(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(54)【発明の名称】改善された溶解性を有するプロテアーゼバリアント
(51)【国際特許分類】
C12N 15/57 20060101AFI20230904BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230904BHJP
C12N 9/54 20060101ALI20230904BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230904BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230904BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230904BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230904BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230904BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20230904BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230904BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/54
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 Z
C11D3/386
C11D17/08
C11D17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513388
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021073869
(87)【国際公開番号】W WO2022043547
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ トマス レンハート
(72)【発明者】
【氏名】エスペン ピーダ フリース
(72)【発明者】
【氏名】ポウル イーレク ピーダスン
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス ロン アナスン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H003
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA33
4B065CA57
4H003BA01
4H003BA09
4H003BA12
4H003BA13
4H003DA01
4H003DA05
4H003DA19
4H003EC02
(57)【要約】
本発明は、プロテアーゼバリアント、前記バリアントをコードするポリヌクレオチド、核酸構築物及び前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記バリアントを発現する宿主細胞、バリアントを得る方法、前記バリアントを含む洗剤組成物、並びに前記バリアント又は前記洗剤組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親プロテアーゼのプロテアーゼバリアントであって、前記バリアントが、配列番号1と少なくとも少なくとも80%であるが、100%未満の配列同一性を有し、
前記バリアントが、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み;
前記バリアントが、X3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を含み;
前記バリアントが、プロテアーゼ活性を有し;且つ
位置番号が、配列番号2の付番に基づく、プロテアーゼバリアント。
【請求項2】
前記第1の置換が、X215K、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択され;好ましくは、前記第1の置換が、X215K、X215Q、X125N、及びX215Tからなる群から選択される、請求項1に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項3】
前記第1の置換が、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択され;好ましくは、前記第1の置換が、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択され;最も好ましくは、前記第1の置換が、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される、請求項1に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項4】
前記少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換が、S3T、V4I、S9E、I35ID、N43R、N76D、S99D、S99F、S101E、S101L、S103A、S103T、V104I、H120D、G160S、G195E、V205I、Q206L、Y209W、K235L、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される、請求項1に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項5】
前記少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換が、
a)S3T、V4I、S99D、S101E、S103A、G160S、及びV205I;
b)I35ID、N76D、H120D、G195E、K235L;
c)S9E、N43R、N76D、S99F、S101L、S103T、V104I、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262E;並びに
d)S9E、N43R、N76D、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262E
からなる群の1つから選択される、請求項4に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項6】
前記親プロテアーゼと比較して改善された溶解性を有し;好ましくは、前記溶解性が、前記親プロテアーゼと比較して少なくとも4%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項7】
前記親プロテアーゼが、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される前記第1の置換を有さず且つX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される前記少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を有しないが他の点で同一であるプロテアーゼである、請求項6に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項8】
前記バリアントが、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び/又は配列番号6と比較して改善された溶解性を有する、請求項6に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項9】
前記プロテアーゼバリアントが、10~30℃、好ましくは、15~25℃、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項10】
前記プロテアーゼバリアントが、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された溶解性を有する、請求項6~9のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項11】
前記プロテアーゼバリアントが、15~25℃及びpH4~6、好ましくは、20℃及びpH4~5で改善された溶解性を有する、請求項9~10のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項12】
改善された溶解性が、実施例1によるプロテアーゼ結晶形成の低減及び/又はプロテアーゼ結晶溶解性の増大として決定される、請求項6~11のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項13】
同等又は改善されたプロテアーゼ活性を有し;好ましくは、前記プロテアーゼ活性が、前記親プロテアーゼと比較して少なくとも100%、例えば、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項14】
前記親プロテアーゼが、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される前記第1の置換を有さず且つX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される前記少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を有しないが他の点で同一であるプロテアーゼである、請求項13に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項15】
前記バリアントが、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び/又は配列番号6と比較して同等又は改善されたプロテアーゼ活性を有する、請求項13~14のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16に記載のポリヌクレオチドを含む核酸構築物又は発現ベクター。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアントを発現する宿主細胞。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアントを得るための方法であって、
(a)親プロテアーゼにX215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を導入すること;及びX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を導入することであって、前記バリアントは、プロテアーゼ活性を有する、導入すること;並びに
(b)前記バリアントを回収すること
を含む方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント及び1種以上の洗剤構成成分を含む洗剤組成物。
【請求項21】
前記組成物が、バー、均質錠剤、2層以上を有する錠剤、1つ以上のコンパートメントを有するパウチ、定型的若しくは緻密な粉末、顆粒、ペースト、ゲル、又は定型的、緻密な若しくは濃縮された液体の形態である、請求項20に記載の洗剤組成物。
【請求項22】
前記組成物が、液体の形態である、請求項20に記載の洗剤組成物。
【請求項23】
クリーニングプロセス、好ましくは、洗濯又は食器洗浄、例えば、自動食器洗浄などの硬質表面クリーニングにおける請求項1~15のいずれか一項に記載のプロテアーゼバリアント又は請求項20~22のいずれか一項に記載の洗剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願には、参照により本明細書に組み込まれるコンピューター可読形式の配列表が含まれる。
【0002】
本発明は、プロテアーゼバリアント、前記バリアントをコードするポリヌクレオチド、核酸構築物及び前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記バリアントを発現する宿主細胞、バリアントを得る方法、前記バリアントを含む洗剤組成物、並びに前記バリアント又は前記洗剤組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
洗剤産業において、酵素は、数十年間洗浄配合物において実装されてきた。そのような配合物において使用される酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、マンノシダーゼ及び他の酵素又はその混合物が挙げられる。商業的には、最も重要な酵素は、プロテアーゼである。
【0004】
例えば、洗濯及び食器洗浄洗剤のための商業的に使用されるプロテアーゼにおいて、天然に存在する野生型プロテアーゼのタンパク質操作されたバリアントがますます増加している。さらに、より良好な洗浄性能、熱安定性、保管安定性又は触媒活性などの改善をもたらす親プロテアーゼに対して改変を有する他のプロテアーゼバリアントが当該技術分野で記載されている。
【0005】
しかしながら、プロテアーゼのさらなる改善は様々な要因によって有利になされる。例えば、温度及びpHなどの洗浄条件は、経時的に変化する傾向があり、世界の様々な国又は地域においても異なっており、多くの汚れは依然として、従来の洗浄条件下で完全に除去することが困難である。
【0006】
プロテアーゼに関する別の課題は、それらの溶解性である。低い溶解性のプロテアーゼは、発酵及び下流の処理の間に結晶化する可能性が高いため、プロテアーゼの溶解性は、これらの酵素を生成するときの重要な要因である。高い溶解性を有するプロテアーゼは、
より高い濃度で処理され、プロテアーゼを精製するプロセスをより安価に、迅速に且つより持続可能にすることができる。
【0007】
本発明は、改善された溶解性を有するプロテアーゼを提供することによってこの課題に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改善された溶解性を有するプロテアーゼバリアントを提供する。本発明のプロテアーゼバリアントは、配列番号1の215位に対応する位置で正に荷電したアミノ酸又は極性アミノ酸を含む。
【0009】
したがって、第1の態様において、本発明は、親プロテアーゼのプロテアーゼバリアントに関し、バリアントは、配列番号1と少なくとも少なくとも80%であるが、100%未満の配列同一性を有し、
バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み;
バリアントは、X3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を含み;
バリアントは、プロテアーゼ活性を有し;且つ
位置番号は、配列番号2の付番に基づく。
【0010】
第2の態様において、本発明は、第1の態様のプロテアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、第2の態様のポリヌクレオチドを含む核酸構築物又は発現ベクターに関する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、第1の態様によるプロテアーゼバリアントを発現する宿主細胞に関する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、請求項1~15のいずれかによるプロテアーゼバリアントを得る方法であって、
(a)親プロテアーゼにX215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を導入すること;及びX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を導入すること(バリアントは、プロテアーゼ活性を有する);並びに
(b)バリアントを回収すること
を含む方法に関する。
【0014】
第6の態様において、本発明は、第1の態様によるプロテアーゼバリアントを含む洗剤組成に関する。
【0015】
第7の態様において、本発明は、クリーニングプロセス、好ましくは、洗濯又は自動食器洗浄(ADW)などの硬質表面クリーニングにおける第1の態様によるプロテアーゼバリアント又は第6の態様による洗剤組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】国際公開第1989/06279号パンフレットの表1に基づく配列番号1と配列番号2の間のアラインメントを示し、配列番号2の位置に対応する位置番号は容易に決定され得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
プロテアーゼ:用語「プロテアーゼ」は、ペプチド結合を加水分解する酵素を意味する。それは、EC3.4酵素群(その13種のサブクラスの各々を含む(http://en.wikipedia.org/wiki/Category:EC_3.4))に属する任意の酵素を含む。EC番号は、NC-IUBMB,Academic Press,San Diego,CaliforniaからのEnzyme Nomenclature 1992を指し、それぞれEur.J.Biochem.1994,223,1-5;Eur.J.Biochem.1995,232,1-6;Eur.J.Biochem.1996,237,1-5;Eur.J.Biochem.1997,250,1-6;及びEur.J.Biochem.1999,264,610-650において公開された補足1~5を含む。用語「サブチラーゼ」は、Siezen et al.,Protein Eng.4(1991)719-737及びSiezen et al.Protein Science 6(1997)501-523によるセリンプロテアーゼのサブグループを指す。セリンプロテアーゼ又はセリンペプチダーゼは、基質と共有結合性の付加体を形成する活性部位においてセリンを有することを特徴とするプロテアーゼのサブグループである。さらに、サブチラーゼ(及びセリンプロテアーゼ)は、セリン以外の2つの活性部位アミノ酸残基、すなわち、ヒスチジン及びアスパラギン酸残基を有することによって特徴付けられる。サブチラーゼは、6つの下位区分、すなわち、サブチリシンファミリー、テルミターゼファミリー、プロテイナーゼKファミリー、ランチビオティックなペプチダーゼファミリー、ケキシンファミリー、及びピロリシンファミリーに分類され得る。用語「プロテアーゼ活性」は、タンパク分解活性(EC3.4)を意味する。本発明のプロテアーゼバリアントは、エンドペプチダーゼ(EC3.4.21)である。本発明の目的のために、プロテアーゼ活性は、下の実施例に記載されるプロテアーゼ活性アッセイに従って決定される。
【0018】
cDNA:「cDNA」という用語は、真核細胞又は原核細胞から得られた成熟してスプライシングされたmRNA分子からの逆転写により調製され得るDNA分子を意味する。cDNAは、対応するゲノムDNA中に存在し得るイントロン配列を欠いている。最初の一次RNA転写物は、成熟してスプライシングされたmRNAとして現れる前にスプライシングを含む一連の工程により処理されているmRNAの前駆体である。
【0019】
コード配列:「コード配列」という用語は、バリアントのアミノ酸配列を直接的に指定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、一般的に、ATG、GTG、又はTTGなどの開始コドンで始まり且つTAA、TAG、又はTGAなどの終止コドンで終わるオープンリーディングフレームにより決定される。コード配列は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA又はこれらの組み合わせであり得る。
【0020】
制御配列:「制御配列」という用語は、本発明のバリアントをコードするポリヌクレオチドの発現に必要となる核酸配列を意味する。それぞれの制御配列は、バリアントをコードするポリヌクレオチドに対して天然(すなわち、同一の遺伝子に由来する)若しくは外来性(すなわち、異なる遺伝子に由来する)のものであってよいか、又は互いに天然若しくは外来性のものであってよい。そのような制御配列としては、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも、制御配列としては、プロモーター並びに転写停止シグナル及び翻訳停止シグナルが挙げられる。制御配列には、バリアントをコードするポリヌクレオチドのコード領域と制御配列の連結を容易にする特異的な制限部位を導入するためのリンカーが設けられていてもよい。
【0021】
発現:用語「発現」は、バリアントの産生に関与するあらゆる工程(例えば、限定されないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌)を含む。
【0022】
発現ベクター:用語「発現ベクター」は、バリアントをコードするポリヌクレオチドを含む直鎖状又は環状のDNA分子であって、その発現をもたらす制御配列に作動可能に連結されている直鎖状又は環状のDNA分子を意味する。
【0023】
断片:用語「断片」は、成熟したポリペプチドのアミノ及び/又はカルボキシル末端に存在しない1つ以上の(例えば、いくつかの)アミノ酸を有するポリペプチドを意味しており;この断片は、プロテアーゼ活性を有する。
【0024】
融合ポリペプチド:用語「融合ポリペプチド」は、1つのポリペプチドが本発明のバリアントのN末端又はC末端で融合されるポリペプチドである。融合ポリペプチドは、別のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを本発明のポリヌクレオチドに融合させることにより生成される。融合ポリペプチドを生成する技術は、当該技術分野で知られており、ポリペプチドをコードするコード配列を、それらがインフレームであり、且つ融合ポリペプチドの発現が同じプロモーター及びターミネーターの制御下にあるように結合することを含む。融合ポリペプチドはまた、融合ポリペプチドが翻訳後に作製されるインテイン技術を使用して構築され得る(Cooper et al.,1993,EMBO J.12:2575-2583;Dawson et al.,1994,Science 266:776-779)。融合ポリペプチドはさらに、2つのポリペプチド間の切断部位を含むことができる。融合タンパク質が分泌されると、この部位が切断されて2つのポリペプチドが遊離する。開裂部位の例としては、下記で開示されている部位が挙げられるが、これらに限定されない:Martin et al.,2003,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.3:568-576;Svetina et al.,2000,J.Biotechnol.76:245-251;Rasmussen-Wilson et al.,1997,Appl.Environ.Microbiol.63:3488-3493;Ward et al.,1995,Biotechnology 13:498-503;及びContreras et al.,1991,Biotechnology 9:378-381;Eaton et al.,1986,Biochemistry 25:505-512;Collins-Racie et al.,1995,Biotechnology 13:982-987;Carter et al.,1989,Proteins:Structure,Function,and Genetics 6:240-248;及びStevens,2003,Drug Discovery World 4:35-48。
【0025】
宿主細胞:用語「宿主細胞」は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物又は発現ベクターによる形質転換、トランスフェクション、トランスダクションなどを受けやすい任意の細胞型を意味する。「宿主細胞」という用語は、複製中に生じる変異に起因して親細胞と同一ではない、親細胞のあらゆる子孫を包含する。
【0026】
ハイブリッドポリペプチド:用語「ハイブリッドポリペプチド」は、2種以上のポリペプチド由来のドメイン、例えば、あるポリペプチド由来の結合モジュール及び別のポリペプチド由来の触媒ドメインを含むポリペプチドを意味する。ドメインは、N末端又はC末端で融合され得る。
【0027】
改善された特性:用語「改善された特性」は、親と比較して改善されているバリアントと関連する特徴を意味する。そのような改善された特性としては、触媒効率、触媒速度、化学的安定性、酸化安定性、pH活性、pH安定性、ポリエステル分解活性、ポリエステル特異性、タンパク質分解安定性、溶解性、比活性、保管条件下での安定性、基質結合、基質切断、基質特異性、基質安定性、表面特性、熱活性、及び熱安定性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
一態様では、本発明のバリアントは、改善された溶解性を有する。特に、本発明のバリアントは、例えば、発酵中のプロテアーゼ結晶形成の低減、及び/又はプロテアーゼ結晶溶解性の増大(又は換言すると、改善されたプロテアーゼ結晶再可溶化)を示す。プロテアーゼ結晶形成及びプロテアーゼ結晶溶解性は、下の実施例1に記載される手順に従って決定され得る。プロテアーゼ結晶溶解性はまた、プロテアーゼ結晶溶解の速度として決定され得る。この方法を使用して、プロテアーゼは、水性緩衝液中でその濃度を増大させること(例えば、回転濃縮機を介して)及び結晶化に好適な条件に達するまで塩濃度を増大させ、pH値を調整することによって結晶化させられる。結晶化の後、プロテアーゼ結晶溶解性は、結晶の溶解速度を測定することによって決定され得る。
【0029】
一態様では、本発明のバリアントは、同等又は改善された溶解性を有する。プロテアーゼ活性は、下の実施例に記載されるプロテアーゼ活性アッセイに従って決定される。
【0030】
単離された:用語「単離された」は、例えば、限定されないが、他のタンパク質、核酸、細胞などを含む天然に見出されるとおりに自然に会合される少なくとも1つの他の材料又は構成成分から分離されているポリペプチド、核酸、細胞、又は他の指定の材料若しくは構成成分を意味する。単離されたポリペプチドとしては、分泌されたポリペプチドを含有する培養ブロスが挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
成熟したポリペプチド:用語「成熟したポリペプチド」は、N末端プロセシング(例えば、シグナルペプチドの除去)後のその成熟した形態のポリペプチドを意味する。
【0032】
変異体:用語「変異体」は、バリアントをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0033】
核酸構築物:用語「核酸構築物」は、天然に存在する遺伝子から単離した、又は普通では自然界に存在することのない方法で核酸のセグメントを含有するように改変させた、又は1つ以上の制御配列を含む合成物である、一本鎖又は二本鎖のいずれかの核酸分子を意味する。
【0034】
作動可能に連結された:用語「作動可能に連結された」は、制御配列がコード配列の発現を指示するように制御配列がポリヌクレオチドのコード配列に対して適切な位置に配置されている構成を意味する。
【0035】
親又は親プロテアーゼ:用語「親」又は「親プロテアーゼ」は、本発明の酵素バリアントを生成するように改変がなされるプロテアーゼを意味する。親は、天然に存在する(野生型)ポリペプチド又はそのバリアント若しくは断片であり得る。
【0036】
ポリマー:用語「ポリマー」は、構造が共有結合性の化学結合によって連結される複数の単量体(反復単位)で構成される化学的化合物又は化合物の混合物を意味する。本発明の文脈において、ポリマーという用語は、単一の種類の反復単位(すなわち、ホモポリマー)又は異なる反復単位の混合物(すなわち、コポリマー又はヘテロポリマー)で構成される天然又は合成ポリマーを含む。本発明によれば、用語「オリゴマー」は、ポリマーに対する参照において使用されるとき、2~約20個の単量体を含有する分子を意味する。
【0037】
精製された:「精製された」という用語は、当該技術分野においてよく知られた分析技術によって測定したときに、他の構成成分を実質的に含まない核酸又はポリペプチドを意味する(例えば、精製されたポリペプチド又は核酸は、電気泳動ゲル中で、クロマトグラフ溶出液中で、及び/又は密度勾配遠心分離を施した媒体中で分離したバンドを形成し得る)。精製された核酸又はポリペプチドは、少なくとも約50%純粋であり、通常は、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%以上純粋である(例えば、モル基準の重量パーセント)。関連する意味では、精製又は濃縮手法を適用した後に分子の濃度が実質的に増加した場合、組成物は分子が濃縮されている。「濃縮された」という用語は、出発組成物よりも高い相対濃度又は絶対濃度で組成物中に存在する化合物、ポリペプチド、細胞、核酸、アミノ酸、又は他の特定の材料若しくは構成成分を指す。
【0038】
組み換え:「組み換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用する場合、天然の状態から改変されていることを意味する。したがって、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然形態内に見られない(非組み換え型)遺伝子を発現するか、又は自然界に見られるものと異なるレベル若しくは異なる条件下で天然の遺伝子を発現する。組み換え核酸は、1つ以上のヌクレオチドで天然配列とは異なっており、及び/又は異種配列、例えば、発現ベクターの異種プロモーターに作動可能に連結されている。組み換えタンパク質は、1つ以上のアミノ酸で天然配列とは異なっていてもよく、及び/又は異種配列と融合している。ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターは、組み換えベクターである。「組み換え」という用語は、「遺伝子改変された」及び「遺伝子導入」と同義である。
【0039】
配列同一性:2つのアミノ酸配列の間又は2つのヌクレオチド配列の間の関連性は、「配列同一性」というパラメータにより説明される。
【0040】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列相同性は、好ましくはバージョン6.6.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS;The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16;276-277)のNeedleプログラムに実装されているような、ニードルマン-ブンシュアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を使用して「最長の同一性(longest identity)」の出力として決定される。使用されるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップ伸長ペナルティ、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needleプログラムが最長の同一性を報告するために、nobriefオプションをコマンドラインに指定しなければならない。「最長同一性」と表示されたNeedle出力は、次のように計算される。
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの合計数)
【0041】
本発明の目的のために、2つのポリヌクレオチド配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン6.6.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000、前掲)のNeedleプログラムに実装されているようなニードルマン-ブンシュアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,前掲)を使用して「最長の同一性」の出力として決定される。使用されるパラメータは、ギャップ開始ペナルティが10、ギャップ伸長ペナルティが0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換行列である。Needleプログラムが最長の同一性を報告するために、nobriefオプションをコマンドラインに指定しなければならない。「最長の同一性」と標識されたNeedleの出力は、以下のとおりに計算される:
(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)。
【0042】
バリアント及びプロテアーゼバリアント:用語「バリアント」及び「プロテアーゼバリアント」は、親と比較して1つ以上の(例えば、いくつかの)位置で置換、挿入、及び/又は欠失を含むプロテアーゼ活性を有するポリペプチドを意味する。置換とは、ある位置のアミノ酸の異なるアミノ酸による置き換えを意味し;欠失とは、ある位置のアミノ酸の除去を意味し;また、挿入とは、ある位置のアミノ酸に隣接し、その直後に続いて1アミノ酸を付加することを意味する。本発明の目的のために、プロテアーゼ活性は、下の実施例に記載される手順に従って決定される。
【0043】
野生型:アミノ酸配列又は核酸配列に関する用語「野生型」は、アミノ酸配列又は核酸配列が天然の配列又は天然に存在する配列であることを意味する。本明細書で使用する場合、用語「天然に存在する」は、天然に見出されるもの(例えば、タンパク質、アミノ酸、又は核酸配列)を指す。逆に、用語「天然に存在しない」は、天然に見出されないもの(例えば、研究室で生成された組み換え核酸及びタンパク質配列又は野生型配列の改変)を指す。
【0044】
プロテアーゼバリアントの命名に関する従来法
本発明の目的のために、配列番号2のポリペプチドを使用して、本発明のバリアントにおける対応するアミノ酸残基番号を決定する。本発明のバリアントのアミノ酸配列は配列番号2とアラインメントされ、そのアラインメントに基づき、アミノ酸位置番号は、本発明のバリアントにおけるいずれかのアミノ酸残基に対応する。
【0045】
配列番号1、3、4、5及び6に関して本明細書で使用される付番は、配列番号2の付番に基づく。したがって、配列番号1、3、4、5及び6に関して、アミノ酸残基は、配列番号2における対応するアミノ酸残基に基づいて付番される。具体的には、付番は、国際公開第1989/06279号パンフレットの表1におけるアラインメントに基づき、サブチラーゼBPN’(BASBPN)配列(表の配列c)の成熟したポリペプチド及びSavinase(登録商標)(BLSAVI)(表の配列a)としても知られるバチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)由来のサブチリシン309の成熟したポリペプチドを含む5種のプロテアーゼのアラインメントを示す。当業者は、サブチリシン309及び特許文献における他のプロテアーゼのために使用される位置番号が、このアラインメントによるBPN’の対応する位置番号に基づく場合が多いことを知ることになる。
【0046】
添付の
図1は、参照の目的のために提供され、国際公開第1989/06279号パンフレットの表1に基づく配列番号1と配列番号2の間のアラインメントを示し、配列番号2の位置に対応する位置番号は容易に決定され得る。
【0047】
別のプロテアーゼ中の対応するアミノ酸残基の同定を、それぞれのデフォルトパラメータを使用していくつかのコンピュータプログラムを使用して、複数のポリペプチド配列のアラインメントにより決定することができ、このプログラムとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:MUSCLE(対数予測による複数配列比較;バージョン3.5以降;Edgar,2004,Nucleic Acids Research 32:1792-1797)、MAFFT(バージョン6.857以降;Katoh and Kuma,2002,Nucleic Acids Research 30:3059-3066;Katoh et al.,2005,Nucleic Acids Research 33:511-518;Katoh and Toh,2007,Bioinformatics 23:372-374;Katoh et al.,2009,Methods in Molecular Biology 537:39-64;Katoh and Toh,2010,Bioinformatics 26:1899-1900)、及びClustalWを採用するEMBOSS EMMA(1.83以降;Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research 22:4673-4680)。
【0048】
本発明のバリアントの説明では、言及を容易にするために、下記で説明する命名法が適応される。認められているIUPAC一文字又は三文字アミノ酸略語が採用される。
【0049】
置換:アミノ酸置換の場合、下記の命名法が使用される:元のアミノ酸、位置、置換アミノ酸。したがって、226位でのスレオニンのアラニンへの置換は、「Thr226Ala」又は「T226A」と指定される。複数の置換は、加算記号(「+」)によって隔てられ、例えば、「Gly205Arg+Ser411Phe」又は「G205R+S411F」は、205位のグリシン(G)をアルギニン(R)で、及び411位のセリン(S)をフェニルアラニン(F)でそれぞれ置換することを表す。或いは、複数の置換は、コンマ(「,」)によって隔てられてもよく、例えば、「Gly205Arg,Ser411Phe」又は「G205R,S411F」である。
【0050】
欠失:アミノ酸欠失の場合、下記の命名法が使用される:元のアミノ酸、位置、*。したがって、195位のグリシンの欠失は、「Gly195*」又は「G195*」と指定される。複数の欠失は、加算記号(「+」)によって隔てられ、例えば、「Gly195*+Ser411*」又は「G195*+S411*」である。或いは、複数の欠失は、カンマ(「,」)によって隔てられ得、例えば、「Gly195*,Ser411*」又は「G195*、S411*」である。
【0051】
挿入:アミノ酸挿入の場合、下記の命名法が使用される:元のアミノ酸、位置、元のアミノ酸、挿入アミノ酸。したがって、195位でのグリシンの後のリジンの挿入は、「Gly195GlyLys」又は「G195GK」と指定される。複数のアミノ酸の挿入は、[元のアミノ酸、位置、元のアミノ酸、挿入アミノ酸#1、挿入アミノ酸#2など]と指定される。例えば、195位のグリシンの後のリシン及びアラニンの挿入は、「Gly195GlyLysAla」又は「G195GKA」と示される。
【0052】
そのような場合、挿入されたアミノ酸残基は、この挿入されたアミノ酸残基に先行するアミノ酸残基の位置番号への小文字の追加により付番される。上記の例では、配列は下記のようになる。
【0053】
【0054】
複数の改変:複数の改変を含むバリアントは、追加の印(「+」)によって隔てられ、例えば、「Arg170Tyr+Gly195Glu」又は「R170Y+Gly195E」は、それぞれ170位及び195位のアルギニン及びグリシンのチロシン及びグルタミン酸による置換を表す。或いは、複数の改変は、コンマ(「,」)によって隔てられてもよく、例えば、「Arg170Tyr,Gly195Glu」又は「R170Y,G195E」である。
【0055】
異なる改変:ある位置で異なる改変が導入され得る場合、異なる改変がカンマによって隔てられ、例えば、「Arg170Tyr,Glu」は、170位でのアルギニンのチロシン又はグルタミン酸への置換を表す。そのため、「Tyr167Gly,Ala+Arg170Gly,Ala」は、下記のバリアントを指定する:
「Tyr167Gly+Arg170Gly」、「Tyr167Gly+Arg170Ala」、「Tyr167Ala+Arg170Gly」、及び「Tyr167Ala+Arg170Ala」。
【0056】
配列の概要
配列番号1は、Savinase(登録商標)プロテアーゼのアミノ酸配列である。
配列番号2は、BPN’プロテアーゼのアミノ酸配列である。
配列番号3は、配列番号1のバリアントのアミノ酸配列である。
配列番号4は、配列番号1のバリアントのアミノ酸配列である。
配列番号5は、配列番号1のバリアントのアミノ酸配列である。
配列番号6は、配列番号1のバリアントのアミノ酸配列である。
【0057】
本発明の詳細な説明
本発明は、改善された溶解性を有する新規のプロテアーゼを提供する。本発明のプロテアーゼバリアントは、配列番号1の215位(すなわち、配列番号1の位置A215)に対応する位置で正に荷電したアミノ酸又は極性アミノ酸を含む。この位置での正に荷電したアミノ酸又は極性アミノ酸の導入は、下の実施例に記載されるとおり、改善された溶解性、特に、プロテアーゼ結晶形成の低減及びプロテアーゼ結晶溶解性の増大をもたらす。
【0058】
プロテアーゼバリアント
本発明は、親プロテアーゼのプロテアーゼバリアントに関し、バリアントは、配列番号1と少なくとも少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有し、バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み、バリアントは、X3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、又はそれ以上のさらなる改変、好ましくは、置換を含み、バリアントは、プロテアーゼ活性を有し、且つ位置番号は、配列番号2の付番に基づく。
【0059】
ある実施形態では、第1の置換は、X215K、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択され;好ましくは、第1の置換は、X215K、X215Q、X125N、及びX215Tからなる群から選択される。
【0060】
ある実施形態では、第1の置換は、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択され;好ましくは、第1の置換は、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択され;最も好ましくは、第1の置換は、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される。
【0061】
ある実施形態では、バリアントは、X3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、又はそれ以上のさらなる改変、好ましくは、置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、S3T、V4I、S9E、I35ID、N43R、N76D、S99D、S99F、S101E、S101L、S103A、S103T、V104I、H120D、G160S、G195E、V205I、Q206L、Y209W、K235L、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、又はそれ以上のさらなる改変、好ましくは、置換を含む。
【0062】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、
a)S3T、V4I、S99D、S101E、S103A、G160S、及びV205I;
b)I35ID、N76D、H120D、G195E、K235L;
c)S9E、N43R、N76D、S99F、S101L、S103T、V104I、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262E;並びに
d)S9E、N43R、N76D、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262E
からなる群から選択される置換の群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、又は5個のさらなる改変、好ましくは、置換を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、S3T、V4I、S99D、S101E、S103A、G160S、及びV205Iからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、又は7個のさらなる置換を含む。
【0064】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、I35ID、N76D、H120D、G195E、及びK235Lからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、又は5個のさらなる改変、好ましくは、置換を含む。
【0065】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、S9E、N43R、N76D、S99F、S101L、S103T、V104I、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、又は13個のさらなる置換を含む。
【0066】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、S9E、N43R、N76D、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、又は9個のさらなる置換を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換;好ましくは、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換;最も好ましくは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0068】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換;好ましくは、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換;最も好ましくは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0069】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換;好ましくは、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換;最も好ましくは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0070】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換;好ましくは、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換;最も好ましくは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0071】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換;好ましくは、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換;最も好ましくは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0072】
上記の置換に加えて、バリアントはさらに、1つ以上の他の位置で置換を含んでもよい。
【0073】
アミノ酸の変化は、タンパク質の折り畳み及び/又は活性に著しく影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換又は挿入;典型的には1~30アミノ酸の小規模な欠失;アミノ末端メチオニン残基などの小規模なアミノ末端又はカルボキシル末端伸長;最大20~25残基の小さいリンカーペプチド;又は正味の電荷又は別の機能を変えることにより精製を容易にする、ポリヒスチジン配列、抗原エピトープ又は結合ドメインなどの小規模な伸長である軽微なものであり得る。
【0074】
保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)並びに小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン及びメチオニン)の群に含まれる。概して比活性を変えないアミノ酸置換は、当該技術分野で知られており、例えば、H.Neurath and R.L.Hill,1979,In,The Proteins,Academic Press,New Yorkに記載されている。一般的な置換としては、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、及びAsp/Glyである。
【0075】
或いは、アミノ酸変化は、ポリペプチドの物理化学的特性が変えられるような性質のものである。例えば、アミノ酸変化は、ポリペプチドの熱安定性を改善する場合があり、基質特異性を変える場合があり、至適pHを変える場合などがある。
【0076】
ポリペプチドにおいて必須のアミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの当該技術分野で知られる手順に従って同定され得る(Cunningham and Wells,1989,Science 244:1081-1085)。後者の技術では、分子の活性に極めて重要なアミノ酸残基を同定するために、分子内のあらゆる残基に単一のアラニン変異を導入して、結果として生じる変異体分子を活性について試験する。また、Hilton et al.,1996,J.Biol.Chem.271:4699-4708も参照されたい。酵素の活性部位又は他の生物学的相互作用は、推定される接触部位アミノ酸の変異との組み合わせにより、核磁気共嗚、結晶構造解析、電子回折又は光親和性標識などの技術によって測定される構造の物理的分析によって判定することもできる。例えば、de Vos et al.,1992,Science 255:306-312;Smith et al.,1992,J.Mol.Biol.224:899-904;Wlodaver et al.,1992,FEBS Lett.309:59-64を参照されたい。必須アミノ酸の同一性はまた、関連ポリペプチドとのアラインメントから推測され得る。
【0077】
本発明のバリアントは、改善された溶解性を有する。特に、本発明のバリアントは、下の実施例1に記載されるとおり、例えば、バリアントを発現する宿主細胞の発酵中のプロテアーゼ結晶形成の低減、並びにそのようなプロテアーゼ結晶の溶解性の増大を呈する。改善された溶解性は、当業者に知られる様々な方法を使用する際に決定され得る。好ましくは、改善された溶解性は、下の実施例1に従ってプロテアーゼ結晶形成の低減又はプロテアーゼ結晶溶解性の増大として決定される。
【0078】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換を有しない他の点で同一であるプロテアーゼと比較して改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換を有さず且つX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を有しない同一のプロテアーゼと比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。
【0079】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、10~30℃で、好ましくは、15~25℃で、より好ましくは、約20℃で、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する。
【0080】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された溶解性を有する。
【0081】
好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、15~25℃及びpH4~6で改善された溶解性を有する。好ましくは、プロテアーゼバリアントは、20℃及びpH4~5で改善された溶解性を有する。
【0082】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、配列番号1と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。
【0083】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、配列番号3と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。
【0084】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、配列番号4と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。
【0085】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、配列番号5と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。
【0086】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、配列番号6と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。
【0087】
改善された溶解性に加えて、本発明のバリアントは、親と比較して1つ以上の改善された特性を有し得る。1つ以上の改善された特性は、触媒効率、触媒速度、化学的安定性、酸化安定性、pH活性、pH安定性、タンパク質分解安定性、比活性、保管条件下での安定性、基質結合、基質切断、基質特異性、基質安定性、表面特性、熱活性、及び熱安定性からなる群から選択され得る。
【0088】
本発明のバリアントは、プロテアーゼ活性、好ましくは、同等又は改善されたプロテアーゼ活性を有する。一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換を有しない他の点で同一であるプロテアーゼと比較して改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、プロテアーゼバリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を有さず且つX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を有しない同一のプロテアーゼと比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%改善されたプロテアーゼ活性を有する。
【0089】
一実施形態では、バリアントは、配列番号1のプロテアーゼ活性と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。
【0090】
一実施形態では、バリアントは、配列番号3のプロテアーゼ活性と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。
【0091】
一実施形態では、バリアントは、配列番号4のプロテアーゼ活性と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。
【0092】
一実施形態では、バリアントは、配列番号5のプロテアーゼ活性と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。
【0093】
一実施形態では、バリアントは、配列番号6のプロテアーゼ活性と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。
【0094】
一態様では、本発明は、配列番号1と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有するポリペプチド、好ましくは、単離された又は精製されたポリペプチドに関し、バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される置換を含み、バリアントは、プロテアーゼ活性を有し、且つ位置番号は、配列番号2の付番に基づく。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215R、A215Q、A125N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される置換を含む。一実施形態では、バリアントは、配列番号1と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。一実施形態では、バリアントは、配列番号1と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、10~30℃で、好ましくは、15~25℃で、より好ましくは、約20℃で、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された安定性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Kを有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Rを有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Qを有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Nを有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Sを有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Tを有する配列番号1を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0095】
一態様では、本発明は、配列番号3と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有するポリペプチド、好ましくは、単離された又は精製されたポリペプチドに関し、バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み、バリアントは、S3T、V4I、S99D、S101E、S103A、G160S、及びV205Iからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、又は7個のさらなる置換を含み、バリアントは、プロテアーゼ活性を有し、且つ位置番号は、配列番号2の付番に基づく。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215R、A215Q、A125N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。一実施形態では、バリアントは、配列番号3と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。一実施形態では、バリアントは、配列番号3と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、10~30℃で、好ましくは、15~25℃で、より好ましくは、約20℃で、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された安定性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Kを有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Rを有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Qを有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Nを有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Sを有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Tを有する配列番号3を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0096】
一態様では、本発明は、配列番号4と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有するポリペプチド、好ましくは、単離された又は精製されたポリペプチドに関し、バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み、バリアントは、I35ID、N76D、H120D、G195E、及びK235Lからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、又は5個のさらなる置換を含み、バリアントは、プロテアーゼ活性を有し、且つ位置番号は、配列番号2の付番に基づく。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215R、A215Q、A125N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。一実施形態では、バリアントは、配列番号4と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。一実施形態では、バリアントは、配列番号4と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、10~30℃で、好ましくは、15~25℃で、より好ましくは、約20℃で、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された安定性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Kを有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Rを有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Qを有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Nを有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Sを有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Tを有する配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0097】
一態様では、本発明は、配列番号5と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有するポリペプチド、好ましくは、単離された又は精製されたポリペプチドに関し、バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み、バリアントは、S9E、N43R、N76D、S99F、S101L、S103T、V104I、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、又は13個のさらなる置換を含み、バリアントは、プロテアーゼ活性を有し、且つ位置番号は、配列番号2の付番に基づく。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215R、A215Q、A125N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。一実施形態では、バリアントは、配列番号5と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。一実施形態では、バリアントは、配列番号5と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、10~30℃で、好ましくは、15~25℃で、より好ましくは、約20℃で、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された安定性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Kを有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Rを有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Qを有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Nを有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Sを有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Tを有する配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0098】
一態様では、本発明は、配列番号6と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有するポリペプチド、好ましくは、単離された又は精製されたポリペプチドに関し、バリアントは、X215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を含み、バリアントは、S9E、N43R、N76D、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、又は9個のさらなる置換を含み、バリアントは、プロテアーゼ活性を有し、且つ位置番号は、配列番号2の付番に基づく。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215R、A215Q、A125N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。好ましい実施形態では、バリアントは、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される第1の置換を含む。一実施形態では、バリアントは、配列番号6と比較して、同等又は例えば、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上改善されたプロテアーゼ活性を有する。一実施形態では、バリアントは、配列番号6と比較して、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又はそれ以上の改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、10~30℃で、好ましくは、15~25℃で、より好ましくは、約20℃で、最も好ましくは、20℃で改善された溶解性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、pH3~9で、好ましくは、pH4~8で、より好ましくは、pH4~6で、さらにより好ましくは、pH4~5で、最も好ましくは、pH4.5で改善された安定性を有する。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Kを有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Rを有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Qを有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Nを有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Sを有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、バリアントは、置換A215Tを有する配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0099】
親プロテアーゼ
本発明のプロテアーゼバリアントは、任意の親プロテアーゼに基づき得る。親は、天然に存在する(野生型)ポリペプチド又はそのバリアント若しくは断片であり得る。
【0100】
一態様では、親プロテアーゼは、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列番号1のポリペプチドに対する配列同一性を有し、且つプロテアーゼ活性を有する。ある実施形態では、親のアミノ酸配列は、配列番号1のポリペプチドから最大20個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個だけ異なる。ある実施形態では、親は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0101】
一態様では、親プロテアーゼは、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列番号3のポリペプチドに対する配列同一性を有し、且つプロテアーゼ活性を有する。ある実施形態では、親のアミノ酸配列は、配列番号3のポリペプチドから最大20個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個だけ異なる。ある実施形態では、親は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0102】
一態様では、親プロテアーゼは、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列番号4のポリペプチドに対する配列同一性を有し、且つプロテアーゼ活性を有する。ある実施形態では、親のアミノ酸配列は、配列番号4のポリペプチドから最大20個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個だけ異なる。ある実施形態では、親は、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0103】
一態様では、親プロテアーゼは、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列番号5のポリペプチドに対する配列同一性を有し、且つプロテアーゼ活性を有する。ある実施形態では、親のアミノ酸配列は、配列番号5のポリペプチドから最大20個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個だけ異なる。ある実施形態では、親は、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0104】
一態様では、親プロテアーゼは、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列番号6のポリペプチドに対する配列同一性を有し、且つプロテアーゼ活性を有する。ある実施形態では、親のアミノ酸配列は、配列番号6のポリペプチドから最大20個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個だけ異なる。ある実施形態では、親は、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0105】
親ポリペプチドは、一方のポリペプチドの領域がもう一方のポリペプチドの領域のN末端又はC末端で融合されているハイブリッドポリペプチドであり得る。
【0106】
親は、別のポリペプチドが本発明のポリペプチドのN末端又はC末端で融合されている融合ポリペプチド又は切断可能な融合ポリペプチドであり得る。融合ポリペプチドは、別のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを本発明のポリヌクレオチドに融合させることにより生成される。融合ポリペプチドを生成する技術は、当該技術分野で知られており、ポリペプチドをコードするコード配列を、それらがインフレームであり、且つ融合ポリペプチドの発現が同じプロモーター及びターミネーターの制御下にあるように結合することを含む。融合ポリペプチドはまた、融合ポリペプチドが翻訳後に作製されるインテイン技術を使用して構築され得る(Cooper et al.,1993,EMBO J.12:2575-2583;Dawson et al.,1994,Science 266:776-779)。
【0107】
融合ポリペプチドはさらに、2つのポリペプチド間の切断部位を含むことができる。融合タンパク質が分泌されると、この部位が切断されて2つのポリペプチドが遊離する。開裂部位の例としては、下記で開示されている部位が挙げられるが、これらに限定されない:Martin et al.,2003,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.3:568-576;Svetina et al.,2000,J.Biotechnol.76:245-251;Rasmussen-Wilson et al.,1997,Appl.Environ.Microbiol.63:3488-3493;Ward et al.,1995,Biotechnology 13:498-503;及びContreras et al.,1991,Biotechnology 9:378-381;Eaton et al.,1986,Biochemistry 25:505-512;Collins-Racie et al.,1995,Biotechnology 13:982-987;Carter et al.,1989,Proteins:Structure,Function,and Genetics 6:240-248;及びStevens,2003,Drug Discovery World 4:35-48。
【0108】
親は、任意の属の微生物から得てもよい。本発明の目的のために、「から得られる」という用語は、所与の供給源に関連して本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドによりコードされる親が、供給源により産生されているか又は供給源からのポリヌクレオチドが挿入されている株により産生されていることと意味する。一態様では、親は細胞外に分泌される。
【0109】
親は、細菌のプロテアーゼであり得る。例えば、親は、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、若しくはストレプトマイセス属(Streptomyces)のプロテアーゼなどのグラム陽性細菌性ポリペプチド、又はカンピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イリオバクター属(Ilyobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、若しくはウレアプラズマ属(Ureaplasma)のプロテアーゼなどのグラム陰性細菌性ポリペプチドであり得る。
【0110】
一態様では、親は、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビ(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ロータス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)又はバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のプロテアーゼである。
【0111】
別の態様では、親は、ストレプトコッカス・エキシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、又はストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス(Streptococcus equi subsp.Zooepidemicus)のプロテアーゼである。
【0112】
別の態様では、親は、ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、又はストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)のプロテアーゼである。
【0113】
前述の種に関して、本発明は、完全及び不完全な状態の両方並びにそれらが知られている種の名称にかかわらず、他の分類学上の均等物、例えば、アナモルフを包含することが理解されるであろう。当業者は、適切な均等物の同一性を容易に認識するであろう。
【0114】
これらの種の株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)及びAgricultural Research Service Patent Culture Collection、Northern Regional Research Center(NRRL)などのいくつかのカルチャーコレクションにおいて公的に容易に利用可能である。
【0115】
親は、上記のプローブを用いて、自然界(例えば、土壌、堆肥、水など)から単離される微生物又は天然の物質(例えば、土壌、堆肥、水など)から直接得られるDNA試料を含む他の供給源から同定され且つ得られてもよい。自然の生育地から微生物及びDNAを直接単離するための手法は、当該技術分野においてよく知られている。次に、親をコードするポリヌクレオチドを、別の微生物のゲノムDNA若しくはcDNAライブラリー又は混合DNA試料を同様にスクリーニングすることによって得てもよい。1つ又は複数のプローブを用いて親をコードするポリヌクレオチドを検出してから、当業者に知られる技術を利用することにより、ポリヌクレオチドを単離又はクローン化することができる(例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい)。
【0116】
プロテアーゼバリアントの作製
本発明はまた、プロテアーゼバリアントを得るための方法であって、
(a)親プロテアーゼにX215K、X215R、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択される第1の置換を導入すること;及びX3T(例えば、S3T)、X4I(例えば、V4I)、X9E(例えば、S9E)、I35ID、X43R(例えば、N43R)、X76D(例えば、N76D)、X99D(例えば、S99D、X99F(例えば、S99F)、X101E(例えば、S101E)、X101L(例えば、S101L)、X103A(例えば、S103A)、X103T(例えば、S103T)、X104I(例えば、V104I)、X120D(例えば、H120D)、X160S(例えば、G160S)、X195E(例えば、G195E)、X205I(例えば、V205I)、X206L(例えば、Q206L)、X209W(例えば、Y209W)、X235L(例えば、K235L)、X259D(例えば、S259D)、X261W(例えば、N261W)、及びX262E(例えば、L262E)からなる群から選択される少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換を導入すること(バリアントは、プロテアーゼ活性を有する);並びに
(b)バリアントを回収すること
を含む方法に関する。
【0117】
一実施形態では、第1の置換は、X215K、X215Q、X125N、X215S、及びX215Tからなる群から選択され;好ましくは、第1の置換は、X215K、X215Q、X125N、及びX215Tからなる群から選択される。
【0118】
一実施形態では、第1の置換は、A215K、A215R、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択され;好ましくは、第1の置換は、A215K、A215Q、A215N、A215S、及びA215Tからなる群から選択され;最も好ましくは、第1の置換は、A215K、A215Q、A215N、及びA215Tからなる群から選択される。
【0119】
一実施形態では、少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換は、S3T、V4I、S9E、I35ID、N43R、N76D、S99D、S99F、S101E、S101L、S103A、S103T、V104I、H120D、G160S、G195E、V205I、Q206L、Y209W、K235L、S259D、N261W、及びL262Eからなる群から選択される。
【0120】
一実施形態では、少なくとも3個のさらなる改変、好ましくは、置換は、
a)S3T、V4I、S99D、S101E、S103A、G160S、及びV205I;
b)I35ID、N76D、H120D、G195E、K235L;
c)S9E、N43R、N76D、S99F、S101L、S103T、V104I、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262E;並びに
d)S9E、N43R、N76D、V205I、Q206L、Y209W、S259D、N261W、及びL262E
からなる群の1つから選択される。
【0121】
バリアントは、部位特異的変異誘発、合成的遺伝子構築、半合成的遺伝子構築、ランダム変異誘発、シャッフリングなどの当該技術分野で知られる任意の変異誘発手順を使用して調製され得る。
【0122】
部位特異的変異誘発は、1つ以上の変異が親をコードするポリヌクレオチドにおける1つ以上の定義された部位で導入される手法である。
【0123】
部位特異的変異誘発は、所望の変異を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの使用を含むPCRによってインビトロで達成され得る。部位特異的変異誘発は、親をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド中の部位での制限酵素による開裂、及びその後のこのポリヌクレオチド中の変異を含むオリゴヌクレオチドのライゲーションを含むカセット変異誘発によってもインビトロで実施され得る。通常、プラスミド及びオリゴヌクレオチドを消化する制限酵素は同一であり、プラスミド及びインサートの付着末端が互いにライゲートされ得る。例えば、Scherer and Davis,1979,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:4949-4955;及びBarton et al.,1990,Nucleic Acids Res.18:7349-4966を参照されたい。
【0124】
部位特異的変異誘発はまた、当該技術分野で知られる方法によってインビボで達成され得る。例えば、米国特許出願公開第2004/0171154号明細書;Storici et al.,2001,Nature Biotechnol.19:773-776;Kren et al.,1998,Nat.Med.4:285-290;及びCalissano and Macino,1996,Fungal Genet.Newslett.43:15-16を参照されたい。
【0125】
任意の部位特異的変異誘発手順が、本発明において使用され得る。バリアントを調製するために使用され得る利用可能なキットが多数市販されている。
【0126】
合成遺伝子構築法は、目的のポリペプチドをコードするために設計されたポリヌクレオチド分子のインビトロ合成を必要とする。遺伝子合成を、Tianら(2004,Nature 432:1050-1054)により説明されている多重マイクロチップベース技術、及びオリゴヌクレオチドが合成されて光プログラム可能なマイクロ流体チップ上で組み立てられる同様の技術等の多くの技術を利用して実施し得る。
【0127】
単一又は複数のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入は、既知の変異誘発、組み換え及び/又はシャッフリングの方法、続いてReidhaar-Olson and Sauer,1988,Science 241:53-57;Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86;2152-2156;国際公開第95/17413号パンフレット;又は国際公開第95/22625号パンフレットに開示されているものなどの関連するスクリーニング手順を使用してなされ、試験され得る。使用され得る他の方法としては、エラープローンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,1991,Biochemistry 30;10832-10837;米国特許第5,223,409号明細書;国際公開第92/06204号パンフレット)及び領域特異的変異誘発(Derbyshire et al.,1986,Gene 46;145;Ner et al.,1988,DNA 7;127)が挙げられる。
【0128】
変異誘発/シャッフリング方法は、宿主細胞によって発現されるクローン化された変異誘発ポリペプチドの活性を検出するためのハイスループットの自動化されたスクリーニング方法と組み合わされ得る(Ness et al.,1999,Nature Biotechnology 17:893-896)。活性ポリペプチドをコードする変異が誘発されたDNA分子を宿主細胞から回収し、当該技術分野における標準的な方法を使用して容易に配列決定することができる。この方法により、ポリペプチド中の個々のアミノ酸残基の重要性の迅速な決定が可能になる。
【0129】
半合成的遺伝子構築は、合成的遺伝子構築、及び/又は部位特異的変異誘発、及び/又はランダム変異誘発、及び/又はシャッフリングの態様を組み合わせることによって達成される。半合成構築は、PCR技術と組み合わされた、合成されるポリヌクレオチド断片を利用するプロセスに代表される。したがって、遺伝子の規定された領域は、新規に合成されてもよいが、他の領域は、部位特異的変異誘発プライマーを使用して増幅されてもよく、さらに他の領域は、エラープローンPCR又は非エラープローンPCR増幅にかけられてもよい。次に、ポリヌクレオチド部分配列は、シャッフリングされてもよい。
【0130】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明のバリアントをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0131】
ポリヌクレオチドを単離するか又はクローン化するために使用される技術は、当該技術分野で知られ、ゲノムDNA若しくはcDNA、又はその組み合わせからの単離を含む。ゲノムDNAからのポリヌクレオチドのクローン化は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は共有された構造的特徴を有するクローン化されたDNA断片を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニングを使用することによって達成され得る。例えば、Innis et al.,1990,PCR:A Guide to Methods and Application,Academic Press,New Yorkを参照されたい。リガーゼ連鎖反応(LCR)、ライゲーション活性化転写(LAT)及びポリヌクレオチドに基づく増幅(NASBA)などの他の核酸増幅手順が使用されてもよい。
【0132】
核酸構築物
本発明はまた、本発明のバリアントをコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物であって、ポリヌクレオチドが、制御配列と適合する条件下で好適な宿主細胞においてコード配列の発現を誘導する1つ以上の制御配列に作動可能に連結されている核酸構築物に関する。
【0133】
ポリヌクレオチドは、バリアントの発現をもたらす様々な方法において操作され得る。ベクターに挿入する前に、発現ベクターに応じてポリヌクレオチドを操作することが望ましいか、又は必要であり得る。組み換えDNA法を利用した、ポリヌクレオチドを改変するための技法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0134】
制御配列は、プロモーター(本発明のバリアントをコードするポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞によって認識されるポリヌクレオチド)であってもよい。プロモーターは、変異体の発現を媒介する転写制御配列を含んでいる。プロモーターは、変異体、短縮型及びハイブリッドプロモーターを含む、宿主細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであってもよく、宿主と同種又は異種のいずれかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得てもよい。
【0135】
細菌性宿主細胞内で本発明の核酸構築物の転写を誘導する好適なプロモーターの例は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)のα-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のマルトース生成アミラーゼ遺伝子(amyM)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のxylA及びxylB遺伝子、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のcryIIIA遺伝子(Agaisse and Lereclus,1994,Molecular Microbiology 13;97-107)、大腸菌(E.coli)のLacオペロン、大腸菌(E.coli)のtrcプロモーター(Egon et al.,1988,Gene 69;301-315)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)のアガラーゼ遺伝子(dagA)、及び原核生物のβ-ラクタマーゼ遺伝子(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-3731)から得られるプロモーター、並びにtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25)である。さらなるプロモーターは、Gilbert et al.,1980,Scientific American 242:74-94中の”Useful proteins from recombinant bacteria”;及びSambrook et al.,1989に記載される。国際公開第99/43835号パンフレットでは、タンデムプロモーターの例が開示されている。
【0136】
糸状真菌宿主細胞において本発明の核酸構築物の転写を誘導するための好適なプロモーターの例は、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)のアセトアミダーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の中性アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の酸安定性アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼ(glaA)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のトリオースリン酸イソメラーゼ、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のトリプシン様プロテアーゼ(国際公開第96/00787号パンフレット)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ(国際公開第00/56900号パンフレット)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)のダリア(Daria)(国際公開第00/56900号パンフレット)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)のクイン(Quinn)(国際公開第00/56900号パンフレット)、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)のリパーゼ、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)のアスパラギン酸プロテイナーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のベータ-グルコシダーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼIII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のベータ-キシロシダーゼ、及びトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の翻訳伸長因子から得られるプロモーター、並びにNA2-tpiプロモーター(非翻訳リーダーがアスペルギルス属(Aspergillus)のトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーによって置き換えられたアスペルギルス属(Aspergillus)の中性アルファ-アミラーゼ遺伝子に由来する改変プロモーターであり;非限定的な例としては、非翻訳リーダーが、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーによって置き換えられたアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の中性アルファ-アミラーゼ遺伝子に由来する改変プロモーターが挙げられる);並びにその変異体、短縮型及びハイブリッドプロモーターが挙げられる。他のプロモーターは、米国特許第6,011,147号明細書に記載される。
【0137】
酵母宿主において、有用なプロモーターは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のエノラーゼ(ENO-1)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のアルコール脱水素酵素/グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のメタロチオネイン(CUP1)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の3-ホスホグリセリン酸キナーゼに関する遺伝子から得られる。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは、Romanos et al.,1992,Yeast 8:423-488によって記載される。
【0138】
制御配列はまた、転写を終了するために宿主細胞によって認識される転写ターミネーターであってもよい。ターミネーターは、バリアントをコードするポリヌクレオチドの3’末端に作動可能に連結される。宿主細胞中で機能的な任意のターミネーターが本発明において使用され得る。
【0139】
細菌性宿主細胞のための好ましいターミネーターは、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)のアルカリ性プロテアーゼ(aprH)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のα-アミラーゼ(amyL)、及び大腸菌(Escherichia coli)のリボソームRNA(rrnB)の遺伝子から得られる。
【0140】
糸状真菌宿主細胞のために好ましいターミネーターは、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)のアセトアミダーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)のアントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のアルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)のトリプシン様プロテアーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のベータ-グルコシダーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼIII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のベータ-キシロシダーゼ及びトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の翻訳伸長因子に関する遺伝子から得られる。
【0141】
酵母宿主のための好ましいターミネーターは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のエノラーゼ、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のシトクロムC(CYC1)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素に関する遺伝子から得られる。酵母宿主細胞のための他の有用なターミネーターは、Romanos et al.,1992、上掲によって記載される。
【0142】
制御配列は、プロモーターの下流及び遺伝子の発現を増大させる遺伝子のコード配列の上流のmRNA安定化領域でもあり得る。
【0143】
好適なmRNA安定化領域の例は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のcryIIIA遺伝子(国際公開第94/25612号パンフレット)及びバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)SP82遺伝子(Hue et al.,1995,Journal of Bacteriology 177:3465-3471)から得られる。
【0144】
制御配列は、宿主細胞による翻訳に重要であるmRNAのリーダー非翻訳領域でもあり得る。リーダーは、バリアントをコードするポリヌクレオチドの5’末端に作動可能に連結される。宿主細胞内で機能的な任意のリーダーを使用してもよい。
【0145】
糸状真菌宿主細胞のために好ましいリーダーは、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ及びアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)のトリオースリン酸イソメラーゼに関する遺伝子から得られる。
【0146】
酵母宿主細胞のための好適なリーダーは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のエノラーゼ(ENO-1)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のα因子及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のアルコール脱水素酵素/グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(ADH2/GAP)に関する遺伝子から得られる。
【0147】
制御配列はまた、ポリヌクレオチドの3’末端に作動可能に連結された配列であり、転写されるとき、宿主細胞によってシグナルとして認識され、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するポリアデニル化配列であり得る。宿主細胞内で機能的な任意のポリアデニル化配列を使用してもよい。
【0148】
糸状真菌宿主細胞のための好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)のアントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のα-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のトリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0149】
酵母菌宿主細胞のための有用なポリアデニル化配列は、Guo and Sherman,1995,Mol.Cellular Biol.15:5983-5990によって記載される。
【0150】
制御配列はまた、バリアントのN末端に連結されるシグナルペプチドをコードし、且つバリアントを細胞の分泌経路に導くシグナルペプチドコード領域であり得る。ポリヌクレオチドのコード配列の5’末端は、バリアントをコードするコード配列のセグメントと共に、翻訳読み枠において本来連結されるシグナルペプチドコード配列を本質的に含有し得る。或いは、コード配列の5’末端は、コード配列に対して外来であるシグナルペプチドコード配列を含み得る。外来シグナルペプチドコード配列は、コード配列がシグナルペプチドコード配列を天然に含有しない場合に必要とされる場合がある。或いは、外来シグナルペプチドコード配列により、バリアントの分泌を増強するために天然のシグナルペプチドコード配列を単に置き換えてもよい。しかしながら、発現されたバリアントを宿主細胞の分泌経路に導く任意のシグナルペプチドコード配列が使用され得る。
【0151】
細菌宿主細胞のための効果的なシグナルペプチドコード配列は、バチルス属(Bacillus)NCIB 11837マルトース生成アミラーゼ、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のサブチリシン、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のベータ-ラクタマーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のアルファ-アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)の中性プロテアーゼ(nprT、nprS、nprM)及びバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のprsAに関する遺伝子から得られるシグナルペプチドコード配列である。さらなるシグナルペプチドは、Simonen and Palva,1993,Microbiological Reviews 57:109-137によって記載される。
【0152】
糸状真菌宿主細胞のための効果的なシグナルペプチドコード配列は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のグルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)のセルラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)のエンドグルカナーゼV、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)のリパーゼ及びリゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)のアスパラギン酸プロテイナーゼに関する遺伝子から得られるシグナルペプチドコード配列である。
【0153】
酵母菌宿主細胞のための有用なシグナルペプチドは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のα因子、及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のインベルターゼの遺伝子から得られる。他の有用なシグナルペプチドコード配列は、Romanos et al.,1992、上掲によって記載される。
【0154】
制御配列はまた、バリアントのN末端に位置するプロペプチドをコードするポリペプチドコード配列であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は場合によっては酵素前駆体)として知られる。プロポリペプチドは、一般的に不活性であり、このプロポリペプチドからのプロペプチドの触媒的又は自己触媒的な開裂により、活性バリアントに変換され得る。プロペプチドコード配列は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のアルカリプロテアーゼ(aprE)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の中性プロテアーゼ(nprT)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)のラッカーゼ(国際公開第95/33836号パンフレット)、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)のアスパラギン酸プロテイナーゼ、及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のα因子の遺伝子から得られてもよい。
【0155】
シグナルペプチド及びプロペプチド配列の両方が存在する場合、プロペプチド配列は、バリアントのN末端の隣に位置し、シグナルペプチド配列は、プロペプチド配列のN末端の隣に位置する。
【0156】
宿主細胞の増殖に対してバリアントの発現を制御する制御配列を加えることが望ましい場合もある。制御配列の例は、制御化合物の存在を含む化学的刺激又は物理的刺激に反応して遺伝子の発現をオン又はオフにするものである。原核生物系での制御配列としては、lacオペレーター系、tacオペレーター系、及びtrpオペレーター系が挙げられる。酵母では、ADH2系又はGAL1系が使用され得る。糸状真菌では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のグルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアルファ-アミラーゼプロモーター及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のグルコアミラーゼプロモーター、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドロラーゼIプロモーター及びトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドロラーゼIIプロモーターが使用され得る。制御配列の他の例は、遺伝子増幅を可能にするものである。真核生物系では、これらの制御配列として、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び重金属により増幅されるメタロチオネイン遺伝子が挙げられる。これらの場合、バリアントをコードするポリヌクレオチドは、制御配列に作動可能に連結されているであろう。
【0157】
発現ベクター
本発明はまた、本発明のバリアントをコードするポリヌクレオチド、プロモーター、並びに転写及び翻訳終止シグナルを含む組み換え発現ベクターに関する。1つ以上の都合のよい制限部位を含み、そのような部位でバリアントをコードするポリヌクレオチドを挿入又は置換することを可能にし得る組み換え発現ベクターを作製するために、様々なヌクレオチド及び制御配列を共に連結してもよい。或いは、発現に適切なベクターにポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む核酸構築物を挿入することによってポリヌクレオチドを発現させてもよい。発現ベクターを作製する際に、コード配列が発現に適切な制御配列に作動可能に連結されるように、コード配列をベクター内に配置する。
【0158】
組み換え発現ベクターは、組み換えDNA手順を好都合に施すことができ、ポリヌクレオチドの発現をもたらすことが可能な任意のベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)であり得る。このベクターの選択は、典型的には、このベクターと、このベクターが導入される宿主細胞との適合性に依存することになる。このベクターは、直鎖状又は閉環状のプラスミドであり得る。
【0159】
ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、その複製が染色体複製とは独立した染色体外のエレメントとして存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、微小染色体、又は人工染色体であり得る。このベクターは、確実に自己複製するための任意の手段を含み得る。代わりに、このベクターは、宿主細胞に導入された場合にゲノムに組み込まれ、組み込まれている染色体と一緒に複製されるものであり得る。さらに、宿主細胞のゲノムに導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む単一のベクター若しくはプラスミド又は2つ以上のベクター若しくはプラスミドが使用され得る。
【0160】
ベクターは、好ましくは、形質転換されたか、トランスフェクトされたか、形質導入されたか、又は同類の細胞の容易な選択を可能にする1つ以上の選択マーカーを含有する。選択マーカーは、遺伝子であって、その産物が、殺生物剤又はウイルス抵抗性、重金属に対する抵抗性、栄養要求体に対する原栄養性、及び同類のものをもたらす、遺伝子である。
【0161】
細菌性選択マーカーの例には、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)若しくはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のdal遺伝子、又はアンピシリン耐性、クロラムフェニコール耐性、カナマイシン耐性、ネオマイシン耐性、スペクチノマイシン耐性、又はテトラサイクリン耐性などの抗生物質耐性を付与するマーカーがある。酵母宿主細胞のための好適なマーカーとしては、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3が挙げられるが、これらに限定されない。糸状真菌宿主細胞における使用のための選択マーカーとしては、adeA(ホスホリボシルアミノイミダゾール-スクシノカルボキサミドシンターゼ)、adeB(ホスホリボシル-アミノイミダゾールシンターゼ)、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニリルトランスフェラーゼ)、及びtrpC(アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの均等物が挙げられるが、これらに限定されない。アスペルギルス(Aspergillus)細胞中での使用に好ましいのは、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のamdS遺伝子及びpyrG遺伝子並びにストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)bar遺伝子である。トリコデルマ属(Trichoderma)細胞における使用に好ましいのは、adeA、adeB、amdS、hph、及びpyrG遺伝子である。
【0162】
選択マーカーは、国際公開第2010/039889号パンフレットに記載される二重の選択マーカー系であり得る。一態様では、二重の選択マーカーは、hph-tkの二重の選択マーカー系である。
【0163】
ベクターは、好ましくは、宿主細胞のゲノムへのベクターの組み込み又はゲノムと独立して細胞内でのベクターの自己複製を可能にするエレメントを含有する。
【0164】
宿主細胞ゲノム中への組み込みに関して、ベクターは、相同又は非相同組み換えによるゲノム中への組み込みのために、バリアントをコードするポリヌクレオチドの配列又はベクターの任意の他のエレメントに依拠し得る。代わりに、ベクターは、染色体中の正確な位置での宿主細胞のゲノムへの相同組み換えによる組み込みを指示するための追加のポリヌクレオチドを含む場合がある。正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込みエレメントは、十分な数の核酸(例えば、100~10,000個の塩基対、400~10,000個の塩基対、及び800~10,000個の塩基対)を含有するべきであり、この核酸は、相同組み換えの可能性を高めるために、対応する標的配列に対する配列同一性が高い。組み込みエレメントは、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同である任意の配列であり得る。さらに、組み込みエレメントは、ポリヌクレオチドをコードしていなくてもよいし、コードしていてもよい。一方、ベクターは、非相同組み換えにより宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0165】
自律的な複製の場合、ベクターは、問題の宿主細胞中でベクターが自律的に複製することを可能にする複製起点をさらに含み得る。複製起点は、細胞中で機能する自律的な複製を媒介する任意のプラスミド複製開始点であり得る。「複製起点」又は「プラスミド複製開始点」という用語は、プラスミド又はベクターがインビボで複製することを可能にするポリヌクレオチドを意味する。
【0166】
細菌性複製起点の例には、大腸菌(E.coli)で複製可能なpBR322、pUC19、pACYC177、及びpACYC184プラスミド、並びにバチルス属(Bacillus)で複製可能なpUB110、pE194、pTA1060、及びpAMβ1プラスミドの複製起点がある。
【0167】
酵母菌宿主細胞に使用される複製起点の例には、2ミクロンの複製起点であるARS1、ARS4、ARS1及びCEN3の組み合わせ、並びにARS4及びCEN6の組み合わせがある。
【0168】
糸状真菌細胞において有用な複製起点の例には、AMA1及びANS1がある(Gems et al.,1991,Gene 98;61-67;Cullen et al.,1987,Nucleic Acids Res.15:9163-9175;国際公開第00/24883号パンフレット)。AMA1遺伝子の単離並びにこの遺伝子を含むプラスミド又はベクターの構築は、国際公開第00/24883号パンフレットで開示されている方法に従って達成され得る。
【0169】
本発明のポリヌクレオチドの2つ以上のコピーを宿主細胞内に挿入して、バリアントの生成を増加させ得る。ポリヌクレオチドのコピー数を増大させることは、配列の少なくとも1つのさらなるコピーを宿主細胞ゲノムに組み込むことによって、又はポリヌクレオチドに増幅可能な選択マーカー遺伝子を含めることによって達成することができ、適切な選択剤の存在下で細胞を培養することにより、増幅されたコピーの選択マーカー遺伝子を含む細胞、したがってさらなるコピーのポリヌクレオチドを含む細胞を選択することができる。
【0170】
上記のエレメントを連結して本発明の組み換え発現ベクターを構築するために使用される手順は、当業者によく知られている(例えば、Sambrook et al.,1989)。
【0171】
宿主細胞
本発明はまた、組み換え宿主細胞であって、本発明のバリアントの生成を誘導する1つ以上の制御配列に作動可能に連結されている本発明のバリアントをコードするポリヌクレオチドを含む組み換え宿主細胞に関する。ポリヌクレオチドを含む構築物又はベクターは、構築物又はベクターが染色体組み込み体として又は先に記載される自己複製染色体外ベクターとして維持されるように宿主細胞中に導入される。「宿主細胞」という用語は、親細胞の任意の子孫であって、複製中に生じた変異に起因して親細胞と同一ではない子孫を包含する。宿主細胞の選択は、バリアントをコードする遺伝子及びその供給源に大きく依存することになる。
【0172】
宿主細胞は、バリアントの組み換え産生において有用な任意の細胞、例えば、原核生物又は真核生物であり得る。
【0173】
原核生物の宿主細胞は、任意のグラム陽性細菌又はグラム陰性細菌であり得る。グラム陽性細菌としては、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、及びストレプトマイセス属(Streptomyces)が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陰性細菌としては、カンピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イリオバクター属(Ilyobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、及びウレアプラズマ属(Ureaplasma)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
細菌宿主細胞は、限定されるものではないが、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ファーマス(Bacillus firmus)、バチルス・ロータス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の細胞を含む任意のバチルス属(Bacillus)細胞であり得る。好ましくは、細菌宿主細胞は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)細胞である。
【0175】
細菌宿主細胞は、限定されるものではないが、ストレプトコッカス・エキシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)及びストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス(Streptococcus equi subsp.Zooepidemicus)の細胞を含む任意のストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞でもあり得る。
【0176】
細菌宿主細胞は、限定されるものではないが、ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、及びストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の細胞を含む任意のストレプトマイセス属(Streptomyces)細胞でもあり得る。
【0177】
バチルス属(Bacillus)細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang and Cohen,1979,Mol.Gen.Genet.168:111-115を参照されたい)、コンピテント細胞形質転換(例えば、Young and Spizizen,1961,J.Bacteriol.81:823-829、又はDubnau and Davidoff-Abelson,1971,J.Mol.Biol.56:209-221を参照されたい)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawa and Dower,1988,Biotechniques 6:742-751を参照されたい)、又はコンジュゲーション(例えば、Koehler and Thorne,1987,J.Bacteriol.169:5271-5278を参照されたい)によって達成され得る。大腸菌(E.coli)へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換(例えば、Hanahan,1983,J.Mol.Biol.166:557-580を参照されたい)、又はエレクトロポレーション(例えば、Dower et al.,1988,Nucleic Acids Res.16:6127-6145を参照されたい)によって達成され得る。ストレプトマイセス属(Streptomyces)細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換、エレクトロポレーション(例えば、Gong et al.,2004,Folia Microbiol.(Praha)49:399-405を参照されたい)、コンジュゲーション(例えば、Mazodier et al.,1989,J.Bacteriol.171:3583-3585を参照されたい)、又は形質導入(例えば、Burke et al.,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:6289-6294を参照されたい)によって達成され得る。シュードモナス属(Pseudomonas)細胞へのDNAの導入は、エレクトロポレーション(例えば、Choi et al.,2006,J.Microbiol.Methods 64:391-397を参照されたい)、又はコンジュゲーション(例えば、Pinedo and Smets,2005,Appl.Environ.Microbiol.71:51-57を参照されたい)によって達成され得る。ストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞へのDNAの導入は、自然形質転換能(例えば、Perry and Kuramitsu,1981,Infect.Immun.32:1295-1297を参照されたい)、プロトプラスト形質転換(例えば、Catt and Jollick,1991,Microbios 68:189-207を参照されたい)、エレクトロポレーション(例えば、Buckley et al.,1999,Appl.Environ.Microbiol.65:3800-3804を参照されたい)、又はコンジュゲーション(例えば、Clewell,1981,Microbiol.Rev.45:409-436を参照されたい)によって達成され得る。しかしながら、宿主細胞にDNAを導入するための当該技術分野で知られる任意の方法が使用され得る。
【0178】
宿主細胞はまた、哺乳動物、昆虫、植物、又は真菌細胞などの真核生物であり得る。
【0179】
宿主細胞は、真菌細胞であり得る。本明細書で使用する場合、「真菌」としては、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)、並びに卵菌(Oomycota)及び全ての栄養胞子形成菌(Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UKで定義される)が挙げられる。
【0180】
真菌宿主細胞は、酵母細胞であり得る。本明細書で使用する場合、「酵母」としては、有子嚢胞子酵母(エンドミセス目(Endomycetales))、担子菌酵母、及び不完全菌類(不完全酵母菌綱(Blastomycetes))に属する酵母が挙げられる。酵母の分類は将来変更される場合があるため、本発明の目的上、酵母は、Biology and Activities of Yeast(Skinner,Passmore,and Davenport,editors,Soc.App.Bacteriol.Symposium Series No.9,1980)に記載されるとおりに定義されるものとする。
【0181】
酵母宿主細胞は、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)又はヤロウイア属(Yarrowia)の細胞、例えば、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシー(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロマイセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の細胞であり得る。
【0182】
真菌宿主細胞は、糸状真菌細胞であり得る。「糸状真菌」は、真菌類及び卵菌類の亜門の全ての糸状形態を含む(Hawksworth et al.,1995、上記参照で定義されている)。糸状真菌は、一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複雑な多糖で構成されている菌糸体の壁を特徴としている。栄養生長は菌糸伸長によるものであり、炭素異化は偏性好気性である。対照的に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母による栄養生長は単細胞葉状体の出芽によるものであり、炭素異化は発酵性であり得る。
【0183】
糸状真菌宿主細胞は、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、ヤケイロタケ属(Bjerkandera)、セリポリオプシス属(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、コプリナス属(Coprinus)、カワラタケ属(Coriolus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、フィリバシジウム属(Filibasidium)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ネオカリマスティクス属(Neocallimastix)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、フレビア属(Phlebia)、ピロミセス属(Piromyces)、ヒラタケ属(Pleurotus)、シゾフィラム属(Schizophyllum)、タラロマイセス属(Talaromyces)、サーモアスカス属(Thermoascus)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラディウム属(Tolypocladium)、ホウロクタケ属(Trametes)又はトリコデルマ属(Trichoderma)の細胞であり得る。
【0184】
例えば、糸状真菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベッセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パノンシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・サブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・サベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンズランジカム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トロピカム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナタム(Chrysosporium zonatum)、コプリナス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオラス・ハースタス(Coriolus hirsutus)、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロサム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ネウロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシカラー(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞であり得る。
【0185】
真菌細胞は、それ自体知られている方法において、プロトプラストの形成、プロトプラストの形質転換及び細胞壁の再生を含むプロセスにより形質転換され得る。アスペルギルス属(Aspergillus)及びトリコデルマ属(Trichoderma)宿主細胞の形質転換のための好適な手順は、欧州特許第238023号明細書、Yelton et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474、及びChristensen et al.,1988,Bio/Technology 6:1419-1422に記載されている。フザリウム(Fusarium)種の形質転換のための好適な方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147-156、及び国際公開第96/00787号パンフレットにより記載される。酵母は、Becker and Guarente,In Abelson,J.N.and Simon,M.I.,editors,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Methods in Enzymology,Volume 194,pp 182-187,Academic Press,Inc.,New York;Ito et al.,1983,J.Bacteriol.153:163;及びHinnen et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1920により記載される手順を使用して形質転換され得る。
【0186】
生成方法
本発明は、バリアントを生成する方法であって、(a)このバリアントの生成の助けとなる条件下で本発明の組み換え宿主細胞を培養すること;及び任意選択により(b)バリアントを回収することを含む方法にも関する。
【0187】
組み換え宿主細胞は、当該技術分野において知られる方法を使用してバリアントの生成に好適な栄養培地中で培養される。例えば、細胞は、好適な培地中において並びにバリアントの発現及び/又は単離が可能になる条件下で実験用又は工業用発酵槽におけるフラスコ振盪培養、又は小規模若しくは大規模発酵(連続、バッチ、フェドバッチ、又は固体状態の発酵を含む)により培養され得る。この培養を、当該技術分野で知られる手順を使用して、炭素源及び窒素源並びに無機塩を含む好適な栄養培地中で行う。好適な培地は、商業的供給業者から入手可能であるか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collectionのカタログで公開されている組成)に従って調製され得る。バリアントが栄養培地に分泌される場合、バリアントは、培地から直接的に回収することができる。バリアントが分泌されない場合、それは、細胞可溶化物から回収することができる。
【0188】
バリアントは、バリアントに特異的である当該技術分野において知られる方法を用いて検出され得る。これらの検出法としては、特異抗体の使用、酵素生成物の形成、又は酵素基質の消失が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、酵素アッセイを使用して、このバリアントの活性を決定してもよい。
【0189】
バリアントは、当該技術分野において知られる方法を使用して回収され得る。例えば、バリアントは、採取、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿を含むが、これらに限定されない従来の手順によって栄養培地から回収され得る。一態様では、全発酵ブロスが回収される。
【0190】
バリアントは、実質的に純粋なバリアントを得るための、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動)、溶解度の相違(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE又は抽出(例えば、Protein Purification,Janson and Ryden,editors,VCH Publishers,New York,1989を参照されたい)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において知られる様々な手順によって精製され得る。
【0191】
代替的な態様では、バリアントは回収されず、むしろバリアントを発現する本発明の宿主細胞がバリアントの供給源として使用される。
【0192】
発酵ブロス配合物又は細胞組成物
本発明は、本発明のバリアントを含む発酵ブロス配合物又は細胞組成物にも関する。発酵ブロス産物はさらに、例えば、細胞(本発明のバリアントをコードする遺伝子を含有する宿主細胞であって、目的のバリアントの産生に使用される宿主細胞を含む)、細胞片、バイオマス、発酵培地及び/又は発酵産物などの発酵プロセスで用いられる追加の成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、有機酸、死細胞及び/又は細胞片、並びに培養培地を含有する死滅した細胞の全ブロスである。
【0193】
用語「発酵ブロス」は、本明細書で使用する場合、回収及び/又は精製を全く行わないか又は最小限にのみ行う細胞発酵により産生される調製物を指す。例えば、発酵ブロスは、微生物培養物が飽和まで増殖させられ、タンパク質合成(例えば、宿主細胞による酵素の発現)及び細胞培養培地への分泌を可能にする炭素制限条件下でインキュベートされるときに生成される。発酵ブロスは、発酵の終了時に得られる発酵材料の未分画内容物又は分画内容物を含有し得る。通常、発酵ブロスは分画されず、微生物細胞(例えば、糸状真菌細胞)が、例えば、遠心分離により除去された後に存在する使用済みの培養培地及び細胞片を含む。いくつかの実施形態では、発酵ブロスは、使用済みの細胞培養培地、細胞外酵素、並びに生存可能な及び/又は生存不可能な微生物細胞を含有する。
【0194】
ある実施形態では、発酵ブロス配合物及び細胞組成物は、少なくとも1つの1~5炭素の有機酸及び/又はその塩を含む第1の有機酸構成成分並びに少なくとも1つの6炭素以上の有機酸及び/又はその塩を含む第2の有機酸構成成分を含む。特定の実施形態では、第1の有機酸構成成分は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、その塩又は前述の2つ以上の混合物であり、第2の有機酸構成成分は、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、4-メチル吉草酸、フェニル酢酸、その塩又は前述の2つ以上の混合物である。
【0195】
一態様では、組成物は、1つ又は複数の有機酸を含有し、且つ任意選択により死細胞及び/又は細胞片をさらに含有する。一実施形態では、死細胞及び/又は細胞片は、死滅した細胞の全ブロスから除去されて、これらの構成成分を含まない組成物が提供される。
【0196】
発酵ブロス配合物又は細胞組成物は、限定されないが、ソルビトール、塩化ナトリウム、ソルビン酸カリウム及び当該技術分野において知られる他のものを含む保存剤及び/又は抗菌剤(例えば、静菌剤)をさらに含み得る。
【0197】
死滅した細胞の全ブロス又は組成物は、発酵の終了時に得られる発酵材料の未分画内容物を含有し得る。通常、死滅した細胞の全ブロス又は組成物は、微生物細胞(例えば、糸状真菌細胞)が、飽和まで増殖させられ、タンパク質合成を可能にする炭素制限条件下でインキュベートされた後に存在する使用済みの培養培地及び細胞片を含有する。いくつかの実施形態では、死滅した細胞の全ブロス又は組成物は、使用済みの細胞培養培地、細胞外酵素、及び死滅した糸状真菌細胞を含有する。いくつかの実施形態では、死滅した細胞の全ブロス又は組成物中に存在する微生物細胞は、当該技術分野で知られる方法を使用して透過処理され、且つ/又は溶解され得る。
【0198】
本明細書に記載されるとおりの全ブロス又は細胞組成物は通常、液体であるが、死細胞、細胞片、培養培地構成成分及び/又は不溶性酵素などの不溶性構成成分を含有し得る。いくつかの実施形態では、不溶性構成成分は、清澄化された液体組成物を提供するために除去され得る。
【0199】
本発明の全ブロス配合物及び細胞組成物は、国際公開第90/15861号パンフレット又は国際公開第2010/096673号パンフレットに記載される方法によって作製され得る。
【0200】
洗剤組成物
本発明はまた、本発明のプロテアーゼバリアントを含む組成物、例えば、洗剤又はクリーニング組成物に関する。
【0201】
本発明はまた、本発明のプロテアーゼバリアントを含み且つ1種以上の洗剤構成成分及び/又は1種以上の追加の酵素をさらに含む組成物に関する。好ましい実施形態では、組成物は、1種以上の洗剤構成成分、特に、1種以上の天然に存在しない洗剤構成成分を含む洗剤組成物である。
【0202】
本発明はまた、本発明のプロテアーゼバリアントを含み且つアミラーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ(例えば、エンドグルカナーゼ)、クチナーゼ、ハロペルオキシゲナーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、キサンタナーゼ、リケナーゼ及びキシログルカナーゼ、又はこれらの任意の混合物からなる群から選択される1種以上の追加の酵素をさらに含む組成物に関する。
【0203】
洗剤組成物は、例えば、バー、均質錠剤、2層以上を有する錠剤、1つ以上のコンパートメントを有するパウチ、定型的若しくは緻密な粉末、顆粒、ペースト、ゲル、又は定型的、緻密な若しくは濃縮された液体の形態であってもよい。好ましい実施形態では、洗剤組成物は、液体又はゲル、特に、液体洗濯洗剤の形態である。
【0204】
本発明はまた、洗濯又は食器洗浄などの硬質表面クリーニングなどのクリーニングプロセスにおける本発明の組成物の使用に関する。
【0205】
洗剤組成物の追加の構成成分の選択は、当業者の技術の範囲内であり、下記の例示的な非限定的な構成成分を含む従来の成分を含む。構成成分の選択は、布地ケアのために、クリーニングされる布地の種類、汚れの種類及び/又は程度、クリーニングが行われる温度、並びに洗剤製品の配合の検討を含み得る。
【0206】
特定の実施形態では、洗剤組成物は、本発明のプロテアーゼバリアント並びに界面活性剤、ヒドロトロープ、ビルダー、コビルダー、キレーター又はキレート剤、漂白系又は漂白構成成分、ポリマー、布地色調剤、布地柔軟仕上げ剤、起泡促進剤、起泡抑制剤、分散剤、移染防止剤、蛍光増白剤、芳香剤、光学的光沢剤、殺菌剤、殺真菌剤、汚れ懸濁剤、汚れ遊離ポリマー、再付着防止剤、酵素阻害剤又は安定剤、酵素活性化剤、抗酸化剤、及び可溶化剤などの1種以上の天然に存在しない洗剤構成成分を含む。
【0207】
一実施形態では、本発明のプロテアーゼバリアントは、洗浄液の1リットル当たり0.01~200mgの酵素タンパク質、好ましくは、洗浄液の1リットル当たり0.05~50mgの酵素タンパク質、特に、洗浄液の1リットル当たり0.1~10mgの酵素タンパク質に対応する量で洗剤組成物に加えられ得る。
【0208】
自動食器洗浄(ADW)組成物は、例えば、組成物の重量で0.5~10%などの0.1~15%などの0.01%~20%などの0.001%~30%の酵素タンパク質を含み得る。
【0209】
洗濯のための顆粒組成物は、例えば、組成物の重量で0.05%~5%などの0.01%~10%などの0.001%~20%の酵素タンパク質を含み得る。
【0210】
洗濯のための液体組成物は、例えば、組成物の重量で0.1%~5%などの0.001%~7%などの0.0001%~10%の酵素タンパク質を含み得る。
【0211】
本発明のプロテアーゼバリアントなどの酵素は、従来の安定化剤、例えば、プロピレングリコール若しくはグリセロールなどのポリオール、糖若しくは糖アルコール、乳酸、ホウ酸、又はホウ酸誘導体、例えば、芳香族ホウ酸エステル、又は4-ホルミルフェニルボロン酸などのフェニルボロン酸誘導体を使用して安定化されてもよく、組成物は、例えば、国際公開第1992/19709号パンフレット及び国際公開第1992/19708号パンフレットに記載されるとおりに配合され得るか又は本発明によるバリアントは、国際公開第2005/105826号パンフレット及び国際公開第2009/118375号パンフレットに記載されるものなどのペプチドアルデヒド又はケトンを使用して安定化され得る。
【0212】
本発明のプロテアーゼバリアントは、
a)洗剤1リットル当たり少なくとも0.01mgの活性プロテアーゼバリアント、
b)2wt%~60wt%の少なくとも1種の界面活性剤
c)5wt%~50wt%の少なくとも1種のビルダー
を含む液体洗濯組成物などの液体洗濯組成物中で配合され得る。
【0213】
洗剤組成物は、洗濯のための顆粒洗剤中に配合され得る。そのような洗剤は、
a)組成物の1グラム当たり少なくとも0.01mgの活性プロテアーゼバリアント
b)アニオン性界面活性剤、好ましくは、5wt%~50wt%
c)非イオン性界面活性剤、好ましくは、1wt%~8wt%
d)炭酸塩、ゼオライト、リン酸ビルダー、カルシウム捕捉ビルダー又は錯化剤などのビルダー、好ましくは、5wt%~40wt%
を含み得る。
【0214】
下記の構成成分は、特定の機能性に従って一般的な見出しにより分類されているが、これは、当業者に理解されるように、構成成分が追加の機能性を含み得るため、限定として解釈されるべきではない。
【0215】
界面活性剤
洗剤組成物は、アニオン性及び/若しくはカチオン性及び/若しくは非イオン性及び/若しくは半極性及び/若しくは双性イオン性、又はこれらの混合物であり得る1種以上の界面活性剤を含んでもよい。特定の実施形態において、洗剤組成物は、1種以上の非イオン性界面活性剤及び1種以上のアニオン性界面活性剤の混合物を含む。界面活性剤は通常、約1%~約40%、又は約3%~約20%、又は約3%~約10%などの約0.1重量%~60重量%のレベルで存在する。界面活性剤は所望のクリーニング用途に基づいて選択され、当該技術分野において知られる任意の従来の界面活性剤を含む。洗剤における使用のために当該技術分野で知られる任意の界面活性剤が利用され得る。界面活性剤は、洗剤における表面張力を低下させ、クリーニングされている汚れを浮き上がらせ、分散させ、続いて洗い流す。
【0216】
含まれる場合、洗剤は通常、約1%~約40重量%のアニオン性界面活性剤を含有し、例えば、約5%~約15%、又は約20%~約25%を含む約5%~約30%のアニオン性界面活性剤を含有することになる。アニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、硫酸塩及びスルホン酸塩、特に、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、LASの異性体、分岐アルキルベンゼンスルホネート(BABS)、フェニルアルカンスルホネート、アルファ-オレフィンスルホネート(AOS)、オレフィンスルホネート、アルケンスルホネート、アルカン-2,3-ジイルビス(硫酸塩)、ヒドロキシアルカンスルホネート及びジスルホネート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのアルキルスルフェート(AS)、脂肪族アルコールスルフェート(FAS)、第1級アルコールスルフェート(PAS)、アルコールエーテルスルフェート(アルコールエトキシスルフェート又は脂肪族アルコールエーテルスルフェートとしても知られるAES又はAEOS又はFES)、第2級アルカンスルホネート(SAS)、パラフィンスルホネート(PS)、エステルスルホネート、スルホン化脂肪酸グリセロールエステル、メチルエステルスルホネート(MES)を含むα-スルホ脂肪酸メチルエステル(α-SFMe又はSES)、アルキル-又はアルケニルコハク酸、ドデセニル/テトラデセニルコハク酸(DTSA)、アミノ酸の脂肪酸誘導体、スルホコハク酸又は石鹸のジエステル及びモノエステル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0217】
含まれる場合、洗剤は通常、0重量%~約10重量%のカチオン性界面活性剤を含有することになる。カチオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキルジメチルエタノール第4級アミン(ADMEAQ)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム(DSDMAC)、及びアルキルベンジルジメチルアンモニウム、アルキル第4級アンモニウム化合物、アルコキシル化第4級アンモニウム(AQA)化合物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0218】
含まれる場合、洗剤は通常、約0.2重量%~約40重量%の非イオン性界面活性剤、例えば、約0.5%~約30%、特に、約1%~約20%、約3%~約10%、例えば、約3%~約5%、又は約8%~約12%を含有することになる。非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルコールエトキシレート(AE又はAEO)、アルコールプロポキシレート、プロポキシル化脂肪族アルコール(PFA)、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステル、例えばエトキシル化脂肪酸アルキルエステル及び/又はプロポキシル化脂肪酸アルキルエステル、アルキルフェノールエトキシレート(APE)、ノニルフェノールエトキシレート(NPE)、アルキルポリグリコシド(APG)、アルコキシル化アミン、脂肪酸モノエタノールアミド(FAM)、脂肪酸ジエタノールアミド(FADA)、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド(EFAM)、プロポキシル化脂肪酸モノエタノールアミド(PFAM)、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、又はグルコサミンのN-アシルN-アルキル誘導体(グルコサミド、GA又は脂肪酸グルカミド、FAGA)、並びに商標名SPAN及びTWEENの下で入手可能な製品、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0219】
含まれる場合、洗剤は通常、約0重量%~約10重量%の半極性界面活性剤を含有することになる。半極性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキルジメチルアミンオキシド、N-(ココアルキル)-N,N-ジメチルアミンオキシド及びN-(牛脂-アルキル)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシドなどのアミンオキシド(AO)、脂肪酸アルカノールアミド及びエトキシ化脂肪酸アルカノールアミド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0220】
含まれる場合、洗剤は通常、約0重量%~約10重量%の双性イオン性界面活性剤を含有することになる。双性イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ベタイン、アルキルジメチルベタイン、スルホベタイン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0221】
ビルダー及びコビルダー
洗剤組成物は、約0~65重量%、例えば、約5%~約45%の洗剤ビルダー若しくはコビルダー、又はこれらの混合物を含有し得る。食器洗浄洗剤では、ビルダーのレベルは通常、40~65%、特に50~65%である。ビルダー及びキレーターは、例えば、液体から金属イオンを除去することによって洗浄水を軟化する。ビルダー及び/又はコビルダーは、特に、Ca及びMgとの水溶性錯体を形成するキレート化剤であり得る。洗濯洗剤における使用のための当該技術分野知られる任意のビルダー及び/又はコビルダーが利用され得る。ビルダーの非限定的な例としては、ゼオライト、ジホスフェート(ピロホスフェート)、トリホスフェート、例えば三リン酸ナトリウム(STP又はSTPP)、カーボネート、例えば、炭酸ナトリウム、可溶性シリケート、例えばメタケイ酸ナトリウム、層状シリケート類(例えば、Hoechst製のSKS-6)、エタノールアミン、例えば2-アミノエタン-1-オール(MEA)、ジエタノールアミン(DEA、イミノジエタノールとしても知られる)、トリエタノールアミン(TEA、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールとしても知られる)、及びカルボキシメチルイヌリン(CMI)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0222】
洗剤組成物はまた、0~20重量%、例えば、約5%~約10%の洗剤コビルダー、又はこれらの混合物を含有し得る。洗剤組成物は、コビルダーを単独で又はビルダー例えばゼオライトビルダーと組み合わせて含み得る。コビルダーの非限定的な例としては、ポリアクリレートのホモポリマー又はそのコポリマー、例えば、ポリ(アクリル酸)(PAA)又はコポリ(アクリル酸/マレイン酸)(PAA/PMA)が挙げられる。さらなる非限定的な例としては、シトレート、キレート化剤、例えば、アミノカルボキシレート、アミノポリカルボキシレート、及びホスホネート、並びにアルキル又はアルケニルコハク酸が挙げられる。追加の具体例としては、2,2’,2’’-ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、イミノジコハク酸(IDS)、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMPA)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチレンホスホン酸)(DTPMPA又はDTMPA)、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(EDG)、アスパラギン酸-N-一酢酸(ASMA)、アスパラギン酸-N,N-二酢酸(ASDA)、アスパラギン酸-N-モノプロピオン酸(ASMP)、イミノジコハク酸(IDA)、N-(2-スルホメチル)-アスパラギン酸(SMAS)、N-(2-スルホエチル)アスパラギン酸(SEAS)、N-(2-スルホメチル)-グルタミン酸(SMGL)、N-(2-スルホエチル)グルタミン酸(SEGL)、N-メチルイミノ二酢酸(MIDA)、α-アラニン-N,N-二酢酸(α-ALDA)、セリン-N,N-二酢酸(SEDA)、イソセリン-N,N-二酢酸(ISDA)、フェニルアラニン-N,N-二酢酸(PHDA)、アントラニル酸-N,N-二酢酸(ANDA)、スルファニル酸-N,N-二酢酸(SLDA)、タウリン-N,N-二酢酸(TUDA)、及びスルホメチル-N,N-二酢酸(SMDA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチリデンジアミン-N,N’,N’’-三酢酸(HEDTA)、ジエタノールグリシン(DEG)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、並びにこれらの組み合わせ及び塩が挙げられる。さらなる例示的ビルダー及び/又はコビルダーは、例えば、国際公開第2009/102854号パンフレット、及び米国特許第5,977,053号明細書に記載されている。
【0223】
本発明のプロテアーゼバリアントはまた、
a)本発明による少なくとも0.01mgの活性プロテアーゼバリアント、及び
b)好ましくは、クエン酸、メチルグリシン-N,N-二酢酸(MGDA)及び/又はグルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)並びにこれらの混合物から選択される10~50wt%のビルダー、並びに
c)少なくとも1種の漂白構成成分
を含む食器洗浄組成物、好ましくは、自動食器洗浄組成物(ADW)中に配合され得る。
【0224】
漂白系
洗剤は、0~50重量%、例えば、約0.1%~約25%の漂白系を含有し得る。漂白系は、多くの場合酸化により変色を除去し、多くの漂白剤は、強力な殺菌特性も有し、消毒及び滅菌のために使用される。洗濯洗剤における使用のための当該技術分野で知られる任意の漂白系が利用され得る。好適な漂白系構成成分としては、漂白触媒、光脱色剤、漂白活性化剤、過炭酸ナトリウムなどの過酸化水素の供給源、及び過ホウ酸ナトリウム、予め形成された過酸及びその混合物が挙げられる。好適な予め形成された過酸としては、ペルオキシカルボン酸及び塩、過炭酸及び塩、過イミド酸及び塩、ペルオキシモノ硫酸及び塩、例えば、オキソン(R)、並びにその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。漂白系の非限定的な例としては、ペルオキシド系漂白系が挙げられ、過酸形成漂白活性化剤と組み合わせて、例えば、過ホウ酸のナトリウム塩(通常、一又は四水和物)、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩などのアルカリ金属塩を含む無機塩を含み得る。
【0225】
漂白活性化剤という用語は、本明細書では、過酸化水素のような過酸素漂白と反応して過酸を形成する化合物を意味する。そのように形成される過酸は、活性化された漂白をなす。本明細書で使用されることになる好適な漂白活性化剤としては、エステル、アミド、イミド又は無水物のクラスに属するものが挙げられる。好適な例は、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、4-[(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)オキシ]ベンゼンスルホン酸ナトリウム(ISONOBS)、ジペルオキシドデカン酸、4-(ドデカノイルオキシ)ベンゼンスルホン酸塩(LOBS)、4-(デカノイルオキシ)ベンゼンスルホン酸塩、4-(デカノイルオキシ)安息香酸塩(DOBS)、4-(ノナノイルオキシ)-ベンゼンスルホン酸塩(NOBS)、及び/又は国際公開第98/17767号パンフレットに開示されるものである。目的の漂白活性化剤の特定のファミリーが欧州特許第624154号明細書に開示されており、そのファミリーの中でも、クエン酸アセチルトリエチル(ATC)が特に好ましい。ATC又は短鎖トリグリセリド様トリアセチンは、それが最終的にクエン酸及びアルコールに分解するため環境に優しいという利点を有する。さらに、クエン酸アセチルトリエチル及びトリアセチンは、貯蔵に際して生成物の良好な加水分解安定性を有しており、これは効果的な漂白活性化剤である。最終的に、ATCは、洗濯添加剤に良好なビルダー能を提供する。或いは、漂白系は、例えば、アミド、イミド、又はスルホン型のペルオキシ酸を含み得る。漂白系はまた、6-(フタリミド)ペルオキシヘキサン酸(PAP)などの過酸を含み得る。漂白系はまた、漂白触媒又は漂白促進剤を含み得る。
【0226】
本発明の組成物に使用され得る漂白触媒のいくつかの非限定的な例として、シュウ酸マンガン、酢酸マンガン、マンガン-コラーゲン、コバルト-アミン触媒及びマンガントリアザシクロノナン(MnTACN)触媒が挙げられ;特に好ましいのは、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Me3-TACN)又は1,2,4,7-テトラメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Me4-TACN)とマンガンとの錯体、特に、二核マンガン錯体[(Me3-TACN)Mn(O)3Mn(Me3-TACN)](PF6)2、及び[2,2’,2’’-ニトリロトリス(エタン-1,2-ジイラザニリリデン-κN-メタニリリデン)トリフェノラト-κ3O]マンガン(III)などのMe3-TACNである。漂白触媒はまた、鉄又はコバルト錯体などの他の金属化合物であってもよい。
【0227】
いくつかの実施形態では、漂白構成成分は、以下の式を有する有機触媒からなる群から選択される有機触媒であり得る:
【化1】
(iii)及びこれらの混合物(式中、各R1は、独立して、9~24個の炭素を含有する分岐アルキル基又は11~24個の炭素を含有する直鎖アルキル基であり、好ましくは、各R1は、独立して、9~18個の炭素を含有する分岐アルキル基又は11~18個の炭素を含有する直鎖アルキル基であり、より好ましくは、各R1は、独立して、2-プロピルヘプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシル及びイソ-ペンタデシルからなる群から選択される)。他の例示的な漂白系は、例えば、国際公開第2007/087258号パンフレット、国際公開第2007/087244号パンフレット、国際公開第2007/087259号パンフレット及び国際公開第2007/087242号パンフレットに記載される。好適な光漂白剤は、例えば、スルホン化亜鉛フタロシアニンであってもよい。
【0228】
ヒドロトロープ
ヒドロトロープは、水溶液(又は非極性環境中の反対の極性の物質)中で疎水性化合物を可溶化する化合物である。通常、ヒドロトロープは、親水性及び疎水性両方の特徴(界面活性剤から知られるとおりの、いわゆる両親媒性特性)を有するが、ヒドロトロープの分子構造は通常、自然発生的な自己凝集を好まず、例えば、Hodgdon and Kaler、2007,Current Opinion in Colloid&Interface Science 12:121-128による、概説を参照されたい。ヒドロトロープは、ミセル相、ラメラ相又は他の明確なメソ相を形成する界面活性剤及び脂質に関して見出されるとおり、自己凝集が起こる臨界濃度を示さない。実際に、多くのヒドロトロープは、濃度が増大するにつれて凝集体のサイズが大きくなる持続型凝集プロセスを示す。しかしながら、多くのヒドロトロープは、水、油、界面活性剤、及びポリマーの混合物を含む、極性及び非極性の物質を含有する系の相挙動、安定性、及びコロイド特性を変化させる。ヒドロトロープは、製薬、パーソナルケア、及び食品から技術用途に至る産業全体で、古典的に使用される。洗剤組成物中のヒドロトロープの使用は、相分離又は高粘度などの望まれない現象を誘発することなく、(水を除去することによって液体洗剤を濃縮するプロセスの場合のように)例えば、界面活性剤のより濃縮された配合物を可能にする。
【0229】
洗剤は、0~5重量%、例えば、約0.5~約5%、又は約3%~約5%のヒドロトロープを含有し得る。洗剤における使用のための当該技術分野で知られる任意のヒドロトロープが利用され得る。ヒドロトロープの非限定的な例としては、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム(STS)、キシレンスルホン酸ナトリウム(SXS)、クメンスルホン酸ナトリウム(SCS)、シメンスルホン酸ナトリウム、アミン酸化物、アルコール及びポリグリコールエーテル、ナトリウムヒドロキシナフトエート、ヒドロキシナフタレンスルホン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムエチルヘキシル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0230】
ポリマー
洗剤は、0~10重量%、例えば、0.5~5%、2~5%、0.5~2%又は0.2~1%のポリマーを含有し得る。洗剤における使用のために当該技術分野で知られる任意のポリマーを利用してもよい。ポリマーは、上記のコビルダーとして機能するものでもよいし、或いは、再付着防止、繊維保護、汚れ遊離、移染防止、油脂のクリーニング及び/又は消泡性を付与するものであってもよい。一部のポリマーは、上記の特性の2つ以上及び/又は下記のモチーフの2つ以上を有し得る。例示的ポリマーとしては、(カルボキシメチル)セルロース(CMC)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)又はポリ(エチレンオキシド)(PEG)、エトキシル化ポリ(エチレンイミン)、カルボキシメチルイヌリン(CMI)、及びPAA、PAA/PMA、ポリアスパラギン酸及びメタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマーなどのポリカルボキシレート、疎水的に改変されたCMC(HM-CMC)及びシリコーン、テレフタル酸とオリゴマーグリコールのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(オキシエチレンテレフタレート)のコポリマー(PET-POET)、PVP、ポリ(ビニルイミダゾール)(PVI)、ポリ(ビニルピリジン-N-オキシド)(PVPO若しくはPVPNO)及びポリビニルピロリドン-ビニルイミダゾール(PVPVI)が挙げられる。さらに例示的なポリマーとしては、スルホン化ポリカルボキシレート、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド(PEO-PPO)並びにジクオタニウムエトキシスルフェートが挙げられる。その他の例示的ポリマーは、例えば、国際公開第2006/130575号パンフレットに開示されている。また、上記ポリマーの塩も検討される。
【0231】
布地色調剤
本発明の洗剤組成物はまた、染料又は顔料などの布地色調剤を含んでもよく、これが洗剤組成物に配合される場合、洗剤組成物を含む洗浄液と布地が接触するときに布地上に沈積することができ、これによって、可視光の吸収/反射による布地の色合いを改変する。蛍光増白剤は、少なくとも一部の可視光を放射する。対照的に、布地色調剤は、可視光スペクトルの少なくとも一部を吸収するため、表面の色合いを改変する。好適な布地色調剤としては、染料及び染料-粘土コンジュゲートが挙げられ、顔料を含んでもよい。好適な染料としては、小分子染料及びポリマー染料が挙げられる。好適な小分子染料としては、例えば、国際公開第2005/003274号パンフレット、国際公開第2005/003275号パンフレット、国際公開第2005/003276号パンフレット及び欧州特許第1876226号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているとおり、ダイレクトブルー(Direct Blue)、ダイレクトレッド(Direct Red)、ダイレクトバイオレット(Direct Violet)、アシッドブルー(Acid Blue)、アシッドレッド(Acid Red)、アシッドバイオレット(Acid Violet)、ベーシックブルー(Basic Blue)、ベーシックバイオレット(Basic Violet)及びベーシックレッド(Basic Red)のカラーインデックス(C.I.)分類に分類される染料からなる群から選択される小分子染料、又はそれらの混合物が挙げられる。洗剤組成物は、好ましくは、約0.00003wt%~約0.2wt%、約0.00008wt%~約0.05wt%、或いは約0.0001wt%~約0.04wt%の布地色調剤を含む。本組成物は、0.0001wt%~約0.2wt%の布地色調剤を含んでもよく、これは、組成物が、単位用量パウチの形態である場合、特に好ましいことがある。好適な色調剤については、例えば、国際公開第2007/087257号パンフレット及び国際公開第2007/087243号パンフレットにも開示されている。
【0232】
追加の酵素
洗剤組成物は、アミラーゼ、アラビナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ(例えば、エンドグルカナーゼ)、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、ガラクタナーゼ、ハロペルオキシゲナーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ、オキシダーゼ、例えば、ラクターゼ及び/又はペルオキシダーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、さらなるプロテアーゼ、キシラナーゼ、キサンタナーゼ、キシログルカナーゼ又はオキシドレダクターゼなどの1種以上の追加の酵素を含み得る。
【0233】
組成物が、1種以上の追加の酵素を含むとき、追加の酵素は、好ましくは、アミラーゼ及び/又はリパーゼ、特に、アミラーゼである。
【0234】
選択された酵素の特性は、選択された洗剤と適合すべきである(例えば、至適pH、他の酵素成分及び非酵素成分との適合性など)。
【0235】
プロテアーゼ:
組成物は、本発明のプロテアーゼバリアントに加えて、細菌、真菌、植物、ウイルス又は動物起源のものを含む1種以上の追加のプロテアーゼを含み得る。細菌起源のプロテアーゼが好ましい。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ又はメタロプロテアーゼなどのアルカリプロテアーゼであってもよい。セリンプロテアーゼは、例えば、トリプシンなどのS1ファミリー、又はサブチリシンなどのS8ファミリーであってもよい。メタロプロテアーゼは、例えば、M4ファミリー由来のサーモリシン又はM5、M7若しくはM8ファミリー由来のものなどの別のメタロプロテアーゼであってもよい。
【0236】
メタロプロテアーゼの例は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来のものなど、国際公開第2007/044993号パンフレット(Genencor Int.)に記載されるとおりの中性メタロプロテアーゼである。
【0237】
好適な市販のプロテアーゼ酵素としては、商標名Alcalase(登録商標)、Duralase(商標)、Durazym(商標)、Relase(登録商標)、Relase(登録商標)Ultra、Savinase(登録商標)、Savinase(登録商標)Ultra、Primase(登録商標)、Polarzyme(登録商標)、Kannase(登録商標)、Liquanase(登録商標)、Liquanase(登録商標)Ultra、Ovozyme(登録商標)、Coronase(登録商標)、Coronase(登録商標)Ultra、Blaze(登録商標)、Blaze Evity(登録商標)100T、Blaze Evity(登録商標)125T、Blaze Evity(登録商標)150T、Neutrase(登録商標)、Everlase(登録商標)、Esperase(登録商標)、Progress(登録商標)Uno及びProgress(登録商標)Excel(Novozymes A/S)の下で販売されるもの、商標名Maxatase(登録商標)、Maxacal(登録商標)、Maxapem(登録商標)、Purafect(登録商標)、Purafect(登録商標)Ox、Purafect(登録商標)OxP、Purafect Prime(登録商標)、Puramax(登録商標)、FN2(登録商標)、FN3(登録商標)、FN4(登録商標)、Excellase(登録商標)、Excellenz P1000(商標)、Excellenz P1250(商標)、Eraser(登録商標)、Preferenz(登録商標)P100、Preferenz(登録商標)P110、Effectenz P1000(商標)、Effectenz P1050(商標)、Effectenz P2000(商標)、Purafast(登録商標)、Properase(登録商標)、Opticlean(登録商標)及びOptimase(登録商標)(Danisco/DuPont)、Axapem(商標)(Gist-Brocases N.V.)の下で販売されるもの、BLAP(米国特許第5352604号明細書の
図29に示される配列)及びこれに関するバリアント(Henkel AG)並びにKaoからのKAP(バチルス・アルカロフィル(Bacillus alkalophilus)サブチリシン)が挙げられる。
【0238】
リパーゼ及びクチナーゼ
好適なリパーゼ及びクチナーゼとしては、細菌又は真菌起源のものが挙げられる。化学的に修飾された変異体酵素又はタンパク質を操作した変異体酵素が含まれる。 例としては、欧州特許第258068号明細書及び欧州特許第305216号明細書に記載されている、テルモマイセス属(Thermomyces)由来、例えば、T.ラヌギノスス(T.lanuginosus)(以前はフミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)と命名されていた)由来のリパーゼ、例えば、H.インソレンス(H.insolens)といったフミコラ属(Humicola)由来のクチナーゼ(国際公開第96/13580号パンフレット)、例えば、P.アルカリゲネス(P.alcaligenes)又はP.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)(欧州特許第218272号明細書)、P.セパシア(P.cepacia)(欧州特許第331376号明細書)、P.sp.株SD705(国際公開第95/06720号パンフレット及び国際公開第96/27002号パンフレット)、P.ウィスコンシネンシス(P.wisconsinensis)(国際公開第96/12012号パンフレット)といったシュードモナス属(Pseudomonas)(これらの一部は、現在、バークホルデリア属(Burkholderia)と改名されている)の株由来のリパーゼ、GDSLタイプのストレプトマイセス(Streptomyces)リパーゼ(国際公開第2010/065455号パンフレット)、イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)(国際公開第2010/107560号パンフレット)由来のクチナーゼ、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)由来のクチナーゼ(米国特許第5,389,536号明細書)、サーモビフィダ・フスカ(Thermobifida fusca)由来のリパーゼ(国際公開第2011/084412号パンフレット)、ジェオバシラス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)リパーゼ(国際公開第2011/084417号パンフレット)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来のリパーゼ(国際公開第2011/084599号パンフレット)、並びにストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)(国際公開第2011/150157号パンフレット)及びS.プリスチナエスピラリス(S.pristinaespiralis)(国際公開第2012/137147号パンフレット)由来のリパーゼが挙げられる。
【0239】
他の例は、欧州特許第407225号明細書、国際公開第92/05249号パンフレット、国際公開第94/01541号パンフレット、国際公開第94/25578号パンフレット、国際公開第95/14783号パンフレット、国際公開第95/30744号パンフレット、国際公開第95/35381号パンフレット、国際公開第95/22615号パンフレット、国際公開第96/00292号パンフレット、国際公開第97/04079号パンフレット、国際公開第97/07202号パンフレット、国際公開第00/34450号パンフレット、国際公開第00/60063号パンフレット、国際公開第01/92502号パンフレット、国際公開第2007/87508号パンフレット及び国際公開第2009/109500号パンフレットに記載されるものなどのリパーゼバリアントである。
【0240】
好ましい市販されているリパーゼ製品としては、Lipolase(商標)、Lipex(商標);Lipolex(商標)及びLipoclean(商標)(Novozymes A/S)、Lumafast(当初はGenencorから)及びLipomax(当初はGist-Brocadesから)が挙げられる。
【0241】
さらに他の例は、アシルトランスフェラーゼ又はペルヒドロラーゼと呼ばれこともあるリパーゼ、例えば、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼAとの相同性を有するアシルトランスフェラーゼ(国際公開第2010/111143号パンフレット)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)由来のアシルトランスフェラーゼ(国際公開第2005/056782号パンフレット)、CE 7ファミリー由来のペルヒドロラーゼ(国際公開第2009/067279号パンフレット)、並びにM.スメグマチス(M.smegmatis)ペルヒドロラーゼのバリアント、特に、Huntsman Textile Effects Pte Ltd製の製品Gentle Power Bleachに使用されているS54Vバリアント(国際公開第2010/100028号パンフレット)である。
【0242】
アミラーゼ
本発明のプロテアーゼバリアントとともに使用され得る好適なアミラーゼは、アルファ-アミラーゼ又はグルコアミラーゼであってもよく、細菌又は真菌起源のものであってもよい。化学的に修飾された変異体又はタンパク質を操作した変異体が含まれる。アミラーゼとしては、例えば、バチルス属(Bacillus)、例えば英国特許第1,296,839号明細書にさらに詳細に記載されているバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)の特殊な系統から得られるα-アミラーゼが挙げられる。
【0243】
好適なアミラーゼとしては、国際公開第95/10603号パンフレットにおける配列番号2を有するアミラーゼ又はその配列番号3と90%の配列同一性を有するバリアントが挙げられる。好ましいバリアントは、国際公開第94/02597号パンフレット、国際公開第94/18314号パンフレット、国際公開第97/43424号パンフレット及び国際公開第99/19467号パンフレットの配列番号4に記載され、例えば、以下の位置の1つ以上における置換を有するバリアントである:15、23、105、106、124、128、133、154、156、178、179、181、188、190、197、201、202、207、208、209、211、243、264、304、305、391、408、及び444。
【0244】
異なる好適なアミラーゼとしては、国際公開第2002/10355号パンフレットにおける配列番号6を有するアミラーゼ又はその配列番号6と90%の配列同一性を有するそのバリアントが挙げられる。配列番号6の好ましいバリアントは、181及び182位における欠失及び193位における置換を有するものである。
【0245】
好適な他のアミラーゼは、国際公開第2006/066594号パンフレットの配列番号6に示されるB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)に由来するアルファ-アミラーゼの残基1~33及び国際公開第2006/066594号パンフレットの配列番号4に示されるB.リケニフォルミス(B.licheniformis)のアルファ-アミラーゼの残基36~483を含むハイブリッドアルファ-アミラーゼ又はそれと90%の配列同一性を有するバリアントである。このハイブリッドアルファ-アミラーゼの好ましいバリアントは、以下の位置の1つ以上において置換、欠失又は挿入を有するものである:G48、T49、G107、H156、A181、N190、M197、I201、A209及びQ264。国際公開第2006/066594号パンフレットの配列番号6に示されるB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)に由来するアルファ-アミラーゼの残基1~33及び配列番号4の残基36~483を含むハイブリッドアルファ-アミラーゼの最も好ましいバリアントは、置換:
M197T;
H156Y+A181T+N190F+A209V+Q264S;又は
G48A+T49I+G107A+H156Y+A181T+N190F+I201F+A209V+Q264S
を有するものである。
【0246】
他の好適なアミラーゼは、国際公開第99/19467号パンフレットにおける配列番号6の配列を有するアミラーゼ又は配列番号6と90%の配列同一性を有するそのバリアントである。配列番号6の好ましいバリアントは、以下の位置の1つ以上において置換、欠失又は挿入を有するものである:R181、G182、H183、G184、N195、I206、E212、E216及びK269。特に好ましいアミラーゼは、R181位及びG182位、又はH183位及びG184位に欠失を有するものである。
【0247】
使用され得る追加のアミラーゼは、国際公開第96/23873号パンフレットの配列番号1、配列番号3、配列番号2若しくは配列番号7を有するもの又は配列番号1、配列番号2、配列番号3若しくは配列番号7と90%の配列同一性を有するそのバリアントである。配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号7の好ましいバリアントは、付番のために国際公開第96/23873号パンフレットの配列番号2を使用する、以下の位置の1つ以上において置換、欠失又は挿入を有するものである:140、181、182、183、184、195、206、212、243、260、269、304及び476。より好ましいバリアントは、181、182、183及び184から選択される2つの位置、例えば、181及び182、182及び183、又は183位及び184位に欠失を有するものである。配列番号1、配列番号2又は配列番号7の最も好ましいアミラーゼバリアントは、183位及び184位における欠失並びに140位、195位、206位、243位、260位、304位及び476位の1つ以上における置換を有するものである。
【0248】
使用され得る他のアミラーゼは、国際公開第2008/153815号パンフレットの配列番号2、国際公開第01/66712号パンフレットの配列番号10を有するアミラーゼ又は国際公開第2008/153815号パンフレットの配列番号2と90%の配列同一性若しくは国際公開第01/66712号パンフレットの配列番号10と90%の配列同一性を有するそのバリアントである。国際公開第01/66712号パンフレットの配列番号10の好ましいバリアントは、以下の位置の1つ以上における置換、欠失又は挿入を有するものである:176、177、178、179、190、201、207、211及び264。
【0249】
さらなる好適なアミラーゼは、国際公開第2009/061380号パンフレットの配列番号2を有するアミラーゼ又はその配列番号2と90%の配列同一性を有するバリアントである。配列番号2の好ましいバリアントは、C末端の短縮化及び/又は以下の位置の1つ以上において置換、欠失又は挿入を有するものである:Q87、Q98、S125、N128、T131、T165、K178、R180、S181、T182、G183、M201、F202、N225、S243、N272、N282、Y305、R309、D319、Q320、Q359、K444及びG475。配列番号2のより好ましいバリアントは、以下の位置:Q87E,R、Q98R、S125A、N128C、T131I、T165I、K178L、T182G、M201L、F202Y、N225E,R、N272E,R、S243Q,A,E,D、Y305R、R309A、Q320R、Q359E、K444E及びG475Kの1つ以上における置換、並びに/又はR180位及び/若しくはS181位又はT182位及び/若しくはG183位における欠失を有するものである。配列番号2の最も好ましいアミラーゼバリアントは、置換:
N128C+K178L+T182G+Y305R+G475K;
N128C+K178L+T182G+F202Y+Y305R+D319T+G475K;
S125A+N128C+K178L+T182G+Y305R+G475K;又は
S125A+N128C+T131I+T165I+K178L+T182G+Y305R+G475K
を有するものであり、
バリアントは、C末端が短縮化されており、任意選択により、243位の置換並びに/又は180位及び/若しくは181位の欠失をさらに含む。
【0250】
さらなる好適なアミラーゼは、国際公開第2013/184577号パンフレットの配列番号1を有するアミラーゼ又はその配列番号1と90%の配列同一性を有するバリアントである。配列番号1の好ましいバリアントは、以下の位置の1つ以上において置換、欠失又は挿入を有するものである:K176、R178、G179、T180、G181、E187、N192、M199、I203、S241、R458、T459、D460、G476及びG477。配列番号1の最も好ましいバリアントは、以下の位置:K176L、E187P、N192FYH、M199L、I203YF、S241QADN、R458N、T459S、D460T、G476K及びG477Kの1つ以上における置換、並びに/又は位置R178及び/若しくはS179又はT180及び/若しくはG181における欠失を有するものである。配列番号1の最も好ましいアミラーゼバリアントは、置換:
E187P+I203Y+G476K
E187P+I203Y+R458N+T459S+D460T+G476Kを含み、
且つ任意選択により、241位での置換並びに/又は178位及び/若しくは179位での欠失をさらに含む。
【0251】
さらなる好適なアミラーゼは、国際公開第2010/104675号パンフレットの配列番号1を有するアミラーゼ又はその配列番号1と90%の配列同一性を有するバリアントである。配列番号1の好ましいバリアントは、以下の位置の1つ以上において置換、欠失又は挿入を有するものである:N21、D97、V128 K177、R179、S180、I181、G182、M200、L204、E242、G477及びG478。
【0252】
配列番号1の最も好ましいバリアントは、以下の位置:N21D、D97N、V128I K177L、M200L、L204YF、E242QA、G477K及びG478Kの1つ以上における置換並びに/又は位置R179及び/若しくはS180又はI181及び/若しくはG182における欠失を有するものである。配列番号1の最も好ましいアミラーゼバリアントは、置換N21D+D97N+V128Iを含み、且つ任意選択により、200位の置換並びに/又は180位及び/若しくは181位の欠失をさらに含む。
【0253】
他の好適なアミラーゼは、国際公開第01/66712号パンフレットの配列番号12を有するアルファ-アミラーゼ又は配列番号12と少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントである。好ましいアミラーゼバリアントは、国際公開第01/66712号パンフレットにおける配列番号12の以下の位置の1つ以上における置換、欠失又は挿入を有するものである:R28、R118、N174;R181、G182、D183、G184、G186、W189、N195、M202、Y298、N299、K302、S303、N306、R310、N314;R320、H324、E345、Y396、R400、W439、R444、N445、K446、Q449、R458、N471、N484。特定の好ましいアミラーゼとしては、D183及びG184の欠失を有し、且つ置換R118K、N195F、R320K及びR458Kを有するバリアント、並びに群:M9、G149、G182、G186、M202、T257、Y295、N299、M323、E345及びA339から選択される1つ以上の位置における置換をさらに有するバリアント、これら全ての位置において置換をさらに有する最も好ましいバリアントが挙げられる。
【0254】
他の例は、国際公開第2011/098531号パンフレット、国際公開第2013/001078号パンフレット及び国際公開第2013/001087号パンフレットにおいて記載されるものなどのアミラーゼバリアントである。市販されているアミラーゼとしては、Duramyl(商標)、Termamyl(商標)、Fungamyl(商標)、Stainzyme(商標)、Stainzyme Plus(商標)、Natalase(商標)、Liquozyme X、BAN(商標)、Amplify(登録商標)及びAmplify(登録商標)Prime(Novozymes A/S製)、並びにRapidase(商標)、Purastar(商標)/Effectenz(商標)、Powerase、Preferenz S1000、Preferenz S110、Preferenz S110(Genencor International Inc./DuPont製)が挙げられる。
【0255】
1つの好ましいアミラーゼは、改変H1*+N54S+V56T+K72R+G109A+F113Q+R116Q+W167F+Q172G+A174S+G182*+D183*+G184T+N195F+V206L+K391A+P473R+G476Kを有する国際公開第2016/180748号パンフレットにおける配列番号13を有するアミラーゼのバリアントである。
【0256】
別の好ましいアミラーゼは、改変D183*+G184*+W140Y+N195F+V206Y+Y243F+E260G+G304R+G476Kを有する国際公開第2013/001078号パンフレットにおける配列番号1を有するアミラーゼのバリアントである。
【0257】
別の好ましいアミラーゼは、改変H1*+G7A+G109A+W140Y+G182*+D183*+N195F+V206Y+Y243F+E260G+N280S+G304R+E391A+G476Kを有する国際公開第2018/141707号パンフレットにおける配列番号1を有するアミラーゼのバリアントである。
【0258】
さらなる好ましいアミラーゼは、改変L202M +T246Vを有する国際公開第2017/191160号パンフレットにおける配列番号1を有するアミラーゼのバリアントである。
【0259】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)
好適なデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)は、DNA骨格におけるホスホジエステル結合の加水切断を触媒し、それによりDNAを分解するいずれかの酵素である。細菌から得ることができるDNaseが好ましく、特に、バチルス属(Bacillus)の種から得ることができるDNaseが好ましく;特に、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)又はバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)から得ることができるDNaseが好ましい。そのようなDNaseの例は、国際公開2011/098579号パンフレット及び国際公開第2014/087011号パンフレットに記載される。
【0260】
オキシドレダクターゼ
一実施形態では、組成物は、還元-酸化反応を触媒する酵素であるオキシドレダクターゼを含み得る。好ましいオキシドレダクターゼは、スーパーオキシドジスムターゼである。
【0261】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ
好適なペルオキシダーゼ/オキシダーゼとしては、植物、細菌又は真菌起源のものが挙げられる。化学的に修飾された変異体又はタンパク質を操作した変異体が含まれる。有用なペルオキシダーゼの例としては、コプリナス属(Coprinus)由来、例えば、国際公開第93/24618号パンフレット、国際公開第95/10602号パンフレット、及び国際公開第98/15257号パンフレットに記載されるものとしてのC.シネレウス(C.cinereus)由来のペルオキシダーゼ、及びそのバリアントが挙げられる。
【0262】
市販のペルオキシダーゼとしては、Guardzyme(登録商標)(Novozymes A/S)が挙げられる。
【0263】
補助材料
洗濯洗剤における使用のための当該技術分野で知られる任意の洗剤構成成分もまた利用され得る。他の任意選択の洗剤構成成分としては、単独で又は組み合わせた抗腐食剤、収縮防止剤、再汚染防止剤、しわ防止剤、殺菌剤、結合剤、腐食防止剤、崩壊剤/崩壊薬剤、染料、酵素安定化剤(ホウ酸、ホウ酸塩、CMC、及び/又はプロピレングリコールなどのポリオール)、粘土を含む布地柔軟仕上げ剤、充填剤/加工助剤、蛍光増白剤/光学的光沢剤、起泡促進剤、泡(石鹸泡)調節剤、香料、汚れ懸濁剤、柔軟剤、起泡抑制剤、黄褐色阻害剤、及びウィッキング剤が挙げられる。洗濯洗剤における使用のための当該技術分野で知られる任意の成分が利用され得る。そのような成分の選択は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0264】
分散剤:本発明の洗剤組成物はまた、分散剤も含有することができる。特に、粉末洗剤は、分散剤を含んでもよい。好適な水溶性有機材料としては、ホモ-若しくはコポリマー酸又はそれらの塩が挙げられ、ここで、ポリカルボン酸は、2個以下の炭素原子によって相互に分離された少なくとも2つのカルボキシル基を含む。好適な分散剤は、例えば、Powdered Detergents,Surfactant Science Series volume 71,Marcel Dekker,Inc.,1997に記載されている。
【0265】
移染防止剤:本発明の洗剤組成物はまた、1種以上の移染防止剤を含んでもよい。好適な高分子移染防止剤としては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルイミダゾールのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン及びポリビニルイミダゾール又はこれらの混合物が挙げられる。主題の組成物中に存在する場合、移染防止剤は、組成物の約0.0001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%のレベルで、又は約0.1重量%~約3重量%のレベルでも存在し得る。
【0266】
蛍光増白剤:本発明の洗剤組成物はまた、蛍光増白剤又は光学的光沢剤などのクリーニングされる物品に色合いを付与し得る追加の構成成分を含有するのが好ましい。存在する場合、光沢剤は、約0.01%~約05%のレベルであることが好ましい。洗濯洗剤組成物での使用に好適な任意の蛍光増白剤が、本発明の組成物において使用されてもよい。最も一般的に用いられる蛍光増白剤は、ジアミノスチルベン-スルホン酸誘導体、ジアリールピラゾリン誘導体及びビスフェニル-ジスチリル誘導体のクラスに属するものである。ジアミノスチルベン-スルホン酸誘導体タイプの蛍光増白剤の例としては、4,4’-ビス-(2-ジエタノールアミノ-4-アニリノ-s-トリアジン-6-イルアミノ)スチルベン-2,2’-ジスルホネート;4,4’-ビス-(2,4-ジアニリノ-s-トリアジン-6-イルアミノ)スチルベン-2.2’-ジスルホネート;4,4’-ビス-(2-アニリノ-4(N-メチル-N-2-ヒドロキシ-エチルアミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ)スチルベン-2,2’-ジスルホネート、4,4’-ビス-(4-フェニル-2,1,3-トリアゾール-2-イル)スチルベン-2,2’-ジスルホネート;4,4’-ビス-(2-アニリノ-4(1-メチル-2-ヒドロキシ-エチルアミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ)スチルベン-2,2’-ジスルホネート及び2-(スチルビル-4’’-ナフト-1.,2’:4,5)-1,2,3-トリアゾール-2’’-スルホネートのナトリウム塩が挙げられる。好ましい蛍光増白剤は、Ciba-Geigy AG,Basel,Switzerlandから市販されているTinopal DMS及びTinopal CBSである。Tinopal DMSは、4,4’-ビス-(2-モルホリノ-4-アニリノ-s-トリアジン-6-イルアミノ)スチルベンジスルホネートの二ナトリウム塩である。Tinopal CBSは、2,2’-ビス-(フェニル-スチリル)ジスルホネートの二ナトリウム塩である。また、好ましい蛍光増白剤は、Paramount Minerals and Chemicals,Mumbai,India製の市販のParawhite KXである。本発明における使用に好適な他の蛍光剤としては、1-3-ジアリールピラゾリン及び7-アルキルアミノクマリンが挙げられる。好適な蛍光光沢剤のレベルは、約0.01、0.05、約0.1、或いは約0.2wt%の下限レベルから、0.5又はさらには0.75wt%の上限レベルまでを含む。
【0267】
汚れ遊離ポリマー:本発明の洗剤組成物はまた、綿及びポリエステル系布地などの布地からの汚れの除去、特にポリエステル系布地からの疎水性汚れの除去を補助する1種以上の汚れ遊離ポリマーを含んでもよい。汚れ遊離ポリマーは、例えば、非イオン性又はアニオン性テレフタレート系ポリマー、ポリビニルカプロラクタム及び関連するコポリマー、ビニルグラフトコポリマー、ポリエステルポリアミドであってもよく、例えば、Chapter 7,Powdered Detergents,Surfactant science series volume 71,Marcel Dekker,Inc.を参照されたい。別のタイプの汚れ遊離ポリマーは、コア構造と、このコア構造に結合した複数のアルコキシレート基とを含む両親媒性アルコキシル化油脂クリーニングポリマーである。コア構造は、国際公開第2009/087523号パンフレット(本明細書において参照により組み込まれる)に詳述されているとおり、ポリアルキレンイミン構造又はポリアルカノールアミン構造を含み得る。さらに、ランダムグラフトコポリマーは、好適な汚れ遊離ポリマーである。好適なグラフトコポリマーは、国際公開第2007/138054号パンフレット、国際公開第2006/108856号パンフレット及び国際公開第2006/113314号パンフレット(本明細書において参照により組み込まれる)において、より詳細に記載されている。他の汚れ遊離ポリマーは、欧州特許第1867808号明細書又は国際公開第03/040279号パンフレット(共に本明細書において参照により組み込まれる)に記載されているものなどの変性セルロース誘導体などの特に置換セルロース系構造といった置換多糖類構造である。好適なセルロース系ポリマーとしては、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド及びこれらの混合物が挙げられる。好適なセルロース系ポリマーとしては、アニオン性変性セルロース、非イオン性変性セルロース、カチオン性変性セルロース、双性イオン性変性セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なセルロース系ポリマーとしては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、エステルカルボキシメチルセルロース及びこれらの混合物が挙げられる。
【0268】
再付着防止剤:本発明の洗剤組成物としてはまた、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシエチレン及び/又はポリエチレングリコール(PEG)、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とマレイン酸とのコポリマー、並びにエトキシル化ポリエチレンイミンなどの1種以上の再付着防止剤を含んでもよい。前述の汚れ遊離ポリマーの下で、上記セルロース系ポリマーは、再付着防止剤としても機能し得る。
【0269】
他の好適な補助材料としては、収縮防止剤、しわ防止剤、殺菌剤、結合剤、キャリア、染料、酵素安定化剤、布地用柔軟剤、充填剤、起泡調節剤、香料、顔料、制泡剤、溶剤、並びに液体洗剤用構造化剤、及び/又は構造弾性化剤が挙げられる。
【0270】
洗剤製品の配合
洗剤酵素、すなわち、本発明のプロテアーゼバリアント及び任意選択により1種以上の追加の酵素は、1種以上の酵素を含有する別々の添加剤を添加すること、又はこれらの酵素の全てを含む組み合わせた添加剤を添加することによって洗剤組成物中に含まれ得る。1種以上の酵素を含む洗剤添加剤は、例えば、顆粒、液体、スラリーなどとして配合され得る。好ましい洗剤添加剤配合物としては、顆粒、特に、非飛散性顆粒、液体、特に、安定化された液体、又はスラリーが挙げられる。
【0271】
本発明の洗剤組成物は、例えば、バー、均質錠剤、2層以上を有する錠剤、1つ以上のコンパートメントを有するパウチ、定型的若しくは緻密な粉末、顆粒、ペースト、ゲル、又は定型的、緻密な若しくは濃縮された液体など、任意の好都合な形態であってもよい。層(同じ又は異なる相)、パウチ、及び機械式投与ユニットのための形態などのいくつかの洗剤配合物形態がある。
【0272】
パウチは、単一又は複数のコンパートメントとして構成することができる。これは、組成物を保持するのに好適な任意の形態、形状及び材料であってもよく、例えば、水との接触前に、パウチから組成物が放出できないようにする。パウチは、内容物を封入する水溶性フィルムから作られる。内体積は、パウチのコンパートメントに分割することができる。好ましいフィルムは、ポリマー材料、好ましくは、フィルム又はシートに形成されるポリマーである。好ましいポリマー、コポリマー又はその誘導体は、ポリアクリレート、及び水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムデキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、最も好ましくは、ポリビニルアルコールコポリマー及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される。好ましくは、フィルム中のポリマー、例えば、PVAのレベルは、少なくとも約60%である。好ましい平均分子量は通常、約20,000~約150,000となる。フィルムはまた、加水分解により分解可能で、水溶性のポリマーブレンド、例えば、ポリラクチド及びポリビニルアルコール(Chris Craft In.Prod.of Gary,Indiana,USから販売される商品名M8630で知られる)と、グリセロール、エチレングリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール及びこれらの混合物のような可塑剤などを含むブレンド組成物であってもよい。パウチは、水溶性フィルムによって分離された固体洗濯洗剤組成物若しくは一部分の構成成分及び/又は液体クリーニング組成物若しくは一部分の構成成分を含むことができる。液体構成成分用のコンパートメントは、固体を含有するコンパートメントとは、組成が異なり得る。(例えば、米国特許出願公開第2009/0011970号明細書参照)。
【0273】
洗剤成分は、水溶解性パウチ内のコンパートメントによって又は錠剤の様々な層で、互いに物理的に分離することができる。これにより、構成成分間の好ましくない貯蔵時の相互作用を回避することができる。コンパートメントの各々の様々な溶解プロファイルによって、洗浄溶液中の選択した構成成分の溶解遅延を起こすことも可能である。
【0274】
単位用量ではない液体又はゲル洗剤は水溶性であってもよく、通常、少なくとも20重量%、及び最大95%の水、例えば、最大約70%、最大約65%、最大約55%、最大約45%、又は最大約35%水を含有する。濃縮された液体洗剤は、より低い水含量を有してもよく、例えば、約30%以下又は約20%以下、例えば、約2%~約15%などの約1%~約20%の範囲である。限定されないが、アルカノール、アミン、ジオール、エーテル及びポリオールなどの他のタイプの液体が、水溶性液体又はゲルに含まれてもよい。水溶性液体又はゲル洗剤は、0~30%の有機溶剤を含有し得る。液体又はゲル洗剤は、非水溶性であってもよい。
【0275】
液体洗剤組成物は、例えば、約pH7、約pH8又は約pH9などの約6~約10の中程度のpHを有するように配合され得るか、又はそれらは、例えば、約pH10、約pH11又は約pH12などの約10~約12のより高いpHを有するように配合され得る。
【0276】
別段の指示がない限り、用語「液体」は、本明細書で使用する場合、あらゆる種類の液体洗剤組成物、例えば、濃縮された液体、ゲル、又は例えば、1つ以上のコンパートメントを有するパウチの液体若しくはゲル部分を包含するものとして理解されるべきである。
【0277】
洗濯石鹸バー
本発明の酵素は、洗濯石鹸バーに添加されてもよく、手洗いの洗濯物、布地及び/又は織物のために使用されてもよい。洗濯石鹸バーという用語は、洗濯バー、石鹸バー、コンボバー、合成洗剤バー及び洗剤バーを含む。バーの種類は通常、それらが含有する界面活性剤の種類によって異なり、洗濯石鹸バーという用語は、脂肪酸由来の石鹸及び/又は合成石鹸を含有するものを含む。洗濯石鹸バーは、固体であり、したがって、室温で液体、ゲル又は粉末ではない物理的形態を有する。
【0278】
洗濯石鹸バーは、1種以上の追加の酵素、ペプチドアルデヒド(又はハイドロサルファイト付加物若しくはヘミアセタール付加物)などのプロテアーゼ阻害剤、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂及び/若しくは4-ホルミルフェニルボロン酸などのフェニルボロン酸誘導体、1種以上の石鹸又は合成界面活性剤、グリセリンなどのポリオール、脂肪酸などのpH制御化合物、クエン酸、酢酸及び/若しくはギ酸、並びに/又は一価カチオン及び有機アニオンの塩を含有してもよく、一価カチオンは、例えば、Na+、K+又はNH4
+であってもよく、有機アニオンは、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、又は乳酸塩であってもよく、その結果、一価カチオン及び有機アニオンの塩は、例えば、ギ酸ナトリウムであってもよい。
【0279】
洗濯石鹸バーはまた、EDTA及びHEDPなどの錯化剤、芳香剤及び/又は異なる種類の充填剤、界面活性剤、例えば、アニオン性合成界面活性剤、ビルダー、ポリマー性汚れ遊離剤、洗剤キレーター、安定化剤、充填剤、色素、着色剤、移染防止剤、アルコキシル化ポリカーボネート、起泡抑制剤、構造化剤、結合剤、浸出剤、漂白活性化剤、粘土汚れ除去剤、再付着防止剤、ポリマー性分散剤、光沢剤、布地用柔軟剤、芳香剤及び/又は当該技術分野で知られる他の化合物を含有し得る。
【0280】
洗濯石鹸バーは、撹拌機、圧縮機、例えば、二段階真空圧縮機、押し出し機、切断機、ロゴ押印機、冷却トンネル及び包装機などであるがこれらに限定されない従来の洗濯石鹸バー作製装置において加工され得る。石鹸、本発明の酵素、任意選択により1種以上の追加の酵素、プロテアーゼ阻害剤、並びに一価カチオン及び有機アニオンの塩を含有する事前に混合されたものが調製されてもよく、続いて混合物はプロッディングされる。酵素及び任意選択の追加の酵素は、例えば、液体形態においてプロテアーゼ阻害剤と同時に添加され得る。混合工程及びプロッディング工程に加えて、プロセスはさらに、粉砕、圧出、切断、押印、冷却及び/又は包装の工程を含み得る。
【0281】
顆粒状洗剤配合物
酵素含有コア及び任意選択により1種以上の被覆剤を含む顆粒の形態の酵素は、顆粒状(粉末)洗剤において一般的に使用される。コアを調製するための様々な方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、a)液体酵素含有溶液の噴霧乾燥、b)例えば、流動層装置を使用する予め形成された不活性コア粒子の周囲に層としてコーティングされた酵素を有する層状製品の生成、c)予め形成されたコアの表面上及び/又は表面中への酵素の吸収、d)酵素含有ペーストの押し出し、e)溶融したワックス中での酵素含有粉末の懸濁及び金属粒生成物をもたらす噴霧、f)酵素含有液体を顆粒化構成成分の乾燥粉末組成物に添加することによる撹拌機顆粒化、g)大きい粒子、ペレットなどの粉砕又は破砕による酵素含有コアのサイズ縮小、並びにh)流動層顆粒化を含む。酵素含有コアは、例えば、飼料又は酵素産業において顆粒を乾燥させるための流動層ドライヤー又は他の既知の方法を使用して乾燥されて、典型的には0.1~10%w/w水の含水量をもたらし得る。
【0282】
酵素含有コアは、任意選択により、保管安定性を改善し且つ/又は粉塵形成を低減するコーティングとともに提供される。洗剤のための酵素顆粒のために使用される場合が多いコーティングの1つの種類は、塩コーティングであり、典型的には、無機塩コーティングであり、例えば、流動層を使用して塩の溶液として塗布され得る。使用され得る他のコーティング材料は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルヒドロキシ-プロピルセルロース(MHPC)及びポリビニルアルコール(PVA)である。顆粒は、2つ以上のコーティング、例えば、塩コーティングに続いて、PEG、MHPC又はPVAなどの材料の追加のコーティングを含有し得る。
【0283】
酵素顆粒及びその生成に対するさらなる情報については、国際公開第2013/007594号パンフレット並びに例えば、国際公開第2009/092699号パンフレット、欧州特許第1705241号明細書、欧州特許第1382668号明細書、国際公開第2007/001262号パンフレット、米国特許第6,472,364号明細書、国際公開第2004/074419号パンフレット及び国際公開第2009/102854号パンフレットを参照されたい。
【0284】
使用及びクリーニング方法
本発明はまた、家庭洗濯物の洗浄及び工業的な洗濯洗浄などの布地及び織物の洗濯において本発明によるプロテアーゼバリアント又はその組成物を使用するための方法に関する。
【0285】
本発明はまた、床、テーブル、壁、屋根などの硬質表面、並びに車(車洗浄)及び食器(食器洗浄)などの硬質の物体の表面のクリーニングにおいて本発明によるバリアント又はその組成物を使用するための方法に関する。
【0286】
本発明のプロテアーゼバリアントが加えられ、それにより洗剤組成物の構成成分になり得る。したがって、本発明の一態様は、洗濯及び/又は硬質表面クリーニングなどのクリーニングプロセスにおけるプロテアーゼバリアントの使用に関する。
【0287】
本発明の洗剤組成物は、例えば、手による又は機械的洗濯洗剤組成物として、例えば、汚れた布地の前処理に好適な洗濯添加剤組成物、及びすすぎ添加布地用柔軟剤組成物として配合され得るか、或いは一般に家庭の硬質表面クリーニング操作に使用するための洗剤組成物として配合され得るか、或いは手による又は機械的食器洗浄操作のために配合され得る。
【0288】
クリーニングプロセス又は織物ケアのプロセスは、例えば、洗濯プロセス、食器洗浄プロセス又は浴室タイル、床、テーブルトップ、排水管、皮膚及び洗面器などの硬質表面のクリーニングであり得る。洗濯プロセスは、例えば、家庭での洗濯であり得るが、工業的洗濯である場合もある。さらに、本発明は、布地及び/又は衣服の洗濯のためのプロセスに関し、そのプロセスは、布地を、洗剤組成物及び少なくとも1種の本発明のプロテアーゼバリアントを含有する洗浄溶液で処理することを含む。クリーニングプロセス又は織物ケアのプロセスは、例えば、機械洗浄又は手作業で実行され得る。洗浄溶液は、例えば、洗剤組成物を含有する水性洗浄溶液であり得る。
【0289】
近年、石油化学製品に由来する洗剤中の構成成分を、洗浄性能を損なわずに酵素及びポリペプチドなどの再生可能な生物学的構成成分で置き換えることへの関心が高まっている。洗剤組成物の構成成分が変化するとき、従来の洗剤組成物と比較して同様の又は改善された洗浄性能を達成するために、プロテアーゼ、リパーゼ及びアミラーゼなどの以前より使用される洗剤酵素と比較して、新規の酵素活性又は代替及び/若しくは改善された特性を有する新規の酵素が必要とされ得る。
【0290】
本発明はさらに、タンパク質性の汚れを除去するプロセスにおける本発明のプロテアーゼバリアントの使用に関する。タンパク質性の汚れは、食物の汚れ、例えば、離乳食、ココア、卵若しくは牛乳、又は皮脂、血液、インク若しくは草などの他の汚れ、又はその組み合わせなどの汚れであり得る。
【0291】
洗浄方法
本発明は、布地、食器類又は硬質表面を本発明のプロテアーゼバリアントを含む洗剤組成物でクリーニングする方法に関する。
【0292】
クリーニングの方法は、物体を、その物体をクリーニングするのに好適な条件下で本発明のプロテアーゼバリアントを含む洗剤組成物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、洗剤組成物は、洗濯又は食器洗浄プロセスにおいて使用される。
【0293】
別の実施形態は、布地又は食器類から汚れを除去するための方法であって、布地又は食器類を、その物体をクリーニングするのに好適な条件下で本発明のプロテアーゼを含む組成物と接触させることを含む方法に関する。本発明のクリーニングの方法において、クリーニングされている物体は、織物又は食器類若しくは床、テーブル、壁などの硬質表面などの任意の好適な物体であり得る。
【0294】
本発明のプロテアーゼバリアントの1種以上を使用して布地(例えば、織物を糊抜きするため)を処理する組成物及び方法も企図される。プロテアーゼは、当該技術分野でよく知られる任意の布地処理方法において使用され得る(例えば、米国特許第6,077,316号明細書を参照のこと)。例えば、一態様では、布地の手触り及び外観は、布地を溶液中のプロテアーゼと接触させることを含む方法によって改善される。一態様では、布地は、加圧下の溶液で処理される。
【0295】
本発明の洗剤組成物は、洗濯及び食器洗浄を含む硬質表面適用における使用に適している。したがって、本発明は、布地を洗濯するか又は食器類を洗浄するための方法であって、クリーニングされることになる布地/食器類を本発明による洗剤組成物を含む溶液と接触させることを含む方法を含む。布地は、通常の消費者の使用条件において洗濯することができる任意の布地を含み得る。食器類は、陶器、洋食器類、陶磁器類、メラミンなどのプラスチック、金属、磁器、ガラス及びアクリル樹脂などの任意の食器類を含み得る。溶液は、好ましくは、約5.5~約11.5のpHを有する。組成物は、溶液中において約100ppm、好ましくは、500ppm~約15,000ppmの濃度で利用され得る。水温は通常、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃及び約90℃を含む約5℃~約95℃の範囲である。水と布地の比は通常、約1:1~約30:1である。
【0296】
本発明の洗剤組成物の酵素は、従来の安定化剤及びプロテアーゼ阻害剤、例えば、プロピレングリコール若しくはグリセロールなどのポリオール、糖若しくは糖アルコール、NaCl;KClなどの異なる塩;乳酸、ギ酸、ホウ酸、若しくはホウ酸誘導体、例えば、芳香族ホウ酸エステル、若しくは4-ホルミルフェニルボロン酸などのフェニルボロン酸誘導体、若しくはジ-、トリ-若しくはテトラペプチドアルデヒド若しくはアルデヒド類似体などのペプチドアルデヒド(形態B1-B0-R、式中、Rは、H、CH3、CX3、CHX2、又はCH2X(X=ハロゲン)であり、B0は、単一のアミノ酸残基(好ましくは、任意選択により置換された脂肪族又は芳香族側鎖を有する)であり;且つB1は、1つ以上のアミノ酸残基(好ましくは、1、2又は3つ)からなり、任意選択により、N末端保護基を含むか、又は国際公開第2009/118375号パンフレット、国際公開第98/13459号パンフレットに記載されるとおりのものである)又はRASI、BASI、WASI(コメ、オオムギ及びコムギの二機能性アルファ-アミラーゼ/サブチリシン阻害剤)若しくはCI2若しくはSSIなどのタンパク質型のプロテアーゼ阻害剤を使用して安定化され得る。組成物は、例えば、国際公開第92/19709号パンフレット、国際公開第92/19708号パンフレット及び米国特許第6,472,364号明細書に記載されるとおりに配合され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で利用される酵素は、酵素に対してそのようなイオンをもたらす最終組成物中の亜鉛(II)、カルシウム(II)及び/又はマグネシウム(II)イオン、並びに他の金属イオン(例えば、バリウム(II)、スカンジウム(II)、鉄(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、スズ(II)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)、及びオキソバナジウム(IV))の水溶性供給源の存在によって安定化される。
【0297】
本明細書で提供される洗剤組成物は通常、水性クリーニング操作における使用の間、洗浄水が、約5.0~約11.5、又は約6.0~約10.5などの約5.0~約12.5のpHを有するように配合される。いくつかの実施形態では、顆粒又は液体洗濯製品は、約6~約8のpHを有するように配合される。推奨される使用レベルでpHを制御するための手法としては、緩衝液、アルカリ、酸などの使用が挙げられ、当業者によく知られている。
【0298】
本発明は、以下の実施例によりさらに記載され、これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0299】
ポリペプチドの調製及び精製
変異及び発現カセットのバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)への導入は、当該技術分野で知られる標準的な方法によって実施された。全てのDNA操作は、当業者に知られる標準的な方法を使用するPCR(例えば、Sambrook et al,2001によって記載されるとおり)によって実施された。プロテアーゼポリペプチドをコードする組み換えB.サブチリス(B.subtilis)構築物が、抗生物質選択下での複合培地(TBgly)中に播種され、37℃で24時間培養された。富栄養培地(PS-1:100g/L スクロース(Danisco cat.no.109-0429)、40g/L 外皮ダイズ(ダイズ豆粉)、10g/L Na2HPO4 12H2O(Merck cat.no.106579)、0.1ml/L Dowfax63N10(Dow)を含有する振盪フラスコに、1:100の比において一晩培養物で播種された。振盪フラスコ培養は、270rpmで振盪させながら30℃で4日間実施された。
【0300】
培養上清の精製は、以下のとおりに実施された:培養ブロスは、26,000xgで20分間遠心分離され、上清は、沈殿物から注意深く捨てられる。上清は、宿主細胞の残りを除去するためにNalgene 0.2μm濾過ユニットに通して濾過される。0.2μmの濾液におけるpHは、3M トリス塩基でpH8に調整され、pH調整された濾液は、20mM トリス/HCl、1mM CaCl2、pH8.0中で平衡化されたMEP Hypercelカラム(Pall Corporation)にアプライされる。平衡化緩衝液でカラムを洗浄した後、カラムは、20mM CH3COOH/NaOH、1mM CaCl2、pH4.5で段階的に溶出される。カラムからの画分は、pH9でSuc-AAPF-pNAアッセイを使用してプロテアーゼ活性について分析され、ピーク画分がプールされる。MEP HypercelカラムからのプールのpHは、20%(v/v)CH3COOH又は3M トリス塩基でpH6に調整され、pH調整されたプールは、20mM MES/NaOH、2mM CaCl2、pH6.0と同じ伝導率まで脱イオン水で希釈される。希釈されたプールは、20mM MES/NaOH、2mM CaCl2、pH6.0で平衡化されたSP-Sepharose(登録商標)Fast Flowカラム(GE Healthcare)にアプライされる。平衡化緩衝液でカラムを洗浄した後、プロテアーゼバリアントが、5カラム体積にわたって同じ緩衝液中の線形NaCl勾配(0→0.5M)で溶出される。カラムからの画分は、pH9でSuc-AAPF-pNAアッセイを使用してプロテアーゼ活性について分析され、活性画分がSDS-PAGEによって分析される。1つのバンドのみがクーマシー染色SDS-PAGEゲル上で観察される画分が、精製された調製物としてプールされ、さらなる実験のために使用される。
【0301】
プロテアーゼ活性アッセイ
タンパク質分解活性は、Suc-AAPF-pNA基質を利用する方法によって決定され得る。Suc-AAPF-pNAは、N-スクシニル-アラニン-アラニン-プロリン-フェニルアラニン-p-ニトロアニリドの略称であり、エンドプロテアーゼによって切断され得るブロックペプチドである。タンパク質分解性の切断の後、黄色の遊離pNA分子が遊離され、波長405nmで可視分光光度法によって測定され得る。Suc-AAPF-PNA基質は、Bachem(カタログ番号L1400、DMSO中に溶解)によって製造される。
【0302】
分析されることになるプロテアーゼ試料は、残りの活性緩衝液(100mM トリス、pH8.6)中で希釈される。アッセイは、30μlの希釈された酵素試料を96ウェルマイクロタイタープレートに移し、70μlの基質標準溶液(100mM トリス中の0.72mg/ml、pH8.6)を添加することによって実施される。溶液を室温で混合し、OD 405nmで5分間、20秒毎に吸収が測定される。
【0303】
時間依存的な吸収曲線の勾配(1分当たりの吸光度)は、条件の所与の設定下で対象のプロテアーゼの活性に正比例する。プロテアーゼ試料は、勾配が線形であるレベルに希釈されるべきである。
【0304】
実施例1.プロテアーゼバリアントの改善された溶解性
定義:
発酵ブロス:
● ACB=発酵ブロスにおける完全なプロテアーゼ活性(結晶化プロテアーゼを含む)。
● ACB SUP=発酵ブロスにおける溶解されたプロテアーゼ活性。
● ACB PEL=発酵ブロスにおけるペレットプロテアーゼ活性(結晶化プロテアーゼを含む)。
● AINIT=発酵ブロスにおける溶解されたプロテアーゼ活性のパーセンテージ。
【0305】
プロテアーゼ結晶溶解:
● A
FULL=希釈された発酵ブロスにおける完全なプロテアーゼ活性(結晶化プロテアーゼを含む)。
● A
EXP=発酵ブロス及び希釈因子のプロテアーゼ活性に基づく希釈された発酵ブロスの予想される完全なプロテアーゼ活性:
【数1】
● A
SUP=希釈された発酵ブロスにおける溶解されたプロテアーゼ活性。
● A
CORR=発酵ブロスにおける測定された活性と希釈された発酵ブロスにおける予想される完全なプロテアーゼ活性の間のパーセントの差:
【数2】
● A
DISS=希釈された発酵ブロスにおけるプロテアーゼの溶解された画分のパーセント:
【数3】
【0306】
材料及び方法:
発酵ブロスにおける初期の溶解されたプロテアーゼ活性
配列番号1のA215位に対応する位置で置換を有する及び有しないプロテアーゼバリアントを発現する宿主細胞からの発酵ブロスが収集され、プロテアーゼ結晶について分析された。プロテアーゼ結晶の存在は、Acta Crystにおいて記載されるとおりに光学顕微鏡(Olympus BX51)及び粉末X線回折(XRPD、PANalytical Empyrean)によって確認された。(Frankaer,C.G.,et.al.(2014).Acta Cryst.D70,1115-1123)。
【0307】
結晶溶解性/形成は、発酵ブロスにおける初期の溶解されたプロテアーゼ活性(AINIT)として溶解されたプロテアーゼ活性(結晶化されていないプロテアーゼ画分)を調査することによって評価された。以下の試料が回収された:
● ACB:完全な発酵ブロス試料(結晶化されたプロテアーゼを含む)
● ACB SUP:上清試料(溶解されたプロテアーゼ)
● ACB PEL:結晶化されたプロテアーゼを含有する培養ブロスからのペレット試料。
【0308】
A
CB SUP及びA
CB PELは、高速遠心分離(5分、10.000xRCF、20℃)によってサンプリングされ、分画された。その後、試料は、上記のプロテアーゼ活性アッセイによって分析された。A
CB及びA
CB SUPにおけるプロテアーゼ活性を使用して、
【数4】
によりA
INITを計算した。
A
INITは、発酵ブロスにおける溶解されたプロテアーゼ活性のパーセンテージである。活性A
CB PEL試料が、プロテアーゼ活性のマスバランスを評価するための対照として使用された。最終的に、プロテアーゼ
+A215Xバリアントに関するA
INITは、A215X置換(すなわち、プロテアーゼ
-A215X)を有しない同じプロテアーゼに関してA
INITに標準化されて、倍率増加として与えられる発酵ブロスにおける初期の溶解されたプロテアーゼ活性における差をもたらした:
【数5】
A215Xは、プロテアーゼバリアントにおける配列番号1のA215位に対応する位置で導入される特定の置換(例えば、A215K)を意味する。
【0309】
プロテアーゼ結晶溶解:
配列番号1のA215位に対応する位置で置換を有する及び有しないプロテアーゼバリアントの結晶溶解を評価するために、発酵ブロスを、H2Oで5倍希釈し、pHレベルを、酢酸(20%)でpH4.5に調整し、伝導率を、CaCl2(34%)で9mS/cmに調整した。溶解は、20℃の一定温度及び十分な混合で実行された。
【0310】
溶解の直後に、実験が開始された。合計で15分及び60分の後、完全なプロテアーゼ活性試料(AFULL)及び上清プロテアーゼ活性試料(ASUP)が回収された。ASUP試料は、高速遠心分離(5分、10.000xRCF、20℃)によってサンプリングされ、上清が捨てられた。その後、全ての試料が、上記のプロテアーゼ活性アッセイによって分析された。
【0311】
発酵ブロスにおける結晶溶解の評価のために、予想される完全なプロテアーゼ活性(A
EXP)が、発酵ブロス及び希釈因子のプロテアーゼ活性に基づいて計算された:
【数6】
【0312】
溶解実験中に回収されたA
FULL試料を使用して、A
CBとA
FULLの間の差、すなわち、発酵ブロスにおける測定された活性と発酵ブロスにおける予想される完全なプロテアーゼ活性の間の差を計算することによってA
EXPを検証した:
【数7】
(A
CORRは、パーセンテージとして与えられる)。
【0313】
結晶溶解は、60分目に溶解されたプロテアーゼ(A
DISS)の画分を計算することによって評価された:
【数8】
【0314】
最終的に、プロテアーゼ
+A215Xに関するA
DISSは、A215X置換を有しない同じプロテアーゼに関してA
DISSに標準化されて、倍率増加として与えられる発酵ブロスにおけるプロテアーゼ結晶溶解の差をもたらした:
【数9】
(A
DISS_T60は、60分目のA
DISSの値を意味する)。
【0315】
結果:
表1は、培養ブロスにおけるA215Xバリアントの初期の溶解されたプロテアーゼ活性を示す。このように、A215K置換は、5つの試験されたプロテアーゼにわたって発酵ブロスにおいて測定された初期の溶解されたプロテアーゼ活性で2.9~15.6倍の増加をもたらした。加えて、置換A215Q及びA215Nは、初期の溶解活性において、それぞれ5.1倍及び2.4倍の増加をもたらした。A215T置換は、よりわずかな効果を有して、1.1倍の増加をもたらし、初期の溶解された活性に対する効果は、A215Sバリアントに関して観察されなかった。これらのデータは、プロテアーゼ結晶形成の程度は、A215X置換の導入によって低減されることを示す。
【0316】
【0317】
表2は、A215Xバリアントの60分後の溶解されたプロテアーゼ活性を示す。このように、A215K置換は、試験された5つ全てのプロテアーゼに関する溶解されたプロテアーゼ活性における1.1~6.0倍の増加をもたらした。置換A215Q、A215N、A215T、及びA215Sは、結晶溶解性における1.6~4.3倍の増加をもたらした。A215S置換は、プロテアーゼ結晶形成の程度に影響を及ぼさなかったが(表1を参照のこと)、この置換は、60後の溶解された活性において1.7倍の増加をもたらした。したがって、これらのデータは、プロテアーゼ結晶の溶解性が、A215X置換の導入によって増大されることを示す。
【0318】
【0319】
本明細書に記載され、且つ特許請求される本発明は、開示される本明細書の特定の態様による範囲に限定されるべきではなく、なぜなら、これらの態様は、本発明のいくつかの態様の例示であることが意図されているためである。いずれの均等物の態様も、本発明の範囲内であることが意図される。実際に、本明細書中に示され、記載されるものに加えた本発明の様々な変更形態が、上記から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態はまた、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図される。矛盾がある場合、定義を含む本開示が優先されることになる。
【配列表】
【国際調査報告】