(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】病理組織の経動脈浸透圧塞栓形成のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20230905BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61M1/02
A61M25/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507509
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021044124
(87)【国際公開番号】W WO2022031571
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520376007
【氏名又は名称】トランスルミナル、システムズ、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TRANSLUMINAL SYSTEMS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、パイル-スペルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ、エイチ.チェ
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077BB02
4C077EE03
4C077HH05
4C077HH08
4C077HH13
4C077NN01
4C267AA04
(57)【要約】
カテーテルを標的血管内に挿入するステップであって、カテーテルは、造影剤および高浸透圧流体供給の連続送達を提供するシステムに結合される、ステップと、造影剤を注入し、第1の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、第1の時点に第1の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する流量で、連続して高浸透圧流体を注入するステップと、造影剤を注入し、第1の期間に続く第2の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、第2の時点に第2の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する流量で、連続して高浸透圧流体を注入するステップとを含む、血管内介入方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを標的血管内に挿入するステップであって、前記カテーテルは、造影剤および高浸透圧流体供給の連続送達を提供するシステムに結合される、ステップと、
前記造影剤を注入し、第1の時点に前記標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、
前記第1の時点に第1の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する前記流量で、連続して前記高浸透圧流体を注入するステップと、
前記造影剤を注入し、前記第1の期間に続く第2の時点に前記標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、
前記第2の時点に第2の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する前記流量で、連続して前記高浸透圧流体を注入するステップと
を含む、血管内介入方法。
【請求項2】
前記高浸透圧流体は浸透圧塞栓剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の期間は約20分~約30分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の期間は約20分~約30分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の時点における前記流量が低減されるまで、造影剤および前記高浸透圧流体を注入する前記ステップを繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の時点における前記流量が無視できる流量まで低減されるまで、造影剤および前記高浸透圧流体を注入する前記ステップを繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の時点における前記流量が、前記標的血管における浸透圧塞栓形成の完了を知らせるまで、造影剤および前記高浸透圧流体を注入する前記ステップを繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高浸透圧流体の流動がオンにされるとき、前記造影剤の流動はオフにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記造影剤の流動がオンにされるとき、前記高浸透圧流体の流動はオフにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記システムは、流量を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、第1および第2の流量は、前記少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記システムは、標的部位におけるオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、前記システムは、前記少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて、第1および第2の流量を調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記システムは、前記標的部位における所望のオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を維持するように流量を調整する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カテーテルに結合され、造影剤および高浸透圧流体供給の連続送達を提供するように動作可能なシステムであって、前記システムは、コントローラと、実行されると、前記コントローラに方法を実行させる、実行可能な命令を格納したコンピュータメモリとを備え、前記方法は、
前記造影剤を注入し、第1の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、
前記第1の時点に第1の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する前記流量で、連続して前記高浸透圧流体を注入するステップと、
前記造影剤を注入し、前記第1の期間に続く第2の時点に前記標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、
前記第2の時点に第2の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する前記流量で、連続して前記高浸透圧流体を注入するステップと
を含む、システム。
【請求項14】
前記高浸透圧流体は浸透圧塞栓剤を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1および第2の期間は約20分~約30分である、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記方法は、前記第2の時点における前記流量が、前記標的血管における浸透圧塞栓形成の完了を知らせるまで、造影剤および前記高浸透圧流体を注入する前記ステップを繰り返すことを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
流量を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、第1および第2の流量は、前記センサからのフィードバックに基づいて決定される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
流量を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、第1および第2の流量は、前記少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて決定される、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
標的部位におけるオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、前記システムは、前記少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて、第1のおよび第2の流量を調整する、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、前記標的部位における所望のオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を維持するように流量を調整する、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、病理組織の塞栓形成のための方法およびデバイス/システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈塞栓形成は、腫瘍等の病変、および動静脈奇形等の血管奇形の処置のためのルーチンである。このルーチン塞栓形成は、標的血管内へのX線誘導下でカテーテルを配置することによって行われる。次に、X線造影剤が注入され、血管造影が行われる。より小さなカテーテルが標的血管において遠位に配置され得、対象領域の追加の画像が取得される。X線制御下で、塞栓剤が注入され、これが血流によって組織まで搬送される。
【0003】
ルーチン塞栓形成により、塞栓形成直後の膨張または出血が頻繁に見られる。加えて、正常な組織に隣接する供給側枝の粒子または固化液剤による故意でない塞栓形成が問題である。場合によっては、これらの供給側枝は、上に重なる骨、および腸等の移動する軟組織に起因して不良に可視化され、これは、例えば、塞栓される病変が背骨に沿って位置するときに問題である。
【0004】
PVAまたはEmbosphere(商標)等のルーチン塞栓剤、ならびにOnyx(商標)およびTruefill(商標)等の液剤により、塞栓形成後の細胞毒性のおよび血管原性の浮腫または出血が頻繁に生じ、塞栓される病変に隣接する重大な組織に損傷を引き起こす可能性がある。さらに、ルーチン塞栓剤を用いた完全な血行遮断(devascularization)は、不完全な浸透に起因した分岐および非分岐双方の血管形成を特徴とする多血性腫瘍において多くの場合に困難である。また、前毛細管レベルにおける近位閉塞は、多くの場合、腫瘍を完全に血行遮断することに失敗し、残りの腫瘍の「アイランド(island)」につながる。化学療法による塞栓および放射性塞栓剤は、ルーチン粒子または液体の異種浸透問題に部分的に対処するが、腫瘍を急激に血行遮断することはない。
【0005】
これらの方法は、多くの場合、腫瘍の「縁部」を未処置のままにし、決定的治療の試みの妨げとなる。これは、推定血管領域への塞栓剤の不完全な浸透に基づく。これらの方法において、カテーテルは標的血管内に配置され、これは、内腔径を著しく減少させ、これはひいては、内部の血圧を下げ、ひいては「有効血管領域」を減少させる。血管領域は動的であり、1つの血管が狭窄化されている場合、その遠位の領域をその隣接近傍に引き渡す。この現象は、「分水界シフト」と呼ばれる。この「シフト」は、迅速に生じる可能性があり、近傍による血管領域の完全な「拉致(kidnapping)」を引き起こす可能性がある。不都合なことに、これは、腫瘍塞栓形成において一般的であり、多くの場合、塞栓形成された血管領域の端における未処置の生存組織の「縁部」につながる。
【0006】
血管組織ユニット・レベルにおいて、ルーチン塞栓形成はバイナリであり、いくらかの形で「弾丸(bullet)」に類似しており、塞栓形成は、X線誘導下で標的病変内に塞栓物質を繰り返し「発射する(shooting)」ことによって行われる。複数のこれらの「弾丸」の後、病変への流動が低速化する。順方向流動の停止があるまで、より小さく、より頻度の低い弾丸が用いられる。塞栓物質は造影剤によって不透明化されるが、少量の造影剤を見ることは困難である可能性があり、プロセスを効果的に実行するにはかなりの専門知識および特殊物質を要する。非標的血管領域内への還流は、これらの「弾丸」が、血流によって非常に遠くに運ばれるようにし、正常組織への意図しない損傷または更には死亡を引き起こす可能性がある。「標的外」塞栓の合併症については十分文書化されている。加えて、液剤および小さな粒子は、特に、大きな動静脈シャントを有する組織において、流出静脈内に詰まる可能性がある。流出静脈の閉塞は、膨張および出血に関連付けられる。
【0007】
加えて、このタイプの塞栓形成は、リアルタイム画像処理能力、デジタル減算血管造影を用いた優れた空間および時間分解能を有する極度に高忠実度のX線撮像を要し、密な身体部分に浸透するのに十分強力でなくてはならない。技術的に進歩した機械を用いる場合であっても、手順は小さな患者の動きによって容易に妨げられ得る。
【0008】
要約すると、ルーチン腫瘍塞栓形成は、技術的に困難であり、最も進化した機器を要し、稀にのみ標的病変の完全な治療につながり、深刻な合併症の重大な危険性を有する。このため、ルーチン腫瘍塞栓形成は、医学会における受け入れが限られ、最終手段の苦痛緩和操作として、または血管過多病変のための手術前の補助として用いられる。したがって、そのように限定されていない組織の塞栓形成のための方法およびデバイス/システムが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、当該技術分野の腫瘍塞栓形成におけるこれらの難点のうちの1つまたは複数に対処する、組織の浸透圧塞栓形成のための方法およびデバイス/システムを提供する。塞栓物質を用いた標的脈管構造の塞栓形成が主要な特徴である従来の方法と異なり、浸透圧塞栓形成が標的組織を脱水する。他の形態の塞栓形成を上回る浸透圧塞栓形成の利点が、本明細書に添付された
図3(表1)に要約されている。
【0010】
通常、浸透圧塞栓形成は、非常に選択的な血管造影を行うために、マイクロカテーテルが標的組織動脈内に配置された状態で開始することができる。次に、造影剤が注入され得、僅かな還流で血管の完全な不透明化をもたらす速度が記される。次に、浸透圧塞栓剤(osmotic embolic agent)がこの速度および圧力で注入される。間欠的に、造影剤が注入され、浸透圧塞栓剤の流量が、最小限の還流で血管を完全に不透明化する速度に調整される。最初に、浸透圧塞栓剤は著しい血管拡張を引き起こし、浸透圧塞栓剤の注入速度の増大を要する場合がある。数分後、標的血管における流動が低下し、最終的に、本質的に停止する。より小さな導管血管(<0.5mm)を見ることができる。この時点において、適宜、コイルまたは何らかの他の薬剤(agent)により近位栄養動脈が閉塞され得る。
【0011】
本出願は、本明細書に開示のように、浸透圧塞栓形成を促進する新たなデバイス/システムを提供する。浸透圧塞栓形成は、細胞から或る特定のパーセンテージの水を除去することによって組織を殺す。これは、好ましくは、最終的な脱水が生じるまで、連続した中断なしの高浸透圧注入を用いて行われる。任意の理由での休止により、組織が迅速に再水和することが可能になる場合があり、無効な結果となる。
【0012】
浸透圧塞栓液の故意でない還流は、問題であると考えられていない。還流された物質は迅速に希釈され、部位外の標的組織は、最終的な脱水に十分大きな浸透圧勾配に決して到達しない。この理由から、塞栓形成は、間欠的な蛍光透視法による確認を用いて行われ得る。初期血管拡張は、病変の遠くの分水領域中への深い浸透を可能にし、未処置の組織の残余「縁部」が生じる可能性を下げる。液体として、薬剤は再成長する残された生存腫瘍「アイランド」を一切有さずに組織の全ての局面に浸透する。脱水は、局所質量効果における関連した低減を伴って、推定10~40%の組織の量を低減させる。浸透圧ストレスは、タンパク質、マクロ分子、およびDNAを破壊することが知られており、酸化ストレスに起因した損傷を増大させる。浸透圧剤は痛みを伴う場合があり、現在のところ、それらのルーチン使用に適したデバイスおよび方法が存在しない。
【0013】
当該技術分野における現行のデバイスは、造影剤を用いた間欠的な視覚化を用いた、長期にわたる連続した中断なしの高流動を極度に取得困難なものにしている。本明細書における方法およびデバイスの開示はそのような問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様において、血管内介入方法が提供され、この方法は、カテーテルを標的血管内に挿入するステップであって、カテーテルは、造影剤および高浸透圧流体(hyperosmotic fluid)供給の連続送達を提供するシステムに結合される、ステップと、造影剤を注入し、第1の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、第1の時点に第1の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する流量で、連続して高浸透圧流体を注入するステップと、造影剤を注入し、第1の期間に続く第2の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、第2の時点に第2の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する流量で、連続して高浸透圧流体を注入するステップとを含む。
【0015】
1つの実施形態において、高浸透圧流体は浸透圧塞栓剤を含む。
【0016】
1つの実施形態において、第1および第2の期間は約20分~約30分である。
【0017】
1つの実施形態において、方法は、第2の時点における流量が低減されるまで、造影剤および高浸透圧流体を注入するステップを繰り返すことを含む。
【0018】
1つの実施形態において、方法は、第2の時点における流量が無視できる流量まで低減されるまで、造影剤および高浸透圧流体を注入するステップを繰り返すことを含む。
【0019】
1つの実施形態において、方法は、第2の時点における流量が、標的血管における浸透圧塞栓形成の完了を知らせるまで、造影剤および高浸透圧流体を注入するステップを繰り返すことを含む。
【0020】
1つの実施形態において、高浸透圧流体の流動がオンにされるとき、造影剤の流動はオフにされる。
【0021】
1つの実施形態において、造影剤の流動がオンにされるとき、高浸透圧流体の流動はオフにされる。
【0022】
1つの実施形態において、システムは、流量を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、第1の流量および第2の流量は、少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて決定される。
【0023】
1つの実施形態において、システムは、標的部位におけるオスモル濃度(osmolarity)またはモル浸透圧濃度(osmolality)を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、システムは、少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて、第1の流量および第2の流量を調整する。
【0024】
1つの実施形態において、システムは、標的部位における所望のオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を維持するように流量を調整する。
【0025】
別の態様において、カテーテルに結合され、造影剤および高浸透圧流体供給の連続送達を提供するように動作可能なシステムが提供され、システムは、コントローラと、実行されると、コントローラに方法を実行させる、実行可能な命令を格納したコンピュータメモリとを備え、この方法は、造影剤を注入し、第1の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、第1の時点に第1の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する流量で連続して高浸透圧流体を注入するステップと、造影剤を注入し、第1の期間に続く第2の時点に標的血管の血管造影法による充填を達成する流量を決定するステップと、第2の時点に第2の期間にわたって、血管造影法による充填を達成する流量で連続して高浸透圧流体を注入するステップとを含む。
【0026】
1つの実施形態において、高浸透圧流体は浸透圧塞栓剤を含む。
【0027】
1つの実施形態において、第1および第2の期間は約20分~約30分である。
【0028】
1つの実施形態において、方法は、第2の時点における流量が、標的血管における浸透圧塞栓形成の完了を知らせるまで、造影剤および高浸透圧流体を注入するステップを繰り返すことを含む。
【0029】
1つの実施形態において、システムは、流量を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、第1の流量および第2の流量は、センサからのフィードバックに基づいて決定される。
【0030】
1つの実施形態において、システムは、流量を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、第1の流量および第2の流量は、少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて決定される。
【0031】
1つの実施形態において、システムは、標的部位におけるオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を決定するための少なくとも1つのセンサを備え、システムは、少なくとも1つのセンサからのフィードバックに基づいて、第1の流量および第2の流量を調整する。
【0032】
1つの実施形態において、システムは、標的部位における所望のオスモル濃度またはモル浸透圧濃度を維持するように流量を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】高圧シリンジ注入デバイスおよび適切な流動の間欠的な血管造影法による確認を用いた浸透圧塞栓形成のための例示的なシステムまたは設定を示す図である。
【
図2】低圧または標準圧シリンジ注入デバイスおよび適切な流動の間欠的な血管造影法による確認を用いた浸透圧塞栓形成のための例示的なシステムまたは設定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本出願は、当該技術分野で知られる送達プロセスおよびシステムの欠点のうちの少なくともいくつかを克服する浸透圧塞栓物質または薬剤の連続したまたはほぼ連続した流動を達成するかまたは他の形で促進するためのデバイスおよび方法を提供する。本出願は、適切な流量がシステムの操作者によって決定および制御され得るように塞栓形成のためのカテーテルを通じた流体の連続した中断なしの送達のための方法および物質を更に提供する。
【0035】
デバイス/システムは、例示であることが意図され、かつ限定ではない添付の図面の図に示され、図において、類似の参照符号は、同様のまたは対応する部分を指すことが意図され、以下の構成要素の全てまたはいくつかは必要とされない場合がある。いくつかの実施形態において、適切な流量が操作者および/またはシステムによって決定および制御され得るように、塞栓形成のためのカテーテルを通じた流体の連続した中断なしの送達のためのデバイスおよび方法が提供される。
【0036】
図1~
図2を参照すると、デバイス/システムは、全体的に、図面に示すように直列に配列された以下の構成要素、すなわち、圧力センサまたは圧力計100、好ましくはインライン高圧圧力計と、チューブ102、好ましくは高圧チューブと、逆止弁または一方向弁104、好ましくは高背圧一方向弁と、インライン流動弁118と、1つまたは複数の三方活栓または弁106と、1つもしくは複数のシリンジ、ポンプ、または、造影剤用の1cc高圧シリンジ108および10cc高圧シリンジ110等の他の加圧流体源と、ポンプおよび/または容器112(バッグおよび投与キット)等の加圧式の浸透圧塞栓剤の供給源とのうちの1つまたは複数を含む。流動は、システム図において、容器112から圧力センサに向けて生じ、カテーテルに向けて出る。
【0037】
デバイス/システムは、
図1~
図2において、概念的に個々の構成要素として示されているが、これらの構成要素は、本明細書に開示されるプロセスの自動動作のために適切な入力および出力を有する単一のユニット116に収容され得ることが理解される。これに関して、システムは、コントローラ/プロセッサ200と、構成要素100~118のうちの1つまたは複数を制御するための実行可能命令を記憶するコンピュータメモリ122とを備えることができる。システムは、センサ100と、ポンプ108、110と、1つまたは複数のセンサ100からの読み値に基づいて、圧力測定結果、流量、オスモル濃度、導電率等のデバイスの動作パラメータを表示するディスプレイ124とを更に含むことができる。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によるデバイス/システムは、間欠的な蛍光透視法による視覚化を用いて、カテーテルを通じた、動脈血管内への制御された大量の中断なしの注入を可能にする。これは、操作者および/またはシステムによって、蛍光透視法の下で注入された造影剤が僅かな還流で血管の完全な不透明化をもたらす速度で高圧シリンジまたはポンプ108、110を介して繰り返し注入することによって行われる。より大きな容量について高い圧力が必要とされる場合(
図1)、マイクロカテーテルを用い、ほぼ生理学的圧力が要件を満たすことができる場合(
図2)、より大きなカテーテルを用いる、2つの実施形態が説明される。
【0039】
第3の実施形態において、操作者のタスクおよび視覚化が、アルゴリズムにより制御されたポンプ/アクチュエータおよびカテーテル内のセンサによって引き継がれ得る。カテーテルは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,463,113号に開示されたカテーテルと類似とすることができる。ポンプ/アクチュエータおよびセンサは、遠位血管における注入された薬剤のオスモル濃度/伝導率が、塞栓剤の希釈されていない値に近く、還流がないことを確実にするように構成され得る。センサは、生来の血液対浸透圧塞栓剤のオスモル濃度または導電率の差を利用することができる。血液のオスモル濃度は、300mOsm/Lの範囲にあるのに対し、マンニトール(20%)は4倍高く、高張生理食塩水(3%)は3倍高い。興味深いことに、救命医療では、23%の生理食塩水(26倍超)がルーチン使用されている。血液は適正な導体であり、高張生理食塩水は良好な導体であり、蒸留水におけるマンニトールは不良な導体であるため、導電率に対し同調されたセンサも用いられ得る。
【0040】
方法およびデバイスは、本明細書において、特殊な血管内介入または特定の患者の生体構造に関連した例として説明される場合があるが、本発明の方法およびデバイスは、開示されていない介入または生体構造にも等しく適用可能であり、したがってこれらに限定されないことが理解される。
【0041】
図1を参照すると、狭く長いカテーテルを通じて高浸透圧塞栓を動かし、正常な血流に完全に置き換わるために高い圧力が必要とされるとき、以下の実施形態が構想される。カテーテルが標的血管内に配置された後、デバイスは、標的血管を完全に充填する速度(完全不透明化速度)で造影剤を注入するのに用いられ得、この速度が記される。次に、栓106が調整され得、システムを通過する流量が、容器112からの浸透圧塞栓剤を有する自己充填シリンジまたは連続ポンプの繰り返しの注入により継続される。弁104は順行性の流動を確実にする。接続チューブは、必要な場合に流動を平滑化する加圧式容器としての役割を果たすことができる。間欠的に、栓106は、造影剤が注入されることを可能にするように回され得る。
【0042】
図2を参照すると、カテーテルを通じて高浸透圧塞栓を動かして正常の血流に完全に置き換わるために高い圧力が必要とされないとき、以下の実施形態が用いられ得る。カテーテルが標的血管内に配置された後、デバイスは、標的血管を完全に充填する速度で造影剤を注入するのに用いられ得、この速度が記される。流量制御弁118は、浸透圧塞栓剤を含む加圧式バッグまたはポンプ112からの流動を調整するために用いられ得る。流量は、造影剤の繰り返しの注入、および標的血管の充填を維持するようにそれに応じて調整された流動弁118によって監視される。弁104は順行性の流動を確実にする。接続チューブは、必要な場合に流動を平滑化する加圧式容器としての役割を果たすことができる。間欠的に、栓106が回され得、造影剤は、上記で論じたように注入され得る。
【0043】
方法
本方法は、塞栓剤の間欠的注入を用いることができる。いくつかの事例において、低速の継続的な小さな注入が用いられたが、生来の血流の完全なまたはほぼ完全な置き換わりを伴わなかった。
【0044】
本出願において教示される方法は、従来技術とは明確に異なる。本明細書に論じられるように、本方法は以下を含むことができる。
・カテーテルおよび/またはマイクロカテーテルが腫瘍に供給する血管内に配置される。
・造影剤が血管内に注入され、血管造影図が得られる。
・正常組織および危険な側枝が決定される。
・説明されたように、経血管シリンジ(TLS)は、造影剤および浸透圧塞栓剤を装填され、浸透圧剤は流体バッグおよび/またはポンプ内にあり、全ての気泡を除去するために複数回注入することによって全ての空気を取り除く処理が行われる。
【0045】
マイクロカテーテルのための方法は、血管を充填するのに必要な比較的小さく長いカテーテルを通じて流動を展開するために高い圧力(25~250psi)を要する。
図1において、血管を充填するのに必要な流量を決定するために造影剤の流動がオンにされる。すなわち、栓106が造影剤ON位置まで回され得る[これにより、このデバイスでは、同時に浸透圧塞栓流をOFFに回す]。次に、TLシリンジが引き込まれ、これにより造影剤を造影剤の貯蔵場所(reserve)から引き出す。次に、蛍光透視法の下で、TLシリンジは、その内容物を注入し、操作者またはシステムによって、血管造影法により血管を完全に充填し、いくらかの僅かな還流を可能にするために注入速度が調整される。この操作は、操作者が操作を絶えず行い、この流量を記すことができるまで、蛍光透視法の下で繰り返される/調整される。代替的に、システムは、血管の血管造影法による充填の所望の速度が達成されるまで、造影剤の流量を調整することができる。この時点において、栓106はON位置まで回され、浸透圧塞栓剤が流れることを可能にし[これにより造影剤供給をOFFにする]、造影剤注入の記された速度および引き込みが浸透圧塞栓剤を用いて継続される。浸透圧塞栓剤の20秒~30秒の注入後、血管造影法による充填流量が再試験され得る。すなわち、造影剤が注入され、浸透圧剤が遮断されることを可能にするために、三方活栓が再び変更され得る。これは、蛍光透視法の下で行われる。再び、速度が記され、栓が、造影剤を停止し、記された新たな速度で浸透圧物質を送達するために再び変更される。このシーケンスは、浸透圧塞栓形成物質の影響で標的組織が殺され、流動がほぼ停滞状態になるまで繰り返される。
【0046】
高い圧力を必要としない通常の大きさのカテーテルのための方法、およびユーザ/システムは、圧力バッグまたは類似のデバイスを用いて、標的血管を充填するのに適切な圧力を生成することができる。この状況において、操作者は、流動弁を用いて、浸透圧塞栓剤および造影剤流動を制御する。流動を、血管を完全に充填するのに適したものにし、心臓拡張期の最低状態の圧力および流動で見られる僅かな量の還流を許容するために、弁118が用いられる。加えて、この説明および従来の説明において、注入速度を制御/設定するためにコントローラおよび圧力または容量ポンプが用いられ得る。
【0047】
自動アルゴリズム制御ポンプシステムを有するセンサ埋込み型の(または別個の)カテーテルのための方法は、カテーテルが上記で説明した標的血管内に配置されることを要する。蛍光透視法による制御の下で、オスモル濃度またはオスモル濃度マーカを測定する(カテーテル上のまたはカテーテルと別個の)遠位センサが、標的血管における注入に対し遠位に配置される。近位センサ(この実施形態において用いられる場合)は、供給血管内で、潜在的還流地点のすぐ近位に配置される。アルゴリズムは、好ましくは、遠位センサを、血液よりはるかに高い(3~4倍)浸透圧マーカの値に維持し、近位センサが還流を可能にする状況について過度に高い値を読み取る場合に注入を低速化するようにポンプを制御する:範囲;
([血液オスモル濃度]×[1.2~1.5])。流動の確認は、蛍光透視法を用いた造影剤の注入によって間欠的に行われ、これは、所与の速度で流動を継続させ、同時にセンサを無効にする。接続チューブは、容器としての役割を果たす。
【0048】
上記の発明は、明確性および理解の目的で幾分詳細に説明されたが、当業者には、本開示を読むことにより、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更が行われ得ることが理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
【
図1】高圧シリンジ注入デバイスおよび適切な流動の間欠的な血管造影法による確認を用いた浸透圧塞栓形成のための例示的なシステムまたは設定を示す図である。
【
図2】低圧または標準圧シリンジ注入デバイスおよび適切な流動の間欠的な血管造影法による確認を用いた浸透圧塞栓形成のための例示的なシステムまたは設定を示す図である。
【
図3】他の塞栓形成技術を本明細書に開示される浸透圧塞栓形成技術の1つまたは複数の実施形態と比較するチャートである。
【国際調査報告】