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特表2023-538717マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230904BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580894
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2020068998
(87)【国際公開番号】W WO2022008033
(87)【国際公開日】2022-01-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンナ デュデュス
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク トライブルマイア
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AH73
4F209PA02
4F209PB01
4F209PJ01
4F209PJ26
4F209PN09
4F209PQ20
5F146AA31
(57)【要約】
マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する方法および装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する方法であって、少なくとも:
a)エンボスマス(7,7’,7’’)を有する基板(1,1’,1’’)を基板受け装置(6)上に固定し、
b)構造スタンプ(2,2’)を前記エンボスマス(7,7’,7’’)とコンタクトさせ、
c)前記基板(1,1’,1’’)の前記固定を少なくとも部分的に解除し、
d)前記エンボスマス(7,7’,7’’)を硬化させ、
f)前記エンボスマス(7,7’,7’’)を前記構造スタンプ(2,2’)から離型させる、
ステップを上記の経過で有する、方法。
【請求項2】
前記基板(1,1’,1’’)は、柔軟であり、これにより少なくとも部分的にコンフォーマルに前記構造スタンプ(2,2’)に、前記固定の少なくとも部分的な前記解除後に適合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基板の前記固定の少なくとも部分的な前記解除後、前記基板受け装置(6)からの前記基板(1,1’,1’’)の少なくとも部分的な剥離を、特に、基板受け装置(6)と前記基板(1,1’,1’’)との相対運動により、かつ/または基板受け装置(6)とスタンプ受け装置(5,5’)との相対運動により、かつ/または毛管力により実施する、請求項1および2の少なくとも1項記載の方法。
【請求項4】
前記エンボスマス(7,7’,7’’)を圧力なしにかつ/または圧着なしに、特に毛管力により構造化する、請求項1から3までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項5】
前記エンボスマス(7,7’,7’’)を有する前記基板(1,1’,1’’)を、少なくとも1つの制御可能な、前記基板受け装置(6)内に配置される固定要素(9,9’)により、特に真空および/または負圧により、前記基板受け装置(6)上に固定し、かつ/または少なくとも1つの制御可能な前記固定要素(9,9’)により、特に前記負圧の遮断によりかつ/または正圧の形成により前記固定を解除する、請求項1から4までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項6】
前記基板(1,1’,1’’)の前記固定と、前記基板(1,1’,1’’)の前記固定の少なくとも部分的な前記解除とを、特に、少なくとも1つの制御可能な前記固定要素(9,9’)の制御により制御し、前記エンボスマス(7,7’,7’’)の前記構造化および/または前記基板(1,1’,1’’)の解放あるいは前記剥離を、前記構造スタンプ(2,2’)の、前記エンボスマス(7,7’,7’’)との前記コンタクト後に所定の時点で実施する、請求項1から5までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項7】
前記構造スタンプ(2,2’)は、前記固定の少なくとも部分的な前記解除後、前記エンボスマス(7,7’,7’’)および/または前記基板(1,1’,1’’)がコンフォーマルに前記構造スタンプ(2,2’)に外的な圧力なしに、特に毛管力により適合されるように形成されている、請求項1から6までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
前記基板(1,1’,1’’)を前記エンボスマス(7,7’,7’’)により、特に毛管力により、前記コンタクト後かつ/または前記固定の少なくとも部分的な前記解除後に保持する、請求項1から7までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロ構造および/または前記ナノ構造を、複数の層を重ね合わせて、かつ/またはステップアンドリピート法において隣り合わせに製造する、請求項1から8までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項10】
前記基板(1,1’,1’’)の厚さは、1μm~2000μm、好ましくは10μm~750μm、より好ましくは100μm~500μmである、請求項1から9までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項11】
前記エンボスマス(7,7’,7’’)の粘性は、100000cP未満、好ましくは10000cP未満、より好ましくは1000cP未満、最も好ましくは500cP未満である、請求項1から10までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項12】
前記構造スタンプ(2,2’)は、エンボス構造(3,3’)を有し、かつ/またはエンボス構造(3,3’)を伴ってコーティングされている、請求項1から11までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項13】
マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する装置、特に、請求項1から12までの少なくとも1項記載の方法によりマイクロ構造および/またはナノ構造を作製する装置であって、
-エンボスマス(7,7’,7’’)を有する基板(1,1’,1’’)は、基板受け装置(6)上に固定可能であり、
-構造スタンプ(2,2’)は、前記エンボスマス(7,7’,7’’)とコンタクト可能であり、
-前記基板(1,1’,1’’)の前記固定は、少なくとも部分的に解除可能であり、
-前記エンボスマス(7,7’,7’’)は、硬化可能であり、
-前記エンボスマス(7,7’,7’’)は、前記構造スタンプ(2,2’)から離型可能である、
装置。
【請求項14】
圧力、間隔および/もしくは温度を測定する1つまたは複数のセンサ、ならびに/または
前記スタンプ受け装置(5,5’)および/もしくは前記基板受け装置(6)を位置調節する1つまたは複数のアクチュエータ、ならびに
制御ユニット、
を備え、
前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記固定要素(9,9’)および/または少なくとも1つの前記アクチュエータを、特に、少なくとも1つの前記センサにより測定される値に応じて制御し、前記エンボスマス(7,7’,7’’)を有する前記基板(1,1’,1’’)に対する構造スタンプ(2,2’)の相対運動、特に、前記構造スタンプ(2,2’)と前記基板(1,1’,1’’)との間の間隔の消滅または減少が、コンタクトが特に圧力なしに実施可能であるように、実施可能である、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
マイクロ構造および/またはナノ構造を備える物品であって、前記マイクロ構造および/または前記ナノ構造は、請求項1から12までの少なくとも1項記載の方法により、かつ/または請求項13および14の少なくとも1項記載の装置により製造されている、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する方法および装置に関する。
【0002】
従来技術において、マイクロ構造および/またはナノ構造は、フォトリソグラフィック技術により、かつ/またはインプリントリソグラフィを用いて製造される。近年、とりわけインプリントリソグラフィが実証されている。インプリントリソグラフィを用いて、マイクロメートルサイズおよび/またはナノメートルサイズの構造を、スタンプを用いて材料内にエンボス加工することが可能である。材料は、基板上に被着されるエンボスマスである。
【0003】
この種のインプリント法は、近年、重要度が増している。それというのも、インプリント法は、フォトリソグラフィ技術による多くの方法よりも高速、効率的かつ低コストに実施可能であるからである。
【0004】
エンボスマスの堆積後、基板に対して相対的な、構造スタンプのアライメント調整が実施される。その後、構造スタンプと基板とは、互いに接近させられる。構造スタンプの構造は、エンボスマス内に型取られる。エンボスマスから構造スタンプを離型させる前に、エンボスマスは固化される。固化は、熱によりかつ/または電磁放射により実施される。
【0005】
改変あるいは拡張されたマスクアライナの他に、特別な実施の形態に合わせてかつ特別な実施の形態のために組み上げられた固有のインプリント設備も存在する。これらの設備は、大抵、高度に精緻なアライメント調整設備であって、アライメント調整設備は、スタンプをさらに高い精度でもって基板に対してアライメント調整することができる。さらに、これらの設備は、真空を形成する可能性を有し、特別なディスペンスシステム等を有している。
【0006】
エンボス加工技術は、硬質または軟質のスタンプを用いて作業する。エンボスリソグラフィ技術下では、とりわけ、いわゆる軟質(英:soft)のスタンプの使用が一層好まれている。その理由は、スタンプの容易な製造、効率的なエンボス加工工程、それぞれのスタンプ材料の極めて良好な表面特性、低い製造コスト、エンボス加工製品の再現性、そしてとりわけ、エンボス加工および離型中のスタンプの弾性的な変形の可能性にある。ソフトリソグラフィでは、マイクロ構造化あるいはナノ構造化された表面を有する、ポリマー、特にエラストマーからなるスタンプが使用され、これにより、数nmから1000μm未満までの範囲の構造を製造することができる。
【0007】
エラストマー製のスタンプは、マスタのネガ型として製造される。マスタスタンプは、金属、プラスチックおよび/またはセラミックからなる硬質スタンプであり、硬質スタンプは、相応に手間あるいはコストのかかるプロセスにより一度だけ製造される。このマスタから、その後、任意の数のエラストマー製のスタンプが製造され得る。石英の弾性率は、約100GPaである。比べてポリマー(硬質および軟質のポリマー)の弾性率は、最大で数オーダ小さく、それゆえポリマーは、石英と比較して「軟質」と称される(ソフトリソグラフィ)。エラストマー製のスタンプは、大きな表面を介したコンフォーマルで一様なコンタクトを可能にする。エラストマー製のスタンプは、比較的容易にそのマスタスタンプから、かつエンボス加工製品から分離可能である。スタンプと基板との良好な分離を保証すべく、スタンプ表面は、できる限り低い表面エネルギを有している。例えば付着防止コーティングが必要または有利な場合が多い。
【0008】
ソフトリソグラフィプロセスを実施すべく、エラストマー製のスタンプをキャリアにより支持することが可能である。現在、例えば様々な厚さを有するガラスキャリア基板が使用される。厚いガラス基板の使用により、エラストマー製のスタンプは、少なくとも部分的にその柔軟性を失う。他方、スタンプの柔軟性は、キャリアの選択により制御可能である。剛性の高いキャリアの使用は、一般に、エンボス加工プロセス後のスタンプと基板との分離を難しくする。
【0009】
同様に、従来技術による薄い基板は、より良好なハンドリングのためにキャリア基板を必要とする。公知のソフトリソグラフィ法には、例えばマイクロコンタクトプリントおよび/またはナノコンタクトプリント(μ/nCP)ならびにナノインプリントリソグラフィ(NIL)が属する。
【0010】
ナノインプリントリソグラフィの場合、エンボスマスの硬化は、熱によりまたはUV放射により実施され得る。両者の場合、構造スタンプは、エンボスマス内に押し込まれる。その際、構造スタンプと基板とは、高解像度の表面構造化が実施され得るように、圧力をかけて圧縮される。UV-NILの場合、サーマルNILと比較して低い圧着圧で作業され、プロセスは、室温で行われ得る。NIL法における最も重要なパラメータは、温度(とりわけサーマルNILの場合)、押し込み圧およびエンボスマスと構造スタンプとの間の界面接着力である。
【0011】
軟質のスタンプは、そしてそれほど軟質でないスタンプも、特にエラストマー製のスタンプは、ナノインプリントプロセス中、印加される圧力により変形し得る。この変形は、圧力に依存している。この変形は、構造が小さくなれば、より強い影響を有するようになり、スタンプ材料が軟質になれば、より顕著になることが予測され得る。マイクロ構造およびナノ構造の、圧着により生じる変形あるいは歪みは、エンボス加工された基板における硬化されたエンボスマス内に再現され、而してエンボス加工プロセスの品質および再現性を低下させてしまう。
【0012】
構造スタンプおよび/または基板が過度に硬い場合は、スタンプ構造を有する構造スタンプと、エンボスマスを有する基板との間のコンフォーマルなあるいは間隙なしのコンタクトを達成するために、外的な圧力、特に圧着が必要である。従来技術では、アクチュエータ装置が使用され、アクチュエータ装置は、構造スタンプおよび/または基板に対して、スタンプ構造の転写に用いられ、基板受け面に対して直交する合力を加える、別々に動作制御可能あるいは閉ループ制御可能な複数のアクチュエータを有している。
【0013】
まさにより大きな面の場合、圧力を一様にコンタクト面全体にわたって分配し、不規則性を補償することは、困難である。それゆえエンボス加工時、不均一な構造化が生じてしまうことがある。
【0014】
スタンプ表面の起こり得る不均一性も、エンボス加工プロセスの品質に影響を及ぼす。さらに、圧力をかけたエンボス加工時のガス混入と、これに伴うエンボス欠陥とが、従来技術において知られている。
【0015】
NIL時に生じ得るエンボス欠陥は、例えばクラック、非一様に充填されたスタンプ構造(それゆえ例えば空気混入)および非一様なワニス層厚さである。
【0016】
それほど普及していない毛管力リソグラフィ(CFL)も、ソフトリソグラフィ法に属し、スタンプ構造を外的な圧力なしに充填するための毛管力の使用に基づく。「Adv. Funct. Mater. (2002) 12: 405-413」において、CFLについて詳細に、命名者であるH. H. Leeが説明している。この場合、エラストマー製のスタンプは、基板に対してコンフォーマルにコンタクトされる。キャビティの充填のために、しかし、エンボスマスは、極めて低い粘性を有していなければならない。CFLは、それゆえ比較的高い温度で実施され、かつ/またはエンボスマスにおける溶剤の割合が高く、溶剤雰囲気が必要なことが多い。CFL時のスタンプ材料としては、ほぼ、純粋なPDMSのみが使用される。それというのも、PDMSは、溶剤およびガスに関して透過性であるからである。PDMSスタンプによるエンボス加工時、キャビティは、毛管力の作用下で充填され、エンボスマスからの溶剤は、PDMSスタンプを通して拡散し、消散することができる。CFL用のエンボスマスとして確立されているのは、エポキシ材料SU-8である。溶剤をベースとするプロセスの際のPDMSの膨潤や、熱をベースとするプロセスの際の強い膨張等の問題は、CFLがラボスケールでのみ実施され、インプリント設備による工業的な転換が知られていないことに通じる。さらにCFLでは、エンボスマスが大抵の場合、熱により架橋される。
【0017】
米国特許第7442336号明細書には、例えば、エンボスマスを有する基板をエンボス加工する装置および方法が記載され、基板とスタンプとが、規定された間隔になるまでゆっくりと接近させられ、その結果、中間室には、毛管力によりエンボスマスが充填される。その際、外的な力は、エンボスマスの特性、エンボス加工すべき層の厚さおよび基板表面の寸法に応じて、可能な限り僅かに維持される。
【0018】
米国特許第8871048号明細書では、柔軟なエラストマー製のスタンプが使用され、その結果、外的な圧着力は、可能な限り低く維持され得る。
【0019】
毛管マイクロフォーミング(MIMIC)も、構造をPDMSスタンプにより製造するために、毛管力を利用する。MIMICでは、しかし、基板に対して、レリーフ構造を有するPDMSスタンプが押し当てられる。これにより、スタンプと基板との間に3次元の構造化される中空室が生じる。スタンプの前方にモノマー溶液が被着され、モノマー溶液は、その後、自然に毛管を充填する。硬化後、スタンプは、基板から除去され得る。ポリマーの3次元の構造が基板上に残される。
【0020】
従来技術において、特に問題なのは、軟質スタンプの弾性的な特性がマイクロ構造およびナノ構造の変形あるいは歪みに至ることである。圧着により生じるマイクロ構造およびナノ構造の変形および歪みは、エンボス加工された基板における硬化されたエンボスマス内に再現され、而してエンボス加工プロセスの品質および再現性を低下させてしまう。
【0021】
軟質のスタンプは、ナノインプリントプロセス中、印加される圧力により変形し得る。この変形は、特に圧力に依存している。さらに、圧力をかけたエンボス加工時のガス混入と、これに伴うエンボス欠陥とが、従来技術において知られている。
【0022】
構造スタンプおよび/または基板が過度に硬い場合は、構造スタンプと、エンボスマスを有する基板との間のコンフォーマルで間隙なしのコンタクトを達成するために、外的な圧力、すなわち圧着が必要である。これにより、圧力に依存した変形が生じることがあり、変形は、エンボス加工プロセスの品質を低下させてしまう。
【0023】
それゆえ本発明の課題は、従来技術に挙げられる欠点を少なくとも部分的に取り除いた、特に完全に取り除いた装置および方法ならびに基板を提示することである。
【0024】
上記課題は、独立請求項の特徴により解決される。本発明の有利な発展形は、従属請求項に記載されている。明細書、特許請求の範囲および/または図面に記載した特徴の少なくとも2つの特徴からなるあらゆる組み合わせも、本発明の範囲内に含まれる。記載した数値範囲に関して、提示した限界範囲内に含まれる任意の値も、限界値として開示したものと見なされるべきであり、任意の組み合わせで特許を請求することができる。装置について開示した特徴は、それが方法の特徴としても理解され得る限り、方法にも当てはまると見なされるべきであり、その逆もまた然りである。
【0025】
その際、以下では、構造化およびエンボス加工とは、マイクロ構造および/またはナノ構造の作製と解される。特にエンボス加工時、圧着は実施されないことが望ましい。
【0026】
本発明は、マイクロメートルサイズおよび/またはナノメートルサイズの構造を作製する方法および装置を示す。本発明の根底にある思想は、とりわけ、極めて薄い、特に柔軟な基板の使用により、かつ毛管力の利用下で、作製に関して挙げた技術的な問題を解決することである。その際、エンボスマスと構造スタンプとのコンタクト後、基板の固定が、少なくとも部分的に、好ましくは、少なくとも1つの制御可能な固定要素により解除され、これにより、好ましくは、エンボス加工工程が導入される。
【0027】
本発明は、それゆえ、特に、エンボス加工工程時、外的な圧力の利用なしにあるいは構造スタンプとエンボスマスとの圧着なしに構造スタンプとエンボスマスとをコンフォーマルにコンタクトさせる方法および装置を扱う。
【0028】
それゆえ本発明は、マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する方法であって、少なくとも:
a)エンボスマスを有する基板を基板受け装置上に固定し、
b)構造スタンプをエンボスマスとコンタクトさせ、
c)基板の固定を少なくとも部分的に解除し、
d)エンボスマスを硬化させ、
f)エンボスマスを構造スタンプから離型させる、
ステップを上記の経過で有する、方法に関する。
【0029】
さらに本発明は、前述の方法によりマイクロ構造および/またはナノ構造を作製する装置であって、エンボスマスを有する基板が、基板受け装置上に固定可能であり、構造スタンプが、エンボスマスとコンタクト可能であり、基板の固定は少なくとも部分的に解除可能であり、エンボスマスは硬化可能であり、エンボスマスは構造スタンプから離型可能である、装置に関する。
【0030】
さらに本発明は、マイクロ構造および/またはナノ構造を備える物品であって、マイクロ構造および/またはナノ構造は、本発明に係る方法により、かつ/または本発明に係る装置により製造されている、物品に関する。
【0031】
本発明の好ましい一実施の形態において、基板は、柔軟であり、これにより少なくとも部分的にコンフォーマルに構造スタンプに、特に固定の解除後、あるいはエンボスマスの構造化時、適合するようになっている。基板は、特に、僅かな厚さを有し、かつ/または部分的に曲げ可能な材料からなり、その結果、作製時、有利には構造スタンプの構造を部分的に受け入れることができる。その際、基板は、構造スタンプに適合しなくてもよいし、または完全に適合してもよい。エンボスマスの硬化後、基板は、硬化されたエンボスマスとともに特に1つのユニットを形成する。これにより基板は、有利にはエンボス加工工程を補助し、エンボスエラーを回避することができる。さらに、薄く、かつ柔軟な基板は、作製工程中、変形し得る。特に基板は、有利には毛管力の作用によりコンフォーマルに構造スタンプに引き寄せられ、その際に変形される。付加的に、柔軟性により、作製中の好ましい一様なコンタクトが可能となる。その際、基板の柔軟性は、有利には、エンボスエラーなしの穏やかで一様なエンボス加工を可能にする。固定の解除時、有利には、付加的な自由度が獲得され、これにより、薄く、かつ柔軟な基板は、特に毛管力の作用により、所望の通り作製工程を補助する。その際、固定の解除後、基板は、基板受け装置上で自由である。構造スタンプへのエンボスマスと基板との引き寄せにより、基板が、部分的にまたは完全に基板受け装置から、特に毛管力により浮かされることも可能である。特に基板の柔軟性により、構造をエンボスマスに転写するのに、外的な圧着力は不要である。こうして基板は、特に不規則性を補償することができ、これにより、エンボス加工プロセスの品質は、付加的に向上される。
【0032】
本発明の別の有利な一実施の形態において、基板の固定の少なくとも部分的な解除後、基板受け装置からの基板の少なくとも部分的な剥離を、特に、基板受け装置と基板との相対運動により、かつ/または基板受け装置とスタンプ受け装置との相対運動により、かつ/または毛管力により実施するようになっている。剥離は、特に、基板と基板受け装置との間の間隔の開大を結果として伴うことができる。しかし、固定の解除が、基板の剥離あるいは間隔の開大を結果として伴わないことも可能である。さらに、特にアクチュエータによって、固定の少なくとも部分的な解除後、基板と基板受け装置との間の間隔が形成されることも可能である。アクチュエータにより開大される間隔は、この場合、有利には、プロセスに、特に材料特性に適合される。その際、基板は、特に表面張力および毛管力によりエンボスマスに付着したままであるか、あるいは構造スタンプに引き寄せられ、これにより、同じく有利には、基板の自由度が提供される。スタンプ受け装置に対する基板受け装置の配置に応じて、別の力、特に重力の力が、エンボス加工工程時に作用することがある。特に間隔は、部分的に、既にコンタクトの際にも、特に、エンボスマスに作用する毛管力による基板の吸着により開大され得る。好ましくは、間隔は、しかし、固定の少なくとも部分的な解除後に初めて開大される。間隔により、有利には、エンボス加工工程の、特に、同時にかつ/または並行して実施される複数のエンボス加工ステップの、再現性および効率が改善され得る。付加的に、こうして獲得された自由度により、基板は、変形し、構造スタンプに適合することができる。これにより、特にエンボスエラーは回避され得る。
【0033】
本発明の別の有利な一実施の形態において、構造スタンプは、硬質スタンプまたは軟質スタンプであるようになっている。特に構造スタンプは、軟質または硬質のエンボス構造を有していることができる。硬質スタンプとは、特にマスタスタンプを意味する。この作製方法により、これにより効率的かつ低コストに、特に、好適なプロセスパラメータおよび技術的に有意義な製造材料の選択により、軟質スタンプならびにマイクロ構造および/またはナノ構造が作製され得る。さらに、構造スタンプの好適な選択により、構造スタンプ、特に構造スタンプのエンボス構造の変形は、防止され、一様かつ再現可能なエンボス加工が実施され得る。
【0034】
本発明の別の有利な一実施の形態において、エンボスマスを圧力なしにかつ/または圧着なしに、特に毛管力により構造化するようになっている。これにより、有利には構造スタンプの変形が減少、特に防止され得る。さらに、これによりエンボス加工プロセスの再現性が向上され、エンボスエラーは回避され得る。付加的に本方法は、より効率的に、かつより低コストになる。構造の、外的な圧着力なしの有利な作製は、有利には、硬化後のエンボスマスの材料特性、例えば強度値または表面特性を改善し得る。加えて基板は、剥離後、有利には保持され得る。マイクロ構造および/またはナノ構造の作製時、付加的に、構造のサイズが小さければ小さいほど、強く毛管力が作用するという本方法の利点が利用される。相応にエンボス加工は、機械的な圧力なしに実施されることができ、エンボスマスは、有利には構造により受容され、これにより特に良好に構造に適合し得る。有利には、エンボスマスと構造スタンプとのコンタクト時、構造スタンプ、特にエンボス構造表面の接触あるいはぬれが必要である。
【0035】
本発明の別の有利な一実施の形態において、エンボスマスを有する基板を、少なくとも1つの制御可能な、基板受け装置内に配置される固定要素により、特に真空および/または負圧により、基板受け装置上に固定し、かつ/または少なくとも1つの制御可能な固定要素により、特に負圧の遮断によりかつ/または正圧の形成により、固定を解除するようになっている。少なくとも1つの固定要素は、基板を有利には基板受け装置上に固定、特に所定の点に固定することが可能である。その際、固定要素は、特に真空トラックであってもよく、真空トラックは、任意に基板受け装置表面上に、特に円形または螺線形に配置あるいは敷設されている。好ましくは、固定要素は、正圧および/または負圧を形成することができる。それらの合力は、特に任意に基板に対して、特に、基板の、基板受け装置に面した側で、加えられ得る。特に、而して例えば基板の湾曲も形成され得る。この場合、基板は、例えば基板受け装置の縁部に負圧により固定されるとともに、別の固定要素を介して正圧が形成され、このとき、基板は、有利には特に中心で隆起する。こうして、特にコンタクトの際に、コンタクト点が設定され得る。付加的に、少なくとも1つの固定要素は、技術的に有意義な、制御される局部的な固定あるいは固定の解除により、有利にはエンボスエラー、特にガス混入が回避され得る。また、複数の固定要素は、固定の解除時、基板を所定の順序で個々にかつ/またはグループで解放し得る。こうして、有利には構造の作製が開始、特に所定の領域で開始され得る。好ましくは、固定要素は、硬化されたエンボスマスを有する基板の、構造スタンプからの離型が、固定要素により補助され得るように形成されている。固定要素により、有利にはエンボス加工工程が開始され得る。基板を放すあるいは解放すると、特に毛管力は、有利には、エンボスマスおよび/または基板に作用することができる。固定要素により、特に構造の穏やかかつ一様な作製が可能となる。加えて、基板の離型も、特に穏やかに、かつ有利に実施可能である。好ましくは、基板受け装置と基板とは、ウエハの形態を呈している。
【0036】
本発明の別の有利な一実施の形態において、基板の固定と、基板の固定の少なくとも部分的な解除とを、特に、少なくとも1つの制御可能な固定要素の制御により制御し、エンボスマスの構造化および/または基板の解放あるいは剥離を、構造スタンプの、エンボスマスとのコンタクト後、所定の時点で実施するようになっている。少なくとも1つの固定要素は、好ましくは、制御ユニットにより動作制御され、而して有利には、基板の固定の解除の時点に対して影響を及ぼし、したがって、剥離に対して、あるいは基板の解放の時点に対して影響を及ぼす。その際、特に、固定の解除が様々な箇所で、制御可能な複数の固定要素により導入されるようになっていてもよい。こうして、特に固定の解除の時点および場所は、有利には制御可能である。制御ユニットは、少なくとも1つの固定要素を、好ましくは、値、特にセンサにより提供される値に応じて動作制御する。
【0037】
本発明の別の有利な一実施の形態において、構造スタンプは、固定の少なくとも部分的な解除後、エンボスマスおよび/または基板がコンフォーマルに構造スタンプに外的な圧力なしに、特に毛管力により適合されるあるいは引き寄せられるように形成されているようになっている。構造スタンプ、特に構造スタンプのエンボス構造は、構造が有利には、特に毛管力によりエンボスマスに転写されるように形成されている。その際、特に、コンタクト時にエンボスマスに接触する構造スタンプのコンタクト面は、一様な、かつ特に全面的なコンタクトが可能であるように形成されている。有利には、構造スタンプのエンボス構造の構造あるいはくぼみおよび/または突出部は、構造化が圧力なしに実施され得るように配置されている。特に、転写すべきエンボス構造は、固定の解除後、基板がコンフォーマルに構造に適合し得るように形成されている。有利には、構造スタンプは、離型が有利な形で容易になるようにも設計されている。特に構造スタンプあるいはエンボス構造は、複数回使用可能である。したがって作製プロセスは、効率的に、かつ複数回続けて、同じ構造スタンプを使用して実施され得る。
【0038】
本発明の別の有利な一実施の形態において、基板をエンボスマスにより、特に毛管力および/または表面張力により、コンタクト後かつ/または固定の少なくとも部分的な解除後、保持するようになっている。基板は、これにより少なくとも部分的に、固定の解除後、エンボスマスにより構造スタンプに付着する。その際、特にエンボスマスに作用する毛管力により、基板受け装置からの基板の剥離が生じ得る。基板の解放により、あるいは固定の解除により、基板は、引き続き保持され、基板は、有利には、構造スタンプに適合することができる。特に基板は、有利には自由に、かつ一様にエンボス構造に適合することができる。加えて、こうして不規則性は補償され得る。場合によっては存在するガス混入は、特に消散し得る。有利には、而してエンボス加工プロセスの品質が向上される。
【0039】
本発明の別の有利な一実施の形態において、マイクロ構造および/またはナノ構造を、複数の層を重ね合わせて、かつ/またはステップアンドリピート法で隣り合わせに、製造するようになっている。その際、複層の積み上げは、特に、基板の最低限必要な柔軟性がもはや提供されていなくなるまでの頻度で実施される。こうして本方法は、より効率的に、かつより低コストに実施可能である。さらに、様々な層が重なり合わせに形成可能である。付加的に、複数の機能性の構造が、大面積に、または連続的なエンボス加工プロセスで隣り合わせに製造可能である。こうして本方法により、多種多様な製品、特に構造フィルムが効率的に製造可能である。特にその際、構造スタンプが複数回使用可能であることが有利である。それというのも、圧着圧がなく、構造スタンプの耐久性が向上され、あるいは構造スタンプが、複数のエンボス加工ステップにわたって使用され得るからである。
【0040】
本発明の別の有利な一実施の形態において、基板の厚さは、1μm~2000μm、好ましくは10μm~750μm、より好ましくは100μm~500μmであるようになっている。比較的薄い基板の使用により、基板の柔軟性は、向上され得る。これにより基板は、さらに良好にエンボス構造に適合し、不規則性を補償することができる。さらに、より多くの数の層が重なり合わせ形成され得る。それというのも、必要な柔軟性がより多くのエンボス加工ステップにわたって提供されるからである。
【0041】
本発明の別の有利な一実施の形態において、エンボスマスの粘性は、100000cP未満、好ましくは10000cP未満、より好ましくは1000cP未満、最も好ましくは500cP未満であるようになっている。比較的低いcP値を有するエンボスマスの使用により、特に基板の保持、毛管力の作用ならびに基板および/またはエンボスマスによるエンボス構造へのコンフォーマルな適合は、改善され得る。さらに、低いcP値は、不規則性の補償にとって有利である。加えて基板の柔軟性は、最適に利用され、これにより、向上されたエンボス加工品質が達成される。エンボスマスの好適な粘性により、特にエンボスマスのエンボス加工挙動と、基板の保持とが、有利には調整され得る。
【0042】
本発明の別の有利な一実施の形態において、構造スタンプは、エンボス構造を有し、かつ/またはエンボス構造を伴ってコーティングされているようになっている。エンボススタンプは、つまりそれ自体がエンボス構造を有していてもよいし、またはエンボス構造、特にエンボス加工プロセスに個別に適合されたエンボス構造をコーティングされていてもよい。これにより、有利にはエンボス加工挙動は、調整され得る。特に構造の作製は、プロセスに合わせて個別に様々なエンボスコーティングにより調整可能である。様々なエンボス構造が、例えばエンボススタンプにより、特にステップアンドリピートプロセスで転写され得る。
【0043】
本発明の別の有利な一実施の形態において、マイクロ構造および/またはナノ構造を作製する装置は、特に、前述の方法を実施することができ、エンボスマスを有する基板が、基板受け装置上に固定可能であり、構造スタンプが、エンボスマスとコンタクト可能であり、基板の固定は、少なくとも部分的に解除可能であり、エンボスマスは、硬化可能であり、エンボスマスは、構造スタンプから離型可能であるようになっている。この場合、装置は、有利にはマイクロ構造および/またはナノ構造を、特に付加的な圧着力なしに作製することができる。これにより、エンボス加工プロセスの品質が向上される。
【0044】
本発明の別の有利な一実施の形態において、装置は、さらに:圧力、間隔および/もしくは温度を測定する1つまたは複数のセンサ、ならびに/またはスタンプ受け装置および/もしくは基板受け装置を位置調節する1つまたは複数のアクチュエータ、ならびに制御ユニット、を備え、制御ユニットは、少なくとも1つの固定要素および/または少なくとも1つのアクチュエータを、特に、少なくとも1つのセンサにより測定される値に応じて制御し、エンボスマスを有する基板に対する構造スタンプの相対運動、特に、構造スタンプと基板との間の間隔の消滅または減少が、コンタクトが特に押圧なしに実施可能であるように、実施可能であるようになっている。この場合、特に制御ユニットは、センサ値に基づいて構造スタンプ表面、特にエンボス構造表面の接触を、アクチュエータの動作制御により生じさせるようになっている。これにより、有利にはコンタクトは、付加的な圧着なしに実施され得る。この場合、間隔を開大するアクチュエータは、任意の部材、好ましくは、基板受け装置および/またはスタンプ受け装置に配置されていることができる、あるいは作用することができる。こうして、マイクロ構造および/またはナノ構造の作製が最適に実施されることが、有利には保証され得る。付加的に制御ユニットは、固定要素による基板の固定が剥離時および離型時に、特にセンサ値に応じて有利に実施されるように構成されている。このことは、プロセス品質が向上され、エンボスエラーが回避され得るという利点を有している。
【0045】
それほど好ましくない本発明の一実施の形態において、装置の制御ユニットは、別々に制御可能なアクチュエータの動作制御により付加的な圧着を伴うコンタクトを生じさせるようになっている。基板受け面に対して直交する、スタンプ構造の転写のための合力は、500N未満である。構造スタンプは、例えばウエハフォーマット内に全面的に、または代替的に、特にステップアンドリピートプロセスでは、エンボス加工すべき基板よりも小さい、規定された面を有していることができる。基板受け面に対して直交する、スタンプ構造の転写のための合力としての圧力は、特に50N/mm未満、好ましくは25N/mm未満、より好ましくは10N/mm未満、最も好ましくは1N/mm未満、なかでも最も好ましくは0.1N/mm未満である。
【0046】
本発明において、基板は、従来技術において説明した基板と比較して極めて薄い。基板(あるいは製品基板)を安定化させるキャリア基板は、使用されないか、またはキャリア基板あるいはキャリアプレートまたはキャリアフィルムは、それ自体が薄く、かつ柔軟である。これにより、エンボス加工すべき基板は、極めて柔軟であり、特に柔軟に支持されている。
【0047】
マイクロインプリントプロセスおよび/またはナノインプリントプロセスは、構造スタンプ、好ましくは、エラストマー製の構造スタンプにより、好ましくは、ウエハフォーマットの構造スタンプにより実施される。その際、構造化されたスタンプは、好ましくは全面的に予め塗装された基板とコンタクトされ、特に、基板上に提供されたエンボスマスとコンタクトされる。
【0048】
構造スタンプと基板とは、それぞれインプリント設備の受け装置に固定されている。基板受け装置への基板の固定は、好ましくは、真空あるいは負圧を用いて実施される。アライメント調整後、基板と構造スタンプとのコンタクト面は、全面的にコンタクトされる。構造スタンプが基板とコンタクトすると直ちに、エンボスマスによりコーティングされた基板の固定が、特に真空の中断により解消される。毛管力の作用により、薄く柔軟な基板は、コンフォーマルに構造スタンプに引き寄せられる。基板の柔軟性と、基板の脱離により獲得された自由度とにより、基板は、変形し、構造スタンプに適合することができる。これにより、エンボス加工中の一様なコンタクトが可能となる。
【0049】
基板と構造スタンプとは、両者間に位置するエンボスマスによって毛管力により一緒に保持される。このために、少なくとも基板は、好ましくは、基板と構造スタンプとは、高い柔軟性を有していなければならない。エンボスマスの粘性に基づき、毛管作用によっても、構造スタンプの中間室は、特に完全にエンボスマスにより充満される。
【0050】
毛管力の利用により、エンボス加工時、あるいはマイクロ構造およびまたはナノ構造の作製時、付加的な外的な圧力あるいは基板と構造スタンプとの圧着は、不要である。これにより、構造スタンプの構造の、圧着により引き起こされる変形は、回避、特に防止される。
【0051】
毛管力とは、特に表面張力および/または界面張力により生じる力を意味している。特に作製時、毛管上昇および毛管降下が利用可能である。別の力、例えば界面接着力または重量による力も、作製時に生じることがある。その際、小さなマイクロ構造および/またはナノ構造により、有利には、構造のサイズが小さければ小さいほど、毛管力あるいは毛管圧の作用が大きいことが利用され得る。
【0052】
基板の柔軟性は、構造スタンプおよび/または基板の不規則性を補償するとともに、その他のエンボス欠陥、例えば、空気混入により引き起こされるエンボス欠陥も防止することを可能にし、これにより、エンボス加工プロセスの品質は極めて高い。
【0053】
毛管力の利用により、エンボス加工時、特に、付加的な外的な圧力あるいは基板とスタンプとの圧着は不要である。これにより、装置およびエンボス加工プロセスは、力伝達用のアクチュエータ装置が不要であるため、有利には単純化される。
【0054】
基板の柔軟性と、外的な圧力なしのコンタクト後の、基板の脱離により得られた自由度とにより、基板は、変形し、特に構造スタンプに適合することができる。
【0055】
エンボス加工中の一様でコンフォーマルなコンタクトが可能である。これにより、極めて良好なインプリントが達成され、エンボス加工、続いての硬化時に、コンタクトしていないまたはコンタクト不良のゾーンにより生じることのあるエンボス間隙は存在しない。
【0056】
提案する本発明は、構造スタンプのマイクロ構造および/またはナノ構造の、圧着により引き起こされる変形を防止する。
【0057】
エンボスマスの粘性は、好ましくは、1~100000cPであり、その結果、エンボス材料あるいはエンボスワニスの幅広い選択と、基板、スタンプ材料およびエンボス材料の最適な組み合わせによるプロセス最適化とが可能である。
【0058】
エンボスマスは、特に低い粘性を有している必要はない。特に溶剤雰囲気は不要である。
【0059】
コンタクトおよびエンボス加工は、特に周囲圧において、例えば空気雰囲気または不活性ガス雰囲気下で実施され得る。別の、特に制御可能なプロセス圧も、可能である。
【0060】
コンタクトおよびエンボス加工は、特に室温でかつ高められた温度で実施され得る。
【0061】
説明する方法は、有利には、高いスループットを可能にし、特に、製造単位あたりの単価を下げることができる。
【0062】
周期的なマイクロ構造およびナノ構造と、非周期的なマイクロ構造およびナノ構造とのエンボス加工が可能である。
【0063】
精緻なアライメント調整は、有利には、必ずしも必要でない。コンタクト前の基板と構造スタンプとのアライメント調整の度合い、例えば、大まかにのみアライメント調整するか、または高度に精緻なアライメント調整設備により細かくアライメント調整するかは、ケースバイケースで変更され得る。
【0064】
説明する方法では、種々異なる柔軟な基板が使用され得る。
【0065】
エンボス加工あるいは作製は、平滑な表面および/または粗い表面でもって実施され得る。粗さは、ケースバイケースで変更可能である。
【0066】
エンボス加工あるいは作製は、特にフラットなスタンプ表面および/または湾曲したスタンプ表面でもって実施され得る。基板の柔軟性と、外的な圧力なしのコンタクト後の基板の脱離による可動性とにより、基板は、変形し、スタンプに適合することができる。
【0067】
UV硬化可能な導電性および非導電性のエンボスマスが使用可能である。
【0068】
熱硬化可能な導電性および非導電性のエンボスマスも使用可能である。
【0069】
提案する本発明により、複層エンボス加工プロセスが実施され得る。柔軟な基板上の、既にエンボス加工され、硬化された第1の層は、別のステップにおいて再度第2のエンボスマスによりコーティングされることができ、第2のエンボスマスは、その後、再びエンボス加工され、硬化される。さらなる層の作製は、特に、十分な基板柔軟性がまだ提供されている限り、可能である。さらに、複数のエンボス加工ステップが、並行してかつ/または隣り合わせに実施され、それぞれ前に作製された基板に結合されてもよい。
【0070】
説明する方法では、基板上のエンボスマスの厚さは、必要に応じて変更されることができ、その結果、エンボスマスからなる薄い層も、より厚い層も、エンボス加工あるいは作製され得る。
【0071】
提案する本発明により、特に、インプリントリソグラフィ用の作業スタンプを製造することもできるし、一般的に、熱または電磁放射、特にUV放射により硬化可能な種々異なるエンボスマスを、基板の構造化のためにエンボス加工することもできる。好ましくは、UV硬化可能なエンボスマスが使用される。
【0072】
提案する本発明は、特に以下の製品を製造するために使用され得る:
-1D、2Dおよび/または3Dの回折光学素子(DOE)、
-マイクロ流体構成群、
-レンズおよびレンズシステム、
-フレネルレンズ、
-生物医学的素子、
-偏光子、
-ナノ構造化電極、
-IR導波路、
-バーチャルリアリティ用途のアングル光学系、
-ガラスファイバ接続部、
-インプリントリソグラフィ用の作業スタンプ、
-その他。
【0073】
毛管効果は、特に液体自体の表面張力と、液体と固体表面との間の界面張力とにより引き起こされる。固体表面と液体との間、または特に少量の液体があるところでは固体間の相互作用時、毛管力が現れる。液体分子間の凝集力と、液体分子と基板および構造スタンプの表面との間の、両者間に位置するエンボスマスによるコーティングによる界面接着力とは、両表面がコンタクト後、特に外的な力の影響なしにコンタクト状態を保つことに寄与する。有利には、薄く柔軟な基板が使用され、その結果、毛管力は、相応に強く作用し、基板は、コンフォーマルに構造スタンプに引き寄せられる。
【0074】
別の一態様は、構造スタンプが基板とコンタクトすると直ちに、コーティングされた薄い基板が放されることである。エンボスマスによりコーティングされた基板の固定は、特に固定の解消により、例えば真空の中断により解消される。
【0075】
毛管力の作用により、薄く柔軟な基板は、コンフォーマルに構造スタンプに結合されたままである。
【0076】
基板の柔軟性と、基板受け装置からの基板の脱離により獲得された自由度とにより、基板は、変形し、構造スタンプに適合することができる。これにより、エンボス加工中の一様なコンタクトが可能となる。
【0077】
コンフォーマルなコンタクトにより、エンボスマスの粘性に基づき、毛管作用によっても構造スタンプの中間室は、特に完全に充満される。毛管圧は、特に構造の大きさに依存している。
【0078】
構造が小さければ小さいほど、毛管圧は大きい。下側のnm領域(50nm以下)の高解像度の構造化が可能である。それというのも、この領域で毛管圧は最大であるからである。
【0079】
さらに、有利には、エンボス加工工程時に外的な圧着圧の利用により生じることがあるエンボス欠陥は、防止される。
【0080】
方法
基板は、従来技術における基板と比較して極めて薄い。その際、基板(あるいは製品基板)を安定化させるキャリア基板は、使用されないか、またはキャリア基板あるいはキャリアプレートまたはキャリアフィルムは、それ自体が薄く、かつ柔軟である。これにより、エンボス加工すべき基板は、極めて柔軟である。
【0081】
マイクロインプリントプロセスおよび/またはナノインプリントプロセスは、構造スタンプ、好ましくは、エラストマー製のスタンプ、特に、ウエハフォーマットのスタンプにより実施される。その際、構造化されたスタンプは、好ましくは全面的に予め塗装された基板とコンタクトされる。
【0082】
構造スタンプと基板とは、特にそれぞれインプリント設備の受け装置に固定されている。基板受け装置への基板の固定は、好ましくは、真空あるいは負圧を用いて実施される。アライメント調整後、基板と構造スタンプとのコンタクト面は、全面的にコンタクトされる。構造スタンプが基板とコンタクトすると直ちに、エンボスマスによりコーティングされた基板の固定が、特に真空の中断により解消される。脱離プロセスは、全面的に、または予め決められた区間に沿って作用することができる。相応に固定要素は、制御される。
【0083】
基板が、コンタクトの実施後、完全に受け装置から解離されたとき、基板は、基板と構造スタンプとの間において存在するエンボスマスにより作用する毛管効果(毛管力)に起因して、構造スタンプに付着したままである。付加的な外的な圧着力は、本発明によりエンボス加工あるいは作製の成功にとって必要でない。
【0084】
毛管力の作用により、薄く柔軟な基板は、コンフォーマルにスタンプに引き寄せられる。基板の柔軟性と、基板の脱離により獲得された自由度とにより、基板は、変形し、スタンプに適合することができる。これにより、エンボス加工中の一様なコンタクトが可能となる。
【0085】
基板と構造スタンプとは、両者間に位置するエンボスマスによって毛管力により一緒に保持される。このために、少なくとも基板は、高い柔軟性を有していなければならない。エンボスマスの粘性に基づき、毛管作用により構造スタンプの中間室は、特に完全にエンボスマスにより充満される。
【0086】
提案する本発明は、これにより、構造スタンプの構造の、圧着により引き起こされる変形を防止する。さらに基板の柔軟性は、スタンプおよび/または基板の不規則性を補償するとともに、その他のエンボス欠陥、例えば、空気混入により引き起こされるエンボス欠陥も防止することを可能にし、これにより、エンボス加工プロセスの品質は極めて高い。
【0087】
構造スタンプにおける薄い基板のこの適合および変形中、基板と構造スタンプとの間に存在するガス、特に空気または不活性ガスは、押し出されることができ、その結果、エンボス加工は、ガス混入なしに行われ得る。その際、特に、基板を保持あるいは固定する固定要素による制御された解離により、空気または別のガスが混入されてしまうことは、防止され得る。その際、特に、固定要素の個々の解放、特にウエハ面に沿った同心的な解放により、基板の有利な解離が実施され得る。
【0088】
エンボスマスの硬化後、基板は、必要であれば、再び真空により受け装置に固定されることができ、その結果、離型を行うことができる。
【0089】
薄く柔軟な基板をマイクロ構造化および/またはナノ構造化用の構造スタンプによりエンボス加工する本発明に係る方法は、特に:
a)基板と構造スタンプとを相応の受け装置に固定し;
b)エンボスマスを基板上に被着し;
c)基板と構造スタンプとを大まかにかつ/または細かく調節し;
d)エンボス加工プロセスを、エンボスマスを有する基板と構造スタンプとのコンタクトにより、特に、基板受け装置および/またはスタンプ受け装置の相対運動によりスタートさせ、その結果、毛管効果により基板を構造スタンプに引き寄せ、コンフォーマルなコンタクトを生じさせ、
e)コンタクトが実施されると直ちに、基板受け装置への柔軟な基板の固定を脱離させ、こうして得られた自由度により、柔軟な基板は、変形し、構造スタンプに適合することができ、
f)エンボスマスを硬化させ;
g)エンボス加工された基板を基板受け装置に改めて固定し、構造スタンプと基板とを離型させる、
ステップを特に上記の順序で有している。
【0090】
好ましくは、エンボス加工は、基板と構造スタンプとのコンタクト面の、エンボスマスを伴ったコンタクト後、ひいては毛管力の発現後、特に基板の脱離により開始される。
【0091】
薄い基板は、脱離後、特に受け装置にもはや固定されておらず、これにより構造スタンプに適合することができる。
【0092】
好ましくは、コンタクトとは、全面的なコンタクトを表している。代替的には、コンタクトは、縁部からまたは中央部から行われてもよい。点状のコンタクトのために、本発明による別の一実施の形態では、構造スタンプおよび/または基板が、湾曲手段により湾曲される。有利には、コンタクトは、特に閉ループ制御される固定要素により補助され得る。
【0093】
別の一実施の形態において、ステップアンドリピートプロセスが実施される。この場合、構造スタンプは、繰り返す構造が例えばエンボスロールの周面に被着されるようにして、ステップアンドリピート法に使用される。この場合、装置は、エンボス加工された基板を、特に区画毎に、好ましくは、ステップアンドリピート法に対応する、特に、構造スタンプの1つのスタンプ面に対応する区画で硬化させる硬化手段を備えているようになっている。
【0094】
基板、構造スタンプおよびエンボスマス
特に好ましくは、基板および/または構造スタンプは、基板表面あるいは構造スタンプ表面全体にわたってコンフォーマルなコンタクトを可能にすべく柔軟である。好ましい一実施の形態において、基板は、極めて薄く、その結果、有利な柔軟性が提供されている。基板を安定化させるキャリア基板は、使用されないか、またはキャリア基板あるいはキャリアプレートまたはキャリアフィルムも、それ自体が薄く、かつ柔軟である。これにより、エンボス加工すべき基板は、極めて柔軟である。薄い基板は、受け装置に固定されており、その結果、取り扱いが容易になる。
【0095】
基板は、あらゆる形態を呈していてもよく、好ましくは円形、長方形または正方形、より好ましくはウエハフォーマットである。基板の直径は、2インチ超、好ましくは4インチ超、より好ましくは6インチ超、さらにより好ましくは8インチ超、最も好ましくは12インチ超である。基板とは、特にウエハと解される。
【0096】
基板の厚さは、特に1μm~2000μm、好ましくは10μm~750μm、より好ましくは100μm~500μmである。
【0097】
構造スタンプは、あらゆる形態を呈していてもよく、好ましくは円形、長方形または正方形、より好ましくはウエハフォーマットである。構造スタンプの直径は、好ましくは、基板の直径と大方一致している。
【0098】
ソフトリソグラフィプロセスを実現するために、標準的に使用されるのは、エラストマー製の構造スタンプであり、好ましくは、UV透過性のポリマースタンプである。
【0099】
UV-NIL用の透明なエラストマー製の構造スタンプは、例えば、以下のポリマー:シリコーン、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリオルガノシルセスキオキサン(POSS)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルクロライド(PVC)、エチレンテトラフルオロエチレン等から製造される。複数の材料および複数の層系の組み合わせが可能である。
【0100】
構造スタンプは、好ましくは、キャリア(英:backplane)、特にプレート、最も好ましくはガラスキャリア上に固定される。キャリア用の別の可能な材料は、ポリマーおよび/または金属である。キャリアは、特にスタンプキャリア基板でもある。
【0101】
構造スタンプは、そのエンボス側に、特に複数の、好ましくは、エンボス側のエンボス面全体にわたって分配、特に規則的に配置されるエンボス構造を有している。エンボススタンプの個々の構造の寸法は、好ましくは、マイクロメートル領域および/またはナノメートル領域にある。個々の構造の寸法は、特に20μm未満である。個々の構造の寸法は、特に0.1nm~20μm、好ましくは1nm~10μm、より好ましくは1nm~5μm、さらにより好ましくは1nm~2μmである。
【0102】
構造スタンプは、処理すべき基板表面に面した側に存在するポジ型および/またはネガ型のパターンを有していることができる。構造スタンプは、それぞれ異なる寸法を有する複数のエンボス構造を有していてもよい。
【0103】
代替的な一実施の形態において、構造スタンプは、硬質のUV透過性の材料、例えばガラス、石英または二酸化ケイ素からなっている。本実施の形態において、特に基板は、必要な薄い層厚さと柔軟性とを有していなければならない。別の一実施の形態において、構造スタンプは、硬質の材料、例えばシリコン、半導体材料または金属、例えばNiもしくはTiからなっている。
【0104】
エンボスマスは、特に化学的かつ/または物理的な工程により硬化される。特にエンボスマスは、電磁放射によりかつ/または温度により硬化される。
【0105】
好ましくは、硬化は、電磁放射により、特に好ましくはUV放射により実施される。この場合、構造スタンプは、エンボスマスが構造スタンプ側から硬化されることが望ましいとき、好ましくは、必要な電磁放射に対して透明である。
【0106】
構造スタンプの、エンボス構造から背離した側には、好ましくは、相応の放射源が配置されている。構造スタンプは、それゆえ、特に5000nm~10nm、好ましくは1000nm~100nm、より好ましくは700nm~200nm、最も好ましくは500nm~250nmの波長領域で透明である。
【0107】
構造スタンプの光学的な透明性は、この場合、0.01%より大きい、好ましくは20%より大きい、より好ましくは50%より大きい、最も好ましくは80%より大きい、なかでも最も好ましくは95%より大きい。
【0108】
エンボスマスの粘性は、好ましくは、1~100000cPにあり、その結果、エンボス材料/エンボスワニスの幅広い選択と、基板、スタンプ材料およびエンボス材料の最適な組み合わせによるプロセス最適化とが可能である。粘性は、特に100000cP未満、好ましくは10000cP未満、より好ましくは1000cP未満、最も好ましくは500cP未満である。
【0109】
エンボスマスは、特に全面的にコーティングされるか、または滴として、規定された間隔で基板または構造スタンプ上に塗布される。好ましくは、エンボスマスは、基板上に塗布される。その際、エンボスマスの塗布は、基板の固定前または固定後に実施され得る。本発明により、構造スタンプのトポグラフィに応じてあるいは構造の大きさに応じて、より多くのエンボスマスあるいはより多くの滴を有する領域も規定し得る。エンボスマスの塗布は、例えば、構造スタンプと基板との間に配置可能なノズルを有する調量装置により実施され得る。
【0110】
別の一実施の形態において、本発明は、例えばスピンコーティング法等の確立された工業的な塗装法と組み合わされて適用され得る。塗装は、エンボス加工プロセスとは別に、固有のモジュール内で実施され得る。これにより基板の塗装は、高速であり、欠陥フリーであり、全面的であり、パーティクルフリーであり、かつ標準化されている。特に、これによりスループット上の利点とコスト低下とが生じる。
【0111】
装置
本発明は、特に、好ましくはUV透過性の構造スタンプから、特に全面的な塗装がなされた基板のフラット側に、構造、特にマイクロ構造またはナノ構造を転写する、説明する方法および装置であって、基板を基板受け面上に受ける基板ホルダと、構造スタンプの、基板受け面に対して平行にアライメント調整可能であって、基板受け面に対向するように配置可能な構造面と、を備える方法および装置に関する。
【0112】
装置は、好ましくは、プロセスチャンバ内に設置されていることができ、プロセスチャンバは、周囲に対して気密に閉鎖され得る。これにより、任意のガスあるいはガス混合物によるプロセスチャンバの排気および/またはプロセスチャンバの換気が可能となる。プロセスチャンバは、この場合、1bar未満、好ましくは10mbar未満、より好ましくは5mbar未満の圧力に排気され得る。
【0113】
好ましい一構成において、本発明に係るプロセスは、周囲圧において、例えば空気雰囲気または不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0114】
プロセスチャンバは、特にあらゆる任意のガスあるいはガス混合物によりパージされ得る。このことは、とりわけエンボス加工が真空下で行われるべきでないとき、有利である。真空にしない1つの可能な理由であるが、唯一ではない理由は、周囲圧が低いときのエンボスマスの高い揮発性であろう。高い蒸気圧を特徴とする易揮発性は、プロセスチャンバの汚染に深く寄与してしまうことがある。
【0115】
使用されるガスは、この場合、エンボスマスとできる限り少ない相互作用を有していることが望ましい。特に好ましいのは、エンボスマスと相互作用しない不活性ガスによるパージであろう。
【0116】
コンタクトおよびエンボス加工は、室温でも、高められた温度でも実施され得る。本発明に係る設備は、温度調節および加熱用の相応の手段を備えている。
【0117】
別の一実施の形態において、基板と構造スタンプとのコンタクトは、ここでエラーが生じることがあり、ひいては再現可能な調節精度が遵守され得ないので、特にクリティカルである。装置は、例えばSVA(SmartView(登録商標) Alignment)法を利用した、とりわけ重なり合った異なる層の高精度の、調節されたエンボス加工のためのアライメントと組み合わされて、適用され得る。基板と(ナノ)構造スタンプとのアライメント調整されたコンタクト面のコンタクトのクリティカルなステップに際し、100μm未満、特に10μm未満、好ましくは1μm未満、なかでも最も好ましくは100nm未満、最も好ましくは10nm未満の、ますます正確な調節精度あるいはオフセットが所望されている。
【0118】
説明する装置では、基板と構造スタンプとがアライメント調整されて合流され、その結果、接近および調節は、マイクロインプリントエンボス加工プロセスおよび/またはナノインプリントエンボス加工プロセスのためにコントロールされて実施される。装置は、好ましくは、欧州特許第2612109号明細書に記載の、平行にアライメント調整されるスタンプと基板との間の非接触式のウェッジエラー補償用のシステムを備え、並進方向(T)で受け装置の受け面に対して横方向にエンドポジションまで第1の表面を第2の表面に対して接近させる接近手段が使用される。
【0119】
別の一実施の形態では、大まかなアライメント調整で十分である。正確なアライメント調整は、特に不要である。それというのも、薄い基板が、その柔軟性と、基板受けからの脱離により提供される可動性とにより、構造スタンプに適合し得るからである。
【0120】
基板と構造スタンプとは、受け装置(英:chuck)に固定される。受け装置にとって重要なのは、特に保持および固定のための平坦な受け面あるいは保持面である。基板および構造スタンプ用の受け装置は、好ましくは、真空式試料ホルダである。静電式の試料ホルダ、磁気または電気を利用して固定を行う試料ホルダ、界面接着力特性を変化させ得る、または相応の機械式のクランプを有する試料ホルダの使用も可能であろう。
【0121】
好ましい一実施の形態において、基板と構造スタンプとは、真空トラックがフライス削りによって作り込まれた平らな硬化表面上に、負圧あるいは真空により固定される。基板受け装置は、真空トラックを面全体または面の外側ゾーンに有している。有利には、負圧通路は、受け装置の中心Zに対して同心に、特に円形に、特に全周にわたって延びている。これにより、有利には特に一様な固定が達成される。
【0122】
好ましくは、受け装置、特に基板受け装置は、真空トラックを面の外側ゾーンにのみ有しており、その結果、基板は、部分的にのみ、特に縁部で固定される。特にこの場合、基板および/または構造スタンプを完全に受け装置から解離する可能性が生じる。このために受け装置の固定、特に保持真空は、停止される。固定のために負圧を加えることが可能な固定要素には、基板の脱離のために正圧を加えることもできる。受け装置は、有利な一実施の形態によれば、エンボス加工工程および硬化工程後に基板の全面的な固定を保証すべく、第2の真空ゾーンを有していてもよい。
【0123】
固定要素が真空要素として設けられている場合、固定要素は、1bar未満、好ましくは0.1mbar未満、さらに好ましくは0.01mbar、最も好ましくは0.001mbar未満、なかでも最も好ましくは0.0001mbar未満の圧力を形成し得る。固定要素は、特に個々にまたはグループで動作制御され得る。
【0124】
本発明に係る受け装置は、代替的または付加的にセンサを有していてもよく、センサを用いて物理的かつ/または化学的な特性が、固定された基板と、受け装置との間で測定され得る。これらのセンサは、例えば温度センサ、圧力センサまたは間隔センサである。複数の異なる種類のセンサを組み付けることも可能である。さらにセンサは、装置の別の部分に配置されていてもよい。例えば間隔センサまたは圧力センサは、受け装置間に配置されていてもよい。特に、エンボスマスを有する基板と、スタンプあるいはスタンプ構造との間の間隔および/または作用する力が測定され得る。
【0125】
さらに、必要であれば、受け面の輪郭は、受け面の受け平面に対してセットバックされていてもよく、その結果、載置面を縮小あるいは変更する凹部が形成される。これにより、両面で構造化あるいは処理される基板(製品基板)も使用され得る。
【0126】
別の一実施の形態において、受け装置は、基板および/または構造スタンプが全面的にまたは区画毎に温度調節され得るように形成されている。受け装置は、-100℃~500℃、好ましくは-50℃~450℃、さらに好ましくは-25℃~400℃、最も好ましくは0℃~350℃の温度範囲で温度調節され得る。
【0127】
基板受け装置の本発明による一実施の形態は、さらに、液状の層をその上に有する基板のハンドリングを可能にする。液状の層は、特に、コンタクト中にインタフェースに存在する液状のエンボスワニスあるいはエンボスマスである。
【0128】
エンボスマスは、特に全面的にコーティングされるか、または滴として、規定された間隔で基板または構造スタンプ上に塗布される。好ましくは、エンボスマスは、基板上に塗布される。基板および/または構造スタンプのトポグラフィに応じて、より多くのエンボスマスあるいはより多くの滴を有する領域も規定し得る。エンボスマスの塗布は、特に、構造スタンプと基板との間に配置可能なノズルを有する調量装置により実施され得る。
【0129】
別の一実施の形態において、本方法は、例えばスピンコーティング法等の確立された工業的な塗装法と組み合わされて適用され得る。塗装は、エンボス加工プロセスとは別に、固有のモジュール内で実施され得る。これにより、基板の塗装は、高速に、欠陥フリーに、全面的に、パーティクルフリーに、かつ標準化されて実施可能である。このことは、特にスループット上の利点も必然的に伴う。
【0130】
別の一実施の形態において、受け装置は、好ましくは中心に、特に部分的にのみ固定された構造スタンプおよび/または基板を反らせる装置を有している。この反らせる装置は、湾曲要素と称呼される。湾曲要素は、特にノズルであり、ノズルを通して流体、好ましくはガスを流出させることができ、これにより、正圧を例えば構造スタンプと受け装置との間に形成することができ、正圧は、構造スタンプを湾曲させる。構造スタンプが好ましくは外周部で受け装置により真空を介して固定されることによって、構造スタンプの湾曲が生じる。
【0131】
本発明によりエンボス加工は、基板と構造スタンプとのコンタクト面の、エンボスマスを伴ったコンタクト、好ましくは、全面的なコンタクト後、ひいては毛管力の発現後、特に基板の脱離により開始される。
【0132】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例の以下の説明から、かつ図面を基に看取可能である。図面は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1a】方法の第1の実施の形態における装置の横断面図である。
図1b】構造スタンプホルダと基板ホルダとが外的な圧着力なしに終点まで接近した後の、方法の第1の実施の形態における装置の横断面図である。
図1c】基板が基板受け装置から真空トラック内の真空の中断により剥離され、毛管力により構造スタンプにコンフォーマルに付着している、方法の第1の実施の形態における装置の横断面図である。
図1d】エンボス加工あるいは作製後であって、硬化可能なエンボスマスが、スタック内で、特に透明な構造スタンプを通してUV光により架橋あるいは硬化される、方法の第1の実施の形態における構造スタンプ受け装置の横断面図である。
図1e】エンボス加工後であって、エンボス加工された基板が基板受け装置に改めて固定された後、構造スタンプと基板との離型が行われた装置の横断面図である。
図2】方法の第1の実施の形態における装置の横断面図であって、この横断面図の拡大図を伴った図である。
図3a】基板が基板受け装置から真空トラック内の真空の中断により剥離され、毛管力により構造スタンプにコンフォーマルに付着している、方法の第1の実施の形態における装置の第2の横断面図である。
図3b】エンボス加工後であって、エンボス加工された基板が基板受け装置に改めて固定された後、構造スタンプと基板との離型が行われた装置の横断面図である。
図4a】本発明に係る方法の第2の実施の形態における装置の横断面図である。
図4b】エンボス加工および硬化後の、方法の第2の実施の形態における装置の横断面図である。
図4c】離型後の、方法の第2の実施の形態における装置の横断面図である。
図4d】ステップアンドリピート方式のエンボス加工法の第2の反復ステップにおける、方法の第2の実施の形態における装置の横断面図である。
【0134】
図中、同じ部材または同じ機能を有する部材には、同じ符号を付した。図は、図示を改善するため、正しい縮尺では示していない。
【0135】
図1aは、第1の実施の形態における装置の横断面図を示している。図1aは、特に構造スタンプ2および基板1を受ける装置の受け装置5および6を示している。受け装置5および6の受け面は、特に構造スタンプ2および基板1の寸法および周囲の輪郭に適合されている。
【0136】
図1aないし1eに示す構造スタンプ2は、好ましい一実施の形態において、エラストマー製の軟質スタンプ2である。エラストマー製の構造スタンプ2は、大きな表面を介したコンフォーマルで一様なコンタクトを可能にする。構造スタンプ2と基板1との良好な分離を保証すべく、スタンプ表面は、できる限り低い表面エネルギを有している。
【0137】
必要であれば、エラストマー製の構造スタンプ2は、キャリアあるいはスタンプキャリア基板4により支持される。別の一実施の形態では、様々な厚さを有するガラスキャリア基板が使用される。スタンプキャリア基板4の使用により、エラストマー製の構造スタンプ2は、少なくとも部分的にその柔軟性を失う。他方、構造スタンプ2の柔軟性は、キャリア4の選択により制御可能である。キャリア4は、代替的な一実施の形態において、プレートであってもよい。第3の実施の形態において、担体4は、必要とされない。構造スタンプ2の構造は、図1aないし1eに示す実施の形態に限定されるものではない。
【0138】
構造スタンプ2の構造3,3’は、マイクロメートル領域および/またはナノメートル領域の寸法を有している。構造スタンプ2の固定は、好ましい一実施の形態において、真空装置(図示せず)の真空トラック8を介した真空あるいは負圧により実施される。図1aないし1eに示す実施例において、負圧は、複数の、互いに同心に延びていて、構造スタンプを受けるスタンプ受け装置5の受け面を覆っている真空トラック8に、構造スタンプを固定すべく印加される。代替的な一実施の形態において、真空トラック8は、スタンプ受け装置5の受け面の側縁部の領域にのみ存在する。この代替的な実施の形態では、スタンプ受け装置5の受け面の外側の環状区画のみが、真空トラック8による構造スタンプ2の固定のために設けられている。
【0139】
図1aないし1eに示す好ましい一実施の形態において、基板1は、従来技術における基板と比較して極めて薄く、その結果、柔軟性が提供されている。第1の実施の形態において、基板1あるいは製品基板を安定化させるキャリア基板は、使用されない。薄い基板1は、受け装置6に固定されており、その結果、取り扱いが容易になる。代替的な一実施の形態において、薄い基板1を安定化させるキャリア(図示せず)が使用される。キャリアは、例えばキャリア基板、キャリアプレートまたはキャリアフィルムであってもよい。キャリアは、基板を支持し、撓みを防止し、しかし、それ自体も薄く、これにより十分な柔軟性も有している。これにより、エンボス加工すべき基板は、柔軟である。
【0140】
図1aないし1eに示す基板は、好ましい一実施の形態において、極めて薄い基板である。基板1の厚さは、特に1μm~2000μm、好ましくは10μm~750μm、より好ましくは100μm~500μmである。
【0141】
構造スタンプ2、基板1およびエンボスマス7の厚さは、図示を改善するため、図中、正しい縮尺では示していない。
【0142】
図1aに示す基板受け装置6の受け面は、好ましくは、基板1の寸法に少なくとも大方適合されている。基板1の固定は、好ましい一実施の形態において、真空装置(図示せず)の真空トラック9を介した真空あるいは負圧により実施される。
【0143】
図1aないし1eに示す実施例において、負圧は、複数の、互いに同心に延びていて、基板1を受ける基板受け装置6の受け面を覆っている真空トラック9に、基板1を固定すべく印加される。固定手段は、特に一様に受け面に分配されてゾーンに区分けされる、特に独立して制御可能な複数の固定要素としても、形成されている。図1aおよび1bにおいて、まず、基板受け装置6の受け面の側縁部のゾーンに設けられた真空トラック9だけが、独立して制御され、作動される(制御あるいは作動は、矢印により図示)。縁部領域は、特に、受け面の半径の半分まで、好ましくは、半径の4分の1まで延在している。
【0144】
図1aに示す基板は、既に全面的にエンボスマス7によりコーティングされている。好ましい一実施の形態において、本方法は、例えばスピンコーティング法等の確立された工業的な塗装法と組み合わされて適用される。層の被着は、特にスピン法、スプレー法またはインクジェット法およびディップコーティング法またはローラコーティング法により実施される。塗装は、エンボス加工プロセスとは別に、固有のモジュール内で実施され得る。
【0145】
エンボスマス7’の塗布は、図2に示す代替的な一実施の形態において、構造スタンプ2と基板1との間に配置可能な、ノズル12を有する調量装置13により実施され得る。本実施の形態において、エンボスマス7’は、滴として、規定された間隔で基板1上に塗布される。滴の体積は、正確に量定され、制御され、その結果、エンボス加工された構造の構造凹部と基板表面との間に残される可能な中間層の中間層厚さが、設定される。好ましいのは、できる限り小さい中間層厚さである。好ましくは、中間層厚さは、50μm~0.01nm、さらに好ましくは10μm~0.01nm、最も好ましくは1μm~0.01nmである。
【0146】
一実施の形態において、基板受け装置6は、さらに、液状の層をその上に有する基板1のハンドリングを可能にする。液状の層は、特に、コンタクト中にインタフェースに存在する液状のエンボスワニスあるいはエンボスマス7,7’である。
【0147】
図1bは、さらなるプロセスステップ時の装置を示している。アライメント調整後、基板1と構造スタンプ2とのコンタクト面は、接近され、全面的にコンタクトされる。
【0148】
本発明による実施の形態において、接近する相対運動が、構造スタンプ2と基板1,1’との間で実施される。好ましくは、受け装置5,6の一方のみが移動される。好ましくは、構造スタンプ2のみが、静止した基板受け装置6に対して相対的に接近される。
【0149】
図1bに示す構造スタンプ2と基板1とのコンタクトステップ時、基板受け装置6の縁部領域に設けられた固定手段のみが使用される。構造スタンプ2が、基板1とコンタクトすると直ちに、エンボスマス7,7’によりコーティングされた基板1の固定が、真空の中断により解消される。受け面における負圧の減少により、基板1の剥離がコントロールされて実施され得る。相応に固定要素は制御される。構造スタンプ2は、不変にスタンプ受け装置5に固定されたままである。
【0150】
脱離後、基板1は、図1cに示すように、基板1と構造スタンプ2との間において存在するエンボスマス7,7’により作用する毛管効果あるいは毛管力に起因して、構造スタンプ2に付着したままであり、エンボス加工プロセスが全面的に開始される。付加的な外的な圧着力は、本発明により、エンボス加工あるいは作製の成功にとって必要でない。受け装置5,6は、本発明により、間隔H(図2参照)が、正確に規定された最終間隔Hへ減少する程度にしか接近されず、その結果、インプリントプロセスは、付加的な外的な圧着力を適用せずにスタートされる。最終間隔Hは、特に100μm未満、好ましくは10μm未満、最も好ましくは500nm未満、なかでも最も好ましくは100nm未満である。毛管力の作用により、薄く柔軟な基板1は、コンフォーマルに構造スタンプ2に引き寄せられる。基板1の柔軟性と、基板1の脱離により獲得された自由度とにより、基板1は、変形し、構造スタンプ2に適合することができる。これにより、エンボス加工中の一様なコンタクトが可能となる。
【0151】
図1cは、スタンプ受け装置5に装填された特にUV透過性の構造スタンプ2を備える装置を示しており、このとき、基板1は、構造スタンプ2に、両者間に位置するエンボスマス7によって毛管力により一緒に保持される。このために、少なくとも基板1は、高い柔軟性を有していなければならない。エンボスマス7の粘性に基づき、毛管作用によっても構造スタンプ2の中間室は、完全にエンボスマス7により充満される。
【0152】
図1cに示す実施の形態において、基板1は、基板受け装置6への固定の中断後および毛管力の作用後、もはや基板受け装置6の受け面上に載置されていない。第2の実施の形態(図示せず)において、基板1は、固定手段による(能動的な)固定なしに、かつ外的な力の影響なしに、まだ基板受け装置6の受け面上に載置されている。基板1と、基板受け装置6の受け面との間のコンタクトが、固定手段9による基板固定の脱離後にまだ存在しているか否かは、複数のプロセスパラメータ、例えばエンボスマス7,7’の量および粘性、構造スタンプ2の構造3,3’の大きさ、最終間隔Hの設定等に依存している。
【0153】
代替的な一実施の形態(図示せず)では、構造スタンプ2が下側の受け装置に存在し、基板1が上側の受け装置に存在している。脱離後、基板1は、基板1と構造スタンプ2との間において存在するエンボスマスにより作用する毛管力に起因して、構造スタンプ2に付着したままであり、かつ付加的な重力にも起因して、例えば滴として、規定された間隔で構造スタンプ2上に塗布されたエンボスマス7上に載置されている。
【0154】
図示のすべての実施の形態において、構造スタンプ2と、エンボスマス7を有する基板1との間のコンフォーマルなあるいは間隙なしのコンタクトを達成するのに、外的な圧力、特に圧着は、不要である。装置は、スタンプ2および/または基板1に対して、スタンプ構造3の転写に用いられ、基板受け面に対して直交する合力を加えるために、アクチュエータ装置を使用する必要がないという利点を有している。
【0155】
本方法は、構造スタンプ2の構造3の、圧着により引き起こされる変形を防止する。そして基板1の柔軟性は、構造スタンプ2および/または基板1の不規則性を補償するとともに、その他のエンボス欠陥、例えば、空気混入により引き起こされるエンボス欠陥も防止することを可能にし、これにより、エンボス加工プロセスの品質は極めて高い。
【0156】
図1dに示す次のプロセスステップにおいて、硬化可能なエンボスマス7、特にフォトレジストまたはワニスの直接的な架橋が、UV光10により行われる。より一般的に、硬化は、電磁放射により、熱により、電流により、磁界または別の方法により実施されてもよい。好ましくは、硬化は、透明なスタンプ受け装置5と、透明な構造スタンプ2とを通して実施される。スタンプ受け装置5内にまたはスタンプ受け装置5に接して設けられた放射源を介してエンボスマス7を硬化させることも、可能である。
【0157】
図1eに示す最後のプロセスステップにおいて、基板1と構造スタンプ2との離型が行われる。基板1は、離型の前に再び基板受け装置6に固定される。基板1の固定は、真空装置(図示せず)の真空トラック9’を介した真空あるいは負圧により実施される。離型のために、基板受け装置6のすべての固定要素、特に、独立して制御可能な、一様に受け面に分配される固定要素9’が、使用され、作動される(作動は、矢印により図示)。
【0158】
図1eは、エンボス加工後の基板1iにおける、エンボス加工され、かつ硬化されたエンボスマス11を示している。本方法は、サブμm領域、好ましくは20μm未満、より好ましくは2μm未満、さらに好ましくは200nm未満、なかでも最も好ましくは10nm未満の高解像度の構造化を可能にする。
【0159】
好ましくは、装置は、1つの共通の、必要であれば周囲雰囲気に対して閉鎖可能な作業室を有するモジュール群を備えている。この場合、モジュール、例えば塗装モジュール、インプリントモジュールおよびアンロードモジュールは、移動装置(ロボットシステム)の中央モジュールの周りにクラスタ形または星形に配置され得る。
【0160】
図3aは、基板1’と構造スタンプ2との、両者間に位置するエンボスマス7を伴ったコンタクト後の、毛管力の作用による顕著な基板変形を有する一実施の形態を示している。図3aに示す個々の部材と基板1’との関係は、部分的に縮尺が異なっており、このことは、特に構造スタンプ2の著しく拡大して示した構造3によるものである。毛管力の作用により、薄く柔軟な基板1’は、コンフォーマルに構造スタンプ2に引き寄せられる。基板1’の柔軟性と、基板受け装置6からの基板1’の脱離により獲得された自由度とにより、基板1’は、変形し、構造スタンプ2に適合することができる。これにより、エンボス加工中の一様なコンタクトが可能となる。このために、少なくとも基板1,1’は、好ましくは、基板1,1’と構造スタンプ2とは、高い柔軟性を有していなければならない。基板1,1’の高い柔軟性と、コンフォーマルなコンタクトとにより、エンボス欠陥は、減少され、または好ましくは排除される。
【0161】
ナノインプリントリソグラフィの従来技術において生じ得るエンボス欠陥は、とりわけクラック、非一様に充填されたスタンプ構造(それゆえ空気混入)および非一様なワニス層厚さである。その際、エンボスマス、例えばワニスと、構造スタンプとの間の界面接着力は、クリティカルである。それというのも、例えば、硬化されたエンボスマス11’が比較的強く構造スタンプ2の凹部内に付着しているとき、歪みまたはクラックが生じることがあり、その結果、エンボス加工された構造が離型時に裂けてしまうことがあるからである。非一様に充填されたスタンプ構造3は、硬化されたエンボスマス11’内において、エンボス加工された個々の構造の欠損に至る。スタンプ構造の充填は、複数の要因、とりわけエンボスマス7の粘性、コーティングの厚さあるいは塗布されたエンボスマス滴の大きさおよび配置ならびに時間に依存している。
【0162】
別のエンボス欠陥は、特に構造スタンプ2自体の欠陥、例えば一部の箇所で深さが足りない構造3または平らでない表面に由来する。欠陥、例えば構造スタンプ2の平らでない表面は、基板1の柔軟性により補償される。
【0163】
軟質の構造スタンプ2は、外的な圧力が印加されないので、本発明によりプロセス中、変形し得ない。基板1,1’も薄いので、スタンプ欠陥または従来技術においてさもなければ生じる欠陥は、補償され得るか、またはまったく生じない。図3bは、離型後、基板1iにあるエンボス加工され、かつ硬化されたエンボスマス11’を示している。
【0164】
提案する本発明は、特に以下の製品を製造するために使用され得る:
-1D、2Dおよび/または3Dの回折光学素子(DOE)、
-マイクロ流体構成群、
-レンズおよびレンズシステム、
-フレネルレンズ、
-生物医学的素子、
-偏光子、
-ナノ構造化電極、
-IR導波路、
-バーチャルリアリティ用途のアングル光学系、
-ガラスファイバ接続部、
-インプリントリソグラフィ用の作業スタンプ、
-その他。
【0165】
図4aないし4dは、ステップアンドリピート法での別の一実施の形態を示している。この場合、構造がその上でエンボス加工されるべき基板1’’よりも小さい構造スタンプ2’が使用される。工程は、図4aないし4dに示すように、エンボスマス7’’を有する基板1’’全体をエンボス加工するために、相応の頻度であるいは相応に任意に反復される。本発明に係る設備は、好ましくは、プロセスチャンバ内に設置されていることができ、プロセスチャンバは、周囲に対して気密に閉鎖され得る。これにより、任意のガスあるいはガス混合物によるプロセスチャンバの排気および/またはプロセスチャンバの換気が可能となる。
【0166】
図4aは、エンボスマス7’’の全面的な層を有する基板1’’を示している。別の一実施の形態において、エンボスマスの滴は、基板1’’上に、規定された間隔で塗布され得る。ステップアンドリピート方式の構造スタンプ2’は、この場合、基板1’’より小さい。図4aは、特に構造スタンプ2’を受ける装置の受け装置5’の横断面図も示している。構造スタンプ2’の構造3’は、マイクロメートル領域および/またはナノメートル領域の寸法を有している。スタンプ受け装置5’への構造スタンプ2’の固定は、好ましい一実施の形態において、真空装置(図示せず)の真空トラックを介した真空あるいは負圧により実施される。
【0167】
本発明の有利な一実施の形態において、装置は、エンボス加工された基板1’’を、特に区画毎に、好ましくは、ステップアンドリピート法に対応する、特に、構造スタンプの1つのスタンプ面に対応する区画で硬化させる硬化手段を備えているようになっている。
【0168】
ステップアンドリピート方式の装置は、欧州特許出願公開第2287666号明細書に記載される装置の発展形と見なされるべきである。欧州特許出願公開第2287666号明細書には、エンボス加工工程において複数のエンボス加工ステップで基板をエンボス加工するステップアンドリピート方式の装置と、この装置内に含まれるさらなる装置、特に調節装置とが記載されている。
【0169】
図4bに示すプロセスステップにおいて、エンボスマス7’’は、ステップアンドリピート方式の構造スタンプ2’により構造化される。構造スタンプ2’は、このとき、第1のポジションに走行させられ、これにより、この第1のポジションにおいてエンボス加工することができる。好ましくは、構造スタンプ2’だけが、静止したキャリア基板に対して相対的に接近される。コンタクト後、硬化可能なエンボスマス7’’、特にフォトレジストまたはワニスの直接的な架橋が、UV光10により行われる。より一般的に、硬化は、電磁放射により、熱により、電流により、磁界または別の方法により実施されてもよい。好ましくは、硬化は、透明なスタンプ受け装置5’と、透明な構造スタンプ2’とを通して実施される。本発明により、スタンプ受け装置5’内にまたはスタンプ受け装置5’に接して設けられた放射源を介してエンボスマス7’’を硬化させることも、可能である。
【0170】
図4cに示す離型後には、基板1’’の規定された区画がエンボス加工されており、硬化されたエンボスマス11’を有している。
【0171】
図4dに示すステップアンドリピート法のさらなるプロセスステップにおいて、ステップアンドリピート方式の構造スタンプ2’は、第1のポジションから、第1のポジションとは異なる予め決められた第2のポジションへ走行し、改めてエンボス加工する。コンタクト後、再び、エンボス加工された硬化可能なエンボスマス7’’の直接的な架橋が、UV光10により行われる。本発明により、多重硬化も可能であり、この場合、個々のエンボス加工ステップ毎に局所的に第1の硬化が行われ、ステップアンドリピート法の完了後、基板1’’全体のさらなる硬化が、例えば固有のモジュール内で行われる。
【0172】
図4aないし4dに示すプロセスは、基板1’’の所望の面がエンボス加工されるまで、幾度も継続され得る。本実施の形態における構造スタンプ2’は、基板1’’に設けられたエンボスマス7’’とのコンタクト後、外的な力影響なしのエンボス加工を可能にする。構造スタンプは、移動させる手段、特に基板表面に対して平行に移動させる手段と、Z方向に沿ってかつ離型用に接近させる昇降システム(図示せず)とを有している。ステップアンドリピート方式の装置の走行テーブルの高い精度は、基板1’’の範囲全体における構造スタンプ2’によるシームレスのエンボス加工を可能にする。先にエンボス加工された構造に対するアライメント調整、特に、例えば先にエンボス加工された構造区画の縁部におけるオーバラップ構造に対するアライメント調整が、本発明により可能である。ステップアンドリピート法におけるエンドレス基板の使用も可能である。この場合、エンドレス基板は、特に、第1のロールに蓄えられた基板であって、その長さは、その幅よりも何倍も大きい。特にエンドレス基板は、フィルムである。
【0173】
構造スタンプ2’による、反復され、隣り合って実施されるエンボス加工により、例えばレンズアレイ、特にマイクロレンズアレイおよび/またはナノレンズアレイが製造される。
【0174】
付加的な外的な圧着力は、本発明により、エンボス加工の成功にとって必要でない。スタンプ受け装置5’は、本発明により、予め決められたポジションにおいて、間隔Hが、正確に規定された最終間隔H’へ減少する程度にしか、基板1’’に接近されず、その結果、インプリントプロセスは、付加的な外的な圧着力を適用せずにスタートされる。最終間隔H’は、特に100μm未満、好ましくは10μm未満、最も好ましくは500nm未満、なかでも最も好ましくは100nm未満である。毛管力の作用により、薄く柔軟な基板1’’は、コンフォーマルに構造スタンプ2’に引き寄せられる。基板1’’の柔軟性により、基板1’’は、変形し、構造スタンプ2’に適合することができる。これにより、エンボス加工中の一様なコンタクトが可能となる。
【符号の説明】
【0175】
1,1’,1’’ 基板、製品基板
1i エンボス加工後の基板
2,2’ 構造スタンプ
3,3’ エンボス構造
4 安定化用のスタンプキャリア基板またはバックプレート
5,5’ スタンプ受け装置
6 基板受け装置
7,7’,7’’ エンボスマス
8,8’ スタンプ受け装置内に設けられた真空トラック
9,9’ 基板受け装置内に設けられた真空トラック
10 放射源
11,11’ エンボス加工され、硬化されたエンボスマス
12 ノズル
13 調量装置
H 間隔
,H’ 最終間隔
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
【国際調査報告】