(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】マルチキャビティ成形型システムおよびマルチキャビティ成形型システムにおいてセルロース製品を成形するための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/00 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
B29C33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513350
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2021073177
(87)【国際公開番号】W WO2022043225
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518330431
【氏名又は名称】パルパック アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】PulPac AB
【住所又は居所原語表記】Amalia Jonssons gata 16,421 31 Vastra Frolunda, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーヴェ ラルソン
(72)【発明者】
【氏名】オレ ヘーグブロム
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA01
4F202AC03
4F202AH52
4F202AH55
4F202AH57
4F202AH58
4F202CA09
4F202CA27
4F202CB01
4F202CK89
4F202CL02
4F202CL12
(57)【要約】
空気成形されたセルロースブランク構造体から複数の個別の3次元的なセルロース製品を成形するためのマルチキャビティ成形型システムであって、この成形型システムは、セルロース製品の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分と第2の型部分とを有している。第1の型部分は、複数の第1の成形エレメントを有していて、第2の型部分は、対応する複数の第2の成形エレメントを有しており、第2の成形エレメントは、基部構造体に対して相対的に可動に配置されている。このシステムは、製品の成形中に、各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、ブランクのための複数のキャビティを形成する。各第2の成形エレメントは、基部構造体に配置された加圧部材と相互作用するように配置されており、加圧部材は、製品の成形中に、各キャビティ内にセルロースブランクへの圧力を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気成形されたセルロースブランク構造体(2)から複数の個別の3次元的なセルロース製品(1)を成形するためのマルチキャビティ成形型システム(S)であって、前記成形型システム(S)は、前記セルロース製品(1)の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分(3)と第2の型部分(4)とを有しており、
前記第1の型部分(3)は、複数の第1の成形エレメント(3a)を有していて、前記第2の型部分(4)は、対応する複数の第2の成形エレメント(4a)を有しており、前記第2の成形エレメント(4a)は、前記第2の型部分(4)の基部構造体(4b)に対して相対的に可動に配置されており、
前記成形型システム(S)は、前記セルロース製品(1)の成形中に、前記各第1の成形エレメント(3a)と、対応する前記第2の成形エレメント(4a)との間に、前記セルロースブランク構造体(2)のための複数の成形キャビティ(5)を形成するように構成されており、
前記各第2の成形エレメント(4a)は、前記基部構造体(4b)に配置された加圧部材(6)と相互作用するように配置されており、前記加圧部材(6)は、前記セルロース製品(1)の成形中に、前記各成形キャビティ(5)内に前記セルロースブランク構造体(2)への成形圧(P
F)を生成するように構成されている、
マルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項2】
前記第1の型部分(3)と前記第2の型部分(4)とは、互いに相対的に可動に配置されている、請求項1記載のマルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項3】
前記成形型システム(S)は、前記基部構造体(4b)に対して相対的に前記各第2の成形エレメント(4a)が移動するときに、前記加圧部材(6)からの相互作用により前記成形圧(P
F)を生成するように構成されている、請求項1または2記載のマルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項4】
前記成形型システム(S)は、前記加圧部材(6)からの相互作用によって、前記セルロース製品(1)の成形中に前記各成形キャビティ(5)内で少なくとも1MPaの、好ましくは4~20MPaの範囲にある成形圧レベル(P
FL)を生成するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のマルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項5】
前記加圧部材(6)は、前記基部構造体(4b)と前記複数の第2の成形エレメント(4a)のそれぞれとの間に配置された複数のばねユニット(6a)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のマルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項6】
前記加圧部材(6)は、液圧ユニット(6b)を有しており、前記液圧ユニット(6b)は、前記基部構造体(4b)と前記複数の第2の成形エレメント(4a)のそれぞれとの間に配置された複数の圧力チャンバ(6c)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のマルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項7】
前記成形型システム(S)は、前記セルロース製品(1)の成形中、前記セルロースブランク構造体(2)を、100℃~300℃の範囲の成形温度T
Fまで加熱するように構成された加熱ユニット(7)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のマルチキャビティ成形型システム(S)。
【請求項8】
マルチキャビティ成形型システム(S)において、空気成形されたセルロースブランク構造体(2)から複数の個別の3次元的なセルロース製品(1)を成形するための方法であって、
前記成形型システム(S)は、前記セルロース製品(1)の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分(3)と第2の型部分(4)とを有しており、前記第1の型部分(3)は、複数の第1の成形エレメント(3a)を有していて、前記第2の型部分(4)は、対応する複数の第2の成形エレメント(4a)を有しており、前記第2の成形エレメント(4a)は、前記第2の型部分(4)の基部構造体(4b)に対して相対的に可動に配置されており、前記各第2の成形エレメント(4a)は、前記基部構造体(4b)に配置された加圧部材(6)と相互作用するように配置されており、当該方法は以下のステップ、すなわち、
前記空気成形されたセルロースブランク構造体(2)を提供するステップであって、前記セルロースブランク構造体(2)は、セルロース繊維から空気成形されているステップ、および前記セルロースブランク構造体(2)を、前記第1の型部分(3)と前記第2の型部分(4)との間に配置するステップ;
前記各第1の成形エレメント(3a)と、対応する前記第2の成形エレメント(4a)との間に、前記セルロースブランク構造体(2)のための複数の成形キャビティ(5)を形成するステップ;
前記セルロース製品(1)の成形中に、前記加圧部材(6)によって前記各成形キャビティ(5)内に前記セルロースブランク構造体(2)への成形圧(P
F)を生成するステップ、
を有している方法。
【請求項9】
当該方法は、前記第1の型部分(3)と前記第2の型部分(4)との間に前記セルロースブランク構造体(2)を配置した後、前記セルロースブランク構造体(2)のための前記複数の成形キャビティ(5)を形成するために、前記第1の型部分(3)と前記第2の型部分(4)とを互いに向かう方向で動かすステップをさらに有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
当該方法は、前記基部構造体(4b)に対して相対的に前記各第2の成形エレメント(4a)が移動するときに、前記加圧部材(6)からの相互作用により前記成形圧(P
F)を生成するステップをさらに有する、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
当該方法は、前記加圧部材(6)からの相互作用により、前記各成形キャビティ(5)内で、少なくとも1MPaの、好ましくは4~20MPaの範囲の成形圧レベル(P
FL)を生成するステップをさらに有する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記加圧部材(6)は、前記基部構造体(4b)と前記複数の第2の成形エレメント(4a)のそれぞれとの間に配置された複数のばねユニット(6a)を有しており、前記ばねユニット(6a)は、前記各成形キャビティ(5)内に前記セルロースブランク構造体(2)への前記成形圧(P
F)を生成している、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記加圧部材(6)は、液圧ユニット(6b)を有しており、前記液圧ユニット(6b)は、前記基部構造体(4b)と前記複数の第2の成形エレメント(4a)のそれぞれとの間に配置された複数の圧力チャンバ(6c)を有しており、前記液圧ユニット(6b)は、前記各成形キャビティ(5)内に前記セルロースブランク構造体(2)への前記成形圧(P
F)を生成している、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記成形型システム(S)は加熱ユニット(7)を有しており、当該方法は、前記セルロース製品(1)の成形中、前記セルロースブランク構造体(2)を、100℃~300℃の範囲の成形温度(T
F)まで加熱するステップをさらに有している、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気成形されたセルロースブランク構造体から複数の個別の3次元的なセルロース製品を成形するための成形型システムに関する。この成形型システムは、セルロース製品の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分と第2の型部分とを有している。第1の型部分は、第1の成形エレメントを有していて、第2の型部分は、対応する第2の成形エレメントを有している。本開示はさらに、成形型システムにおいて、複数の3次元的なセルロース製品を成形するための方法に関する。
【0002】
背景技術
セルロース繊維は、製品を製造するための、または製品を製作するための原料としてしばしば、使用される。セルロース繊維から成形される製品は、持続可能な製品を有する必要性がある多くの様々な状況で使用することができる。幅広い範囲の製品をセルロース繊維から製造することができ、いくつかの例は、使い捨て可能な皿およびカップ、カトラリー、蓋、ボトルキャップ、コーヒーポッド、および包装材料である。
【0003】
成形型は、セルロース繊維を含む原料からセルロース製品を製作する際に一般的に使用されており、従来、セルロース製品は、湿式成形技術によって製造されてきた。セルロース繊維製品の湿式成形に一般的に使用される材料は、湿式成形パルプである。湿式成形パルプはバイオマテリアルから製造されており、使用後にはリサイクル可能であるので、湿式成形パルプには、持続可能な包装材料として見なされるという利点がある。その結果、湿式成形パルプは、様々な用途に対して人気が急速に高まっている。湿式成形パルプ物品は、一般に、吸引成形型を、セルロース繊維を含む液体または半液体のパルプ懸濁液またはスラリーに浸漬することによって成形され、吸引が適用されると、パルプの塊は、成形型への繊維堆積によって所望の製品の形状で形成される。湿式成形技術にはいずれも、湿った成形製品を乾燥させる必要があり、このような乾燥は生産において時間とエネルギを極めて消費する部分である。セルロース製品の審美性、化学的および機械的特性への要求は高まっており、そして湿式成形されるセルロース製品の特性により、機械的強度、柔軟性、材料厚さの自由度、および化学的特性には制限がある。また、湿式成形プロセスでは、製品の機械的特性を高精度で制御することも困難である。
【0004】
セルロース製品の製造分野における1つの開発は、湿式成形技術を使用することのないセルロース繊維の成形である。液体または半液体のパルプ懸濁液またはスラリーからセルロース製品を成形する代わりに、空気成形されたセルロースブランク構造体が使用される。空気成形されたセルロースブランク構造体を成形型に挿入し、セルロース製品の成形中に、セルロースブランク構造体には、例えば、標準的なプレス装置を使用することによって、高い成形圧および高い成形温度がかけられる。空気成形されたセルロースブランク構造体からセルロース製品を成形するために使用される成形システムは、セルロース製品の成形が、比較的長いサイクル時間で、成形システム内で行われるので、生産能力に限界がある。セルロース製品を成形する際に必要な高圧は、単一の圧力成形ステップで成形することのできる製品数を制限しており、高価な高精度のプレス装置を必要とする。単一の加圧成形ステップで2つ以上の製品を成形する際の1つの共通課題は、空気成形されたセルロースブランク構造体上に均一な成形圧を生成することである。均一な成形圧は、高品質のセルロース製品を得るために望ましい。
【0005】
したがって、空気成形されたセルロースブランク構造体からセルロース製品を成形するための改善された方法およびシステムの必要性がある。
【0006】
概要
本開示の課題は、上述した問題点を回避するようなマルチキャビティ成形型システムおよびマルチキャビティ成形型システムにおいて複数の個別の3次元的なセルロース製品を成形するための方法を提供することである。この課題は、独立請求項の特徴により少なくとも部分的に解決される。従属請求項は、このシステムおよび方法のさらなる改良を含んでいる。
【0007】
本開示は、空気成形されたセルロースブランク構造体から複数の個別の3次元的なセルロース製品を成形するためのマルチキャビティ成形型システムに関する。この成形型システムは、セルロース製品の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分と第2の型部分とを有している。第1の型部分は、複数の第1の成形エレメントを有していて、第2の型部分は、対応する複数の第2の成形エレメントを有している。第2の成形エレメントは、第2の型部分の基部構造体に対して相対的に可動に配置されている。成形型システムは、セルロース製品の成形中に、各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティを形成するように構成されている。各第2の成形エレメントは、基部構造体に配置された加圧部材と相互作用するように配置されており、加圧部材は、セルロース製品の成形中に、各成形キャビティ内にセルロースブランク構造体への成形圧を生成するように構成されている。
【0008】
これらの特徴による利点は、1つの共通の成形ステップで複数の個別の3次元的なセルロース製品の成形中に、基部構造体に配置された加圧部材が、すべての成形キャビティ内にセルロースブランク構造体への成形圧を生成することである。すべてのキャビティ内の成形圧によっては、1つの共通の成形ステップで1度に1つだけの製品を成形する際には、生産能力の制限なしにセルロース製品を高品質に成形することができる。使用される成形型システムが比較的長いサイクル時間を有している場合であっても、複数の成形エレメントにより生産能力は高められている。サイクル時間は、成形型システムで製造されるセルロース製品の種類に応じて変化させられてよい。セルロース製品を成形する際の均一な圧力分布のために、成形圧はすべての成形キャビティにおいて適切に等しいまたは実質的に等しい。加圧部材を有する型システムにより、成形プロセス中に生成される均一な成形圧により、結果として、成形されたセルロース製品間に品質のばらつきのない高品質のセルロース製品が得られる。代替的に、成形圧は、成形キャビティ間で異なっていてもよく、かつ加圧部材は、2つ以上の異なる圧力レベルを成形キャビティに分配するように構成されていてもよく、これは、異なる種類のセルロース製品が同時にマルチキャビティ成形型システムにおいて製造される場合に有用であり得る。
【0009】
本開示の1つの態様によれば、第1の型部分と第2の型部分とは、互いに相対的に可動に配置されている。型部分の可動の配置により、各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティを形成するための効率的な方法が提供されている。また、型部分の移動は、第1の成形エレメントと第2の成形エレメントとの間の成形キャビティ内にセルロースブランク構造体を位置決めするためにも利用することができる。
【0010】
本開示の別の態様によれば、成形型システムは、基部構造体に対して相対的に各第2の成形エレメントが移動するときに、加圧部材からの相互作用により成形圧を生成するように構成されている。各第2の成形エレメントの可動の配置は、成形型システム内に成形圧を、加圧部材からの相互作用と共に効率的に生成しており、この場合、加圧部材は、適切な圧力レベルを、各第2の成形エレメントの移動と共に生成している。
【0011】
本開示の1つの態様によれば、成形型システムは、加圧部材からの相互作用によって、セルロース製品の成形中に各成形キャビティ内で少なくとも1MPaの、好ましくは4~20MPaの範囲にある成形圧レベルを生成するように構成されている。これらの圧力レベルは、各成形ステップで複数のセルロース製品の効率的な成形を確立するために利用され、この場合、これらのセルロース製品は、加圧部材と各第2の成形エレメントとの間の相互作用により高品質で製造され得る。
【0012】
本開示の別の態様によれば、加圧部材は、基部構造体と複数の第2の成形エレメントのそれぞれとの間に配置された複数のばねユニットを有している。複数のばねユニットは、それぞれ可動に配置された第2の成形エレメントとの相互作用による加圧部材としての使用に適している。セルロース製品の成形中に第1の型部分と第2の型部分とが互いに協働する場合に、そして各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティが形成される場合に、セルロースブランク構造体にかけられる決定された成形圧を生成するために加圧部材を利用することができる。基部構造体に対して相対的な各第2の型部分の可動の配置は、対応して相互作用するばねと共に成形圧を制御している。
【0013】
本開示のさらなる態様によれば、加圧部材は液圧ユニットを有している。液圧ユニットは、基部構造体と複数の第2の成形エレメントのそれぞれとの間に配置された複数の圧力チャンバを有している。液圧ユニットは、それぞれ可動に配置された第2の成形エレメントとの相互作用による加圧部材としての使用に適している。セルロース製品の成形中に第1の型部分と第2の型部分とが互いに協働する場合に、そして各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティが形成される場合に、セルロースブランク構造体にかけられる成形圧を生成するために液圧ユニットを利用することができる。液圧ユニットは、各成形キャビティ内に成形圧を生成するために各第2の型部分に液圧をかけるために利用される。液圧により第2の成形エレメントが第1の成形エレメントに向かう方向で移動させられると、成形圧が、正確かつ効率的な方法で生成される。
【0014】
本開示の1つの態様によれば、成形型システムは、セルロース製品の成形中、セルロースブランク構造体を、100℃~300℃の範囲の成形温度まで加熱するために構成された加熱ユニットを有している。加熱ユニットは、セルロースブランク構造体を所望の成形温度まで加熱し、この加熱ユニットは、成形プロセス中にセルロースブランク構造体を加熱するために、例えば型部分内に配置されていてよい。
【0015】
本開示はさらに、マルチキャビティ成形型システム内で空気成形されたセルロースブランク構造体から複数の個別の3次元的なセルロース製品を成形するための方法に関する。この成形型システムは、セルロース製品の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分と第2の型部分とを有している。第1の型部分は、複数の第1の成形エレメントを有していて、第2の型部分は、対応する複数の第2の成形エレメントを有している。第2の成形エレメントは、第2の型部分の基部構造体に対して相対的に可動に配置されている。各第2の成形エレメントは、基部構造体に配置された加圧部材と相互作用するように配置されている。当該方法は、空気成形されたセルロースブランク構造体を提供するステップであって、セルロースブランク構造体は、セルロース繊維から空気成形されているステップ、およびセルロースブランク構造体を、第1の型部分と第2の型部分との間に配置するステップ;各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティを形成するステップ;セルロース製品の成形中に、加圧部材によって各成形キャビティ内にセルロースブランク構造体への成形圧を生成するステップ、を有している。
【0016】
この方法による利点は、複数の個別の3次元的なセルロース製品の成形中に、加圧部材が、すべての成形キャビティ内にセルロースブランク構造体への成形圧を生成することである。すべてのキャビティ内の成形圧によって、安価かつ精密なプレス装置において1つの共通の成形ステップで、セルロース製品を高品質かつ高い生産能力で成形することができる。セルロース製品を成形する際の均一な圧力分布のために、成形圧はすべての成形キャビティにおいて適切に等しいまたは実質的に等しい。加圧部材を有する型システムにより、成形プロセス中に生成される均一な成形圧により、結果として、成形されたセルロース製品間に品質のばらつきのない高品質のセルロース製品が得られる。代替的に、成形圧は、成形キャビティ間で異なっていてもよく、かつ加圧部材は、2つ以上の異なる圧力レベルを成形キャビティに分配するように構成されていてもよく、これは、異なる種類のセルロース製品が同時にマルチキャビティ成形型システムにおいて製造される場合に有用であり得る。
【0017】
本開示の1つの態様によれば、当該方法は、第1の型部分と第2の型部分との間にセルロースブランク構造体を配置した後、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティを形成するために、第1の型部分と第2の型部分とを互いに向かう方向で動かすステップをさらに有する。型部分の移動により、各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティを形成するための効率的な方法が提供されている。型部分の移動により、第1の成形エレメントと第2の成形エレメントとの間の成形キャビティ内へのセルロースブランク構造体の位置決めが行われる。
【0018】
本開示の別の態様によれば、当該方法は、基部構造体に対して相対的に各第2の成形エレメントが移動するときに、加圧部材からの相互作用により成形圧を生成するステップをさらに有する。各第2の成形エレメントの移動は、加圧部材からの相互作用と共に、成形型システム内に成形圧を効率的に生成している。加圧部材は、各第2の成形エレメントの移動と共に適切な圧力レベルを生成している。
【0019】
本開示の1つの態様によれば、当該方法は、加圧部材からの相互作用により、各成形キャビティ内で、少なくとも1MPaの、好ましくは4~20MPaの範囲の成形圧レベルを生成するステップをさらに有する。これらの圧力レベルは、各成形ステップで複数のセルロース製品の効率的な成形を確立するために利用され、この場合、これらのセルロース製品は、加圧部材と各第2の成形エレメントとの間の相互作用により高品質で製造され得る。
【0020】
本開示の別の態様によれば、加圧部材は、基部構造体と複数の第2の成形エレメントのそれぞれとの間に配置された複数のばねユニットを有している。ばねユニットは、各成形キャビティ内にセルロースブランク構造体への成形圧を生成している。複数のばねユニットは、それぞれ可動に配置された第2の成形エレメントとの相互作用により、各成形キャビティ内に成形圧を生成するために適している。セルロース製品の成形中に第1の型部分と第2の型部分とが互いに協働する場合に、そして各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティが形成される場合に、セルロースブランク構造体にかけられる成形圧を生成するために加圧部材を利用することができる。対応して相互作用するばねユニットと共に、基部構造体に対して相対的な各第2の型部分の可動の配置により、成形圧が制御されている。各ばねユニットは、各第2の成形エレメントの可動の配置を可能にするために、成形型システムの剛性を低下させている。これにより、機械式または液圧式のプレスを使用して、比較的低い幾何学的な精度で、型部分のプレス方向に第1の型部分を動かすことができる。加圧部材は、複数のキャビティ、および比較的許容誤差の低い比較的安価なプレス装置を使用する場合であっても、成形プロセスをより堅牢にする。
【0021】
本開示のさらなる態様によれば、加圧部材は液圧ユニットを有している。液圧ユニットは、基部構造体と複数の第2の成形エレメントのそれぞれとの間に配置された複数の圧力チャンバを有している。液圧ユニットは、各成形キャビティ内にセルロースブランク構造体への成形圧を生成している。液圧ユニットは、それぞれ可動に配置された第2の成形エレメントとの相互作用により、各成形キャビティ内に成形圧を生成するために適している。セルロース製品の成形中に第1の型部分と第2の型部分とが互いに協働する場合に、そして各第1の成形エレメントと、対応する第2の成形エレメントとの間に、セルロースブランク構造体のための複数の成形キャビティが形成される場合に、液圧ユニットが、セルロースブランク構造体にかけられる成形圧を生成している。液圧ユニットは、各成形キャビティ内に成形圧を生成するために、各第2の型部分に液圧をかけるために使用される。液圧により第2の成形エレメントが第1の成形エレメントに向かう方向で移動させられると、成形圧が、正確かつ効率的な方法で生成される。液圧ユニットを使用する場合、第1の型部分の可動の配置の必要な許容誤差は、ばねを使用する場合と比較して、著しく低い。第1の型部分の動きは、例えば、成形キャビティを形成するためだけに使用される機械式または液圧式のプレスにより生成することができる。液圧ユニットにより、第1の型部分を移動させるための極めて単純な装置、例えば熱可塑性樹脂の射出成形において従来使用されているトグルタイプの機械的なクランプユニットを使用することができる。標準的なプレス装置と射出成形のためのクランプユニットとの間のコストの差は、10倍以上高い場合もあり、同じ力を生成するならばクランプユニットが有利である。さらに、クランプユニットと液圧部材とを使用する成形型システムのサイクル時間は、標準的なプレス装置を使用する場合と比較して半分にすることがまたはさらに短縮することができる。
【0022】
本開示の1つの態様によれば、成形型システムは加熱ユニットを有している。当該方法はさらに、セルロース製品の成形中、セルロースブランク構造体を、100℃~300℃の範囲の成形温度まで加熱するステップを有している。加熱ユニットは、セルロースブランク構造体を所望の成形温度まで加熱し、この加熱ユニットは、成形プロセス中にセルロースブランク構造体を加熱するために、例えば型部分内に配置されていてよい。
【0023】
本開示を、添付の図面を参照しながら以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】本開示によるマルチキャビティ成形型システムを概略的に示す側断面図である。
【
図1b】本開示によるマルチキャビティ成形型システムを概略的に示す側断面図である。
【
図1c】本開示によるマルチキャビティ成形型システムを概略的に示す側断面図である。
【
図1d】本開示によるマルチキャビティ成形型システムを概略的に示す側断面図である。
【
図1e】本開示によるマルチキャビティ成形型システムを概略的に示す側断面図である。
【
図1f】本開示によるマルチキャビティ成形型システムを概略的に示す側断面図である。
【
図2a】本開示によるマルチキャビティ成形型システムの代替的な実施形態を概略的に示す側断面図である。
【
図2b】本開示によるマルチキャビティ成形型システムの代替的な実施形態を概略的に示す側断面図である。
【
図2c】本開示によるマルチキャビティ成形型システムの代替的な実施形態を概略的に示す側断面図である。
【
図3】本開示によるマルチキャビティ成形型システムの製造ユニットレイアウトを概略的に示す側面図である。
【
図4】本開示によるマルチキャビティ成形型システムの製造ユニットレイアウトの代替的な実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図5】本開示によるマルチキャビティ成形型システムの第1の型部分と第2の型部分とを概略的に示す斜視図である。
【0025】
例示的な実施形態の説明
本開示の様々な態様を、添付の図面につき以下に説明するが、この態様は、説明するためのものであって本開示を限定するものではなく、その際、同様の名称は同様の要素を指し、説明された態様の変化態様は、具体的に示された実施形態に限定されず、本開示の他の変化態様に適用可能である。
【0026】
当業者であれば、本明細書で説明するステップ、サービスおよび機能、または本明細書で説明するステップ、サービスおよび機能の一部は、個々のハードウェア回路を使用することによって、プログラミングされたマイクロプロセッサまたは汎用コンピュータと共に機能するソフトウェアを使用することによって、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)を使用することによって、かつ/または1つ以上のディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を使用することによって実行され得ることを理解するであろう。また、本開示が方法に関して説明される場合、本開示は、1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のプロセッサに結合された1つ以上のメモリにおいて実施されてもよく、この場合、1つ以上のメモリは、1つ以上のプロセッサによって実行される際に、本明細書に開示されたステップ、サービスおよび機能を実行する1つ以上のプログラムを格納することを理解されたい。
【0027】
本開示は、空気成形された1つのセルロースブランク構造体2から複数の個別の3次元的なセルロース製品1を成形するためのマルチキャビティ成形型システムSに関する。
図1a~
図1fは、マルチキャビティ成形型システムSの第1の例示的な実施形態を概略的に示している。マルチキャビティ成形型システムSの代替的な例示的な実施形態は、
図2a~
図2cに示されている。マルチキャビティ成形型システムSの概略的な製造ユニットのレイアウトは、
図3および
図4に示されており、マルチキャビティ成形システムSの第1の型部分3および第2の型部分4は、
図5において斜視図で示されている。
【0028】
セルロースブランク構造体2とは、本開示によれば、セルロース繊維から製造された繊維ウェブ構造体を意味する。セルロースブランク構造体2の空気成形とは、セルロース繊維を空気成形してセルロースブランク構造体を製造する乾式成形プロセスにおけるセルロースブランク構造体の成形を意味する。空気成形プロセスでセルロースブランク構造体2を成形する場合、搬送媒体としての空気によってセルロース繊維を搬送して繊維ブランク構造体2となるように成形する。これは、紙または繊維構造体を成形する際にセルロース繊維の搬送媒体として水が使用される、通常の製紙プロセスまたは従来の湿式成形プロセスとは異なる。空気成形プロセスでは、セルロース製品の特性を変化させるために、少量の水または他の物質が、必要に応じてセルロース繊維に添加されてよいが、成形プロセスではなお、空気が搬送媒体として使用される。セルロースブランク構造体2は、適切であるならば、空気成形セルロースブランク構造体2を取り囲む雰囲気中の周囲湿度に主に対応する乾燥度を有していてよい。代替的に、セルロースブランク構造体2の乾燥度は、セルロース製品1を成形する際に適切な乾燥度レベルを有するように制御することができる。
【0029】
セルロースブランク構造体2は、従来の空気成形プロセスでセルロース繊維から成形されてよく、様々な方法で構成され得る。例えば、セルロースブランク構造体2は、セルロース製品1の所望の特性に応じて、繊維が同じ起源であるかまたは代替的に2種以上のセルロース繊維の混合物を含む組成を有していてよい。セルロースブランク構造体2に使用されるセルロース繊維は、セルロース製品1の成形プロセス中に水素結合によって互いに強く結合される。セルロース繊維は、他の物質または化合物と一定量まで混合されてよい。セルロース繊維とは、天然セルロース繊維または製造されたセルロース繊維などの、あらゆるタイプのセルロース繊維を意味する。
【0030】
セルロースブランク構造体2は、単層構造または複層構造を有していてよい。単層構造を有するセルロースブランク構造体2は、セルロース繊維を含む1つの層から形成されたセルロースブランク構造体のことを言う。複層構造を有するセルロースブランク構造体2は、セルロース繊維を含む2層以上から形成されたセルロースブランク構造体のことを言い、この場合、これらの層は、同じもしくは異なる組成または構造を有していてよい。セルロースブランク構造体2は、セルロース繊維を含む強化層を有していてよく、この強化層は、セルロースブランク構造体2の他の層のための支持層として配置されている。強化層は、セルロースブランク構造体2の他の層よりも高い引張強度を有していてよい。これは、セルロースブランク構造体2の1つ以上の層が、低い引張強度の組成を有する場合に、セルロース製品1の成形中にセルロースブランク構造体2が破壊されることを避けるために有効である。より高い引張強度を有する強化層は、このようにして、セルロースブランク構造体2の他の層のための支持構造体として機能する。強化層は例えば、セルロース繊維を含む組織層、セルロース繊維を有するエアレイド構造体、またはその他の適切な層構造体であってよい。
【0031】
セルロースブランク構造体2は、ふわふわとした空気のような構造体であり、この構造体を形成するセルロース繊維は、互いに対して相対的に比較的ルーズに配置されている。ふわふわとしたセルロースブランク構造体2は、セルロース製品1の効率的な成形のために使用され、成形プロセス中に、セルロース繊維が効率的にセルロース製品1を成形することを可能にする。
【0032】
図1a~
図1f、
図2a~
図2c、および
図3~
図5に示すように、マルチキャビティ成形型システムSは、セルロース製品1の成形中に互いに協働するように配置された第1の型部分3と第2の型部分4とを備える。
【0033】
第1の型部分3と第2の型部分4とは、互いに相対的に可動に配置されていて、第1の型部分3と第2の型部分4とは、プレス方向D
Pで互いに相対的に可動であるように構成されている。
図1a~
図1f、
図2a~
図2cに示した実施形態では、第2の型部分4は定置であり、第1の型部分3は、プレス方向D
Pで第2の型部分4に対して相対的に可動に配置されている。
図1aおよび
図2aに両方向矢印で示されたように、第1の型部分3は、プレス方向D
Pで延在する軸線に沿った線形運動で、第2の型部分4に向かっておよび第2の型部分4から離れるように両方向で可動に構成されている。代替的な実施形態では、第1の型部分3が定置であって、第2の型部分4が第1の型部分3に対して相対的に可動に配置されていてよく、または両型部分ともが、互いに対して相対的に可動に配置されていてもよい。
【0034】
本開示によるすべての実施形態について、プレス方向DPでの移動という表現は、プレス方向DPで延在する軸線に沿った移動を含み、この移動は、この軸線に沿って逆方向で行われてもよいことを理解されたい。この表現はさらに、すべての実施形態について、型部分の線形の移動および非線形の移動の両者を含んでおり、この場合、成形中の移動の結果は、軸線上の2つの位置の間における型部分の再配置であり、この場合、軸線はプレス方向DPで延在している。
【0035】
図1a~
図1f、
図2a~
図2c、および
図3~
図5にさらに示すように、第1の型部分3は、複数の第1の成形エレメント3aを有していて、第2の型部分4は、対応する複数の第2の成形エレメント4aを有している。第2の成形エレメント4aは、第2の型部分4の基部構造体4bに対して相対的に可動に配置されている。第1の成形エレメント3aは、例えば、
図1a~
図1fに示された実施形態に示されたように第1の型部分3に配置された切欠きまたは凹部として配置されていてよく、または代替的に、
図2a~
図2cに示された代替的な実施形態に示されたように第1の型部分3から延びる突出部または延長部として配置されていてもよい。
図1a~
図1fに示すような切欠きまたは凹部、または代替的に
図2a~
図2cに示すような突出部または延長部は、セルロース製品1の成形中に、第2の型部分4の対応する第2の成形エレメント4aと協働するように配置されている。第2の成形エレメント4aは、例えば、
図1a~
図1fおよび
図2a~
図2cに示した実施形態に示されたように、第1の成形エレメント3aと協働するのに適した形状および構成で、基部構造体4bから延びていてよい。第2の成形エレメント4aは、例えば、基部構造体4bに対して相対的にプレス方向D
Pでスライド可能に配置されていてよく、基部構造体4bには、第2の成形エレメント4aを収容するための適切な開口または同様の構造が設けられていてよい。第1の成形エレメント3aおよび第2の成形エレメント4aは、対応するサイズおよび形状を有していてよく、このサイズおよび形状は、マルチキャビティ成形型システムSにおいて成形されるセルロース製品1のサイズおよび形状に応じて変化させることができる。第1の型部分3および第2の型部分4は、例えば、鋼、アルミニウム、その他の金属または金属材料などの任意の適切な材料、あるいは代替的に複合材料または異なる材料の組合せから形成されていてよい。図示した実施形態では、第1の型部分3は、3つの第1の成形エレメント3aを有していて、第2の型部分4は、対応する3つの第2の成形エレメント4aを有している。しかしながら、第1および第2の型部分は、マルチキャビティ成形型システムSの設計および構造に応じて、任意の適切な数の協働する成形エレメントを含んでいてよい。複数の第1の成形エレメント3aおよび対応する複数の第2の成形エレメント4aとは、2つ以上の第1の成形エレメント3aおよび2つ以上の対応する第2の成形エレメント4aを意味する。
【0036】
マルチキャビティ成形型システムSは、セルロース製品1の成形中に、各第1の成形エレメント3aと対応する第2の成形エレメント4aとの間に、セルロースブランク構造体2のための複数の成形キャビティ5を形成するために構成されている。成形キャビティ5は、セルロースブランク構造体2が第1の型部分3と第2の型部分4との間に配置されている場合に、成形プロセス中に第1の成形エレメント3aと第2の成形エレメント4aとの間に形成される空間または容積によって画定される。成形キャビティ5は、成形プロセス中にセルロース製品1の形状を規定するために構成されている。したがって、セルロースブランク構造体2は、セルロース製品1を成形する際に成形キャビティ5内に配置され、成形キャビティ5は、セルロース製品1の所望の形状およびサイズを成形するために適切な形状および構成で配置されてよい。
【0037】
図1a~
図1fに示す実施形態では、第1の成形エレメント3aは雌型ユニットとして、第2の成形エレメント4aは雄型ユニットとして配置され、これらのユニットは成形プロセス中に互いに相互作用し、
図1dに示すように成形プロセス中に第1の成形エレメント3aと第2の成形エレメント4aとの間に成形キャビティ5が形成される。
図2a~
図2cに示す実施形態では、第1の成形エレメント3aは雄型ユニットとして、第2の成形エレメント4aは雌型ユニットとして配置され、これらのユニットは成形プロセス中に互いに相互作用し、
図2cに示すように成形プロセス中に第1の成形エレメント3aと第2の成形エレメント4aとの間に成形キャビティ5が形成される。
【0038】
各第2の成形エレメント4aは、基部構造体4bに配置された加圧部材6と相互作用するように配置されている。加圧部材6は、以下でさらに説明するように、セルロース製品1の成形中に、各成形キャビティ5内にセルロースブランク構造体2への成形圧PFを生成するように構成されている。成形型システムSは、基部構造体4bに対して相対的に各第2の成形エレメント4aが移動するときに、加圧部材6からの相互作用により成形圧PFを生成するように構成されている。セルロース製品1を成形する際の均一な圧力分布のために、成形圧PFはすべての成形キャビティ5において適切に等しくまたは実質的に等しく、この場合、成形キャビティ5内の成形圧PFは加圧部材6により生成される。代替的に、成形圧PFは、成形キャビティ5間で異なっていてもよく、かつ加圧部材6は、2つ以上の異なる圧力レベルを成形キャビティに分配するように構成されていてもよく、これは、異なる種類のセルロース製品1が同時にマルチキャビティ成形型システムSにおいて製造される場合に有用であり得る。
【0039】
マルチキャビティ成形型システムSは、加圧部材6からの相互作用によって、セルロース製品1の成形中に各成形キャビティ5内で少なくとも1MPaの、好ましくは4~20MPaの範囲にある成形圧レベルPFLを生成するように構成されている。これらの圧力範囲は、システムSにおけるセルロース製品1の成形に適していて、この場合、セルロースブランク構造体2におけるセルロース繊維間に強力な水素結合が形成される。したがって、マルチキャビティ成形型システムSにおけるセルロース製品1の成形中、成形圧レベルPFLは、各成形キャビティ5内で少なくとも1MPaであり、好ましくは4~20MPaの範囲にある。上記のように、成形圧レベルPFLは、セルロース製品1の成形中、すべての成形キャビティ5において同じまたは実質的に同じであり得るか、あるいは代替的に、成形圧レベルPFLは、セルロース製品1の成形中に成形キャビティ5間で異なっていてよい。
【0040】
図1a~
図1fおよび
図5に示した実施形態では、加圧部材6は液圧ユニット6bを有している。液圧ユニット6bは、基部構造体4bと複数の第2の成形エレメント4aのそれぞれとの間に配置された複数の圧力チャンバ6cを有している。第2の成形エレメント4aは、
図5に概略的に示されたように、対応する圧力チャンバ内に液圧ピストンとして構成されたピストン部分4eを備えて配置されていてよい。圧力チャンバ6cに、適切な圧力媒体、例えば液圧油を充填することにより、液圧媒体によって、第2の成形エレメント4aに対して成形圧P
Fを加えることができる。圧力チャンバ6cと第2の成形エレメントとは、任意の適切な対応する形状を、例えばほぼ円筒形状を有していてよい。圧力チャンバ6cは、液圧ポンプシステム、液圧シリンダ、ばね負荷された液圧シリンダ、またはその他の類似のシステムもしくはデバイスに接続されていて、これらは、基部構造体4bに配置されたチャネルを介して、圧力媒体によって第2の成形エレメント4aにかけられる圧力を発生させている。1つの共通の液圧ポンプ14aが、
図1fに示されたように、すべての圧力チャンバ6cに接続されていてよく、または代替的に、2つ以上の液圧ポンプが、例えば、各圧力チャンバ6cに接続される1つの液圧ポンプが使用されてもよい。
図1a~
図1fおよび
図5に示された実施形態では、圧力媒体は、第2の成形エレメント4aの下面4cに圧力をかけ、下面4cは、圧力チャンバ6cに接続されて配置されている。第2の成形エレメント4aはそれぞれ、各圧力チャンバ6cと第2の成形エレメント4aとの間に密封シールを形成しているシールエレメント4dを有していてよい。使用される液圧ポンプシステムは、
図1fに概略的に示されたような従来のレイアウトを有していてよい。液圧ポンプ14aは、例えば電動モータによって駆動され、液圧のオンオフを切り替えるための成形圧弁14cを介して圧力チャンバ6cに接続されている。圧力制御弁14dは、圧力レベルを調整するために使用される。圧力媒体は、タンク14e内に貯えることができ、蓄圧タンク14b内へと膨張させられてよい。
図1fから理解されるように、圧力チャンバ6cから、および圧力制御弁14dから流出する圧力媒体は、タンク14eへと戻される。液圧ポンプシステムの構成要素は、適切な管路に接続されている。
【0041】
図1a~
図1fに示す実施形態により、空気成形された1つのセルロースブランク構造体2から複数の個別の3次元的なセルロース製品1をマルチキャビティ成形型システムS内で成形するために、まずは、空気成形されたセルロースブランク構造体2が、適切な供給源から提供される。セルロースブランク構造体2は、セルロース繊維から空気成形されて、ロール上にまたは積層体に配置されてよい。ロールまたは積層体を、その後、マルチキャビティ成形型システムSに接続して配置することができる。代替的に、
図3および
図4に示されたように、セルロースブランク構造体は、マルチキャビティ成形型システムSに接続された状態でセルロース繊維から空気成形されて、型部分に直接供給されてもよい。
図1aに示されたように、セルロースブランク構造体2は、第1の型部分3と第2の型部分4との間に配置される。
【0042】
その後、
図1bに示されたように、第1の型部分3と第2の型部分4とは、セルロースブランク構造体2のための複数の成形キャビティ5を形成するために互いに向かう方向で動かされる。
図1bでは、第1の型部分3が第2の型部分4に向かって動かされ、
図1cに示されたように、セルロースブランク構造体2のための複数の成形キャビティ5が、各第1の成形エレメント3aと対応する第2の成形エレメント4aとの間に形成される。
図1cに示された位置では、第1の型部分3と第2の型部分4とは、互いに接触して配置されている。
図1cに示された位置では、成形キャビティ5の内側に配置されたセルロースブランク構造体2を、成形キャビティ5の外側に配置されたセルロースブランク構造体2から分離するためにセルロースブランク構造体2を切断することができる。型部分は、このような切断操作のために適切な切断装置を備えて配置されていてよい。
【0043】
第1の型部分3と第2の型部分4とが互いに接触して配置されている場合に、セルロース製品1の成形中、加圧部材6によって、各成形キャビティ5内にセルロースブランク構造体2への成形圧P
Fが生成される。
図1dでは、圧力媒体によって圧力チャンバ6c内に加圧部材6によって生成された液圧により、第2の成形エレメント4aが、第1の型部分3に向かって動かされる。上述したように、適切な成形圧レベルP
FLは、加圧部材6からの相互作用により各成形キャビティ5内で、少なくとも1MPaであり、好ましくは4~20MPaの範囲にある。圧力媒体が、圧力チャンバ6c内に流れている場合、第2の成形エレメント4aは、成形キャビティ5内に配置されたセルロースブランク構造体2に対して成形圧PLを加えるために、第1の成形エレメント3aに向かう方向で押される。したがって、加圧部材6からの相互作用による、基部構造体4bに対して相対的な各第2の成形エレメント4aの移動により成形圧P
Fが生成される。圧力媒体によって第2の成形エレメントに対して加えられる圧力レベルを制御するために、適切な制御ユニットが使用されてよい。セルロース製品1の成形中、セルロースブランク構造体2は、100℃~300℃の範囲の成形温度T
Fまで加熱される。セルロース製品1を成形する際の均一な圧力分布のために、成形圧レベルP
FLはすべての成形キャビティ5において適切に等しいまたは実質的に等しい。代替的に、成形圧P
Fは、成形キャビティ5間で異なっていてもよい。
【0044】
セルロース製品1がマルチキャビティ成形型システムS内で成形されると、第1の型部分3は、
図1eに概略的に示したように、第2の型部分4から離れる方向に動かされる。成形後のセルロース製品1の取り出しを容易にするために、
図1eに矢印で示したように、第2の成形エレメント4aを、基部構造体4bから離れる方向で押すことができる。液圧解放後に、成形エレメント4aを、
図1aに示された初期位置へと戻すために、各第2の成形エレメント4aに接続して、ばね、シリンダ、例えば2重作用シリンダ、または類似のデバイスを使用することができる。
【0045】
図2a~
図2cに示した実施形態では、加圧部材6は、基部構造体4bと複数の第2の成形エレメント4aのそれぞれとの間に配置された複数のばねユニット6aを有している。各ばねユニット6aは、単一のばねとして、または2つ以上の協働するばねとして配置されていてよく、1つ以上のばねは、適切には圧縮ばねである。
図2a~
図2cに示した実施形態では、各ばねユニット6aは、セルロース製品1の成形中に、各成形キャビティ5内でセルロースブランク構造体2への成形圧P
Fを生成するために協働する皿ばねのスタックとして配置されている。皿ばねの代わりに使用することができる他のばねは、例えばコイルばねまたはその他の種類のワッシャばねである。
【0046】
図2a~
図2cに示す実施形態により、空気成形された1つのセルロースブランク構造体2から複数の個別の3次元的なセルロース製品1をマルチキャビティ成形型システムS内で成形するために、まずは、空気成形されたセルロースブランク構造体2が、適切な供給源から提供される。セルロースブランク構造体2は、セルロース繊維から空気成形されて、ロール上にまたは積層体に配置されてよい。ロールまたは積層体を、その後、マルチキャビティ成形型システムSに接続して配置することができる。代替的に、セルロースブランク構造体は、マルチキャビティ成形型システムSに接続された状態でセルロース繊維から空気成形されて、型部分に直接供給されてもよい。セルロースブランク構造体2は、この実施形態では、
図2aに示されたように、予め切断された個別の材料片として、第1の型部分3と第2の型部分4との間に配置される。
【0047】
その後、
図2bに示されたように、第1の型部分3と第2の型部分4とは、セルロースブランク構造体2のための複数の成形キャビティ5を形成するために互いに向かう方向で動かされる。
図2bでは、第1の型部分3が第2の型部分4に向かって動かされ、セルロースブランク構造体2のための複数の成形キャビティ5が、各第1の成形エレメント3aと対応する第2の成形エレメント4aとの間に形成される。
【0048】
第1の型部分3と第2の型部分4とが互いに接触して配置されている場合に、セルロース製品1の成形中、加圧部材6によって、各成形キャビティ5内にセルロースブランク構造体2への成形圧P
Fが生成される。
図2cでは、第1の成形エレメント3aと第2の成形エレメント4aとの間の相互作用によって、第2の成形エレメント4aは、第1の型部分3から離れる方向で動かされる。第2の成形エレメント4aが、基部構造体4b内に動かされ、ばねユニット6aは圧縮され、この圧縮によって、成形圧レベルP
FLが、成形キャビティ5内のセルロースブランク構造体2に対してかけられる。成形圧を制御するために、第2の型部分4に対して相対的な第1の型部分3の移動を決定するために適切な制御ユニットが使用されてよい。上述したように、適切な成形圧レベルP
FLは、加圧部材6からの相互作用により各成形キャビティ5内で、少なくとも1MPaであり、好ましくは4~20MPaの範囲にある。加圧部材6からの相互作用により、基部構造体4bに対して相対的な各第2の成形エレメント4aの移動により成形圧P
Fが生成される。セルロース製品1の成形中、セルロースブランク構造体2は、100℃~300℃の範囲の成形温度T
Fまで加熱される。セルロース製品1を成形する際の均一な圧力分布のために、成形圧レベルP
FLはすべての成形キャビティ5において適切に等しいまたは実質的に等しい。代替的に、成形圧P
Fは、成形キャビティ5間で異なっていてもよい。
【0049】
セルロース製品1がマルチキャビティ成形型システムS内で成形されると、第1の型部分3は、第2の型部分4から離れる方向に動かされ、セルロース製品1を、例えば、エジェクタ棒または類似の装置を使用して取り出すことができる。
【0050】
説明したものとは別の加圧部材6が、成形キャビティ5内での成形圧PFの生成のために使用されてもよいことを理解されたい。
【0051】
マルチキャビティ成形型システムSは、セルロース製品1の成形中、セルロースブランク構造体2を、100℃~300℃の範囲の成形温度TFまで加熱するために構成された加熱ユニット7をさらに有している。この温度範囲は、上述した圧力範囲と共に、システムSにおけるセルロース製品1の成形に適していて、この場合、セルロースブランク構造体2におけるセルロース繊維間に強力な水素結合が形成される。
【0052】
セルロースブランク構造体2の加熱は、マルチキャビティ成形型システムSにおけるプレスの前に、またはマルチキャビティ成形型システムSにおけるプレスの少なくとも部分的に前に行われてよい。代替的に、
図1a~
図1fおよび
図2a~
図2cに概略的に示されたように、セルロースブランク構造体2の加熱は、プレスされている間に、第1の型部分3および/または第2の型部分4において行われてもよい。セルロースブランク構造体2の加熱は、例えば、第1の型部分3および/または第2の型部分4に一体の加熱ユニット7によって、成形型5を加熱することにより行われてよい。成形圧P
Fは、セルロースブランク構造体2の加熱前に加えられてもよく、例えば、プレス中、マルチキャビティ成形型システムSにおいて、セルロースブランク構造体2の加熱が行われてよい。
【0053】
セルロース製品1の成形中、第1の型部分3および/または第2の型部分4を、セルロースブランク構造体2に加えなければならない100℃~300℃の範囲の成形温度TFを生成するために、加熱ユニット7によって、100℃~500℃の範囲の、または代替的に100℃~700℃の範囲の成形型温度まで加熱することができる。加熱ユニット7は、第1の型部分3および/または第2の型部分4に組み込まれていてよく、適切な加熱機器は、例えば電気ヒータまたは流体ヒータである。別の適切な熱源を使用することもできる。
【0054】
加熱ユニット7は、任意の適切な構造を有していてよい。適切な加熱ユニット、例えば加熱された成形型部分は、成形温度TFを生成するために使用されてよい。別の実施形態では、成形圧PFは、1~100MPaの範囲に、好ましくは4~20MPaの範囲にあり、成形温度TFは、100℃~300℃の範囲にある。変形エレメント8を使用することにより、成形圧PFを、以下でさらに説明するように、等方成形圧であってよい。
【0055】
すべての実施形態について、第1の型部分3および/または第2の型部分4は、各第1の成形エレメント3aおよび/または第2の成形エレメント4aのために変形エレメント8を有していてよい。変形エレメント8は、セルロース製品1の成形中に、成形キャビティ5におけるセルロースブランク構造体2に成形圧P
Fをかけるために構成されている。変形エレメント8は、適切な取付け手段、例えば、接着剤または機械的な固定手段によって、第1の型部分3および/または第2の型部分4に取り付けられてよい。
図2a~
図2cに概略的に示した実施形態では、変形エレメント8は、第1の成形エレメント3aのそれぞれに取り付けられている。
【0056】
セルロース製品1の成形中、変形エレメント8は、成形キャビティ5におけるセルロースブランク構造体2に成形圧P
Fをかけるために変形されて、変形エレメント8の変形により、セルロース製品1が複雑な3次元形状を有していたとしても、またはセルロースブランク構造体2が可変の厚さを有していたとしても、均等な圧力分布が達成される。
図2cでは、変形エレメント8は、セルロース製品1の形状に対応する変形された状態で概略的に示されている。
【0057】
変形エレメント8は、上述したように、成形プロセス中に変形されていて、変形エレメント8は、セルロース製品1の成形中に、セルロースブランク構造体2に成形圧P
Fをかけるように配置されている。セルロースブランク構造体2に必要な成形圧P
Fをかけるために、変形エレメント8は、説明目的で
図2cに概略的に示したように、力または圧力が加えられると変形することができる材料から形成されていて、この場合、変形エレメント8は、成形プロセス中に変形される。例えば、変形エレメント8を、変形後にサイズと形状を回復することができる弾性材料から形成することができる。変形エレメント8はさらに、セルロース製品1の成形時に使用される高い成形圧P
Fおよび成形温度T
Fレベルに耐える適切な特性を有した材料から形成されていてよい。
【0058】
成形プロセス中、変形エレメント8は変形させられて、特別な成形圧レベルPFLを有する成形圧PFをセルロースブランク構造体2にかける。セルロース製品1が、切欠き、開口、および穴を含む複雑な3次元的な形状を有していたとしても、または使用されるセルロースブランク構造体2が、可変の密度、厚さ、または坪量レベルを有していたとしても、変形により、均等な圧力分布を達成することができる。
【0059】
ある種の弾性的なまたは変形可能な材料は、高い圧力レベルに曝されたときに流体のような特性を有する。変形エレメント8がそのような材料から形成されているならば、成形プロセスにおいて均等な圧力分布を達成することができ、この場合、変形エレメント8からセルロースブランク構造体2にかけられる圧力は、型部分間のすべての方向で等しいまたは実質的に等しい。圧力中、変形エレメント8が流体のような状態にある場合、均一な流体状の圧力分布が達成される。したがって成形圧は、このような材料によって、すべての方向からセルロースブランク構造体2へと加えられ、変形エレメント8は、このようにして、セルロース製品1の成形中に、説明目的で
図2cにおいて矢印で概略的に示したように、等方成形圧をセルロースブランク構造体2に加える。変形エレメント8からの等方成形圧は、例えば成形キャビティ5の壁面に対して垂直など、成形キャビティ5内のセルロースブランク構造体2に対してすべての方向で均一な圧力を生成している。等方成形圧は、セルロース製品1の効率的な成形プロセスを提供しており、セルロース製品1は、複雑な形状を有していたとしても高品質に製造することができる。本開示によると、セルロース製品の成形の際に、成形圧レベルP
FLは、すべての実施形態について、少なくとも1MPaの、好ましくは4~20MPaの等方成形圧であってよい。
【0060】
変形エレメント8は、弾性材料の適切な構造体から形成されてよく、この場合この材料は、成形プロセス中にセルロースブランク構造体2において均一な圧力を生成することができる。一例として、変形エレメント8は、20~90ショアAの範囲の硬度を有する、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリクロロプレンまたはゴムから成る中実の構造体または実質的に中実の構造体から形成されていてもよい。変形エレメント8のためのその他の材料は、例えば、適切なゲル材料、液晶エラストマーおよびMR流体であってよい。
【0061】
図3には、マルチキャビティ成形型システムSの例示的な製造ユニットのレイアウトが概略的に示されており、この場合、マルチキャビティ成形型システムSは、
図1a~
図1fに示された構造を有している。セルロースブランク構造体2を成形するために適切なセルロースパルプ構造体は、ロール9上に配置されていて、このロールからパルプ構造体がミルユニット10に供給される。ミルユニット10は、パルプ構造体から繊維を分離するために、および分離された繊維を成形チャンバ11内へと分配するために配置されている。ミルユニット10は、例えば、鋸歯ミル、ハンマーミル、または他の種類のパルプ解繊機などの任意の従来の種類のものであってよく、この場合、パルプ構造体は、入口開口を通じてミルユニット10に供給され、分離された繊維は、成形チャンバ11へと分配される。成形ワイヤ12は、この実施形態では、成形チャンバ11に接続されて配置されていて、成形チャンバ11は、成形ワイヤ12の上方の少なくとも部分的に閉じられた容積を形成している。パルプ構造体内のセルロース繊維は、ミルユニット10で分離されて、空気成形セルロースブランク構造体2のために成形ワイヤ12上に配置されている。分離された繊維は、図示されていない代替的な実施形態では代わりに、ミルユニット10から型部分へと直接供給されてよく、成形チャンバは有していない。
【0062】
成形されたセルロースブランク構造体2は、
図3に示したように、連続的な製造流を生成するために、マルチキャビティ成形型システムSへと間欠的に送られてよい。図示した実施形態では、マルチキャビティ成形型システムSは、セルロース製品の成形中に、第1の型部分3を第2の型部分4に接続した状態でロックするためのクランプユニット13を有している。図示した実施形態では、クランプユニット13は、第1の型部分3と第2の型部分4とを
図1dに示した位置で互いに相対的にロックするために使用されるアームを有している。セルロース製品1の成形は、
図1a~
図1fとの関連で上述した形式で達成される。セルロース製品1の成形後に残される残留セルロースブランク構造体2aは再利用され、ロール9からのパルプ構造体と共にミルユニット10に再投入される。
【0063】
図4には、マルチキャビティ成形型システムの同様の代替的なシステムの例示的なレイアウトが概略的に示されており、この場合、パルプ構造体はロール9上に配置されている。マルチキャビティ成形型システムSは、
図1a~
図1fに示された構造を有している。ミルユニット10は、パルプ構造体から繊維を分離するために、および分離された繊維を成形チャンバ11内へと分配するために配置されている。ミルユニット10は、例えば、鋸歯ミル、ハンマーミル、または他の種類のパルプ解繊機などの任意の従来の種類のものであってよい。成形ワイヤ12は、この実施形態では、成形チャンバ11に接続されて配置されている。パルプ構造体内のセルロース繊維は、ミルユニット10内で分離されて、空気成形セルロースブランク構造体2のために成形ワイヤ12上に配置されている。
図4に示した実施形態では、マルチキャビティ成形型システムSは、セルロース製品の成形中に、第1の型部分3を第2の型部分4に接続した状態でロックするためのクランプユニット13を有している。クランプユニット13は、トグルタイプであってよく、第1の型部分3と第2の型部分4とを
図1dに示した位置で互いに相対的にロックするために使用されるアームを有している。セルロース製品1の成形は、
図1a~
図1fとの関連で上述した形式で達成される。セルロース製品1の成形後に残される残留セルロースブランク構造体2aは再利用され、ロール9からのパルプ構造体と共にミルユニット10に再投入される。
【0064】
マルチキャビティ成形型システムSは、上述したように、セルロース製品1の成形を制御するための適切な制御ユニットをさらに有していてよい。制御ユニットは、マルチキャビティ成形型システムSを制御するための適切なソフトウェアおよびハードウェアを有していてよく、マルチキャビティ成形型システムSによって実施される異なるプロセスおよび方法ステップを有していてよい。制御ユニットは、例えば、温度、圧力、成形時間、およびその他のプロセスパラメータを制御することができる。制御ユニットはさらに、例えばプレスユニット、加熱ユニット、セルロースブランク構造体搬送ユニットおよびセルロース製品搬送ユニットのような関連するプロセス機器に接続されてもよい。
【0065】
本開示を、特定の実施形態につき上記に提示した。しかしながら、上記に説明したものとは別の実施形態も可能であり、本開示の範囲内にある。ハードウェアまたはソフトウェアによって方法を実施する、上記で説明したものとは異なる方法ステップが、本開示の範囲内で提供されてもよい。したがって、例示的な実施形態によれば、マルチキャビティ成形型システムSの1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成された1つ以上のプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供され、この1つ以上のプログラムは、上述した実施形態のいずれか1つによる方法を実行するための命令を含んでいる。代替的に、別の例示的な実施形態によれば、クラウドコンピューティングシステムを、本明細書で提示された方法の態様のいずれかを実行するように構成することができる。クラウドコンピューティングシステムは、1つ以上のコンピュータプログラム製品の制御下で本明細書に提示した方法の態様を共同で実行する分散クラウドコンピューティングリソースを含むことができる。
【0066】
マルチキャビティ成形型システムSに関連する1つ以上のプロセッサは、データ処理もしくは信号処理を行うために、またはメモリに格納されたコンピュータコードを実行するために、任意の数のハードウェアコンポーネントであってもよいし、それらを含んでいてもよい。システムは、関連するメモリを有していてよく、メモリは、本明細書に記載の様々な方法を完了するまたは容易にするためのデータおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つ以上の装置であってよい。メモリは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含むことができる。メモリは、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、または、本明細書の様々なアクティビティをサポートするための任意の他の種類の情報構造を含むことができる。例示的な実施形態によれば、本明細書のシステムおよび方法と共に、任意の分散メモリまたはローカルメモリ装置が利用されてよい。例示的な実施形態によれば、メモリは、(例えば、回路または任意の他の有線接続、無線接続、またはネットワーク接続を介して)プロセッサに通信可能に接続されており、本明細書に記載された1つ以上のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含んでいる。
【0067】
上記の説明は本質的に単に例示的なものであり、本開示の用途または使用を限定するものではないことが理解されるだろう。特定の例が明細書に記載され、かつ図面に示されているが、当業者であれば、特許請求の範囲に規定された本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてよく、かつ等価物がその要素の代わりに用いられてもよいことを理解するだろう。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を、本開示の教示に適合させるために改変がなされてもよい。したがって、本開示は、図面によって示され、本開示の教示を実施するために現在考えられる最良の形態として明細書に記載された特定の例に限定されるものではなく、本開示の範囲は、前述の説明および添付の特許請求の範囲に含まれる任意の実施形態を含むことになる。請求項に記載された参照符号は、請求項によって保護されている事項の範囲を限定するものと見なすべきではなく、参照符号の唯一の機能は、請求項を理解しやすくすることである。
【符号の説明】
【0068】
1 セルロース製品
2 セルロースブランク構造体
3 第1の型部分
3a 第1の成形エレメント
4 第2の型部分
4a 第2の成形エレメント
4b 基部構造体
4c 下面
4d シールエレメント
4e ピストン部分
5 成形キャビティ
6 加圧部材
6a ばねユニット
6b 液圧ユニット
6c 圧力チャンバ
7 加熱ユニット
8 変形エレメント
9 ロール
10 ミルユニット
11 成形チャンバ
12 成形ワイヤ
13 クランプユニット
14a 液圧ポンプ
14b 蓄圧タンク
14c 成形圧弁
14d 圧力制御弁
14e タンク
DP プレス方向
PF 成形圧
PFL 成形圧レベル
S マルチキャビティ成形型システム
TF 成形温度
【国際調査報告】