IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コヒーシヴの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】外科用接着剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/06 20060101AFI20230905BHJP
   A61L 26/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61L24/06
A61L26/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023507677
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2021073090
(87)【国際公開番号】W WO2022038247
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】2008594
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523037462
【氏名又は名称】コヒーシヴ
【氏名又は名称原語表記】COHESIVES
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ペラン,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】グーティ,ナターシャ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA04
4C081AC04
4C081BA11
4C081BB04
4C081CA081
4C081CA211
4C081CE08
4C081DA14
(57)【要約】
-組成物の総重量に対して5~40質量%の濃度で、一方ではリン酸塩またはホスホン酸塩官能基を含み、他方ではメタクリレート、アクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド官能基を含む、重合性モノマー、-0.5~2質量%の濃度で、光開始剤、および-光重合性樹脂を含む、組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非石灰化生体組織への物質の接着のための外科用接着剤として、非石灰化生体組織の相互接着のための外科用接着剤として、非石灰化生体組織の表面における接着剤または物質の接着ための外科用接着剤として、ワイヤまたはステープル縫合によりまたは組織切除により生じる開口部を封止または閉塞するための外科用シールとして、非石灰化生体組織における開口部、切開部または裂開部を封止するための外科用シールとして、出血を止めるための止血剤として、創傷を被覆および保護するための非石灰化生体組織上のドレッシングとして、非石灰化生体組織を補強するための非石灰化生体組織上のドレッシングとして、非石灰化生体組織を固定および安定化するための非石灰化生体組織上のドレッシングとして、使用するための組成物であって、
-前記組成物の総重量に対して5~40質量%の濃度で、一方ではリン酸塩またはホスホン酸塩官能基を含み、他方ではメタクリレート、アクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド官能基を含む、重合性モノマー、
-0.5~2質量%の濃度で、光開始剤、および
-光重合性樹脂
を含む、組成物。
【請求項2】
前記重合性モノマーが、CAS番号[14206-25-8]、[14235-57-5]、[86242-61-7]、[932019-41-6]、[1980781-17-6]、[60161-88-8]、[87243-97-8]、[1980048-95-0]、[918802-80-9]、[63411-25-6]、[1980064-07-0]、[22432-83-3]、[1980781-08-5]、[252210-28-9]、[1114567-37-1]、[80730-17-2]、[518991-74-7]、[87243-96-7]、[1980062-84-7]、[518991-75-8]、[252210-30-3]、[22432-84-4]、[727415-30-7]、[727415-31-8]、[784139-89-5]または[1984231-98-5]を有する分子、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重合性モノマーが、式Iのものである:
【化1】
式中、
R2はHまたはCH3である;
R1、R1’、R1”は、互いに独立して、直鎖ポリエーテルラジカル、直鎖または分岐鎖C1~C50脂肪族ラジカル、C6~C18芳香族ラジカルであり、ここで、前記ラジカルの炭素鎖は、O、S、OCONHにより中断されてもよい、および/または1つまたは複数のアルコール官能基を含んでもよい;
R1’は、c=0である場合、Hである;
R1”は、a=0である場合、Hである;
bは1である;
aまたはcは1または0である
ことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
a=0、R2=HまたはCH3であり、R’1およびR1は直鎖C1~C12脂肪族鎖であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
a=0、c=0、R2=CH3であり、R1は直鎖C1~C12脂肪族鎖であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式Iの重合性モノマーが、10-MDP(C14H27O6P)またはMEP(C12H19O8P)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記重合性モノマーが、前記組成物の総重量に対して25~35質量%の濃度を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記光開始剤が、350~520nmの放射線の影響下で重合を誘発することができることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記光開始剤が、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルホスフィネートオキシド(TPO-L)、カンファーキノンまたは4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであり、後者はエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDB)と会合する、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
0.25~2質量%の前記光開始剤、50~90質量%の前記光重合性樹脂、および20~40質量%の前記重合性モノマーを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
-(i)請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物で処置される組織をコーティングする工程、
-(iii)前記組成物の重合を誘発する工程
を含むことを特徴とする、皮膚病変を被覆し保護するための非侵襲的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、外科用接着剤、外科用シーラント、止血用ドレッシングおよび/または皮膚用ドレッシングとして使用するための組成物に関する。より詳細には、本発明は、以下のプロセスにおいて使用するための組成物に関する:
-生体組織に物質を接着するための外科用接着剤として、
-生体組織を互いに接着するため、
-生体組織の表面において接着剤または物質を接着するため、
-外科用シーラントとして、
-ワイヤまたはステープル縫合または組織切除によって生じる開口部を封止または閉塞するため(例えば、止血、エアロスタシス(aerostasis)、リンパうっ滞(lymphostasis))、
-生体組織における開口部、切開部または裂開部を閉鎖するため、
-単独で、または、縫合、圧縮または電気凝固のような従来の止血技術を補完するものとしての、出血を止める止血剤として、または、
-創傷を被覆および保護するための生体組織上のドレッシングとして。
【0002】
これらの組成物はまた、以下のように使用することができる:
-生体組織を補強するため、
-生体組織を固定および安定化させるため、
-皮膚病変の治療のため。
【背景技術】
【0003】
多くの外科技術は、外科用接着剤を使用する。これらは主に、外科的止血の達成を助けるために使用される。しかしながら、この用途における外科用接着剤の有効性については議論があり、エアロスタシスなどの他の用途は、良好な結果を示していない。
【0004】
さらに、外科用接着剤は接着特性が非常に弱く、したがって接着剤または外科用縫合糸として用いることができない。大抵の場合、外科用接着剤は、接着表面を前処理することなく、組織に直接塗布される。組織への浸透性は低いかまたは存在しないため、接着の質は悪くなる。本出願人は、現在の接着剤は接着せず、組織に浸透しないことを見出した。
【0005】
この問題に対処するために、低粘度の外科用接着剤が提案されている。これらの外科用接着剤は、組織により容易に浸透し、これにより、より良好な質の接着を得ることができる。しかしながら、これらの外科用接着剤は、高濃度のモノマーを必要とする。さらに、それらの化学的性質は、付着部位に火傷を引き起こす可能性がある。これらの組成物は、一般人が直接使用することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、新しいタイプの外科用接着剤を提供することを提案する。本発明による組成物および方法は、一般人による適用に適した皮膚接着レベルを得ることを可能にする。選択された濃度は、組織の火傷を引き起こすことなく、数十秒で迅速な開始および重合を可能にする。
【0007】
さらに、選択された光重合性樹脂は、重合性モノマーと組み合わされて、得られる接着剤に、可撓性、生理的液体(血液、浸出液、汗)の作用下での良好な経時的安定性、組織/接着界面での汗または浸出液の蓄積の制限、および良好な耐水性を与える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に以下を含む組成物に関する:
-一方ではリン酸塩またはホスホン酸塩官能基を含み、他方ではメタクリレート、アクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド官能基を含む、重合性モノマー、
-重合開始剤、
-光重合性樹脂。
【0009】
本発明の文脈において、一方ではリン酸塩またはホスホン酸塩官能基を含み、他方ではメタクリレート、アクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド官能基を含む重合性モノマーは、「重合性モノマー」と称され得る。
【0010】
さらに、本発明は、外科用接着剤、外科用シーラント、止血用ドレッシングおよび皮膚用ドレッシングとして使用するための本発明による組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、生体組織への物質の接着のための外科用接着剤として、生体組織の相互接着のための外科用接着剤として、生体組織の表面における接着剤または物質の接着ための外科用接着剤として、ワイヤまたはステープル縫合によりまたは組織切除により生じる開口部を封止または閉塞するための外科用シールとして、生体組織における開口部、切開部または裂開部を封止するための外科用シールとして、出血を止めるための止血剤として、創傷を被覆および保護するための生体組織上のドレッシングとして、生体組織を補強するための生体組織上のドレッシングとして、生体組織を固定および安定化するための生体組織上のドレッシングとして、使用するための本発明による組成物に関する。
【0012】
本発明はまた、物質を非石灰化生体組織に接着するための外科用接着剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、非石灰化生体組織を互いに接着するための外科用接着剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0014】
本発明はまた、非石灰化生体組織の表面において接着剤または物質を接着するための外科用接着剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、ワイヤまたはステープル縫合によってまたは組織切除によって生じる開口部を封止または閉塞するための外科用シーラントとして使用するための本発明による組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、非石灰化生体組織の開口部、切開部、または裂開部を封止ための外科用シーラントとして使用するための本発明による組成物に関する。
【0017】
本発明はまた、出血を止めるための止血剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、創傷を被覆し保護するための非石灰化生体組織上のドレッシングとして外科用接着剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、非石灰化生体組織を補強するための外科用接着剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0020】
本発明はまた、非石灰化生体組織を固定および安定化するための外科用接着剤として使用するための本発明による組成物に関する。
【0021】
本出願人は、本発明による組成物が、従来技術の組成物と比較して、優れた接着能力および無害性を特徴とすることを実証することができた。したがって、これらの組成物は、創傷のためのドレッシングとしての皮膚用途のためおよび/またはあらゆる皮膚病変の治療のために特に適している。
【0022】
好ましくは、前記重合性モノマーは、CAS番号[14206-25-8]、[14235-57-5]、[86242-61-7]、[932019-41-6]、[1980781-17-6]、[60161-88-8]、[87243-97-8]、[1980048-95-0]、[918802-80-9]、[63411-25-6]、[1980064-07-0]、[22432-83-3]、[1980781-08-5]、[252210-28-9]、[1114567-37-1]、[80730-17-2]、[518991-74-7]、[87243-96-7]、[1980062-84-7]、[518991-75-8]、[252210-30-3]、[22432-84-4]、[727415-30-7]、[727415-31-8]、[784139-89-5]または[1984231-98-5]を有する分子、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、重合性モノマーは、式Iのものである:
【化1】
式中、
R2はHまたはCH3である;
R1、R1’、R1”は、互いに独立して、直鎖ポリエーテルラジカル、直鎖または分岐鎖C1~C50脂肪族ラジカル、C6~C18芳香族ラジカルであり、ここで、前記ラジカルの炭素鎖は、O、S、OCONHにより中断されてもよい、および/または1つまたは複数のアルコール官能基を含んでもよい;
R1’は、c=0である場合、Hである;
R1”は、a=0である場合、Hである;
bは1である;
aまたはcは1または0である。
【0024】
「前記官能基の炭素鎖が中断されていてもよい」なる用語は、前記官能基が炭素鎖に挿入される、すなわち両側の炭素原子に結合されることを意味する。
【0025】
好ましくは、a=0、R2=HまたはCH3であり、R’1およびR1は直鎖C1~C12脂肪族鎖である。
【0026】
さらにより好ましくは、a=0、c=0、R2=CH3であり、R1は直鎖C1~C12脂肪族鎖である。
【0027】
好ましくは、a=0、c=0、R”1=H、R’1=H、R1=直鎖C1~C12脂肪族鎖、b=1、R2=CH3である。
【0028】
好ましくは、a=1、c=1、b=0、R1=H、R’1=R”1=直鎖C1~C12脂肪族鎖、R2=CH3である。
【0029】
好ましくは、式Iの重合性モノマーは、10-MDP(C14H27O6P、CAS番号[85590-00-7])またはMEP(C12H19O8P、CAS番号[32435-46-4])である。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、式Iの重合性モノマーは、グリセロールジメタクリレートホスフェート、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ポリエチレングリコールメタクリレートホスフェート、メタクリロイルオキシデシル水素ホスフェート、メタクリロイルオキシエチルオキシ水素ホスフェート、グリセロールモノメタクリレートホスフェート、トリエチレングリコールモノメタクリレートホスフェート、メタクリロイルオキシプロピルホスフェート、メタクリロイルオキシヘキシルホスフェート、メタクリル酸アミノエチルホスホン酸、ビス(グリセリルジメタクリレート)ホスフェートおよびこれらの混合物から選択される。
【0031】
本発明の文脈において、「重合性モノマー」という用語は、その重合が物理的または化学的開始剤によって開始され得るモノマーを称する。
【0032】
好ましい実施形態によれば、重合は、放射線の影響下で開始される。好ましくは、前記放射線は、350nm~520nmの波長を有する。
【0033】
好ましくは、モノマーの重合後に得られるポリマーは、生体適合性ポリマーである。
【0034】
好ましい実施形態によれば、前記粘度は20℃で120Pa・sより低い。
【0035】
さらに好ましい実施形態によれば、前記粘度は20℃で107Pa・sより低い。
【0036】
最も好ましい実施形態によれば、前記粘度は20℃で50Pa・sより低い。
【0037】
最も好ましい実施形態によれば、前記粘度は20℃で20Pa・sより高い。
【0038】
特に、組成物の粘度は、規格DIN53015に従ったボール落下粘度計によって測定することができる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物はヒドロゲルではない。
【0040】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、250~500g・mol-1のモル質量を有する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、組成物の総重量に対して5~40質量%の濃度を有する。
【0042】
さらに好ましい実施態様によれば、前記モノマーは、組成物の総重量に対して20~40質量%の濃度を有する。
【0043】
さらに好ましい実施態様によれば、前記モノマーは、組成物の総重量に対して20~40質量%の濃度を有する。
【0044】
最も好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、組成物の総重量に対して25~35質量%の濃度を有する。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記光重合性樹脂は、脂肪族ウレタンアクリレート樹脂、疎水性ウレタンアクリレート樹脂、芳香族ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテルウレタンアクリレート樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は、Allnex Ebecryl 230(登録商標)、Allnex IRR 907(登録商標)、Allnex Ebecryl 4491(登録商標)、Allnex Ebecryl 1271(登録商標)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記芳香族ウレタンアクリレート樹脂は、Allnex Ebecryl 210(登録商標)である。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記疎水性ウレタンアクリレート樹脂は、Dymax Borar BRC-843S(登録商標)である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ポリエーテルウレタンアクリレート樹脂は、Dymax Bomar BR-3641AJ(登録商標)である。
【0050】
上記で特定された様々な樹脂は、重合反応の発熱を許容可能なレベルに制限しながら、本発明による組成物を用いて得られる結合に最適な可撓性を与える。
【0051】
別の好ましい実施形態によれば、前記組成物は、組成物の総重量に対して50~90質量%、より好ましくは60~80質量%の前記光重合性樹脂を含む。
【0052】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、重合開始剤、より好ましくは光開始剤を含む。熱重合開始剤またはレドックス重合開始剤の使用は、本発明の範囲から除外されない。使用可能なレドックス開始剤の中で、特にジベンゾイルペルオキシド/アミン(トリメチルアニリン)対に言及することができる。
【0053】
さらに好ましい実施形態によれば、前記光開始剤は、350~520nmの放射線の影響下で重合を誘発することができる。
【0054】
好ましくは、前記光開始剤は、以下から選択される:2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルホスフィネートオキシド(TPO-L)、カンファーキノンまたは4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであり、後者はエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDB)と会合する、およびこれらの混合物。
【0055】
有利には、光開始剤は、0.25~2質量%、好ましくは0.5~2質量%の濃度で使用される。
【0056】
別の好ましい実施形態によれば、前記組成物は溶媒を含まない。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記組成物は、0.5~2質量%の前記光開始剤と、50~90質量%の前記光重合性樹脂と、20~40質量%の重合性モノマーとを含む。
【0058】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、前記組成物は、0.5~2質量%のTPO-LまたはEDBと会合したカンファーキノン、50~90質量%の前記脂肪族ウレタンアクリレート樹脂、20~40質量%のMDPまたはMEPを含む。
【0059】
本発明の文脈において、本発明による組成物の様々な成分の濃度がパーセンテージで示される場合、これは、前記組成物の総重量に対する前記成分の質量パーセントからなる。
【0060】
本発明の文脈において、「含む」なる用語は、本発明による組成物が上述の要素を含むことを意味する。好ましくは、本発明は、他のものを除く上述の要素のみを含む組成物に関する。
【0061】
本発明はまた、以下の工程を含むことを特徴とする方法に関する:
-(i)処置される組織を本発明による組成物でコーティングする工程、
-(ii)組成物を前記組織に浸透させる工程、
-(iii)前記組成物の重合を誘発する工程。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、工程(ii)は任意である。
【0063】
本発明の文脈において、「生体組織」なる用語は、好ましくは、非石灰化生体組織を称する。
【0064】
明瞭化のために、本発明の文脈において、「生体組織」なる用語は、骨および歯を称するものではないことを明記しておく。
【0065】
好ましくは、本発明による方法は、非侵襲的である。「非侵襲的」なる用語は、本発明による方法が、処置される組織にアクセスすることからなる任意の外科的工程を含まないことを意味する。したがって、本発明による方法は、直接アクセス可能な生体組織(例えば、皮膚)上で実施されるか、または他の方法によって事前にアクセス可能にされる。
【0066】
好ましくは、本発明による方法は、皮膚病変を被覆し保護するための非侵襲的方法である。
【0067】
好ましくは、本発明による方法は、皮膚病変の唇を互いに接近させるための非侵襲的方法である。
【0068】
あるいは、本発明による方法は、生体組織への物質の接着のため、生体組織同士の接着のため、生体組織の表面での接着剤または物質の接着のため、外科的封止、ワイヤまたはステープル縫合または組織切除によって生じる開口部を封止または閉塞するため(例えば、止血、エアロスタシス、リンパうっ滞)、生体組織における開口部、切開部または裂開部を封止するため、出血を止めるため、創傷を被覆および保護するため、生体組織を補強するため、または生体組織を固定および安定化するための、方法である。
【0069】
「皮膚の」なる用語により、皮膚、唇または口粘膜上に位置する局在性が理解される。
【0070】
好ましい実施形態によれば、前記工程(iii)は、UV放射または可視光を用いて行われる。使用される放射線の特性、特にそのパワーおよびその波長は、組成物の成分、特に重合性モノマーの性質および重合開始剤の性質に適合される。
【0071】
本発明はまた、本発明による組成物および放射線源を含むパーツのセットに関する。
【0072】
好ましくは、パーツのセットの放射線源は、組成物の重合性モノマーの重合および/または重合の補助および/または重合の加速に適した放射線を放出することができる。
【0073】
本発明の文脈において、「放射線源」という用語は、350~520の波長を有する放射線を生成することができる任意の人工的手段を称する。好ましくは、前記UV放射は、10mW/cm~100mW/cm、およびより好ましくは17mW/cm~92mW/cmの照射パワーを有する。
【発明を実施するための形態】
【0074】
ヒトにおける皮膚反応試験
本発明による組成物を、掌の上に堆積させた。組成物を皮膚の表面に堆積させ、次いでUV放射によって重合させる。
【0075】
皮膚反応の有無は、セットアップ中、およびその後の数日間に観察される。
【0076】
光開始剤濃度の最適化
30%のMEP、69.5%のEbecryl 230および可変濃度のTPO-Lを含む本発明による組成物を用いて試験を行った。
【0077】
0.5%未満の光開始剤濃度では、結合の不十分な経時的保持および組成物の使用に適合しない光重合時間の延長(>20秒)が観察される。
【0078】
2%より高い濃度では、インビボ(in vivo)での組成物の使用に適合しない発熱性重合も観察される。
【0079】
光重合照射の最適化IO
30%のMEP、69.5%のEbecryl 230および1%のTPOLを含む本発明による組成物を用いて試験を行った。
【0080】
これらの組成物は、先に記載したプロトコールに従って使用され、395nmのUV源を用いて照射量を変化させながら放射線に供された。
【0081】
照射量の下限(17mW/cm2)は、重合の速度論および反応の酸素による阻害によって制限される。照射量の上限(92mW/cm2)は、発熱反応によって制限される。それにもかかわらず、10~100mW/cm2の照射値により、許容される結果が得られる。
【0082】
本発明による組成物の有効性
インビボ接着の定性的評価および結合の質が、ヒト皮膚について評価された(N=1~3の試験)。定性的な接着スケールが開発された:
0:t=0において接着なし、付着なし
1:t=0において接着、非常に弱い付着、数分で剥離、応力への耐性なし
2:t=0において接着、弱い付着、保持<1h、応力への耐性なし、エッジでの迅速な剥離
3:t=0において接着、弱い付着、2h~4hの保持、応力への耐性低い、エッジでの迅速な剥離
4:t=0において接着、弱い付着、4h~8hの保持、応力への耐性低い、エッジでの迅速な剥離
5:t=0において接着、平均的な付着、4h~8hの保持、応力への平均的な耐性、エッジでの剥離に対して耐性
6:t=0において接着、平均的な付着、8h~12hの保持、応力への平均的な耐性、エッジでの剥離に対して耐性
7:t=0において接着、平均的な付着、12h~24hの保持、応力への平均的~良好な耐性、エッジでの剥離に対して良好な耐性
8:t=0において接着、良好な付着、24h~36hの保持、応力への良好な耐性、エッジでの剥離に対して良好な耐性
9:t=0において接着、良好な付着、36h~48hの保持、応力への非常に良好な耐性、エッジでの剥離に対して良好な耐性
10:t=0において接着、優れた付着、48h超の保持、応力への優れた耐性、エッジでの剥離なし。
【0083】
TPO-L+MEP+Ebecryl 230の組合せで得られた全ての結果を表1に示す。
【0084】
これらのデータの統計的処理により、接着および保持特性に対する光開始剤および接着モノマーの濃度の主要な影響が明らかになった。これらの濃度が高いほど、接着特性は増大する。対照的に、濃度が低いと、接着および保持レベルが低くなる。LED紫外線源(399nm)の照射も、接着剤の接着特性に影響を及ぼす。さらに、得られた接着層の各々の水感受性は、本発明による方法における組成物の使用に適合した。
【表1】
【0085】
表1は、TPOL+MEP+Ebecryl 230製剤についての実験結果を示す。
【0086】
表2で得られた結果は、接着モノマーの濃度を5%まで下げることも可能であることを示している。
【表2】
【0087】
表2は、TPOL+MEP+Ebecryl 230製剤についての補完的実験結果を示す。
【国際調査報告】