(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】出血および血管系不安定症の予防および処置用化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20230901BHJP
A61K 38/49 20060101ALI20230901BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K38/49
A61P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513132
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021047221
(87)【国際公開番号】W WO2022046676
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520319303
【氏名又は名称】アブレキサ ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Abrexa Pharmaceuticals, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】502224803
【氏名又は名称】ザ ペン ステイト リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラフランカ,ヘスース エ
(72)【発明者】
【氏名】キッシンジャー,チャールズ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】リー,グオホン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC05
4C084DC21
4C084NA06
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZC751
4C084ZC752
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA32
4C206HA03
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA53
(57)【要約】
血栓溶解療法および抗凝固療法により、出血および血管不安定症が誘発される場合がある。本明細書で提示されるのは、特定の態様において、本明細書に開示される化合物の、それを必要とする対象への投与を含む、出血および血管不安定症を処置および/または予防する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における出血を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法であって、前記出血は、血栓溶解療法または抗凝固療法により誘発され、前記方法は、式III:
【化1】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項2】
対象における出血を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法であって、前記出血は、血管内介入療法により誘発され、前記方法は、式III:
【化2】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項3】
前記血管内介入は、機械的血栓摘出術を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
対象における浮腫を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法であって、前記浮腫は、血栓溶解療法または抗凝固療法により誘発され、前記方法は、式III:
【化3】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項5】
対象における血液脳関門を保護および/または安定化する方法であって、前記方法は、式III:
【化4】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項6】
対象における血管内皮を保護および/または安定化する方法であって、前記方法は、式III:
【化5】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項7】
前記化合物は、式IV;
【化6】
の構造もしくはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含むかまたはそれからなる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、血栓溶解療法または抗凝固療法を受ける予定であるか、受けているか、または受けた、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記対象には、出血のリスクがある、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記出血は、内部出血を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記出血は、出血性変化を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記出血は、脳内出血を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、出血体積の減少を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記血栓溶解療法は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ストレプトキナーゼ、ストレプトキナーゼ活性化因子またはウロキナーゼの投与を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ストレプトキナーゼ活性化因子は、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体は、アニストレプラーゼまたはエミナーゼである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ウロキナーゼは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子である、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子は、サルプラーゼである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記組織プラスミノーゲン活性化因子は、組換えTPAである、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記組織プラスミノーゲン活性化因子は、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)またはテネクテプラーゼ(TNKase、Metalyse)である、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記抗凝固療法は、ビタミンK拮抗薬の投与を含む、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記ビタミンK拮抗薬は、ワルファリンである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記抗凝固療法は、ヘパリン、ヘパリン誘導体または低分子ヘパリンの投与を含む、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記ヘパリン誘導体または前記低分子ヘパリンは、エノキサパリン、ダルテパリン、チンザパリンおよびダナパロイドから選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記抗凝固療法は、トロンビン阻害薬の投与を含む、請求項1から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記トロンビン阻害薬は、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、デシルジン、レピルジンおよびアンチトロンビンIIIから選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記抗凝固療法は、第Xa因子阻害薬の投与を含む、請求項1から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記第Xa因子阻害薬は、アピキサバン、フォンダパリヌクス、リバーロキサバン、エドキサバンおよびベトリキサバンから選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記対象への血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与をさらに含む、請求項1から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記対象は、ヒトである、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記対象は、血餅を有するか、または血餅を有する疑いがある、請求項1から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
請求項1から30までのいずれか1項記載の方法を実施する際に使用するための、式IIIまたは式IVの構造を有する化合物。
【請求項33】
対象における再灌流障害を処置または予防する方法であって、前記方法は、式III:
【化7】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項34】
前記化合物は、式IV;
【化8】
の構造もしくはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含むかまたはそれからなる、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記再灌流障害は、糖尿病などにおいて自然に発生する、請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
前記再灌流障害は、医学的介入の結果として発生する、請求項33から35までのいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記医学的介入は、経皮的冠動脈形成術(または血管形成術)である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記医学的介入は、一次的経皮的冠動脈形成術である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記医学的介入は、冠動脈バイパス術である、請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記医学的介入は、臓器移植である、請求項36記載の方法。
【請求項41】
移植臓器は、心臓、肝臓または腎臓を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記医学的介入と共に、前記化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を投与する、請求項36から41までのいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記医学的介入の直前、間および/または直後に、前記化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を投与する、請求項36から42までのいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
再灌流障害を処置または予防することができる第2の化合物の治療上有効な量の投与と共に、前記化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を投与する、請求項36から43までのいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記第2の化合物は、サイクロスポリンA、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記第2の化合物の投与量は、前記第2の化合物を単独で使用した場合に同等の治療効果を得るのに必要な量よりも少ない用量である、請求項44または45記載の方法。
【請求項47】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体と前記第2の化合物との併用投与に付随する1つ以上の副作用が、同等の治療効果を得るための前記第2の化合物の単独での投与に付随する副作用に比べて低減される、請求項44から46までのいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
対象における出血または再灌流障害を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法であって、前記対象は、虚血性脳卒中を有しており、前記対象に組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)を投与し、前記方法は、式III:
【化9】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の前記対象への投与を含み、ここで、R
1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R
2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF
3、OCH
3、OCF
3またはOCBr
3であり;R
3およびR
4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【請求項49】
前記化合物を、TPA投与の前、間または後に投与する、請求項48記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提供されるのは、特定の態様において、本明細書に開示される化合物の、それを必要とする対象への投与を含む、出血および血管不安定症を処置および/または予防する方法である。
【背景技術】
【0002】
血栓溶解療法および抗凝固療法は、血餅形成の予防および/または血餅の溶解もしくは破砕のために行われることが多い。しかしこのような薬剤は、出血および/または血管不安定症、例えば局所的な浮腫、血管緊張の喪失および血液脳関門機能の崩壊を誘発する副作用を有することが多い。本明細書に開示される化合物は、血栓溶解療法および抗凝固療法により誘発される出血および血管不安定症の予防および/または処置に使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象における出血および/または血管不安定症を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法であって、出血または血管不安定症は、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発され、本方法は、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量の対象への投与を含む、方法である。
【0004】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象における血管内皮を保護および/または安定化する方法であって、本方法は、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量の対象への投与を含む、方法である。
【0005】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象における血液脳関門の崩壊を予防および/または処置する方法であって、本方法は、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量の対象への投与を含む、方法である。
【0006】
いくつかの実施形態において、開示される方法のいずれかにおいて使用するための本明細書に開示される化合物は、式I、II、IIIまたはIVの化合物である。いくつかの実施形態において、かかる化合物は、式IVの構造を含む。いくつかの実施形態において、かかる化合物は、式IV;
【0007】
【0008】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面は、本技術の実施形態を説明するものであり、限定的なものではない。明確かつ容易に説明するために、図面は縮尺どおりに作成されておらず、場合によっては、特定の実施形態の理解を容易にするために様々な態様が誇張または拡大されて示されることがある。
【
図1】示された群における脳卒中の24時間(86400s)後の組織梗塞(白色)および正常組織(赤色)を示す塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色脳冠状切片の代表的な画像(各群のメジアン動物から選択)を示す図である。AおよびBは、プラセボで処置した対照動物であり、ベダーソンスコア(Bederson Score)が3および5であり、有意な梗塞体積(白色)を示す。CおよびDは、1mg/kgのJ147を血管内(iv)投与して処置した動物であり、プラセボに比べてベダーソンスコアが3および3に改善され、梗塞体積が有意に減少したことを示す。EおよびFは、10mg/kgのJ147で処置した動物であり、ベダーソンスコアが1および2に大幅に改善され、梗塞体積が大幅に減少したことを示す。GおよびHは、J147を腹腔内投与して処置した動物であり、ベダーソンスコアが2および3であり、梗塞体積が中程度に減少したことを示す。
【
図2】tPAのみで処置した動物から単離した脳の画像を示す図である。
【
図4A】tPA+J147で処置した動物 vs tPAのみで処置した動物において正の傾向を示すベダーソンスコアのグラフ(p=0.6254)を示す図である。
【
図4B】tPA+J147で処置した動物において正の傾向を示す、スキャン定量化された梗塞体積のグラフ(p=0.061)を示す図である。
【
図4C】tPA+J147で処置した動物において有意な改善を示す、定量化された出血体積のグラフ(p=0.048)を示す図である。
【
図5A】賦形剤またはJ147で処置したラットから単離した脳のTTC染色冠状切片を示す図である。赤色は、正常組織を示し、白色は、示された群における組織梗塞(白色)を示す。ラットを、2時間(7200s)の虚血に続いて再灌流に供した。
【
図5B】ベダーソンスコアを、脳卒中の72時間(259200s)後に評価した。(各群n=7~8)。記号
*は、P<0.05を示す。
【
図5C】梗塞体積を、脳卒中の72時間(259200s)後に評価した。(各群n=7~8)。記号
*は、P<0.05を示す。
【
図6A】生理食塩水、tPA+賦形剤またはtPA+J147で処置したラットから単離した脳の非染色およびTTC染色冠状切片を示す図である。示された群において、TTC染色切片の赤色は正常組織を示し、白色は組織梗塞を示す。ラットを、2時間(7200s)の虚血に続いて再灌流に供した。
【
図6B】ベダーソンスコアを、脳卒中の72時間(259200s)後に評価した(各群n=7~8)。記号
*は、P<0.05を示す。
【
図6C】梗塞体積を、脳卒中の72時間(259200s)後に評価した(各群n=7~8)。記号
*は、P<0.05を示す。
【
図6D】血液体積を、脳卒中の72時間(259200s)後に評価した(各群n=7~8)。記号
*は、P<0.05を示す。
【
図7A】示された群における、内皮バリア抗原(EBA)によるMMP-9の二重免疫蛍光染色の代表的な画像を示す図である。定量分析によれば、併用処置(tPAおよびJ147)によって、賦形剤またはtPA単独群と比較して、個々の細胞と微小血管との双方においてMMP9発現が有意に抑制されることが示された。バー=100um(10
-4m)、
*P<0.05。各群n=3匹。
【
図7B】示された群における脳内好中球浸潤(A)およびミクログリア拡大(B)の代表的な画像(上)および定量分析(下)を示す図である。バー=100um(10
-4m)、
*P<0.05。各群n=3匹。
【
図7C】示された群における脳内好中球浸潤(A)およびミクログリア拡大(B)の代表的な画像(上)および定量分析(下)を示す図である。バー=100um(10
-4m)、
*P<0.05。各群n=3匹。
【
図8】AおよびBは、脳微小血管に沈着したフィブリン(A、上)または血小板(B、上)(内皮バリア抗原[EBA]染色により示される)を示す二重免疫蛍光染色の代表的な画像を示す図である。フィブリン陽性(A、下)および血小板陽性(B、下)の血管数を、本方法に記載のとおりにカウントした。Cは、示された群におけるEBA(赤色)によるPAI-1(緑色)の二重免疫蛍光染色の代表的な画像である。PAI-1陽性の血管数を、本方法に記載のとおりにカウントした。バー=100um(10
-4m)、
*P<0.05。各群n=3匹。
【
図9A】全血中の血小板におけるP-セレクチン発現のフローサイトメトリー測定を示す図である。全血中の血小板の代表的なゲーティング戦略および示された群における血小板におけるP-セレクチン(CD62P)発現のヒストグラムである。データは、平均蛍光強度として表されている。
*P<0.05 vs 偽群。#<0.05 vs 生理食塩水またはtPA群。
【
図9B】全血中の総白血球(R2、R1に含まれるCD45陽性細胞)のフローサイトメトリー解析におけるゲーティング戦略を示す図であり、好中球(N;R3)および単球(M;R4)は、CD11bおよびRP-1(ラット顆粒球に特異的)の差次的発現により定め、示された群における血小板-好中球(CD42d+CD45+CD11b+PR1+)および単球(CD42d+CD45+CD11b+PR1-)凝集体の代表的なフローサイトメトリードットプロットも示す。血小板の好中球/単球複合体を同定するための特異的な血小板マーカーとして、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識CD42d(糖タンパク質V)mAbを使用した。定量分析によれば、併用処置によって、虚血により誘発されるおよび遅延型tPAで増強される循環血小板-好中球凝集体が有意に緩和されるが、血小板-単球凝集体は緩和されないことが示された。各群n=3ラット。
*P<0.05 vs 偽;#P<0.05 vs 生理食塩水またはtPA群。N.S;有意差なし。
【
図10A】賦形剤またはJ147で処置したラットから単離した脳のTTC染色冠状切片を示す図である。示された群において、赤色は正常組織を示し、白色は組織梗塞(白色)を示す。ラットを2時間(7200s)の虚血に供し、次いでJ147または対照を投与し、すべての場合において、TPAの投与からの再灌流を行わなかった。
【
図10B】Aに示す実験について、脳卒中の24時間(86400s)後に評価した梗塞体積(%)のグラフを示す図である。(各群n=7~8)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示される化合物は、血液脳関門を含む血管内皮を様々な障害から保護することができ、かつ出血を軽減することができる。本明細書で提示されるのは、いくつかの実施形態において、出血または血管不安定症を処置および/または予防するための化合物である。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象における出血または血管不安定症の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和または処置を含み、ここで、出血または血管不安定症は、血栓溶解療法または抗凝固療法により誘発される。
【0011】
また本明細書で提示されるのは、再灌流による組織損傷(例えば、再灌流障害)を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法である。ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)は、様々なヒト疾患に直接関与している。その中でも特に重大であるのは、急性虚血再灌流障害(IRI)の再灌流障害成分によって引き起こされるものである。IRIは、しばしば臓器損傷、組織損傷、および臓器または組織の機能不全を引き起こし、世界的に死亡や障害の主な原因となっている。IRIは多くの場合、組織への血液供給不足(虚血)およびその後のその医学的介在によるまたは自然の回復(再灌流)によって引き起こされる。IRI(すなわち、再灌流障害)の再灌流成分は、虚血の影響を受けた組織や臓器への損傷の最大で50%に関与すると推定される。虚血組織の再灌流は、しばしばそのような組織の細胞およびそのような細胞中のミトコンドリアの再酸素化の結果による損傷を引き起こす。より具体的には、ミトコンドリアでは、カルシウム過多、活性酸素種(ROS)の過剰生成、および再灌流後の最初の数分間のpHの変化が生化学的変化のカスケードを引き起こし、これによりミトコンドリア膜のmPTPの長時間の開放が生じる。これにより、ミトコンドリア機能が壊滅的に崩壊し、細胞死やアポトーシスを引き起こす可能性がある。再灌流障害は、心臓、腎臓、肺、肝臓、皮膚弁、卵巣、腸、胃および膵臓を含む多くの臓器および組織に影響を与え得る。本出願人は、本明細書に開示される化合物が、再灌流障害を予防、緩和、抑制および/または処置できることを定めるものである。
【0012】
化合物
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される方法を実施する際に使用するための化合物である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、対象における出血および/または血管不安定症の予防または処置に使用するための化合物である。特定の実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物は、式I;
【0013】
【0014】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含む。式Iのいくつかの実施形態において、R2は、水素(H)またはメチルであり;R3は、メチル、フッ素置換アルキル(例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル)、または臭素置換アルキル(例えば、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル)であり;L3は、カルボニルであり;各出現時のR6は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、メトキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、カルボキシル、アリール、置換アリール、置換複素環、ハロゲン、シアノ、シアノアルキル、アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、ニトロ、アミノ、アミジノ、カルバメート、CF3、OCF3、S(O)nR7およびC(O)R8から独立して選択されるか、または隣接位置の2つのR6が一緒になって、隣接するフェニル部分と縮合した、任意に置換されたヘテロアリールまたはヘテロアルキル環を形成し;R7は、H、R9、NH2、HNR9およびNR9R10から選択され;R8は、OH、OR9、NH2、NHR9およびNR9R10から選択され;各出現時のR9およびR10は、独立して、任意に置換されたアルキルであり;nは、1または2である。
【0015】
式Iの特定の実施形態において、各出現時のR6は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヒドロキシル、アルコキシ、メトキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、カルボニル、カルボキシルまたはC(O)R8から独立して選択され;特定のかかる態様において、各出現時のR6は、メチル、メトキシ、パーフルオロメチル、パーフルオロメトキシ、ヒドロキシル、Cl、FまたはIである。式Iのいくつかの実施形態において、L3は、カルボニルであり、R3は、CF3であり、R2は、Hであり、R6は、各出現時に、存在しないかまたはHである。式Iのいくつかの実施形態において、L3は、カルボニルであり、R3は、CF3であり、R2は、Hであり、R6は、各出現時に、メチルまたはメトキシから独立して選択される。式Iのいくつかの実施形態において、L3は、カルボニルであり、R3は、CF3であり、R2は、メチルであり、R6は、各出現時に、メチルまたはメトキシから独立して選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物は、式II;
【0017】
【0018】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含み、ここで:
(i)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;
(ii)RA2、RA3、RA5およびRA6は、Hであり、RA4は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;
(iii)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、Hであり、RB4は、Hである;
(iv)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;
(v)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、Hであり、RB4は、Hである;
(vi)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである;
(vii)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである;
(viii)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、メチルであり、RB4は、Hである;
(ix)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、Hである;
(x)RA2、RA3、RA5およびRA6は、Hであり、RA4は、COOHであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;
(xi)RA2、RA4およびRA5は、Hであり、RA3およびRA6は、ヒドロキシルであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;
(xii)RA2、RA4およびRA6は、Hであり、RA3およびRA5は、ヒドロキシルであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;
(xiii)RA2、RA4およびRA5は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RA6は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Clである;
(xiv)RA3およびRA5は、Hであり、RA2およびRA6は、Fであり、RA4は、ヒドロキシルであり、RA6は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Fである;
(xv)RA2、RA4およびRA6は、Hであり、RA3は、ヒドロキシルであり、RA5は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Fである;または
(xvi)RA2、RA5およびRA6は、Hであり、RA3およびRA4は、一緒になって-O-CH2-O-であり、RA5は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Fである。
【0019】
式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2およびRB4は、メチルであり、RA4は、H、NO2、OH、メトキシ、フェノール、メチル、フッ素(F)、N(CH3)2、CHC(CN)2およびO-tert-ブチルジメチルシリル(OTBDMS)から選択される。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA3、RA5およびRA6は、Hであり、RA4は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、Hであり、RB4は、Hである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、Hである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、メチルであり、RB4は、Hである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA3、RA5およびRA6は、Hであり、RA4は、カルボキシルであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである。式IIの化合物のいくつかの実施形態において、RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、カルボキシルであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物は、式III;
【0021】
【0022】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含み、ここで、R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF3、OCH3、OCF3またはOCBr3であり;R3およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、Cl、FまたはBr)、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される。式IIIのいくつかの実施形態において、R1は、CF3(トリフルオロメチル)であり、R2は、OCH3であり、R3およびR4は、メチルである。式IIIのいくつかの実施形態において、R1は、CF3(トリフルオロメチル)であり、R2は、OCF3であり、R3およびR4は、メチルである。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物は、以下の式IVの構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含む。
【0024】
【0025】
本明細書において、式IVの構造を「J147」と称することがある。
【0026】
以下の用語は、以下に規定されるそれぞれの定義を有する。
【0027】
「アルキル」は、炭素原子を約1~約12個の範囲で含む直鎖または分岐鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)を指す。「置換アルキル」は、本明細書で規定される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するアルキルを指す。「任意に置換されたアルキル」は、アルキルまたは置換アルキルを意味する。
【0028】
「シクロアルキル」は、炭素原子を約3~約12個の範囲で含む環状環含有基を指す。「置換シクロアルキル」は、アルキル、置換アルキルおよび本明細書で規定される置換基のいずれかから選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するシクロアルキルを指す。「任意に置換されたシクロアルキル」は、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルを指す。
【0029】
「ヘテロ環」、「複素環」などの用語は、環の一部として1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含み、かつ炭素原子を1~約14個の範囲で含む環状(すなわち、環含有)基を指す。「置換された複素環」などの用語は、本明細書で規定される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するヘテロ環を指す。例示的な複素環部分には、飽和環、不飽和環、および芳香族ヘテロ原子含有環系、例えば、エポキシ、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、ピロール、ピリジン、フランなどが含まれる。「任意に置換されたヘテロ環」などの用語は、ヘテロ環または置換ヘテロ環を指す。
【0030】
「任意に置換された二環式環」への言及は、本明細書で定義される置換基を任意に含む、当技術分野で公知の二環式環構造を指す。
【0031】
「アルケニル」は、少なくとも1つ、1~3つ、1~2つまたは1つの炭素-炭素二重結合を有する2~約20個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖または環状のヒドロカルビル基を指す。「置換アルケニル」は、本明細書に記載の置換基により1つ以上、例えば1、2、3、4またはさらに5つの位置で置換されたアルケニルを指す。「任意に置換されたアルケニル」は、アルケニルまたは置換アルケニルを指す。いくつかの実施形態において、アルケニルは、エチレニルまたはプロピルレニルである。特定の実施形態において、置換アルケニルは、置換エチレニルまたは置換プロピレニルである。いくつかの実施形態において、エチレニルまたはプロピレニルは、1つ以上のCN部分で置換されている。例えば、いくつかの実施形態において、置換エチレニルは、(CN)2C=CH-を含む。
【0032】
「アリール」は、炭素原子を6個~約14個の範囲で含む芳香族基を指す。「置換アリール」は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、ハロゲン、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、シアノ、シアノアルキル、ニトロ、アミノ、アミド、アミジノ、カルボキシル、カルバメート、SO2X(ここで、Xは、H、R、NH2、NHRまたはNR2である)、SO3Y(ここで、Yは、H、NH2、NHRまたはNR2である)またはC(O)Z(ここで、Zは、OH、OR、NH2、NHRまたはNR2である)などから選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するアリール基を指す。「任意に置換されたアリール」は、アリールまたは置換アリールを指す。
【0033】
「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。「置換アラルキル」は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキルおよび本明細書で規定される置換基のいずれかから選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するアラルキルを指す。したがって、アラルキル基には、とりわけ、ベンジル、ジフェニルメチル、および1-フェニルエチル(-CH(C6H5)(CH3))が含まれる。「任意に置換されたアラルキル」は、アラルキルまたは置換アラルキルを指す。
【0034】
「ヘテロアリール」は、芳香環の一部として1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含み、典型的には炭素原子を2~約14個の範囲で含む芳香族基を指し、「置換ヘテロアリール」は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキルおよび上記で規定される置換基のいずれかから選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するヘテロアリール基を指す。
【0035】
「ヘテロアラルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、1つ以上のヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。「置換ヘテロアラルキル」は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキルおよび本明細書で規定される置換基のいずれかから選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4またはさらに5つ)の置換基をさらに有するヘテロアラルキルを指す。「任意に置換されたヘテロアラルキル」は、ヘテロアラルキルまたは置換ヘテロアラルキルを指す。
【0036】
「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0037】
「ヒドロキシル」および「ヒドロキシ」は、官能基-OHを指す。
【0038】
「アルコキシ」は、基-ORを表し、ここで、Rは、アルキルである。「置換アルコキシ」は、基-ORを表し、ここで、Rは、置換アルキルである。「任意に置換されたアルコキシ」は、アルコキシまたは置換アルコキシを指す。
【0039】
「アリールオキシ」は、基-ORを表し、ここで、Rは、アリールである。「置換アリールオキシ」は、基-ORを表し、ここで、Rは、置換アリールである。「任意に置換されたアリールオキシ」は、アリールオキシまたは置換アリールオキシを指す。
【0040】
「メルカプト」および「チオール」は、官能基-SHを指す。
【0041】
「アルキルチオ」および「チオアルコキシ」は、基-SR、-S(O)n=1~2-Rを指し、ここで、Rは、アルキルである。「置換アルキルチオ」および「置換チオアルコキシ」は、基-SR、-S(O)n=1~2-Rを指し、ここで、Rは、置換アルキルである。「任意に置換されたアルキルチオ」および「任意に置換されたチオアルコキシ」は、アルキルチオまたは置換アルキルチオを指す。
【0042】
「アリールチオ」は、基-SRを表し、ここで、Rは、アリールである。「置換アリールチオ」は、基-SRを表し、ここで、Rは、置換アリールである。「任意に置換されたアリールチオ」は、アリールチオまたは置換アリールチオを指す。
【0043】
「アミノ」は、非置換、一置換および二置換アミノ基であって、置換基-NH2を含むものを指し、「モノアルキルアミノ」は、構造-NHRを有する置換基を指し、ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキルであり、「ジアルキルアミノ」は、構造-NR2の置換基を指し、ここで、各Rは、独立して、アルキルまたは置換アルキルである。
【0044】
「アミジノ」は、基-C(=NRq)NRrRsを表し、ここで、Rq、RrおよびRsは、独立して、水素または任意に置換されたアルキルである。
【0045】
「アミド基」への言及には、構造-C(O)-NR2の置換基が包含され、ここで、各Rは、独立して、上記で規定されるH、アルキル、置換アルキル、アリールまたは置換アリールである。各RがHである場合、その置換基は、「カルバモイル」(すなわち、構造-C(O)-NH2を有する置換基)とも称される。R基のうちの1つのみがHである場合、その置換基は、「モノアルキルカルバモイル」(すなわち、構造-C(O)-NHRを有する置換基であり、ここで、Rは、上記で規定されるアルキルまたは置換アルキルである)または「アリールカルバモイル」(すなわち、構造-C(O)-NH(アリール)を有する置換基であり、ここで、アリールは、置換アリールを含めて、上記で定義されるとおりである)とも称される。R基のいずれもHでない場合、その置換基は、「ジアルキルカルバモイル」(すなわち、構造-C(O)-NR2を有する置換基であり、ここで、各Rは、独立して、上記で規定されるアルキルまたは置換アルキルである)とも称される。
【0046】
「カルバメート」への言及には、構造-O-C(O)-NR2の置換基が包含され、ここで、各Rは、独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリールまたは置換アリールである。
【0047】
「エステル基」への言及には、構造-O-C(O)-ORの置換基が包含され、ここで、各Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリールまたは置換アリールである。
【0048】
「アシル」は、構造-C(O)Rを有する基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義される水素、アルキル、アリールなどである。「置換アシル」は、置換基Rが本明細書で定義されるように置換されたアシルを指す。「任意に置換されたアシル」は、アシルおよび置換アシルを指す。
【0049】
「シアノアルキル」は、基-R≡Nを指し、ここで、Rは、任意に置換されたアルキレニルである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「置換」は、ある原子または原子団を別の原子または原子団(すなわち、置換基)で置き換えたものを表し、すべてのレベルの置換、例えば、一置換、二置換、三置換、四置換、五置換またはさらには六置換が化学的に許される場合には、かかる置換が含まれる。置換は、化学的に利用可能な任意の位置および任意の原子で生じることができ、例えば、炭素および任意のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素または硫黄上での1つ以上の置換が可能である。例えば、置換された部分には、そこに含まれる1つ以上の水素原子または炭素原子への1つ以上の結合が、1つ以上の非水素原子および/または非炭素原子への結合によって置き換えられたものが含まれる。置換には、当技術分野で周知のとおり、F、Cl、BrおよびIなどのハロゲン原子;ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基およびエステル基などの基における酸素原子;チオール基、アルキルおよびアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基およびスルホキシド基などの基における硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミドおよびエナミンなどの基における窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基およびトリアリールシリル基などの基におけるケイ素原子;および他の基におけるヘテロ原子を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
置換基の非限定的な例としては、ハロゲン、-OH、-NH2、-NO2、-CN、-C(O)OH、-C(S)OH、-C(O)NH2、-C(S)NH2、-S(O)2NH2、-NHC(O)NH2、-NHC(S)NH2、-NHS(O)2NH2、-C(NH)NH2、-OR、-SR、-OC(O)R、-OC(S)R、-C(O)R、-C(S)R、-C(O)OR、-C(S)OR、-S(O)R、-S(O)2R、-C(O)NHR、-C(S)NHR、-C(O)NRR、-C(S)NRR、-S(O)2NHR、-S(O)2NRR、-C(NR)NHR、-C(NH)NRR、-NHC(O)R、-NHC(S)R、-NRC(O)R、-NRC(S)R、-NHS(O)2R、-NRS(O)2R、-NHC(O)NHR、-NHC(S)NHR、-NRC(O)NH2、-NRC(S)NH2、-NRC(O)NHR、-NRC(S)NHR、-NHC(O)NRR、-NHC(S)NRR、-NRC(O)NRR、-NRC(S)NRR、-NHS(O)2NHR、-NRS(O)2NH2、-NRS(O)2NHR、-NHS(O)2NRR、-NRS(O)2NRR、-NHR、-NRRが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ここで、各出現時のRは、独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである。また、以下の化学官能基:-O-、-S-、-NR-、-O-C(O)-、-O-C(O)-O-、-O-C(O)-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-S-C(O)-、-S-C(O)-O-、-S-C(O)-NR-、-S(O)-、-S(O)2-、-O-S(O)2-、-O-S(O)2-O、-O-S(O)2-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-O-C(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-O-C(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-O-C(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)-NR-、-S-S(O)2-、-S-S(O)2-O-、-S-S(O)2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)2-、-NR-O-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)2-O-、-O-NR-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)2-、-O-P(O)R2-、-S-P(O)R2-、または-NRP(O)R2-の1つ以上を含む任意に置換されたヒドロカルビル部分による置換も企図され、ここで、各出現時のRは、独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである。
【0052】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物としては、本明細書に開示される化合物の立体異性体(例えば、エナンチオマーおよびジアステレオマー)、構造異性体、互変異性体、配座異性体および幾何異性体を含む異性体が挙げられる。
【0053】
例示的な構造異性体としては、例えば、1-プロピル置換対2-プロピル置換などの、本明細書に開示される化合物を形成する官能基の結合性の相違により生じる異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。構造異性体と互変異性との組み合わせには、さらに、二重結合および置換基の移動を伴う結合の再配列が含まれる。例えば、互変異性と1-3多面的水素シフトとの組み合わせにより、構造異性が生じ得る。
【0054】
例示的な配座異性体としては、当技術分野で周知のとおり、例えば、ある結合を軸とする回転によって生じるが、ただし、分離可能な異性体が生じる程度に回転が妨げられるものとする異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
例示的な幾何異性体は、当技術分野で周知のとおり、例えば「E」または「Z」配置の二重結合を含む。
【0056】
本明細書に開示される化合物は、適切な合成方法を用いて容易に製造することができる。例えば、3-メトキシベンズアルデヒドは、標準的なヒドラゾン製造条件(例えば、反応時間を短縮するためにマイクロ波で加熱)を採用して、メタノール中で2,4-ジメチルフェニルヒドラジンと縮合させることができる。次に、遊離NHをTFAA(トリフルオロ酢酸無水物)+触媒的(0.1%)量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)、THE(テトラヒドロフラン)またはDCM(ジクロロメタン)でアシル化する。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物は、薬学的に許容される塩の形態で提供される。本明細書に記載の使用のための化合物は、適切な方法を用いて任意の適切な無機塩または有機塩との錯形成が可能である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の使用のための化合物の塩は、該化合物を適切な有機または無機の酸または塩基と反応させることによって製造される。本明細書に記載の使用が企図される有機塩の非限定的な例としては、メタンスルホネート、アセテート、オキサレート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、バレレート、オレエート、ラウレート、ボレート、ベンゾエート、ラクテート、ホスフェート、トルエンスルホネート(トシレート)、シトレート、マレート、マレエート、フマレート、サクシネート、タルトレート、ナプシレート、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ベンゼンスルホネート、ブチレート、カンホレート、カンファースルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ウンデカノエート、2-ヒドロキシエタンスルホネート、エタンスルホネートなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、無機塩は、スルフェート、ビスルフェート、ヘミスルフェート、ヒドロクロリド、クロレート、パークロレート、ヒドロブロミド、ヒドロヨージドなど、無機酸から形成することができる。塩基塩の非限定的な例としては、アンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルカミン、フェニルエチルアミンなどの有機塩基との塩;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。
【0058】
したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、式I、II、IIIまたはIVの化合物の治療上有効な量の対象への投与を含む。
【0059】
出血および血管系不安定症
本明細書で提示されるのは、出血および血管不安定症を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法である。いくつかの実施形態において、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される出血および/または血管系不安定症を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法が本明細書に記載される。
【0060】
出血
特定の実施形態において、方法は、出血の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含み、該方法は、特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量の、出血を有する、その疑いがあるまたはそのリスクがある対象への投与を含む。
【0061】
特定の実施形態において、出血は、内部出血または外部出血である。いくつかの実施形態において、出血は、内部出血(例えば、内出血)であり、例えば、出血は視認不可能であり、かつ/または対象の体内に位置し、かつ/もしくは含まれる。内部出血の非限定的な例としては、胸部、腹部、頸部、腹膜後隙、骨盤、子宮、肝臓、心臓、四肢、頭部、脳、それらの組織などへの内出血が挙げられる。いくつかの実施形態において、出血は、心筋出血を含むかまたはそれからなる。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、心筋出血の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含む。いくつかの実施形態において、出血は、大脳出血または脳出血を含むかまたはそれからなる。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、大脳または脳出血の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含む。いくつかの実施形態において、出血は、脳内出血または頭蓋内出血を含む。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、脳内出血または頭蓋内出血の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含む。
【0062】
内部出血は、1つ以上の障害、合併症または病態に起因することがあり、その非限定的な例としては、例えば、高血圧、動脈瘤、静脈瘤、潰瘍(例えば、消化性潰瘍)、子宮外妊娠、手術、医療処置、外傷、それらの組み合わせなどによる血管破裂が挙げられる。特定の実施形態において、内部出血は、がん、血液疾患、ビタミンK欠乏症、またはウイルスによる出血熱に起因するか、またはそれに関連するものである。
【0063】
いくつかの実施形態において、出血は、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される。特定の実施形態において、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される出血は、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大する出血である。本明細書に開示される化合物は、血栓溶解療法、抗凝固療法、抗血小板薬、抗炎症薬または血管内介入療法により(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大する出血を予防し、抑制し、緩和し、その程度を軽減し、またはその発症を遅らせることができる。特定の実施形態において、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される出血は、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法の投与中または投与後に観察され、診断され、または存在が疑われる出血である。特定の実施形態において、抗血小板薬または抗炎症薬により誘発される出血は、抗血小板薬または抗炎症薬の投与中または投与後に観察され、診断され、または存在が疑われる出血である。出血は、適切な方法によって診断することができ、その非限定的な例としては、CTスキャン、MRIスキャンまたは血管造影が挙げられる。
【0064】
出血は、急性出血または慢性出血であってよい。出血は、軽度、中等度または重度であってよい。いくつかの実施形態において、出血は、クラスI、II、IIIまたはIVの出血である。いくつかの実施形態において、クラスIの出血は、部分的には、全血液体積の≦15%未満である血液損失の推定値によって分類される。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、出血の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含み、出血は、クラスIの出血であるか、または出血による推定血液損失量は、全血液体積の15%以下、10%以下、5%以下、2%以下または1%以下である。
【0065】
特定の実施形態において、出血を抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法は、出血体積の減少を含む。本明細書に記載の方法により、出血体積を少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%減少させることができる。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法により、出血体積を1%~100%、1%~75%、1%~50%、1%~25%、1%~20%、1%~10%または1%~5%減少させることができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、出血は、出血転化を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、出血転化は、脳内の出血転化(例えば、大脳出血転化)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、出血を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法は、出血転化を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法を含む。いくつかの実施形態において、方法は、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される出血転化の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含む。
【0067】
血管不安定症
本明細書で提示されるのは、血管不安定症を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置する方法であり、該方法は、特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量の、血管不安定症を有する、その疑いがあるまたはそのリスクがある対象への投与を含む。いくつかの実施形態において、血管不安定症を予防する方法は、血管内皮および/または血液脳関門の、損傷または障害からの保護を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、血管不安定症は、内皮機能不全を含み、その非限定的な例としては、血管緊張の低減または喪失、止血の低減または喪失、浮腫(例えば、局所的な腫脹)、血管内皮の損傷および/または機能不全、血液脳関門の損傷または崩壊など、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、血管不安定症は、浮腫を含む。いくつかの実施形態において、浮腫は、大脳浮腫である。いくつかの実施形態において、浮腫は、血液脳関門の腫脹を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、血管不安定症は、再灌流障害を含む。いくつかの実施形態において、再灌流障害は、再灌流による血管内皮への損傷またはその障害を含む。いくつかの実施形態において、血管不安定症は、再灌流による血管内皮の障害を含む(例えば、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される再灌流;例えば、再灌流障害)。いくつかの実施形態において、血管不安定症は、血液脳関門の損傷および/または機能不全を含む。血液脳関門への損傷および/または機能不全は、再灌流に起因するものであってもよい。いくつかの実施形態において、血管不安定症を処置する方法は、再灌流中もしくは再灌流後の、ならびに/または血栓溶解療法、抗凝固療法および/もしくは血管内介入療法の投与中もしくは投与後の血管内皮の安定化および/または血液脳関門の安定化を含む。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、血液脳関門への損傷および/または機能不全の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和および/または処置を含み、損傷または機能不全は、血栓溶解療法、抗凝固療法および/または血管内介入療法により誘発される。
【0070】
血栓溶解療法、抗凝固療法および血管内療法
特定の実施形態において、出血または血管不安定症は、血栓溶解療法、抗凝固療法、抗血小板薬、抗炎症薬または血管内介入のうちの1つ以上の投与(例えば、自己投与を含む)により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大し、ここで、前述の療法は、単独で投与することも、組み合わせて投与することもできる。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象における出血または血管不安定症の予防、そのリスクの低減、抑制、軽減、緩和または処置を含み、出血または血管不安定症は、血栓溶解療法、抗凝固療法、抗血小板薬、抗炎症薬または血管内介入のうちの1つ以上の投与(例えば、自己投与を含む)により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大し、該方法は、本明細書に記載の化合物の治療上有効な量の対象への投与を含む。
【0071】
特定の実施形態において、出血または血管不安定症は、血栓溶解療法(例えば、対象に投与される血栓溶解療法)により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大する。したがって、特定の実施形態において、方法は、対象への血栓溶解療法の投与前、投与中または投与後の、本明細書に開示される化合物の対象への投与を含む。血栓溶解療法は、しばしば、血餅を破壊または溶解するために対象に投与される薬剤または療法を含む。血栓溶解療法の非限定的な例としては、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ストレプトキナーゼ、ストレプトキナーゼ活性化因子またはウロキナーゼの対象への投与が挙げられる。血栓溶解薬は、組換え発現タンパク質を含むことができる。TPAの非限定的な例としては、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)またはテネクテプラーゼ(TNKase、Metalyse)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ストレプトキナーゼ活性化因子は、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体である。アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体の非限定的な例としては、アニストレプラーゼまたはエミナーゼが挙げられる。いくつかの実施形態において、ウロキナーゼは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子である。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子の一例としては、サルプラーゼが挙げられる。
【0072】
特定の実施形態において、出血または血管不安定症は、抗凝固療法(例えば、対象に投与される抗凝固薬)により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大する。したがって、特定の実施形態において、方法は、対象への抗凝固療法の投与前、投与中または投与後の、本明細書に開示される化合物の対象への投与を含む。抗凝固療法とは、しばしば、血餅形成を抑制または予防するために対象に投与される薬剤または療法である。抗凝固療法の非限定的な例としては、ビタミンK拮抗薬、トロンビン阻害薬、第Xa因子阻害薬、ヘパリン、低分子ヘパリン、それらの誘導体などの投与が挙げられる。ビタミンK拮抗薬の非限定的な例としては、ワルファリン、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、エチルビスクマセテート、フェンプロクモン、アトロメンチン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオンおよびチオクロマロールが挙げられる。トロンビン阻害薬の非限定的な例としては、ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、エフェガトラン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デシルジン、レピルジンおよびアンチトロンビンIIIが挙げられる。第Xa因子阻害薬の非限定的な例としては、低分子ヘパリン(例えば、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パマパリン、レビパリンおよびチンザパリン)、アピキサバン(Eliquis)、ベトリキサバン、ダレキサバン、オタミキサバン、フォンダパリヌクス、リバーロキサバン(Xarelto)、エドキサバン(Lixiana)、エトミキサン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクスおよびヘパリノイド(例えば、ダナパリオイド、デルマタン硫酸およびスロデキシド)が挙げられる。ヘパリン、低分子ヘパリンおよびヘパリン誘導体の非限定的な例としては、エノキサパリン、ダルテパリン、チンザパリンおよびダナパロイドが挙げられる。抗凝固薬の他の非限定的な例としては、ダビガトラン(Pradaxa)、バトロキソビン、ヘメンチン、クロピドグレル、チクロピジン、プラスグレル、チカグレロールおよびアスピリンが挙げられる。
【0073】
特定の実施形態において、出血または血管不安定症は、抗血小板薬により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大し、抗血小板薬の非限定的な例としては、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤(例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチド、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバンおよびチロフィバン)、ADP受容体/P2Y12阻害剤(例えば、チエノピリジン(例えば、クロピドグレル、プラスグレルおよびチクロピジン)およびヌクレオチド/ヌクレオシド類似体(例えば、カングレロール、エリノグレルおよびチカグレロール))、プロスタグランジン類似体(PGI2)(例えば、ベラプロスト、イロプロスト、プロスタサイクリンおよびトレプロスチニル)、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤(例えば、アセチルサリチル酸/アスピリン、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、インドブフェンおよびトリフルサール)、トロンボキサン阻害剤(例えば、トロンボキサン合成酵素阻害剤(例えば、ジピリダモール、ピコタミドおよびテルボグレル)、受容体拮抗剤(例えば、テルボグレルおよびテルトロバン))、クロリクロメン、ジタゾールおよびボラパクサールが挙げられる。
【0074】
特定の実施形態において、出血または血管不安定症は、抗炎症薬により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大し、抗炎症薬の非限定的な例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、セレコキシブ、メフェナム酸、エトリコキシブおよびインドメタシンが挙げられる。
【0075】
特定の実施形態において、出血または血管不安定症は、血管内介入療法により誘発され、(直接的または間接的に)引き起こされ、悪化し、重篤化し、激化し、かつ/または拡大する。血管内介入療法の非限定的な例としては、機械的血栓摘出術が挙げられる。
【0076】
対象
「対象」という用語は、哺乳動物を指す。任意の適切な哺乳動物を、本明細書に記載の方法または組成物で処置することができる。哺乳動物の非限定的な例としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカクなど)、ペット(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)および実験用動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)が挙げられる。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト霊長類またはヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。対象は、任意の年齢または任意の発達段階(例えば、成人、青年、児童、幼児または子宮内の哺乳動物)であってよい。対象は、雄性であっても雌性であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、対象は、出血および血管不安定症を有する、その疑いがあるまたはそのリスクがある。特定の実施形態において、出血または血管不安定症を有するリスクがある対象は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与中である、投与済みである、またはこれから投与する対象である。特定の実施形態において、出血または血管不安定症を有するリスクがある対象は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)の投与中である、投与済みである、またはこれから投与する対象である。特定の実施形態において、対象は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法を受ける予定であるか、またはまさに受けようとしているところである。
【0078】
いくつかの実施形態において、対象は、血餅(すなわち、血栓)または血栓症(例えば、血餅による血管の閉塞)を有するか、またはその疑いがある。いくつかの実施形態において、対象は、静脈血栓症または深部静脈血栓症を有するか、またはその疑いがある。いくつかの実施形態において、対象は、血餅または血栓症を有するか、またはその疑いがあり、血栓溶解療法(例えば、TPA)の投与中であるか、または投与予定である。いくつかの実施形態において、対象は、静脈血栓症または深部静脈血栓症を有するか、またはその疑いがあり、血栓溶解療法の投与中であるか、または投与予定である。
【0079】
いくつかの実施形態において、対象は、虚血性脳卒中を有するか、またはその疑いがあり、血栓溶解療法の投与中であるか、または投与予定である。いくつかの実施形態において、対象は、虚血性脳卒中を有するか、またはその疑いがあり、TPAの投与中であるか、または投与予定である。
【0080】
医薬組成物
いくつかの実施形態において、組成物または医薬組成物は、本明細書に開示される化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物または医薬組成物は、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量を含む。いくつかの実施形態において、組成物または医薬組成物は、本明細書に開示される化合物を、1μg~1000mg、1μg~100mg、または10μg~100μgの範囲の量で含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の方法を実施する際に使用するための本明細書に開示される化合物を含む、医薬組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示される化合物、および薬学的に許容される補形薬、希釈液、添加剤または担体を含む。
【0081】
医薬組成物は、適切な投与経路用に処方することができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口、皮下(s.c.)、皮内、筋肉内、腹腔内および/または静脈内(i.v.)投与用に処方される。特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、該組成物のpH、オスモル濃度、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着性または浸透性を変更、維持または保存するための製剤材料を含む。特定の実施形態において、適切な製剤材料としては、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、シトレート、ホスフェート(例えば、リン酸緩衝食塩水)または適切な有機酸);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤、香料および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成性対イオン(ナトリウムなど);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);希釈液;補形薬および/または補助薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、医薬組成物は、“Remington: The Science And Practice Of Pharmacy” Mack Publishing Co., Easton, PA, 19thEdition, (1995)(以下、Remington '95という)または“Remington: The Science And Practice Of Pharmacy”, Pharmaceutical Press, Easton, PA, 22nd Edition, (2013)(以下、Remington 2013という)に列挙されているような任意の適切な担体、製剤もしくは成分など、またはそれらの組み合わせを含むことができ、前述の文献の内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0082】
特定の実施形態において、医薬組成物は、適切な補形薬を含み、その非限定的な例としては、付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、結合剤、充填剤、単糖類、二糖類、他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、コーティング(例えば、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、合成ポリマー、シェラック、ゼラチン、トウモロコシタンパク質ゼイン、腸溶剤または他の多糖類)、デンプン(例えば、ジャガイモ、トウモロコシまたは小麦デンプン)、シリカ、着色料、崩壊剤、香料、潤滑剤、防腐剤、吸収剤、甘味料、賦形剤、懸濁剤、界面活性剤および/または湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル)、安定性向上剤(スクロースまたはソルビトールなど)および張性向上剤(アルカリ金属ハロゲン化物、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなど)および/またはRemington '95もしくはRemington 2013に開示される任意の補形薬が挙げられる。本明細書で使用される場合の「結合剤」という用語は、医薬混合物を結合した状態に保つのを補助する化合物または成分を指す。医薬製剤の製造に適しており、医薬錠剤、カプセル剤および顆粒剤の調製にしばしば使用される結合剤は、当業者に知られている。
【0083】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される適切な添加剤および/または担体を含む。適切な添加剤の非限定的な例としては、適切なpH調整剤、無痛化薬、緩衝剤、含硫黄還元剤、抗酸化剤などが挙げられる。含硫黄還元剤の非限定的な例としては、スルフヒドリル基を有するもの(例えば、チオール)、例えば、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、ならびにC1~C7チオアルカン酸が挙げられる。抗酸化剤の非限定的な例としては、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸およびその塩、パルミチン酸L-アスコルビル、ステアリン酸L-アスコルビル、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミルおよび没食子酸プロピル、ならびにキレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウムおよびメタリン酸ナトリウムが挙げられる。さらに、希釈剤、添加剤および補形薬は、他の一般的に使用される成分、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび重炭酸ナトリウムなどの無機塩、ならびにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよび酢酸ナトリウムなどの有機塩を含むことができる。
【0084】
本明細書で使用される医薬組成物は、長期間、例えば数ヶ月または数年のオーダーで安定であることができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の適切な防腐剤を含む。防腐剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、過酸化水素などおよび/またはそれらの組み合わせが挙げられる。防腐剤は、第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セパゾニウム、塩化セチルピリジニウムまたは臭化ドミフェン(BRADOSOL(登録商標))を含むことができる。防腐剤は、チメロサールなどのチオサリチル酸のアルキル水銀塩、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀を含むことができる。防腐剤は、メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのパラベンを含むことができる。防腐剤は、クロロブタノール、ベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールなどのアルコールを含むことができる。防腐剤は、クロロヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアニドのようなビグアニド誘導体を含むことができる。防腐剤は、過ホウ酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素および/またはソルビン酸を含むことができる。防腐剤は、PURITE(登録商標)の商品名で知られており市販されているような、安定化オキシクロロ錯体を含むことができる。防腐剤は、Henkel KGaAからPOLYQUART(登録商標)の商品名で知られており市販されているような、ポリグリコール-ポリアミン縮合樹脂を含むことができる。防腐剤は、安定化過酸化水素を含むことができる。防腐剤は、塩化ベンザルコニウムであってよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、防腐剤を含まない。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物、医薬組成物または化合物は、夾雑物(例えば、血球、血小板、ポリペプチド、鉱物、血液由来化合物または化学物質、ウイルス、細菌、その他の病原体、毒素など)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物、医薬組成物または化合物は、血清および血清夾雑物(例えば、血清タンパク質、血清脂質、血清炭水化物、血清抗原など)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物、医薬組成物または化合物は、病原体(例えば、ウイルス、寄生虫または細菌)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物、医薬組成物または化合物は、エンドトキシンを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物、医薬組成物または化合物は、無菌である。特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物または医薬組成物は、式I、II、IIIまたはIVの化合物を含む。
【0086】
本明細書に記載の医薬組成物は、それらが採用される療法に従って、任意の適切な形態および/または量で対象に投与されるように構成されていてよい。例えば、(例えば、注射または注入による)非経口投与用に構成された医薬組成物は、油性または水性賦形剤中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとることができ、それは、処方剤、補形薬、添加剤および/または希釈剤、例えば、水性もしくは非水性溶媒、補助溶媒、懸濁液、防腐剤、安定化剤およびまたは分散剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、非経口投与に適した医薬組成物は、1つ以上の補形薬を含むことができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥粉末の形態に凍結乾燥される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、適切な医薬溶媒(例えば、水、生理食塩水、等張緩衝液(例えば、PBS)、DMSO、それらの組み合わせなど)との再構成に適した乾燥粉末の形態に凍結乾燥される。特定の実施形態において、凍結乾燥された医薬組成物の再構成形態は、哺乳動物への非経口投与(例えば、静脈内投与)に適している。
【0087】
特定の実施形態において、医薬組成物は、経口投与用に構成されており、錠剤、マイクロ錠剤、ミニ錠剤、マイクロペレット剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤(例えば、マイクロ錠剤、マイクロペレット剤、粉末剤または顆粒剤を充填したカプセル剤)、乳剤、溶液剤などまたはそれらの組み合わせとして処方することができる。経口投与用に構成された医薬組成物は、有効成分の放出を遅延または持続させるのに適したコーティングを含むことができ、その非限定的な例としては、腸溶性コーティング、例えば、脂肪酸、ワックス、シェラック、合成樹脂、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(ヒプロメロースアセテートサクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートトリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、植物繊維などおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、局所投与用に構成されていてよく、結合剤および/または潤滑剤、ポリグリコール、ゼラチン、ココアバターまたは他の適切なワックスもしくは脂肪のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、総じて局所的な薬剤投与に適した局所用担体を含み、かつ当業者に知られている任意の適切な材料を含む局所用製剤に組み込まれる。特定の実施形態において、医薬組成物の局所用製剤は、局所パッチを用いた化合物の投与用に処方される。
【0089】
特定の実施形態において、最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形式および所望の投与量に応じて当業者によって決定される(例えば、上記のRemington '95またはRemington 2013参照)。医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ化、賦形、乳化、カプセル化、封入または打錠工程(例えば、Remington '95またはRemington 2013に記載の方法)を含む、任意の適切な方法によって製造することができる。
【0090】
投与経路
本明細書に開示される組成物、医薬組成物または化合物を対象に投与する適切な方法を使用することができる。本明細書に開示される化合物または本明細書に開示される組成物の投与に適した製剤および/または投与経路を使用することができる(例えば、参照により内容全体を本明細書に援用するものとするFingl et al. 1975,“The Pharmacological Basis of Therapeutics”参照)。適切な製剤および/または投与経路は、例えば、対象のリスク、年齢および/または病態を考慮して医療専門家(例えば、医師)により選択することができる。投与経路の非限定的な例としては、局所的もしくは局部的(例えば、経皮的または皮膚的(例えば、皮膚上または表皮上)、眼内または眼上、経鼻的、経粘膜的、耳中、耳内部(例えば、鼓膜の後部))、経腸的(例えば、胃腸管を通じた送達、例えば、経口的(例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、乳剤、ロゼンジまたはそれらの組み合わせとして)、舌下、胃栄養チューブによる、直腸的など)、非経口投与による(例えば、非経口的、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、腔内、頭蓋内、関節内、関節腔内、心内(心臓内)、海綿体内注射、病巣内(皮膚損傷内)、骨内注入(骨髄内)、鞘内(脊柱管内)、子宮内、膣内、膀胱内注入、硝子体内)などまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物または本明細書に記載の医薬組成物は、適切な方法を用いて肺、気管支通路、気管、食道、静脈洞または鼻腔に投与され、その非限定的な例としては、鼻内投与、気管内滴注および経口吸入投与(例えば、吸入器、例えば単一/複数用量乾燥粉末吸入器、ネブライザーなどの使用による)が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物または本明細書に開示される医薬組成物は、対象に提供される。例えば、対象に提供される組成物は、自己投与のために、または他者(例えば、非医療専門家)による対象への投与のために、対象に提供されることがある。別の例として、組成物は、本明細書に記載の組成物または処置を患者に提供することを許可する、医療従事者によって記載された指示書として提供することができる(例えば、処方箋)。さらに別の例では、組成物を対象に提供することができ、その際、対象は、組成物を例えば経口的に、静脈内にまたは吸入器を用いて自己投与する。
【0093】
あるいは本明細書に開示される化合物または組成物を、全身的ではなく局部的に、例えば、デポ剤または持続放出型製剤を用いることを含めて、皮膚、粘膜または処置対象部位への直接的な適用により投与することもできる。
【0094】
特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、単独で(例えば、単一の有効成分(AI、または例えば単一の医薬品有効成分(API)として)投与される。他の実施形態において、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、1つ以上の追加のAI/APIと組み合わせて、例えば、2つの別々の組成物として、または単一の組成物として投与され、1つ以上の追加のAI/APIが、医薬組成物中で本明細書に開示される化合物と一緒に混合または配合される。
【0095】
用量および治療上有効な量
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物の(例えば、医薬組成物中での)量は、治療上有効な量である。特定の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量は、対象に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量は、有効な治療結果を得るのに必要な量である。特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量は、出血または血管不安定症を処置または予防するのに十分な量である。治療上有効な量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0096】
特定の実施形態において、治療上有効な量は、有効な治療効果(例えば、有益な治療効果)を提供するのに十分高い量であり、かつ望ましくない副作用を最小化するのに十分低い量である。したがって、特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量は、対象によって異なることがあり、多くの場合、対象の年齢、体重、全般的な健康状態および処置される状態の重症度に依存する。したがって、いくつかの実施形態において、治療上有効な量は、経験的に決定される。したがって、対象に投与される化合物の治療上有効な量は、例えば、動物または臨床研究において有効であると認められた量、医師の経験、および推奨用量範囲または投与ガイドラインに基づいて、当業者によって決定することができる。
【0097】
特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量は、許容可能な治療結果を得ることを目的とした適切な用量で(例えば、しばしば対象の体重、年齢および/または病態に依存する適切な量、頻度および/または濃度で)投与される。特定の実施形態において、化合物の治療上有効な量は、少なくとも0.01mg/kg(例えば、対象の体重1kgあたりの化合物のmg)、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも10mg/kgまたは少なくとも100mg/kgから選択される1回分以上の用量を含む。特定の実施形態において、化合物の治療上有効な量は、約0.001mg/kg(例えば、対象の体重1kgあたりの化合物のmg)~約5000mg/kg、0.01mg/kg~1000mg/kg、0.01mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~1000mg/kg、1mg/kg~1000mg/kg、10mg/kg~1000mg/kg、100mg/kg~1000mg/kg、0.1mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~250mg/kg、0.1mg/kg~150mg/kg、0.1mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~75mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~25mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.5mg/kg~5mg/kg、それらの間の量およびそれらの組み合わせの1回分以上の用量から選択される。いくつかの態様において、対象に投与される化合物の治療上有効な量は、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、500mg/kgおよびそれらの間の量ならびにそれらの組み合わせの1回分以上の用量を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量は、約0.1mg/kg~約50mg/kg、約1mg/kg~約50mg/kg、または約1mg/kg~約30mg/kgである。
【0098】
特定の実施形態において、TPAの治療上有効な量は、許容可能な治療結果を得ることを目的とした適切な用量で(例えば、しばしば対象の体重、年齢および/または病態に依存する適切な量、頻度および/または濃度で)投与される。いくつかの実施形態において、TPAは、0.1mg/kg~1.5mg/kgの用量で投与される。本明細書に開示されるように、TPAは、本明細書に開示される化合物と共に投与される場合、より高い用量で投与することができ、それというのも、本明細書に開示される化合物は、TPAの副作用を抑制または緩和し得るためである。したがって、いくつかの実施形態において、TPAは、0.1mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~20mg/kg、または0.1mg/kg~5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、TPAは、1.0mg/kg~100mg/kg、1.0mg/kg~50mg/kg、1.0mgmg/kg~30mg/kg、1.0mg/kg~20mg/kg、または1.0mgmg/kg~5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、TPAは、1.5mg/kg~100mg/kg、1.5mg/kg~50mg/kg、1.5mgmg/kg~30mg/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、または1.5mgmg/kg~5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、TPAは、約1.6mg/kg~100mg/kg、1.8mg/kg~100mg/kg、2.0mg/kg~100mg/kg、1.6mg/kg~50mg/kg、1.8mg/kg~50mg/kg、2.0mg/kg~500mg/kg、1.6mg/kg~30mg/kg、1.8mg/kg~30mg/kg、2.0mg/kg~30mg/kg、1.6mg/kg~20mg/kg、1.8mg/kg~20mg/kg、2.0mg/kg~20mg/kg、1.6mg/kg~5mg/kg、1.8mg/kg~5mg/kg、または2.0mg/kg~5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、TPAは、本明細書に開示される化合物と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、TPAは、本明細書に開示される化合物の投与と実質的に同時に、またはその前に投与される。実質的に同時にとは、TPAおよび本明細書に開示される化合物が、30分間(1800s)の期間内に投与されることを意味する。いくつかの実施形態において、TPAは、本明細書に開示される化合物の投与の後に投与される。特定の実施形態において、TPAの用量を、ボーラス用量として投与される場合には20mg超、30mg超、40mg超、50mg超、90mg超、100mg超もしくは110mg超の用量で、または30分間(1800s)~10時間(36000s)、もしくは30分間(1800s)~2時間(7200s)の期間にわたる注入によって、本明細書に開示される化合物と共に投与することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量、または本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物の投与は、有効な治療結果を得るのに必要な頻度または間隔での適切な用量の投与を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物の治療上有効な量または医薬組成物の投与は、1時間(3600s)ごと、2時間(7200s)ごと、4時間(14400s)ごと、6時間(21600s)ごと、1日3回、1日2回、1日1回、週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、毎週、それらの組み合わせ、および/またはその定期的もしくは不定期の間隔での、および/または単に必要なもしくは医学専門家が推奨する頻度もしくは間隔での適切な用量の投与を含む。いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な量または医薬組成物は、例えば静脈内投与によって連続的に投与される。
【0100】
いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な量は、対象が血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法を受ける前、間および/または後に、対象に投与される。いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な量は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与の最大で3日前、最大で2日前、最大で1日前、最大で20時間(72000s)前、最大で15時間(54000s)前、最大で10時間(36000s)前、最大で5時間(18000s)前、最大で2時間(7200s)前、または最大で1時間(3600s)前に対象に投与される。いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な量は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与の0~72時間(0~259200s)前、0~48時間(0~172800s)前、0~24時間(0~86400s)前、0~12時間(0~43200s)前、0~6時間(0~21600s)前、0~4時間(0~14400s)前、または0~2時間(0~7200s)前に対象に投与される。いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な量は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与中、または投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な量は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与の最大で1時間(3600s)後、2時間(7200s)後、4時間(14400s)後、6時間(21600s)後、12時間(43200s)後、24時間(86400s)後、2日後、3日後、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、24ヶ月後または最大で36ヶ月後まで、断続的または継続的に投与される。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物の治療上有効な量は、血栓溶解療法の投与の1時間(3600s)~1週間後またはその間の範囲に投与される。特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物の治療上有効な量は、血栓溶解療法の投与の1~48時間(3600~172800s)後、2~48時間(7200~172800s)後または4~48時間(14400~172800s)後に投与される。
【0102】
いくつかの実施形態において、血栓溶解療法は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)の投与を含む。TPAは、対象が虚血性脳卒中に罹患してから30s~3.5時間(12600s)の期間内に投与されることが多い。しかし、TPAの投与は、出血、血管不安定症および血液脳関門の崩壊のような有害で時に致死的な副作用を引き起こし得る。本明細書に開示されるように、本明細書に記載の化合物の投与により、TPA投与に伴う出血を予防し、そのリスクを低減し、その重症度を抑制し、軽減し、緩和し、かつ/または処置することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物の治療上有効な量は、TPA投与と同時、TPA投与後0~48時間(0~172800s)以内、またはTPA投与の最大で1~3週間後に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物の治療上有効な量は、TPA投与の1~24時間(3600~86400s)後、2~24時間(7200~86400s)後、3~24時間(10800~86400s)後、3.5~24時間(12600~86400s)後、または4~24時間(14400~86400s)後に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物の治療上有効な量は、TPA投与の0~8時間(0~28800s)後、0~6時間(0~21600s)後、または0~4時間(0~14400s)後に投与される。
【0103】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物の投与により、脳卒中後の有効かつ安全なTPA投与可能時間域を広げることができる。例えば、TPA投与の利点は、脳卒中後30s~3時間(10800s)以内に対象に投与された場合にのみ、出血のリスクに勝ると考えられることが多い。特定の実施形態において、TPA投与の前、TPA投与と同時またはTPA投与の後に本明細書に記載の化合物を投与することにより、TPAの処置可能時間域が広がるだけでなく、TPAで安全に処置できる患者集団が大幅に拡大する。
【0104】
キット
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される化合物、または本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を含むキットである。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物の1回分以上の用量を含む。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される化合物または本明細書に記載のその医薬組成物の1回分以上の用量を含むことができる、1つ以上のパックおよび/または1つ以上のディスペンサーデバイスを含む。パックの非限定的な例としては、本明細書に開示される化合物または本明細書に記載の組成物を含む、金属、ガラスまたはプラスチックの容器、シリンジまたはブリスターパックが挙げられる。特定の実施形態において、キットは、本明細書に開示される化合物または本明細書に記載の組成物を含んでいてもいなくてもよい、シリンジまたは吸入器などのディスペンサーデバイスを含む。パックおよび/またはディスペンサーデバイスには、投与に関する指示書を添付することができる。パックまたはディスペンサーは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知も添付することができ、この通知は、ヒトまたは獣医の投与に対する医薬品の形態の政府機関による承認を反映したものである。このような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベル、または承認された製品添付文書とすることができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、キットまたはパックは、1日~1年、1日~180日、1日~120日、1日~90日、1日~60日、1日~30日、1~24時間(3600~86400s)、1~12時間(3600~43200s)、1~4時間(3600~14400s)、またはそれらの間の期間にわたって患者を処置するのに十分な量の本明細書に開示される化合物を含む。
【0106】
キットは、任意に、製品ラベルおよび/または1つ以上の添付文書を含み、これらは、構成要素の説明、またはその構成要素のin vitro、in vivoもしくはex vivoでの使用に関する指示を提供する。例示的な指示は、処置プロトコルまたは治療レジメンに関する指示を含むことができる。特定の実施形態において、キットは、包装材を含み、これは、キットの構成要素を収容する物理的構造体を意味する。包装材は、構成要素を無菌的に維持することができ、そのような目的で一般的に使用される材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル、バイアル、チューブなど)から製造されていてよい。製品ラベルまたは製品添付文書には、「印刷物」、例えば、紙もしくはボール紙であるか、または構成要素、キットもしくは梱包材(例えば、箱)と分離しているかもしくはそれに貼付されたもの、またはキット構成要素を含むアンプル、チューブもしくはバイアルに添付されたものが含まれる。ラベルまたは添付文書には、さらに、コンピュータ可読媒体、CD-もしくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3などの光ディスク、磁気テープ、もしくはRAMおよびROMなどの電気記憶媒体、またはこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光記憶媒体、フラッシュ媒体もしくはメモリタイプのカードを含めることができる。製品ラベルまたは製品添付文書には、その中の1つ以上の構成要素の識別情報、投与量、作用機序、薬物動態学(PK)および薬力学(PD)を含む有効成分の臨床薬理学を含めることができる。製品ラベルまたは製品添付文書には、製造者情報、ロット番号、製造者の所在地、日付、キット構成要素が使用することができる指示された病態、障害、疾患または症状に関する情報を特定する情報を含めることができる。製品ラベルまたは製品添付文書には、方法、処置プロトコルまたは治療レジメンにおいて1つ以上のキット構成要素を使用するための、臨床医または対象に対する指示を含めることができる。指示には、投与量、頻度または期間、および本明細書で規定される方法、処置プロトコルまたは治療レジメンのいずれかを実践するための指示を含めることができる。キットには、本明細書に記載の方法のいずれかを実践するためのラベルまたは指示書を追加的に含めることができる。製品ラベルまたは製品添付文書には、潜在的な副作用および/または警告に関する情報を含めることができる。
【実施例】
【0107】
実施例1 - スーチャー一過性MCAOモデル
再灌流に対するJ147(化合物IV)の有効性および用量反応を調べるために、280~320gの範囲の体重を有する雄性スプラーグドーリーラットを用いて、スーチャー型一過性中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルを使用した。本モデルでは、再灌流直後(すなわち、虚血発生の約2時間(7200s)後)に、J147を1mg/kg総体重、10mg/kg総体重および30mg/kg総体重の用量でi.v.投与した。本試験では、10mg/kg(iv)の用量を最適な有効用量と見なした。
【0108】
・スーチャー一過性MCAOモデル
・SDラット:280~320g
・脳卒中様式:スーチャー、虚血2時間(7200s)、次いで再灌流24時間(86400s)
・ベダーソンスケール*(再灌流の24時間(86400s)後に試験):0~5、行動の神経学的障害が少ない~多い
・J147:再灌流直後に投与
・J147原液:6mg/ml(6mg/(10-6m3))、30%HS15/70%生理食塩水
・J147希釈標準溶液:原液/生理食塩水1:1(3mg/ml(3mg/(10-6m3))、15%HS15/85%生理食塩水)
・賦形剤:15%HS15/85%生理食塩水
・iv注射(ボーラス):3.3ml(3.3×10-6m3)/kg体重
・ip注射(ボーラス):10ml(10×10-6m3)/kg体重
・ラット:最大体積(iv.、ボーラス)=5ml(5×10-6m3)/kg、(ip.、ボーラス)=10ml(10×10-6m3)/kg
脳卒中後、動物は様々な神経学的障害を示す。ベダーソンスケールは、脳卒中後の神経学的欠陥を測定するために開発された世界的な神経学的評価である。試験には、前肢の屈曲、横押しに対する抵抗、および旋回行動が含まれる。今回は、再灌流後の行動障害を評価するために、0~5のベダーソン評定スケールを使用した。この採点スケールは、基本的な神経学的障害を明らかにする簡単な方法である。虚血動物は、非虚血動物よりも有意に多くの神経学的障害を有し、その結果、より高いスコアをもたらす。
【0109】
結果を
図1に示す。示された群における再灌流の24時間(86400s)後の組織梗塞(白色)を示す塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色脳冠状切片A~Hの代表的な画像(各群のメジアンの動物から選択)。パネルAおよびBは、プラセボで処置した対照動物であり、ベダーソンスコアが3および5であり、再灌流後に有意な梗塞体積(白色)を示す。パネルCおよびDは、1mg/kgのJ147を血管内(iv)投与して処置した動物であり、プラセボに比べてベダーソンスコアが3および3に改善され、梗塞体積が有意に減少したことを示す。パネルEおよびFは、10mg/kgのJ147をiv投与して処置した動物であり、ベダーソンスコアが1および2に大幅に改善され、再灌流後に梗塞体積が大幅に減少したことを示す。パネルGおよびHは、J147を腹腔内投与して処置した動物であり、ベダーソンスコアが2および3であり、再灌流後に梗塞体積が中程度に減少したことを示す。
【0110】
実施例2 - 塞栓症MCAOモデル
塞栓症MCAOモデル(eMCAO)について、4μmのフィブリンに富む単一の血餅を、改良されたPE-50チューブ(外径0.3mm)を通じて右MCAの起始部に配置した。MCA領域(右頭頂頭蓋骨のブラグマの2mm後方および5mm外側)の局所脳血流量(rCBF)をレーザドップラー流速計(MSP300XP;ADInstruments Inc)で監視した。動物のrCBFがベースラインレベルの25%以下に減少したものを試験に組み入れた。
【0111】
・併用処置:J147+tPA、組織プラスミノーゲン活性化因子、脳卒中の処置用にFDAに承認されている唯一の薬剤
・SDラット:280~320g
・脳卒中様式:eMCAO、4μm血餅
・ベダーソンスケール(虚血の24時間(86400s)後に試験)0~5
・J147(10mg/kg:5%DMSO、70%PEG200、および25%生理食塩水):虚血発生の4時間(14400s)後(1分間(60s)iv注入)
・tPA(10mg/kg(2mg/ml(2mg/(10
-6m
3)))):虚血発生の4時間(14400s)後に10%ボーラス1分間(60s)、90%注入30分間(1800s)
・2群:tPAのみで処置、tPA+J147で処置
結果を
図2(tPAのみで処置した動物)および
図3(tPA+J147で処置した動物)に示す。示された群における脳卒中の24時間(86400s)後の脳内出血(赤色)を示す非染色冠状切片(A、C、E、G)および組織梗塞(白色)を示すTTC染色冠状切片(B、D、F、H)の代表的な画像(各群のメジアンの動物から選択)が示されている。
図4Aは、tPA+J147で処置した動物 vs tPAのみで処置した動物において正の傾向を示すベダーソンスコアのグラフプロットを示す(p=0.6254)。
図4Bは、tPA+J147で処置した動物において正の傾向を示す、スキャン定量化された梗塞体積のグラフプロットを示す(p=0.061)。
図4Cは、tPA+J147で処置した動物において有意な改善を示す、定量化された出血体積のグラフプロットを示す(p=0.048)。
【0112】
実施例3 - J147の用量反応(拡大試験)
目的:本実験は、J147の用量依存的な治療効果を調べ、最適な用量を特定するために実施した。
【0113】
・J147原液:30%HS15/70%生理食塩水中6mg/ml(6mg/(10
-6m
3))
・J147希釈標準溶液:15%HS15/85%生理食塩水中3mg/ml(3mg/(10
-6m
3))(原液/生理食塩水1:1)
・賦形剤:15%HS15/85%生理食塩水
・雄性SDラット;各群n=7~8
方法:雄性SDラット(280~300g)を、2時間(7200s)のスーチャーMCAO誘発虚血およびその後の再灌流に供した。J147化合物(1.0、10、30mg/kg)および賦形剤を虚血発生の2時間(7200s)後に投与した(
図5)。脳梗塞の72時間(259200s)後に屠殺する前にベダーソンスコアを調べた。TTC染色脳冠状切片の梗塞体積を測定した。結果:J147での処置により、用量依存的に再灌流後の梗塞体積および神経学的障害が有意に減少した。ラットの急性虚血性脳卒中の処置には、10mg/kgのJ147の用量が「有効な最適用量」として選択される。
【0114】
実施例4 - J147+tPA拡大試験(約80匹)
目的:ラットの臨床的に重大な血栓塞栓性脳卒中モデルにおいて、J147がtPAに伴う脳出血を予防し、tPAの処置可能時間域の範囲を延長できるか否かを調べる。
【0115】
・J147化合物:原液:60mg/ml(60mg/(10-6m3))DMSO、60ul(60×10-9m3)/バイアル中、-20℃で保存
・希釈標準溶液:5%DMSO、70%PEG200、および25%標準生理食塩水中の3mg/ml(3mg/(10-6m3))、注射前に調製
・1バイアルの原液を37℃で加温し、1140ul(1140×10-9m3)の滅菌液(PEG200:生理食塩水、2.8:1)と混合
・組換えヒトtPA(アルテプラーゼ、2.2mg/バイアル):1.1ml(1.1×10-6m3)の水で再構成(2mg/ml(2mg/(10-6m3)))。10mg/kg、10%ボーラス注射、ミニポンプにより90%30分間(1800s)
A.梗塞体積および脳内出血
方法:雄性SDラット(280~300g)を血栓塞栓性中大脳動脈閉塞(MCAO)に供し、虚血発生の4時間(14400s)後に生理食塩水、4時間(14400s)後にtPA(組織型プラスミノーゲン活性化因子;10mg/kg、IV)、および4時間(14400s)後にJ147(10mg/kg、IV)+tPAの併用で処置した。脳梗塞の72時間(259200s)後に屠殺する前にベダーソンスコアを調べた。梗塞体積、脳出血および動物の死亡率を測定した。
【0116】
結果:4時間(14400s)でのtPA処置のみでは、脳梗塞は減少せず、代わりに出血性変化が悪化した。J147およびtPAを併用すると、梗塞体積が減少し、脳出血が改善した(
図6A~6D)。生理食塩水で処置した群およびtPAのみで処置した群の死亡率はそれぞれ、25%(ラット12匹中3匹)および32%(ラット22匹中7匹)であった。併用処置群では、死亡率は12%に減少した(表1)。
【0117】
結論:J147+tPAの併用処置により、tPAに伴う出血が減衰し、eMCAO後の脳損傷が軽減される。その結果、J147およびtPAの併用により、虚血事象後のtPA投与の治療可能時間域の長さを延長させることができ、それによってtPAの使用から利益を得ることができる脳卒中患者の数を増加させることができる。
【0118】
【0119】
B.免疫組織化学
MMP、特にMMP-9は、脳卒中に伴う血液脳関門(BBB)の崩壊、出血性変化および脳卒中後の神経炎症に重大な役割を果たす。脳卒中の24時間(86400s)後の脳におけるMMP-9の発現を調べるために、二重免疫組織化学を実施した(
図7A)。
【0120】
方法:示された時点で、動物をCO2で安楽死させ、200mLの氷冷PBS(0.01M、pH7.4)、続いて4%パラホルムアルデヒド(PFA)を経心的に灌流させた。脳を取り出し、4%PFA溶液中にて4℃で一晩、後固定した。その後、脳サンプルを10%、20%および30%の勾配スクロース溶液にそれぞれ4℃で48時間(172800s)浸漬し、凍結保護した。その後、脳を最適切断温度(OCT)化合物に包埋した。クライオスタットを用いてブラグマの後方0.4~1.4mmで冠状切片(15um(1.5×10-5m))を切り出し、正電荷のスライドに載置した。20枚ごとの冠状切片で合計5枚の切片を免疫組織化学に使用した。一次抗体:IBa-1(1:200、Wako)、MPO(1:200、Abcam)、MMP9(1:100、R&D)、EBA(内皮バリア抗原、血管内皮のマーカー、1:500、Covance)、フィブリノーゲン(1:200、Dako)、血小板(1:200、lifespan)およびPAI-1(1:200、Novus Biologicals)を使用した。陰性対照としてアイソタイプの一致する抗体を使用した。免疫染色は、通常の方法により行った。
【0121】
定量化のために、虚血境界領域において免疫反応性血管の数をカウントした。すべての免疫染色データは、Image Pro plusソフトウェア(バージョン5.1、Media Cybernetics, Inc.)を使用して実験群に対して盲検化された研究者によって解析し、データは、記載されたように、撮像面積(mm2)に対する免疫反応性血管の密度として示される。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表された。統計解析には、GraphPad Prism 8ソフトウェアパッケージを使用した。特に指示がない限り、一元配置分散分析(ANOVA)後にボンフェローニ事後検定を使用して多重比較を行った。2つの群のみを比較した場合、対応のない両側スチューデントt検定を適用した。p<0.05を、統計的に有意と見なした。
【0122】
結果:MMP-9免疫反応性は、偽手術ラットでは認められず、脳卒中動物で顕著に増加した。遅延型tPA処置群では、このMMP-9免疫反応性がさらに増加し、個々の細胞と脳微小血管との双方に存在した(内皮バリア抗原染色で示される)。しかし、J147との併用処置により、個々の細胞と微小血管との双方でMMP9発現が顕著に減少した。また、虚血後の神経炎症に関与する好中球(MPO)浸潤およびミクログリア(Iba-1)の脳内拡大を評価した。免疫染色から、偽手術ラットではMPO陽性細胞が検出されなかったが、MPO陽性細胞が脳卒中により有意に誘発され、さらに遅延型tPA処置により増強されたことが判明した(
図7B)。J147との併用処置により、脳卒中後の脳実質への好中球の浸潤が顕著に減少した。さらに、Iba-1陽性細胞数は、脳卒中後に有意に増加した(
図7C)。しかし、J147との併用処置により、ミクログリアの拡大が有意に阻止された。一方、生理食塩水単独の群では、遅延型tPA単独の場合、ミクログリアの拡大に対して有意な効果が示されなかった。ほとんどのIba-1陽性細胞の形状は、生理食塩水およびtPA単独の群で、高度に分岐した細胞形状からさほど分岐していないまたはアメーバ状の細胞形状に変化しており、これはミクログリアが活性化していることを示している。重要なことは、J147との併用処置によって、それが有意に抑制されたことである。
【0123】
結論:J147での処置によって、虚血により誘発されるおよび遅延型tPAで増強される神経炎症が軽減される。
【0124】
血管内でのフィブリン/フィブリノーゲンの沈着および血小板の蓄積は、虚血性脳卒中後の二次的微小血管血栓症に実質的に寄与する。二重免疫蛍光染色から、血管内でのフィブリン/フィブリノーゲンの沈着(
図8A)および血小板の蓄積(
図8B)が、偽手術ラットではほとんど検出されず、生理食塩水で処置された脳卒中動物では比較的低いレベルで検出されたことが判明し、これはおそらく、この塞栓性脳卒中の様式においてtPA血栓溶解がなく下流の微小血管の脳潅流量が低いためと考えられる。しかし、遅延型tPAを用いた場合の脳卒中ラットでは、下流の微小血管に沈着したフィブリン/フィブリノーゲンと血小板との双方が著しく増加し、これらの増加は、J147との併用処置によって著しく減衰した(
図8Aおよび8B)。
【0125】
結果:虚血脳内皮におけるNF-κBカスケードの下流のメディエーターであるPAI-1(プラスミノーゲン活性化抑制因子-1)の局所的なアップレギュレーションが、虚血/再灌流により誘発される急性脳虚血障害時の血管内でのフィブリン/フィブリノーゲンの沈着に寄与するという証拠が示されている。二重免疫組織化学から、J147との併用処置により、大脳皮質の虚血周辺領域で観察される脳内皮細胞における虚血により誘発されるおよび遅延型tPAで増強されるPAI-1発現が有意に減少することが判明した(
図8C)。
【0126】
結論:J147での処置によって、遅延型tPAで増強される微小血管血栓症が軽減され、それによって、虚血事象後にtPAを投与できる治療可能時間域の期間が延長される。
【0127】
C.血小板の活性化および血小板-白血球の相互作用
血小板の活性化および血小板-白血球の相互作用の増大は、脳卒中後の虚血再灌流障害における炎症や血栓を促進する事象に重大な寄与を成す。本発明者らは、虚血発生の24時間(86400s)後の全血における血小板の活性化および血小板-白血球凝集体を分析するためにフローサイトメトリーを使用した(
図9A)。
【0128】
方法:脳卒中の24時間(86400s)後に、後眼窩神経叢を通じてヘパリン処理済みキャピラリーチューブに採血した。全血を、ラットFcブロック抗ラットCD32を含むフローサイトメトリー用染色バッファー(eBioscience)で1:10に希釈した。血小板の活性化の評価のために、血小板についてはFITCマウス抗ラットCD42d(1:200、RPM.4)により、P-セレクチン発現についてはPE/Cy7マウス抗ラットCD62P(1:100、RMP-1)によりサンプルを共染色した。血小板-白血球凝集体(PLA)形成の検出のために、FITCマウス抗ラットCD42d(1:200、RPM.4)、PEマウス抗ラット顆粒球(1:100、RP-1)、APCマウス抗ラットCD11b(1:50、WT.5)およびPE/Cy7マウス抗ラットCD45(1:100、OX-1)によりサンプルを共染色した。アイソタイプの一致するコントロール抗体を使用して、非特異的なバックグラウンドシグナルと特異的な抗体シグナルとを区別した。サンプルを、BD Accuri(商標)C6フローサイトメーターで分析した。
【0129】
結果:血小板の活性化(P-セレクチン発現により決定)および血小板-顆粒球凝集体の増加が、生理食塩水で処置された脳卒中ラットで認められたが、IV tPAは追加効果を示さなかった。しかし、併用処置により、虚血により誘発される血小板によるP-セレクチン発現および血小板-顆粒球凝集体が有意に減少した。血小板-単球凝集体については、群間で有意な変化はなかった。
【0130】
結論:J147での処置により、in vivoでの循環血小板の活性化および血小板-好中球凝集体が減衰する。
【0131】
実施例5 - J147単独での塞栓性MCAO(eMCAO)モデル
本実施例では、J147単独で(すなわち、TPAの投与または他の血栓溶解介入を行わずに)、TPAによる生じる再灌流がない場合の脳卒中に対して何らかの治療効果が得られるか否かを調べるために、eMCAO実験を実施した。
【0132】
・SDラット:280~320g
・脳卒中様式:eMCAO、4μm血餅
・ベダーソンスケール(虚血の24時間(86400s)後に試験):0~5
・tPAによる処置なし
・脳卒中発症の2時間(7200s)後に、0mg/ml(0mg/(10
-6m
3))(賦形剤)、1mg/ml(1mg/(10
-6m
3))または10mg/ml(10mg/(10
-6m
3))のJ147をi.v.投与、または30mg/ml(30mg/(10
-6m
3))のJ147をi.p.投与(n-5/群)
・J147原液:6mg/ml(6mg/(10
-6m
3))(30%HS15/70%生理食塩水)
・J147希釈標準溶液:原液/生理食塩水1:1(3mg/ml(3mg/(10
-6m
3))、15%HS15/85%生理食塩水)
・賦形剤:15%HS15/85%生理食塩水
本実施例では、動物を、再灌流またはTPA処置の非存在下で、賦形剤またはJ147で処置した。結果を
図10Aおよび10Bに示す。示された群における脳卒中の24時間(86400s)後の組織梗塞(白色)を示すTTC染色冠状切片の代表的な画像(各群のメジアンの動物から選択)が示されている。これらの実験は、J147単独では、再灌流(例えば、TPAにより誘発される再灌流)の非存在下で、脳卒中からの有意な保護を提供できないことを示唆している。対照的に、先行実施例は、TPAと組み合わせたJ147の投与の治療効果を実証している。
【0133】
実施例6 - 特定の非限定的な実施形態
A1 対象における出血または血管不安定症を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法であって、該方法は、式I:
【0134】
【0135】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の対象への投与を含み、ここで、
R2は、Hおよびメチルからなる群から選択され;
R3は、トリフルオロメチルまたは他のフッ素置換アルキルであり;
L3は、カルボニルであり;
各出現時のR6は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、アリール、置換アリール、置換複素環、ハロゲン、シアノ、シアノアルキル、ニトロ、アミノ、アミジノ、カルバメート、S(O)nR7およびC(O)R8からなる群から独立して選択されるか、または隣接位置の2つのR6が一緒になって、隣接するフェニル部分と縮合した、任意に置換されたヘテロアリールまたはヘテロアルキル環を形成し;
R7は、H、R9、NH2、HNR9またはNR9R10であり;
R8は、OH、OR9、NH2、NHR9またはNR9R10であり;
各出現時のR9およびR10は、独立して、任意に置換されたアルキルであり;
nは、1または2である、方法。
【0136】
A2 各出現時のR6は、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲンおよびC(O)R8からなる群から選択される、実施形態A1記載の方法。
【0137】
A3 各出現時のR6は、メチル、メトキシ、パーフルオロメチル、パーフルオロメトキシ、ヒドロキシル、Cl、FおよびIからなる群から選択される、実施形態A2記載の方法。
【0138】
A4 化合物は、式II;
【0139】
【0140】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含み、ここで:
(i)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;または
(ii)RA2、RA3、RA5およびRA6は、Hであり、RA4は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;または
(iii)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、Hであり、RB4は、Hである;または
(iv)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;または
(v)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、Hであり、RB4は、Hである;または
(vi)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである;または
(vii)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、Hであり、RB4は、メチルである;または
(viii)RA2、RA3、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RB2は、メチルであり、RB4は、Hである;または
(ix)RA2、RA4、RA5およびRA6は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RB2は、メチルであり、RB4は、Hである;または
(x)RA2、RA3、RA5およびRA6は、Hであり、RA4は、COOHであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;または
(xi)RA2、RA4およびRA5は、Hであり、RA3およびRA6は、ヒドロキシルであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;または
(xii)RA2、RA4およびRA6は、Hであり、RA3およびRA5は、ヒドロキシルであり、RB2は、メチルであり、RB4は、メチルである;または
(xiii)RA2、RA4およびRA5は、Hであり、RA3は、メトキシであり、RA6は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Clである;または
(xiv)RA3およびRA5は、Hであり、RA2およびRA6は、Fであり、RA4は、ヒドロキシルであり、RA6は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Fである;または
(xv)RA2、RA4およびRA6は、Hであり、RA3は、ヒドロキシルであり、RA5は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Fである;または
(xvi)RA2、RA5およびRA6は、Hであり、RA3およびRA4は、一緒になって-O-CH2-O-であり、RA5は、Fであり、RB2は、Hであり、RB4は、Fである、実施形態A1記載の方法。
【0141】
A5 化合物は、式III
【0142】
【0143】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含み、ここで、R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF3、OCH3、OCF3またはOCBr3であり;R3およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、Cl、FまたはBr)、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、実施形態A1記載の方法。
【0144】
A6.1 化合物は、式IV
【0145】
【0146】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含む、実施形態A5記載の方法。
【0147】
A6.2 出血または血管不安定症は、血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法により誘発され、血管内介入療法は、機械的血栓摘出術を含む、実施形態A1からA6.1までのいずれか1つ記載の方法。
【0148】
A7 出血は、内出血を含む、実施形態A1からA6.2までのいずれか1つ記載の方法。
【0149】
A7.1 出血は、クラスIの出血を含む、実施形態A1からA7までのいずれか1つ記載の方法。
【0150】
A7.2 出血は、全血液体積の15%以下、10%以下、5%以下、2%以下または1%以下の推定血液損失量を含む、実施形態A1からA7.1までのいずれか1つ記載の方法。
【0151】
A8 出血は、出血転化を含む、実施形態A1からA7.2までのいずれか1つ記載の方法。
【0152】
A8.1 出血は、大脳出血または脳出血を含む、実施形態A1からA8までのいずれか1つ記載の方法。
【0153】
A8.2 出血の抑制、軽減、緩和または処置は、出血体積の減少を含む、実施形態A1からA8.1までのいずれか1つ記載の方法。
【0154】
A9 血管不安定症は、内皮機能不全を含む、実施形態A1からA8.2までのいずれか1つ記載の方法。
【0155】
A10 血管不安定症は、血管緊張の低減もしくは喪失、または止血の低減もしくは喪失を含む、実施形態A1からA9までのいずれか1つ記載の方法。
【0156】
A11 血管不安定症は、浮腫を含む、実施形態A1からA10までのいずれか1つ記載の方法。
【0157】
A12 浮腫は、大脳浮腫または血液脳関門の腫脹を含む、実施形態A1からA11までのいずれか1つ記載の方法。
【0158】
A13 血管不安定症は、再灌流による血管内皮または血液脳関門の障害を含む、実施形態A1からA12までのいずれか1つ記載の方法。
【0159】
A14 対象における血管内皮の保護および/または安定化を含む、実施形態A1からA13までのいずれか1つ記載の方法。
【0160】
A15 血管内皮は、血液脳関門を含む、実施形態A14記載の方法。
【0161】
A16 対象における血液脳関門の崩壊の予防または処置を含む、実施形態A1からA15までのいずれか1つ記載の方法。
【0162】
A17 対象は、血栓溶解療法または抗凝固療法を受ける予定であるか、受けているか、または受けた、実施形態A1からA16までのいずれか1つ記載の方法。
【0163】
A18 対象には、出血のリスクがある、実施形態A1からA17までのいずれか1つ記載の方法。
【0164】
A19 血栓溶解療法は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ストレプトキナーゼ、ストレプトキナーゼ活性化因子またはウロキナーゼの投与を含む、実施形態A6.2からA18までのいずれか1つ記載の方法。
【0165】
A20 ストレプトキナーゼ活性化因子は、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体である、実施形態A19記載の方法。
【0166】
A21 アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体は、アニストレプラーゼまたはエミナーゼである、実施形態A20記載の方法。
【0167】
A22 ウロキナーゼは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子である、実施形態A19記載の方法。
【0168】
A23 ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子は、サルプラーゼである、実施形態A22記載の方法。
【0169】
A24 組織プラスミノーゲン活性化因子は、組換えTPAである、実施形態A19記載の方法。
【0170】
A25 組織プラスミノーゲン活性化因子は、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)またはテネクテプラーゼ(TNKase、Metalyse)である、実施形態A19またはA23記載の方法。
【0171】
A26 抗凝固療法は、ビタミンK拮抗薬の投与を含む、実施形態A6.2からA25までのいずれか1つ記載の方法。
【0172】
A27 ビタミンK拮抗薬は、ワルファリンである、実施形態A26記載の方法。
【0173】
A27.1 抗凝固療法は、ヘパリン、ヘパリン誘導体または低分子ヘパリンの投与を含む、実施形態A6.2からA26までのいずれか1つ記載の方法。
【0174】
A28 ヘパリン誘導体または低分子ヘパリンは、エノキサパリン、ダルテパリン、チンザパリンおよびダナパロイドから選択される、実施形態A27.1記載の方法。
【0175】
A29 抗凝固療法は、トロンビン阻害薬の投与を含む、実施形態A6.2からA28までのいずれか1つ記載の方法。
【0176】
A30 トロンビン阻害薬は、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、デシルジン、レピルジンおよびアンチトロンビンIIIから選択される、実施形態A29記載の方法。
【0177】
A31 抗凝固療法は、第Xa因子阻害薬の投与を含む、実施形態A6.2からA30までのいずれか1つ記載の方法。
【0178】
A32 第Xa因子阻害薬は、アピキサバン、フォンダパリヌクス、リバーロキサバン、エドキサバンおよびベトリキサバンから選択される、実施形態A31記載の方法。
【0179】
A33 方法は、対象への血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与をさらに含む、実施形態A1からA32までのいずれか1つ記載の方法。
【0180】
A34 対象は、哺乳動物またはヒトである、実施形態A1からA33までのいずれか1つ記載の方法。
【0181】
A35 実施形態A1からA34までのいずれか1つ記載の方法を実施する際に使用するための、式I、式II、式IIIおよび式IVのいずれか1つから選択される構造を有する化合物を含む、医薬組成物。
【0182】
B1 対象における再灌流障害を予防し、そのリスクを低減し、抑制し、軽減し、緩和し、または処置する方法であって、該方法は、式III:
【0183】
【0184】
の構造またはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を有する化合物の治療上有効な量の対象への投与を含み、ここで、R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチルまたはトリブロモメチルであり;R2は、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、CF3、OCH3、OCF3またはOCBr3であり;R3およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、Cl、FまたはBr)、メチル、メトキシおよびアミンから独立して選択される、方法。
【0185】
B2 化合物は、式IV;
【0186】
【0187】
の構造もしくはその薬学的に許容される塩、立体異性体もしくは互変異性体を含むかまたはそれからなる、実施形態B1記載の方法。
【0188】
B3 再灌流障害は、血栓溶解療法または抗凝固療法により誘発される、実施形態B1またはB2記載の方法。
【0189】
B4 再灌流障害は、血管内介入療法により誘発される、実施形態B1またはB2記載の方法。
【0190】
B5 血管内介入は、機械的血栓摘出術を含む、実施形態B4記載の方法。
【0191】
B6 再灌流障害は、虚血再灌流障害を含むかまたはそれからなる、実施形態B1からB5までのいずれか1つ記載の方法。
【0192】
B6.1 再灌流障害は、大脳再灌流障害、肝臓再灌流障害または心筋再灌流障害を含むかまたはそれからなる、実施形態B1からB6までのいずれか1つ記載の方法。
【0193】
B7 対象における血管内皮の保護および/または安定化を含む、実施形態B1からB6.1までのいずれか1つ記載の方法。
【0194】
B8 血管内皮は、血液脳関門を含む、実施形態B7記載の方法。
【0195】
B9 対象における血液脳関門の崩壊の予防または処置を含む、実施形態B1からB8までのいずれか1つ記載の方法。
【0196】
B10 対象は、血栓溶解療法または抗凝固療法を受ける予定であるか、受けているか、または受けた、実施形態B1からB9までのいずれか1つ記載の方法。
【0197】
B11 対象には、出血のリスクがある、実施形態B1からB10までのいずれか1つ記載の方法。
【0198】
B12 出血は、内部出血を含む、実施形態B1からB11までのいずれか1つ記載の方法。
【0199】
B13 出血は、出血性変化を含む、実施形態B1からB12までのいずれか1つ記載の方法。
【0200】
B14 出血は、脳内出血を含む、実施形態B1からB13までのいずれか1つ記載の方法。
【0201】
B15 方法は、出血体積の減少を含む、実施形態B1からB14までのいずれか1つ記載の方法。
【0202】
B16 血栓溶解療法は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ストレプトキナーゼ、ストレプトキナーゼ活性化因子またはウロキナーゼの投与を含む、実施形態B3からB15までのいずれか1つ記載の方法。
【0203】
B17 ストレプトキナーゼ活性化因子は、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体である、実施形態B16記載の方法。
【0204】
B18 アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体は、アニストレプラーゼまたはエミナーゼである、実施形態B17記載の方法。
【0205】
B19 ウロキナーゼは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子である、実施形態B16記載の方法。
【0206】
B20 ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子は、サルプラーゼである、実施形態B19記載の方法。
【0207】
B21 組織プラスミノーゲン活性化因子は、組換えTPAである、実施形態B16記載の方法。
【0208】
B22 組織プラスミノーゲン活性化因子は、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)またはテネクテプラーゼ(TNKase、Metalyse)である、実施形態B16またはB21記載の方法。
【0209】
B23 抗凝固療法は、ビタミンK拮抗薬の投与を含む、実施形態B1からB22までのいずれか1つ記載の方法。
【0210】
B24 ビタミンK拮抗薬は、ワルファリンである、実施形態B23記載の方法。
【0211】
B25 抗凝固療法は、ヘパリン、ヘパリン誘導体または低分子ヘパリンの投与を含む、実施形態B1からB24までのいずれか1つ記載の方法。
【0212】
B26 ヘパリン誘導体または低分子ヘパリンは、エノキサパリン、ダルテパリン、チンザパリンおよびダナパロイドから選択される、実施形態B25記載の方法。
【0213】
B27 抗凝固療法は、トロンビン阻害薬の投与を含む、実施形態B1からB26までのいずれか1つ記載の方法。
【0214】
B28 トロンビン阻害薬は、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、デシルジン、レピルジンおよびアンチトロンビンIIIから選択される、実施形態B27記載の方法。
【0215】
B29 抗凝固療法は、第Xa因子阻害薬の投与を含む、実施形態B1からB28までのいずれか1つ記載の方法。
【0216】
B30 第Xa因子阻害薬は、アピキサバン、フォンダパリヌクス、リバーロキサバン、エドキサバンおよびベトリキサバンから選択される、実施形態B29記載の方法。
【0217】
B31 方法は、対象への血栓溶解療法、抗凝固療法または血管内介入療法の投与をさらに含む、実施形態B1からB30までのいずれか1つ記載の方法。
【0218】
B32 対象は、ヒトである、実施形態B1からB31までのいずれか1つ記載の方法。
【0219】
B33 実施形態B1からB32までのいずれか1つ記載の方法を実施する際に使用するための、式IIIおよび式IVの構造を有する化合物。
【0220】
本明細書で引用した各特許、特許出願、刊行物またはその他の参考文献もしくは文書の内容全体を、参照により援用するものとする。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0221】
特許、特許出願、刊行物またはその他の文書の引用は、前述のいずれかが適切な先行技術であることを認めるものではなく、これらの刊行物または文書の内容または日付について認めるものでもない。
【0222】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料は本明細書に記載されている。
【0223】
本明細書に開示されるすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示される各特徴は、同一、同等または類似の目的を果たす代替的な特徴で置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される特徴(例えば、抗体)は、同等または類似の特徴の属の一例である。
【0224】
「により誘発される」という表現には、明確に別段の指示がない限り、「により進行する」、「により悪化する」、「により激化する」および/または「により拡大する」が包含される。
【0225】
本明細書で使用される場合、すべての数値または数値範囲には、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、かかる範囲内の整数および数値または範囲内の整数の小数が包含される。さらに、値の列挙が本明細書に記載される場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%または86%)、列挙には、そのすべての中間値および小数値が包含される(例えば、54%、85.4%)。したがって、例示すると、80%以上の同一性への言及には、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%などに加えて、81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%なども包含される。
【0226】
超(を上回る)または未満を伴う整数への言及には、それぞれ参照番号を上回るまたはそれ未満の任意の数が包含される。したがって、例えば100未満への言及には、99、98、97など、1の数までのすべてが包含され、10未満への言及には、9、8、7など、1の数までのすべてが包含される。
【0227】
本明細書で使用される場合、すべての数値または数値範囲には、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、かかる範囲内の値および整数の分数、ならびにかかる範囲内の整数の分数が包含される。したがって、例示すると、1~10などの数値範囲への言及には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などが包含される。したがって、1~50の範囲への言及には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などから50までに加えて、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などが包含される。
【0228】
一連の範囲への言及は、一連内の異なる範囲の境界の値を組み合わせた範囲が包含される。したがって、一連の範囲への言及を説明するために、例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000または8,000~9,000の一連の範囲には、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000などの範囲が包含される。
【0229】
本技術の基本的な態様から逸脱することなく、前述に対して修正を加えることができる。本技術は、1つ以上の特定の実施形態を参照して非常に詳細に説明されているが、当業者であれば、本願で具体的に開示される実施形態に変更を加えることができ、しかもこれらの修正形態および改良形態が本技術の範囲および趣旨内にあることを認識するであろう。
【0230】
本発明は、総じて、多数の実施形態および態様を説明するために、肯定的な言葉を用いて本明細書に開示される。本発明はまた、物質または材料、方法ステップおよび条件、プロトコルまたは手順のような特定の主題が全体または部分的に除外される実施形態を特に含む。例えば、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態または態様において、いくつかの材料および/または方法ステップが除外される。したがって、本発明は、本発明が総じて何を含まないかという点で本明細書に表現されていないが、本発明において明示的に除外されていない態様は、本明細書に開示される。
【0231】
本明細書に記載の本技術のいくつかの実施形態は、好適には、本明細書に具体的に開示されていない要素の非存在下にも実施することができる。したがって、いくつかの実施形態において、「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、「から実質的になる(consisting essentially of)」もしくは「からなる(consisting of)」またはその文法的変形に置き換えることができる。「から実質的になる」組成物は、特許請求される有効成分(例えば、有効成分(AI)または医薬品有効成分(API);例えば、TPAおよび/または本明細書に記載のおよび特許請求される化合物)のみを含む組成物を指し;この組成物は、製剤材料、補形薬、添加剤、担体、防腐剤、希釈剤、溶媒、充填剤、塩、緩衝液、コーティング、結合剤および潤滑剤などの他の成分を含むことができ;かつこの組成物は、特許請求されない他のAPIを除外する。
【0232】
「a」または「an」という用語は、文脈上明らかに1つの要素または複数の要素のいずれかが記述されていない限り、それが修飾する1つ以上の要素を指すことができる(例えば、「a reagent」は、1つ以上の試薬を意味し得る)。本明細書で使用される「約」という用語は、基礎となるパラメータの10%(すなわち、プラスまたはマイナス10%)以内の値を指し、値の文字列の先頭での「約」という用語の使用は、各値を修飾する(すなわち、「約1、2および3」は、約1、約2および約3を指す)。例えば、「約100グラム」の重量には、90グラムと110グラムとの間の重量が包含され得る。本明細書で使用される「実質的に」という用語は、「少なくとも95%」、「少なくとも96%」、「少なくとも97%」、「少なくとも98%」、または「少なくとも99%」を意味する値の修飾語を指し、100%を包含し得る。例えば、Xを実質的に含まない組成物は、Xを5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満含むことができ、かつ/またはXが組成物中に存在しないかまたは検出されない可能性がある。
【国際調査報告】