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特表2023-538651電気光学ディスプレイおよび駆動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイおよび駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/34 20060101AFI20230901BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20230901BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20230901BHJP
   G02F 1/16757 20190101ALI20230901BHJP
   G02F 1/1685 20190101ALI20230901BHJP
   G02F 1/1681 20190101ALI20230901BHJP
   G02F 1/16766 20190101ALI20230901BHJP
【FI】
G09G3/34 C
G09G3/20 611A
G09G3/20 670J
G09G3/20 621E
G02F1/167
G02F1/16757
G02F1/1685
G02F1/1681
G02F1/16766
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512720
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 US2021048350
(87)【国際公開番号】W WO2022047357
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,268
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シム, テック ピン
(72)【発明者】
【氏名】パルチョウドゥリ, パロマ
(72)【発明者】
【氏名】クラウンス, ケネス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ドブ, ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】アムンドソン, カール レイモンド
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BD21
2K101BD61
2K101ED13
2K101ED71
2K101EG52
5C080AA11
5C080AA13
5C080BB05
5C080BB06
5C080DD20
5C080DD26
5C080DD29
5C080EE01
5C080EE29
5C080FF12
5C080JJ01
5C080JJ03
(57)【要約】
複数のディスプレイピクセルを有する電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、方法は、複数のディスプレイピクセルを複数のグループに分割することと、ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループを更新することであって、ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくともn個の隣接するディスプレイピクセルを含み、nは、2より大きいかまたは2に等しい整数である、ことと、ディスプレイピクセルの1つのグループの(n×2)+2個以下の基本ピクセルにエッジクリアリング波形を印加することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のディスプレイピクセルを有する電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
前記複数のディスプレイピクセルを複数のグループに分割することと、
前記ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループを更新することであって、前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくともn個の隣接するディスプレイピクセルを含み、nは、2より大きいかまたは2に等しい整数である、ことと、
前記ディスプレイピクセルの1つのグループの(n×2)+2個以下の基本ピクセルにエッジクリアリング波形を印加することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループを更新することは、所定のシーケンスにおいて前記ディスプレイピクセルの複数のグループからのピクセルの全てのグループを更新することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループを更新することは、ランダムシーケンスにおいて前記ディスプレイピクセルの複数のグループからのピクセルの全てのグループを更新することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気泳動ディスプレイは、電気泳動媒体の層をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ディスプレイ媒体の層は、カプセル化された電気泳動ディスプレイ媒体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気泳動ディスプレイ媒体は、液体と、前記液体中に配置された少なくとも1つの粒子とを含む電気泳動媒体を含み、前記少なくとも1つの粒子は、前記媒体への電場の印加を通してそこを移動することが可能である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
複数のディスプレイピクセルを有する電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
前記複数のディスプレイピクセルを複数のグループに分割することと、
前記ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループに第1の波形を印加することであって、前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも2つの隣接するディスプレイピクセルを含む、ことと、
前記ディスプレイピクセルの1つのグループの6つ以下の基本ピクセルに第2の波形を印加することと
を含む、方法。
【請求項8】
前記第2の波形は、エッジクリアリング波形である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも3つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、8つ以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも4つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、10個以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも5つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、12個以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも3つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、7つ以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも4つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、8つ以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも4つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、9つ以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも5つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、10個以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも5つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、9つ以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも5つの隣接するディスプレイピクセルを含み、エッジクリアリング波形を印加する前記ステップは、10個以下の基本ピクセルに前記エッジクリアリング波形を印加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記電気泳動ディスプレイは、電気泳動媒体の層をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記ディスプレイ媒体の層は、カプセル化された電気泳動ディスプレイ媒体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電気泳動ディスプレイ媒体は、液体と、前記液体中に配置された少なくとも1つの粒子とを含む電気泳動媒体を含み、前記少なくとも1つの粒子は、前記媒体への電場の印加を通してそこを移動することが可能である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年8月31日に出願された米国仮出願第62/072,268号に関する。
【0002】
前述の出願の開示全体は、参照によって本明細書に援用される。
【0003】
(背景)
本開示の局面は、双安定電気光学ディスプレイ等の電気光学ディスプレイと、これらの双安定電気光学ディスプレイのディスプレイピクセルをリセットする方法とに関する。より具体的には、本発明は、ディスプレイピクセルがリセットされるときにディスプレイが他の駆動方法と比較してより少ないフラッシュを呈し、より少ないストレスを被り、より少ない電力を消費する駆動方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(概要)
本明細書に開示される主題の一局面によると、複数のディスプレイピクセルを有する電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、方法は、複数のディスプレイピクセルを複数のグループに分割することと、ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループを更新することであって、ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくともn個の隣接するディスプレイピクセルを含み、nは、2より大きいかまたは2に等しい整数である、ことと、ディスプレイピクセルの1つのグループの(n×2)+2個以下の基本ピクセルにエッジクリアリング波形を印加することとを含む。
【0005】
別の局面において、複数のディスプレイピクセルを有する電気泳動ディスプレイを駆動する方法は、複数のディスプレイピクセルを複数のグループに分割することと、ディスプレイピクセルの複数のグループからのディスプレイピクセルの1つのグループに第1の波形を印加することであって、ディスプレイピクセルの1つのグループは、同時に更新されている少なくとも2つの隣接するディスプレイピクセルを含む、ことと、ディスプレイピクセルの1つのグループの6つ以下の基本ピクセルに第2の波形を印加することとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本願の種々の局面および実施形態が、以下の図を参照して説明される。図は、必ずしも縮尺通りに描かれるわけではないことを理解されたい。複数の図内に現れるアイテムは、それらが現れる全ての図において、同じ参照番号によって示される。
【0007】
図1A図1Aは、更新またはリセットのために数字で指定された複数のディスプレイピクセルを伴う電気光学ディスプレイを示している。
【0008】
図1B図1Bは、複数の更新またはリセットフレームを経る図1Aの電気光学ディスプレイのディスプレイピクセルを示している。
【0009】
図2A図2A~2Cは、複数のディスプレイピクセルを伴うディスプレイを更新するための別の駆動方法を図示している。
図2B図2A~2Cは、複数のディスプレイピクセルを伴うディスプレイを更新するための別の駆動方法を図示している。
図2C図2A~2Cは、複数のディスプレイピクセルを伴うディスプレイを更新するための別の駆動方法を図示している。
【0010】
図3図3A~3Jは、ディスプレイピクセルが更新またはリセット目的のためにクラスタ化され得る方法のいくつかの例示的構成である。
【0011】
図4図4は、異なる駆動方法間の蓄積される残留電圧の比較を図示している。
【0012】
図5図5は、電気泳動ディスプレイを表す回路図である。
【0013】
図6図6は、電気光学結像層の回路モデルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明は、ダークモードにおいて電気光学ディスプレイ、特に、双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法と、そのような方法における使用のための装置とに関する。より具体的には、本発明は、黒色背景上に白色テキストを表示したときの、そのようなディスプレイにおける「残影」およびエッジアーチファクトの低減と、点滅の低減とを可能にし得る駆動方法に関する。本発明は、排他的ではないが、特に、1つまたはそれより多くのタイプの帯電粒子が流体中に存在し、それらが電場の影響下で流体を通して移動させられ、ディスプレイの外観を変化させる粒子ベースの電気泳動ディスプレイとの使用を意図されている。
【0015】
用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用される場合、画像化技術分野におけるその従来的な意味において、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すように本明細書で使用され、材料は、材料への電場の印加によってその第1からその第2の表示状態へと変化させられる。光学特性は、典型的には、ヒトの眼に知覚可能な色であるが、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または機械読み取りを意図されたディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化の意味における擬似色等の別の光学特性であり得る。
【0016】
用語「グレー状態」は、画像化技術分野におけるその従来的な意味において本明細書で使用され、2つの極端なピクセルの光学状態の中間の状態を指し、必ずしも黒と白とのこれらの2つの極端な状態の間の遷移を意味するわけではない。例えば、上で参照されたいくつかのE Ink特許および公開された出願は、極端な状態が白および濃青である電気泳動ディスプレイを説明しており、それによって、中間の「グレー状態」は実際には薄青である。実際、すでに記述されているように、光学状態の変化は、全く色の変化ではないこともある。用語「黒」および「白」は、以降、ディスプレイの2つの極端な光学状態を指すように使用され得、通常、厳密には黒および白ではない極端な光学状態、例えば、前述の白および濃青状態を含むとして理解されるべきである。用語「単色」は、以降、介在グレー状態を伴わないピクセルの2つの極端な光学状態のみへとそれらを駆動する駆動スキームを表すために使用され得る。
【0017】
下記の議論の多くは、初期グレーレベル(または「グレートーン」)から最終グレーレベル(初期グレーレベルと異なることも異ならないこともある)への遷移を通して電気光学ディスプレイの1つまたはそれより多くのピクセルを駆動する方法に焦点を当てている。用語「グレー状態」、「グレーレベル」、および「グレートーン」は、本明細書において同義的に使用され、極端な光学状態および中間グレー状態を含む。現在のシステムにおける可能なグレーレベルの数は、典型的には、ディスプレイドライバのフレームレートによって課される駆動パルスの離散性および温度鋭敏性等の限定に起因して、2~16個である。例えば、16個のグレーレベルを有する黒色および白色ディスプレイにおいて、通常、グレーレベル1が黒色であり、グレーレベル16が白色であるが、黒色および白色グレーレベル指定は、反転させられ得る。本明細書において、グレートーン1は、黒色を指定するために使用される。グレートーン2は、グレートーンがグレートーン16(すなわち、白色)に向かって進んだときの黒色のより明るい色合いである。
【0018】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味において、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えるディスプレイであり、第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を示すように、有限持続時間のアドレスパルスを用いて、任意の所与の要素が駆動されてから、アドレスパルスが終わった後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなディスプレイを指すように本明細書で使用される。米国特許第7,170,670号において、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極端な黒色および白色状態においてだけではなく、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことは、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書において、双安定および多安定ディスプレイの両方を対象とするために使用され得る。
【0019】
用語「インパルス」は、時間に対する電圧の積分のその従来の意味において、本明細書で使用される。しかしながら、いくつかの双安定電気光学媒体は、電荷トランスデューサとしての機能を果たし、そのような媒体の場合、インパルスの代替定義、すなわち、経時的な電流の積分(印加される全電荷に等しい)が、使用され得る。インパルスの適切な定義が、媒体が電圧時間インパルストランスデューサとしての機能を果たすか、電荷インパルストランスデューサとしての機能を果たすかに応じて、使用されるべきである。
【0020】
用語「残留電圧」は、本明細書において、アドレスパルス(電気光学媒体の光学状態を変更するために使用される電圧パルス)が終えられた後に電気光学ディスプレイに留まったままであり得る持続的または減衰電場を指すように使用される。そのような残留電圧は、電気光学ディスプレイ上に表示される画像への望ましくない影響につながり得、望ましくない影響は、限定ではないが、ディスプレイが書き換えられた後に以前の画像の痕跡が依然として目に見える、いわゆる「残影」現象を含む。出願第2003/0137521号は、直流(DC)非平衡波形が、残留電圧が作成されるという結果をもたらし得る方法を説明し、この残留電圧は、ディスプレイピクセルの開回路の電気化学ポテンシャルを測定することによって確認可能である。
【0021】
用語「波形」は、ある特定の初期グレーレベルから特定の最終グレーレベルへの遷移をもたらすために使用される、時間に対する電圧全体の曲線を示すために使用される。典型的には、そのような波形は、複数の波形要素を備える。すなわち、これらの要素が、本質的に長方形である場合(すなわち、所与の要素が、ある期間にわたって一定電圧の印加を備える場合)、要素は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。用語「駆動スキーム」は、特定のディスプレイに関するグレーレベル間のあらゆる可能な遷移をもたらすために十分な波形の組を示す。ディスプレイは、1つより多くの駆動スキームを利用し得る。例えば、前述の米国特許第7,012,600号は、駆動スキームが、ディスプレイの温度またはその寿命中に動作中であった時間等のパラメータに応じて、修正される必要があり得、したがって、ディスプレイが、異なる温度等で使用されるべき複数の異なる駆動スキームを提供され得ることを教示する。このようにして使用される駆動スキームの組は、「関連駆動スキームの組」と称され得る。前述のMEDEOD出願のうちのいくつかに説明されるように、1つより多くの駆動スキームを同じディスプレイの異なるエリア内で同時に使用することも可能であり、このようにして使用される駆動スキームの組は、「同時駆動スキームの組」と称され得る。
【0022】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、上で記述される特許のうちのいくつかにおいて、回転部材が球形ではないので、用語「回転二色部材」の方がより正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、多数の小さい本体(典型的には、球形または円筒形)を使用し、小さい本体は、異なる光学特性を伴う2つまたはそれより多くの区分と、内部双極子とを有する。これらの本体は、マトリクス内に液体が充填された空胞内に懸濁され、空胞は、本体が自由に回転するように、液体で充填されている。ディスプレイの外観は、それに電場を印加することによって、したがって、本体を種々の位置に回転させ、ビュー表面を通して見られる本体の区分の位置を変動させることによって、変更される。このタイプの電気光学媒体は、典型的には、双安定である。
【0023】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成される電極と、電極に付着した可逆的色変化が可能な複数の染色分子とを備えるナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.,et al.,Nature 1991,353,737、およびWood,D.,Information Display,18(3),24 (March 2002)を参照されたい。また、Bach,U.,et al.,Adv. Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号にも説明されている。このタイプの媒体も、典型的には、双安定である。
【0024】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R. A.,et al. “Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting”,Nature,425,383-385(2003)に説明されるエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号において、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイは、双安定にされ得ることが示されている。
【0025】
長年にわたり集中的な研究および開発の関心の対象である、あるタイプの電気光学ディスプレイは、複数の帯電粒子が電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広い視野角、状態双安定性、ならびに低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に関する問題は、それらの広範な利用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイの不十分な使用可能寿命をもたらす。
【0026】
上記のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体において、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生み出されることもできる(例えば、Kitamura,T.,et al.,“Electrical toner movement for electronic paper-like display”,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,et al.,“Toner display using insulative particles charged triboelectrically”,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4を参照)。同様に、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直面に配置される看板で、媒体がそのような沈降を可能にする向きで使用されるとき、粒子沈降に起因して液体ベースの電気泳動媒体と同じタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、液体の粘度と比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度が、電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にするので、液体ベースの電気泳動媒体よりガスベースの電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0027】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小型カプセルを含み、それらの各々は、それ自体が、電気泳動で移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を囲むカプセル壁とを備える。典型的には、カプセルは、それら自体は、2つの電極間に位置付けられる密着した層を形成するポリマー結合剤内に保持される。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号を参照)、
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号を参照)、
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照)、
(d)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、ならびにディスプレイで使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号を参照)、
(e)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および米国特許出願公開第2007/0109219号を参照)、
(f)ディスプレイを駆動する方法(前述のMEDEOD出願を参照)、
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および米国特許出願公開第2006/0279527号を参照)、
(h)米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、および第7,420,549号、ならびに米国特許出願公開第2009/0046082号に説明されるような非電気泳動ディスプレイ、
(i)「MEDEOD」(電気光学ディスプレイを駆動する方法)出願。これらの特許および同時係属中の出願、ならびに下に記述される全ての他の米国特許および公開および同時係属中の出願の内容全体が、参照によって本明細書に援用される。米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,999,787号、第8,077,141号、および第8,558,783号、ならびに米国特許出願公開第2003/0102858号、第2005/0122284号、第2005/0253777号、第2006/0139308号、第2007/0013683号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0200874号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0048969号、第2008/0129667号、第2008/0136774号、第2008/0150888号、第2008/0291129号、第2009/0174651号、第2009/0179923号、第2009/0195568号、第2009/0256799号、第2009/0322721号、第2010/0045592号、第2010/0220121号、第2010/0220122号、第2010/0265561号、第2011/0285754号、第2013/0194250号、第2014/0292830号、および第2016/0225322号、ならびにPCT公開出願第WO2015/017624号、および2016年2月3日に出願された米国特許出願第15/014,236号。
【0028】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体内の別々のマイクロカプセルを囲む壁が、連続相と置換され得、したがって、いわゆる高分子分散電気泳動ディスプレイを生み出し、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、高分子材料の連続相とから成り、そのような高分子分散電気泳動ディスプレイにおける電気泳動流体の別々の液滴が、別々のカプセル膜が各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのような高分子分散電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0029】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されず、代わりに、キャリア媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、両方は、Sipix Imaging,Inc.に譲渡されている米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい。
【0030】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体において、粒子がディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断するので)、反射モードにおいて動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、ある表示状態が、実質的に不透明であり、ある表示状態が、光透過性であるいわゆる「シャッタモード」で動作するようにされることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイに類似するが、電場強度の変動に依拠する誘電泳動ディスプレイは、同様のモードにおいて動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッタモードにおいて動作することが可能であり得る。シャッタモードにおいて動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得る。そのような構造において、ディスプレイのビュー表面に隣接する少なくとも1つの層は、ビュー表面からより遠くにある第2の層を露出させるかまたは隠蔽するために、シャッタモードにおいて動作する。
【0031】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに苛まれず、多種多様な可撓性および剛性被印刷物上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する(用語「印刷する」の使用は、印刷およびコーティングのあらゆる形態を含むことを意図され、限定ではないが、パッチダイコーティング、スロットまたは押し出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の事前計量コーティングと、ナイフオーバロールコーティング、正逆ロールコーティング等のロールコーティングと、グラビアコーティングと、浸漬コーティングと、噴霧コーティングと、メニスカスコーティングと、スピンコーティングと、ブラシコーティングと、エアナイフコーティングと、シルクスクリーン印刷処理と、静電印刷処理と、熱的印刷処理と、インクジェット印刷処理と、電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照)と、他の同様の技法とを含む)。したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性を有し得る。さらに、ディスプレイ媒体は(様々な方法を使用して)印刷され得るので、ディスプレイ自体が、安価に作製され得る。
【0032】
他のタイプの電気光学媒体も、本発明のディスプレイにおいて使用され得る。
【0033】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイ、および同様の挙動を表示する他の電気光学ディスプレイ(そのようなディスプレイは、以降、便宜上、「インパルス駆動ディスプレイ」と称され得る)の双安定または多安定挙動は、従来の液晶(「LC」)ディスプレイの挙動と好対照である。ねじれネマチック液晶は、双または多安定ではないが、電圧トランスデューサとしての機能を果たし、それによって、そのようなディスプレイのあるピクセルに所与の電場を印加することは、そのピクセルに以前に存在したグレーレベルにかかわらず、そのピクセルにおいて特定のグレーレベルを生み出す。さらに、LCディスプレイは、(非透過性または「ダーク」から透過性または「ライト」へと)一方向においてのみ駆動され、より明るい状態からより暗い状態への逆遷移は、電場を低減させるかまたは排除することによって成し遂げられる。最終的に、LCディスプレイのピクセルのグレーレベルは、電場の極性に対して鋭敏ではなく、その大きさに対してのみ鋭敏であり、実際、技術的な理由のために、商業用LCディスプレイは、通常、頻繁に駆動場の極性を反転させる。対照的に、双安定電気光学ディスプレイは、第1近似までインパルストランスデューサとして機能し、それによって、ピクセルの最終状態は、印加される電場およびこの場が印加される時間だけでなく、電場の印加以前のピクセルの状態にも依存する。
【0034】
使用される電気光学媒体が双安定であろうとなかろうと、高分解能ディスプレイを手に入れるために、ディスプレイの個々のピクセルは、隣接するピクセルからの干渉を伴わずにアドレス可能でなければならない。この目標を達成する1つの方法は、トランジスタまたはダイオード等の非線形要素のアレイを提供することであり、少なくとも1つの非線形要素は、各ピクセルに関連付けられ、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生み出す。1つのピクセルをアドレスするアドレスまたはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して、適切な電圧源に接続される。典型的には、非線形要素がトランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され、この配列が、以下の説明では仮定されるが、本質的に恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。従来、高分解能アレイにおいて、ピクセルは、任意の特定のピクセルが、1つの規定された行と1つの規定された列の交点によって一意に画定されるように、行および列の2次元アレイにおいて配列される。各列内の全てのトランジスタのソースは、単一列電極に接続される一方、各行内の全てのトランジスタのゲートは、単一行電極に接続される。再び、行へのソースおよび列へのゲートの割り当ては、従来的であるが本質的に恣意的であり、所望に応じて反転させられ得る。行電極は、行ドライバに接続され、それは、任意の所与の瞬間において1つの行が選択されることを本質的に確実にし、すなわち、選択された行内の全てのトランジスタが伝導性であることを確実にするような電圧が選択された行電極に印加される一方、これらの選択されていない行内の全てのトランジスタが非伝導性のままであることを確実にするような電圧が全ての他の行に印加されることを本質的に確実にする。列電極は、列ドライバに接続され、それらは、選択された行内のピクセルをそれらの所望の光学状態へと駆動するように選択される電圧を種々の列電極にかける。(前述の電圧は、従来的に、電気光学媒体の非線形アレイと反対側に提供され、ディスプレイ全体にわたって延びる共通正面電極に対するものである。)「ラインアドレス時間」として公知である事前選択された間隔後、選択された行が選択解除され、次の行が選択され、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変化させられる。このプロセスは、ディスプレイ全体が行毎様式において書き込まれるように繰り返される。
【0035】
一見、そのようなインパルス駆動電気光学ディスプレイをアドレスする理想的な方法は、各ピクセルがその初期グレーレベルからその最終的なグレーレベルへと直接遷移するようにコントローラが画像の各書き込みを配列する、いわゆる「一般的なグレースケール画像フロー」であろうと思われ得る。しかしながら、インパルス駆動ディスプレイ上に画像を書き込む際、いくつかの誤差が、必然的に存在する。実践において遭遇されるいくつかのそのような誤差は、以下を含む。
(a)以前の状態への依存性。少なくともいくつかの電気光学媒体の場合、ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、現在の状態および所望の光学状態だけではなくピクセルの以前の光学状態にも依存する。
(b)滞留時間依存性。少なくともいくつかの電気光学媒体では、ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、ピクセルがその種々の光学状態において費やした時間に依存する。この依存性の精密な性質は十分に理解されていないが、一般に、ピクセルがその現在の光学状態であった時間が長ければ長いほど、より多くのインパルスが、要求される。
(c)温度依存性。ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、温度に大きく依存する。
(d)湿度依存性。ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、少なくともいくつかのタイプの電気光学媒体では、周囲の湿度に依存する。
(e)機械的一様性。ピクセルを新たな光学状態に切り替えるために要求されるインパルスは、ディスプレイにおける機械的変動、例えば、電気光学媒体または関連付けられたラミネーション接着剤の厚さの変動に影響を及ぼされ得る。他のタイプの機械的非一様性が、媒体の異なる製造バッチ処理、製造公差、および材料変動間の必然的な変動から生じ得る。
(f)電圧誤差。ピクセルに印加される実際のインパルスは、必然的に、ドライバによって送達される電圧における不可避な軽微誤差のため、理論的に印加されるインパルスとはわずかに異なる。
【0036】
一般的なグレースケール画像フローは、「誤差の累積」現象に苛まれる。例えば、温度依存性が、各遷移に対して正の方向における0.2Lの誤差をもたらすと想定する(Lは、通常のCIE定義:
=116(R/R0)1/3-16
を有し、式中、Rは、反射率であり、R0は、標準反射率値である)。50回の遷移後、この誤差は、10Lまで累積する。おそらく、より現実的には、ディスプレイの理論的な反射率と実際の反射率との間の差の観点から表される各遷移の平均的誤差は、±0.2Lであると推定される。100回の連続遷移後、ピクセルは、2Lというそれらの予期される状態からの平均偏差を表示する。そのような偏差は、あるタイプの画像の平均的な観察者には明白である。
【0037】
この誤差の累積現象は、温度に起因する誤差だけではなく、上に列挙された全てのタイプの誤差にも適用される。前述の米国特許第7,012,600号に説明されるように、そのような誤差を補償することは、可能ではあるが、制限された程度の精度まで補償するのみである。例えば、温度誤差は、温度センサおよびルックアップテーブルを使用することによって補償され得るが、温度センサは、制限された分解能を有し、電気光学媒体の温度とはわずかに異なる温度を読み取り得る。同様に、以前の状態への依存性は、以前の状態を記憶し、多次元遷移マトリクスを使用することによって補償され得るが、コントローラのメモリは、記録され得る状態の数および記憶され得る遷移マトリクスのサイズを制限し、このタイプの補償の精度を制限する。
【0038】
したがって、一般的なグレースケール画像フローは、良好な結果を与えるために、印加されるインパルスの非常に精密な制御を要求し、電気光学ディスプレイの技術の現在の状態において一般的なグレースケール画像フローは商業用ディスプレイにおいて実行不可能であることが、経験的に見出されている。
【0039】
本明細書においてその全体が援用される米国特許公開第2013/0194250号(現米国特許第10,672,350号)は、フラッシュおよびエッジ残影を低減させるための技法を説明している。「選択的一般更新」または「SGU」方法と表される1つのそのような技法は、全てのピクセルが各遷移において駆動される第1の駆動スキームと、いくつかの遷移を受けているピクセルが駆動されない第2の駆動スキームとを使用して複数のピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動することを伴う。第1の駆動スキームがディスプレイの第1の更新中に非ゼロの微小な割合のピクセルに適用される一方、第2の駆動スキームが、第1の更新中に残りのピクセルに適用される。第1の更新に続く第2の更新中に第1の駆動スキームが異なる非ゼロの微小な割合のピクセルに適用される一方、第2の駆動スキームが、第2の更新中に残りのピクセルに適用される。典型的には、SGU方法は、テキストまたは画像を囲む白色背景をリフレッシュすることに対して適用され、それによって、白色背景における微小な割合のピクセルのみは、任意の1つのディスプレイの更新中に更新を受けるが、グレー色への白色背景のドリフトがフラッシュ的更新に関するいかなる必要性も伴うことなく回避されるように、背景の全てのピクセルは、徐々に更新される。SGU方法の適用が各遷移の更新を受けることになる個々のピクセルに関して特別な波形(以降、「F」波形または「F偏移」と称される)を要求することは、電気光学ディスプレイの当業者には直ちに明白であろう。
【0040】
前述の米国特許公開第2013/0194250号は、「平衡パルス対白色/白色遷移駆動スキーム」または「BPPWWTDS」も説明し、これは、エッジアーチファクトを生じさせる可能性が高いとして識別され得る、1つまたはそれより多くの平衡パルス対(平衡パルス対または「BPP」は、異極性の対の駆動パルスであり、それによって、平衡パルス対の正味インパルスは、実質的にゼロである)がエッジアーチファクトをクリアリングするかまたは低減させることにおいて効果的である時空間構成にあるピクセルにおける白色-白色遷移中、平衡パルス対(単数または複数)の印加を伴う。望ましくは、BPPが印加されるピクセルは、BPPが他の更新アクティビティによってマスクされるように選択される。各BPPは本質的にゼロ正味インパルスを有し、したがって、駆動スキームのDC平衡を改変しないため、1つまたはそれより多くのBPPの印加は駆動スキームの望ましいDC平衡に影響を及ぼさないことに留意されたい。「白色/白色上昇パルス駆動スキーム」または「WWTOPDS」と表される第2のそのような技法は、エッジアーチファクトを生じさせる可能性が高いとして識別され得る、「上昇」パルスがエッジアーチファクトをクリアリングするかまたは低減させることにおいて効果的である時空間構成にあるピクセルにおける白色-白色遷移中、上昇パルスを印加することを伴う。ここでも、BPPWWTDSまたはWWTOPDSの適用は、各遷移の更新を受けることになる個々のピクセルに関して特別な波形(以降、「T」波形または「T偏移」と称される)を要求する。TおよびF波形は、通常、白色-白色遷移を受けているピクセルにのみ印加される。大域的限定駆動スキームにおいて、白色-白色波形はエンプティである(すなわち、一連のゼロ電圧パルスから成る)が、全ての他の波形は、エンプティではない。故に、印加可能であるとき、非エンプティのTおよびF波形は、大域的限定駆動スキームにおいてエンプティの白色-白色波形と置換される。
【0041】
いくつかの状況下では、単一のディスプレイが複数の駆動スキームを利用することが、望ましくあり得る。例えば、2つより多くのグレーレベルが可能であるディスプレイが、全ての可能なグレーレベル間の遷移をもたらし得るグレースケール駆動スキーム(「GSDS」)と、2つのグレーレベル間のみの遷移をもたらす単色駆動スキーム(「MDS」)とを利用し得、MDSは、GSDSより迅速なディスプレイの書き換えを提供する。MDSは、ディスプレイの書き換え中に変更されている全てのピクセルが、MDSによって使用される2つのグレーレベル間のみの遷移をもたらしているときに使用される。例えば、前述の米国特許第7,119,772号は、電子ブックの形態におけるディスプレイ、または、グレースケール画像を表示することが可能であり、表示された画像に関連するテキストをユーザが入力することも可能にする単色ダイアログボックスを表示することも可能である同様のデバイスの形態にあるディスプレイを説明している。ユーザがテキストを入力しているとき、高速MDSが、ダイアログボックスの迅速な更新のために使用され、それによって、入力されているテキストの高速確認をユーザに提供する。他方、ディスプレイ上に示されるグレースケール画像全体が変更されているとき、低速GSDSが、使用される。
【0042】
代替として、ディスプレイは、「直接更新」駆動スキーム(「DUDS」)と同時にGSDSを利用してもよい。DUDSは、2つまたは2つより多くのグレーレベル、典型的には、GSDSより少ないグレーレベルを有し得るが、DUDSの最も重要な特性は、GSDSで多くの場合使用される「間接」遷移(少なくともいくつかの遷移において、ピクセルが初期グレーレベルから1つの極端な光学状態へと駆動され、次いで、逆方向において最終グレーレベルへと駆動され、ある場合、遷移は、初期グレーレベルから1つの極端な光学状態へと駆動し、そこから反対の極端な光学状態に駆動し、そしてようやく、最終的な極端な光学状態へと駆動することによって成し遂げられ得る)とは対照的に、遷移が初期グレーレベルから最終グレーレベルへの単純な一方向駆動によって取り扱われることである。例えば、前述の米国特許第7,012,600号の図11Aおよび図11Bに図示されている駆動スキームを参照されたい。したがって、本電気泳動ディスプレイが飽和パルスの長さ(「飽和パルスの長さ」は、1つの極端な光学状態から他方の光学状態へとディスプレイのピクセルを駆動するために十分である特定の電圧における期間として定義される)の約2~3倍、または約700~900ミリ秒のグレースケールモードにおける更新時間を有し得る一方、DUDSは、飽和パルスの長さに等しいか、または約200~300ミリ秒の最大更新時間を有する。
【0043】
しかしながら、駆動スキームにおける変動は、使用されるグレーレベルの数の差に限られない。例えば、駆動スキームは、大域的更新駆動スキーム(より正確には「大域的完全」または「GC」駆動スキームと称される)が適用されている領域(ディスプレイ全体またはそのいくつかの画定された部分であり得る)内の全てのピクセルに駆動電圧が適用される大域的駆動スキームと、非ゼロ遷移(すなわち、初期グレーレベルと最終グレーレベルとが相互に異なる遷移)を受けているが駆動電圧またはゼロ電圧がゼロ遷移またはヌル遷移(初期グレーレベルと最終グレーレベルとが同じである)中に印加されないピクセルにのみ駆動電圧が適用される部分的更新駆動スキームとに分割され得る。本明細書において使用される場合、用語「ゼロ遷移」および「ヌル遷移」は、同義的に使用される。(「大域的限定」または「GL」駆動スキームを指定された)駆動スキームの中間形態は、ゼロの白色-白色遷移を受けているピクセルに駆動電圧が印加されないことを除いて、GC駆動スキームと同様である。例えば、白色背景上に黒色テキストを表示する電子ブック読取機として使用されるディスプレイにおいて、多数の白色ピクセルが、特に、テキストの1つのページから次のページまで不変のままであるテキストの余白および行間に存在し、故に、これらの白色ピクセルを書き換えないことは、ディスプレイ書き換えの見掛けの「フラッシュ性」を実質的に低減させる。
【0044】
しかしながら、ある問題が、このタイプのGL駆動スキームにおいて残っている。第1に、前述のMEDEOD出願のいくつかにおいて詳細に議論されたように、双安定電気光学媒体は、典型的には完全に双安定ではなく、1つの極端な光学状態に置かれたピクセルは、中間グレーレベルに向かって、数分~数時間の期間にわたって徐々にドリフトする。特に、ピクセル駆動されている白色は、ライトグレーカラーに向かってゆっくりとドリフトする。故に、GL駆動スキームにおいて、白色ピクセルが数枚のページめくりを通して駆動されないままにされた場合、その最中に、他の白色ピクセル(例えば、テキスト文字の部分を形成するピクセル)が、駆動され、新たに更新された白色ピクセルは、駆動されていない白色ピクセルよりわずかに明るく、最終的に、その差は、訓練されていないユーザにさえ明白となる。
【0045】
第2に、駆動されていないピクセルが、更新されているピクセルに隣接して位置しているとき、「ブルーミング」として公知である現象が起こり、この現象では、駆動されるピクセルの駆動が、駆動されるピクセルのエリアよりわずかに大きいエリアにわたって光学状態の変化を引き起こし、このエリアは、隣接するピクセルのエリア内へと侵入する。そのようなブルーミングは、駆動されないピクセルが駆動されるピクセルに隣接して位置しているエッジに沿ったエッジ効果として現れる。領域更新(ディスプレイの特定の領域のみが、例えば、画像を示すように更新される)に伴って、更新されている領域の境界でエッジ効果が起こることを除いて、同様のエッジ効果は、領域更新を使用するときに起こる。時間と共に、そのようなエッジ効果は、視覚的に気が散るものになり、クリアリングされなければならない。これまで、そのようなエッジ効果(および駆動されていない白色ピクセルにおける色ドリフトの効果)は、典型的には、間隔を置いて単一のGC更新を使用することによって除去されてきた。残念ながら、そのような時折のGC更新の使用は、「フラッシュ的」更新という問題を再導入し得、実際、更新のフラッシュ性は、フラッシュ的更新が長い間隔においてのみ起こるという事実によって高められ得る。
【0046】
本発明の局面のいくつかは、依然として可能な限りフラッシュ的更新を回避しながら上に議論された問題を低減させるかまたは排除することに関する。しかしながら、前述の問題を解決するために試行することにおける付加的な複雑な問題、すなわち、全体的なDC平衡に関する必要性が、存在する。前述のMEDEOD出願の多くにおいて議論されたように、使用される駆動スキームが実質的にDC平衡ではない場合(すなわち、同じグレーレベルで開始および終了する任意の一連の遷移中、ピクセルに印加されるインパルスの代数和が、ゼロに近くない場合)電気光学の性質およびディスプレイの耐用年数は、悪影響を及ぼされ得る。1つより多くの駆動スキームを使用して遂行される遷移を伴う、いわゆる「非同次ループ」におけるDC平衡の問題を議論している前述の米国特許第7,453,445号を特に参照されたい。DC平衡駆動スキームは、任意の所与の時間における総正味インパルスバイアスが(有限数のグレー状態に関して)バウンドされることを確実にする。DC平衡駆動スキームにおいて、ディスプレイの各光学状態は、インパルスポテンシャル(IP)を割り当てられ、光学状態間の個々の遷移は、遷移の正味インパルスが遷移の初期状態と最終状態との間のインパルスポテンシャルの差と等しくなるように定義される。DC平衡駆動スキームにおいて、任意の往復正味インパルスは、実質的にゼロであることを要求される。
【0047】
一局面において、本発明は、エッジアーチファクト、残影、およびフラッシュ的更新を低減させながら黒色背景(「ダークモード」は、本明細書において「黒色モード」とも称される)上に白色テキストを表示するために複数のピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動する方法を提供する。加えて、テキストがアンチエイリアスされる場合、白色テキストは、中間グレーレベルを有するピクセルを含み得る。明るいまたは白色背景上に黒色テキストを表示することは、本明細書において「ライトモード」または「白色モード」と称される。典型的には、黒色背景上に白色テキストを表示するとき、白色エッジまたはエッジアーチファクトが、(ライトモードにおける暗いエッジと同様に)複数回の更新後に累積し得る。このエッジ累積は、特に、背景ピクセル(すなわち、テキストの余白および行間の空白におけるピクセル)が更新中にフラッシュを放たないとき、目に見える(すなわち、繰り返される更新を通して黒色の極端な光学状態のままである背景ピクセルは、繰り返される黒色-黒色ゼロ遷移を受け、その最中、駆動電圧は、ピクセルに印加されず、それらは、フラッシュを放たない)。黒色-黒色遷移中に駆動電圧が印加されないダークモードは、「ダークGLモード」と称され得る。これは、本質的に、白色-白色ゼロ遷移を受けている背景ピクセルに駆動電圧が印加されないライトGLモードの逆である。ダークGLモードは、黒色-黒色ピクセルのためのゼロ遷移を単純に定義することによって実装され得るが、コントローラによる部分的更新等のいくつかの他の手段によっても実装され得る。
【0048】
図5は、本明細書において提起される主題による電気泳動ディスプレイのピクセル500の概略図を示している。ピクセル500は、結像フィルム510を含み得る。いくつかの実施形態では、結像フィルム510は、双安定であり得る。いくつかの実施形態では、結像フィルム510は、限定ではないが、例えば、荷電顔料粒子を含み得るカプセル化された電気泳動結像フィルムを含み得る。
【0049】
結像フィルム510は、正面電極502と背面電極504との間に配置され得る。正面電極502は、結像フィルムとディスプレイの正面との間に形成され得る。いくつかの実施形態において、正面電極502は、透明であり得る。いくつかの実施形態において、正面電極502は、限定ではないが、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む任意の好適な透明材料から形成され得る。背面電極104は、正面電極502の反対側に形成され得る。いくつかの実施形態において、寄生静電容量(図示せず)が、正面電極502と背面電極504との間に形成され得る。
【0050】
ピクセル500は、複数のピクセルのうちの1つであり得る。複数のピクセルは、行および列の2次元アレイに配列され、マトリクスを形成し得、任意の特定のピクセルは、1つの規定された行と1つの規定された列との交点によって一意に画定される。いくつかの実施形態において、ピクセルのマトリクスは、各ピクセルが少なくとも1つの非線形回路要素520に関連付けられる「アクティブマトリクス」であり得る。非線形回路要素520は、バックプレート電極504とアドレス電極508との間に結合され得る。いくつかの実施形態において、非線形要素520は、ダイオード、および/または、限定ではないが、MOSFETを含むトランジスタを含み得る。MOSFETのドレイン(またはソース)は、バックプレート電極504に結合され得、MOSFETのソース(またはドレイン)は、アドレス電極508に結合され得、MOSFETのゲートは、MOSFETのアクティブ化および非アクティブ化を制御するように構成されたドライバ電極506に結合され得る。(簡単にするために、バックプレート電極504に結合されるMOSFETの端子は、MOSFETのドレインと称され、アドレス電極508に結合されるMOSFETの端子は、MOSFETのソースと称される。しかしながら、当業者は、いくつかの実施形態において、MOSFETのソースとドレインとが交換され得ることを認識するであろう。)
【0051】
アクティブマトリクスのいくつかの実施形態において、各列内の全てのピクセルのアドレス電極508は、同じ列電極に接続され得、各行内の全てのピクセルのドライバ電極506は、同じ行電極に接続され得る。行電極は、行ドライバに接続され得、行ドライバは、選択された行電極に、選択された行(単数または複数)内の全てのピクセル500の非線形要素520をアクティブにするために十分な電圧を印加することによって、ピクセルの1つまたはそれより多くの行を選択し得る。列電極は、列ドライバに接続され得、列ドライバは、選択された(アクティブにされる)ピクセルのアドレス電極506に、ピクセルを所望の光学状態へと駆動するために好適な電圧をかけ得る。アドレス電極508に印加される電圧は、ピクセルのフロントプレート電極502に印加される電圧(例えば、約ゼロボルトの電圧)に対するものであり得る。いくつかの実施形態において、アクティブマトリクスにおける全てのピクセルのフロントプレート電極502は、共通電極に結合され得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、アクティブマトリクスのピクセル500は、行毎様式において書き込まれ得る。例えば、ピクセルの行は、行ドライバによって選択され得、ピクセルの行に関する所望の光学状態に対応する電圧が、列ドライバによって、ピクセルに印加され得る。「ラインアドレス時間」として公知である事前選択された間隔後、選択された行が、選択解除され得、別の行が、選択され得、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの別のラインが書き込まれるように、変化させられ得る。
【0053】
図6は、本明細書に提起される主題による正面電極502と背面電極504との間に配置される電気光学結像層510の回路モデルを示している。抵抗器602およびコンデンサ604は、任意の接着剤層を含む電気光学結像層510、正面電極502、および背面電極504の抵抗および静電容量を表し得る。抵抗器612およびコンデンサ614は、ラミネーション接着剤層の抵抗および静電容量を表し得る。コンデンサ616は、正面電極502と背面電極504との間、例えば、結像層とラミネーション接着剤層との間および/またはラミネーション接着剤層とバックプレーン電極との間の界面等の層間の界面接触エリアに形成され得る静電容量を表し得る。ピクセルの結像フィルム510を横断した電圧Viは、ピクセルの残留電圧を含み得る。
【0054】
図1Aは、本明細書において提起される主題によるピクセルクリアリングの一方法を図示している。この方法において、ディスプレイのピクセルは、異なる部分に分割され得、各ディスプレイピクセルは、数字マーカ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8等)を割り当てられ、マーカの割り当ては、周期的に、またはランダムに行われ得る。ディスプレイをリセットするとき、同じ数字マーカを伴うディスプレイピクセルは、ともにリセットされる。例えば、図1Bに図示されているように、駆動方法のフレーム1は、数値1で指定またはマークされた全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットし得る。続いて、次のフレーム上で、フレーム2または第2のフレームにおいて、数値2で指定された全てのディスプレイピクセルが、更新またはリセットされ得る。同様に、図1Bに図示されているように、フレーム3または第3のフレームが、数字3を指定された全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットする。次のフレーム(すなわち、フレーム4または第4のフレーム)は、数字4で指定された全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットする。次に続くフレーム(すなわち、フレーム5または第5のフレーム)は、数字5で指定された全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットする。次のフレーム(すなわち、フレーム6または第6のフレーム)は、数字6で指定された全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットする。次のフレーム(すなわち、フレーム7または第7のフレーム)は、数字7で指定された全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットする。同様に、次に続くフレーム(すなわち、フレーム8または第8のフレーム)は、数字8で指定された全てのディスプレイピクセルを更新またはリセットする。この構成において、この駆動方法は、一度に1つの部分(すなわち、一度にピクセル全体のうちの8分の1)においてディスプレイを更新またはリセットし、それによって、更新またはリセットからもたらされるフラッシュ性を低減させる。
【0055】
代替として、ピクセルは、図2A図2Cに図示されているように、更新またはリセットのためにクラスタ化され得る。同じフレーム中に2つの基本または隣接ピクセルが更新またはリセットされることがない図1Aと比較して、図2A~2Cに図示されている駆動方法は、2つまたはそれより多くの基本または隣接ディスプレイピクセルをともに更新またはリセットさせる。ここで図2Aを参照すると、数字を用いてディスプレイピクセルを指定するとき、隣接または基本ピクセルが、同じ数字で指定され得、これは、それらがともに、または同じフレーム中に更新またはリセットされ得ることを意味する。例えば、図2Aに示されるディスプレイピクセルの最初の2行を参照すると、第1の行および第2の行におけるピクセルが、同じ数字を有する。したがって、更新またはリセット中、これらの2つのピクセルは、同時に、または同じフレーム中に更新またはリセットされ得る(例えば、最初の2行からの数字1で指定された2つのピクセルが、フレーム1中にともにリセットされ、同様に、最初の2行からの数字6で指定された2つのピクセルが、フレーム6中にともにリセットされ得る)。要するに、同じ数字グループの指定された少なくとも2つの隣接するディスプレイピクセルは、第1の波形を用いてともに駆動され得、この第1の波形は、更新波形またはリセット波形であり得る。ここでは、用語「隣接する」は、共通の頂点または共通の辺を有するディスプレイピクセルを指す。ここで図2Bを参照すると、暗い背景を伴うディスプレイ210が、図2Aで概要を述べられた方法を使用して更新またはリセットされ得る。例えば、更新またはリセットのために指定されたピクセル212aおよび212bが、黒色-黒色クリアリング波形を使用してリセットされ得る。しかしながら、この黒色-黒色クリアリング波形は、隣接または基本ピクセル214a、214b、214c、214d、214e、および214fにおいてエッジアーチファクトを生じさせ得る。この場合、これらのエッジアーチファクトをクリアリングするために、これらの基本ピクセル214a、214b、214c、214d、214e、および214fは黒色-黒色エッジクリアリング波形を印加される一方、ピクセル216aおよび216b等の残りのピクセルは、標準黒色-黒色波形を印加される。いくつかの実施形態では、この黒色-黒色エッジクリアリング波形は、DC非平衡であり得、この場合、残留電荷が、このDC非平衡に起因してディスプレイ媒体内に累積し得る。同様に、図2Cに図示されているように、白色背景を伴うディスプレイ220が、図2Aで概要を述べられた方法を使用して更新またはリセットされ得る。更新またはリセットのために指定されたピクセル222aおよび222bが、白色-白色クリアリング波形を使用してリセットされ得る。同様に、この白色-白色クリアリング波形も、基本ピクセル224a、224b、224c、224d、224e、および224fにおいてエッジアーチファクトを生じさせ得、白色-白色エッジクリアリング波形がこれらのエッジアーチファクトをクリアリングするために印加され得る一方、標準白色-白色波形が、残りのピクセル226aおよび226bに印加され得る。図2Bに図示されている暗い背景を伴うディスプレイ210と同様に、これらの白色-白色エッジクリアリング波形は、DC非平衡であり得、残留電荷をディスプレイ媒体内に蓄積させ得、これは、ディスプレイに対するストレスを引き起こし得、ディスプレイの性能に悪影響を及ぼし得る。
【0056】
比較して、図2A~2Cに図示されている駆動方法は、図1Aおよび図1Bに図示されている駆動方法と比較してより少ない残留電荷をディスプレイに対して生成する。これは、リセットするピクセルをクラスタ化することによって、図1Aおよび図1Bで概要を述べられた方法と比較してより少ない数の基本ピクセル(例えば、ピクセル214a、214b、214c、214d、214e、および214f、ならびにピクセル224a、224b、224c、224d、224e、および224f)がエッジクリアリングを要求する事実に少なくとも部分的に起因する。具体的には、図1Aおよび図1Bにおいて、全てのリセットされるピクセルが、少なくとも4つの基本ピクセルがDC非平衡エッジクリアリング波形を用いて駆動されることを要求する。比較して、3つのみのそのような基本ピクセルは、図2A~2Cに図示されている方法において、DC非平衡エッジクリアリング波形を用いて駆動されることになる。図4は、上に概要を述べられた2つの方法間の蓄積された残留電荷の比較を図示している。曲線412は、図2A~2Cに図示されている方法を使用して蓄積された残留電荷であり、曲線410は、図1Aおよび図1Bに図示されている方法を使用して蓄積された残留電荷である。リセットされるピクセルの残留電荷をクラスタ化することによって蓄積がディスプレイにおいて事実上低減させられ得ることが、明確に示されている。また、残留電荷の蓄積が低減させられるにつれて、残留電荷に起因してディスプレイの上に誘発されるストレスも、同様に低減させられ、これは、ディスプレイ耐久性およびその性能を向上させる。さらに、特に高分解能のディスプレイに対してリセットのためにディスプレイピクセルをクラスタ化することによって、この駆動構成は、リセットまたは更新の有効性を向上させ、電力消費を低下させることができる。この構成において、第2の波形(例えば、エッジクリアリング波形)を要求する基本ディスプレイピクセルの数は、(n×2)+2以下であり、nは、同じ数値で指定されている、第1の波形を用いてともに駆動されているディスプレイピクセルの数である。例えば、2つのディスプレイピクセルが第1の波形を用いてともに駆動されているとき、6つ以下の基本ディスプレイピクセルが、エッジクリアリング波形を用いて駆動される。3つのディスプレイピクセルが第1の波形を用いてともに駆動されているとき、8つ以下の基本ディスプレイピクセルが、エッジクリアリング波形を用いて駆動される。
【0057】
実践において、クリアリングまたはリセットされることになるディスプレイピクセルのクラスタ化は、駆動の有効性をさらに向上させ、蓄積される残留電荷を低減させるような種々の形態および方式をとり得る。図3A~3Jは、使用され得るいくつかの例示的構成を図示している。例えば、図3Aおよび図3Cは、ともに駆動されている2つのディスプレイピクセルを図示しており、その結果、これらの2つのピクセルを囲む6つ以下の基本ピクセルが、エッジクリアリング波形を用いて駆動される必要がある。図3Bおよび図3Dは、ともに駆動されている3つのディスプレイピクセルを図示しており、その結果、これらの3つのピクセルを囲む8つ以下の基本ピクセルが、エッジクリアリング波形を用いて駆動される必要がある。図3E図3F、および図3Gは、ともに駆動されている3つのディスプレイピクセルを図示しており、それらは、図3Bおよび図3Dで提示された構成とは異なり、線形方式において位置付けられていないため、これらの構成は、7つの基本ディスプレイピクセルのみにエッジクリアリング波形を印加する必要があるのみである。さらに、図3Hおよび図3Jは、4つのディスプレイピクセルがクラスタ化方式においてともに駆動されている2つの構成を図示しており、これは、8つ以下の基本ピクセルがエッジクリアリング波形を要求することをもたらす。図3Iに提示されている別の実施形態において、5つのディスプレイピクセルが、1つのピクセルが4つの他のピクセルによって囲まれて中心に置かれている構成において配列されている。この構成においては、8つの基本ピクセルのみが、エッジクリアリング波形を要求する。
【0058】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上で説明される本発明の具体的実施形態において行われ得ることは、当業者には明白であろう。故に、前述の説明の全体は、限定的ではなく例証的な意味において解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4
図5
図6
【国際調査報告】