(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】貴金属系内で製造されたガラス中の結晶性ロジウム-白金欠陥の形成の最小化
(51)【国際特許分類】
C03B 5/42 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
C03B5/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513131
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021045179
(87)【国際公開番号】W WO2022046395
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリック,キャロル アン
(72)【発明者】
【氏名】デイネカ,マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラー,マーティン ハーバート
(72)【発明者】
【氏名】カヤット,ザカリヤ ラドワン
(72)【発明者】
【氏名】シーフェルバイン,スーザン リー
(57)【要約】
ガラス若しくはガラスセラミック材料又はその溶融物中のロジウム-白金欠陥の形成を最小限に抑える方法が提供される。該方法は、材料を得るための製造プロセスで使用するための白金-ロジウム合金でできた容器を提供する工程を含み、該容器と溶融物との間には界面が存在する。該方法は、界面に隣接した溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するために容器の外側又は内側に水素の十分な分圧を提供する工程を含みうる。製造プロセス中の溶融物内での局所的な熱、電気、又は組成セルの形成を最小限に抑える方法、又はそれらの影響を打ち消す方法も提供される。該方法は、溶融物に多価化合物を加える工程、清澄管にミキサを加える工程、製造プロセスに混合工程を加える工程、又は混合を増幅する工程を含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス又はガラスセラミック材料におけるロジウム-白金欠陥の形成を最小限に抑える方法において、
前記材料を得るための製造プロセスで使用するための白金-ロジウム合金でできた容器を提供する工程であって、前記容器と前記材料の溶融物との間に界面が存在する、工程、
前記界面に隣接した前記溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供する工程
を含み、ここで、
前記ロジウム-白金欠陥はロジウムが豊富であり、前記容器内の前記白金-ロジウム合金は白金が豊富である、
方法。
【請求項2】
前記ロジウム-白金欠陥が、約3μm未満の断面厚さ及び約2μmから約150μmの直径を有する、実質的に平面の幾何学形状を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ロジウム-白金欠陥が約80%のロジウム及び約20%の白金を含み、前記容器内の前記白金-ロジウム合金が約80%の白金及び約20%のロジウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内の前記酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供しない場合に、前記材料が前記ロジウム-白金欠陥を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融物が約1400℃から約1600℃の範囲の温度にある場合に、前記容器の外側の水素の分圧が前記容器の内側の水素の分圧より大きく、かつ
前記酸素の分圧が、前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内で低下する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融物が約1000℃から約1300℃の範囲の温度にある場合に、前記容器の外側の水素の分圧が前記容器の内側の水素の分圧より小さく、
前記酸素の分圧が前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内で増加する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水又は水酸化物含有化合物を前記溶融物に加えて前記容器の内側の水素の分圧を増加させる工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融物内に湿性ガスをバブリングして前記容器の内側の水素の分圧を増加させる工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって製造されるガラス又はガラスセラミック材料。
【請求項10】
前記材料が、0.1質量%超の、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン、及び酸化セリウムの組合せ、又は少なくとも0.05質量%の酸化アンチモンと酸化ヒ素との組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
製造プロセスの容器内で白金-ロジウム(PtRh)合金を使用する製造プロセス中のガラス又はガラスセラミック材料におけるロジウム-白金欠陥の形成を最小限に抑える方法であって、前記容器と前記材料の溶融物との間に界面が存在し、
前記界面に隣接した前記溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供する工程
を含み、ここで、
前記ロジウム-白金欠陥はロジウムが豊富であり、前記容器内の前記白金-ロジウム合金は白金が豊富である、
方法。
【請求項12】
前記ロジウム-白金欠陥が、約3μm未満の断面厚さ及び約2μmから約150μmの直径を有する、実質的に平面の幾何学形状を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ロジウム-白金欠陥が約80%のロジウム及び約20%の白金を含み、前記容器内の前記白金-ロジウム合金が約80%の白金及び約20%のロジウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内の前記酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供しない場合に、前記材料が前記ロジウム-白金欠陥を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年08月24日出願の米国仮特許出願第63/069194号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、貴金属系を包含する製造プロセス中のガラス欠陥の形成を最小限に抑える方法に関し、より詳細には、製造プロセス中のガラス又はガラスセラミック材料におけるロジウムが豊富な欠陥の形成を最小限に抑えることに関する。
【背景技術】
【0003】
多くのガラス材料は、溶融、清澄、供給、混合、及び/又は白金又は白金合金でできた容器の形成を含むプロセスにおいて製造される。白金又は白金合金は、高融点、強度、及び耐腐食性など、溶融ガラス(溶融物)の極限環境に耐えるために必要な特性を備えているため、溶融ガラスを保持、搬送、及び形成する容器に用いられる。白金及び白金合金などの貴金属は、概して、高温ではガラスに対して不活性であると考えられているが、容器の内部の溶融物-金属界面では酸化、還元、又は他の反応が生じる可能性があり、それらの反応は、溶融物及びそこから得られるガラス製品に欠陥生成をもたらしうる。
【0004】
ロジウムは、白金と合金化して、製造容器の強度を高め、寿命を延ばすことができる。ロジウムの欠陥は一部のガラスで以前に確認されていたが、欠陥は永続的ではなく一時的なものであるか、又は軽減スキームを正当化するのに十分な量では現れなかった。システムからロジウムを排除し、別の適切な貴金属合金を使用することは、ある特定のガラスにとっての選択肢でありうるが、その選択肢は、溶融温度がより高いガラスには一般に許容されない。
【発明の概要】
【0005】
さまざまな実施形態において、ガラス又はガラスセラミック材料におけるロジウム-白金欠陥の形成を最小限に抑える方法が提供される。該方法は、材料を得るための製造プロセスで使用するための白金-ロジウム合金でできた容器を提供する工程を含むことができ、該容器と材料の溶融物との間には界面が存在する。該方法は、界面に隣接した溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するのに十分な量で容器の内側の水素の分圧に対して容器の外側の水素の分圧を提供する工程を含むことができる。さまざまな実施形態では、ロジウム-白金欠陥はロジウムが豊富であり、容器内の白金-ロジウム合金は白金が豊富でありうる。
【0006】
幾つかの実施形態では、ロジウム-白金欠陥は約80%のロジウム及び約20%の白金を含むことができ、容器内の白金-ロジウム合金は約80%の白金及び約20%のロジウムを含むことができる。
【0007】
幾つかの実施形態では、ロジウム-白金欠陥を最小化する方法によって製造される材料が提供される。このような実施形態では、材料は、ロジウム-白金欠陥を含まないものとすることができる。
【0008】
さまざまな実施形態では、ガラス又はガラスセラミック材料内での局所的な熱、電気、又は組成セルの形成を最小限に抑える、又はそれらの影響を打ち消す方法が提供される。該方法は、製造プロセスで使用するための白金-ロジウム合金でできた容器を提供する工程を含むことができ、該容器と材料の溶融物との間には界面が存在する。該方法は、溶融物に多価化合物を加えること、製造プロセスの清澄容器内の溶融物を撹拌すること、及び清澄容器から出た直後に溶融物を撹拌することから選択される少なくとも1つの工程を含むことができる。
【0009】
幾つかの実施形態では、熱、電気、又は組成セルの形成は、ロジウム-白金欠陥の形成をもたらしうる。幾つかの実施形態では、欠陥はロジウムが豊富でありえ、容器内の白金-ロジウム合金は白金が豊富である。幾つかの実施形態では、欠陥は約80%のロジウム及び約20%の白金を含むことができ、及び容器内の白金-ロジウム合金は約80%の白金及び約20%のロジウムを含むことができる。このような実施形態では、材料は、ロジウム-白金欠陥を含まないものとすることができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、局所的な熱、電気、又は組成セルの形成を最小限に抑える方法、又はそれらの影響を打ち消す方法によって製造された材料が提供される。幾つかの実施形態では、材料は多価種を含む。幾つかの実施形態では、材料は、0.1質量%超の、酸化スズ(SnO2)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化セリウム(Ce2O3)、又はそれらの組合せを含むことができる。幾つかの実施形態では、材料は、少なくとも0.05質量%の、酸化アンチモン(Sb2O3)と酸化ヒ素(As2O3)の合計量を含むことができる。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部にはその説明から当業者には明確になり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0012】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、本明細書に開示される実施形態の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図した実施形態を提示するものである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は本開示のさまざまな実施、形態を例証しており、その説明とともに、それらの原理及び動作を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガラスシートを製造するためのダウンドロー溶融プロセスにおけるガラス供給システムの構造を示す概略図
【
図2】本明細書の実施形態による、例示的な容器の断面図
【
図3】本明細書の実施形態による、ガラス又はガラスセラミック材料中に見られる結晶性ロジウム白金欠陥の光学顕微鏡画像
【
図4】本明細書の実施形態による、ガラス又はガラスセラミック材料中に見られる結晶性ロジウム白金欠陥の光学顕微鏡画像
【
図5】本明細書の実施形態による、走査型電子顕微鏡を使用して得られる、ガラス又はガラスセラミック材料中に見られる結晶性ロジウム白金欠陥の断面画像
【
図6】本明細書の実施形態による、走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法(EDS)から得られる結晶性ロジウム白金欠陥のスペクトル
【
図7A】本明細書の実施形態による、溶融物が製造システムを通って進行する際の結晶性ロジウム-白金欠陥の形成に関与する工程をその挿入図とともに示すグラフ
【
図7B】本明細書の実施形態による、溶融物が製造システムを通って進行する際の溶融物の温度及び温度の関数としての酸素の分圧を示す、
図7Aに対応するグラフ
【
図8A】本明細書の実施形態による、容器の内部の溶融物から容器を取り囲むガス雰囲気への、容器の白金ロジウム壁を通る水素の交換を示す図
【
図8B】本明細書の実施形態による、容器を取り囲むガス雰囲気から容器の内部の溶融物への、容器の白金ロジウム壁を通る水素の交換を示す図
【
図9A】本明細書の実施形態による、製造システム内の溶融物と容器壁との界面における組成セルの形成を示す図
【
図9B】本明細書の実施形態による、製造システム内の溶融物と容器壁との界面における電気セルの形成を示す図
【
図9C】本明細書の実施形態による、製造システム内の溶融物と容器壁との界面における熱セルの形成を示す図
【
図10】本明細書の実施形態による、実験用濃度セルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面は必ずしも縮尺通りではなく、図面のある特定の特徴及びある特定の図は、明快さ及び簡潔さの目的で、縮尺において又は概略図において誇張して示される場合がある。
【0015】
これより、その例が添付の図面に示される本開示の実施形態について、詳細に説明する。可能な場合はいつでも、同一又は類似した部分についての言及には、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実施されることを必要とする、若しくは、装置には特定の向きが必要であると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームが、その工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、若しくは装置クレームが個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に記載していない場合、あるいは、工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に別段に明確に述べられていない場合、若しくは装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが記載されていない場合には、いかなる意味においても、順序又は方向が推測されることは決して意図していない。これには、次のような解釈のためのあらゆる非明示的根拠が当てはまる:ステップの配置、動作フロー、構成要素の順序、又は構成要素の方向に関する論理的事項;文法上の編成又は句読点から派生した平明な意味;及び、明細書に記載される実施形態の数又はタイプ。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量又は特性が正確ではなく、かつ、正確である必要はなく、許容誤差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に知られている他の要因を反映して、必要に応じて近似及び/又はより大きく又はより小さくてもよいことを意味する。
【0018】
本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、例えば先行詞「約」の使用によって値が近似値として表される場合、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。さらには、範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、及び他の端点とは独立してのいずれにおいても重要であることが理解されよう。幾つかの実施形態では、「約」は、互いの5%以内、又は互いの2%以内など、互いの10%以内の値を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる用語「実質的な」、「実質的に」、及びそれらの変形は、記載された特徴が値又は説明に等しいか又はほぼ等しいことを示すことが意図されている。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平坦な又はほぼ平坦な表面を示すことが意図されている。さらには、「実質的に」は、2つの値が等しいか、又はほぼ等しいことを示すことが意図されている。幾つかの実施形態では、「実質的に」は、互いの約5%以内、又は互いの約2%以内など、互いの約10%以内の値を意味する。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「容器」は、溶融チャンバ、清澄管、成形チャンバ、又はそのような容器間の任意の接続パイプを含めた、ガラス又はガラスセラミック材料を製造するための装置又はシステムに用いられる構成要素を含む。ガラス製造システムの典型的な構成要素は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,032,412号明細書に記載されている。
図1(先行技術)に示されるように、装置(10)は、矢印(14)によって示されるようにバッチ材料が導入される溶融チャンバ(12)、清澄管(finer tube)(16)、撹拌チャンバ(18)、清澄管-撹拌チャンバ接続管(20)、ボウル(22)、撹拌チャンバ-ボウル接続管(24)、下降管(26)、入口(28)、及び溶融パイプ(30)を含む。容器の多くは、白金又は白金含有合金(例えば、白金-ロジウム)などの耐火材料でできている。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「高温」とは約1400℃から約1600℃の範囲の温度を指し、「低温」とは約1000℃から約1350℃の範囲の温度を指す。
【0022】
さまざまな実施形態では、高アルカリガラスを製造するプロセスが開示される。幾つかの実施形態では、該プロセスは、他のガラス材料、ガラスセラミック、及び/又はセラミック材料の製造を含む。このようなプロセスでは、永続的かつ新しい欠陥が材料内において特定されている。欠陥は、非常に反射性が高く、典型的には直径が100ミリメートル未満であるが、研磨されたガラスでは直径2μmまで見られうる。欠陥を有するガラスは、例えば、ディスプレイにおける材料の使用、保護カバーガラス、又は基板としての使用を含めた多くの用途には許容されない。
【0023】
幾つかの実施形態では、欠陥は、結晶性ロジウム-白金(Rh/Pt)(本明細書では「cRh」とも呼ばれる)の薄いシートである。cRh欠陥は、規則的な形状(例えば、三角形、六角形)を有し、薄く、実質的に平坦な断面厚さを有する。
図3及び
図4は、ガラス又はガラスセラミック材料に見られる典型的なcRh欠陥の光学顕微鏡画像である。
図3の欠陥は、頂点間の長さが約46.50μmである、ほぼ3つの等しい辺を持つ三角形の形状を有しており、
図4の欠陥は、一方の辺から反対側の平行な辺まで横断面を横切る長さが約27.45μmである、六角形の形状を有している。
図5は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して得られる例示的なcRh欠陥の断面画像である。
図5は、cRh欠陥(200)が平坦な形状及び1μm未満の幅(欠陥の厚さ)を有することを示している。
【0024】
幾つかの実施形態では、cRh欠陥の組成は、SEMとエネルギー分散型X線分光法(EDS)の組合せを使用して決定した。
図6は、cRh欠陥の典型的な結果である。
図6のSEM-EDSスペクトルは、cRh欠陥が、ロジウムが豊富であり、他の材料中の貴金属欠陥において典型的に見られるような白金が豊富なものではないことを示している。本明細書で用いられる場合、「ロジウムが豊富」とは、欠陥が別の成分の濃度よりも高い濃度のロジウムを含むことを意味する。特に、組成は、約80%のロジウム及び約20%の白金(80Rh/20Pt)であると決定された。この結果は、白金-ロジウム容器を構成している組成と同じ組成である約80%の白金及び約20%のロジウム(80Pt/20Rh)を有する典型的な白金-ロジウム欠陥とは反対である。cRh欠陥の異なる化学的特徴は、これらのcRh欠陥と上述の典型的な金属欠陥との間の重要な差別化要因である。
【0025】
特定の科学理論に拘束されるものではないが、cRh欠陥は、
図2及び
図7Aに示されているように、溶融物中で3段階プロセスを介して生成されると考えられる。
図2は、ガラス製造プロセスに用いられる例示的な容器(100)の断面図(例えば、
図1の線2-2に沿った清澄管(16)の断面)を示している。
図2では、容器(100)は、ガス雰囲気(160)を有する筐体(180)に囲まれている。容器壁(140)の内部には、バルク溶融物(150)と、容器壁(140)に隣接する局所溶融物(170)とがある。
【0026】
図7Aでは、第1のステップは、溶融物(150)と容器壁(140)(例えば、清澄管の壁)との界面での白金及びロジウムの酸化を含み、これにより、溶融物中に溶解する酸化白金(PtO
2)及び酸化ロジウム(RhO
2)が生成される。ドットとシェーディングのマトリクスは、局所溶融物(170)中の酸化白金と酸化ロジウムの相対濃度を示している。
図7Aは、酸化物の濃度が、容器壁(140)に隣接した、温度が高いプロセスの上流の溶融物で最も高いことを示している。第2のステップは、拡散及び/又は対流による、溶解した酸化白金及び酸化ロジウムの溶融物中の他の位置への輸送を含む。第3のステップは、酸化白金及び酸化ロジウムから還元された白金及びロジウム種への還元を含む。酸化物を含む溶融物が、対応する酸化物よりも低い溶解度を有する白金及びロジウム種で溶融物が十分に過飽和になっている位置に到達すると、還元反応は結晶性ロジウム-白金(cRh)の沈殿を生じうる。
図7Aの挿入図は、溶融物中の酸化白金及び酸化ロジウムの相対濃度が、新たに沈殿したcRh欠陥の周囲の領域で枯渇していることを示している。
【0027】
図7Bは、製造プロセスにおけるその位置(x軸)の関数としての局所溶融物(170)の温度及び酸素の分圧(pO
2(溶融物))(y軸)を示している。具体的には、pO
2は、低温(通常は、溶融物が清澄管を通して処理された後である)で低下する。したがって、第1のステップの酸化反応は、局所溶融物の温度及びpO
2がそれぞれ高い(これは、溶融物中での酸化白金と酸化ロジウムの溶解度を上昇させる条件でもある)、製造プロセスの上流で発生しやすい。対照的に、第3のステップは、局所溶融物の温度及びpO
2がより低い(これは、溶融物中での酸化白金と酸化ロジウムの溶解度を低下させる条件でもある)、プロセスの上流で発生しやすい。しかしながら、第1のステップと第3のステップが互いに極めて接近して発生する可能性もある。例えば、電気化学セルがPtRh壁に隣接した、酸化及び/又は還元された溶融物の局所領域を生成する場合である。
図9A~Cは、電気化学セルが、プロセス中の意図しない組成セル、電気セル、又は熱セルによって生成されうることを示している。
【0028】
前述の3段階プロセスによって形成されたcRh欠陥は、ロジウムの溶解度が局所溶融物(170)中の白金の溶解度よりもはるかに大きいことから、ロジウムが豊富である。例えば、80Pt/20Rh合金をさまざまなガラス溶融物に高温で曝露すると、溶融物は酸化白金種よりも2から10倍多い酸化ロジウムを取り込む可能性がある。その結果、このガラスがその後冷却されるか、及び/又はより低い酸素分圧(pO2)を経験し、白金及びロジウム種で過飽和になると、形成される欠陥はロジウムが豊富になる。幾つかの実施形態では、欠陥内のロジウム濃度は、その中の部分範囲の任意の組合せを含めて、約60%から約90%、又は約65%から約85%、又は約70%から約80%の範囲にある。これは、ガス経路を介して形成される欠陥とは対照的である。例えば、80Pt/20Rh合金が高温で酸素含有ガスに曝露されると、ガスはロジウム種及び白金種をソース合金中のそれらの濃度にほぼ比例して取り込む。したがって、ガスがその後冷却されるか、及び/又はより低いpO2を経験し、過飽和になると、形成される欠陥はソース合金のように白金が豊富になる。
【0029】
さまざまな実施形態では、高アルカリガラス中のcRh欠陥の形成を最小限に抑えるプロセスが提供される。幾つかの実施形態では、該プロセスは、溶融物中でのcRh欠陥の形成を防止、除去、又は最小化するために、製造プロセス中に単独で又は組み合わせて使用することができる1つ以上の工程を含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば、該プロセスは、局所溶融物中の酸素の分圧(pO2)を最小化又は最大化する工程を含む。幾つかの実施形態では、cRh欠陥は、PtRh形成のための3ステッププロセスの第1のステップにおける酸化反応を制限することによって最小限に抑えられる。幾つかの実施形態では、cRh欠陥は、第3のステップ中に溶融物中でのcRh欠陥の還元反応及び/又は沈殿を制限することによって最小化される。幾つかの実施形態では、該プロセスは、第1のステップにおいて酸化反応を制限すること、及び第3のステップにおいて還元反応及び/又は沈殿を制限することを含む。このような実施形態では、該プロセスは、第1のステップ中に局所溶融物内のpO2を最小化すること、及び第3のステップ中に局所溶融物内のpO2を最大化することを含む。
【0031】
このような実施形態では、局所溶融物(170)内のpO2は(バルク溶融物(150)内のpO2とは対照的に)、PtRh容器壁(140)に隣接した溶融物のpO2を指す。PtRh容器壁(140)は白金及び酸化ロジウムの供給源であるため、局所溶融物(170)は関連領域であり、溶解した酸化物は、製造システムを通る溶融物の層流に起因して、PtRh壁(140)の近くの溶融物(170)中では最も豊富なままである。この文脈において、「隣接」は、PtRh容器壁(140)と直接接触する溶融物、及び酸素(O2)の濃縮又は枯渇によって影響を受ける溶融物の部分を含む。例えば、容器壁(140)に隣接する局所溶融物(170)の領域は、壁から約2mm、壁から約1mm、若しくは壁から約0.1mmの離間距離内、又はそれらの距離の任意の組合せ範囲内の溶融物を含む。幾つかの実施形態では、容器壁に隣接する局所溶融物(170)は、容器壁との直接接触から容器壁から約2mmの離間までの範囲の放射状リングである。当業者には認識されるように、容器壁に隣接するとみなされる局所溶融物(170)の領域のサイズは、溶融物の幾何学形状、流れ、及び温度を含む多くの要因に応じて決まる。
【0032】
さまざまな実施形態では、水素透過は、PtRh壁に隣接する溶融物のpO2に影響を与えることによってcRh欠陥を生成するプロセスの第1及び/又は第3のステップを深刻化する。PtRh壁は水素透過性であり、したがって、水素は、局所溶融物(170)とPtRh壁(140)を取り囲むガス雰囲気(160)との間で交換することができる。さまざまな実施形態では、水素交換の方向及び程度、したがって、PtRh壁(140)に隣接する溶融物のpO2の変化の程度は、ガス雰囲気(160)の水素の分圧pH2(ガス)と局所溶融物(170)の水素の分圧pH2(溶融物)の相対値を調整することによって制御することができる。したがって、幾つかの実施形態では、局所溶融物(170)のpH2と容器を取り囲むガス雰囲気(160)のpH2との不整合は、結果的に、水素が周囲のガス雰囲気から局所溶融物に出入りすることとなる。このような実施形態では、PtRh壁に隣接する局所溶融物(170)は、次の水の反応によって指示されるように、O2が濃縮又は枯渇する:
【0033】
【0034】
例えば、溶融物と容器との界面に高い局所pH2(溶融物)が存在する場合、水素は溶融物からガス雰囲気内へと浸透し、水素の局所溶融物(170)を枯渇させる。水の反応に基づいて、局所溶融物から離れる水素のすべてのモルに対して、1/2モルの酸素が界面に残される。
【0035】
図8Aは、pH
2(ガス)がpH
2(溶融物)より低い場合、水素が局所溶融物(170)からガス雰囲気(160)へと移動し、水の反応が右にシフトするため、局所溶融物の局所pO
2の増加をもたらすことを示している。しかしながら、
図8Bでは、pH
2(ガス)がpH
2(溶融物)より高い場合に、水素はガス雰囲気(160)から局所溶融物(170)へと移動し、水の反応が左にシフトするため、溶融物の局所pO
2の低下をもたらす。pH
2(ガス)がpH
2(溶融物)と等しい場合、実質的に水素移動はなく、局所溶融物(170)のpO
2はバルク溶融物(150)のpO
2と実質的に等しくなる。
【0036】
幾つかの実施形態では、局所溶融物(170)と周囲のガス雰囲気(160)との間の水素交換は、溶融物中の含水量(β-OH)を変更することによって制御することができる。本明細書で用いられる場合、「β-OH」は、IR分光法によって測定される、ガラス中のヒドロキシル含有量の尺度である。具体的には、β-OHは材料の線形吸収係数であり、材料のIR透過スペクトルから次式を使用して計算される:β-OH=(1/X)LOG10(T1/T2)、式中、Xは試料の厚さ(mm)であり、T1は参照波長(nm)での試料の透過率であり、T2はヒドロキシル吸収波長(nm)での試料の最小透過率である。幾つかの実施形態では、例えば、pH2(溶融物)の増加は、ガラスの含水量(β-OH)を増加させることによって達成することができる。このような実施形態では、含水量は、例えば、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第8,623,776号明細書に記載されるものなど、高含水量の原材料又はバッチの添加及び/又はバルク溶融物(150)を通る湿性ガスのバブリングを含む、さまざまなプロセス変更によって増加させることができる。本明細書で用いられる場合、「湿性ガス」とは、幾らかの量の水蒸気の存在を伴ったガスを指す。このような変更は、水を溶融物に直接注入する方法を提供し、製造プロセスのさまざまな段階(プレメルトの初期又は清澄管の後半など)において適切でありうる。
【0037】
幾つかの実施形態では、pH
2(ガス)は、ガス雰囲気(160)中の%O
2及び露点を制御することによって、任意の所望の値に設定することができる。幾つかの実施形態では、高温の上流セクション(例えば、
図1の清澄管(16)又はそれより前)では、より高いpH
2(ガス)(例えば、65℃の露点まで加湿した窒素(N
2)中の1%酸素(O
2))を利用することができ、低温の下流セクション(例えば、
図1の清澄管(16)の後)では、より低いpH
2(ガス)(例えば、-30℃から-10℃の露点まで加湿した窒素(N
2)中の1%酸素(O
2))を使用することができる。幾つかの実施形態では、cRh欠陥の形成は、高いpH
2を有するガス雰囲気が、周囲空気又は-20℃前後の露点を有するN
2中1%O
2など、より低いpH
2を有するガス雰囲気に置き換えられる場合に、最小限に抑えられる。
【0038】
幾つかの実施形態では、白金-ロジウム容器の周囲のガス雰囲気は、各白金-ロジウム容器の周囲に筐体(例えば、
図2、8A、8Bの180)を提供すること、又は製造プロセス全体又はその一部の周囲に筐体を提供することによって制御される。幾つかの実施形態では、単一のガス雰囲気がPtRh系全体に供給される。このような実施形態では、ガス雰囲気(160)中の水素の分圧pH
2(ガス)が低いほど望ましい。幾つかの実施形態では、別個のガス雰囲気が、特定の白金-ロジウム容器又は該容器の一部に供給される。例えば、別個のガス雰囲気又はセグメント化された容器は、プロセスの高温上流セクションでより高いpH
2(ガス)で動作して、局所溶融物(170)の局所pO
2を低下させ、白金及びロジウムの酸化白金及び酸化ロジウムへの酸化を最小限に抑えるように構成され;かつ、プロセスの低温下流セクションでより低いpH
2(ガス)で動作して、局所溶融物(170)の局所pO
2を増加させ、酸化白金及び酸化ロジウムの還元及び/又はcRh欠陥の沈殿を最小限に抑えるように構成される。
【0039】
幾つかの実施形態では、該プロセスは、PtRh系内での電気セル、熱セル、及び組成セルの形成を制御することを含む。
図9A、9B、及び9Cに示されるように、電気セル、熱セル、及び組成セルは、白金-ロジウム合金容器壁(140)に隣接する局所溶融物(170)内にpO
2が高い領域及び低い領域を生成することができる。局所溶融物(170)内のpO
2が高い領域及び低い領域は、cRh欠陥の問題を悪化させる。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば、組成セルは清澄管内の汚泥層である。本明細書で用いられる場合、「汚泥層」とは、バルク溶融物とは異なる組成を有し、典型的には容器壁及び電極に由来する耐火材料の酸化物が豊富である、ガラスの層を指す。幾つかの実施形態では、汚泥層は、耐火れんが及び/又は電極が溶融物に連続的に溶解することによってプレメルト中に形成され、その後、撹拌チャンバの前の清澄管及び他の下流セクションへと運ばれる。例えば、
図9Aは、右側(ガラスB)の溶融物とは異なる左側(ガラスA)の溶融物の領域を示している。溶融組成物の各々は、PtRh容器壁と接触しており、該容器壁と接触している異なる溶融組成物は、局所的なアノード及びカソードを作り出す。この状況により、アノードでは局所的なpO
2が増加し、カソードでは局所的なpO
2が減少する。このような実施形態では、汚泥層は組成セルを生成しうる。
【0041】
図9Bを参照すると、意図しない接地ループが存在する場合に電気セルが形成され、PtRh容器壁に沿って局所的なアノードとカソードが生成されうる。局所アノードでは局所pO
2が増加し、カソードでは局所pO
2が減少し、白金-ロジウム沈殿の形成がもたらされうる。
図9Cは、急激な温度勾配が存在することによって熱セルが生じうることを示している。異なる温度計記号で示されるように、温度勾配は、PtRh容器壁に沿って局所的なアノードとカソードを作り出す可能性があり、その結果、アノードでは局所的なpO
2が増加し、カソードでは局所的なpO
2が減少する。組成セルと同様に、意図しない電気セル及び熱セルは、cRh欠陥の問題を悪化させる可能性があり、製造プロセスにおいて最小限に抑える必要がある。
【0042】
幾つかの実施形態では、溶融物が冷却セクションに入る前に、組成勾配を最小限に抑える混合デバイスを使用して溶融物(150)を撹拌することが重要である。幾つかの実施形態では、例えば、撹拌デバイス(例えば、バブラー又はスタティックミキサ)を清澄管の前及び/又は直後に追加して、ガラス製造プロセスの高温セクション及び低温セクションでの汚泥層及び濃縮セルの発生を最小限に抑える。
【0043】
幾つかの実施形態では、スズ、鉄などの多価種を溶融物に添加することにより、機械的プロセスの変更では排除することができない組成、電気、又は熱セルの影響を最小限に抑える。このような実施形態では、多価種は、任意の局所的なpO2(溶融物)勾配を打ち消し、その後のcRh欠陥の形成を最小限に抑える。例えば、幾つかの実施形態では、多価種は、溶融物中の水又はヒドロキシル種の分解によって引き起こされる負に帯電した酸素イオンから溶融物を緩衝することができ、該酸素イオンを分子状酸素へと変換することができる。
【0044】
図10は、小さい80Pt-20Rh箔のるつぼ(240)の底部に小さい線状のSnO
2粉末を追加することによって提供され、次に、さまざまなレベルのさまざまな多価種を含む溶融物(250)で覆われた組成セルへの多価種(220)の追加を実験するために用いられるシステム(200)を示している。研究には10種類の異なるガラス材料組成が含まれており、各組成に含まれる多価種が表1に示されている。各試料を1550℃で48時間加熱し、1250℃まで冷却し、24時間保持した後、空気中で急冷した。次いで、ガラスをcRh欠陥について検査した。
【0045】
【0046】
表1に示されるように、多価種の濃度が最も低い試料(実施例1)は最大数の金属欠陥を生成し、セリウム又はマンガンを添加した試料(実施例8、実施例10)は幾らかの欠陥を生成し、スズ又は鉄を添加した試料(実施例2、実施例5;実施例3、実施例6)は欠陥を生成しなかった。したがって、局所的なpO2勾配(るつぼの底部にあるSnO2粉末によって作り出された組成セルによって形成される)とそれに続くcRh欠陥の形成を最小限に抑えるには、スズ及び鉄の添加は非常に効果的であり、セリウム及びマンガンの添加はある程度効果的であった。実施例では、形成された濃度セルは、実施例で添加された比較的多量の酸化スズ粉末に起因して、ガラス製造プロセスで観察されたどのセルよりも深刻になる可能性が高い。したがって、より大きい生産容器では、適切な熱及び雰囲気の制御と組み合わせて、より少量の多価添加で十分でありうる。
【0047】
幾つかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック材料は、0.1質量%超の1つ以上の多価種を含む。幾つかの実施形態では、例えば、材料は0.1質量%超のSnO2を含む。幾つかの実施形態では、材料は0.1質量%超のFe2O3を含む。幾つかの実施形態では、材料は、0.2質量%超の、SnO2、Fe2O3、MnO2、及びCe2O3の合計量を含む。幾つかの実施形態では、材料は、少なくとも0.05質量%の、Sb2O3とAs2O3の合計量を含む。幾つかの実施形態では、溶融物は、Li2Oを、Al2O3よりも大きいモル量で含む。
【0048】
幾つかの実施形態では、ロジウムを含まない貴金属又は金属合金からなる1つ以上の容器(例えば、溶融チャンバ、清澄管)、又は製造システム内のすべての容器を使用してガラス又はガラスセラミック材料を製造するプロセスにおいてcRh欠陥を最小限に抑える方法が提供される。このような実施形態では、システムからのロジウムの除去と、Rhを含まない適切な貴金属合金の使用が、より高い溶融温度のガラスのために提供される。幾つかの実施形態では、溶融物(150)へのロジウムの溶解は、容器を80Pt/20Rhから100Ptに変更することによって最小化又は排除される。幾つかの実施形態では、溶融物(150)へのロジウムの溶解は、容器を80Pt/20Rhから別の貴金属(例えば、モリブデン)を含む白金合金に変更することによって最小化又は排除される。このような実施形態では、溶融物におけるcRh欠陥の形成が回避される。
【0049】
さまざまな実施形態では、ガラス又はガラスセラミック材料を製造するプロセスが提供される。幾つかの実施形態では、材料は、SiO2、Al2O3、Li2O、P2O5、ZrO2、K2O、及びNa2Oを含む。さまざまな実施形態では、cRh欠陥の形成は、溶融物と容器壁との界面に隣接した溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するのに十分な量で、pH2(溶融物)に対してpH2(ガス)を提供することを含む透過制御によって、及び/又は溶融物中の局所的な熱、電気、又は組成セルの形成を最小限に抑えることによって、最小限に抑えられるか、又は排除された。さまざまな実施形態では、材料は、1ポンド(約453.6g)あたり15未満のcRh欠陥、又は1ポンドあたり10未満のcRh欠陥、又は1ポンドあたり5未満のcRh欠陥、又は1ポンドあたり1未満のcRh欠陥を含む。
【0050】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に対してさまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入ることを条件として、そのような修正及び変形にも及ぶことが意図されている。
【0051】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0052】
実施形態1
ガラス又はガラスセラミック材料におけるロジウム-白金欠陥の形成を最小限に抑える方法において、
前記材料を得るための製造プロセスで使用するための白金-ロジウム合金でできた容器を提供する工程であって、前記容器と前記材料の溶融物との間に界面が存在する、工程、
前記界面に隣接した前記溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供する工程
を含み、ここで、
前記ロジウム-白金欠陥はロジウムが豊富であり、前記容器内の前記白金-ロジウム合金は白金が豊富である、
方法。
【0053】
実施形態2
前記ロジウム-白金欠陥が、約3μm未満の断面厚さ及び約2μmから約150μmの直径を有する、実質的に平面の幾何学形状を含む、実施形態1に記載の方法。
【0054】
実施形態3
前記ロジウム-白金欠陥が約80%のロジウム及び約20%の白金を含み、前記容器内の前記白金-ロジウム合金が約80%の白金及び約20%のロジウムを含む、実施形態2に記載の方法。
【0055】
実施形態4
前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内の前記酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供しない場合に、前記材料が前記ロジウム-白金欠陥を含む、実施形態3に記載の方法。
【0056】
実施形態5
実施形態1に記載の方法であって、前記溶融物が約1400℃から約1600℃の範囲の温度にある場合に、前記容器の外側の水素の分圧が前記容器の内側の水素の分圧より大きく、かつ
前記酸素の分圧が前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内で低下する、
実施形態1に記載の方法。
【0057】
実施形態6
前記溶融物が約1000℃から約1300℃の範囲の温度にある場合に、前記容器の外側の水素の分圧が前記容器の内側の水素の分圧より小さく、かつ
前記酸素の分圧が前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内で増加する、
実施形態1に記載の方法。
【0058】
実施形態7
水又は水酸化物含有化合物を前記溶融物に加えて前記容器の内側の水素の分圧を増加させる工程を含む、実施形態1に記載の方法。
【0059】
実施形態8
前記溶融物内に湿性ガスをバブリングして前記容器の内側の水素の分圧を増加させる工程を含む、実施形態1に記載の方法。
【0060】
実施形態9
実施形態1に記載の方法によって製造されるガラス又はガラスセラミック材料。
【0061】
実施形態10
前記材料が、0.1質量%超の、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン、及び酸化セリウムの組合せ、又は少なくとも0.05質量%の酸化アンチモンと酸化ヒ素との組合せを含む、実施形態9に記載の方法。
【0062】
実施形態11
ガラス又はガラスセラミック材料内での局所的な熱、電気、又は組成セルの形成を最小限に抑える方法、又はそれらの影響を打ち消す方法において、
前記材料を得るための製造プロセスで使用するための白金-ロジウム合金でできた容器を提供する工程であって、前記容器と前記材料の溶融物との間に界面が存在する、工程と、
前記溶融物に多価化合物を加えること、
前記製造プロセスの清澄容器の前に前記溶融物を撹拌すること、又は
前記清澄容器から出た直後に前記溶融物を撹拌すること
から選択される少なくとも1つのさらなる工程と
を含む、方法。
【0063】
実施形態12
前記熱、電気、又は組成セルの前記形成が、ロジウムが豊富な欠陥の形成をもたらす、実施形態11に記載の方法。
【0064】
実施形態13
前記ロジウムが豊富な欠陥が約3μm未満の断面厚さを有する実質的に平面の幾何学形状を含み、かつ前記ロジウムが豊富な欠陥が約2μmから約150μmの直径を含む、実施形態12に記載の方法。
【0065】
実施形態14
前記ロジウムが豊富な欠陥が約80%のロジウム及び約20%の白金を含み、前記容器内の前記白金-ロジウム合金が約80%の白金及び約20%のロジウムを含む、実施形態13に記載の方法。
【0066】
実施形態15
前記少なくとも1つのさらなる工程の不存在下で、前記材料が前記ロジウム-白金欠陥を含む、実施形態14に記載の方法。
【0067】
実施形態16
前記少なくとも1つのさらなる工程が、前記溶融物に多価化合物を加えることである、実施形態11に記載の方法。
【0068】
実施形態17
前記多価化合物がスズ、鉄、セリウム、又はマンガンを含む酸化物である、実施形態16に記載の方法。
【0069】
実施形態18
前記局所的なセルが、容器内の局所アノード及び局所カソードの形成から生じる局所的な電気セルである、実施形態11に記載の方法。
【0070】
実施形態19
前記局所的なセルが汚泥層から生じる局所的な組成セルであり、前記さらなる工程が、前記製造プロセスの清澄容器の前に前記溶融物を撹拌すること、又は前記清澄容器から出た直後に前記溶融物を撹拌することであり、かつ
前記局所的な熱セルの前記形成が、前記溶融物に多価化合物を加えることによって最小限に抑えられない、又は妨げられない、実施形態11に記載の方法。
【0071】
実施形態20
前記局所セルが局所的な熱セルであり、前記容器が清澄管である、実施形態11に記載の方法。
【0072】
実施形態21
製造プロセスの容器内で白金-ロジウム(PtRh)合金を使用する製造プロセス中のガラス又はガラスセラミック材料におけるロジウム-白金欠陥の形成を最小限に抑える方法であって、前記容器と前記材料の溶融物との間に界面が存在し、
前記界面に隣接した前記溶融物の領域内の酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供する工程
を含み、ここで、
前記ロジウム-白金欠陥はロジウムが豊富であり、前記容器内の前記白金-ロジウム合金は白金が豊富である、
方法。
【0073】
実施形態22
前記ロジウム-白金欠陥が、約3μm未満の断面厚さ及び約2μmから約150μmの直径を有する、実質的に平面の幾何学形状を含む、実施形態21に記載の方法。
【0074】
実施形態23
前記ロジウム-白金欠陥が約80%のロジウム及び約20%の白金を含み、前記容器内の前記白金-ロジウム合金が約80%の白金及び約20%のロジウムを含む、実施形態22に記載の方法。
【0075】
実施形態24
前記界面に隣接した前記溶融物の前記領域内の前記酸素の分圧を制御するのに十分な量で前記容器の内側の水素の分圧に対して前記容器の外側の水素の分圧を提供しない場合に、前記材料が前記ロジウム-白金欠陥を含む、実施形態23に記載の方法。
【符号の説明】
【0076】
10 装置
12 溶融チャンバ
16 清澄管
18 撹拌チャンバ
20 清澄管-撹拌チャンバ接続管
22 ボウル
24 撹拌チャンバ-ボウル接続管
26 下降管
28 入口
30 溶融パイプ
100 容器
140 容器壁
150 溶融物
160 ガス雰囲気
170 局所溶融物
180 筐体
220 多価種
240 るつぼ
250 溶融物
【国際調査報告】