(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】二次電池及びこの二次電池を含む電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230904BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20230904BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230904BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/58
H01M4/136
H01M10/0567
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501536
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2021109903
(87)【国際公開番号】W WO2023004819
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】黄磊
(72)【発明者】
【氏名】韓昌隆
(72)【発明者】
【氏名】呉則利
(72)【発明者】
【氏名】張翠平
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
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5H029AL02
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5H029HJ00
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5H029HJ19
5H050AA07
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5H050BA16
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5H050CA01
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5H050CB01
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5H050CB07
5H050CB08
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5H050DA03
5H050FA05
5H050FA19
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本出願は、二次電池及びこの二次電池を含む電池モジュール、電池パックと電力消費装置を開示し、二次電池は、正極極板と、電解液とを含む。正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる正極膜層とを含み、正極膜層は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含む。電解液は、有機溶媒を含み、有機溶媒は、式1で示される第一の溶媒を含む。式1において、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、C1~C4のアルキル基、C1~C4のハロゲン化アルキル基のうちの一つである。二次電池は、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah、電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たす。本出願の二次電池は、高エネルギー密度を維持しながら、良好な動力学的性能、比較的高い容量維持率及び比較的低い体積膨張率を持つことができる。
(式1)
【化1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極極板と、電解液とを含む二次電池であって、
前記正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる正極膜層とを含み、前記正極膜層は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含み、
前記電解液は、有機溶媒を含み、前記有機溶媒は、式1で示される第一の溶媒を含み、
(式1)
【化1】
式1において、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、C1~C4のアルキル基、C1~C4のハロゲン化アルキル基のうちの一つであり、
かつ前記二次電池は、
第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah、選択的に、≧1.0g/Ah、
電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ah、選択的に、2.8g/Ah-3.3g/Ahを満たす、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1、選択的に、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.5をさらに満たし、
第一の溶媒の含有量は、有機溶媒の総質量に対して、第一の溶媒の質量パーセントであり、
正極膜層の厚さは、単位mmの正極集電体上の片面正極膜層の厚さを表す、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電解液は、添加剤をさらに含み、前記添加剤の還元電位は、≧0.8V(vs Li
+/Li)である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記添加剤は、有機添加剤を含み、前記有機添加剤は、ビニレンカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチレンサルフェート、1,3-プロパンスルトンのうちの一つ又は複数を含む、請求項3に記載の二次電池。¥
【請求項5】
前記添加剤は、無機添加剤を含み、前記無機添加剤は、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ジフルオロリン酸リチウムのうちの一つ又は複数を含む、請求項3又は4に記載の二次電池。
【請求項6】
添加剤の総質量に対して、有機添加剤の質量パーセントは、≧50%、選択的に、70%-100%である、請求項4又は5に記載の二次電池。
【請求項7】
添加剤の総質量に対して、無機添加剤の質量パーセントは、≦50%、選択的に、0%-30%である、請求項4-6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記二次電池は、負極極板をさらに含み、前記負極極板は、負極活物質を含み、かつ前記二次電池は、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1、選択的に、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧2をさらに満たし、
保液係数は、電解液の質量と二次電池の定格容量との比であり、単位は、g/Ahであり、
添加剤の含有量は、電解液の総質量に対して、添加剤の質量パーセントであり、
負極相対質量は、負極極板における負極活物質の質量と二次電池の定格容量との比であり、単位は、g/Ahであり、
負極活物質の比表面積の単位は、m
2/gである、請求項1-7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
正極膜層の厚さは、≧0.07mm、選択的に、0.07mm-0.14mmであり、及び/又は
正極膜層の孔隙率は、≦50%、選択的に、5%-50%である、請求項1-8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
負極相対質量は、≦2.1g/Ah、選択的に、1.2g/Ah-2.1g/Ahであり、及び/又は
負極活物質の比表面積は、0.5m
2/g-6.0m
2/g、選択的に、1.0m
2/g-3.2m
2/gであり、及び/又は
添加剤の含有量は、≧3%、選択的に、3%-9%である、請求項1-9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
第一の溶媒の含有量は、≧10%、選択的に、10%-80%である、請求項1-10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
式1において、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基のうちの一つである、請求項1-11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
式1で示される第一の溶媒は、
【化2】
のうちの一つ又は複数から選択される、請求項1-12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記有機溶媒は、式2で示される第二の溶媒、式3で示される第三溶媒のうちの一つ又は複数をさらに含み、式2において、R
21は、H、メチル基、エチル基のうちの一つであり、式3において、R
31、R
32は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基のうちの一つであり、
(式2)
【化3】
(式3)
【化4】
選択的に、式2で示される第二の溶媒は、
【化5】
のうちの一つ又は二種から選択され、
選択的に、式3で示される第三溶媒は、
【化6】
のうちの一つ又は複数から選択される、請求項1-13のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
有機溶媒の総質量に対して、第二の溶媒の質量パーセントは、≧10%、選択的に、10%-80%であり、及び/又は
有機溶媒の総質量に対して、第三溶媒の質量パーセントは、≧0%、選択的に、5%-80%である、請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びそれらの夫々の改質化合物のうちの一つ又は複数を含む、請求項1-15のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項17】
請求項1-16のいずれか1項に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項18】
請求項1-16のいずれか1項に記載の二次電池、請求項17に記載の電池モジュールのうちの一つを含む、電池パック。
【請求項19】
請求項1-16のいずれか1項に記載の二次電池、請求項17に記載の電池モジュール、請求項18に記載の電池パックのうちの少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池技術分野に関し、具体的には、二次電池及びこの二次電池を含む電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、サイクル性能が良く、電気化学的性能が安定し、価格が安いなどの特徴があるため、極めて大きな市場シェアを占めている。顧客の電池のエネルギー密度に対する要求がますます高くなるにつれて、より高エネルギー密度、より長いサイクル寿命を持つ電池を開発することは極めて重要である。現在、電池のエネルギー密度を向上させる一つの有効な手段は、電池内部空間の利用率を向上させることであり、例えば、極板の塗布重量やプレス密度を向上させることであるが、これによる弊害は、活性イオンの輸送経路が長くなり、活性イオンの拡散速度が遅くなり、それによって電池正極と負極との間での活性イオンの脱離が困難になり、電池の動力学的性能が悪くなる。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、二次電池が高エネルギー密度を維持しながら、良好な動力学的性能、比較的高い容量維持率及び比較的低い体積膨張率を持つために、二次電池及びこの二次電池を含む電池モジュール、電池パックと電力消費装置を提供することを目的とする。
【0004】
本出願の第一の態様による二次電池は、正極極板と、電解液とを含む。前記正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる正極膜層とを含み、前記正極膜層は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含む。前記電解液は、有機溶媒を含み、前記有機溶媒は、式1で示される第一の溶媒を含む。
【0005】
【0006】
式1において、R11及びR12は、それぞれ独立して、C1~C4のアルキル基、C1~C4のハロゲン化アルキル基のうちの一つである。
【0007】
本出願の二次電池は、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah、電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たす。
【0008】
本出願の二次電池が第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah及び電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たす場合、電池内部の電解液は、正極極板と負極極板をよく浸潤し、電池動力学的性能に対する第一の溶媒の改善作用を十分に果たすことができるとともに、電池内部の活性イオンの不可逆的な消費も一つの小さな範囲内に抑えることができる。そのため、二次電池は、高エネルギー密度を維持しながら、良好な動力学的性能、比較的高い容量維持率、及び比較的低い体積膨張率を持つことができる。
【0009】
選択的に、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量は、≧1.0g/Ahである。
【0010】
選択的に、電解液の質量/二次電池の定格容量は、2.8g/Ah-3.3g/Ahである。
【0011】
本出願の任意の実施形態では、前記二次電池は、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1をさらに満たす。第一の溶媒の含有量は、有機溶媒の総質量に対して、第一の溶媒の質量パーセントであり、正極膜層の厚さは、単位mmの正極集電体上の片面正極膜層の厚さを表す。この場合、正極膜層塗布重量とプレス密度増加による電池動力学的性能不良の問題は、有効に解決できる。
【0012】
選択的に、前記二次電池は、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.5をさらに満たす。
【0013】
本出願の任意の実施形態では、前記電解液は、添加剤をさらに含む。
【0014】
選択的に、添加剤の還元電位は、≧0.8V(vs Li+/Li)である。この場合、添加剤は、有機溶媒よりも優先して電気化学的還元反応を起こして負極活物質表面SEI膜の形成に関与し、負極活物質表面での安定したSEI膜の形成を促進し、負極活物質と電解液とのさらなる反応を阻止し、第一の溶媒還元によるSEI膜に対する破壊程度を低減させることができる。
【0015】
本出願の任意の実施形態では、添加剤は、有機添加剤を含み、前記有機添加剤は、ビニレンカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチレンサルフェート、1,3-プロパンスルトンのうちの一つ又は複数を含む。有機添加剤は、負極活物質表面に電気化学的還元を優先的に発生して性能に優れたSEI膜を形成し、第一の溶媒還元により発生したプロトンによるSEI膜への破壊程度を低減させることができる。有機添加剤の還元生成物は、主に有機成分であり、これらの有機成分は、SEI膜の機械的安定性を向上させることができ、電池のサイクル性能の向上に有利である。
【0016】
本出願の任意の実施形態では、添加剤は、無機添加剤を含み、前記無機添加剤は、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ジフルオロリン酸リチウムのうちの一つ又は複数を含む。無機添加剤は、負極活物質表面に電気化学的還元を優先的に発生して性能に優れたSEI膜を形成することによって、第一の溶媒還元により発生したプロトンによるSEI膜への破壊程度を低減させることができる。無機添加剤の還元生成物は、主に無機成分であり、これらの無機成分は、SEI膜の熱安定性を向上させることができ、電池の高温性能の向上に有利である。
【0017】
本出願の任意の実施形態では、添加剤の総質量に対して、有機添加剤の質量パーセントは、≧50%である。選択的に、有機添加剤の質量パーセントは、70%-100%である。
【0018】
本出願の任意の実施形態では、添加剤の総質量に対して、無機添加剤の質量パーセントは、≦50%である。選択的に、無機添加剤の質量パーセントは、0%-30%である。
【0019】
本出願の任意の実施形態では、前記二次電池は、負極極板をさらに含み、前記負極極板は、負極活物質を含む。
【0020】
本出願の任意の実施形態では、前記二次電池は、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1をさらに満たす。この場合、添加剤は、負極界面を効果的に保護することができ、第一の溶媒の不安定による負極界面の副反応が激しくなる問題を抑制し、二次電池の使用中の容量維持率はより高く、体積膨張率はより低い。保液係数は、電解液の質量と二次電池の定格容量との比であり、単位は、g/Ahであり、添加剤の含有量は、電解液の総質量に対して、添加剤の質量パーセントであり、負極相対質量は、負極極板における負極活物質の質量と二次電池の定格容量との比であり、単位は、g/Ahであり、負極活物質の比表面積の単位は、m2/gである。
【0021】
選択的に、前記二次電池は、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧2をさらに満たす。
【0022】
本出願の任意の実施形態では、正極膜層の厚さは、≧0.07mmである。選択的に、正極膜層の厚さは、0.07mm-0.14mmである。正極膜層の厚さが適当で、活性イオンの正極膜層での輸送経路が適当であり、電池は、良好な動力学的性能を維持しながら、電池のエネルギー密度を過度に犠牲にしない。
【0023】
本出願の任意の実施形態では、正極膜層の孔隙率は、≦50%である。選択的に、正極膜層の孔隙率は、5%-50%である。正極膜層の孔隙率が適当で、活性イオンの正極膜層での輸送抵抗が適当であり、電池は、良好な動力学的性能を維持しながら、電池のエネルギー密度を過度に犠牲にしない。
【0024】
本出願の任意の実施形態では、負極相対質量は、≦2.1g/Ahである。選択的に、負極相対質量は、1.2g/Ah-2.1g/Ahである。
【0025】
本出願の任意の実施形態では、負極活物質の比表面積は、0.5m2/g-6.0m2/gである。選択的に、負極活物質の比表面積は、1.0m2/g-3.2m2/gである。
【0026】
本出願の任意の実施形態では、第一の溶媒の含有量は、≧10%である。選択的に、第一の溶媒の含有量は、10%-80%である。第一の溶媒の含有量が適当であり、電池動力学的性能に対する改善作用を十分に果たすことができる一方で、負極界面に対する過度破壊を回避することができる。
【0027】
本出願の任意の実施形態では、添加剤の含有量は、≧3%である。選択的に、添加剤の含有量は、3%-9%である。添加剤の含有量は、適当であり、負極界面に対する保護作用を十分に果たすことができる一方で、負極活物質表面に厚すぎるSEI膜を形成し、負極成膜抵抗を増加させることを回避することができる。
【0028】
本出願の任意の実施形態では、式1において、R11及びR12は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基のうちの一つである。R11及びR12は、上記基から選択された場合、電解液の粘度を適切な範囲内に保つことができ、電解液はより高い導電率を持つ。
【0029】
本出願の任意の実施形態では、式1で示される第一の溶媒は、
【化2】
のうちの一つ又は複数から選択される。
【0030】
本出願の任意の実施形態では、前記有機溶媒は、式2で示される第二の溶媒、式3で示される第三溶媒のうちの一つ又は複数をさらに含み、式2において、R21は、H、メチル基、エチル基のうちの一つであり、式3において、R31、R32は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基のうちの一つである。
【0031】
【0032】
本出願の任意の実施形態では、有機溶媒の総質量に対して、第二の溶媒の質量パーセントは、≧10%である。選択的に、第二の溶媒の質量パーセントは、10%-80%である。第二の溶媒の誘電率は比較的高く、リチウム塩の解離に有利であり、電解液に第二の溶媒を添加すると、電解液導電率の増加に有利である。
【0033】
本出願の任意の実施形態では、有機溶媒の総質量に対して、第三溶媒の質量パーセントは、≧0%である。選択的に、第三溶媒の質量パーセントは、5%-80%である。第三溶媒の誘電率は比較的小さく、リチウム塩を解離させる能力が比較的弱いが、粘度が小さく、流動性がよく、電解液に第三溶媒を添加すると、活性イオンの移行速度を増加させることで、電解液の導電率を増加させることができる。
【0034】
本出願の任意の実施形態では、式2で示される第二の溶媒は、
【化5】
のうちの一つ又は二種から選択される。
【0035】
本出願の任意の実施形態では、式3で示される第三溶媒は、
【化6】
のうちの一つ又は複数から選択される。
【0036】
本出願の任意の実施形態では、前記オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びそれらの夫々の改質化合物のうちの一つ又は複数を含む。
【0037】
本出願の第二の態様による電池モジュールは、本出願の第一の態様の二次電池を含む。
【0038】
本出願の第三の態様による電池パックは、本出願の第一の態様の二次電池、本出願の第二の態様の電池モジュールのうちの一つを含む。
【0039】
本出願の第四の態様による装置は、本出願の第一の態様の二次電池、本出願の第二の態様の電池モジュール、本出願の第三の態様の電池パックのうちの少なくとも一つを含む。
【0040】
本出願の電池モジュール、電池パックと電力消費装置は、本出願による二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同様である優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本出願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を支払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【
図1】本出願の二次電池の一実施形態の概略図である。
【
図2】本出願の二次電池の一実施形態の分解概略図である。
【
図3】本出願の電池モジュールの一実施形態の概略図である。
【
図4】本出願の電池パックの一実施形態の概略図である。
【
図6】本出願の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、添付図面を適当に参照しながら、本出願に具体的に開示された二次電池及びこの二次電池を含む電池モジュール、電池パックと電力消費装置の実施の形態を詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する繰り返し説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0043】
本明細書に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式によって限定され、所与の範囲は、1つの下限及び1つの上限を選定することによって限定され、選定された下限及び上限は、特別な範囲の境界を限定する。このように限定された範囲は、端値を含むか、又は端値を含まないものとすることができ、そして任意の組み合わせ、即ち、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して、60-120と80-110の範囲が列挙された場合、60-110と80-120の範囲も予想される。さらに、列挙された最小範囲値1と2、及び最大範囲値3、4と5が列挙された場合、以下の範囲は、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4、及び2-5のすべてを予想することができる。本明細書では、他の説明がない限り、数値範囲「a-b」は、a-bの間の任意の実数の組み合わせの略示であり、ここで、aとbは、いずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本明細書において「0-5」間の全ての実数が全数列挙されていることを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの略示のみである。また、あるパラメータが≧2の整数であることを記述する場合、このパラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることが開示されていることに相当する。
【0044】
別段の記載がない限り、本出願のすべての実施の形態及び任意の実施の形態は、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0045】
別段の記載がない限り、本出願のすべての技術的特徴及び任意の技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0046】
別段の記載がない限り、本出願のすべてのステップは、順次に行われてもよいし、ランダムに行われてもよく、好ましくは順序に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含む場合、前記方法は、順次に実施されるステップ(a)及び(b)を含んでもよいし、順次に実施されるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、上述した前記方法がステップ(c)をさらに含む場合、ステップ(c)は、任意の順序で前記方法に加えられてもよく、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0047】
別段の記載がない限り、本明細書で言及される「含む」及び「包含」は、オープン型を表し、クローズドであってもよい。例えば、前記「含む」及び「包含」は、列挙されていない他の成分を含むか、又は包含してもよく、列挙されている成分のみを含むか、又は包含してもよいことを表すことができる。
【0048】
本明細書の説明では、別段の記載がない限り、用語「又は」は、包括的である。例えば、「A又はB」という用語は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれか一つの条件は、いずれも「A又はB」という条件を満たし、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽であり(又は存在せず)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真であり(又は存在し)、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)。
【0049】
二次電池
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池放電後に充電の方式により活物質を活性化させて引き続き使用可能な電池である。
【0050】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、セパレータと、電解質とを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵し放出する。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する作用を奏するとともに、活性イオンを通過させることができる。電解質は、正極極板と負極極板との間で活性イオンを伝導する作用を奏する。
【0051】
本出願の二次電池において、正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる正極膜層とを含む。例えば、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両者に設けられている。
【0052】
本出願の二次電池において、正極膜層は、正極活物質を含む。例として、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれらの夫々の改質化合物のうちの一つ又は複数を含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物としては、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含んでもよいが、これに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩としては、例えば、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びそれらの夫々の改質化合物のうちの一つ又は複数を含んでもよいが、これに限定されない。これらの正極活物質一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、少なくともオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一つ又は複数のみであってもよい。
【0055】
本出願の二次電池において、上記各正極活物質の改質化合物は、正極活物質に対してドーピング改質、表面被覆改質、又はドーピングとともに表面被覆改質であってもよい。
【0056】
本出願の二次電池において、正極膜層は、一般的には、正極活物質と、選択的な接着剤と、選択的な導電剤とを含む。正極膜層は、一般的には、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして形成されるものである。正極スラリーは、一般的には、正極活物質、選択的な導電剤、選択的な接着剤及び任意の他の成分を溶媒に分散させて均一に攪拌して形成されるものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。例として、正極膜層用の接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂のうちの一つ又は複数を含んでもよい。例として、正極膜層用の導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0057】
本出願の二次電池において、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。金属箔シートとしては、例えば、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一つの表面に形成された金属材料層とを含んでもよい。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0058】
本出願の二次電池において、負極極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる負極膜層とを含む。例えば、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両者に設けられている。
【0059】
負極活物質は、当技術分野で既知の二次電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、天然グラファイト、人造グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの一つ又は複数を含んでもよい。ケイ素系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金材料のうちの一つ又は複数を含んでもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの一つ又は複数を含んでもよい。本出願では、これらの材料に限定されなく、他の二次電池負極活物質に用いることができる従来の既知の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本出願の二次電池において、負極膜層は、一般的には、負極活物質、選択的な接着剤、選択的な導電剤及び他の選択的な助剤を含む。負極膜層は、一般的には、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させて、冷間プレスして形成されるものである。負極スラリーは、一般的には、負極活物質、選択的な導電剤、選択的な接着剤、他の選択的な助剤を溶媒に分散させて均一に撹拌して形成されるものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、それらに限らない。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含んでもよい。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一つ又は複数を含んでもよい。他の選択的な助剤は、増稠剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。
【0061】
本出願の二次電池において、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一つの表面に形成された金属材料層とを含んでもよい。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0062】
電池分野では、電解質は、固体電解質、ゲル電解質、液体電解質(即ち、電解液)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。本出願の二次電池は、液体電解質、即ち電解液を使用する。
【0063】
本出願の二次電池において、前記電解液は、有機溶媒及び選択的な添加剤を含んでもよい。本出願の有機溶媒は、非水有機溶媒であり、前記有機溶媒は、式1で示される第一の溶媒を含んでもよい。
【0064】
(式1)
【化7】
式1において、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、C1~C4のアルキル基、C1~C4のハロゲン化アルキル基のうちの一つであり、R
11及びR
12は、同じであっても異なってもよい。アルキル基及びハロアルキル置換基は、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよい。ハロアルキル置換基におけるハロゲン原子数は、1つであってもよく、複数であってもよく、ハロアルキル置換基が複数のハロゲン原子を含む場合、これらのハロゲン原子は、同じであってもよく、異なってもよい。
【0065】
一般的には、電池の高エネルギー密度と良好な動力学的性能は両立できず、正極膜層の塗布重量及びプレス密度を増加させることは電池のエネルギー密度を高めることができるが、同時に電池動力学的性能の不良を招くおそれがある。電解液に式1で示される第一の溶媒を添加することで電解液の動力学的性能及び電池の動力学的性能を向上させることができるのは、式1で示される第一の溶媒が低粘度、高誘電率の利点を持ち、電解液の導電率を極めて大きく向上させることができるからである。
【0066】
一般的には、電池における電解液の含有量が高いほど電池の性能が良い。しかし、本発明者らは、正極極板にオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物を含む場合、一定範囲で、電解液の注入量が増加し、電池内部の電解液浸潤性が良くなり、電池の動力学的性能も良くなるが、その後に続く電解液の注入量を増加させても電池動力学的性能の改善効果が大きくなく、そして、電解液の注入量を増加させ続けると、電池内部の有機溶媒の含有量も増加し、一部の有機溶媒は、活性イオンを消費し、結果として電池容量の減衰を加速させ、電池のガス発生量を増加させることを見出した。
【0067】
本発明者らは、さらなる検討の結果、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物を主に正極活物質とする電池において、電池が第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah及び電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たす場合に、高エネルギー密度を維持しながら、良好な動力学的性能、比較的高い容量維持率及び比較的低い体積膨張率を持つことができることを見出した。何故ならば、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物を主に正極活物質とする電池のエネルギー密度が比較的低いからであり、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、一つの有効な手段は、電池内部空間の利用率を向上させることであり、例えば、極板の塗布重量及びプレス密度を向上させることであり、この場合、電池内部の残空間が小さくなり、電解液の含有量が増加すると、電池内部のガス発生量も増加しやすい。そのため、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物を主に正極活物質とする電池は、電解液の含有量に対してより敏感である。また、電解液の動力学的性能及び電池の動力学的性能を向上させるためには、電解液が上記第一の溶媒を使用することが多いが、第一の溶媒の耐酸化性が悪く、酸化分解しやすく、電池内部のガス発生量が増加することを招く。そのため、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物を主に正極活物質とする電池は、その内部電解液及び第一の溶媒の含有量を厳しく管理する必要がある。
【0068】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、電池が第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah及び電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たす場合、電池の内部の電解液は、正極極板と負極極板をよく浸潤し、第一の溶媒の電池動力学的性能に対する改善作用を十分に果たすことができるとともに、電池内部の活性イオンの不可逆的な消費も一つの小さな範囲内に抑えることができることを発見した。そのため、二次電池は、高エネルギー密度を維持しながら、良好な動力学的性能、比較的高い容量維持率、及び比較的低い体積膨張率を持つことができる。
【0069】
「オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物を主に正極活物質とする電池」は、正極活物質がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のみであってもよく、正極活物質がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物と他の正極活物質との組成物であってもよいことを示す。即ち、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のほか、他の正極活物質、例えばリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物を含む。いくつかの実施形態では、正極活物質の総質量に対して、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物の質量パーセントは、≧50%である。選択的に、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物の質量パーセントは、80%-100%である。
【0070】
本出願の二次電池において、電解液の質量とは、電池製造中に注入される電解液の質量ではなく、電池完成品内部の電解液の質量である。
【0071】
本出願の二次電池において、二次電池の定格容量とは、室温で完全に充電された電池が1/3×I1(A)電流で放電され、終止電圧まで達するときに放出される容量であり、I1は、1時間率放電電流を表す。具体的には、国家標準GB/T 31484-2015電気自動車用動力蓄電池のサイクル性能要求及び試験方法を参考にすることができる。
【0072】
本出願の二次電池において、電解液の質量と二次電池の定格容量との比は、保液係数とも呼ばれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量は、≧0.7g/Ah、≧0.8g/Ah、≧0.9g/Ah、≧1.0g/Ah、≧1.1g/Ah、≧1.2g/Ah、≧1.3g/Ah、≧1.4g/Ah、≧1.5g/Ah、≧1.6g/Ah、≧1.7g/Ah、≧1.8g/Ah、又は≧1.9g/Ahであってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量は、0.7g/Ah-2.0g/Ah、0.8g/Ah-2.0g/Ah、0.9g/Ah-2.0g/Ah、1.0g/Ah-2.0g/Ah、1.1g/Ah-2.0g/Ah、1.2g/Ah-2.0g/Ah、1.5g/Ah-2.0g/Ah、0.7g/Ah-1.9g/Ah、0.8g/Ah-1.9g/Ah、0.9g/Ah-1.9g/Ah、1.0g/Ah-1.9g/Ah、1.1g/Ah-1.9g/Ah、1.2g/Ah-1.9g/Ah、1.5g/Ah-1.9g/Ah、0.7g/Ah-1.6g/Ah、0.8g/Ah-1.6g/Ah、0.9g/Ah-1.6g/Ah、1.0g/Ah-1.6g/Ah、1.1g/Ah-1.6g/Ah、1.2g/Ah-1.6g/Ah、又は1.5g/Ah-1.6g/Ahであってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、電解液の質量/二次電池の定格容量は、≦3.5g/Ah、≦3.4g/Ah、≦3.3g/Ah、≦3.2g/Ah、≦3.1g/Ah、≦3.0g/Ah、≦2.9g/Ah、≦2.8g/Ah、≦2.7g/Ah、≦2.6g/Ah、≦2.5g/Ah、≦2.4g/Ah、≦2.3g/Ah、≦2.2g/Ah、≦2.1g/Ah、又は≦2.0g/Ahであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、電解液の質量/二次電池の定格容量は、2.4g/Ah-3.5g/Ah、2.5g/Ah-3.5g/Ah、2.6g/Ah-3.5g/Ah、2.7g/Ah-3.5g/Ah、2.8g/Ah-3.5g/Ah、2.9g/Ah-3.5g/Ah、3.0g/Ah-3.5g/Ah、3.1g/Ah-3.5g/Ah、2.4g/Ah-3.3g/Ah、2.5g/Ah-3.3g/Ah、2.6g/Ah-3.3g/Ah、2.7g/Ah-3.3g/Ah、2.8g/Ah-3.3g/Ah、2.9g/Ah-3.3g/Ah、3.0g/Ah-3.3g/Ah、又は3.1g/Ah-3.3g/Ahであってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、式1において、R11及びR12は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基のうちの一つであってもよく、R11及びR12は、同じであっても異なってもよい。そのうち、フッ素原子数は、1つであってもよく、複数であってもよい。R11及びR12は、上記基から選択された場合、電解液の粘度を適当な範囲内に保持することができ、電解液がより高い導電率を持つことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、例として、式1で示される第一の溶媒は、
【化8】
のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0079】
式1で示される第一の溶媒は、低粘度、高誘電率の利点を有し、電解液の導電率を向上させることができ、さらに、正極膜層の塗布重量及びプレス密度増加による電池動力学的性能不良の問題をある程度改善できる。しかし、本発明者らは、さらなる検討の結果、式1で示される第一の溶媒は、負極で不安定であり、還元されてプロトン及び他の生成物を生成しやすく、電池のガス発生量が増加することを見出した。式1で示される第一の溶媒の還元によるプロトンは、SEI膜中の炭酸リチウムとアルコキシリチウムなどの成分を分解し、SEI膜の安定性を悪くする可能性があり、このように、電池使用中にSEI膜を修復し続ける必要があり、この修復過程ではより多くの活性イオンが消費され、活性イオンの不可逆的な消費が増加し、電池容量を急速に減衰させる。また、式1で示される第一の溶媒還元後の生成物が負極活物質表面に堆積し、活性イオンの輸送経路を延長し、活性イオンの輸送速度を低下させてしまい、これにより、負極極板の動力学的性能及び電池の動力学的性能を悪化させるおそれがある。
【0080】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記の問題に対する解決手段を見出し、電池の高エネルギー密度及び良好な動力学的性能を保障することを実現しつつ、電池が良好なサイクル性能及び貯蔵性能を持たせることを保障することを実現した。
【0081】
電池のエネルギー密度を向上させるためには、一般的には、正極膜層の塗布重量及びプレス密度を増加させることであり、そのため、電解液の動力学的性能に対する正極膜層の需要が高まっているという課題がある。正極膜層が厚いほど活性イオンの輸送経路が長くなり、電解液の動力学的性能に対する需要が高くなり、正極膜層の孔隙率が小さいほど活性イオン輸送過程での抵抗が大きくなり、電解液の動力学的性能に対する需要も高くなる。そのため、正極膜層の上記2種類のパラメータは、互いに独立しており、かついずれも電解液の動力学的性能に対して一定の需要がある。本発明者らは、鋭意検討・実験を重ねた結果、これら2つの互いに独立した需要の係数を得て、電解液の動力学的性能に対する総需要を両者の和で示した。第一の溶媒の含有量は、電解液の動力学的性能と強い相関性を有し、第一の溶媒の含有量が高いほど電解液の動力学的性能が良く、本発明者らは、第一の溶媒の含有量を用いて電解液の動力学的性能レベルを表すことができることを発見した。かつ、電解液の動力学的性能レベル≧正極膜層の電解液の動力学的性能に対する総需要である場合のみ、正極膜層の塗布重量及びプレス密度の増加による電池の動力学的性能不良の問題を効果的に改善させることができる。
【0082】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、二次電池が第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1をさらに満たす場合、正極膜層塗布重量及びプレス密度増加による電池動力学的性能不良の問題を効果的に解決できることを見出した。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記二次電池は、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.1、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.2、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.3、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.4、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.5、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.6、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.7、又は第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1.8を満たしてもよい。
【0084】
第一の溶媒の含有量は、有機溶媒の総質量に対して、第一の溶媒の質量パーセントを指す。
【0085】
正極膜層の厚さは、単位mmの正極集電体上の片面正極膜層の厚さを表す。正極膜層が正極集電体の二つの対向する表面のいずれかに設けられた場合、正極膜層の厚さ=正極極板の厚さ-正極集電体の厚さであり、正極膜層が正極集電体の二つの対向する表面に同時に設けられた場合、正極膜層の厚さ=(正極極板の厚さ-正極集電体の厚さ)/2である。本出願では、厚さの測定は、マイクロメータ、例えば、型番がMitutoyo293-100で、0.1μmの精度を持つマイクロメータを用いることができる。本出願では、「正極膜層の厚さ」は、いずれも片面正極膜層の厚さを指し、「正極膜層の総厚さ」は、正極膜層が正極集電体の二つの対向する表面に同時に設けられた場合の各正極膜層の厚さの和を表す。
【0086】
正極膜層の孔隙率は、正極極板の空孔体積(即ち、正極極板の真体積)と正極極板の見かけ体積との比で表される。正極膜層の孔隙率は、GB/T 24586-2009鉄鉱石見かけ密度、真密度及び孔隙率の測定方法を参照して試験することができる。この試験方法は、正極極板から直径14mmの小円板を30枚採取し、ガス吸着の原理に基づき、媒体として不活性ガス(例えば、ヘリウムガス又は窒素ガス)を用いて、これらの30枚の直径14mmの小円板の真体積を試験するステップと、小円板の面積、厚さ及び数量に基づいて正極極板の見かけ体積を算出し、真体積と見かけ体積との比を正極膜層の孔隙率とするステップとを含む。
【0087】
オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物の表面には極性官能基を含有し、かつ比表面積が大きく、極めて吸水しやすいが、電池注液前の乾燥工程で水分を完全に除去することはできず、電池使用中、この水分の一部が徐々に電解液に拡散して電解液と反応する可能性があり、また、水分の存在も負極活物質表面のSEI膜(Solid Electrolyte Interface Membrane)を破壊し、負極界面の安定性に影響を与える。
【0088】
正極膜層の厚さが低下し、活性イオンのこの正極膜層での輸送経路が短くなり、二次電池の動力学的性能が良くなるとともに、正極膜層における水分が乾燥工程でより容易に除去され、負極界面に対する水分の破壊程度が小さくなる。しかし、正極膜層の厚さが低下すると、二次電池のエネルギー密度も低下する。いくつかの実施形態では、正極膜層の厚さは、≧0.07mmであってもよい。例えば、正極膜層の厚さは、≧0.075mm、≧0.08mm、≧0.085mm、≧0.09mm、≧0.10mm、≧0.11mm、≧0.12mm、≧0.13mm、≧0.14mm、又は≧0.15mmであってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、選択的に、正極膜層の厚さは、0.07mm-0.14mmであってもよい。より具体的には、正極膜層の厚さは、0.09mm-0.12mmであってもよい。
【0090】
正極膜層の孔隙率が増加すると、電解液は、より容易に正極膜層に浸潤し、正極膜層での活性イオンの輸送抵抗が小さくなり、二次電池の動力学的性能が良くなるとともに、正極膜層における水分が乾燥工程でより容易に除去され、負極界面に対する水分の破壊程度が小さくなる。しかし、正極膜層の孔隙率が増加すると、二次電池のエネルギー密度が低下する。いくつかの実施形態では、前記正極膜層の孔隙率は、≦50%であってもよい。例えば、前記正極膜層の孔隙率は、≦48%、≦45%、≦42%、≦40%、≦38%、≦37%、≦35%、≦32%、又は≦30%であってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、選択的に、前記正極膜層の孔隙率は、5%-50%であってもよい。より具体的には、前記正極膜層の孔隙率は、20%-40%であってもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記正極膜層の片面塗布重量は、≧20mg/cm2であってもよい。選択的に、前記正極膜層の片面塗布重量は、23mg/cm2-29mg/cm2であってもよい。より具体的には、前記正極膜層の片面塗布重量は、25mg/cm2-29mg/cm2であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、前記正極膜層のプレス密度は、≧2.1g/cm3であってもよい。選択的に、前記正極膜層のプレス密度は、2.1g/cm3-2.8g/cm3であってもよい。より具体的には、前記正極膜層のプレス密度は、2.3g/cm3-2.6g/cm3であってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、有機溶媒の総質量に対して、第一の溶媒の質量パーセント(即ち第一の溶媒の含有量)は、≧10%であってもよい。例えば、第一の溶媒の含有量は、≧15%、≧20%、≧25%、≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、又は≧60%であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、第一の溶媒の含有量は、10%-80%、15%-80%、20%-80%、25%-80%、30%-80%、35%-80%、40%-80%、45%-80%、50%-80%、10%-75%、15%-75%、20%-75%、25%-75%、30%-75%、35%-75%、40%-75%、45%-75%、50%-75%、10%-70%、15%-70%、20%-70%、25%-70%、30%-70%、35%-70%、40%-70%、45%-70%、50%-70%、10%-65%、15%-65%、20%-65%、25%-65%、30%-65%、35%-65%、40%-65%、45%-65%、50%-65%、10%-60%、15%-60%、20%-60%、25%-60%、30%-60%、35%-60%、40%-60%、45%-60%、50%-60%、10%-55%、15%-55%、20%-55%、25%-55%、30%-55%、35%-55%、40%-55%、45%-55%、又は50%-55%であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒は、式2で示される第二の溶媒、式3で示される第三溶媒のうちの一つ又は複数をさらに含んでもよい。式2において、R21は、H、メチル基、エチル基のうちの一つであり、式3において、R31、R32は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基のうちの一つであり、R31及びR32は、同じであっても異なってもよい。
【0097】
【0098】
本出願の二次電池において、前記有機溶媒は、式1で示される第一の溶媒のほか、式2で示される第二の溶媒、又は式3で示される第三溶媒を含んでもよく、又は式2で示される第二の溶媒と式3で示される第三溶媒とを同時に含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記有機溶媒は、式1で示される第一の溶媒のほか、式2で示される第二の溶媒を含む。
【0099】
【0100】
いくつかの実施形態では、例として、式2で示される第二の溶媒は、
【化12】
のうちの一つ又は二種から選択されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、例として、式3で示される第三溶媒は、
【化13】
のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0102】
第二の溶媒の誘電率は比較的高く、リチウム塩の解離に有利である。いくつかの実施形態では、有機溶媒の総質量に対して、前記第二の溶媒の質量パーセントは、≧10%であってもよい。選択的に、前記第二の溶媒の質量パーセントは、10%-80%であってもよい。より具体的には、前記第二の溶媒の質量パーセントは、20%-50%であってもよい。
【0103】
第三溶媒の誘電率は比較的小さく、リチウム塩を解離させる能力が弱いが、粘度が小さく、流動性がよく、活性イオンの移行速度を増加させることができる。いくつかの実施形態では、有機溶媒の総質量に対して、前記第三溶媒の質量パーセントは、≧0%であってもよい。選択的に、前記第三溶媒の質量パーセントは、5%-80%であってもよい。より具体的には、前記第三溶媒の質量パーセントは、5%-20%であってもよい。
【0104】
本出願の二次電池において、前記電解液は、添加剤をさらに含んでもよく、前記添加剤は、成膜型添加剤であってもよい。いくつかの実施形態では、前記添加剤の還元電位は、≧0.8V(vs Li+/Li)を満たしてもよい。
【0105】
負極活物質表面のSEI膜が電子を絶縁するとともに、活性イオンの自由出入りを可能にし、そして負極活物質と電解液とのさらなる反応を阻止することができるため、負極活物質表面SEI膜の性質は、負極極板の性能及び電池の性能、例えば、電池のサイクル性能、貯蔵性能などに影響を与える可能性がある。本出願の添加剤の還元電位は、≧0.8V(vs Li+/Li)であり、有機溶媒よりも優先して電気化学的還元反応を起こして負極活物質表面SEI膜の形成に関与し、負極活物質表面での安定したSEI膜の形成を促進し、負極活物質と電解液とのさらなる反応を阻止し、第一の溶媒還元により発生したプロトンによるSEI膜への破壊程度を低減させることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、前記添加剤は、有機添加剤、無機添加剤のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0107】
本出願の二次電池において、前記添加剤は、有機添加剤のみを含んでもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、例として、前記有機添加剤は、ビニレンカーボネート(Vinylene carbonate、VC)、フッ素化エチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate、FEC)、ビニルエチレンカーボネート(Vinyl ethylene carbonate、VEC)、エチレンサルフェート(Ethylene sulfate、DTD)、1,3-プロパンスルトン(1,3-Propane sultone、PS)のうちの一つ又は複数を含んでもよい。有機添加剤は、有機溶媒よりも還元電位が高い電気化学還元系添加剤であるため、負極活物質表面に電気化学的還元を優先的に発生して性能に優れたSEI膜を形成することができ、それによって第一の溶媒還元により発生したプロトンによるSEI膜への破壊程度を低減させる。有機添加剤の還元生成物は、主に有機成分であり、これらの有機成分は、SEI膜の機械的安定性を向上させることができ、それによって電池のサイクル性能の向上に有利である。
【0109】
いくつかの実施形態では、例として、前記無機添加剤は、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート(tris(trimethylsilyl)phosphate、TMSP)、リチウムビスオキサレートボレート(Lithium bis(oxalate)borate、LiBOB)、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(Lithium bis[ethanedioato(2-)-κO1,κO2]difluorophosphate(1-)、LiDFOP)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(Lithium tetrafluoro(oxalato)phosphate、LiTFOP)、リチウムジフルオロオキサラトボレート(Lithium difluoro(oxalato)borate、LiDFOB)、ジフルオロリン酸リチウム(lithium difluorophosphate、LiPO2F2)のうちの一つ又は複数を含んでもよい。無機添加剤は、有機溶媒よりも還元電位が高い電気化学還元系添加剤であるため、負極活物質表面に電気化学的還元を優先的に発生して性能に優れたSEI膜を形成することができ、それによって第一の溶媒還元により発生したプロトンによるSEI膜への破壊程度を低減させることができる。無機添加剤の還元生成物は、主に無機成分であり、これらの無機成分は、SEI膜の熱安定性を向上させることができ、それによって電池の高温性能の向上に有利である。
【0110】
いくつかの実施形態では、選択的に、前記添加剤は、ビニレンカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルフェート、ジフルオロリン酸リチウム、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートのうちの一つ又は複数を含む。そのうち、ビニレンカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルフェートの還元生成物は、SEI膜における有機成分とすることができ、SEI膜の機械的安定性、及び電池サイクル過程において負極活物質の体積変化に対するSEI膜の耐性を向上させることができる。ジフルオロリン酸リチウム、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートの還元生成物は、SEI膜における無機成分とすることができ、SEI膜の熱安定性を向上させ、SEI膜を高温環境下でも分解しにくいようにする。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記添加剤の総質量に対して、前記有機添加剤の質量パーセントは、≧50%であってもよい。例えば、前記有機添加剤の質量パーセントは、≧55%、≧60%、≧65%、≧70%、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、又は100%であってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、前記有機添加剤の質量パーセントは、50%-100%、55%-100%、60%-100%、65%-100%、70%-100%、75%-100%、80%-100%、85%-100%、90%-100%、又は95%-100%であってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、前記添加剤の総質量に対して、前記無機添加剤の質量パーセントは、≦50%であってもよい。例えば、前記無機添加剤の質量パーセントは、≦45%、≦40%、≦35%、≦30%、≦25%、≦20%、≦15%、≦10%、≦5%、又は0%であってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、前記無機添加剤の質量パーセントは、0%-50%、0%-45%、0%-40%、0%-35%、0%-30%、0%-25%、0%-20%、0%-15%、0%-10%、又は0%-5%であってもよい。
【0115】
添加剤の含有量が増加すると、二次電池化成過程で消費可能な添加剤の数が増加し、負極活物質表面に形成されるSEI膜が厚くなり、負極成膜抵抗が増加するが、SEI膜が厚くなることは、負極活物質に対する保護作用が強くなり、負極界面の安定性が良くなり、SEI膜の第一の溶媒による副作用に対する耐性が高くなる。いくつかの実施形態では、電解液の総質量に対して、前記添加剤の質量パーセント(即ち添加剤の含有量)は、≧3%であってもよい。例えば、添加剤含有量は、≧3.5%、≧4%、≧4.5%、≧5%、≧5.5%、≧6%、≧6.5%、≧7%、≧7.5%、≧8%、≧9%、≧10%、≧11%、又は≧12%であってもよい。
【0116】
本出願の二次電池において、「添加剤の含有量」とは、有機添加剤の含有量と無機添加剤の含有量との和である。
【0117】
いくつかの実施形態では、選択的に、前記添加剤の含有量は、3%-9%であってもよい。より具体的には、前記添加剤の含有量は、5%-8%であってもよい。
【0118】
本出願では、リチウム塩の種類は、特に限定されなく、実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。いくつかの実施形態では、例として、前記リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、Li(FSO2)2N、LiCF3SO3、LiClO4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)のうちの一つ又は複数を含んでもよく、そのうち、x、yは、正の整数である。
【0119】
リチウム塩の質量パーセントが小さいほど(例えば、10%未満)、電池内部の活性イオン伝達ユニットが少なく、高レートで充電する時に、負極電位が急速に低下し、さらに負極表面にデンドライトが生じやすく、活性イオンの不可逆的な消費が増加し、デンドライトが成長し続けると、セパレータを穿刺し、正負極内短絡を引き起こすおそれがある。リチウム塩の質量パーセントが小さいほど、電解液における遊離する有機溶媒(特に第一の溶媒)の含有量が相対的に多くなり、負極活物質表面のSEI膜が不安定になり、さらにSEI膜がプロトンで分解されやすい。いくつかの実施形態では、電解液の総質量に対して、前記リチウム塩の質量パーセントは、≧10%であってもよい。例えば、前記リチウム塩の質量パーセントは、≧11%、≧12%、≧13%、≧14%、≧15%、≧16%、≧17%、又は≧18%であってもよい。
【0120】
電解液の導電率は、移行可能な活性イオンの総数及び活性イオン移行速度の影響を受ける。リチウム塩の質量パーセントが増加すると、移行可能な活性イオンの総数は増加するが、同時に電解液粘度も増加し、活性イオンの移行速度は逆に遅くなる。そのため、リチウム塩の質量パーセントには最適値が現れる。いくつかの実施形態では、前記リチウム塩の質量パーセントは、10%-20%であってもよい。選択的に、前記リチウム塩の質量パーセントは、12%-17%であってもよい。
【0121】
添加剤は、負極活物質表面での安定したSEI膜の形成を促進することができる。負極活物質の比表面積が大きいほど、添加剤の需要量は大きくなり、第一の溶媒も添加剤を余分に消費する。本発明者らは、鋭意検討・実験を重ねた結果、これら2種類の添加剤の消費挙動の係数を得て、この2種類の消費挙動の和を用いて添加剤の需要レベルを表し、添加剤の保有レベルは、保液係数×添加剤の含有量で表されることができる。添加剤の保有レベル≧添加剤の需要レベルの場合にのみ、良好な負極界面が保証され、それによって負極界面における副反応を効果的に抑制することができる。
【0122】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、二次電池が(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1をさらに満たす場合、添加剤が負極界面を効果的に保護し、第一の溶媒の不安定による負極界面の副反応が激しくなる問題を抑制することができることを発見した。そのため、二次電池使用中の容量維持率はより高く、体積膨張率はより低い。
【0123】
保液係数は、電解液の質量と二次電池の定格容量との比であり、単位は、g/Ahであり、添加剤の含有量は、電解液の総質量に対して、添加剤の質量パーセントであり、負極相対質量は、負極極板における負極活物質の質量と二次電池の定格容量との比であり、単位は、g/Ahであり、負極活物質の比表面積の単位は、m2/gである。
【0124】
いくつかの実施形態では、前記二次電池は、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1.2、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1.4、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1.6、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1.8、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧2、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧2.2、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧2.4、(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧2.8、又は(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧3.2をさらに満たしてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、前記負極相対質量は、≦2.1g/Ahであってもよい。例えば、前記負極相対質量は、≦2.08g/Ah、≦2.05g/Ah、≦2.0g/Ah、≦1.95g/Ah、≦1.9g/Ah、≦1.85g/Ah、≦1.8g/Ah、≦1.75g/Ah、≦1.7g/Ah、≦1.65g/Ah、≦1.6g/Ah、≦1.55g/Ah、又は≦1.5g/Ahであってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、選択的に、前記負極相対質量は、1.2g/Ah-2.1g/Ahであってもよい。より具体的には、前記負極相対質量は、1.5g/Ah-1.8g/Ahであってもよい。
【0127】
本出願の二次電池において、前記負極活物質の比表面積は、0.5m2/g-6.0m2/gであってもよい。例えば、前記負極活物質の比表面積は、1.0m2/g-5.0m2/g、1.0m2/g-4.0m2/g、1.0m2/g-3.2m2/g、1.0m2/g-2.8m2/g、1.2m2/g-5.0m2/g、1.2m2/g-4.0m2/g、1.2m2/g-3.0m2/g、1.2m2/g-2.8m2/g、1.5m2/g-5.0m2/g、1.5m2/g-4.0m2/g、1.5m2/g-3.0m2/g、2.0m2/g-5.0m2/g、2.0m2/g-4.0m2/g、又は2.0m2/g-3.0m2/gであってもよい。
【0128】
本出願の二次電池は、セパレータをさらに含む。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設けれ、隔離作用を奏する。本出願では、セパレータの種類に対して特に限定されなく、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよい。いくつかの実施形態では、セパレータには、セラミックコーティング、金属酸化物コーティングを更に有するようにしてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネントを製造してもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を含んでもよい。この外装は、上記電極コンポーネント及び電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は、硬質ケース、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどであってもよい。二次電池の外装は、軟質バッグ、例えば、袋式軟質バッグであってもよい。軟質バッグの材質は、プラスチック、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一つ又は複数であってもよい。
【0132】
本出願では、二次電池の形状は、特に限定されなく、それは円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0133】
いくつかの実施形態では、
図2を参照すると、外装は、ケース51と、蓋板53とを含んでもよい。そのうち、ケース51は、底板と、底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口部を有し、蓋板53は、前記収容キャビティを塞ぐために前記開口部に蓋設することに用いられる。正極極板、負極極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネント52を形成することができる。電極コンポーネント52は、前記収容キャビティ内にパッケージされている。電解液は、電極コンポーネント52に浸潤されている。二次電池5に含まれる電極コンポーネント52の数は、一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途と容量に応じて調節することができる。
【0135】
図3は、一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列して設置されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、締結具を介してこの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0136】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容されている。
【0137】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途と容量に応じて調節することができる。
【0138】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1である。
図4及び
図5を参照すると、電池パック1には、電池箱及び電池箱内に設けられる複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池箱は、上ケース2と、下ケース3とを含み、上ケース2は、下ケース3に蓋設し、かつ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池箱内に配置されてもよい。
【0139】
二次電池の製造方法
いくつかの実施形態では、本出願の二次電池の製造方法は、
正極極板、セパレータ、負極極板と電解液を組み立てて二次電池を形成するステップS10と、
二次電池に対して検測を行い、その中から、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah及び電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たす二次電池を選別するステップS20とを含んでもよい。
【0140】
本出願の方法により得られた二次電池は、いずれも高エネルギー密度を維持しながら、良好な動力学的性能、比較的高い容量維持率及び比較的低い体積膨張率を持つことができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、ステップS10において、例として、正極極板、セパレータ、負極極板を、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネントを形成し、電極コンポーネントを外装に置き、乾燥させた後、電解液を注入し、真空パッケージ、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得ることができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、ステップS20において、選択的に、第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧1.0g/Ahを満たす二次電池を選別する。
【0143】
いくつかの実施形態では、ステップS20において、選択的に、電解液の質量/二次電池の定格容量が2.8g/Ah-3.3g/Ahであることを満たす二次電池を選別する。
【0144】
いくつかの実施形態では、前記製造方法は、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1を満たす二次電池を選別するステップS30をさらに含む。この場合、電池の高エネルギー密度及び良好な動力学的性能を保障することを実現しつつ、良好な負極界面を保障することを実現し、本出願の電池が良好なサイクル性能及び貯蔵性能を持たせる。
【0145】
いくつかの実施形態では、前記製造方法は、第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)≧1及び(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)≧1を満たす二次電池を選別するステップS40をさらに含む。この場合、正極膜層塗布重量及びプレス密度増加による電池動力学的性能不良及び第一の溶媒による負極界面破壊の問題を効果的に解決できる。
【0146】
電力消費装置
本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として機能することができ、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして機能することもできる。前記電力消費装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限られない。
【0147】
前記電力消費装置は、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0148】
図6は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0149】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この電力消費装置に、一般的には薄型化と軽量化が求められており、電源として二次電池を採用してもよい。
【0150】
実施例
下記実施例は、本出願に開示された内容をより具体的に記述するものであり、これらの実施例は、単に例示的な説明のためにのみ使用される。これは、本出願に開示された内容の範囲内で様々な修正及び変更が行われることが当業者にとって明らかであるためである。別段の宣言がない限り、以下の実施例で記載されるすべての部、パーセント、及び比率は、いずれも重量ベースであり、且つ実施例で使用されるすべての試薬は、いずれも市販又は従来の方法で合成して得られ、且つ処理することなく直接使用することができ、実施例で使用される器具は、市販されることができる。
【0151】
実施例1
正極極板の製造
正極活物質リン酸鉄リチウム、接着剤ポリフッ化ビニリデン、導電剤アセチレンブラックを質量比96:2:2で混合した後、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)を加えて粘度を調整し、当分野で既知の方法で正極スラリーに十分に攪拌し、正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、正極極板を得る。そのうち、正極膜層の孔隙率は、30%で、正極膜層の厚さは、0.1mmであった。
【0152】
負極極板の製造
負極活物質黒鉛(比表面積は2m2/gであった)、導電剤アセチレンブラック、接着剤スチレンブタジエンゴム(SBR)、増稠剤カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比97:1:1:1で混合した後、溶媒脱イオン水を加え、当分野既知の方法で負極スラリーに十分に攪拌し、負極スラリーを負極集電体銅箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、負極極板を得る。
【0153】
電解液の製造
含水量が<10ppmであるアルゴンガス雰囲気のグローブボックス内において、第一の溶媒化合物1-1、第二の溶媒化合物2-1、第三溶媒化合物3-1を質量比50:30:20で均一に混合して有機溶媒を得て、リチウム塩として、質量パーセントが15%であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を徐々に加え、完全に溶解させるまで十分に攪拌し、混合液を常温に戻した後、3%のビニレンカーボネート(VC)、2%のフッ素化エチレンカーボネート(FEC)、0.5%の1,3-プロパンスルトン(PS)、0.5%のリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiDFOP)を順次に加え、電解液を得る。
【0154】
セパレータの製造
ナノアルミナコーティングが塗布されたポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとする。
【0155】
二次電池の製造
正極極板、セパレータ、負極極板を順に重なって巻回して、電極コンポーネントを得て、電極コンポーネントを外装アルミラミネートに加え、乾燥させた後、電解液を注入し、パッケージ、静置、化成、劣化、二次パッケージ、容量などの工程を経て、二次電池を得る。第一の溶媒/二次電池の定格容量は、1.6g/Ahであり、二次電池の保液係数は、3.1g/Ahであり、負極相対質量は、1.7g/Ahである。
【0156】
実施例2~30及び比較例1~8
実施例2~30及び比較例1~8の製造方法は、実施例1と類似しており、実施例1との違いは、正極極板、負極極板及び電解液製造における関連パラメータを調整したことであり、具体的なパラメータの詳細を表1及び表2に示す。
【0157】
【0158】
【0159】
試験部分
(1)初期直流内部抵抗(DC internal resistance、DCR)試験
常温で、電池を0.5Cで3.65Vまで定電流充電し、そして電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、電池を50%SOCに調整するために、0.5Cで30分間定電流放電し、このとき、電池の電圧をU1と表記し、電池を4Cで30秒間定電流放電し、0.1秒ごとにサンプリングし、放電末期の電圧をU2と表記する。電池の初期DCRを電池50%SOC時の放電DCRで表し、電池の初期DCR=(U1-U2)/4Cとする。
【0160】
(2)60℃サイクル性能試験
60℃で、電池を0.5Cで3.65Vまで定電流充電し、そして電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、電池を5分間静置し、1/3Cで2.5Vまで定電流放電し、これを電池の初回充放電サイクル過程とし、今回の放電容量を電池初回サイクルの放電容量と表記する。上記方法により電池に対して1000サイクル充放電を行い、電池1000サイクル後の放電容量を記録する。電池の60℃での1000サイクル後の容量維持率(%)=(電池1000サイクル後の放電容量/電池初回サイクルの放電容量)×100%とする。
【0161】
(3)60℃体積膨張率試験
60℃で、電池を0.5Cで3.65Vまで定電流充電し、そして電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、このとき、電池の体積を排水法で試験してV0と表記し、電池を60℃の恒温槽に入れ、30日間保管した後に取り出し、このとき、電池の体積を排水法で試験してV1と表記する。電池の60℃での30日間保管した後の体積膨張率=[(V1-V0)/V0]×100%とする。
【0162】
実施例1-30及び比較例1-8の具体的なパラメータの詳細を表1及び表2に示し、試験結果の詳細を表3に示す。
【0163】
表3において、式I=第一の溶媒の含有量/(正極膜層の厚さ×3+0.008/正極膜層の孔隙率)、式II=(保液係数×添加剤の含有量)/(負極相対質量×負極活物質の比表面積×0.012+保液係数×第一の溶媒の含有量×0.03)とする。
【0164】
【0165】
実施例1-30と比較例1-8との比較により、電池が第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah及び電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを同時に満たす場合にのみ、二次電池は、高エネルギー密度を維持しながら、比較的低い初期DCR、比較的高い高温サイクル容量維持率及び比較的低い高温貯蔵体積膨張率を持つことが分かった。第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量が≧0.7g/Ahを満たさない場合、電池内部の第一の溶媒の含有量は少なすぎ、電池の動力学的性能を効果的に高めることができず、電池の初期DCRは比較的高い。電解液の質量/二次電池の定格容量が≦3.5g/Ahを満たさない場合、電解液における有機溶媒の一部は、活性イオンを消費し続け、活性イオンの不可逆的な消費が増加し続け、電池は比較的低い初期DCR、比較的高い高温サイクル容量維持率及び比較的低い高温貯蔵体積膨張率を同時に持つことができない。
【0166】
実施例1-7の比較により、電池の初期DCRは、いずれも比較的低く、高温サイクル容量維持率は、いずれも比較的高く、高温貯蔵体積膨張率は、いずれも比較的低いことが分かった。また、電解液における第一の溶媒の種類によって電池の上記性能も僅かに変化するのは、第一の溶媒自体の特性の違いによるものである。これらの第一の溶媒のうち、化合物1-1の粘度が最も低く、誘電率が最も高いため、製造された電池の初期DCRも最も低い。しかし、これらの第一の溶媒のうち、化合物1-1の負極での安定性が最も悪く、より容易に負極界面の安定性を破壊し、負極活物質表面に持続的に成膜され、リチウムイオンの不可逆的な消費が最も多く、化合物1-1の負極還元分解で生成した生成物が負極界面に堆積し、リチウムイオン輸送経路も延長され、リチウムイオンの輸送速度を遅くする。そのため、実施例1-7では、実施例1の負極界面状況が最も悪く、電池高温サイクル容量の減衰が最も速く、電池高温貯蔵体積膨張率が最も大きい。
【0167】
実施例8-9の比較により、第一の溶媒の含有量が低いほど、負極界面に対する破壊程度が小さくなり、電池の高温サイクル容量維持率が高いほど、高温貯蔵体積膨張率が小さくなるが、同時に、第一の溶媒の含有量が低いほど電池の動力学的性能に対する改善が弱く、電池の初期DCRが大きくなることが分かった。
【0168】
実施例10-11の比較により、正極膜層の厚さが低下すると、電池の初期DCRが低下し、高温サイクル容量維持率が増加し、高温貯蔵体積膨張率が小さくなることが分かった。これは、主として、正極膜層の厚さが低下すると、リチウムイオンのこの正極膜層での輸送経路が短くなり、電池の動力学的性能が良くなり、初期DCRが低下するからである。正極膜層に用いられるオリビン構造のリチウム含有リン酸塩の表面には極性官能基を含有し、かつ比表面積が大きく、極めて吸水しやすいが、電池注液前の乾燥工程で正極膜層における水分を完全に除去することはできない。電池使用中、正極膜層における水分が徐々に電解液に拡散して電解液と反応する可能性があり、また、水分の存在も負極活物質表面のSEI膜を破壊し、負極界面の安定性に影響を与える。そのため、正極膜層の厚さが低下すると、正極膜層における水分が乾燥工程でより容易に除去され、水分の負極界面に対する破壊程度が軽減し、さらに電池の高温サイクル容量の減衰が遅くなり、高温貯蔵ガス発生量が低下する。
【0169】
実施例12-13の比較により、正極膜層の孔隙率が増加すると、電池の初期DCRが低下し、高温サイクル容量維持率が増加し、高温貯蔵体積膨張率が小さくなることが分かった。正極膜層の孔隙率が向上すると、電解液がより容易に正極膜層に浸潤し、リチウムイオンの正極膜層での輸送抵抗が小さくなり、そのため、電池の動力学的性能が良くなり、初期DCRが低下する。正極膜層の孔隙率が向上すると、正極膜層における水分が乾燥工程でより容易に除去され、水分の負極界面に対する破壊程度が軽減するため、電池の高温サイクル容量減衰が遅くなり、高温貯蔵ガス発生量が低下する。
【0170】
実施例16-17の比較により、添加剤の含有量が増加すると、電池の初期DCRが上昇し、高温サイクル容量維持率が増加し、高温貯蔵体積膨張率が小さくなることが分かった。これは、主として、電池における添加剤の含有量が増加すると、化成過程で消費される添加剤の数が増加し、負極活物質表面に形成されるSEI膜がより厚くなり、負極成膜抵抗が増加するため、電池の初期DCRが高くなるからである。従って、電池における添加剤の含有量が増加すると、SEI膜の負極活物質に対する保護作用がより強く、負極界面安定性がより良く、第一の溶媒による副作用に対する耐性も高くなるため、電池の高温サイクル容量減衰が遅くなり、高温貯蔵ガス発生量が低下する。
【0171】
実施例18-21の比較により、負極相対質量が低下し、負極活物質の比表面積が低下すると、電池の初期DCRが上昇し、高温サイクル容量維持率が増加し、高温貯蔵体積膨張率が小さくなることが分かった。これは、主として、電池における負極相対質量が減少し、負極活物質の比表面積が減少すると、負極活物質表面にSEI膜を形成するのに要する添加剤数が減少し、電池の添加剤に対する需要量が大幅に低下し、さらに電池内部添加剤の数が十分になるため、電池の高温サイクル容量減衰が遅くなり、高温ガス発生量が低下するからである。電池の添加剤に対する需要量の低下は、電池内部添加剤を過剰に充填させ、化成過程で負極活物質表面にSEI膜を形成する際に消費可能な添加剤の数が増加し、形成されるSEI膜がより厚くなるため、電池の初期DCRが増加する。
【0172】
実施例22-25の比較により、電解液動力学的性能レベルは、いずれも正極膜層の電解液動力学的性能に対する総需要を満たし、電池の初期DCRがあまり大きくないことが分かった。しかし、あるパラメータが変化すると、添加剤の保有レベルが添加剤の需要レベルよりも小さくなり、添加剤の負極界面に対する保護が不十分になり、第一の溶媒が負極界面にて副反応が発生し、一定数のリチウムイオンを消費するため、電池の高温サイクル容量減衰が速くなる可能性がある。第一の溶媒は、負極活物質表面のSEI膜を破壊するおそれがあり、電池使用中にSEI膜を修復し続ける必要があり、SEI膜修復過程では一定量のガスが発生するため、電池の高温貯蔵体積膨張率が大きくなる。
【0173】
負極活物質の比表面積が増加すると、負極活物質表面にSEI膜を形成するのに消費される添加剤の数が多くなり、添加剤総量が一定なので、負極活物質表面に形成されるSEI膜が相対的に薄くなり、そのため、電池の初期DCRが低下する。しかし、実施例22では、負極活物質の比表面積が増加することで添加剤の保有レベルが添加剤の需要レベルより小さくなり、添加剤が負極活物質表面にSEI膜を十分に形成することができず、負極界面を十分に保護できないため、電池の高温サイクル容量減衰が著しく速くなり、高温貯蔵体積膨張率が著しく大きくなる。
【0174】
添加剤の含有量が低下すると、負極活物質表面にSEI成膜に関与できる添加剤の数が相対的に減少し、負極成膜抵抗が低くなるため、電池の初期DCRも低下する。しかし、実施例23では、添加剤の含有量が低下することで添加剤の保有レベルが添加剤の需要レベルより小さくなり、添加剤が負極活物質表面にSEI膜を十分に形成することができず、負極界面を十分に保護できないため、電池の高温サイクル容量減衰が著しく速くなり、高温貯蔵体積膨張率が著しく大きくなる。
【0175】
電池の保液係数が低下すると、負極活物質表面にSEI成膜に関与できる添加剤の数が相対的に減少し、負極成膜抵抗が低くなるため、電池の初期DCRも低下する。しかし、実施例24では、保液係数が低下することで添加剤の保有レベルが添加剤の需要レベルより小さくなり、この場合、添加剤は、負極界面を十分に保護することができなくなるため、電池の高温サイクル容量減衰が著しく速くなり、高温貯蔵体積膨張率が著しく大きくなる。
【0176】
負極相対質量が増加すると、添加剤総量が一定なので、負極活物質表面に形成されるSEI膜が相対的に薄くなり、そのため、電池の初期DCRが低下する。しかし、実施例25では、負極相対質量が増加することで添加剤の保有レベルが添加剤の需要レベルより小さくなり、添加剤が負極活物質表面にSEI膜を十分に形成することができず、負極界面を十分に保護できないため、電池の高温サイクル容量減衰が著しく速くなり、高温貯蔵体積膨張率が著しく大きくなる。
【0177】
実施例26-28の比較により、添加剤の保有レベルが添加剤の需要レベルより大きい場合、電解液に第一の溶媒が含まれていても、依然として負極界面を効果的に保護することができ、そのため、電池は、依然として比較的高い高温サイクル容量維持率と比較的低い高温貯蔵体積膨張率を持つことが分かった。しかし、あるパラメータが変化し、電解液動力学的性能レベルが正極膜層の電解液動力学的性能に対する総需要に達しない場合、電池の初期DCRが著しく増加する。
【0178】
実施例26では、第一の溶媒の含有量が低下することで電解液動力学的性能レベルが正極膜層の電解液動力学的性能に対する総需要に達しなくなり、電解液及び電池の動力学的性能を効果的に向上させることができず、電池の初期DCRが著しく増加する。
【0179】
正極膜層の厚さが増加すると、電池のエネルギー密度が増加する。しかし、実施例27では、正極膜層の厚さが増加することで電解液動力学的性能レベルが正極膜層の電解液動力学的性能に対する総需要に達しなくなり、正極膜層におけるリチウムイオンの輸送経路が長くなり、電池の初期DCRが著しく増加する。
【0180】
正極膜層の孔隙率が低下すると、電池のエネルギー密度が増加する。しかし、実施例28では、正極膜層の孔隙率が低下することで電解液動力学的性能レベルが正極膜層の電解液動力学的性能に対する総需要に達しなくなり、電解液が正極膜層に浸潤しにくく、正極膜層におけるリチウムイオンの輸送抵抗が大きくなるため、電池の初期DCRが著しく増加する。
【0181】
実施例29-30の比較により、電池の初期DCRが比較的高く、高温サイクル容量維持率が比較的低く、高温貯蔵体積膨張率が比較的高いことが分かった。これは、主として、一方で、正極膜層の厚さが増加し、孔隙率が低下すると、電解液が正極膜層に浸潤しにくく、リチウムイオン輸送経路が長くなり、輸送抵抗が大きくなり、電解液動力学的性能レベルが正極膜層の電解液動力学的性能に対する総需要に達しなくなり、そのため、電池の初期DCRが比較的高く、もう一方では、電解液添加剤の含有量が比較的低いので、添加剤の保有レベルは、添加剤の需要レベルより小さく、添加剤が負極界面を十分に保護できなくなり、そのため、電池の高温サイクル容量減衰が速くなり、高温貯蔵ガス発生量が増加するからである。
【0182】
実施例14-15の比較により、リチウム塩質量パーセントが増加すると、電池の初期DCRが低下してから上昇し、これは、主として、電解液の導電率の変化によるものであることが分かった。電解液の導電率は、移行可能なリチウムイオンの総数及びリチウムイオン移行速度の影響を受け、リチウム塩質量パーセントが増加し、移行可能なリチウムイオンの総数は増加するが、同時に電解液粘度も増加し、リチウムイオン移行速度は逆に遅くなる。そのため、リチウム塩の質量パーセントには最適値があり、この場合、電池の初期DCRが最も低い。一方、リチウム塩質量パーセントが高いほど電解液における遊離する有機溶媒の含有量が少なくなり、負極界面にて副反応が発生する第一の溶媒の含有量も少なくなるため、電池の高温サイクル容量の減衰が遅くなり、高温貯蔵ガス発生量が低下する。
【0183】
表3のデータから、実施例1-22の電池が第一の溶媒の質量/二次電池の定格容量≧0.7g/Ah及び電解液の質量/二次電池の定格容量≦3.5g/Ahを満たすとともに、式I及び式IIを満たすと、電池は、比較的低い初期DCR、比較的高い高温サイクル容量維持率及び比較的低い高温貯蔵体積膨張率を同時に持つことができることが分かった。一方で、電解液動力学的性能レベルが正極膜層の電池動力学的性能に対する総需要を満たすことができるため、電池は、比較的低い初期DCRを有する。もう一方では、電解液添加剤は、負極界面を効果的に保護でき、第一の溶媒の不安定による負極界面の副反応が激しくなる問題を抑制できるため、電池の高温サイクル容量の減衰が遅くなり、高温貯蔵ガス発生量が低下する。
【0184】
説明すべきことは、本出願は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、例示的なものに過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】