(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230904BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230904BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230904BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230904BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/58
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501614
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2021109905
(87)【国際公開番号】W WO2023004821
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 立美
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 培培
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲麗▼叶
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ20
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA09
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
本願は、電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を開示する。電解液は、式1に示される第1有機溶媒を含む有機溶媒及び第1添加剤を含む添加剤を含み、第1添加剤は式2A、式2Bに示される化合物から選ばれる1種又は複数種である。式1において、R
1とR
2は、それぞれ独立にC1~C3アルキル基、C1~C3ハロアルキル基のうちの1種であり、式2Aにおいて、R
21、R
22、R
23、R
24は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、式2Bにおいて、R
31、R
32、R
33、R
34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、R
4は単結合、-O-、C1~C3アルキレン基、C1~C3ハロアルキレン基、C1~C3オキサアルキレン基のうちの1種である。本願の二次電池は長いサイクル寿命と保存寿命を有する前提下で、同時に良好な急速充電性能も備えている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1に示される第1有機溶媒を含む有機溶媒及び第1添加剤を含む添加剤を含み、
【化1】
式1において、R
1とR
2は、それぞれ独立にC1~C3アルキル基、C1~C3ハロアルキル基のうちの1種であり、
前記第1添加剤は、式2A、式2Bに示される化合物から選ばれる1種又は複数種であり、
【化2】
【化3】
式2Aにおいて、R
21、R
22、R
23、R
24は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、
式2Bにおいて、R
31、R
32、R
33、R
34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、
R
4は、単結合、-O-、C1~C3アルキレン基、C1~C3ハロアルキレン基、C1~C3オキサアルキレン基のうちの1種である、
電解液。
【請求項2】
R
1とR
2は、それぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基のうちの1種であり、及び/又は
R
21、R
22、R
23、R
24は、同時に単結合ではなく、選択可能に、R
21、R
22のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、R
23、R
24のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、及び/又は
R
31、R
32、R
33、R
34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、且つR
31、R
32、R
33、R
34は、同時に単結合ではなく、及び/又は
R
4は、単結合、-O-、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、フルオロメチレン基、フルオロエチレン基、フルオロプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基のうちの1種であり、選択可能に、R
4は、単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基のうちの1種である、
請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
R
31、R
32、R
33、R
34、R
4はさらに、下記の(1)~(6)のうちの1つを満たし、
(1)R
4は単結合であり、R
31、R
32のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、残りは単結合であり、
(2)R
4は単結合であり、R
33、R
34のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、残りは単結合であり、
(3)R
4は単結合であり、R
31、R
32のうちの1つはメチレン基であり、R
33、R
34のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合であり、
(4)R
4は単結合であり、R
31、R
32はいずれもメチレン基であり、R
33、R
34のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合であり、
(5)R
4は単結合であり、R
33、R
34はいずれもメチレン基であり、R
31、R
32のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合であり、
(6)R
4は単結合であり、R
31、R
32、R
33、R
34はいずれもメチレン基である、
請求項1~2の何れか1項に記載の電解液。
【請求項4】
第1有機溶媒は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種であり、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
選択可能に、第1有機溶媒は、下記化合物から選ばれる1種又は2種である、
【化10】
【化11】
請求項1~3の何れか1項に記載の電解液。
【請求項5】
第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種であり、
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
選択可能に、第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種である、
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
請求項1~4の何れか1項に記載の電解液。
【請求項6】
前記有機溶媒の総質量に基づいて、第1有機溶媒の質量パーセントはw1であり、w1の範囲は20%~80%であり、選択可能に30%~70%である、
請求項1~5の何れか1項に記載の電解液。
【請求項7】
前記電解液の総質量に基づいて、第1添加剤の質量パーセントはw2であり、w2の範囲は0.1%~10%であり、選択可能に0.5%~5%である、
請求項1~6の何れか1項に記載の電解液。
【請求項8】
前記添加剤は第2添加剤をさらに含み、前記第2添加剤は、不飽和結合を含む環状カーボネート化合物、ハロゲン置換環状カーボネート化合物、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、スルトン化合物、ジスルホン酸化合物、ニトリル化合物、芳香族化合物、イソシアネート化合物、ホスファゼン化合物、環状酸無水物化合物、亜リン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、ホウ酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物のうちの1種又は複数種を含み、
選択可能に、前記第2添加剤は、下記化合物のうちの1種又は2種を含む、
【化24】
【化25】
請求項1~7の何れか1項に記載の電解液。
【請求項9】
前記電解液の総質量に基づいて、第2添加剤の質量パーセントはw3であり、w3の範囲は≦10%であり、選択可能に≦5%である、
請求項1~8の何れか1項に記載の電解液。
【請求項10】
前記有機溶媒は第2有機溶媒をさらに含み、前記第2有機溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物のうちの1種又は複数種を含み、選択可能に環状カーボネート化合物を含み、又は環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物の組み合わせを含む、
請求項1~9の何れか1項に記載の電解液。
【請求項11】
前記有機溶媒は第2有機溶媒をさらに含み、前記第2有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブテンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピルのうちの1種又は複数種を含む、
請求項1~10の何れか1項に記載の電解液。
【請求項12】
前記有機溶媒の総質量に基づいて、環状カーボネート化合物の質量パーセントはw4であり、w4の範囲は20%~80%であり、選択可能に20%~50%である、
請求項1~11に記載の電解液。
【請求項13】
前記電解液はリチウム塩をさらに含み、前記リチウム塩は、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)、LiPF
6、LiBF
4、LiBOB、LiDFOB、LiPO
2F
2、LiDFOP、LiTFOP、LiAsF
6、Li(FSO
2)
2N、LiCF
3SO
3及びLiClO
4のうちの1種又は複数種を含み、但し、x、yは正整数である、
請求項1~12の何れか1項に記載の電解液。
【請求項14】
前記電解液の導電率は≧12mS/cmを満たし、選択可能に≧13mS/cmを満たし、より具体的には、前記電解液の導電率は12mS/cm~24mS/cm又は13mS/cm~20mS/cmである、
請求項1~13の何れか1項に記載の電解液。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の電解液を含む、二次電池。
【請求項16】
前記二次電池は負極シートを含み、前記負極シートは負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、且つ負極活性材料を含む負極膜層を含み、片面負極膜層の厚さHと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比であるH/Dv50は≧3を満たし、選択可能に4≦H/Dv50≦9を満たす、
請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
片面負極膜層の厚さHは≧60μmを満たし、選択可能に≧65μmを満たし、及び/又は
負極活性材料の体積平均粒径Dv50は≦18μmを満たし、選択可能に14μm≦Dv50≦18μmを満たす、
請求項15~16の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項18】
負極膜層の圧縮密度は1.4g/cm
3~1.85g/cm
3であり、選択可能に1.6g/cm
3~1.8g/cm
3である、
請求項15~17の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項19】
前記二次電池は正極シートを含み、前記正極シートは正極活性材料を含み、前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの変性化合物のうちの1種又は複数種を含み、
選択可能に、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含む、
請求項15~18の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項20】
請求項15~19の何れか1項に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項21】
請求項15~19の何れか1項に記載の二次電池、請求項20に記載の電池モジュールのうちの1種を含む、電池パック。
【請求項22】
請求項15~19の何れか1項に記載の二次電池、請求項20に記載の電池モジュール、請求項21に記載の電池パックのうちの少なくとも1種を含む、電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池技術分野に属し、具体的には、電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模の気候変動及び環境汚染の問題はますます深刻になり、電池駆動に基づく電気自動車は、環境に優しく、汚染のない特徴のため発展されている。しかし、従来の燃料自動車の高速で即時な給油と比較すると、電気自動車は一般的に充電倍率が低いため、電気自動車の充電時間が長くなっている。電気自動車のこの問題は、消費者に持続走行の不安をもたらすだけでなく、電気自動車の急速な普及も制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の目的は、電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を提供することで、上記の電池に長いサイクル寿命と保存寿命を有させる前提下で、同時に良好な急速充電性能を有させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の第1態様は、有機溶媒及び添加剤を含む電解液を提供する。上記有機溶媒は式1に示される第1有機溶媒を含み、式1において、R
1とR
2は、それぞれ独立にC1~C3アルキル基、C1~C3ハロアルキル基のうちの1種である。上記添加剤は第1添加剤を含み、上記第1添加剤は式2A、式2Bに示される化合物から選ばれる1種又は複数種であり、式2Aにおいて、R
21、R
22、R
23、R
24は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、式2Bにおいて、R
31、R
32、R
33、R
34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、R
4は、単結合、-O-、C1~C3アルキレン基、C1~C3ハロアルキレン基、C1~C3オキサアルキレン基のうちの1種である。
【化1】
【化2】
【化3】
【0005】
第1添加剤と第1有機溶媒とを組み合わせて使用することで、第1有機溶媒が電解液の導電率を大幅に向上させると同時に、電池が良好なサイクル性能と保存性能を有することを保証できる。
【0006】
本願の任意の実施形態において、式1において、R1とR2は、それぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基のうちの1種である。適切な第1有機溶媒を選択することで、電解液の粘度を適切な範囲内に維持することができるため、電解液はより高い導電率を有し、電池はより優れる急速充電性能を有する。
【0007】
本願の任意の実施形態において、第1有機溶媒は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0008】
上記化合物を第1有機溶媒として選択することで、電解液の粘度を適切にし、導電率がより高くなる。
【0009】
本願の任意の実施形態において、第1有機溶媒は、下記化合物から選ばれる1種又は2種である。
【化10】
【化11】
【0010】
化合物1-1と化合物1-2はより低い粘度を有し、電解液の導電率を向上させる作用はより顕著である。
【0011】
本願の任意の実施形態において、式2Aにおいて、R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種である。
【0012】
選択可能に、R21、R22、R23、R24は、同時に単結合ではない。
【0013】
より具体的には、R21、R22のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、R23、R24のうちの1つ又は2つはメチレン基である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、式2Bにおいて、R31、R32、R33、R34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、且つR31、R32、R33、R34は、同時に単結合ではない。
【0015】
本願の任意の実施形態において、式2Bにおいて、R4は、単結合、-O-、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、フルオロメチレン基、フルオロエチレン基、フルオロプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基のうちの1種である。
【0016】
選択可能に、R4は、単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基のうちの1種である。
【0017】
置換基が上記の範囲内にある第1添加剤は、負極活性材料の表面に緻密で安定的な界面膜を形成し、第1有機溶媒と負極活性材料との直接接触を遮断することができるため、正極シートと負極シートの間での活性イオンの脱離・吸蔵の可逆性をさらに高め、電池の放電容量及びサイクル性能を向上させることができる。
【0018】
本願の任意の実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0019】
本願の任意の実施形態において、R4が単結合である場合、R33、R34のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0020】
本願の任意の実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32のうちの1つはメチレン基であり、R33、R34のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0021】
本願の任意の実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32はいずれもメチレン基であり、R33、R34のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0022】
本願の任意の実施形態において、R4が単結合である場合、R33、R34はいずれもメチレン基であり、R31、R32のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0023】
本願の任意の実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32、R33、R34はいずれもメチレン基である。
【0024】
本願の任意の実施形態において、第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0025】
上記第1添加剤は、負極活性材料の表面に安定的で耐久性のある界面膜を形成することができ、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させる。
【0026】
本願の任意の実施形態において、選択可能に、第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0027】
本願の任意の実施形態において、上記有機溶媒の総質量に基づいて、第1有機溶媒の質量パーセントはw1であり、w1の範囲は20%~80%である。選択可能に、w1の範囲は30%~70%である。第1有機溶媒の質量パーセントを適切な範囲内に制御することで、電池の急速充電性能を向上させると同時に、電池が良好なサイクル性能と保存性能を有することができる。
【0028】
本願の任意の実施形態において、上記電解液の総質量に基づいて、第1添加剤の質量パーセントはw2であり、w2の範囲は0.1%~10%である。選択可能に、w2の範囲は0.5%~5%である。第1添加剤の質量パーセントを適切な範囲内に制御することで、電池は良好な急速充電性能、サイクル性能及び保存性能を同時に備えることができる。
【0029】
本願の任意の実施形態において、上記添加剤は第2添加剤をさらに含み、上記第2添加剤は、不飽和結合の環状カーボネート化合物、ハロゲン置換環状カーボネート化合物、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、スルトン化合物、ジスルホン酸化合物、ニトリル化合物、芳香族化合物、イソシアネート化合物、ホスファゼン化合物、環状酸無水物化合物、亜リン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、ホウ酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物のうちの1種又は複数種を含む。これらの第2添加剤は、正極活性材料及び/又は負極活性材料の表面により緻密で安定的な界面膜を形成することができ、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させるのに役立つ。
【0030】
本願の任意の実施形態において、上記第2添加剤は、下記化合物のうちの1種又は2種を含む。
【化24】
【化25】
【0031】
電解液に上記の2種類の化合物のうちの1種又は2種を含む時、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させることができる。
【0032】
本願の任意の実施形態において、上記電解液の総質量に基づいて、第2添加剤の質量パーセントはw3であり、w3の範囲は≦10%である。選択可能に、w3の範囲は≦5%である。第2添加剤の質量パーセントを適切な範囲内に制御することで、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0033】
本願の任意の実施形態において、上記有機溶媒は第2有機溶媒をさらに含み、上記第2有機溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物のうちの1種又は複数種を含む。選択可能に、上記第2有機溶媒は、環状カーボネート化合物を含み、又は環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物との組み合わせを含む。有機溶媒は上記第2有機溶媒をさらに含むことで、該電解液を含む電池は良好な急速充電性能を有することができる。
【0034】
本願の任意の実施形態において、上記第2有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブテンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピルのうちの1種又は複数種を含む。電解液に上記化合物からなる第2有機溶媒を含むことで、該電解液を含む電池はより優れる急速充電性能を有することができる。
【0035】
本願の任意の実施形態において、上記有機溶媒の総質量に基づいて、環状カーボネート化合物の質量パーセントはw4であり、w4の範囲は20%~80%である。選択可能に、w4の範囲は20%~50%である。環状カーボネート化合物の誘電率が高いため、リチウム塩の解離に役立つ。環状カーボネート化合物の質量パーセントを適切な範囲内に制御することで、該電解液を含む電池はより優れる急速充電性能を有することができる。
【0036】
本願の任意の実施形態において、電解液はリチウム塩をさらに含み、上記リチウム塩は、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)、LiPF6、LiBF4、LiBOB、LiDFOB、LiPO2F2、LiDFOP、LiTFOP、LiAsF6、Li(FSO2)2N、LiCF3SO3及びLiClO4のうちの1種又は複数種を含み、但し、x、yは正整数である。電解液に上記リチウム塩を含むことで、電池の負極活性材料の表面に均一、緻密、インピーダンスの低い界面膜を形成することに役立ち、電池の急速充電性能とサイクル性能を効果的に向上させることができる。
【0037】
本願の任意の実施形態において、上記電解液の導電率は≧12mS/cmを満たす。選択可能に、上記電解液の導電率は≧13mS/cmを満たす。電解液の導電率を適切な範囲内に制御することで、電池は良好な急速充電性能、サイクル性能、保存性能及び安全性能を有することができる。
【0038】
本願の任意の実施形態において、上記電解液の導電率は12mS/cm~24mS/cmである。選択可能に、上記電解液の導電率は13mS/cm~20mS/cmである。
【0039】
本願の第2態様は、本願の第1態様の電解液を含む二次電池を提供する。
【0040】
本願の二次電池は、本願の第1態様の電解液を含み、上記二次電池は良好な急速充電性能を有すると同時に、優れるサイクル性能と保存性能も兼ね備えた。
【0041】
本願の任意の実施形態において、二次電池は負極シートを含み、負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、且つ負極活性材料を含む負極膜層を含む。片面負極膜層の厚さHと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比であるH/Dv50は≧3を満たす。選択可能に、H/Dv50は≧3.5を満たす。より具体的には、H/Dv50の範囲は4≦H/Dv50≦9を満たす。H/Dv50の値を適切な範囲内にすることで、二次電池が高い体積エネルギー密度を有するとともに、二次電池の急速充電性能をさらに向上させることを保証することができる。
【0042】
本願の任意の実施形態において、片面負極膜層の厚さHは≧60μmを満たす。選択可能に、片面負極膜層の厚さHは≧65μmを満たす。片面負極膜層の厚さHを適切な範囲内にすることで、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0043】
本願の任意の実施形態において、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は≦18μmを満たす。選択可能に、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は14μm≦Dv50≦18μmを満たす。負極活性材料の体積平均粒径Dv50を適切な範囲内にすることで、活性イオンの拡散係数を高めるだけでなく、負極膜層と電解液との接触面積を減少することができるため、電池は、良好な急速充電性能、サイクル性能と保存性能を同時に有することができる。
【0044】
本願の任意の実施形態において、負極膜層の圧縮密度は1.4g/cm3~1.85g/cm3である。選択可能に、負極膜層の圧縮密度は1.6g/cm3~1.8g/cm3である。負極膜層の圧縮密度を適切な範囲内にすることで、電池は高いエネルギー密度と良好な急速充電性能を同時に有することができる。
【0045】
本願の任意の実施形態において、二次電池は正極シートを含み、正極シートは正極活性材料を含み、正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの変性化合物のうちの1種又は複数種を含む。
【0046】
本願の任意の実施形態において、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含む。正極膜層にこれらの正極活性材料を使用することで、電池のサイクル性能と保存性能を向上させると同時に、電池の倍率性能とエネルギー密度を向上させることができる。
【0047】
本願の第3態様は、本願の第2態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0048】
本願の第4態様は、本願の第2態様の二次電池、第3態様の電池モジュールのうちの1種を含む電池パックを提供する。
【0049】
本願の第5態様は、本願の第2態様の二次電池、第3態様の電池モジュール、第4態様の電池パックのうちの少なくとも1種を含む電気装置を提供する。
【発明の効果】
【0050】
本願の電池モジュール、電池パック及び電気装置は、本願が提供する二次電池を含むため、少なくとも上記の二次電池と同じ利点を有する。
【0051】
本願の実施例にかかる技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、本願の実施例で使用される図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本願の幾つかの実施形態にすぎず、当業者にとって、創造的労力を要することなく、添付される図面に基づいて、他の図面を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
【
図2】本願の二次電池の一実施形態の分解模式図である。
【
図3】本願の電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図4】本願の電池パックの一実施形態の模式図である。
【
図6】本願の二次電池用を電源として使用する電気装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術効果をより明らかにするために、以下、実施例に合わせて本願をさらに詳しく説明する。本明細書に説明される実施例は本願を解釈するものにすぎず、本願を限定するものではないことを理解されたい。
【0054】
簡潔化するために、本明細書に幾つかの数値の範囲のみを明確に開示する。しかし、任意の下限を任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、及び任意の下限を他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限を他の任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の値は、この範囲内に含まれる。従って、各点又は単一の値は、それ自体の下限又は上限として、他の任意の点又は単一の値と組み合わせるか、又は、他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0055】
本明細書の説明において、説明すべきことは、特に明記しない限り、「以上」、「以下」はその数字を含み、「1種又は複数種」における「複数種」の意味は2種以上である。
【0056】
本明細書の説明において、特に明記しない限り、「又は」という用語は、包括的である。例えば、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下の何れかの条件も条件「A又はB」を満たす:Aが真(又は存在)且つBが偽(又は存在しない)であり、Aが偽(又は存在しない)且つBが真(又は存在)であり、又はAとBの両方が真(又は存在)である。
【0057】
「第1」、「第2」などの関係用語は、あるエンティティ又は操作を別のエンティティ又は操作と区別するためにのみ使用され、必ずしもこれらのエンティティ又は操作間の実際の関係又は順序を要求又は暗示しないことを理解されたい。
【0058】
本願の上記の発明内容は、本願における各開示の実施形態又は全ての実現方式を説明することを意図しない。以下の説明は、例をとって例示的な実施形態をより具体的に説明する。本願全体の様々な場所で、一連の実施例によりガイダンスを提供し、これらの実施例は様々な組み合わせで使用できる。各例で、列挙は代表的な組み合わせであり、網羅的であると解釈されるべきではない。
【0059】
[二次電池]
【0060】
二次電池は、充電電池又はバッテリーとも呼ばれ、電池が放電した後、充電によって活性材料をアクティブ化して継続的に使用できる電池を指す。
【0061】
一般的には、二次電池は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含む。電池の充放電プロセスにおいて、活性イオン(例えばリチウムイオン)は、正極シートと負極シートとの間に往復で吸蔵及び脱離する。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正極と負極の短絡を防止する作用を果たし、同時に活性イオンを通過させることができる。電解液は正極シートと負極シートとの間にあり、主に活性イオンを伝導する作用を果たす。
【0062】
[電解液]
【0063】
二次電池は電解液を含み、電解液は二次電池で活性イオンが通過するブリッジであり、電池の正極と負極の間で活性イオンを輸送する作用を果たし、電池の急速充電性能、比容量、サイクル効率及び安全性能などに対して重要な作用を果たす。
【0064】
発明者は、電池の急速充電性能に影響を与える1つの重要な要因が電解液の導電率であることを発見した。電解液にカルボン酸エステルを加えることで電解液の導電率と電池の急速充電性能を向上させることができる。その原因は、カルボン酸エステルは粘度が低く、誘電率が高いという利点を有し、それを電解液に使用することで、電解液のイオン導電性を向上させることができることである。しかし、カルボン酸エステルは負極と相溶性がなく、カルボン酸エステルのα-Hは負極での還元によって得られた活性リチウムと容易に反応し、活性リチウムの損失を引き起こし、電池のサイクル性能と保存性能に影響を与える。特に、高温環境下でサイクル性能と保存性能の低下はより顕著である。また、カルボン酸エステルの耐酸化性が低く、高充電状態で保存する時に酸化分解しやすく、電池の保存性能にさらに影響を与える。電池のサイクル性能と保存性能に対するカルボン酸エステルの悪影響を低減するために、従来の技術は、電解液に環状硫酸エステルを加えることが報告されている。環状硫酸エステルは、正極活性材料と負極活性材料の両方の表面に界面膜を形成し、正極活性材料、負極活性材料と電解液との直接接触を遮断し、負極と電解液中のカルボン酸エステルの連続反応を抑制することができる。しかし、従来の環状硫酸エステルは、界面膜の形成プロセスでガスを発生し、これらの連続的に発生するガスは、正極シート、負極シートとセパレータの界面で濃縮されて巨視的な気泡を形成し、これらの気泡は活性イオンの輸送を遮断するため、電池のサイクル性能と保存性能にも影響を与える。
【0065】
発明者はさらに多くの研究を行い、式2A及び/又は式2Bに示される第1添加剤をカルボン酸エステルを含む電解液に巧みに添加し、上記のボトルネックを解消した。本願の電解液はカルボン酸エステルが電解液の導電率及び電池の急速充電性能を大幅に向上させると同時に、電池が良好なサイクル性能と保存性能を有することを保証でき、特に電池が高温環境下で依然として良好なサイクル性能と保存性能を有することを保証できる。
【0066】
具体的には、本願の電解液は、式1に示される第1有機溶媒を含む有機溶媒及び第1添加剤を含む添加剤を含み、上記第1添加剤は式2A、式2Bに示される化合物から選ばれる1種又は複数種である。具体的には、幾つかの実施形態において、上記第1添加剤は式2Aに示される化合物から選ばれる1種又は複数種であり、幾つかの実施形態において、上記第1添加剤は式2Bに示される化合物から選ばれ1種又は複数種であり、幾つかの実施形態において、上記第1添加剤は式2Aに示される化合物及び式2Bに示される化合物を同時に含む。
【化26】
【0067】
式1において、R
1とR
2は、それぞれ独立にC1~C3アルキル基、C1~C3ハロアルキル基のうちの1種であり、R
1とR
2は同じであってもよく、異なってもよい。アルキル基とハロアルキル基は直鎖構造であってもよく、分岐鎖構造であってもよい。ハロアルキル基のうちのハロゲン原子の数は1つであってもよく、複数であってもよい。ハロアルキル基に複数のハロゲン原子が存在する時、これらのハロゲン原子は同じであってもよく、異なってもよい。
【化27】
【化28】
【0068】
式2Aにおいて、R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に単結合、メチレン基(-CH2-)のうちの1種である。R21、R22、R23、R24は同じであってもよく、異なってもよい。
【0069】
式2Bにおいて、R31、R32、R33、R34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であり、R4は単結合、-O-、C1~C3アルキレン基、C1~C3ハロアルキレン基、C1~C3オキサアルキレン基のうちの1種である。アルキレン基、ハロアルキレン基、オキサアルキレン基は直鎖構造であってもよく、分岐鎖構造であってもよい。ハロアルキレン基のうちのハロゲン原子の数は1つであってもよく、複数であってもよい。ハロアルキレン基に複数のハロゲン原子が存在する時、これらのハロゲン原子は同じであってもよく、異なってもよい。オキサアルキレン基のうちの酸素原子の数は1つであってもよく、複数であってもよい。
【0070】
R31、R32、R33、R34が単結合である場合、R4はR31、R32、R33、R34に隣接する-O-と単結合によって直接結合されることを表す。R31、R32、R33、R34は同じであってもよく、異なってもよい。
【0071】
本願の電解液に第1添加剤を加えることで、それは高い還元電位を有し、充電中に負極からの電子を受け取ってそれ自体が還元され、第1有機溶媒よりも先に負極活性材料の表面で緻密で安定的な硫黄含有有機物界面膜を形成し、第1有機溶媒と負極での還元により得られた活性リチウムとの反応を抑制することができる。第1添加剤の熱安定性が高く、硫黄含有有機物界面膜の形成プロセスにおいてガスを発生せず、電池のサイクル性能と保存性能、特に高温環境でのサイクル性能と保存性能に影響を与えることはない。また、第1添加剤は第1有機溶媒より先に正極活性材料の表面に界面膜を形成し、正極での第1有機溶媒の酸化分解を抑制することができる。また、第1添加剤は正極活性材料の表面の遷移金属と配位して錯体化合物を形成することで、正極活性材料の表面に形成された界面膜はより緻密で安定し、有機溶媒(特に、第1有機溶媒)と正極活性材料との直接接触を効果的に防止することができる。
【0072】
第1添加剤を第1有機溶媒と組み合わせて使用することで、第1有機溶媒が電解液の導電率を大幅に向上させると同時に、電池が良好なサイクル性能と保存性能を有することを保証できる。従って、本願の電解液により、電池は、優れる急速充電性能及び良好なサイクル性能と保存性能を同時に有することができる。
【0073】
任意の理論に制限されることなく、電解液に加えた第1添加剤が、第1有機溶媒と負極との反応を抑制し、電池の良好なサイクル性能と保存性能を保証する面での作用は従来技術で使用される従来の環状硫酸エステル(例えば、硫酸ビニルDTD)よりはるかに優れていることを、発明者は研究の過程に初めて発見した。
【0074】
幾つかの実施形態において、式1において、R1とR2は、それぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基のうちの1種であってもよい。R1とR2は同じであってもよく、異なってもよい。フッ素原子の数は1つであってもよく、複数であってもよい。R1とR2は上記の基から選ばれる時、電解液の粘度を適切な範囲内に維持することができるため、電解液はより高い導電率を有し、電池はより優れる急速充電性能を有する。
【0075】
幾つかの実施形態において、第1有機溶媒は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0076】
発明者は、電解液が上記化合物のうちの1種又は複数種を含む時、電解液の粘度が適切であり、導電率がより高いため、電池の急速充電性能を顕著に向上させることができることを発見した。
【0077】
幾つかの実施形態において、第1有機溶媒は、下記化合物から選ばれる1種又は2種であってもよい。
【化35】
【化36】
【0078】
発明者は、綿密な研究により、化合物1-1と化合物1-2がより低い粘度を有するため、電解液の導電率を向上させる作用がより顕著であり、さらに電池がより優れる急速充電性能を有することができることを発見した。
【0079】
幾つかの実施形態において、上記有機溶媒の総質量に基づいて、第1有機溶媒の質量パーセントはw1であり、w1の範囲は20%~80%であってもよい。例えば、w1の範囲は25%~80%、25%~75%、30%~70%、30%~60%、35%~65%、35%~60%、40%~60%、又は50%~60%であってもよい。第1有機溶媒が電解液の導電率を向上させる作用及び電池サイクル性能と保存性能に与える悪影響を十分に考慮すると、発明者は第1有機溶媒の質量パーセントを適切な範囲内に制御することで、電池の急速充電性能を向上させると同時に、電池が良好なサイクル性能と保存性能を有することができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、式2Aにおいて、R21、R22、R23、R24は、同時に単結合ではない。選択可能に、R21、R22のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、R23、R24のうちの1つ又は2つはメチレン基である。
【0081】
幾つかの実施形態において、R21、R23はメチレン基であり、R22、R24は単結合である。
【0082】
幾つかの実施形態において、R21、R23はメチレン基であり、R22、R24のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0083】
幾つかの実施形態において、R21、R22、R23、R24はいずれもメチレン基である。
【0084】
幾つかの実施形態において、式2Bにおいて、R31、R32、R33、R34は、それぞれ独立に単結合、メチレン基のうちの1種であってもよく、且つR31、R32、R33、R34は、同時に単結合ではない。
【0085】
幾つかの実施形態において、式2Bにおいて、R31、R32、R33、R34のうちの少なくとも2つはメチレン基である。
【0086】
幾つかの実施形態において、式2Bにおいて、R4は単結合、O-、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、フルオロメチレン基、フルオロエチレン基、フルオロプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基のうちの1種であってもよい。選択可能に、R4は単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基のうちの1種である。これらの置換基は直鎖構造であってもよく、分岐鎖構造であってもよい。フッ素原子の数は1つであってもよく、複数であってもよい。
【0087】
これらの置換基が上記範囲内に含まれる時、第1添加剤能は正極活性材料と負極活性材料の表面に緻密で安定的な界面膜を形成し、第1有機溶媒と正極活性材料、負極活性材料との直接接触を遮断し、活性リチウムの損失を低減することができるため、正極シートと負極シートの間での活性イオンの脱離・吸蔵の可逆性をさらに高め、電池の放電容量及びサイクル性能を向上させることができる。
【0088】
幾つかの実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0089】
幾つかの実施形態において、R4が単結合である場合、R33、R34のうちの1つ又は2つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0090】
幾つかの実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32のうちの1つはメチレン基であり、R33、R34のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0091】
幾つかの実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32はいずれもメチレン基であり、R33、R34のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0092】
幾つかの実施形態において、R4が単結合である場合、R33、R34はいずれもメチレン基であり、R31、R32のうちの1つはメチレン基であり、残りは単結合である。
【0093】
幾つかの実施形態において、R4が単結合である場合、R31、R32、R33、R34はいずれもメチレン基である。
【0094】
幾つかの実施形態において、第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【0095】
発明者は、上記化合物のうちの1種又は複数種を第1添加剤にすることで、正極活性材料と負極活性材料の表面により安定的で耐久性のある界面膜を形成することができ、さらに長時間の充放電後に上記界面膜が依然として有機溶媒(特に、第1有機溶媒)と正極活性材料、負極活性材料との直接接触を効果的に防止することができるため、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させることができることを発見した。
【0096】
幾つかの実施形態において、第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【0097】
幾つかの実施形態において、第1添加剤は、下記化合物から選ばれる1種又は2種である。
【化49】
【化50】
【0098】
幾つかの実施形態において、上記電解液の総質量に基づいて、第1添加剤の質量パーセントはw2であり、w2は≦10%であってもよい。例えば、w2の範囲は0.05%~10%、0.1%~10%、0.5%~10%、0.5%~8%、0.5%~5%、1%~5%、又は2%~5%であってもよい。第1添加剤の質量パーセントを適切な範囲内にすることで、第1添加剤と第1有機溶媒との相乗作用を十分に果たすことができる。第1添加剤の質量パーセントが大きく、負極活性材料の表面での成膜の厚さが大きい場合、負極界面での活性イオンの輸送速度に影響を与え、電池の急速充電性能を大幅に向上できない場合がある。第1添加剤の質量パーセントが小い場合、第1有機溶媒と負極との連続反応を効果的に抑制できないため、電池のサイクル性能と保存性能を大幅に改善できない場合がある。発明者は、創造的な労力によって、第1添加剤の質量パーセントの範囲を選択することで、電池は良好な急速充電性能、サイクル性能及び保存性能を有する。
【0099】
幾つかの実施形態において、上記添加剤は第2添加剤をさらに含んでもよい。上記第2添加剤は不飽和結合を含む環状カーボネート化合物、ハロゲン置換環状カーボネート化合物、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、スルトン化合物、ジスルホン酸化合物、ニトリル化合物、芳香族化合物、イソシアネート化合物、ホスファゼン化合物、環状酸無水物化合物、亜リン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、ホウ酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。これらの第2添加剤は、正極活性材料及び/又は負極活性材料の表面により緻密で安定的な界面膜を形成することができ、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させることに役立つ。
【0100】
幾つかの実施形態において、上記第2添加剤は、下記化合物のうちの1種又は2種を含んでもよい。
【化51】
【化52】
【0101】
第2添加剤が上記2種類の化合物のうちの1種又は2種を含む時、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させることができる。
【0102】
幾つかの実施形態において、上記電解液の総質量に基づいて、上記第2添加剤の質量パーセントはw3であり、w3の範囲は≦10%であってもよい。例えば、w3の範囲は≦9%、≦8%、≦7%、≦6%、≦5%、≦4%、≦3%、≦2%、又は≦1%であってもよい。
【0103】
幾つかの実施形態において、上記電解液の総質量に基づいて、上記第2添加剤の質量パーセントw3は1%~10%、1%~8%、1%~7%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、又は1%~2%であってもよい。
【0104】
第2添加剤の質量パーセントを適切な範囲内にすることで、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させることができる。
【0105】
幾つかの実施形態において、上記有機溶媒は第2有機溶媒をさらに含んでもよく、上記第2有機溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。選択可能に、上記第2有機溶媒は環状カーボネート化合物を含み、又は環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物との組み合わせを含んでもよい。
【0106】
本願は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物の種類を具体的に限定せず、実際の必要に応じて選択することができる。幾つかの実施形態において、上記第2有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブテンカーボネート(BC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)のうちの1種又は複数種を含んでもよい。本願の有機溶媒はこれらの第2有機溶媒をさらに含む時、電池は良好な急速充電性能を有することができる。
【0107】
幾つかの実施形態において、上記有機溶媒の総質量に基づいて、上記第2有機溶媒の質量パーセントの範囲は20%~80%であってもよい。選択可能に、上記第2有機溶媒の質量パーセントの範囲は20%~75%、25%~75%、30%~70%、40%~70%、35%~65%、40%~65%、40%~60%、又は40%~50%である。
【0108】
幾つかの実施形態において、上記有機溶媒の総質量に基づいて、上記環状カーボネート化合物の質量パーセントはw4であり、w4の範囲は20%~80%であってもよい。例えば、w4の範囲は20%~50%、25%~50%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、30%~50%、30%~45%、又は30%~40%であってもよい。
【0109】
環状カーボネート化合物の誘電率が高く、リチウム塩の解離に役立つ。環状カーボネート化合物の質量パーセントを適切な範囲内に制御する時、該電解液を含む電池はより優れる急速充電性能を有することができる。
【0110】
幾つかの実施形態において、上記有機溶媒の総質量に基づいて、上記鎖状カーボネート化合物の質量パーセントの範囲は0%~50%、0%~40%、0%~30%、0%~25%、0%~20%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%であってもよい。
【0111】
幾つかの実施形態において、上記電解液はリチウム塩をさらに含む。本願は、リチウム塩の種類を限定せず、実際の必要に応じて選択することができる。例として、上記リチウム塩は、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)、LiPF6、LiBF4、LiBOB、LiDFOB、LiPO2F2、LiDFOP、LiTFOP、LiAsF6、Li(FSO2)2N、LiCF3SO3及びLiClO4のうちの1種又は複数種を含んでもよく、但し、x、yは正整数である。電解液は上記リチウム塩を含む時、負極活性材料の表面に均一、緻密、インピーダンスが小さい界面膜の形成に役立ち、電池の急速充電性能とサイクル性能を効果的に向上させることができる。
【0112】
幾つかの実施形態において、上記電解液の導電率は≧12mS/cmを満たしてもよい。例えば、上記電解液の導電率は≧12mS/cm、≧13mS/cm、≧14mS/cm、≧15mS/cm、≧16mS/cm、≧17mS/cm、≧18mS/cm、≧19mS/cm、又は≧20mS/cmを満たしてもよい。
【0113】
電解液の導電率を適切な範囲内にする時、電池は良好な急速充電性能、サイクル性能、保存性能及び安全性能を有することができる。
【0114】
幾つかの実施形態において、上記電解液の導電率は12mS/cm~24mS/cmであってもよい。例えば、上記電解液の導電率は12mS/cm~23mS/cm、12mS/cm~22mS/cm、12mS/cm~21mS/cm、12mS/cm~20mS/cm、又は13mS/cm~20mS/cmであってもよい。
【0115】
[負極シート]
【0116】
二次電池は負極シートを含み、負極シートは通常、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、且つ負極活性材料を含む負極膜層を含む。
【0117】
片面負極膜層の厚さHと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比H/Dv50は、単位負極膜層の縦方向の粒子数を特徴付けることに用いられてもよい。
【0118】
発明者は、負極活性材料を含む単位負極膜層の縦方向の粒子数が多いほど、活性イオンの拡散係数が高くなり、電池の急速充電性能がより優れるが、負極活性材料を含む単位負極膜層の縦方向の粒子数が多いと、負極膜層と電解液との接触面積が増加し、負極活性材料粒子の表面での電解液の副反応も増加するため、一定の程度で電池のサイクル性能と保存性能に影響を与える。逆に、負極活性材料を含む単位負極膜層の縦方向の粒子数が少ないほど、電池の急速充電性能は対応的に低くなり、電池のサイクル性能と保存性能が向上することを発見した。
【0119】
発明者は、多くの研究により、適切なH/Dv50の範囲を選択した。具体的には、本願の二次電池の負極シートは、片面負極膜層の厚さHと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比H/Dv50は≧3を満たす。例えば、H/Dv50は≧4,≧5,≧6,≧7,≧8、又は≧9を満たす。H/Dv50の値を適切な範囲内にすることで、二次電池が高い体積エネルギー密度を有することを保証するとともに、二次電池の急速充電性能をさらに向上させることができる。
【0120】
幾つかの実施形態において、片面負極膜層の厚さHと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比H/Dv50は4≦H/Dv50≦9を満たしてもよい。片面負極膜層の厚さHと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比H/Dv50を適切な範囲内に限定し、本願の電解液と組み合わせることで、優れる急速充電性能、長い使用寿命と高エネルギー密度を同時に有する二次電池を得ることができる。
【0121】
幾つかの実施形態において、片面負極膜層の厚さHは≧60μmを満たしてもよい。選択可能に、片面負極膜層の厚さは≧65μmを満たしてもよい。より具体的には、片面負極膜層の厚さHは≧70μmを満たしてもよい。片面負極膜層の厚さHを適切な範囲内に制御することで、電池のエネルギー密度をさらに改善することができる。
【0122】
幾つかの実施形態において、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は≦18μmを満たしてもよい。選択可能に、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は14μm≦Dv50≦18μmを満たしてもよい。片面負極膜層の厚さHが一定である場合、負極活性材料の体積平均粒径Dv50が小さいほど、活性イオンの拡散係数が高くなるが、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は小さすぎてはならず、これにより負極膜層と電解液との接触面積を増加させるため、さらに電池のサイクル性能と保存性能に影響を与える。負極活性材料の体積平均粒径Dv50を適切な範囲内にすることで、活性イオンの拡散係数を高めることができるだけでなく、負極膜層と電解液との接触面積を減少することができるため、電池は、良好な急速充電性能、サイクル性能と保存性能を同時に有することができる。
【0123】
幾つかの実施形態において、負極膜層の圧縮密度は1.4g/cm3~1.85g/cm3である。選択可能に、負極膜層の圧縮密度は1.6g/cm3~1.8g/cm3である。負極膜層の圧縮密度を適切な範囲内に制御することで、負極膜層内の負極活性材料粒子を緊密に接触させ、単位体積内の負極活性材料の含有量を向上させ、それにより電池のエネルギー密度を増加させることができる。
【0124】
本願の二次電池において、負極活性材料の種類を具体的に限定せず、当該分野で公知の二次電池に使用される負極活性材料を用いてもよい。例として、負極活性材料は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンミクロスフェア、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、シリコンベースの材料、錫ベースの材料、チタン酸リチウムのうちの1種又は複数種を含んでもよい。シリコンベースの材料は、シリコン単体、酸化ケイ素、シリコン炭素複合材料、シリコン窒素複合材料、シリコン合金材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。錫ベースの材料は、スズ単体、酸化スズ、スズ合金材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。本願は、これらの材料に限定されず、二次電池の負極活性材料として使用される他の従来の公知の材料を用いてもよい。これらの負極活性材料は、単独で1種類のみを使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0125】
本願の二次電池において、負極膜層は通常、負極活性材料、選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及びその他選択可能な助剤を含む。負極膜層は通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間圧延されてなる。負極スラリーは通常、負極活性材料、選択可能な導電剤、選択可能に接着剤、その他の選択可能な助剤を溶媒に分散し、均一に撹拌して形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよく、脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。その中で、導電剤及び接着剤の種類と含有量は具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。例として、導電剤は、超電導カーボン、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含んでもよい。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種又は複数種を含んでもよい。その他の選択可能な助剤は、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。
【0126】
本願の二次電池において、負極膜層は、負極集電体の一側に設置されてもよく、負極集電体の両側に同時に設置されてもよい。例えば、負極集電体は、それ自体の厚さ方向の対向する両側を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する両側のうちの任意の一側又は両側に設置されている。
【0127】
本願の二次電池において、負極集電体の種類は具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。
【0128】
本願の二次電池において、上記負極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いてもよい。金属箔の例として、負極集電体は銅箔を使用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層及び高分子材料ベース層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層を含んでもよい。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選ばれる1種又は複数種であってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選ばれてもよい。
【0129】
説明すべきことは、本願で示される各負極膜層パラメータ(例えば、厚さ、圧縮密度など)は全て、負極集電体の片側の負極膜層のパラメータを指す。負極膜層が負極集電体の両側に設置される時、任意の一側の負極膜層パラメータは本願を満たす場合、本願の保護範囲内にあると見なされる。また、本願に記載されている負極膜層の厚さ、圧縮密度などの範囲は全て、冷間圧延及び圧縮後の電池の組立に使用される負極膜層のパラメータを指す。
【0130】
また、本願の二次電池において、負極シートは、負極膜層以外の他の付加機能層を排除しない。例えば、幾つかの実施形態において、本願に記載されている負極シートは、負極集電体と負極膜層との間に設置された導電プライマー層(例えば、導電剤と接着剤からなる)をさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、本願に記載されている負極シートは負極膜層の表面を被覆する保護層をさらに含む。
【0131】
本願において、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、上記の負極活性材料の累積体積分布パーセントが50%に達する時の対応する粒径であり、レーザー回折粒子サイズ分析法により測定することができる。例えば、標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒子サイズ分析装置(例えばMalvern Master Size 3000)を使用して測定する。
【0132】
本願において、負極膜層の厚さは当該分野で知られている意味であり、当該分野で知られている方法によってテストすることができる。例えば、マイクロメータ(例えば、Mitutoyo293-100タイプ、精度0.1μm)を使用してテストする。
【0133】
本願において、負極膜層の圧縮密度は当該分野で知られている意味であり、当該分野で知られている方法によってテストすることができる。負極膜層の圧縮密度=負極膜層の面密度/負極膜層の厚さ。ここで、負極膜層の面密度は当該分野で知られている意味であり、当該分野で知られている方法によってテストすることができる。例えば、片面塗布且つ冷間圧延後の負極シート(両面塗布の負極シートの場合は、片面の負極膜層を拭き取っておくことができる)を取り、面積がS1の小さな円に打ち抜き、その重量を量ってM1と記録し、次に秤量後の上記の負極シートの負極膜層を拭き取り、負極集電体の重量を量ってM0と記録し、負極膜層の面密度=(負極シートの重量M1-負極集電体の重量M0)/S1。
【0134】
説明すべきことは、負極膜層又は負極活性材料に関する上記の様々なパラメータテストは、電池製造プロセス中にサンプリングしテストしてもよく、製造された二次電池からサンプリングしテストしてもよい。
【0135】
上記テストサンプルは製造された二次電池からサンプリングする時、例として、以下のステップ(1)からステップ(3)に従ってサンプリングすることができる。
【0136】
(1)二次電池に対して放電処理を行い(安全上の理由から、電池は通常完全放電状態にある)、電池を分解した後、負極シートを取り出し、炭酸ジメチル(DMC)に負極シートを所定の時間(例えば2~10時間)浸漬し、次に負極シートを取り出し、所定の温度と時間(例えば60℃、4h)で乾燥処理を行い、乾燥後に負極シートを取り出す。この時点で、乾燥後の負極シートからサンプリングして、本願に記載されている負極膜層に関する各パラメータをテストすることができる。(2)ステップ(1)で乾燥した負極シートを所定の温度及び時間(例えば400℃、2h)で焼き付け、焼き付けた後の負極シートから任意の領域を選択し、負極活性材料に対してサンプリングする(ブレードスクレイピングパウダーサンプリングを選択することができる)。(3)ステップ(2)で収集された負極活性材料に対して篩かけ処理を行い(例えば、200メッシュの篩にかけ)、最後に、本願に記載されている各負極活性材料パラメータをテストするためのサンプルを得る。
【0137】
[正極シート]
【0138】
本願の二次電池において、正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、且つ正極活性材料を含む正極膜層を含む。例えば、正極集電体は、それ自体の厚さ方向の対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の2つの対向する表面のうちの任意の一側又は両側に設置されている。
【0139】
幾つかの実施形態において、正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの変性化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。本願の二次電池において、上記の各正極活性材料の変性化合物は、正極活性材料に対するドーピング変性、表面コーティング変性、又はドーピングと表面コーティングの同時変性であってもよい。
【0140】
例として、リチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。例として、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。これらの正極活性材料は、単独で1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0141】
幾つかの実施形態において、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。別の幾つかの実施形態において、正極活性材料はオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその変性化合物のうちの1種又は複数種であってもよい。正極膜層でこれらの正極活性材料を使用することで、電池のサイクル性能と保存性能を向上させると同時に、電池の倍率性能を向上させることができる。これらの正極活性材料を使用した電池の動作電圧が高くなく、一般的には≦4.3Vであり、この電圧範囲内で第1有機溶媒と第1添加剤とを組み合わせて使用する効果がより優れるため、電池のサイクル性能と保存性能をさらに向上させることができる。
【0142】
本願の二次電池において、正極膜層は通常、正極活性材料、選択可能な接着剤及び選択可能な導電剤を含む。正極膜層は通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間圧延されてなる。正極スラリーは通常、正極活性材料、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤及び任意の他の成分を溶媒に分散し、均一に撹拌して、形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。導電剤及び接着剤の種類と含有量は具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。例として、上記の接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンターポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンターポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ素含有アクリレート樹脂のうちの1種又は複数種を含んでもよい。例として、上記の導電剤は、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含んでもよい。
【0143】
本願の二次電池において、上記正極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いてもよい。金属箔の例として、正極集電体はアルミニウム箔を使用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層及び高分子材料ベース層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層を含んでもよい。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選ばれる1種又は複数種であってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンなどから選ばれてもよい。
【0144】
[セパレータ]
【0145】
本願の二次電池は、セパレータをさらに含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の作用を果たす。セパレータの種類は、具体的に限定されず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。幾つかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる1種又は複数種であってもよいが、これらに限定されない。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムの場合、各層の材料は同じ又は異なる。幾つかの実施例において、セパレータにはセラミックコーティング、金属酸化物コーティングを設置してもよい。
【0146】
幾つかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0147】
幾つかの実施形態において、二次電池は外装を含んでもよい。該外装は上記電極アセンブリ及び電解液をパッケージすることに用いることができる。
【0148】
幾つかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装は、ポーチ型ソフトパッケージなどのソフトパッケージでもよい。ソフトパッケージの材質は、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのプラスチックのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0149】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円柱形、四角形又はその他の任意の形状であってもよい。
図1は、例としての四角形構造の二次電池5である。
【0150】
幾つかの実施形態において、
図2を参照し、外装は、ケース51とカバープレート53を含んでもよい。その中で、ケース51は、ボトムプレートとボトムプレートに接続されたサイドプレートを含んでもよく、ボトムプレートとサイドプレートが取り囲んで収容室を形成する。ケース51は、収容室に連通する開口を有し、カバープレート53は、上記収容室を密閉するように、上記開口を覆設することに用いられる。正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、上記収容室に封入される。電解液は電極アセンブリ52に含浸される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0151】
幾つかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの用途と容量に応じて調整することができる。
【0152】
図3は、例としての電池モジュール4である。
図3を参照し、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置されてもよい。当然ながら、その他の任意の方法に従って配置されてもよい。さらに、締結部材によって該複数の二次電池5を固定してもよい。
【0153】
選択可能に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを含んでもよく、複数の二次電池5は該収容空間に収容される。
【0154】
幾つかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができる。電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの用途と容量に応じて調整することができる。
【0155】
図4と
図5は、例としての電池パック1である。
図4と
図5を参照し、電池パック1には電池ボックスと電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池ボックスは上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は、下筐体3を覆設し、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することに用いられる。複数の電池モジュール4は、任意の方法に従って電池ボックス内に配置されてもよい。
【0156】
電気装置
【0157】
本願の第2態様は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種を含む電気装置を提供する。上記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、上記電気装置の電源として使用してもよく、上記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用してもよい。上記電気装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギーシステムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0158】
上記電気装置は、その使用ニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0159】
図6は、例としての電気装置である。該電気装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電気装置の高電力と高エネルギー密度に対する要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0160】
別の例としての電気装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。該電気装置は通常、軽質化が要求され、電源として二次電池を使用してもよい。
【0161】
実施例
【0162】
以下の実施例は、より具体的に本願の開示を説明し、本願の開示の範囲内の様々な修正や変更が当業者には明らかであるため、これらの実施例は、例示的な説明にのみ使用される。特に明記しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、パーセンテージ、及び比率は質量に基づいたものであり、実施例で使用される全ての試薬は市販されているか、又は従来の方法に従って合成されているものであり、さらに処理することなく直接使用できる。また、実施例で使用される機器は全て市販されているものである。
【0163】
以下の各実施例と比較例において、負極シートに使用される人工黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)は全て商業的に入手できるものである。正極シートに使用される正極活性材料であるリン酸鉄リチウム、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤であるアセチレンブラック、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)は全て商業的に入手できるものである。電解液に使用されるLiPF6、第1有機溶媒、第2有機溶媒、第1添加剤、第2添加剤、硫酸ビニル(DTD)は全て商業的に入手できるものである。セパレータに使用されるポリプロピレン膜は商業的に入手できるものである。
【0164】
実施例1
【0165】
負極シートの製造
【0166】
負極活性材料である人工黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比95:2:2:1で溶媒である脱イオン水に溶解し、十分に撹拌して均一に混合した後に負極スラリーを製造した。負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布した後、乾燥、冷間圧延、切断を経て、負極シートを得た。
【0167】
正極シートの製造
【0168】
正極活性材料であるリン酸鉄リチウム、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤であるアセチレンブラックを質量比97:2:1で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、十分に撹拌して均一に混合した後に正極スラリーを製造した。正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布した後、乾燥、冷間圧延、切断を経て、正極シートを得た。
【0169】
電解液の調製
【0170】
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス(H2O含有量<0.1ppm、O2含有量<0.1ppm)において、化合物1-2、エチレンカーボネート(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)を質量比30:30:40で均一に混合し、有機溶媒を調製した。一定量のLiPF6と一定量の化合物2-4を上記の有機溶媒に溶解し、均一に撹拌し、電解液を得た。その中で、電解液での化合物2-4の質量パーセントは2%、電解液の導電率は13.5mS/cmであった。
【0171】
セパレータ
【0172】
セパレータとしてポリプロピレン膜を使用した。
【0173】
二次電池の製造
【0174】
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積み重ね、セパレータを正極シートと負極シートとの間に配置して隔離の作用を果たし、次に捲回して電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装に入れ、乾燥後に電解液を注入した。その後、化学的形成、静置などのプロセスにより、二次電池を得た。二次電池の長さは194mm、幅は70mm、高さは112mmであった。
【0175】
実施例2~26及び比較例1~3
【0176】
実施例2~26及び比較例1~3の製造方法は実施例1と類似し、区別は、電解液の関連するパラメータを調整したことであり、具体的な電解液のパラメータは表1を参照する。その中で、比較例3の電解液に使用される第1添加剤は化合物2-9であった。
【化53】
【0177】
テスト部分
【0178】
(1)電池の急速充電性能テスト
【0179】
25℃下で、上記の各実施例と比較例の電池を0.33C(但し、1Cは、電池の理論容量に対応する電流値を1h内で完全に放電することを表す)の電流で、1回目の充電と放電を行った。具体的には、電池を0.33Cの定電流で電圧が3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流≦0.05Cになるまで充電するステップと、電池を5min静置し、0.33Cの定電流で電圧が2.5Vになるまで放電し、電池の実際の放電容量C0を記録するステップと、を含む。
【0180】
電池は、順に様々な充電倍率0.5C0、0.8C0、1.2C0、1.5C0、2.0C0、2.5C0、3.0C0、4.0C0、5.0C0の定電流で電池の充電カットオフ電圧が3.65Vになるまで又は負極の電位が0Vになるまで(早いほうに準じる)充電され、毎回充電完了後、さらに0.33C0で電池の放電カットオフ電圧が2.5Vになるまで放電された。様々な充電倍率で電池を10%SOC、20%SOC、30%SOC、40%SOC、50%SOC、60%SOC、70%SOC、80%SOC(SOCは電池の充電状態を表す。State of Charge)に充電した時の対応する負極電位を記録した。
【0181】
様々な充電状態での充電倍率-負極電位曲線を描き、線形フィッティングさせて様々な充電状態での負極電位が0Vである時の対応する充電倍率を得て、該充電倍率は該充電状態での充電ウィンドウであった。様々な状態での充電ウィンドウは、それぞれC10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記された。式(60/C20%SOC + 60/C30%SOC + 60/C40%SOC + 60/C50%SOC + 60/C60%SOC + 60/C70%SOC + 60/C80%SOC)×10%によって計算し、10%SOCから80%SOCに充電する電池の充電時間Tを得た。充電時間Tが短いほど、電池の急速充電性能がより優れたことが示される。
【0182】
(2)電池の60℃でのサイクル性能テスト
【0183】
60℃下で、上記の各実施例と比較例の電池を1Cの定電流で、電圧が3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流≦0.05Cになるまで充電し、次に、電池を1Cの定電流で電圧が2.5Vになるまで放電することを、1つの充放電プロセスとした。この時の放電容量は電池の初回サイクルの放電容量と記された。このように充電と放電のサイクルを繰り返し、サイクル500回後の電池の容量保持率を計算した。
【0184】
60℃でサイクル500回後の電池の容量保持率(%)=(500回目サイクルの電池の放電容量/初回サイクルの電池の放電容量)×100%。
【0185】
(3)60℃で保存した電池のガス発生量テスト
【0186】
25℃下で、上記の各実施例と比較例の電池を0.33Cの定電流で電圧が3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流≦0.05Cになるまで充電し、次に電池を0.33Cの定電流で電圧が2.5Vになるまで放電し、電池の実際の放電容量をC0と記録した。25℃下で、電池を0.33C0の定電流で電圧が3.65Vになるまで連続的に充電した後、3.65Vの定電圧で電流≦0.05C0になるまで充電し、この時に電池は完全充電状態となり、電池の体積を測定して電池保存前の体積と記録された。完全充電状態の電池を60℃の恒温箱に置いて保存し、30日保存した後に恒温箱から電池を取り出して体積を測定した。
【0187】
60℃で30日保存した電池のガス発生量(ml/Ah)=(30日保存後の電池の体積-保存前の電池の体積)/電池定格容量。
【0188】
(4)60℃で保存した電池の容量保持率テスト
【0189】
25℃下で、上記の各実施例と比較例の電池を0.33Cの定電流で電圧が3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流≦0.05Cになるまで充電し、電池を0.33Cの定電流で電圧が2.5Vになるまで放電し、電池の実際の放電容量をC0と記録した。25℃下で、電池を0.33C0の定電流で電圧が3.65Vになるまで連続的に充電し、次に3.65Vの定電圧で電流≦0.05C0になるまで充電し、この時に電池は完全充電状態となった。完全充電状態の電池を60℃の恒温箱に置いて60日保存し、電池を取り出して容量テストを行った。
【0190】
60℃で60日保存後の電池容量保持率=(60日保存後の電池の放電容量/電池の実際の放電容量C0)×100%。
【0191】
実施例1~26及び比較例1~3の電解液パラメータは表1を参照し、テスト結果は表2を参照する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【0192】
表2のテスト結果から分かるように、電解液に第1有機溶媒を使用することで電池の急速充電性能を向上させることができるが、第1有機溶媒と負極の相溶性が低いため、電池のサイクル性能と保存性能を劣化させ、特に高温環境での電池の性能劣化がより顕著であった。比較例2と比較例1のテスト結果から分かるように、電解液に適量なDTDを加えたとしても、電池のサイクル性能と保存性能を改善する効果は、理想的ではなかった。その理由として主に、DTDは正極活性材料と負極活性材料の表面の両方に安定的な界面膜を形成し、負極と第1有機溶媒との連続反応を抑制するが、DTDは界面膜の形成プロセスにおいてガスが発生し、連続的に生成したガスは正極シート、負極シートとセパレータの界面で濃縮されて巨視的な気泡を形成し、これらの気泡はリチウムイオンの輸送を遮断することであった。
【0193】
表2のテスト結果から分かるように、実施例1~26の電池は、DTDの代わりに第1添加剤を使用することで、電池のサイクル性能と保存性能を顕著に改善することができ、特に電池の高温サイクル性能と高温保存性能を顕著に改善することができた。同時に、実施例1~26の電池は依然として良好な急速充電性能を保持した。
【0194】
比較例3と実施例1~26のテスト結果の比較から分かるように、実施例1~26の電池はより優れるサイクル性能と保存性能を有した。
【0195】
実施例1~2のテスト結果の比較から分かるように、第2有機溶媒の種類を変更すると、電池の急速充電性能、サイクル性能と保存性能も変化したが、合理的な範囲内であり、過大の変化量がなかった。従って、本願は、第2有機溶媒の種類を特に限定しない。
【0196】
実施例1、実施例3~8のテスト結果の比較から分かるように、第1有機溶媒の含有量が増加すると、電池の充電時間Tが減少し、高温保存のガス発生量が増加し、高温保存の容量保持率と高温でのサイクル容量保持率はいずれも低下した。その理由として主に、第1有機溶媒の含有量が増加した後、α-Hの数が増加し、電池内部の活性リチウムの損失が増加するため、電池の高温保存後の容量保持率が低下し、第1有機溶媒の耐酸化性が低く、高充電状態で保存する時に酸化分解しやすいため、電池の高温保存のガス発生量も増加することであった。
【0197】
実施例1、実施例9~15のテスト結果の比較から分かるように、第1添加剤の種類を変更すると、電池の急速充電性能、サイクル性能と保存性能も変化したが、合理的な範囲内であり、過大の変化量がなかった。
【0198】
実施例1、実施例16~18のテスト結果の比較から分かるように、第1有機溶媒の種類を変更すると、電池の急速充電性能、サイクル性能と保存性能も変化したが、合理的な範囲内であり、過大の変化量がなかった。
【0199】
実施例19~26のテスト結果の比較から分かるように、第1添加剤の含有量が増加すると、電池の高温保存のガス発生量が低下し、電池の充電時間が低下した後に増加し、電池の高温保存の容量保持率と高温でのサイクル容量保持率が増加した後に低下した。可能な理由として、第1添加剤は高い還元電位を有し、第1有機溶媒よりも先に、負極活性材料の表面に緻密で安定的な硫黄含有有機物界面膜を形成し、第1有機溶媒と負極との連続反応を抑制できるため、電池の高温保存のガス発生量が低下した。しかし、第1添加剤は環状構造を有し、含有量が増加した後、負極活性材料の表面での成膜厚さが増加し、成膜インピーダンスも略に増加し、負極界面でのリチウムイオンの輸送速度に影響を与えるため、電池の充電時間も一定の程度で増加し、電池の高温保存の容量保持率と高温でのサイクル容量保持率は一定の程度で低下した。
【0200】
実施例27
【0201】
負極シートの製造
【0202】
負極活性材料である人工黒鉛(体積平均粒径Dv50は17μm)、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比95:2:2:1で溶媒である脱イオン水に溶解し、十分に撹拌して均一に混合した後に負極スラリーを製造した。負極スラリーを負極集電体の銅箔の2つの表面に均一に塗布した後、乾燥、冷間圧延、切断を経て、負極シートを得た。負極スラリーを乾燥した後に負極膜層を形成し、負極膜層片面の厚さは60μm、負極膜層の圧縮密度は1.65g/cm3であった。
【0203】
正極シートの製造
【0204】
正極活性材料であるリン酸鉄リチウム、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤であるアセチレンブラックを質量比97:2:1で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、十分に撹拌して均一に混合した後に正極スラリーを製造した。正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布した後、乾燥、冷間圧延、切断を経て、正極シートを得た。
【0205】
電解液の調製
【0206】
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス(H2O含有量<0.1ppm、O2含有量<0.1ppm)において、化合物1-2、エチレンカーボネート(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)を質量比30:30:40で均一に混合し、有機溶媒を調製した。一定量のLiPF6と一定量の第1添加剤化合物2-4を上記の有機溶媒に溶解し、均一に撹拌し、電解液を得た。その中で、電解液での化合物2-4の質量パーセントは2%、電解液の導電率は13.5mS/cmであった。
【0207】
セパレータ
【0208】
セパレータとしてポリプロピレン膜を使用した。
【0209】
二次電池の製造
【0210】
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積み重ね、セパレータを正極シートと負極シートとの間に配置して隔離の作用を果たし、次に捲回して電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装に入れ、乾燥後に電解液を注入した。その後、化学的形成、静置などのプロセスにより、二次電池を得た。二次電池の長さは194mm、幅は70mm、高さは112mmであった。
【0211】
実施例28~37
【0212】
実施例28~37の製造方法は実施例27と類似し、区別は、負極シートの関連するパラメータを調整したことであり、具体的なパラメータは表3を参照する。
【0213】
テスト部分
【0214】
(1)電池の体積エネルギー密度のテスト
【0215】
25℃下で、上記の各実施例と比較例の電池を0.33Cの定電流で、電圧が3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で、電流≦0.05Cになるまで充電した。電池を0.33Cの定電流で、電圧が2.5Vになるまで放電し、放電エネルギーQを得た。ノギスを使用して電池ハウジングの長さ、幅、高さを測定し、計算して電池の体積Vを求めた。
【0216】
電池の体積エネルギー密度=放電エネルギーQ/電池の体積V、体積エネルギー密度の単位はWh/Lであった。
【0217】
実施例27~37の負極シートパラメータと電池性能テスト結果は表3を参照する。
【表3】
【0218】
表3のテスト結果から分かるように、片面負極膜層の厚さHの増加に伴い、電池の体積エネルギー密度も増加したが、充電時間Tが延長した。片面負極膜層の厚さHが一定である場合、負極活性材料の体積平均粒径Dv50の減少に伴い、活性イオンの拡散経路が短縮し、充電時間Tが減少したが、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は小さすぎてはならず、これにより負極膜層と電解液との接触面積を増加させ、負極活性材料粒子の表面での電解液の副反応を増加させるため、さらに電池のサイクル性能と保存性能に影響を与える。従って、片面負極膜層の厚さと負極活性材料の体積平均粒径Dv50との比H/Dv50を適切な範囲内に限定し、本願の電解液と組み合わせることで、電池は、良好な急速充電性能、長い使用寿命と高エネルギー密度を同時に有することができる。
【0219】
説明すべきことは、本願は上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態は例のみであり、本願の技術的解決手段範囲内で技術思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用や効果を奏する実施形態はいずれも、本願の技術範囲内に含まれる。また、本願の主旨から逸脱することなく、実施形態に実施した当業者の想到できる様々な変形、実施形態の一部の構成要素を組み合わせた他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】