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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20230905BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 49/22 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61K9/50
A61B5/055 383
A61K49/04
A61K49/18
A61K49/22
A61K51/12 200
A61K51/12 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504512
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021072510
(87)【国際公開番号】W WO2022034176
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/072728
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ティアン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ピーア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C096
【Fターム(参考)】
4C076AA62
4C076AA95
4C076BB12
4C076BB21
4C076BB32
4C076EE05H
4C076EE12A
4C076EE23H
4C076EE27H
4C076EE41H
4C076EE42A
4C076EE51H
4C076FF66
4C076GG50
4C084AA12
4C084AA30
4C084MA38
4C084MA55
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA81
4C085HH03
4C085HH05
4C085HH07
4C085HH09
4C085HH11
4C085JJ20
4C085LL01
4C085LL03
4C085LL05
4C085LL07
4C085LL11
4C085LL13
4C096AA20
4C096FC14
(57)【要約】
本発明は、ホスト流体内の複数の個々の粒子の集約によって形成される送達デバイスに関し、複数の個々の粒子のうちの1つ以上の個々の粒子は、ホスト流体より低い、好ましくは水より低い密度と、集約を形成するために、初期には分離した個々の粒子がホスト流体内で集約できるようにする、すなわち、ホスト流体内で互いに接続できるようにする、結合特性と、を有する。本発明は更に、複数の個々の粒子を作り出すための方法、及び、集約部位におけるホスト流体内の複数の粒子から送達デバイスを形成する方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト流体内の複数の個々の粒子(100)の集約(200)によって形成される送達デバイスであって、
前記複数の個々の粒子のうちの1つ以上の個々の粒子(100)は、前記ホスト流体より低い、好ましくは水より低い密度と、前記集約(200)を形成するために、前記初期には分離した個々の粒子(100)が前記ホスト流体内で集約できるようにする、結合特性と、を有し、
前記個々の粒子(100)は、0.1μmから1mmまでの範囲内で選択された少なくとも1次元のサイズを有し、
前記デバイス(200)は、1μmから10mmまでの範囲内で選択された少なくとも1次元のサイズを有する、送達デバイス。
【請求項2】
前記送達デバイス(200)は、標的部位(TS)において展開可能なカーゴを運ぶデバイス(200)である、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記結合特性は、前記個々の粒子(100)の前記集約をもたらす磁気特性を含む、請求項1又は2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記結合特性は、磁場の印加の際に、前記個々の粒子(100)の前記集約をもたらす磁気特性を含む、請求項1又は2に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記磁気特性は、均質な磁場及び不均質な磁場のうちの少なくとも1つの存在下で始動される、請求項4に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記磁場は、0.1mTから20Tまでの範囲内、好ましくは、0.1mTから10Tまでの範囲内の、磁場強度を備える、請求項4又は5に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記個々の粒子(100)は、球形、円柱形、流線形、又はそれらの組み合わせ、あるいはランダムに成形される、請求項1から6のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記カーゴは、薬物、遺伝物質、造影剤、ウイルス、バクテリア、細胞、ポリマ材料、金属又は金属化合物、センサ、カメラ、生検ツール、放射性物質、反応性化学薬品、染料及び着色料、蛍光体、生物材料、針、又はこれら材料の組み合わせ、及び/又は、酵素又は遺伝物質などの、薬剤及び/又は薬学的活性化合物及び/又は生物材料両方の組み合わせ、又は、パイプライン内の漏れを密封するか又は閉塞を溶解するように構成された材料のグループから、選択される、請求項2から7のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記粒子(100)は、抗結合層でコーティングされる、請求項1から8のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記ホスト流体は、泌尿器系、消化器系、抹消及び中枢神経系、脳脊髄液、血液循環系、免疫系、生殖器系、眼科系、細胞外形、マイクロ流体、パイプライン系、流体毛細血管、又は流体ノズルの、流体である、請求項1から9のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記流体(100)は、生体適合性及び/又は生分解性材料(110)、油、ガス、ポリマなどの低密度材料(120)、タンパク質含有材料、小胞、ガス充填タンパク質ナノ構造、エーロゲル、繊維性材料、炭水化物含有材料、マルチ材料、高度に多孔質な材料、及び/又は、ガス、ヨウ素、バリウム、金及び/又は銀のナノ粒子、ガドリニウム、過分極ガス、小胞、及び/又はガス充填タンパク質ナノ構造などの、イメージング造影剤(130)も含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記粒子(100)は、固有の双極子モーメントを備えるか、又は、磁場などの外部磁場の前記印加時に双極子モーメントを形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記結合特性は、外部物理場、すなわち赤外光、又は超音波などの音響場の前記印加時に、前記化学的結合特性を前記活動化することで前記個々の粒子(100)の前記集約をもたらす、化学的結合特性を含み、及び/又は、
前記化学的結合特性は、前記複数の個々の粒子(100)を集約環境内、すなわち前記流体内に挿入する際に、前記化学的結合特性を前記活動化することで前記個々の粒子(100)の前記集約をもたらす、請求項1又は2に記載の送達デバイス。
【請求項14】
複数の個々の粒子を作り出すための方法であって、
前記粒子は、送達デバイス(200)に、好ましくは請求項1から13のいずれか一項に従った前記送達デバイスに集約するように構成され、
前記方法は、
発泡流体混合物を生成するために、浮揚剤を第1の流体内に混合させるステップと、
サイズが制御された液滴を生成するために、前記混合物を第2の非混合性流体内に混合させるステップと、
前記液滴を凝固させるステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記方法は更に、
前記固化した液滴から前記粒子を生成するために、前記第2の流体を除去するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は更に、
選択プロセスを用いて前記粒子をフィルタリングするステップを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
集約部位(AS)においてホスト流体内の複数の粒子(100)から送達デバイスを形成する方法であって、
前記複数の個々の粒子のうちの1つ以上の個々の粒子(100)は、水より低い密度を有し、
前記各粒子(100)の少なくとも1次元のサイズは、0.1μmから1mmまでの範囲内、具体的には10μmから0.8mmまでの範囲内、特に50から500μmまでの範囲内で選択され、
前記方法は、
低濃度の前記複数の粒子を伴う粒子流体を、ホストを含む流体の前記ホスト流体内に注入するステップと、
前記集約部位(AS)への前記ホスト流体を介する前記複数の粒子(100)の浮揚通過に続いて、前記集約部位(AS)において前記複数の粒子を集めるステップであって、前記浮揚通過は、任意選択として前記ホスト流体の流れ方向とは反対の方向に行われるステップと、
前記送達デバイス(200)を形成するために、前記集約部位(AS)において前記複数の粒子を集約させるステップであって、前記送達デバイス(200)の少なくとも1次元のサイズは、1μmから10mmまでの範囲内、具体的には100μmから5mmまでの範囲内、特に200μmから2mmまでの範囲内で選択されるステップと、
前記送達デバイス(200)を、前記ホスト流体を介して前記標的部位(TS)へとナビゲートするステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記方法は、
前記粒子(100)によって運ばれるカーゴを前記標的部位(TS)に展開する更なるステップを含み、
前記カーゴを展開する前記ステップの間、前記粒子(100)は任意選択として密度を水より高く進展させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の粒子(100)を集約させる前記ステップ及び/又は前記送達デバイス(200)をナビゲートする前記ステップ及び/又はカーゴを展開する前記ステップは、光照射場、磁場、音響場、電場、電磁場、化学場、又はそれらの組み合わせなどの、外部の場、力、又はトルクを印加することによって、平均密度、形状、向きを変更すること、例えば、前記ホスト流体のホスト体を移動させること、固体境界への前記接着力、又はそれらの組み合わせによって、制御される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の粒子は更に、超音波、X線、CT、MRI、PET、磁性粒子イメージング、蛍光イメージングなどの、イメージング方法によって、前記送達デバイス(200)が前記集約及び/又は前記標的部位(TS)において検出可能なように、イメージング造影剤(130)を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト流体内の複数の個々の粒子の集約によって形成される送達デバイスに関する。更に本発明は、複数の個々の粒子を作り出すための方法、及び、ホスト流体内の複数の粒子から送達デバイスを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受動的送達デバイスは、医学の分野で広く使用されてきた。例えば、カプセル内視鏡は腸の画像を撮影するために使用され、薬物送達カプセルは薬物を送達するために使用される。受動的デバイスの共通の欠点は、デバイス又は粒子の場所を患者の体内で精密に制御できないことであり、診断の確度及び治療の効果を制限する。同様に、薬物送達にはリポソームが使用されるが、リポソームは血流によって受動的に分配され、特定の組織に入ることができない。
【0003】
方法は、流体内の小さな粒子を能動的に操作するために存在する。小さな(ミクロンからサブミリまで)粒子、この場合は例えば、光ピンセット、光電気ピンセット、音響ピンセット、磁気ピンセット、及び流体ピンセットなどを、操作するための力を生成するために、外部物理場の空間勾配がしばしば適用される。しかしながら、これらの方法の共通の制限は、大きな場勾配は、短い距離にわたって、及び場生成器までのより短い距離でしか認識できないことである。こうした高勾配は、例えば医学の分野での適用に必要となるような、より長い距離にわたって認識することが困難である。別の難点は、光波又はマイクロ波などのいくつかの場は、吸収される際に生体組織に容易に浸透しないことである。更に別の難点は、印加可能な電力レベルが安全上の理由に起因して一般に制約されることであり、これによって小さな粒子にかかる力が制限される。
【0004】
最終的に、磁場によって引き寄せることが可能な力を粒子にかけることが可能である。しかしながら、静磁場又は低周波磁場の場合、大きな磁場勾配を生成するための設定はかさばり、達成可能な勾配は概して弱い。したがって、例えば、小さな粒子の操作及び人の身体内の特定の領域への小さな粒子の移送を含む、生物医学的応用などの、特定の応用に必要な十分に大きい距離にわたって適切に強い力をかけることが可能な、適切な技法が欠如している。勾配が身体内に十分深く到達するように、組織内に十分深く浸透可能であり、必要なより長い距離にわたって確立可能な、物理場を伴う適切に高い空間勾配を維持することは、困難であるか又は非現実的である。
【発明の概要】
【0005】
したがって本発明の目的は、流体内のデバイスの有向移送を可能にし、有向移送を実行可能にするために適切な力が利用可能な、送達デバイス及び方法を提供することである。
【0006】
本目的は、独立請求項の主題によって解決される。
【0007】
具体的には、ホスト流体内の複数の個々の粒子の集約によって形成される送達デバイスが提供され、複数の個々の粒子のうちの1つ以上の個々の粒子は、ホスト流体より低い、好ましくは水より低い密度と、集約を形成するために、初期には分離した個々の粒子がホスト流体内で集約できるようにする、すなわち、ホスト流体内で互いに接続できるようにする、結合特性とを有する。個々の粒子は、0.1μmから1mmまでの範囲内で選択された少なくとも1次元のサイズを有し、デバイスは、1μmから10mmまでの範囲内で選択された少なくとも1次元のサイズを有する。したがって言い換えれば、本発明に従った送達デバイスは、各々が水より低い密度を備えることが可能な、複数の分離した個別の粒子、すなわち2つ以上の粒子で形成される。これによって送達粒子は、水中で、好ましくは、同様の密度を有し得るホスト流体内で、浮くことが可能である。更に粒子は、粒子が集約できるようにする、すなわち、通常、粒子がより長い期間接続しないようにする熱的力より強い物理的又は化学的相互作用によって互いに接続できるようにする、結合特性を備える。結合特性により、集約、すなわち送達デバイスは持続し、その構成成分粒子より長いサイズを有する。
【0008】
上記で既に述べたように、例えば個々の粒子は、0.1μmから1mmまでの範囲内で選択された少なくとも1次元のサイズを有することができる。具体的には、個々の粒子は、50μmから0.8mmまでの範囲内、及び特に、100から500μmまでの範囲内の、サイズを有することができる。他方で、集約された送達デバイスは、1μmから10mmまでの範囲内、具体的には100μmから5mmまでの範囲内、特に200μmから2mmまでの範囲内で選択された、少なくとも1次元のサイズを有することが可能である。
【0009】
個々の粒子のサイズに比べてより大きなサイズの送達デバイスは、結果として明らかな物理的変化を生じさせる。例えば送達デバイスは、ろ過、サイズ排除クロマトグラフィ、及び/又は、ゲル電気泳動によって、個々の粒子から分離することができる。送達デバイスは、イメージングされるとき、異なるコントラストを示すこともできる。例えば、光をより強く散乱させる。例えば、粒子が磁気特性を有する場合、集約された送達デバイスは、磁気イメージングに応答してより強いイメージングを提供する。更に、例えば、物理場を印加することによって、ホスト体を介して、送達デバイスを能動的にナビゲートすることが可能であり得る。このようにして、集約された送達デバイスは、特定の部位に能動的に移動可能である。
【0010】
これに関連して、粒子は必ずしも単一の材料から作られるものではないが、互いの組み合わせにおいて、所望の特性、すなわち、サイズ及び/又は密度及び/又は多孔性及び/又は磁気特性を有する、材料の組成から作ることができることに、更に留意されたい。例えば個々の粒子は、個々の粒子、具体的には多孔質粒子、任意選択としてカプセル化された粒子を形成するために、磁気材料及びエラストマなどの混合物を含む組成によって形成可能である。
【0011】
こうした送達デバイスは流体環境内で使用可能であり、その構成成分はホスト流体内で浮力によって集約部位に移送可能であり、個々の粒子は、外力の印加又は粒子の固有の特性のいずれかを介して集約を形成するために集約可能である。集約部位とは異なる、すなわち、集約部位が標的部位であるか、又はデバイスが標的部位へと移動される元の位置のいずれかであり得る場合、集約部位におけるデバイスのアセンブリは、その後、デバイスを集約部位から標的部位へと移送できるようにする。
【0012】
サイズの抑制に起因して集約部位に容易に到達できない場合、送達デバイスの構成成分は、その後デバイスが形成される集約部位へ個別に移送可能である。
【0013】
本発明の第1の実施形態によれば、送達デバイスは、標的部位に展開可能なカーゴ(cargo)を運ぶデバイスである。したがって、送達デバイスは、薬物、イメージングデバイス、異なる種類のツール、イメージングコントラスト、漏れ又は閉塞をそれぞれ修復又は溶解するための補助具、及び/又は、上記の組み合わせなどの、カーゴを、カーゴが展開可能な標的部位に移送するように、構成されることが可能であり得る。
【0014】
したがって、標的部位は、特定の薬物などが送達されるべき脳の一部などの身体の一部であることが可能であり得る。標的部位は、除去しなければならないある種の詰まり、又は密封するべき漏れを含む、チャネル、容器、タンクなどの一部であることも可能であり得る。この場合、送達デバイスは、例えば適切なツールを標的、すなわち、詰まり又は漏れに移送可能であり、これによって問題を解決することができる。したがって、送達デバイスは一般に、様々な異なる種類のツール及び/又は材料を移送可能である。
【0015】
別の実施形態によれば、結合特性は、個々の粒子の集約をもたらす磁気特性を含む。すなわち、粒子は、例えば強磁性とすることができ、近接近すると、例えば、個々の粒子が送達デバイスに集約する場所であり得る集約部位において、互いに引き合うことになる。したがって、粒子を送達デバイスに集約させるために、ユーザが能動的に入力する必要はない。
【0016】
本発明の更に別の実施形態において、結合特性は、磁場の印加時に、個々の粒子の集約をもたらす磁気特性を含む。すなわち、本実施形態によれば、個々の粒子は、粒子に磁場が印加されるとき、送達デバイスに集約する。この実施形態は、個々の粒子が互いに近接近しているときに自発的に集約するのを防ぎたい場合、有利であるものと証明されている。粒子が、磁場が印加されたときにのみ集約をもたらす磁気特性を備える場合、集約プロセスはユーザによって能動的に制御可能である。したがって、ユーザは、粒子が集約するべき時点及び場所を能動的に決定することができる。
【0017】
これに関連して、磁気特性は、均質な磁場及び不均質な磁場のうちの少なくとも1つの存在下で始動されることも可能であり得る。送達デバイス、並びに/あるいは、個々の粒子が構成される材料、及び/又は、デバイスが適用されるべき種類の「ホスト体」における材料の、精密な適用に依存して、それに応じて、磁場のタイプ、すなわち均質であるか不均質であるかを選択することができる。どちらのタイプの磁場も、異なる目的のために印加されることも想像できる。例えば、均質な磁場は、粒子を送達デバイスに集約させるために印加され、第2のステップにおいて、不均質な磁場は、集約されたデバイスを、ホスト流体を介して特定のスポット、例えば標的部位へと能動的にナビゲートするために印加されることが可能であり得る。
【0018】
磁場は、0.1mTから20Tまでの範囲内、好ましくは、0.1mTから10Tまでの範囲内の、磁場強度を備えることができる。具体的には、印加される磁場の磁場勾配は、0.01T/mから1000T/mまでの範囲内、好ましくは、0.1T/mから100T/mまでの範囲内とすることができる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、個々の粒子は、球形、円柱形、又は流線形、又はそれらの組み合わせ、あるいはランダムに成形される。こうした形状は、流体内で使用されるときに有利であることが証明されている。
【0020】
別の実施形態によれば、カーゴは、薬物、遺伝物質、造影剤、ウイルス、バクテリア、細胞、ポリマ材料、金属又は金属化合物、センサ、カメラ、生検ツール、放射性物質、反応性化学薬品、染料及び着色料、蛍光体、生物材料、針、又はこれら材料の組み合わせ、及び/又は、酵素又は遺伝物質などの、薬剤及び/又は薬学的活性化合物及び/又は生物材料両方の組み合わせ、ヘパリン又はアプロチニン、トラネキサム酸(TXA)、イプシロンアミノカプロン酸及びアミノメチル安息香酸などの、抗凝結剤又は血液凝固薬、又は、パイプライン内の漏れを密封するか又は閉塞を溶解するように構成された材料及び/又は薬剤のグループから、選択される。したがって、送達デバイスは、異なる適用域における移送に適することが可能である。
【0021】
別の実施形態によれば、個々の粒子は抗結合層でコーティングされる。層は、粒子がホスト流体の固体境界、特に生体軟部組織に結合するのを防止する。コーティングは好ましくは、個々の粒子の外部周辺で均質である。コーティングの厚みは、通常、100μm未満であり、好ましくは10μm未満、具体的には1μm未満である。コーティングは、固体、液体、又はガス材料、あるいは前述の材料の組み合わせを備えることができる。こうした材料の例は、シリコン油、潤滑油、水、金属、ペルフルオロカーボン、シラン、PEG(ポリエチレングリコール)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、タンパク質、脂質、ガス、空気、アルゴン、SFとすることができる。
【0022】
ホスト流体は、泌尿器系、消化器系、神経系、血液循環系、免疫系、生殖器系、眼科系、又は細胞外形、マイクロ流体、パイプライン系、流体毛細血管、又は流体ノズルの、流体であることも可能である。
【0023】
流体は、生体適合性及び/又は生分解性材料、油、ガス、ポリマなどの低密度材料、タンパク質含有材料、小胞、ガス充填タンパク質ナノ構造、エーロゲル、繊維性材料、炭水化物含有材料、マルチ材料、高度に多孔質な材料、及び/又は、ガス、ヨウ素、バリウム、金及び/又は銀のナノ粒子、ガドリニウム、過分極ガス、小胞、及び/又はガス充填タンパク質ナノ構造などの、イメージング造影剤も含むことができる。特に、生体適合性及び/又は生分解性材料を含む粒子は、その指定されたタスクを完了すると、送達デバイスについて心配する必要がないという利点を有する。粒子、及びしたがって送達デバイスをホスト体内に導入するとき、送達デバイスは簡単に分解され、最終的には身体によって排出されることが可能であり得る。他方で、磁気特性を備える材料を含む粒子は、その印加エリアの外側で、送達デバイスに対処する対応する物理場を印加することによって、ナビゲートされ得る。
【0024】
これに関連して、低密度材料は、ホスト流体より低い、好ましくはホスト流体の密度の10分の1未満の密度を備える、材料のカテゴリを指すことに留意されたい。例えば、ホスト流体が、1000~1050kg/mの範囲の密度を有する、水ベースの溶液である場合、好ましい低密度材料は、1000kg/m未満、具体的には900kg/m未満、特に500kg/m未満、及びより具体的には100kg/m未満の、密度を備える。こうした材料は、例えば、ポリスチレン(75kg/mまで)、空気(1.2kg/mまで)、又はエーロゲル(1.0kg/mまで)とすることができる。
【0025】
更に別の実施形態によれば、粒子は、固有の双極子モーメントを備えるか、又は、例えば前述のような磁場などの外部磁場の印加時に双極子モーメントを形成する。双極子モーメントを備えるか又は形成する粒子は、均質な磁場及び/又は不均質な磁場を印加することによって、更に容易に対処可能である。これは例えば、特定のスポットに粒子を集約させること、又は、集約した送達デバイスをホスト流体を介してナビゲートすることも、助けることができる。
【0026】
本発明の異なる実施形態によれば、結合特性は、外部物理場、すなわち赤外光、又は超音波などの音響場の印加時に、化学的結合特性を活動化することで個々の粒子の集約をもたらす、化学的結合特性を含む。いくつかの粒子材料及び/又は印加の場合、粒子を送達デバイスに集約させるために、化学的特性の活動化を生じさせる物理場によって、粒子が対処可能なときに、必要な可能性がある。いくつかの印加エリアでは、化学的結合は物理的結合に比べて、利点、すなわち、粒子がより容易に対処可能であるなどの利点を有し得る。
【0027】
追加又は代替として、化学的結合特性は、複数の個々の粒子を集約環境内、すなわちホスト流体内に挿入する際に、化学的結合特性を活動化することで個々の粒子の集約をもたらすことを、本発明の一実施形態とすることができる。したがって、本実施形態によれば、粒子の集約を引き起こすためには、複数の粒子をホスト流体内に挿入するだけでよい。すなわち、本実施形態では、ユーザは、粒子を集約させるために必ずしも積極的に介入する必要はない。集約は、ホスト流体自体によって簡単に引き起こさせることができる。
【0028】
本発明の第2の態様は、複数の個々の粒子を作り出すための方法に関し、この方法では、粒子は、送達デバイスに、好ましくは本発明に従った送達デバイスに集約するように構成され、この方法は、発泡流体混合物を生成するために、浮揚剤を第1の流体内に混合させるステップと、サイズが制御された液滴を生成するために、混合物を第2の非混合性流体内に混合させるステップと、液滴を凝固させるステップと、を含む。浮揚剤は、泡、小胞、ガス充填タンパク質ナノ構造、エーロゲル、コロイド、磁性材料、有機、無機、及び生物材料を含む材料のうちの、少なくとも1つで、構成可能である。浮揚剤は、作り出される粒子が水より低い密度を備えることが予期される、という事実に寄与可能であるため、粒子は水中、又は、水と同様の密度を有する別の流体、例えばホスト流体内で浮くことができることになる。したがって、浮揚剤は、ホスト流体内での粒子の動きを容易にすることができる。更にこれは、粒子の集約の形成、又はカーゴの放出、あるいは、送達デバイスの適用の効果さえも、支援することができる。
【0029】
形成された液滴は、0.1μmから1mmまでの範囲内の少なくとも1次元のサイズを有することができる。具体的には、50μmから0.8mmまでの範囲内、及び特に100から500μmまでの範囲内のサイズを有することができる。
【0030】
発泡流体混合物は、少なくとも2つの相、すなわち、低密度相及び流体相を備える。混合物は、ランダムに発泡させるプロセス、又は、例えば、マイクロ流体液滴生成プロセスを使用してガス含有水滴を形成することによる、被制御低密度材料カプセル化プロセスの、いずれかで生成される。第1の流体及び第2の流体は、非混合性である。薬物は第1の流体内に含まれ得るため、しばしば薬物と相溶性のある流体として選択される。例えば、水溶性薬物は、水性の第1の流体が必要である。したがって、第2の流体は油性である。別の例は、薬物が油溶性であるため、第1の流体は油性であり、第2の流体は水性であることが可能である。選択プロセスは、平均密度、界面化学、特定の表面に対する接着力、及び/又は、それらの次元などの、1つ又は多くの所望の粒子の物理的又は化学的特性に基づいて、所望の粒子を選択するためのプロセスとすることができる。
【0031】
第1の実施形態によれば、方法は更に、固化した液滴から粒子を生成するために、第2の流体を除去するステップを含むことも可能であり得る。第2の流体は、例えば、溶剤、例えばエタノール、アセトン、イソプロパノールを用いる洗浄プロセスによって除去可能である。その後溶剤は、室温、加熱されたオーブン内、又は凍結乾燥機内のいずれかで、乾燥させることができる。
【0032】
第2の実施形態によれば、方法は更に、選択プロセスを用いて粒子をフィルタリングするステップを含む。粒子は例えば、サイズ、密度、形状、又は光学特性によってフィルタリング可能である。一例は、特定のサイズ範囲内の粒子を選択するために、フィルタ紙を介して粒子をフィルタリングすることであり得る。別のオプションは、粒子を流体と混合し、所与の時間期間後、流体上に浮かぶ粒子のみを選択し、粒子を密度によってフィルタリングすることであり得る。粒子を粒子内に生成可能な光信号によってフィルタリングすること、又は、粒子を遠心分離によってフィルタリングすること、あるいは、特定の所望の音響特性又は磁気特性を備える粒子のみが選択されるように、それぞれ、超音波又は磁場を使用して粒子を選択することも考えられる。したがって粒子は、適用例に応じて、複数の異なる方法によって選択可能である。
【0033】
本発明の第3の態様は、集約部位においてホスト流体内の複数の粒子から送達デバイスを形成する方法に関し、複数の個々の粒子のうちの1つ以上の個々の粒子は、水より低い密度を有し、各粒子の少なくとも1次元のサイズは、0.1μmから1mmまでの範囲内、具体的には10μmから0.8mmまでの範囲内、特に50から500μmまでの範囲内で選択され、方法は、低濃度の複数の粒子を伴う粒子流体をホストを含む流体のホスト流体内に注入するステップと、集約部位へのホスト流体を介する複数の粒子の浮揚通過に続いて、集約部位において複数の粒子を集めるステップであって、浮揚通過は、任意選択としてホスト流体の流れ方向とは反対の方向に行われるステップと、送達デバイスを形成するために、集約部位において複数の粒子を集約させるステップであって、送達デバイスの少なくとも1次元のサイズは、1μmから10mmまでの範囲内、具体的には100μmから5mmまでの範囲内、特に200μmから2mmまでの範囲内で選択されるステップと、送達デバイスをホスト流体を介して標的部位へとナビゲートするステップと、を備える。
【0034】
したがって、粒子はホスト流体内に注入されるとき、流体上に浮かぶことが可能であり、したがって重力方向に逆らって上昇することがわかる。粒子は、ホスト流体が浮力の方向とは正反対の流れ方向を有する場合、まさに浮力を体験する。したがって粒子は、浮揚通過をたどって集約部位へと流れることができるという事実を利用することができる。したがってユーザは、今までは粒子のサイズが小さいためにとにかく非常に困難であった、粒子を集約部位へと運ぶことに、能動的に介入する必要はない。
【0035】
可能な粒子流体は、空気、又は、ホスト流体(例えば、水)への溶解度が低い不活性ガスとすることができる。こうした流体の例は、アルゴン又はSFである。「低濃度」という表現は、室温での熱エネルギーの下で作用しない粒子の濃度を指す。具体的には、濃度は1ミリリットル当たり10粒子よりも高くてはならず、好ましくは1ミリリットル当たり10粒子よりも高くてはならない。
【0036】
これに関連して、個々の粒子が小さ過ぎる場合、表面力、例えば流体抗力と表面との相互作用は、粒子が浮かないように、物体力、例えば重力及び浮力よりも強い場合があることにも留意されたい。更に、個々の粒子が小さ過ぎる場合、浮揚剤、例えばガスは、流体内に溶解し得る。したがって粒子は、少なくとも1方向において、1μmよりも大きいはずである。個々の粒子のサイズが小さいことの利点は、大きいデバイスであると十分な空間がなく、したがってそうした場所を詰まらせるような場所に、注入できることである。粒子は十分に小さいため、粒子が送達デバイスに集約するだけの十分大きな場所に到達するまで、浮揚通過を辿ることが可能である。
【0037】
現在、デバイスが、MRI、X線などの最先端のイメージングデバイスを用いて撮像されると考えられる場合、200から300μmの送達デバイスサイズが必要である。しかしながら一般に、より小さいデバイスサイズを選択することが可能である。したがって、既知のイメージング技法がより良好になるほど、より小さいデバイスを撮像することができる。また、送達デバイスの適用のためにイメージング技法が必要ない場合、既に200μmより小さいことも可能である。したがって、送達デバイスのサイズは、デバイスの適用に関連して選択可能であることがわかる。
【0038】
送達デバイスのナビゲーションに関して、送達デバイスをナビゲートするステップにおいて、デバイスは、標的部位へのホスト流体の流れ方向に浮遊すること、又は、磁場などの外部物理場を印加することによってナビゲートされることの、いずれかが可能であり、それによって、送達デバイスは、流れ方向及び/又は重力及び/又は浮力にさえ逆らって、標的部位へ、ホスト流体における任意の所与の方向に移動されることに留意されたい。
【0039】
浮力を介したナビゲーションは、ホスト体の向きの変更、すなわちホスト体を移動させることによっても、サポート可能である。これは例えば、粒子が、カーブ及び/又はエッジを備えるチャネルを介して流れなければならない場合、役立ち得る。重力場に対するホスト体全体の向きを変更することによって、浮力の相対的な方向に影響を与えることができる。それにより、速度及び方向の両方における粒子又は送達デバイスの動きを、指示することが可能である。
【0040】
第1の実施形態によれば、方法は、粒子によって運ばれるカーゴを標的部位に展開する更なるステップを含み、カーゴを展開するステップの間、粒子は任意選択として密度を水より高く進展させる。
【0041】
粒子によって運ばれるカーゴは、薬物、遺伝物質、造影剤、ウイルス、バクテリア、細胞、ポリマ材料、センサ、カメラ、生検ツール、放射性物質、反応性化学薬品、生物材料、リポソーム、ナノ粒子、針、又はこれら材料の組み合わせ、及び/又は、酵素又は遺伝物質などの、薬剤及び/又は薬学的活性化合物及び/又は生物材料両方の組み合わせ、ヘパリン又はアプロチニン、トラネキサム酸(TXA)、イプシロンアミノカプロン酸及びアミノメチル安息香酸などの、抗凝結剤又は血液凝固薬、又は、パイプライン内の漏れを密封するか又は閉塞を溶解するように構成された材料など、異なる性質であることが可能である。したがって、送達デバイスは、異なる種類の適用のための送達デバイスとして機能することができる。
【0042】
水よりも高い密度を進展させることによって、粒子、及びしたがってデバイスは、沈殿力を体験し、たとえ流体の流れ方向に逆らう場合であっても重力の方向に移動する。粒子によって運ばれるカーゴを展開した後、送達デバイスを互いに結び付ける引力は小さくなるため、デバイスは再度ばらばらになり、分離した個々の粒子に戻ることも可能である。単一の粒子はより大きなデバイスよりも容易に分解可能であるため、これは役立ち得る。
【0043】
別の実施形態によれば、複数の粒子を集約させるステップ及び/又は送達デバイスをナビゲートするステップ及び/又はカーゴを展開するステップは、光照射場、磁場、音響場、電場、電磁場、化学場、又はそれらの組み合わせなどの、外部の場、力、又はトルクを印加することによって、平均密度、形状、向きを変更すること、例えば、ホスト流体のホスト体を移動させること、固体境界への接着力、又はそれらの組み合わせによって、制御される。したがって、集約並びにナビゲーションは、上述の外部場のうちの少なくとも1つを印加することによって、引き起こすこと及び/又はサポートすることができる。
【0044】
複数の粒子は更に、超音波、X線、CT、MRI、PET、磁性粒子イメージング、蛍光イメージングなどの、イメージング方法によって、送達デバイスが集約及び/又は標的部位において検出可能なように、イメージング造影剤を含むことが可能である。粒子自体がイメージング造影剤を形成するように、粒子が磁気特性を備えることも可能であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明を単に例として更に詳細に説明する。図には下記の内容が示されている。
【0046】
図1】流体環境において粒子を送達するステップを示す例示的概略図である。
図2】中枢神経系において粒子を送達するステップを示す例示的概略図である。
図3】粒子を示す例示的概略図である。
図4】クラスタの位置を固定するステップを示す例示的概略図である。
図5】ホスト体におけるチャネル間の角度を変更するステップを示す例示的概略図である。
図6】球形で送達される粒子の一実施形態を示す図である。
図7】流線形で送達される粒子の一実施形態を示す図である。
図8】円柱管形で送達される粒子の一実施形態を示す図である。
図9】尾部を備える送達される粒子の一実施形態を示す図である。
図10】複数の浮揚剤を備える送達される粒子の一実施形態を示す図である。
図11】多孔質母材を備える送達される粒子の一実施形態を示す図である。
図12】送達される粒子の顕微鏡画像を示す図である。
図13】本発明に従った、粒子の生成ワークフローを示す図である。
図14】粒子の例示的膨潤プロセスを示す図である。
図15】生成された粒子の例示的ろ過プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、流体環境、すなわちホスト流体内で粒子を送達するステップの例示的概略図を示し、分散粒子100は、典型的には水からなる流体に対するその低い密度に起因して、浮力によって動かされ、長く細いチャネル400をチャンバ、すなわち集約部位ASまで上方へ移動する。次いで粒子100は、集約部位ASにおいて、クラスタ200、すなわち送達デバイス200へと集約し、送達デバイス200は第2の場によって標的部位へと始動される。次いで送達デバイス200は、標的部位TSにおいてカーゴ展開状態300になる。
【0048】
図2は、本発明の可能な適用例を示す。図は、粒子100を中枢神経系内で脳幹へと送達するステップの例示的概略図を示し、分散粒子100は、脳脊髄液内で浮力によって動かされ、くも膜下腔500を集約部位ASへと上方へ移動する。次いで粒子は、くも膜下槽においてクラスタ200に集約し、クラスタ200は第2の場によって標的部位TSへと移動するように始動される。粒子100によって運ばれる薬物、すなわちカーゴは、脳の頂部における標的部位TSにおいて、展開状態300で放出される。
【0049】
図3は、粒子100の例示的概略図を示し、浮力駆動ステップの間、その移動経路に沿って障害物510を避けるように、粒子100を横方向に動かすか又は回転させるために、第2の場からの力又はトルクがかけられる。
【0050】
図4は、外部場生成器800によって、脳内の標的部位TSにおける展開状態300でクラスタ200の位置を固定するステップの例示的概略図を示す。外部場生成器800は、例えば、磁気又は超音波の変換器とすることができる。
【0051】
図5は、個々の粒子100が移動する人体内のチャネル400と、粒子100の速度を制御するための重力の方向と、の間の角度を変更するステップの例示的概略図を示す。図に示された例では、角度は、人が横になっているベッド700の角度を調節することによって変更される。角度を変更することによって、粒子100の速度を制御できるように、浮力方向と重力の方向との間の角度も変更される。
【0052】
図6は、生分解性ゲル110に埋め込まれた浮揚剤120、磁性粒子130、及び治療剤140からなる、球形の送達される粒子100の一実施形態を示す。デバイスを横方向に移動させるために、本実施形態では磁場勾配力が使用される。
【0053】
図7は、流線形、すなわち、楕円形又はラグビーボール形の構成において送達される粒子100の一実施形態を示す。図7(a)では、磁場が印加されないとき、重力の方向に逆らって粒子100がどのように移動するかがわかるが、図7(b)は、粒子100を傾斜させるために磁気トルクが印加されるとき、非対称流体抗力に起因して、横方向速度成分がどのように実現されるかを示す。
【0054】
図8は、円柱管形において送達される粒子100の別の実施形態を示す。本実施形態では、粒子の平均密度が経時的に増加し、粒子の回復を容易にするように、浮揚剤120は境界面150を介して流体内で徐々に溶解する。
【0055】
図9は、尾部を備える粒子100の一実施形態を示す。尾部160を湾曲させるために磁気トルクが印加され、結果として、非対称流体抗力に起因して横方向速度成分を生じさせる。
【0056】
図10は、複数の浮揚剤120を備える粒子100の一実施形態を示す。材料はガス、油、又は低密度ポリマとすることができる。
【0057】
図11は、多孔質母材110を備える粒子100の一実施形態を示す。本実施形態では、低密度材料120は多孔質母材110内に充填される。
【0058】
図12は、複数の浮揚剤を備える送達される粒子100の顕微鏡画像を示す。
【0059】
図13は、粒子100の生成ワークフローの一実施形態を示す。図13(a)は、水性ゼラチン溶液が磁性紛及びカーゴとどのように混合されるかを示す。図13(b)では、水相溶液を用いて泡が生成される。次いで、図13(c)では、別の不混和相、例えば油相が準備され、その後(例えば、図13(d)を参照)、エマルションを生成するために2つの相は完全に混合される。図13(e)では、固体粒子を形成するために水相は凝固される。粒子を形成した後、図13(f)において、ろ過プロセス使用してある種の粒子を選択することができる。その後、油相を除去することが可能であり、選択された粒子は乾燥される(図13(g))。
【0060】
図14は、粒子の膨潤プロセスの一実施形態を示す。図14(a)は乾燥した形の粒子100の顕微鏡画像を示し、図14(b)は乾燥した粒子100のサイズ分布を示す。図14(c)では、膨潤した形の水溶液中の粒子100の顕微鏡画像を示し、図14(d)は、膨潤粒子100の対応するサイズ分布を示す。
【0061】
図15は、生成された粒子100のろ過プロセスの一実施形態を示す。図15(a)は、粒子が重力の反対方向に浮き、水と空気の境界面に蓄積することを示す。所与の時間期間内に境界面に達する粒子が選択される。図15(b)は、より狭いサイズ及びより高い多孔性を備える、選択された粒子の顕微鏡画像を示す。
【0062】
下記で、本発明に従い、粒子100また送達デバイス200が、ホスト流体内部でどのように移動及びナビゲート可能であるか、並びに、どのように生成可能であるかについての、異なる実施形態を説明する。
【0063】
実施形態1:磁場によって制御される粒子送達
一実施形態において、粒子は、例えば気泡、油滴、低密度ポリマ、小胞、ガス充填タンパク質ナノ構造などの、浮揚剤120と、例えば、Fe3O4、Fe、Co、Ni、FePt、NdFeB、パーマロイの、マイクロ粒子又はナノ粒子などの、磁性剤と、カーゴとで、構成される。粒子は、内部を移動するホスト流体よりも低い平均密度を有し、分散粒子100は、細いチャネル400を介して重力方向に逆らって移動する。浮力駆動移動ステップの間、チャネル400内に異なる種類の障害物510が存在し得る。粒子100とチャネル壁との間には、摩擦及び/又は接着も存在し得る。障害物510又は接着を回避し、チャネル400に沿って移動し続けるための、粒子100の運動を始動させるために、外部磁力又はトルクを粒子100に印加することが可能である。
【0064】
一実施形態では、図3から図6に示されるように、粒子100を横向きに移動させる横力をかけるため、及び、障害物510を回避するために、粒子100に磁場勾配を印加することが可能である。別の実施形態では、粒子100又は粒子の一部の向きを変更するために、粒子100に磁場を印加することが可能である。例えば図7では、横移動速度を有するように、粒子の向きが変化し、粒子100は非対称流体抗力を示す。別の例では、図9において、尾部が非対称流体抗力を示し、粒子100が横移動速度を有するように、磁気トルクに起因して粒子100の可撓性部分、すなわち尾部が湾曲する。更に別の例では、磁気トルクは、粒子100又は小粒子クラスタを駆動させる。回転運動は、粒子又はクラスタ200が障害物510又は壁に接触すると、障害物510を動き回らせるために、横移動を生じさせることができる。回転運動の方向を変更することによって、障害物510を回避するように、並進運動方向を制御することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、磁場は永久磁石又はいくつかの永久磁石の組み合わせによって生成可能であり、磁石の向き又は位置は静的又は動的とすることができる。いくつかの実施形態では、磁場は、電磁石コイル及び/又は複数の電磁石コイルの組み合わせ、あるいは1つ又は複数の超電導コイルによって生成可能である。回転する磁場、及び粒子又はクラスタに作用する磁場勾配によって生じる回転運動が、粒子又はクラスタを同じ方向に移動させることが、好ましい実施形態である。磁場の磁場強度は20Tよりも低いことが好ましく、10Tよりも低いことがより好ましい。磁場の磁場勾配は、1000T/mより低いことが好ましく、100T/mより低いことがより好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態では、分散粒子100をイメージング又は位置特定することは必ずしも必要ではない。より具体的には、障害物510に対する粒子100の相対的な位置は未知であることが可能である。チャネル400内の障害物510を回避するように、粒子100を確率的に移動させるために、ランダムな磁場を粒子100に印加することができる。いくつかの実施形態では、例えば、いくつかの医用画像診断法を統合することによって、位置及び/又は障害物510に対する相対位置を決定するために、イメージング方法を用いて粒子100を位置特定することができる。次いで、障害物510を回避するために所望の方向に粒子100を能動的に移動させるように、外部磁場に制御システムが適用される。
【0067】
粒子100が狭いチャネル400を介して移動したとき、典型的には個々の分散粒子100よりもサイズが大きく、典型的には粒子100間の引力相互作用によって生じるクラスタ200に、粒子100が集約する、第2のステップを示す。引力相互作用は、例えば、粒子100の磁気モーメントによって生じる可能性がある。次いで送達デバイス200は、個々の粒子100よりも大きい磁気モーメントを示す。したがって、外部磁場又は磁場勾配によって送達デバイス200を操作することはより容易である。更に、送達デバイス200は、より高い質量及びより大きな全体サイズを有する。したがって、個々の粒子100よりも、MRI、CT、X線、磁粉イメージング、及び超音波イメージングなどの、医用画像によって、送達デバイス200を検出することは、より容易である。加えて、送達デバイス200及び粒子100は、イメージング方法によって粒子100又は粒子集約200の観察を容易にする、造影剤120又は物理的特性を含むことができる。
【0068】
集約200は、例えば、磁場又は磁場勾配の作動の下で、能動的に移動可能である。凝集物を所望の標的部位TS、例えば腫瘍位置に、能動的に移動させるために、外部磁場に対する制御システムを適用することができる。代替として、集約200は、体内の、例えば生理的流れ、例えば血流、脳脊髄液(CSF)流、リンパ液の流れ、尿流と共に、受動的に移動可能である。更に、図4に示されるように、所望の集約部位ASにおける磁場勾配は粒子100を濃縮することができる。粒子100は、必要性及び適用例に応じて、複数の場所で誘導又は濃縮することができる。
【0069】
粒子100は、常磁性、超常磁性、又は強磁性も示すことができる。カーゴ展開ステップにおいてカーゴの放出を引き起こすために使用可能な交番磁場の印加によって熱を発生させるために、粒子100の磁気特性も使用可能である。
【0070】
一実施形態において、粒子100は磁気特性を示し、磁場の存在下で集約する。具体的には、永久磁石に基づき、磁場発生器によって均質な磁場を印加することができる(作業空間の中心における磁束密度は100mTまでであり、磁場は20mm×20mmの区域内で±10%内で均質である)。顕微鏡映像は、粒子100が磁場の存在下で、及び粒子100の浮力に起因して、集約することを示す。外部磁場が、例えば100rpm(毎分の回転数)で回転するとき、粒子集約200は、同じ速さでも回転する。集約200の不規則な形状に起因して、集約200は固体表面、すなわち固体液体境界上で回転する。粒子集約200の移動運動は、流体チャネル400内で移動するときに、固体障害物を回避するために使用可能である。磁束密度を100mTから4mTまで減少させることによって、結果的に依然として同様の、粒子100又は粒子集約200の集約及び回転を生じさせる。
【0071】
代替として、磁場は、電磁石コイル、例えばヘルムホルツコイルによって生成することも可能である。磁場は静的であり得るか、又は代替として、空間的又は時間的に均質又は不均質であり得る。
【0072】
別の実施形態では、粒子100の集約を容易にする不均質な磁場を生じさせるために、永久磁石又はいくつかの永久磁石、あるいは電磁石コイル又はいくつかの電磁石コイルを適用することが可能である。不均質な磁場は、粒子100又は集約200に、それらの移動運動を生じさせる磁場勾配力をかけ得る。例えば、図4に示されるように、患者の首近くの永久磁石800の存在によって集約が形成可能である。分散粒子100が浮力によって脊柱管を通過した後、目標となる薬物送達のために、粒子の集約200が標的部位TSへと引き入れられるように、磁石800は首から標的部位TS近くの頭頂部へと移動可能である。
【0073】
更に別の実施形態では、粒子100又は集約200は生体内腔内で生体流れと共に流れ、外部磁場勾配の存在に起因して、標的部位TSで蓄積する。例えば、図4に示されるように、分散粒子は浮力によって脊柱管を通過した後、CSFと共に脳の上部へと流れ、頭蓋骨外部の近い場所にある永久磁石800の存在に起因して、標的部位TSで累積する。
【0074】
実施形態2:音響場によって制御される粒子送達
いくつかの実施形態では、粒子100の浮揚剤120は、材料の異なる音響インピーダンスに起因して、音響場のための造影剤として働くことも可能である。例えば気泡は、水又は生体組織よりも低い音響インピーダンスを示し、音響場の波腹において蓄積する。こうした造影剤は、障害物を回避するため、又はそれらを所望の場所AS、TSに移動させるために、強い音響操作力を粒子100にかけるために使用可能である。更に、例えば粒子100又は集約200を検出又は位置特定するために、超音波イメージングコントラストを強化するためにも使用可能である。音響場の好ましい周波数レンジは、生体組織に浸透可能な20kHzから100MHzまで、好ましくは20MHz未満の範囲内である。
【0075】
集約200は、例えば、超音波場又は超音波場勾配の始動の下で、能動的に移動可能である。外部音響場に関する制御システムは、集約200を所望の場所TS、例えば腫瘍の場所に能動的に移動させるために、適用可能である。代替として集約200は、例えば体内の血流、CSF流、リンパ液の流れ、尿流などの、生理的流れと共に、受動的に移動可能である。超音波変換器によって生成される局部超音波音場は、図4に示されるように、所望の場所ASにおいて粒子100を濃縮することができる。粒子100は、必要性及び適用例に応じて、複数の場所AS、TSで誘導又は濃縮することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、カーゴ展開ステップにおいて、カーゴの放出を引き起こすために使用可能な熱を生成するために、超音波エネルギーを粒子100に印加すること、及び超音波エネルギーを粒子100によって吸収することも可能である。
【0077】
いくつかの実施形態では、粒子100を操作するか又はそれらのカーゴを放出するために、超音波エネルギーを磁気エネルギーと組み合わせることができる。
【0078】
実施形態3:チャネルと重力の方向との間の角度を変更することによって制御される粒子送達
一実施形態において、粒子100の速度は、粒子100が内部を移動するチャネル400と重力の方向との間の角度を変更することによって制御可能である。チャネル400が、重力方向に対して平行な垂直方向にあるとき、浮力駆動移動速度はその最大に達する。チャネル400の角度を変更することによって、粒子の移動方向をチャネル400の方向に対して変化させることができる。この方法を使用して、図1に示されるように、分岐形状及び/又は複雑な形状のチャネル400に沿って粒子100を誘導すること、又は、図3に示されるように、チャネル400内の何らかの障害物510を回避することが、可能である。チャネル400の方向を変化させることは、チャネル400を、固定された中心点の周囲を制御された角速度で回転させることによって達成されることが好ましい。好ましい回転角度は、180°を超えない、より好ましくは90°を超えない。
【0079】
いくつかの実施形態では、粒子100の注入に好ましい向きは水平の向きであり、この向きは重力方向に垂直である。チャネル400は、移動ステップを開始するためにモータ駆動ステージの制御の下で、水平から垂直の向きへと徐々に傾けられる。好ましい角速度は180°/s未満、好ましくは90°/s未満、具体的には45°/sである。好ましい傾斜方向は双方向であり、すなわち回転は、時計回り方向及び反時計回り方向の両方とすることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、粒子送達手順は、図2図4、及び図5に示されるように、ホスト体の泌尿器系、循環器系、又は中枢神経系内で実施可能である。ホスト体又はホスト体の一部の回転は、複雑な環境において粒子100の移動を誘導するため、又は、粒子100又はクラスタ200の速度を変更するために、使用される。一実施形態において、ホスト体が横たわるベッド700を、図5に示されるように重力の方向に対して傾けることができる。したがって、ホスト体の体内にあるチャネル400も傾けられ、標的部位TSに向けての粒子の移動を容易にする。この手順は、上方へ移動する浮力駆動粒子100並びに下方へ移動する沈殿力駆動粒子100の両方に適用可能である。送達手順の間、ベッド700の回転は、図2及び図4に示されるように、複雑な形状のチャネル400又は軌道を辿るように粒子100を誘導するために、動的に変更可能である。浮力駆動粒子100において、ホスト体の頭部は、体のその他の部分よりも高い位置にあることが好ましい。ベッド700の角度は、モータ駆動システムによって制御可能であり、時計回り方向及び反時計回り方向の両方に回転可能である。制御アルゴリズムは、ホスト体の医用画像データ適合を可能にし、粒子100又は粒子集約200のリアルタイムな位置特定を用いて容易にもし得る。
【0081】
実施形態4:泌尿器系における粒子送達
一実施形態において、送達方法は尿路内で適用される。例えば、分散粒子100は、平均で1mmの内径及びおよそ30mmの長さを備える、患者の長く細い尿管を介して進む。次いで粒子100は、更なる操作、イメージング、又はカーゴの展開のために、腎臓の集合系内に集約する。
【0082】
一実施形態において、粒子100は腎臓結石に付着して、結石をより安全な場所へと移動させ、緊急手術を回避するように尿路内の障害物を除去する。代替方法は、結石を除去のために、顕微鏡のツールチャネル内、把持部内、又は体外へ移動させることである。
【0083】
別の実施形態では、粒子は、腎臓の集合系内でより大きなクラスタ200に集約する。次いで、X線又は超音波イメージングなどの医用イメージングを用いて位置特定するために、造影剤を放出することができる。集約200は、薬物又は他の医薬品を放出するために、第2の場、例えば音響場又は磁場によって、所望の標的部位TS、例えば腫瘍の場所にワイヤレスに能動的に移動される。
【0084】
別の実施形態では、粒子100は、血管系、好ましくは末梢血管系内の所望の場所で注入される。次いで分散粒子100は、血管系内の別の所望の場所、すなわち集約部位ASへと移動し、血流を遮るためにより大きなクラスタ200(送達デバイス200)に集約する。例えばデバイス200は、前立腺動脈塞栓術(PAE)すなわち、良性前立腺肥大症(BPH)を改善するのを助ける最小侵襲性治療に使用することができる。次いで集約200は、第2の場、例えば音響場又は磁場によって、血流に逆らって塞栓術を誘導するために、所望の場所、すなわち標的部位TSに移動すること、又はより好ましくは標的部位TSで固定することが可能である。
【0085】
実施形態5:神経系における粒子送達
いくつかの実施形態では、送達デバイスは患者の神経系内部で使用される。神経系は、末梢神経系、及び、脳及び脊髄からなる中枢神経系を含む。粒子100は、医薬品又は医用デバイスを神経系内の所望の場所AS、TSまで運ぶことができる。
【0086】
一実施形態において、粒子は、生体適合性ヒドロゲル材料、例えば、アルギン酸塩、寒天、プルロニック、又はゼラチンヒドロゲルで作られ、図6から図11に示されるような、並びに、図12図14a、図14c及び図15bの顕微鏡画像に示されるような、浮揚剤及びカーゴを含む。粒子は、好ましくは、注入プロセスの間、相対的に低いせん断応力を粒子に誘導する非磁性の針又はチューブを用いて、血管又は中枢神経系内に注入可能である。患者の好ましい注入の向きは水平であり、すなわち、患者はベッド700上に横たわっており、脊髄は重力の方向に垂直なほぼ水平面内にある。患者のベッド700は、図5に示されるように傾けることが可能であり、分散粒子100は、図2に示されるように脊柱500を上方へ移動する。粒子100は、第2の場、例えば磁場又は音響場の制御下で、受動的又は能動的のいずれかで、脊柱のくも膜下腔内の障害物510、例えば小柱、神経、及び血管を回避することができる。
【0087】
一実施形態において、粒子100は、所望の神経又は神経根などの脊髄内の所望の場所AS、TSに送達され、薬物又は生体材料が放出される。
【0088】
いくつかの実施形態では、粒子100は、脊柱管に沿って脳までCSFを介して移動し、ここで粒子100は、例えば粒子100の磁気相互作用によって、クラスタ200に集約する。集約200は第2の場、例えば磁場又は音響場を用いて、脳内の所望の場所TSに達するように操作可能である。一実施形態において、粒子100は、CSFと共に大脳半球へと流れ、標的部位TSで蓄積し、ここで医薬品を放出することができる。集約200は、展開ステップの間、好ましくは標的部位TSにとどまる。粒子100を製作するために、生体適合性及び生分解性の材料、例えばヒドロゲル、鉄又は酸化鉄、FePtを使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、粒子を作り出すために、生体非分解性材料又は毒性材料、例えばニッケル、コバルトさえも、使用可能である。次いで、これらの毒性材料のために追加の回復ステップが適用可能である。例えば、材料は、CSFと共に脳から脊柱の下位セクションへと流れ出すこと、及び、針又は磁気プローブによって集めることが可能である。材料は、標的の場所TS以外の所望の場所に達し、非分解性又は毒性の材料の簡単な除去プロセスを容易にするために、第2の場、例えば磁場又は音響場を用いて操作することも可能である。
【0089】
いくつかの実施形態では、粒子集約200は、集約200が、カーゴを放出するために生体組織内のより深い標的場所TSへと移動できるように、軟組織、例えば脳組織に浸透可能な第2の場内に十分大きな力をかける。
【0090】
本発明に従った送達デバイス200及び方法を用いて治療可能な、神経系内の標的疾患は、筋ジストロフィなどの欠陥遺伝子によって引き起こされる疾患、二分脊椎などの神経系の発達に関する問題、パーキンソン病及びアルツハイマー病などの変性疾患、脳卒中、脊髄及び脳の損傷などの脳内の血管の疾患、てんかんなどの発作性疾患、脳腫瘍などのがん、髄膜炎などの感染症、及び、本発明で提案される方法によって同様に治療可能な他の疾患を含むが、限定されない。
【0091】
送達方法は、例えば臨床研究又は前臨床研究において、薬物及び医療デバイスの開発及び試験で使用可能である。いくつかの実施形態では、動物実験において、中枢神経系へのカーゴの送達を容易にすることができる。適用例は、薬物又はデバイスの効能を試験すること、又は、罹患動物モデルを生成するために特定の疾患を誘発させることの、いずれかである。
【0092】
実施形態6:体外適用例
別の実施形態では、粒子100は、体外環境で、例えばマイクロ流体又はラボオンチップデバイス内で使用可能である。粒子は、チャネル400の注入口で注入され、重力方向に対するチャネル400の方向は、チャネル400内を所望の速度で移動するように分散粒子100を制御するために変更される。プロセスは、狭い開口又は狭いチューブの通過を容易にし、作動のためにいずれの追加の場も必要としない。粒子100が所望の場所AS、例えば、より大きなチャンバに到達すると、粒子100は、粒子100の集約200が、より大きな作動力及びより強いイメージングコントラストを示すように、第2の場、例えば磁場又は超音波場の下でアセンブル可能である。
【0093】
次いで、粒子100は、ラボオンチップデバイスにおけるサンプル調製のために使用可能である。例えば粒子100は、生体媒質内の所望な材料を収集(capture)するために、DNA又は抗体などの所望の分子と共に、化学的に機能可能である。粒子100は低密度に起因して、粒子に結合していない他の材料から容易に分離される。送達デバイス200は、次の化学反応ステップのための所望の場所TSへの、サンプルの更なる濃縮又は粒子のクラスタ200の操作を容易にすることができる。収集されたカーゴは、より適切な検出又は他の分析のために、所望の場所TSにおいて放出又は展開可能である。結合生体材料は、細胞、例えば循環腫瘍細胞(CTC)、分子、例えばタンパク質又はDNA、バクテリア又は有機体とすることができる。
【0094】
粒子100は、流体チャネルの異常を検出又は修理するために、産業界の狭い流体チャネル内、例えば、石油業界又は食品業界のパイプライン内、自動車システム内、航空機内、油圧システム内にも注入可能である。粒子の運動は、粒子と流体との密度差によって駆動され、追加の場を印加する必要はない。粒子が所望の場所AS、TSに到達したとき、又は異常を検出したとき、問題を修理するため、又は問題の位置を特定するための信号を送信するために、集約200を形成するか、又はカーゴを放出することが可能である。
【0095】
実施形態7:化学特性による集約
一実施形態では、集約は特別な化学環境、例えば、pH変化、特定の溶解イオン、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、ウイルス、及びタンパク質を含む、生体分子の存在、又は、特定の有機体の存在によって、引き起こされる。例えば、特別な種類の抗原、例えば免疫グロブリンは、CNS(中枢神経系)の感染性疾患から発生し、特定の抗体による個々の粒子の表面のコーティングは、CSF(脳脊髄液)中の抗原の存在下での感染性の場所において、粒子の集約を生じさせる可能性がある。別の例では、特定の種類のバクテリアのコート分子と結合する特定の抗体は、粒子の集約がバクテリアの存在下で生じるように、又はより具体的には、粒子がバクテリアの周囲で集約するように、個々の粒子の表面でコーティング可能である。別の実施形態では、生体分子、抗原、RNA、タンパク質、及び/又はウイルスは、粒子の集約及び結合を容易にする、粒子の表面上での化学反応を引き起こす。
【0096】
いくつかの実施形態では、化学環境は、化学的ヒントの存在下で、カーゴの展開、例えば薬物の放出も引き起こし得る。例えば、粒子の母材に含まれる抗生物質及び/又は他の抗菌剤は、粒子の表面が化学的に引き起こされ、バクテリアの表面で集約するときのみ、放出可能である。このようにして、薬物の有効性は最大限となり、薬物の送達は標的が定められる。
【0097】
一実施形態では、粒子は、熱応答ゲル、例えば、ゼラチン、アガロースゲル、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリビニルアルコールゲルから作られる。別の実施形態では、粒子は、熱活性化架橋剤、例えば、HEMA(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、HEA(アクリル酸2-ヒドロキシエチル)、Mba(N,N‘-メチレンビスアクリルアミド)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、又は、光活性化架橋剤、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)でコーティングされた、ポリマ材料から作られる。光又は音響エネルギー吸収材料及び/又はガスは、好ましくは流体内で混合される。生体組織に浸透可能な光、好ましくは赤外光の存在下で、及び/又は、生体組織に浸透可能な音響場の存在下で、物理場のエネルギーの吸収に起因して、粒子において熱が発生し、個々の粒子の集約を引き起こす、及び/又は、集約の形成における粒子の結合を容易にする。
【0098】
いくつかの実施形態では、化学結合特性は、磁気特性又は音響特性に関連して実装可能である。例えば、磁力又は音響放射力は、個々の粒子の蓄積を生じさせる。化学結合は、粒子の集約をもたらすために粒子の表面で引き起こされる。結合は、時間変化磁場から粒子の磁気特性へのエネルギー移動によっても引き起こすことが可能であり、これによって粒子の熱が生じ、粒子の集約及び/又は集約後の結合を容易にする。例えば、静的又は準静的な磁場は、第1に集約を誘発させ、その後、時間変化磁場(例として少なくとも1kHz又は好ましくは100kHzの周波数を伴う交流磁場)が粒子を加熱し、異なる粒子が集約できるように、化学薬品を放出するか、あるいは、粒子内に包含される化学薬品を軟化又は溶融する。
【0099】
実施形態8:エマルション法による粒子製造
エマルション法を用いて粒子を形成する方法の一実施形態が、図13に示されている。第1に、水性ゼラチン溶液150(20%w/v)が60℃ 400rpmで準備され、磁性紛130(3%w/v)、及び、医薬品又は薬物(0.01mg/mL)であることが可能なカーゴ140と混合される。溶液は発泡プロセスへと進み、発泡剤、すなわち、酸性溶液(1mM)内のNaCO(10mg/ml)が、400rpmでの継続的な撹拌の下で、溶液に追加される。生成される泡は、水相において直径0.1μmから100μmまでの範囲内の制御可能なサイズを伴う、多くの気泡120を含む。泡は、油中水滴型エマルションを生成するために、予熱されたシリコン油相900(317667、シグマアルドリッチ、容積比1:100)と、60℃ 400rpmで混合される。水滴150は、気泡120、磁性紛130、及び、制御可能なサイズの適切なカーゴ140を含む。溶液は撹拌され、固体ヒドロゲル粒子160を生成するために、氷浴内で室温まで冷却される。このステップでは、グルタルアルデヒド(10%)溶液とゼラチンの架橋結合プロセスが使用可能である。次いで、溶媒、すなわちエタノールを用いて、油相900を除去するためにエマルションが3回洗浄され、粒子100は60℃のオーブン内で乾燥される。粒子は、明視野光学顕微鏡で試験した。粒子の対応するピクチャ及びサイズ分布は、図14で見ることができる。
【0100】
所望のサイズ、密度、形状、又は光学特性を備える粒子100を選択するために、追加のろ過プロセスを追加することができる。一般的なプロセスは、粒子のサイズ範囲を選択するために、フィルタ紙を介して粒子をフィルタリングすることである。別のプロセスでは、図15aに示されるように、カラムは水溶液、例えば0.9%NaCl溶液で満たされ、粒子は、その浮力に起因して空気溶液境界面へと浮き上がる。次いで、120mmの距離を所与の時間期間、例えば60秒を使用して、所望の密度の粒子を選択する。例えば、高速浮遊速度161、例えば2mm/sより大きい浮遊速度の粒子が選択され、浮遊しないか又は低い浮遊速度162の粒子はフィルタリングで取り除かれる。プロセスを示す画像が図15aに示されている。図15bの顕微鏡画像は、選択プロセス後の粒子は、より狭いサイズ分布及びより高い多孔性を備える。
【0101】
いくつかの実施形態では、粒子は、粒子内に生成される光信号、例えばカーゴの蛍光シグナルに起因して選択可能である。いくつかの実施形態では、粒子は、遠心分離プロセス、又はより好ましくは密度マッチング遠心分離プロセスを使用して選択可能である。いくつかの実施形態では、粒子は超音波場を使用して選択可能であり、所望の音響特性を伴う粒子のみが選択される。いくつかの実施形態では、粒子は磁場を使用して選択され、所望の磁気特性を伴う粒子のみが選択される。
【0102】
実験結果
本発明に従った粒子100の一特定例が、図12の顕微鏡画像に示されている。粒子は、0.9%のNaCl溶液中での懸濁及び膨張後、直径およそ200μmの少なくともほぼ球形を備える。粒子100は、ゼラチンベースのヒドロゲル110、及び、浮揚剤120としての1~50μmの範囲内の異なる直径の複数の気泡(空気泡)を備える。フルオロフォア(ローダミン6G、252433、シグマアルドリッチ)及び磁性微粒子130も、ヒドロゲル110内でカプセル化され、微粒子及びフルオロフォア130のサイズが小さいことに起因して、図12では可視化することができない。
【0103】
低周波(最高1kHzまでの静的な場の範囲内)の磁場の下で、粒子100及び/又はホスト流体内の粒子100は、送達デバイス200に集約し、その後、磁場勾配(典型的には、1T/mから500T/mまでの勾配範囲内)によって引っ張るか、標的部位TSに達するために、空間的に均質な磁場(典型的には、1mTから1Tまでの磁場強度範囲で)の一時的回転によって回転させることが可能である。標的部位TSにおいて、高周波磁場(典型的には、1kHzより高い周波数及び1mTより高い磁場強度を備える)が、粒子100内部の磁性微粒子130上に熱を生成するために印加される。粒子100又は粒子集約200の温度が特定の温度閾値、例えば、ゼラチンヒドロゲルの溶融点(40℃)より高いとき、ゲル母材110は溶融し、積み荷(load)140は標的部位TSで放出される。
【0104】
こうした粒子100を前述のように作り出すために、本発明に従って下記の方法ステップが実施された。
第1に、発泡流体混合物を生成するために、浮揚剤120が第1の流体に混合される。発泡剤、すなわち、例えばNaCO(10mg/ml)が、400rpmでの継続的な撹拌の下で、酸(1mM)と共に水性溶液に加えられる。水性溶液は、60℃ 400rpmで準備され、磁性紛130(ニッケル、GF14196067、シグマアルドリッチ、3%w/v)及びカーゴ140(ローダミン6G、252433、シグマアルドリッチ、0.01mg/mL)と混合された、ゼラチンヒドロゲル溶液(G1890、シグマアルドリッチ、20%w/v)であった。発泡プロセスは、水性溶液内に気泡(CO)を生成する。気泡サイズ分布は、流体粘度、温度添加剤及び化学薬品濃度、撹拌速さ、流体せん断速度、表面張力などの適切な選択を介して、制御可能である。
【0105】
次のステップでは、混合物は、制御可能なサイズの液滴を生成するために、第2の不混和流体と混合される。したがって、ステップ1からの混合物は、油中水滴型エマルションを生成するために、60℃ 400rpmで、予熱された第2油相流体900(317667、シグマアルドリッチ、容積比1:100)と混合された。制御可能なサイズの気泡(CO)120、磁性紛130、及び適切なカーゴ140を含む水滴150が、油内で分散されている。粒子サイズは、流体粘度、温度、添加剤及び化学薬品濃度、撹拌速さ、流体せん断速度、表面張力などの適切な選択を介して、制御可能である。
【0106】
その後、溶液は撹拌され、固体ヒドロゲル粒子160を生成するために、氷浴内で室温まで冷却された。その後、このステップで、典型的には一晩続く、グルタルジアルデヒド(10%)溶液を伴うゼラチンの架橋プロセスが追加された。
【0107】
次いで、油相900を除去するために、及び、粒子100を空気中で60℃のオーブン内で乾燥させるために、ステップ3から生成されたエマルションを、溶媒、すなわち、例えばエタノールを用いて3回洗浄される。このステップでガス交換が生じ、空気で満たされた多孔質微粒子を生成する。
【0108】
生成された粒子100をフィルタリングするために、(図15aに示されるように)ガラス容器(およそ長さ120mm)が0.9% NaCl溶液で満たされ、重力の方向に配置された。次いで、準備された粒子100は、容器の底部において注入され、ある時間期間内、例えば60秒内に溶液表面の頂部で集められる。したがって、平均的に低密度の粒子100、すなわち、2mm/sより小さくない溶液内の大きな上昇速度が、選択できた。選択された粒子の懸濁は、特定のサイズ範囲、例えば直径100~200μmの粒子100をフィルタリング除去するために、フィルタ紙を介する追加のフィルタリングプロセスを経験することができる。最終的に、粒子はオーブン内で再度乾燥され、密封容器内に4℃で格納される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a)】
図15b)】
【国際調査報告】