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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】単相式液体直接浸漬用冷却液体
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230901BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20230901BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
G06F1/20 A
C09K5/10 E ZAB
H05K7/20 M
G06F1/20 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512263
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 FI2021050558
(87)【国際公開番号】W WO2022038313
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】20205816
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルチカイネン、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】トマス、ダビド
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA09
5E322DA01
5E322DA04
5E322FA01
(57)【要約】
少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む、単相式液体直接浸漬冷却のための再生可能なパラフィン系組成物の使用。単相式液体直接浸漬冷却システムおよび単相式液体直接浸漬冷却のための方法もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む、電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却のための再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項2】
前記電子ハードウェアが、コンピュータハードウェア、より好ましくはサーバーである請求項1記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項3】
前記再生可能なパラフィン系組成物を、熱交換ユニットを通じて循環させることを含む請求項1または2記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項4】
作動温度が、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内にある請求項1~3のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項5】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィンを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項6】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%以上、好ましくは95wt-%以上、より好ましくは98wt-%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項7】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、60wt-%より多い、好ましくは70wt-%より多い、より好ましくは80wt-%より多い、さらにより好ましくは90wt-%より多い、および最も好ましくは95wt-%より多いイソパラフィンを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項8】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、5wt-%以下、好ましくは2wt-%以下のナフテンを含み、より好ましくは前記再生可能なパラフィン系組成物は、実質的にナフテンを含まない請求項1~7のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項9】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、2wt-%未満のC15およびそれより軽質なパラフィン、ならびに、好ましくは5wt-%未満、より好ましくは2wt-%未満のC20およびそれより重質なパラフィンを含む請求項1~8のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項10】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、37wt-%より多いC17パラフィンを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項11】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、90wt-%より多いC17~C18のパラフィンを含み、C18のn-パラフィンの量に対するC18のi-パラフィンの量の比が、前記再生可能なパラフィン系組成物中の前記C18のn-パラフィンの重量および前記C18のi-パラフィンの重量をベースとして、40より大きい請求項1~10のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項12】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも135℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらにより好ましくは少なくとも145℃の引火点を有する(ENISO2719:2016)請求項1~11のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項13】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、40℃において15mm2/s未満、好ましくは10mm2/s未満、より好ましくは5mm2/s未満の動粘度を有する(EN ISO3104)請求項1~12のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項14】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、20℃において、700~850kg/m3、好ましくは760~800kg/m3、より好ましくは770~790kg/m3の範囲内の密度を有する(EN ISO12185)請求項1~13のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項15】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、22℃で1pS/m未満の電気伝導度を有する(ISO6297:1997)請求項1~14のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項16】
前記再生可能なパラフィン系組成物が、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、1.60MJ/(m3K)~1.90MJ/(m3K)の範囲内の体積比熱、および/または、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.11W/(m・K)~0.15W/MJ/(m3K)の範囲の熱伝導率、および/または、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.06mm2/s~0.09mm2/sの範囲の熱拡散率を有する請求項1~15のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項17】
前記再生可能なパラフィン系組成物の生物起源炭素含有量が、前記再生可能なパラフィン系組成物中の炭素の総計の重量をベースとして、少なくとも50wt-%、好ましくは少なくとも70wt-%、より好ましくは少なくとも80wt-%、さらにより好ましくは少なくとも90wt-%である(ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017))請求項1~16のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
【請求項18】
再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽、および
前記再生可能なパラフィン組成物中に浸漬される電子ハードウェア
を備える単相式液体直接浸漬冷却システム。
【請求項19】
再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽を提供すること、および
前記再生可能なパラフィン組成物中に電子ハードウェアを浸漬すること
を含む単相式液体直接浸漬冷却のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、単相式液体直接浸漬冷却に関する。本開示は特に、これらに限定されるわけではないが、単相式液体直接浸漬冷却のための再生可能なパラフィン系組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本項は、有用な背景技術の情報を説明するものであって、本明細書に記載の任意の技術を、従来技術を代表するものとして認めるものではない。
【0003】
近年、人類史上類を見ないほど多くのデータが作成され、その多くがコンピュータシステムおよび関連部品を収容するデータセンターに保存されている。このコンピュータシステムの冷却には、従来、空冷または空気循環が用いられてきた。データセンターのエネルギー消費の約40%は空冷式電子機器によるものであり、そしてデータセンターのカーボンフットプリントは航空業界よりも大きいと見積もられている。
【0004】
近年、データセンターにおいて空冷の代替として液冷が利用され始めている。空冷を液冷に置き換えることで、コストおよびエネルギー消費の両面で大幅な削減が可能になると試算されている。さらに、液冷は、空冷に比べてラックあたりより大きな電力負荷をサポートし得ると考えられている。
【0005】
主な液冷の選択肢は、二相式液冷および単相式液冷である。
【0006】
二相式液冷においては、冷却液体は、動作温度以下または動作温度である沸点を有し、そのため液体は蒸発され、これによって液体の温度がその沸点に保たれる。形成された気相は液体に冷却され、そして、冷却液体に戻される。
【0007】
単相式液冷においては、冷却液体は相変化を起こさない。単相式冷却は、単相式直接冷却または単相式間接冷却のどちらかであってよい。単相式間接冷却では、冷却液体は、いずれのコンピュータシステムまたは関連部品とは接触せず、一方、単相式液体直接冷却(しばしば単相式液体直接浸漬冷却と称される)では、コンピュータハードウェアは冷却液体に直接浸漬され、したがって冷却液体はハードウェアと接触する。
【0008】
単相式直接液冷は、二相式液冷または間接液冷と比べて、よりシンプルあり、かつ低コストである。しかしながら、コンピュータのハードウェアへの冷却液体の影響は顕著であり得る。冷却液体がコンピュータのハードウェアに与える影響については、多くの不確実性と懸念が存在し、データセンターにおける単相式液体直接冷却システムの幅広い導入の妨げとなっている。
【0009】
しかしながら、単相式直接冷却のためのいくつかの冷却液体が提案されている。これらの液体は、例えば3M(商標) フロリナート(商標)および3M(商標) Novec(商標)ブランドなどで販売されている液体、例えば3M(商標) フロリナート(商標) FC-40、FC-72、およびFC-770など、主にパーフルオロカーボン液体である。これらの液体は、例えば不活性および安定性などのいくつかの好ましい特性を有している。しかしながら、いくつかの欠点も確認されている。例えば、フルオロカーボン化合物は、非常に強力な温室効果ガスであり、および、自然界に残留することが知られている。したがって、例えば、これらの液体、および、これらの液体中に浸漬されていた部品の廃棄は、課題を引き起こし得る。さらに、該フッ素化合物は、燃焼によりフッ化水素(HF)を形成し、これは例えばデータセンター施設での火災などの場合に真の危険をもたらす。
【発明の概要】
【0010】
従来の単相式液体直接冷却に関連する問題の少なくともいくつかを解決または軽減することが目的である。特には、該目的は、より環境的に持続可能かつ気候に優しい単相式液体直接浸漬冷却を提供することである。
【0011】
添付の特許請求の範囲が、保護範囲を規定している。
【0012】
第1の態様において、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む、単相式液体直接浸漬冷却のための再生可能なパラフィン系組成物の使用が提供される。
【0013】
第2の態様において、
再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽、および
該再生可能なパラフィン組成物中に浸漬冷却される対象物
を備える単相式液体直接浸漬冷却システムが提供される。
【0014】
第3の態様において、
再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽を提供すること、および
該再生可能なパラフィン組成物中に冷却される対象物を浸漬すること
を含む単相式液体直接浸漬冷却のための方法が提供される。
【0015】
いくつかの例示的な実施形態が添付の図面を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、例示的な実施形態による単相式液体直接浸漬冷却システムの概略図である。
図2a図2a)は、実施例2の試験セットアップの模式図、および実施例2の試験セットアップの使用中の写真をそれぞれ示す図である。
図2b図2b)は、実施例2の試験セットアップの模式図、および実施例2の試験セットアップの使用中の写真をそれぞれ示す図である。
図3a図3a)は、試験T1による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3b図3b)は、試験T1による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3c図3c)は、試験T2による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3d図3d)は、試験T2による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3e図3e)は、試験T3による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3f図3f)は、試験T3による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3g図3g)は、試験T4による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3h図3h)は、試験T4による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3i図3i)は、試験T5による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3j図3j)は、試験T5による浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3k図3k)は、試験T6によるによる浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図3l図3l)は、試験T6によるによる浸漬前および浸漬後のマザーボード片の写真をそれぞれ示す図である。
図4a図4a)は、P2およびFC-40、それぞれに浸漬する前および後のRAMボードの写真を示す図である。
図4b図4b)は、P2およびFC-40、それぞれに浸漬する前および後のRAMボードの写真を示す図である。
図4c図4c)は、P2およびFC-40、それぞれに浸漬する前および後のRAMボードの写真を示す図である。
図4d図4d)は、P2およびFC-40、それぞれに浸漬する前および後のRAMボードの写真を示す図である。
図5図5は、P2およびFC-40の蒸留曲線を示す図である。
図6a図6a)は、P2、FC-40、S5Xそれぞれの粘性係数を、15℃~50℃の温度範囲内の温度の関数として示す図であり、実線はシミュレーションされた値を、およびドットは実測値をしている。
図6b図6b)は、P2、FC-40、S5Xそれぞれの密度を、15℃~50℃の温度範囲内の温度の関数として示す図であり、実線はシミュレーションされた値を、およびドットは実測値をしている。
図6c図6c)は、P2、FC-40、S5Xそれぞれの比熱容量(質量熱容量)を、15℃~50℃の温度範囲内の温度の関数として示す図であり、実線はシミュレーションされた値を、およびドットは実測値をしている。
図6d図6d)は、P2、FC-40、S5Xそれぞれの熱伝導率を、15℃~50℃の温度範囲内の温度の関数として示す図であり、実線はシミュレーションされた値を、およびドットは実測値をしている。
図7図7は、実施例4のデータセンター冷却シミュレーションにおいて使用されたフローシートの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
アルカンおよびパラフィンは同義語であり、互換的に使用できることは一般に公知である。本開示の文脈において、パラフィンまたはパラフィン(複数)は、イソパラフィンおよび/またはn-パラフィンを意味する。イソパラフィン(i-paraffins)は、分岐した開鎖パラフィンであり、ノーマルパラフィン(n-paraffins)は、分岐していない直鎖パラフィンである。換言すると、本明細書において、パラフィンまたはパラフィン(複数)との用語は、非環状パラフィンを指す。
【0018】
ある実施形態において、イソパラフィンは、1またはそれ以上のC1~C9、典型的にはC1~C2であるアルキル側鎖を有する。好ましくは、側鎖は、メチル側鎖であり、および、イソパラフィンは、モノ-、ジ-、トリ-および/またはテトラ-メチル置換されている。
【0019】
本開示の文脈における沸点範囲は、蒸留生成物の最初の一滴が得られる温度として規定される初留点(IBP)から、最も高い沸点の化合物が蒸発する時の最終沸点(FBP)までの温度間隔をカバーする。
【0020】
EN ISO 3405:2011およびASTM D86:2015標準である「大気圧における石油製品の蒸留の標準試験方法」、および、ASTM D7345:2017標準である「大気圧における石油製品の蒸留の標準試験方法(マイクロ蒸留法)」は、0℃~400℃(ASTM D7345:20℃~400℃)の範囲内の沸点範囲を有する液体燃料生成物の沸点分布を測定するための蒸留方法を記載している。ASTM D86またはASTM D7345を用いることにより、沸点が、25vol-%蒸留において測定される。沸点は、88%蒸留においてもまた示され得る。該方法は、本開示の再生可能なパラフィン系組成物の沸点分布の測定に適切である。
【0021】
本明細書中で言及されるすべての規格は、特に断りのない限り、入手可能な最新の改訂版である。
【0022】
本明細書で使用する場合、「水素化処理(hydrotreatment)」は、任意の分子水素の手段による有機材料の触媒プロセスを意味する。好ましくは、水素化処理は、水として酸素含有有機化合物から酸素を除去する、すなわち水素化脱酸素(HDO)である。追加で/代替的には、水素化処理は、硫化水素(H2S)として硫黄含有有機化合物から硫黄を除去する、すなわち水素化脱硫(HDS)であってもよく、アンモニア(NH3)として窒素含有有機化合物から窒素を除去する、すなわち水素化脱窒(HDN)であってもよく、および/または、ハロゲンを除去、例えば塩酸(HCl)として塩素含有有機化合物から塩素を除去する、すなわち水素化脱塩素(HDCl)であってもよい。
【0023】
例えばトリグリセリドまたは他の脂肪酸誘導体または脂肪酸の「水素化脱酸素(HDO)」との用語は、本開示の文脈において、例えば、触媒の影響の存在下、分子酸素の手段による例えばカルボキシル基の酸素などの酸素の水としての除去を意味する。
【0024】
用語「脱酸素」は、本開示の文脈において、例えば脂肪酸誘導体、アルコール、ケトン、アルデヒド、および/またはエーテルなどの有機分子からの、上述の任意の手段にまたは脱カルボキシル化または脱カルボニル化による酸素の除去を意味する。
【0025】
本開示は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む、単相式液体直接浸漬冷却のための(単相式液体直接浸漬冷却における)、または、単相式液体直接浸漬冷却のための(単相式液体直接浸漬冷却における)冷却液体としての、再生可能なパラフィン系組成物の使用を提供する。該再生可能なパラフィン系組成物は、広い温度範囲にわたって液体形状で維持され、したがって、再生可能なパラフィン系液体とも称され得る。
【0026】
驚くべきことに、少なくとも80wt-%のC16~C19の炭素範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物が、単相式液体直接浸漬冷却のために特に適していることが見出された。少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンは、再生可能なパラフィン系組成物に、高い引火点と低い動粘度とを同時に与え、これはより軽質のおよび/またはより重質のパラフィンを主に含む組成物によっては達成され得ない。高い引火点は安全性を向上させ、および、低い動粘度は、冷却液体が冷却される対象物のすべての部品を通って循環し、その非常に小さな空洞にさえも到達し(冷却される対象物の本質的にすべての外側の表面に到達し)、したがって、冷却される対象物と冷却液体との間の熱交換を改善することを容易にする。冷却液体が冷却される対象物の本質的にすべての外側の表面、非常に小さな空洞まで、到達することがでる場合、局所的なホットスポットの形成が減少し、および、局所的なホットスポットが出現した場合でも、局所的なホットスポットの急速冷却が可能である。C16~C19範囲であるパラフィンを多く含むことのさらなる利点は、そのような冷却液体が安定であり、毒性がなく、非腐食性であり、燃焼時、例えば稼働している設備で火災が発生した場合などにはCOおよびCO2を形成することである。COおよびCO2は、従来技術のフルオロカーボン液体の燃焼時に形成されるHFに比べて、はるかに危険性が低い。さらに、C16~C19のパラフィンは、OECDテストガイドライン301Fによれば、容易に生分解され得ると分類されており、これは、例えば、事実上難分解性である従来技術のフルオロカーボン液体に対して有利である。さらに、本発明の再生可能なパラフィン系組成物は、比較的低い密度を有し、これは、冷却システムにおける再生可能なパラフィン系組成物の循環またはポンピングを容易にし、これは例えば電力消費を低減させるため有利である。さらに、比較的低い密度は、再生可能なパラフィン系組成物を含む槽の重量を減少させ、これは例えば浸漬冷却槽の互いの上への積み重ねを容易にする。比較的低い密度はまた、冷却液体は熱交換ユニットを通して循環されないが、熱交換ユニットを通して循環せずとも冷却を可能とするために十分なほどの多くの量の再生可能なパラフィン系組成物を浸漬槽が含むように構成される実施形態においても有利である。また、驚くべきことに、少なくとも80wt-%のC16~C19の炭素範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物は、有益な熱伝導および熱吸収特性を有し、およびそれゆえ単相式液体直接浸漬冷却に特に適していることが見出された。有益な熱伝導とは、本明細書において、迅速な熱伝導を意味しており、有益な熱伝導特性は、例えば、高い熱伝導率および/または高い熱拡散性などによって示される。有益な熱吸収特性を有する冷却液体は、冷却液体の温度があまり上がることなく、より多くの熱を吸収し得、および、有益な熱吸収特性は、例えば高い体積熱容量および/または質量熱容量などによって示される。
【0027】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%以上、好ましくは95wt-%以上、より好ましくは98wt-%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含む。C16~C19範囲であるが多量であることに関連する上述の利点は、これらの組成物について特に顕著である。また、90wt-%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物は、特に例えばエステルベースの組成物またはグリセリドベースの組成物であるが顕著な量のオレフィンを含む組成物と比較した場合に、とりわけ安定である。非環状パラフィンの高い含有量はまた、再生可能なパラフィン系組成物の低い酸素含有量をも確実とする。単相式液体直接浸漬却液中の顕著な酸素含有量は、酸性度数の上昇およびスラッジの形成をもたらす可能性があり、これは浸漬される対象物および/または単相式液冷システムにとって有害であり得、およびスラッジの形成は、特にスラッジが冷却される浸漬対象物上に蓄積または形成される場合に効率的な熱交換を妨げ得る。
【0028】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物の使用は、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換ユニットを通じて循環させることを含む。熱交換ユニットは、特に限定されず、および、再生可能なパラフィン系組成物を冷却するために適切である任意の熱交換ユニットであり得る。好ましくは、熱交換ユニットは、再生可能なパラフィン系組成物を冷却するように構成される。
【0029】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物の使用は、電子ハードウェア、好ましくはコンピュータハードウェア、より好ましくはサーバーの単相式液体直接浸漬冷却のための(単相式液体直接浸漬冷却における)使用、または、燃料電池の単相式液体直接浸漬冷却のための(単相式液体直接浸漬冷却における)使用である。電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却において、再生可能なパラフィン系組成物は、その中に浸漬される電子ハードウェアと直接接触している。同様に、燃料電池単相式液体直接浸漬冷却において、燃料電池または燃料電池スタックは、再生可能なパラフィン系組成物中に直接浸漬される。燃料電池は環境に優しいエネルギー源であり、および、本発明は、燃料電池の単相式液体直接浸漬冷却のための(単相式液体直接浸漬冷却における)環境に優しい冷却液体の使用を提供する。
【0030】
驚くべきことに、本発明の再生可能なパラフィン系組成物は、電子ハードウェア、特に例えばサーバーなどの高精度のコンピュータハードウェアと適合する。コンピュータハードウェアは、しばしば、例えばエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニルおよび/または他のプラスチック、繊維ガラス、例えば鋼およびアルミニウムなどの様々な金属、銅配線、プリント配線基板、トランジスタ、キャパシタ、抵抗器、マイクロプロセッサー、マザーボード、RAMボードおよび/またはマーキング用染料などを含む、様々な材料および部品を含む。実施例によって示されているように、驚くべきことに、本発明の再生可能なパラフィン系組成物中へのコンピュータハードウェアの直接浸漬は、コンピュータハードウェアの溶出、またはその他の影響や害を生じさせないことが判明した。実施例は、本発明の再生可能なパラフィン系組成物中への浸漬後、コンピュータハードウェアは、障害なく正常に機能することを示している。また、再生可能なパラフィン系組成物のパラフィンの誘電特性は、非常に優れており、および、電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却の要件と同程度である。
【0031】
本明細書で使用される場合、電子デバイスまたはハードウェアと電気デバイスとは同じものを指している訳ではない。電子と電気との重要な違いは、電子は、意思決定(処理)能力を示しており、一方、電気は、電気エネルギーをある形態から別の形態に変換すること、または、電気エネルギーを伝達することを単に示していることである。例えば、電気回路は、単に電気を用いて装置または機械に電力を供給するだけであり得るが、一方、電子回路は、信号または命令を解釈し、および、状況に応じてタスクを実行し得る。したがって、電気装置は受動的であると考えられ得、一方、電子機器は能動的であると考えられ得る。機能および性能におけるこのような違いは、当然のことながら、電子装置と電気装置の構造にも反映される。
【0032】
典型的には、電気機器は、構造が単純および堅牢であり、可動部がないか非常に少なく、および、電子機器と比較してしばしば、物理的なサイズがより大きい。一方、電子ハードウェアまたはデバイスは、典型的には、様々な材料からなる多数の小さな部品を備える非常に複雑なシステムである。比較的小さな電圧(多くは直流)で作動する傾向がある電子機器と比較して、電気機器は、典型的には、かなり大きな電圧(多くは交流)で作動する。
【0033】
電子機器の構成部品に典型的な小さなサイズは、冷却に対する課題があることを示している。例えば、マイクロプロセッサーはまさに数マイクロメートルの厚さである回路線を含み得、および、電子機器はナノメートルサイズでさえある配線を含み得る。ハードウェアの全ての小さな部品が、それらのいずれもが傷つけられることなしに適切に冷却されることを確実にすることが重要である。とりわけ部品がより小型化されるに伴い、特に、不十分な冷却は繊細な電子部品を壊してしまう虞さえもある。高密度集積回路内のトランジスタの数は約2年ごとに倍増する(ムーアの法則)という傾向が続いており、同時に、電子機器はますます小型化されている。そのため、電子機器の冷却はより難しくなってきており、改良された解決法が必要とされている。
【0034】
電気機器と電子機器との違いにより、液体を単純な電気機器に直接接触させることを考える場合と、液体を電子ハードウェアに直接接触させることを考える場合とは別々の考慮を行わなければならないであろう。例えば、例えば熱を吸収する能力(質量熱容量、体積熱容量)および熱伝導性(熱伝導率、熱拡散率)などの熱特性、密度、粘度、(電気)伝導率などは、電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却において用いられる冷却液体の重要な特性であると考えられ得る。
【0035】
例えばサーバーなどのコンピュータハードウェアなどの電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却の作動温度は、典型的には、室温(約20℃)から約65℃の間である。しかし、高負荷の場合、コンピュータサーバーの温度は、約90℃であり得る。ASICSベースの暗号マイニング装置においては、温度は約75℃まで上がり得る。
【0036】
ある実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却の作動温度は、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内にある。これらの温度は、例えばサーバーなどのコンピュータハードウェア、または他の電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却に特に有利である。
【0037】
C16~C19範囲であるパラフィンを主に含む再生可能なパラフィン系組成物は、有益な蒸発プロファイルを有し、すなわち、上記の作動温度で本質的に蒸発しない。これは、単相式液体直接浸漬冷却の安全性を高め、および、冷却剤液が周囲の空気と直接接触する浸漬冷却システムを使用することを可能にする。しかしながら、再生可能なパラフィン系組成物また、密閉された冷却システムにおいても使用され得る。
【0038】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、2wt-%未満のC15およびそれより軽質なパラフィンを含む。C15およびそれより軽質なパラフィンの量が少ないことは、再生可能なパラフィン系組成物に高い引火点を提供するため好ましい。それはまた、再生可能なパラフィン系組成物に、特に良好な熱伝導および熱吸収特性を提供する。
【0039】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、ENISO2719:2016に従って測定されて、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも135℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらにより好ましくは少なくとも145℃の引火点を有する。前述のように、例えばサーバーなどのコンピュータハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却の作動温度は、一般的に、室温~約65℃の間であり、ASICSベースの暗号マイニングデバイスでは約75℃まで上がり得る。高負荷の場合、サーバーの温度は、約90℃になり得る。高い引火点、例えば少なくとも125℃の引火点は、例えばコンピュータハードウェアなどの単相式液体直接浸漬冷却のための再生可能なパラフィン系組成物の安全な使用を確実なもとする。
【0040】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、1.60MJ/(m3K)~1.90MJ/(m3K)の範囲内の体積比熱(体積熱容量)を有する。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.11W/(m・K)~0.15W/(m・K)の範囲の熱伝導率を有する。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.06mm2/s~0.09mm2/sの範囲の熱拡散率を有する。好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、1.60MJ/(m3K)~1.90MJ/(m3K)の範囲の体積比熱、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.11W/(m・K)~0.15W/(m・K)の範囲の熱伝導率、および、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.06mm2/s~0.09mm2/sの範囲の熱拡散率を有する。これらの特性は、電子機器ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却における性能を反映するものである。高い熱伝導率および高い熱拡散率は、浸漬された対象物から冷却液体への迅速な熱伝達を可能にする。高い体積比熱は、低い体積比熱を有する冷却剤液体と比較して、冷却剤液体の温度の上昇をより少なくしつつ、冷却剤液体がより多くの熱を吸収することを可能にする。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、2wt-%未満のC15およびそれより軽質なパラフィンを含み、ならびに、ENISO2719:2016に従って測定されて、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも135℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらにより好ましくは少なくとも145℃の引火点、および/または、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、1.60MJ/(m3K)~1.90MJ/(m3K)の範囲内の体積比熱、220℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.11W/(m・K)~0.15W/(m・K)の範囲の熱伝導率、および、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.06mm2/s~0.09mm2/sの範囲の熱拡散率を有する。
【0041】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、95wt-%以上、好ましくは98wt-%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含み、ならびに、ENISO2719:2016に従って測定されて、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも135℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらにより好ましくは少なくとも145℃の引火点、および/または、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、1.60MJ/(m3K)~1.90MJ/(m3K)の範囲内の体積比熱、220℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.11W/(m・K)~0.15W/(m・K)の範囲の熱伝導率、および、20℃においてASTM D7896-19に従って測定されて、0.06mm2/s~0.09mm2/sの範囲の熱拡散率を有する。
【0042】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、5wt-%未満、好ましくは2wt-%未満のC20およびそれより重質なパラフィンを含む。いかなる理論にも拘束されることなく、不純物は、より重質な(C20およびそれより重質な)炭化水素画分中に蓄積する傾向があると考えられ、したがって、非常に少量のC20およびそれより重質なパラフィンを含む、またはC20およびそれより重質なパラフィンの量が最小とされている(任意には、実質的に0wt-%にまで下がっている)再生可能なパラフィン系組成物は、例えば22℃で1pS/m未満などの(電気)伝導性などであるとりわけ低い(電気)伝導性に寄与する不純物、例えば金属不純物などをより少ない量で含み得る。C20およびそれより重質なパラフィンの量が少ないと、より多くの量のC20およびそれより重質なパラフィンを含む組成物と比較して、再生可能なパラフィン系組成物の密度も低下され、およびその動粘度も低下される。
【0043】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、最大で5ppm重量の金属を含む。
【0044】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物の含水量は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、50重量ppm未満である。本開示の再生可能なパラフィン系組成物は、高い撥水性を有する。低い含水率および高い撥水性は、電子ハードウェアが湿気に対して感受性であるため、再生可能なパラフィン系組成物が電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却における冷却剤液体として使用される場合に有益である。
【0045】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、EN ISO12185に従って測定されて、20℃において、700~850kg/m3、好ましくは760~800kg/m3、より好ましくは770~790kg/m3の範囲内の密度を有する。これらの密度は、従来技術のフルオロカーボン液体の密度に比べて顕著により低い。換言すると、これらの実施形態における再生可能なパラフィン系組成物のある体積は、従来技術のフルオロカーボン冷却剤液体の同じ体積よりも顕著により低い重量または質量を有する。この利点は、これらの実施形態における再生可能なパラフィン系組成物の冷却剤液体槽が、槽および/または積層構造および/または積層体が位置される床または建物内に高価で特別に強靭な材料を必要とすることなく、容易に互いの上に(垂直方向に)積層され得る、例えば2または3の槽が互いの上に積層され得ることである。互いの上に槽を積み重ねることは、床のスペースを節約させ、および、一定の(床)面積内でより多くの対象物を冷却することを可能にする。比較的低い密度を有する再生可能なパラフィン系組成物の単相式液体直接浸漬冷却におけるさらなる利点は、前述したように、冷却液体のより容易な循環を含む。
【0046】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、5wt-%未満、より好ましくは2wt-%未満のC20およびそれより重質なパラフィンを含み、および、EN ISO12185に従って測定して、20℃で850kg/m3以下、好ましくは800kg/m3以下、より好ましくは790kg/m3以下の密度を有する。
【0047】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%以上、好ましくは95wt-%以上、より好ましくは98wt-%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含み、および、EN ISO12185に従って測定して、20℃で700~850kg/m3、好ましくは760~800kg/m3、より好ましくは770~790kg/m3の密度を有する。
【0048】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、EN ISO3405:2011に従って測定されて、約270℃~約325℃、好ましくは約275℃~約320℃、より好ましくは約280℃~約300℃の範囲内の沸点範囲を有する。例えば、EN ISO3405:2011に従って測定されて、再生可能なパラフィン系組成物の初留点IBPは、約275℃、好ましくは約280℃であり得、最終沸点FBPは、約320℃、好ましくは約300℃であり得る。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、ASTMD5800-15aBに従って測定されて、9wt-%以下、好ましくは8.5wt-%以下のNOACK150値を有する。
【0049】
高いIBP温度値(例えば275℃以上など)および/または低いNOACK150値(例えば9wt-%以下など)を有する再生可能なパラフィン系組成物は、全くまたは非常に少ない揮発性化合物および最大でも非常に低いVOC含有量を含む。これは、比較的揮発性でありおよびNOACK試験中にほとんど完全に蒸発し得る従来技術のパーフルオロカーボン液体と比較した場合、有利である。換言すれば、高いIBP温度および/または低いNOACK150値の利点は、例えば前述した作動温度などにおいて、再生可能なパラフィン系組成物の蒸発がないまたは非常に少ないということである。これは、例えばメンテナンスなどに関連して単相式液体直接浸漬冷却の安全性を高め、および、冷却液体が周囲の空気と直接接触する単相式液体直接浸漬冷却システムの使用を可能にする。
【0050】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、95wt%以上、好ましくは98wt%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含み、ここで、EN ISO3405:2011に従って測定されて、再生可能なパラフィン系組成物の初留点IBPは、約275℃、好ましくは約280℃であり、および、最終沸点FBPは、約320℃、好ましくは約300℃である。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、95wt%以上、好ましくは98wt%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含み、および、再生可能なパラフィン系組成物は、ASTMD5800-15aBに従って測定して、9wt-%以下、好ましくは8.5wt-%以下NOACK150値を有する。
【0051】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、10wt-%未満のオレフィン、好ましくは5wt-%未満のオレフィン、より好ましくは2wt-%未満のオレフィンを含み、さらに好ましくは再生可能なパラフィン系組成物は、実質的にオレフィンを含まない。低いオレフィン含有量は、再生可能なパラフィン系組成物の安定性を向上させる。低いオレフィン含有量は、再生可能なパラフィン系組成物の誘電挙動を確実なものとするためにも有利である。
【0052】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして5wt-%以下、好ましくは2wt-%以下のナフテンを含み、より好ましくは再生可能なパラフィン系組成物は、実質的にナフテンを含まない。冷却液体中のナフテン、特に数wt%のナフテンは、スラッジまたは沈殿物(例えば微結晶性ワックス)の形成を引き起こし得、これは浸漬された対象物の性能に特に有害であり得るが、また、単相式液体直接浸漬冷却システムまたはその部品、例えばポンプなどにも有害であり得る。スラッジまたは沈殿はまた、冷却される対象物上に沈殿物が付着した場合特に、効率的な熱交換も阻害し得る。
【0053】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも99wt-%の炭化水素を含む。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン系組成物の総重量に基づいて、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィンを含む。パラフィンの高い含有量は、特に、例えばエステルベースの組成物またはグリセリドベースの組成物と比較した場合に、再生可能なパラフィン系組成物の安定性を改善するため好ましいが、顕著な量のオレフィンを含む組成物と比較した場合も同様である。パラフィンの高い含有量はまた、再生可能なパラフィン系組成物の低い酸素含有量を確実なものとする。液体直接浸漬冷却液体中の顕著な酸素含有量は、上述したように、酸価の上昇およびスラッジの形成につながり得る。さらに、例えば90wt-%を超えるような高いパラフィン含有量を有する再生可能なパラフィン系組成物は、OECDテストガイドライン301 Fによれば易生分解性として分類され得る。
【0054】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして90wt%より多い、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも98wt%のパラフィン、および、最大で10wt%のC16パラフィン、例えば2wt%~10wt%のC16パラフィン、好ましく最大で6wt%のC16パラフィン、例えば2wt%~6wt%のC16パラフィンを含む。再生可能なパラフィン系組成物中のC16パラフィンが比較的少量であることは、組成物中のC16~C18のパラフィン含有量が高い場合、再生可能なパラフィン系組成物の引火点をさらに向上、すなわち上昇させる。それはまた、再生可能なパラフィン系組成物の熱伝導率、熱拡散率、および体積比熱を向上、すなわち上昇させる。
【0055】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィン、および、最大で2wt-%のC19パラフィン、例えば1wt-%~2wt-%のC19パラフィンを含む。再生可能なパラフィン系組成物中のC19パラフィンの量が比較的少量であることは、組成物中のC16~C19のパラフィン含有量が高い場合、組成物の密度および動粘度をさらに低下させる。
【0056】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィン、および、37wt-%より多いおよび任意には42wt-%未満のC17パラフィンを含む。このような再生可能なパラフィン系組成物は、高い引火点、低い密度および低い動粘度という有利な組み合わせを提供する単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として良好に機能する。このような再生可能なパラフィン系組成物はまた、良好な熱伝導および熱吸収特性を提供する。
【0057】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィン、ならびに、45wt-%より多い、好ましくは48wt-%より多い、より好ましくは50wt-%より多い、および任意には57wt-%未満のC18パラフィンを含む。このような再生可能なパラフィン系組成物は、高い引火点、低い密度および低い動粘度という有利な組み合わせを提供する単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として良好に機能する。このような再生可能なパラフィン系組成物はまた、良好な熱伝導および熱吸収特性を提供する。
【0058】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、90wt-%より多く、および任意には95wt-%未満のC17~C18のパラフィンを含む。これは、再生可能なパラフィン系組成物に、少なくとも140℃でさえある、高い引火点、低い密度、および、向上された流動性を提供する低い動粘度という有利な組み合わせを与える。このような再生可能なパラフィン系組成物はまた、良好な熱伝導および熱吸収特性を提供する。
【0059】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、90wt-%より多く、および任意には95wt-%未満のC17~C18のパラフィンを含み、ここで、C18のn-パラフィンの量に対するC18のi-パラフィンの量の比は、再生可能なパラフィン系組成物中のC18のn-パラフィンの重量およびC18のi-パラフィンの重量をベースとして、40より大きく、例えば42~47のあいだなどである。この組成物は、単相式液体直接浸漬冷却において良好な性能を有する。C17~C18のパラフィンの高いシェアは、再生可能なパラフィン系組成物に、少なくとも140℃、例えば145℃などでさえある、高い引火点、低い密度、および、向上された流動性を提供する低下された動粘度という有利な組み合わせを与え、一方で、C18のn-パラフィンに対するC18のi-パラフィンの高い重量比は、さらにより低い動粘度およびしたがってより良好な流動性を与え、この組み合わせは、特に効率の良い熱伝導およびその後の向上された使用の安全性を確実なものとする。C18のn-パラフィンに対するC18のi-パラフィンの比を増大させることは、C17~C18のパラフィンが寄与する高い体積熱容量、熱伝導率および熱拡散率を有しながら、より流動的である再生可能なパラフィン系組成物を提供する。
【0060】
ある好ましい実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多いC17~C18範囲であるパラフィン(ここで、C18のn-パラフィンの量に対するC18のi-パラフィンの量の比は、再生可能なパラフィン系組成物中のC18のn-パラフィンの重量およびC18のi-パラフィンの重量をベースとして、40より大きい)、ならびに、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、45wt-%より多い、好ましくは48wt-%より多い、より好ましくは50wt-%より多いC18パラフィンを含む。このような再生可能なパラフィン系組成物は、単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として良好に機能し、および、良好な熱伝導および熱吸収特性を有する。
【0061】
ある実施形態において、C17のn-パラフィンの量に対するC17のi-パラフィンの量の比は、再生可能なパラフィン系組成物中のC17のn-パラフィンの重量およびC17のi-パラフィンの重量をベースとして、20より大きく、および好ましくは30未満である。このような再生可能なパラフィン系組成物は、良好な熱伝導および熱吸収特性を有しながら特に良好な流動性および低い動粘度を有し、および、単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として良好に機能する。
【0062】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして3~4wt-%のC16イソパラフィン、35~40wt-%のC17イソパラフィン、50~55wt-%のC18i-パラフィン、1~3wt-%のC19イソパラフィン、0.1~1wt-%のC16n-パラフィン、0.5~2wt-%のC17n-パラフィン、0.5~2wt-%のC18n-パラフィン、および0.01~1wt-%のC19n-パラフィンを含む。このような再生可能なパラフィン系組成物は、単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として良好に機能し、および、良好な熱伝導および熱吸収特性を有する。
【0063】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、1wt-%未満の化合物、好ましくは0.5wt-%未満の芳香族化合物を含む。低い芳香族化合物含有量は、芳香族化合物に関連する健康リスクを低減することによって安全性を向上させ、および、芳香族化合物はパラフィンよりも高い密度を有する傾向があるため、密度を低下させることに寄与する。
【0064】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、EN ISO3104に従って測定されて、40℃において15mm2/s未満、好ましくは10mm2/s未満、より好ましくは5mm2/s未満の動粘度を有する。典型的には、再生可能なパラフィン系組成物は、1mm2/sより大きい、例えば1.5mm2/sより大きい、または2mm2/sより大きい動粘度を有する(EN ISO3104に従って測定されて、40℃において)。低い動粘度は、再生可能なパラフィン系組成物のより良好な流動性を示している。より良好な流動性は、例えば、冷却される対象物の、非常に小さな空洞をも含む本質的に全ての外面が冷却剤液体によって接触され得ること、より効率的な熱伝導を確実なものとし、および、再生可能なパラフィン系組成物における局所的なホットスポットのリスクを低減する。また、低い動粘度は、冷却システムにおける冷却剤液体の循環を容易にする。
【0065】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、ISO6297:1997に従って測定されて、22℃で1pS/m未満の(電気)伝導度を有する。最小の(電気)伝導度は、特に、コンピュータハードウェアなどの電子ハードウェアの浸漬冷却のために再生可能なパラフィン系組成物を使用する場合に、有利である。
【0066】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、60wt-%より多い、好ましくは70wt-%より多い、より好ましくは80wt-%より多い、さらにより好ましくは90wt-%より多い、および最も好ましくは95wt-%より多いイソパラフィンを含む。例えば80wt-%以上などの高いイソパラフィン含有量は、再生可能なパラフィン系組成物の動粘度を低下させ、および、その流動性を向上させる。動粘度の低下は、特に低温で顕著である。改善された流動性は、例えば、冷却される対象物の本質的に全ての外面、非常に小さな空洞にさえも達し得ることを確実なものとし、および、熱伝導効率が向上され得る。また、局所的なホットスポットのリスクも低減され、それによって再生可能なパラフィン組成物の寿命および安全性が向上される。より効率的な冷却はまた、浸漬槽内で冷却される対象物のより密なパッキングも可能にし、および/または、冷却率を低下させ得る。高いイソパラフィン含有量はまた、低温での向上された流動性を含む、再生可能なパラフィン系組成物の低温性能を向上させる。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多くかつ98wt-%より少ないイソパラフィンを含む。これは、特に低下された動粘度および向上された流動性という観点において、広い温度範囲にわたる良好な性能を意味している。
【0067】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィンと、60wt-%より多い、好ましくは70wt-%より多い、より好ましくは80wt-%より多い、さらに好ましくは90wt-%より多い、および最も好ましくは95wt-%より多いイソパラフィンとを含む。
【0068】
ある実施形態において、イソパラフィンは、メチル置換イソパラフィンである。
【0069】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、ASTMD7689:2017に従って測定されて、-15℃未満、好ましくは-20℃未満、より好ましくは-25℃未満、およびさらにより好ましくは-30℃未満の曇点を有する。低い曇点温度値は、再生可能なパラフィン系組成物の効率的かつ急速な冷却の場合に、パラフィン結晶が析出しないことを確実なものとし、これは、例えば、単相式液体直接浸漬冷却システムにおいてフィルタなしのポンプを使用することを可能にする。
【0070】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、ASTMD5950:2014に従って測定されて、-45℃未満、好ましくは-50℃未満、より好ましくは-55℃未満、さらにより好ましくは-60℃未満、および最も好ましくは-65℃未満の流動点を有する。低い流動点は、例えば、効率的かつ迅速な冷却に関連して、再生可能なパラフィン系組成物のポンピングを容易にする。
【0071】
良好な低温作動性、すなわち、例えば-15℃未満などの低い曇点、および/または、例えば-45℃未満などの低い流動点値は、冷却剤液体を急速に冷却する非常に効率的な熱交換器と共に、再生可能なパラフィン系組成物を使用することを可能にする。例えば、非常に効率的な熱交換器の表面上での固化が回避され得る。非常に効率的な熱交換ユニットは、冷却のための特にコンパクトなシステムの形成を可能にする。低温作動性は、適切な添加剤によって向上さされてもよい。しかしながら、再生可能なパラフィン系組成物が低い曇点の値および/または低い流動点の値を有している場合、低温作動性を向上させるための添加剤の使用は必要とされない。
【0072】
さらに、良好な低温作動性を有する再生可能なパラフィン系組成物は、例えば-15℃未満などの低い屋外温度でもその流動性を維持するであろうことから、良好な低温作動性は、例えば、屋外に設置された配管を通してそれを通過させることによって再生可能なパラフィン系組成物を冷却することを可能にする。また、良好な低温特性により、低い屋外温度での沈殿物の形成が防止される。
【0073】
二相式冷却と比較した単相式冷却の利点は、二相式冷却においては冷却液体の温度が冷却液体の沸点温度に保たれるのに対し、単相式冷却は、より広い温度範囲内で作動すること、および、作動温度を所望のレベルに設定することを可能にすることである。広い温度範囲にわたって液体形状を維持する冷却液体は、広い温度範囲から所望の作動温度または温度範囲を選択することができるという点で有益である。
【0074】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、80wt-%より多い、好ましくは90wt-%より多い、およびより好ましくは95wt-%より多いイソパラフィンを含み、および、ASTMD7689:2017に従って測定されて、-15℃未満、好ましくは-20℃未満、より好ましくは-25℃未満、およびさらに好ましくは-30℃未満の曇点、および/またはASTMD5950:2014に従って測定されて、-45℃未満、好ましくは-50℃未満、より好ましくは-60℃未満、の注ぎ点およびさらに好ましくは-65℃未満の流動点を有する。
【0075】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、ASTM D971Mに従って測定されて、40mN/m未満、好ましくは35mN/m未満の表面張力を有し、より好ましくは、表面張力は、30mN/m以下である。
【0076】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、55℃でASTM D1169-19aに従って測定されて、1.0×1014Ωcm~10×1015Ωcmの範囲内の(電気)抵抗率を有する。再生可能なパラフィン系組成物は、(電気)抵抗率と温度との間に負の相関を有し、すなわち(電気)抵抗率は温度の上昇に伴って低下する。再生可能なパラフィン系組成物の(電気)抵抗率は、使用中に発生し得る高温においてでさえも、比較的高い。
【0077】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、40℃でASTM E1269-11(2018)に従って測定されて、1.5kJ/(kgK)~3.0kJ/(kgK)の範囲内の比熱容量(質量熱容量)を有する。
【0078】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、20℃でIEC60156:2018に従って測定されて、少なくとも60kV、好ましくは少なくとも65kV、より好ましくは少なくとも70kVの破壊電圧を有し、および、それは80kV未満、または75kV以下であり得る。
【0079】
表面張力、(電気)抵抗率、質量熱容量および/または体積熱容量、および破壊電圧は、電子機器の単相式液体直接浸漬冷却における冷却液体としての再生可能なパラフィン系組成物の性能を反映している。
【0080】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、例えば、抗酸化剤、金属不動態化剤、流動点降下剤、ガス化傾向を減少させる添加剤、および/または任意の他の一般的に使用される添加剤から選択される、1つまたは複数の添加剤を含み得る。しかしながら、これらの記載された添加剤のいずれも、再生可能なパラフィン系組成物が単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として十分に機能するために必要ではなく、しかしそれらは、再生可能なパラフィン系組成物の特定の特性または複数の特性をさらに向上させるために、単独でまたは他の添加剤と組み合わされて任意には使用されてもよい。
【0081】
好ましくは、再生可能なパラフィン系組成物は、OECDテストガイドライン301 Fに従って易生分解性として分類される。本発明の再生可能なパラフィン系組成物のパラフィンは、易生分解性であり、これは、単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として機能した後の再生可能なパラフィン系組成物の廃棄を容易にする。また、再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬された部品の廃棄も容易である。このことは、事実上非常に難分解性であり、それゆえ廃棄される際に、従来技術の該パーフルオロカーボンベースの冷却液体に浸漬された任意の対象物を含め、特別な注意および準備を必要とする従来技術のパーフルオロカーボン系冷却剤液に対しての明らかな優位点である。
【0082】
任意には、再生可能なパラフィン系組成物が単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として機能した後、使用済みの再生可能なパラフィン系組成物は、精製所のためのフィードストックとして提供され得る。使用済みの再生可能なパラフィン系組成物は、精製所にそのまま供給されてもよいし、精製所に供給される前に前処理に付されてもよい。したがって、使用済みの再生可能なパラフィン系組成物は、例えばディーゼル燃料または化学品などに処理され得、これは、単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として機能していた再生可能パラフィンの付加価値のある使用を可能にする。
【0083】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン系フィードを得るための再生可能フィードストックの水素化処理および任意には異性化;並びに、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19の炭素範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を回収するために、該得られた再生可能なパラフィン系フィードを少なくとも一つの分離または分画プロセスに付すこと、を含む方法によって得られ得るまたは得られる。水素化処理後、および異性化なしで、再生可能なパラフィン系フィードは、主にn-パラフィンを含む。水素化処理および異性化後、再生可能なパラフィン系フィードは、主にn-パラフィンとイソパラフィンとを含み、異性化の程度は異性化処理に依存している。
【0084】
再生可能なパラフィン系フィードから上述の実施形態に記載されるように再生可能なパラフィン系組成物を回収するために適切である任意の公知の分離もしくは分画の方法、または、任意の公知の分離および/または分画の方法の組合せが使用され得る。
【0085】
ある実施形態において、分離または分画プロセスは、再生可能なパラフィン系フィードの蒸留、好ましくは分留を含む。蒸留はまた、例えば残留水分、金属および/または酸化剤などの不純物の除去に寄与するという点でも有益である。このような不純物量が顕著であることは、高感度なコンピュータハードウェアがそれに直接接触された場合、害が及ぼされる可能性がある。ある実施形態において、分離または分画プロセスは、2つまたはそれ以上の分離または分画工程を含む。
【0086】
ある実施形態において、分離または分画プロセスは、EN ISO3405:2011に従って測定されて、約270℃~約325℃、好ましくは約275℃~約320℃、より好ましくは約280℃~約300℃の範囲内の沸点範囲を有する再生可能なパラフィン系組成物を分離または分画から回収することを含む。
【0087】
好ましくは、分離または分画は、C16~C19の範囲内のパラフィン、特にはC16~C19の範囲内のイソパラフィンの大部分が回収された組成物中に行き着くように選択される。分離プロセスは、所定の炭素数、n-パラフィン、およびi-パラフィンの分布を有する再生可能なパラフィン系組成物を得るために選択され得る。このように分離または分画を選択することにより、回収される炭化水素組成物の粘度および密度を制御することが可能である。また、不純物は典型的にはより重質の炭化水素塔底中に濃縮されるため、不純物の量が減少され得、これによって再生可能なパラフィン系組成物の電気伝導度がさらに低下され得る。
【0088】
典型的には、再生可能な(バイオソースの)フィードストックの水素化処理および任意には異性化によって得られる再生可能なパラフィン系フィードは、C8~C22またはC10~C20の範囲内、好ましくはC15~C18の範囲内の炭素数分布、および、140℃~340℃内、好ましくは180℃~320℃内の沸点範囲を有する。好ましい特性に関する再生可能なフィードストックの選択、例えば、C16より長鎖かまたは等しい炭素鎖長を有する化合物を多く含む再生可能な供給フィードストックを選択することなどは、再生可能なパラフィン系組成物の収率を高めるために使用され得る。
【0089】
大部分の再生可能な原料は、高い酸素含有量を有する材料を含む。ある実施形態において、再生可能なフィードストックは、脂肪酸、または、例えばトリグリセリドなどの脂肪酸誘導体、またはそれらの組合せを含む。水素化処理は、再生可能なフィードストックから、好ましくは水として、すなわち水素化脱酸素(HDO)によって、酸素を除去する。任意には、再生可能なパラフィン系フィードの製造は、水素化処理に加えて、他の脱酸素処理(複数の脱酸素処理)を含み得る。そのような脱酸素処理は特に限定されず、および、任意の適切な脱酸素処理が行われ得る。適切な処理としては、接触分解(CC)、脱炭酸反応および/または脱カルボニル反応が挙げられる。
【0090】
ある好ましい実施形態において、水素化処理は、水素化脱酸素である。したがって、ある実施形態において、再生可能なパラフィン系フィードを得ることは、再生可能な供フィードストックの水素化脱酸素および任意的な異性化を含む。再生可能なフィードストックの水素化脱酸素のため、および、結果として得られるn-パラフィンの任意的な異性化のために適切である反応条件および触媒は、公知である。このようなプロセスの例は、国際公開第2015/101837 A2、段落[0032]~[0037]に示されている。さらに、例えばフィンランド国特許100248号、実施例1~3は、再生可能なフィードストックの水素化脱酸素および異性化の例が示されている。
【0091】
水素化脱酸素は、好ましくは、2~15MPa、好ましくは3~10MPaの範囲から選択される圧力で、および、200~500℃、好ましくは280~400℃の範囲から選択される温度で行われる。水素化脱酸素は、周期表の第VIII族および/またはVIB族の金属(複数の金属)を含む公知の水素化脱酸素の触媒の存在下で行われ得る。触媒は、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、非晶質炭素、モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせなどの任意の従来の担体上に担持されていてもよい。好ましくは、水素化脱酸素触媒は、担持されたPd、Pt、NiもしくはNiW触媒、または担持された例えばNiMoもしくはCoMo触媒などのMo含有触媒であって、担体がアルミナおよび/またはシリカである触媒、または、これら触媒の組合せである。典型的には、NiMo/Al23および/またはCoMo/Al23触媒が使用される。
【0092】
HDOは、好ましくは、水素ガスの存在下、硫化NiMo触媒または硫化CoMo触媒の存在下で行われる。HDOは、1~20MPaの範囲から選択される水素圧力下、200℃~400℃の範囲から選択される温度で、および0.2h-1~10h-1の範囲から選択される液空間速度で行われ得る。硫化触媒を用いる場合、気相中への硫黄の添加により、または硫黄含有鉱物油を再生可能なフィードストックに混合させているフィードストックを用いることにより、HDO工程のあいだ、触媒の硫化状態が維持され得る。水素化脱酸素に付されている総計のフィードストックの硫黄含有量は、例えば、50wppm(重量ppm)~20000wppmの範囲内、好ましくは100wppm~1000wppmの範囲内であり得る。
【0093】
水素化脱酸素に必要な有効条件は、フィードストックの酸素含有量を1wt-%未満、例えば0.5wt-%未満または0.2wt-%未満にまで低減し得る。任意には、該条件は、少なくとも40wt-%、少なくとも50wt-%または少なくとも75wt-%の脱酸素に相当する部分的水素化脱酸素をもたらすように選択されてよい。
【0094】
一般に、再生可能なパラフィン系フィードは、任意の既知の方法を用いて再生可能なフィードストックから製造され得る。再生可能なパラフィン系フィードを製造するための方法の具体例は、欧州特許出願公開1741768号明細書、段落[0038]~[0070]、特には段落[0056]~[0070]、および実施例1~6に記載されている。また、他の方法が行われてもよく、具体的には、例えばバイオマスガス化およびそれに続くフィッシャー-トロプシュ法など、別のBTL(Biomass-To-Liquid)法が選択されてもよい。
【0095】
再生可能なパラフィン系フィードを調製することは、任意には、水素化処理の後に炭素鎖を水素化分解する工程を含み得る。したがって、形成されたパラフィンの鎖長が調整され得、および、製造された再生可能なパラフィン系フィードの生成物分布が間接的に制御され得る。
【0096】
任意の異性化処理は特に限定されず、および、任意の適切な異性化処理が使用され得る。しかしながら、触媒的異性化処理が好ましい。異性化処理は、好ましくは、200~500℃、好ましくは280~400℃、例えば300℃~350℃などの範囲から選択される温度で、および、1~15MPa、好ましくは3~10MPaの範囲から選択される圧力で行われる。異性化処理は、公知の異性化触媒、例えば、モレキュラーシーブおよび/または周期表の第VIII族から選択される金属および担体を含む触媒などの存在下で行われ得る。好ましくは、異性化触媒は、SAPO-11またはSAPO-41またはZSM-22またはZSM-23またはフェリエライト、およびPt、PdまたはNi、およびAl23またはSiO2を含む触媒である。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SAPO-11/Al23、Pt/ZSM-22/Al23、Pt/ZSM-23/Al23および/またはPt/SAPO-11/SiO2である。触媒は、単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。触媒の失活は、異性化処理中の水素分子の存在によって低減され得る。ある好ましい実施形態において、異性化触媒は、Pt-SAPOおよび/またはPt-ZSM-触媒などの貴金属二官能性触媒であり、これは水素と組み合わせて使用される。
【0097】
水素化処理からの少なくとも直鎖パラフィンが、任意の異性化処理に付されてもよく、または、水素化処理された再生可能なフィードストックが、全体として、任意の異性化処理に付されてもよい。異性化処理は、水素化処理工程から得られたパラフィンを異性化するために主に機能する工程である。すなわち、大部分の熱的または触媒的な転換(例えばHDOなど)が小さな割合の異性化(通常5wt-%未満)をもたらすのに対し、再生可能なパラフィン系フィードを製造する際に任意に含まれ得る異性化工程は、イソパラフィンの含有量において著しい増加を導く工程である。異性化工程は、例えば精製工程および/または分画工程などの更なる中間工程を含んでいてもよい。
【0098】
水素化脱酸素工程および異性化工程の両方が適用される実施形態において、これらは、同時にまたは順番に実施され得る。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系フィードを製造することは、この組み合わせられた工程のための単一の触媒、例えば、NiWまたは例えばPt/SAPOなどのPt触媒の、担体上に担持されたMo触媒、例えばアルミナ上に担持されたNiMoなどとの混合物を使用することにより、同一の触媒床上での単一の工程で水素化脱酸素および水素異性化を行うことを含む。
【0099】
ある実施形態において、再生可能なパラフィン系フィードを製造することは、水素ガス、および、例えばアルミナ担体、ゼオライト担体、または混合された担体などの担体上に担持された、例えばCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoなどの水素化脱酸素触媒、好ましくは任意にはアルミナ担体に担持されたNiMO触媒の存在下で水素化脱酸素を行うこと、ならびに、250~400℃の範囲の温度で、2~8MPaの範囲の圧力で、0.5~3h-1の範囲のWHSV(重量空間速度、すなわち、質量流量/触媒質量)で、および350~900nl/lのH2/再生可能なフィードストック比で水素化脱酸素反応を行うこと、ならびに任意には、水素化処理された再生可能なフィードストックを、水素および異性化触媒、好ましくは例えばPt-SAPOもしくはPt-ZSM触媒などの貴金属二官能性触媒またはNiWの存在下で異性化工程に付すこと、および、250~400℃の温度で、および1~6MPaの圧力で、および0.5~3h-1の範囲のWHSVで、および100~800nl/lのH2/オイル比で異性化反応を行うことを含む。好ましくは、水素化脱酸素工程および異性化工程が順番に行われる実施形態においては、水素化脱酸素工程は、異性工程に先立って行われる。
【0100】
再生可能なパラフィン系組成物の収率は、再生可能パラフィン系フィードの製造プロセスのプロセス条件の選択によって増大され得る。
【0101】
本明細書で使用する場合、再生可能な原料とは、植物および/または動物から得られ得る、誘導され得る、またはそれに由来する材料および生成物を意味しており、真菌および/または藻類から得られ得る、誘導され得る、またはそれに由来する材料および生成物を含む。本明細書で使用される場合、再生可能な原料は、遺伝子操作された再生可能な原料を含んでいてもよい。再生可能な原料はまた、生物学的原料または生物起源原料とも称され得る。
【0102】
化石原料または鉱物原料は、本開示の文脈では、例えば原油、石油オイル/ガス、シェールオイル/ガス、天然ガス、または石炭鉱床などの天然由来の非再生可能な組成物、およびそれらの組み合わせを意味しており、地上/地下源から利用され得る任意の、炭化水素に富む鉱床を含む。化石または鉱物との用語は、非再生可能な資源に由来するリサイクル材料も意味し得る。
【0103】
再生可能または生物由来の炭素原子は、化石由来の炭素原子と比較して、より多くの数の不安定な放射性炭素(14C)原子を含む。したがって、12Cおよび14C同位体の比を分析することにより、再生可能または生物学的な原料由来の炭素化合物と、化石原料由来の炭素化合物とを区別することが可能である。したがって、該同位体の特定の比は、再生可能な炭素化合物を識別し、および非再生可能な炭素化合物から区別するための「タグ(tag)」として使用され得る。同位体比は、化学反応の過程で変化することはない。生物学的または再生可能な原料からの炭素の含有量を分析するための適切な方法の例としては、DIN 51637(2014)、ASTM D6866(2020)およびEN 16640(2017)等が挙げられる。本明細書で使用される場合、生物学的または再生可能な原料からの炭素の含有量は、材料中の総計の炭素(TC)の重量パーセントとして、材料中の生物起源炭素の量を意味する生物起源炭素含有量として表される(ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017)に準拠する)。生物学的起源のフィードストックまたは原料(生物学的原料)とは、典型的には生物起源炭素含有物のみを有する材料を意味する。
【0104】
典型的には、100%パーム油から作られた炭化水素は、約100wt-%の生物起源炭素含有量を有する。典型的には、水素化処理された動物性脂肪は、約100wt-%の生物起源炭素含有量を有する。典型的には、化石原油ベースの鉱油は、約0wt-%の生物起源炭素含有量を有する。
【0105】
再生可能な原料とは、本開示の文脈において、油および/または脂肪を含む、通常、脂質(例えば脂肪酸またはグリセリド)を含む生物学的原料成分、例えば、再生可能な油および/または脂肪、例えば植物(plant)油/脂肪、木材油/脂肪、植物(vegetable)油/脂肪、動物油/脂肪、魚油/脂肪および藻類油/脂肪など、または他の微生物プロセスからの油/脂肪、例えば遺伝子操作された藻類油/脂肪、他の微生物プロセスからの遺伝子操作された油/脂肪、および遺伝子操作された植物油/脂肪などから得られる原料を指す。そのような材料の成分または誘導体、例えば、アルキルエステル(典型的にはC1~C5アルキルエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、sec-ブチルエステル)またはオレフィンなどもまた使用され得る。再生可能なフィードストックは、ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017)に従って測定されて、再生可能なフィードストック中の炭素の総重量(TC)をベースとして、約100wt-%の生物起源炭素含量を有する。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量の約49wt-%までのリサイクルされた化石材料を含む。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、廃プラスチック由来の炭化水素、特には、好ましくはC16~C19範囲であるパラフィンを含む。該廃プラスチックは、廃プラスチックの起源に依存して、リサイクルされた化石材料またはリサイクルされた再生可能な材料のいずれかとみなされ得る。
【0106】
再生可能なフィードストックの上記の油および/または脂肪は、典型的には、C10~C24の脂肪酸、および、脂肪酸のエステル、グリセリドすなわち脂肪酸のグリセロールエステルなどを含む、それらの誘導体を含む。グリセリドは、特には、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドを含み得る。
【0107】
再生可能なフィードストックの油および/または脂肪は、単一の種類の油、単一の種類の脂肪、種々の油の混合物、種々の脂肪の混合物、油および脂肪の混合物、脂肪酸、グリセロール、および/または、上述されたものの混合物を含み得る。任意には、再生可能なフィードストックは、リサイクル可能な廃棄物および/またはリサイクル可能な残渣、例えば、使用済みの食用油、遊離脂肪酸、パーム油副産物またはプロセス副流、スラッジ、植物油加工からの副流、またはそれらの組合せなどを含み得る。
【0108】
再生可能なパラフィン系組成物は、主に再生可能な原料に由来する組成物である。ある実施形態において、ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017)に従って測定されて、再生可能なパラフィン系組成物の生物起源炭素含有量は、再生可能なパラフィン系組成物中の炭素の総計の重量をベースとして、50wt-%より多い、好ましくは少なくとも70wt-%、より好ましくは少なくとも80wt-%、さらにより好ましくは少なくとも90wt-%、最も好ましくは少なくとも99wt-%である。これは、再生可能なパラフィン系組成物の起源を反映するものである。
【0109】
本開示はまた、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19の炭素数範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽、および、該再生可能なパラフィン組成物中に浸漬冷却される対象物を備える単相式液体直接浸漬冷却システムを提供する。
【0110】
槽中に含まれる再生可能なパラフィン系組成物は、第1の態様に関連して記載された再生可能なパラフィン系組成物であり得る。ある実施形態において、槽は、再生可能なパラフィン系組成物以外の他の液体を含まない。
【0111】
ある実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却システムは、熱交換ユニット;および、熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための手段を備える。再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための手段は、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換ユニットを通して連続的に、間隔を置いて、間欠的に、またはそれらの組み合わせで循環させるように構成され得る。
【0112】
代替的には、再生可能なパラフィン系組成物が熱交換ユニットを通して循環されない実施形態において、槽は、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換ユニットを通して循環させなくても冷却を可能にするほどの量の再生可能なパラフィン系組成物を含むように構成される。典型的には、このような槽は、かなり多量の再生可能なパラフィン系組成物を含む。
【0113】
ある実施形態において、熱交換ユニットを通して再生可能なパラフィン系組成物を循環させることは、自然対流によって行われる。自然対流とは、再生可能なパラフィン系組成物がポンプなしで、または混合手段なしで、循環されることを意味する。任意には、自然対流は、いくつかの実施形態において、攪拌機またはポンプなどの混合機によって強められ得る。
【0114】
ある実施形態において、熱交換ユニットは、それを通して循環される再生可能なパラフィン系組成物を冷却するように構成される。ある実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却システムは、槽中に含まれる再生可能なパラフィン系組成物の温度を、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内に維持するよう構成される。
【0115】
ある実施形態において、熱交換ユニットおよび熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させる手段は、槽中に含まれる再生可能なパラフィン系組成物の温度を、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内に維持するよう構成される。
【0116】
ある実施形態において、冷却される2以上の対象物が、再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬される。
【0117】
冷却される対象物または複数の対象物は、再生可能なパラフィン系組成物中に部分的にまたは完全に浸漬され得る。ある実施形態において対象物が不均一に加熱される場合、加熱する対象物の部分または一部のみが、再生可能なパラフィン系組成物に浸漬されるであろう。
【0118】
ある実施形態において、冷却される対象物または複数の対象物は、電子ハードウェア、好ましくはコンピュータハードウェア、より好ましくはサーバーまたは複数サーバーであり、または、冷却される対象物または複数の対象物は、燃料電池または複数燃料電池である。ある実施形態において、槽は、複数のサーバーを保持するラックまたは複数のラックを含む。
【0119】
熱交換ユニットは特に限定されず、再生可能なパラフィン系組成物を冷却するために適した任意の熱交換ユニットまたは任意の熱交換手段であり得る。熱交換ユニットは、外部熱交換ユニットであってもよいし、槽に一体化された熱交換ユニットであってもよい。適切な熱交換ユニットの例としては、例えば、金属製ヒートシンクなどのヒートシンク、地下配管、屋外に位置する配管、または水冷塔を備える熱交換ユニットなどが挙げられる。
【0120】
ある実施形態において、熱交換ユニットは、水冷却塔に接続された熱交換器を備え、ここで、熱交換ユニットを通して再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための手段は、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換器と接触させるように構成されている。
【0121】
再生可能なパラフィン系組成物を、熱交換ユニットを通して循環させるための手段は、特に限定されず、および、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換ユニットを通して循環させるために適切である任意の手段が使用され得る。ある実施形態において、熱交換ユニットを通して再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための手段は、配管またはパイピング、および任意には、ポンプまたは複数のポンプを含む。パイプまたはパイピングは、再生可能なパラフィン系組成物が重力によって移動されるように配置されてもよい。
【0122】
ある実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却システムは、2以上のまたは複数の槽を備え、各槽は、再生可能なパラフィン系組成物、および、再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬されて冷却される一またはそれ以上の対象物を含む。槽は、互いに上に積み重ねられ得、および/または、互いに隣接して配置され得る。
【0123】
システムが2以上の槽を備えるある実施形態において、熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための手段は、再生可能なパラフィン系組成物を各槽から熱交換ユニットを通って循環させるように構成される。システムが2以上の槽を備える、ある他の実施形態において、システムは、2以上の熱交換ユニットと、2以上の熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン組成物を循環させるための手段とを備える。2以上の熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための手段は、ある所定の槽またはある所定の複数の槽から、ある所定の熱交換器を通してまたはある所定の複数の熱交換器を通して再生可能なパラフィン系組成物を循環させるように構成され得る。ある実施形態において、各槽は、専用の熱交換ユニットを備える。
【0124】
槽または複数の槽は、再生可能なパラフィン系組成物が空気と直接接触するいわゆるオープン槽、または、再生可能なパラフィン系組成物が空気と接触しない槽であり得る。槽または複数の槽は、再生可能なパラフィン系組成物とカバーとの間に空気が残るように、または、再生可能なパラフィン系組成物とカバーとの間に空間または空気がないように、例えば蓋またはリッドなどで覆われていてもよい。代替的には、槽はその周囲と直接接触していてもよく、そして、単相式液体直接浸漬冷却システムは開放系を形成する。ある実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却システムは、その環境から密閉されていてもよく、すなわち、単相式液体直接浸漬冷却システムは、システムの内側で周囲の空気と接触しないように構成されてもよい。
【0125】
図1は、例示的な実施形態による単相式液体直接浸漬冷却システム100を示す概略図である。図1の実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却システムは、再生可能なパラフィン系組成物の槽110、すなわち再生可能なパラフィン系組成物で所定のレベルまで満たされた容器を備える。複数のサーバーを含むラック120は、再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬されている。図1の実施形態において、単相式液体直接浸漬冷却システム100は、水冷塔150に接続された熱交換器140と、熱交換器140から水冷塔150に温水を送り、および水冷塔150から熱交換器140に冷水を送るように構成されているウォーターポンプ160とを備える熱交換ユニット130を更に備える。図1の単相式液体直接浸漬冷却システム100はまた、槽110から熱交換器140に暖かい再生可能なパラフィン系組成物を送り、および熱交換器140から槽110に冷たい再生可能なパラフィン系組成物を送るように構成されているポンプ170を備える。槽110から再生可能なパラフィン系組成物を送るように構成されているポンプ170は、熱交換器140に通される前に温かい再生可能なパラフィン系組成物をろ過するように構成されているフィルタを備える。図1中の矢印は、単相式液体直接浸漬冷却システム100内での再生可能なパラフィン系組成物および水の経路を示す。経路は、例えば、パイプで形成され得る。
【0126】
本開示はまた、再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽を提供すること;および、該再生可能なパラフィン組成物中に冷却される対象物を浸漬すること、を含む単相式液体直接浸漬冷却のための方法を提供する。
【0127】
槽中に含まれる再生可能なパラフィン系組成物は、第1の態様に関連して記載されている再生可能なパラフィン系組成物であり得る。ある実施形態において、槽は、再生可能なパラフィン系組成物以外の他の液体を含まない。
【0128】
ある実施形態において、本方法は、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換ユニットに通して循環させることを含む。熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させることは、連続的に、間隔を置いて、間欠的に、またはそれらの組み合わせとして行われ得る。
【0129】
ある実施形態において、熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させることは、熱交換ユニット中で再生可能なパラフィン系組成物を冷却することを含む。
【0130】
ある実施形態において、本方法は、槽中に構成される再生可能なパラフィン系組成物の温度を、好ましくは熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させることによって、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内に保つことを含む。
【0131】
ある実施形態において、熱交換ユニットを介して再生可能なパラフィン系組成物を循環させることは、再生可能なパラフィン系組成物をパイプまたはパイピングを介して槽から熱交換ユニットへ、および、熱交換ユニットから槽へと導くことを含む。ある実施形態において、熱交換ユニットを通して再生可能なパラフィン系組成物を循環させることは、再生可能なパラフィン系組成物を槽から熱交換ユニットへ、および、熱交換ユニットから槽へとポンプで送ることを含む。
【0132】
ある実施形態において、本方法は、冷却される2以上の対象物を再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬することを含む。冷却される対象物または複数の対象物は、再生可能なパラフィン系組成物中に少なくとも部分的に、または完全に、浸漬され得る。再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬される冷却される対象物または複数の対象物は、第1または第2の側面に関連して説明されている任意の対象物または複数対象物、例えば電子ハードウェアなど、好ましくはコンピュータハードウェア、より好ましくはサーバーもしくは複数サーバー、または、サーバーもしくは複数のサーブを保持するラック、または、燃料電池もしくは複数の燃料電池などであり得る。
【0133】
ある実施形態において、方法は、再生可能なパラフィン系組成物を含む複数の槽を提供することと、再生可能なパラフィン系組成物中で冷却される対象物または複数の対象物を各槽中に浸漬することと、再生可能なパラフィン系組成物を熱交換ユニットを介してまたは2以上の熱交換ユニットを介して循環させることと、を含む。ある所定の槽またはある所定の複数の槽の再生可能なパラフィン系組成物は、ある所定の熱交換ユニットまたはある所定の複数の熱交換ユニットを介して循環され得る。ある実施形態において、再生可能なパラフィン系組成物は、各槽からその槽専用の熱交換ユニットへ循環される。
【0134】
本開示に記載される高効率の冷却への解決法は、温度が制限要因となることなしに、データ出力を増加させることができる。データ出力を一定に保つことが望ましいとされる場合も時にはあり、その場合、本発明の解決法は、低下された作動温度を提供することができ、例えば地域熱供給などにおける過剰の熱を利用しながらデータ出力を増加させることおよび作動温度を上昇させることが好ましい場合もしばしばある。本発明の解決法は、両方の作動モードを支持している。
【実施例
【0135】
実施例1 再生可能なパラフィン系組成物
再生可能なパラフィン系組成物の2つの例(組成物P1およびP2と称される)の炭素数分布、ならびに、物理的および化学的特性を以下に示す。
【0136】
表1は、組成物P1の炭素数分布をまとめたものであり、および、表2は、組成物P1の物理的および化学的特性をまとめたものである。表3は、組成物P2の炭素数分布をまとめたものであり、および、表4は、組成物P2の物理的および化学的特性をまとめたものである。
【0137】
例示的な組成物P1は、上記で説明されたように、再生可能なフィードストックの水素化脱酸素および異性化によって製造された。従って、P1の生物起源炭素含有量は100%であった(ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017))。異性化ステップの後に、275.4℃の初留点(IBP)および321.0℃の最終沸点(FBP)を有する炭化水素組成物を回収するために、蒸留工程が行われた。組成物P1の炭素数分布は、表1に示されている。組成物P1は、96.05%のi-パラフィンおよび3.95%のn-パラフィンを含んでいた。全パラフィンの95.71wt-%が、C16~C19の範囲であった。C15およびそれより軽質なパラフィンの量は0.69wt-%であり、および、C20およびそれより重質なパラフィンの量は3.59wt-%であった。組成物P1の生分解性は、OECDテストガイドライン301Fに従って評価され、そして組成物が容易に生分解性であることが発見された。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】


【0140】
例示的な組成物P2は、283.5℃の初留点(IBP)および298.5℃の最終沸点(FBP)を有する炭化水素組成物を回収するために、組成物P1の蒸留を通じて製造された。組成物P2の炭素数分布は、表3に示されている。P2の生物起源炭素含有量もまた、100%であった(ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017))。組成物P2の炭素数分布は、表3に示されている。組成物P2は、96.75%のi-パラフィンおよび3.25%のn-パラフィンを含んでいた。全パラフィンの99.08wt-%が、C16~C19の範囲であった。組成物P2中のC18i-パラフィンの重量およびC18n-パラフィンの重量をベースにして、C18n-パラフィンの量に対するC18i-パラフィンの量の比は、45.52である。組成物P2は、0.31wt-%のC15およびそれより軽質なパラフィン、および、0.62wt-%のC20およびそれより重質なパラフィンを含んでいた。さらに、組成物P2は、37wt-%より多いC17パラフィンを含んでいた。
【0141】
表4は、組成物P2の物理的および化学的特性をまとめたものである。表4から分かるように、組成物P2は、非常に少ない金属しか含まないか、または本質的に金属を含まず、これは、組成物P2の誘電挙動を高めている。表4から分かるように、組成物P2の(電気)伝導度は、1pS/m未満であった。換言すると、組成物P2は、例えばコンピュータハードウェアなどの電子ハードウェアの単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として使用されるのに非常に適している。組成物P2の生分解性は、OECDテストガイドライン301Fに従って評価され、そして組成物が容易に生分解性であることが発見された。
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】


【0144】
【表5】
【0145】
実施例2 浸漬試験
浸漬液体(冷却液体)のコンピュータハードウェアに対する影響が調べられた。
【0146】
コンピュータのマザーボードが断片に切断され、および、断片が、表5に示されるように、種々の温度で、実施例1の再生可能なパラフィン系組成物P2(P2)および3M(商標)から市販されているフロリナート(商標)FC-40それぞれに対応する再生可能なパラフィン系組成物中に部分浸漬された。
【0147】
【表6】
【0148】
図2a)は、試験セットアップ200の概略図である。浸漬液210が、フランジポット220中に注入され、そして、切断されたマザーボードの一部230が、フランジポットの上部からワイヤまたは糸240を用いて吊り下げることにより、液体210中に部分的に浸漬された。水コンデンサー250がフランジポットの蓋に接続された。フランジポット220は、ホットプレート270上のオイル槽260中に設置され、そしてオイル槽は、マグネチックスターラーで攪拌された。浸漬液体210およびオイル槽260の温度は、温度計280、290それぞれでモニターされた。図2b)は、使用中の試験セットアップの写真を示している。
【0149】
試験T1、T2、T4およびT5において、温度は20℃または50℃のいずれかで一定に保たれ、および、浸漬時間は約24時間であった。試験T3およびT6においては、温度は、浸漬のあいだ、室温から50℃、50℃から85℃、および85℃から室温へと一巡された。試験T3およびT6において、室温での浸漬時間は約第4時間、50℃では約24時間、85℃では約23時間、そして再び室温で約第3時間であった。所定の浸漬時間の終了後、マザーボード片が浸漬液およびフランジポットから取り出され、および、加圧空気で乾燥された。その後、マザーボード片は、空気中で一晩放置して乾燥された。
【0150】
マザーボード片は、一晩乾燥された後、浸漬前後での質量、回路抵抗、および静電容量を測定することによって、特性が評価された。特性評価の結果は、以下の表6に示されている。回路抵抗は、浸漬の前後で同じユニットデザイン(プラグピン)で測定し、一貫した3回の測定値が示された後に得られた値を記録した。
【0151】
【表7】
【0152】
また、浸漬前後のマザーボード片はまた、目視で確認され、および、膨張の可能性を評価するために、浸漬前後で厚さが測定された。浸漬前後のマザーボード片の写真が図3a)~3l)に示されている。図3a)および3b)はそれぞれ、T1による、浸漬前後のマザーボード片を示す。図3c)および3d)はそれぞれ、T2による、浸漬前後のマザーボード片を示す。図3e)および図3f)はそれぞれ、T3による、浸漬前後のマザーボード片を示す。図3g)および図3h)はそれぞれ、T4による、浸漬前後のマザーボード片を示す。図3i)および図3j)はそれぞれ、T5による、浸漬前後のマザーボード片を示す。図3k)および図3bl)はそれぞれ、T6による、浸漬前後のマザーボード片を示す。
【0153】
T1~T6のそれぞれにおいて、浸漬はいかなる剥離またはいかなる膨張も引き起こさず、および、浸漬のあいだにマザーボード片の文字が薄くなることもなかった。また、マザーボード片が一晩乾燥された後は、非常に少量の浸漬液体残渣のみが、マザーボード片上で確認された。また、T1~T6のそれぞれにおいて、表6から分かるように、浸漬は、マザーボード片の質量、回路抵抗または静電容量に顕著な影響を与えなかった。本質的に無視できる程度ほどの回路抵抗の変化は、冷却液体がピンに付着せず、および、冷却液体中に金属が溶出していないことを示している。驚くべきことに、P2への浸漬は、マザーボード片に影響を与えず、および、P2は、単相式液体直接浸漬冷却のための市販の冷却液体FC-40と同等に機能した。
【0154】
T1~T6の冷却液体は、浸漬前後の密度および屈折率を測定することによって特性が評価された。結果は、下記の表7に示されている。冷却液体はまた、浸漬前と浸漬後で、目視で検査された。
【0155】
【表8】
【0156】
P2およびFC-40の密度は、試験T1~T4のいずれにおいても影響を受けなかった。密度の変化は、冷却液体の組成の著しい変化を示し得るが、T1~T6のいずれの試験でもそのようなことは見られなかった。P2はFC-40に比べて顕著により低い密度を有しており、これは、液体を循環させるために必要なエネルギーという観点において有利である。より低い密度はまた、浸漬槽の重量を低下させ、これは例えば槽が互いの上部に積み重ねられる場合などに有利である。また、低い密度に起因して、P2はFC-40と比べて、その中に浸漬される対象物に与える浮力が低くなる。これは、非常に軽い対象物または浮力に大きく影響される形状を有する対象物の単相式液体直接浸漬冷却において特に有益である。さらに、P2の屈折率は変化しなかった。FC-40の屈折率は測定範囲外であったため、測定できなかった。いかなる理論にもとらわれることを意図しないが、FC-40の屈折率は低すぎて測定できないと思われる。屈折率の測定は非常に感度が高いため、したがって屈折率は冷却液体中における溶出または分解などの変化をモニターするために使用され得る。屈折率を測定できることの利点は、したがって、冷却液体の変化をオンラインかつリアルタイムで容易にモニターすることを可能にし、および、浸漬液体を交換することまたは単相式液体直接浸漬冷却システムの調整メンテナンスの必要性の容易かつ迅速な特定を可能にする。P2およびFC-40はいずれも透明な液体であり、および、その外観は、T1~T3およびT4~T6それぞれのいずれの試験のあいだも変化しなかった。
【0157】
したがって、マザーボード片の溶解は見られなかったと結論づけることができる。P2は、マザーボード片のいかなる繊細な構造またはマークも一切溶解せず、市販の単相式液体直接浸漬冷却用冷却液体FC-40と同様にコンピュータハードウェアとの互換性があった。浸漬中に溶出がないことを確認するため、T1~T6それぞれの後に、冷却液体の元素分析を行った。参照として、新鮮かつ未使用のP2およびFC-40が使用された。元素分析の結果は、以下の表9に示されている。
【0158】
【表9】

【0159】
表9からわかるように、冷却液体中への材料の溶出はほとんどない。P2については、ガラス製反応容器からのナトリウムおよびシリコンの増加が予測されるが、浸漬中のいかなるマザーボード片からも溶出の痕跡はない。表9からわかるように、浸漬はFC-40の元素組成においてほとんど変化を引き起こしていなかった。
【0160】
図5は、P2およびFC-40の蒸留曲線をそれぞれ示したものである。黒い曲線がP2を、灰色の曲線がFC-40を示している。図4からわかるように、P2はFC-40と比べてより高い温度で沸騰し、および、P2の沸点範囲はFC-40のそれよりも著しくより狭かった。従って、P2はFC-40に比べてより少ない揮発性化合物を含み、および、より高い作動温度で液相を維持することができる。これにより、P2の安全性が向上し、および、周囲に開放されている単相式液体直接浸漬冷却システムにおけるその使用が可能とする。FC-40は温室効果ガスの発生源であるため、単相式液体直接浸漬冷却システムから周囲への放出を防止するための対策が取られなくてはならない。FC-40と比較してP2は、全体としてより持続可能、環境的、かつ気候に優しい代替品を提供する。FC-40と異なり、P2は再生可能なフィードストックから得られ得、温室効果ガスを放出せず、本質的には持続性ではないが代わりに、OECDテストガイドライン301 Fに従って容易に生分解性であると分類され、および、単相式液体直接浸漬冷却のための冷却液体として機能した後は、製油所での付加価値のある用途が期待できる。
【0161】
実施例3 浸漬後のコンピュータハードウェアの有用性
RAMボードがデスクトップコンピュータから取り外され、50℃で83時間P2中に浸漬された。実施例2に関連して説明され、図2a)および図2b)で示されている試験セットアップが使用された。オイル槽の攪拌は250rpmに設定された。
【0162】
浸漬前のRAMボードの写真を図4a)および4c)に、ならびに、浸漬後を図4b)および4d)に示す。浸漬前後のRAMボードの目視検査の結果、RAMボードは視覚的に変化せず、および、乾燥後、ボード上のP2の有意な残留は確認されないことが結論付けられた。RAMボードは、デスクトップコンピュータに再挿入された。コンピュータを起動すると、システムは問題なくロードされ、および、BIOSは正常にアクセスされ、かつ正常に評価された。したがって、50℃、83時間のP2中への浸漬は、いかなる有害な影響をも及ぼさず、そして再挿入されたRAMボードを有するコンピュータは以前と同様に動作した。
【0163】
実施例4 データセンター冷却シミュレーション
3つの異なる冷却液体、すなわち実施例1の再生可能なパラフィン系組成物P2(P2)、3M(商標)から市販されているフロリナート(商標)FC-40(perfluorotri-n-butylamine)、およびRoyal Dutch Shellから市販されているS5X(化石ベースのアルカン)が、データセンター冷却シミュレーション試験において比較された。
【0164】
冷却液体P2、FC-40、S5Xの特性が、温度の関数として(15℃~50℃まで上昇されるT)、図6a)~6d)に示されている。図6a)からわかるように、P2は低い粘性係数を有し、温度が上昇するとそれはさらに低下する。低い粘性は、冷却液体が冷却される対象物のすべての部品を通って循環し、その非常に小さな空洞にさえ達することができるため、冷却される対象物と冷却液体との間の熱交換を向上させる。図6b)、図6c)、および図6d)にそれぞれ見られるように、P2の密度、比熱容量(質量熱容量)、および熱伝導率は、15℃~50℃の温度範囲内で比較的一定に維持されている。密度、比熱容量、熱伝導率が比較的一定であることは、冷却液体としてのP2の予測可能性、ひいては信頼性を向上させる。図6a)~図6d)から、P2は、地域熱供給などの副次的な応用が現実的に考慮されることを可能にするような温度範囲であるより高い温度においても使用され得ることが推測される。
【0165】
シミュレーションは、EDR(厳密な熱交換モデル)を用いて行われた。42台のサーバーのラックが熱交換器としてシミュレーションされ、および、サーバーシャーシの寸法から、1台のサーバーシャーシの大きさを42倍することで33m2の熱交換器面積が推定された(1台のサーバーシャーシの寸法は0.71m×0.483m×0.0444mであった)。それぞれの冷却体液に浸漬された42台のサーバーのラックのシステムは、シミュレーション試験においてシェル&チューブ式熱交換器によってモデル化され、ここで、チューブ側(ホット側)には均一な温度プロファイルを提供するために蒸気が使用され、および、シェル側でそれぞれの冷却液体が使用された。
【0166】
図7は、シミュレーションに使用されたフローシートの概略図である。図7において、蒸気710はシステムに供給され、および、3つの別々の熱交換システム720、730、740に導かれ、各熱交換システム720、730、740は、それ自身の熱交換器750、760、770、冷却液体および冷却液体の循環を備える。各熱交換器750、760、770は、42台のサーバーのラックを表している。蒸気710は、各熱交換システムにおいて、それぞれの熱交換器750、760、770のチューブ側に供給され、そしてその後、熱交換器から排出される。
【0167】
図7において最上段として描かれている熱交換システム720では、冷却液体780はP2である。P2 780は、それぞれの熱交換器750のシェル側に供給され、そしてその後、第1のポンプ790によって、P2を冷却するように構成されている第2の熱交換器800を介して、42台のサーバーのラックのシミュレーションを示している熱交換器750のシェル側に戻るように循環される。
【0168】
図7において中央に描かれている熱交換システム730では、冷却液体810はFC-40である。FC-40 810は、それぞれの熱交換器760のシェル側に供給され、そしてその後、第2のポンプ820によって、FC-40を冷却するように構成されている第3の熱交換器830を介して、42台のサーバーのラックのシミュレーションを示している熱交換器760のシェル側に戻るように循環される。
【0169】
図7において最下段として描かれている熱交換システム740では、冷却液体840はS5Xである。S5X 840は、それぞれの熱交換器770のシェル側に供給され、そしてその後、第3のポンプ850によって、S5Xを冷却するように構成されている第4の熱交換器860を介して、42台のサーバーのラックのシミュレーションを示している熱交換器770のシェル側に戻るように循環される。
【0170】
各ラック(各熱交換器750、760、770)の冷却熱量は50kWに設定された。冷却液体の質量フローが変化し、および、ラック(熱交換器750、760、770)内の冷却液体の温度が4~5℃上昇した。ポンプ内部の圧力上昇は、50kPに設定され、および、0.6の機械効率が推定された。
【0171】
2つの場合、ラックの温度(熱交換器750、760、770のチューブ側)が37℃であった場合、および、ラックの温度(熱交換器750、760、770のチューブ側)が27℃であった別の場合がシミュレーションされた。シミュレーションの結果はそれぞれ、表10および表11に示されている。なお、表10および表11に示されている結果は、P2について得られた値を1として正規化された値である。
【0172】
【表10】
【0173】
【表11】
【0174】
表10および表11に示されている結果は、P2が、サーバーラックの単相式液体直接浸漬冷却における冷却液体として、市販の冷却液体FC-40およびS5Xのいずれよりも、良好に機能することを示している。
【0175】
P2で得られた表10に記載の結果をFC-40で得られた結果と比較すると、P2は、FC-40に比べて、1/4未満の冷却液体の質量フロー、70~80%少ない冷却液体の体積フロー、70~80%少ないポンプの使用電力を必要し、および21%優れた熱伝導と有していることが理解できる。
【0176】
表10および表11の結果において、P2とS5Xとの差は、P2とFC-40との差よりも小さい。しかし、P2の性能は、試験したすべての局面において、S5Xの性能よりも依然として優れている。
【0177】
表12に、小型のデータセンター(42台のサーバーの500ラック)における、および通常サイズのデータセンター(42台のサーバーの10000ラック)における、単相式液体直接浸漬冷却における冷却液体としてP2を使用する場合と、冷却液体としてFC-40を使用する場合との実用的意義の計算結果が示されている。計算では、表10および表11の結果は有効であると推定され、および、1ラック当たり1.11m3の一定量である冷却液体が推定された。
【0178】
【表12】
【0179】
表12から推測されるように、単相式液体直接浸漬冷却においてFC-40の代わりにP2を使用した場合、小型のデータセンターでは必要とされる冷却剤の量が約600トン少なく、および冷却のための(ポンプ)電力使用が約180kW少なく、または、通常サイズのデータセンターでは必要とされる冷却剤の量が12000トン少なく、および冷却のための(ポンプ)電力使用が約3500kW少ない結果をもたらすと見積もられる。また、70%~80%小さいフローレートの配管、ポンプおよび冷却を設計するための資本支出もより少ない。
【0180】
実施例5 熱伝導率試験
実施例1の再生可能なパラフィン系組成物P2(P2)に対応する再生可能なパラフィン系組成物、および、3M(商標)から市販されているフロリナート(商標)FC-40(perfluorotri-n-butylamine)の熱伝導率、熱拡散率、および体積熱容量(体積比熱)が、ASTM D7896-19に従って測定された。測定時間は1秒であり、および、予測される精度は5%以内であった。結果を下記表13に示す。表13において、rsdは、相対標準偏差を示している。
【0181】
【表13】
【0182】
表13からわかるように、P2はFC-40と比較して顕著により高い熱伝導率を有している。また、P2の熱拡散率および体積比熱は、FC-40よりも明らかに高い。より高い熱伝導率およびより高い熱拡散率は、浸漬される対象物から冷却液体へのより速い熱伝導を可能にするため、これ単相式液体直接浸漬冷却において有益である。より高い体積比熱は、より低い体積比熱を有する冷却液体と比較して、冷却液体の温度上昇をより少なく上昇させながら冷却液体がより多くの熱を吸収することを可能にするため、有益である。したがって、表13に照らして、P2は、単相式液体直接浸漬冷却における冷却液体として、FC-40よりも明らかに有利である。
【0183】
本発明の実施および実施形態は、以下の番号付けされた項でさらに説明される。
【0184】
項1.再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む、単相式液体直接浸漬冷却のための再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項2.電子ハードウェア、好ましくはコンピュータハードウェア、より好ましくはサーバー、または燃料電池の単相式液体直接浸漬冷却のための、項1記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項3.前記再生可能なパラフィン系組成物を、熱交換ユニットを通じて循環させることを含む項1または2記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項4.作動温度が、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内にある項1~3のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項5.前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%より多い、好ましくは少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも98wt-%のパラフィンを含む項1~4のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項6.前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、90wt-%以上、好ましくは95wt-%以上、より好ましくは98wt-%以上のC16~C19範囲であるパラフィンを含む項1~5のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項7.前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、60wt-%より多い、好ましくは70wt-%より多い、より好ましくは80wt-%より多い、さらにより好ましくは90wt-%より多い、および最も好ましくは95wt-%より多いイソパラフィンを含む項1~6のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項8.前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、5wt-%以下、好ましくは2wt-%以下のナフテンを含み、より好ましくは前記再生可能なパラフィン系組成物は、実質的にナフテンを含まない項1~7のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項9.前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、2wt-%未満のC15およびそれより軽質なパラフィン、ならびに、好ましくは5wt-%未満、より好ましくは2wt-%未満のC20およびそれより重質なパラフィンを含む項1~8のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項10.前記再生可能なパラフィン系組成物が、前記再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、37wt-%より多いC17パラフィンを含む項1~9のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項11.前記再生可能なパラフィン系組成物が、90wt-%より多いC17~C18のパラフィンを含み、C18のn-パラフィンの量に対するC18のi-パラフィンの量の比が、前記再生可能なパラフィン系組成物中の前記C18のn-パラフィンの重量および前記C18のi-パラフィンの重量をベースとして、40より大きい項1~10のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項12.前記再生可能なパラフィン系組成物が、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも135℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらにより好ましくは少なくとも145℃の引火点を有する(ENISO2719:2016)項1~11のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項13.前記再生可能なパラフィン系組成物が、40℃において15mm2/s未満、好ましくは10mm2/s未満、より好ましくは5mm2/s未満の動粘度を有する(EN ISO3104)項1~12のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項14.前記再生可能なパラフィン系組成物が、20℃において、700~850kg/m3、好ましくは760~800kg/m3、より好ましくは770~790kg/m3の範囲内の密度を有する(EN ISO12185)項1~13のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項15.前記再生可能なパラフィン系組成物が、22℃で1pS/m未満の電気伝導度を有する(ISO6297:1997)項1~14のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項16.前記再生可能なパラフィン系組成物の生物起源炭素含有量が、前記再生可能なパラフィン系組成物中の炭素の総計の重量をベースとして、少なくとも50wt-%、好ましくは少なくとも70wt-%、より好ましくは少なくとも80wt-%、さらにより好ましくは少なくとも90wt-%である(ASTM D6866(2020)またはEN 16640(2017))項1~15のいずれか1項に記載の再生可能なパラフィン系組成物の使用。
項17. 再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽、および
前記再生可能なパラフィン組成物中に浸漬冷却される対象物
を備える単相式液体直接浸漬冷却システム。
項18. 熱交換ユニット;および
前記再生可能なパラフィン系組成物を、前記熱交換ユニットを通じて循環させるための手段
を備える項17記載の単相式液体直接浸漬冷却システム。
項19.前記単相式液体直接浸漬冷却システムが、前記槽中の前記再生可能なパラフィン系組成物の温度を、15℃~90℃、好ましくは15℃~65℃、より好ましくは20℃~75℃の温度範囲内に維持するよう構成されている項17または18記載の単相式液体直接浸漬冷却システム。
項20.冷却される2以上の対象物が、前記再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬される項17~19のいずれか1項に記載の単相式液体直接浸漬冷却システム。
項21.冷却される対象物もしくは複数の対象物が、電子ハードウェア、好ましくはコンピュータハードウェア、より好ましくはサーバーもしくは複数のサーバーであり、または、冷却される対象物もしくは複数の対象物が、燃料電池もしくは複数の燃料電池である項17~20のいずれか1項に記載の単相式液体直接浸漬冷却システム。
項22.前記熱交換ユニットを通じて前記再生可能なパラフィン系組成物を循環させるための前記手段が、パイプおよび任意にはポンプまたは複数のポンプを含む項17~21のいずれか1項に記載の単相式液体直接浸漬冷却システム。
項23. 再生可能なパラフィン組成物の総計の重量をベースとして、少なくとも80wt-%のC16~C19範囲であるパラフィンを含む再生可能なパラフィン系組成物を含む槽を提供すること、および
前記再生可能なパラフィン組成物中に冷却される対象物を浸漬すること
を含む単相式液体直接浸漬冷却のための方法。
項24.前記再生可能なパラフィン系組成物を、熱交換ユニットを通じて循環させることを含む項23記載の単相式液体直接浸漬冷却のための方法。
項25.前記槽中の前記再生可能なパラフィン系組成物の温度を、15℃~90℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~65℃の温度範囲内に維持することを含む項23または24記載の単相式液体直接浸漬冷却のための方法。
項26.冷却される2以上の対象物が、前記再生可能なパラフィン系組成物中に浸漬されることを含む項23~25のいずれか1項に記載の単相式液体直接浸漬冷却のための方法。
項27.冷却される対象物もしくは複数の対象物が、電子ハードウェア、好ましくはコンピュータハードウェア、より好ましくはサーバーもしくは複数のサーバーであり、または、冷却される対象物もしくは複数の対象物が、燃料電池もしくは複数の燃料電池である項23~26のいずれか1項に記載の単相式液体直接浸漬冷却のための方法。
【0185】
様々な実施形態が提示されている。本書において、用語「含む(comprise)、含む(include)、含む(contain)」はそれぞれ、排他性を意図しないオープンエンドの表現として使用されていることを理解されたい。
【0186】
前述の説明は、特定の実施および実施形態の非限定的な例によって、本発明を実施するために本発明者らによって現在考えられている最良の態様の完全かつ有益な説明を提供したものである。しかしながら、本発明は、上記で提示した実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく、同等の手段を用いた他の実施形態、または種々の実施形態の組み合わせで実施できることは、当該技術分野の当業者にとって明らかである。本開示の実施形態は、本開示のさらなる実施形態(複数の実施形態)を形成するために、全体的にまたは部分的に、互いに組み合わせられ得る。さらに、様々な実施形態に関連して図示または説明される特定の特徴または特性は、限定されることなく、全体的にまたは部分的に、一または複数の他の実施形態の特徴または特性と組み合わせられてもよい。このような改変および変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0187】
さらに、上述の開示された例示的な実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴の対応する使用なしに有利に使用され得る。このように、上記の説明は、本発明の原理の単なる例示として考慮されるべきものであり、それらに限定されるものではない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
図1
図2a)】
図2b)】
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図3d)】
図3e)】
図3f)】
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図3h)】
図3i)】
図3j)】
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図4a)】
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【国際調査報告】