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特表2023-538845ハイス加工工程の廃棄物からハイス母合金を製造するリサイクル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ハイス加工工程の廃棄物からハイス母合金を製造するリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20230905BHJP
   C22B 23/02 20060101ALI20230905BHJP
   C22B 34/34 20060101ALI20230905BHJP
   C22B 34/36 20060101ALI20230905BHJP
   C22C 35/00 20060101ALI20230905BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230905BHJP
   C22C 38/30 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C22B7/00 F
C22B23/02
C22B34/34
C22B34/36
C22C35/00
C22C38/00 302E
C22C38/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509368
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2021006909
(87)【国際公開番号】W WO2022119063
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0167768
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523042835
【氏名又は名称】ティーアンドイー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】T&E INC.
【住所又は居所原語表記】711ho, 30, Namdong-daero 215beon-gil Namdong-gu Incheon 21633 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ベ ギュン
(72)【発明者】
【氏名】カン,キョン シク
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA10
4K001AA17
4K001AA29
4K001BA22
4K001DA05
4K001KA01
4K001KA02
4K001KA06
4K001KA13
(57)【要約】
HSS母合金を製造するリサイクル方法は、HSS加工工程の廃棄物を前処理する前処理段階、フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトの中で少なくとも一つ及び前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物を、1500~2500攝氏温度(℃)で1次溶融して1次溶融物を形成する1次溶融段階、及び前記1次溶融物をインゴット(ingot)鋳造してHSS母合金を製造する製造段階を含み、前記前処理段階は、前記HSS加工工程の廃棄物を組成によって分離する分離段階、及びKO、CaO、MgO、SiO、Al、及びFeのうち少なくとも一つを含む酸化物と、前記分離したHSS加工工程の廃棄物とを混合して混合物を形成し、前記混合物の融点は、800~1700℃である混合段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイス(High Speed Steel:HSS)加工工程の廃棄物を前処理する前処理段階;
フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトの中で少なくとも一つ及び前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物を、1500~2500攝氏温度(℃)で1次溶融して1次溶融物を形成する1次溶融段階;及び
前記1次溶融物をインゴット(ingot)鋳造してHSS母合金を製造する製造段階;を含み、
前記前処理段階は、
前記HSS加工工程の廃棄物を組成によって分離する分離段階;及び
O、CaO、MgO、SiO、Al、及びFeのうち少なくとも一つを含む酸化物と、前記分離したHSS加工工程の廃棄物とを混合して混合物を形成し、前記混合物の融点は、800~1700℃である混合段階;を含む、HSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項2】
前記製造段階で製造されたHSS母合金は
(1)5~10重量%のW、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、及び6~11重量%のMo;(2)5~10重量%のW、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、6~11重量%のMo、及び4~12重量%のCo;(3)5~12重量%のMo、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、及び6~11重量%のW;及び(4)5~12重量%のMo、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、6~11重量%のW、及び4~12重量%のCoの中でいずれか一つの組成を有する、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項3】
前記前処理段階で、
前記HSS加工工程の廃棄物は、HSS工程汚泥、HSS旋削屑、及びHSS屑の中で少なくとも一つを含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項4】
前記前処理段階で、
前記HSS加工工程の廃棄物は、
2~10重量%のW、1~5重量%のCr、0.5~2重量%のV、1~10重量%のMo、及び1~10重量%のCoを含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項5】
前記混合段階で、
前記混合物は、KO、Al、及びSiOを含み、
前記混合物に含まれるKO:Al:SiOのモル数比は、1:1:2~1:1:6である、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項6】
前記前処理段階は、
前記HSS加工工程の廃棄物を比重選別して、前記HSS加工工程の廃棄物からFeよりも軽い物質を分離する比重選別段階をさらに含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項7】
前記比重選別段階は、
前記HSS加工工程の廃棄物の水分を80~100℃で乾燥し、前記乾燥したHSS加工工程の廃棄物の油分をアルカリ及びアルコールの中で少なくとも一つで洗浄して乾燥する乾式比重選別段階;及び
前記油分洗浄後に乾燥したHSS加工工程の廃棄物を水と混合し、揺動テーブルで比重選別を行う湿式比重選別段階;を含む、請求項6に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項8】
前記1次溶融段階で、
前記フェロモリブデンが添加されるとき、前記フェロモリブデンの重量は、前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に0.1~10%であり、
前記フェロタングステンが添加されるとき、前記フェロタングステンの重量は、前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に0.1~10%であり、
前記フェロコバルトが添加されるとき、前記フェロコバルトの重量は、前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に0.1~10%である、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項9】
前記1次溶融段階で、
前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準として1~2%重量を有するフェロタングステン、4~5%重量を有するフェロモリブデン、及び0.5~1%重量を有するフェロコバルトを添加する、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項10】
前記HSS加工工程の廃棄物は、HSS工程汚泥、HSS旋削屑、及びHSS屑を含み、
前記混合段階において、前記酸化物及び前記HSS汚泥を混合し、
前記1次溶融段階は、
溶融炉に前記HSS屑の一部、前記混合物の一部、前記HSS旋削屑の一部、前記混合物の残量、前記HSS旋削屑の残量、及び前記HSS屑の残量を順次に装入して、前記1次溶融を行う、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項11】
前記1次溶融段階は、
真空雰囲気または不活性ガス雰囲気下で行われる、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項12】
前記HSS加工工程の廃棄物を粉末形態で作り、ふるいをかけることで粒度に基づいて初期不純物を取り除く初期不純物除去段階をさらに含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項13】
前記1次溶融物を保温炉に移動して、脱ガス及び不純物を精製する精製段階をさらに含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項14】
フェロモリブデン、フェロタングステン、フェロコバルト、フェロクロム、及びフェロバナジウムの中で少なくとも一つと、インゴット鋳造した溶融物とを1000~1300℃で2次溶融して2次溶融物を形成する2次溶融段階をさらに含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイス加工工程の廃棄物のリサイクル方法に関し、より詳しくは、ハイス加工工程の廃棄物を再利用してハイス母合金を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイス(High Speed Steel:HSS)とは、金属材料を高速度で切削する工具に使用される、耐熱性を有する特殊鋼を言う。HSSは、工具、金型材料として用いられ、自動車、船舶、鉄鋼、機械、航空などの部品材料として産業の全般に用いられる特殊鋼素材である。
【0003】
HSSを生産する際に、廃棄物が発生するようになるが、HSS工程の廃棄物は、HSS素材の切削工程と寸法合わせ、及び表面研磨工程で発生する廃棄物であって、切削油と研磨材とが混合されており、切削工程の旋削屑(Turning scrap)および研磨工程の汚泥(sludge)が含まれる。
【0004】
HSS工程の廃棄物は、100トン/月、1,200トン/年以上発生すると知られており、工具以外の他の品目を勘案すると、その量は、数十、数百倍に至る。HSS加工工程で発生する旋削粉、研磨粉などは、大部分埋め立てられるか、古鉄に混ぜられて精練所の不純物となっており、HSS工程の廃棄物の中で研磨工程の汚泥は、一般廃棄物又は指定廃棄物として埋め立てられている。
【0005】
それゆえ、このようなHSS工程の廃棄物をリサイクルし得る方法が求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、HSS工程の廃棄物を、HSSを作る工程に投入して廃棄物を資源化することができるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、HSS加工工程の廃棄物を前処理する前処理段階、フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトの中で少なくとも一つ及び前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物を、1500~2500攝氏温度(℃)で1次溶融して1次溶融物を形成する1次溶融段階、及び前記1次溶融物をインゴット(ingot)鋳造してHSS母合金を製造する製造段階を含み、前記前処理段階は、前記HSS加工工程の廃棄物を組成によって分離する分離段階、及びKO、CaO、MgO、SiO、Al、及びFeのうち少なくとも一つを含む酸化物と、前記分離したHSS加工工程の廃棄物とを混合して混合物を形成し、前記混合物の融点は、800~1700℃である混合段階を含むHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法によって達成されることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、HSS工程の廃棄物を、HSSを作る工程に投入して廃棄物を資源化することができるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、HSS工程の廃棄物をHSS母合金として再利用し、再利用されたHSS母合金の組成を一定に制御することで、別途の不純物の制御が不要なHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法を概略的に示したフローチャートである。
【0011】
図2図2は、本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法に含まれる前処理段階を概略的に示したフローチャートである。
【0012】
図3図3は、実施例によって製造されたHSS母合金の組成を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以上のような本発明の目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付された図面に係わる以下の望ましい実施形態によって容易に理解できろう。しかしながら、本発明は、ここで説明される実施の形態に限定されなく、他の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施の形態は、開示の内容が徹底的でかつ完全になるように、そして通常の技術者に本発明の思想を十分に伝達させるために提供されることである。
【0014】
各図面を説明するにおいて、類似した構成要素には類似した符号を付した。添付の図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性のために、実物よりも拡大して示した。第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用され得るが、これらの前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限度内で第1構成要素は第2構成要素と命名されることができ、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名されることができる。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味で用いられている場合を除き、複数の表現を含む。
【0015】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせが存在することを指定するためのものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせなどの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0016】
さらに、別途明示されない限り、本明細書で使われた成分、反応条件、材料の量を表現するすべての数字、値及び/または表現は、これらの数字が、本質的に異なるものからこれらの値を得るのに発生する測定の種々の不確実性が反映された近似値であるので、すべての場合「略」という用語によって修飾されるものと理解されなければならない。なお、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、かつ、別途指摘がない限りかかる範囲の最小値から最大値が含まれる、前記最大値までのすべての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指称する場合、別途指摘がない限り、最小値から最大値が含まれる、前記最大値までを含むすべての整数が含まれる。
【0017】
本明細書において、範囲が変数について記載されている場合、前記変数は、前記範囲に記載の終了点を含む、記載された範囲内のすべての値を含むものと理解できるはずである。例えば、「5~10」の範囲は5、6、7、8、9、及び10の値だけではなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などのような、記載範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含まれるものと理解されてほしい。また、例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含むすべての整数のみならず、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解されることができる。
【0018】
別の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の技術者に共通に理解できる意味で使われることができる。尚、一般に使われる辞書上に定義されている用語は、明白に特別に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0019】
以下では、本発明の一実施の形態によるハイス(High Speed Steel:HSS)加工工程の廃棄物のリサイクル方法について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法を概略的に示したフローチャートである。図2は、本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法に含まれる前処理段階を概略的に示したフローチャートである。
【0021】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法は、HSS加工工程の廃棄物を前処理する前処理段階(S100)、フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトの中で少なくとも一つ及び前処理されたHSS加工工程の廃棄物を1500~2500攝氏温度(℃)で1次溶融して1次溶融物を形成する1次溶融段階(S200)、及び1次溶融物をインゴット(ingot)鋳造してHSS母合金を製造する製造段階(S300)を含む。
【0022】
HSS加工工程の廃棄物を前処理する(S100)。前処理段階(S100)において、HSS加工工程の廃棄物は、HSS工程汚泥、HSS旋削屑、及びHSS屑(Scrap)の中で少なくとも一つを含むことができる。本明細書において、「HSS工程汚泥」、または「HSS研磨粉」は、HSS加工工程中に研磨工程(寸法合わせ工程)で発生する研磨粉を意味するものであってもよい。「HSS工程汚泥」は、HSSスラッジを意味するものであることができる。
【0023】
本明細書で、「HSS旋削屑」は、HSS加工工程の中で、各種切削加工工程(ミル、ドリル、ターニングなど)で発生するチップ、屑、金属帯などのスクラップを意味することがある。
【0024】
本明細書における、「HSS屑」は、工程に使用して廃棄されるHSS工具、金型、部品及びHSS加工工程中に発生するかけらを意味することができる。
【0025】
HSS工程汚泥、HSS旋削屑、及びHSS屑の組成は、例えば下記表1に示したものと同様である
【0026】
【表1】
【0027】
前処理段階(S100)において、HSS加工工程の廃棄物は、例えば、2~10重量%のW、1~5重量%のCr、0.5~2重量%のV、1~10重量%のMo、及び1~10重量%のCoを含むことができる。前処理段階(S100)は、分離段階(S110)及び混合段階(S120)を含むことができる。
【0028】
HSS加工工程の廃棄物を組成によって分離する(S110)。例えば、HSS加工工程の廃棄物を、タングステン、モリブデン、コバルトなどの含量によって分離し得る。
【0029】
O、CaO、MgO、SiO、Al、及びFeのうちの少なくとも一つを含む酸化物及び分離したHSS加工工程の廃棄物を混合して混合物を形成する(S120)。混合段階(S120)で、酸化物を混合して、HSS加工工程の廃棄物に含まれた酸化物をスラグとして分離することができる。
【0030】
混合物の融点は、800~1700℃であることができる。例えば、KO、CaO、MgO、SiO、Al、及びFeのうちの少なくとも一つを含む酸化物及びHSS加工工程の廃棄物に含まれた酸化物の混合物の融点は、800~1700℃であってもよい。
【0031】
混合段階(S120)において、混合物は、KO、Al、及びSiOを含むことができる。混合段階(S120)において、混合物に含まれるKO:Al:SiOのモル数比は、1:1:2~1:1:6であることができる。前記範囲を外れると、HSS母合金として使用可能な製品を製造しにくいことがある。
【0032】
混合段階(S120)は、例えば、乾式比重選別及び湿式比重選別の中で少なくとも一つを行うことでHSS加工工程の廃棄物に含まれた酸化物の含量を低くした後に行われてもよい。
【0033】
前処理段階(S100)は、比重選別段階をさらに含むことができる。比重選別段階で、HSS加工工程の廃棄物を比重選別して、HSS加工工程の廃棄物からFeよりも軽い物質を比重選別する。
【0034】
比重選別段階は、乾式比重選別段階及び湿式比重選別段階を含むことができる。乾式比重選別段階でHSS加工工程の廃棄物の水分を80~100℃で乾燥し、乾燥したHSS加工工程の廃棄物の油分をアルカリ及びアルコールの中で少なくとも一つで洗浄して乾燥することができる。例えば、前記温度範囲を外れると、HSS加工工程の廃棄物の水分が十分に除去されないか、乾燥時の過度なエネルギー消費で経済的利得がない。
【0035】
乾燥比重選別段階では、乾燥したHSS加工工程の廃棄物を、空気分離(Air Separation)装置を通じて比重によって分離することができ、必要によって、数回繰り返しまたは幾つかの空気分離装置によって行われることができる。乾燥比重選別段階は、例えば、選別効率を高めるために、ふるいをかけて粒度別に選別することもできる。
【0036】
湿式比重選別段階で、油分洗浄後に乾燥したHSS加工工程の廃棄物を水と混合し、揺動テーブルで比重選別を行うことができる。湿式比重選別段階では、HSS加工工程の廃棄物を必要によって数回繰り返しまたは複数段の揺動テーブルを設置して選別することができる。選別後、水分含量は全体重量を基準に10%以下に乾燥することができる。湿式比重選別段階は、例えば、選別効率を向上させるために、ふるいをかけて粒度別に選別することもできる。
【0037】
フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトの中で少なくとも一つ及び前処理されたHSS加工工程の廃棄物を、1500~2500℃で1次溶融して1次溶融物を形成する1次溶融する(S200)。前記範囲未満であれば、溶融が十分ではないこともあり得、前記範囲を超えると、溶融が過度になってHSS母合金として使用可能な製品を製造しにくく、高温に耐えられる特殊炉の製作が必要であるなど、経済的利得がない。
【0038】
1次溶融段階(S200)は、例えば、溶融炉で1~8時間の間行われることができる。前記範囲未満であれば、溶融が十分ではないことができ、前記範囲を超えると、溶融が過度になってHSS母合金として使用可能な製品を製造しにくいことがある。
【0039】
1次溶融段階(S200)で、溶融は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0040】
1次溶融段階(S200)では、所望するHSS母合金の組成を得るために、フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトの中で少なくとも一つを添加することができる。
【0041】
1次溶融段階(S200)において、脱ガス及び炭素含量を低くするために、高圧酸素を溶融物に吹き込むことができる。
【0042】
1次溶融段階(S200)で、スラグ組成物または混合物を形成するとき、添加された酸化物、脱酸剤、及びフラックスの中で少なくとも一つをさらに添加することができる。
【0043】
1次溶融段階(S200)において、HSS旋削屑、HSS屑、及びHSS工程汚泥の中から少なくとも一つをさらに添加することができる。
【0044】
1次溶融段階(S200)で、フェロモリブデンが添加されるとき、前記フェロモリブデンの重量は、前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に0.1~10%であることができる。1次溶融段階(S200)において、フェロタングステンが添加されるとき、フェロタングステンの重量は、前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に0.1~10%であることができる。1次溶融段階(S200)で、フェロコバルトが添加されるとき、フェロコバルトの重量は、前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に0.1~10%であることができる。
【0045】
1次溶融段階(S200)で、前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準として1~2%重量を有するフェロタングステン、4~5%重量を有するフェロモリブデン、及び0.5~1%重量を有するフェロコバルトを添加することができる。前記範囲のフェロタングステン、フェロモリブデン、及びフェロコバルトを添加してリサイクル可能なHSS母合金を製造することができる。
【0046】
一実施の形態として、本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法において、HSS加工工程の廃棄物が、HSS工程汚泥、HSS旋削屑、及びHSS屑を含む場合、混合段階(S120)において、酸化物及びHSS汚泥を混合することができる。この時、酸化物は、KO、CaO、MgO、SiO、Al、及びFeのうち少なくとも一つを含むことができる。混合段階(S120)で、HSS旋削屑、及びHSS屑は、混合されないこともある。1次溶融段階(S200)で、溶融炉に前記HSS屑の一部、前記混合物の一部、前記HSS旋削屑の一部、前記混合物の残量、前記HSS旋削屑の残量、及び前記HSS屑の残量を順次に装入することができる。溶融炉を1500~1700℃の温度範囲で溶融し、一定時間が経過した後、フェロモリブデン、フェロタングステン、及びフェロコバルトを添加し、前記温度範囲を一定時間維持することができる。
【0047】
1次溶融物をインゴット鋳造してHSS母合金を製造する(S300)。例えば、1次溶融物をプレス成形してインゴット鋳造する。
【0048】
製造段階(S300)で製造されたHSS母合金は、(1)5~10重量%のW、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、及び6~11重量%のMo;(2)5~10重量%のW、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、6~11重量%のMo、及び4~12重量%のCo;(3)5~12重量%のMo、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、及び6~11重量%のW;及び(4)5~12重量%のMo、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、6~11重量%のW、及び4~12重量%のCoの中でいずれか一つの組成を有するものであることができる。前記(1)~(4)の組成において、それ以外の組成は、Fe、C、O、Al、Si、P、Cl、Mn、及びNiの中で少なくとも一つを含むことができる。
【0049】
本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法は、前記範囲の組成を有し、HSS母合金として使用可能な製品を製造することができる。
【0050】
本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法は、HSS加工工程の廃棄物を粉末形態で作り、ふるいをかけることで粒度に基づいて初期不純物を取り除く初期不純物除去段階をさらに含むことができる。
【0051】
本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法は、1次溶融物を保温炉に移動して、脱ガス及び不純物を精製する精製段階をさらに含むことができる。精製段階は、例えば熱分解及び電気分解の中で少なくとも一つによって行われることができる。
【0052】
本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法は、フェロモリブデン、フェロタングステン、フェロコバルト、フェロクロム、及びフェロバナジウムの中で少なくとも一つと、インゴット鋳造した溶融物とを1000~1300℃で2次溶融して2次溶融物を形成する2次溶融段階をさらに含むことができる。前記範囲未満であれば、溶融が十分ではないことがあり得、前記範囲を超えると、多大なエネルギー消費で経済的利得がない。
【0053】
2次溶融段階は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気下で施すことができる。
【0054】
2次溶融段階は、例えば、溶融炉で1~8時間の間行われることができる。前記範囲未満であれば、溶融が十分ではないことがあり、前記範囲を超えると、多大なエネルギー消費で経済的利得がない。
【0055】
2次溶融段階では所望するHSS母合金の組成を得るために、フェロモリブデン、フェロタングステン、フェロコバルト、フェロクロム、及びフェロバナジウムの中で少なくとも一つを添加することができる。
【0056】
2次溶融段階で、脱ガス及び炭素含量を低減するために、高圧酸素を溶融物に吹き込むことができる。
【0057】
2次溶融段階で、スラグ組成物又は混合物を形成する時に添加された酸化物、脱酸剤、及びフラックスの中で少なくとも一つをさらに添加することができる。
【0058】
2次溶融段階において、HSS旋削屑、HSS屑、及びHSS工程汚泥中から少なくとも一つをさらに添加することができる。
【0059】
本発明の一実施の形態によるHSS加工工程の廃棄物のリサイクル方法は、2次溶融物を保温炉に移動して脱ガス及び不純物を精製する精製段階をさらに含むことができる。精製段階は、例えば熱分解及び電気分解の中で少なくとも一つによって行われることができる。
【0060】
以下、具体的な実施例によって本発明をより具体的に説明する、下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎなく、本発明の範囲がこれらに限定されるもではない。
【実施例
【0061】
HSS加工工程の廃棄物として、HSS屑1kg、HSS旋削屑1kg、及びHSS工程汚泥2kgを用意した。HSS屑、HSS旋削屑、及びHSS工程汚泥のそれぞれの組成は、前記表1に記載したものと同一であってもよい。
【0062】
2kgのHSS工程汚泥、202.5gのKO、及び441.7gのSiOを混合した混合物内に含まれたKO:Al:SiOのモル比が1:1:4になるようにした。
【0063】
溶融炉として、大気雰囲気下で高周波溶解炉である、グラパイト(graphite)炉(l.5L)を用いた。グラパイト炉に、HSS屑(0.5kg)、混合物(1.322kg)、HSS旋削屑(0.5kg)、混合物(1.322kg)、HSS旋削屑(0.5kg)、及びHSS屑(0.5kg)を順に装入した。1700℃まで昇温(昇温時間30分)してから10分経過後、フェロタングステン35g、フェロモリブデン95g、及びフェロコバルト16gを添加し、これを20分間維持した。これを用意した型に注いで冷やした後、スラグを破って振り飛ばして、HSS母合金製品2.85kgを製造した。
【0064】
製造されたHSS母合金製品の組成比は、図3に示した。図3を参照すれば、HSS加工工程の廃棄物4kgを用いて、HSS母合金として使用可能な物性を有する製品2.85kgを得たことを確認することができた。
【0065】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の技術者は、本発明がその技術的思想や必須の要旨を変更することなく他の具体的な形態で実施されることができるということを理解できろう。したがって、以上記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイス(High Speed Steel:HSS)加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法であって、
HSS加工工程の廃棄物を前処理する前処理段階;
前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物を、溶融炉中1500~1700摂氏温度(℃)で1次溶融して1次溶融物を形成する1次溶融段階;
前記1次溶融物を保温炉に移動して、前記1次溶融物の脱ガス及び前記1次溶融物の不純物を精製する精製段階;及び
前記精製段階で精製された前記1次溶融物をインゴット(ingot)鋳造してHSS母合金を製造する製造段階;を含み、
前記前処理段階は、
HSS工程汚泥、HSS旋削屑、及びHSS屑を有する前記HSS加工工程の廃棄物を分離する分離段階;及び
O、CaO、及びSiOを含む酸化物と、前記分離したHSS加工工程の廃棄物とを混合して混合物を形成し、前記混合物の融点は、800~1700℃である混合段階;を含み、
前記混合物に含まれるK O:Al :SiO のモル数比は、1:1:2~1:1:6であって、
前記1次溶融段階は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気下で1時間から8時間の間行われ、
前記1次溶融段階は、溶融炉に前記HSS屑の一部、前記混合物の一部、前記HSS旋削屑の一部、前記混合物の残量、前記HSS旋削屑の残量、及び前記HSS屑の残量を順次に装入して行われ、
次いで、前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物の重量を基準に1~2重量%のフェロタングステン、4~5重量%のフェロモリブデン、及び0.5~1重量%のフェロコバルトを添加することによって前記溶融炉の温度が維持され、
前記前処理されたHSS加工工程の廃棄物は、2~10重量%のW、1~5重量%のCr、0.5~2重量%のV、1~10重量%のMo、及び1~10重量%のCoを含み、
前記リサイクル方法は、フェロモリブデン、フェロタングステン、フェロコバルト、フェロクロム、及びフェロバナジウムのうち少なくとも一つと、インゴット鋳造した溶融物とを1000~1300℃で2次溶融して2次溶融物を形成する2次溶融段階をさらに含み、
前記リサイクル方法は、Mo、W、Co、Cr、及びVのいずれか一つ又は複数を含有する組成のHSS母合金を選択的に製造する、HSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項2】
前記製造段階で製造されたHSS母合金は
(1)5~10重量%のW、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、及び6~11重量%のMo;(2)5~10重量%のW、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、6~11重量%のMo、及び4~12重量%のCo;(3)5~12重量%のMo、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、及び6~11重量%のW;及び(4)5~12重量%のMo、3~6重量%のCr、1~6重量%のV、6~11重量%のW、及び4~12重量%のCoの中でいずれか一つの組成を有
Fe、C、O、Al、Si、P、Cl、Mn、及びNiのうち少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【請求項3】
前記前処理段階
前記HSS加工工程の廃棄物を比重選別し、前記HSS加工工程の廃棄物からFeよりも軽い物質を分離する比重選別段階をさらに含み、
前記比重選別段階は、
前記HSS加工工程の廃棄物の水分を80~100℃で乾燥し、前記乾燥したHSS加工工程の廃棄物の油分をアルカリ及びアルコールのうちの少なくとも一つで洗浄して乾燥する乾式比重選別段階;及び
前記油分洗浄後に乾燥したHSS加工工程の廃棄物を水と混合し、揺動テーブルで比重選別を行う湿式比重選別段階;を含む、請求項1又は請求項2に記載のHSS加工工程の廃棄物からHSS母合金を製造するリサイクル方法。
【国際調査報告】