(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】トーンアームの枢支部
(51)【国際特許分類】
G11B 3/14 20060101AFI20230901BHJP
G11B 3/085 20060101ALI20230901BHJP
G11B 3/095 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
G11B3/14
G11B3/085 Z
G11B3/095 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512457
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 GB2021052142
(87)【国際公開番号】W WO2022038355
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523058607
【氏名又は名称】ブレイン, リチャード
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレイン, リチャード
(57)【要約】
トーンアーム(200a;200b;200c;200d;200e)は、細長い部材(8a;8b;8c;8d;8e)と、懸架手段(4a、5a;4b、5b;4c、5c;4d、5d;4e、5e)と、突起部(1a;1b;1c;1d;1e)及び接触面(2a;2b;2c;2d;2e)を含む。懸架手段(4a、5a;4b、5b;4c、5c;4d、5d;4e、5e)は、細長い部材(8a;8b;8c;8d;8e)をほぼ水平位置に懸架する。細長い部材の重量は、懸架手段によって実質的に支持される。突起部(1a;1b;1c;1d;1e)は、接触点(206a;206b;206c;206d;206e)において接触面と対向して接触するように配置され、細長い部材の長さに実質的に平行である引き摺り力が作用して、接触面(2a;2b;2c;2d;2e)と突起部(1a;1b;1c;1d;1e)を対向して接触させ、それによって、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる。細長い部材の重量を支持する手段と、細長い部材の長さに沿って作用する引き摺り力に抵抗する手段とを分離することにより、引き摺り力はより効果的に抵抗され、トーンアームの特性が改善される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーンアームであって、
細長い部材と、
前記細長い部材をほぼ水平位置に吊るし、細長い部材の重量が実質的に支持される懸架手段と、
突起部と、
接触面とを備え、
前記突起部は、前記接触面に接触点にて対向して接触するように配置され、前記細長い部材の長さに実質的に平行な引き摺り力の作用が、前記接触面と前記突起部とを対向して接触させるように付勢し、それによって、前記引き摺り力に抵抗する接触力を生成することを特徴とする、トーンアーム。
【請求項2】
前記接触面は、細長い部材の長手方向軸に対して実質的に垂直に配置される、請求項1に記載のトーンアーム。
【請求項3】
突起部は突起軸を規定し、この突起軸の周りで突起部はほぼ回転対称であり、この突起軸は細長い部材の長手方向軸に対して実質的に平行である、請求項1又は2に記載のトーンアーム。
【請求項4】
前記接触面は、前記細長い部材に取り付けられる、請求項1乃至3の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項5】
接触面は実質的に平坦なプレートである、請求項1乃至4の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項6】
前記突起部と接触面は、磁力によって互いに引き寄せられている、請求項1乃至5の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項7】
更に剛体の接続部材を含み、該剛体の接続部材は、細長い部材に取り付けられ、前記懸架手段は、第1の接続点で、剛体の接続部材に接続された、少なくとも1つの懸架部材を備える、請求項1乃至6の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項8】
前記剛体の接続部材は、接触面を提供する、請求項7に記載のトーンアーム。
【請求項9】
前記剛体の接続部材は、突起部を備える、請求項7に記載のトーンアーム。
【請求項10】
前記剛体の接続部材は、細長い部材の下側から垂直方向に延びる、請求項7乃至9の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項11】
支持部材を更に含み、少なくとも1つの懸架部材が前記支持部材に接続される、請求項7乃至10の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項12】
前記支持部材が、実質的に垂直に細長い部材である請求項11に記載のトーンアーム。
【請求項13】
前記支持部材は、細長い部材の開口を通るように配置され、かつ、少なくとも1つの懸架部材は、細長い部材の上方の点で支持部材に接続される、請求項12に記載のトーンアーム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの懸架部材は、細長い部材の下方の点で、前記支持部材に接続される、請求項12に記載のトーンアーム。
【請求項15】
前記支持部材は、実質的にL字型の部材であり、一緒に取り付けられ、かつ、互いにほぼ直角である第1のアームと第2のアームとを備え、
前記第1のアームは、実質的に垂直に配置され、第2のアームは、ほぼ水平に配置され、細長い部材の上方にて延び、第2のアームに懸架部材が取り付けられる、請求項11に記載のトーンアーム。
【請求項16】
第1の接続点は、接触点とほぼ同じ垂直方向の高さである、請求項7乃至15の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項17】
第1の接続点は、細長い部材の長さに平行な軸に沿って、懸架点に対してオフセットされ、懸架点にて少なくとも1つの懸架部材が支持部材に接続され、前記突起部と前記接触面とを対向接触させるように付勢する、請求項11乃至16の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項18】
少なくとも1つの懸架部材は、第1の接続点及び第2の接続点において、剛体の接続部材に接続される、請求項7乃至17の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項19】
少なくとも1つの懸架部材は、第1の端部と第2の端部を有する単一の懸架部材であり、第1の端部は第1の接続点に接続され、第2の端部は第2の接続点に接続され、懸架部材は、前記第1の端部と第2の端部との間の支持部材の長さに沿った点にて、支持部材に接続される、請求項7乃至18の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項20】
前記懸架部材は、前記懸架部材の長さに沿って、前記懸架部材の第1の端部と第2の端部との間で等距離にある箇所で前記支持部材に接続されている、請求項19に記載のトーンアーム。
【請求項21】
少なくとも1つの懸架部材は、剛体の接続部材の第1の接続点と支持部材上の懸架点との間に延びる第1の懸架部材と、剛体の接続部材の第2の接続点と支持部材上の懸架点との間に延びる第2の懸架部材とを含む、請求項7乃至18の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項22】
前記細長い部材は、基端部及び先端部を規定し、更に、
先端部に接続されたレコード針を備えたカートリッジと、
基端部に接続されたカウンタ重みとを備えた、請求項1乃至21の何れかに記載のトーンアーム。
【請求項23】
レコード盤用のターンテーブルを備えたベースプレートと、
請求項1乃至22の何れかに記載のトーンアームとを備えた、レコード盤プレーヤ。
【請求項24】
トーンアームを構成する方法であって、
細長い部材の重量が懸架手段によって実質的に支持されるように、細長い部材を懸架する懸架手段をほぼ水平位置に配置する工程と、
接触点において接触面に対向して接触するように突起部を配置する工程を備え、細長い部材の長さとほぼ平行な引き摺り力が作用すると、接触面と突起部とを対向して接触させ、それにより、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる、方法。
【請求項25】
レコード盤プレーヤを構築する方法であって、
懸架手段をベースプレートに取り付ける工程と、
細長い部材の重量が懸架手段によって実質的に支持されるように、細長い部材を懸架する懸架手段をほぼ水平位置に配置する工程と、
ベースプレートに関連する突起部を取り付け、かつ、細長い部材に関連する接触面を取り付ける工程、又はベースプレートに関連した接触面を取り付け、且つ細長い部材に関連した突起部を取り付ける工程の何れかを行う工程と、
接触点において接触面に対向して接触するように突起部を配置し、細長い部材の長さとほぼ平行な引き摺り力が作用すると、接触面と突起部とを対向して接触させ、それにより、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる工程を備えた、方法。
【請求項26】
ベースプレート及び細長い部材からなるレコード盤プレーヤを改造する方法であって、
懸架手段をベースプレートに取り付ける工程と、
細長い部材の重量が懸架手段によって実質的に支持されるように、細長い部材を懸架する懸架手段をほぼ水平位置に配置する工程と、
ベースプレートに関連する突起部を取り付け、かつ、細長い部材に関連する接触面を取り付ける工程、又はベースプレートに関連した接触面を取り付け、且つ細長い部材に関連した突起部を取り付ける工程の何れかを行う工程と、
接触点において前記接触面に対向して接触するように突起部を配置し、細長い部材の長さとほぼ平行な引き摺り力が作用すると、接触面と突起部とを対向して接触させ、それにより、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる工程を備えた、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄音機、蓄音機のターンテーブル、レコードプレーヤのトーンアーム用ベアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
レコード盤またはビニールレコードとも呼ばれるレコード盤は、変調された螺旋状の溝が刻まれた平らなディスクからなるアナログサウンド媒体である。溝チャネルは、典型的には相互に垂直に配置された2つの側壁を有して、立体音響を生成するための2つのチャネルを提供する。ターンテーブルとは、レコード盤に符号化された信号を読み取って、録音された音を再生するための装置である。
【0003】
ターンテーブルは、レコード盤を置くことができる回転プラッタ、回転プラッタに対して移動可能なトーンアーム、及びトーンアームの一端に取り付けられたカートリッジを含む。
カートリッジは2つのコイルを含み、レコード溝の2つの壁に垂直に配置されている。レコード針または片持ち梁がカートリッジから突出し、レコードの溝に接触する。レコード針は2つの磁石を含み、夫々が溝の壁の歪みまたは変調の結果として、対応するコイルに対して移動するように配置されている。各磁石-コイル対の相対運動は、小さな電圧を生成し、この電圧は、次いで、処理され(増幅を含む)、夫々のスピーカに供給され、レコード盤によって符号化された音を生成することができる。
【0004】
ターンテーブルのトーンアームの役割は、カートリッジをレコード盤に対して正しい位置に配置できるようにすることと、レコードの再生時にカートリッジの正しい位置を維持して、オーディオのピックアップを容易にすることである。トーンアームが生成されたオーディオ信号内で可聴なシグネチャを生成することは、この分野では受け入れられている。つまり、トーンアームがレコードからピックアップされた信号に影響を与え、異なるトーンアームが同じレコード盤から異なるサウンドをもたらす可能性がある。
文脈上、典型的なLPレコード盤の最後における20kHz信号は、1ミリメートルの100分の1当たり1回のフル発振のスケールで刻印されている。正確なトーンアームは、そのスケール以下の溝に沿った、カートリッジの動きを妨げる必要がある。
【0005】
音質に影響を与えるトーンアームの望ましくない動きを防ぐ一方で、トーンアームを所望の方向に動かすことを意図して構成された、多くの既知の枢支装置がある。
【0006】
既知の装置の1つは、ボールレースまたはジンバルベアリングを使用することである。このような装置では、トーンアームを基部に固定するために幾つかの接点が必要になり、レコードがレコード針を引きずる方向への動きが妨げられる。しかし、これらの複数の接点は「チャタリング」、即ち、熱膨張、摩耗、または公差によってベアリング部品間にギャップが生じると、微視的なスケールでがたつく可能性があり、生成された音声信号に歪みが生じる。このような構成はまた、このチャタリングを最小限にするために高品質の小さな公差のベアリングを必要とし、従って望ましくない。
【0007】
別の既知の装置として、垂直「ユニピボット」がある。簡単に言えば、このような装置は、本質的に、鋭い先端またはスパイク上で逆方向(即ち、上下逆)の位置でバランスが取れたカップである。トーンアームの重さにより、接点に下向きの力が生じ、その結果、レコード針を引っ張るレコードによってトーンアームが「引きずられる」ため、摩摺が発生し、トーンアームの動きに抵抗する。このスパイクとカップ間の摩摺の結果、鋭い点は鈍くなり、使用とともにより研磨されることになる。これにより、引き摺り力が振動する際に、レコード針の引きずりの方向にいくらか自由に移動できるようになる。これは、トーンアームの可聴なシグネチャに影響する可能性がある。
【0008】
第3の既知の代替案は、「線形」トラッカーとして知られており、その基部は、レコード針からレコード中心までの線に平行な支持部に沿ってスライドし又は滑る。しかし、このような装置では、支持部に沿って自由に移動するには「遊び」が必要なため、レコード針の引きずり方向にトーンアームを微視的に動かすことができる。
しかし、このような装置により、支えに沿って自由に動く「プレイ」が必要なため、レコード針のドラグの方向にトーンアームが微小に動くことが可能になる。この場合も、信号に望ましくない可聴なシグネチャが付加される可能性が高い。
【0009】
これらの既知の解決策の幾つかの欠点に対処する改善されたトーンアーム装置を提供することが好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様から、本発明は以下を備えたトーンアームを提供する。
細長い部材と、
前記細長い部材をほぼ水平位置に吊るし、細長い部材の重量が実質的に支持される懸架手段と、
突起部と、
接触面とを備え、
前記突起部は、前記接触面に接触点にて対向して接触するように配置され、前記細長い部材の長さに実質的に平行な引き摺り力の作用が、前記接触面と前記突起部とを対向して接触させるように付勢し、それによって、前記引き摺り力に抵抗する接触力を生成する。
【0011】
したがって、本発明によれば、細長い部材の重さを支持する手段と、細長い部材の長さに沿って作用する引き摺り力に抵抗する手段とを分離することにより、引き摺り力により効果的に抵抗することができ、これにより、改良された特性を有するトーンアームを提供することができることがわかる。引き摺り力への抵抗が改良されたことにより、本発明に係るトーンアームは、レコード盤から既知のトーンアームの装置と比較して品質が向上した音を生成することができる。改良された品質は、トーンアームによる音響シグネチャを減らし、レコード盤によって規定された原音がより正確に再現されるという形をとる。突起部と接触面の配置は、理想的には、細長い部材の任意の重さ(または任意の実質的な部分)を支持するものではなく、したがって、細長い部材の長さと平行に作用する引き摺り力に抵抗する目的で、より最適に配置することができる。さらに、引き摺り力に抵抗する接触力を生成するためには、突起部と接触面の間の単一の接触点だけが必要である。単一の接触点のみが存在することにより、本発明のトーンアームは、チャタリングの影響を受けにくくなる。
【0012】
図1を参照して以下に説明するように、トーンアームに取り付けられたレコード針の下で、レコードが移動することは、トーンアームの長さに対してある角度である方向に沿って作用するトーンアーム上の引っ張り力を加える。したがって、細長い部材の長さに沿って作用する「引き摺り力」は、トーンアームに作用する全ての引き摺り力の成分である。
【0013】
トーンアームの長さ方向に対して垂直に作用する全ての引き摺り力の成分は、トーンアーム(ひいてはレコード針)をレコードの中心に向かって引っ張るように作用し、これはスケート力として知られている。抗スケート力は、通常、スケート力に対抗する(または実質的に対抗する)ために印加され、合力(総ての引き摺り力と抗スケート力の)は、本質的に、トーンアームの長さに沿った引き摺り力の成分である。引き摺り力の垂直成分は抗スケート力によって均衡されているので、ここでトーンアームに作用する引き摺り力への言及は、逆に特定されない限り、トーンアームの長さに沿って作用する引き摺り力の成分とみなされるべきである。
【0014】
細長い部材の長さに実質的に平行な引き摺り力の作用は、「接触面と突起部を対向して接触するように促す」ものであり、そのような力を加える前に、接触面と突起部が既に接触状態に配置されていることを排除するものではないとの記述は当業者によって理解されるべきであり、例えば、接触面と突起部は、「接触するように促される」前に接触していてもよいが、既に接触している必要はない。むしろ、それらが「接触するように促される」という記述は、接触面と突起部が、例えば、互いに離れていくように動かされるのではなく、互いに向かって動く方向に力が作用することを示している。幾つかの例では、突起部及び接触面は、引き摺り力の印加前に接触するように配置されてもよく、その結果、突起部及び接触面は、引き摺り力によって付勢され、対向した接触を維持し、接触面とそれらの接触点における突起部との間の圧力を増加させる。
【0015】
懸架手段は、細長い部材の重さを担うので、接触面と共に突起部は、細長い部材の長手方向軸に実質的に平行な、即ちほぼ水平な引き摺り力のみに抵抗することが必要であることが理解される。したがって、接触力、すなわち、接触点で発生する合力は、実質的に水平であるかもしれない。
【0016】
生成された接触力は、接触点での総合的な合力であることが理解されるであろう。
細長い部材を懸架する懸架手段とは、例えば、懸架手段が細長い部材に接続される地点の高さよりも大きな高さにある点から細長い部材の重量を支える、即ち、必ずしも同じ垂直軸上の真上にあるとは限らないが、比較的垂直方向に高い位置から細長い部材の重量を支える手段のことであることが理解されるだろう。生成された接触力は、細長い部材の長さに平行な力(例えば、引き摺り力)がトーンアームを引く方向にトーンアームの動きに抵抗する。
【0017】
幾つかの実施形態では、接触面は、細長い部材の長手方向軸に実質的に直交に配置される。当業者であれば、「実質的に垂直」は、正確に90度、更には90度に非常に近い角度を必要としないことが理解されるだろう。本開示によれば、接触面は、接触点で生じる接触力が印加される引き摺り力に抵抗できるように、必要な程度に垂直であればよく、接触面に対する突起部の大きな移動を生じないことが好ましい。
【0018】
幾つかの例では、接触面は、細長い部材の長手方向軸に対して少なくとも60度、任意で少なくとも70度、さらに任意で少なくとも80度、さらに任意で少なくとも85度とすることができる。相対角度は、細長い部材の長さによって規定される水平軸に垂直な任意の軸を中心とする回転角度を指す。
【0019】
接触面が細長い部材の長手方向軸に対して実質的に垂直に配置されていることにより、接触面はこの軸に沿って加えられる力の方向に対しても実質的に垂直であることが保証され、その結果、この軸に実質的に平行な対向する接触力は、接触面に対してほぼ垂直であるため、接触面はこの力に効果的に対抗することができる。
換言すれば、接触面に対する法線と最大の引き摺り力の軸との角度は、張り付きを維持するのに十分小さい。この角度は、接触点及び接触面の性質に応じて、最大30度以上とすることができる。
【0020】
更に、長手方向軸に「実質的に垂直」である「接触面」への言及は、特に、接触点における接触面の一部を意味することが当業者によって理解されるであろう。この特定領域の外側では、接触面を構成する表面は、例えば、湾曲面または斜面または平面であるような任意の適切な形状を有していてもよい。幾つかの実施形態では、接触面は、実質的に剛体であるか、あるいは、例えば撓み不可能であり、力による相対的な移動を許容しない。
【0021】
幾つかの実施態様において、突起部は、突起軸を規定し、突起軸を中心として、突起部はほぼ回転対称であり、ここで、突出軸は、細長い部材の長手方向軸に実質的に平行である。これは、力が突起部の軸に沿って直接的に加えられるので、突起部が鋭い点を提供する必要性を減少させる。幾つかの実施形態では、突起部は、実質的に剛体であるか、あるいは、例えば、撓み不可能であり、力による相対的な動きを許容しない。
【0022】
幾つかの実施形態では、突起部は円錐形の突起部である。幾つかの実施形態では、突起部は、接触面の枢支点を形成する点を規定する。
幾つかの実施形態では、接触面は、細長い部材に取り付けられる。あるいは、他の実施形態では、突起部が、細長い部材に取り付けられる。「取り付けられる」という用語の例は、特定の構成要素を別の構成要素に直接取り付けることを必要とせず、むしろ、他の中間構成要素によって接続される可能性を許容することが、ここで理解されるであろう。「取り付けられる」は、構成要素の接触に何らかの恒久的または半永久的な固定が必要であり、単なる隣接接触の状況を記述するものではない。
【0023】
幾つかの実施形態では、トーンアームは、接触面を備える実質的に平坦なプレートを備える。平坦なプレートは製造に非常に効果的で、非常にコスト効率がよい。他の実施形態では、トーンアームはカップを備えることができ、これが今度は接触面を備えることが理解されるであろう。例えば、カップの内面、すなわち凹面は、接触面を構成することができる。実際には、接触面の形状は、接触点自体の外側では、使用中に突起部が滑らないので、接触力にはほとんど影響を及ぼさない。したがって、接触点の外側の領域は重要ではない。幾つかの実施形態では、トーンアームは、接触面の支持部材をさらに含み、そこに接触面が取り付けられる。
【0024】
幾つかの実施形態では、トーンアームは、剛性の接続部材をさらに含み、ここで、剛性の接続部材は、細長い部材に取り付けられ、そして、懸架手段は、第1の接続点で、剛性の接続部材に接続された、少なくとも1つの懸架部材を含む。
【0025】
このような剛性の接続部材は、実質的に曲げられない、または撓み可能ではなく、例えば、圧縮不可能であることは、当業者に理解されるであろう。このような剛性の接続部材は、有利には、少なくとも1つの懸架部材を接続するのに適した構成要素を提供し、それによって、細長い部材の重量を懸架することができる。
【0026】
幾つかの実施態様では、剛性の接続部材は、細長い部材の下側から垂直方向に延在する。当業者は、細長い部材の実質的な水平方向に対して定義される垂直方向を理解するであろう。幾つかの実施形態では、剛性の接続部材は、接触面を提供する。他の実施形態では、剛性の接続部材は、突起部を備える。これにより、接触点(接触力が生成される)がレコード針のレベルよりも下になる(これは、トーンアームが使用されているときに、細長い部材の先端部に取り付けられる)ような配置が有利に提供される。
【0027】
接触点をレコード針のレベルよりも下に位置させることにより、水平な引き摺り力、接触点を通る水平軸の(ピッチ軸)の周りにトルクを生じさせ、それによって、細長い部材の先端部(またはレコード針側の端部)における下向きの力の増加をもたらし、これは、レコード(使用中)とレコード針との接触を維持するのに役立つ。
【0028】
幾つかの実施形態では、トーンアームはさらに支持部材を含み、ここで、少なくとも1つの懸架部材は支持部材に接続されている。支持部材は、懸架手段が細長い部材の重量を支持することを可能にする構造を提供するために、任意の適切な構造、例えば、レコード盤プレーヤのベースプレート、またはテーブルに接続することができる。幾つかの実施形態では、支持部材は、突起部を備える。
【0029】
幾つかの実施形態では、支持部材は、実質的に垂直に延伸した部材である。任意に、支持部材は、細長い部材の開口を通過するように配置され、少なくとも1つの懸架部材は、細長い部材の上方の点で支持部材に接続され得る。これにより、細長い部材より上に安定した接続点が得られ、コンパクトさも保たれる。あるいは、少なくとも1つの懸架部材を、細長い部材の下方の点で支持部材に接続してもよい。
【0030】
これにより、支持部材を細長い部材の下方に完全に配置することができ、追加の空間を占有せず、かつ細長い部材の視界を妨げないようにすることができる。
支持部材の形状は、細長い部材を吊り下げるための適切な点を提供する機能を維持しながらも、大きく変化させることができることが理解されるであろう。幾つかの実施形態では、支持部材は、実質的にL字状またはU字状の部材であってもよく、少なくとも第1のアームと、互いに凡そ直角に取り付けられた第2のアームとを含み、ここで第1のアームは、実質的に垂直に配置され、ここで第2のアームは、ほぼ水平方向に配置され、細長いアームの上方に延び、ここで、懸架部材は、第2のアームに取り付けられる。
U字状の部材は、実質的に垂直に配置され、第2のアームの他端(第1のアームに取り付けられていない第2のアームの端部)に直角に取り付けられる第3のアームをさらに含んでもよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、第1の接続点(少なくとも1つの懸架部材が剛性の接続部材に接続する点)は、少なくとも1つの懸架部材が支持部材に接続される懸架点に対して、細長い部材の長さと平行な軸に沿ってオフセットされており、第1の接続点は、細長い部材の基端部に更に向かい、支持部材上の懸架点は、互いに対して、細長い部材の先端部(例えば、レコード針が取り付けられる端部)により近い。
幾つかの実施形態では、トーンアームは、このオフセットを作り出すために剛性の接続部材を押オフセット部材をさらに含む。突起部はこのオフセットを作り出すように作用する。このオフセットは、支持部材と剛性の接続部材とを付勢するように作用し、剛性の接続部材は、幾つかの例では、突起部と接触面とを対向するように接触させる。
【0032】
換言すれば、この構成は、少なくとも1つの懸架部材を垂直方向からわずかに傾ける、すなわち、剛性の接続部材を、懸架部材が垂直に下向きにぶら下がっている平衡位置から押し出し、それにより、少なくとも1つの懸架部材が、均衡位置に戻ろうとするときに、接触面及び突起部を引っ張る。したがって、この力は、接触面と突起部を一緒に付勢するように作用し、細長い部材の長さに平行に作用する「引き摺り力」力がなくても、接触(おそらく軽い接触のみ)が一般に維持される。
【0033】
幾つかの実施形態では、突起部及び接触面は、磁力によって互いに引き付けられる。したがって、言い換えれば、突起部と接触面(例えば枢支点とスラストプレート)との間に磁気引力が存在する。これは、いかなる適切な構成によっても達成することができる。
例えば、接触面及び突起部の両方は、強磁性材料(例えば鉄、コバルト、ニッケル)で作製することができ(又は強磁性材料例えばステンレス鋼を含む材料で作製され)、それらのうちの少なくとも1つは永久磁石である。或いは、トーンアームは、磁気力を生成するために、突起部または接触面のいずれかに取り付けられた少なくとも1つの追加の磁石をさらに含むことができる。更に又はあるいは、これは上述したオフセット接続点に使用することができ、その結果、接触点(おそらく軽い接蝕点のみ)は、一般的に、細長い部材の長さと平行に作用する「引き摺り力」がない場合でも維持される。
【0034】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの懸架部材は、第1の接続点及び第2の接続点において、剛性の接続部材に接続される。離間した2つの接続点(第1の接続点及び第2の接続点)の配置は、細長い部材の「ローリング」運動を制限するのに役立つ。例えば、細長い部材が自らの長手方向軸を中心に回転する能力は好ましくない。
幾つかの実施形態において、第1の接続点及び第2の接続点は、同じ垂直高さにある(少なくとも、剛性の接続部材が標準の動作位置にある場合、これは、細長い部材の回転を生じさせるために作用する「ローリング」力がない、従って剛性の接続部材に作用する「ローリング」力がない中立位置である)。
【0035】
幾つかの実施形態では、第1の接続点と第2の接続点は、夫々接触点とほぼ同じ垂直高さにある。これは、有利には、3点の水平線を作り出し、該水平線の周りで細長い部材が回転することができ(したがって、「ピッチ」回転のための軸を提供する)、例えば、細長い部材に接続されたレコード針がレコード内の反りの上を進む結果として作成される「上」及び「下」の動作)。
【0036】
これにより、トーンアームの先端部(カートリッジ側端部)が上下に動くにつれて、突起部が接触面に対して摺れることを防ぐ。第1の接続点及び第2の接続点は、ピッチング移動中に細長い部材が回転するピッチ軸を規定する。したがって、接触点(突起部と接触面の間)もこの軸線上にあるとき、突起部は、いかなる摩摺も誘発されることなく、ピッチ軸上を単純に回転する。
【0037】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの懸架部材は、可撓性部材を含む。少なくとも1つの懸架部材は、その全長に沿って、またはその長さのある部分に沿ってのみ、可撓性であってもよい。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの懸架部材は、少なくとも1つの剛性の部分、及び少なくとも1つの可撓性の部分を含むことができる。懸架部材は、第1の接続点では第1の可撓性の部分、第2の接続点では第2の可撓性の部分、及び懸架部材が支持部材に接続する懸架点では、第3の可撓性の部分を含むことができる。
【0038】
或いは、少なくとも1つの懸架部材は、剛性のフレーム構造を備え、該フレーム構造はフレーム構造を支持部材に接続し、さらに第1の接続点及び第2の接続点に接続する可撓性の取付け具を備えることができる。懸架部材内に剛性の部分が存在することは、懸架部材における共振のリスクを低減するのに役立つ。第1の接続点及び第2の接続点における可撓性の部分は、第1の接続点及び第2の接続点(及び好ましくは枢支点)を通るピッチ軸を中心とする細長い部材のピッチングを可能にする。
【0039】
1つの懸架部材を使用して、1つの接続点で細長い部材を支持することができる。しかしながら、上述したように、2つの懸架部材を、細長い部材上にて接続点を分離することによって、安定性を改善することができる(例えば、剛性の接続部材)。従って、幾つかの実施形態では、少なくとも1つの懸架部材は、2つの懸架部材を構成し、ここで、第1の懸架部材は、剛性の接続部材の第1の接続点に接続され、第1の懸架点は、支持部材の接続点であり、第2の懸架部材は、剛性の接続部材の第2の接続点に接続され、第2の懸架点は、支持部材の接続点である。
【0040】
第1の懸架点と第2の懸架点とは、僅かな距離だけ離間していてもよいが、細長い部材がレコードを横切って進行するにつれて、このような任意の離間は、垂直軸(ヨー軸)の周りに小さなトルクを導入する。このようなトルクは望ましくないため、幾つかの実施形態では、第1の懸架点と第2の懸架点は同じである、すなわち、第1の懸架部材と第2の懸架部材の両方が、同じ懸架点に取り付けられる。
【0041】
他の実施形態では、少なくとも1つの懸架部材は、第1の端部と第2の端部を有する単一の懸架部材であり、第1の端部は第1の接続点に接続され、第2の端部は第2の接続点に接続され、懸架部材は、第1の端部と第2の端部との間にて、懸架部材の長さに沿った点で、支持部材に固定的に接続される。
【0042】
付随的に、懸架部材は、懸架部材の第1の端部と第2の端部との間にて、懸架部材の長さに沿って等距離にある点において、支持部材に接続される。
単一の懸架部材を有し、単一の点で支持部材に接続されるか、または2つの別々の懸架部材を有し、各々が支持部材上の同一点に接続され、有利には、支持部材上の懸架点を通って垂直に延びる枢支軸を画定し、細長い部材はこの枢支軸の周りを容易に回転することができる。これにより、細長い部材を「ヨー」方向に回転させることができ、この動きを妨げる外部からの力が発生することはない。
【0043】
幾つかの実施形態では、支持部材は、第1の懸架点(または、第2の懸架点が設けられている場合には、両懸架点が回転ジョイントまたはベアリング上に設けられてもよい)に小さく回転するジョイントまたはベアリングをさらに備える。このようなジョイントまたはベアリングは、この時点で、懸架部材を代替して又は補完して、トルクを回避することができる(即ち、細長い部材が、レコードを横切って進むにつれてヨー軸の周りを回転するときに、トルクが増加することを防ぐ)。このような幾つかの実施形態では、ジョイントまたはベアリングの中心軸は、接触点を直接通過し、したがってヨー軸を維持する。回転ジョイントまたはベアリングは、一部の実施形態においては、ボールレースを含むことができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、細長い部材は、基端部及び先端部を規定し、トーンアームは更に、
先端部に接続され、レコード針を備えたカートリッジと、
基端部に連結されたカウンタ重みとを備える。
【0045】
上述のように、幾つかの実施形態では、剛性の連結部材は、細長い部材の下側から垂直方向に延び、任意で、接触面または突起部を配備する。これは、接触点がレコード針のレベルを下回るような構成を有利に提供する。接触点をレコード針のレベルよりも下に位置させることにより、水平方向の引き摺り力は、接触点を通る水平軸(ピッチ軸)の周りにトルクを生じさせ、それによって、細長い部材の先端部(またはレコード針側の端部)における下向きの力の増加をもたらし、これはレコードとレコード針(使用中)との接触を維持するのに役立つ。
【0046】
第2の態様によれば、本発明は、
レコード盤用のターンテーブルを備えたベースプレートと、
上述のように、ベースプレートに装着されるトーンアームとを含む、レコードプレーヤを提供する。
幾つかの実施形態では、支持部材は、ターンテーブルに取り付けられる。
【0047】
第3の態様から、本発明は以下を備えるトーンアームを提供する。
細長い部材と、
細長い部材をほぼ水平の位置で懸架する懸架手段と、
突起部と、
接触面とを備え、
前記突起部は、前記接触面に接触点にて対向して配置され、前記細長い部材の長さに平行な力の印加が、接触面と突起部との間に生じる接触力によって抵抗され、
接触力は、前記細長い部材の長手方向の軸に実質的に平行である。
【0048】
第4の態様によれば、本発明は、トーンアーム用のベアリングを提供し、該ベアリングは、水平方向を指し、垂直なスラストプレート表面を押圧する点を備え、
該スラストプレート表面は、レコード針におけるレコードの移動方向に対してほぼ垂直、またはレコード針から枢支点までの線に対してほぼ垂直である。
枢支点がターンテーブルに、スラストプレートがトーンアームに取り付けられている、又は枢支点がトーンアームに、スラストプレートがターンテーブルに取り付けられている。
水平方向の枢支点には垂直方向の支持がないので、トーンアームは、枢支点の正しい動きを妨げないように、枢支点の真上の点から連結索によって懸架されている。
【0049】
第5の態様によれば、本発明はトーンアーム用ベアリングを提供し、該トーンアーム用ベアリングは、
ターンテーブルに取り付けられた枢支点と、
トーンアームに取り付けられたスラストプレートであって、スラストプレート表面が、トーンアームのレコード針から枢支点と接触するスラストプレート上の点までの線に対してほぼ垂直(すなわち直交している)であるスラストプレートと、
トーンアームを枢支点の真上の点から懸架する懸架装置であって、枢支点の片側のトーンアーム上の2つの点に取り付けられ、2つの取付け点は枢支点または枢支点の付近で二分する直線を形成する懸架装置を備える。
【0050】
第6の側面によれば、本発明はトーンアーム用ベアリングを提供し、該トーンアーム用ベアリングは、
トーンアームに取り付けられた枢支点と、
ターンテーブルに取り付けられたスラストプレートであって、スラストプレート表面が、トーンアームのレコード針から枢支点と接触するスラストプレート上の点までの線に対してほぼ垂直(すなわち直交している)であるスラストプレートと、
トーンアームを枢支点の真上の点から懸架する懸架装置であって、枢支点の片側のトーンアーム上の2つの点に取り付けられ、2つの取付け点は枢支点または枢支点の付近で二分する直線を形成する懸架装置を備える。
【0051】
第7の態様によれば、本発明は、トーンアームを構成する方法を提供し、該方法は、
細長い部材の重量が懸架手段によって実質的に支持されるように、細長い部材を懸架する懸架手段をほぼ水平位置に配置する工程と、
接触点において接触面に対向して接触するように突起部を配置し、細長い部材の長さとほぼ平行な引き摺り力が作用して、接触面と突起部とを対向して接触させることにより、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる工程を備える。
【0052】
第8の態様によれば、本発明は、レコード盤ターンテーブルを構築する方法を提供し、該方法は、
懸架手段をベースプレートに取り付ける工程と、
細長い部材の重量が懸架手段によって実質的に支持されるように、細長い部材を懸架する懸架手段をほぼ水平位置に配置する工程と、
ベースプレートに関連する突起部を取り付け、かつ、細長い部材に関連する接触面を取り付ける工程、又はベースプレートに関連した接触面を取り付け、且つ細長い部材に関連した突起部を取り付ける工程の何れかを行う工程と、
接触点において接触面に対向して接触するように突起部を配置し、細長い部材の長さとほぼ平行な引き摺り力が作用して、接触面と突起部とを対向して接触させることにより、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる工程を備えている。
【0053】
第9の態様によれば、レコード盤ターンテーブルを改造する方法が提供され、該レコード盤ターンテーブルは、ベースプレートと細長い部材とを具備し、該方法は、
懸架手段をベースプレートに取り付ける工程と、
細長い部材の重量が懸架手段によって実質的に支持されるように、細長い部材を懸架する懸架手段をほぼ水平位置に配置する工程と、
ベースプレートに関連する突起部を取り付け、かつ、細長い部材に関連する接触面を取り付ける工程、又はベースプレートに関連した接触面を取り付け、且つ細長い部材に関連した突起部を取り付ける工程の何れかを行う工程と、
接触点において前記接触面に対向して接触するように突起部を配置し、細長い部材の長さとほぼ平行な引き摺り力が作用して、接触面と突起部とを対向して接触させることによって、引き摺り力に抵抗する接触力を発生させる工程を備えている。
【0054】
本明細書に記載される任意の態様または実施形態の特徴は、適切な場合は、本明細書に記載される任意の他の態様または実施形態に適用され得る。異なる実施形態または一組の実施形態について言及する場合、これらは必ずしも明確ではないが、重複する可能性があることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下、本発明の特定の好適な実施形態を、添付の図面を参照しながら、例としてのみ説明する。
【
図1】当該技術分野で知られているトーンアームの上方から見た斜視図を示す概略図であり、トーンアームに作用する力を例示している。
【
図2】当該技術分野で知られているトーンアームの側面図を示す概略図であり、トーンアームに作用する更なる力を説明する。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るトーンアームの側面図である。
【
図4】
図3のトーンアームの一部を示す斜視図である。
【
図5】
図3及び
図4のトーンアームの懸架部材、剛体連結部材、及び突起部を示す。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るトーンアームの側面図である。
【
図7】
図6のトーンアームの一部を示す斜視図である。
【
図8】
図6のトーンアームの一部を示す別の斜視図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るトーンアームの側面図であり、突起部及び接触面を示す。
【
図10】、
図9のトーンアームと同様の支持部材装置を含む本発明の第4の実施形態に係るトーンアームの一部を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係るトーンアームの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、当該技術分野で知られているような、レコード盤102の上方に配置されたトーンアーム100の上方から見た斜視図を示し、トーンアーム100に作用する様々な力を例示している。トーンアーム100の第1の(基)端部104は、ターンテーブル(図示せず)に接続される。カートリッジ106は、トーンアーム100の第2の(先)端部108に接続される。カートリッジ106は、トーンアーム100の長手方向の軸に対してオフセット角度110で配置される。
図1に示す図に対して、レコード盤102は、矢印112で表されるように、レコード盤の中心の周りに時計方向に回転する。
【0057】
このオフセット角度110は、レコード盤102の回転運動による引き摺り力126がトーンアーム100によって与えられる張力128と一直線上にないことを意味し、これら2つの力126、128の合力120がカートリッジ106のレコード針をレコード盤103の中心に向かって横に引くようになる。
「スケート」力として知られるこの結果得られる力は、矢印120(実際の力ではなく、分解された力として点線矢印として示される)によって表される。このスケート力120は、アームがレコードの中心に向かって「滑る」ことを促すが、それはレコード盤102内のグルーブによってレコード針上に提供される力の不均衡を生じさせ、したがってトーンアームの可聴なシグネチャを付加するので、望ましくない。
【0058】
したがって、抗スケート力122と呼ばれる反対の力が、典型的には第1の端部104またはその近くでトーンアーム100に印加され、このスケート力120のバランスをとる。
カートリッジ106に対する抗スケート力122の効果は、矢印124で表される。この効果は、レコード針の左右の圧力をほぼ均衡させ、カートリッジがレコード盤102の中央に向かって「滑る」する傾向を防止する。
【0059】
図2は、当該技術分野で知られているようなトーンアーム100の側面図を示し、このトーンアーム100上に作用する更なる力を示す。レコード針130を含むレコード針片持ちレバー構造がカートリッジ106から延びているのが示される。枢支装置132が張力128を提供する。図示の例では枢支装置132の枢支点134は、レコード針130が配置されるレコード盤102の表面(水平の点線142によって示されている)よりも垂直方向に高い。
【0060】
この結果、張力128は、上向きの力の成分(すなわち、レコード盤102の表面から離れる方向(
図2には見られない)を含み、引き摺り力126の急増は張力128の増加をもたらし、上向きの力の増加をもたらし、レコード針がレコード盤102の溝との接触を失う原因となり得る。カートリッジ106は、その重さに起因する下向きの力136を提供し、これは、部分的に、上述のように生じるいかなる上向きの力にも対抗する。この下向きの力136は、トーンアーム100の第1の端部104に位置するカウンタ重み140によって製造されるカウンタ重み力138によって注意深く制御される。
【0061】
これらの運動に抵抗することに加えて、トーンアームは、「ピッチ」方向及び「ヨー」方向への移動を可能にする必要がある。「ピッチ」方向は、トーンアーム100の長手方向の軸に垂直な水平軸を中心とする回転であり、すなわち、レコード針130がレコード盤102内で反りを乗り越える結果として作成された「上」及び「下」運動である。「ヨー」方向は、トーンアームを通る縦軸の周りの回転、すなわち、最初の溝から最後の溝までレコードが再生されるように、トーンアームがレコードを横切って移動する際に必要な回転である。標準的な12インチのレコード盤を9インチのトーンアームで再生するには、約18度の「ヨー」動作が必要である。
【0062】
本発明は、レコードを再生する際に有害な可聴なシグネチャを導入することなく、レコード針の下を通過するレコードの引張り力と加えられた抗スケート力から生じる合力引き摺り力に抵抗するのに特に効果的なトーンアームを提供する。
【0063】
以下、図を参照して5つの異なる実施形態を説明する。同様の符号は、説明全体を通じて同様の構成要素に対して用いられてきたが、第1、第2、第3、第4及び第5の実施形態の構成要素をそれぞれ表す「a」、「b」、「c」、「d」及び「e」を付している。
【0064】
図3は、本発明に係るトーンアーム200aの第1の実施形態を示す。突起部1a(枢支点とも呼ばれる)は支持部材7aに取り付けられ、支持部材7aはレコードプレーヤのベースプレート16aに取り付けられる。
図3に示されるように、突起部1aは、トーンアーム200aのレコード針10aから水平方向に向いている。この場合には、スラストプレートによって設けられる接触面2aが、トーンアーム200aの細長い部材8aに堅固に取り付けられる。
【0065】
この例において、スラストプレート2aは、懸架部材4a、5aに接続するための剛性の接続部材も提供する。スラストプレート2a及び細長い部材8aは、懸架部材4a、5aによって支持部材7aから懸架されており、この例では、連結索である。連結索4a、5aは、枢支点1aの真垂直にある点6aで接触して取り付けられ、これは
図3の側面図で見える方向に、またその方向に垂直な方向の両方に、即ち、
図3の「ページ内」にも、取り付けられる。
【0066】
スラストプレート2aの表面、すなわち接触面は、レコード針10aから枢支点1aまでの線に対してほぼ垂直(垂直)である。
【0067】
使用時には、レコード針10aの下を通過するレコードによって引き摺り力が生成され、レコードと共にレコード針を「引きず」ろうとする(すなわち、
図3を参照して実質的に左に)。この引き摺り力により、スラストプレート2aの接触面は接触点206aで突起部1aと接触するように付勢される。接触面と突起部の両方が硬いため、この接触によって接触力が生じる(表面と突起部が接触すると、それ以上押し合うことができないため)。スラストプレート2aと突起部1aとの接触は、水平引き摺り力を受けて接触力を発生する。
【0068】
この接触力により、レコード針10aに加えられる引き摺り力に抵抗する張力が提供され、引き摺り力の方向に沿ったトーンアームの細長い部材8aの移動が防止される。このように、レコード針10aにおける記録信号によってもたらされる変化する引き摺り力は、接触点206aにおける凡そ非圧縮性の点1aとスラストプレート2aとの対向により、レコード針の引き摺り力がトーンアームを引っ張る一次方向(即ち、
図3の左)にトーンアームを動かすことができない。カウンタ重み9aは、レコード針10aにおいて適切なトラッキング重みが維持されるようにトーンアームを均衡させる。
【0069】
レコード針10aの先端部と接触点206aを通る線202aは、実際には、水平線からわずかに「下向き」に角度が付けられていることが分かるであろう。したがって、レコード針10aにおける水平引き摺り力と接触点206aにおける水平反力とは、同一線上にならない。その結果、引き摺り力の増加(例えば、最高地点による)は、接触点206aの周りにトルク反作用を生じ、レコード針10aでの下向きの力を増加させる傾向がある。この信号に由来する反作用の下向きの力は、「ミストラッキング」、つまり高振幅の軌跡中にレコード針が溝との接触を失ったときに生じる歪みを減らす傾向がある。
【0070】
上述のように、引き摺り力の印加により、接触点206aでスラストプレート2aが突起部1aに接触する。しかし、この引き摺り力が存在しない場合でも、ある程度の軽い接触が維持されることが望ましい場合がある。したがって、トーンアーム200aは、磁石3a(磁化された枢支点の一部を形成する)も含む。磁石3aは突起部1aとスラストプレート2aとの間の引力を提供し、レコードの再生中に他の力、例えば足から落下する振動が突起部1aとスラストプレート2aを引き離す傾向があっても接触が維持されるようにする。しかし、磁石3aは必ずしも必要ではないことが理解されるであろう。
【0071】
水平な枢支点1aは、支持部材7aに関連して懸架部材4a、5aによって支持される細長い部材8aに垂直方向の支持を提供しない。これらの構成要素の配置は、
図4を参照するとより明確になる。
図4に示されるように、この例では、支持部材7aが垂直に細長い部材であり、細長い部材8a内の穴204aを通る。これらの構成要素は、
図5においてもより明確に見られるが、ここでは、支持部材7a及び細長い部材8aは、明確さのために省略されている。
【0072】
各懸架部材4a、5aは、支持部材7aの一端に、具体的には支持部材7aの同一点6aに接続されていることが分かる。懸架部材4a、5aの他端は、スラストプレート2a上の第1の接続点11aと第2の接続点12aとに夫々接続されている。これは、「連結索台形(リガチャトラピーズ)」と呼ばれる配置を形成する。
レコードを横切って移動する際のトーンアーム200aの細長い部材8aの回転(「ヨー」)は、懸架点6aと、突起部1aがスラストプレート2aに接触する接触点206aとを通過する垂直軸14a周りの、懸架点6aにおける「連結索台形(リガチャトラピーズ)」の回転によって許容される。
【0073】
このように、この例では、スラストプレート2aは、接触力を生成するための接触面を提供するとともに、懸架部材4a、5aを接続できる剛性の接続部材も提供する。
【0074】
9インチのトーンアーム(23cm)は、全長さLPを再生するためには、垂直位置の両側の約±9度までヨーイングする必要がある。枢支点1aのスラストプレート2aに対する接触力により、スラストプレート2aが枢支点の軸に対して完全に垂直ではなく、レコードの最初と最後で9度以上(軸14aに対して)傾いていても、レコード針の引き摺り力に対して抵抗することが可能である。したがって、枢支点1aとスラストプレート2aは、レコード針10aがレコードの中心に向かって溝を辿るために必要な、アームの高さやバランスを大きく変化させずに枢支点を通る回転の垂直軸14a(ヨー)にほぼ摩摺なく回転させることができる。
【0075】
図5に示すように、懸架部材4a、5aは、スラストプレート2a(
図3に示すように、細長い部材8aに自身が連結される)に接触点206aの両側の2つの点11a、12aで取り付けられ、この点で突起部1aがスラストプレート2aに接触する。3つの点11a、12a、206aは、全て、
図5に見られるように、直線状の水平線13a上に存在する。この水平線13aは、レコード針10aがレコードの反りの上を上昇する必要がある場合に生じる「ピッチ」回転のための軸を形成する。
【0076】
2つの懸架部材4a、5aは、細長い部材8aが自身の長手方向軸の周りを回転する自由(「ロール」、アジマスとも呼ばれ、従来の垂直ユニピボットのトーンアームの欠点である不要な回転)を制限する。
これは、懸架点6aが細長い部材8aの長手方向軸から離れた位置にあるため、いかなるロールも、水平方向のスイングを必要とするが、これは接触点206aでの摩摺によって抵抗される。
ロールの傾向は非常に小さいので、それを防ぐために必要な摩摺抵抗も非常に小さいことに留意されたい。
【0077】
図6は、本発明に係るトーンアーム200bの第2の実施形態を示す。同様の構成要素は、
図3乃至
図5と同じ符号でラベル付けされており、添え字「b」は、それらが第2の実施形態に属することを示す。
図3乃至
図5を参照して説明したものと実質的に類似した構成要素については、第2の実施形態及び第3の実施形態を参照して再度説明することなく、むしろ相違点のみを詳細に説明する。
【0078】
この第2の実施形態では、支持部材7bが細長い部材8bを介して延びるのではなく、支持部材7bがむしろL字状の支持部材であり、第1のアーム210bと第2のアーム211bとを有し、
図6に見られるように実質的に直角で一緒に取り付けられる。
支持部材7bの第1のアーム210bが細長い部材8bの上方に実質的に水平に延び、懸架部材4b、5bは、
図7に示すように支持部材7bの第1のアーム210bの接続点6bに接続されている。支持部材7bの第2のアーム211bは実質的に垂直に延び、第1のアーム210bと直角に接続される。
【0079】
この例では、接触面2bは、ベースプレート16bに取り付けられた、別の接触面構造18bによって提供される。剛性の接続部材20bは、細長い部材8bの下面から延びている(第1の実施形態と同様であるが、今度はこの剛性の接続部材20bは接触面を提供しない)。剛性の接続部材20bは、突起部1b(及び関連する磁石3b)を備える。
【0080】
図8は、突起部1a(この例では、剛性の接続部材20bの一部として形成されている)を見ることができるように、説明の目的で接触面2bを(破線で示すように)左側に移動させた状態を示している。なお、第1の接続点11bと第2の接続点12bとは、懸架部材4b、5bと剛性の接続部材20bとを接続する点であり、
図9に見ることができ、懸架点6bとすることができる。
【0081】
図9には、本発明の第3の実施形態に係るトーンアーム200cが示されている。同様の構成要素についても同様の符号が用いられているが、添え字「c」を付して、それらが第3の実施形態に属することを示している。ここでは、従来の実施形態との相違点のみを以下に説明する。第2の実施形態と同様に、剛性の接続部材20cは、突起部1cを備える。
【0082】
本実施形態では、支持部材7cは、接触面2cを備える。支持部材7cは、垂直に細長い部材であり、
図9に示すように、細長い部材8cの下方に配置される。
【0083】
図10は、本発明の第4の実施形態に係るトーンアーム200dを示している。同様の構成要素についても同様の参照番号が用いられているが、第4の実施形態に属することを示す「d」という添え字が付されている。ここでは、従来の実施形態との相違点のみを以下に説明する。
【0084】
支持部材7dは、
図9の第3の実施形態で示したものと同じであるが、唯一の相違点は、第3の実施形態では、突起部1cが剛性の接続部材20cの一部であり、支持部材7cが接触面2cを提供する。これに対し、第4の実施形態では、支持部材7dが突起部1dを備え、剛性の接続プレート20dが接触面を提供する。
【0085】
懸架部材4c、5c、4d、5d(第3の実施形態及び第4の実施形態についても同様である)の配置は、
図10においてより明確に示されている。懸架部材4c、4dは、第1の接続点11c、11dで剛性の接続部材20c、20dに接続する(他の懸架部材5c、5dは、同様に第2の接続点で接続するが、これは見えない)。各懸架部材4c,5c,4d,5dは、支持部材7c,7dの上部に向かうが、細長い部材8c,8dの下方にある懸架点6c,6dで支持部材7c,7dに接続される。
【0086】
図9の側面図(及び
図10の斜視図)に示されるように、懸架部材4c、5c、4d、5dが支持部材7c、7dに接続された懸架点6c、6dは、細長い部材8c、8d(即ち、細長い部材8cのレコード針10cに向かう端部)に対して、第1の接続点及び第2の接続点11c、12c、11d、12dよりもさらに前方に位置する。
【0087】
図9の例では、これは、突起部1cが、剛性の接続プレートを支持部材7cからごくわずかに離れて押すように、剛性の接続部材20cから十分に遠くに延び、懸架部材4c、4d、5c、5dの角度をごくわずかに(
図9で見られるように)上方及び左方に傾け、枢支点206c、206dにおいて接触面2c、2d及び突起部1c、1dの間に一貫した接触を生じさせることによって達成されている。
【0088】
図10の例では、突起部1dは、支持部材7dから十分な距離に延在して、剛性の支持部材20dと一貫して接触し、支持部材20dをわずかに(細長い部材の基端部に向かって)押し、接続点11c、11d(及び12c、12dは図示せず)は、支持部材7dに対して懸架点6dとは僅かにずれている。このように、この例では、突起部1dが接触面2dに接触する接触点206dは、懸架点6dに対して細長い部材8bの基端側(
図10においてさらに右側)へ向かう。
剛性の接続部材及び支持部材への接続点は、
図3乃至
図8に示す第1の実施形態及び第2の実施形態において、細長い部材の軸に平行な軸に沿って、同様にオフセットされ得る。
【0089】
これらの例のそれぞれにおいて、トーンアーム8c、8dとカウンタ重み9c、9dの重量は、突起部1c、1dと接触面2c、2dの接触を穏やかに維持する一方、ヨー軸における回転不安定性には僅かにしか寄与しない。
【0090】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るトーンアーム200eの基端部を示している。同様の構成要素についても同様の符号が用いられているが、第5の実施形態に属することを示す添え字「e」が付されている。ここでは、従来の実施形態との相違点のみを以下に説明する。
【0091】
支持部材7eは、
図9の第3の実施形態に示されたものと同様である。この第5の実施形態は、突起部1eが剛性の接続部材20eの一部であり、支持部材7eが接触面2eを提供する(図中では見えない)点で第4の実施形態と異なっている。
これに対し、第4の実施形態では、支持部材7dが突起部1dを備え、剛性の接続プレート20dが接触面2dを提供する。この点で、第5の実施形態は、
図9の第3の実施形態と非常に類似している。
【0092】
第5の実施形態は、第1の懸架部材及び第2の懸架部材4c,5cの代わりに、細長い部材8eが、可撓性の取付け具を有する剛性のフレーム構造30eによって懸架されている点で、第3の実施形態と異なる。具体的には、剛性のフレーム構造30eは、中央の剛性フレーム28eを含む。中央の剛性フレーム28eは、第1の可撓性部材22eによって懸架点6eで支持部材7eに接続されている。中央の剛性フレーム28eは、第2の可撓性部材24eによって、剛性の接続部材20eの第1の接続点11eに接続されている。
【0093】
中央の剛性フレーム28eは、第3の可撓性部材26eによって、剛性の接続部材20eの第2の接続点12eに接続されている。第2の可撓性部材及び第3の可撓性部材24e、26eは、第1の接続点及び第2の接続点11e、12eを中心とする細長い部材8e(及び剛体の接続プレート20e)の枢動を可能にし、その結果、接触点206eは、この枢支軸(ピッチ軸)上に存在する。
図11に見られるように、中央の剛性フレーム28eは、実質的に三角形であるが、湾曲した下縁を有し、突起部1eが中央の剛性フレーム28eの下を通過できる空間を作り、支持部材7eの接触面に接触する。他の形状も可能であることは評価されるだろう。
【0094】
要約すると、突起部1及びその支持部材4、5、7の幾何学的形状は、細長い部材(したがってレコード針10)の先端部が反りを越えて上方に偏向するために必要な2つの回転軸、すなわち「ピッチ」13と「ヨー」14における自由で実質的に摩摺のない回転を可能にし、細長い部材(従ってレコード針10)の先端部が、再生中、レコードの中心に向かって進行することを可能にし、一方、突起部1と接触面2との間のギャップのない大きく非弾性的な接触のため、レコード針の引き摺り力の主要な成分の方向に向かい合う微小な動きさえ可能になる。
【0095】
したがって、本明細書に記載された発明は、先行技術の既知のトーンアーム構成よりも多くの利点を有する。これらは記述全体を通して記述されており、いくつかは以下にも記載されている。
-横向きユニピボットベアリングにより、溝の時間軸にゼロ許容剛性を与える。
-台形の懸架により、従来の垂直ユニピボット構成とは異なり、アームの長手方向軸の周りのローリングを規制する。
-枢支点とスラストプレートの表面は、硬い接触の単一点を形成するため、摩耗、スロッピー公差、熱膨張によるがた/がたつきを受けない。
-本発明は、高精度の部品を必要とせずに有効に機能するのに十分安定している。
-枢支点は、アームの重量を支持していないため、垂直ユニピボットベアリングよりも摩耗しにくくなる。
-枢支点は簡単に交換することができる。
-交換用の枢支点は、端部が尖った金属製のボルトなど、安価に製造することができる。
-枢支点は、レコード針のレベルの下にあることができ、その結果、レコード針の引き摺り力の増加は、レコード針に対する下向きの力を増加させるトルク反作用を生じる。
【0096】
本発明は、その1つまたは複数の特定の実施形態を説明することによって説明されてきたが、これらの実施形態に限定されるものではないことが当業者には理解されるであろう。多くの変形及び修正が、添付の特許請求の範囲内で可能である。
【国際調査報告】