(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】自己較正バイオセンサのアレイを使用して基質の実際の濃度を決定する方法及びその方法を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20230904BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230904BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20230904BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20230904BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61B5/1473
G01N27/416 338
G01N27/327 353R
G01N27/416 336H
G01N27/30 A
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576470
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 IB2021055158
(87)【国際公開番号】W WO2021250627
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517017399
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】522480920
【氏名又は名称】アンスチチュ ポリテクニク ドゥ グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】520456952
【氏名又は名称】サントゥル オスピタリエ ユニベルシテール グルノーブル アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼブダ、アブデルカデール
(72)【発明者】
【氏名】サンカン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン、ドン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KY08
(57)【要約】
本発明は、触媒による触媒酸化還元を受けやすい任意の分子で構成される基質(S1)の、媒体中における、実際の濃度が存在する領域を、経時的に安定した態様で決定するための方法において、(a)少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを取得するステップであって、各バイオセンサが、酸化還元反応によって誘導される信号の検量線を有し、1つのグループ内のバイオセンサが、分離濃度(SC)と呼ばれる、基質(S1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、その部分から、信号の測定値がグループ内のバイオセンサ同士で異なり、複数のグループが存在する場合、異なるグループ内のバイオセンサが、同一の最初の部分を伴うことなく、異なる検量線を有する、ステップと、(b)バイオセンサを媒体と接触させて配置するステップと、(c)1つ又は複数のグループ内のそれぞれのバイオセンサごとに酸化又は還元反応によって誘導された信号を測定するステップと、(d)全てのバイオセンサによって生成された全ての信号値を比較するステップであって、明細書本文で説明した方法に従うステップとを含むことを特徴とする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒による触媒酸化還元を受けやすい任意の分子で構成される基質(S
1)の、媒体中における、実際の濃度が存在する領域を、経時的に安定した態様で決定するための方法において、
a)少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを取得するステップであって、各バイオセンサが、酸化還元反応によって誘導される信号の検量線を有し、
-1つのグループ内の前記バイオセンサが、分離濃度(SC)と呼ばれる、前記基質(S
1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、その部分から、前記信号の測定値が前記グループ内のバイオセンサ同士で異なり、
-複数のグループが存在する場合、異なるグループ内の前記バイオセンサが、同一の最初の部分を有することなく、異なる検量線を有する、
ステップと、
b)前記バイオセンサを前記媒体と接触させて配置するステップと、
c)1つ又は複数の前記グループ内のそれぞれの前記バイオセンサごとに酸化又は還元反応によって誘導された前記信号を測定するステップと、
d)全ての前記バイオセンサによって生成された全ての信号値を比較するステップであって、バイオセンサの単一のグループの場合、
-全ての信号値が等しければ、前記基質(S
1)の濃度が最低SC以下であり、
-全ての信号値が異なれば、前記基質(S
1)の濃度が最高SCよりも高く、
-前記バイオセンサの一部が同じ信号値を有していれば、前記基質(S
1)の濃度が、その部分の前記バイオセンサの最低SC以下であるとともに、次に最も低いSCを伴う前記バイオセンサのSCよりも大きく、
バイオセンサの複数のグループの場合、
-各グループにおける全ての信号値が等しければ、前記基質(S
1)の濃度が最低SC以下であり、
-全てのグループで全ての信号値が異なれば、前記基質(S
1)の濃度が最高SCよりも高く、
-1つのグループにおける前記バイオセンサの一部が同じ信号値を有していれば、前記基質(S
1)の濃度が、その部分の前記バイオセンサの最低SC以下であるとともに、関連するグループ内で次に最も低いSCを伴う前記バイオセンサのSCよりも大きく、
-バイオセンサの前記複数のグループの一部において、1つのグループにおける全てのバイオセンサが同じ信号値を有し、残りの部分で1つのグループ内の全てのバイオセンサが異なる信号値を有していれば、前記濃度が、各グループで同じ信号値を伴う前記1つ又は複数のグループの最低SC以下であるとともに、各グループで異なる信号値を伴う前記1つ又は複数のグループの最高SCよりも大きい、
ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記信号が電気化学信号であり、このとき、各バイオセンサは、酸化又は還元反応によって誘導される電流が間を通過する、作用電極、基準電極、及び、対向電極を備え、前記電気化学信号は、この電流の強度又は前記基質(S
1)の酸化還元反応中の前記電極間の電位差のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれのバイオセンサごとに、前記作用電極が炭素、金、又は、白金電極であり、前記基準電極が白金、金、又は、ダイヤモンド電極であり、前記基準電極が塩化銀電極であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が酵素触媒又は化学触媒であり、前記化学触媒が特に白金、白金ナノ構造、白金合金ナノ構造、金ナノ構造、及び、金合金ナノ構造から選択される非生物的触媒である、又は、特にポルフィリン‐金錯体及びポルフィリン‐ロジウム錯体から選択される分子触媒であることが可能であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が酵素触媒であり、メディエータが前記触媒と会合し、前記メディエータが、特に、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基質(S
1)トランスポーターが1つ又は複数の前記バイオセンサ上に配置されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各グループの前記バイオセンサは、
p1:触媒の量;
p2:触媒が酵素触媒である場合の触媒のミカエリス定数、又は、触媒が化学触媒である場合の触媒の飽和限界;
p3:触媒が酵素触媒である場合、存在すれば、触媒のメディエータの量;又は、
p4:存在すれば、基質(S
1)トランスポーターのミカエリス定数、
から選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオセンサ(BC)は、
BC
11.........BC
1i.........BC
1n...
BC
21.........BC
2i.........BC
2n...
BC
j1.........BC
ji.........BC
jn...
BC
m1.........BC
mi.........BC
mn...
と記され、
m及びnはそれぞれ整数であり、mはグループの数であり、nは各グループ内のバイオセンサの数であり、バイオセンサBC
11~BC
1nがグループ1に属し、バイオセンサBC
m1~BC
mnがグループmに属し、
1つのグループ内の各バイオセンサ間で、p1~p4から選択されるパラメータが変更され、2つの異なるグループのバイオセンサ間で、これらのパラメータp1~p4のうちの他のパラメータが変化されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
-前記基質(S
1)がグルコースであり、
-前記触媒は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、及び、セロビオースデヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特に、GLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT6、GLUT8、GLUT10及びGLUT12から選択されるグルコーストランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
-前記基質(S
1)が乳酸塩であり、
-前記触媒は、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特にMCT1、MCT2、MCT3、MCT4から選択される乳酸トランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを備え、各バイオセンサが酸化還元反応によって誘導される信号に関する検量線を有し、
-1つのグループ内の前記バイオセンサは、前記信号の測定値が前記グループ内のバイオセンサ同士で異なる分離濃度(SC)と呼ばれる前記基質(S
1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、
-複数のグループが存在する場合、異なるグループにおける前記バイオセンサは、グループ間で同一の最初の部分を有することなく異なる検量線を有し、各バイオセンサは、前記基質(S
1)の触媒酸化還元反応によって誘導される信号を測定することができ、及び、
各バイオセンサは、
-触媒と、
-酵素触媒の場合、適用可能であれば、そのメディエータと、
-適用可能であれば、基質(S
1)トランスポーターと、
を備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
各バイオセンサは、電気化学信号を測定することができるとともに、前記基質(S
1)の酸化又は還元反応によって誘導される電流を間に通す、作用電極、基準電極、及び、対向電極を備え、前記電気化学信号は、この電流の強度、又は、前記基質(S
1)の酸化還元反応中の前記電極間の電位差のいずれかであることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
それぞれのバイオセンサごとに、前記作用電極が炭素、金、又は、白金電極であり、前記基準電極が白金、金、又は、ダイヤモンド電極であり、前記基準電極が塩化銀電極であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記触媒が酵素触媒又は化学触媒であり、前記化学触媒が特に白金、白金ナノ構造、白金合金ナノ構造、金ナノ構造、及び、金合金ナノ構造から選択される非生物的触媒である、又は、特にポルフィリン‐金錯体及びポルフィリン‐ロジウム錯体から選択される分子触媒であることが可能であることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記触媒が酵素触媒であり、メディエータが前記触媒と会合し、前記メディエータが、特に、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択されることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
各グループの前記バイオセンサは、
p1:触媒の量;
p2:触媒が酵素触媒である場合の触媒のミカエリス定数、又は、触媒が化学触媒である場合の触媒の飽和限界;
p3:触媒が酵素触媒である場合、存在すれば、触媒のメディエータの量;又は、
p4:存在すれば、基質(S
1)トランスポーターのミカエリス定数、
から選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記バイオセンサ(BC)は、
BC
11.........BC
1i.........BC
1n...
BC
21.........BC
2i.........BC
2n...
BC
j1.........BC
ji.........BC
jn...
BC
m1.........BC
mi.........BC
mn...
と記され、
m及びnはそれぞれ整数であり、mはグループの数であり、nは各グループ内のバイオセンサの数であり、バイオセンサBC
11~BC
1nがグループ1に属し、バイオセンサBC
m1~BC
mnがグループmに属し、
1つのグループ内の各バイオセンサ間で、p1~p4から選択されるパラメータが変更され、2つの異なるグループのバイオセンサ間で、これらのパラメータp1~p4のうちの他のパラメータが変化されることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
-前記基質(S
1)がグルコースであり、
-前記触媒は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、及び、セロビオースデヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特に、GLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT6、GLUT8、GLUT10及びGLUT12から選択されるグルコーストランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
-前記基質(S
1)が乳酸塩であり、
-前記触媒は、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特にMCT1、MCT2、MCT3、MCT4から選択される乳酸トランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記バイオセンサが支持体上に配置され、前記作用電極、前記基準電極、及び、前記対向電極が前記支持体上にスクリーン印刷されることを特徴とする、請求項11から19までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記バイオセンサが配置される前記支持体は、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板などのプラスチック板、アルミナなどのセラミック板、又は、アルミナと別のセラミックとの間の複合体、ナイロン板、シリコン板、ポリスチレン系フィルム、又は、ポリエステルシートから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
カプセル化、グラフト化、吸収、又は、捕捉によって前記触媒が各バイオセンサの前記作用電極上に堆積されることを特徴とする、請求項20又は21に記載の装置。
【請求項23】
前記触媒は、酵素触媒であるとともに、各バイオセンサの前記作用電極の表面上に、保護層の内側の前記作用電極の前記表面に適用されることによって存在し、前記保護層は、特に、キトサン、ナフィオン(Nafion)、ポリピロール、又は、ポリアクリル酸を有し、又は、ポリアニリン、ポリ乳酸、ポリドーパミン、又は、ポリエチレングリコールなどの導電性ポリマーを有することを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記酵素触媒メディエータが前記保護層内の前記酵素触媒とともに封入されることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
基質(S
1)トランスポーターが、層として前記作用電極に又は場合により酵素触媒を含む前記保護層上に適用されることにより存在し、そのメディエータは、場合により、前記基質(S
1)トランスポーターを取り囲むプロテオリポソームの層を堆積させることによって存在することを特徴とする、請求項20から24までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記支持体及び前記支持体によって担持される前記バイオセンサは、キトサン、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(4‐ビニルピリジン‐co‐スチレン)、又は、アルミナの層でコーティングされることを特徴とする、請求項20から25までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
媒体中における前記基質(S
1)の実際の濃度が存在する領域を決定するためにユーザの皮膚上に配置される又はユーザに埋め込まれ、前記基質がグルコースであり、前記媒体が血液であることを特徴とする、請求項20から26までのいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサのアレイを使用して、酵素により酸化還元反応を受けやすい基質の、媒体中における、実際の濃度が存在する領域を、経時的に安定した態様で決定する方法、及び、方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、1980年の1億800万人に比べて、2014年には4億2200万人が罹患した世界的な流行病であり、現在の罹患率の傾向が続けば、世界で7番目に多い死因になると予想される(非特許文献1、2、3)。2016年には、フランスの人口の約12%が糖尿病と診断された(非特許文献4)。死亡率の増加に加えて、糖尿病とその合併症は、かなりの経済的損失と多額の社会保障費(仕事の停止、治療、入院...)をもたらす(非特許文献4)。実際に、フランスでは、糖尿病治療の費用は約100億ユーロであり、その80%は合併症の治療に関連している。これらの合併症は、信頼性の高いリアルタイム血糖測定装置を使用することで、予測及び/又は回避することができる(非特許文献5)。
【0003】
糖センサの出現は、患者がインスリンレベルを管理できるようにしており、糖尿病による死亡率を抑えることに役立つ。従来の糖試験装置は、電気化学的方法に基づく糖センサ(糖メーター)を含む。糖バイオセンサは、糖オキシダーゼ(GOx)や糖デヒドロゲナーゼ(GDH)などの糖酸化を触媒できる酵素と会合する導電性材料に基づく作用電極と、白金、金、又は炭素を有することができる対向電極とから成る。酵素は、電極の表面又はその近くに固定化される。多くの場合、酵素は、酵素と電極との間の電子の移動を可能にするレドックスメディエータと会合される。GOxの場合に最も一般的に使用されるメディエータは、フェロセン、フェロシアン化物、及びオスミウム錯体である。作用電極と対向電極は試験サンプルと接触して配置され、作用電極と対向電極との間に電圧が印加されると、電極と試験サンプルとによって作成された回路に電流が流れる。この電流は、酵素によって触媒される作用電極での糖の酸化反応によって誘導され、この電流の値は、試験サンプル中の糖の濃度に依存する。
【0004】
最も一般的な血糖検査は、少量の血液サンプルを分析することによって、毎日又は毎週多くの検査を行なうことを伴い(非特許文献5、6)、これは、不都合であり、不快であり、したがって、患者の受容性を低下させる。更に、このような試験は、休憩時間を考慮しておらず、測定値の概算につながる。更に、このタイプのモニタリングはリアルタイムの情報を提供しないため、低血糖(<3.0mM)及び高血糖(>11.1mM)の事象を事前に防ぐことはできない。
【0005】
血糖値の変化の傾向、方向、頻度を理解するには、継続的で自律的な血糖モニタリングが不可欠である。糖尿病患者が皮膚にパッチを貼って血糖値をリアルタイムで監視できるようにする間質性血糖測定器が利用可能である。しかしながら、これらの装置は、バイオセンサのドリフトに起因して、2週間ごとに交換する必要がある。実際に、一般的な酵素バイオセンサ、特に糖バイオセンサの時間のドリフトは、再調整や交換を必要とせずに長期間にわたって感度を維持できる酵素バイオセンサの開発の主要な鍵である。
【0006】
電気化学酵素バイオセンサは、時間の経過とともに劣化する。これは、酵素の安定性の低下、触媒活性の低下、及び電極の劣化によるものである。
【0007】
[
図1]は、この現象と糖定量への直接的な影響を示す。
【0008】
[
図1]には、糖濃度の関数として電気化学的バイオセンサの作用電極で起こる反応速度を示す3つのグラフが示される。左のグラフでは、所定の速度における糖濃度が決定される(速度β及びδは、α及びγの血糖速度(BGR)に対応する)。時間が経つにつれて、酵素分解は反応速度を変化させる。これは、[
図1]の真ん中のグラフで見ることができる:BGRαはもはや速度βではなく、速度δによって定義される。したがって、バイオセンサによって与えられる値はもはや信頼できない。そのため、右のグラフで表わされる較正が必要である。較正は以下のように実行される。
(1)ユーザは一滴の血液を介して自分のBGRを測定し、αに等しい自分の現在のBGRをバイオセンサに送信する。
(2)同じ瞬間にセンサによって測定された速度δが記録される。
(3)速度をBGRと関連付けるセンサに含まれるプログラムは、2つの測定値でリセットされる。
【0009】
触媒活性は回復しない。一定時間が経過すると、バイオセンサの精度が大幅に低下し、バイオセンサの交換が必要になる。
【0010】
したがって、酵素バイオセンサの測定では、ドリフトは避けられず、外部較正が必要である。このため、長期間にわたって動作できる埋め込み可能な糖バイオセンサの開発は、現在手の届かないところにある。更に、一般に、全ての酵素バイオセンサに関し、この測定ドリフトが、酵素バイオセンサが市場に出回らない主な理由であると考えられている。
【0011】
血糖値を測定するように設計される現在の糖バイオセンサは、経時的なバイオセンサのドリフトによって制限され、これは、長期間にわたって動作して糖尿病患者の血糖値を継続的に測定できる埋め込み型又は非埋め込み型の糖バイオセンサの開発に対する大きな障害である。
【0012】
したがって、既存のバイオセンサの測定ドリフトから離れて「自己較正」するとともに、交換や外部較正を必要とせずに長期間安定して血糖を継続的に監視できる酵素糖バイオセンサが必要である。これは、既知の特性の一連のバイオセンサの測定値であって特性が測定される値に基づくのではない測定値を比較することによって達成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Global report on diabetes (2016). World Health Organization
【非特許文献2】International Diabetes federation (2016)
【非特許文献3】Mechanisms of diabetic complications. Forbes JM1, Cooper ME. Physiol Rev. 2013 Jan;93(1):137-88. doi: 10.1152/physrev.00045.2011
【非特許文献4】Institut de veille sanitaire (France)
【非特許文献5】Home Blood Glucose Biosensors: A Commercial Perspective. Jeffrey D. Newman & Anthony P.F. Turner. Biosensors and Bioelectronics, Volume 20, Issue 12, 20th Anniversary of Biosensors and Bioelectronics, 15 June 2005, Pages 2435-2453
【非特許文献6】Electrochemical Glucose Biosensors. J. Wang. Chem. Rev., 2008, 108 (2), pp 814-825
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、触媒による触媒酸化還元を受けやすい任意の分子で構成される基質(S1)の、媒体中における、実際の濃度が存在する領域を、経時的に安定した態様で決定するための方法において、
a)少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを取得するステップであって、各バイオセンサが、酸化還元反応によって誘導される信号の検量線を有し、
-1つのグループ内のバイオセンサが、分離濃度(SC)と呼ばれる、基質(S1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、その部分から、信号の測定値がグループ内のバイオセンサ同士で異なり、
-複数のグループが存在する場合、異なるグループ内のバイオセンサが、同一の最初の部分を有することなく、異なる検量線を有する、
ステップと、
b)バイオセンサを媒体と接触させて配置するステップと、
c)1つ又は複数のグループ内のそれぞれのバイオセンサごとに酸化又は還元反応によって誘導された信号を測定するステップと、
d)全てのバイオセンサによって生成された全ての信号値を比較するステップであって、バイオセンサの単一のグループの場合、
-全ての信号値が等しければ、基質(S1)の濃度が最低SC以下であり、
-全ての信号値が異なれば、基質(S1)の濃度が最高SCよりも高く、
-バイオセンサの一部が同じ信号値を有していれば、基質(S1)の濃度が、その部分のバイオセンサの最低SC以下であるとともに、次に最も低いSCを伴うバイオセンサのSCよりも大きく、
バイオセンサの複数のグループの場合、
-各グループにおける全ての信号値が等しければ、基質(S1)の濃度が最低SC以下であり、
-全てのグループで全ての信号値が異なれば、基質(S1)の濃度が最高SCよりも高く、
-1つのグループにおけるバイオセンサの一部が同じ信号値を有していれば、基質(S1)の濃度が、その部分のバイオセンサの最低SC以下であるとともに、関連するグループ内で次に最も低いSCを伴うバイオセンサのSCよりも大きく、
-バイオセンサの複数のグループの一部において、1つのグループにおける全てのバイオセンサが同じ信号値を有し、残りの部分で1つのグループ内の全てのバイオセンサが異なる信号値を有していれば、濃度が、各グループで同じ信号値を伴う1つ又は複数のグループの最低SC以下であるとともに、各グループで異なる信号値を伴う1つ又は複数のグループの最高SCよりも大きい、
ステップと、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0015】
分離濃度は2つの検量線間の逐次比較によって決定されるため、n個のバイオセンサとn個の対応する検量線とを伴うグループの場合、このグループにはn-1個の分離濃度がある。
【0016】
信号が電気化学信号となることができ、このとき、各バイオセンサは、酸化又は還元反応によって誘導される電流が間を通過する、作用電極、基準電極、及び、対向電極を備え、電気化学信号は、この電流の強度又は基質(S1)の酸化還元反応中の電極間の電位差のいずれかである。
【0017】
それぞれのバイオセンサごとに、作用電極が炭素、金、又は、白金電極となることができ、基準電極が白金、金、又は、ダイヤモンド電極となることができ、基準電極が塩化銀電極となることができる。
【0018】
触媒が酵素触媒又は化学触媒であってもよく、化学触媒が特に白金、白金ナノ構造、白金合金ナノ構造、金ナノ構造、及び、金合金ナノ構造から選択される非生物的触媒である、又は、特にポルフィリン‐金錯体及びポルフィリン‐ロジウム錯体から選択される分子触媒である。
【0019】
触媒が酵素触媒である場合、メディエータが当該触媒と会合してもよく、当該メディエータは、特に、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体の中から選択される。
【0020】
基質(S1)トランスポーターを1つ又は複数のバイオセンサ上に配置することができる。
【0021】
各グループのバイオセンサは、
p1:触媒の量;
p2:触媒が酵素触媒である場合の触媒の酸化還元Km、又は、触媒が化学触媒である場合の触媒の飽和限界;
p3:触媒が酵素触媒である場合、存在すれば、触媒のメディエータの量;又は、
p4:存在すれば、基質(S1)トランスポーターの輸送Km
から選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていてもよい。
【0022】
酵素触媒の酸化還元Kmは触媒のミカエリス定数である。ミカエリス定数は、反応速度が最大速度の半分になる基質濃度を表わす。
【0023】
酵素触媒のミカエリス定数は、その触媒に固有であり、触媒が由来する生物とその抽出プロセスとに依存する。
【0024】
例えば、市販のグルコースオキシダーゼ酵素の場合、ミカエリス定数は、P.ostreatus由来のグルコースオキシダーゼの場合には1.34mMであり、P.amagasakiense由来のグルコースオキシダーゼの場合には5.7mMであり、P.pinophilum由来のグルコースオキシダーゼの場合には6.2mMであり、T.flavus由来のグルコースオキシダーゼの場合には10.2mMであり、A.niger由来のグルコースオキシダーゼの場合には30mMであり、P.chrysosporium由来のグルコースオキシダーゼの場合には38mMよりも大きい。
【0025】
化学触媒の飽和限界は、基質(S1)の酸化還元反応によって誘導される信号の測定値が最大限界値に達する基質(S1)の濃度である。Kmは、基質の酸化還元反応によって誘導される信号が飽和限界の半分に達するのに必要な基質濃度である。飽和限界は、使用する化学触媒の性質に依存するため、変動する可能性がある。
【0026】
基質トランスポーターの輸送Kmは、トランスポーターのミカエリス定数である。このミカエリス定数は、基質の輸送速度が最大速度の半分になる基質濃度を表わす。
【0027】
一例として、グルコーストランスポーターGlu1の輸送Kmは3mMであり、Glu2は17mMであり、Glu3は1.8mMであり、Glu4は5mMであり、Glu8は2.4mMであり、Glu9は0.5mMである。
【0028】
バイオセンサ(BC)は、
BC11.........BC1i.........BC1n...
BC21.........BC2i.........BC2n...
BCj1.........BCji.........BCjn...
BCm1.........BCmi.........BCmn...
と記すことができ、
m及びnはそれぞれ整数であり、mはグループの数であり、nは各グループ内のバイオセンサの数であり、バイオセンサBC11~BC1nがグループ1に属し、バイオセンサBCm1~BCmnがグループmに属し、
1つのグループ内の各バイオセンサ間で、p1~p4から選択されるパラメータが変更され、2つの異なるグループのバイオセンサ間で、これらのパラメータp1~p4のうちの他のパラメータが変化される。
【0029】
一例として、触媒メディエータの量は、そのグループの各バイオセンサが異なる検量線を有するように、第1のグループにおける各バイオセンサ間で変化される。
【0030】
このとき、バイオセンサの第2の異なるグループを得るために、この第2のグループ内の各バイオセンサ間で触媒のメディエータの量の同じ変動を維持することができ、また、第1のグループと第2のグループとの間に差を生じさせるために、第2のパラメータは、これらの2つのグループ間で変化され、例えば、触媒の酸化還元Kmである。Kmは、例えば、第1のグループ内のそれぞれのバイオセンサごとに第1の値で選択され、第2グループ内のそれぞれのバイオセンサごとに第1の値とは異なる第2の値で選択され得る。
【0031】
特に、
-基質(S1)がグルコース又は乳酸塩となることができ、
-触媒は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、及び、セロビオースデヒドロゲナーゼ、又は、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-基質(S1)トランスポーターは、存在すれば、必要に応じて、特に、GLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT6、GLUT8、GLUT10及びGLUT12から選択されるグルコーストランスポーターとなり得る、或いは、特に、MCT1、MCT2、MCT3、MCT4から選択される乳酸トランスポーターとなり得る。
【0032】
また、本発明は、前述の方法を実施するための装置であって、少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを備え、各バイオセンサが酸化還元反応によって誘導される信号に関する検量線を有し、
-1つのグループ内のバイオセンサは、信号の測定値がグループ内のバイオセンサ同士で異なる分離濃度(SC)と呼ばれる基質(S1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、
-複数のグループが存在する場合、異なるグループにおけるバイオセンサは、グループ間で同一の最初の部分を有することなく異なる検量線を有し、各バイオセンサは、基質(S1)の触媒酸化還元反応によって誘導される信号を測定することができ、及び、
各バイオセンサは、
-触媒と、
-酵素触媒の場合、適用可能であれば、そのメディエータと、
-適用可能であれば、基質(S1)トランスポーターと、
を備える、
ことを特徴とする装置にも関連する。
【0033】
各バイオセンサは、電気化学信号を測定することができるとともに、基質(S1)の酸化又は還元反応によって誘導される電流を間に通す、作用電極、基準電極、及び、対向電極を備え、電気化学信号は、この電流の強度、又は、基質(S1)の酸化還元反応中の当該電極間の電位差のいずれかである。
【0034】
それぞれのバイオセンサごとに、作用電極が炭素、金、又は、白金電極となることができ、基準電極が白金、金、又は、ダイヤモンド電極となることができ、基準電極が塩化銀電極となることができる。
【0035】
触媒が酵素触媒又は化学触媒であってもよく、化学触媒が特に白金、白金ナノ構造、白金合金ナノ構造、金ナノ構造、及び、金合金ナノ構造から選択される非生物的触媒である、又は、特にポルフィリン‐金錯体及びポルフィリン‐ロジウム錯体から選択される分子触媒であることが可能である。
【0036】
触媒が酵素触媒である場合、メディエータが当該触媒と会合してもよく、当該メディエータが、特に、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択される。
【0037】
各グループの当該バイオセンサは、
p1:触媒の量;
p2:触媒が酵素触媒である場合の触媒の酸化還元Km、又は、触媒が化学触媒である場合の触媒の飽和限界;
p3:触媒が酵素触媒である場合、存在すれば、触媒のメディエータの量;又は、
p4:存在すれば、基質(S1)トランスポーターの輸送Km、
から選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていてもよい。
【0038】
バイオセンサ(BC)は、
BC11.........BC1i.........BC1n...
BC21.........BC2i.........BC2n...
BCj1.........BCji.........BCjn...
BCm1.........BCmi.........BCmn...
と記することができ、
m及びnはそれぞれ整数であり、mはグループの数であり、nは各グループ内のバイオセンサの数であり、バイオセンサBC11~BC1nがグループ1に属し、バイオセンサBCm1~BCmnがグループmに属し、
1つのグループ内の各バイオセンサ間で、p1~p4から選択されるパラメータが変更され、2つの異なるグループのバイオセンサ間で、これらのパラメータp1~p4のうちの他のパラメータが変化される。
【0039】
特に、
-基質(S1)がグルコース又は乳酸塩となることができ、
-触媒は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、及び、セロビオースデヒドロゲナーゼ、又は、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であってもよく、
-酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-基質(S1)トランスポーターは、存在すれば、必要に応じて、特に、GLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT6、GLUT8、GLUT10及びGLUT12から選択されるグルコーストランスポーターとなり得る、或いは、特に、MCT1、MCT2、MCT3、MCT4から選択される乳酸トランスポーターとなり得る。
【0040】
特定の実施例では、バイオセンサが支持体上に配置されてもよく、作用電極、基準電極、及び、対向電極が支持体上にスクリーン印刷される。
【0041】
バイオセンサが配置される支持体は、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板などのプラスチック板、アルミナなどのセラミック板、又は、アルミナと別のセラミックとの間の複合体、ナイロン板、シリコン板、ポリスチレン系フィルム、又は、ポリエステルシートから選択され得る。
【0042】
カプセル化、グラフト化、吸収、又は、捕捉によって触媒を各バイオセンサの作用電極上に堆積されることができる。
【0043】
触媒が酵素触媒である場合、触媒は、各バイオセンサの作用電極の表面上に、保護層の内側の作用電極の当該表面に塗布されることによって存在してもよく、保護層は、特に、キトサン、ナフィオン(Nafion)、ポリピロール、又は、ポリアクリル酸を有し、又は、ポリアニリン、ポリ乳酸、ポリドーパミン、又は、ポリエチレングリコールなどの導電性ポリマーを有する。酵素触媒メディエータは、保護層内の当該酵素触媒とともに封入されてもよい。
【0044】
基質(S1)トランスポーターが、層として作用電極に又は場合により酵素触媒を含む保護層上に塗布されることにより存在することができ、そのメディエータは、場合により、基質(S1)トランスポーターを取り囲むプロテオリポソームの層を堆積させることによって存在する。
【0045】
バイオセンサがその上に配置される支持体及びバイオセンサは、キトサン、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(4‐ビニルピリジン‐co‐スチレン)、又は、アルミナの層でコーティングされ得る。
【0046】
本発明に係る装置は、媒体中の基質(S1)の実際の濃度が存在する領域を決定するために、ユーザの皮膚上に配置することができる又はユーザに埋め込むことができ、当該基質が糖であり、当該媒体が血液である。
【0047】
特に、糖濃度を決定するための埋め込み可能な装置の場合、バイオセンサは、2~10mMの濃度範囲内において0.5~1mMの精度で実際の糖濃度を決定できるように選択されてもよい。つまり、0.5又は1mMのステップサイズを伴う分離濃度が2~10mMのバイオセンサを選択する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】糖濃度の関数として電気化学的バイオセンサの作用電極で起こる反応速度を示す図である。
【
図2】各バイオセンサにおける作用電極、対向電極、及び、基準電極の配置を示す図である。
【
図3】6つのグループのバイオセンサのそれぞれについて決定された検量線を示す図である。
【
図4】10個のグループのそれぞれのバイオセンサごとに決定された検量線を示す図である。
【
図5】バイオセンサの作用電極1及び作用電極1の表面への糖Gの接近を示す図である。
【
図6】実例3における4つのバイオセンサの検量線を示す図である。
【
図7】バイオセンサA1及びA2に関して測定された電流強度の比率を経時的な乳酸濃度の関数としてプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の実例は、その範囲を限定することなく本発明を例示する。
【0050】
実例1:メディエータ[M]の量及び酵素[E]の量の変動に基づく自己較正バイオセンサ
6対のバイオセンサのアレイは、ガラス板の表面に作製される。電極はガラス板にスクリーン印刷で印刷される。この堆積方法は、印刷装置を使用してカーボンインクから固体支持体上にカーボン電極を印刷することにある。各バイオセンサは、カーボン作用電極、白金対向電極、Ag/AgCl基準電極から構成される。
【0051】
[
図2]は、各バイオセンサにおける作用電極、対向電極、及び、基準電極の配置を示す。各バイオセンサの作用電極は、テルピネオールとエチルセルロースとから構成される有機溶液に分散された40重量%の炭素粉末を含むカーボンインクからスクリーン印刷によって製造される。各バイオセンサの基準電極及び対向電極は、テルピネオールとエチルセルロースから構成される有機溶液中に分散された40重量%の白金粉末を含む白金インクと、テルピネオールとエチルセルロースとから構成される有機溶液中に分散された40重量%の銀粉末を含む銀インクとからそれぞれスクリーン印刷によって作られる。
【0052】
各作用電極上には、酵素グルコースオキシダーゼ(GOx)とそのメディエータであるナフトキノンとを以下の表1に示す量で含むナフィオン‐テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)の5%体積溶液10μLが塗布される。これを室温で6時間空気乾燥させることができる。
【0053】
これにより、2つのバイオセンサの6つのグループに属する12個のバイオセンサのアレイがもたらされる。第1のグループ内のバイオセンサはBC11及びBC12と記され、第2のグループ内のバイオセンサはBC21及びBC22と記され、第3のグループに関してはBC31及びBC32と記され、第4のグループに関してはBC41及びBC42と記され、第5のグループに関してはBC51及びBC52と記され、第6のグループに関してはBC61及びBC62と記される。
【0054】
2つのバイオセンサの各グループ内で、バイオセンサは同じ量のGOx酵素を有し、異なる量のメディエータを示す。グループごとに、GOx酵素及びメディエータの量が変化する。
【0055】
その後、バイオセンサが較正される。この初期較正は、既知の糖濃度を伴う糖標準溶液における酸化還元反応によって誘導される電流の強度を測定することにある。糖は作用電極で酸化され、一方、酸素は対向電極で還元される。
【0056】
[
図3]は、6つのグループのバイオセンサのそれぞれについて決定された検量線を示す。これらの検量線により、同じグループの2つのバイオセンサ間で糖の酸化還元反応の電流強度が異なる分離濃度を得ることができる。
【0057】
表1は、見出された分離濃度(SC)値も示す。
【表1】
【0058】
分析されるべきサンプルの糖濃度領域を決定するために、バイオセンサのグループが当該サンプルと接触させられ、各バイオセンサで測定された電流の値が測定され、糖濃度の値が以下の方法にしたがって決定される。
【0059】
2つのバイオセンサBC11及びBC12で測定された値が他のバイオセンサの値と同様に同一である場合、それは、サンプル中の糖濃度がバイオセンサBC11及びBC12のこのグループの分離濃度である1mMよりも低くグループの中で最も低い分離濃度であることを意味する。
【0060】
2つのバイオセンサBC11及びBC12で測定された値が異なる場合、それは、サンプル中の糖濃度がバイオセンサBC11及びBC12のこのグループの分離濃度である1mMよりも高いことを意味する。
【0061】
次いで、バイオセンサ、すなわち、BC21及びBC22バイオセンサの次のグループで測定された値が比較される。2つのバイオセンサBC21及びBC22で測定された値が同一である場合、これは、サンプル中の糖濃度がバイオセンサグループBC21及びBC22の分離濃度である2mMよりも低いことを意味する。そうすることで、サンプル中の糖濃度が1mM~2mMであることが分かる。
【0062】
以下のバイオセンサについても同じ手順に従う。つまり、BC21及びBC22バイオセンサで測定された値が異なり、BC31及びBC32バイオセンサで測定された値が同じである場合、糖濃度は2mM~3mMであり、以下のバイオセンサグループについても同様である。
【0063】
全てのバイオセンサの全ての値が異なる場合、それは、サンプル中の糖濃度がバイオセンサBC61及びBC62の最後のグループのうちの1つである最高分離濃度、つまり6mMよりも高いことを意味する。
【0064】
したがって、この方法は、それぞれのグループごとに各バイオセンサ内で測定された糖酸化還元反応の強度の値を比較することによって糖濃度の取り囲みを可能にする。
【0065】
このプロセスは、糖濃度を確立できるようにする直接に測定される値ではなく、各バイオセンサで測定された値間の比較であるため、バイオセンサのドリフトを回避する。
【0066】
実例2:酵素のKmの変動とメディエータの量とに基づく自己較正バイオセンサ
2つのバイオセンサの10個のグループのアレイがガラス板の表面上に堆積される。作用電極、対向電極、基準電極が実例1のように印刷される。
【0067】
作用電極のそれぞれに、3mg/mLのグルコースオキシダーゼ酵素とそのメディエータであるナフトキノンとを含む10μLのナフィオン‐TBAB溶液が、表2に示す量で堆積される。グルコースオキシダーゼ酵素のKmは、バイオセンサによって異なり、表2に示される。
【0068】
したがって、10組のバイオセンサに属する20個のバイオセンサのアレイを作成する。このネットワークは次のように記すことができる。
BC11.........12
BC21.........22
BC31.........32
BC41.........42
BC51.........52
BC61.........62
BC71.........72
BC81.........82
BC91.........92
BC101.........102
【0069】
各組内で、グルコースオキシダーゼのKmは同じであり、メディエータの量は異なる。組ごとに、グルコースオキシダーゼのKmのみが異なる。
【0070】
[
図4]は、10個のグループのそれぞれのバイオセンサごとに決定された検量線を示す。これらの検量線により、同じグループの2つのバイオセンサ間で糖の酸化還元反応の電流強度が異なる分離濃度を得ることができる。
【表2】
【0071】
実例1と同じ手順を使用して、糖濃度範囲を決定する。
【0072】
例えば、バイオセンサ対BC11,BC12;BC21,BC22;BC31,BC32;BC41,BC42;BC51,BC52の信号の全ての値がバイオセンサの各対間で同一である場合、それは、糖の濃度がこれらの対の最低分離濃度よりも低いことを意味する。ここで、組BC51,BC52の濃度は3.1mMである。
【0073】
したがって、他のバイオセンサの信号値は異なり、これは、糖濃度がこれらの組の最高分離濃度よりも高いことを意味する。ここで、組BC61,BC62の濃度は2.7mMである。
【0074】
したがって、糖濃度は2.7mM~3.1mMの範囲である。
【0075】
実例3:バイオミメティック「自己較正」バイオセンサ
4つのバイオセンサのグループは、ガラス板の表面上に堆積される。作用電極、対向電極、及び、基準電極は、実例1のように印刷される。
【0076】
各炭素作用電極1上に、2mMアニリンと2mg/mLグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素3を含むリン酸カリウム緩衝液(100mM、pH7)からのポリアニリン(PANI)の層2が電解重合によって堆積される。
【0077】
電解重合は、-0.5V~1V(5サイクル、スキャンレート10mV/s)のサイクリックボルタンメトリーによって、白金線を対向電極として及び銀線を基準電極として、3電極セルで実行される。
【0078】
ポリアニリン層が堆積された各作用電極上に、グルコーストランスポータータンパク質5を含むプロテオリポソームを含む100μLのリン酸カリウム緩衝液(100mM、pH7)が、第1の炭素電極上に0.3mMのKm、第2の炭素電極上に0.6mMのKm、第3の炭素電極上に2mMのKm、第4の炭素電極上に5mMのKmを伴って塗布される。グルコーストランスポーターにおけるリン酸緩衝液の濃度は0.11mg/mLである。プロテオリポソームの直径は100nm~200nmである。各作用電極の表面に対するプロテオリポソーム4の融合を可能にするために20分間待つ。
【0079】
プロテオリポソーム4の融合により、グルコーストランスポーター5が位置される作用電極の表面上に平坦な脂質二重層6を形成できる。
【0080】
[
図5]は、バイオセンサの作用電極1及び作用電極1の表面への糖Gの接近を示す。第1のステップIにおいて、糖Gはグルコーストランスポータータンパク質5に接近する。ステップIIにおいて、グルコーストランスポータータンパク質5によって糖Gが取り込まれる。ステップIIIにおいて、糖Gは、グルコーストランスポータータンパク質5から放出され、GOx酵素3が矢印Fの方向で位置されるポリアニリン層2に移動し、そこで、糖Gが酸化される。ステップIVにおいて、グルコーストランスポータータンパク質5は再び糖をいつでも受け取ることができる状態にある。
【0081】
グルコーストランスポータータンパク質は、作用電極の表面に堆積したグルコースオキシダーゼ(Gox)への糖のアクセスを調節する。
【0082】
較正により、バイオセンサ間の分離濃度を決定できる。この場合、検量線は、それぞれのバイオセンサごとにヒストグラムの形式で提示される。この場合、分離濃度は、グルコーストランスポーターがそれ以上の糖を作用電極に輸送できなくなるため、バイオセンサの電流値がプラトーに達する濃度に対応する。
【0083】
[
図6]は、実例3における4つのバイオセンサの検量線を示す。
【0084】
表3は、グルコーストランスポーターのKm及びバイオセンサ間の分離濃度を示す。
【表3】
【0085】
分析されるべきサンプルの糖濃度領域を決定するために、4つのバイオセンサが当該サンプルと接触させられ、各バイオセンサで測定された電流の値が測定され、糖濃度の値が以下の方法によって決定される。
【0086】
各バイオセンサで測定された全ての値が等しい場合、それは、糖濃度が0.2mMの最低分離濃度以下であることを意味する。
【0087】
第1のバイオセンサに関して測定された値が他のバイオセンサの測定値と異なり、他の3つのバイオセンサのそれぞれにおける値が同じである場合、糖濃度は、第1のバイオセンサの分離濃度よりも大きく、第2のバイオセンサの分離濃度以下である。したがって、糖濃度は0.2mMよりも大きく、0.5mM以下になる。
【0088】
バイオセンサによって測定された全ての値が異なる場合、これは、糖濃度が第3のバイオセンサの分離濃度、つまり1.5mMよりも高いことを意味する。
【0089】
実例4:埋め込み型バイオセンサ
2つのバイオセンサの10個のグループのセットがシリコンウエハの表面上に堆積される。作用電極、対向電極、及び、基準電極が実例1のように印刷される。その後、酵素グルコースオキシダーゼ及びそのメディエータが、実例1に示される量で各作用電極に塗布される。
【0090】
その後、シリコン板が室温で10秒間にわたって2%キトサン溶液中に浸漬することによって生体適合性キトサン膜で覆われる。次に、板を4℃で8時間にわたって乾燥させる。
【0091】
これにより、ユーザの血液中の糖濃度を測定できるようにするために、ユーザの皮膚の下に埋め込むことができるバイオセンサが得られる。
【0092】
実例5:乳酸濃度を測定するための自己較正バイオセンサ
2つのバイオセンサがガラス板の表面上に堆積される。作用電極、対向電極、及び、基準電極は、実例1のように印刷される。
【0093】
各作用電極上に、以下の表4に示す量で酵素乳酸オキシダーゼ(LOx)とそのメディエータであるナフトキノンを含む体積1%のキトサン溶液10μLが塗布される。これを室温で6時間にわたって空気乾燥させる。
【表4】
【0094】
[
図7]は、バイオセンサA1及びA2に関して測定された電流強度の比率を経時的な乳酸濃度の関数としてプロットしたものである。
【0095】
[
図7]から分かるように、バイオセンサA1及びA2に関して測定された電流強度の比率は、測定の初日及び最初の測定から10日後に類似している。
【0096】
これは、A1及びA2バイオセンサの経時的なドリフトが同一であることを意味する。したがって、バイオセンサのセットを使用して、分析されるべきサンプルの乳酸濃度領域を決定することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒による触媒酸化還元を受けやすい任意の分子で構成される基質(S
1)の、媒体中における、実際の濃度が存在する領域を、経時的に安定した態様で決定するための方法において、
a)少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを取得するステップであって、各バイオセンサが、酸化還元反応によって誘導される信号の検量線を有し、
-1つのグループ内の前記バイオセンサが、分離濃度(SC)と呼ばれる、前記基質(S
1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、その部分から、前記信号の測定値が前記グループ内のバイオセンサ同士で異なり、
-複数のグループが存在する場合、異なるグループ内の前記バイオセンサが、同一の最初の部分を有することなく、異なる検量線を有する、
ステップと、
b)
ユーザの皮膚上に前記バイオセンサを配置することによって、前記バイオセンサを前記媒体と接触させて配置するステップと、
c)1つ又は複数の前記グループ内のそれぞれの前記バイオセンサごとに酸化又は還元反応によって誘導された前記信号を測定するステップと、
d)全ての前記バイオセンサによって生成された全ての信号値を比較するステップであって、バイオセンサの単一のグループの場合、
-全ての信号値が等しければ、前記基質(S
1)の濃度が最低SC以下であり、
-全ての信号値が異なれば、前記基質(S
1)の濃度が最高SCよりも高く、
-前記バイオセンサの一部が同じ信号値を有していれば、前記基質(S
1)の濃度が、その部分の前記バイオセンサの最低SC以下であるとともに、次に最も低いSCを伴う前記バイオセンサのSCよりも大きく、
バイオセンサの複数のグループの場合、
-各グループにおける全ての信号値が等しければ、前記基質(S
1)の濃度が最低SC以下であり、
-全てのグループで全ての信号値が異なれば、前記基質(S
1)の濃度が最高SCよりも高く、
-1つのグループにおける前記バイオセンサの一部が同じ信号値を有していれば、前記基質(S
1)の濃度が、その部分の前記バイオセンサの最低SC以下であるとともに、関連するグループ内で次に最も低いSCを伴う前記バイオセンサのSCよりも大きく、
-バイオセンサの前記複数のグループの一部において、1つのグループにおける全てのバイオセンサが同じ信号値を有し、残りの部分で1つのグループ内の全てのバイオセンサが異なる信号値を有していれば、前記濃度が、各グループで同じ信号値を伴う前記1つ又は複数のグループの最低SC以下であるとともに、各グループで異なる信号値を伴う前記1つ又は複数のグループの最高SCよりも大きい、
ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記信号が電気化学信号であり、このとき、各バイオセンサは、酸化又は還元反応によって誘導される電流が間を通過する、作用電極、基準電極、及び、対向電極を備え、前記電気化学信号は、この電流の強度又は前記基質(S
1)の酸化還元反応中の前記電極間の電位差のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれのバイオセンサごとに、前記作用電極が炭素、金、又は、白金電極であり、前記基準電極が白金、金、又は、ダイヤモンド電極であり、前記基準電極が塩化銀電極であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が酵素触媒又は化学触媒であり、前記化学触媒が特に白金、白金ナノ構造、白金合金ナノ構造、金ナノ構造、及び、金合金ナノ構造から選択される非生物的触媒である、又は、特にポルフィリン‐金錯体及びポルフィリン‐ロジウム錯体から選択される分子触媒であることが可能であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が酵素触媒であり、メディエータが前記触媒と会合し、前記メディエータが、特に、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基質(S
1)トランスポーターが1つ又は複数の前記バイオセンサ上に配置されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各グループの前記バイオセンサは、
p1:触媒の量;
p2:触媒が酵素触媒である場合の触媒のミカエリス定数、又は、触媒が化学触媒である場合の触媒の飽和限界;
p3:触媒が酵素触媒である場合、存在すれば、触媒のメディエータの量;又は、
p4:存在すれば、基質(S
1)トランスポーターのミカエリス定数、
から選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオセンサ(BC)は、
BC
11.........BC
1i.........BC
1n...
BC
21.........BC
2i.........BC
2n...
BC
j1.........BC
ji.........BC
jn...
BC
m1.........BC
mi.........BC
mn...
と記され、
m及びnはそれぞれ整数であり、mはグループの数であり、nは各グループ内のバイオセンサの数であり、バイオセンサBC
11~BC
1nがグループ1に属し、バイオセンサBC
m1~BC
mnがグループmに属し、
1つのグループ内の各バイオセンサ間で、p1~p4から選択されるパラメータが変更され、2つの異なるグループのバイオセンサ間で、これらのパラメータp1~p4のうちの他のパラメータが変化されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
-前記基質(S
1)がグルコースであり、
-前記触媒は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、及び、セロビオースデヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特に、GLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT6、GLUT8、GLUT10及びGLUT12から選択されるグルコーストランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
-前記基質(S
1)が乳酸塩であり、
-前記触媒は、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特にMCT1、MCT2、MCT3、MCT4から選択される乳酸トランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、少なくとも2つのバイオセンサの少なくとも1つのグループを備え、各バイオセンサが酸化還元反応によって誘導される信号に関する検量線を有し、
-1つのグループ内の前記バイオセンサは、前記信号の測定値が前記グループ内のバイオセンサ同士で異なる分離濃度(SC)と呼ばれる前記基質(S
1)の濃度値に至るまでそれらの検量線の同一の最初の部分を有し、
-複数のグループが存在する場合、異なるグループにおける前記バイオセンサは、グループ間で同一の最初の部分を有することなく異なる検量線を有し、各バイオセンサは、前記基質(S
1)の触媒酸化還元反応によって誘導される信号を測定することができ、及び、
各バイオセンサは、
-触媒と、
-酵素触媒の場合、適用可能であれば、そのメディエータと、
-適用可能であれば、基質(S
1)トランスポーターと、
を備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
各バイオセンサは、電気化学信号を測定することができるとともに、前記基質(S
1)の酸化又は還元反応によって誘導される電流を間に通す、作用電極、基準電極、及び、対向電極を備え、前記電気化学信号は、この電流の強度、又は、前記基質(S
1)の酸化還元反応中の前記電極間の電位差のいずれかであることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
それぞれのバイオセンサごとに、前記作用電極が炭素、金、又は、白金電極であり、前記基準電極が白金、金、又は、ダイヤモンド電極であり、前記基準電極が塩化銀電極であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記触媒が酵素触媒又は化学触媒であり、前記化学触媒が特に白金、白金ナノ構造、白金合金ナノ構造、金ナノ構造、及び、金合金ナノ構造から選択される非生物的触媒である、又は、特にポルフィリン‐金錯体及びポルフィリン‐ロジウム錯体から選択される分子触媒であることが可能であることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記触媒が酵素触媒であり、メディエータが前記触媒と会合し、前記メディエータが、特に、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択されることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
各グループの前記バイオセンサは、
p1:触媒の量;
p2:触媒が酵素触媒である場合の触媒のミカエリス定数、又は、触媒が化学触媒である場合の触媒の飽和限界;
p3:触媒が酵素触媒である場合、存在すれば、触媒のメディエータの量;又は、
p4:存在すれば、基質(S
1)トランスポーターのミカエリス定数、
から選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記バイオセンサ(BC)は、
BC
11.........BC
1i.........BC
1n...
BC
21.........BC
2i.........BC
2n...
BC
j1.........BC
ji.........BC
jn...
BC
m1.........BC
mi.........BC
mn...
と記され、
m及びnはそれぞれ整数であり、mはグループの数であり、nは各グループ内のバイオセンサの数であり、バイオセンサBC
11~BC
1nがグループ1に属し、バイオセンサBC
m1~BC
mnがグループmに属し、
1つのグループ内の各バイオセンサ間で、p1~p4から選択されるパラメータが変更され、2つの異なるグループのバイオセンサ間で、これらのパラメータp1~p4のうちの他のパラメータが変化されることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
-前記基質(S
1)がグルコースであり、
-前記触媒は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、及び、セロビオースデヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特に、GLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT6、GLUT8、GLUT10及びGLUT12から選択されるグルコーストランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
-前記基質(S
1)が乳酸塩であり、
-前記触媒は、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼから選択される酵素触媒であり、
-前記酵素触媒メディエータは、存在すれば、フェロセン、フェロシアニド、オスミウム錯体、ナフトキノンなどのキノン誘導体、及び、フェノチアジン誘導体から選択され、
-前記基質(S
1)トランスポーターは、存在すれば、特にMCT1、MCT2、MCT3、MCT4から選択される乳酸トランスポーターである、
ことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記バイオセンサが支持体上に配置され、前記作用電極、前記基準電極、及び、前記対向電極が前記支持体上にスクリーン印刷されることを特徴とする、請求項11から19までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記バイオセンサが配置される前記支持体は、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板などのプラスチック板、アルミナなどのセラミック板、又は、アルミナと別のセラミックとの間の複合体、ナイロン板、シリコン板、ポリスチレン系フィルム、又は、ポリエステルシートから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
カプセル化、グラフト化、吸収、又は、捕捉によって前記触媒が各バイオセンサの前記作用電極上に堆積されることを特徴とする、請求項20又は21に記載の装置。
【請求項23】
前記触媒は、酵素触媒であるとともに、各バイオセンサの前記作用電極の表面上に、保護層の内側の前記作用電極の前記表面に適用されることによって存在し、前記保護層は、特に、キトサン、ナフィオン(Nafion)、ポリピロール、又は、ポリアクリル酸を有し、又は、ポリアニリン、ポリ乳酸、ポリドーパミン、又は、ポリエチレングリコールなどの導電性ポリマーを有することを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記酵素触媒メディエータが前記保護層内の前記酵素触媒とともに封入されることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
基質(S
1)トランスポーターが、層として前記作用電極に又は場合により酵素触媒を含む前記保護層上に適用されることにより存在し、そのメディエータは、場合により、前記基質(S
1)トランスポーターを取り囲むプロテオリポソームの層を堆積させることによって存在することを特徴とする、請求項20から24までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記支持体及び前記支持体によって担持される前記バイオセンサは、キトサン、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(4‐ビニルピリジン‐co‐スチレン)、又は、アルミナの層でコーティングされることを特徴とする、請求項20から25までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
媒体中における前記基質(S
1)の実際の濃度が存在する領域を決定するためにユーザの皮膚上に配置される又はユーザに埋め込まれ、前記基質がグルコースであり、前記媒体が血液であることを特徴とする、請求項20から26までのいずれか一項に記載の装置。
【国際調査報告】