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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】糖アルコールの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/14 20060101AFI20230904BHJP
   C07C 31/26 20060101ALI20230904BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
C07C29/14
C07C31/26
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506200
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 US2021042493
(87)【国際公開番号】W WO2022026262
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/057,918
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523031091
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス 8 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DDP SPECIALTY ELECTRONIC MATERIALS US 8,LLC
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】トレホ、ホセ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】セングプタ、ソウラブ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ビンガマン、ジョナサン エム.
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA21
4H006BA23
4H006BA25
4H006BA61
4H006BA72
4H006BB31
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG60
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
糖の還元方法。第1の工程は5個~20個の炭素原子を含む糖の溶液を提供することである。第2の工程は前記溶液を水素ガス及び触媒と接触させることである。触媒はRuを含むイオン交換樹脂である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖の還元方法であって、
a)5個~20個の炭素原子を含む糖の溶液を提供する工程;及び
b)前記溶液を水素ガス及び触媒と接触させる工程;
を含み、前記触媒がRuを含むイオン交換樹脂を含む、方法。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂へのRuの総担持量が、樹脂1リットルあたり0.5~200gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂が、架橋剤の重合した単位を1~10重量%含むゲル樹脂、又は架橋剤の重合した単位を8~20重量%含むマクロレティキュラー樹脂である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、Mo、W、V、Mn、Re、Fe、Zr、Cu、Zn、Cr、Ge、Sn、Ti、Ni、及びAuのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記糖が5~12個の炭素原子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換樹脂が、樹脂1リットルあたり0.9~2.5当量の量の酸部位を有するスチレン系樹脂である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換樹脂が200~1100ミクロンの調和平均サイズを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記糖が5~12個の炭素原子を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂が、樹脂1リットルあたり0.9~2.5当量の量の酸部位を有するスチレン系樹脂である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記糖がグルコース又はフルクトースである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン交換樹脂が、架橋剤の重合した単位を10~20重量%含むマクロレティキュラー樹脂である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン交換樹脂が、架橋剤の重合した単位を2~8重量%含むゲル樹脂である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、糖の還元及び糖からの糖アルコールの調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一系触媒としていくつかの遷移金属を使用する、水素化によるグルコースのソルビトールへの還元が知られている。例えば、V.N.Sapunov et al.,J.Phys.Chem.A,2013,117,4073-4083には、超架橋ポリスチレンマトリックスに埋め込まれたルテニウムによるグルコースのソルビトールへの還元が開示されている。しかしながら、この参考文献は、グルコースの変換率が低いことを報告しており、また超架橋ポリマーマトリックスにルテニウムを埋め込む特殊な手順も使用している。糖の別の不均一還元系も有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、糖の還元方法に関する。方法は、
a)5個~20個の炭素原子を含む糖の溶液を提供する工程;及び
b)前記溶液を水素ガス及び触媒と接触させる工程;
を含み、前記触媒はRuを含むイオン交換樹脂を含む。
【発明を実施するための形態】
【0004】
特に明記されない限り、全ての百分率は重量百分率(重量%)であり、そして全ての温度は℃である。特に明記されない限り、平均は算術平均である。特に指定のない限り、全ての操作は、室温(18~25℃)で実行される。モノマーのパーセント割合は、乾燥ポリマー、すなわち乾燥イオン交換樹脂ビーズの重量に基づいており、同じパーセント割合がビーズの製造に使用されるモノマー混合物に適用される。「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル」という用語は、それぞれアクリレート又はメタクリレート、及びアクリル又はメタクリルを意味する。例えばルテニウムなどの遷移金属への言及は、ゼロ価の金属を意味する。粒子サイズは、動的画像粒子分析計、例えばFlowCam(商標)Macro分析計を使用して決定され、本明細書では調和平均サイズ(HMS)として記載される平均値である。
【0005】
好ましくは、イオン交換樹脂の調和平均サイズは、少なくとも200ミクロン、好ましくは少なくとも300ミクロン、好ましくは少なくとも400ミクロン;好ましくは1100ミクロン以下、好ましくは1000ミクロン以下、好ましくは900ミクロン以下、好ましくは800ミクロン以下、好ましくは700ミクロン以下である。
【0006】
好ましくは、粒度分布は、少なくとも1.01、均一粒度(UPS)樹脂については1.2以下、正規粒度分布樹脂については1.6以下の均一係数を有する。UPS樹脂は、モノマー液滴を水相合成に噴射することによって製造される樹脂であり、正規粒度分布の樹脂は、攪拌されている反応器の中で製造される。
【0007】
有用なイオン交換樹脂としては、強酸陽イオン交換樹脂、弱酸陽イオン交換樹脂、強塩基陰イオン交換樹脂、及び弱塩基陰イオン交換樹脂が挙げられる。好ましくは、イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂、好ましくは強酸陽イオン交換樹脂、すなわちスルホン酸基を有するものである。好ましいイオン交換樹脂は、アクリル(重合した単位の>70重量%、好ましくは>85重量%のアクリルモノマー)又はスチレン(重合した単位の>70重量%、好ましくは>85重量%のスチレン又は置換スチレン)とすることができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、イオン交換樹脂は、ゲル樹脂(BET技術によって測定される表面積が<5m/gの乾燥樹脂)であり、好ましくは10重量%以下、好ましくは8重量%以下、好ましくは7重量%以下、好ましくは6重量%以下;好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも3重量%の架橋剤の重合した単位を含むゲル樹脂である。別の好ましい実施形態では、イオン交換樹脂はマクロレティキュラー樹脂である。マクロレティキュラー樹脂は、好ましくは10~100m/g、好ましくは20~50m/gの表面積を有する。好ましくは、マクロレティキュラー樹脂は、0.1~0.9、好ましくは0.2~0.7、好ましくは0.25~0.5cm/gの総空隙率を有し、50~2500オングストローム、好ましくは150~1000オングストロームの平均孔径を有する。多孔性は、IUPAC(国際純粋応用化学連合)命名法に従って以下の通りに定義される:
ミクロ多孔性=20オングストローム単位未満の細孔
メソ多孔性=2~500オングストローム単位の細孔
マクロ多孔性=500オングストローム単位を超える細孔。
好ましくは、マクロレティキュラー樹脂は、架橋剤の重合した単位を、少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%;好ましくは20重量%以下、好ましくは19重量%以下、好ましくは17重量%以下含む。
【0009】
好ましい架橋剤としては、ジビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)、及びDEGDVE(ジエチレングリコールジビニルエーテル)が挙げられ;好ましくはジビニルベンゼンである。好ましくは、イオン交換樹脂は、一官能性モノマーの重合した単位を80~99重量%含む。好ましい一官能性モノマーとしては、ビニル芳香族モノマー(例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、α-メチルスチレン;好ましくはスチレン)及びアクリルモノマー(アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸)が挙げられる。好ましくは、スチレン系イオン交換樹脂は、樹脂1リットルあたり0.9~2.5当量、好ましくは少なくとも1.3当量/リットル、好ましくは1.8当量/リットル以下の量の酸部位を有する。好ましくは、アクリルイオン交換樹脂は、樹脂1リットルあたり3.0~5.5当量、好ましくは少なくとも3.5当量/リットル、好ましくは5.0当量/リットル以下の量の酸部位を有する。好ましくは、スチレン系イオン交換樹脂は、乾燥樹脂1kgあたり2.5~5.3当量、好ましくは乾燥樹脂1kgあたり少なくとも4.2当量、好ましくは乾燥樹脂1kgあたり5.0当量以下の量の酸部位を有する。
【0010】
好ましくは、イオン交換樹脂へのRuの総担持量は、樹脂1リットルあたり0.5~200g、好ましくは少なくとも1g/リットル、好ましくは少なくとも2g/リットル、好ましくは少なくとも5g/リットル、好ましくは少なくとも10g/リットル、好ましくは少なくとも20g/リットル;好ましくは樹脂1リットルあたり100g以下、好ましくは80g/リットル以下、好ましくは70g/リットル以下、好ましくは60g/リットル以下である。本発明の好ましい実施形態では、触媒は、Ruと、Mo、W、V、Mn、Ni、Cu、Zn、Cr、Ge、Sn、Ti、Au、及びZrのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、Mo、W、Ni、Cu、及びSnのうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、イオン交換樹脂への金属の総担持量は、樹脂1リットルあたり0.5~200g、好ましくは少なくとも1g/リットル、好ましくは少なくとも2g/リットル、好ましくは少なくとも5g/リットル、好ましくは少なくとも10g/リットル、好ましくは少なくとも20g/リットル;好ましくは樹脂1リットルあたり100g以下、好ましくは80g/リットル以下、好ましくは70g/リットル以下、好ましくは60g/リットル以下である。
【0011】
糖は、溶液、好ましくは水溶液、すなわち、主溶媒が水、好ましくは少なくとも50体積%の水、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%の水である溶液として供給される。好ましくは、糖の濃度は10~65重量%、好ましくは30~40重量%である。好ましくは、糖は、5個~20個の炭素原子;好ましくは少なくとも6個の炭素原子;好ましくは18個以下、好ましくは17個以下、好ましくは16個以下、好ましくは15個以下、好ましくは12個以下の炭素原子を含む。好ましい糖としては、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース、及びスクロースが挙げられ;好ましくはグルコース、フルクトース、及びマンノースが挙げられ;好ましくはグルコースである。好ましくは、糖は単糖又は多糖であり;好ましくは単糖又は二糖であり;好ましくは単糖である。
【0012】
好ましくは、触媒は、イオン交換樹脂を金属塩水溶液と接触させ、続いて還元剤で金属イオンを還元することによって調製される。好ましい還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、及び水素化アルミニウムリチウムが挙げられ;好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。最初の金属塩は、溶液中で元の金属イオンよりも低い正の価数の状態に還元されるか、又はゼロ価の金属に完全に還元されることができる。好ましくは、触媒はゼロ価の金属を含む。好ましくは、還元剤はナトリウム又はカリウムのカチオンを含む。好ましくは、樹脂中の酸基は、Na、K、Ca、Mg、Ba、Fe、又はAlのカチオン、好ましくはNa、K、Ca、又はMgのカチオンとの金属塩として残る。金属塩が充填された樹脂が水素で還元される場合には、樹脂上の酸基は-SOHのような酸形態になることもできるであろう。好ましくは、金属が水素で還元される場合には、樹脂中の酸基は酸(H+)として残る。
【0013】
好ましくは、糖溶液の水素化は、25~180℃、好ましくは少なくとも40℃、好ましくは少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、好ましくは少なくとも115℃、好ましくは少なくとも125℃;好ましくは170℃以下、好ましくは160℃以下、好ましくは150℃以下の温度で行われる。好ましくは、糖溶液の水素化は、40~600psi(275kPa~4.2MPa);好ましくは少なくとも60psi(410kPa)、好ましくは少なくとも100psi(690kPa)、好ましくは少なくとも150psi(1.0MPa)、好ましくは少なくとも200psi(1.4MPa);好ましくは500psi(3.5MPa)以下、好ましくは400psi(2.8MPa)以下の水素圧力で行われる。好ましい反応時間は、0.25~15時間、好ましくは0.5~5時間で変動し得る。上記好ましい圧力、時間、及び温度は、重要なパラメータ(特に時間及び圧力の上限)であるとはみなされず、これらのパラメータの組み合わせは、望まれる変換及び反応時間を効率的に達成するために当業者によって調整され得る。水素化は、撹拌槽型反応器を使用するバッチ式で、直列の連続撹拌槽型反応器で、連続スラリーバブルカラム反応器で、及び連続多管式反応器で行うことができる。好ましくは、ソルビトールの連続製造方法は、混合槽と、固体酸触媒を含む固定床型触媒反応器とを利用する。グルコースの水溶液が混合槽に導入される。水素は、混合槽の中に散布される。グルコース溶液は、水素と共に触媒反応器の中にポンプで送り込まれる。水溶液中の固定床反応器で生成された目的生成物のソルビトールは、プロセスを出て、排出された流れの一部がプロセスにリサイクルされる。
【0014】
ソルビトールの分析及び使用した定量方法:
方法I:クロマトグラフィー
定量的イオン排除クロマトグラフィー法は、以下の条件を使用した:カラム:Aminex HPX-87Hイオン排除カラム。カラム温度:80℃
検出器:Agilent 1260 RID(G7162A)。RID温度:50℃
流量:0.4mL/分。注入量:2μL
【0015】
面積と濃度のキャリブレーションは、ソルビトール、マンニトール、グルコース、フルクトースについてはSigma Aldrichの標準を使用して行い、副生成物として見つけられたその他のピークは未知物質として報告した。
HPLCデータを使用した計算は、以下の通りに行った:
・変換率(%)=100-[グルコース(時間ゼロ)/グルコース(時間x)]*100
・選択率(%)=ソルビトール(ピーク)/(全てのピークの合計-グルコースピーク)*100
・収率(%)=変換率*選択率
【0016】
方法II:NMR
定量的な1DHNMRデータは、熟練したオペレータによって維持管理されている500MHzで作動するAgilent DD2又はBruker NEO分光計で収集した。スペクトルは、8つのトランジェント、30秒のリサイクル遅延、90°のパルス幅、3.17秒の取得時間、25.8kHzのスペクトルウィンドウ、及び82kポイントで取得した。データ処理は、Bruker Topspinソフトウェアで行った。生データは131kデータポイントまでゼロフィリングし、0.3Hzの指数関数乗算(exponential multiplication)で処理した。得られたNMRスペクトルの位相を合わせ、ベースライン補正を行った。化学シフトは、DO=4.65ppmを基準とした。分析対象物の積分は、傾きとバイアスについて補正した。
変換率は、処理されたNMRスペクトルから得られたグルコースとソルビトールのモル比から以下の通りに計算した:
%収率=((モルソルビトール)/(モルソルビトール+モルグルコース))*100
ソルビトールのモル数は、グルコースから分離された共鳴から決定した。この領域のプロトンのモル数は、総積分面積が8に正規化された標準の基準スペクトルとの比較に基づいて3であることが分かった。
ソルビトールのモル数=∫(δ3.54ppm~3.44ppm)/3;複合
グルコースのモル数は、αβ-グルコースに対応するアノマープロトンの合計として測定した。
グルコースのモル数=∫(δ5.12ppm~5.04ppm)+∫(δ4.52ppm~4.47ppm);α/βアノマープロトン
【0017】
触媒合成及び金属含浸-還元
金属担持イオン交換樹脂触媒の調製
市販のイオン交換樹脂(例えばAmberLyst(商標)15、131、35、及び46樹脂)及びRu及びNi塩(RuCl.xHO、NiCl.x6HO、及びNiSO.xHO)の水溶液を使用して、金属担持イオン交換樹脂触媒を調製した。金属含浸のために使用した触媒は、初期イオン塩形態(H、Na、又はCa)の樹脂であった。市販の樹脂のこのイオン形態の例は、AmberLite CR99310Ca、AmberLite FPC16UPS Na、及びAmberLite FPC88 UPS Hである。金属含浸は、a)インシピエントウェットネス法又はb)水中でのイオン交換の2つの異なる方法を使用した。これらは以下の段落に記載されている。金属が樹脂に含浸された後の次の基本プロセスは、a)水素化又はb)NaBH溶液、の手順のうちの1つに従ってゼロ価の状態に還元することである。
【0018】
インシピエントウェットネス法:
樹脂に担持させる金属の量(望まれる金属担持量に基づく)及び樹脂を膨潤させるために必要な水の量を計算した。上記計算に基づいて、金属塩の溶液を調製した。樹脂を100℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。乾燥した樹脂を大きなビーカーに入れ、金属塩が入っている水溶液(樹脂を確実に完全に濡らすために20%の水を使用)を滴下した。金属塩を含む湿ったビーズは、完全に吸着させるために約30分間放置した。次いで、ビーカーを氷浴に入れ、14MのNaOH溶液中の12%NaBHを、ピペットを使用してゆっくりと樹脂に添加した。(注意:この反応は、選択した金属担持量によっては非常に激しくなることがある。金属担持量が多いと、多くの泡立ち/発泡/加熱が発生する)。激しい泡立ちが停止した後、ビーカーを氷浴から取り出し、一晩還元させた。その後、還元された金属担持イオン交換樹脂触媒をブフナー漏斗に移し、洗浄水が中性のpH(pH約6又は7)になるまで水ですすいだ。このようにして調製された触媒は、活性試験又は触媒の特性評価に使用する準備が整っていた。任意選択的には、触媒を真空オーブンで乾燥することもできる(乾燥した樹脂塊は、濡れた状態よりも均質であった)。全ての触媒は、樹脂1リットルあたり2.5gのRuを含んでいた。
【0019】
金属を添加した水中におけるイオン交換
各樹脂の望まれる金属担持量に対する重量%担持目標に基づいて、樹脂に担持させる金属の量を計算する。金属塩の溶液は、水中で調製し、若干の塩酸を添加し、全てを樹脂と混合した。この混合物を24時間撹拌して平衡化し、金属をスルホン部位に交換させる。撹拌時間の最後に、樹脂をブフナー乾燥し、その後金属の還元プロセスを行うことができる。カラム又は反応器内での水素化ホウ素ナトリウム(NaBH/NaOH水溶液)又は水素を用いた還元については、乾燥形態又は湿潤形態の樹脂が考えられる。
【実施例
【0020】
説明された合成プロセスについての選択された実施例及び全ての触媒についての結果。
【0021】
実施例:5%Ruを含浸させたAmberLyst(商標)15 WET、及び水素化ホウ素ナトリウム還元工程。
10mLのAmberLyst(商標)15 WETを反応器に入れた。0.225gのRuCl、0.2gのHCl、及び50mLのHPLCグレードの水を撹拌槽の中に混合した。200rpmで室温で一晩撹拌した。反応器の内容物を濾過し、金属含浸樹脂を単離する。次いで、窒素スイープを行いながら樹脂を真空オーブン内で70℃で一晩乾燥した。収量は、9mLの湿潤触媒、5重量%Ruであった。金属の0価への還元は、以下の通りに例示される水素化ホウ素ナトリウム手順を使用して行った:50mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液をビーカー中の湿潤触媒に添加した。3時間後、反応が終了し、樹脂を過剰のHPLC水グレードで洗浄し、濾過し、窒素スイープ条件で真空オーブン中で一晩90℃で乾燥する。
【0022】
実施例:1%Ruを含浸させたAmberLyst(商標)15 WET、及び水素化ホウ素ナトリウム還元工程。
10mLのAmberLyst(商標)15 WETを反応器に入れた。0.045gのRuCl、0.2gのHCl、及び50mLのHPLCグレードの水を撹拌槽の中に混合した。200rpmで室温で一晩撹拌した。反応器の内容物を濾過し、金属含浸樹脂を単離する。次いで、窒素スイープを行いながら樹脂を真空オーブン内で70℃で一晩乾燥した。収量は、9mLの湿潤触媒、1重量%Ruであった。金属の0価への還元は、以下の通りに例示される水素化ホウ素ナトリウム手順を使用して行った:50mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液をビーカー中の湿潤触媒に添加した。3時間後、反応が終了し、樹脂を過剰のHPLC水グレードで洗浄し、濾過し、窒素スイープ条件で真空オーブン中で一晩90℃で乾燥する。
【0023】
実施例:Ruを含浸させたAmberLyst(商標)45、及び水素化ホウ素ナトリウム還元工程。
12.0gのAmberLyst(商標)45を反応器に入れた。1.6gのRuCl、0.4gのHCl、及び256gのHPLCグレードの水を撹拌槽の中に混合した。200rpmで室温で一晩撹拌した。反応器の内容物を濾過し、金属含浸樹脂を単離した。この樹脂に対して100mLの水での洗浄を行い、過剰のRuを除去した。次いで、窒素スイープを行いながら樹脂を真空オーブン内で70℃で一晩乾燥した。収量は、14.1gの乾燥触媒、1重量%Ruであった。金属の0価への還元は、以下の通りに例示される水素化ホウ素ナトリウム手順を使用して行った:50mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液をビーカー中の乾燥触媒に添加した。3時間後、反応が終了し、樹脂を過剰のHPLC水グレードで洗浄し、濾過し、窒素スイープ条件下で真空オーブン中で90℃で一晩乾燥した。
【0024】
実施例:Pdを含浸させたAmberLyst(商標)CH28、市販のサンプル。
50mLのAmberLyst(商標)CH28を、窒素スイープ条件で真空オーブン内中で一晩、90℃で終夜乾燥した。50mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液をビーカー中の湿潤触媒に添加した。3時間後、反応が終了し、樹脂を過剰のHPLC水グレードで洗浄し、濾過し、窒素スイープ条件下で真空オーブン内で90℃で一晩乾燥した。プロセスの最後に、樹脂の酸部位は中和されてNa形態になり、Pd(II)はPd(0)に還元された。Pd含有量は、樹脂1gあたり0.7mgのPdである。
【0025】
実施例:Ruを含浸させたAmberLyst(商標)45、及びカラム還元工程における水素化。
12.0gのAmberLyst(商標)45を反応器に入れた。1.6gのRuCl、0.4gのHCl、及び256gのHPLCグレードの水を撹拌槽の中に混合した。200rpmで室温で一晩撹拌した。反応器の内容物を濾過し、金属含浸樹脂を単離した。次いで、窒素スイープを行いながら樹脂を真空オーブン内で70℃で一晩乾燥した。収量は、14.1gの乾燥触媒、1重量%Ruであった。乾燥触媒をカラムに充填し、これに連続プロセスで水素を125psi及び60℃で一晩通過させた。その後、反応器を窒素でスイープし、後に使用するために触媒を反応器から取り出した。
【0026】
実施例:Niを含浸させたAmberLyst(商標)131、及び水素化ホウ素ナトリウム還元工程。
50mLのAmberLyst(商標)131 WETを反応器に入れた。17.5gのNiSO七水和塩、2gのHCl、及び256gのHPLCグレードの水を撹拌槽の中に混合した。200rpmで室温で一晩撹拌した。反応器の内容物を濾過し、金属含浸樹脂を単離した。次いで、窒素スイープを行いながら樹脂を真空オーブン内で70℃で一晩乾燥した。収量は、48mLの湿潤触媒、4.8重量%Ruであった。金属の0価への還元は、以下の通りに例示される水素化ホウ素ナトリウム手順を使用して行った:50mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液をビーカー中の乾燥触媒に添加した。3時間後、反応が終了し、樹脂を過剰のHPLC水グレードで洗浄し、濾過し、窒素スイープ条件で真空オーブン中で一晩90℃で乾燥した。最終樹脂中のニッケル含有量は、樹脂の乾燥基準で4.8重量%であった。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
糖の水素化反応
グルコース又はフルクトース又はスクロースの水素化反応は、450mLのParr反応器内で、10~50%のグルコース水溶液と規定量の触媒とを用いて、120~160℃の温度及び240~800psig(1.66~5.52MPa)のH圧で24時間行った。反応は、反応器へのバッチ充填又は粒子充填を使用し、プロセスの最初の3時間はグルコース/水を半連続的に添加して行った。試験した全てのRu及びNi担持イオン交換樹脂触媒は、別段の明記がない限り、1.0~14g/Lの金属担持量であった。望みの反応時間の後、反応器を周囲温度まで冷却し、圧力をゆっくり解放した。その後のワークアップ及び/又はHNMR、13CNMR、若しくはHPLCを使用する分析のために、反応器の内容物をサンプルバイアルの中に濾過した。グルコースの変換の定量化及びソルビトールの収率は、以下に記載の分析方法に基づいて決定した。触媒活性試験の結果は表2に示されている。水素化は、表の中に明記がある場合を除いて、上述した通りに行った。データは表3、4、及び5に示されている。
【0032】
既存の金属担持AMBERLYST(商標)製品であるAMBERLYST(商標)CH28樹脂も、グルコースの水素化で試験した。この製品は、酸及び未還元形態で販売されている。触媒は、系内での還元を用いて、酸性及び中和された形態で試験した。これらの触媒は、長い反応時間での非常に低い変換率によって示されるように、グルコースの水素化において非常に低い活性を示した。AMBERLYST(商標)CH28は、樹脂1リットルあたり2.8gのPdを含む。
【0033】
実施例:ソルビトールの合成:5%のRuを含浸させたAmberLite(商標)FPC88UPS H。(表5)
450mLのParr反応器に、10.0gのAmberLite FPC88UPS Na-5%Ru含浸、100mLの脱イオン水、及び150mLの脱イオン水溶液中の63gのグルコースを入れた。撹拌速度は400rpmに固定し、反応温度を140℃、圧力を700psiのH2とした。反応は24時間行った。この時間の終わりに、圧力を大気圧に下げ、温度を室温に下げた。液体サンプルを採取し、HPLC法により測定した。サンプルは、HPLC法で分析するまで冷凍庫で保管した。プロセスの最後に、溶液をICPで分析して、溶液中にあったRuを特定した。この方法及び装置では、0.1ppm未満の限界で検出できず、使用中に触媒から最大でも無視できる量のRuしか浸出しなかったことが示された。
【0034】
【表5】
【0035】
実施例:マンニトールの合成:5%のRuを含浸させたAmberLite(商標)FPC88UPS Na。(表6)
450mLのParr反応器に、10.0gのAmberLite(商標)FPC88UPS Na-5%Ru含浸、100mLの脱イオン水、及び150mLの脱イオン水溶液中の63gのマンニトールを入れた。撹拌速度は400rpmに固定し、反応温度を140℃、圧力を700psiのHとした。反応は24時間行った。この時間の終わりに、圧力を大気圧に下げ、温度を室温に下げた。液体サンプルを採取し、HPLC法により測定した。サンプルは、HPLC法で分析するまで冷凍庫で保管した。
【0036】
【表6】
【国際調査報告】