長期活性化が、遊離脂肪酸及びトリグリセリドの蓄積によって、β細胞機能不全に寄与し得ることを示した[33]。加えて、STRING分析は、クラスター1と7との間、並びにLDHA陰性β細胞と陽性β細胞との間の差が、健康において良好に保存されたが、これらの差は、T2Dにおいて低減されたことを示した。バイホルモン細胞の保存された特徴は、細胞適応度競合という状況で関連し得、我々は、それがバイホルモン細胞の認識及び恒常性制御の基礎を構成し得ることを提案する。
【0164】
細胞適応度競合は、劣った適応度(生存)特徴を有する細胞集団対優れた適応度(生存)特徴を有する細胞集団の区別に基づいた、重要な外因性の細胞品質制御である。この区別は、劣った適応度特徴を有する細胞集団(「敗者」)の選択的な選別除去を引き起こし、優れた適応度特徴を有する細胞集団(「勝者」)の増殖を推進するのに重要である。「敗者」を「勝者」で置き換えることは、恒常性組織の維持を可能にする。黙示的に、T2Dで見られるような細胞競合的組織構成の逆転(クラスター1及び7の類似性)は、細胞競合の阻害、続いて、経時的な組織機能不全をもたらし得る。
【0165】
糖尿病のマウスモデルにおいて、成体β細胞中のPFKFB3ノックアウトは、傷害を受けたβ細胞及びバイホルモン(インスリン及びグルカゴン陽性)細胞の強い低減、並びに健康なβ細胞の複製の付随する増加をもたらした。本発明者らは、細胞質c-Mycのカルパイン(hIAPP)によって媒介される切断の程度を測定することによって、傷害を受けたβ細胞を監視した[26]。カルパインは、hIAPPミスフォールドタンパク質毒性を直接反映することがすでに報告されている[35,36]。PFKFB3βKO DSマウスにおいて、細胞質c-Mycは、WT対照において測定されたときにほとんど検出できないレベルまで逆になった(それぞれ、0.8±0.4%及び0.7±0.6%)。
【0166】
これらの結果は、複製の増加が、健康なβ細胞が寄与したものであり、おそらく、進行中のカルパイン活性化、及びしたがってhIAPP傷害を伴うβ細胞の優れた喪失によって促進されたことを示した。したがって、結果は、PFKFB3ノックアウト後の傷害を受けたβ細胞の選別除去による、細胞競合依存性β細胞再生を示唆した。したがって、更に、PFKFB3WT DSと比較した、PFKFB3βKO DSマウスにおけるβ/a比の増加及びグルカゴン濃度の低減は、より高いインスリン感受性の観察された傾向を説明していた可能性がある[37-39]。
【0167】
結論として、PFKFB3βKO DSマウスにおけるβ細胞量の保存及びβ/a比の増加は、傷害を受けたβ細胞の早期喪失及びバイホルモン細胞の低減を克服するβ細胞複製から累積的に生じる。
【0168】
糖尿病誘発性ストレスにおける再生成長は、PFKFB3に非常に依存していたが、一致しない代謝機能は、PFKFB3とは無関係に、HIF1α陽性細胞の画分とみなされ得る。したがって、糖尿病のマウスモデルにおいて、HIF1αは、PFKFB3遺伝子枯渇後のβ細胞回復にもかかわらず、β細胞機能の喪失に寄与し得る。
【0169】
これらの研究は、PFKFB3の共標的化を伴い/伴わず、HIF1αを標的化することが、機能的にコンピテントなβ細胞量の回復及び糖尿病の逆転をもたらすことを強く示唆する。
【0170】
実施例5-ストレス下のβ細胞補充におけるβ細胞適応度比較の役割のためのモデルの生成
ストレス下のβ細胞複製におけるβ細胞適応度比較の役割のためのモデルを、実施例1~4に記載される研究に基づいて生成した。図25は、生成されたモデルの概略図を示す。上のパネルは、健康な非糖尿病患者における高脂肪食(HFD)などの代謝ストレス後に、準最適細胞(暗色)がどのように、健康なβ細胞(明色)(喪失した組織を再生するために複製する)との競合によって組織から排除されるかを示す。中央のパネルは、傷害が持続的である細胞競合(T1D及びT2D)において、傷害を受けた準最適β細胞(暗色)がどのように、HIF1α-PFKFB3経路による代謝リモデリングにより、適応度の低減にもかかわらず生存し、組織から除去することができないかを示す。これらの傷害を受けたβ細胞は、健康なβ細胞補充(複製)を妨げる可能性がある。下のパネルは、ストレス及び傷害条件下で、生存促進性PFKFB3及び/又はHIF1α経路の標的化がどのように、細胞競合の活性化及び準最適(損傷した)β細胞(暗色)の排除をもたらすかを示す。準最適(損傷した)β細胞の排除は、残りの健康なβ細胞(MCM2陽性細胞)の複製をもたらす。
【0171】
本明細書に開示及び特許請求される方法の全てが、本開示を踏まえて過度の実験をすることなく作製及び実行され得る。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態の観点から記載されてきたが、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法、及び方法の工程又は一連の工程に変更が適用され得ることが、当業者に明らかになるであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方で関連しているある特定の薬剤が、本明細書に記載される薬剤の代わりになり得ると同時に、同じ又は類似の結果が達成されることが明らかになるであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似の代替物及び修正物は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神、範囲、及び概念の範囲内にあるとみなされる。
【0172】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されるものを捕捉する、例示的な手順の詳細又は他の詳細を提供する限り、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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【配列表】
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【国際調査報告】