(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】炭素-13含有グラフェン量子ドットを含むMRI造影剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 49/06 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
A61K49/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512301
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2021011324
(87)【国際公開番号】W WO2022045748
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0107307
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0111342
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520177275
【氏名又は名称】バイオグラフェン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOGRAPHENE INC.
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ビョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョン ボ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085HH11
4C085KA29
4C085KB02
4C085LL01
4C085LL03
4C085LL05
4C085LL07
4C085LL18
(57)【要約】
本発明は、MRI造影剤として使用可能な炭素-13含有グラフェン量子ドットの製造方法、前記方法で製造された炭素-13含有グラフェン量子ドット、前記炭素-13グラフェン量子ドットを含むMRI造影剤などに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭素-13(
13C)含有糖類を水溶液に添加して糖類溶液を製造する工程と;
b)前記a)工程の糖類溶液にマイクロ波(microwave)を処理して
13C-含有グラフェン量子ドットを合成する工程と;及び
c)前記
13C-含有グラフェン量子ドットを含む磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging)造影剤を製造する工程を含む、磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項2】
前記
13C-含有糖類が、グルコース、果糖、ガラクトース、ラクトース、セルロース、グリコーゲン、でんぷん、アラビノキシラン、スクロース、マルトース及びキチンからなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項3】
前記水溶液が、蒸留水または酸性水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項4】
前記a)工程で、糖類溶液が、0.001~1g/mlの濃度で製造されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項5】
前記b)工程で、マイクロ波が、10~3000ワット(W)の使用電力で1~500分間処理されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項6】
前記
13C-含有グラフェン量子ドットが、平均直径が0.1~100nmであることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項7】
前記磁気共鳴画像造影剤が、肝臓または脾臓を含む細網内皮系に蓄積してそのイメージを得るために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項8】
前記磁気共鳴画像造影剤が、血管、リンパ節もしくは、がん細胞の新生血管形成(angiogenesis)、またはアテローム性プラーク(atherosclerosis plaque)のイメージを得るために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項9】
前記磁気共鳴画像造影剤が、磁気共鳴画像に加えて、ラマンイメージング(Raman imaging)、ポジトロン断層撮影(Positron Emission Tomography;PET)、または蛍光イメージング(Fluorescence Imaging)を含む映像を得るために使用される多重映像造影剤であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項10】
前記磁気共鳴画像造影剤が、T1造影剤であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の磁気共鳴画像造影剤の製造方法で製造された
13C-含有グラフェン量子ドットを有効成分として含む、磁気共鳴画像造影剤。
【請求項12】
前記
13C-含有グラフェン量子ドットが、炭素と酸素から構成されることを特徴とする、請求項11に記載の磁気共鳴画像造影剤。
【請求項13】
請求項11に記載の磁気共鳴画像造影剤を個体に投与する工程を含む、映像モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットを含むMRI造影剤、その製造方法などに関し、より詳細には、MRI造影剤として使用可能な炭素-13含有グラフェン量子ドットの製造方法、前記製造方法を用いて製造された炭素-13含有グラフェン量子ドット、前記グラフェン量子ドットを含むMRI造影剤などに関する。
【背景技術】
【0002】
診断用核磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging;MRI)は、人の内部を観察して病気を診断できる方法の中で最も安全かつ非破壊的な映像化技術の一つであり、人体組織に対する敏感性が高く、他の映像診断技術とは異なり放射能にさらされないという長所などがある。したがって、MRIの応用及び利用率が日々増加している傾向にあり、韓国内では2019年から医療保険の適用も拡大している。
【0003】
MRI造影剤としては、ガドリニウム、マンガン、酸化鉄などの常磁性物質を用いたコロイド溶液が用いられており、特にガドリニウム系の商用化製品が現在最も多く用いられている。しかし、ガドリニウムとマンガンなどは毒性が非常に強いため、これを減少させるために有機物とキレート化して使用されている。しかし、依然として人体内で様々な副作用を誘発することが知られている。一例として、かゆみ、嘔吐、吐き気、発疹などの比較的軽い症状から腎不全、全身性線維化、過敏性ショック、心停止などの重大な副作用も一部発生し、死亡に至る場合もある(大韓民国登録特許公報第10-2020870号)。
【0004】
これにより、人体に無害で造影剤として使用可能な13Cを用いてフラーレン、カーボンナノチューブなどを含む造影剤を開発しようとする試みがあったが、フラーレン、カーボンナノチューブなどは水によく溶けないため、造影剤として使用するためには、水によく溶ける基質と結合しなければ使用できないという限界点がある。また、フラーレンやカーボンナノチューブの場合には、動的核分極(dynamic nuclear polarization;DNP)過程を経ると、13CのMRI信号が103倍強化されるため、造影剤として効率的に使用するためには、動的核分極過程を経なければならないため、実質的に産業化して使用することが難しい。
【0005】
したがって、低い毒性を有し、体外排出が容易で、水溶液に容易に溶解され、動的核分極過程を経ずに感度を著しく高めることができる13Cを用いた新規な造影剤の開発が切実に必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような従来技術上の問題点を解決するために案出されたもので、マイクロ波を用いた炭素-13含有グラフェン量子ドットの製造方法、前記製造方法で製造された炭素-13含有グラフェン量子ドットを有効成分として含む磁気共鳴画像造影剤などを提供することをその目的とする。
【0007】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)炭素-13(13C)含有糖類を水溶液に添加して糖類溶液を製造する工程;b)前記a)工程の糖類溶液にマイクロ波(microwave)を処理して13C-含有グラフェン量子ドットを合成する工程;及びc)前記13C-含有グラフェン量子ドットを含む、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging)造影剤を製造する段階を含む、磁気共鳴画像造影剤の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の一具体例において、前記13C-含有糖類は、好ましくは、グルコース、果糖、ガラクトース、ラクトース、セルロース、グリコーゲン、でんぷん、アラビノキシラン、スクロース、マルトース及びキチンからなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってもよく、さらに好ましくは、グルコースや13Cを含有する糖類であれば、これに制限されるものではない。
【0010】
本発明の他の具体例において、前記水溶液は、好ましくは、蒸留水または酸性水溶液であり、前記酸性水溶液は、乳酸、酢酸、ギ酸、アスコルビン酸、クエン酸、シュウ酸、酪酸などを用いて製造された水溶液を意味するが、有機溶媒または毒性を示す水溶液でなければ、制限されない。
【0011】
本発明のさらに他の具体例において、前記a)段階で糖類溶液は、好ましくは、0.001~1g/mlの濃度で製造されてもよく、より好ましくは、0.01~0.1g/mlの濃度で製造されてもよい。
【0012】
本発明のさらに他の具体例において、前記b)段階でマイクロ波は、好ましくは、10~3000ワット(W)の使用電力で1~500分間処理されてもよく、より好ましくは、100~1000ワットの使用電力で10~300分間処理されてもよく、より好ましくは、500~1000ワットの使用電力で20~100分間処理されてもよく、より好ましくは、700~900ワットの使用電力で20~50分間処理されてもよい。
【0013】
本発明のさらに他の具体例において、前記13C-含有グラフェン量子ドットは、平均直径が好ましくは0.1~100nmであってもよく、より好ましくは、0.1~10nmであってもよい。
【0014】
本発明のさらに他の具体例において、前記磁気共鳴画像造影剤は、肝臓または脾臓を含む細網内皮系に蓄積してそのイメージを得るために使用されることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の具体例において、前記磁気共鳴画像造影剤は、血管、リンパ節、もしくはがん細胞の新生血管形成(angiogenesis)、またはアテローム性プラーク(atherosclerosis plaque)のイメージを得るために使用されることを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに他の具体例において、前記磁気共鳴画像造影剤は、磁気共鳴画像に加えて、ラマンイメージング(Raman imaging)、ポジトロン断層撮影(Positron Emission Tomography;PET)、または蛍光イメージング(Fluorescence Imaging)を含む映像を得るために使用される多重映像造影剤であることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに他の具体例において、前記磁気共鳴画像造影剤は、T1造影剤であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記方法で製造された13C-含有グラフェン量子ドットを有効成分として含む、磁気共鳴画像造影剤を提供する。
【0019】
本発明の一具体例において、前記13C-含有グラフェン量子ドットは、炭素と酸素から構成されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記方法で製造された磁気共鳴画像造影剤を個体に投与する工程を含む、映像モニタリング方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の炭素-13含有グラフェン量子ドットを有効成分として含む磁気共鳴画像造影剤の製造方法は、ワンステップ方式で炭素-13含有グラフェン量子ドットを1時間以内の短時間内に容易に製造できるだけでなく、製造過程中に有機溶媒などの有害物質を使用せずに製造が可能であるため、以後、除去のための後処理工程段階を必要とせず、安定性を高めることができる。また、炭素と酸素、そして水素のみで構成され、毒性が低いだけでなく糖類を用いることにより、水溶液に容易に分散させることができるため、体内投与時に体外に排出が容易であり、腎臓の機能が低下した患者がMRI造影剤の使用時に頻繁に発生する腎原性全身線維症の発症を減少させることができるものと期待されるため、MRI造影剤として様々な患者に安定的に使用できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による炭素-13含有グラフェン量子ドットの合成機作及び合成結果を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による炭素-13含有グラフェン量子ドットをフーリエ変換赤外分光法を用いて特性を分析した結果を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例による炭素-13含有グラフェン量子ドットをラマン分光器を用いて特性を分析した結果を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例による炭素-13含有グラフェン量子ドットをX線光電子分光分析を用いて特性を分析した結果を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例による炭素-13含有グラフェン量子ドットを透過電子顕微鏡を用いて特性を分析した結果を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例による炭素-13含有グラフェン量子ドットの造影効果をファントム画像検査を通じて確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、生体内で低い毒性を有し、溶解性に優れた磁気共鳴画像造影剤を開発するために鋭意研究した結果、糖類にマイクロ波を処理することにより、溶解度は増加し、毒性は減少させた炭素-13含有グラフェン量子ドットを短時間で容易に製造することができ、これにより、本発明の方法で製造された炭素-13含有グラフェン量子ドットを有効成分として含む磁気共鳴画像造影剤を開発した。
【0024】
本明細書において、「グラフェン(graphene)」とは、複数の炭素原子が互いに共有結合で連結されてポリサイクリック芳香族分子を形成したことを意味するもので、前記共有結合で連結された炭素原子は、基本繰り返し単位として6員環を形成するが、5員環及び/又は7員環をさらに含むことも可能である。
【0025】
本明細書において、「グラフェン量子ドット(Graphene quantum dots;GQDs)」とは、ナノサイズの断片を持つグラフェンを意味する。グラフェン量子ドットは生体毒性がほとんどなく、体内投与時に体外に排出されやすいことが知られている。本発明のグラフェン量子ドットは、固体または液体の形態で存在してもよい。溶媒和物は、非水性溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミン及びエチルアセテートを含んでもよく、または結晶質格子に混入される溶媒として水を含んでもよい。水が結晶質格子に混入された溶媒である溶媒和物は、典型的に「水和物」と呼ばれる。本発明は、これらすべての溶媒和物を含む。
【0026】
本明細書において、「炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドット」は、例えば、平均直径0.1~100nm、0.1~90nm、0.1~80nm、0.1~70nm、0.1~60nm、0.1~50nm、0.1~40nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、1~100nm、1~90nm、1~80nm、1~70nm、1~60nm、1~50nm、1~40nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、1~3nm、2~100nm、2~9nm、2~80nm、2~70nm、2~60nm、2~50nm、2~40nm、2~30nm、2~20nm、2~10nm、2~5nm、2~3nmの平均直径を有してもよく、本発明の一具現例によれば、平均直径は2~5nmであってもよいが、これに制限されるものではない。また、1)水酸化基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)など酸素が含まれた官能基を含み、2)ラマンスペクトルでG-ピークを示し、3)炭素と酸素のみから構成された物質であって、炭素-炭素単結合及び炭素-炭素二重結合、そして炭素-酸素の結合から構成され、4)グラフェン固有の結晶性を有することが構造的特徴であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0027】
本明細書において、「糖類」とは、直鎖状または環状の単糖類、オリゴ糖または多糖類を含む。オリゴ糖は、2つ以上の単糖類残基を有する糖類を意味する。単糖類または多糖類であってもよく、糖類に関する一部の例として、単糖類は、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース、キシロース、リボース、アラビノース、リキソース、スクロース、マルトースなどであってもよく、多糖類は、ラクトース、セルロース、グリコーゲン、でんぷん、キチン、オリゴ糖、デキストラン、キトサン、カロース、ラミナリン、クリソラミナリン、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナンであってもよく、本発明の一具現例によれば、ブドウ糖であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0028】
本明細書において、「マイクロ波(Microwave)」とは、ラジオ波と赤外線の間の波長と周波数を有する電磁波をいい、通常、波長が1mmと10cmの間の電磁放射を意味し、周波数帯域が約300MHzから約300GHzの電磁波を総称する。真空中の波長と言えば、約1mから1mm程度の電磁波である。このマイクロ波は、約30GHzから300GHz程度のミリメートル波を含む。マイクロ波のように波長が短いと、光波と類似した性質を持つようになり、直進、反射、吸収の性質を持つ。したがって、通信(電波の伝送)に広範囲に用いられるほか、超短波誘電加熱による食品の加熱、冷凍食品の解凍、食品の簡易殺菌、食品中の害虫の殺菌などに用いられる。マイクロ波の発生には、主にマグネトロンが使用される。
【0029】
本明細書において、「磁気共鳴画像造影剤」は、前記炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットに含まれる13Cの割合が全炭素原子の約5%~約100%であることを含んでもよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットに含まれる13Cの割合は、全炭素原子の約5%~約100%、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、または約10%~約20%であることを含んでもよいが、これに制限されるものではない。また、前記炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットの13C含有割合が高いほど磁気共鳴信号の検出感度が高くなることを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
前記磁気共鳴画像造影剤は、磁気共鳴画像に加えて、ラマンイメージング(Raman imaging)、ポジトロン断層撮影(Positron Emission Tomography;PET)、または蛍光イメージング(Fluorescence Imaging)を含む映像を得るために使用される多重映像造影剤であってもよいが、これに制限されるものではない。磁気共鳴画像術に基づいて他の撮像装置との多重映像化が可能な多重映像造影剤の場合、所望の疾患をより迅速かつ正確に診断し、治療段階に入る前に疾患に対する正確な認識を可能にする。例えば、MRIによる断層映像術とPETによる分子映像術を同時に行うことにより、多重映像を通じて病変に関する様々な情報を得ることができ、互いの短所を補完して病変の状態をより確実に認知できる結果を示すことを含んでもよい。
【0031】
MRI造影剤は一般的に大きく2つに分類され、このうちT1造影剤は、MRI映像において該当部位で明るくなる効果を示すために陽性造影剤とも呼ばれ、T2造影剤は、MRI装備との磁場撹乱を通じて当該部位をさらに暗くして陰性造影剤と呼ばれる。一般的にT2造影剤は、出血、石灰化、血栓、金属の沈着などが存在するときに混同が発生するという短所があり、競争力が低下することが知られている。
【0032】
本発明において、前記磁気共鳴画像(MRI)造影剤は、炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットの外面に生体活性物質が結合したことを含むものであってもよいが、これに制限されるものではない。例えば、生体活性物質は、生体内の免疫活性化によって特定の抗原に対する認識及び選択的結合をする抗体;これに基づいて製造される単一クローン抗体または多重クローン抗体;抗体の可変部位または不変部位; 一部または全部を人為的に変化させたキメリック抗体;ヒト化抗体;特定の塩基配列を有するDNAやRNAに相補的結合が可能なDNAまたはRNAなどの核酸;特定の化学官能基と一定の条件下で水素結合などを通じて結合が可能な非生物学的化学物質などを含む標的指向性物質;各種の疾患部位に治療、予防、または症状緩和効果を有する様々な薬理活性物質;細胞死を誘導する遺伝子または毒性タンパク質などの毒性活性物質;電磁波、磁場、電場、光、または熱に感応する化学物質;蛍光を発生させる蛍光物質;放射線を発生させる同位元素などの生体内活性物質;またはグルコーストレーサーなどが含まれてもよい。
【0033】
また、前記生体活性物質は、すでに関連技術分野で公知のすべての生体内活性物質を含み、より具体的に、関連技術分野で公知の方法で結合できるすべての生体内活性物質を含む。例えば、炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットは、医薬として活性を有する活性成分;または放射線、電場、磁場、各種の電磁波、熱、または光に感応できる活性成分と結合してもよく、腫瘍、特異的タンパク質などを診断及び/又は治療できる物質を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0034】
また、前記生体活性物質と結合した前記炭素-13(13C)含有グラフェン量子ドットは、胃がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、喉頭がん、子宮頸がん、卵巣がん、気管支がん、鼻咽頭がん、膵臓がん、膀胱がん、または結腸がんなどの各種の腫瘍に関連した様々な疾患とアルツハイマー病、パーキンソン病、または狂牛病などの特異的タンパク質に関連した様々な疾患を診断及び/又は治療するために使用できるが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明において、前記生体活性物質は、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる標的指向性物質;細胞自殺誘導遺伝子または毒性タンパク質;蛍光物質; 同位元素; 光、電磁波、放射線、または熱に感応する物質;薬理活性を示す物質;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを含むものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
本明細書において、「個体(individual)」とは、本発明の組成物を投与できる対象をいい、その対象は制限されない。
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
[実施例1.炭素-13含有グラフェン量子ドットの製造]
(1.1.炭素-13含有グラフェン量子ドットの製造)
水溶液に溶解できる炭素-13(
13C)含有グラフェン量子ドット(Graphene quantum dots;GQD)を製造するため、蒸留水に0.001~0.1g/mlの濃度で炭素-13含有グルコース溶液(
13C glucose solution)溶液を添加し、水処理用反応容器でマイクロ波(microwave)処理を行った。マイクロ波は、100~1000ワット(W)の使用電力で10~300分間処理した。マイクロ波処理によりhydrothermal反応が誘導され、bottom-up方式で炭素-13含有グラフェン量子ドットを合成した。炭素-13含有グラフェン量子ドットの合成機作及び合成結果は
図1に示した。
【0039】
図1に示すように、マイクロ波処理を通じてグルコースから水縮合反応が誘導され、炭素-13含有グラフェン量子ドットが製造され、マイクロ波の強度または反応時間を増加させることにより、炭素-13含有グラフェン量子ドットの合成率が増加することを水溶液の色を通じて確認できた。
【0040】
(1.2.炭素-13含有グラフェン量子ドットの特性分析)
実施例1.1と同じ方法で製造された炭素-13含有グラフェン量子ドットの特性を分析した。一次的に、フーリエ変換赤外分光法(Fourier transform infrared spectroscopy;FT-IR)を用いて化学的特性を分析した。その結果を
図2に示した。
【0041】
図2に示すように、炭素-13含有グラフェン量子ドットには酸素(oxygen)が含まれた官能基である水酸化基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)などが存在することを確認し、C=O/C=C結合peakのintensity比は、約0.79であることを確認した。
【0042】
また、ラマン分光器(Raman Spectroscopy、CRM200、Witech)を用いて、ラマンスペクトルを確認した。その結果を
図3に示した。
【0043】
図3に示すように、炭素-12含有グラフェン量子ドット(上段グラフ)と炭素-13含有グラフェン量子ドット(下段グラフ)を比較した結果、分子の振動数が変化してピークシフトが現れ、2つのグラフェン量子ドットですべてGピークが現れることを確認した。以上の結果から、グルコースから黒鉛化(graphitization)されて炭素-13含有グラフェン量子ドットが正常に製造されたことを確認した。
【0044】
次に、X線光電子分光分析(X-ray photoelectron spectroscopy;XPS)を用いて炭素-13含有グラフェン量子ドットの特性を分析した。その結果を
図4に示した。
【0045】
図4に示すように、炭素-13含有グラフェン量子ドットは、炭素と酸素のみで構成された物質で、炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合、及び炭素-酸素の結合から構成されていることを確認した。
【0046】
また、透過電子顕微鏡(transmission electron microscopy;TEM)を用いて炭素-13グラフェン量子ドットを確認した。その結果を
図5に示した。
【0047】
図5に示すように、炭素-13含有グラフェン量子ドットは、約2~5nmの直径を有する均一な円形状であることを確認した。
【0048】
[実施例2.炭素-13含有グラフェン量子ドットの造影効果の確認]
実施例1.1と同じ方法で製造された炭素-13含有グラフェン量子ドットの造影効果を確認するため、様々な測定モードでそれぞれ異なる濃度の炭素-13含有グラフェン量子ドットを用いてファントム画像検査を行った。T
1測定は、様々なT
1(inversion time)によるinversion回復(inversion recovery)を使用して確認し、T
2測定は、様々なスピンエコー測定のためのCPMG(Carr Purcell Meiboon Gill)パルスシーケンスを適用して測定した。その結果を
図6に示した。
【0049】
図6に示すように、T1 RARE INV RECモードで溶液内に含まれている炭素-13含有グラフェン量子ドットの濃度が増加することにより、造影効果が強く現れることを確認した。しかし、T2 Turbo RAREモードでは、濃度による有意性のある差を示さないことを確認した。以上の結果から、本発明の炭素-13含有グラフェン量子ドットは、T1 MRI造影剤として使用できることが確認できた。
【0050】
以上の結果から、本発明のマイクロ波を用いた炭素-13含有グラフェン量子ドットの製造方法を通じて、炭素-13含有グラフェン量子ドットが正常に製造されたことを確認し、本発明の方法を通じて製造された炭素-13含有グラフェン量子ドットは、T1 MRI造影剤として使用できることを確認した。また、本発明のマイクロ波を用いた製造方法は、従来の熱酸化切断法(thermo-oxidative cutting method)またはボトムアップ方式と比較して、製造された炭素-13含有グラフェン量子ドットの大きさが均一で不純物が減少したことを確認した。また、マイクロ波を用いて合成することにより、反応物の種類及び溶媒によってカルボキシル基などの官能基の比率を調節することが容易である。そして、ワンステップ方式で炭素-13含有グラフェン量子ドットを短時間で容易に製造できるだけでなく、製造過程中に有機溶媒などの有害物質を使用せずに製造が可能であるため、以後、除去のための後処理工程段階を必要とせず、これにより製造単価を著しく減少させることができるので、炭素-13含有グラフェン量子ドットの大量生産及び産業化を可能にすることができる。また、本発明の炭素-13含有グラフェン量子ドットは、炭素と酸素のみで構成され、毒性が低いだけでなく、糖類を用いて製造されることにより水溶液に容易に分散させることができるため、MRI造影剤として効果的に使用できるものと期待される。
【0051】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解できるだろう。したがって、以上で述べた実施例は、すべての点で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のマイクロ波を用いた磁気共鳴画像造影剤の製造方法は、ワンステップ方式で炭素-13含有グラフェン量子ドットを短時間で容易に製造できるだけでなく、製造過程中に有機溶媒などの有害物質を使用せずに製造が可能であるため、以降は除去のための後処理工程段階を必要とせず、これにより製造単価を顕著に減少させることができる。したがって、炭素-13含有グラフェン量子ドットを有効成分として含む磁気共鳴画像造影剤の大量生産及び産業化を可能にすることができる。
【国際調査報告】